JPWO2018150845A1 - 電動機および電動機の製造方法 - Google Patents

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崇徳 天谷
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Abstract

電動機は、固定子コアと、固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、を有する固定子と、固定子を覆う樹脂と、異常時に、前記電線に対して断線を促す断線促進部と、を備える。断線促進部は、コイルをモールド樹脂で覆った固定子を有する電動機において、コイル相間の渡り線部分、中性点の接続部分、およびリード線の接続部分の少なくとも一箇所に取付けられる。

Description

本発明は、固定子がモールド樹脂で覆われている電動機(いわゆるモールドモータ)、および電動機の製造方法に関する。
図34は、従来の電動機の正面断面図である。図34に示すように、回転子120と固定子110とを備えた電動機100において、固定子110がモールド樹脂131で覆われている。電動機100は、モールドモータとも称せられ、既に広く知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
固定子110は、複数枚の金属板を積層して形成される固定子コア111と、固定子コア111に巻回されているコイル(巻線)112とを有している。固定子110が有するコイル112は、モールド樹脂131で覆われている。特に、固定子コア111からはみ出たコイル112の一部は、コイルエンド112aともいう。コイル112と固定子コア111との電気的絶縁を目的として、コイル112と固定子コア111との間には、インシュレータ113が取付けられる。
図35は、従来の電動機の樹脂モールドが施される前の固定子の斜視図である。図35に示す固定子コア111は、12個のティースを有する。それぞれのティースには電線が巻き回される。このため、図35中、12個のコイル112が存在する。固定子110が、例えば、U相、V相、W相を有する3相電動機に用いられる場合、各相はそれぞれ4個のコイル112に跨る。各相を成すコイル112間は、コイルエンド112aと接するインシュレータ113の外周部に巻き回された渡り線114でつながれている。
また、3相同士は、中性点で繋がっている。さらに、各相を成すコイル112には、電動機の外部へとつながるリード線が接続されている。各相を成すコイル112には、このリード線を介して、電動機の外部から電力が供給される。
ところで、コイル112に過大な電流が流れると、コイル112が発熱して極めて高温となり、コイル112を成す電線間でレアショートを発生する恐れがある。コイル112は、導体の外周が絶縁体で覆われている。外周を絶縁体で絶縁されているコイル同士において、絶縁体が熱で溶けるなど、何らかの原因で短絡してしまう恐れがある。例えば、一切の安全保護装置を働かせないという特殊な環境下において、コイル112にレアショートが発生した場合、電動機の内部で火花が生じることがある。レアショートによる火花が生じた場合、インシュレータ113等が熱せられることにより、生じたガスに引火して、発火する恐れがある。
このような電動機100の発火を抑制するため、電動機100に供給する電流を遮断する方法がある。一般的に、電動機100に供給する電流を遮断する方法として、電動機100の回路に温度ヒューズや電流ヒューズを設けるものがある。
また、電動機のリード線またはブラシリード線において、断面積を局部的に小さくする凹部を設ける方法(特許文献2を参照)、または、界磁コイルにおいて、全長の1/2以上の範囲に亘って、断面積を減少させる方法(特許文献3を参照)などが提案されている。
しかしながら、電動機を備えた機器の耐性向上を目的として、構成要素である電動機には、更なる安全性の向上が求められている。具体的には、前述した特殊な環境下において、コイルにレアショートが発生した場合、電動機から電動機外部に向けて、火が洩れ出る可能性があるという問題があった。
また、特許文献2に示す、電動機リード線またはブラシリード線において、断面積を局部的に小さくする凹部を設ける方法は、回路抵抗が大きくなる。このため、出力が低下して電動機の特性を低下させる場合がある。断面積を局部的に小さくした部分が、樹脂などでモールドされていた場合、その部分の溶断が困難になる。あるいは、たとえその部分が溶断したとしても、溶断した電線同士が再接触する、または、溶断時の熱で炭化した樹脂が導通部材として働き、電流を十分に遮断できないという可能性も高い。
特許文献3に示す、界磁コイルにおいて、全長の1/2以上の範囲に亘って断面積を減少させる方法は、界磁コイルのレアショートを招く可能性が高く、電線溶断による電流遮断が十分できないことが考えられる。また、通常の断面積のコイル部分と断面積を減少させたコイル部分とが存在する場合、これらを接続する工法またはその工法を実現する工数の増加という課題がある。
国際公開第2012/101976号 特開平10−66311号公報 日本国特許第4075750号公報
本発明は、上記問題を解決するものであり、例え、固定子が有するコイルに過大な電流が流れることを防止する全ての安全保護回路が正常に機能せず、固定子が有するコイルに過大な電流が流れたとしても、その外部に火または煙が出ることを防止できる電動機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の電動機は、固定子と、固定子を覆う樹脂と、電線に対して断線を促す断線促進部と、を備える。固定子は、固定子コアと、固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、を有する。断線促進部は、固定子コアに巻き回されたコイル間の渡り線部分、コイルが成す複数相の中性点の接続部分、および、電線と、外部から電線に電力を供給するリード線との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる。
この構成によれば、万一、従来の一般的な安全保護回路が正常に機能せず、固定子が有するコイルに過大な電流が流れたとしても、断線促進部が取付けられた、コイル間の渡り線部分、中性点の接続部分、あるいは、電線とリード線との接続部分のうち、いずれかの温度が最も早く上昇する。よって、断線促進部が取付けられた部分の電線が溶断して、電動機への通電が遮断される。このため、電動機の発火を防止できる。
なお、断線促進部が、少なくとも空気を含む空間であれば、モールド部分よりも熱伝導率が小さくなるため、より早く温度上昇させることができるとともに、溶断後の電線の接触による再通電や火花の発生を低減できる。
また、断線促進部は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材、あるいは、溶融して気体となる部材で形成される。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、安全に機能することを考慮すると、20℃以上高いことが好ましい。
本構成とすれば、所定の温度以上において、断線促進部内で電線が移動する自由度を上げることができる。よって、電線が溶断し易くなる。同時に、溶断後の電線が接触することで生じる再通電、または火花の発生を低減できる。
また、断線促進部内に位置する電線の部分は、断線促進部外に位置する電線の部分よりも断面積が小さい。本構成とすれば、断線促進部内に位置する電線の電気抵抗を大きくできるため、温度上昇を加速できる。よって、本構成の電動機は、固定子が有するコイルに過大な電流が流れた場合に、より早く確実に、断線促進部内に位置する電線を溶断できる。
なお、電線の断面積を小さくするには、電線を伸長する、電線を捻る、あるいは、電線を屈曲することで実現できる。あるいは、電線の断面積を小さくするには、電線の一部を扁平状、または凹状に変形させることで実現できる。これらの加工方法あるいは形状を採用すれば、簡易に電線の断面積を小さくすることができるので好ましい。
また、断線促進部内に位置する電線は、断線促進部外に位置する電線よりも細い線径の電線で構成される。具体的には、断線促進部内に位置する電線は、コイルに使用している電線よりも細い導体径を有する電線が用いられる。本構成とすれば、電線の断面積を小さくして、断線促進部内に位置する電線の溶断を促進できるので好ましい。
また、断線促進部は、電線を変形させる変形部と、保持部と、を含む。保持部は、変形部を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材、あるいは、溶融して気体となる部材で形成される。断線促進部は、保持部が溶融して液状または気体となったとき、変形部が予め定められた可動範囲を移動する。電線の変形には、電線の断面形状を変形すること、あるいは、電線を切断することが含まれることがある。
あるいは、断線促進部は、電線を変形させる変形部と、保持部と、を含む。保持部は、変形部を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される。断線促進部は、保持部の形状が変化したとき、変形部が予め定められた可動範囲を移動する。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
本構成とすれば、予め電線の一部の断面積を小さくする必要がない。電線に過大な電流が流れて異常な高温になった場合にのみ、電線を変形、または切断して、電流を遮断できる。よって、電動機の本来の特性や信頼性に全く影響を与えることなく、安全性を高めることが可能となる。
しかも、これらの構成を採用すれば、所定の温度で通電を遮断するように制御できるため好ましい。
本発明によれば、固定子の電線が樹脂で覆われたモールドモータにおいて、過大な電流が流れて電線が高温になった場合に、断線促進部内に位置する電線の温度上昇が、断線促進部外に位置する電線に比べて早くできたり、電線が移動する自由度を向上できたりする。よって、断線促進部内に位置する電線が、溶断され易くなる。したがって、電動機の発火を防止できる。
また、断線促進部によって、電線の溶断後において、電線の接触による再通電なども抑制できる。なお、断線促進部の内部が気体の場合は、溶断時の熱で炭化した樹脂が導通部材として働き、電流を十分に遮断できない可能性も低減できる。
さらに、断線促進部内に位置する電線の断面積を小さくすることで、電線の温度上昇を加速できる。このため、太い線径の電線を用いる場合でも十分に対応できる。また、温度上昇時において、断線促進部内に位置する電線を変形、または切断できる変形部を備える。これにより、電動機の特性に全く影響を与えることなく、異常な温度上昇時にのみ、断線促進部内に位置する電線の通電を遮断できる。よって、より信頼性が高い電動機を提供することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る電動機の正面図である。 図2は、本発明の実施の形態1に係る電動機の分解斜視図である。 図3は、本発明の実施の形態1に係る電動機を部分的に拡大した側面の断面図である。 図4は、本発明の実施の形態1に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。 図5は、図4に示す固定子の正面図である。 図6は、本発明の実施の形態1に係る電動機に用いられる固定子が有する断線促進部を説明する要部説明図である。 図7は、本発明の実施の形態1に係る電動機の使用状態を説明する概要図である。 図8は、本発明の実施の形態2に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図9は、図8に示す固定子の平面図である。 図10は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図11は、図10に示す固定子の平面図である。 図12は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図13は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図14は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる断線促進部内に位置する渡り線の要部拡大図である。 図15は、図14のC−C線で切断した渡り線の断面図である。 図16は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる断線促進部内に位置する他の渡り線の要部拡大図である。 図17は、図16のD−D線で切断した渡り線の断面図である。 図18は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図19は、図18に示す固定子の平面図である。 図20は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図21は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図22は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図23は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。 図24は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図25は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。 図26は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。 図27は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図28は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。 図29は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す説明図である。 図30は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図31は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す斜視図である。 図32は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられるさらに他の断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図33は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられるさらに他の断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。 図34は、従来の電動機の正面断面図である。 図35は、従来の電動機の樹脂モールドが施される前の固定子の斜視図である。
本発明の電動機は、固定子コイルを樹脂でモールドした固定子を有する電動機である。コイル間の渡り線部分、または中性点の接続部分、または、電線とリード線との接続部分のうち、少なくとも一箇所に断線促進部が取付けられる。
断線促進部は、固定子を樹脂モールドするための樹脂以外の部材で、電線の周囲を囲む構造である。断線促進部は、コイルに過大な電流が流れるなどして異常な温度になった場合に、所定の温度で、電線の周囲が液状、または気体状になる部材で構成されている。この内部の部材(内材)は、上記温度以下で気体状であっても、もちろん構わない。なお、その場合は、固定子をモールドする樹脂が、断線促進部に侵入しない構造とする。また、以下の説明において、異常時とは、主に、コイルを成す電線に過大な電流、いわゆる過電流が流れる状態をいう。あるいは、コイルを成す電線にレアショートなどの不具合が発生した結果、電線が高温になる状態も含む。
上述した構造とは、モールド時の温度より耐熱性が高い樹脂、金属、またはセラミックスなどの構造材で電線を囲み、かつモールド樹脂が侵入しない構造である。例えば、本構成には、円筒または箱形の形状の部材(囲い材)で電線を囲んだ後、電線出入り口を塞いだ構造が挙げられる。なお、インシュレータの一部を上記のような形状として、断線促進部とインシュレータとを一体化しても勿論構わない。
また、電線出入り口を塞ぐ部材の材質としては、例えば、モールド時の温度より耐熱性が高い樹脂またはゴム、エラストマーなどが挙げられる。電線出入り口を塞ぐ部材の材質としては、モールド樹脂が侵入しない程度の密閉性が確保できれば十分である。なお、電線出入り口を塞ぐ部材の材料としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(Bulk Molding Compound(BMC))、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂などがあり、もちろんモールド樹脂と同じ材質のものでも構わない。その他の構造として、密閉性の優れている囲い材で電線出入り口を塞ぐ構造でもよい。
また、断線促進部内の物質(内材)は、引火性、爆発性などの小さいもので、かつ熱伝導が小さく、電線の温度を早く上昇させられるものが好ましい。そのため、取扱および安全性の観点から、空気が最も好ましい。あるいは、断線促進部内の物質(内材)は、引火性および爆発性の小さなゲル状物質でも構わない。
断線促進部の内部が、所定の温度以上で液状、または気体状になる材質で構成されている場合、電線周囲をその材質で囲み、断線促進部の外部を、固定子をモールドする樹脂で覆う構造としてもよい。具体的には、その材質として、所定の温度に融点を有する熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。その他、モールド時の温度、または電動機使用時のコイル温度などから、適切な材質を選択すればよい。また、その材質の電線取付け方法として、予め電線を挟むような形状に成形したものを取付ける方法、または、電線に直接成形する方法などが挙げられる。
なお、断線促進部内の材質(内材)として、熱可塑性樹脂以外でもよく、例えばエラストマーなどを用いてもよい。また、断線促進部の内材が、所定の温度で発泡して空隙または気体を生成する発泡剤を含むものでもよい。
また、本発明の電動機に用いられる電線は、一般的に用いられる電線を使用できる。具体的には、電線の導体材質として、銅、アルミニウム、銅とアルミニウムのクラッド線などが、導電性、および巻線性等の観点から好ましい。なお、異常温度での断線を促進させるためには、融点が低く、変形され易いアルミニウムが最も好ましい。
また、電線の絶縁被膜も、一般に用いられるワニスを使用できる。具体的には、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。これらの材質のワニスを用いる場合、従来のエナメル線が有している各種特徴を発揮でき、電動機の仕様、特性、信頼性などを得られるため、好ましい。
また、本発明の断線促進部内に位置する電線の少なくとも一部は、電線を伸長、電線を捻る、または、電線を屈曲させることで、容易に部分的に断面積を小さくすることができる。これにより、電線の断面積が小さい部分のみ電気抵抗値が大きくなって、温度上昇が大きくなり、その部分での溶断を促進できるため好ましい。この部分的な断面積の減少は、電動機全体から見れば小さいため、電動機の特性には殆んど影響を与えることがない。よって、過電流時の安全性を高めることができる。なお、断面積を小さくする部分の大きさは、数mm〜数cm程度が好ましい。また、断面積を小さくする割合としては、電動機の仕様(通常使用時の印加電流や電力、電線導体の線径、抵抗値など)、および溶断させたい条件(過電流値、温度など)によって、適切に選択することができる。この場合、初期状態の40%〜90%が好ましく、初期状態の50%〜80%が最も好ましい。
また、本発明の断線促進部は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時における最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材としてもよい。
あるいは、本発明の断線促進部は、熱感応導電材と、囲い材と、を含む構成でもよい。熱感応導電材は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時における最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する。囲い材は、熱感応導電材の周囲に空気を含むように熱感応導電材を囲む空間を形成する。
特に、熱感応導電材には、上述した温度で断線する抵抗器を用いることができる。また、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
抵抗器の具体例として、つぎのものを使用できる。抵抗器には、一般的に使用されている固定抵抗器を使用できる。具体的に使用できる固定抵抗器には、炭素皮膜固定抵抗器、金属皮膜固定抵抗器、酸化金属皮膜固定抵抗器、あるいは、巻線固定抵抗器などがある。
また、断線促進部が取り付けられる状況を考慮して、固定抵抗器の形状は、面実装タイプまたはリードタイプ等から、適宜、選択することができる。
なお、使用される抵抗器には、つぎのことが求められる。使用される抵抗器は、電動機の通常運転時において、電動機の特性または信頼性に影響を与えることを抑える必要がある。一方、使用される抵抗器は、電動機に過負荷電流などが流れて、上述した温度に達した場合にのみ、断線する特性を有することが求められる。使用される抵抗器において、その抵抗値、定格電力、または許容電流などの特性は、電動機に求められる特性または信頼性などにより、適宜、選択される。
ここで、断線促進部は、断線促進部そのものを熱感応導電材にしてもよい。あるいは、断線促進部は、上述したように、囲い材を用いてモールド樹脂が侵入しない構造物の内部に、熱感応導電材が位置する構造とすることもできる。この場合、囲い材を用いるため、断線促進部の寸法は大きくなることがある。しかし、断線促進部の内部において、囲い材と熱感応導電材との間に空気が存在するため、熱感応導電材の断熱性を高めることができる。よって、過電流などにより電動機の温度が上昇した際、より早く断線促進部の断線を促すことができる。このため、電動機に流れる電流を早期に遮断することができる。
なお、上記説明では、熱感応導電材として抵抗器を例示したが、同様の作用効果を奏すれば、他の部材も使用できる。例えば、熱感応導電材として、ジャンパー線またはヒューズなどを使用することができる。
また、断線促進部内に位置する電線は、少なくとも一部の電線の断面形状を扁平状、または凹状に変形することで、断面積を小さくしてもよい。なお、断面積を小さくする部分の大きさは、上記と同様に数mm〜数cm程度が好ましい。断面積を小さくする割合としては、電動機の仕様または溶断させたい条件によって、適切に選択することができる。この場合、初期状態の40%〜90%が好ましく、初期状態の50%〜80%が電動機の信頼性と高温時の溶断性を両立し易いため、より好ましい。
また、断線促進部内に位置する電線を、コイルに使用している電線よりも細い導体径を有する電線にすることで、断面積を小さくして、断線促進部内に位置する電線の溶断を促進してもよい。
また、断線促進部内に位置する電線の少なくとも一部に、モールド成形温度、または電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、どちらかが高温となる方の温度よりも高温で、電線を変形、または切断する治具を設けてもよい。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
この構成によれば、固定子が有する電線が樹脂で覆われたモールドモータにおいて、過大な電流が流されて電線が高温になった場合の対応として、予め電線の一部の断面積を小さくする等の必要はない。言い換えれば、本構成を採用すれば、電動機としての仕様を変更することなく、過大な電流が流れて電線が高温になった場合の対策ができる。具体的には、本構成は、過大な電流が流れて異常な高温になった場合にのみ、電線を変形することで断面積を小さくし、上述したように、断線を促す、または切断して、電流を遮断できるため、より好ましい。
例えば、この断線促進部は、その一部に形状記憶合金を用いることにより、所定の温度に達したときに、断線促進部内に位置する電線を、刃物状または鋏み状、あるいは点または線状に押付ける形状の変形部を作動させるもので実現できる。この断線促進部を用いれば、変形部が、電線を変形する、あるいは切断することができる。形状記憶合金の材質および形状は、断線促進部が動作する環境に合わせて適切に選択すればよい。具体的には、本発明の実施の形態における電動機には、作動温度が200℃前後で作動させることができる、Ti―Ni―(Zr、Hf)―Nb合金、Ti―Ta―Al合金、またはFe―Mn―Si合金などが好ましい。
あるいは、断線促進部は、形状記憶合金に換えて、バネ状の金属などを縮ませた状態で動かないように、熱可塑性樹脂などで一部を覆うものでもよい。本構成とすれば、所定の温度で熱可塑性樹脂が溶融し始めることで、バネ状部分が作動して、電線を変形、あるいは切断することができる。使用される熱可塑性樹脂は、断線促進部の寸法、形状、または印加電流を遮断したい温度などによって、溶融温度または強度特性を考慮して、適切に選択できる。
具体的には、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースなどが好ましい。
また、本発明の実施の形態における電動機に用いられるインシュレータは、どのような材質でも構わないが、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、およびそれらのガラス繊維強化材などが好ましい。
また、本発明の実施の形態における電動機に用いられる樹脂モールド材は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂およびフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。この場合、特性とコストの観点から不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電動機1の正面図である。図2は、同電動機1の分解斜視図である。図3は、同電動機1を部分的に拡大した側面の断面図である。図4は、同電動機1に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。図5は、図4に示す固定子の正面図である。図6は、同電動機1に用いられる固定子が有する断線促進部を説明する要部説明図である。図7は、本発明の実施の形態1に係る電動機1の使用状態を説明する概要図である。
まず、図1から図3を用いて、本発明の実施の形態1に係る電動機1の概要について説明する。
図1から図3に示すように、本発明の実施の形態1に係る電動機1は、固定子10と、回転子20と、1対の軸受30A、30Bと、モールド樹脂31と、を備えている。回転子20は、回転軸21を有して固定子10の内側に位置する。1対の軸受30A、30Bは、回転子20を回転自在に支持する。モールド樹脂31は、固定子10を覆う。ここで、例示する電動機1はブラシレス型である。また、実施の形態1において、電動機1は、電動機1の外殻部(筐体)の一部について平面視をした場合、実質的な円板形状となる第1の金属ケース32、第2の金属ケース33、および回路基板34を備えている。なお、電動機1は、この構成に限るものではない。
固定子10は、複数枚の金属板が重ねられて構成されている固定子コア(固定子鉄心)11と、固定子コア11(詳しくは後述する固定子コア11のティース)に巻回されるコイル(巻線)12と、を有する。固定子コア11は、軸心(回転軸21の軸心)Xに沿って配置される回転子20を囲むように環状に形成されているヨークと、このヨークから軸心Xに向かって凸形状に突出する複数のティースとを有する。
回転子20は、軸心X方向に延伸する回転軸21と、磁石成分を含んで軸心X方向に延伸するとともに回転軸21に固定される回転体22と、を有する。回転体22は、回転子コア23と、回転子コア23の外周面に取付けられた複数の磁石(永久磁石)24と、を有する。磁石24は、回転子コア23の外周面において、隣り合う磁石24の極性がN極とS極に交互に位置するように組み付けられている。回転子20は、第1の金属ケース32の中央部に嵌め込まれた軸受30Aと、第2の金属ケース33の中央部に嵌め込まれた軸受30Bとにより、回転自在に支持されている。
図3から図6に示すように、コイル12は、絶縁体(例えば樹脂)からなるインシュレータ13を介して、固定子コア11に巻回されている。インシュレータ13は、概略的には、底面部13aと、外周壁部13bと、内周壁部13cと、を有する。
図3、図6に示すように、インシュレータ13の底面部13aは、固定子コア11の端面に取付けられる。本実施の形態において、インシュレータ13の底面部13aは、軸心Xと交差する方向に延ばされた面で形成される。インシュレータ13の外周壁部13bは、コイル12が巻回される箇所の外周側に立設して、コイル12の位置を規制する。本実施の形態において、インシュレータ13の外周壁部13bは、軸心Xに沿った方向に延ばされた壁面で形成されている。インシュレータ13の内周壁部13cは、コイル12が巻回される箇所の内周側に立設して、コイル12の位置を規制する。インシュレータ13の内周壁部13cは、軸心Xに沿った方向に延ばされた壁面で形成される。インシュレータ13は、コイル12と固定子コア11との間を電気的に絶縁できれば、この形状に限るものではない。
図3から図7に示すように、電動機1には、各ティースに巻回されたコイル12が他のティースに巻回されたコイル12と連絡する渡り線12bが存在する。渡り線12bは、インシュレータ13の外周壁部13bの外周側などに取付けられる。
コイル12は、固定子コア11から、軸心X方向に対してはみ出る(図3においては、紙面の上方と下方とに突出してはみ出る)コイルエンド12aを有する。コイルエンド12a以外のコイル本体部分は、固定子コア11内に収められている。
図1から図3に示すように、固定子10が有するコイル12、インシュレータ13、固定子コア11(但し、ティースが位置する内周面は除く)および渡り線12bが位置するインシュレータ13の外周側領域(但し、後述する断線促進部40を除く)は、モールド樹脂31で覆われている。
モールド樹脂31の外周面は筒状に形成され、電動機1の外殻部(筐体)の一部である胴部(ケース胴部)31aを成している。
コイルモールド部31bは、コイルエンド12a、インシュレータ13および渡り線12bが位置するインシュレータ13の外周側領域を覆っている。
図3から図7に示すように、実施の形態1に係る電動機1は、固定子10と、固定子10を覆う樹脂であるモールド樹脂31と、異常時に、コイル12を成す電線12cの断線を促す断線促進部40と、を備える。固定子10は、固定子コア11と、固定子コア11に電線12cを巻き回して複数相を成すコイル12と、を有する。
断線促進部40は、固定子コア11に巻き回されたコイル12間の渡り線12b部分、コイル12が成す複数相の中性点14の接続部分14a、あるいは、コイル12を成す電線12cと、外部から電線12cに電力を供給するリード線15との接続部分15a、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる。後述する説明において、断線促進部40は、渡り線部分、あるいは、リード線の接続部分に取り付けられた場合を例示する。
ここで、異常時とは、主に、コイル12を成す電線12cに過大な電流、いわゆる過電流が流れる状態をいう。あるいは、コイル12を成す電線12cにレアショートなどの不具合が発生した結果、電線12cが高温になる状態も含む。
断線促進部40は、空気を含む空間である。
さらに、図面を用いて具体例について詳細に説明する。
図3から図6に示すように、断線促進部40は、渡り線12bの一部に取付けられている。断線促進部40は、渡り線12bの周囲に断線促進体42である空気層が形成される構造となっている。言い換えれば、渡り線12bには、断線促進部40によりモールド樹脂31が付着していない。すなわち、断線促進部40は、渡り線12bがモールド樹脂31と接しないための空間を確保している。なお、実施の形態1では、電動機1は、U相、V相、W相を有する三相モータを例示している。図中、U相、V相、W相の各相に対応する渡り線12bに対して、1つずつ断線促進部40が取付けられているが、これに限るものではない。なお、電動機1の組立方法(製造方法)としては、固定子10をモールド樹脂31で樹脂モールドした後、回転子20を組み込んでいる。
固定子コア11には、外径96mm、積み厚35mmの複数の積層鋼板が用いられる。固定子コア11には、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate(PBT))製のインシュレータ13が取付けられる。固定子コア11には、インシュレータ13を介して、電線12cであるポリウレタン/ナイロン銅線(ポリウレタン/ナイロンで被覆された銅線)が巻き付けられて、コイル12が形成される。コイル12とコイル12の間には、渡り線12bが存在する。
図4、図6に示すように、断線促進部40が取付けられる固定子10は、12スロットを有する。断線促進部40は、PBT製の箱型形状の成形体(囲い材41)である。断線促進部40は、電線12cから成る渡り線12bを囲い、断線促進部40の内部に空気のある空間である断線促進体42を有する。実施の形態1において、断線促進部40の大きさは、内寸8mm×4mm×2mmである。断線促進部40は、渡り線12bの出入り口を有する、PBT板からなる囲い材41で形成される。囲い材41に形成される出入り口は、電線12cの外径よりも0.1mm大きな穴で形成される。渡り線12bは、出入り口を介して、断線促進部40の内外を通っている。
実施の形態1では、渡り線12bを成す電線12cの導体径が、0.2mm(発明品1)、0.4mm(発明品2)、0.6mm(発明品3)の3種類について、評価を行った。具体的には、3種類の電線12cの各々について、固定子10(詳しくは、固定子10のモールド樹脂31以外の部分)を作成した。各固定子10は、コイルエンド12aや固定子コア11の外周部を不飽和ポリエステル樹脂(BMC)で覆う。こうして、モールド樹脂31が施された固定子10を完成させる。
モールド樹脂31を施す際の金型温度は150℃とした。このモールド樹脂31が施された固定子10に回転子20を組み込んで、電動機1を組み立てた。図7に示すように、電動機1の外部に位置する電源90から、固定子10が有するコイル12に通電するためのリード線15は、インシュレータ13に取り付けられているリード線用端子に取付けた。具体的には、リード線15をリード線用端子に巻き付けてはんだ付けを行った上に、セラミックス接着剤を施してさらなる固定を行った。この結果、リード線15とリード線用端子との接続部分15aは、温度が500℃程度まで上昇した場合でも外れないように固定された。
なお、樹脂モールドが施された後の1台の固定子10を切断して、断線促進部40の空間にモールド樹脂31が侵入することなく、空間(断線促進部40内に設けられている内材の1種)が保持されていることを確認した。
また、実施の形態1との比較用に、断線促進部を設けない固定子を作成した。比較用の固定子には、導体径が0.4mmの電線を用いた(比較品1)。比較用の固定子は、渡り線を直接BMCからなるモールド樹脂で覆い、樹脂モールドが施された固定子を完成させた。その後、回転子を組み込んで、実施の形態1と同様に電動機を組み立てた。
それぞれに作成した電動機を用いて、以下の方法により、燃焼試験を行なった。
燃焼試験を行うにあたり、つぎの準備を行った。樹脂モールド内に位置するコイルの表面付近に熱電対を取り付けて、試験中の温度を確認できるようにした。コイルの表面付近に熱電対を取り付けた後、電動機の外周全体に、のりなどの貼付材を用いて脱脂綿を貼り付けた。次に、全波整流回路を用いた直流電源装置を準備して、電動機が有する任意の2相に直流電圧を印加した。印加した直流電圧の電圧を徐々に上げて、少しずつ電動機の温度を上昇させた。電動機に通電される電流、および印加される電圧は、常時測定されている。測定していた、電流および電圧について、急激な変化が生じた場合、特に、電流に急激な上昇が見られた場合、コイルにレアショート等が発生したと判断した。コイルにレアショート等が発生したと判断できた場合、一旦電圧を下げて電流値を安定させてから、再び、電圧を上げていき、温度上昇の傾きが一定になるように調整した。
この試験により、電動機が有する電線が断線して電流が遮断されるか、または脱脂綿が発火するかを確認した。その結果を(表1)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40内の少なくとも1箇所において、渡り線12bを成す電線12cが断線していることを確認した。
以上の結果より、渡り線12bに対して直接、樹脂モールドが施されないよう、空気層を有する断線促進部40を取付けることで、断線促進部40が取付けられた渡り線12bを成す電線12cの断線を促進できた。よって、電動機1の発火を防止できることが確認できた。電線12cの導体径が大きくなるに従い、最高到達温度も上昇している。このため、断線促進部40を取り付けたとしても、断線し難い傾向にあることが確認できた。
以上のように、本実施の形態の電動機1は、固定子10と、固定子10を覆う樹脂と、異常時に、電線12cに対して断線を促す断線促進部40と、を備える。固定子10は、固定子コア11と、固定子コア11に電線12cを巻き回して複数相を成すコイル12と、を有する。断線促進部40は、固定子コア11に巻き回されたコイル12間の渡り線部分、コイル12が成す複数相の中性点14の接続部分、および、電線12cと、外部から電線12cに電力を供給するリード線15との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる。
これにより、従来の一般的な安全保護回路が正常に機能せず、固定子が有するコイルに過大な電流が流れたとしても、断線促進部が取付けられた、コイル間の渡り線部分、中性点の接続部分、あるいは、電線とリード線との接続部分のうち、いずれかの温度が最も早く上昇する。よって、断線促進部が取付けられた部分の電線が溶断して、電動機への通電が遮断される。このため、電動機の発火を防止できる。
また、断線促進部40は、空気を含む空間でもよい。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図9は、図8に示す固定子の平面図である。
図8、図9に示すように、実施の形態2に係る電動機において、断線促進部40cは、樹脂であるモールド樹脂31のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材で形成される。
特に、溶融して液状となる部材が溶融して液状となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
特に、溶融して液状となる部材には、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースを用いることができる。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態2に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。図8、図9に示すように、実施の形態2に係る電動機に用いられる断線促進部40cは、内寸φ2mm×長さ20mmのシリコーンガラスチューブが用いられている。断線促進部40c内には、実施の形態1と同様、後述する渡り線12bが位置する。
断線促進部40cである囲い材41cには、渡り線12bを成す電線12cの外径よりも0.1mm大きな穴を有する、12−ナイロン(融点180℃)の成形体(外径1.8mm、長さ15mm)からなる内材が挿入される。この成形体が有する穴には、渡り線12bを成す電線12cが挿入される。囲い材41cにおける、渡り線12bを成す電線12cの出入り口には、エポキシ樹脂を施して封入した。このようにして、固定子10を作成した。
本実施の形態では、渡り線12bを成す電線12cの導体径が、0.2mm(発明品4)、0.4mm(発明品5)、0.6mm(発明品6)の3種類について、評価を行った。
その他、断線促進部40c以外の部分については、実施の形態1に示したものと同様の電動機を作成するとともに、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。その結果を(表2)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40c内の少なくとも1箇所において、渡り線12bを成す電線12cが断線していることを確認した。
断線促進部40cが熱可塑性樹脂でも、実施の形態1とほぼ同様に断線促進部40cで断線することを確認した。
なお、上述した断線促進部40cに替えて、断線促進部は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材で形成できる。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図11は、図10に示す固定子の平面図である。図12は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。
図10から図12に示すように、実施の形態3に係る電動機において、断線促進部40a内に位置する電線43aの部分は、断線促進部40a外に位置する電線44aの部分よりも断面積が小さい。特に、断線促進部40a内に位置する電線43aは、屈曲されて形成される。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態3に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。図10、図11に示すように、実施の形態3に係る電動機に用いられる断線促進部40aは、実施の形態2と同様、内寸φ2mm×長さ20mmのシリコーンガラスチューブである囲い材41aが用いられている。断線促進部40a内には、実施の形態1と同様、後述する渡り線12bが位置する。
図12に示すように、渡り線12bに対して、断線促進部40aであるシリコーンチューブとともに屈曲を加える。具体的には、渡り線12bを成す電線43aに対してほぼ90°となる屈曲を4回行った。その後、渡り線12bを成す電線43aの出入り口には、エポキシ接着剤を施して封止した。
その他、断線促進部40a以外の部分については、実施の形態1に示したものと同様の電動機を作成した。また、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
実施の形態3では、渡り線12bを成す電線43aの導体径が、0.2mm(発明品7)、0.4mm(発明品8)、0.8mm(発明品9)の3種類について、評価を行った。
今回の比較例には、シリコーンガラスチューブからなる囲い材を用いていない。今回の比較例は、導体径0.4mmの渡り線をほぼ90°に4回折り曲げたものを直接、樹脂モールドで覆い、樹脂モールドが施された固定子を作成した(比較品2)。その後、実施の形態1と同様の試験を行なった。その結果を(表3)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40a内の少なくとも1箇所において、渡り線12bを成す電線43aが断線していることを確認した。
実施の形態1と同様に、全ての本発明品は断線した。しかしながら、渡り線に直接樹脂モールドを施した比較品は、最高到達温度が400℃以上となり、発火した。
渡り線12bを成す電線43aを屈曲することで、実施の形態1と比較して最高到達温度が少し小さくなる傾向がみられた。しかも、この屈曲による効果は、電線43aの導体径が大きいほど効果的である傾向があることが確認できた。
渡り線12bを成す電線43aの断面積を小さくするにあたり、電線43aを伸長する、あるいは、電線43aを捻って断面積を小さくする、としてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40a内に位置する電線43aの部分は、断線促進部40a外に位置する電線44aの部分よりも断面積が小さい。
また、本実施の形態の電動機の製造方法は、断線促進部40g内に位置する電線43aを伸長して形成する。
また、本実施の形態の電動機の製造方法は、断線促進部40g内に位置する電線43aを捻って形成してもよい。よって、断線促進部40g内に位置する電線43aの部分は、捻られている電動機を得ることができる。
また、本実施の形態の電動機の製造方法は、断線促進部40g内に位置する前記電線43aを屈曲させて形成してもよい。よって、断線促進部40g内に位置する電線43aの部分は、屈曲している電動機を得ることができる。
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図14は、同電動機に用いられる断線促進部内に位置する渡り線の要部拡大図である。図15は、図14のC−C線で切断した渡り線の断面図である。図16は、同電動機に用いられる断線促進部内に位置する他の渡り線の要部拡大図である。図17は、図16のD−D線で切断した渡り線の断面図である。
図13、図14に示すように、実施の形態4に係る電動機に用いられる断線促進部40d内に位置する渡り線12bを成す電線43cは、電線43cが扁平状に変形された扁平部45の断面積が、断線促進部40d外に位置する電線44cの部分よりも小さい。
図面を用いて具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態4に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部内に位置する電線の断面にある。図13に示すように、実施の形態4で用いられる断線促進部40dは、実施の形態3と同様、内寸φ2mm×長さ20mmのシリコーンガラスチューブが用いられる。図14、図15に示すように、断線促進部40d内に位置する渡り線12bを成す電線43cは、長さLが5mmに亘って、その断面形状が扁平状に変形されている。断面形状は、周囲から圧力が加えられて変形される。断線促進部40dの出入り口では、エポキシ接着剤で封止した。このようにして、固定子10を作成した。
ここで、実施の形態4の評価を行うにあたり、渡り線12bを成す電線44cは、導体径0.8mmのポリウレタン銅線を用いた。図15に示すように、扁平部45は、渡り線12bを圧縮して形成した。準備した渡り線12bの扁平部45の厚みtは、変形を加えていない初期状態を示す100%(発明品10)を含む、80%(発明品11)、60%(発明品12)、40%(発明品13)の4種である。
その他、断線促進部40d以外の部分については、実施の形態1に示したものと同様の電動機を作成した。また、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
比較を行うため、断線促進部40dであるシリコーンガラスチューブを用いない比較品3も準備した。具体的には、比較品3は、導体径0.8mmを有する渡り線に対して、扁平部の厚みが40%となるまで圧力を加えた電線を準備した。この渡り線に対して直接、樹脂モールドが施された固定子を作成して、同様の試験を行なった。その結果を(表4)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40d内の少なくとも1箇所において、渡り線12bをなす電線43cが断線していることを確認した。
渡り線を成す電線の導体径が大きくなることで、最高到達温度が上昇して、断線が困難になると考えられる場合であっても、電線の要部断面を扁平状に変形させることにより、容易に断線できるようになることが確認できた。
比較品3のように、渡り線を成す電線の要部断面を扁平状に変形させたとしても、変形された扁平状の部分が樹脂でしっかりとモールドされていた場合、電線は、断線することなく温度が上昇して、発火した。
図16、図17に示すように、上述した電線に替えて、断線促進部40d内に位置する電線43cの部分は、電線43cが凹状に変形された部分46の断面積が断線促進部40d外に位置する電線44cの部分より小さくしてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40d内に位置する電線43cの部分は、電線43cが扁平状に変形された部分の断面積が断線促進部40d外に位置する電線44cの部分よりも小さい。
(実施の形態5)
図18は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図19は、図18に示す固定子の平面図である。図20は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。
図18、図19に示すように、実施の形態5に係る電動機において、断線促進部40b内に位置する電線43bの部分は、断線促進部40b外に位置する電線44bの部分よりも断面積が小さい。特に、断線促進部40b内に位置する電線43bは、断線促進部40b外に位置する電線44bよりも細い線径の電線で構成される。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態5に係る電動機と実施の形態3に係る電動機との違いは、断線促進部内に位置する渡り線12bを成す電線の線径を小さくする手段が異なる。
実施の形態5を実現する一例として、つぎの手段が用いられる。すなわち、PBT製のインシュレータ13は、電線の直径を変更するための接続端子51を有する。接続端子51の一端には、コイル用電線53がヒュージングにより接続される。ヒュージングは、熱かしめともいう。接続端子51の他端には、コイル用電線53よりも直径が小さく、断面積が少ない細電線52がヒュージングにより接続される。細電線52は、内寸φ2mm×長さ15mmのシリコーンガラスチューブからなる断線促進部40bを通って、接続端子55bが有する接続部55aに接続される。細電線52は、ヒュージングにより接続部55aと電気的に接続される。
上記構成の電動機に対して、電動機1の外部に位置する電源90から延びたリード線15を介して、電動機1の駆動電力が供給される。リード線15は、接続端子55bと接続される。電動機1には、リード線15から接続端子55bを介して、電動機1の駆動に必要な電力が供給される。具体的には、電動機1に供給される電流は、リード線15から細電線52を介して、コイル用電線53に供給される。
実施の形態5では、コイル用電線53である電線44bとして、導体径0.8mmのポリウレタン/ナイロン銅線を使用した。細電線52である電線43bとして、導体径0.4mmのポリウレタン/ナイロン銅線を使用した。細電線52を通したシリコーンガラスチューブからなる囲い材41bの出入り口には、エポキシ接着剤を施して封止した。よって、シリコーンガラスチューブからなる囲い材41bの内部には、モールド樹脂の侵入は抑制された。
その他、断線促進部40b以外の部分については、実施の形態1などに示したものと同様の電動機を作成するとともに、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
また、比較を行うため、図20に示すように、断線促進部40bに屈曲を加えた電動機を作成して、同様の燃焼試験を行った。具体的には、渡り線12bに対して、断線促進部40bであるシリコーンチューブとともに屈曲を加えた。特に、渡り線12bに対してほぼ90°となる屈曲を4回行った。上述した実施の形態3に追加する評価結果を(表5)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40b内の少なくとも1箇所において、細電線52を成す電線43bが断線していることを確認した。
以上の結果より、コイル用電線53である電線44bの導体径が太く、溶断が困難と見込まれる場合、接続端子51、55bを介して、コイル用電線53よりも導体径が細い細電線52である電線43bを用いることができる。よって、電線の導体径が小さくなれば、溶断し易くなる。さらに、その電線の一部を屈曲させるなどの処置を施すことで、より一層、溶断し易くなることが確認できた。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40b内に位置する電線43bは、断線促進部40b外に位置する電線44bよりも細い線径の電線43bで構成される。
(実施の形態6)
図21は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図22は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。
図21に示すように、実施の形態6に係る電動機において、断線促進部40jは、樹脂であるモールド樹脂31のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材で形成される。
特に、断線促進部40jの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
特に、熱感応導電材は、抵抗器47である。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態6に係る電動機と既に説明した他の実施の形態に係る電動機との違いは、断線促進部にある。図21に示すように、実施の形態6に係る電動機に用いられる断線促進部40jは、熱感応導電材である抵抗器47で構成される。
つぎに、PBT製のインシュレータ13は、実施の形態5と同様、接続端子51を有する。接続端子51の一端には、コイル用電線53がヒュージングにより接続される。接続端子51の他端には、熱感応導電材である抵抗器47の端子が接続される。抵抗器47の端子は、接続端子51にかしめられた後、半田付けが行われる。
実施の形態5と同様、電動機には、電動機の外部に位置する電源から延びたリード線を介して、駆動電流が供給される。リード線は、もうひとつのインシュレータ13に取り付けられた接続端子55bに接続される。接続端子55bと、抵抗器47が有する他の端子とは、接続部55aを介して接続される。具体的には、抵抗器47の他の端子は、接続部55aにかしめられた後、半田付けが行われる。接続部55aと接続端子55bとは、電気的に接続された構成を成す。
このような構成により、電動機の外部に位置する電源からリード線を介して供給された駆動電流は、接続端子55bに流れ込む。接続端子55bに流れ込んだ駆動電流は、接続部55aを介して抵抗器47に流れ込む。抵抗器47に流れ込んだ駆動電流は、接続端子51を介してコイル用電線53へと流れ込む。
ここで、コイル用電線53として、導体径が0.8mmのポリウレタン/ナイロン銅線を使用した。熱感応導電材である抵抗器47として、抵抗値20mΩ以下で、最大許容電流1.5Aの、塗装絶縁型ゼロ固定抵抗器を使用した。
併せて、図22に示すように、実施の形態6では、他の態様を準備して、評価を行った。具体的には、実施の形態6に係る他の電動機において、断線促進部40kは、熱感応導電材である抵抗器47aと、囲い材41dと、を含む。
抵抗器47aは、樹脂であるモールド樹脂31のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する。
特に、断線促進部40kの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
囲い材41dは、熱感応導電材の周囲に空気を含む空間を形成する。囲い材41dは、シリコーンガラスチューブで実現できる。囲い材41dの出入り口には、エポキシ接着剤を用いて、その内部空間を封止する。つまり、断線促進部40kの内部には、囲い材41dと、抵抗器47aとの間に空気層が形成される。言い換えれば、断線促進部40kは、囲い材41dの出入り口をエポキシ接着剤で封止することにより、モールド樹脂31が囲い材41の内部に流入しない。
その他、断線促進部40j、40k以外の部分については、実施の形態1と同様の電動機を作成して、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
その結果を(表6)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、発明品16、17は、ともに熱感応導電材である抵抗器47aが断線していることを確認した。
以上の結果より、コイル用電線53である電線の導体径が太く、溶断が困難と見込まれる場合、リード線を接続する接続端子55bを介して、熱感応導電材である抵抗器47を接続することができる。よって、コイル用電線53に過電流が流れるなどして、抵抗器47が所定の作動温度に達したとき、抵抗器47は容易に溶断することが確認できた。
さらに、囲い材41を用いて、熱感応導電材である抵抗器47aの周囲に空気層を形成した場合、抵抗器47aは、より低い温度で溶断することが確認できた。つまり、囲い材41で囲われた抵抗器47aは、より一層溶断し易くなることを確認した。
抵抗器47aには、一般的に使用されている固定抵抗器を使用できる。具体的に、固定抵抗器には、炭素皮膜固定抵抗器、金属皮膜固定抵抗器、酸化金属皮膜固定抵抗器、あるいは、巻線固定抵抗器などがある。
さらに、断線促進部40j、40kを取り付ける状況を考慮して、固定抵抗器の形状は、面実装タイプまたはリードタイプ等から、適宜、選択することができる。
なお、使用される抵抗器47aには、つぎのことが求められる。使用される抵抗器47aは、電動機の通常運転時において、電動機の特性および信頼性に影響を与えることを抑える必要がある。一方、使用される抵抗器47aは、電動機に過負荷電流などが流れて、上述した温度に達した場合にのみ、断線する特性を有することが求められる。使用される抵抗器47aにおいて、抵抗値、定格電力、および許容電流などの特性は、電動機に求められる特性および信頼性などにより、適宜、選択される。
ところで、上記説明では、熱感応導電材として抵抗器47、47aを例示したが、同様の作用効果を奏すれば、他の部材でも使用できる。例えば、熱感応導電材として、ジャンパー線またはヒューズなどを使用することができる。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40jは、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材である。
また、断線促進部40jは、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材と、熱感応導電材の周囲に空間を形成するように熱感応導電材を囲む囲い材41と、を含む。
また、熱感応導電材は、抵抗器47であってもよい。
(実施の形態7)
図23は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。図24は、同電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図25は、同電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。
図23から図25に示すように、実施の形態7に係る電動機に用いられる断線促進部40fは、渡り線12bを成す電線43dを変形させる変形部62である刃物62aと、保持部61と、を含む。保持部61は、変形部62である刃物62aを保持するコイルばね61bとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材である熱溶融樹脂66と、で形成される。
特に、断線促進部40fの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
断線促進部40f内において、保持部61が溶融して液状となったとき、変形部62である刃物62aが予め定めた可動範囲を移動する。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態7に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。実施の形態7に係る電動機では、以下の内部構造を有する断線促進部40fが用いられる。
図24に示すように、断線促進部40f内には、変形部62であるステンレス製の刃物62aと、保持部61である、コイルばね61bと、熱溶融樹脂66と、が含まれる。
刃物62aは、刃の部分が渡り線12bを成す電線43dと向き合って取り付けられる。刃物62aの背面には、中央部分にコイルばね61bが縮められた状態で取り付けられる。刃物62aは、刃の部分の両端が熱溶融樹脂66で保持される。この状態において、熱溶融樹脂66は、刃の部分と断線促進部40fの内壁との間に位置して、コイルばね61bが有する弾性力を留めるように作用している。本実施の形態では、熱溶融樹脂66としてポリアセタールを用いた。
つぎに、断線促進部40fの雰囲気温度が、所定の温度に至った状態について説明する。
図25に示すように、断線促進部40f内の雰囲気温度が所定の温度に達すると、熱溶融樹脂66であるポリアセタールが溶融する。よって、支えを失った刃物62aは、開放されたコイルばね61bの弾性力により、渡り線12bを成す電線43dを断線促進部40fの内壁に押し付ける方向に移動する。したがって、刃物62aは、渡り線12bを変形する。あるいは、コイルばね61bを調整することで、刃物62aは、渡り線12bを切断する。
本実施の形態では、熱溶融樹脂66としてポリアセタールを用いているため、前述した所定の温度は、ポリアセタールの融点である181℃以上を見込んでいる。言い換えれば、所望の融点を備えた熱溶融樹脂66を選択することにより、前述した所定の温度を調整できる。
その他、断線促進部内を変更したこと以外は、実施の形態1と同様に、樹脂モールドを施した固定子を形成して、電動機を組み立てた。組み立てた電動機を用いて、同様の燃焼試験を行なった。燃焼試験で使用した導体径は、0.2mm(発明品18)、0.4mm(発明品19)、0.6mm(発明品20)、0.8mm(発明品21)である。その結果を(表7)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40f内の少なくとも1箇所において、電線43dは、刃物62aが接触した部分で断線されたことが確認された。
以上の結果より、熱溶融樹脂66のごとく、所定の温度で溶融する部材を用いて断線促進部40fを構成すれば、所定の温度付近で、断線促進部40f内に位置する渡り線12bである電線43dを、変形または断線することができる。本構成は、特に導体径が大きな電線43dを使用する場合には、有効な方法である。しかも、電動機1の通常動作時において、電動機1の特性には全く影響を与えることがない。よって、電動機1の信頼性を維持できる。
なお、本構成には、コイルばね61bの材料として、形状記憶合金を用いてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40fは、電線43dを変形させる変形部62と、変形部62を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材で形成される、保持部61と、を含み、保持部61が溶融して液状となったとき、変形部62が予め定められた可動範囲を移動する。
(実施の形態8)
図26は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。図27は、同電動機に用いられる断線促進部40e内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図28は、同電動機に用いられる断線促進部40e内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。
図26から図28に示すように、実施の形態8に係る電動機に用いられる断線促進部40eは、渡り線12bを成す電線43dを変形させる変形部62である刃物62aと、保持部61であるコイルばね61aと、を含む。
保持部61であるコイルばね61aは、変形部62を保持する。コイルばね61aは、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される。
特に、断線促進部40eの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
断線促進部40e内において、保持部61であるコイルばね61aの形状が変化したとき、変形部62である刃物62aが予め定めた可動範囲を移動する。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態8に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。実施の形態8に係る電動機では、PBT製の断線促進部40eの内寸を10mm×5mm×5mmに変更した。
また、図27に示すように、断線促進部40e内には、変形部62であるステンレス製の刃物62aと、保持部61である形状記憶合金で形成されたコイルばね61aと、が含まれる。
コイルばね61aは、Ti−Ni−(Zr、Hf)―Nb合金製で、直径0.5mmのワイヤ状の形状記憶合金で作成される。コイルばね61aの外周は、直径3mmである。コイルばね61aの片端には、ステンレス製の刃物62aが取り付けられている。刃物62aとコイルばね61aとは、コイルばね61aが縮められた状態で、断線促進部40eの内部に組み込まれる。
210℃以下において、断線促進部40eの内部では、コイルばね61aが縮んだ状態であり、渡り線12bを成す電線43dと刃物62aとは接触していない。このとき、コイルばね61aの長さは3mmである。
一方、図28に示すように、210℃よりも温度が上がると、断線促進部40eの内部では、コイルばね61aが伸びた状態となる。このとき、コイルばね61aの長さは7mmにまで伸びている。よって、渡り線12bを成す電線43dと刃物62aとが接触している。刃物62aは、渡り線12bを成す電線43dを変形する。あるいは、コイルばね61aを調整することで、刃物62aは、渡り線12bを成す電線43dを切断する。
その他、断線促進部の寸法を変更したこと、および、断線促進部40e内に保持部61と変形部62とを組み込んだこと以外は、実施の形態1と同様に樹脂モールドを施した固定子を形成して、電動機を組み立てた。組み立てた電動機を用いて、同様の燃焼試験を行なった。燃焼試験で使用した導体径は、0.2mm(発明品22)、0.4mm(発明品23)、0.6mm(発明品24)、0.8mm(発明品25)である。その結果を(表8)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40e内の少なくとも1箇所において、電線43dは、刃物62aが接触した部分で断線されたことが確認された。
以上の結果より、形状記憶合金で形成された部材を用いて断線促進部を構成すれば、所定の温度付近で、断線促進部内に位置する渡り線を成す電線を、変形または断線することができる。本構成は、特に導体径が大きな電線を使用する場合には有効な方法である。しかも、電動機1の通常動作時において、電動機1の特性には全く影響を与えることがない。よって、電動機1の信頼性を維持できる。
また、上述した実施の形態7、8では、断線促進部40e、40f内に取り付けられる保持部61の一部として、コイルばね61a、61bを例示した。同様の作用効果を奏するものとして、他の構成要素を用いることができる。具体的には、所定の温度で渡り線12bである電線43dを変形、または切断するように動作するものであれば、断線促進部の内部構造は、特に限定されるものではない。
例えば、図29から図31に示すように、つぎの構成を用いることができる。図29は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す説明図である。図30は、同電動機に用いられる他の断線促進部40g内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図31は、同電動機に用いられる他の断線促進部40g内に含まれる保持部の動作後の状態を示す斜視図である。断線促進部40gは、変形部62としてつるまきばね62bと、保持部61として断線促進部40g内に充填された熱溶融樹脂66aと、で実現できる。
つるまきばね62bは、その両端部間の間隔が狭くなるように付勢力を有している。熱溶融樹脂66aには、ポリアセタールなどを用いることができる。図30中、孔63には、断線促進部40gを作成する際、つるまきばね62bの両端部が、渡り線12bである電線43dから離れた位置で、開となる状態を保ったまま固化されるための治具が挿入される。
本構成を用いれば、図30に示すように、断線促進部40gの内部に位置する熱溶融樹脂66aの溶融温度より低い状態において、つるまきばね62bの両端部は、渡り線12bである電線43dから離れた位置で、開状態を保ったまま固化される。
一方、図31に示すように、断線促進部40gの内部温度が所定の温度に達し、熱溶融樹脂66aの溶融温度を越えると、熱溶融樹脂66aが溶融する。熱溶融樹脂66aの溶融温度を越えると、熱溶融樹脂66aが溶融して、つるまきばね62bは、渡り線12bである電線43dを挟むよう、動作する。電線43dは、つるまきばね62bに挟まれることにより、細くなったり、変形したり、あるいは、切断されたりする。このようにして、図30、図31に示すように、つるまきばね62bを用いた断線促進部40gは、上述したそれぞれの断線促進部と同様、燃焼試験に用いることができる。
さらに、断線促進部40gで変形、または切断される部分の電線43dは、予め変形などにより断面積を小さくしておいても、もちろん構わない。
図32は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられるさらに他の断線促進部40h内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図33は、同電動機に用いられるさらに他の断線促進部40h内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。
上述した断線促進部40eに換えて、図32、図33に示すように、断線促進部40hを用いることができる。断線促進部40hは、電線43dを変形させる変形部62である刃物62aと、保持部61と、を含む。保持部61は、変形部62である刃物62aを保持するコイルばね61bとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材である熱溶融樹脂66bとで形成される。
特に、断線促進部40hの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
断線促進部40hは、保持部61が溶融して気体となったとき、変形部62である刃物62aが予め定めた可動範囲を移動する構成としてもよい。
上述した実施の形態では、電線43dは、ポリウレタン/ナイロン銅線を用いたが、他の皮膜または導体材質のものを用いても構わない。インシュレータ13としてPBTを、モールド樹脂31としてBMCを用いたが、他の材質でも構わない。上記実施の形態では、断線促進部40を、コイル12間の渡り線12bまたはリード線15の接続部分15aに設けた場合を述べたが、これに限るものではなく、U相、V相、W相の3相間を繋げる中性点14の接続部分14aに設けてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40hは、電線を変形させる変形部62と、変形部62を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材で形成する、保持部61と、を含み、保持部61が溶融して気体となったとき、変形部62が予め定められた可動範囲を移動する。
また、断線促進部40eは、電線を変形させる変形部62と、変形部62を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される、保持部61と、を含み、保持部61の形状が変化したとき、変形部62が予め定められた可動範囲を移動する。
本発明は、固定子がモールド樹脂で覆われている電動機(モールドモータ)に対して、簡易に、また広範囲に利用することができる。
1 電動機
10 固定子
11 固定子コア
12 コイル
12a コイルエンド
12b 渡り線
12c,43a,43b,43c,43d,44a,44b,44c 電線
13 インシュレータ
13a 底面部
13b 外周壁部
13c 内周壁部
14 中性点
14a,15a 接続部分
15 リード線
20 回転子
21 回転軸
22 回転体
23 回転子コア
24 磁石
30A,30B 軸受
31 モールド樹脂
31a 胴部
31b コイルモールド部
32 第1の金属ケース
33 第2の金属ケース
34 回路基板
40,40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h,40j,40k 断線促進部
41,41a,41b,41c,41d 囲い材
42 断線促進体
45 扁平部
46 凹状に変形された部分
47,47a 抵抗器
51 接続端子
52 細電線
53 コイル用電線
55a 接続部
55b 接続端子
61 保持部
61a,61b コイルばね
62 変形部
62a 刃物
62b つるまきばね
63 孔
66,66a,66b 熱溶融樹脂
90 電源
本発明は、固定子がモールド樹脂で覆われている電動機(いわゆるモールドモータ)、および電動機の製造方法に関する。
図34は、従来の電動機の正面断面図である。図34に示すように、回転子120と固定子110とを備えた電動機100において、固定子110がモールド樹脂131で覆われている。電動機100は、モールドモータとも称せられ、既に広く知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
固定子110は、複数枚の金属板を積層して形成される固定子コア111と、固定子コア111に巻回されているコイル(巻線)112とを有している。固定子110が有するコイル112は、モールド樹脂131で覆われている。特に、固定子コア111からはみ出たコイル112の一部は、コイルエンド112aともいう。コイル112と固定子コア111との電気的絶縁を目的として、コイル112と固定子コア111との間には、インシュレータ113が取付けられる。
図35は、従来の電動機の樹脂モールドが施される前の固定子の斜視図である。図35に示す固定子コア111は、12個のティースを有する。それぞれのティースには電線が巻き回される。このため、図35中、12個のコイル112が存在する。固定子110が、例えば、U相、V相、W相を有する3相電動機に用いられる場合、各相はそれぞれ4個のコイル112に跨る。各相を成すコイル112間は、コイルエンド112aと接するインシュレータ113の外周部に巻き回された渡り線114でつながれている。
また、3相同士は、中性点で繋がっている。さらに、各相を成すコイル112には、電動機の外部へとつながるリード線が接続されている。各相を成すコイル112には、このリード線を介して、電動機の外部から電力が供給される。
ところで、コイル112に過大な電流が流れると、コイル112が発熱して極めて高温となり、コイル112を成す電線間でレアショートを発生する恐れがある。コイル112は、導体の外周が絶縁体で覆われている。外周を絶縁体で絶縁されているコイル同士において、絶縁体が熱で溶けるなど、何らかの原因で短絡してしまう恐れがある。例えば、一切の安全保護装置を働かせないという特殊な環境下において、コイル112にレアショートが発生した場合、電動機の内部で火花が生じることがある。レアショートによる火花が生じた場合、インシュレータ113等が熱せられることにより、生じたガスに引火して、発火する恐れがある。
このような電動機100の発火を抑制するため、電動機100に供給する電流を遮断する方法がある。一般的に、電動機100に供給する電流を遮断する方法として、電動機100の回路に温度ヒューズや電流ヒューズを設けるものがある。
また、電動機のリード線またはブラシリード線において、断面積を局部的に小さくする凹部を設ける方法(特許文献2を参照)、または、界磁コイルにおいて、全長の1/2以上の範囲に亘って、断面積を減少させる方法(特許文献3を参照)などが提案されている。
しかしながら、電動機を備えた機器の耐性向上を目的として、構成要素である電動機には、更なる安全性の向上が求められている。具体的には、前述した特殊な環境下において、コイルにレアショートが発生した場合、電動機から電動機外部に向けて、火が洩れ出る可能性があるという問題があった。
また、特許文献2に示す、電動機リード線またはブラシリード線において、断面積を局部的に小さくする凹部を設ける方法は、回路抵抗が大きくなる。このため、出力が低下して電動機の特性を低下させる場合がある。断面積を局部的に小さくした部分が、樹脂などでモールドされていた場合、その部分の溶断が困難になる。あるいは、たとえその部分が溶断したとしても、溶断した電線同士が再接触する、または、溶断時の熱で炭化した樹脂が導通部材として働き、電流を十分に遮断できないという可能性も高い。
特許文献3に示す、界磁コイルにおいて、全長の1/2以上の範囲に亘って断面積を減少させる方法は、界磁コイルのレアショートを招く可能性が高く、電線溶断による電流遮断が十分できないことが考えられる。また、通常の断面積のコイル部分と断面積を減少させたコイル部分とが存在する場合、これらを接続する工法またはその工法を実現する工数の増加という課題がある。
国際公開第2012/101976号 特開平10−66311号公報 日本国特許第4075750号公報
本発明は、上記問題を解決するものであり、例え、固定子が有するコイルに過大な電流が流れることを防止する全ての安全保護回路が正常に機能せず、固定子が有するコイルに過大な電流が流れたとしても、その外部に火または煙が出ることを防止できる電動機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の電動機は、固定子と、固定子を覆う樹脂と、電線に対して断線を促す断線促進部と、を備える。固定子は、固定子コアと、固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、を有する。断線促進部は、固定子コアに巻き回されたコイル間の渡り線部分、コイルが成す複数相の中性点の接続部分、および、電線と、外部から電線に電力を供給するリード線との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる。
この構成によれば、万一、従来の一般的な安全保護回路が正常に機能せず、固定子が有するコイルに過大な電流が流れたとしても、断線促進部が取付けられた、コイル間の渡り線部分、中性点の接続部分、あるいは、電線とリード線との接続部分のうち、いずれかの温度が最も早く上昇する。よって、断線促進部が取付けられた部分の電線が溶断して、電動機への通電が遮断される。このため、電動機の発火を防止できる。
なお、断線促進部が、少なくとも空気を含む空間であれば、モールド部分よりも熱伝導率が小さくなるため、より早く温度上昇させることができるとともに、溶断後の電線の接触による再通電や火花の発生を低減できる。
また、断線促進部は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材、あるいは、溶融して気体となる部材で形成される。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、安全に機能することを考慮すると、20℃以上高いことが好ましい。
本構成とすれば、所定の温度以上において、断線促進部内で電線が移動する自由度を上げることができる。よって、電線が溶断し易くなる。同時に、溶断後の電線が接触することで生じる再通電、または火花の発生を低減できる。
また、断線促進部内に位置する電線の部分は、断線促進部外に位置する電線の部分よりも断面積が小さい。本構成とすれば、断線促進部内に位置する電線の電気抵抗を大きくできるため、温度上昇を加速できる。よって、本構成の電動機は、固定子が有するコイルに過大な電流が流れた場合に、より早く確実に、断線促進部内に位置する電線を溶断できる。
なお、電線の断面積を小さくするには、電線を伸長する、電線を捻る、あるいは、電線を屈曲することで実現できる。あるいは、電線の断面積を小さくするには、電線の一部を扁平状、または凹状に変形させることで実現できる。これらの加工方法あるいは形状を採用すれば、簡易に電線の断面積を小さくすることができるので好ましい。
また、断線促進部内に位置する電線は、断線促進部外に位置する電線よりも細い線径の電線で構成される。具体的には、断線促進部内に位置する電線は、コイルに使用している電線よりも細い導体径を有する電線が用いられる。本構成とすれば、電線の断面積を小さくして、断線促進部内に位置する電線の溶断を促進できるので好ましい。
また、断線促進部は、電線を変形させる変形部と、保持部と、を含む。保持部は、変形部を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材、あるいは、溶融して気体となる部材で形成される。断線促進部は、保持部が溶融して液状または気体となったとき、変形部が予め定められた可動範囲を移動する。電線の変形には、電線の断面形状を変形すること、あるいは、電線を切断することが含まれることがある。
あるいは、断線促進部は、電線を変形させる変形部と、保持部と、を含む。保持部は、変形部を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される。断線促進部は、保持部の形状が変化したとき、変形部が予め定められた可動範囲を移動する。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
本構成とすれば、予め電線の一部の断面積を小さくする必要がない。電線に過大な電流が流れて異常な高温になった場合にのみ、電線を変形、または切断して、電流を遮断できる。よって、電動機の本来の特性や信頼性に全く影響を与えることなく、安全性を高めることが可能となる。
しかも、これらの構成を採用すれば、所定の温度で通電を遮断するように制御できるため好ましい。
本発明によれば、固定子の電線が樹脂で覆われたモールドモータにおいて、過大な電流が流れて電線が高温になった場合に、断線促進部内に位置する電線の温度上昇が、断線促進部外に位置する電線に比べて早くできたり、電線が移動する自由度を向上できたりする。よって、断線促進部内に位置する電線が、溶断され易くなる。したがって、電動機の発火を防止できる。
また、断線促進部によって、電線の溶断後において、電線の接触による再通電なども抑制できる。なお、断線促進部の内部が気体の場合は、溶断時の熱で炭化した樹脂が導通部材として働き、電流を十分に遮断できない可能性も低減できる。
さらに、断線促進部内に位置する電線の断面積を小さくすることで、電線の温度上昇を加速できる。このため、太い線径の電線を用いる場合でも十分に対応できる。また、温度上昇時において、断線促進部内に位置する電線を変形、または切断できる変形部を備える。これにより、電動機の特性に全く影響を与えることなく、異常な温度上昇時にのみ、断線促進部内に位置する電線の通電を遮断できる。よって、より信頼性が高い電動機を提供することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る電動機の正面図である。 図2は、本発明の実施の形態1に係る電動機の分解斜視図である。 図3は、本発明の実施の形態1に係る電動機を部分的に拡大した側面の断面図である。 図4は、本発明の実施の形態1に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。 図5は、図4に示す固定子の正面図である。 図6は、本発明の実施の形態1に係る電動機に用いられる固定子が有する断線促進部を説明する要部説明図である。 図7は、本発明の実施の形態1に係る電動機の使用状態を説明する概要図である。 図8は、本発明の実施の形態2に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図9は、図8に示す固定子の平面図である。 図10は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図11は、図10に示す固定子の平面図である。 図12は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図13は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図14は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる断線促進部内に位置する渡り線の要部拡大図である。 図15は、図14のC−C線で切断した渡り線の断面図である。 図16は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる断線促進部内に位置する他の渡り線の要部拡大図である。 図17は、図16のD−D線で切断した渡り線の断面図である。 図18は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図19は、図18に示す固定子の平面図である。 図20は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図21は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図22は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。 図23は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。 図24は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図25は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。 図26は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。 図27は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図28は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。 図29は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す説明図である。 図30は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図31は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す斜視図である。 図32は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられるさらに他の断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。 図33は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられるさらに他の断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。 図34は、従来の電動機の正面断面図である。 図35は、従来の電動機の樹脂モールドが施される前の固定子の斜視図である。
本発明の電動機は、固定子コイルを樹脂でモールドした固定子を有する電動機である。コイル間の渡り線部分、または中性点の接続部分、または、電線とリード線との接続部分のうち、少なくとも一箇所に断線促進部が取付けられる。
断線促進部は、固定子を樹脂モールドするための樹脂以外の部材で、電線の周囲を囲む構造である。断線促進部は、コイルに過大な電流が流れるなどして異常な温度になった場合に、所定の温度で、電線の周囲が液状、または気体状になる部材で構成されている。この内部の部材(内材)は、上記温度以下で気体状であっても、もちろん構わない。なお、その場合は、固定子をモールドする樹脂が、断線促進部に侵入しない構造とする。また、以下の説明において、異常時とは、主に、コイルを成す電線に過大な電流、いわゆる過電流が流れる状態をいう。あるいは、コイルを成す電線にレアショートなどの不具合が発生した結果、電線が高温になる状態も含む。
上述した構造とは、モールド時の温度より耐熱性が高い樹脂、金属、またはセラミックスなどの構造材で電線を囲み、かつモールド樹脂が侵入しない構造である。例えば、本構成には、円筒または箱形の形状の部材(囲い材)で電線を囲んだ後、電線出入り口を塞いだ構造が挙げられる。なお、インシュレータの一部を上記のような形状として、断線促進部とインシュレータとを一体化しても勿論構わない。
また、電線出入り口を塞ぐ部材の材質としては、例えば、モールド時の温度より耐熱性が高い樹脂またはゴム、エラストマーなどが挙げられる。電線出入り口を塞ぐ部材の材質としては、モールド樹脂が侵入しない程度の密閉性が確保できれば十分である。なお、電線出入り口を塞ぐ部材の材料としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(Bulk Molding Compound(BMC))、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂などがあり、もちろんモールド樹脂と同じ材質のものでも構わない。その他の構造として、密閉性の優れている囲い材で電線出入り口を塞ぐ構造でもよい。
また、断線促進部内の物質(内材)は、引火性、爆発性などの小さいもので、かつ熱伝導が小さく、電線の温度を早く上昇させられるものが好ましい。そのため、取扱および安全性の観点から、空気が最も好ましい。あるいは、断線促進部内の物質(内材)は、引火性および爆発性の小さなゲル状物質でも構わない。
断線促進部の内部が、所定の温度以上で液状、または気体状になる材質で構成されている場合、電線周囲をその材質で囲み、断線促進部の外部を、固定子をモールドする樹脂で覆う構造としてもよい。具体的には、その材質として、所定の温度に融点を有する熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。その他、モールド時の温度、または電動機使用時のコイル温度などから、適切な材質を選択すればよい。また、その材質の電線取付け方法として、予め電線を挟むような形状に成形したものを取付ける方法、または、電線に直接成形する方法などが挙げられる。
なお、断線促進部内の材質(内材)として、熱可塑性樹脂以外でもよく、例えばエラストマーなどを用いてもよい。また、断線促進部の内材が、所定の温度で発泡して空隙または気体を生成する発泡剤を含むものでもよい。
また、本発明の電動機に用いられる電線は、一般的に用いられる電線を使用できる。具体的には、電線の導体材質として、銅、アルミニウム、銅とアルミニウムのクラッド線などが、導電性、および巻線性等の観点から好ましい。なお、異常温度での断線を促進させるためには、融点が低く、変形され易いアルミニウムが最も好ましい。
また、電線の絶縁被膜も、一般に用いられるワニスを使用できる。具体的には、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。これらの材質のワニスを用いる場合、従来のエナメル線が有している各種特徴を発揮でき、電動機の仕様、特性、信頼性などを得られるため、好ましい。
また、本発明の断線促進部内に位置する電線の少なくとも一部は、電線を伸長、電線を捻る、または、電線を屈曲させることで、容易に部分的に断面積を小さくすることができる。これにより、電線の断面積が小さい部分のみ電気抵抗値が大きくなって、温度上昇が大きくなり、その部分での溶断を促進できるため好ましい。この部分的な断面積の減少は、電動機全体から見れば小さいため、電動機の特性には殆んど影響を与えることがない。よって、過電流時の安全性を高めることができる。なお、断面積を小さくする部分の大きさは、数mm〜数cm程度が好ましい。また、断面積を小さくする割合としては、電動機の仕様(通常使用時の印加電流や電力、電線導体の線径、抵抗値など)、および溶断させたい条件(過電流値、温度など)によって、適切に選択することができる。この場合、初期状態の40%〜90%が好ましく、初期状態の50%〜80%が最も好ましい。
また、本発明の断線促進部は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時における最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材としてもよい。
あるいは、本発明の断線促進部は、熱感応導電材と、囲い材と、を含む構成でもよい。熱感応導電材は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時における最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する。囲い材は、熱感応導電材の周囲に空気を含むように熱感応導電材を囲む空間を形成する。
特に、熱感応導電材には、上述した温度で断線する抵抗器を用いることができる。また、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
抵抗器の具体例として、つぎのものを使用できる。抵抗器には、一般的に使用されている固定抵抗器を使用できる。具体的に使用できる固定抵抗器には、炭素皮膜固定抵抗器、金属皮膜固定抵抗器、酸化金属皮膜固定抵抗器、あるいは、巻線固定抵抗器などがある。
また、断線促進部が取り付けられる状況を考慮して、固定抵抗器の形状は、面実装タイプまたはリードタイプ等から、適宜、選択することができる。
なお、使用される抵抗器には、つぎのことが求められる。使用される抵抗器は、電動機の通常運転時において、電動機の特性または信頼性に影響を与えることを抑える必要がある。一方、使用される抵抗器は、電動機に過負荷電流などが流れて、上述した温度に達した場合にのみ、断線する特性を有することが求められる。使用される抵抗器において、その抵抗値、定格電力、または許容電流などの特性は、電動機に求められる特性または信頼性などにより、適宜、選択される。
ここで、断線促進部は、断線促進部そのものを熱感応導電材にしてもよい。あるいは、断線促進部は、上述したように、囲い材を用いてモールド樹脂が侵入しない構造物の内部に、熱感応導電材が位置する構造とすることもできる。この場合、囲い材を用いるため、断線促進部の寸法は大きくなることがある。しかし、断線促進部の内部において、囲い材と熱感応導電材との間に空気が存在するため、熱感応導電材の断熱性を高めることができる。よって、過電流などにより電動機の温度が上昇した際、より早く断線促進部の断線を促すことができる。このため、電動機に流れる電流を早期に遮断することができる。
なお、上記説明では、熱感応導電材として抵抗器を例示したが、同様の作用効果を奏すれば、他の部材も使用できる。例えば、熱感応導電材として、ジャンパー線またはヒューズなどを使用することができる。
また、断線促進部内に位置する電線は、少なくとも一部の電線の断面形状を扁平状、または凹状に変形することで、断面積を小さくしてもよい。なお、断面積を小さくする部分の大きさは、上記と同様に数mm〜数cm程度が好ましい。断面積を小さくする割合としては、電動機の仕様または溶断させたい条件によって、適切に選択することができる。この場合、初期状態の40%〜90%が好ましく、初期状態の50%〜80%が電動機の信頼性と高温時の溶断性を両立し易いため、より好ましい。
また、断線促進部内に位置する電線を、コイルに使用している電線よりも細い導体径を有する電線にすることで、断面積を小さくして、断線促進部内に位置する電線の溶断を促進してもよい。
また、断線促進部内に位置する電線の少なくとも一部に、モールド成形温度、または電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、どちらかが高温となる方の温度よりも高温で、電線を変形、または切断する治具を設けてもよい。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
この構成によれば、固定子が有する電線が樹脂で覆われたモールドモータにおいて、過大な電流が流されて電線が高温になった場合の対応として、予め電線の一部の断面積を小さくする等の必要はない。言い換えれば、本構成を採用すれば、電動機としての仕様を変更することなく、過大な電流が流れて電線が高温になった場合の対策ができる。具体的には、本構成は、過大な電流が流れて異常な高温になった場合にのみ、電線を変形することで断面積を小さくし、上述したように、断線を促す、または切断して、電流を遮断できるため、より好ましい。
例えば、この断線促進部は、その一部に形状記憶合金を用いることにより、所定の温度に達したときに、断線促進部内に位置する電線を、刃物状または鋏み状、あるいは点または線状に押付ける形状の変形部を作動させるもので実現できる。この断線促進部を用いれば、変形部が、電線を変形する、あるいは切断することができる。形状記憶合金の材質および形状は、断線促進部が動作する環境に合わせて適切に選択すればよい。具体的には、本発明の実施の形態における電動機には、作動温度が200℃前後で作動させることができる、Ti―Ni―(Zr、Hf)―Nb合金、Ti―Ta―Al合金、またはFe―Mn―Si合金などが好ましい。
あるいは、断線促進部は、形状記憶合金に換えて、バネ状の金属などを縮ませた状態で動かないように、熱可塑性樹脂などで一部を覆うものでもよい。本構成とすれば、所定の温度で熱可塑性樹脂が溶融し始めることで、バネ状部分が作動して、電線を変形、あるいは切断することができる。使用される熱可塑性樹脂は、断線促進部の寸法、形状、または印加電流を遮断したい温度などによって、溶融温度または強度特性を考慮して、適切に選択できる。
具体的には、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースなどが好ましい。
また、本発明の実施の形態における電動機に用いられるインシュレータは、どのような材質でも構わないが、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、およびそれらのガラス繊維強化材などが好ましい。
また、本発明の実施の形態における電動機に用いられる樹脂モールド材は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂およびフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。この場合、特性とコストの観点から不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電動機1の正面図である。図2は、同電動機1の分解斜視図である。図3は、同電動機1を部分的に拡大した側面の断面図である。図4は、同電動機1に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。図5は、図4に示す固定子の正面図である。図6は、同電動機1に用いられる固定子が有する断線促進部を説明する要部説明図である。図7は、本発明の実施の形態1に係る電動機1の使用状態を説明する概要図である。
まず、図1から図3を用いて、本発明の実施の形態1に係る電動機1の概要について説明する。
図1から図3に示すように、本発明の実施の形態1に係る電動機1は、固定子10と、回転子20と、1対の軸受30A、30Bと、モールド樹脂31と、を備えている。回転子20は、回転軸21を有して固定子10の内側に位置する。1対の軸受30A、30Bは、回転子20を回転自在に支持する。モールド樹脂31は、固定子10を覆う。ここで、例示する電動機1はブラシレス型である。また、実施の形態1において、電動機1は、電動機1の外殻部(筐体)の一部について平面視をした場合、実質的な円板形状となる第1の金属ケース32、第2の金属ケース33、および回路基板34を備えている。なお、電動機1は、この構成に限るものではない。
固定子10は、複数枚の金属板が重ねられて構成されている固定子コア(固定子鉄心)11と、固定子コア11(詳しくは後述する固定子コア11のティース)に巻回されるコイル(巻線)12と、を有する。固定子コア11は、軸心(回転軸21の軸心)Xに沿って配置される回転子20を囲むように環状に形成されているヨークと、このヨークから軸心Xに向かって凸形状に突出する複数のティースとを有する。
回転子20は、軸心X方向に延伸する回転軸21と、磁石成分を含んで軸心X方向に延伸するとともに回転軸21に固定される回転体22と、を有する。回転体22は、回転子コア23と、回転子コア23の外周面に取付けられた複数の磁石(永久磁石)24と、を有する。磁石24は、回転子コア23の外周面において、隣り合う磁石24の極性がN極とS極に交互に位置するように組み付けられている。回転子20は、第1の金属ケース32の中央部に嵌め込まれた軸受30Aと、第2の金属ケース33の中央部に嵌め込まれた軸受30Bとにより、回転自在に支持されている。
図3から図6に示すように、コイル12は、絶縁体(例えば樹脂)からなるインシュレータ13を介して、固定子コア11に巻回されている。インシュレータ13は、概略的には、底面部13aと、外周壁部13bと、内周壁部13cと、を有する。
図3、図6に示すように、インシュレータ13の底面部13aは、固定子コア11の端面に取付けられる。本実施の形態において、インシュレータ13の底面部13aは、軸心Xと交差する方向に延ばされた面で形成される。インシュレータ13の外周壁部13bは、コイル12が巻回される箇所の外周側に立設して、コイル12の位置を規制する。本実施の形態において、インシュレータ13の外周壁部13bは、軸心Xに沿った方向に延ばされた壁面で形成されている。インシュレータ13の内周壁部13cは、コイル12が巻回される箇所の内周側に立設して、コイル12の位置を規制する。インシュレータ13の内周壁部13cは、軸心Xに沿った方向に延ばされた壁面で形成される。インシュレータ13は、コイル12と固定子コア11との間を電気的に絶縁できれば、この形状に限るものではない。
図3から図7に示すように、電動機1には、各ティースに巻回されたコイル12が他のティースに巻回されたコイル12と連絡する渡り線12bが存在する。渡り線12bは、インシュレータ13の外周壁部13bの外周側などに取付けられる。
コイル12は、固定子コア11から、軸心X方向に対してはみ出る(図3においては、紙面の上方と下方とに突出してはみ出る)コイルエンド12aを有する。コイルエンド12a以外のコイル本体部分は、固定子コア11内に収められている。
図1から図3に示すように、固定子10が有するコイル12、インシュレータ13、固定子コア11(但し、ティースが位置する内周面は除く)および渡り線12bが位置するインシュレータ13の外周側領域(但し、後述する断線促進部40を除く)は、モールド樹脂31で覆われている。
モールド樹脂31の外周面は筒状に形成され、電動機1の外殻部(筐体)の一部である胴部(ケース胴部)31aを成している。
コイルモールド部31bは、コイルエンド12a、インシュレータ13および渡り線12bが位置するインシュレータ13の外周側領域を覆っている。
図3から図7に示すように、実施の形態1に係る電動機1は、固定子10と、固定子10を覆う樹脂であるモールド樹脂31と、異常時に、コイル12を成す電線12cの断線を促す断線促進部40と、を備える。固定子10は、固定子コア11と、固定子コア11に電線12cを巻き回して複数相を成すコイル12と、を有する。
断線促進部40は、固定子コア11に巻き回されたコイル12間の渡り線12b部分、コイル12が成す複数相の中性点14の接続部分14a、あるいは、コイル12を成す電線12cと、外部から電線12cに電力を供給するリード線15との接続部分15a、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる。後述する説明において、断線促進部40は、渡り線部分、あるいは、リード線の接続部分に取り付けられた場合を例示する。
ここで、異常時とは、主に、コイル12を成す電線12cに過大な電流、いわゆる過電流が流れる状態をいう。あるいは、コイル12を成す電線12cにレアショートなどの不具合が発生した結果、電線12cが高温になる状態も含む。
断線促進部40は、空気を含む空間である。
さらに、図面を用いて具体例について詳細に説明する。
図3から図6に示すように、断線促進部40は、渡り線12bの一部に取付けられている。断線促進部40は、渡り線12bの周囲に断線促進体42である空気層が形成される構造となっている。言い換えれば、渡り線12bには、断線促進部40によりモールド樹脂31が付着していない。すなわち、断線促進部40は、渡り線12bがモールド樹脂31と接しないための空間を確保している。なお、実施の形態1では、電動機1は、U相、V相、W相を有する三相モータを例示している。図中、U相、V相、W相の各相に対応する渡り線12bに対して、1つずつ断線促進部40が取付けられているが、これに限るものではない。なお、電動機1の組立方法(製造方法)としては、固定子10をモールド樹脂31で樹脂モールドした後、回転子20を組み込んでいる。
固定子コア11には、外径96mm、積み厚35mmの複数の積層鋼板が用いられる。固定子コア11には、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate(PBT))製のインシュレータ13が取付けられる。固定子コア11には、インシュレータ13を介して、電線12cであるポリウレタン/ナイロン銅線(ポリウレタン/ナイロンで被覆された銅線)が巻き付けられて、コイル12が形成される。コイル12とコイル12の間には、渡り線12bが存在する。
図4、図6に示すように、断線促進部40が取付けられる固定子10は、12スロットを有する。断線促進部40は、PBT製の箱型形状の成形体(囲い材41)である。断線促進部40は、電線12cから成る渡り線12bを囲い、断線促進部40の内部に空気のある空間である断線促進体42を有する。実施の形態1において、断線促進部40の大きさは、内寸8mm×4mm×2mmである。断線促進部40は、渡り線12bの出入り口を有する、PBT板からなる囲い材41で形成される。囲い材41に形成される出入り口は、電線12cの外径よりも0.1mm大きな穴で形成される。渡り線12bは、出入り口を介して、断線促進部40の内外を通っている。
実施の形態1では、渡り線12bを成す電線12cの導体径が、0.2mm(発明品1)、0.4mm(発明品2)、0.6mm(発明品3)の3種類について、評価を行った。具体的には、3種類の電線12cの各々について、固定子10(詳しくは、固定子10のモールド樹脂31以外の部分)を作成した。各固定子10は、コイルエンド12aや固定子コア11の外周部を不飽和ポリエステル樹脂(BMC)で覆う。こうして、モールド樹脂31が施された固定子10を完成させる。
モールド樹脂31を施す際の金型温度は150℃とした。このモールド樹脂31が施された固定子10に回転子20を組み込んで、電動機1を組み立てた。図7に示すように、電動機1の外部に位置する電源90から、固定子10が有するコイル12に通電するためのリード線15は、インシュレータ13に取り付けられているリード線用端子に取付けた。具体的には、リード線15をリード線用端子に巻き付けてはんだ付けを行った上に、セラミックス接着剤を施してさらなる固定を行った。この結果、リード線15とリード線用端子との接続部分15aは、温度が500℃程度まで上昇した場合でも外れないように固定された。
なお、樹脂モールドが施された後の1台の固定子10を切断して、断線促進部40の空間にモールド樹脂31が侵入することなく、空間(断線促進部40内に設けられている内材の1種)が保持されていることを確認した。
また、実施の形態1との比較用に、断線促進部を設けない固定子を作成した。比較用の固定子には、導体径が0.4mmの電線を用いた(比較品1)。比較用の固定子は、渡り線を直接BMCからなるモールド樹脂で覆い、樹脂モールドが施された固定子を完成させた。その後、回転子を組み込んで、実施の形態1と同様に電動機を組み立てた。
それぞれに作成した電動機を用いて、以下の方法により、燃焼試験を行なった。
燃焼試験を行うにあたり、つぎの準備を行った。樹脂モールド内に位置するコイルの表面付近に熱電対を取り付けて、試験中の温度を確認できるようにした。コイルの表面付近に熱電対を取り付けた後、電動機の外周全体に、のりなどの貼付材を用いて脱脂綿を貼り付けた。次に、全波整流回路を用いた直流電源装置を準備して、電動機が有する任意の2相に直流電圧を印加した。印加した直流電圧の電圧を徐々に上げて、少しずつ電動機の温度を上昇させた。電動機に通電される電流、および印加される電圧は、常時測定されている。測定していた、電流および電圧について、急激な変化が生じた場合、特に、電流に急激な上昇が見られた場合、コイルにレアショート等が発生したと判断した。コイルにレアショート等が発生したと判断できた場合、一旦電圧を下げて電流値を安定させてから、再び、電圧を上げていき、温度上昇の傾きが一定になるように調整した。
この試験により、電動機が有する電線が断線して電流が遮断されるか、または脱脂綿が発火するかを確認した。その結果を(表1)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40内の少なくとも1箇所において、渡り線12bを成す電線12cが断線していることを確認した。
以上の結果より、渡り線12bに対して直接、樹脂モールドが施されないよう、空気層を有する断線促進部40を取付けることで、断線促進部40が取付けられた渡り線12bを成す電線12cの断線を促進できた。よって、電動機1の発火を防止できることが確認できた。電線12cの導体径が大きくなるに従い、最高到達温度も上昇している。このため、断線促進部40を取り付けたとしても、断線し難い傾向にあることが確認できた。
以上のように、本実施の形態の電動機1は、固定子10と、固定子10を覆う樹脂と、異常時に、電線12cに対して断線を促す断線促進部40と、を備える。固定子10は、固定子コア11と、固定子コア11に電線12cを巻き回して複数相を成すコイル12と、を有する。断線促進部40は、固定子コア11に巻き回されたコイル12間の渡り線部分、コイル12が成す複数相の中性点14の接続部分、および、電線12cと、外部から電線12cに電力を供給するリード線15との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる。
これにより、従来の一般的な安全保護回路が正常に機能せず、固定子が有するコイルに過大な電流が流れたとしても、断線促進部が取付けられた、コイル間の渡り線部分、中性点の接続部分、あるいは、電線とリード線との接続部分のうち、いずれかの温度が最も早く上昇する。よって、断線促進部が取付けられた部分の電線が溶断して、電動機への通電が遮断される。このため、電動機の発火を防止できる。
また、断線促進部40は、空気を含む空間でもよい。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図9は、図8に示す固定子の平面図である。
図8、図9に示すように、実施の形態2に係る電動機において、断線促進部40cは、樹脂であるモールド樹脂31のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材で形成される。
特に、溶融して液状となる部材が溶融して液状となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
特に、溶融して液状となる部材には、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースを用いることができる。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態2に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。図8、図9に示すように、実施の形態2に係る電動機に用いられる断線促進部40cは、内寸φ2mm×長さ20mmのシリコーンガラスチューブが用いられている。断線促進部40c内には、実施の形態1と同様、後述する渡り線12bが位置する。
断線促進部40cである囲い材41cには、渡り線12bを成す電線12cの外径よりも0.1mm大きな穴を有する、12−ナイロン(融点180℃)の成形体(外径1.8mm、長さ15mm)からなる内材が挿入される。この成形体が有する穴には、渡り線12bを成す電線12cが挿入される。囲い材41cにおける、渡り線12bを成す電線12cの出入り口には、エポキシ樹脂を施して封入した。このようにして、固定子10を作成した。
本実施の形態では、渡り線12bを成す電線12cの導体径が、0.2mm(発明品4)、0.4mm(発明品5)、0.6mm(発明品6)の3種類について、評価を行った。
その他、断線促進部40c以外の部分については、実施の形態1に示したものと同様の電動機を作成するとともに、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。その結果を(表2)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40c内の少なくとも1箇所において、渡り線12bを成す電線12cが断線していることを確認した。
断線促進部40cが熱可塑性樹脂でも、実施の形態1とほぼ同様に断線促進部40cで断線することを確認した。
なお、上述した断線促進部40cに替えて、断線促進部は、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材で形成できる。
特に、断線促進部の部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図11は、図10に示す固定子の平面図である。図12は、本発明の実施の形態3に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。
図10から図12に示すように、実施の形態3に係る電動機において、断線促進部40a内に位置する電線43aの部分は、断線促進部40a外に位置する電線44aの部分よりも断面積が小さい。特に、断線促進部40a内に位置する電線43aは、屈曲されて形成される。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態3に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。図10、図11に示すように、実施の形態3に係る電動機に用いられる断線促進部40aは、実施の形態2と同様、内寸φ2mm×長さ20mmのシリコーンガラスチューブである囲い材41aが用いられている。断線促進部40a内には、実施の形態1と同様、後述する渡り線12bが位置する。
図12に示すように、渡り線12bに対して、断線促進部40aであるシリコーンチューブとともに屈曲を加える。具体的には、渡り線12bを成す電線43aに対してほぼ90°となる屈曲を4回行った。その後、渡り線12bを成す電線43aの出入り口には、エポキシ接着剤を施して封止した。
その他、断線促進部40a以外の部分については、実施の形態1に示したものと同様の電動機を作成した。また、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
実施の形態3では、渡り線12bを成す電線43aの導体径が、0.2mm(発明品7)、0.4mm(発明品8)、0.8mm(発明品9)の3種類について、評価を行った。
今回の比較例には、シリコーンガラスチューブからなる囲い材を用いていない。今回の比較例は、導体径0.4mmの渡り線をほぼ90°に4回折り曲げたものを直接、樹脂モールドで覆い、樹脂モールドが施された固定子を作成した(比較品2)。その後、実施の形態1と同様の試験を行なった。その結果を(表3)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40a内の少なくとも1箇所において、渡り線12bを成す電線43aが断線していることを確認した。
実施の形態1と同様に、全ての本発明品は断線した。しかしながら、渡り線に直接樹脂モールドを施した比較品は、最高到達温度が400℃以上となり、発火した。
渡り線12bを成す電線43aを屈曲することで、実施の形態1と比較して最高到達温度が少し小さくなる傾向がみられた。しかも、この屈曲による効果は、電線43aの導体径が大きいほど効果的である傾向があることが確認できた。
渡り線12bを成す電線43aの断面積を小さくするにあたり、電線43aを伸長する、あるいは、電線43aを捻って断面積を小さくする、としてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40a内に位置する電線43aの部分は、断線促進部40a外に位置する電線44aの部分よりも断面積が小さい。
また、本実施の形態の電動機の製造方法は、断線促進部40g内に位置する電線43aを伸長して形成する。
また、本実施の形態の電動機の製造方法は、断線促進部40g内に位置する電線43aを捻って形成してもよい。よって、断線促進部40g内に位置する電線43aの部分は、捻られている電動機を得ることができる。
また、本実施の形態の電動機の製造方法は、断線促進部40g内に位置する前記電線43aを屈曲させて形成してもよい。よって、断線促進部40g内に位置する電線43aの部分は、屈曲している電動機を得ることができる。
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図14は、同電動機に用いられる断線促進部内に位置する渡り線の要部拡大図である。図15は、図14のC−C線で切断した渡り線の断面図である。図16は、同電動機に用いられる断線促進部内に位置する他の渡り線の要部拡大図である。図17は、図16のD−D線で切断した渡り線の断面図である。
図13、図14に示すように、実施の形態4に係る電動機に用いられる断線促進部40d内に位置する渡り線12bを成す電線43cは、電線43cが扁平状に変形された扁平部45の断面積が、断線促進部40d外に位置する電線44cの部分よりも小さい。
図面を用いて具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。まず、実施の形態4に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部内に位置する電線の断面にある。図13に示すように、実施の形態4で用いられる断線促進部40dは、実施の形態3と同様、内寸φ2mm×長さ20mmのシリコーンガラスチューブが用いられる。図14、図15に示すように、断線促進部40d内に位置する渡り線12bを成す電線43cは、長さLが5mmに亘って、その断面形状が扁平状に変形されている。断面形状は、周囲から圧力が加えられて変形される。断線促進部40dの出入り口では、エポキシ接着剤で封止した。このようにして、固定子10を作成した。
ここで、実施の形態4の評価を行うにあたり、渡り線12bを成す電線44cは、導体径0.8mmのポリウレタン銅線を用いた。図15に示すように、扁平部45は、渡り線12bを圧縮して形成した。準備した渡り線12bの扁平部45の厚みtは、変形を加えていない初期状態を示す100%(発明品10)を含む、80%(発明品11)、60%(発明品12)、40%(発明品13)の4種である。
その他、断線促進部40d以外の部分については、実施の形態1に示したものと同様の電動機を作成した。また、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
比較を行うため、断線促進部40dであるシリコーンガラスチューブを用いない比較品3も準備した。具体的には、比較品3は、導体径0.8mmを有する渡り線に対して、扁平部の厚みが40%となるまで圧力を加えた電線を準備した。この渡り線に対して直接、樹脂モールドが施された固定子を作成して、同様の試験を行なった。その結果を(表4)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40d内の少なくとも1箇所において、渡り線12bをなす電線43cが断線していることを確認した。
渡り線を成す電線の導体径が大きくなることで、最高到達温度が上昇して、断線が困難になると考えられる場合であっても、電線の要部断面を扁平状に変形させることにより、容易に断線できるようになることが確認できた。
比較品3のように、渡り線を成す電線の要部断面を扁平状に変形させたとしても、変形された扁平状の部分が樹脂でしっかりとモールドされていた場合、電線は、断線することなく温度が上昇して、発火した。
図16、図17に示すように、上述した電線に替えて、断線促進部40d内に位置する電線43cの部分は、電線43cが凹状に変形された部分46の断面積が断線促進部40d外に位置する電線44cの部分より小さくしてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40d内に位置する電線43cの部分は、電線43cが扁平状に変形された部分の断面積が断線促進部40d外に位置する電線44cの部分よりも小さい。
(実施の形態5)
図18は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図19は、図18に示す固定子の平面図である。図20は、本発明の実施の形態5に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。
図18、図19に示すように、実施の形態5に係る電動機において、断線促進部40b内に位置する電線43bの部分は、断線促進部40b外に位置する電線44bの部分よりも断面積が小さい。特に、断線促進部40b内に位置する電線43bは、断線促進部40b外に位置する電線44bよりも細い線径の電線で構成される。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態5に係る電動機と実施の形態3に係る電動機との違いは、断線促進部内に位置する渡り線12bを成す電線の線径を小さくする手段が異なる。
実施の形態5を実現する一例として、つぎの手段が用いられる。すなわち、PBT製のインシュレータ13は、電線の直径を変更するための接続端子51を有する。接続端子51の一端には、コイル用電線53がヒュージングにより接続される。ヒュージングは、熱かしめともいう。接続端子51の他端には、コイル用電線53よりも直径が小さく、断面積が少ない細電線52がヒュージングにより接続される。細電線52は、内寸φ2mm×長さ15mmのシリコーンガラスチューブからなる断線促進部40bを通って、接続端子55bが有する接続部55aに接続される。細電線52は、ヒュージングにより接続部55aと電気的に接続される。
上記構成の電動機に対して、電動機1の外部に位置する電源90から延びたリード線15を介して、電動機1の駆動電力が供給される。リード線15は、接続端子55bと接続される。電動機1には、リード線15から接続端子55bを介して、電動機1の駆動に必要な電力が供給される。具体的には、電動機1に供給される電流は、リード線15から細電線52を介して、コイル用電線53に供給される。
実施の形態5では、コイル用電線53である電線44bとして、導体径0.8mmのポリウレタン/ナイロン銅線を使用した。細電線52である電線43bとして、導体径0.4mmのポリウレタン/ナイロン銅線を使用した。細電線52を通したシリコーンガラスチューブからなる囲い材41bの出入り口には、エポキシ接着剤を施して封止した。よって、シリコーンガラスチューブからなる囲い材41bの内部には、モールド樹脂の侵入は抑制された。
その他、断線促進部40b以外の部分については、実施の形態1などに示したものと同様の電動機を作成するとともに、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
また、比較を行うため、図20に示すように、断線促進部40bに屈曲を加えた電動機を作成して、同様の燃焼試験を行った。具体的には、渡り線12bに対して、断線促進部40bであるシリコーンチューブとともに屈曲を加えた。特に、渡り線12bに対してほぼ90°となる屈曲を4回行った。上述した実施の形態3に追加する評価結果を(表5)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40b内の少なくとも1箇所において、細電線52を成す電線43bが断線していることを確認した。
以上の結果より、コイル用電線53である電線44bの導体径が太く、溶断が困難と見込まれる場合、接続端子51、55bを介して、コイル用電線53よりも導体径が細い細電線52である電線43bを用いることができる。よって、電線の導体径が小さくなれば、溶断し易くなる。さらに、その電線の一部を屈曲させるなどの処置を施すことで、より一層、溶断し易くなることが確認できた。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40b内に位置する電線43bは、断線促進部40b外に位置する電線44bよりも細い線径の電線43bで構成される。
(実施の形態6)
図21は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。図22は、本発明の実施の形態6に係る電動機に用いられる固定子であって、他の樹脂モールドを施す前の状態を示す要部拡大図である。
図21に示すように、実施の形態6に係る電動機において、断線促進部40jは、樹脂であるモールド樹脂31のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材で形成される。
特に、断線促進部40jの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
特に、熱感応導電材は、抵抗器47である。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態6に係る電動機と既に説明した他の実施の形態に係る電動機との違いは、断線促進部にある。図21に示すように、実施の形態6に係る電動機に用いられる断線促進部40jは、熱感応導電材である抵抗器47で構成される。
つぎに、PBT製のインシュレータ13は、実施の形態5と同様、接続端子51を有する。接続端子51の一端には、コイル用電線53がヒュージングにより接続される。接続端子51の他端には、熱感応導電材である抵抗器47の端子が接続される。抵抗器47の端子は、接続端子51にかしめられた後、半田付けが行われる。
実施の形態5と同様、電動機には、電動機の外部に位置する電源から延びたリード線を介して、駆動電流が供給される。リード線は、もうひとつのインシュレータ13に取り付けられた接続端子55bに接続される。接続端子55bと、抵抗器47が有する他の端子とは、接続部55aを介して接続される。具体的には、抵抗器47の他の端子は、接続部55aにかしめられた後、半田付けが行われる。接続部55aと接続端子55bとは、電気的に接続された構成を成す。
このような構成により、電動機の外部に位置する電源からリード線を介して供給された駆動電流は、接続端子55bに流れ込む。接続端子55bに流れ込んだ駆動電流は、接続部55aを介して抵抗器47に流れ込む。抵抗器47に流れ込んだ駆動電流は、接続端子51を介してコイル用電線53へと流れ込む。
ここで、コイル用電線53として、導体径が0.8mmのポリウレタン/ナイロン銅線を使用した。熱感応導電材である抵抗器47として、抵抗値20mΩ以下で、最大許容電流1.5Aの、塗装絶縁型ゼロ固定抵抗器を使用した。
併せて、図22に示すように、実施の形態6では、他の態様を準備して、評価を行った。具体的には、実施の形態6に係る他の電動機において、断線促進部40kは、熱感応導電材である抵抗器47aと、囲い材41dと、を含む。
抵抗器47aは、樹脂であるモールド樹脂31のモールド成形温度、あるいは、電動機動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する。
特に、断線促進部40kの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
囲い材41dは、熱感応導電材の周囲に空気を含む空間を形成する。囲い材41dは、シリコーンガラスチューブで実現できる。囲い材41dの出入り口には、エポキシ接着剤を用いて、その内部空間を封止する。つまり、断線促進部40kの内部には、囲い材41dと、抵抗器47aとの間に空気層が形成される。言い換えれば、断線促進部40kは、囲い材41dの出入り口をエポキシ接着剤で封止することにより、モールド樹脂31が囲い材41の内部に流入しない。
その他、断線促進部40j、40k以外の部分については、実施の形態1と同様の電動機を作成して、実施の形態1にて説明したものと同様の燃焼試験を行なった。
その結果を(表6)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、発明品16、17は、ともに熱感応導電材である抵抗器47aが断線していることを確認した。
以上の結果より、コイル用電線53である電線の導体径が太く、溶断が困難と見込まれる場合、リード線を接続する接続端子55bを介して、熱感応導電材である抵抗器47を接続することができる。よって、コイル用電線53に過電流が流れるなどして、抵抗器47が所定の作動温度に達したとき、抵抗器47は容易に溶断することが確認できた。
さらに、囲い材41を用いて、熱感応導電材である抵抗器47aの周囲に空気層を形成した場合、抵抗器47aは、より低い温度で溶断することが確認できた。つまり、囲い材41で囲われた抵抗器47aは、より一層溶断し易くなることを確認した。
抵抗器47aには、一般的に使用されている固定抵抗器を使用できる。具体的に、固定抵抗器には、炭素皮膜固定抵抗器、金属皮膜固定抵抗器、酸化金属皮膜固定抵抗器、あるいは、巻線固定抵抗器などがある。
さらに、断線促進部40j、40kを取り付ける状況を考慮して、固定抵抗器の形状は、面実装タイプまたはリードタイプ等から、適宜、選択することができる。
なお、使用される抵抗器47aには、つぎのことが求められる。使用される抵抗器47aは、電動機の通常運転時において、電動機の特性および信頼性に影響を与えることを抑える必要がある。一方、使用される抵抗器47aは、電動機に過負荷電流などが流れて、上述した温度に達した場合にのみ、断線する特性を有することが求められる。使用される抵抗器47aにおいて、抵抗値、定格電力、および許容電流などの特性は、電動機に求められる特性および信頼性などにより、適宜、選択される。
ところで、上記説明では、熱感応導電材として抵抗器47、47aを例示したが、同様の作用効果を奏すれば、他の部材でも使用できる。例えば、熱感応導電材として、ジャンパー線またはヒューズなどを使用することができる。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40jは、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材である。
また、断線促進部40jは、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材と、熱感応導電材の周囲に空間を形成するように熱感応導電材を囲む囲い材41と、を含む。
また、熱感応導電材は、抵抗器47であってもよい。
(実施の形態7)
図23は、本発明の実施の形態7に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。図24は、同電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図25は、同電動機に用いられる断線促進部内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。
図23から図25に示すように、実施の形態7に係る電動機に用いられる断線促進部40fは、渡り線12bを成す電線43dを変形させる変形部62である刃物62aと、保持部61と、を含む。保持部61は、変形部62である刃物62aを保持するコイルばね61bとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材である熱溶融樹脂66と、で形成される。
特に、断線促進部40fの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
断線促進部40f内において、保持部61が溶融して液状となったとき、変形部62である刃物62aが予め定めた可動範囲を移動する。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態7に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。実施の形態7に係る電動機では、以下の内部構造を有する断線促進部40fが用いられる。
図24に示すように、断線促進部40f内には、変形部62であるステンレス製の刃物62aと、保持部61である、コイルばね61bと、熱溶融樹脂66と、が含まれる。
刃物62aは、刃の部分が渡り線12bを成す電線43dと向き合って取り付けられる。刃物62aの背面には、中央部分にコイルばね61bが縮められた状態で取り付けられる。刃物62aは、刃の部分の両端が熱溶融樹脂66で保持される。この状態において、熱溶融樹脂66は、刃の部分と断線促進部40fの内壁との間に位置して、コイルばね61bが有する弾性力を留めるように作用している。本実施の形態では、熱溶融樹脂66としてポリアセタールを用いた。
つぎに、断線促進部40fの雰囲気温度が、所定の温度に至った状態について説明する。
図25に示すように、断線促進部40f内の雰囲気温度が所定の温度に達すると、熱溶融樹脂66であるポリアセタールが溶融する。よって、支えを失った刃物62aは、開放されたコイルばね61bの弾性力により、渡り線12bを成す電線43dを断線促進部40fの内壁に押し付ける方向に移動する。したがって、刃物62aは、渡り線12bを変形する。あるいは、コイルばね61bを調整することで、刃物62aは、渡り線12bを切断する。
本実施の形態では、熱溶融樹脂66としてポリアセタールを用いているため、前述した所定の温度は、ポリアセタールの融点である181℃以上を見込んでいる。言い換えれば、所望の融点を備えた熱溶融樹脂66を選択することにより、前述した所定の温度を調整できる。
その他、断線促進部内を変更したこと以外は、実施の形態1と同様に、樹脂モールドを施した固定子を形成して、電動機を組み立てた。組み立てた電動機を用いて、同様の燃焼試験を行なった。燃焼試験で使用した導体径は、0.2mm(発明品18)、0.4mm(発明品19)、0.6mm(発明品20)、0.8mm(発明品21)である。その結果を(表7)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40f内の少なくとも1箇所において、電線43dは、刃物62aが接触した部分で断線されたことが確認された。
以上の結果より、熱溶融樹脂66のごとく、所定の温度で溶融する部材を用いて断線促進部40fを構成すれば、所定の温度付近で、断線促進部40f内に位置する渡り線12bである電線43dを、変形または断線することができる。本構成は、特に導体径が大きな電線43dを使用する場合には、有効な方法である。しかも、電動機1の通常動作時において、電動機1の特性には全く影響を与えることがない。よって、電動機1の信頼性を維持できる。
なお、本構成には、コイルばね61bの材料として、形状記憶合金を用いてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40fは、電線43dを変形させる変形部62と、変形部62を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材で形成される、保持部61と、を含み、保持部61が溶融して液状となったとき、変形部62が予め定められた可動範囲を移動する。
(実施の形態8)
図26は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す斜視図である。図27は、同電動機に用いられる断線促進部40e内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図28は、同電動機に用いられる断線促進部40e内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。
図26から図28に示すように、実施の形態8に係る電動機に用いられる断線促進部40eは、渡り線12bを成す電線43dを変形させる変形部62である刃物62aと、保持部61であるコイルばね61aと、を含む。
保持部61であるコイルばね61aは、変形部62を保持する。コイルばね61aは、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される。
特に、断線促進部40eの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
断線促進部40e内において、保持部61であるコイルばね61aの形状が変化したとき、変形部62である刃物62aが予め定めた可動範囲を移動する。
図面を用いて、具体例について詳細に説明する。なお、既に述べた説明と同様の構成については、同じ符号を付して説明を援用する。
まず、実施の形態8に係る電動機と実施の形態1に係る電動機との違いは、断線促進部にある。実施の形態8に係る電動機では、PBT製の断線促進部40eの内寸を10mm×5mm×5mmに変更した。
また、図27に示すように、断線促進部40e内には、変形部62であるステンレス製の刃物62aと、保持部61である形状記憶合金で形成されたコイルばね61aと、が含まれる。
コイルばね61aは、Ti−Ni−(Zr、Hf)―Nb合金製で、直径0.5mmのワイヤ状の形状記憶合金で作成される。コイルばね61aの外周は、直径3mmである。コイルばね61aの片端には、ステンレス製の刃物62aが取り付けられている。刃物62aとコイルばね61aとは、コイルばね61aが縮められた状態で、断線促進部40eの内部に組み込まれる。
210℃以下において、断線促進部40eの内部では、コイルばね61aが縮んだ状態であり、渡り線12bを成す電線43dと刃物62aとは接触していない。このとき、コイルばね61aの長さは3mmである。
一方、図28に示すように、210℃よりも温度が上がると、断線促進部40eの内部では、コイルばね61aが伸びた状態となる。このとき、コイルばね61aの長さは7mmにまで伸びている。よって、渡り線12bを成す電線43dと刃物62aとが接触している。刃物62aは、渡り線12bを成す電線43dを変形する。あるいは、コイルばね61aを調整することで、刃物62aは、渡り線12bを成す電線43dを切断する。
その他、断線促進部の寸法を変更したこと、および、断線促進部40e内に保持部61と変形部62とを組み込んだこと以外は、実施の形態1と同様に樹脂モールドを施した固定子を形成して、電動機を組み立てた。組み立てた電動機を用いて、同様の燃焼試験を行なった。燃焼試験で使用した導体径は、0.2mm(発明品22)、0.4mm(発明品23)、0.6mm(発明品24)、0.8mm(発明品25)である。その結果を(表8)に示す。
断線したサンプルを解体して、断線箇所の調査を行った。その結果、全てのサンプルで、断線促進部40e内の少なくとも1箇所において、電線43dは、刃物62aが接触した部分で断線されたことが確認された。
以上の結果より、形状記憶合金で形成された部材を用いて断線促進部を構成すれば、所定の温度付近で、断線促進部内に位置する渡り線を成す電線を、変形または断線することができる。本構成は、特に導体径が大きな電線を使用する場合には有効な方法である。しかも、電動機1の通常動作時において、電動機1の特性には全く影響を与えることがない。よって、電動機1の信頼性を維持できる。
また、上述した実施の形態7、8では、断線促進部40e、40f内に取り付けられる保持部61の一部として、コイルばね61a、61bを例示した。同様の作用効果を奏するものとして、他の構成要素を用いることができる。具体的には、所定の温度で渡り線12bである電線43dを変形、または切断するように動作するものであれば、断線促進部の内部構造は、特に限定されるものではない。
例えば、図29から図31に示すように、つぎの構成を用いることができる。図29は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられる他の固定子であって、樹脂モールドを施す前の状態を示す説明図である。図30は、同電動機に用いられる他の断線促進部40g内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図31は、同電動機に用いられる他の断線促進部40g内に含まれる保持部の動作後の状態を示す斜視図である。断線促進部40gは、変形部62としてつるまきばね62bと、保持部61として断線促進部40g内に充填された熱溶融樹脂66aと、で実現できる。
つるまきばね62bは、その両端部間の間隔が狭くなるように付勢力を有している。熱溶融樹脂66aには、ポリアセタールなどを用いることができる。図30中、孔63には、断線促進部40gを作成する際、つるまきばね62bの両端部が、渡り線12bである電線43dから離れた位置で、開となる状態を保ったまま固化されるための治具が挿入される。
本構成を用いれば、図30に示すように、断線促進部40gの内部に位置する熱溶融樹脂66aの溶融温度より低い状態において、つるまきばね62bの両端部は、渡り線12bである電線43dから離れた位置で、開状態を保ったまま固化される。
一方、図31に示すように、断線促進部40gの内部温度が所定の温度に達し、熱溶融樹脂66aの溶融温度を越えると、熱溶融樹脂66aが溶融する。熱溶融樹脂66aの溶融温度を越えると、熱溶融樹脂66aが溶融して、つるまきばね62bは、渡り線12bである電線43dを挟むよう、動作する。電線43dは、つるまきばね62bに挟まれることにより、細くなったり、変形したり、あるいは、切断されたりする。このようにして、図30、図31に示すように、つるまきばね62bを用いた断線促進部40gは、上述したそれぞれの断線促進部と同様、燃焼試験に用いることができる。
さらに、断線促進部40gで変形、または切断される部分の電線43dは、予め変形などにより断面積を小さくしておいても、もちろん構わない。
図32は、本発明の実施の形態8に係る電動機に用いられるさらに他の断線促進部40h内に含まれる保持部の動作前の状態を示す説明図である。図33は、同電動機に用いられるさらに他の断線促進部40h内に含まれる保持部の動作後の状態を示す説明図である。
上述した断線促進部40eに換えて、図32、図33に示すように、断線促進部40hを用いることができる。断線促進部40hは、電線43dを変形させる変形部62である刃物62aと、保持部61と、を含む。保持部61は、変形部62である刃物62aを保持するコイルばね61bとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材である熱溶融樹脂66bとで形成される。
特に、断線促進部40hの部材が溶融して液状あるいは気体となる温度は、樹脂のモールド成形温度、または、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高いことが好ましい。
断線促進部40hは、保持部61が溶融して気体となったとき、変形部62である刃物62aが予め定めた可動範囲を移動する構成としてもよい。
上述した実施の形態では、電線43dは、ポリウレタン/ナイロン銅線を用いたが、他の皮膜または導体材質のものを用いても構わない。インシュレータ13としてPBTを、モールド樹脂31としてBMCを用いたが、他の材質でも構わない。上記実施の形態では、断線促進部40を、コイル12間の渡り線12bまたはリード線15の接続部分15aに設けた場合を述べたが、これに限るものではなく、U相、V相、W相の3相間を繋げる中性点14の接続部分14aに設けてもよい。
以上のように、本実施の形態の断線促進部40hは、電線を変形させる変形部62と、変形部62を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材で形成する、保持部61と、を含み、保持部61が溶融して気体となったとき、変形部62が予め定められた可動範囲を移動する。
また、断線促進部40eは、電線を変形させる変形部62と、変形部62を保持するとともに、樹脂のモールド成形温度、あるいは、電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される、保持部61と、を含み、保持部61の形状が変化したとき、変形部62が予め定められた可動範囲を移動する。
本発明は、固定子がモールド樹脂で覆われている電動機(モールドモータ)に対して、簡易に、また広範囲に利用することができる。
1 電動機
10 固定子
11 固定子コア
12 コイル
12a コイルエンド
12b 渡り線
12c、43a、43b、43c、43d、44a、44b、44c 電線
13 インシュレータ
13a 底面部
13b 外周壁部
13c 内周壁部
14 中性点
14a、15a 接続部分
15 リード線
20 回転子
21 回転軸
22 回転体
23 回転子コア
24 磁石
30A、30B 軸受
31 モールド樹脂
31a 胴部
31b コイルモールド部
32 第1の金属ケース
33 第2の金属ケース
34 回路基板
40、40a、40b、40c、40d、40e、40f、40g、40h、40j、40k 断線促進部
41、41a、41b、41c、41d 囲い材
42 断線促進体
45 扁平部
46 凹状に変形された部分
47、47a 抵抗器
51 接続端子
52 細電線
53 コイル用電線
55a 接続部
55b 接続端子
61 保持部
61a、61b コイルばね
62 変形部
62a 刃物
62b つるまきばね
63 孔
66、66a、66b 熱溶融樹脂
90 電源

Claims (21)

  1. 固定子コアと、
    前記固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、
    を有する固定子と、
    前記固定子を覆う樹脂と、
    前記電線に対して断線を促す断線促進部と、
    を備え、
    前記断線促進部は、前記固定子コアに巻き回された前記コイル間の渡り線部分、前記コイルが成す複数相の中性点の接続部分、および、前記電線と、外部から前記電線に電力を供給するリード線との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられる電動機。
  2. 前記断線促進部は、空気を含む空間である、請求項1に記載の電動機。
  3. 前記断線促進部は、前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材で形成する、請求項1に記載の電動機。
  4. 溶融して液状となる前記部材は、6−ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、12−ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、66−ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、アセチルセルロース、エチルセルロースのうち、少なくともいずれかひとつよりなる、請求項3に記載の電動機。
  5. 前記断線促進部は、前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材で形成する、請求項1に記載の電動機。
  6. 前記断線促進部内に位置する前記電線の部分は、前記断線促進部外に位置する前記電線の部分よりも断面積が小さい、請求項1に記載の電動機。
  7. 前記断線促進部内に位置する前記電線の前記部分は、前記断線促進部内に位置する前記電線が扁平状に変形された部分の断面積が前記断線促進部外に位置する前記電線の前記部分よりも小さい、請求項6に記載の電動機。
  8. 前記断線促進部内に位置する前記電線の前記部分は、前記断線促進部内に位置する前記電線が凹状に変形された部分の断面積が前記断線促進部外に位置する前記電線の前記部分よりも小さい、請求項6に記載の電動機。
  9. 前記断線促進部内に位置する前記電線は、前記断線促進部外に位置する前記電線よりも細い線径の電線で構成される、請求項6に記載の電動機。
  10. 前記断線促進部は、前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材である、請求項1に記載の電動機。
  11. 前記断線促進部は、
    前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、断線する熱感応導電材と、
    前記熱感応導電材の周囲に空間を形成するように前記熱感応導電材を囲む囲い材と、
    を含む、請求項1に記載の電動機。
  12. 前記熱感応導電材は、抵抗器である、請求項10または請求項11のいずれか一項に記載の電動機。
  13. 前記断線促進部は、
    前記電線を変形させる変形部と、
    前記変形部を保持するとともに、前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して液状となる部材で形成される、保持部と、
    を含み、
    前記保持部が溶融して液状となったとき、前記変形部が予め定められた可動範囲を移動する、
    請求項1に記載の電動機。
  14. 前記断線促進部は、
    前記電線を変形させる変形部と、
    前記変形部を保持するとともに、前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、溶融して気体となる部材で形成する、保持部と、
    を含み、
    前記保持部が溶融して気体となったとき、前記変形部が予め定められた可動範囲を移動する、
    請求項1に記載の電動機。
  15. 前記断線促進部は、
    前記電線を変形させる変形部と、
    前記変形部を保持するとともに、前記樹脂のモールド成形温度、あるいは、前記電動機の動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれかが高温となる方の温度よりも高温のときに、その形状が変化する形状記憶合金で形成される、保持部と、
    を含み、
    前記保持部の形状が変化したとき、前記変形部が予め定められた可動範囲を移動する、
    請求項1に記載の電動機。
  16. 固定子コアと、
    前記固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、
    を有する固定子と、
    前記固定子を覆う樹脂と、
    前記電線に対して断線を促す断線促進部と、
    を備え、
    前記断線促進部は、前記固定子コアに巻き回された前記コイル間の渡り線部分、前記コイルが成す複数相の中性点の接続部分、および、前記電線と、外部から前記電線に電力を供給するリード線との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられ、
    前記断線促進部内に位置する前記電線の部分は、前記断線促進部外に位置する前記電線の部分よりも断面積が小さい電動機において、
    前記断線促進部内に位置する前記電線を伸長して形成する電動機の製造方法。
  17. 固定子コアと、
    前記固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、
    を有する固定子と、
    前記固定子を覆う樹脂と、
    前記電線に対して断線を促す断線促進部と、
    を備え、
    前記断線促進部は、前記固定子コアに巻き回された前記コイル間の渡り線部分、前記コイルが成す複数相の中性点の接続部分、および、前記電線と、外部から前記電線に電力を供給するリード線との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられ、
    前記断線促進部内に位置する前記電線の部分は、前記断線促進部外に位置する前記電線の部分よりも断面積が小さい電動機において、前記断線促進部内に位置する前記電線を捻って形成する電動機の製造方法。
  18. 固定子コアと、
    前記固定子コアに電線を巻き回して複数相を成すコイルと、
    を有する固定子と、
    前記固定子を覆う樹脂と、
    前記電線に対して断線を促す断線促進部と、
    を備え、
    前記断線促進部は、前記固定子コアに巻き回された前記コイル間の渡り線部分、前記コイルが成す複数相の中性点の接続部分、および、前記電線と、外部から前記電線に電力を供給するリード線との接続部分、の少なくともいずれか一箇所に取付けられ、
    前記断線促進部内に位置する前記電線の部分は、前記断線促進部外に位置する前記電線の部分よりも断面積が小さい電動機において、前記断線促進部内に位置する前記電線を屈曲させて形成する電動機の製造方法。
  19. 溶融して液状となる前記部材が溶融して液状となる温度は、前記樹脂のモールド成形温度、または、動作時の最大到達コイル温度のうち、いずれか高温となる方の温度よりも、20℃以上高い、請求項3、5、10、11、13、14、15のいずれか一項に記載の電動機。
  20. 前記断線促進部内に位置する前記電線の部分は、捻られている、請求項1に記載の電動機。
  21. 前記断線促進部内に位置する前記電線の部分は、屈曲している、請求項1に記載の電動機。
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