明 細 書
滑水性被膜を得るための処理剤及び滑水性被膜の作製法
技術分野
[0001] 本発明は、基材への被膜の形成が室温程度の乾燥で可能な滑水性被膜を得るため の処理剤、及び滑水性被膜を得るための作製法に関する。さら〖こ、本発明は、 自動 車等の車両用窓ガラス又はサイドミラー等に好適に使用される撥水性、及び水滴滑 落性に優れる滑水性物品の作製法に関する。
発明の背景
[0002] 車両等の窓ガラスやサイドミラーに水滴等が付着し、雨中での走行がしづらくなる 現象が日常的に発生している。このような問題点を解消するために、撥水性又は滑 水性の高い被膜をガラス等の基材上に形成させる等の手段がとられている。しかしな がら、当該被膜の寿命は永久的ではないので、使用中に被膜の撥水性又は滑水性 は初期の性能を維持できない場合が発生しうる。このような場合、劣化した被膜上、 又は当該被膜を除去した基材上に処理剤を塗布して撥水性又は滑水性の機能を回 復させることが要求される。
[0003] そして、撥水性、滑水性の機能と耐久性とを満足させるために、処理剤を基材に塗 布後、 100°C以上で加熱することが望ましいが、車両等に組み付けられた窓ガラスに 対して室温程度の処理で被膜を形成させる場合には、処理剤を工夫する必要が生じ る。
[0004] 特許文献 1では、パーフルォロアルキルシラン、オルガノポリシロキサン等を有する 車両ガラス用表面処理剤が開示され、当該処理剤にて室温で乾燥して形成された 被膜は、撥水性、滑水性に優れ、ジャダ一の発生を抑制することが示されている。
[0005] し力しながら、このような処理剤力も得られる被膜の撥水性、滑水性及び耐久性は、 処理剤中のパーフルォロアルキルシランやオルガノポリシロキサンの濃度や反応性 によって大きく変化する。又、このような処理剤を用いると、処理後に被膜の形成に関 与しな力つた撥水性、滑水性等の機能を生じせしめる機能成分が余剰分として乾固 するので、得られる被膜の透光性、撥水性、滑水性等の機能に悪影響を与える。そ
して、布等の払拭で該余剰分を除去する際、除去のし易さは、パーフルォロアルキル シランやオルガノポリシロキサンの処理剤中の濃度や反応性に依存する。しかしなが ら、特許文献 1ではこれらの点にっ 、ての検討はなされて ヽな 、。
[0006] 特許文献 2では、末端に加水分解可能な官能基を有し、他端にフルォロアルキル 基を有するシリコーンを酸、水等を含有する溶液に混合してなる処理剤が開示され、 当該処理剤にて得られる被膜は、撥水性、滑水性に優れることが示されている。しか しながら、特許文献 2で開示されている処理剤は、基材に塗布後、 100°C以上の加 熱を必要とするので、車両等に組み付けられた窓ガラスに対して被膜を形成させる場 合や、すでに処理されている被膜の撥水性、滑水性を回復させる場合には、不向き である。
[0007] また、本出願人による特許文献 3では、オルガノポリシロキサンに反応性基をもつジ メチルシリコーンジオールを用いて、基材との化学的な結合を形成し、撥水性、滑水 性を保ちつつ、耐久性を向上することが開示されている。
[0008] 前記したような処理剤力 得られる被膜の撥水性、滑水性及び耐久性は、処理剤 中のパーフルォロアルキルシランやオルガノポリシロキサンの濃度や反応性によって 大きく変化する。窓ガラスやサイドガラス等において、 50 1の水滴が転落する傾斜 角度 (以後転落角と呼ぶ)が 20° 以下、好ましくは 15° 以下となるような滑水性を該 物品が有していると、走行時の視認性が格別〖こ向上する。特許文献 1で開示された ような処理剤は、被膜の形成が容易である等の利点があるが、被膜の撥水性、滑水 性等の機能性と被膜の耐久性はトレードオフの関係にあるため、両者を満たす被膜 の達成は容易ではない。
[0009] 他方、撥水性被膜の耐久性を向上せしめる方法として、ガラス基板上にテトライソシ ァネートシランによる下地膜を形成し、その上にフルォロカーボン基を有する側鎖を 一つ以上有するアルコキシシラン系撥水剤でなる塗布液を塗布することで耐久性に 優れる撥水性物品が得られることが開示されている (本出願人による特許文献 4)。
[0010] 特許文献 5では、ガラス、セラミックス、プラスチック、金属等の基材表面に、クロロシ リル基を分子内に有する物質をアルコール系溶媒に溶解して反応させた下地処理 液を乾燥せしめてなる下地膜、すなわちプライマー層を形成させ、このプライマー層
の上に撥水、撥油、親水、防曇等の機能性薄膜を形成することで、プライマー層を介 して機能性薄膜を強固に基材に結合させることが開示されている。
[0011] そして該文献では、クロロシリル基を分子内に有する物質とアルコール系溶媒との 混合直後から 30分以内に基材に塗布することで、プライマー層でのシラノール基の 形成の効率ィ匕が図られている。
特許文献 1:特開平 2— 233535号公報
特許文献 2 :特開 2000— 144056号公報(米国特許 6, 403, 225号)
特許文献 3:特開 2001— 026463号公報
特許文献 4:特開平 9 194237号公報
特許文献 5 :国際公開 1998Z40323号のパンフレット
発明の概要
[0012] 本発明では、例えば既存の車両の窓等に後付けで被膜を形成できるような、加熱 工程を実施しなくても、処理剤の塗布で撥水性、滑水性及び耐久性に優れる被膜を 形成でき、さらに処理後に被膜の形成に関与しな力つた撥水性、滑水性等の機能を 生じせしめる機能成分による余剰な乾固物の除去が容易な処理剤を提供することを 第 1の課題とする。
さらに、本発明では、滑水性物品を車両用の窓ガラス、サイドガラス等に適用した場 合に、物品に水が接触する環境であっても、物品を通しての視認性に対して弊害を 少なくするような滑水性を有し、且つ耐泥水研磨性、耐光性に優れる滑水性物品を 得ることが可能な滑水性物品の製法を提供することを第 2の課題とする。
本発明の目的は、上記の第 1、第 2の課題の少なくとも 1つを解決することである。 本発明の第 1の特徴に依れば、本発明の滑水性被膜を得るための処理剤は、少な くとも一つの末端に加水分解可能な官能基を 2個又は 3個有し、且つジメチルシロキ サンユニット(Si (CH ) O)の数が 30〜400である直鎖状ポリジメチルシロキサン、及
3 2
び加水分解可能な官能基を有し、且つフルォロカーボンユニット(CF又は CF )の
2 3 数が 6〜 12であるフルォロアルキルシラン、そして有機溶媒、酸、及び水を有する溶 液を混合してなる処理剤が提供される。この処理剤は、処理剤の総量に対し、重量 濃度で前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが 0. 2〜3. 0重量%、前記フルォロアル
キルシランが 0. 2〜2. 0重量%、さらに、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フ ルォロアルキルシランとの総量が 0. 5〜3. 5重量%混入されたことを特徴とする。 ( 以降、本明細書において、直鎖状ポリジメチルシロキサン、フルォロアルキルシラン の双方を示す場合、「機能成分」と表記する。また、直鎖状ポリジメチルシロキサンと フルォロアルキルシランとの総量を示す場合、「機能成分の総量」と表記する。 ) 本発明の第 2の特徴に依れば、基材上に滑水性被膜が形成された滑水性物品の製 法が提供される。この製法は、官能基を 4個有するケィ素化合物が添加された溶液を 基材に塗布し、該ケィ素化合物と基材とを結合させるとともに、該ケィ素化合物由来 のシラノール基が形成されたプライマー層を形成する工程、片側末端のみに加水分 解可能な官能基を少なくとも 2有し、且つジメチルシロキサンユニット(Si (CH ) O)の
3 2 平均繰り返し単位数が 20乃至 50である(常用対数で 1. 3乃至 1. 7である)直鎖状ポ リジメチルシロキサン、加水分解可能な官能基を有し、且つフルォロカーボンユニット (CF又は CF )の数が 1乃至 12であるフルォロアルキルシラン、そして、有機溶媒、
2 3
酸、及び水を有する溶液を混合してなる処理剤を前記プライマー層に塗布し、固化さ せることで滑水性被膜を形成する工程とからなることを特徴とする。
上記の第 1、第 2の課題はそれぞれ本発明の第 1、第 2の特徴によって解決される。 本発明の第 1、第 2の特徴を組み合わせてもよい。その場合、滑水性被膜を形成する ために、第 1の特徴による処理剤を第 2の特徴による滑水性物品の作製法において 使用してちょい。
図面の簡単な説明
[0013] [図 1]本発明の第 1の特徴による実施例 1における処理剤の調製手順を示す図である
[図 2]本発明の第 2の特徴による実施例 1における処理剤の調製手順と各薬液の混 入割合 (重量比)を示す図である。
詳細な説明
[0014] 以下に、本発明の第 1、第 2の特徴の順番で詳述する。まず、本発明の第 1の特徴 を詳述する。簡略化のために、逐一第 1の特徴と明記することを省略する。
[0015] 前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、滑水性に優れジメチルシロキサン鎖を有す
るので、得られる被膜の滑水性を向上させる。一方、前記フルォロアルキルシランは 、耐久性に優れたフルォロアルキル鎖を有するので、得られる被膜の耐久性を向上 させる。
[0016] 前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、少なくとも一つの末端に加水分解可能な官 能基を 2個又は 3個有し、前記フルォロアルキルシランも加水分解可能な官能基を有 する。加水分解可能な官能基は、処理剤に含まれる酸と水によって加水分解し、反 応性の高いシラノール基を形成する。これにより処理剤を基材に塗布すると、基材表 面とシラノール基が反応し、該直鎖状ポリジメチルシロキサン及び該フルォロアルキ ルシランは基材と強固に結合し、結果として得られる滑水性被膜の耐久性が改善す る。
[0017] さらに又、前記酸と水は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンや前記フルォロアルキ ルシランの加水分解可能な官能基を加水分解させて基材と結合可能なシラノール基 を生成させる効果がある。
[0018] さらに本発明の滑水性被膜を得るための処理方法は、処理剤を基材に塗布するェ 程、処理剤が塗布された基材を乾燥する工程、及び乾燥後に遊離状態にある被膜 形成に関与しなカゝつた未反応の又は加水分解した若しくは縮合した機能成分 (以降 「余剰分」と表記する)を除去する工程を有することを特徴とする。
[0019] 本発明の滑水性被膜を得るための処理剤は、基材に処理後、乾燥させることで優 れた撥水性、滑水性及び耐久性を示す。このため、車両等に組み付けられた窓ガラ ス、サイドミラーのように熱処理が実施できな ヽ基材へ処理するための処理剤として 最適である。さらに、処理後の余剰分の除去が容易であることから、作業の負荷が小 さい。
[0020] 本発明の処理剤に使用される直鎖状ポリジメチルシロキサンは、ジメチルシロキサ ンユニット(Si (CH ) O)の数を 30〜400とすることが重要である。
3 2
[0021] 前記直鎖状ポリジメチルシロキサンのジメチルシロキサンユニット数力 00を超える と、直鎖状ポリジメチルシロキサンの加水分解可能な官能基の数がジメチルシロキサ ンユニットに対して相対的に減少することになり、ポリジメチルシロキサンの反応性が 低下する。この結果、得られる被膜は、基材との結合が弱くなり、被膜の耐光性ゃ耐
泥水研磨性が低下し、得られる滑水性被膜の劣化が早くなる。
[0022] 本発明の処理剤を用いて作製した滑水性被膜を有する基材は屋外で使用されるこ とが多ぐ太陽光に暴露される機会が多い。そして、砂埃が付着する機会が多いので 、清掃時に雑巾やワイパー等での払拭時に泥水研磨されることになる。耐光性ゃ耐 泥水研磨性に優れる被膜の形成は、実用の観点から非常に重要であり、車両の窓に 被膜を形成するにあたっては、これらは特に重要となる。
[0023] 一方、本発明の処理剤を基材に処理すると、処理剤中の機能成分の加水分解可 能な官能基と基材表面に存在するシラノール基に代表される水酸基等の反応性基 が反応して結合することにより機能成分が基材に固定される。従って、該ユニット数が 少なくなると、基材上に固定されるジメチルシロキサンユニット数が減少することにな る。本発明での検討の結果、形成される被膜の耐泥水研磨性は、該ユニット数に影 響されることが判明した。そして、該ユニット数を 30以上とするとこれら特性が顕著に 向上し、得られる被膜の長期使用に奏功する。
[0024] 又、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、少なくとも一つの末端に加水分解可能 な官能基を 2個又は 3個有することが重要である。両末端の加水分解可能な官能基 の数が 1個以下である場合、該ポリジメチルシロキサンの反応性が大幅に低下し、基 材との結合が弱くなる。これにより得られる滑水性被膜の耐光性が低下し、被膜の劣 化が早くなるので好ましくな!/、。
[0025] さらに、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、処理剤の総量に対し 0. 2〜3. 0重 量%混入されることが重要である。一般的に撥水剤としては、パーフルォロアルキル シランが機能成分に用いられているが、これは滑水性が低ぐ 50 1の水滴が滑落で きる最小傾斜角度 (以降、転落角と表記する)も 25〜27° と大きい。
[0026] 滑水性被膜を実際に使用するあたり、滑水性の指標となるこの転落角が 20° 前後 で、水滴の被膜からの滑落性、又は飛散性に違いがあることが体感される。そして、 滑水性被膜を車両の窓に使用した場合には、このことは顕著に体感される。
[0027] そして、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン力 処理剤の総量に対し 0. 2重量%未 満の場合、得られる被膜の転落角が 20° を超えるので、被膜の滑水性が低いものと なる。
[0028] 又、処理剤を基材に塗布、そして乾燥後には、余剰分が乾固物となって基材上に 残留する。処理剤の総量に対する前記直鎖状ポリジメチルシロキサンの濃度が 3. 0 重量%を超えると、被膜形成の際、乾固物の量が増加し、この除去工程に負荷がか かり、時間を要するようになる。この長時間の払拭は、被膜を擦傷する可能性を高め 、滑水性、耐久性等に悪影響を与える危険性を高める。
[0029] さらには、処理剤の使用環境を考慮すると、この除去工程は、手作業による払拭で ある場合が多いので、除去工程の時間(負荷)が大きい場合には、結果として、乾固 物を除去しきれず、被膜上に残留する場合が多くなる。余剰分が残留すると、水滴が 余剰分に引つ力かりスムーズに移動できなくなるため、滑水性が低下する。さらに、余 剰分は白くまだらに被膜表面に残留するため、被膜の透光性の低下をもたらす。
[0030] 除去工程について、普通乗用車のフロントウィンドウに処理剤を塗布、乾燥後に、 紙タオル、布、ワイパー等を用いる手作業による払拭を行って検討したところ、除去 工程の時間が 6分を超えると相当な疲労を体感し、余剰分の除去が十分行えなくな ることが判明した。
[0031] そして、検討の結果、処理剤の総量に対する前記直鎖状ポリジメチルシロキサンの 濃度を 3. 0重量%以下とすれば、上記点についても考慮した処理剤とすることがで きることがわ力つた。又、上記除去工程は、より短時間となることが好ましぐ具体的に は 3分以内であればなおよ 、。この点を考慮すると前記直鎖状ポリジメチルシロキサ ンは、処理剤の総量に対し 2. 5重量%以下にすることが好ましい。
[0032] 前記直鎖状ポリジメチルシロキサンとしては、下記一般式 [1]で示されるポリジメチ ルシロキサンが好適に用いられる。
[0033] [化 1]
X
1 a(H
3C)
3.
a Si - [1]
ここで、 X
1及び X
2は、それぞれ、 1価の加水分解可能な官能基であり、 A
1及び A
2は、 それぞれ、 2価の炭化水素基、一(CH )— NH— CO— O—基([i]は 0〜9の整数)
、若しくは、酸素である。又、 [n]は 30〜400の整数でジメチルシロキサンユニットの 数を表す。さらに、 [a]及び [b]は、それぞれ、 0〜3の整数であり、 [a]又は [b]の少 なくとも一方は 2又は 3でなければならない。
[0034] 又、前記一般式 [1]で示されるポリジメチルシロキサンの A1及び A2は、加水分解可 能な官能基と撥水性や滑水性を発現するジメチルシロキサン鎖を繋ぐ部位である。 従って、この部位の安定性が低下すると、滑水性被膜からジメチルシロキサン鎖が容 易に脱落するようになり、被膜の耐久性が低下する。このことから、前記一般式 [1]で 示されるポリジメチルシロキサンの A1及び A2は安定性に優れる 2価の炭化水素基や 酸素が好ましい。
[0035] 又、本発明の処理剤に使用される前記フルォロアルキルシランは、加水分解可能 な官能基を有し、さらに分子中にフルォロカーボンユニット(CF又は CF )の数が 6
2 3
〜 12であるパーフルォロアルキル基(CF (CF ) 一)またはパーフルォロアルキレ
3 2 t-1
ン基(一(CF ) 一)を有するものが用いられる。フルォロカーボンユニット(CF又は C
2 u 2
F )の数が増加すると、得られる滑水性被膜の耐光性ゃ耐泥水研磨性が増加する。
3
ここで、前記 t、及び Uは整数を表している。
[0036] しかしながら、フルォロカーボンユニットの数が増加すると、該フルォロアルキルシラ ンの凝固点が常温以上にまで上昇するため、機能成分が凝固しやすくなつて塗布が 困難になるほか、該フルォロアルキルシランが余剰分となった場合には、これらが基 材表面により強固に固着するようになり、余剰分の除去に要する負荷が増加する。
[0037] 従って、得られる被膜の耐光性ゃ耐泥水研磨性を向上させ、且つ処理剤の塗布を 容易にせしめ、さらに乾燥後の余剰分を容易にせしめ、普通乗用車のフロントウィン ドウにおける余剰分の除去に要する時間を 6分以下にするためには、フルォロカーボ ンユニットの数は 6〜 12とすることが重要である。
[0038] さらに又前記フルォロアルキルシランは、その混入量を、処理剤の総量に対し、重 量濃度で 0. 2〜2. 0重量%とすることが重要である。 0. 2重量%未満では耐光性や 耐泥水研磨性が著しく低下する。又、 2. 0重量%を超えると滑水性が大幅に低下し 、転落角が 20° を超える。そして、より高い滑水性 (転落角; 18° 以下)と耐久性を 得るためには、その混入量を、重量濃度で 0. 5〜1. 6重量%とすることが好ましい。
[0039] 前記フルォロアルキルシランとしては、下記一般式 [2]で示される片側末端に加水 分解可能な官能基を有するフルォロアルキルシランや下記一般式 [3]で示される両 側末端に加水分解可能な官能基を有するフルォロアルキルシランが好適に用いられ る。
[0040] [化 2]
CF3(CF2)m.1CH2CH2Si(CH3)3.pY1 p [2] ここで、 Y1は 1価の加水分解可能な官能基である。さらに、 [m]は 6〜12の整数であ り、フルォロカーボンユニット(CF又は CF )の数を表す。さらに、 [p]は 1〜3の整数
2 3
であり、加水分解可能な官能基の数を表す。
[0041] [化 3]
Y2 q(CH3)3-qSiCH2CH2(CF2)mCH2CH2Si(CH3)3-rY3r [3] ここで、 Y2及び Y3は、それぞれ、 1価の加水分解可能な官能基である。さらに、 [m] は 6〜12の整数であり、フルォロカーボンユニットの数を表す。さらに、 [q]及び [r]は 、それぞれ、 1〜3の整数である。
[0042] 前記フルォロアルキルシランとしては、片側末端に加水分解可能な官能基を有す るフルォロアルキルシランとして CF (CF ) CH CH Si(OCH ) 、 CF (CF ) CH
3 2 11 2 2 3 3 3 2 11 2
CH SiCH (OCH )、 CF (CF ) CH CH Si (CH ) OCH、 CF (CF ) CH CH
2 3 3 2 3 2 11 2 2 3 2 3 3 2 9 2 2
Si (OCH )、 CF (CF ) CH CH SiCH (OCH )、 CF (CF ) CH CH Si(CH )
3 3 3 2 9 2 2 3 3 2 3 2 9 2 2 3 2
OCH、 CF (C) CH CH Si (OCH )、 CF (CF ) CH CH SiCH (OCH ) 、 CF
3 3 7 2 2 3 3 3 2 7 2 2 3 3 2 3
(CF ) CH CH Si(CH ) OCH、 CF (CF ) CH CH Si (OCH )、 CF (CF ) C
2 7 2 2 3 2 3 3 2 5 2 2 3 3 3 2 5
H CH SiCH (OCH ) 、 CF (CF ) CH CH Si (CH ) OCH、 CF (CF ) CH C
2 2 3 3 2 3 2 5 2 2 3 2 3 3 2 11 2
H SiCl、 CF (CF ) CH CH SiCH CI、 CF (CF ) CH CH Si (CH ) Cl、 CF (
2 3 3 2 11 2 2 3 2 3 2 11 2 2 3 2 3
CF ) CH CH SiCl、 CF (CF ) CH CH SiCH CI、 CF (CF ) CH CH Si (CH
2 9 2 2 3 3 2 9 2 2 3 2 3 2 9 2 2 3
) Cl、 CF (CF ) CH CH SiCl、 CF (CF ) CH CH SiCH CI、 CF (CF ) CH
2 3 2 7 2 2 3 3 2 7 2 2 3 2 3 2 7 2
CH Si (CH ) Cl、 CF (CF ) CH CH SiCl、 CF (CF ) CH CH SiCH CI、 CF
2 3 2 3 2 5 2 2 3 3 2 5 2 2 3 2 3
(CF ) CH CH Si(CH ) CI等のものが使用でき、さらに、両側末端に加水分解可
2 5 2 2 3 2
能な官能基を有するフルォロアルキルシランとしては、(CH O) SiCH CH (CF )
3 3 2 2 2 12
CH CH Si(OCH )、 (CH O) CH SiCH CH (CF ) CH CH SiCH (OCH )
2 2 3 3 3 2 3 2 2 2 12 2 2 3 3 2
、 CH O (CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH ) OCH、 (CH O) SiCH CH
3 3 2 2 2 2 12 2 2 3 2 3 3 3 2
(CF ) CH CH Si (OCH ) 、 (CH O) CH SiCH CH (CF ) CH CH SiCH (
2 2 10 2 2 3 3 3 2 3 2 2 2 10 2 2 3
OCH )、 CH O (CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH ) OCH、 (CH O) Si
3 2 3 3 2 2 2 2 10 2 2 3 2 3 3 3
CH CH (CF ) CH CH Si (OCH ) 、 (CH O) CH SiCH CH (CF ) CH CH Si
2 2 2 8 2 2 3 3 3 2 3 2 2 2 8 2 2
CH (OCH ) 、 CH 0(CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH ) OCH、 (CH
3 3 2 3 3 2 2 2 2 8 2 2 3 2 3 3
O) SiCH CH (CF ) CH CH Si (OCH )、 (CH O) CH SiCH CH (CF ) CH
3 2 2 2 6 2 2 3 3 3 2 3 2 2 2 6 2
CH SiCH (OCH )、 CH O (CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH ) OCH、
2 3 3 2 3 3 2 2 2 2 6 2 2 3 2 3
CI SiCH CH (CF ) CH CH SiCl、 CI CH SiCH CH (CF ) CH CH SiCH
3 2 2 2 12 2 2 3 2 3 2 2 2 12 2 2 3
CI、 C1(CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH ) Cl、 CI SiCH CH (CF ) C
2 3 2 2 2 2 12 2 2 3 2 3 2 2 2 10
H CH SiCl、 CI CH SiCH CH (CF ) CH CH SiCH CI、 C1(CH ) SiCH CH
2 2 3 2 3 2 2 2 10 2 2 3 2 3 2 2
(CF ) CH CH Si(CH ) Cl、 CI SiCH CH (CF ) CH CH SiCl、 CI CH SiC
2 2 10 2 2 3 2 3 2 2 2 8 2 2 3 2 3
H CH (CF ) CH CH SiCH CI、 C1(CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH )
2 2 2 8 2 2 3 2 3 2 2 2 2 8 2 2 3 2
Cl、 CI SiCH CH (CF ) CH CH SiCl、 CI CH SiCH CH (CF ) CH CH SiC
3 2 2 2 6 2 2 3 2 3 2 2 2 6 2 2
H CI、 C1(CH ) SiCH CH (CF ) CH CH Si(CH ) CI等が使用できる。
3 2 3 2 2 2 2 6 2 2 3 2
[0043] ただし、両側末端に加水分解可能な官能基を持ったフルォロアルキルシランは、両 側末端に加水分解可能な官能基を持つが故に、縮合が進みやすぐこのため処理 剤の塗布が困難となる傾向がある。さらに、余剰分となった場合には縮合した余剰分 となりやすいため余剰分は基材に強固に固着し、乾燥後の余剰分の除去が困難とな る。この点を考慮すると、片側末端のみに加水分解可能な官能基を有するフルォロ アルキルシランとすることが好まし 、。
[0044] 又、機能成分での加水分解可能な官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロボ キシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロ口基又はイソシァネート 基等を用いることができる。ただし、加水分解可能な官能基の反応性が高すぎると、 処理剤を調合する時の取扱 、が難しくなるだけでなぐ処理剤のポットライフが短くな る。一方、反応性が低すぎると、加水分解反応が十分進行しなくなり、生成するシラノ ール基の量が十分でなくなるため、基材と得られる滑水性被膜の結合が十分でなく
なり、被膜の耐久性が低くなる。取扱いの容易さ、処理剤のポットライフ、得られる滑 水性被膜の耐久性を考慮すると、加水分解可能な官能基としてはアルコキシ基が好 ましぐ中でもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
[0045] 又、機能成分の総量は、処理剤の総量に対し、重量濃度で 0. 5〜3. 5重量%混 入されることが重要である。 0. 5重量%未満では得られる被膜の耐光性ゃ耐泥水研 磨性が低下する。一方、 3. 5重量%を超える場合では余剰分の除去性が低下し、処 理剤の塗布、乾燥後の余剰分の除去工程において、紙タオル、布、ワイパー等を用 いる手作業による払拭時間が普通乗用車のフロントウィンドウにおいて 6分を超える。 そして、被膜の耐久性をより高いものとし、処理剤の塗布'乾燥後の余剰分の除去を 容易なものとするためには、 0. 8〜3. 0重量%とすることが好ましい。
[0046] 又、前記ポリジメチルシロキサンは、少なくとも一つの末端に加水分解可能な官能 基を 2個又は 3個有していれば良いが、そのようなものとして、加水分解可能な官能 基を片側末端のみに有するもの、あるいは、両側末端に加水分解可能な官能基を有 しているものを用いることができる。片側末端のみに反応性基を有するものは、他端 が疎水性の高いアルキル基であるため、より転落性の向上が望める。また、生成する シラノール基の数が少なく反応性が低い。このため、縮合した余剰分の生成が少な いので、結果、被膜に強固に固着する乾固物の生成が少なぐ塗布、乾燥後の余剰 分の除去が容易となる傾向があるが、基材とも反応しに《なる。従って、片側末端の みに加水分解可能な官能基を有するものを使用する場合は、処理剤中の該ポリジメ チルシロキサンや前記フルォロアルキルシランの量を多くすることが好ましぐ具体的 には処理剤の総量に対し、その混入量を、重量濃度で直鎖状ポリジメチルシロキサ ンを 0. 5〜2. 5重量0 /0、フルォロアルキルシランを 0. 6〜1. 6重量0 /0、さらに、機能 成分の総量を 1. 2〜3. 0重量%とすることが好ましい。
[0047] 他方、両側末端に加水分解可能な官能基を有するものは反応性が高くなる。この ため、基材と強固に結合しやすぐ結果として耐久性に優れた滑水性被膜が得られ るが、縮合された余剰分が生成しやすいので、処理剤を塗布 ·乾燥後の余剰分の除 去性が悪くなる傾向がある。従って、両側末端に加水分解可能な官能基を有するも のを使用する場合は、処理剤中の該ポリジメチルシロキサンや前記フルォロアルキル
シランの量を少なくすることが好ましぐ具体的には処理剤の総量に対し、その混入 量を、重量濃度で直鎖状ポリジメチルシロキサンが 0. 2〜2. 0重量%、フルォロアル キルシランが 0. 5〜1. 4重量%、さらに、機能成分の総量が 0. 8〜2. 5重量%とす ることが好ましい。
[0048] 処理剤に用いる溶媒には、他の成分(直鎖状ポリジメチルシロキサン、フルォロアル キルシラン、水、酸)を溶解させる有機溶媒を用いることができ、これらにはェチルァ ルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルェチルケトン、メチル イソブチルケトン等のケトン類、酢酸ェチル、酢酸ブチル等のエステル類、へキサン、 トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒類、ジェチルエーテル、ジイソプロピ ルエーテル等のエーテル類やそれらの混合物を用いることが好ましい。中でも、メチ ルェチルケトン、酢酸ェチル、へキサン、ジェチルエーテル及びジイソプロピルエー テルの中力 選ばれる一種以上の溶媒とエチルアルコールやイソプロピルアルコー ル等の低級アルコールの混合溶媒は、直鎖状ポリジメチルシロキサン、フルォロアル キルシラン、水及び酸の溶解性が高ぐさらに、処理剤の塗布性 (塗り伸ばしやすさ) や処理剤の乾燥時間 (作業時間)が適度になるので特に好ましい。
[0049] 又、本発明の処理剤に使用される水は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン及び前 記フルォロアルキルシランが有する加水分解可能な官能基の数に対して、分子数で
1倍〜 100倍とするのが好ましい。 1倍未満では、加水分解反応が進行せず、シラノ ール基が十分に生成しにくぐ得られる滑水性被膜の耐久性が低下し、好ましくない 。又、 100倍を超えると、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン、前記フルォロアルキル シラン及び水が処理剤内で均一に溶解することが難しくなり好ましくない。又、水の量 が増えると、反応速度が大きくなり、結果として処理剤のポットライフが短くなる。従つ て、ポットライフを考慮すると 50倍以下であることがより好ましい。
[0050] さらに処理剤に使用される酸は、機能成分の加水分解反応を促進させる触媒的な 役割をし、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸、その他有機酸等を使用することができる。そして 、前記水と混合した状態で pH値力^〜 5、好ましくは、 0〜2となるように混合される。
[0051] 次に滑水性被膜を得るため処理剤の好ま 、調製方法につ!、て説明する。滑水性 被膜を得るため処理剤は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルォロアルキ
ルシランと溶媒の混合物に、加水分解反応を起こさせるための水と酸を添加、混合し 、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルォロアルキルシランとを加水分解させ ることにより得られる。ここで、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシラン とを先に混合するのは、両成分を処理剤中に均質に混合させるためである。しかしな がら、酸、水、直鎖状ポリジメチルシロキサン及びフルォロアルキルシランを同時に混 合しても良い。
[0052] 次に、得られた処理剤を使用して、滑水性被膜を得る方法について説明する。
[0053] 上記で得られた塗布液を基材表面に塗布する塗布方法としては、手塗り、ノズルフ ローコート法、デイツビング法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フ ローコート法、スピンコート法、それらの併用等各種被膜の形成方法が適宜採用し得 る。
[0054] 処理剤が塗布される基材は、特に限定されるものではな ヽが、例えば、ガラス基材 の場合には、建築物用窓ガラスや鏡に通常使用されているフロート板ガラス、又は口 ールアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用 できる。当該板ガラスには、無色のもの、着色のもの共に使用可能で、他の機能性膜 との組み合わせ、ガラスの形状等に特に限定されるものではない。平板ガラス、曲げ 板ガラスはもちろん風冷強化ガラス、化学強化ガラス等の各種強化ガラスの他に網 入りガラスも使用できる。さら〖こは、ホウケィ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラ ス、低膨張結晶化ガラス、ゼロ膨張結晶化ガラス等の各種ガラス基材を用いることが できる。
[0055] 本発明の第 1及び第 2の特徴において、ガラス基材は単板で使用できるとともに、 複層ガラス、合わせガラス等としても使用できる。又、前記被膜の形成は基材の片面 であっても両面であってもかまわないし、基材表面の全体であっても、一部分であつ てもかまわない。
[0056] 本発明の処理剤カゝら得られる被膜は、可視光透過性に優れるものである力 可視 光透過性を要求されない用途であっても使用することができ、その場合、セラミックス 、金属等の基材を使用してもよい。
[0057] 又、本発明の処理剤は特に加熱を必要としないので、ポリカーボネート、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリメチルメタアタリレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、その他の プラスチック基材を使用することが可能である。
[0058] さらに、基材には、官能基を 4個有するケィ素化合物が添加された溶液を基材に塗 布し、そして固化することで前記ケィ素化合物由来のプライマー層が形成されたもの を使用しても良い。該プライマ—層は、被膜との結合サイト、すなわちシラノール基の 数を基材そのものに比べて、多くすることができる。力べして、該プライマ一層が形成 された基材を使用して形成された滑水性被膜は、更なる耐久性向上が期待できる。 そして、前記プライマー層は、単分子でなる層としてもよい。
[0059] 前記官能基を 4個有するケィ素化合物としては、テトライソシァネートシラン、テトラ ノ、ロゲンィ匕シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を使用できる。そして、 これら化学種を、溶媒に添加し、基材表面に塗布するための溶液を調製する。該溶 媒には、アルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアル コール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、又は、パラフィン系炭化水素 や芳香族炭化水素の一般有機溶剤、例えば n—へキサン、トルエン、クロ口ベンゼン 等、又はこれらの混合物を使用することができる。
[0060] 前記溶液の pHを 0〜5と調整するために、塩酸、硝酸、酢酸などの酸を導入しても よぐ前記化学種の加水分解反応を促進させるために少量の水を導入してもよい。又 、プライマ-層を効率的に形成させるために、前記化学種を、溶媒に対して、 0. 5重 量%乃至 2重量%、好適には 0. 7重量%乃至 1. 5重量%、より好適には 0. 9重量% 乃至 1. 2重量%添加し、前記溶液を調整することが好ましい。
[0061] 上記塗布液をガラス基材表面に塗布する方法としては、スプレーコート法、バーコ ート法、ロールコート法、スピンコート法、刷毛塗り、ディップコート法等の公知手段を 使用することができる。そして、プライマ—層の形成のしゃすさ、溶液の調製のしゃす さ、そして、シラノール基の形成数等を考慮すると、前記化学種には、テトライソシァ ネートシランを使用することが好ましい。
[0062] 基材との密着性を高めるために、前記溶液を基材に塗布後に 50°C〜350°C、好適 には、 100°C〜300°Cで焼成してもよい。そして、プライマ—層形成後すぐに本発明 の処理剤を塗布し滑水性被膜を形成してもよい。又、プライマ—層が形成された基材
を保管、流通等がされた後に本発明の処理剤を基材に塗布する場合、プライマー層 上のシラノール基が、有機物や大気中に存在する水分等の影響で消失し、失活する ことが起こりうるので、失活したプライマ一層への酸性溶液の接触、又は紫外線照射 等により、シラノール基を復活させ、プライマー層を再度活性な状況とすることが好ま しい。
[0063] 次に処理剤を基材に塗布後の処理について述べる。基材に処理剤を塗布後、乾 燥させることで、前記ポリジメチルシロキサン及び前記フルォロアルキルシランを基材 と結合させる。乾燥手段は、風乾でよぐ室温で、例えば、 15°C〜30°C、相対湿度 3 0%〜60%の環境で、 5分間〜 20分間で放置するだけでよい。乾燥時間を短くする ために、汎用のドライヤー等で熱風を吹き付けてもよぐ基材を加熱できる環境であ れば、 80°C〜250°Cで加熱してもよい。
[0064] 最後に、余剰分が乾固物となって被膜上に残留するので、この余剰分を有機溶剤 で湿らした紙タオルや布および Zまたは乾いた紙タオルや布で払拭することにより滑 水性被膜が形成された基材が得られる。
[0065] 本発明の第 1及び第 2の特徴における滑水性とは、実施例の評価方法で述べるよう な方法で評価されるもので、サンプル表面上に 50 1の純水を滴下した後、該サンプ ルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を測定することで評価す るものである。尚、該傾斜角度を転落角(° )とし、転落角は協和界面科学製 CA— A 型を用いて大気中(約 25°C)で測定した。
[実施例]
[0066] 以下に本発明の第 1の特徴に関する実施例について説明する。尚、本発明の第 1 の特徴はこれらの実施例に限定されるものではな 、。滑水性被膜の評価方法を以下 に示す。
[0067] 〔滑水性被膜の評価方法〕
[0068] (1)接触角
滑水性被膜を有するサンプル表面に、純水約 2 1を置いたときの水滴とサンプル 表面とのなす角を接触角計で測定した。尚、接触角計には協和界面科学製 CA—X 型を用い、大気中(約 25°C)で測定した。
[0069] (2)転落角
サンプルを水平に保持した状態で、サンプル表面上に 50 1の純水を滴下した後、 サンプルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を転落角(° )とし た。尚、転落角は協和界面科学製 CA— A型を用いて大気中 (約 25°C)で測定した。 転落角の初期性能が、 20° 以下のものを滑水性の指標に関し合格 (表 1又は表 2中 で〇と表記)、 18° 以下のものを特に優れるとした (表 1又は表 2中で ©と表記)。尚、 20° 超のものは不合格とし、表 1又は表 2中にて Xと表記した。
[0070] (3)余剰分の除去性
処理剤を塗布して風乾させた後、目視で白くまだらに残留して 、る余剰分をイソプ 口ピルアルコールを湿らした紙タオル(品名:キムタオル)で拭き上げて透明なサンプ ル (普通自動車のフロントウィンドウ)を作製する際に、透明サンプルを得るのに要す る時間を測定した。余剰分の除去時間 (拭き取り時間)が 6分以下であるものを合格と した (表 1又は表 2中に〇と表記)。さらに 3分以内で完了するものは特に余剰分の除 去性が特に優れると判断した (表 1又は表 2中で ©と表記)。尚、除去時間に 6分超要 したものは不合格とし、表 1中にて Xと表記した。
[0071] (4)耐泥水研磨性 (セリア研磨性)
ガラス用研磨剤ミレーク A (T) (三井金属鉱業製)を水道水に分散させたセリア懸濁 液(10重量%)を染み込ませた綿布で、サンプル表面を約 1. 5kg/cm2の強さで研 磨した。研磨領域の 70%が親水化するまでの研磨回数 (往復)を評価した。ここでは 、 40回以上を合格 (表 1中又は表 2で〇と表記)、 50回以上を良(表 1中又は表 2で ◎と表記)、 60回以上を優 (表 1又は表 2中で◎ +と表記)とした。尚、 40回未満のも のを不合格とし、表 1又は表 2中で Xと表記した。
[0072] (5)耐光性
メタルノ、ライドランプの強力な UV光を以下の条件でサンプルに 2時間照射した後 の接触角(° )を測定して評価した。ここでは試験後の水滴の接触角が 70° 以上を 合格 (表 1中で〇と表記)、 80° 以上を良(表 1又は表 2中で◎と表記)、 100° 以上 を優 (表 1又は表 2中で◎ +と表記)とした。尚、 70° 未満のものを不合格とし、表 1中 で Xと表記した。
[0073] · ランプ:アイグラフィックス製 MO 15— L312
• ランプ強度: 1. 5kW
• 照度:下記条件における測定値が 128mWZcm2
• 測定装置:紫外線強度計 (ミノルタ製、 UM— 10)
• 受光部: UM— 360
(受光波長域; 310〜400nm、ピーク波長; 365士 5nm) • 測定モード:放射照度測定
[0074] 本発明の処理剤を処理した滑水性被膜が被覆された基材は屋外で使用されること が多ぐ太陽光に暴露される。また、砂埃も付着しやすいため、清掃時の雑巾払拭や 車両用ガラスに使用した場合のガラスの上げ下げ、ワイパー払拭時には乾燥した、あ るいは、水を含んだ砂埃によって表面が研磨される。このようなことを考慮すると、耐 光性ゃ耐泥水研磨性を改善させることは被膜の寿命を長くするためには重要である
[0075] 実施例 1
(1)処理剤の調製
処理剤は、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランを混合して得ら れた混合物に酸性水溶液を添加、攪拌することによって得た。図 1に処理剤の調製 手順と各薬液の混入割合 (重量比)を示す。又、サンプルの作製条件と結果物の評 価結果を表 1に示す。
[0076] 先ず、ジメチルシロキサンユニットの数が 250の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状 ポリジメチルシロキサン〔(CH O) SiCH CH {Si(CH ) O} Si (CH ) CH CH Si
3 3 2 2 3 2 250 3 2 2 2
(OCH )〕;0. 50g、メチルェチルケトン; 48. 85g、フルォロカーボンユニットの数が
3 3
8のフルォロアルキルシラン〔CF (CF ) CH CH i (OCH )〕;0. 80gとイソプロピル
3 2 7 2 2 3 3
アルコール; 48. 85gを混合し、約 5分間攪拌した。次いで、 0. 5N硝酸水溶液; 1. 0 gを添加し、約 2時間室温で攪拌した。以上の方法により、処理剤の総量に対し、混 入された直鎖状ポリジメチルシロキサンの重量濃度(以降「ポリジメチルシロキサン濃 度」と記載する)が 0. 5重量%、処理剤の総量に対し、混入されたフルォロアルキル シランの重量濃度(以降「フルォロアルキルシラン濃度」と記載する)が 0. 8重量%の
処理剤を得た。
[0077] (2)ガラス基板の洗浄
300mm X 300mm X 2mm厚サイズのフロートガラス、又は普通自動車のフロント ウィンドウの表面を研磨液を用いて研磨し、水洗及び乾燥した。なお、ここで用いた 研磨液は、ガラス用研磨剤ミレーク A (T) (三井金属鉱業製)を水に混合した 2wt% のセリア懸濁液を用いた。
[0078] (3)滑水性被膜の形成
上記(1)で調製した処理剤 ; 1. Oml (300mm X 300mm X 2mm厚サイズ)、又は 10ml (フロントウィンドウ)をガラス基板上に滴下し、綿布(商品名;ベンコット)でガラ ス全面に十分引き伸ばした後、 5分程度風乾した。その後、 目視で白くまだらに残留 している余剰分をイソプロピルアルコールで湿らした紙タオルで拭き上げて透明なサ ンプルを得た。
[0079] 上記 [滑水性被膜の評価方法]に記載した要領で評価したところ、表 1に示すとおり 、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角は 18° と良好な水滴転落 性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 50往復を要し、さら に耐光性試験では 2h照射後の接触角が 85° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0080] [表 1]
〔〕0081
) 3〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0082] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 18° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 45往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 80° と高 ぐ耐久性に優れていた。
[0083] 実施例 3
ジメチルシロキサンユニットの数が 100の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(CH O) SiCH CH {Si (CH ) O} Si(CH ) CH CH Si (OCH
3 3 2 2 3 2 100 3 2 2 2 3
) 3〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0084] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 17° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 50往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 84° と高 ぐ耐久性に優れていた。
[0085] 実施例 4
ジメチルシロキサンユニットの数が 50の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(CH O) SiCH CH {Si (CH ) O} Si (CH ) CH CH Si(OCH
3 3 2 2 3 2 50 3 2 2 2 3
) 3〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0086] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 18° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 50往復を要し、さらに耐光性試験では試験後の接触角が 80° と高ぐ 耐久性に優れていた。
[0087] 実施例 5
ジメチルシロキサンユニットの数が 250の両末端ジアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(CH O) (H C) SiCH CH {Si (CH ) O} Si (CH ) CH CH Si(
3 2 3 2 2 3 2 250 3 2 2 2
CH ) (OCH )〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
3 3 2
[0088] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 16° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 50往復を要し、耐久性に優れていた。さらに、耐光性試験では 2h照射
後の接触角が 76° であった。
[0089] 実施例 6
ジメチルシロキサンユニットの数が 250の片末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(CH ) SiO { Si (CH ) O } Si (CH ) CH CH Si (OCH )〕を用
3 3 3 2 250 3 2 2 2 3 3
V、た以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0090] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 16° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 55往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 80° と高 ぐ耐久性に優れていた。
[0091] 実施例 7
フルォロアルキルシラン濃度を 1. 6重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとし た。
[0092] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好で、初期転落角は 2 0° であった。又、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 55往復を要 し、さらに耐光性試験では試験後の接触角が 83° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0093] 実施例 8
フルォロアルキルシラン濃度を 0. 4重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとし た。
[0094] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 18° と良好な水滴転落性を示した。さらに又、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 40往復、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角は 75 ° であった。
[0095] 実施例 9
フルォロカーボンユニットの数が 10のフルォロアルキルシラン〔CF (CF ) CH CH
3 2 9 2
Si (OCH )〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
2 3 3
[0096] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 17° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 50往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角は 106° と
高ぐ耐久性に優れていた。
[0097] 実施例 10
フルォロカーボンユニットの数が 6のフルォロアルキルシラン〔CF (CF ) CH CH
3 2 5 2 2
Si(OCH )〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
3 3
[0098] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好で、初期転落角は 1 8° であった。又、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 45往復を要 し、耐久性に優れていた。又さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角は 74° であ つた o
[0099] 実施例 11
フルォロカーボンユニットの数力 であり、両末端トリアルコキシタイプのフルォロア ルキルシラン〔(CH O) SiCH CH (CF ) CH CH Si (OCH )〕を用いた以外はす
3 3 2 2 2 6 2 2 3 3
ベて実施例 1と同じとした。
[0100] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は良好であり、初期転落角は 20 ° であった。又、セリア研磨試験においても 70%を親水化させるのに 40往復必要で あった。さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角は 88° と高ぐ耐久性に優れてい た。
[0101] 実施例 12
ポリジメチルシロキサン濃度を 1. 3重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした
[0102] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 17° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 45往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 82° と高 ぐ耐久性に優れていた。
[0103] 実施例 13
ポリジメチルシロキサン濃度を 1. 0重量%、フルォロアルキルシラン濃度を 1. 6重 量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランの総量を処 理剤の総量に対して 2. 6重量%とした以外はすべて実施例 6と同じとした。
[0104] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期
転落角は 18° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 45往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 80° と高 ぐ耐久性に優れていた。
[0105] 実施例 14
ポリジメチルシロキサン濃度を 2. 5重量%とした以外はすべて実施例 6と同じとした
[0106] 結果、物性は表 1に示すとおり、良好であった。又初期転落角は 13° と良好な水滴 転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 45往復を要し、 さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 82° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0107] 実施例 15
ポリジメチルシロキサン濃度を 0. 25重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとし た。
[0108] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期 転落角は 18° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水 化させるのに 45往復を要し、さらに耐光性試験では試験後の接触角が 82° と高ぐ 耐久性に優れていた。
[0109] 実施例 16
ポリジメチルシロキサン濃度を 1. 0重量%、フルォロアルキルシラン濃度を 1. 6重 量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランの総量を処 理剤の総量に対して 2. 6重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0110] 結果、物性は表 1に示すとおり、良好であり、初期転落角は 20° であった。又、セリ ァ研磨試験においては 70%を親水化させるのに 45往復を要し、さらに耐光性試験 では試験後の接触角が 81° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0111] 実施例 17
ポリジメチルシロキサン濃度を 0. 25重量%、フルォロアルキルシラン濃度を 0. 4重 量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランの総量を処 理剤の総量に対して 0. 65重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0112] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期
転落角は 18° と良好な水滴転落性を示した。さらに又、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 40往復、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角は 70 ° であった。
[0113] 実施例 18
基材にプライマ—層が形成されたものを使用した以外は、実施例 1と同様とした。基 材上へのプライマー層の形成方法について次に述べる。テトライソシァネートシラン〔 Si(NCO)、松本製薬 (株)製〕 0. 2gを酢酸ェチル〔CH3COOC H〕20gと混合し、
4 2 5
テトライソシァネートシランが 1. 0重量%添加された溶液を得た。該溶液を綿布(商品 名;ベンコット)にしみ込ませ、その綿布でセリア研磨されたガラス基材上を二度塗り にならないよう拭き上げた。その後、室温で 5分程度乾燥させた後、炉内で 180°C、 1 3分間(炉出し時板温 150°C)熱処理し、シリカ膜のプライマ—層が形成されたガラス 基材を得た。
[0114] その後、すぐに実施例 1と同様に処理剤の塗布、拭き上げを行い透明なサンプルを 得た。上記 [高滑水性被膜の評価方法]に記載した要領で評価したところ、表 1に示 すとおり、余剰分の除去性は良好であった。また初期転落角は 20° と良好な水滴転 落性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 70往復を要し、さ らに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 108° と高ぐ耐久性に優れていた。表 2 にプライマ―層が形成された基材を使用して形成されたサンプルの作製条件と結果 物の評価結果を表 1に示す。
[表 2]
〔〕0115
プライマー層を得るための熱処理を 300°Cで 13分間(炉出し時板温 250°C)行った 以外は実施例 18と同様である。結果は、初期転落角は 17° と良好な水滴転落性を 示し、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 75往復を要し、さらに耐 光性試験では 2h照射後の接触角が 102° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0116] 実施例 20
プライマー層を形成後、 3時間大気中に放置した。それ以外は、実施例 18と同様で ある。結果は、初期転落角は 18° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験にお いては 70%を親水化させるのに 65往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の 接触角が 108° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0117] 実施例 21
プライマー層を形成後、 4日間大気中に放置した。その後、基材を 0. 5規定硝酸に 2時間浸漬した。それ以外は、実施例 18と同様である。結果は、セリア研磨試験にお いて 70%を親水化させるのに 65往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接 触角が 106° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0118] 実施例 22
プライマー層を形成後 4日間大気中に放置した。その後、コロナ放電装置を用いて 紫外線照射を行った。それ以外は、実施例 18と同様である。結果は、セリア研磨試 験において 70%を親水化させるのに 65往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射 後の接触角が 98° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0119] 実施例 23
ジメチルシロキサンユニットの数が 30の片末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(H C) SiCH CH {Si(CH ) O} Si(CH ) CH CH Si (CH ) (O
3 3 2 2 3 2 30 3 2 2 2 3
CH )〕を用いた以外は実施例 18と同様である。結果は、転落角は 15° と非常に良
3 2
い値を示しつつ、セリア研磨試験において 70%を親水化させるのに 50往復を要し、 さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 97° と高ぐ耐久性にも優れていた。
[0120] 実施例 24
プライマー層を得るための溶液を塗布後の熱処理を行わなカゝつた以外は、実施例 18と同様とした。結果、セリア研磨試験では 70%親水化するまでの回数は 45往復と
プライマー層を形成しな力 た実施例 1等とほぼ同様であった。
[0121] 実施例 25
プライマー塗布後の熱処理を 70°Cで 13分間(炉出し時板温 50°C)行った以外は、 実施例 18と同様とした。結果、セリア研磨試験では 70%親水化するまでの回数は 55 往復であった。
[0122] 実施例 26
プライマー層を得るため塗布液にぉ 、て、テトライソシァネートシランの添加量を 0. 5重量%とした以外は、実施例 18と同様とした。結果、セリア研磨試験では 70%親水 化するまでの回数は 40往復であった。
[0123] 実施例 27
プライマー層を形成後、 4日間大気中に放置した。それ以外は、実施例 18と同様で ある。結果は、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 50往復、さらに 耐光性試験では 2h照射後の接触角が 90° であった。
[0124] 比較例 1
ジメチルシロキサンユニットの数が 22の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(CH O) SiCH CH {Si (CH ) O} Si (CH ) CH CH Si(OCH
3 3 2 2 3 2 22 3 2 2 2 3
)〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
3
[0125] 結果、物性は表 1に示すとおり、セリア研磨試験において 35往復で 70%が親水化 し、耐久性が低力つた。
[0126] 比較例 2
ジメチルシロキサンユニットの数が 500の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ チルシロキサン〔(CH O) SiCH CH {Si (CH ) O} Si(CH ) CH CH Si (OCH
3 3 2 2 3 2 500 3 2 2 2 3
)〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
3
[0127] 結果、物性は表 1に示すとおり、セリア研磨試験において 35往復で 70%が親水化 し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 63° となり、耐久性が低力つた。
[0128] 比較例 3
フルォロアルキルシラン濃度を 2. 5重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとし
[0129] 結果、物性は表 1に示すとおり、初期転落角は 25° と水滴転落性は低力つた。
[0130] 比較例 4
フルォロアルキルシラン濃度を 0. 1重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとし た。
[0131] 結果、物性は表 1に示すとおり、セリア研磨試験において 20往復で 70%が親水化 し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 50° となり、耐久性が低力つた。
[0132] 比較例 5
フルォロカーボンユニットの数が 1のフルォロアルキルシラン〔CF CH CH Si(OC
3 2 2
H )〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとした。
3 3
[0133] 結果、物性は表 1に示すとおり、セリア研磨試験において 10往復で 70%が親水化 し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 65° となり、耐久性が低力つた。
[0134] 比較例 6
ポリジメチルシロキサン濃度を 3. 5重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした
[0135] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性が悪ぐ容易に透明なものが得ら れなかった。
[0136] 比較例 7
ポリジメチルシロキサン濃度を 0. 1重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした
[0137] 結果、物性は表 1に示すとおり、初期転落角は 23° と水滴転落性は低力つた。
[0138] 比較例 8
ポリジメチルシロキサン濃度を 2. 0重量%、フルォロアルキルシラン濃度を 2. 0重 量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランの総量を処 理剤の総量に対して 4. 0重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0139] 結果、物性は表 1に示すとおり、余剰分の除去性が悪ぐ容易に透明なものが得ら れなかった。
[0140] 比較例 9
ポリジメチルシロキサン濃度を 0. 2重量%、フルォロアルキルシラン濃度を 0. 2重
量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランの総量を処 理剤の総量に対して 0. 4重量%とした以外はすべて実施例 1と同じとした。
[0141] 結果、物性は表 1に示すとおり、セリア研磨試験において 70%を親水化させるのに 25往復、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 55° となり耐久性が低力つた
[0142] 比較例 10
ジメチルシロキサンユニットの数が 250の両末端モノアルコキシタイプ直鎖状ポリジ メチルシロキサン〔CH 0{Si (CH ) O} Si (CH ) OCH〕を用いた以外はすべて
3 3 2 250 3 2 3
実施例 1と同じとした。
[0143] 結果、物性は表 1に示すとおり、耐光性試験では 2h照射後の接触角が 66° となり 耐久性が低力つた。
[0144] 比較例 11
ジメチルシロキサンユニットの数が 250のトリメチル封鎖タイプ直鎖状ポリジメチルシ ロキサン〔CH {Si(CH ) O} Si (CH )〕を用いた以外はすべて実施例 1と同じとし
3 3 2 250 3 3
た。
[0145] 結果、物性は表 1に示すとおり、耐光性試験では 2h照射後の接触角が 61° となり 耐久性が低力つた。
[0146] 以下に本発明の第 2の特徴を詳述する。簡略ィ匕のために、逐一第 2の特徴と明記 することを省略する。
[0147] 発明の概要に記述された本発明の第 2の特徴による固化とは、塗布された処理剤 を乾燥させ、プライマー層と前記直鎖状ポリジメチルシロキサン、又は前記フルォロア ルキルシランとをィ匕学的に結合させることを意味する。
[0148] 前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、物品に主として滑水性を付与するものであり 、その化学種の違いは、物品の特性に大きく影響する。本発明では、滑水性物品を 車両用の窓ガラス、サイドガラス等に適用した場合に、物品に水が接触する環境であ つても、物品を通しての視認性に対する弊害を少なくするような滑水性を有し、すな わち転落角が 15° 以下の滑水性を有する物品を得ることを課題としている。
[0149] 末端部の加水分解性基は、他の化学種、本発明の場合は、プライマー層に形成さ
れたシラノール基と直鎖状ポリジメチルシロキサンとをィ匕学的に結合させるので、物 品の耐久性向上のために設けられる。そして、末端部の加水分解性基を直鎖状ポリ ジメチルシロキサンの片側のみとし、加水分解可能な官能基数を少なくとも 2とし、被 膜とプライマー層の密着性を考慮すると、 3乃至 9とすることが好ましぐさらには 4乃 至 9とすることがより好まし 、。
[0150] ジメチルシロキサンユニット(Si (CH ) O)の平均繰り返し単位数を 20乃至 50 (常
3 2
用対数で 1. 3〜1. 7)とすれば、耐泥水研磨性及び耐光性等の耐久性が高ぐ転落 角が 15° 以下の滑水性を有する物品を容易に得ることが可能となる。
[0151] 前記直鎖状ポリジメチルシロキサン、加水分解可能な官能基を有し且つフルォロカ 一ボンユニット(CF又は CF )の数が 1乃至 12であるフルォロアルキルシラン、そして
2 3
、有機溶媒、酸、及び水を有する溶液を混合してなる処理剤を、シラノール基が形成 されたプライマー層上に塗布し、固化させ被膜を形成することで、滑水性、撥水性、 耐泥水研磨性、及び耐光性に優れる滑水性物品が得られる。
[0152] 前記フルォロアルキルシランは被膜の撥水性、耐泥水研磨性の向上の寄与するも ので、これは、加水分解可能な官能基を有するので、プライマー層に形成されたシラ ノール基、又は前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと化学的な結合がなされる。
[0153] そして、前記フルォロアルキルシランは、加水分解可能な官能基を有し、さらに分 子中にフルォロカーボンユニット(CF又は CF )の数が 1乃至 12であるパーフルォロ
2 3
アルキル基(CF (CF ) 一)またはパーフルォロアルキレン基(一(CF ) —)を有す
3 2 t-1 2 u るものが用いられる。フルォロカーボンユニット(CF又は CF )の数が増加すると、得
2 3
られる滑水性物品の耐光性ゃ耐泥水研磨性が向上する。ここで、前記 t、及び Uは整 数を表している。
[0154] しかしながら、フルォロカーボンユニットの数が増加すると、該フルォロアルキルシラ ンの凝固点が室温以上にまで上昇するため、該フルォロアルキルシランが含まれる 処理剤の塗布が困難となるため好ましくない。従って、得られる被膜の耐光性ゃ耐泥 水研磨性を向上させ、且つ処理剤の基材への塗布を容易にせしめ、さらに乾燥後の 被膜からの被膜を形成しなカゝつた成分、すなわち余剰分の除去を容易にせしめるた めには、フルォロカーボンユニットの数は 1乃至 12とし、被膜の泥水研磨性を向上さ
せるために 6乃至 12とすることが好まし 、。
[0155] 滑水性物品の耐泥水研磨性、耐光性等の耐久性は、基材と被膜の密着性にも影 響される。本発明では、基材上に官能基を 4個有するケィ素化合物が添加された溶 液を基材に塗布し、該ケィ素化合物と基材とを結合させるとともに、該ケィ素化合物 由来のシラノール基を形成させるので、基材よりシラノール基の数を増加させることが できる。従って、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン、前記フルォロアルキルシランと の結合サイトの数を増やすことができる。結果、被膜と基材との密着性が向上し、滑 水性物品の耐泥水研磨性、及び耐光性の向上を図ることができる。
[0156] 前記ケィ素化合物によってシラノール基の数を増やすことを考慮すると、プライマー 層の厚みを薄いものとすることが好ましぐ [基材一 Si— OH ;この場合、 Si— OHが プライマー層で、残りの Siの結合手は OH基となるか O— Si 結合を形成する] となる単分子層〜 lOnmの厚みとすると良い。そして、シラノール基の生成数を考慮 すると、プライマー層は、単分子層とすることが好ましい。
[0157] 前記プライマー層の形成において、ケィ素化合物と基材との結合を、溶液を基材に 塗布後に 10°C〜40°Cの室温又は室温に近い環境で行ってもよいが、この結合時間 の短縮のために、 50°C乃至 350°Cで加熱することでプライマー層の形成を行っても よい。該加熱を行うことにより結合時間の短縮が図られ、プライマー層の表面が外部 力 の汚れやリント、水分の影響を受けることが少なくなり、シラノール基の生成を行 いやすくなり好ましい。
[0158] そして、プライマー層の形成するための官能基を 4個有するケィ素化合物がテトライ ソシァネートシランであることが好ましい。該化学種は、反応性が高いために基板上 のシラノール基と確実にシロキサン結合を形成することが可能である。
[0159] 又、耐泥水研磨性に優れる滑水性物品を得るために、プライマー層のシラノール基 と結合を増やせるよう、直鎖状ポリジメチルシロキサンの加水分解可能な官能基数を 4乃至 9とすることが好まし 、。
[0160] そして、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、次の構造式を有することが好ま ヽ
[化 4]
(H3C)3 Si -A1 - Si \- 0 - ψ † A2— Si(CH3)3.h.iXh[A3― Si Cft^ ^
CH
i,ll ここで、 A A2及び ΑΊま 2価の炭化水素基、又は、―(CH )— NH— CO— O—基 (i
2 i
は 0〜9の整数)、若しくは酸素である。 nはジメチルシロキサンユニットの平均繰り返 し数を示す。又、 Xは加水分解可能な官能基を示し、 h、 iは 0乃至 3の整数、 jは 1乃 至 3の整数である。但し、 iが 0の時、 hは 2又は 3である。又、 hと iの合計は 3以下の整 数である。例えば、 i及び jを 3とすれば、加水分解可能な官能基を直鎖状ジメチルシ ロキサンの片側末端に 9個設けることが可能となる。
[0161] 上記方法による滑水性物品の製法は、物品に水が接触する環境であっても、物品 を通しての視認性に対して弊害を少なくするような滑水性を有し、且つ耐泥水研磨性 、耐光性に優れる滑水性物品を容易に提供でき、前記したような諸性能に優れた滑 水性物品を低コストで提供する。
[0162] 本発明の第 2の特徴の滑水性物品の作製法は、滑水性被膜の形成が容易である。
そして得られる物品は優れた滑水性を有し、且つ耐泥水研磨性及び耐光性等の耐 久性に優れる等の効果を奏す。
[0163] 本発明の滑水性物品の作製法は、官能基を 4個有するケィ素化合物が添加された 溶液を基材に塗布し、該ケィ素化合物と基材とを結合させるとともに、該ケィ素化合 物由来のシラノール基が形成されたプライマー層を形成する工程、片側末端のみに 加水分解可能な官能基を少なくとも 3有し、且つジメチルシロキサンユニット(Si (CH
3
) O)の平均繰り返し単位数が 20乃至 50である(常用対数で 1. 3乃至 1. 7である)直
2
鎖状ポリジメチルシロキサン、加水分解可能な官能基を有し、且つフルォロカーボン ユニット(CF又は CF )の数が 1乃至 12であるフルォロアルキルシラン、そして、有機
2 3
溶媒、酸、及び水を有する溶液を混合してなる処理剤を前記プライマー層に塗布し、 固化させることで滑水性被膜を形成する工程とからなることを特徴とする。
[0164] 前記官能基を 4個有するケィ素化合物としては、テトライソシァネートシラン、テトラ ノ、ロゲンィ匕シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を使用できる。これらの
中では、加水分解速度の速いテトライソシァネートシラン、テトラハロゲン化シラン、特 にはテトライソシァネートシランの使用が好ましい。
[0165] 前記化学種を溶媒に添加し、基材表面に塗布するための溶液を調製する。該溶媒 には、アルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコ ール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン、メチルェチルケトン等 のアセトン類、ェチルエーテル、酢酸ェチル等のエーテル類、エステル類、又は、ノ ラフィン系炭化水素や芳香族炭化水素の一般有機溶剤、例えば n—へキサン、トル ェン、クロ口ベンゼン等、若しくはこれらの混合物を使用することができる。
[0166] 前記溶液の pHを 0乃至 5に調整するために、塩酸、硝酸、酢酸などの酸を導入して もよぐ前記化学種の加水分解反応を促進させるために少量の水を導入してもよい。 又、プライマー層を効率的に形成させるために、前記化学種を、溶媒に対して、 0. 5 重量%乃至 2重量%、好適には 0. 7重量%乃至 1. 5重量%、より好適には 0. 9重量 %乃至 1. 2重量%添加し、前記溶液を調製することが好ましい。
[0167] 上記塗布液をガラス基材表面に塗布する方法としては、手塗り、刷毛塗り、スプレ 一コート法、バーコート法、ロールコート法等の公知手段を使用することができる。こ れらの手法は、工数が少なく生産性が高い。そして、プライマー層の形成のしゃすさ 、溶液調製のしゃすさ、そして、シラノール基の形成数等を考慮すると、前記化学種 には、テトライソシァネートシランを使用することが好ましい。
[0168] 基材とのプライマー層との結合を速くするために、前記溶液を基材に塗布後に 50 °C乃至 350°C、好適には、 100°C乃至 300°Cで焼成することが好ましい。そして、プ ライマー層形成後すぐに本発明の処理剤を塗布し滑水性被膜を形成してもよ ヽ。又 、プライマー層が形成された基材を保管、流通等がされた後に本発明の処理剤を基 材に塗布する場合、プライマー層上のシラノール基が、有機物や大気中に存在する 水分等の影響で消失し、失活することが起こりうるので、失活したプライマー層への酸 性溶液の接触、又は紫外線照射等により、シラノール基を復活させ、プライマー層を 再度活性な状況とすることが好まし 、。
[0169] 前記直鎖状ジメチルシロキサン又はフルォロアルキルシランの加水分解可能な官 能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等
のアルコキシ基、クロ口基又はイソシァネート基等を用いることができる。ただし、加水 分解可能な官能基の反応性が高すぎると、処理剤を調合する時の取扱!、が難しくな るだけでなぐ処理剤のポットライフが短くなる。一方、反応性が低すぎると、加水分 解反応が十分進行しなくなり、生成するシラノール基の量が十分でなくなるため、ブラ イマ一層と被膜の結合が十分でなくなる。取扱いの容易さ、処理剤のポットライフ、得 られる滑水性被膜の耐久性を考慮すると、加水分解可能な官能基としてはアルコキ シ基が好ましぐ中でもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
[0170] 前記フルォロアルキルシランとしては、下記一般式 [2]で示される片側末端に加水 分解可能な官能基を有するフルォロアルキルシランや下記一般式 [3]で示される両 側末端に加水分解可能な官能基を有するフルォロアルキルシランが好適に用いられ る。
[0171] [化 5]
CF3(CF2)m.1CH2CH2Si(CH3)3.pY1 p [2] ここで、 Y1は 1価の加水分解可能な官能基である。さらに、 mは 1乃至 12の整数であ り、フルォロカーボンユニット(CF又は CF )の数を表す。さらに、 pは 1乃至 3の整数
2 3
であり、加水分解可能な官能基の数を表す。
[0172] [化 6]
Y2 q(CH3)3-qSiCH2CH2(CF2)mCH2CH2Si(CH3)3.rY3 r [3] ここで、 Y2及び Y3は、それぞれ、 1価の加水分解可能な官能基である。さらに、 mは 1 乃至 12の整数であり、フルォロカーボンユニットの数を表す。さらに、 q及び rは、それ ぞれ、 1乃至 3の整数である。
[0173] 前記フルォロアルキルシランとしては、片側末端に加水分解可能な官能基を有す るフルォロアルキルシランとして、本発明の第 1の特徴で例示したものが使用できる。
[0174] さらに、両側末端に加水分解可能な官能基を有するフルォロアルキルシランとして も、本発明の第 1の特徴で例示したものが使用できる。
[0175] ただし、両側末端に加水分解可能な官能基を持ったフルォロアルキルシランは、両
側末端に加水分解可能な官能基を持つが故に、縮合が進みやすぐこのため処理 剤の塗布が困難となる傾向がある。さらに、被膜になった後に基材とは結合されない 余剰分となった場合には縮合した余剰分として、物品に強固に固着し、乾燥後の余 剰分の除去が困難となる場合がある。この点を考慮すると、片側末端のみに加水分 解可能な官能基を有するフルォロアルキルシランとすることが好ましい。
[0176] そして、滑水性被膜を得るための処理剤において、処理剤の総量に対して重量濃 度で前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが 0. 2重量%乃至 3. 0重量%、好適には 0 . 5重量%乃至 2. 5重量%、より好適には 1. 5重量%乃至 2. 5重量%、前記フノレオ 口アルキルシランが 0. 2重量%乃至 2. 0重量%、好適には 0. 5重量%乃至 1. 0重 量0 /0、さらに、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルォロアルキルシランとの 総量が 0. 4重量%乃至 3. 5重量%、好適には 1. 0重量%乃至 3. 5重量%、より好 適には 2. 0重量%乃至 3. 5重量%導入される。
[0177] 又、前記処理剤は、他に有機溶媒、酸、及び水を混合してなるもので、有機溶媒に は、機能成分、すなわち直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシラン、及 び水、酸を溶解させる有機溶媒を用いることができ、これらにはエチルアルコール、ィ ソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルェチルケトン、メチルイソブチルケ トン等のケトン類、酢酸ェチル、酢酸ブチル等のエステル類、へキサン、トルエン、ベ ンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒類、ジェチルエーテル、ジイソプロピルエーテル 等のエーテル類やそれらの混合物を用いることが好ましい。中でも、メチルェチルケト ン、酢酸ェチル、へキサン、ジェチルエーテル及びジイソプロピルエーテルの中から 選ばれる一種以上の溶媒とエチルアルコールやイソプロピルアルコール等の低級ァ ルコールの混合溶媒は、直鎖状ポリジメチルシロキサン、フルォロアルキルシラン、水 及び酸の溶解性が高ぐさらに、処理剤の塗布性が適度になるので特に好ましい。
[0178] 又、本発明の処理剤に使用される水は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン及び前 記フルォロアルキルシランが有する加水分解可能な官能基の数に対して、分子数で
1倍乃至 100倍とするのが好ましい。 1倍未満では、加水分解反応が十分に進行せ ず、シラノール基が生成しにくぐ得られる滑水性被膜の耐久性が低下するため好ま しくない。又、 100倍を超えると、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン、前記フルォロア
ルキルシラン及び水が処理剤内で均一に溶解することが難しくなり好ましくない。
[0179] 処理剤に使用される酸は、機能成分、すなわち直鎖状ポリジメチルシロキサンとフ ルォロアルキルシランの加水分解反応を促進させる触媒的な役割をし、硝酸、塩酸、 酢酸、硫酸、その他有機酸等を使用することができる。そして、前記水と混合した状 態で pH値が 0乃至 5、好適には 0乃至 2となるように混合される。このような酸性領域 では、使用される酸が強酸になると、機能成分、すなわち直鎖状ポリジメチルシロキ サンとフルォロアルキルシランの反応速度が大きくなり、結果として処理剤のポットラ ィフが短くなる。一方、弱酸になると、機能成分、すなわち直鎖状ポリジメチルシロキ サンとフルォロアルキルシランの加水分解が十分に進行しなくなるため好ましくない。
[0180] 本発明の滑水性物品の作製法に使用される基材には、特に限定されるものではな い。本発明の第 1の特徴で例示された基材を用いることができる。
[実施例]
[0181] 以下に本発明の第 2の特徴に関する実施例について説明する。尚、滑水性物品の 評価方法を以下に示す。
〔滑水性被膜の評価方法〕
[0182] (1)接触角
本発明の第 1の特徴と同じ方法で測定を行った。
[0183] (2)転落角
本発明の第 1の特徴と同じ方法で測定を行った。
[0184] (3)耐泥水研磨性 (セリア研磨性)
本発明の第 1の特徴と同じ方法で研磨した。研磨領域の 70%が親水化するまでの研 磨回数 (往復)を評価した。この試験において、 40回以上である場合は実用上の耐 久性があるものとし、 40回以上を可品、 45回以上を良品とした。
[0185] (4)耐光性
メタルハライドランプの強力な UV光を以下の条件でサンプルに 2時間照射した後の 接触角(° )を測定して評価した。そして、照射後、接触角が 95° 以上のものを耐久 性に優れるとした。この耐光性試験は、本発明の第 1の特徴における耐候性試験と 同一の条件の下で行われた。
[0186] 本発明の第 2の特徴による滑水性物品は屋外で使用されることが多ぐ太陽光に暴 露される。また、砂埃も付着しやすいため、清掃時の雑巾払拭や車両用ガラスに使 用した場合のガラスの上げ下げ、ワイパー払拭時には乾燥した、あるいは、水を含ん だ砂埃によって表面が研磨されることも多い。このようなことを考慮すると、耐光性や 耐泥水研磨性は滑水性物品の実用を考慮すると重要な指標である。
[0187] 実施例 1
〔処理剤の調製〕
処理剤は、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランを混合して得ら れた混合物に酸性水溶液を添加、攪拌することによって得た。図 2に処理剤の調製 手順と各薬液の混入割合 (重量比)を示す。
[0188] 先ず、ジメチルシロキサンユニットの数が 30 (常用対数で 1. 5)であり、枝分かれ構造 を介することで片側末端のみにメトキシ基を 9個もつ直鎖状ポリジメチルシロキサン〔( CH ) SiCH CH {Si (CH ) O} Si (CH ) CH CH Si{CH CH Si (OCH ) } ] ; 2
3 3 2 2 3 2 30 3 2 2 2 2 2 3 3 3
. OOg、メチルェチルケトン; 48. 10g、フルォロカーボンユニットの数が 8のフルォロ アルキルシラン〔CF (CF ) CH CH i (OCH )〕;0. 80gとイソプロピルアルコール;
3 2 7 2 2 3 3
48. 10gを混合し、約 5分間攪拌した。次いで、 0. 5N硝酸水溶液; 1. Ogを添加し、 約 2時間室温で攪拌した。以上の方法により、処理剤の総量に対し、混入された直鎖 状ポリジメチルシロキサンの重量濃度(以降「ポリジメチルシロキサン濃度」と記載する )が 2. 0重量%、処理剤の総量に対し、混入されたフルォロアルキルシランの重量濃 度(以降「フルォロアルキルシラン濃度」と記載する)が 0. 8重量%の処理剤を得た。
[0189] 〔ガラス基板の洗浄〕
300mm X 300mm X 2mm厚サイズのフロートガラスを研磨液で研磨し、水洗及び 乾燥した。なお、ここでの研磨液には、ガラス用研磨剤ミレーク A (T) (三井金属鉱業 製)を水に混合した 2重量%のセリア懸濁液を用いた。
[0190] 〔プライマー層の形成〕
テトライソシァネートシラン〔Si (NCO)〕0. 2gと酢酸ェチル〔CH COOC H〕 19.
4 3 2 5
8gとを混合し、テトライソシァネートシランが 1. 0重量%添加された溶液を得た。該溶 液を綿布 (旭化成せんい (株)、商品名; BEMCOT)にしみ込ませ、その綿布でセリ
ァ研磨されたガラス基材上を二度塗りにならないよう塗布した。その後、室温で 5分程 度乾燥させた後、炉内で 180°C、 13分間(炉出し時板温 150°C)加熱し、プライマー 層が形成されたガラス基材を得た。
[0191] 〔滑水性被膜の形成〕
上記(1)で調製した処理剤 ; 1. Oml (300mm X 300mm X 2mm厚サイズ)を、上 記プライマー層が形成されたガラス基材上に滴下し、綿布 (商品名;ベンコット)でガ ラス全面に十分引き伸ばした後、 5分程度風乾した。その後、 目視で白くまだらに残 留している余剰分をイソプロピルアルコールで湿らした紙タオルで拭き上げて透明な サンプルを得た。
[0192] 上記 [滑水性被膜の評価方法]に記載した要領で評価したところ、結果は表 3に示 すとおり、接触角は 110° 、転落角は 15° と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨 試験においては 70%を親水化させるのに 45往復を要す良品であり、さらに耐光性 試験では 2h照射後の接触角が 105° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0193] [表 3]
※反応性基の数において, 「A — B J という表示は反応性基を片方の末端に A個、
方の末端に B個有していることを示す。 実施例 2
直鎖状ポリジメチルシロキサンに、ジメチルシロキサンユニットの数が 30 (常用対数 で 1. 5)の片末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメチルシロキサン〔(H C) SiCH
3 3 2
CH {Si (CH ) O} Si (CH ) CH CH Si(CH ) (OCH )〕を用いた以外は実施例
2 3 2 30 3 2 2 2 3 3 2
1と同様の手順で滑水性物品を得た。結果は表 3に示すとおり、転落角は 15° と非
常に良い値を示し、セリア研磨試験において 70%を親水化させるのに 50往復を要 す良品であり、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 97° と高ぐ耐久性にも 優れていた。
[0195] 比較例 1
プライマー層を形成しなカゝつた以外は実施例 1と同様の手順で滑水性物品を得た。 結果は表 3に示すとおり、接触角は 110° 、転落角は 13° であったが、セリア研磨試 験においては 70%を親水化させるのに 35往復、耐光性試験では 2h照射後の接触 角が 70° と耐久性が劣っていた。
[0196] 比較例 2
プライマー層を形成しなカゝつた以外は実施例 2と同様の手順で滑水性物品を得た。 結果は表 3に示すとおり、接触角は 109° 、転落角は 12° であったが、セリア研磨試 験においては 70%を親水化させるのに 30往復、耐光性試験では 2h照射後の接触 角が 78° と耐久性が劣っていた。
[0197] 比較例 3
直鎖状ポリジメチルシロキサンに、ジメチルシロキサンユニットの数が 250 (常用対 数で 2. 4)の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメチルシロキサン〔(CH O) Si
3 3
CH CH {Si (CH ) O} Si (CH ) CH CH Si(OCH )〕を用いた以外は実施例 1
2 2 3 2 250 3 2 2 2 3 3
と同様の手順で滑水性物品を得た。結果は表 3に示すとおり、接触角は 112° 、セリ ァ研磨試験においては 70%を親水化させるのに 70往復、耐光性試験では 2h照射 後の接触角が 108° であった力 転落角は 19° と大き力つた。
[0198] 上述した本発明の第 1又は第 2の特徴に依る滑水性被膜の作製法において基材上 にプライマー層を形成する場合、プライマー層形成後に、プライマー層に対して pHO 乃至 4の酸性溶液の接触、コロナ放電、紫外線照射の群から選ばれるいずれかの処 理をしてもよい。以下、この処理をプライマー層処理と呼ぶ。
[0199] このプライマー層処理にお!、て、プライマー層に対して上記!/、ずれかの処理を行うこ とによって、プライマー層には確実にシラノール基が存在する状態、すなわち活性な 状態とすることができる。プライマー層が大気中のメタンや炭酸ガスの吸着、又は水、 リント等の影響を受けて、シラノール基の数が減少したとしても、プライマー層の形成
後、滑水性被膜の形成前に上記いずれかの処理を行うことにより、プライマー層が再 活性化される。
[0200] プライマー層処理によって常にプライマー層を活性な状態にできることから、安定的 に滑水性被膜を基材に対して密着性を高く形成せしめる。これは、滑水性物品の安 定的な生産に大きく貢献する。プライマー層を活性な状態として、滑水性被膜を形成 させることを考慮すると、上記した処理は、滑水性被膜の形成直前に行うことが好まし い。
[0201] プライマー層がいかなる状態であっても上記処理を行うことは、滑水性物品の生産の 平準化に寄与する。し力しながら、上記処理は、プライマー層のシラノール基が消失 した場合、すなわちプライマー層が失活した場合だけに行うことが好ましい。
[0202] 該製法は、通常の滑水性物品の生産については、上記処理をしない方法で行う。そ して、生産中にメタンや炭酸ガスの吸着、又は大気中の水、リント等の影響を受けて、 プライマー層が失活したものに対してのみ、上記処理を行えば、基材の損失を削減 でき、生産効率の向上を図ることができ好ましい。
[0203] プライマー層処理によって、プライマー層表面のシラノール基を常に存在する状態に できるので、安定的に滑水性被膜を基材に対して密着性を高く形成せしめる。これは 、滑水性物品の安定的な生産に大きく貢献する。
[0204] 前記プライマー層は、例えば基材上に官能基を 4個有するケィ素化合物が添加され た溶液を基材に塗布し、該ケィ素化合物と基材とを結合させるとともに、該ケィ素化 合物由来のシラノール基を形成させることで得られる。
[0205] そして、前記ケィ素化合物によってシラノール基の数を増やすことを考慮すると、プ ライマー層の厚みを薄いものとすることが好ましぐ [基材一 Si— OH ;この場合、 -Si OHがプライマー層で、残りの Siの結合手は OH基となるか O— Si 結合を形 成する]となる単分子層〜 lOnmの厚みとすると良い。そして、シラノール基の生成数 を考慮すると、プライマー層は、単分子層とすることが好ましい。
[0206] 前記プライマー層の形成にお!ヽて、ケィ素化合物と基材との結合を、溶液を基材に 塗布後に 10°C〜40°Cの室温又は室温に近い環境で行ってもよいが、この結合時間 の短縮のために、 50°C乃至 350°Cで加熱することでプライマー層の形成を行っても
よい。該加熱を行うことにより結合時間の短縮が図られ、プライマー層の表面が外部 力もの汚れやメタンや炭酸ガスの吸着、又はリント、水分の影響を受けることが少なく なり、シラノール基の生成を行 、やすくなり好ま 、。
[0207] 前記官能基を 4個有するケィ素化合物としては、テトライソシァネートシラン、テトラ ノ、ロゲンィ匕シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を使用できる。これらの 中では、加水分解速度の速いテトライソシァネートシラン、テトラハロゲン化シラン、特 にはテトライソシァネートシランの使用が好ましい。テトライソシァネートシランは、ブラ イマ一層の形成のしゃすさ、溶液調製のしゃすさ、そして、シラノール基の形成数等 に優れる力 である。
[0208] 前記化学種を溶媒に添加し、基材表面に塗布するための溶液が調製される。該溶 媒には、本発明の第 2の特徴で例示した溶媒を使用することができる。
[0209] 前記溶液の pHを 0乃至 5に調整するために、塩酸、硝酸、酢酸などの酸を導入して もよぐ前記化学種の加水分解反応を促進させるために少量の水を導入してもよい。 又、プライマー層を効率的に形成させるために、前記化学種を、溶媒に対して、 0. 5 重量%乃至 2重量%、好適には 0. 7重量%乃至 1. 5重量%、より好適には 0. 9重量 %乃至 1. 2重量%添加し、前記溶液を調製することが好ましい。
[0210] 上記塗布液をガラス基材表面に塗布する方法としては、手塗り、刷毛塗り、スプレ 一コート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、スピンコート法等の公 知手段を使用することができる。これらの手法は、工数が少なく生産性が高い。
[0211] 基材とのプライマー層との結合を速くするために、前記溶液を基材に塗布後に 50
°C乃至 350°C、好適には、 100°C乃至 300°Cで焼成することが好ましい。
[0212] そして、プライマー層上のシラノール基の形成を確実なものとするために滑水性被 膜を形成する前にプライマー層に対して、 pHO乃至 4の酸性溶液の接触、紫外線照 射、
、ずれかの処理を行う。
[0213] pHO乃至 4の酸性溶液の接触は、例えば、酸性溶液にプライマー層が形成された 基材を浸漬させる等の手段で行うことが可能である。ここで用いられる酸は、塩酸、硫 酸、硝酸等が使用され、プライマー層上にシラノール基が存在する状態を確実なもの とするためには、該酸性溶液の pH値を 0乃至 4とされなければならない。前記接触時
間は 1分間乃至 2時間とすることが好適で、該接触後には基材又はプライマー層は 水等にて洗浄されることが好ま 、。
[0214] 紫外線照射は、プライマー層が形成された基材に、 0. 01W乃至 1Wの強度で、直 接紫外線を照射する等の手段で行うことが可能である。ここで用いる光源には、メタ ルハライドランプ、水銀ランプ等が使用され、プライマー層上のシラノール基を活性に するためには、照射時間は 3秒間乃至 30分間とすることが望ましい。また、紫外線の 照射後は基材又はプライマー層を水等にて洗浄することも可能である。
[0215] コロナ放電は、プライマー層が形成された基材を、アースされたワイヤー線と電極で 挟むようにして放電する等の手段で行うことが可能である。ここで用いる発振機の出 力は、 0. lkW乃至 4kWであることが望ましい。また、プライマー層上のシラノール基 を活性にするためには、処理時間は 1秒間乃至 10秒間程度が好適である。
[0216] pHO乃至 4の酸性溶液の接触、コロナ放電、紫外線照射の群から選ばれる 、ずれ かの処理は、シラノール基が消失した状態、すなわちプライマー層が失活した状態で あっても、シラノール基を再び活性ィ匕させることも可能であるので、大気中のメタンや 炭酸ガスの吸着、又は水、リント等によりプライマー層が失活したとしても再びプライ マー層を活性なものとすることが可能である。従って、基材の無駄を少なくすることが できる等の効果を発揮する。
[0217] 本発明の滑水性物品の製法で形成される滑水性被膜は、被膜形成時にプライマ 一層のシラノール基との縮合反応を経て、プライマー層を介して基材と強固に結合さ れるようになる
[実施例]
[0218] 以下に本発明のプライマー層処理を行った実施例について説明する。本実施例で は、プライマー層上に撥水性の被膜を形成し、この撥水性被膜の特性を評価するこ とで、プライマー層の活性度につ!、て判断を行った。
〔撥水性被膜の評価方法〕
[0219] (1)接触角
撥水性被膜を有する滑水性物品について、本発明の第 1の特徴と同じ方法で測定 を行った。
[0220] (2)耐泥水研磨性 (セリア研磨性)
本発明の第 1の特徴と同じ方法で研磨した。研磨領域の 70%が親水化するまでの研 磨回数 (往復)を評価した。この試験において、 60回以上である場合は耐久性に優 れる物品とした。
[0221] (3)耐光性
メタルハライドランプの強力な UV光を以下の条件でサンプルに 2時間照射した後の 接触角(° )を測定して評価した。この耐光性試験は、本発明の第 1の特徴における 耐候性試験と同一の条件の下で行われた。この試験において、試験後 95° 以上の 接触角を保つものは耐光性が高い物品とした。
[0222] 実施例 1
1.ガラス基材の洗浄
本発明の第 2の特徴における方法と同じ方法でガラス基板の洗浄を行った。
[0223] 2.プライマー層の形成
本発明の第 2の特徴における方法と同じ方法で、プライマー層が形成されたガラス 基材を得た。
[0224] 3.プライマー層の再活性ィ匕
プライマー層を形成されたガラス基材を、実験室において大気中に 4日間放置する ことでプライマー層を失活させた。その後、 0. 5N硝酸水溶液に 1時間浸漬させる、 プライマー層の再活性ィ匕を行った。
[0225] 4.撥水性被膜を得るための塗布液の調製
塗布液は、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルォロアルキルシランを混合して得ら れた混合物に酸性水溶液を添加、攪拌することによって得た。
先ず、ジメチルシロキサンユニットの数が 250の両方の末端にアルコキシ基をもつ直 鎖状ポリジメチルシロキサン〔(CH O) SiCH CH {Si(CH ) O} Si (CH ) CH C
3 3 2 2 3 2 250 3 2 2
H Si (OCH )〕;0. 50g、メチルェチルケトン; 48. 85g、フルォロカーボンユニットの
2 3 3
数が 8のフルォロアルキルシラン〔CF (CF ) CH CH i (OCH )〕;0. 80gとイソプロ
3 2 7 2 2 3 3
ピルアルコール; 48. 85gを混合し、約 5分間攪拌した。次いで、 0. 5N硝酸水溶液; 1. Ogを添加し、約 2時間室温で攪拌した。以上の方法で塗布液を得た。
[0226] 5.撥水性被膜の形成
上記調製した塗布液; 1. Omlを、再活性ィ匕されたプライマー層に滴下し、綿布 (旭 化成繊維 (株)、商品名; BEMCOT)でガラス全面に十分引き伸ばした後、 5分程度 風乾した。
[0227] その後、 目視で観測される白のまだら状の残留物をイソプロピルアルコールで湿ら した紙タオルで拭き上げて透明なサンプルを得た。
[0228] 上記 [撥水性被膜の評価方法]に記載した方法で評価した。結果を表 4に示す。接 触角は 111° と良好な撥水性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水化させ るのに 65往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 106° と高ぐ耐 久性に優れていた。
[0229] [表 4]
[0230] 実施例 2
プライマー層の再活性ィ匕方法にコロナ放電を用いた以外は、実施例 1と同じとした 。コロナ放電は、シンクエンジニアリング (株)製コロナ放電処理機を用いた。コロナ出 力 0. 4kw、ワイヤー線とガラス面の距離は 2乃至 2. 5mmとし、 300 X 300mmを 20 分力けて照射した。上記 [撥水性皮膜の評価方法]に記載した方法で評価したところ 、接触角は 108° と良好な撥水性を示し、セリア研磨試験においては 70%を親水化 させるのに 65往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 98° と高ぐ 耐久性に優れていた。
[0231] 実施例 3
プライマー層の再活性ィ匕方法に紫外線照射を用いた以外は、実施例 1と同じとした
。光源には水銀ランプを用い、プライマー層に到達時点で 128mWの強度の紫外線 を 25分かけて照射した。上記 [撥水性皮膜の評価方法]に記載した方法で評価した ところ、接触角は 106° と良好な撥水性を示し、セリア研磨試験においては 70%を 親水化させるのに 65往復を要し、さらに耐光性試験では 2h照射後の接触角が 97° と高ぐ耐久性に優れていた。
[0232] 比較例 1
プライマー層形成後の放置及びプライマー層の再生を行わなかった以外は、実施 例 1と同じとした。すなわち、比較例は、プライマー層形成後にすぐに滑水性被膜の 形成を行う従来の方法を示す例である。上記 [撥水性皮膜の評価方法]に記載した 方法で評価したところ、接触角は 109° 、セリア研磨試験においては 70%を親水化 させるのに 70往復、耐光性試験では 2h照射後の接触角が 100° であった。
[0233] 比較例 2
プライマー層の再活性ィ匕を行わな力つた以外は、実施例 1と同じとした。上記 [撥水 性皮膜の評価方法]に記載した方法で評価したところ、接触角は 99° と 100° を下 回り、セリア研磨試験においては 70%を親水化させるのに 45往復、さらに耐光性試 験では 2h照射後の接触角が 90° であり、耐久性が劣っていた。