JPWO2020149284A1 - プロピレン重合体組成物 - Google Patents

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Abstract

プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)とを含有し、下記要件(I)を満足するプロピレン重合体組成物。要件(I):せん断速度 24sec−1におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1におけるダイスウェル比との差の絶対値が0.29以下である。一態様において、さらに下記要件(II)を満足するプロピレン重合体組成物。要件(II):オルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン三連鎖(EEE)が2.0mol%以上である。

Description

本発明は、プロピレン重合体組成物およびその製造方法、該プロピレン重合体組成物から得られる成形体に関するものである。詳細には、成形した時に低光沢の製品を与えるプロピレン重合体組成物およびその製造方法に関するものである。また、該プロピレン重合体組成物を用いた低光沢の成形体に関するものである。
プロピレン重合体を含む成形体は、自動車の外装部品や内装部品として用いられている。
自動車部品には、耐衝撃性が求められ、従来から、プロピレン重合体を含む成形体の耐衝撃性の改良が検討されている。例えば特許文献1には、耐衝撃性の改良を目的とした組成物として、ポリプロピレンブロックコポリマーと、エチレン系エラストマーとスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーとを含む熱可塑性ポリオレフィンアロイが記載されている。
特表2007−517957号公報
近年、特に自動車の内装部品において、耐衝撃性に加え、質感、高級感の観点から表面光沢の低減が求められている。
本発明は低光沢でかつ耐衝撃性に優れる成形体を与えるプロピレン重合体組成物を提供することを目的とする。
本発明者らはプロピレン重合体組成物の流動性に着目し、ダイスウェル比の剪断速度依存性に関して検討を重ねた結果、ダイスウェル比の剪断速度依存性が小さいプロピレン重合体組成物を成形した時、得られる成形体の光沢が低くなることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は下記の[1]から[4]に関する。
[1] プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)とを含有し、
下記要件(I)を満足するプロピレン重合体組成物。
要件(I):せん断速度 24sec−1 におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値が0.29以下である。
[2] 下記要件(II)を満足する上記[1]に記載のプロピレン重合体組成物。
要件(II):オルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン三連鎖(EEE)が2.0mol%以上である。
[3] 下記要件(III)を満足する上記[1]または[2]に記載のプロピレン重合体組成物。
要件(III):3D GPCによって測定される架橋度パラメータが1.06以下である
[4] オルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン含有量が3.1質量%以上である上記[1]から[3]のいずれかに記載のプロピレン重合体組成物。
さらに本発明は以下の発明[5]から[8]に関する。
[5] プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)とを溶融混練して組成物前駆体を得る工程と、
組成物前駆体と架橋剤とを溶融混練してプロピレン重合体組成物を得る工程と
を含む上記[1]から[4]のいずれかに記載のプロピレン重合体組成物の製造方法。
[6] 上記[5]の方法により製造されるプロピレン重合体組成物。
[7] 上記[1]から[4]のいずれかに記載のプロピレン重合体組成物からなる成形体。
[8] [7]に記載の成形体の自動車内装としての使用。
本発明のプロピレン重合体組成物を成形することで低光沢の成形体を得ることができる。また得られた成形体は耐衝撃性に優れる。
実施例1の試験片破断面のSEM画像 比較例4の試験片破断面のSEM画像
本発明のプロピレン重合体組成物は、プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)とを含有し、
下記要件(I)を満足するプロピレン重合体組成物である。
要件(I):せん断速度 24sec−1 におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値が0.29以下である。
本明細書において、「プロピレン重合体」は、プロピレンに由来する構造単位を80質量%以上有する重合体である(ただし、プロピレン重合体の全質量を100質量%とする)。プロピレン重合体としては、プロピレン単独重合体及び、プロピレンに由来する構造単位とプロピレン以外の単量体に由来する構造単位とを有する共重合体が挙げられる。プロピレン重合体に含まれるプロピレン以外の単量体に由来する構造単位としては、エチレンに由来する構造単位及び炭素数4以上12以下のα−オレフィンに由来する構造単位が挙げられる。
プロピレン重合体組成物は、プロピレン重合体を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
プロピレン重合体のプロピレンに由来する構造単位の含有量は得られる成形体の剛性の観点から90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
本明細書において、「エチレン−α−オレフィン共重合体」は、エチレンに由来する構造単位とα−オレフィンに由来する構造単位とを有する共重合体である(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)。
エチレン−α−オレフィン共重合体のエチレンに由来する構造単位の含有量は得られる成形体の耐衝撃性の観点から20〜99質量%が好ましく、25〜99質量%がより好ましく、28〜90質量%がさらに好ましい(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体の全質量を100質量%とする)。
エチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンがプロピレンである場合、エチレンに由来する構造単位の含有量は、得られる成形体の耐衝撃性および光沢の観点から、28〜70質量%が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンが1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである場合、エチレンに由来する構造単位の含有量は、得られる成形体の耐衝撃性および光沢の観点から、40〜90質量%が好ましい。
プロピレン重合体組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
エチレン−α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10個のα−オレフィンが挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。エチレン−α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンに由来する構造単位を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
エチレン−α−オレフィン共重合体に含有されるα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは1質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上75質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上72質量%以下である(ただしエチレン−α−オレフィン共重合体の全質量を100質量%とする)。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、好ましくは0.85〜0.93g/cm3であり、より好ましくは0.85〜0.90g/cm3である。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、エチレン−(3−メチル−1−ブテン)共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは0.2〜40g/10分であり、さらに好ましくは0.2〜35g/10分である。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社製Engage(登録商標)、Infuse(登録商標)、Intune(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、エスプレンSPO(登録商標)等を用いることもできる。
本発明のプロピレン重合体組成物中、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体の合計量を100質量%として、耐衝撃性と剛性の観点から、プロピレン重合体の含有量は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。耐衝撃性向上の観点より、プロピレン重合体の含有量は、83質量%以下が好ましい。
またエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がより好ましい。耐衝撃性向上の観点より、エチレン−α−オレフィン共重合体の合計量は、17質量%以上が好ましい。
プロピレン重合体組成物が2種以上のエチレン−α−オレフィン共重合体を含む場合は、それらの合計量が上記エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量の範囲となればよい。
本発明のプロピレン重合体組成物は上記要件(I)を満たす組成物であり、該プロピレン重合体組成物中に含まれるプロピレン重合体およびエチレン−α−オレフィン共重合体は、重合触媒を用いてプロピレン重合体を重合し、引続き連続でエチレン−α−オレフィン共重合体を重合して製造する、いわゆるエチレン−プロピレンブロック共重合体が好ましい。またプロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体とを別々に製造し、溶融混練してプロピレン重合体組成物を得てもよいし、上記エチレン−プロピレンブロック共重合体にプロピレン重合体、及び/またはエチレン−α−オレフィン共重合体をさらに追加し、溶融混練してプロピレン重合体組成物を得てもよい。
本発明のプロピレン重合体組成物が満足する要件(I)は、せん断速度 24sec−1におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値が0.29以下である。要件(I)を満足するプロピレン重合体組成物を成形して得られる成形体は、光沢が低く、耐衝撃性も十分に実用に耐えるものである。光沢の評価は、プロピレン重合体組成物と黒色顔料を混合し、後述する成形条件で平板に成形し、その表面を光沢計により光沢を測定することで行った。
各剪断速度に対するダイスウェル比は次の方法により求められる。キャピラリーの直径1mm、キャピラリーの長さ40mm、L/D=40のキャピラリーを備えたキャピラリーレオメーターを用い、試験温度200℃、せん断速度24 sec−1(ピストンの落下スピード 2mm/分)にて、溶融させた組成物をキャピラリーの出口から押出し、ストランドを作製する。キャピラリーの出口から、鉛直方向下方に12mmの箇所のストランドの直径をレーザーにより測定する。ダイスウェル比は、下記式により表される。
ダイスウェル比 = ストランドの直径(mm)/キャピラリーの直径(mm)
同様に、試験温度200℃、せん断速度6080 sec−1(ピストンの落下スピード 500mm/min)にて、溶融させた組成物を押出し、せん断速度6080 sec−1におけるダイスウェル比を求める。
各せん断速度におけるダイスウェル比を求めた後、せん断速度 24sec−1 におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値を算出する。ダイスウェル比の差の絶対値Δは下記式により表される。
Δ=|(せん断速度6080sec−1の時のダイスウェル比)−(せん断速度24sec−1の時のダイスウェル比)|
本発明のプロピレン重合体組成物はせん断速度 24sec−1 におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値が0.29以下であり、0.26以下が好ましい。
本発明のプロピレン重合体組成物はさらにオルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン三連鎖(EEE)が2.0mol%以上であることが好ましい(要件(II))。オルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン連鎖は以下の方法で求められる。
プロピレン重合体組成物のオルトジクロロベンゼン不溶分は、次の方法で得られる。
自動分別装置の溶解槽内に試料1gを入れ、0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン200mlを添加し、140℃で90分間加熱撹拌し、濃度5.0mg/mlの溶液を調製する。次いで、該試料溶液を20℃/分の速度で120℃まで降温し、120℃で45分間保持する。次いで、該試料溶液を2℃/分の速度で50℃まで降温し、50℃で60分間保持し、オルトジクロロベンゼン不溶成分を析出させる。次いで、該試料のオルトジクロロベンゼン可溶成分の溶液を溶解槽外に排出した後、溶解槽内に新たにオルトジクロロベンゼン200mlを添加し、140℃で60分間加熱撹拌してオルトジクロロベンゼン不溶成分を溶解させる。次いで、該試料のオルトジクロロベンゼン不溶成分の溶液を溶解槽外に排出する。排出された溶液を室温で一晩静置した後、1000mlのメタノール中に投入した。得られた析出物を、孔径10μmのPTFEメンブレン上に吸引ろ過によりろ過し、約200mlのメタノールで洗浄し、付着した過剰なメタノールを吸引ろ過して除去した後、蒸発皿に移す。蒸発皿内の析出物に窒素ガスを吹き付けながら、60℃のウォーターバス上で4時間乾燥し、次いで60℃の真空乾燥機内で4時間乾燥させる。こうして得られた固形物を試料のオルトジクロロベンゼン不溶分とする。
<装置、溶媒、試料溶液濃度>
装置:Polymer ChAR社製自動分別装置 PREP−mc2
溶媒:0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
試料溶液濃度:5.0mg/ml
エチレン三連鎖(EEE)分率およびエチレン含有量は、カーボン核磁気共鳴法によって、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定し、その結果を用いてMacromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁に記載された方法に準拠して求められる。
本発明のプロピレン重合体組成物はオルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン含有量が3.1質量%以上であることが好ましい。
本発明のプロピレン重合体組成物はまた、3D GPCによって測定される架橋度パラメータが1.06以下であることが好ましい(要件(III))。
3D GPCとは示唆屈折率検出器、粘度検出器および光散乱検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)であり、各検出器のデータから絶対分子量および固有粘度([η];単位はdl/g)が求められる。絶対分子量および固有粘度から後述するように架橋度パラメータが求められる。
本発明のプロピレン重合体組成物は3D GPCによって測定される架橋度パラメータが1.0以下であることがより好ましい。
本発明のプロピレン重合体組成物は、耐衝撃性の観点から、CFCによって測定される50℃での溶出量の割合が10.4質量%以上が好ましい。
クロスフラクショネーションクロマトグラフ(CFC)とは、昇温溶出分別(TREF)とGPCを組み合わせた複合装置であり、TREFにより任意の温度で溶出させた試料中の成分をGPCで測定することで、各温度で溶出した成分の溶出量、分子量分布および各種平均分子鎖長を求めることができる。
CFCによって測定される50℃での溶出量の割合は、具体的には以下の方法で測定される。
試料20mgに0.05w/V%のBHTを含有するオルトジクロロベンゼン20mlを加え、145℃で60分間撹拌し、試料溶液を調製する。該試料溶液を、CFC装置中で145℃に保持された昇温溶出分別(TREF)カラムに0.5ml注入して、20分間保持させる。次いで、TREFカラムの温度を20℃/分の速度で100℃まで降温させ、100℃で20分間保持させる。次いで、TREFカラムの温度を2℃/分の速度で30℃まで降温させ、30℃で30分間保持させる。次いで、TREFカラムの温度を20℃/分の速度で50℃まで昇温させ、50℃で約19分間保持させる。次いで、50℃で溶出した成分の溶出量を、赤外分光光度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC;CFCに内蔵)で測定する。続いて、TREFカラムの温度を20℃/分の速度で140℃に上昇させ、約19分間保持した後、140℃で溶出した成分の溶出量を赤外分光光度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC;CFCに内蔵)で測定する。「50℃での溶出量の割合」は、50℃で溶出した成分の溶出量および140℃で溶出した成分の溶出量の合計に対する、50℃で溶出した成分の溶出量の割合(質量%)である。
プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体とを含有する組成物の場合、50℃で溶出する成分は、概ねエチレン−α−オレフィン共重合体に相当し、140℃で溶出する成分は、概ねプロピレン重合体に相当する。
プロピレン重合体組成物を構成するプロピレン重合体およびエチレン−α−オレフィン共重合体がエチレン−プロピレンブロック共重合体の場合、該エチレン−プロピレンブロック共重合体は例えば重合触媒を用いて下記の方法により製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられる。また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合して調製される予備重合触媒を用いてもよい。
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載された触媒系が挙げられる。
重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
これらの重合方法は、バッチ式、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン重合体組成物に応じて、適宜決定する。
重合体中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、プロピレン重合体組成物をそのプロピレン重合体組成物が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載された方法等が挙げられる。
プロピレン重合体の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]I)は、好ましくは0.1〜5dl/gであり、より好ましくは0.3〜4dl/gであり、さらに好ましくは0.5〜3dl/gである。
エチレン−α−オレフィン共重合体の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)は好ましくは0.5〜20dl/gであり、より好ましくは0.6〜10dl/gであり、さらに好ましくは0.7〜7dl/gである。
プロピレン重合体組成物に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体のうちの1種がエチレン−プロピレン共重合体である場合、低光沢化の観点から、その極限粘度([η]II)は、2.9dl/g以上が好ましい。
また、プロピレン重合体の極限粘度([η]I)に対するエチレン−α−オレフィン共重合体の極限粘度([η]II)の比([η]II/[η]I)は、好ましくは0.1〜20であり、より好ましくは0.1〜10であり、さらに好ましくは0.1〜9である。
極限粘度(単位:dl/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dl、0.2g/dl及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載された計算方法、すなわち還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
本発明のプロピレン重合体組成物が、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体とを多段重合して得られる、エチレン−プロピレンブロック共重合体を含む場合、エチレン−プロピレンブロック共重合体中のプロピレン重合体の極限粘度、及びエチレン−α−オレフィン共重合体の極限粘度は次の方法により求められる。多段重合の前段の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーからプロピレン重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体の極限粘度を求め、この極限粘度の値と各成分の含有量を用いて残りの重合体部分の極限粘度を算出する。
プロピレン重合体組成物中のエチレン−α−オレフィン共重合体のエチレン含有量((C2)II)は、赤外線吸収スペクトル法によりプロピレン重合体組成物全体のエチレン含有量((C2’)Total)を測定し、次式を用いて計算により求める。
(C2’)II=(C2’)Total/XII
(C2’)Total:プロピレン重合体組成物全体のエチレン含有量(質量%)
(C2’)II:エチレン−α−オレフィン共重合体のエチレン含有量(質量%)
XII:プロピレン重合体組成物に対するエチレン−α−オレフィン共重合体の質量比(質量%)
例えば、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体と特定の架橋剤とを溶融混練する工程を含む方法により、上記要件(I)を満足するプロピレン重合体組成物を得ることができる。前記工程において、プロピレン重合体の一部とエチレン−α−オレフィン共重合体の一部との間に架橋構造が形成される。プロピレン重合体組成物が、該架橋構造が形成された成分を含むことにより、要件(I)を満足するものと推測している。
架橋剤の例としては、ジフェニルフルベン(CAS番号2175−90−8)、2−(2−フリルメチレン)マロノニトリル(CAS番号3237−22−7)、TEMPO−メタクリレート(CAS番号15051−46−4)、フェノチアジン(CAS番号:92−84−2)、ベンゾフェノン(CAS番号119−61−9)、1、2、3、6、7、8、9、10、11、12−デカハイドロベンゾピレン(CAS番号92387−50−3)、S−1−オクタデシル−S‘−(α、α’−ジメチル−α“−アセチル酸)−トリチオカルボナート、1,1,1−トリス[(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)―2−メチルプロピオナート]エタン、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、ベンジル 1H−ピロール−1−カルボジチオナート、1−(メトキシカルオボニル)エチルベンゾジチオアート、S−1−ドデシル−S‘−(α、α’−ヂメチル−α”−アセチル酸)−トリチオカルボナート、メチル(tert−ブトキシカルボノチオイル)サルファニルアセテート等の化合物が挙げられ、これらから1種類以上の化合物を選択して使用することが好ましい。架橋効果を高めるため、2−(2−フリルメチレン)マロノニトリル(CAS番号3237−22−7)、TEMPO−メタクリレート(CAS番号15051−46−4)、フェノチアジン(CAS番号:92−84−2)、ベンゾフェノン(CAS番号119−61−9)、1、2、3、6、7、8、9、10、11、12−デカハイドロベンゾピレン(CAS番号92387−50−3)、及びS−1−オクタデシル−S‘−(α、α’−ジメチル−α“−アセチル酸)−トリチオカルボナートからなる群から選択される1種以上の化合物と、ジフェニルフルベン(CAS番号2175−90−8)とを組み合わせて使用することがより好ましい。2−(2−フリルメチレン)マロノニトリル(CAS番号3237−22−7)、TEMPO−メタクリレート(CAS番号15051−46−4)、フェノチアジン(CAS番号:92−84−2)、ベンゾフェノン(CAS番号119−61−9)、及び1、2、3、6、7、8、9、10、11、12−デカハイドロベンゾピレン(CAS番号92387−50−3)からなる群から選択される1種以上の化合物と、ジフェニルフルベン(CAS番号2175−90−8)とを組み合わせて使用することがさらに好ましい。
上記架橋剤は、有機過酸化物のいずれか1種以上と併用することが好ましい。
有機過酸化物として具体的には、アルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、下記構造式(1)で表される構造を有する化合物(b1)、及び、下記構造式(2)で表される構造を有する化合物(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物等が挙げられる。
Figure 2020149284
アルキルパーオキサイド化合物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイド化合物としては、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジドデカノイルパーオキサイド等が挙げられる。
構造式(1)で表される構造を有する化合物(b1)としては、ジセチルパーオキシジカルボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカルボネート等が挙げられる。
構造式(2)で表される構造を有する化合物(b2)としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
本発明のプロピレン重合体組成物は要件(I)を満足する限り、他の樹脂、無機充填材、有機充填材、添加剤を含むことができる。
本発明のプロピレン重合体組成物に含まれる他の樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
また、本発明のプロピレン重合体組成物は、バイオ原料から抽出された植物由来のモノマーを重合して製造される重合体を含有してもよい。例えば、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、PBT樹脂等が挙げられる。
無機充填材としては、非繊維状無機充填材や繊維状無機充填材が挙げられる。非繊維状無機充填材としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、けい砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライト、モリブデン、けいそう土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましくはタルクである。
非繊維状無機充填材は、無処理のまま使用してもよい。また、本発明のプロピレン重合体組成物との界面接着性を向上させ、かつ、当該プロピレン重合体組成物に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤、又はチタンカップリング剤、または界面活性剤で表面を処理してもよい。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
非繊維状無機充填材の平均粒子径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。ここで本発明における「平均粒子径」とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
非繊維状無機充填材の形態としては、粉、フレーク、顆粒等が挙げられる。
繊維状無機充填材としては、例えば、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、チタン酸カリウム繊維、水酸化マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、ケイ酸カルシウム繊維を用いることが好ましく、繊維状マグネシウムオキシサルフェートを用いることがより好ましい。
繊維状無機充填材は、無処理のまま使用してもよい。本発明のプロピレン重合体組成物との界面接着性を向上させ、かつ、当該プロピレン重合体組成物に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤、又は高級脂肪酸金属塩で表面を処理して使用してもよい。高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
電子顕微鏡観察によって測定した繊維状無機充填材の平均繊維長は、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは3μm〜20μmであり、更に好ましくは8μm〜15μmである。また、アスペクト比は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10〜30であり、更に好ましくは12〜25である。そして、電子顕微鏡観察によって測定した平均繊維径は、好ましくは0.01μm〜1.5μmであり、より好ましくは0.2μm〜1.0μmである。
有機充填材としては、リグニン、スターチ、木粉、木質繊維、竹、綿花、セルロース、セルロースナノクリスタル、ナノセルロース系繊維などの天然繊維等が挙げられる。
本発明のプロピレン重合体組成物は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系耐光剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、着色剤、発泡剤、発泡核剤、可塑剤、難燃剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤、光拡散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のプロピレン重合体組成物の好ましい製造方法は、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とを溶融混練する工程を含む方法である。より好ましくは、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体とを溶融混練して組成物前駆体を得る工程と、組成物前駆体と架橋剤とを溶融混練してプロピレン重合体組成物を得る工程とを含む方法である。組成物前駆体を得る工程において、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体とともに、必要に応じて、有機過酸化物、添加剤、他の樹脂、無機充填材及び有機充填材からなる群から選ばれる少なくとも1種とを溶融混練してもよい。
組成物前駆体は一旦、ペレットとしてもよい。プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体とを溶融混練して組成物前駆体を得る工程と、組成物前駆体と架橋剤とを溶融混練してプロピレン重合体組成物を得る工程とを含む方法の場合、組成物前駆体をペレット化せず溶融混練機内で溶融している組成物前駆体に直接、架橋剤を添加してもよいし、一旦ペレット化した組成物前駆体と架橋剤とを再び溶融混練機へ投入して、両者を溶融混練してもよい。ペレット化した組成物前駆体と架橋剤とを溶融混練する場合、組成物前駆体と架橋剤とを予め混合機で混合して、組成物前駆体ペレットと架橋剤を均一に混合しておくことが好ましい。
溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機等を用いることができ、2台以上の押出機を組み合わせて用いることもできる。生産性を高くするという観点から、好ましくは二軸押出機である。
得られる組成物の流動性及び耐衝撃性の観点から、溶融混練するときの押出機の設定温度は、150℃以上、好ましくは160〜300℃、より好ましくは170〜250℃、さらに好ましくは190℃〜230℃である。
溶融混練時には、混練機に窒素などの不活性ガスを流通させ、酸素濃度を調整することも出来る。不活性ガスの流量を増大させ、酸素濃度を低下させることにより、プロピレン重合体組成物からなる成形体の引張伸びなど靭性の低下を抑制させることが出来る。また不活性ガスの流量を少量にする、もしくは流通させないことにより、大気に近い酸素濃度に調整することができる。この方法により、流動長(SPF)を高め、成形機内での実流動性を向上させることが出来る。
溶融混練するときの押出機のフィードホッパー部の酸素濃度は、0%以上、21%以下である。
本発明のプロピレン重合体組成物を、射出成形法、ブロー成形法、シート成形法、ラミネート成形法、または発泡成形法により成形することで成形体を得ることができる。得られる成形体は低光沢であり、耐衝撃性に優れる。
成形体の用途としては、自動車材料、家電材料、建材、ボトル、コンテナー、シート、フィルムが挙げられる。好ましい用途として、自動車用内装部品、家電材料、建材(特にヒトの居住空間に存在する製品)である。
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品;バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品;エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、ファン、アンダーデフレクター等の部品;フロント・エンドパネル等の一体成形部品が挙げられる。
また、家電材料としては、洗濯機用材料(外槽)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料、エアコン用材料、照明器具用材料が挙げられる。
また、建材としては、屋内の床部材、壁部材、窓枠部材が挙げられる。
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例および比較例で用いた各成分を、以下に示した。
(1−1)プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−1)
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相−気相重合法によって、プロピレン重合体としてプロピレン単独重合体成分89質量部とエチレン-α-オレフィン共重合体としてエチレン−プロピレンランダム共重合体成分11質量部とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1−1)を製造した。物性は以下のとおりであった。
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重):98g/10分
(a)プロピレン単独重合体成分(P部):
極限粘度 0.79 dl/g
(b)エチレン−プロピレンランダム共重合体(EP部):
極限粘度 7.0 dl/g
エチレンに由来する構造単位の含有量 32質量%
(1−2)プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−2)
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相−気相重合法によって、プロピレン重合体としてプロピレン単独重合体成分83質量部とエチレン-α-オレフィン共重合体としてエチレン−プロピレンランダム共重合体成分17質量部とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1−2)を製造した。物性は以下のとおりであった。
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重):24g/10分
(a)プロピレン単独重合体成分(P部):
極限粘度 1.1 dl/g
(b)エチレン−プロピレンランダム共重合体(EP部):
極限粘度 3.9 dl/g
エチレンに由来する構造単位の含有量 55質量%
(2−1)エチレン−α−オレフィン共重合体(B’)
住友化学株式会社製 Excellen(登録商標) FX555を用いた。物性は以下のとおりだった。
エチレン−ブテン−1共重合体
エチレンに由来する構造単位の含有量 76質量%(ブテン−1に由来する構造単位の含有量 24質量%)
極限粘度 1.2 dl/g
(3)その他の成分
1.架橋剤 DeltaMaxTM i300(Milliken社製)
DeltaMaxTM i300は、架橋剤として作用する成分としてジフェニルフルベン、フェノチアジン、および有機過酸化物を含有する。
2.架橋剤 DeltaMaxTM a200(Milliken社製)
DeltaMaxTM a200は、架橋剤として作用する成分としてジフェニルフルベン、ベンゾフェノン、および有機過酸化物を含有する。
3.架橋剤 DeltaMaxTM m100(Milliken社製)
DeltaMaxTM m100は、架橋剤として作用する成分としてジフェニルフルベン、および有機過酸化物を含有する。
4.スチレンーエチレン/ブチレンースチレンブロックコポリマー(SEBS)
KRATON(登録商標) G 1657(KRATON社製)
5.INTUNE(登録商標) D5535(ダウ・ケミカル社製)
6.有機過酸化物マスターバッチ
ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン8質量%と、ポリプロピレン92質量%とを含有する有機過酸化物マスターバッチ
各種物性は、下記に示した方法に従って測定した。
(1)グロスの測定法(%)
成形体を、室温23℃、湿度50%の標準状態下にて48時間放置後、BYKガードナー社製マイクロトリグロス(携帯型光沢計)を用いて、鏡面について、角度60°の条件で、グロスを測定した。グロスの値が小さいほど低光沢である。
(2)流動長の測定法(SPF、単位:mm)
住友重機械工業製SE130D型射出成形機を用い、成形温度200℃、金型冷却温度50℃、圧力80MPaにて、厚み2mmのスパイラル金型に射出成形を実施し、金型内で樹脂が流動した流動長を計測した。流動長が大きいほど、高流動である。
(3)アイゾット衝撃強さの測定法(Izod、単位:kJ/m2)
東芝IS100型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃の条件にて射出成形を行い、幅12.7mm、長さ63.5mm、厚み3.2mmのアイゾット衝撃試験片を成形した。試験片に、JIS K7110に記載された寸法のVノッチ(Aタイプ)をいれ、Vノッチつき試験片を用い、23℃で状態調節後に、JIS K7110に準拠してアイゾット衝撃試験を行い、アイゾット衝撃強さを求めた。
(5)ダイスウェル比の差Δの測定法(単位:−)
キャピラリーの直径1mm、キャピラリーの長さ40mm、L/D=40のキャピラリーを備えた東洋精機製Capilograph 1Dを用い、試験温度200℃、せん断速度24 sec−1(ピストンの落下スピード 2mm/分)およびせん断速度6080 sec−1(ピストンの落下スピード 500mm/min)にて、溶融させた組成物をキャピラリーの出口から押出し、ストランドを作製した。キャピラリーの出口から、鉛直方向下方に12mmの箇所のストランドの直径をレーザーにより測定した。各せん断速度におけるダイスウェル比は、下記式により表される。
ダイスウェル比 = ストランドの直径(mm)/キャピラリーの直径(mm)
各せん断速度におけるダイスウェル比を求めた後、せん断速度 24sec−1 におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値を算出した。
すなわちダイスウェル比の差の絶対値Δは下記式により表される。
Δ=|(せん断速度6080sec−1の時のダイスウェル比)−(せん断速度24sec−1の時のダイスウェル比)|
(6)走査電子顕微鏡(SEM)測定
実施例1と比較例4について、アイゾッド衝撃試験後の試験片の破断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。破断した試験片をクロロホルム100mlに入れて5分間超音波洗浄器により洗浄したのち、試験片をイオン交換水100mlに移し5分間超音波洗浄した。その後、再びクロロホルム100mlにより1分間超音波洗浄をし、さらにイオン交換水100mlにて1分間超音波洗浄をした。これによりゴムドメイン部を除去することができた。試験片を風乾したのち、金蒸着を実施した。この金蒸着を実施した試験片の破断面をSEMにより4000倍率にて観察した。実施例1の観察画像を図1に示し、比較例4の観察画像を図2に示す。得られた画像を画像解析ソフト(A像くん(登録商標) 旭化成エンジニアリング)で粒子解析することにより、ゴム部が除去された後の球状空隙部の数平均円相当径を求めた。
(7)オルトジクロロベンゼン不溶分の分別採取法
試料のオルトジクロロベンゼン不溶分は、自動分別装置により取得した。自動分別装置の溶解槽内に試料1gを入れ、0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン200mlを添加し、140℃で90分間加熱撹拌し、濃度5.0mg/mlの溶液を調製した。次いで、該試料溶液を20℃/分の速度で120℃まで降温し、120℃で45分間保持した。次いで、該試料溶液を2℃/分の速度で50℃まで降温し、50℃で60分間保持し、オルトジクロロベンゼン不溶成分を析出させた。次いで、該試料のオルトジクロロベンゼン可溶成分の溶液を溶解槽外に排出した後、溶解槽内に新たにオルトジクロロベンゼン200mlを添加し、140℃で60分間加熱撹拌してオルトジクロロベンゼン不溶成分を溶解させた。次いで、該試料のオルトジクロロベンゼン不溶成分の溶液を溶解槽外に排出した。排出された溶液を室温で一晩静置した後、1000mlのメタノール中に投入した。得られた析出物を、孔径10μmのPTFEメンブレン上に吸引ろ過によりろ過し、約200mlのメタノールで洗浄し、付着した過剰なメタノールを吸引ろ過して除去した後、蒸発皿に移した。蒸発皿内の析出物に窒素ガスを吹き付けながら、60℃のウォーターバス上で4時間乾燥し、次いで60℃の真空乾燥機内で4時間乾燥させた。こうして得られた固形物を試料のオルトジクロロベンゼン不溶分とした。
<装置、溶媒、試料溶液濃度>
装置:Polymer ChAR社製自動分別装置 PREP−mc2
溶媒:0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン
(和光特級)
試料溶液濃度:5.0mg/ml
(8)オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン三連鎖(EEE)およびエチレン含有量
測定法
試料のオルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン三連鎖(EEE)分率およびエチレン含有量は、カーボン核磁気共鳴法によって、次の測定条件により、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定し、角五らの算出方法(Macromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁)により求めた。
<測定条件>
装置:Bruker社製 AVANCE600
測定溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
化学シフト基準値:テトラメチルシラン
積算回数:5000回以上
(9)GPCによる架橋度パラメータの測定法
(3D-GPC)
試料の架橋度パラメータは、示差屈折率検出器、粘度検出器及び光散乱検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定した。
示差屈折率検出器(RI)を装備したGPCとして、東ソー社のHLC−8121GPC/HTを用いた。また、前記GPC装置に光散乱検出器(LS)として、Precision Detectors社のPD2040を接続した。光散乱検出に用いた散乱角度は90°であった。また、前記GPC装置に粘度検出器(VISC)として、Viscotek社のH502を接続した。LSおよびVISCはGPC装置のカラムオーブン内に設置し、LS、RI、VISCの順で接続した。LS、VISCの較正および検出器間の遅れ容量の補正には、Malvern社のポリスチレン標準物質であるPolycal TDS−PS−N(重量平均分子量Mw104,349、多分散度1.04)を1mg/mlの溶液濃度で用いた。移動相および溶媒には、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.5mg/mLの濃度で添加したオルトジクロロベンゼンを用いた。試料の溶解条件は、145℃で2時間撹拌とした。流量は1ml/分とした。カラムは、東ソー社GMHHR−H(S) HTを3本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃とした。試料溶液濃度は2mg/mLとした。試料溶液の注入量(サンプルループ容量)は0.3mlとした。サンプルのオルトジクロロベンゼン中での屈折率増分(dn/dc)は、−0.078ml/gとした。ポリスチレン標準物質のdn/dcは0.079ml/gとした。各検出器のデータから絶対分子量および固有粘度([η]sample;単位はdl/g)を求めるにあたっては、Malvern社のデータ処理ソフトOmniSEC(version4.7)を利用し、文献「Size Exclusion Chromatography,Springer(1999)」を参考にして計算を行った。なお、屈折率増分とは、濃度変化に対する屈折率の変化率である。
(架橋度パラメータの算出)
架橋度パラメータは、試料を上記装置で測定して得られた固有粘度([η]M,sample)と、線形ポリプロピレンの固有粘度([η]M,PP)とを用い、下記の式から算出した。

Figure 2020149284

ここで、Mは絶対分子量であり、wはある絶対分子量Mを持つ成分の試料中での重量分率である。試料の絶対分子量と線形ポリプロピレンの絶対分子量が同一である場合の、線形ポリプロピレンの固有粘度に対する試料の固有粘度の比をg’とした。すなわち、g’ = [η]M,sample/[η]M,PPである。線形ポリプロピレンの[η]M,PPは、「Size Exclusion Chromatography,Springer(1999)」に記載された下記の式から算出して用いた。
[η]M,PP = 0.000242 × M 0.707 (dl/g)

<測定条件>
GPC装置: 東ソー HLC−8121GPC/HT
光散乱検出器: Precision Detectors PD2040
差圧粘度計: Viscotek H502
GPCカラム: 東ソー GMHHR−H(S)HT ×3本
試料溶液濃度: 2mg/ml
注入量: 0.3ml
測定温度: 140℃
溶解条件: 145℃で2時間撹拌
溶媒および移動相: 0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
移動相流速: 1mL/分
測定時間: 約1時間
(10)CFCによる50℃での溶出量の割合の測定
クロスフラクショネーションクロマトグラフ(CFC)により測定した。試料20mgに0.05w/V%のBHTを含有するオルトジクロロベンゼン20mlを加え、145℃で60分間撹拌し、試料溶液を調製した。該試料溶液を、CFC装置中で145℃に保持された昇温溶出分別(TREF)カラムに0.5ml注入して、20分間保持させた。次いで、TREFカラムの温度を20℃/分の速度で100℃まで降温させ、100℃で20分間保持させた。次いで、TREFカラムの温度を2℃/分の速度で30℃まで降温させ、30℃で30分間保持させた。次いで、TREFカラムの温度を20℃/分の速度で50℃まで昇温させ、50℃で約19分間保持させた。次いで、50℃で溶出した成分の溶出量を、赤外分光光度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC;CFCに内蔵)で測定した。続いて、TREFカラムの温度を20℃/分の速度で140℃に上昇させ、約19分間保持した後、140℃で溶出した成分の溶出量を赤外分光光度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC;CFCに内蔵)で測定した。「50℃での溶出量の割合」を、50℃で溶出した成分の溶出量および140℃で溶出した成分の溶出量の合計に対する、50℃で溶出した成分の溶出量の割合(質量%)として算出した。
(CFC測定条件)
CFC装置:Polymer ChAR社製Automated 3D analyzer CFC−2
TREFカラム:Polymer ChAR社製 ステンレススチールマイクロボール充填カラム(3/8”o.d x 150mm)
溶媒および移動相: 0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
試料溶液濃度:試料20mgに対して溶媒20mlを添加
溶解条件: 145℃で60分間撹拌
TREFカラムへの注入量:0.5ml
GPCカラム: 東ソー GMHHR−H(S)HT ×3本
移動相流速:1.0ml/分
検出器:Polymer ChAR社製赤外分光光度計IR5(CFC装置に内蔵)
測定時間:約4時間
GPCカラムの較正:東ソー製標準ポリスチレン各5mgをそれぞれ下表のような組合せで量り取り、20mlの溶媒を加えて145℃で1時間溶解させ、得られた溶液をそれぞれGPC分析し、各標準ポリスチレンの分子量とピークトップ溶出時間との関係から較正曲線を作成して較正を行った。
Figure 2020149284
[実施例1]
プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−1)77質量部、エチレン−α−オレフィン共重合体(B’)23質量部、及び有機過酸化物マスターバッチ0.06質量部、を計量し、均一に混合した後、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(a1)を得た。なおフィードホッパー部の酸素濃度は、フィードホッパー部に付随するパージ樹脂投入口に酸素濃度測定器のセンサーを設置して測定した。また酸素濃度2%は窒素ガスをフィードホッパー部へ流通させることにより、実現された。
次に、ペレット(a1)100質量部と、DeltaMaxTM i300(Milliken社製) 2質量部とを均一に混合した後、再び日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(b1)を得た。
ペレット(b1)100質量部と黒色顔料マスターバッチ(日本ピグメント製BP−8993D−30)3質量部を混合し、混合物を得た。該混合物を射出成形機(住友重機械工業製SE180D型射出成形機)のフィーダーに投入し、射出成形を行い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃の条件で、射出成形を行い、縦400mm、横100mm、厚み3mmの直方体の成形体を得た。射出成型機の金型の一方の表面はシボ模様がついており、他方の表面は鏡面であった。得られた成形体の鏡面のグロスを測定した。
また得られたペレット(b1)を用い、ダイスウェル比、流動長、アイゾット衝撃強さ、曲げ弾性率、オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン三連鎖(EEE)、オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン含有量、架橋度パラメータの測定を実施した。
結果を表1に示した。またアイゾット衝撃試験後の破断断面のSEM写真を図1に示した。SEM写真より求めたアイゾッド衝撃試験後の試験片の破断面中のゴムドメインの数平均円相当径は0.54μmであった。
[実施例2]
DeltaMaxTM i300をDeltaMaxTM a200に変更した以外は実施例1と同様にして成形体を得た。結果を表1に示した。
[実施例3]
プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−1)77質量部、エチレン−α−オレフィン共重合体(B’)23質量部及びDeltaMaxTM i300(Milliken社製) 2質量部を計量し、均一に混合した後、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(a3)を得た。
ペレット(a3)100質量部と黒色顔料マスターバッチ(日本ピグメント製BP−8993D−30)3質量部の混合物を用い、実施例1と同様の条件で射出成形を行い、得られた成形体の鏡面のグロスを測定した。また得られたペレット(a3)を用い、ダイスウェル比、流動長、アイゾット衝撃強さ、曲げ弾性率、オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン三連鎖(EEE)、オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン含有量、架橋度パラメータの測定を実施した。
結果を表1に示した。
[比較例1]
DeltaMaxTM i300を添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして成形体を得た。結果を表1に示した。
[比較例2〜3、5]
実施例1においてDeltaMaxTM i300を表1に記載されたその他の成分に変更した以外は実施例1と同様にして成形体を得た。結果を表1に示した。
[比較例4]
プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−1)77質量部、エチレン−α−オレフィン共重合体(B’)23質量部及び有機過酸化物マスターバッチ0.06質量部を計量し、均一に混合した後、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(a14)を得た。
ペレット(a14)100質量部と黒色顔料マスターバッチ(日本ピグメント製BP−8993D−30)3質量部の混合物を用い、実施例1と同様の条件で射出成形を行い、得られた成形体の鏡面のグロスを測定した。また得られたペレット(a14)を用い、ダイスウェル比、流動長、アイゾット衝撃強さ、曲げ弾性率、オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン三連鎖(EEE)、オルトジクロロベンゼン不溶分のエチレン含有量、架橋度パラメータの測定を実施した。またアイゾット衝撃試験後の破断断面のSEM写真を図2に示した。SEM写真より求めたアイゾッド衝撃試験後の試験片の破断面中のゴムドメインの数平均円相当径は0.80μmであった。
[実施例4]
プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−1)77質量部、エチレン−α−オレフィン共重合体(B’)23質量部、及び有機過酸化物マスターバッチ0.06質量部、を計量し、均一に混合した後、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(a4)を得た。次に、ペレット(a4)100質量部と、DeltaMaxTM i300(Milliken社製) 2質量部とを均一に混合した後、再び日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度205℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数400rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(b4)を得た。
ペレット(b4)100質量部と黒色顔料マスターバッチ(日本ピグメント製BP−8993D−30)3質量部を混合し、混合物を得た。該混合物を用い、実施例1と同様の条件で射出成形を行い、成形体を得た。結果を表1に示した。
[実施例5]
ペレット(a1)100質量部と、DeltaMaxTM i300(Milliken社製) 2質量部との混合物を溶融混錬する際に、フィードホッパー部への窒素ガスの流通を遮断し、フィードホッパー部の酸素濃度を2%から20%へと変更した以外は実施例1と同様にして成形体を得た。結果を表1に示した。
[実施例6]
プロピレンーエチレンブロック共重合体(A−1−2)100質量部及びDeltaMaxTM i300(Milliken社製) 2質量部を計量し、均一に混合した後、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpm、フィードホッパー部の酸素濃度2%の条件で溶融混練し、ペレット(a6)を得た。
ペレット(a6)100質量部と黒色顔料マスターバッチ(日本ピグメント製BP−8993D−30)3質量部を混合し、混合物を得た。該混合物を用い、実施例1と同様の条件で射出成形を行い、成形体を得た。結果を表2に示した。
[実施例7]
DeltaMaxTM i300をDeltaMaxTM a200に変更した以外は実施例6と同様にして成形体を得た。結果を表2に示した。
[比較例6]
DeltaMaxTM i300を添加しなかったこと以外は実施例6と同様にして成形体を得た。結果を表2に示した。
Figure 2020149284
Figure 2020149284
表1〜2から明らかなように、要件(I)を満たすプロピレン重合体組成物からなる成形体は低光沢であり、かつ耐衝撃性に優れる。
本発明のプロピレン重合体組成物を自動車の内装等の大型成形体に用いた場合、その低光沢から高級感、質感に優れた外観となる。

Claims (8)

  1. プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)とを含有し、
    下記要件(I)を満足するプロピレン重合体組成物。
    要件(I):せん断速度 24sec−1 におけるダイスウェル比と、せん断速度 6080 sec−1 におけるダイスウェル比との差の絶対値が0.29以下である。
  2. 下記要件(II)を満足する請求項1に記載のプロピレン重合体組成物。
    要件(II):オルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン三連鎖(EEE)が2.0mol%以上である。
  3. 下記要件(III)を満足する請求項1または2に記載のプロピレン重合体組成物。
    要件(III):3D GPCによって測定される架橋度パラメータが1.06以下である。
  4. オルトジクロロベンゼン不溶分中のエチレン含有量が3.1質量%以上である請求項1から3のいずれか一項に記載のプロピレン重合体組成物。
  5. プロピレン重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、エチレン−α−オレフィン共重合体はプロピレン重合体とは異なる)とを溶融混練して組成物前駆体を得る工程と、
    組成物前駆体と架橋剤とを溶融混練してプロピレン重合体組成物を得る工程と
    を含む請求項1から4のいずれか一項に記載のプロピレン重合体組成物の製造方法。
  6. 請求項5の方法により製造されるプロピレン重合体組成物。
  7. 請求項1から4のいずれか一項に記載のプロピレン重合体組成物からなる成形体。
  8. 請求項7に記載の成形体の自動車内装としての使用。
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