JP2008019347A - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐低温衝撃性および低光沢性に優れた自動車用射出成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定の要件を満足するポリプロピレン樹脂(A)58〜80重量%と、0.02〜0.5g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)1〜16重量%と、1〜20g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)1〜16重量%と、無機充填剤(D)18〜25重量%とを含有し、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)の合計が2重量%以上17重量%未満であるポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。さらに詳細には、耐低温衝撃性および低光沢性に優れた自動車用射出成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であることから、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体として、広範な用途に利用されている。
例えば、特開平10-306195号公報には、剛性、耐衝撃性、成形性、さらに光沢の改良を目的とするポリプロピレン樹脂組成物として、その実施例では、p−キシレン可溶分が11.4重量%で、p−キシレン可溶分の[η]が7.5で、p−キシレン可溶分のエチレン含量が25.5重量%である結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体と、メルトフローレートが0.4g/10分のゴムと2.3g/10分のゴムとを用いたポリプロピレン樹脂組成物が記載されている。
また、特開2000−26697号公報には、射出成形加工性、物性バランスと共に低光沢性とウェルド外観を改良し、無塗装での製品化を目的として、結晶性ポリプロピレン単独重合体部分およびエチレン含量が30重量%以上で、重量平均分子量が200,000〜1,000,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合体部分とを含有するプロピレン・エチレン−ブロック共重合体と、MFRが0.05〜1.2g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム或いはエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体ゴムと、タルクと、MFRが11g/10分以上の高密度ポリエチレンからなるプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
特開平10-306195号公報 特開2000−26697号公報
しかし、上記の公報等に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を用いたとしても、さらに高い品質が望まれている自動車内装用部品の分野では、更なる改良が必要で、ポリプロピレン系樹脂組成物については、その耐低温衝撃性および低光沢性のさらなる改良が求められていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、耐低温衝撃性および低光沢性に優れた自動車用射出成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
ポリプロピレン樹脂(A)58〜80重量%と、
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)1〜16重量%と、
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)1〜16重量%と、
無機充填剤(D)18〜25重量%とを含有し、
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)の合計が2重量%以上17重量%未満であるポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)であって、
ポリプロピレン樹脂(A)が、結晶性プロピレン単独重合体部分と極限粘度が4.0〜5.5dl/gであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、または、前記ブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン単独重合体(A−2)とを含有するプロピレン重合体混合物(A−3)であり、
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)が、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.850〜0.870g/cm3、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.02〜0.5g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムであり、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)が、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.850〜0.870g/cm3、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムであるポリプロピレン系樹脂組成物に係るものである。
本発明によれば、耐低温衝撃性と低光沢性のバランスに優れた自動車用射出成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、または、前記ブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン単独重合体(A−2)とを含有するプロピレン重合体混合物(A−3)である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、結晶性プロピレン単独重合体部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
剛性と耐衝撃性のバランスを良好にするという観点から、好ましくは結晶性プロピレン単独重合体部分55〜90重量%と、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分10〜45重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体である(ただし、前記ブロック共重合体の全量を100重量%とする)。
より好ましくは、結晶性プロピレン単独重合体部分65〜88重量%と、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分12〜35重量%とを含有するブロック共重合体であり、さらに好ましくは、結晶性プロピレン単独重合体部分70〜85重量%と、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分15〜30重量%とを含有するブロック共重合体である。
ブロック共重合体(A−1)の結晶性プロピレン単独重合体部分の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は、剛性、耐熱性または硬度を良好にするという観点から、好ましくは0.97以上であり、より好ましくは0.98以上である。
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法(すなわち13C−NMRを用いる方法)によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖(換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖)の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後、発行されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行う)。
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法によって、英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
ブロック共重合体(A−1)に含有される結晶性プロピレン単独重合体部分の極限粘度([η]P)は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物が溶融した時の流動性とそれからなる成形体の靭性とのバランスを良好にするという観点から、好ましくは0.7〜1.3dl/gであり、より好ましくは0.85〜1.1dl/gである。
また、ブロック共重合体(A−1)に含有される結晶性プロピレン単独重合体部分のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定された分子量分布(Q値、Mw/Mn)として、好ましくは3以上7未満であり、より好ましくは3〜5である。
ブロック共重合体(A−1)に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分に含有されるプロピレンに由来する構造単位の重量(プロピレン含量)とエチレンに由来する構造単位の重量(エチレン含量)との比(プロピレン含量/エチレン含量(重量/重量))は、良好な剛性と耐衝撃性のバランスを得るという観点から、好ましくは65/35〜52/48であり、より好ましくは62/38〜55/45である。
ブロック共重合体(A−1)に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度([η]EP)は、耐衝撃性や低光沢性を良好にするという観点から、4.0〜5.5dl/gであり、好ましくは4.3〜4.9dl/gである。
ブロック共重合体(A−1)のメルトフローレート(MFR)は、成形性や耐衝撃性を高めるという観点から、好ましくは10〜120g/10分であり、より好ましくは20〜50g/10分である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造方法としては、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体成分を接触させて得られる触媒系を用い、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。この触媒系およびその製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報等に記載の触媒系および製造方法が挙げられる。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の重合方法としては、例えば、少なくとも2段階の重合工程からなり、第1工程で結晶性プロピレン単独重合体部分を製造した後、第2工程で、エチレン含有量が35〜48重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を製造する方法等が挙げられる。
重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、また、これらの重合方法を任意に組合せもよい。工業的かつ経済的に有利であるという観点から、好ましくは、連続式の気相重合法、連続式のバルク−気相重合法である。
より具体的な製造方法としては、
(1)前記の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)を接触させて得られる触媒系の存在下に、少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、1槽目の重合槽で結晶性プロピレン単独重合体部分を製造した後、生成物を第2槽目の重合槽に移し、第2槽目の重合槽でエチレン含有量が35〜48重量%であり、極限粘度が4.0〜5.5dl/gプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を連続的に製造する方法、
(2)前記の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)を接触させて得られる触媒系の存在下に、少なくとも4槽からなる重合槽を直列に配置し、1〜2槽目の重合槽で結晶性プロピレン単独重合体部分を製造した後、生成物を第3槽目の重合槽に移し、第3〜4槽目の重合槽でエチレン含有量が35〜48重量%あり、極限粘度が4.0〜5.5dl/gであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を連続的に製造する方法、
等が挙げられる。
前記の重合方法における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めることができる。
重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。また、分子量調整剤として、例えば、水素を用いても良い。
ブロック共重合体(A−1)の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)および有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
ブロック共重合体(A−1)には、必要に応じて、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性、耐酸化安定性を向上させるためには、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
ブロック共重合体(A−1)の製造方法としては、前記の触媒系を用いて前記の重合方法によって製造する方法の他、前記の触媒系を用いる製造方法によって得られた重合体に、過酸化物を配合し溶融混練して製造する方法が挙げられる。
前記の触媒系を用いる製造方法によって得られた重合体に、過酸化物を配合し溶融混練して製造された重合体に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度([η]EP)は、溶融混練して製造された重合体の20℃キシレン可溶成分の極限粘度を測定することによって求められる。
過酸化物としては、一般に有機系過酸化物が用いられ、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類および過酸化カーボネート類等が挙げられる。
過酸化アルキル類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t―ブチルパーオキサイド、ジ−t―ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミル、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。
過酸化ジアシル類としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。
過酸化エステル類としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t―ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルーパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアディペート等が挙げられる。
過酸化カーボネート類としては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチル パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン単独重合体(A−2)とを含有するプロピレン重合体混合物(A−3)である場合、プロピレン重合体混合物(A−3)に含有されるブロック共重合体(A−1)の含有量は、通常、30〜99重量%であり、プロピレン単独重合体(A−2)の含有量は、通常、1〜70重量%である。好ましくは、ブロック共重合体(A−1)の含有量が45〜90重量%であり、プロピレン単独重合体(A−2)の含有量が55〜10重量%である。
プロピレン単独重合体(A−2)のアイソタクチック・ペンタッド分率として、好ましくは、0.97以上であり、より好ましくは0.98以上である。
プロピレン単独重合体(A−2)のメルトフローレート(MFR:230℃、荷重2160g)は、通常、10〜500g/10分であり、好ましくは40〜350g/10分である。
プロピレン単独重合体(A−2)の製造方法としては、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と同様の製造方法が挙げられ、ブロック共重合体(A−1)の製造に用いられる触媒系と同様の触媒系を用いる製造方法が挙げられる。
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)は、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有するエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムである。炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。
共重合体ゴム(B)に含有されるα−オレフィンの含有量は、衝撃性強度、特に低温衝撃強度を高めるという観点から、通常、20〜50重量%であり、好ましくは、24〜50重量%である(ただし、共重合体ゴム(B)の全量を100重量%とする)。
共重合体ゴム(B)としては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムまたはエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムである。また、少なくとも2種のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
共重合体ゴム(B)の密度は、良好な剛性と耐衝撃性のバランスを得るという観点から、0.850〜0.870g/cm3であり、好ましくは0.850〜0.865g/cm3である。
共重合体ゴム(B)のメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は、成形体のウエルド外観およびフローマーク外観を優れるものにし、かつ、良好な剛性と耐衝撃性のバランスを得るという観点から、0.02〜0.5g/10分であり、好ましくは、0.1〜0.5g/10分である。
共重合体ゴム(B)の製造方法としては、公知の触媒と公知の重合方法を用いて、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを共重合させることによって製造する方法が挙げられる。
公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、チーグラーナッタ触媒系又はメタロセン触媒系等が挙げられ、公知の重合方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法又は気相重合法等が挙げられる。
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)は、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有するエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムである。炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。
共重合体ゴム(C)に含有される炭素数4〜12のα−オレフィンの含有量は、衝撃強度、特に低温衝撃強度を高めるという観点から、通常、20〜50重量%であり、好ましくは、24〜50重量%である(ただし、共重合体ゴム(C)の全量を100重量%とする)。
共重合体ゴム(C)としては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムまたはエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムである。また、少なくとも2種のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
共重合体ゴム(C)の密度は、良好な剛性と耐衝撃性のバランスを得るという観点から、0.850〜0.870g/cm3であり、好ましくは0.850〜0.865g/cm3である。
共重合体ゴム(C)のメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は、良好な剛性と耐衝撃性のバランスを得る観点から、1〜20g/10分であり、好ましくは、1〜15g/10分であり、さらに好ましくは1〜10g/10分である。
共重合体ゴム(C)の製造方法としては、共重合体ゴム(B)の製造方法と同じ製造方法が挙げられる。
本発明で用いられる無機充填剤(D)は、通常、ポリプロピレン系樹脂組成物の剛性を向上させるために用いられるものであり、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、硫酸マグネシウム繊維等が挙げられ、好ましくはタルクまたは硫酸マグネシウム繊維である。これらの無機充填剤は、少なくとも2種を併用しても良い。
無機充填剤(D)として用いられるタルクとして、好ましくは、含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶構造は、パイロフィライト型三層構造であり、タルクはこの構造が積み重なったものである。タルクとして、より好ましくは、含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものである。
タルクの平均粒子径として、好ましくは3μm以下である。ここでタルクの平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水またはアルコールである分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
タルクは、無処理のまま使用しても良く、または、ポリプロピレン樹脂(A)との界面接着性や、ポリプロピレン樹脂(A)に対する分散性を向上させるために、公知の各種の界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。界面活性剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
無機充填剤(D)として用いられる硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長として、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。また、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径として、好ましくは0.3〜2μmであり、より好ましくは0.5〜1μmである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂(A)の含有量は58〜80重量%であり、好ましくは58〜70重量%であり、より好ましくは60〜70重量%である(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
ポリプロピレン樹脂(A)の含有量が58重量%未満である場合、剛性が低下することがあり、80重量%を超えた場合、衝撃強度が低下することがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)の含有量は1〜16重量%であり、好ましくは6〜13重量%である。共重合体ゴム(B)の含有量が1重量%未満である場合、低光沢性が不十分となったり、衝撃強度が低下することがあり、16重量%を超えた場合、流動性や剛性が低下することがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)の含有量は1〜16重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。共重合体ゴム(C)の含有量が1重量%未満である場合、衝撃強度が低下することがあり、16重量%を超えた場合、剛性が低下することがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有される無機充填剤(D)の含有量は、剛性や衝撃強度を高めるという観点から、18〜25重量%であり、好ましくは19〜23重量%である。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)の合計は2〜17重量%未満であり、好ましくは9〜15重量%である。共重合体ゴム(B)と共重合体ゴム(C)の合計が、2重量%未満の場合、耐衝撃性が不充分なことがあり、17重量%以上の場合、剛性が不充分なことがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、各成分を溶融混練する方法が挙げられ、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いる方法等が挙げられる。混練の温度は、通常、170〜250℃であり、時間は、通常、1〜20分である。また、各成分の混練は同時に行っても良く、分割して行っても良い。
各成分を分割して混練する方法としては、例えば、次の(1)、(2)、(3)の方法が挙げられる。
(1)ブロック共重合体(A−1)を事前に混練してペレット化し、同ペレットと共重合体ゴム(B)と共重合体ゴム(C)と無機充填剤(D)とを一括して、混練する方法。
(2)ブロック共重合体(A−1)を事前に混練してペレット化し、同ペレットと単独重合体(A−2)と共重合体ゴム(B)と共重合体ゴム(C)と無機充填剤(D)とを一括して、混練する方法。
(3)ブロック共重合体(A−1)と共重合体ゴム(B)と共重合体ゴム(C)とを混練した後、無機充填剤(D)を添加し、混練する方法。
(4)ブロック共重合体(A−1)と無機充填剤(D)を混練した後、共重合体ゴム(B)と共重合体ゴム(C)を添加し、混練する方法。
なお、上記(3)または(4)の方法において、結晶性プロピレン単独重合体(A−2)を、任意に添加しても良い。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。耐熱性、耐候性、耐酸化安定性を向上させるためには、酸化防止剤または紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、機械物性のバランスをさらに改良するために、ビニル芳香族化合物含有ゴムを添加しても良い。
ビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体等が挙げられ、その共役ジエン部分の二重結合の水素添加率として、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上である(ただし、共役ジエン部分に含有される二重結合の全量を100重量%とする)。
ビニル芳香族化合物含有ゴムのGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法によって測定される分子量分布(Q値)として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは1〜2.3である。
ビニル芳香族化合物含有ゴムに含有されるビニル芳香族化合物の含有量として、好ましくは10〜20重量%であり、より好ましくは12〜19重量%である(ただし、ビニル芳香族化合物含有ゴムの全量を100重量%とする)。
ビニル芳香族化合物含有ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、230℃)として、好ましくは0.01〜15g/10分であり、より好ましくは0.03〜13g/10分である。
ビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体、または、これらのブロック共重合体を水添したブロック共重合体等が挙げられる。さらに、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)にスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させたゴムも挙げられる。また、少なくとも2種のビニル芳香族化合物含有ゴムを併用しても良い。
ビニル芳香族化合物含有ゴムの製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴムまたは共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を、重合または反応等によって結合させる方法等が挙げられる。
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例および比較例で用いた重合体および組成物の物性の測定方法を、以下に示した。
(1)極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
(1−1)結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の極限粘度
(1−1a)結晶性プロピレン単独重合体部分の極限粘度:[η]P
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に含有される結晶性プロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]Pは、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造時に、第1工程である結晶性プロピレン単独重合体部分の重合後に、重合槽内より重合体パウダーを取り出し、上記(1)の方法で測定して求めた。
(1−1b)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度:[η]EP
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EPは、プロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度[η]Tを、それぞれ上記(1)の方法で測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率Xを用いて、次式から算出して求めた。(プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率Xは、下記(2)の測定方法によって求めた。)
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
過酸化物で熱分解処理した結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EPは、下記方法で得た20℃キシレン可溶成分の極限粘度を測定し、その値を用いた。
[20℃キシレン可溶成分]
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し4時間放置する。その後これを濾別し、20℃キシレン不溶部を分離した。濾液を濃縮、乾固してキシレンを蒸発させ、さらに減圧下60℃で乾燥して、20℃のキシレンに可溶な重合体成分を得た。
(2)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X、および、プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量:[(C2’)EP
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982,15,1150−1152)に基づいて求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン−エチレンブロック共重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
(3)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。
ポリプロピレン樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂組成物については、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
共重合体ゴム(B)および共重合体ゴム(C)については測定温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
(4)光沢(単位:%)
JIS−K−7105に規定された方法に基づき、成形品の60°鏡面光沢度を測定した。
(5)アイゾット衝撃強度(Izod、単位:kJ/m2
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが3.2mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いて、測定温度は−30℃で測定した。
(6)アイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm])
アイソタクチック・ペンタッド分率として、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法(すなわち13C−NMRを用いる方法)によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖(換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖)の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率を求めた。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発行されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行った。
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。この方法により英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
〔射出成形体の製造−1〕
上記(4)の物性評価用の射出成形体である試験片は、住友重機械工業製 SE180D射出成形機、金型として、100mm×400mm×3.0mmt、成形温度220℃、金型温度50℃条件で成形を実施し、平板成形体を得た。
〔射出成形体の製造−2〕
上記(5)の物性評価用の射出成形体である試験片は、東芝機械製IS150E−V型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃の条件で射出成形を行って得た。
実施例および比較例で用いた重合体の製造に用いた固体触媒成分(I)の合成方法を以下に示した。
(1)固体触媒成分(I)
200リットルの円筒型反応器(直径0.35mの攪拌羽根を3対持つ撹拌機および幅0.05mの邪魔板4枚を備えた直径0.5mのもの)を窒素置換し、ヘキサン 54リットル、ジイソブチルフタレート 100g、テトラエトキシシラン 20.6kg及びテトラブトキシチタン 2.23kgを投入、撹拌した。次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1モル/リットル)51リットルを反応器内の温度を7℃に保ちながら4時間かけて滴下した。この時の攪拌回転数は150rpmであった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体について室温下トルエン 70リットルでの洗浄を3回実施し、トルエンを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。該固体触媒成分前駆体は、Ti:1.9重量%、OEt(エトキシ基):35.6重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒径は39μmであり、16μm以下の微粉成分量は0.5重量%であった。次いでスラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、80℃で1時間攪拌し、その後、スラリーを40℃以下となるように冷却し、攪拌下、テトラクロロチタン 30リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入、さらにオルトフタル酸クロライド 4.23kgを投入した。反応器内の温度を110℃として3時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を3回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgと、ジイソブチルフタレート 0.87kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を3回、ヘキサン 90リットルでの洗浄を2回実施した。得られた固体成分を乾燥し、固体触媒成分を得た。該固体触媒成分は、Ti:2.1重量%、フタル酸エステル成分:10.8重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(I)と呼ぶ。
〔重合体の重合〕
(1)プロピレン単独重合体(HPP)の重合
特開平10-212319号公報記載の触媒を用い、一般的な溶媒重合法にて、系内の水素濃度と、重合温度を制御することによって得られた。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは0.76dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.991、分子量分布Q値(Mw/Mn)は5.3であった。またMFRは307g/10分であった。
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(BCPP−1)の重合
固体触媒成分(I)を用い、第一段階でプロピレン単独重合体部分を重合した後、第二段階でプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を、連続的に二段階の気相重合プロセスにより重合した。第一段階では系内の水素濃度と重合温度を制御し、第二段階でにおいては反応温度と反応圧力を一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、かつ、気相部の水素濃度、気相部のエチレン濃度を一定保つように水素とエチレンを供給しながらプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の気相重合を継続した。第一段階で重合したプロピレン単独重合体をサンプリングし分析した結果、極限粘度〔η〕Pは0.93dl/gであり、立体規則性(mmmm分率)は0.987であった。最終的に得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度([η]Total)は1.64dl/gであった。分析の結果プロピレン−エチレンランダム共重合体含量(EP含量)は19.2重量%であったので、第三槽で生成したプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP部)の極限粘度[η]EPは4.6dl/gであった。又、分析の結果EP部でのエチレン含量は42重量%であった。またMFRは30g/10分であった。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
(3)プロピレン−エチレンブロック共重合体(BCPP−2)の重合
固体触媒成分(I)を用い、第一段階でプロピレン単独重合体部分を重合した後、第二段階でプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を、連続的に二段階の気相重合プロセスにより重合した。第一段階では系内の水素濃度と重合温度を制御し、第二段階でにおいては反応温度と反応圧力を一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、かつ、気相部の水素濃度、気相部のエチレン濃度を一定保つように水素とエチレンを供給しながらプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の気相重合を継続した。第一段階で重合したプロピレン単独重合体をサンプリングし分析した結果、極限粘度〔η〕Pは1.05dl/gであり、立体規則性(mmmm分率)は0.971であった。最終的に得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度([η]Total)は1.33dl/gであった。分析の結果プロピレン−エチレンランダム共重合体含量(EP含量)は18.7重量%であったので、第三槽で生成したプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP部)の極限粘度[η]EPは2.5dl/gであった。又、分析の結果EP部でのエチレン含量は40重量%であった。またMFRは30g/10分であった。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
実施例―1
プロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP―1)100重量部に対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加したのち、押し出し機で造粒した。
このBCPP−1ペレット51重量%、プロピレン単独重合体(HPP)パウダー15重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)としてエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム EBR(密度0.861g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重)g/10分)は0.2であった。)を9重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)としてエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム EOR(密度0.857g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重)g/10分)は1.0であった。)を4重量%、無機充填材(D)として平均粒子径2.7μmのタルク21重量%の組成割合で配合し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS−30BW−2V型)を用いて、押し出し量50kg/hr、200℃、スクリュー回転数を350rpmで混練押出して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。表2に各成分の配合割合と造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形品の物性の評価結果を示した。
比較例−1
実施例−1で用いたBCPP−1ペレット60重量%、プロピレン単独重合体(HPP)パウダー10重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)としてエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム EBR(密度0.861g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重)g/10分)は0.2であった。)を9重量%、無機充填材(D)として平均粒子径2.7μmのタルク21重量%の組成割合とし、実施例−1と同様の処理を行いMFRと射出成形品の物性を評価した。表2に評価結果を示した。
比較例−2
BCPP−1ペレット57重量%、プロピレン単独重合体(HPP)パウダー10重量%、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム EOR(密度0.857g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重)g/10分)は1.0であった。)を12重量%、無機充填材(D)として平均粒子径2.7μmのタルク21重量%の組成割合で配合し、実施例−1と同様の処理を行いMFRと射出成形品の物性を測定した。
比較例−3
BCPP−2パウダー51重量%、プロピレン単独重合体(HPP)パウダー15重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)としてエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム EBR(密度0.861g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重)g/10分)は0.2であった。)を9重量%、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム EOR(密度0.857g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重)g/10分)は1.0であった。)を4重量%、無機充填材(D)として平均粒子径2.7μmのタルク21重量%の組成割合で配合し、実施例−1と同様の処理を行いMFRと射出成形品の物性を測定した。表2に評価結果を示した。
Figure 2008019347
Figure 2008019347
本発明の要件を満足する実施例−1であるポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体は、耐低温衝撃性と低光沢性に優れたものであることが分かる。
本発明の要件であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)を含有しない比較例−1は、耐低温衝撃性が十分でないことが分かる。
本発明の要件であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)を含有しない比較例−2は、耐低温衝撃性および低光沢性が十分でないことが分かる。
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度が、本発明の要件を満足しない比較例−3は、低光沢性が十分でないことが分かる。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン樹脂(A)58〜80重量%と、
    エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)1〜16重量%と、
    エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)1〜16重量%と、
    無機充填剤(D)18〜25重量%とを含有し、
    エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)の合計が2重量%以上17重量%未満であるポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)であって、
    ポリプロピレン樹脂(A)が、結晶性プロピレン単独重合体部分と極限粘度が4.0〜5.5dl/gであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、または、前記ブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン単独重合体(A−2)とを含有するプロピレン重合体混合物(A−3)であり、
    エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)が、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.850〜0.870g/cm3、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.02〜0.5g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムであり、
    エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(C)が、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.850〜0.870g/cm3、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムであるポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分に含有されるプロピレンに由来する構造単位の重量(プロピレン含量)とエチレンに由来する構造単位の重量(エチレン含量)との比(プロピレン含量/エチレン含量(重量/重量))が、65/35〜52/48である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)に含有される結晶性プロピレン単独重合体部分、または、プロピレン重合体混合物(A−3)に含有される結晶性プロピレン単独重合体である成分の13C-NMRによって測定されるアイソタクチックペンタッド分率が0.97以上である請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. 無機充填剤(D)が、タルクである請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
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