(第1実施形態)
以下、印刷装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。印刷装置は、例えば、大判サイズの長尺の媒体に印刷(記録)を行うラージフォーマットプリンター(LFP)である。以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、各部材等の尺度を実際とは異ならせて示している。また、図1から図4等では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及びZ軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」としている。X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。
まず、印刷装置の構成について説明する。印刷装置は、例えば、インクジェット式のラージフォーマットプリンターである。図1に示すように、印刷装置11は、ロール・ツー・ロール方式で媒体Mを搬送する搬送装置12、媒体Mの所定領域に対して液体の一例としてのインクを吐出して画像や文字等を印刷する印刷部13、媒体Mを支持する媒体支持部14、張力付与部15、及びこれらの各構成部を制御する制御部41を備えている。そして、これらの各構成部は、台車を有する本体フレーム16に支持されている。なお、媒体Mは、例えば、64インチ(Inch)程度の幅を有する塩化ビニル系フィルム等である。また、本実施形態においては、重力方向に沿う上下方向がZ軸方向、印刷部13において媒体Mが搬送される方向がY軸方向、媒体Mの幅方向がX軸方向となっている。
搬送装置12は、ロール状の媒体Mを搬送方向(図中の矢印方向)の印刷部13に送り出す給送部21と、印刷部13で印刷されて送り出された媒体Mを巻き取る巻取部22とを有している。搬送装置12は、給送部21及び巻取部22間の搬送経路の途中で媒体Mを搬送する搬送機構23を有している。搬送機構23は搬送ローラー対23aと、搬送ローラー対23aに回転動力を出力する搬送モーター23Mとを備える。図1に示す搬送機構23は、搬送ローラー対23aが一つの例であるが、複数の搬送ローラー対23aを有していてもよい。また、搬送機構23は、ローラー式搬送機構に限らず、媒体Mを載せて搬送する搬送ベルトを有するベルト式搬送機構を少なくとも一部に有していてもよい。なお、本実施形態では、搬送機構23が第1搬送部の一例に相当し、巻取部22が第2搬送部の一例に相当する。
給送部21には、未使用の媒体Mが円筒状に巻き重ねられたロール体R1が保持されている。給送部21には、媒体Mの幅(X軸方向における長さ)や巻き数の異なる複数サイズのロール体R1が交換可能に装填される。そして、給送部21が不図示の給送モーターの動力によってロール体R1を図1における反時計方向に回転させることで、ロール体R1から媒体Mが巻き解かれ印刷部13に給送される。巻取部22には、印刷部13で印刷された媒体Mが円筒状に巻き取られてロール体R2が形成される。巻取部22は、媒体Mを巻き取ってロール体R2を形成するための円筒状の芯材を支持する一対の巻取軸22bを有する一対のホルダー22aと、一対の巻取軸22bを回転させる動力を出力する巻取モーター22Mとを備える。巻取モーター22Mが駆動され巻取軸22bが図1における反時計方向に回転することにより、媒体Mが巻取軸22bに支持された芯材に巻き取られロール体R2が形成される。
印刷部13は、媒体Mに向けてインクを吐出可能な記録ヘッド31と、記録ヘッド31が搭載されたキャリッジ32を搬送方向と交差する方向(X軸方向)に往復移動させるキャリッジ移動部33とを備える。記録ヘッド31は、複数のノズルを有し、各ノズルからインクを吐出可能に構成されている。そして、キャリッジ移動部33によってキャリッジ32をX軸方向に往復移動させながら記録ヘッド31からインクを吐出させる主走査と、搬送装置12が媒体Mを搬送方向に搬送させる副走査とを繰り返すことにより、媒体M上に画像や文字等を印刷する。
媒体支持部14は、媒体Mの搬送経路において媒体Mを支持可能に構成され、給送部21と搬送機構23との間に設けられた第1支持部24と、印刷部13と対向配置された第2支持部25と、第2支持部25の下流側端部と巻取部22との間に設けられた第3支持部26とを有している。
印刷装置11は、媒体Mを加熱する第1ヒーター(プレヒーター)27と、第2ヒーター28と、第3ヒーター(アフターヒーター)29とを備えている。制御部41は、第1、第2及び第3ヒーター27,28,29を駆動させることにより、熱伝導で媒体支持部14における媒体Mを支持する面が加熱され、媒体Mの裏側から媒体Mを加熱する。第1ヒーター27は、第1支持部24を加熱し、印刷部13よりも搬送方向上流側(−Y軸側)で媒体Mを予熱する。第2ヒーター28は、第2支持部25を加熱し、印刷部13の吐出領域において媒体Mを加熱する。第3ヒーター29は、第3支持部26を加熱し、第3支持部26上の媒体Mを加熱することで媒体Mに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを少なくとも巻取部22で巻き取る前に完全に乾燥定着させる。
張力付与部15は、搬送機構23と巻取部22との間の部分で媒体Mに張力を付与する。本実施形態の張力付与部15は、媒体支持部14の搬送方向下流端(つまり第3支持部26の下端)と巻取部22との間で空中に延びている部分の媒体Mに張力を付与する。張力付与部15は、回動軸53を中心として回動する張力付与部材の一例としてのテンションバー55を有し、テンションバー55が印刷部13によって画像等が印刷された媒体Mの裏面と接することで媒体Mに張力を付与する。
次に、図1及び図2を参照して、張力付与部15の構成について説明する。図1及び図2に示すように、張力付与部15は、回動軸53を中心に回動可能な一対のアーム54と、一対のアーム54の一端に支持され媒体Mと接することが可能なテンションバー55と、一対のアーム54の他端に支持されているカウンターウエイト52とを含んでいる。テンションバー55とカウンターウエイト52とは、一対のアーム54をその基端部と先端部とで幅方向(Y軸方向)に繋ぐ長尺部材で構成されている。
テンションバー55は、円柱形状をなし媒体Mの幅よりも幅方向に長く形成されている。カウンターウエイト52は、直方体形状をなしテンションバー55と略同じ長さに形成されている。テンションバー55とカウンターウエイト52は、張力付与部15の錘部を構成している。一対のアーム54は、各々の長手方向の両端に設けられたテンションバー55とカウンターウエイト52との間で本体フレーム16に設けられた回動軸53に支持されている。これにより、張力付与部15が回動軸53を中心として回動可能になり、テンションバー55が、印刷部13によって画像などが印刷された媒体Mの裏面と接することで、媒体Mに張力が付与される。
一対のアーム54は、鉛直方向(Z軸方向)の上方に向かって凸状に湾曲した形状をなしている。この形状により、巻取部22の媒体Mの幅方向(X軸方向)の両端に設けられ媒体Mを巻き取る軸を支持するホルダー22aなどを避けてテンションバー55を媒体Mに接触させることが可能になるので、張力付与部15の幅方向の寸法を小さくすることができる。これにより、張力付与部15が作業者などの他の物体と接触する頻度を減らすことができる。さらに、テンションバー55とカウンターウエイト52とが一対のアーム54を繋ぐ長尺部材で構成されているため、張力付与部15のねじれ剛性が向上し、張力付与部15が他の物体と接触した場合でも張力付与部15の変形を抑制できる。また、本実施形態の搬送装置12は、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値未満の距離に近づいたことを検出する検出部17を備えている。さらに搬送装置12は、テンションバー55の媒体Mに向かう付勢力を調整可能な調整部の一例としての付勢力調整部18を備えている。なお、検出部17及び付勢力調整部18の詳細な構成は後述する。
次に、図3〜図5を参照して、テンションバー55の回動範囲について説明する。印刷装置11は、テンションバー55の上限位置P1及び下限位置P2を求めるためのセンサー部60を備えている。センサー部60は、上限センサー61、下限センサー62、フラグ板63を有している。フラグ板63は、回動軸53を中心とする扇状をなしアーム54に設けられている。上限センサー61及び下限センサー62は、透過型フォトセンサーであり、フラグ板63の外周縁部(円弧部分)を検知可能な位置に設けられている。
下限センサー62の構成を説明する。なお、上限センサー61の構成は、下限センサー62と同一の構成であるため、その説明を省略する。図5に示すように、下限センサー62は、光を出射する発光素子等を有する発光部65と、光を受光する受光素子等を有する受光部66とを備えている。発光部65と受光部66とは、互いに対向するように備えられている。下限センサー62は、本体フレーム16に設けられている。フラグ板63は、発光部65と受光部66との間に回動可能に配置されている。図3は、発光部65から出射された光がフラグ板63で遮光され、受光部66で受光されない状態を示している。このとき、下限センサー62は、「OFF」の信号を出力する。フラグ板63は、図3の状態からアーム54(張力付与部15)の回動と共に回動軸53を中心として反時計回りに回動する。フラグ板63の下限端部63aが図3に示す位置から図4に示す位置に達すると、フラグ板63が発光部65と受光部66との間から外れ、発光部65から出射された光が受光部66で受光される状態になる。このとき、下限センサー62は、「ON」の信号を出力する。
張力付与部15は、テンションバー55の位置が図3に示す上限位置P1から図4に示す下限位置P2までの範囲において媒体Mに張力を付与する。詳しくは、印刷部13で印刷された媒体Mが、搬送機構23の駆動により搬送され媒体支持部14の下流端から順次搬出される。これにより、第3支持部26の先端と巻取部22との間の媒体Mの長さが徐々に長くなるのに従って、上限位置P1に位置していたテンションバー55は、自重によって回動軸53を中心にして下限位置P2に向かって徐々に回動(降下)する。テンションバー55が下限位置P2に達すると、アーム54と共に回動したフラグ板63が下限センサー62の発光部65と受光部66との間から外れ、下限センサー62から「ON」の信号が出力される。
制御部41は、下限センサー62から出力された「ON」の信号を受信すると、媒体Mを巻取部22に巻き取らせる巻取モーター22Mを駆動する。これにより、媒体Mには、さらに張力が加わりテンションバー55を上昇させる力が生じる。媒体Mが巻取部22に巻き上げられて第3支持部26の先端と巻取部22との間の媒体Mの長さが短くなるのに従って、下限位置P2に位置していたテンションバー55は、回動軸53を中心にして上限位置P1に向かって回動(上昇)する。テンションバー55が上限位置P1に達すると、アーム54と共に回動したフラグ板63が上限センサー61の発光部65と受光部66との間から外れ、上限センサー61から「ON」の信号が出力される。制御部41は、上限センサー61から出力された「ON」の信号を受信すると、巻取モーター22Mの駆動を停止する。以上の動作を繰り返すことで、張力付与部15は、テンションバー55を上限位置P1と下限位置P2との範囲で媒体Mの裏面に接触して媒体Mを押圧することで媒体Mに所定の張力を付与する。なお、本実施形態では、搬送機構23による複数回の搬送動作につき巻取部22による巻取動作が1回行われる。
次に、検出部17の構成例について説明する。検出部17は、テンションバー55に設けられ、テンションバー55と媒体とが距離閾値以下の距離に近づいた(接近した)ことを検出する。検出部17の検出方式には、接触式と非接触式とが挙げられる。まず図6〜図8を参照して、接触式の検出部17の構成例について説明する。
図6に示すように、接触式の検出部17は、媒体Mに接触することで媒体Mを検知可能な可動式の検知部75を有する。検出部17は、テンションバー55に固定された有底筒状の筐体71と、筐体71に固定されたガイド軸72と、ガイド軸72に沿って移動可能な有底筒状の可動体73と、可動体73を突出方向へ付勢するばね74とを備えている。可動体73の先端部分である検知部75は、テンションバー55の表面から、媒体支持部14の下流端と巻取部22との間の部分の媒体M(又は媒体経路)に向かう方向に出没(突出/没入)可能となっている。また、筐体71内には、可動体73の基端部に設けられた被検知部76(遮蔽部)を検知可能なセンサー77が配置されている。センサー77は、検知部75が図6に示す突出位置にあるときに被検知部76を検知し、図7に示すようにテンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsになって検知部75が突出位置に対して少し押された検知位置にあるときに、被検知部76を検知しなくなる。図8に示すように、テンションバー55が媒体M上に落下してテンションバー55の全荷重が媒体Mにかかった状態では検知部75は媒体Mに押されてテンションバー55の表面とほぼ面一になる状態に没入する。このため、テンションバー55は、検知部75が邪魔にならずその円弧面で媒体Mを押圧して媒体Mに付勢力を付与することができる。また、検出部17はテンションバー55に設けられているため、検知対象の媒体Mとの間に遮る物などもなく、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に接近したことをより確実に検知できる。
センサー77は、被検知部76を検知しているときは非検知信号を出力し、被検知部76を検知しなくなると検知信号(接近検知信号)を出力する。センサー77は、例えばフォトインターラプターやフォトリフレクター等の光学式センサーからなる非接触式センサーとしているが、マイクロスイッチ等の接触式センサーでもよい。
次に、図9及び図10を参照して、接触式の検出部17の他の構成例について説明する。図9に示すように、検出部17は、その一部がテンションバー55に貫通する状態に取り付けられている。検出部17は、テンションバー55に貫通状態に固定された筒状のガイド筒81と、ガイド筒81内をその軸線方向に沿って移動可能に設けられた可動体82とを備えている。可動体82は、先端部分に検知部83を有する先端部材82Aと、基端部材82Bと、先端部材82Aと基端部材82Bとの間に介装されたばね84とを有している。検知部83はばね84よりテンションバー55の表面から突出する方向へ付勢されており、テンションバー55の表面から媒体Mの経路に向かって出没(突出/没入)可能に設けられている。本例の接触式の検出部17は媒体Mに押されることで、テンションバー55の媒体Mへの接近を検知するプッシュ式である。
図9に示すように、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls(図10参照)よりも十分長い所定距離以上離れた状態では、検知部83はテンションバー55の表面から最も突出した図9に示す突出位置に配置される。また、基端部材82Bの軸線方向外側の端部は被検知部85となっており、これと対向する位置には、被検知部85を検知可能なセンサー86が、不図示のブラケットを介してテンションバー55に固定された状態で配置されている。センサー86は、検知部83が図9に示す突出位置にあるときに被検知部85を検知せず、図10に示すようにテンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsになって検知部83が媒体Mに少し押されて外側へ少し変位した被検知部85を検知可能な位置に配置されている。図9では、センサー86をマイクロスイッチとした例を示し、その検知レバー86Aはオフ状態の角度で被検知部85に接触した状態にある。そして、テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsとなったときに媒体Mに押された検知部83が図10に実線で示す位置まで少し退避すると、ばね84を介して連結された被検知部85が少し外側へ変位して同図に示すように検知レバー86Aを押し、センサー86がオンする。その後、図10に二点鎖線で示すように、テンションバー55が媒体M上に落下してテンションバー55の全荷重が媒体Mにかかったときは、媒体Mに押された検知部83はテンションバー55にその表面とほぼ面一になる状態まで没入する。このため、検知部83が邪魔になることなくテンションバー55の円弧面によって媒体Mを付勢することができ、検知部83が媒体Mにダメージを与えることがない。また、図9に実線で示す突出位置から図10に二点鎖線で示す没入位置まで可動体82が移動する過程でばね84が圧縮され、先端部材82Aの変位量に比べ基端部材82Bの変位量が小さく抑えられ、被検知部85からセンサー86に加わる力がテンションバー55の全荷重が媒体Mにかかったときでも一定値以下に抑えられる。
センサー86は、図9に示すように被検知部85を検知していないときは非検知信号を出力し、図10に示すように被検知部85を検知しているときに検知信号を出力する。センサー86は、被検知部85を検知できれば、接触式に限らず非接触式でもよい。例えば、非接触式のセンサー86を用いる場合、図6の例と同様に、フォトインターラプターやフォトリフレクター等の光学式センサーを用いることができる。
次に、図11及び図12を参照して、非接触式の検出部17の構成例について説明する。非接触式の検出部17は、図11に示すようにテンションバー55に内蔵された近接センサー87、図12に示すようにテンションバー55に内蔵された距離センサー88を備えている。
図11に示す検出部17は、テンションバー55の表面部に開口する窓部55aと、テンションバー55に窓部55aと対向する状態で内蔵された近接センサー87とを備える。窓部55aは、例えばテンションバー55の表面部における媒体Mと接触する部分に設けられており、近接センサー87は、窓部55aから媒体Mを検出する。テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsを十分に超える図11に左側の二点鎖線で示す位置に媒体Mがあるとき、近接センサー87は媒体Mを検知できず、非検知信号を出力する。また、テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsとなる図11に実線で示す位置に媒体Mがあるとき、近接センサー87は媒体Mを検知し、検知信号を出力する。そして、テンションバー55が媒体M上に落下してテンションバー55の全荷重が媒体Mにかかった状態では、媒体Mは図11に右側の二点鎖線で示す位置にあって、テンションバー55の表面に押し付けられる。このときも、テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Ls以下なので、近接センサー87は検知信号を出力する。また、近接センサー87はテンションバー55に内蔵されているので、邪魔にならず、テンションバー55は円弧面で媒体Mを付勢できる。なお、近接センサー87は、誘導型、磁気型、静電容量型等のどの方式のものでもよい。誘導型の近接センサーは、検出コイルより高周波磁界を発生させ電磁誘導による誘導電流(渦電流)による検出コイルのインピーダンスの変化を検出する。磁気型の近接センサーは、磁性体のリードを持つ検出部で接触レバーにつけた磁石の接近を感知する。静電容量型の近接センサーは、電界を与え、近接した物体による静電誘導による分極の程度を静電容量による発振等で検知する。
また、図12に示す検出部17は、テンションバー55の表面部に開口する図11と同様の窓部55aと、テンションバー55に窓部55aと対向する状態で内蔵された距離センサー88とを備える。距離センサー88は窓部55aを通じて媒体Mまでの距離を検出する。テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsを十分に超える図12に左側の二点鎖線で示す位置に媒体Mがあるとき、距離センサー88は検出した媒体Mまでの距離が距離閾値Lsを超えていることから、非検知信号を出力する。また、テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsとなる図12に実線で示す位置に媒体Mがあるとき、距離センサー88は検出した媒体Mまでの距離が距離閾値Lsであることから、検知信号を出力する。そして、テンションバー55が媒体M上に落下してテンションバー55の全荷重が媒体Mにかかった状態では、媒体Mは図12に右側の二点鎖線で示すように、テンションバー55の表面に押し付けられる。このときも、テンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Ls以下なので、距離センサー88は検知信号を出力する。また、距離センサー88はテンションバー55に内蔵されているので、邪魔にならず、テンションバー55は円弧面で媒体Mを付勢できる。なお、距離センサー88は、超音波センサー、電波型センサー、空気圧型センサーのいずれでもよい。例えば超音波センサーは、超音波を発信し、対象物から反射する超音波を受信して発信から受信までの時間より距離を測定して距離を検出する。
次に、付勢力調整部18の構成例について図13〜図20を参照して説明する。ここでは、付勢力調整部18の構成例として、電動モーター等の駆動源の駆動力で付勢力を直接調整する駆動源方式(図13等)、摩擦抵抗を利用して付勢力を調整する摩擦負荷方式(図18、図19)、重心移動を利用して付勢力を調整する重心移動方式(図20)などを挙げる。付勢力調整部18は、張力付与部15に負荷を与えることで制動力を発生させて付勢力を調整する制動力発生部19としても機能する。この場合、付勢力調整部18は、テンションバー55の付勢力を、調整しない場合の付勢力に比べ小さく調整する。付勢力調整部18(制動力発生部19)が、張力付与部15に与える負荷は、駆動源の駆動力、摩擦負荷、粘性負荷、弾性負荷及び張力付与部15の重心移動のうちいずれか一つによる。以下に示す駆動源方式、摩擦負荷方式、重心移動方式の各付勢力調整部18(制動力発生部19)は、駆動源を有し、駆動源の制御によって張力付与部15に発生させる制動力を調整可能に構成されている。まず、駆動源方式の付勢力調整部18について図13〜図19を参照して説明する。
図13に示すように、付勢力調整部18は、駆動源の一例としての電動モーター56と、電動モーター56の出力軸と共に回転可能な駆動歯車56Aと噛合するとともに回動軸53に回転の動力を伝達する伝達歯車機構57とを備えている。伝達歯車機構57は、一方のアーム54に回動軸53を中心に回動可能に設けられた扇形歯車58(セクターギア)と、駆動歯車56Aと扇形歯車58との間に介在する歯車機構59とを有している。但し、図13では、歯車機構59は1つの歯車の例を示しているが、後述する複数の歯車を有する構成例でもよい。
電動モーター56から出力される回転力は、駆動歯車56A及び歯車機構59を介して扇形歯車58に伝達され、扇形歯車58と共に回動軸53が回動することにより一対のアーム54を回動させる。これにより一対のアーム54に支持されたテンションバー55に回動方向の付勢力(回転力)が付与される。付勢力調整部18は、制御部41によって電動モーター56が駆動制御されることにより、テンションバー55が媒体Mに付与する付勢力の調整が可能となっている。
よって、付勢力調整部18は、テンションバー55の自重(重力)による付勢力を電動モーター56の動力により調整する。付勢力調整部18は、制御部41が電動モーター56の駆動速度を制御してテンションバー55の回動速度を調整することにより、テンションバー55の落下開始時の位置から媒体M上への落下終了位置までの落下高さと、媒体M上に落下した際のテンションバー55の落下速度との調整が可能である。本例の付勢力調整部18は、テンションバー55の落下過程においてテンションバー55の自重による落下方向(回動方向下向き)の力に対してその反対方向(回動方向上向き)の力となる制動力を発生させる制動力発生部19として機能する。
ここで、伝達歯車機構57として図14〜図17に示す次の2つの構成例を示す。図14、図15に示す1つ目の伝達歯車機構57は、電動モーター56とテンションバー55とを常に動力伝達可能に連結している構成例である。図16、図17に示す2つ目の伝達歯車機構57は、遊星歯車571を有する遊星歯車機構を構成し、テンションバー55の回動方向に応じて遊星歯車571が動力伝達経路に対して着脱可能な構成例である。なお、図14と図16がテンションバー55の巻上げ時、図15と図17がテンションバー55の落下時の動作をそれぞれ示す。
図14、図15に示す付勢力調整部18は、動力伝達経路が常に伝達歯車機構57を介して連結されているため、落下時及び巻上げ時の双方において電動モーター56のディテントトルク及びイナーシャトルクが付加されるため、双方に対しモータートルクによるテンション補正が必要になる。しかし、巻上げ時にもトルク管理を電動モーター56の制御で実施できるので、単位長さ当りの重量が重い媒体M等でテンションバー55の荷重を補正したい場合、テンション可変機構としても使用できる。
図16、図17に示す付勢力調整部18は、動力伝達経路に対して着脱可能な遊星歯車571を備えるため、巻上げ時は遊星歯車571が外れて動力伝達経路が切断されるため、巻上げ時はテンション(張力)の変更ができない。しかし、巻上げ時に動力伝達経路が切断され、テンションバー55の付勢力がその自重のみとなるため、巻取部22における媒体Mの巻きずれに影響が大きいテンションバー55の荷重変動を厳格に管理でき、媒体Mの巻きずれの抑制に効果がある。
次に、図14〜図17に示す張力付与部15においてテンションバー55の付勢力を説明する。ここで、図14〜図17において、Moは張力付与部15のモーメント、T1は電動モーター56のモータートルク、Lはテンションバー55の回動半径、θはテンションバー55と回動支点53aとを結ぶ直線が鉛直線に対してなす角度である。モータートルクT1は、テンションバー55の落下時の回動方向をプラス、巻上げ時の回動方向をマイナスとする。
図14に示す張力付与部15では、巻上げ時にテンションバー55に働く重力方向の力Fは、F=(Mo+T1)/(L・sinθ)となる。この力Fのうち「T1/(L・sinθ)」が電動モーター56のモータートルクによる調整分の力に相当し、この調整分の力を調整することにより巻上げ時のテンションを変更できる。また、図15に示す張力付与部15では、落下時にテンションバー55に働く重力方向の力Fは、F=(Mo−T2)/(L・sinθ)となる。この力Fのうち「−T2/(L・sinθ)」が電動モーター56のモータートルクによる制動力に相当する。
また、図16に示す張力付与部15では、巻上げ時にテンションバー55に働く重力方向の力Fは、動力伝達経路の切断により、F=Mo/(L・sinθ)となる。また、図17に示す張力付与部15では、落下時にテンションバー55に働く重力方向の力Fは、F=(Mo−T2)/(L・sinθ)となる。この力Fのうち「−T2/(L・sinθ)」が電動モーター56のモータートルクによる制動力である。これらの付勢力調整部18は、少なくともテンションバー55の落下時に制動力を発生する制動力発生部19として機能する。
次に、図18、図19を参照して付勢力調整部18の他の構成例を説明する。図18、図19に示す付勢力調整部18は、張力付与部15に摩擦負荷を作用させて付勢力を調整する。摩擦負荷を作用させて発生する摩擦力は、テンションバー55の回動方向(付勢方向)と反対方向に作用するため、テンションバー55の制動力として働く。この点で、付勢力調整部18は、摩擦力を制動力とする制動力発生部19としても機能する。付勢力調整部18は、アーム54の基端部に固定され回動軸53と共に回動可能な被制動部材91と、被制動部材91に押圧可能な摩擦部材92と、摩擦部材92を被制動部材91から離間した離間位置と、被制動部材91に押圧する制動位置とに移動させる電動モーター93とを備えている。図18に示す例では、電動モーター93の動力によって、摩擦部材92は回動軸53の軸線と平行な方向に変位し、制動位置において被制動部材91の側面(被制動面)を押圧したときに発生する摩擦力がテンションバー55の制動力となる。
また、図19に示す例では、電動モーター93の動力によって、摩擦部材92が、回動軸53の軸線と直交する方向(径方向)に変位し、制動位置において被制動部材91の外周面(被制動面)を押圧したときに発生する摩擦力がテンションバー55の制動力となる。なお、アーム54又はフラグ板63を摩擦部材92が押圧する構成でもよい。また、摩擦部材92の押圧方向は、回動軸53の軸線方向と径方向に限らず、テンションバー55に制動力を発生させることができれば適宜選択できる。
また、張力付与部15に作用させる負荷は粘性負荷でもよい。すなわち、付勢力調整部18(制動力発生部19)は、テンションバー55の回動軸53に直結又は着脱可能に接続される粘性抵抗機構により張力付与部15に制動負荷を付与する構成でもよい。例えば粘性抵抗機構にロータリーダンパーを用い、ロータリーダンパーをテンションバー55の回動軸53に直接又は電磁クラッチを介して切離可能に取り付ければよい。この場合、電磁クラッチは制御部41により制御される。
また、張力付与部15に作用させる負荷は弾性負荷でもよい。すなわち、付勢力調整部18(制動力発生部19)は、テンションバー55の回動軸53に直結又は着脱可能に接続される弾性体によって張力付与部15に制動負荷を付与する構成でもよい。例えば、付勢力調整部18は、回動軸53と同軸上の位置に回転可能な状態に配置された接続部材と、回動軸53と接続部材との間に介在する電磁クラッチと、接続部材を回動方向に付勢する捩じりコイルばねとを備えた構成とする。この場合、電磁クラッチは制御部41により制御される。
次に、図20を参照して付勢力調整部18の他の構成例を説明する。図20に示す付勢力調整部18は、張力付与部15の重心を移動させることでテンションバー55の付勢力を調整する。張力付与部15の重心を移動させてテンションバー55に制動力を発生させることで、制動力発生部19としても機能する。付勢力調整部18は、張力付与部15の重心をテンションバー55の回転トルクが減ずる方向に一時的に移動させる重心移動機構100を備えている。
重心移動機構100は、張力付与部15の重心を移動させるための錘部101と、錘部101を張力付与部15の重心の移動が可能な方向に移動させる移動機構102とを備えている。移動機構102は、例えばベルト移動方式で、一対のプーリー103と、一対のプーリー103に巻き掛けられた無端状のベルト104とを備え、錘部101はベルト104の一部に固定されている。電動モーター105の出力軸は歯車機構106を介して一方のプーリー103に動力伝達可能に連結されている。電動モーター105の正逆転駆動によって錘部101がアーム54の長手方向に沿って移動することで、張力付与部15の重心が移動する。電動モーター105が正転駆動されると、錘部101がテンションバー55側に移動し張力付与部15の重心がテンションバー55側に移動する。この場合、媒体Mに対するテンションバー55の動き出しの遅れを小さくできる。一方、電動モーター105が逆転駆動されると、錘部101が回動軸53側に移動し、これに伴い張力付与部15の重心が回動軸53側に移動する。例えば、テンションバー55の落下中に電動モーター105が逆転駆動されると、錘部101が回動軸53側へ移動して張力付与部15の重心が回動軸53側へ移動するため、テンションバー55に制動力が発生する。また、巻上げ時には、電動モーター105を駆動制御して錘部101の位置を調整することによりテンション調整が可能になる。なお、重心移動機構100は、上記構成例の他に、テンションバー55の回転支点位置を可変として、テンションバー55の重心を回動トルクが減ずる方向に移動させる構成でもよい。
次に、図21を参照して、印刷装置11の電気的構成を説明する。制御部41は印刷装置11の制御を行うための制御ユニットである。制御部41は、制御回路44と、インターフェイス(I/F)42と、CPU(Central Processing Unit)43と、記憶部45とを含んで構成されている。インターフェイス42は、コンピューターやデジタルカメラなどの画像を取り扱う外部装置46と印刷装置11との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU43は、検出器群47からの入力信号処理や印刷装置11全体の制御を行うための演算処理装置である。
CPU43は、外部装置46から受信した印刷データに基づいて、制御回路44により、媒体Mを搬送方向に搬送させる搬送機構23、キャリッジ32を搬送方向と交差する方向に移動させるキャリッジ移動部33、媒体Mに向かってインクを吐出させる記録ヘッド31、媒体Mを巻き取る巻取部22及び図示しない各装置を制御する。
記憶部45は、CPU43のプログラムを格納する領域や作業領域などを確保するためのものであり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの記憶素子を有している。検出器群47は、テンションバー55の上限位置P1を検出するための上限センサー61、テンションバー55の下限位置P2を検出するための下限センサー62を含んでいる。また、検出器群47には、搬送ローラー対23aの回転を検出する回転検出器等が含まれる。なお、図21では、給送部21を省略しているが、制御部41は給送部21を構成する不図示の給送モーターを駆動制御する。
また、CPU43は、検出部17から入力した検出信号Sa(図24参照)に基づきテンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に接近したか否かを判断する。例えばCPU43は、搬送機構23による搬送動作開始後、検出部17からの検出信号Saがテンションバー55と媒体Mとが接触しているときの「ON」から両者の距離が距離閾値Lsを超えたときの「OFF」に切り換わると、付勢力調整制御のプログラムを実行する。そして、CPU43は、付勢力調整制御の実行中に、検出部17からの検出信号Saがテンションバー55と媒体Mとの距離が距離閾値Lsを超えているときの「OFF」から距離閾値Ls以下になったときの「ON」に切り換わると、付勢力調整部18(制動力発生部19)を駆動させる。そして、CPU43は、テンションバー55が一旦離れた媒体Mに接するときの両者の相対速度が所定範囲内に収めるために必要な制動力を計算又はテーブルデータを参照して取得し、その取得した制動力を発生可能なモータートルクで付勢力調整部18を構成する電動モーター56,93,105を駆動させる。
この場合、テンションバー55が付勢方向(下降側の回動方向)への移動を開始するときのテンションバー55の位置(移動開始位置)に応じて制動力を変化させることが好ましい。ここで、移動開始位置から移動を開始するテンションバー55が一旦離れた媒体に再び接したときの相対速度(例えば衝突速度)は、テンションバー55の上記位置(移動開始位置)に応じて変化する。このため、テンションバー55と媒体Mとが再び接するときの両者の相対速度を所定範囲内に収められる制動力を、テンションバー55の移動開始位置に応じて求める。CPU43は、テンションバー55の移動開始位置を基に、計算又はテーブルデータを参照して必要な制動力が得られるモーター指令値を取得する。CPU43は、その取得したモーター指令値を制御回路44に指令して電動モーター56,93,105を駆動制御する。なお、CPU43が求めるモーター指令値は、付勢力調整部18(制動力発生部19)の方式の違い、すなわち駆動源方式(図13等)、摩擦負荷方式(図18、図19)、重心移動方式(図20)などの方式の違いに応じた値として求められる。
次に、図22を参照して張力付与部15の重心位置について説明する。なお、図22では、テンションバー55の重心位置M1、カウンターウエイト52の重心位置M2、及び張力付与部15全体の重心位置M3を示している。図22に示すように、カウンターウエイト52の重心位置M2は、アーム54の回動支点53aとテンションバー55の重心位置M1とを結ぶ直線C1よりも鉛直方向の下方に設けられている。これにより、アーム54が鉛直方向の上方に向かって凸状に湾曲した形状であっても張力付与部15全体の重心位置M3を回動支点53aとテンションバー55の重心位置M1とを結ぶ直線C1上に近づけることができる。また、カウンターウエイト52の重心位置M2は、回動支点53aを通る鉛直線に対してテンションバー55の重心位置M1と反対側に設けられているので、張力付与部15全体の重心位置M3が回動支点53a側に近づき、重心位置M3と回動支点53aとの距離lが短くなる。
次に、図22及び図23を参照してテンションバー55が媒体Mに張力を付与可能な回動範囲について説明する。なお、以下の説明では、図22において、回動支点53aとテンションバー55の重心位置M1とを結ぶ直線C1と、鉛直線とでなす角をθとし、θをアーム54の傾斜角という。
図23の横軸は、アーム54の傾斜角θを表し、縦軸は、傾斜角θに位置するテンションバー55が媒体Mを押圧した時に媒体Mに付与される張力を表している。図中の破線Aは、媒体Mに付与させる所定の上限張力を示し、破線Bは、媒体Mに付与させる所定の下限張力を示している。曲線Cは、カウンターウエイト52を有する本実施形態の張力付与部15により媒体Mに付与される張力を示し、曲線Dは、カウンターウエイト52を有しない比較例の張力付与部により媒体Mに付与される張力を示している。
媒体Mに張力を付与するために媒体Mを押圧する荷重Fは、張力付与部15の質量をw、回動支点53aと張力付与部15の重心位置M3との距離をlとしたとき(図22参照)、次式で表される。
F=w・l・sinθ…(式1)
式1より、荷重Fは傾斜角θによって変動し、距離lが短くなると距離lに比例して荷重Fの変動量が小さくなることが分かる。これにより、媒体Mに付与される張力の変動も小さくなる。本実施形態の張力付与部15における回動支点53aと張力付与部15の重心位置M3との距離lは、カウンターウエイト52を有していない比較例の張力付与部におけるその距離よりも著しく短いので、本実施形態の曲線Cは、比較例の曲線Dと比較すると、張力の変化量も著しく小さくなる。
傾斜角Gは、曲線Cと所定の下限張力Bとの交点であり、テンションバー55が上限位置P1に位置する時のアーム54の傾斜角を示している。傾斜角Kは、曲線Cと所定の上限張力Aとの交点であり、テンションバー55が下限位置P2に位置する時のアーム54の傾斜角を示している。傾斜角Gから傾斜角Kは、媒体Mを巻取部22が巻き取る際のテンションバー55の回動範囲を表している。また、傾斜角G及び傾斜角Kをテンションバー55が媒体Mに接触可能な物理的回動限界と一致させることで、テンションバー55の回動範囲を最大にすることができる。
図23において、比較例の張力付与部では、媒体Mを巻取部22に巻き取る際のテンションバーの回動範囲は傾斜角Hから傾斜角Jまでの傾斜角θの範囲となっている。図23における曲線Cと曲線Dとの比較で分かるように、本実施形態の張力付与部15によれば、比較例による張力付与部よりもテンションバー55の回動範囲を大幅に広げることができる。
ここで、媒体Mの弛みについて図23を参照して説明する。媒体Mには、図1に示す搬送機構23を構成する搬送ローラー対23aが回転駆動し、搬送方向に押し出す力が付与される。また、媒体Mには、張力付与部15と巻取部22の回転駆動とによって搬送方向に引っ張る力が付与される。この押し出す力と、引っ張る力とによって、媒体Mは、搬送機構23から巻取部22に向けて搬送される。
次に、印刷装置11の作用を説明する。図1に示すように、印刷部13が媒体Mに印刷する印刷中は、搬送機構23の駆動により媒体Mが搬送される。媒体Mが搬送されることにより媒体支持部14とロール体R2との間の部分で媒体Mにできる弛みをテンションバー55が自重により下降してその付勢力によって媒体Mを押圧することで媒体Mに張力が付与される。媒体Mが搬送機構23によって複数回搬送されてテンションバー55が下限位置P2に達する度に、巻取部22が駆動される。巻取部22により媒体Mが巻き取られることで、媒体支持部14の下流端(第3支持部26の下端)とロール体R2との間の部分の媒体Mの弛み量が小さくなりながらテンションバー55が巻き上げられる。巻上げによってテンションバー55が上限位置P1まで上昇すると、巻取部22の駆動が停止される。こうして印刷中は媒体支持部14の下流端とロール体R2との間の部分の媒体Mが、テンションバー55により張力が付与された状態で巻取部22によって巻き取られる。
ところで、テンションバー55が上限位置P1と下限位置P2との間の所定高さ以上の位置に停止する状態で搬送機構23による媒体Mの搬送が開始されると、まず媒体支持部14の下流端とロール体R2との間の部分の媒体Mに弛みが発生する。本実施形態の張力付与部15はカウンターウエイト52を有するため、カウンターウエイト52を有しない比較例に比べ、その重心位置が相対的に回動軸53側に位置し、イナーシャが相対的に大きくなっている。このため、テンションバー55は、相対的にイナーシャの小さな比較例に比べ、ゆっくり落下し始める。また、印刷速度の高速化の要求から搬送機構23による媒体Mの搬送速度が比較的高速である。このため、テンションバー55の落下開始位置(搬送開始位置)から媒体M上に落下した落下終了位置までの落下高さが、比較例のときの落下高さに比べ相対的に大きくなる傾向にある。この落下高さの増大は、テンションバー55が媒体M上に落下した際の落下速度の増大に繋がるため、媒体Mに過大な張力を作用させる原因となる。また、落下高さは、テンションバー55の落下開始時点から落下終了時点までの経過時間(落下所要時間)が長くなるほど大きくなる傾向にある。そのため、落下高さは、媒体Mの搬送開始時におけるアーム54の傾斜角θ、つまりテンションバー55の落下開始位置に応じて変動し、搬送速度が一定の下では、テンションバー55の落下開始位置が高いほど大きくなる。このため、媒体Mの搬送開始時にテンションバー55が所定高さ以上に位置するとき、その大きな落下高さ及び落下速度に起因し、テンションバー55が媒体M上に落下したときに過大な張力が発生し易い。
そこで、本実施形態では、テンションバー55が落下する過程でテンションバー55が媒体Mに対して距離閾値Ls以下の距離に接近したことを検出部17が検出すると、付勢力調整部18が、テンションバー55の付勢力を、調整しない場合の付勢力よりも小さく調整する。この結果、落下中のテンションバー55は媒体Mに距離閾値Ls以下の距離に接近したときから減速を開始し、テンションバー55と媒体Mとの相対速度が所定値以下に小さくなった時点で媒体M上に落下(衝突)する。そのため、テンションバー55が媒体M上に落下する際の落下速度が相対的に小さくなり、媒体Mに過度な張力が発生することが回避される。
図24は、搬送機構23の1回の搬送開始から搬送終了までの間に、制御部41が検出部17の検出結果に基づいてテンションバー55の付勢力を調整する制御内容を例示するタイミングチャートである。以下、図25、図26を参照しつつ制御部41が行う制御内容を図24に従って説明する。なお、図24において3つのグラフは、1段目が検出部17の検出信号Sa、2段目がテンションバー55の制動力Fb、3段目が搬送速度Vpfとテンションバー移動速度Vt(回動速度)を示す。
図25に示すように、媒体Mの搬送が行われていない搬送開始前において、搬送機構23と巻取部22が共に停止した状態で、テンションバー55が所定位置以上の高さに位置するものとする。この場合、図26に示すように、巻取部22の停止状態の下で、搬送機構23が駆動されて媒体Mの搬送が開始される。すると、図24の3段目のグラフに一点鎖線で示す搬送速度Vpfで媒体Mが搬送されることにより、媒体支持部14の下流端とロール体R2との間の部分の媒体Mに弛みが発生する(図26を参照)。このとき、テンションバー55は自重と付勢力調整部18による付勢力の調整とにより比較的ゆっくり下降を開始し、図24の3段目のグラフに示すようにテンションバー55の移動速度Vtは時間の経過と共に徐々に増大する。そのため、同グラフに示すように、媒体Mの搬送開始時は、テンションバー移動速度Vtが搬送速度Vpfより小さいので、テンションバー55が搬送速度Vpfで移動する媒体Mに追従できず、テンションバー55は一旦離れた媒体Mに向かって落下する。
このテンションバー55の落下中に検出部17は、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたか否かを検出する。落下中のテンションバー55が媒体Mに近づいて両者が距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出部17が検出すると、図24の1段目のグラフに示すように、検出部17からの検出信号Saが「OFF」から「ON」に切り換わる。すると、制御部41は、付勢力調整部18(制動力発生部19)を制御し、図24の2段目のグラフに示すように、テンションバー55の付勢力の方向(回動方向)と反対方向の制動力Fbを発生させる。
その結果、図24の3段目のグラフに示すように、テンションバー移動速度Vtが低下する。このため、テンションバー55と媒体Mとの相対速度ΔV(=|Vt−Vpf|)が小さくなる。そして、相対速度ΔVが所定値よりも小さくなった時点でテンションバー55は媒体Mに衝突する。このようにテンションバー55と媒体Mとの相対速度ΔVを比較的小さくできることから、テンションバー55と媒体Mとの衝突エネルギーを抑制できる。この結果、テンションバー55が媒体Mと衝突した際に媒体Mに過度な張力が発生することが抑えられる。なお、検出部17は搬送開始時にテンションバー55が媒体Mと接触する状態のときは「ON」状態にあるが、これを接近の検出とはみなさず、媒体Mと距離閾値Lsを超える距離を離れて「ON」から「OFF」に切り換わった後、次に「OFF」から「ON」に切り換わったときに接近を検出する。
印刷装置11の組み立て精度(誤差)などによって、搬送機構23から巻取部22に至る搬送経路において、媒体Mの幅方向における+X軸側(一端側)の搬送経路長と、−X軸側(他端側)の搬送経路長とに差異が生じる場合がある。例えば、+X軸側の搬送経路長が−X軸側の搬送経路長よりも微小に短かった場合、+X軸側(搬送経路長の短い側)の搬送経路における媒体Mに弛みが生じる。このように媒体Mに搬送経路長の短い側に弛みが生じた場合、搬送経路長の長い側に偏って高張力が生じる。
搬送機構23の搬送動作が所定の複数回(例えば2〜5回)行われ、テンションバー55が、図23に示す所定の上限張力(破線A)の傾斜角Jに達する度に、巻取部22が回転駆動される。その結果、媒体Mがロール体R2に巻き取られると共にテンションバー55が巻き上げられて上方へ移動する。この巻上げ過程において、媒体Mには、所定の上限張力に加え巻取部22の回転駆動による引張り力が付与される。このとき、上述した幅方向の両端部で搬送経路長に差異があった場合、巻取部22を駆動させると、巻取部22において搬送経路長の短い+x軸側の端部(一端部)を中心に搬送経路長が長い−x軸側(他端側)が回転するような偶力を発生させる。この偶力により、搬送ローラー対23aと巻取部22との間の部分の媒体Mの矩形領域に、巻取部22の搬送経路長が長い側の他端部から、搬送ローラー対23aの搬送経路長の短い側の一端部に向かって張力が集中する斜めに延びる張力集中ラインが発生する。この張力集中ラインによって、搬送機構23における媒体Mの幅方向の一端部には、他端部よりも強い搬送方向下流側への引張り力が生じる。
この張力集中ラインが発生した状態の下で、巻取部22の巻取動作によって生じる引っ張り力、及びテンションバー55が落下した際の比較的大きな付勢力が加わったとする。この場合、搬送経路長の短い側の一端側で搬送方向下流側への引張り力が媒体Mと搬送機構23との間の摩擦力より大きくなって、媒体Mの弛んでいるこの一端側の媒体Mが搬送方向下流側にすべり、媒体Mの弛みが更に大きくなる悪循環を繰り返してしまう。この弛みが蓄積されることにより、やがて巻取部22に巻き取られる媒体Mに捩れや皺が生じる恐れがある。
本実施形態の張力付与部15はカウンターウエイト52を備えるため、テンションバー55を揺動させる角度範囲(回動範囲)をより広くできるため、カウンターウエイト52を備えない比較例の張力付与部に比べ、媒体Mの巻取回数を相対的に減らすことができる。本実施形態の印刷装置11では、搬送機構23の所定の複数回(例えば2〜5回)の搬送によって、テンションバー55が上限位置P1から下限位置P2まで回動する。このため、巻取部22は、搬送機構23による複数回の搬送動作につき1回の巻取動作を行えばよい。巻取り時に媒体Mの幅方向の両端のうち弛みができた搬送経路長の短い側の端部が搬送機構23に対して搬送方向下流側にすべり、媒体Mの弛みを更に大きくする原因となる巻取部22の巻取動作の回数を減らすことができる。この結果、搬送ローラー対23aと巻取部22との間の部分の媒体Mにおいて幅方向の一端側の弛みを大きくさせる頻度を大幅に低減できる。
一方、カウンターウエイト52を設けた張力付与部15はイナーシャが大きいことから、テンションバー55が自重で落下するときに比較例の張力付与部よりもゆっくり動き出すため、テンションバー55の落下高さ及びテンションバー55の媒体Mに対する衝突速度が相対的に大きくなる心配があった。しかし、本実施形態では、落下中のテンションバー55が媒体Mに接近したことを検出部17が検出すると、付勢力調整部18がテンションバー55の付勢力を、調整しない場合の付勢力よりも小さく調整する。この結果、テンションバー55が媒体M上に落下(衝突)した際に媒体Mに過度な張力が発生することを回避できる。よって、テンションバー55の落下衝撃によって、媒体Mの弛んでいる一端側(搬送経路長の短い側)で媒体Mの弛みが更に大きくなる事態を効果的に抑制できる。よって、搬送機構23による媒体Mの搬送位置精度が高まり、これに伴い印刷部13による印刷位置精度が高まるため、巻取部22に巻き取られた媒体Mの印刷品質を向上させることができるうえ、巻取部22に巻き取られる媒体Mにおいて捩れや皺の発生を一層効果的に抑制できる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)搬送装置12は、第1搬送部の一例である搬送機構23と、第2搬送部の一例である巻取部22との間の媒体Mに向かって付勢され、媒体Mに張力を付与する張力付与部材の一例であるテンションバー55を有する張力付与部15を備える。さらに搬送装置12は、テンションバー55が媒体Mに対して距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出する検出部17と、テンションバー55が媒体Mに近づいたことを検出部17が検出すると、テンションバー55と媒体Mとの相対速度を、調整しない場合の相対速度よりも小さく調整する調整部の一例である付勢力調整部18を備える。搬送機構23の搬送速度Vpfが巻取部22の巻取速度Vwよりも大きいときに搬送機構23と巻取部22との間の部分の媒体Mに形成される弛みにテンションバー55が追従できず、媒体Mがテンションバー55から一旦離れた後にテンションバー55が媒体Mに衝突する場合がある。このとき、検出部17によってテンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことが検出されると、付勢力調整部18によって、テンションバー55と媒体Mとの相対速度が、調整しない場合の相対速度よりも小さく調整される。その結果、テンションバー55が媒体Mに衝突した際に媒体Mに発生する張力を低減できる。よって、媒体Mに過度な張力が付与されることに起因する搬送機構23における媒体Mの搬送ずれを小さく抑制できる。搬送機構23による媒体Mの搬送精度を一定に保つことができ、媒体Mに高精度高画質の印刷を行うことができる。また、搬送機構23から巻取部22までの媒体Mにその幅方向の両端の搬送経路長の差と巻取部22の駆動力とにより斜めに延びる張力集中ラインが生じた状態で、テンションバー55が媒体Mに衝突した際の過度な張力に起因して、媒体Mの幅方向の両端のうち搬送経路長の長い側に生じる媒体Mの弛みが更に大きくなるといった悪循環が低減される。よって、この種の媒体Mの弛みの増大に起因して巻取部22に巻き取られる媒体Mに捩れや皺が生じることを低減できる。
(2)検出部17は、テンションバー55に設けられている。よって、テンションバー55が媒体Mに近づいたことを、媒体M又はテンションバー55が邪魔になることなく検出することができる。
(3)検出部17は、媒体Mに接触して検出する接触式である。透明な媒体やメッシュ状(網状)の媒体Mである場合、光学式の検出部ではその媒体Mを検出できないので、テンションバー55が媒体に近づいたことを検出できない。しかし、検出部17が接触式であることから、透明な媒体やメッシュ状の媒体であっても、テンションバー55が媒体Mに近づいたことを検出できる。
(4)搬送装置12は、テンションバー55の付勢力を調整可能な付勢力調整部18を備える。テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出部17が検出すると、付勢力調整部18によって、テンションバー55の付勢力が、調整しない場合の付勢力に比べ小さく調整される。この結果、テンションバー55と媒体Mとが衝突した際に媒体Mに過度な張力が発生することを回避できる。
(5)付勢力調整部18は、検出部17がテンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出すると、テンションバー55に制動力を付与する。よって、テンションバー55の移動速度を、調整しない場合の移動速度よりも低下させることができ、テンションバー55と媒体Mとが衝突する際の両者の相対速度を小さく抑制できる。この結果、テンションバー55が媒体Mに衝突した際に媒体Mに過度な張力が発生することを回避できる。
(6)搬送装置12は、搬送機構23と、搬送機構23よりも搬送方向の下流側に配置された巻取部22と、搬送機構23と巻取部22との間の媒体Mに向かって付勢され、媒体Mに張力を付与するテンションバー55を有する張力付与部15と、テンションバー55の付勢力を調整する付勢力調整部18とを備える。搬送機構23と巻取部22との間の部分の媒体Mをテンションバー55が付勢することで、媒体Mに張力が付与される。搬送機構23の搬送速度と巻取部22の搬送速度との速度差によって媒体Mの弛みや引っ張りが発生する。すなわち、搬送機構23の搬送速度が巻取部22の搬送速度よりも大きいと、媒体Mに弛みが発生し、搬送機構23の搬送速度が巻取部22の搬送速度よりも小さいと、媒体Mが引っ張られる。媒体Mに発生する弛みや引っ張りは媒体Mの張力の変動を招く原因になるが、付勢力調整部18によってテンションバー55の付勢力が調整されるため、搬送機構23と巻取部22との間の部分の媒体Mの張力の変動を小さく抑えることができる。例えば、媒体Mの張力の変動に起因する、搬送機構23の媒体Mの搬送ずれと巻取部22の媒体Mの巻きずれとのうち少なくとも一方を抑制できる。
(7)搬送装置12は、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出する検出部17を有する。付勢力調整部18は、検出部17がテンションバー55と媒体Mとが近づいたことを検出したときにテンションバー55の付勢力を小さく調整する。搬送機構23の搬送速度が巻取部22の巻取速度よりも大きいとき、搬送機構23と巻取部22との間の部分の媒体Mの移動にテンションバー55が追従できず、媒体Mがテンションバー55から一旦離れる。その後、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことが検出されると、付勢力調整部18によってテンションバー55の付勢力が小さく調整される。よって、テンションバー55の媒体Mに対する追従遅れを小さく抑えつつ、テンションバー55の媒体Mへの衝突時の衝撃(衝突エネルギー)を緩和できる。
(8)付勢力調整部18は、張力付与部15にその付勢力を小さくする方向の制動力を発生させる制動力発生部19として機能する。このため、張力付与部15に発生する制動力によって、制動力を発生させない場合に比べて付勢力が小さく調整される。よって、テンションバー55が媒体Mに衝突したときの衝撃(衝突エネルギー)を緩和でき、媒体Mに過度な張力が発生することを回避できる。
(9)制動力発生部19は、張力付与部15に負荷を与えることで制動力を発生させ、負荷は、駆動源の駆動力、摩擦負荷、粘性負荷、弾性負荷及び張力付与部15の重心移動のうちいずれか一つによる。よって、駆動源の駆動力、摩擦負荷、粘性負荷、弾性負荷及び張力付与部15の重心移動のうちいずれか一つによる負荷が張力付与部15に与えられることで制動力が発生する。よって、比較的簡単な構成によりテンションバー55に制動力を与え、テンションバー55の付勢力を小さく調整することができる。
(10)制動力発生部19は、張力付与部15に発生させる制動力を調整可能に構成されている。よって、テンションバー55の移動開始時の位置(移動開始位置)の違いや、テンションバー55自身の付勢力のみでテンションバー55と媒体Mとが接する際の相対速度の違いに応じて、張力付与部15に発生させる制動力を調整することができる。よって、テンションバー55と媒体Mとが接する際の相対速度を所望の所定範囲内に小さく収めることができる。
(11)制動力発生部19は、搬送機構23が媒体Mの搬送を開始するときのテンションバー55の位置(移動開始位置)に応じて制動力を変化させる。このため、搬送機構23が媒体Mの搬送を開始するときのテンションバー55の位置に応じた異なる制動力が張力付与部15に付与される。よって、テンションバー55と媒体Mとが接する際の相対速度をテンションバー55の移動開始位置によらず適切な所定範囲内に小さく収めることができる。したがって、テンションバー55が媒体Mに衝突した際の衝撃(衝突エネルギー)を適切に緩和し、媒体Mに適切な張力を付与できる。例えば媒体Mに過度な張力が発生したり、媒体Mの張力が不足したりする事態を回避できる。
(12)印刷装置11は、搬送装置12と、搬送装置12により搬送された媒体Mに印刷する印刷部13とを備える。このため、印刷装置11によって、搬送装置12と同様の作用効果を得ることができる。よって、品質の高い印刷物を提供できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。この第2実施形態は検出部がセンサーを備えない構成である点が第1実施形態と異なる。第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、検出部の構成を中心に説明する。
図27に示すように、搬送装置12は、制御部41内に、センサーを用いずにテンションバー55が媒体Mに近づいたことを検出する検出部の一例としての媒体検出部110を備えている。媒体検出部110は、張力付与部材位置取得部の一例としてのテンションバー55の位置を検出するテンションバー位置検出部120と、媒体Mの位置を検出する媒体位置取得部の一例としての媒体位置検出部130とを備える。
搬送装置12は、張力付与部15の回動軸53の回転を検出する第1回転検出部111を備えている。第1回転検出部111は、回動軸53の回転を検出するロータリーエンコーダー等の回転検出器でもよいし、付勢力調整部18が電動式である場合、電動モーター56,93,105を制御する回転指令値(駆動情報)から回転情報を取得するものでもよい。
テンションバー位置検出部120は、センサー部60及び第1回転検出部111の検出値に基づいてテンションバー55のその時々の位置(回動角度θ)を検出する。テンションバー位置検出部120は、図27に示すテンションバー位置算出部121を備える。搬送機構23の搬送動作が開始された後、テンションバー位置算出部121は、搬送開始時点からの経過時間tに応じたテンションバー55の位置を、張力付与部15の既知情報である回転モーメントとイナーシャの各数値を用いて力学計算をして逐次取得する。
また、搬送装置12は、搬送機構23の回転を検出する第2回転検出部112と、巻取部22の回転を検出する第3回転検出部113とを備えている。第2回転検出部112は、搬送ローラー対23aの回転を検出するロータリーエンコーダー等の回転検出器でもよいし、搬送モーター23Mの回転指令値から回転情報を取得するものでもよい。また、第3回転検出部113は、巻取部22の回転を検出するロータリーエンコーダー等の回転検出器でもよいし、巻取モーター22Mの回転指令値(駆動情報)から回転情報を取得するものでもよい。媒体位置検出部130は、第2回転検出部112の検出値に基づく媒体Mの搬送量、及び第3回転検出部113の検出値に基づく媒体Mの巻取量を基に、媒体Mの位置を計算により取得する。
図27に示すように、媒体位置検出部130は、搬送量算出部131、巻取径算出部132、媒体位置換算部133、巻取量算出部134及び媒体位置補正部135を備えている。
搬送量算出部131は、搬送機構23が搬送動作を開始した後、搬送機構23がそのときの搬送位置(目標位置)に媒体Mが達するまでに媒体Mを搬送したその時々の搬送量を算出する。搬送量算出部131は、搬送モーター23Mの駆動情報又は第2回転検出部112の回転検出情報を逐次累積することで、テンションバー55の落下開始時点からの経過時間tに応じた媒体Mの搬送量を算出する。なお、搬送機構23の搬送動作開始時に巻取部22が駆動中(巻上げ中)であれば、テンションバー55が落下できる状態になるまでその駆動の終了を待ってから、搬送量算出部131は搬送量の算出を開始する。
巻取径算出部132は、巻取部22に引っ張られた状態にセットされた媒体Mを搬送機構23が予め決められた定量だけ搬送して弛ませ、その弛ませた媒体Mを巻取部22に巻き取らせながら巻取部22の駆動モーターの負荷を監視する。巻取径算出部132は、その監視する負荷が媒体Mの弛みがなくなって媒体Mが突っ張ることで閾値を超えると、巻取部22を回転させたときの回転量情報と搬送機構23が先に搬送した定量(搬送量)との比(定量/回転量)により、ロール体R2の円周長(1回転当たりの巻取量)を算出し、更に円周長から巻取径を算出する。
媒体位置換算部133は、テンションバー55の落下開始時点(例えば搬送開始時)からの経過時間tに応じた搬送量を弛み量として計算する。さらに媒体位置換算部133は、テンションバー55の落下開始から先の弛み量の媒体Mに接触するまでのテンションバー55の回動量Δθ(角度量)を計算する。すなわち、媒体位置換算部133は、テンションバー55の落下開始位置で媒体Mが弛みなく突っ張っている状態を基準(Δθ=0)に、搬送量で決まる弛み量で弛んだ媒体Mに対して、テンションバー55がどれだけ回動すれば接するかその回動量Δθ(角度量)を求める。
巻取量算出部134は、テンションバー55の落下中に、巻取りが実施された場合の巻取部22の駆動量と、巻取径算出部132が算出した巻取径とにより、巻取部22の巻取りによって媒体Mの弛み量を減少させるその時々の巻取量を算出する。
媒体位置補正部135は、媒体位置換算部133が求めた媒体位置情報に巻取量分だけの弛み減少量を加味して、媒体Mの弛み量を補正し、この補正後の弛み量を用いてテンションバー55が媒体Mに接するまでの回動量Δθ(角度量)を補正する。すなわち、媒体位置補正部135は、テンションバー55の落下開始位置で媒体Mが弛みなく突っ張っている状態を基準(Δθ=0)に、搬送量と巻取量(=巻取回転量×巻取径)との差で決まる弛み量で弛んだ媒体Mに対して、テンションバー55がどれだけ回動すれば接するかその回動量Δθ(角度量)を求める。このように媒体位置検出部130は、落下したテンションバー55が、そのときの弛み量で弛んだ媒体Mに接する時の媒体M側の接する位置を媒体Mの位置情報として取得する。
媒体検出部110は、テンションバー位置検出部120が検出したテンションバー55の位置情報と、媒体位置検出部130が検出した媒体Mの位置情報とを基に、両位置の相対差から、テンションバー55の回動方向(回動経路上)におけるテンションバー55と媒体Mとの距離を取得する。そして、媒体検出部110は、その取得した距離が距離閾値Lsを超えていれば、テンションバー55と媒体Mとの接近を検出せず、一方、その距離が距離閾値Ls以下であれば、テンションバー55と媒体Mとの接近を検出する。
媒体検出部110が、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいた接近を検出したときに制御部41が付勢力調整部18を制御する制御内容は、前記第1実施形態と同様である。
この第2実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(13)検出部の一例である媒体検出部110は、媒体Mの位置を取得する媒体位置取得部の一例である媒体位置検出部130と、テンションバー55の位置を取得する張力付与部材位置取得部の一例であるテンションバー位置検出部120とを備える。媒体検出部110は、媒体位置検出部130が取得した媒体Mの位置と、テンションバー位置検出部120が取得したテンションバー55の位置とに基づいて、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出する。よって、接近検出専用のセンサー(検出器)を設けなくても、搬送装置12が有する既存の搬送系のセンサー(例えばロータリーエンコーダー)から得られる検出情報又はモーター等から得られる駆動情報を用いて、テンションバー55と媒体Mとの接近を検出することができる。また、検出部17を備えないものの、それに替わる媒体検出部110を備えるため、第1実施形態における効果(1)〜(12)と同種の効果が得られる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。この第3実施形態は、付勢力調整部18を備えていない点が異なる他は、前記第1及び第2実施形態と同様である。以下、前記各実施形態と異なる構成を中心に説明する。
図28に示すように、印刷装置11は、前記第1及び第2実施形態における搬送装置12が備えていた付勢力調整部18(制動力発生部19)を備えていない。落下したテンションバー55と媒体Mとが衝突する際に両者の相対速度を小さくする調整は、制御部41(図1、図21を参照)が搬送機構23の駆動中に巻取部22を駆動制御して、落下するテンションバー55が媒体Mに接触する際の媒体Mの位置及び媒体Mの移動速度のうち少なくとも一方を調整することにより行う。なお、第1実施形態と第2実施形態では、テンションバー55と媒体Mとの接近を検出する検出方式が異なるだけなので、以下では第1実施形態の検出部17を備えた例で説明する。
図31は、制御部41が搬送機構23を制御して行われる1回の搬送動作の間に、検出部17の検出結果に基づいてテンションバー55の付勢力を調整する制御内容を例示するタイミングチャートである。図31において5つのグラフは、1段目が検出部17の検出信号Saを示し、2段目が搬送速度Vpfと巻取速度Vwとを示し、3段目が媒体Mの弛み量Smを示し、4段目がテンションバー移動速度Vt及びテンションバー55と媒体Mとの相対速度ΔVを示し、5段目が速度抑制力Fvを示す。ここで、速度抑制力Fvとは、テンションバー55と媒体Mとの相対速度ΔVを小さく抑制するためにテンションバー55に働いたに匹敵する力を表わす。以下、図28〜図30を参照しつつ制御部41が行う制御内容を図31に従って説明する。
図31の2段目のグラフに示すように、搬送機構23がまず駆動されて搬送速度Vpfで媒体Mの搬送が開始され、その後少し遅れて巻取部22が駆動されて巻取速度Vwで媒体Mの巻き取りが開始される。このとき、搬送速度Vpfと巻取速度Vwは駆動開始タイミングが少しずれるものの定速域では同速度(Vpf=Vw)に制御される。すなわち、図28に示すように、まず巻取部22の停止状態の下で、搬送機構23が駆動されて媒体Mの搬送が開始され、媒体支持部14とロール体R2との間の部分で媒体Mに弛みが発生する。そして、図29に示すように、搬送機構23の駆動開始から少し遅れて巻取部22の駆動が開始され、巻取部22により搬送速度Vpfと同速度の巻取速度Vwで媒体Mの巻取りが行われる。このため、図31の3段目のグラフに示すように、媒体支持部14とロール体R2との間の部分で媒体Mの弛み量Smが一定に保持される。このため、テンションバー55の落下開始位置から媒体Mに接するまでの落下高さがほぼ一定に保持される。
テンションバー55に固定された検出部17は、テンションバー55の落下中、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたか否かを検出している。落下中のテンションバー55が媒体Mに近づいて両者が距離閾値Ls以下の距離に接近したことが検知されると、図31の1段目のグラフに示すように、検出部17からの検出信号Saが「OFF」から「ON」に切り換わる。すると、図30及び図31の2段目のグラフに示すように、制御部41は、巻取部22を制御してその駆動を減速又は停止させることで、巻取速度Vwを減速させる。
その結果、図31の3段目のグラフに示すように、媒体支持部14とロール体R2との間の部分で媒体Mの弛み量Smが増加する。このため、テンションバー55の下降経路上の媒体Mの位置がテンションバー55の移動方向(下降方向)と同じ方向に下降する。このため、図31の4段目のグラフに示すように、テンションバー55の移動速度Vtが増加しているものの、テンションバー55と媒体Mとの相対速度ΔVが小さくなる。そして、相対速度ΔVが所定値以下に小さくなったときにテンションバー55は媒体M上に落下する。よって、テンションバー55と媒体Mとの衝突エネルギーが小さく抑えられる。これは、付勢力調整部18を備えていないものの、図31の5段目のグラフに示す速度抑制力Fvがテンションバー55に働いたことに匹敵する。このように搬送装置12は付勢力調整部18を備えていないが、巻取部22を制御して媒体Mの移動速度を調整することにより、テンションバー55が媒体M上に落下した際の衝撃を緩和させる。
この第3実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(14)検出部17がテンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出すると、調整部の一例である制御部41は、巻取部22を制御してテンションバー55と媒体Mとの相対速度ΔVを、調整しない場合の相対速度よりも小さく調整する。よって、相対速度ΔVを調整するためにテンションバー55の速度を調整する付勢力調整部18(制動力発生部19)等の手段を設ける必要がない。よって、この種の付勢力調整用の手段を備えた構成に比べ搬送装置12の構成を簡素化できる。また、付勢力調整部18を備えないものの、第1実施形態における効果(1)〜(12)と同種の効果、及び第2実施形態における効果(13)と同種の効果を得ることができる。
上記実施形態は以下に示す変更例でもよい。また、上記実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
・第1実施形態において、付勢力調整部18を無くしてもよい。例えば検出部17が媒体Mへの接近を検出すると、巻取部22の巻取りを開始させてもよい。この構成によれば、テンションバー55の落下高さが小さくなるので、媒体Mに衝突する際のテンションバー55の下降速度を小さくすることができ、媒体Mの巻上げ上昇速度の調整によって両者の相対速度を小さくすることも可能である。
・前記各実施形態において、テンションバー55が所定高さ以上の位置にあるときに限らず、搬送機構23による媒体Mの搬送によってテンションバー55が落下するときは常にテンションバー55と媒体Mとの相対速度を小さく調整する上記の制御を実施してもよい。
・検出部17を、張力付与部材の一例であるテンションバー55において媒体Mが接触する面部に設けたが、テンションバー55において媒体Mが接触することのない面部に設けてもよい。この場合、検出部が接触式でも非接触式でもよいが、接触式の場合は検知部の先端部の面形状を、媒体Mを傷めない形状とすることが好ましい。
・検出部は、張力付与部材の一例であるテンションバー55に設けたカメラ(撮像部)でもよい。例えばカメラで撮像された画像を制御部41内の画像解析部で解析することにより、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に接近したことを検出してもよい。
・検出部はテンションバー55に設けられていなくてもよい。例えば張力付与部15の側方位置に検出部の一例としてのカメラ(撮像部)を配置し、カメラでテンションバー55が媒体M上に落下する様子を撮像し、その撮像により得られた画像を解析してその解析結果を基にテンションバー55が媒体Mに距離閾値Ls以下の距離に接近したことを検出してもよい。
・距離閾値Lsは、零よりも大きな値であることが好ましいが、零でもよい。例えば速やかにテンションバー55又は媒体Mの移動速度を調整できる調整部であれば、テンションバー55が媒体Mに接触した時に調整部による調整を開始しても、その接触時点からテンションバー55の全荷重が媒体Mにかかる時点までの間に両者の相対速度を少なからず調整できる。この場合、テンションバー55が媒体Mに衝突する際に媒体Mに発生する張力を小さく抑制することはできる。
・テンションバー55の位置(回動角θ)に応じてテンションバー55に対する検出部17の向きを変更可能に構成してもよい。この構成によれば、媒体Mにおけるテンションバー55の落下位置までの距離が距離閾値Ls以下であるか否かを一層正確に検出できる。
・テンションバー55の位置(回動角θ)に応じて検出部17が検出に用いる距離閾値Lsを変更してもよい。この構成によれば、付勢力調整部18が付勢力の調整を開始するタイミングを調整することができる。
・調整部による調整は、付勢力調整部18によるテンションバー55の移動速度の調整と、巻取部22の制御による媒体Mにおけるテンションバー55の移動経路上の位置(接触位置)の移動速度の調整とを併用してもよい。
・図13、図16及び図17における付勢力調整部18は、遊星歯車571が着脱される構成に替え、電磁クラッチを介して切り替える構成でもよい。例えば、電動モーター56と回動軸53との間の動力伝達経路の途中に電磁クラッチを介在させ、制御部41が電磁クラッチを接離させる構成とする。テンションバー55の落下時などテンションバー55の付勢力の調整が必要な場合に電磁クラッチを接続し、その調整が不要な場合に電磁クラッチの接続を切断すればよい。この構成によれば、図16及び図17に示す付勢力調整部18と同様の効果が得られる他、テンションバー55の下降時に制動力と反対方向(下降方向)の力を付与することもできる。
・第3実施形態において、調整部の一例としての制御部41が行うテンションバー55と媒体Mとの相対速度を、調整しない場合の相対速度よりも小さく調整するための巻取部22の制御内容は、適宜変更できる。巻取速度Vwを搬送速度Vpfと異ならせてもよい。また、巻取速度Vwと搬送速度Vpfとを一定に保ったままテンションバー55と媒体Mとを衝突させてもよい。
・図20において張力付与部15の重心を移動させることで制動力を発生させる構成において、錘部を移動させる移動機構を、ベルト移動方式に替え、ボールねじ方式、リニアモーター方式としてもよい。また、駆動源としてエアシリンダー等のシリンダーを用いてもよい。
・付勢力調整部18は、テンションバー55と媒体Mとの接近を検出するまでの期間の少なくとも一部でテンションバー55を落下時の回動方向へ加速させる付勢力の調整を行ってもよい。この場合、テンションバー55が相対的に高い位置にあって自重のみで落下する場合にゆっくり動き出すこところ、テンションバー55の落下時の回動方向への付勢力を大きく調整することで、テンションバー55の落下高さを相対的に小さくできるので、テンションバー55の落下時に媒体Mに過度な張力が発生することを一層効果的に回避できる。
・前記第1実施形態において、検出部17を無くしてもよい。例えば、制御部41は、テンションバー55の位置(例えば回動角θ)を検出するセンサーからの検出信号に基づきテンションバー55の移動開始位置が所定高さ以上であると判断された場合、搬送機構23による媒体Mの搬送を開始すると、直ちに又は規定の遅延時間の経過後に付勢力調整部18を駆動させる構成でもよい。
・張力付与部材は、前記各実施形態で示したテンションバー55のような回動式に限定されない。例えば張力付与部材をY軸方向に移動可能に付勢したり、Z軸方向に移動可能に付勢したりする直動方式でもよい。この場合、張力付与部材の付勢力は、電動モーター等の駆動源の動力やばねの弾性力を利用して発生させればよい。
・搬送動作を1回行う度に巻取動作を1回行ってもよいし、テンションバー55が下限位置に達したことをセンサー部60が検知する度に1回の巻取動作を行ってもよい。
・カウンターウエイト52を備えない構成としてもよい。
・印刷装置は、シリアルプリンターやラインプリンターに限定されず、キャリッジが主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。
・印刷装置は、インクジェット式プリンターに限らず、電子写真式プリンター、ドットインパクト式プリンター、熱転写式プリンター及び捺染印刷装置でもよい。
・印刷装置は、ロール体から繰り出された長尺の薄型の基材(基板)からなる媒体に、例えば印刷技術を用いて、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体(インク)の液滴を吐出するものでもよい。例えば、機能材料の粒子として、配線材料等の金属粉を分散させた液状体の液滴を吐出し、基板に電気配線パターンを形成する印刷装置でもよい。また、機能材料の粒子として、色材(画素材料)の粉末を分散させた液状体の液滴を長尺状の基板に吐出し、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)及び面発光などの各種の方式のディスプレイ(表示装置用の表示基板)の画素を製造する印刷装置でもよい。