JP3929313B2 - 高滑水性被膜及びその被覆方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に建築用窓ガラス、車両用窓ガラス、鏡、その他産業用ガラス等に用いることが可能な、極めて優れた滑水性(水滴滑落性)を示す高滑水性被膜及びその被覆方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水滴滑落性を改善する試みとしては、シリコーン系ワックス、オルガノポリシロキサン、界面活性剤などを含む組成物について提案されており、例えば、特公昭50-15473号公報では、アルキルポリシロキサンおよび酸よりなる組成物、特開平5-301742号公報では、アミノ変性シリコーンオイルと界面活性剤とを含有する組成物が開示されており、30゜傾斜において約15μl程度の水滴量で滑落するものが得られている。また、特開平11-181412号公報では、−(CH2)3(CF2)7CH3等の基がオルガノシロキサン単位を形成するケイ素原子に直接結合した単位、および−(CH2)3SiCl3等の基がオルガノシロキサン単位を形成するケイ素原子に直接結合した単位を必須とする含フッ素シリコーン化合物および/または該化合物の部分加水分解物生成物、を含むことを特徴とする表面処理剤が開示されており、50μlの水滴が約10°の傾斜で滑落するものが得られている。また、特開2000−144056号公報では、末端に加水分解可能な官能基を有するシリコーン化合物、または末端に加水分解可能な官能基を有し他端にフルオロアルキル基を併せ持つシリコーン化合物と、酸と、水とを溶剤に溶解後、混合撹拌によって得られた混合液を、基材表面に塗布し、ついで乾燥させることにより得られる機能層が、基材表面とシロキサン結合により化学的に結合されてなることを特徴とする水滴滑落性に優れた表面処理基材が開示されており、50μlの水滴が約1°の傾斜で滑落するものが得られている。なお、これらの表面処理剤は、滑水成分を基材上に直接処理して滑水層を形成させており、本願発明のように、滑水成分とマトリックス成分をハイブリッド化した透明被膜を基材上に形成させるというものではない。
【0003】
滑水成分とマトリックス成分からなる透明被膜を基材上に形成させる方法としては、特開平8−12375号公報にフルオロアルキル基含有シラン化合物と、ジメチルシリコーンおよび/またはその誘導体の混合物を溶媒中で加水分解して得られた溶液と、アルコキシシラン化合物を溶媒中で加水分解して得られた溶液とを混合し、この混合液を基材表面に塗布することにより形成された、フルオロアルキル基およびメチル基が塗膜の内層よりも外側表面層において高い濃度で存在する撥水性物品が開示されている。また、特開2000-26758号公報には、滑水性被膜を形成可能な被覆組成物として、水酸基含有ビニルポリマー、エポキシ末端シロキサンポリマー、スルホン酸化合物およびブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物及びメラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種の架橋剤成分および特定のジアルキルスルホコハク酸塩及びアルキレンオキシドシランから選ばれる界面活性剤を含有する滑水性被膜を形成可能な被覆組成物により、水滴量10μlでの転落角が5#以下と非常に優れた性能を示すことが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特開平8−12375号公報記載の撥水性物品は、水滴量50μlでの転落角が約16#の傾斜で滑落するレベルであり、自動車用ウィンドウとして良好な雨滴除去を目的とする場合には、十分とは言い難いレベルである。また、前記特開2000-26758号公報記載の撥水性物品は、透明性が低く、塗料としての用途に限られている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、アルコキシ基が結合したケイ素原子とジメチルシリコーン鎖が直接またはメチレン基を介して結合したジメチルシリコーン組成物を滑水成分に用いると、マトリックス中の滑水成分の保持性が向上し、高滑水性被膜の耐久性を向上させることができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明の高滑水性被膜は、シリカマトリックス中に、一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンよりなる滑水成分が分散されてなることを特徴とする。
【0007】
【化2】
【0008】
ここで、Xは−ORまたは−R'Si(OR)r(CH3)3-r(Rは1価のアルキル基、R'は2価のアルキレン基)で表されるアルコキシ基またはアルコキシ基含有基、p、q、rは1〜3の整数、nは2000以下の整数を示す。
【0009】
また、本発明の高滑水性被膜は、前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンのアルコキシ基の数が4個以上であることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の高滑水性被膜は、前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンの平均重合度nが5〜400であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の高滑水性被膜の被覆方法は、下記の工程により行うことを特徴とする。
(1)アルコキシシランを加水分解および重縮合させることによってマトリックス成分としてのシリカゾルを調製する工程、
(2)前記[1]式で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンと前記(1)の工程で調製されたシリカゾルを混合して塗布液を調製する工程、
(3)基材表面に前記塗布液を塗布したのち熱処理を行う工程。
【0012】
また、本発明の高滑水性被膜の被覆方法は、前記熱処理は、600℃以下の温度で行うことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の高滑水性被膜は、シリカマトリックス中に、一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンよりなる滑水成分が分散されてなることを特徴とする。
【0014】
【化3】
【0015】
ここで、Xは−ORまたは−R'Si(OR)r(CH3)3-r(Rは1価のアルキル基、R'は2価のアルキレン基)で表されるアルコキシ基またはアルコキシ基含有基、p、q、rは1〜3の整数、nは2000以下の整数を示す。
高滑水性被膜の膜構成成分であるマトリックスとしてのシリカは、アルコキシシランの加水分解および重縮合反応を進めることにより形成されるシリカゾルを調製したものを用いることができ、該シリカゾルの調製は、アルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕)と溶媒を所定量混合、攪拌(例えば、約30分程度)し溶液Aを得る。なお、溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールや、それらの混合溶媒が望ましいが、その他にもエーテル類やケトン類を用いることができる。一方、酸性水溶液と前記溶媒を混合、攪拌(例えば、約30分程度)して溶液Bを得る。次いで、溶液Aと溶液Bを混合後、長時間(例えば、約15時間程度)室温で攪拌してアルコキシシランの加水分解および重縮合反応を進めシリカゾルを得る。
【0016】
以上のようにアルコキシシランの加水分解は、前記アルコキシシランを出発原料として、少量の水と塩酸、硝酸、酢酸などの酸触媒を添加し行うことができ、その加水分解物を室温または加熱しながら攪拌することにより重縮合させ、シリカゾルを得ることができる。なお、シリカゾルの調製法としては、上記の方法に限定されるものではないが、上記のようなアルコキシシランを溶媒で希釈したものに、溶媒で希釈した酸性水溶液を徐々に混合する方法は、急激な反応を避けることができ、より均質な反応が得られるので、好ましい。
【0017】
なお、アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、またはジアルコキシシラン類等を用いることができる。なお上記アルコキシシランの中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランが好ましい。
【0018】
次に、前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンは、シリカマトリックスと結合できるアルコキシ基を各末端に少なくとも1個以上持っているものを用いることができる。なお、該アルコキシ末端ジメチルシリコーンが持つアルコキシ基の数は4個以上が好ましく、3個以下であるとシリカマトリックス中の該成分の保持性が低下し、耐久性が低下する。
【0019】
また、前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンとしては、その平均重合度が2000以下の分子量が約15万以下のものを用いることができる。なお、該アルコキシ末端ジメチルシリコーンの平均重合度は、5〜400の範囲にあることが好ましく、5以下であると揮発性が高く、高滑水性被膜用塗布液中に導入しにくくなり、一方、400以上であればシリカゾルとの相溶性が低下して、透明な被膜の形成が困難となる。
【0020】
さらにまた、前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンのRは炭素数1〜6の1価のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のものを用いることができる。なお、これらの中でもメチル基またはエチル基が好ましい。また、R'は炭素数2〜4の2価のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基等のものを用いることができるが中でもエチレン基が好ましい。
【0021】
次に、本発明の高滑水性被膜の製造方法について説明する。
本発明の高滑水性被膜は下記の工程により被覆することができる。
(1)アルコキシシランを加水分解および重縮合させることによってマトリックス成分としてのシリカゾルを調製する工程、
(2)前記[1]式で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンと前記(1)の工程で調製されたシリカゾルを混合して塗布液を調製する工程、
(3)基材表面に前記塗布液を塗布したのち熱処理を行う工程。
【0022】
先ず、塗布液の調製方法を説明する。
高滑水性被膜用の塗布液は、前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンを前記シリカゾルに添加、混合することにより得ることができる。
【0023】
上記で用いる溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶媒類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系溶媒やそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0024】
次に、上記で得られた塗布液を基材表面に塗布する。
塗布方法としては、手塗り、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フローコート法あるいはスピンコート法、ならびにそれらの併用等既知の被覆手段など各種被覆法が適宜採用し得る。また、簡易なタイプのスプレー式撥水処理剤などとしても使用することができる。
【0025】
次に、基材表面に塗布した塗布液を熱処理し基材表面に被膜を固着させる。
熱処理は、風乾により自然乾燥させてもよいし、乾燥後または乾燥と同時に室温を越え600℃以下の温度で熱処理を行うことも出来る。なお、600℃を越えると滑水成分が熱分解して滑水性が著しく低下するので好ましくない。
【0026】
基材としては、ガラス、プラスチック等特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基板の場合には、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等に通常使用されているフロ−トガラスあるいはロ−ルアウト法で製造されたガラス等無機質の透明性がある板ガラスが好ましく、無色または着色、ならびにその種類あるいは色調、他の機能性膜との組み合わせ、ガラスの形状等に特に限定されるものではなく、さらに曲げ板ガラスとしてはもちろん各種強化ガラスや強度アップガラスであり、平板や単板で使用できるとともに、複層ガラスあるいは合わせガラスとしても使用できる。また、被膜はガラス基板の両面に成膜しても構わない。
【0027】
なお、滑水液が塗布される基材表面は、金属酸化物よりなる下地層が設けられていてもよい。例えば、ガラス基板の場合には、下地層は、ケイ素酸化物等の金属酸化物を主成分とする酸化物薄膜が好ましく、その上に前記塗布液を塗布して高滑水性被膜を被覆することにより、高耐久性を有する高滑水性ガラスを得ることが出来る。
【0028】
以上に述べたように、本発明の高滑水性被膜は、シリカマトリックスと結合することができるアルコキシ基が結合したケイ素原子とジメチルシリコーン鎖が直接またはメチレン基を介して結合したジメチルシリコーン組成物を使用しているため、シリカマトリックス中の該成分の保持性が向上し、耐久性を向上させることができる。
【0029】
なお、本発明における滑水性とは、後述の実施例の評価方法で述べるような方法、例えば、前記で得られた高滑水性被膜を有するサンプルを30°の角度に傾斜させた状態で、該サンプル表面上にゆっくりとマイクロシリンジで純水を滴下する。このとき、水滴が2mm/sec以上の速度で動き始める時点の水滴量(体積)を滑水性(水滴転落性)とし、「μl」で示すものである。また、滑水性の代わりに転落角で評価することも有用である。すなわち、サンプルを水平に保持した状態で、サンプル表面上に50μlの純水を滴下した後、該サンプルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を転落角(°)とした。なお、転落角は協和界面科学製CA−A型を用いて大気中(約25℃)で測定した。なお、本発明の高滑水性とは、前記方法により得られる滑水性が20μl以下、または、転落角が10゜以下のものをいう。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、高滑水性被膜の評価方法を以下に示す。
【0031】
〔高滑水性被膜の評価〕
高滑水性被膜の評価方法を以下に記す。
(1)接触角
高滑水性被膜を有するサンプル表面に、純水約2μlを置いたときの水滴とサンプル表面とのなす角を接触角計で測定した。なお、接触角計には協和界面科学製CA−X型を用い、大気中(約25℃)で測定した。
(2)滑水性
サンプルを30゜に傾斜させた状態で、サンプル表面上にマイクロシリンジで純水をゆっくりと滴下し、水滴が2mm/sec以上の速度で動き始める時点の水滴量(体積)を滑水性(μl)とした。
(3)転落角
サンプルを水平に保持した状態で、サンプル表面上に50μlの純水を滴下した後、サンプルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を転落角(°)とした。なお、転落角は協和界面科学製CA−A型を用いて大気中(約25℃)で測定した。なお、滑水性は20μl以下、または、転落角が10°以下を合格とした。
(4)耐光性試験
1.5kWメタルハライドランプ(アイグラフィックス製、M015−L312)を12h照射し、接触角、滑水性および転落角を評価した。
(5)耐酸性試験
サンプル表面上に1mlの25%硫酸水溶液を滴下し、約25℃で24h放置した。次いで、水道水で表面を洗浄し、風乾させた後、接触角、滑水性および転落角を評価した。
なお、各実施例、比較例の前記評価結果を表2に示す。
【0032】
実施例1
(1)シリカゾルの調製
シリカゾルは、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4:TEOS〕の加水分解および重縮合反応を進めることにより調製した。図1に、シリカゾルの調製手順と各成分の混合割合(重量比)を示す。
先ず、TEOS;312.5gとエキネンF1;450.0gを混合し、約30分間攪拌し溶液Aを得た。また、0.1mol/lの硝酸水溶液;7.5g、H2O;210.0gおよびエキネンF1;20.0gを混合し、約30分間攪拌し溶液Bを得た。次いで、溶液Aと溶液Bを混合後、約15時間室温で攪拌することによってシリカゾルを得た。
【0033】
(2)塗布液の調製
塗布液はアルコキシ末端ジメチルシリコーンと上記シリカゾルを混合することによって得た。図2に塗布液の調製手順と各薬液の混合割合(重量比)を示す。先ず、酢酸エチルで10wt%に希釈した平均重合度が50のアルコキシ末端ジメチルシリコーン((CH3O)3SiO[Si(CH3)2O]50Si(OCH3)3)溶液;0.25gとメチルエチルケトン;7.00gを混合し、約5分間攪拌した。次いで、上記シリカゾル;2.00gを添加し、約15時間室温で攪拌することによって高滑水性被膜用塗布液を調製した。
なお、用いたジメチルシリコーンを表1示す。
【0034】
【表1 】
【0035】
(3)ガラス基板の洗浄
100mm×100mm×2mmtサイズのフロートガラスの表面を研磨液を用いて研磨し、ガラス洗浄機(当所製作品)にて水洗および乾燥した。なお、ここで用いた研磨液は、約1%のガラス用研摩剤ミレークE(三井金属鉱業製)を水に混合した懸濁液を用いた。
【0036】
(4)高滑水性被膜の被覆
上記(2)で調製した塗布液をスピンコート法により上記(3)で準備したガラス基板上に塗布した。先ず、スピンコーター上に塗膜用ガラス基板である上記ガラス基板を設置し、回転速度が500rpmの速度で回転させながら約1.0〜1.5mlの塗布液を滴下し、30秒間回転速度を維持して塗膜の乾燥を行い、良好な成膜性の透明ゲル膜を得た。次いで、280℃で10分間熱処理を行い、室温まで冷却させた後、流水中、ネル(綿300番)で水洗後、風乾して高滑水性被膜付きガラスサンプルを得た。
【0037】
上記[滑水性被膜の評価]に記載した要領で得られた高滑水性被膜付きガラスサンプルの初期性能および耐久性を評価した結果、表2に示すように初期滑水性は12μl、初期転落角は5°と良好な水滴転落性を示し、耐光性試験後の接触角は74°、耐酸性試験後の接触角は78°と高い撥水性を維持していた。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例2
平均重合度が75のアルコキシ末端ジメチルシリコーン((CH3O)3SiCH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]75Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3)を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0040】
結果、初期滑水性は12μl、初期転落角は5°と良好な水滴転落性を示し、耐光性試験後の接触角は91°、耐酸性試験後の接触角は76°と高い撥水性を維持していた。
【0041】
実施例3
平均重合度が100のアルコキシ末端ジメチルシリコーン((CH3O)3SiO[Si(CH3)2O]100Si(OCH3)3)を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。結果、初期滑水性は13μl、初期転落角は6°と良好な水滴転落性を示し、耐光性試験後の接触角は88°、耐酸性試験後の接触角は78°と高い撥水性を維持していた。
【0042】
実施例4
平均重合度が150のアルコキシ末端ジメチルシリコーン((C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]150Si(CH3)2CH2CH2Si(OC2H5)3)を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
結果、初期滑水性は15μl、初期転落角は7°と良好な水滴転落性を示し、耐光性試験後の接触角は96°、耐酸性試験後の接触角は77°と高い撥水性を維持していた。
【0043】
実施例5
平均重合度が250のアルコキシ末端ジメチルシリコーン((CH3O)3SiCH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]250Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3)を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
結果、初期滑水性は16μl、初期転落角は8°と良好な水滴転落性を示し、耐光性試験後の接触角は87°、耐酸性試験後の接触角は75°と高い撥水性を維持していた。
【0044】
比較例1
平均重合度が70(平均分子量;5200)のシラノール末端ジメチルシリコーン(東芝シリコーン製、YF3800);2.00gとトルエン;20.00gを混合し、約1分間攪拌した後、ジブチル錫ジラウレート(武田薬品製、TK−1L);0.04gを添加し、約5分間攪拌した。さらに、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー製、Y−5187)を、イソシアネート基(−N=C=O)とシラノール末端ジメチルシリコーンのシラノール基(−SiOH)が1:1当量になるように添加し、室温で24時間攪拌することによって、ジメチルシリコーンの末端にウレタン結合を介して3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを結合させてなる滑水成分((CH3O)3Si(CH2)3NHCOOSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]70Si(CH3)2OCONH(CH2)3Si(OCH3)3)を合成した。この溶液を用いて、上記「(2)塗布液の調製」に記載した要領で塗布液を調製し、上記「(4)高滑水性被膜の被覆」に記載した要領で、透明サンプルを得た。
結果、初期滑水性は12μl、初期転落角は6°と高い水滴転落性を示したが、耐光性試験後の接触角は62°、耐酸性試験後の接触角は39°と耐久性は悪かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の高滑水性被膜は、耐光性、耐酸性に優れた高い撥水耐久性と優れた滑水性を兼ね備えているので、例えば、車輌用の窓ガラス等に用いた場合には、雨天時に前方、側方、後方の視界が見易くなり安全に運転が出来るとともに長期間にわたり高性能を維持できる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるシリカゾルの調製手順を示す図である。
【図2】実施例1における高滑水性被膜用塗布液の調製手順を示す図である。
Claims (4)
- シリカマトリックス中に、一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンよりなる滑水成分が分散されてなり、一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンのアルコキシ基の数が4個以上であることを特徴とする高滑水性被膜。
- 前記一般式[1]で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンの平均重合度nが5〜400であることを特徴とする請求項1に記載の高滑水性被膜。
- 下記の工程により行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高滑水性被膜の被覆方法。
(1)アルコキシシランを加水分解および重縮合させることによってマトリックス成分としてのシリカゾルを調製する工程、
(2)前記[1]式で表されるアルコキシ末端ジメチルシリコーンと前記(1)の工程で調製したシリカゾルを混合して塗布液を調製する工程、
(3)基材表面に前記塗布液を塗布したのち熱処理を行う工程。 - 前記熱処理は、600℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項3に記載の高滑水性被膜の被覆方法。
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