JP4093987B2 - 表面処理された基材の製造方法 - Google Patents
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Description
クロロシリル基を分子内に有する物質としては、SiCl4、SiHCl3またはSiH2Cl2が挙げられ、これらの中から、単独または複数の物質を選ぶことができる。好ましくはSiCl4がCl基が多く含まれているので好ましい。クロロシリル基は反応性が非常に高く、自己縮合または基材表面と縮合反応をすることにより緻密な下地膜を形成する。尚、水素基の一部がメチル基やエチル基に置換された物質を含んでもよい。
(−Si−Cl)+(ROH)→(−Si−OR)+(HCl)・・・・・(1) また、クロロシリル基を分子内に有する物質とアルコール系溶媒とは、式(2)に示すようにも反応する。
(−Si−Cl)+(ROH)→(−Si−OH)+(RCl)・・・・・(2)
アルコール溶媒中で、式(1)により生成した酸触媒により(−Si−OR)の一部は更に以下の式(3)のように反応して、(−Si−OH)を生成する。
(−Si−OR)+(H2O)→(−Si−OH)+(ROH)・・・・(3)
そして、式(2)及び式(3)で生成された(−Si−OH)は式(4)のように反応してシロキサン結合を形成する。
(−Si−Cl)+(−Si−OH)→(−Si−O−Si−)+(HCl)
・・・・・(4)
エタノール(ナカライテスク製)100gにクロロシラン(SiCl4、信越シリコーン製)0.01gを撹拌しながら添加し、下地処理液を得た。この下地処理液を研磨洗浄したガラス基板(300×300mm)上に、湿度40%、室温下でフローコートにて塗布し、約1分で乾燥し、下地処理被膜を得た。
耐候性試験としてアイスーパーUVテスター(W−13、岩崎電気製)を用いて、紫外線強度76±2mW/cm2とし、ブラックパネル温度48±2℃、照射20時間、暗黒4時間のサイクルで、1時間毎に30秒間イオン交換水シャワーリングをする条件で400時間紫外線を照射した。
また、摩擦試験として、砂消しゴム(ライオン製 No.502)を15×7mmの面積に50gの荷重にて、撥水処理ガラス上を100回往復活動させた。
更に、撥水性能を示す尺度として、臨界傾斜角を測定した。水滴が撥水性ガラス(接触角=100〜110°)の表面を転がる性能を測定するため、水平に配置した撥水性ガラス板表面に直径5mm(接触角が100〜110°であれば水滴はほぼ半球形になる)の水滴を置き、徐々に撥水性ガラス板を傾斜させて、表面に置いた水滴が転がり始める時のガラス板の傾斜角(臨界傾斜角)を測定した。臨界傾斜角が小さいほど、動的な撥水性が優れており、例えば走行中の自動車のガラス窓に付着した雨滴が飛散しやすくなって、運転者の視野が妨げられないことになる。
尚、得られた撥水性ガラスの平滑性は、原子間力顕微鏡(SPI3700、セイコー電子(株)製)を用いて、サイクリックコンタクトモードにて、表面形状を測定し、表面粗さ(Ra)を算出した。
下地処理液の調合でクロロシランを0.005g(0.005wt%)添加した以外は、実施例1と同様にして撥水処理ガラスを得た。
(表1)に示すように初期接触角は107°を示したが、初期臨界傾斜角は18°と大きく、耐候性試験後の接触角は71°まで低下し、耐久性能が低下していることが示された。
下地処理液の調合でクロロシランを0.5、1.0、3.0、5.0g(濃度は各々0.5、1.0、3.0、5.0wt%)添加した以外は、実施例1と同様にして撥水処理ガラスを得た。
温度計、撹拌機、冷却器を備えた1リットルガラス反応器に、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3(ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、東芝シリコーン製)10.0g、下記化学式(化1)で示される加水分解性基含有ポリジメチルシロキサン10.0g、t−ブタノール360g、及び0.1N塩酸1.94gを仕込み、80℃で5時間共加水分解反応させ、さらに疎水性溶媒であるn−ヘキサン160重量部を加えて、室温で10時間撹拌した。
この撥水性ガラスでも、表1に示すように初期接触角、耐久性能(耐候性試験、摩擦試験)に優れた結果が得られた。
下地処理剤としてクロロシランの替わりにテトラクロロスズ、テトラクロロジルコニウムを用いて、下地処理を行った後に、撥水処理剤bを用いて撥水性ガラスを作製した。
初期接触角は106゜を示したが、初期臨界傾斜角は18°及び19°と大きくなり、耐候性試験後の接触角は65゜及び64゜に低下した。
下地処理液の溶媒としてエタノールの替わりにクロロホルムを用いた以外は、実施例1と同様に作製して撥水性ガラスを得た。
初期接触角は107゜を示したが、初期臨界傾斜角は20°と大きく、耐候性試験後の接触角は63゜に低下し、摩擦試験後の接触角は67゜に低下した。
この比較例6は先行技術として挙げた特許第2525536号の実施例6の下地Aを追試したものである。
即ち、下地処理液の溶媒としてエタノールの代わりにペルフルオロカーボン溶液(FC−77、3M社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして撥水性ガラスを得た。
表面粗さRaは7.0nmと高い値を示し、初期臨界傾斜角も25°と高かった。初期接触角は107°を示したが、摩擦試験後の接触角は65°と低下した。
この比較例7は先行技術として挙げた特開平2−311322号の実施例3を追試したものである。
即ち、テトラエチルシリケート(コルコート社製)31gをエタノール380gに溶解・撹拌し、水6.5g、1N塩酸1.6gを添加・撹拌し、20℃にて24時間撹拌して、下地処理液を調製した。
この下地処理液を実施例1と同様にフローコートにて塗布し、約1分間で乾燥した。この下地処理後、500℃、1時間熱処理することによりシリコン酸化物層を形成した。この後、実施例1と同様に撥水処理剤aにて撥水処理ガラスを得た。
表面粗さRaは0.6nmと高い値を示し、初期臨界傾斜角も22°と高かった。初期接触角は107°を示したが、摩擦試験後の接触角は67°と低下した。
下地膜の熱処理を行わずに作製した以外は比較例7と同様にして撥水処理ガラスを得た。
表面粗さRaは0.7nmと高い値を示し、初期臨界傾斜角も23°と高かった。初期接触角は108°を示したが、摩擦試験後の接触角は45°まで低下した。
Claims (8)
- クロロシリル基を分子内に有する物質をアルコール系溶媒に溶解して反応させたことにより生成された(−Si−OH)を含有する下地処理液を基材表面に塗布し、この塗布された下地処理液を乾燥せしめた後に焼成することなく下地膜を形成し、この下地膜中に含まれる(−Si−OH)とシロキサン結合可能な表面処理液を下地膜上に塗布し表面膜を形成するにあたり、前記クロロシリル基を分子内に有する物質の下地処理液中の濃度は0.01wt%以上3.0wt%以下とすることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- クロロシリル基を分子内に有する物質をアルコール系溶媒に溶解して反応させたことにより生成された(−Si−OH)を含有する下地処理液を基材表面に塗布し、この塗布された下地処理液を乾燥せしめた後に焼成することなく下地膜を形成し、この下地膜中に含まれる(−Si−OH)とシロキサン結合可能な表面処理液を下地膜上に塗布し表面膜を形成するにあたり、前記クロロシリル基を分子内に有する物質を、SiCl 4 、SiHCl 3 またはSiH 2 Cl 2 のうちの少なくとも1種とすることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の表面処理された基材の製造方法において、前記基材はガラス、セラミックス、プラスチック或いは金属の何れかであることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載の表面処理された基材の製造方法において、前記下地膜が形成される基材の表面は研磨洗浄により表面粗さ(Ra)が0.5〜3.0nm程度まで粗されていることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理された基材の製造方法において、前記クロロシリル基を分子内に有する物質の下地処理液中の濃度は0.03wt%以上1.0wt%以下であることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の表面処理された基材の製造方法において、前記下地膜の表面粗さ(Ra)を0.5nm以下とすることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載の表面処理された基材の製造方法において、前記表面膜の表面粗さ(Ra)を0.5nm以下とすることを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載の表面処理された基材の製造方法において、前記表面膜は撥水、撥油、親水または防曇機能を発揮することを特徴とする表面処理された基材の製造方法。
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