以下、搬送装置を備えた印刷装置の一実施形態について図面を参照して説明する。印刷装置は、例えば、大判サイズの長尺の媒体に印刷(記録)を行うラージフォーマットプリンター(LFP)である。以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、各部材等の尺度を実際とは異ならせて示している。また、図1から図4等では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及びZ軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」としている。X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。
まず、印刷装置11の構成について説明する。印刷装置11は、例えば、インクジェット式のラージフォーマットプリンターである。図1に示すように、印刷装置11は、ロール・ツー・ロール方式で媒体Mを搬送する搬送装置12と、媒体Mの所定領域に液体の一例としてのインクを吐出して画像や文字等を印刷する印刷部13とを備える。また、印刷装置11は、媒体Mを支持する媒体支持部14と、媒体Mに張力を付与する張力付与部15とを備える。
張力付与部15は、媒体Mに向かって付勢されて媒体Mに接する状態で張力を付与する張力付与部材の一例としてのテンションバー55を有する。本例のテンションバー55は、回動式の張力付与部15が自重で回動しようとする力を利用して媒体Mに向かう方向に付勢されている。さらに印刷装置11は、テンションバー55の付勢力を調整する調整機構18及び制御部41を備えている。制御部41は、搬送装置12、印刷部13及び調整機構18等を制御する。搬送装置12、印刷部13、媒体支持部14及び張力付与部15等の各構成部は、台車を有する本体フレーム16に支持されている。なお、媒体Mは、例えば、500〜2000mmの範囲内の幅を有し、紙、フィルム(例えば塩化ビニル系フィルム)、布等からなる。また、本実施形態においては、重力方向に沿う上下方向がZ軸方向、印刷部13において媒体Mが搬送される方向がY軸方向、媒体Mの幅方向がX軸方向となっている。
搬送装置12は、ロール体R1から媒体Mを繰り出して印刷部13に向かう搬送方向(図中の矢印方向)へ給送する給送部21と、印刷部13で印刷された印刷後の媒体Mをロール体R2として巻き取る巻取部22とを有している。さらに搬送装置12は、給送部21及び巻取部22間の搬送経路の途中で媒体Mを搬送する搬送部の一例としての搬送機構23を有している。搬送機構23は、搬送ローラー対23aと、搬送ローラー対23aに回転動力を出力する搬送モーター23Mとを備える。図1に示す搬送機構23は、搬送ローラー対23aが一つの例であるが、複数の搬送ローラー対23aを有していてもよい。また、搬送機構23は、ローラー式搬送機構に限らず、媒体Mを載せて搬送する搬送ベルトを有するベルト式搬送機構を少なくとも一部に有していてもよい。
給送部21には、未使用の媒体Mが円筒状に巻き重ねられたロール体R1が保持されている。給送部21は、媒体Mの幅(X軸方向における長さ)や巻き数の異なる複数サイズのロール体R1を交換可能に装填できる一対の繰出軸21bを含む一対のホルダー21aと、繰出軸21bを回転させる給送モーター21Mとを備える。給送部21は、給送モーター21Mの動力によってロール体R1を図1における反時計方向に回転させることで、ロール体R1から媒体Mが繰り出して印刷部13に向かって給送する。巻取部22は、印刷部13で印刷された媒体Mを円筒状に巻き取ってロール体R2を形成する。巻取部22は、ロール体R2を形成するための円筒状の芯材を支持する支持部の一例としての一対の巻取軸22bを含む一対のホルダー22aと、巻取軸22bを回転させる巻取モーター22Mとを備える。巻取モーター22Mが駆動され巻取軸22bが図1における反時計方向に回転することにより、媒体Mが巻取軸22bに支持された芯材に巻き取られてロール体R2が形成される。
印刷部13は、媒体Mに向けてインクを吐出可能な記録ヘッド31と、記録ヘッド31が搭載されたキャリッジ32を搬送方向と交差する方向(X軸方向)に往復移動させるキャリッジ移動部33とを備える。記録ヘッド31は、複数のノズルを有し、各ノズルからインクを吐出可能に構成されている。キャリッジ移動部33によってキャリッジ32をX軸方向に移動させながら記録ヘッド31からインクを吐出させる走査動作と、搬送装置12が媒体Mを搬送方向に搬送させる搬送動作とを繰り返して、媒体Mに印刷する。
媒体支持部14は、搬送経路上の媒体Mを支持可能に構成されている。媒体支持部14は、給送部21と搬送機構23との間に設けられた第1支持部24と、印刷部13と対向配置された第2支持部25と、第2支持部25の下流端と巻取部22との間に設けられた第3支持部26とを有する。
印刷装置11は、媒体Mを加熱する第1ヒーター(プレヒーター)27と、第2ヒーター28と、第3ヒーター(アフターヒーター)29とを備えている。制御部41は、第1、第2及び第3ヒーター27,28,29を駆動させることにより、熱伝導で媒体支持部14における媒体支持面を加熱し、媒体Mを裏面から加熱する。第1ヒーター27は、第1支持部24を加熱し、印刷部13よりも搬送方向上流側(−Y軸側)で媒体Mを予熱する。第2ヒーター28は、第2支持部25を加熱し、印刷部13の吐出領域において媒体Mを加熱する。第3ヒーター29は、第3支持部26を加熱し、第3支持部26上の媒体Mを加熱することで媒体Mに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを少なくとも巻取部22で巻き取る前に完全に乾燥し定着させる。
張力付与部15は、搬送機構23と巻取部22との間の部分で媒体Mに張力を付与する。本実施形態の張力付与部15は、媒体支持部14の搬送方向下流端(つまり第3支持部26の下端)と巻取部22との間で空中に垂れ下がる部分の媒体Mに接して荷重を加えることで媒体Mに張力を付与する。張力付与部15は、回動軸53(回動支点53a)を中心に回動する可動部材の一例としてのアーム54と、アーム54に支持されたテンションバー55とを有する。張力付与部15は、回動支点53aを中心に自重で回動するときの付勢力で付勢されたテンションバー55が印刷部13による印刷後の媒体Mの裏面と接することで媒体Mに張力を付与する。
次に、図1及び図2を参照して、張力付与部15の構成について説明する。図1及び図2に示すように、張力付与部15は、一対のアーム54と、一対のアーム54の先端部に固定されたテンションバー55と、一対のアーム54の基端部に固定されたカウンターウエイト52とを含んでいる。一対のアーム54は、本体フレーム16に支持された回動軸53(回動支点53a)を中心に回動可能に支持されている。テンションバー55は、一対のアーム54と共に回動して自重の付勢力で媒体Mと接する。テンションバー55とカウンターウエイト52は、一対のアーム54の先端部と基端部でそれぞれ幅方向(X軸方向)に横架された長尺部材により構成されている。
テンションバー55は、円柱形状をなし媒体Mの幅よりも幅方向に長い寸法を有している。カウンターウエイト52は、直方体形状をなしテンションバー55と略同じ長さを有している。テンションバー55とカウンターウエイト52は、張力付与部15における回動支点53aを挟む両側に配置され、テンションバー55の自重による付勢力を所定値に設定可能にバランスされた錘部として機能する。テンションバー55とカウンターウエイト52との重量比等に応じて決まる張力付与部15の重心位置M3は、回動支点53aよりも少しテンションバー55側の位置に設定されている。張力付与部15が回動軸53を中心として自重で回動することにより、テンションバー55はその回動軌跡の接線方向下向きに所定の付勢力で付勢される。テンションバー55が印刷後の媒体Mの裏面に接して媒体Mに荷重を加えることで媒体Mに張力が付与される。
一対のアーム54は、鉛直方向(Z軸方向)の上方に向かって凸状に湾曲した形状をなしている。この形状により、巻取部22の媒体Mの幅方向(X軸方向)の両端に設けられ媒体Mを巻き取る軸を支持するホルダー22aなどを避けてテンションバー55を媒体Mに接触させることが可能になるので、張力付与部15の幅方向の寸法を小さくすることができる。これにより、張力付与部15が作業者などの他の物体と接触する頻度を減らすことができる。さらに、テンションバー55とカウンターウエイト52とが一対のアーム54を繋ぐ長尺部材で構成されているため、張力付与部15のねじれ剛性が向上し、張力付与部15が他の物体と接触した場合でも張力付与部15の変形を抑制できる。また、本実施形態の搬送装置12は、テンションバー55と媒体Mとが距離閾値未満の距離に近づいたことを検出する検出部17を備えている。さらに搬送装置12は、テンションバー55の媒体Mに向かう付勢力を調整可能な調整機構18を備えている。図2に示す例では、調整機構18は一対のアーム54のそれぞれに設けられ、一対のアーム54間で重量と重心位置のバランスをとることが可能になっている。一対のアーム54間で重心位置等のバランスの不均衡の程度が許容範囲内であれば、調整機構18を一方のアーム54のみに設けることもできる。なお、検出部17及び調整機構18の詳細な構成は後述する。
次に、図3〜図5を参照して、テンションバー55の回動範囲について説明する。印刷装置11は、テンションバー55の上限位置P1及び下限位置P2を求めるためのセンサー部60を備えている。センサー部60は、上限センサー61、下限センサー62、フラグ板63を有している。フラグ板63は、回動軸53を中心とする扇状をなしアーム54に設けられている。上限センサー61及び下限センサー62は、透過型フォトセンサーであり、フラグ板63の外周縁部(円弧部分)を検知可能な位置に設けられている。
下限センサー62の構成を説明する。なお、上限センサー61の構成は、下限センサー62と同一の構成であるため、その説明を省略する。図5に示すように、下限センサー62は、光を出射する発光素子等を有する発光部65と、光を受光する受光素子等を有する受光部66とを備えている。発光部65と受光部66とは、互いに対向するように備えられている。下限センサー62は、本体フレーム16に設けられている。フラグ板63は、発光部65と受光部66との間に回動可能に配置されている。図3は、発光部65から出射された光がフラグ板63で遮光され、受光部66で受光されない状態を示している。このとき、下限センサー62は、「OFF」の信号を出力する。フラグ板63は、図3の状態からアーム54(張力付与部15)の回動と共に回動軸53を中心として反時計回りに回動する。フラグ板63の下限端部63aが図3に示す位置から図4に示す位置に達すると、フラグ板63が発光部65と受光部66との間から外れ、発光部65から出射された光が受光部66で受光される状態になる。このとき、下限センサー62は、「ON」の信号を出力する。
張力付与部15は、テンションバー55の位置が図3に示す上限位置P1から図4に示す下限位置P2までの範囲において媒体Mに張力を付与する。詳しくは、印刷部13で印刷された媒体Mが、搬送機構23の駆動により搬送され媒体支持部14の下流端から順次搬出される。これにより、第3支持部26の先端と巻取部22との間の媒体Mの長さが徐々に長くなるのに従って、上限位置P1に位置していたテンションバー55は、自重によって回動軸53を中心にして下限位置P2に向かって徐々に回動(降下)する。テンションバー55が下限位置P2に達すると、アーム54と共に回動したフラグ板63が下限センサー62の発光部65と受光部66との間から外れ、下限センサー62から「ON」の信号が出力される。
制御部41は、下限センサー62から出力された「ON」の信号を受信すると、媒体Mを巻取部22に巻き取らせる巻取モーター22Mを駆動する。これにより、媒体Mには、さらに張力が加わりテンションバー55を上昇させる力が生じる。媒体Mが巻取部22に巻き上げられて第3支持部26の先端と巻取部22との間の媒体Mの長さが短くなるのに従って、下限位置P2に位置していたテンションバー55は、回動軸53を中心にして上限位置P1に向かって回動(上昇)する。テンションバー55が上限位置P1に達すると、アーム54と共に回動したフラグ板63が上限センサー61の発光部65と受光部66との間から外れ、上限センサー61から「ON」の信号が出力される。制御部41は、上限センサー61から出力された「ON」の信号を受信すると、巻取モーター22Mの駆動を停止する。以上の動作を繰り返すことで、張力付与部15は、テンションバー55を上限位置P1と下限位置P2との範囲で媒体Mの裏面に接触して媒体Mを押圧することで媒体Mに所定の張力を付与する。なお、本実施形態では、搬送機構23による複数回の搬送動作につき巻取部22による巻取動作が1回行われる。
なお、本実施形態では、テンションバー55に検出部17が設けられている。検出部17は、テンションバー55と媒体とが距離閾値以下の距離に近づいた(接近した)ことを検出する。検出部17は、例えば接触式センサー又は非接触式センサーにより構成される。媒体Mの搬送開始初期において媒体Mが弛む速度にテンションバー55が追従できない場合、テンションバー55が媒体Mから一旦離れた後、媒体M上に落下する現象が発生する場合がある。この場合、テンションバー55が媒体M上に落下したときの衝撃力により媒体Mに過度な張力が付与される恐れがある。そのため、本実施形態では、媒体Mに向かって落下するテンションバー55が媒体Mに対して距離閾値以下の距離にまで近づくと、媒体Mに接触(衝突)する前にテンションバー55に制動力を加えて落下するテンションバー55が媒体Mに衝突する際の衝撃力を小さく抑制する衝撃緩和制御を行う。本実施形態の調整機構18は、この衝撃緩和制御にも兼用される。
次に、調整機構18の構成例について図6〜図11を参照して説明する。ここでは、調整機構18の構成例として、重心移動方式(図6及び図7)、駆動連結方式(図8等)及び支点移動方式(図9)の3つの方式を挙げる。重心移動方式(図6及び図7)は、張力付与部15の重心を移動してテンションバー55の付勢力を調整する方式である。また、駆動連結方式(図8等)は、電動モーター等の駆動源を張力付与部15の回動軸53に動力伝達可能に連結し、駆動源の駆動力を制御することでテンションバー55の付勢力を調整する方式である。さらに支点移動方式(図9)は、張力付与部15の回動支点53aを移動させることでテンションバー55の付勢力を調整する方式である。調整機構18は、テンションバー55の付勢力を調整するために、上記の重心移動方式、駆動連結方式、支点移動方式の他、張力付与部15の回動軸53に摩擦負荷、粘性負荷又は弾性負荷等の負荷を与えることでテンションバー55の付勢力を調整する方式を採用することもできる。
以下に示す重心移動方式、駆動連結方式、支点移動方式の各調整機構18は、駆動源を有する。制御部41が駆動源を制御することによって張力付与部15の重心位置M3と回動支点53aとの距離l(図12を参照)が変更され、張力付与部15の回動支点53aに対する重心位置M3の相対位置が変更される。これにより搬送機構23と巻取部22の巻取軸22bに支持されたロール体R2との間で張力付与部15の自重によるテンションバー55の媒体Mに向かう方向への付勢力が調整される。このテンションバー55の付勢力が調整されることにより、テンションバー55が接する媒体Mに加えられる荷重が調整され、媒体Mに付与される張力が調整される。図6〜図11に示す調整機構18は、張力付与部15の重心を移動させることでテンションバー55の付勢力を調整する。
まず、図6を参照して錘移動方式の調整機構18の構成について説明する。図6に示すように、調整機構18は、張力付与部15の重心位置M3(図7を参照)を変化させる方向に移動体を移動させる移動機構の一例としての重心移動機構70を備えている。重心移動機構70は、張力付与部15の重心M3を移動させるための移動体の一例としての錘体71と、錘体71を張力付与部15の重心M3の移動が可能な方向に移動させる移送機構72とを備えている。移送機構72は、例えばベルト移送方式で、一対のプーリー73と、一対のプーリー73に巻き掛けられた無端状のベルト74とを備え、錘体71はベルト74の一部に固定されている。
図6に示すように、電動モーター75の出力軸は歯車機構76を介して一方のプーリー73に動力伝達可能に連結されている。電動モーター75の正逆転駆動によって錘体71がアーム54の長手方向に沿って移動することで、張力付与部15の重心位置M3が移動する。錘体71は、電動モーター75の正逆転駆動により、図6に実線で示す最も回動支点53a側の位置W1と、図6に二点鎖線で示す最もテンションバー55側の位置Wj(添字jは2以上の自然数)との間で移動可能となっている。錘体71が最も回動支点53aに近い位置W1にあるとき、重心位置M3が最も回動支点53aに近づく。また、錘体71が最もテンションバー55に近い位置Wjにあるとき、重心位置M3が最もテンションバー55に近づく。
電動モーター75が正転駆動されると、錘体71がテンションバー55に近づき張力付与部15の重心位置M3がテンションバー55側に移動する。この場合、媒体Mに対するテンションバー55の動き出しの遅れを小さくできる。一方、電動モーター75が逆転駆動されると、錘体71が回動軸53に近づき、これに伴い張力付与部15の重心位置M3が回動支点53a側へ移動する。例えば、テンションバー55の落下中に電動モーター75が逆転駆動されると、錘体71が回動支点53a側へ移動してテンションバー55に制動力が発生する。また、巻上げ時には、電動モーター75を駆動制御して錘体71の位置を調整することにより張力調整が可能になる。
次に、図7を参照して流体移動方式の調整機構18の構成について説明する。図7に示すように、調整機構18は、張力付与部15の重心位置M3を変化させる方向に移動体を移動させる移動機構の一例としての重心移動機構80を備えている。重心移動機構80は、張力付与部15の重心位置M3を移動させるための移動体の一例としての流体を収容可能な2つのタンク81,82と、2つのタンク81,82を接続する流路の一例としての導管83と、導管83に途中の位置で接続されたポンプ84と、ポンプ84を駆動させるための駆動源の一例としての電動モーター85とを備えている。
2つのタンク81,82は、可動部材の一例としてのアーム54の長手方向に所定距離を離れた両側の位置に配置されている。図7に示す例では、第1タンク81がアーム54の長手方向においてテンションバー55よりも回動支点53aに近い位置に配置されている。特に本例では、第1タンク81は、回動支点53aに対してテンションバー55と反対側となる位置に配置されている。また、第2タンク82は、回動支点53aよりもテンションバー55に近い位置に配置されている。第1タンク81とポンプ84は第1導管83Aを通じて接続され、第2タンク82とポンプ84は第2導管83Bを通じて接続されている。電動モーター85が正転駆動されると、ポンプ84が第1駆動方向へ駆動し、液体を第1タンク81から第2タンク82へ向かう方向へ導管83を通じて流動させる。また、電動モーター85が逆転方向へ駆動されると、ポンプ84は第2駆動方向へ駆動し、液体を第2タンク82から第1タンク81へ向かう方向へ導管83を通じて流動させる。
図6に示す錘移動方式の重心移動機構70では錘体71を移動させるベルト74を含む移送機構72が直線状をなすため、移送機構72をアーム54の直線状部分に配置しなければならない制約がある。これに対して図7に示す流体移動方式の重心移動機構80では、2つのタンク81,82を接続する導管83を配管する際の配管経路の自由度が高いので、アーム54の屈曲部を通る経路でより広い範囲に亘り導管83を配管することができる。このため、流体移動方式の重心移動機構80では、図7に示す例のように、第1タンク81を回動支点53aに対してテンションバー55と反対側へシフトさせた位置に配置し、張力付与部15の重心位置M3を調整する調整範囲が、図6に示す錘移動方式に比べより広くなっている。
図7に示す電動モーター85が正転駆動され、ポンプ84が第1駆動方向へ駆動されると、第1タンク81から第2タンク82へ向かって液体が流れる。この結果、張力付与部15の重心位置M3が回動支点53aからテンションバー55側へ離れる。これにより張力付与部15が自重で回動するときのテンションバー55の付勢力が相対的に大きくなり、テンションバー55に接する媒体Mに付与される張力が相対的に大きくなる。一方、電動モーター85が逆転駆動され、ポンプ84が第2駆動方向へ駆動されると、第2タンク82から第1タンク81へ向かって液体が流れる。この結果、張力付与部15の重心位置M3がテンションバー55側から回動支点53aに近づく。これにより張力付与部15が自重で回動するときのテンションバー55の付勢力が相対的に小さくなり、テンションバー55に接する媒体Mに付与される張力が相対的に小さくなる。
次に、図8〜図10を参照して駆動連結方式の調整機構18の構成について説明する。図8に示すように、調整機構18は、駆動源の一例としての電動モーター56と、電動モーター56の出力軸に連結された駆動歯車56Aから回転を入力し回動軸53にその回転を出力する伝達歯車機構57とを備えている。伝達歯車機構57は、電動モーター56と張力付与部15の回動軸53とを常に動力伝達可能に連結している。伝達歯車機構57は、一方のアーム54に回動軸53(回動支点53a)を中心に回動可能に固定された扇形歯車58(セクターギア)と、駆動歯車56Aと扇形歯車58との間に介在する歯車機構59とを有している。図8に示す例の歯車機構59は大径歯車59Aと小径歯車59Bとを一体に有する二段歯車からなり、その大径歯車59Aが駆動歯車56Aに噛合し、その小径歯車59Bが扇形歯車58と噛合している。なお、歯車機構59は、1つの歯車からなる構成に替え、複数の歯車を含む歯車列であってもよい。
電動モーター56から出力された回転力は、駆動歯車56A及び歯車機構59を介して扇形歯車58に伝達される。扇形歯車58が回動することにより回動軸53が回動し、一対のアーム54が回動軸53と共に回動する。これにより一対のアーム54に支持されたテンションバー55に電動モーター56の駆動力に基づく回動方向の付勢力が付与される。制御部41は、調整機構18を構成する電動モーター56のモータートルクを制御することにより、張力付与部15の回動トルクを制御し、これによりテンションバー55の付勢力を調整する。この場合、制御部41は、電動モーター56の駆動速度を制御して張力付与部15の回動速度で制御することで張力付与部15の回動トルクを調整し、テンションバー55の付勢力を調整してもよい。
ここで、図9及び図10を参照して、伝達歯車機構57の動作について説明する。なお、図9は巻取部22が媒体Mを巻き取ってテンションバー55を上限位置に向かって上昇させる巻上げ過程の動作を示す。また、図10は巻上げ後の張力付与部15の自重によるテンションバー55の付勢力でその回動軌跡の接線方向下向きの荷重を媒体Mに与えて媒体Mに張力を付与する搬送過程の動作を示す。
図9、図10に示す調整機構18は、電動モーター56と張力付与部15とが伝達歯車機構57を介して常に動力伝達可能に連結されている。そのため、巻上げ過程及び搬送過程の双方において電動モーター56のディテントトルク及びイナーシャトルクが付加されるため、双方の過程においてモータートルクによる張力補正が必要になる。しかし、巻上げ過程も電動モーター56の制御でテンションバー55のトルクを管理できる。このため、単位長さ当りの重量が相対的に大きな媒体Mを巻き取るときに、単位長さ当りの重量が相対的に小さな媒体Mを巻き取るときよりも、テンションバー55の付勢力を大きくする調整が可能である。
次に、図9及び図10に示すテンションバー55の付勢力について説明する。ここで、図9及び図10において、Moは張力付与部15のモーメント、T1は電動モーター56のモータートルク、Lはテンションバー55の回動半径、θはテンションバー55の重心と回動支点53aとを結ぶ直線が鉛直線に対してなす角度(傾斜角)である。モータートルクT1は、テンションバー55の搬送時(下降時)の回動方向をプラス、巻上げ時(上昇時)の回動方向をマイナスとする。
図9に示すように、巻上げ時にテンションバー55に働く重力方向の力Fは、F=(Mo+T1)/(L・sinθ)となる。この力Fのうち「T1/(L・sinθ)」が電動モーター56のモータートルクによる調整分の力に相当し、モータートルクを制御してこの調整分の力を変更することにより巻上げ時におけるテンションバー55の付勢力を調整できる。また、図10に示すように、搬送時にテンションバー55に働く重力方向の力Fは、F=(Mo−T2)/(L・sinθ)となる。この力Fのうち「−T2/(L・sinθ)」が電動モーター56のモータートルクによりマイナス方向に働く制動力に相当する。モータートルクを制御してこの制動力を変更することにより搬送時におけるテンションバー55の付勢力を調整できる。
次に、図11を参照して支点移動方式の調整機構18の構成例を説明する。図11に示すように、調整機構18は、張力付与部15の重心位置M3と回動支点53aとの距離l(図12を参照)を変化させる方向に回動支点53aを移動させる移動機構の一例としての支点移動機構90を備えている。支点移動機構90は、回動支点53aとなる回動軸53を軸支する軸受91と、軸受91を支持するスライダー92と、スライダー92を移動させる動力源の一例としての電動モーター93とを備えている。スライダー92は、アーム54に対して軸受91と重心位置M3との距離lを変化させる方向に移動可能に設けられている。電動モーター93の出力軸に固定されたピニオン94(駆動歯車)は、スライダー92に設けられたその移動方向に沿って延びるラック95と噛合している。
電動モーター93が正転駆動すると、スライダー92と共に軸受91に軸支された回動軸53(回動支点53a)がカウンターウエイト52に近づく方向へ移動し、回動支点53aと重心位置M3との距離lが長くなる。これによりテンションバー55の付勢力が相対的に大きく変更される。一方、電動モーター93が逆転駆動すると、スライダー92と共に軸受91に軸支された回動軸53(回動支点53a)がテンションバー55に近づく方向へ移動し、回動支点53aと重心位置M3との距離lが短くなる。これによりテンションバー55の付勢力が相対的に小さく変更される。
次に、図14を参照して、印刷装置11の電気的構成を説明する。印刷装置11が有する制御部41は、制御回路44と、インターフェイス(I/F)42と、CPU(Central Processing Unit)43と、記憶部45とを含んで構成されている。インターフェイス42は、パーソナルコンピューター又はデジタルカメラ等の外部装置46と印刷装置11との間でデータの送受信を行う。印刷装置11は、各種の検出器(センサー)を含む検出器群47及びユーザーが印刷装置11に指示等を行う際に操作される操作部48を備えている。操作部48は、操作パネルに設けられた各種の操作スイッチ群又はタッチパネル等により構成される。CPU43は、検出器群47からの入力信号の処理及び印刷装置11の制御に必要な各種の演算処理等を行う。
外部装置46は例えばプリンタードライバーを内蔵している。プリンタードライバーは、ユーザーが外部装置46の不図示の入力装置を操作して指定した画像データと印刷条件情報とに基づいて印刷装置11が解釈可能な形式の印刷データを生成する。CPU43はプリンタードライバーが生成した印刷データを外部装置46からインターフェイス42を介して受信する。この印刷データには印刷条件情報のうち少なくとも媒体Mに関する媒体情報MD(図15を参照)が含まれる。また、CPU43は、不図示の入力ポートを介して外部記録装置等から入力した画像データと、ユーザーが操作した操作部48から入力した印刷条件情報とに基づき印刷データを生成する。CPU43は印刷データに基づく印刷制御を制御回路44に指示する。制御回路44は、CPU43からの印刷データ及び指示に基づいて、給送部21、搬送機構23、キャリッジ移動部33、給送部21、搬送機構23、記録ヘッド31、巻取部22及び調整機構18を駆動制御する。キャリッジ移動部33は、キャリッジ32を搬送方向と交差する走査方向(X軸方向)に移動させる機構であり、例えばベルト式移動機構とキャリッジモーター(いずれも図示略)とを備える。制御回路44は、詳しくは、給送モーター21M、搬送モーター23M、巻取モーター22M及びキャリッジモーターを駆動制御する。
記憶部45は、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の記憶素子を有し、CPU43のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。検出器群47は、テンションバー55の上限位置P1を検出するための上限センサー61及び下限位置P2を検出するための下限センサー62を含んでいる。また、検出器群47には、搬送ローラー対23aの回転を検出する回転検出器等が含まれる。
ユーザーが外部装置46の入力装置を操作して入力した印刷条件情報、及びユーザーが操作部48を操作して入力した印刷条件情報には、印刷モード、媒体情報MD、印刷色等の各種の情報が含まれる。印刷モードは印刷品質に関するモードを指定する情報であり、その選択肢とされる普通印刷モード/高精細印刷モード等が含まれる。印刷色は、媒体Mに印刷する際の印刷色を選択する色選択情報であり、その選択肢とされるカラー/グレイスケール等が含まれる。媒体情報MDは、媒体Mの種類を示す媒体種MTと媒体Mのサイズを示す媒体サイズMSとのうち少なくとも一方を含む。
ところで、本実施形態の印刷装置11で用いられる媒体Mには、種々の媒体種MT及び媒体サイズMSがある。例えば、広告・宣伝又は案内等を目的として店内又は街頭に掲示するための掲示物を印刷するために用いられる重量のある媒体もある。印刷装置11に印刷させるときに用いられる長尺状の媒体Mには、単位面積当たりの重量が例えば最小50グラム/平方メートルのラベル用フィルムから最大760グラム/平方メートルの掲示用の媒体Mまである。また、媒体幅には500〜2000mmの範囲で種々の幅寸法がある。印刷装置11では、媒体Mの単位面積当たりの重量及び幅寸法に依らず媒体Mの安定な搬送及び巻取りが求められる。
媒体Mの安定な搬送及び巻取りのためには、媒体Mの単位長さ当たりの重量(グラム/メートル)に応じた適切な張力を付与することが求められる。媒体Mの単位長さ当たりの重量は、媒体種MT及び媒体サイズMSに応じて決まる。単位長さ当たりの重量の大きな媒体M及び幅の広い媒体Mでは、そうでない媒体Mに比べ巻取り時の媒体Mの張力を高く設定しないと、巻締めながら媒体Mを巻き取ることができず、巻取り時に媒体Mに弛みが生じ易い。この場合、巻き取った媒体Mの径方向又は接線方向の応力が変動し、巻ずれや巻弛み等が発生する。また、単位長さ当たりの重量の小さな媒体M及び幅の狭い媒体Mでは、そうでない媒体Mに比べ巻取り時の媒体Mの張力を低く設定しないと、巻取部22にかかる張力が高過ぎて巻ずれが著しくなる。
本実施形態では、制御部41は、ユーザーが指定した媒体情報MDに応じて調整機構18を制御してテンションバー55の付勢力を調整する。これにより、媒体Mの搬送機構23と巻取部22との間の部分にテンションバー55により媒体種MT及び媒体サイズMSに応じた適切な張力を付与する。制御部41は媒体情報MDに応じた適切な付勢力が得られるように調整機構18を制御することで媒体Mへの適切な張力の付与を実現する。
記憶部45には、図15に示すように媒体情報MDとテンションバー55の付勢力を規定する付勢力制御値Qとの対応関係を表わす参照データRDが記憶されている。図15に示す例では、参照データRDには、媒体情報MDの一例として、媒体種MTと媒体サイズMSとの両方が設定されている。そのため、参照データRDには、媒体種MT及び媒体サイズMSに対応付けて付勢力制御値Qが設定されている。なお、媒体情報MDを、媒体種MTと媒体サイズMSとのうち一方とし、媒体種MTと付勢力制御値Qとが対応付けられた参照データRDとしてもよいし、媒体サイズMSと付勢力制御値Qとが対応付けられた参照データRDとしてもよい。
ここで、付勢力制御値Qは、錘移動方式、流体移動方式及び支点移動方式の調整機構18については、重心位置M3の移動範囲であるG1〜Gj(図12を参照)に対応付けられた電動モーター75,85,93の制御値Q1〜Qjを示す。例えば、錘移動方式の場合、制御値Q1〜Qjは、例えば電動モーター75の回転位置を示す。また、流体移動方式の場合、制御値Q1〜Qjは、例えば2つのタンク81,82の収容量の比率を規定する電動モーター75の制御値を示す。さらに支点移動方式の場合、制御値Q1〜Qjは、例えば回動支点53a(軸受91)の位置を規定する電動モーター93の回転位置を示す。一方、駆動連結方式の調整機構18である場合、制御値Q1〜Qjは、例えば電動モーター56のモータートルクを規定する制御値を示す。モータートルクを規定する制御値の一例としては、電動モーター56のトルクに対応する電流値又は電圧値が挙げられる。なお、図15に示す付勢力制御値Qは、重心位置M3を規定可能な種類のデータであればよい。
図15に示す参照データRDの例では、媒体種MTとして、n種類(但しnは自然数)の媒体種MT1,MT2,MT3,…,MTnが設定されている。媒体種MTごとに1つ又は複数の異なる媒体サイズが設定されている。図15に示す例では、媒体種MT1には3種類の媒体サイズMS1〜MS3が設定され、媒体種MT2と媒体種MT3にはそれぞれ2種類の媒体サイズMS1,MS2が設定され、媒体種MTnには例えばm種類の媒体サイズMS1〜MSmが設定されている。媒体サイズMSは、ロール状の媒体Mでは幅寸法(mm)を示す。なお、媒体サイズMSは幅寸法を規定できるサイズ情報であれば、サイズ規格値又は媒体Mの品番でもよい。
媒体種MTについては、媒体Mの厚みが大きくかつ媒体Mの材質から決まる比重が高い媒体種のものほど、テンションバー55の付勢力が大きくなるように付勢力制御値Qが設定している。また、媒体サイズMSについては、媒体Mの幅寸法が長い媒体サイズのものほど、テンションバー55の付勢力が大きくなるように付勢力制御値Qが設定している。制御部41は、参照データRDを参照して得られた付勢力制御値Qに基づいて電動モーター56,75,85,93の駆動を制御することにより、テンションバー55の付勢力を調整する。この付勢力の調整により、媒体Mに接するテンションバー55が媒体Mに加える荷重が調整され、その荷重により媒体Mに付与される張力が調整される。
次に、図12を参照して張力付与部15の重心位置について説明する。なお、図12では、テンションバー55の重心位置M1、カウンターウエイト52の重心位置M2、及び張力付与部15全体の重心位置M3を示している。図12に示すように、カウンターウエイト52の重心位置M2は、アーム54の回動支点53aとテンションバー55の重心位置M1とを結ぶ直線C1よりも鉛直方向の下方に位置する。これにより、アーム54が鉛直方向の上方に向かって凸状に湾曲した形状であっても張力付与部15全体の重心位置M3を直線C1上に近づけることができる。また、カウンターウエイト52の重心位置M2は、回動支点53aを通る鉛直線に対してテンションバー55の重心位置M1と反対側に位置するので、張力付与部15全体の重心位置M3が回動支点53aに近づき、重心位置M3と回動支点53aとの距離lが比較的短くなっている。
図12に示すように、張力付与部15全体の重心位置M3は、重心移動機構70,80及び支点移動機構90によって、回動支点53aに最も近い重心位置G1と回動支点53aから最も離れた重心位置Gjとの間の範囲で移動する。なお、支点移動機構90を用いた場合は、図12におけるアーム54に対して回動支点53aが移動して距離lが変化することにより、回動支点53aに対する重心位置M3の相対位置が変化する。
次に、図12及び図13を参照してテンションバー55の回動範囲について説明する。なお、以下の説明では、図12において、直線C1と鉛直線とがなす角度をアーム54の傾斜角θという。また、図13に示すグラフにおいて横軸はアーム54の傾斜角θを表し、縦軸は傾斜角θに位置するテンションバー55が接する媒体Mに付与される張力を表している。図中の破線Aは、媒体Mに付与させる所定の上限張力を示し、破線Bは、媒体Mに付与させる所定の下限張力を示している。曲線Cは、カウンターウエイト52を有する本実施形態の張力付与部15により媒体Mに付与される張力を示し、曲線Dは、カウンターウエイト52を有しない比較例の張力付与部により媒体Mに付与される張力を示している。
媒体Mに張力を付与するために媒体Mを押圧する荷重Fは、張力付与部15の質量をw、回動支点53aと張力付与部15の重心位置M3との距離をlとしたとき(図12参照)、次式で表される。
F=w・l・sinθ…(式1)
式1より、荷重Fは傾斜角θによって変動し、距離lが短くなると距離lに比例して荷重Fの変動量が小さくなることが分かる。これにより、媒体Mに付与される張力の変動も小さくなる。本実施形態の張力付与部15における回動支点53aと張力付与部15の重心位置M3との距離lは、カウンターウエイト52を有していない比較例の張力付与部におけるその距離よりも著しく短いので、本実施形態の曲線Cは、比較例の曲線Dと比較すると、張力の変化量も著しく小さくなる。
傾斜角Gは、曲線Cと所定の下限張力Bとの交点であり、テンションバー55が上限位置P1に位置する時のアーム54の傾斜角を示している。傾斜角Kは、曲線Cと所定の上限張力Aとの交点であり、テンションバー55が下限位置P2に位置する時のアーム54の傾斜角を示している。傾斜角Gから傾斜角Kは、媒体Mを巻取部22が巻き取る際のテンションバー55の回動範囲を表している。また、傾斜角G及び傾斜角Kをテンションバー55が媒体Mに接触可能な物理的回動限界と一致させることで、テンションバー55の回動範囲を最大にすることができる。
図13において、比較例の張力付与部では、媒体Mを巻取部22に巻き取る際のテンションバーの回動範囲は傾斜角Hから傾斜角Jまでの傾斜角θの範囲となっている。図13における曲線Cと曲線Dとの比較で分かるように、本実施形態の張力付与部15によれば、比較例による張力付与部よりもテンションバー55の回動範囲を大幅に広げることができる。また、図13における曲線Cと曲線Dとの比較で分かるように、本実施形態の張力付与部15によれば、比較例による張力付与部よりも、回動支点53aと重心位置M3との距離lを短くして上記(式1)で示される荷重Fの変動を小さくすることができる。これは、単位長さ当たりの重量(グラム/メートル)が特定範囲内にある媒体Mには適した張力を付与できるが、単位長さ当たりの重量が特に大きな特定の媒体Mに対しては荷重Fが不足して適切な張力を付与することが困難となる。そこで、本実施形態では、特定の媒体Mに対しても適切な張力を付与できるように図12に示す張力付与部15に、図6〜図11等に示す調整機構18を設けている。このため、搬送装置12を備えた印刷装置11が対応可能な媒体Mの種類を、単位長さ当たりの重量の小さな媒体種から大きな媒体種に至るまで広い範囲に亘り増やすことができる。
次に、印刷装置11の作用を説明する。ユーザーは、印刷装置11に印刷を行わせるときは、外部装置46の入力装置を操作して印刷条件情報を入力するか、あるいは操作部48を操作して印刷条件情報を入力する。ユーザーが外部装置46から印刷の指示を与えたとき、印刷装置11内のCPU43は、外部装置46からインターフェイス42を介して印刷データを受信する。印刷データには印刷条件情報のうち少なくとも媒体情報MDが含まれる。この場合、外部装置46から媒体情報MDを含む印刷データを受信するインターフェイス42が、媒体情報取得部として機能する。また、ユーザーが操作部48を操作して印刷条件情報を入力し印刷装置11に印刷の指示を与えたとき、印刷装置11内のCPU43は、ユーザーが操作した操作部48から媒体情報MDを含む印刷条件情報を取得する。この場合、CPU43が媒体情報MDを取得する取得元となる操作部48が、媒体情報取得部として機能する。媒体情報MDは、媒体種MTと媒体サイズMSとのうち少なくとも一方(本例では両方)を含む。
図1に示す印刷装置11で印刷が開始されると、給送部21がロール体R1から媒体Mを繰り出して印刷部13に向かって給送する。給送された媒体Mは搬送機構23により印刷部13と対向する位置まで搬送され、搬送された媒体Mに印刷部13が印刷データに基づく画像又は文書を印刷する。印刷後の媒体Mは搬送機構23により搬送方向の下流側へ搬送される。張力付与部15が自重により下方へ回動しようとするため、媒体支持部14の下流端とロール体R2との間の部分の媒体Mに接するテンションバー55が媒体Mに荷重を加え、媒体Mに張力が付与される。このときのテンションバー55の付勢力が調整機構18により媒体Mの媒体種MT及び媒体サイズMSに応じた値に調整され、媒体Mに媒体種MT及び媒体サイズMSに応じた適切な張力が付与される。
本実施形態の印刷装置11で用いられる媒体Mには複数の媒体種MT1〜MTnがあり、また媒体種MT〜MTnごとに1つ又は複数の異なる媒体サイズMSがある(図15を参照)。制御部41は、媒体種MT及び媒体サイズMSを含む媒体情報MDを取得すると、図15に示す参照データRDを参照してその媒体情報MDに対応する付勢力制御値Qを取得する。そして、制御部41は、その付勢力制御値Qに基づいて調整機構18を制御することによりテンションバー55の付勢力をそのとき印刷の対象とされる媒体Mの媒体種MT及び媒体サイズMSに応じた値に調整する。この結果、媒体Mの厚みが大きくかつ媒体Mの材質から決まる比重が高い媒体種MTのものほど、テンションバー55の付勢力が大きな値に調整される。また、媒体Mの幅寸法が長い媒体サイズMSのものほど、テンションバー55の付勢力が大きな値に調整される。
例えば、調整機構18が図6に示す錘移動方式である場合、制御部41は、操作部48から入力した印刷条件情報中の媒体情報MD、又は外部装置46からインターフェイス42を介して受信した印刷データ中の媒体情報MDを取得する。重心移動機構70は、電動モーター75の回転量に比例する数のパルスを含む検出信号を出力する不図示の回転検出器(例えばロータリーエンコーダー)を備える。制御部41は、回転検出器から入力した検出信号の例えばパルスエッジの数を電動モーター75の正転時にインクリメントし、逆転時にデクリメントすることにより、電動モーター75の回転位置を取得する。制御部41は、媒体情報MDを基に参照データRDを参照してその媒体情報MDに対応する付勢力制御値Qを取得し、電動モーター75を付勢力制御値Qに対応する回転位置に制御する。この結果、重心移動機構70によって、錘体71が付勢力制御値Qに応じた位置に位置制御され、張力付与部15の重心位置M3が調整される。
また、調整機構18が図7に示す流体移動方式である場合、重心移動機構80は、電動モーター85の回転量に比例する数のパルスを含む検出信号を出力する不図示の検出器(例えばロータリーエンコーダー)を備える。制御部41は、検出器から入力した検出信号の例えばパルスエッジの数を電動モーター85の回転方向に応じて正転時にインクリメントし、逆転時にデクリメントすることにより電動モーター85の回転位置を把握する。電動モーター85の回転位置はポンプ84が一方向に送った流量に対応しており、制御部41はその回転位置から2つのタンク81,82間の流体収容量の比率を把握している。制御部41は、媒体情報MDを基に参照データRDを参照してその媒体情報MDに対応する付勢力制御値Qを取得する。この付勢力制御値Qは、例えば2つのタンク81,82間の流体収容量の比率を規定する電動モーター85の回転位置を示す。制御部41は、電動モーター85を付勢力制御値Qに対応する回転位置まで駆動することにより、ポンプ84を元の回転位置から目標の回転位置まで一方向に所定回転量だけ駆動させる。この結果、2つのタンク81,82間で流体(例えば液体)が導管83を通じて流動し、2つのタンク81,82間の流体収容量の比率が変更される。これにより、張力付与部15の重心位置M3が2つのタンク81,82間の流体収容量の比率に応じた位置に調整される。
さらに調整機構18が図8に示す駆動連結方式である場合、制御部41は、媒体情報MDを基に参照データRDを参照してその媒体情報MDに対応する付勢力制御値Qを取得し、電動モーター56を付勢力制御値Qに対応するモータートルクに制御する。詳しくは、制御部41は、電動モーター56に印加する電流又は電圧を付勢力制御値Qに対応する値に制御することにより、電動モーター56のモータートルクを制御する。この結果、張力付与部15の回動軸53にモータートルクに応じた回動トルクが作用し、テンションバー55の付勢力がモータートルクに応じた値に調整される。
また、調整機構18が図11に示す支点移動方式である場合、支点移動機構90は、電動モーター93の回転量に比例する数のパルスを含む検出信号を出力する不図示の回転検出器(例えばロータリーエンコーダー)を備える。制御部41は、回転検出器から入力した検出信号の例えばパルスエッジの数を電動モーター93の正転時にインクリメントし、逆転時にデクリメントすることにより、電動モーター93の回転位置を取得する。制御部41は、媒体情報MDを基に参照データRDを参照してその媒体情報MDに対応する付勢力制御値Qを取得し、電動モーター93を付勢力制御値Qに対応する回転位置まで駆動させる。この結果、支点移動機構90によって、軸受91(つまり回動支点53a)が付勢力制御値Qに応じた位置へ移動し、張力付与部15の回動支点53aと重心位置M3との距離l(図12を参照)が調整される。これにより、テンションバー55の付勢力が距離lに応じた値に調整される。
こうして印刷中は媒体支持部14の下流端とロール体R2との間の部分の媒体Mに、テンションバー55の付勢力により適切な張力が付与される。この結果、搬送機構23による媒体Mの搬送位置精度が高まり、これに伴い印刷部13による印刷位置精度が高まるため、巻取部22に巻き取られた媒体Mの印刷品質を向上させることができる。
媒体Mが搬送機構23によって複数回搬送されてテンションバー55が下限位置P2に達する度に、巻取部22が駆動される。巻取部22により媒体Mが巻き取られることで、媒体支持部14の下流端とロール体R2との間の部分の媒体Mの弛み量が小さくなりながらテンションバー55が巻き上げられる。巻上げによってテンションバー55が上限位置P1まで上昇すると、巻取部22の駆動が停止される。巻取り時にも、調整機構18がテンションバー55の付勢力を媒体Mの媒体種MT及び媒体サイズMSに応じた適切な値に調整する。この結果、巻取部22に巻き取られる媒体Mにおいて捩れや皺の発生を効果的に抑制できる。
また、テンションバー55が所定高さ以上の位置に停止する状態で搬送機構23による媒体Mの搬送動作が開始されたとき、テンションバー55が媒体Mの弛みに追従できず一旦離れた媒体Mに向かって落下する。この落下中に検出部17がテンションバー55と媒体Mとが距離閾値未満の距離に近づいたことを検出すると、調整機構18により張力付与部15に制動力が与えられ、テンションバー55の付勢力が調整される。このため、テンションバー55が媒体M上に落下する過程でその移動速度が低く抑えられ、テンションバー55が媒体M上に落下したときの衝撃が、調整機構18による付勢力の調整が行われなかった場合に比べ小さく抑えられる。この点からも、媒体Mに過度な張力が付与されることが抑制され、搬送機構23による媒体Mの搬送位置精度が高まり、これにより印刷部13による印刷位置精度が高まる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)搬送装置12は、媒体Mを搬送する搬送部の一例としての搬送機構23と、媒体Mが巻回されたロール体R2を回転可能に支持する支持部の一例としての巻取軸22bとを備える。また、搬送装置12は、搬送機構23と巻取軸22bに支持されたロール体R2との間で媒体Mに向かって付勢され、媒体Mに接する状態で媒体Mに張力を付与するテンションバー55を有する張力付与部15を備える。さらに搬送装置12は、テンションバー55の媒体Mに向かう付勢力を調整可能な調整機構18と、調整機構18を制御する制御部41とを備える。よって、制御部41が調整機構18を制御することにより、搬送機構23とロール体R2との間で媒体Mに向かって付勢されたテンションバー55の媒体Mに向かう付勢力が調整される。したがって、搬送機構23とロール体R2との間における媒体Mの張力を適切な値に調整できる。例えば、媒体Mの張力が適切な値に調整されるので、巻取部22に巻き取られる媒体Mに張力が適切でないことに起因する捩れや皺が生じることを低減できる。
(2)張力付与部15は、テンションバー55と、テンションバー55を支持するとともに回動支点53aを中心に回動可能に支持されたアーム54とを備える。調整機構18は、回動支点53aと張力付与部15の重心位置M3の相対位置を変化させる方向に移動可能な移動体(錘体71、流体又は軸受91)と、移動体を移動させる移動機構70,80,90とを備える。制御部41は、移動機構70,80,90を駆動させて移動体を移動させることにより、張力付与部15の回動支点53aと重心位置M3との相対位置を変化させ、テンションバー55の付勢力を調整する。よって、テンションバー55の付勢力を比較的簡単に調整することができる。
(3)移動機構は、張力付与部15の回動支点53aに対する重心位置M3の相対位置を変化させる方向に移動体(錘体71又は流体)を移動させる重心移動機構70,80である。よって、制御部41が重心移動機構70,80を制御し、移動体を移動させて張力付与部15の重心位置M3を変化させることによって、テンションバー55の付勢力を比較的簡単に調整することができる。
(4)錘移動方式の重心移動機構70は移動体としての錘体71を移動させることにより張力付与部15の重心位置M3を変更する構成なので、比較的簡単にテンションバー55の付勢力を調整することができる。
(5)流体移動方式の重心移動機構80は、移動体としての流体を流動させる導管83(流路の一例)と、導管83に接続されたポンプ84とを有する。制御部41が重心移動機構80を制御してポンプ84により導管83を通じて流体を移動させることにより張力付与部15の重心位置M3を変更する構成なので、比較的簡単にテンションバー55の付勢力を調整することができる。
(6)支点移動方式を採用した支点移動機構90は、移動体として張力付与部15の回動支点53aとなる回動軸53を軸支する軸受91を有し、軸受91をアーム54に対して移動させる。よって、制御部41が支点移動機構90を制御して軸受91をアーム54に対して移動させれば、張力付与部15の回動支点53aを移動させることができる。よって、比較的簡単に張力付与部材の付勢力を調整することができる。
(7)駆動連結方式の調整機構18を採用した場合、調整機構18は、張力付与部15が回動支点53aを中心に回動するときの回動トルクを調整可能な駆動源の一例としての電動モーター56を有する。制御部41は、電動モーター56を制御して張力付与部15の回動トルクを調整することによりテンションバー55の付勢力を調整する。よって、比較的簡単にテンションバー55の付勢力を調整できるうえ、テンションバー55の回動位置に依存する付勢力のばらつきを小さく抑えることができる。
(8)搬送装置12は、媒体情報MDを取得する媒体情報取得部(操作部48又はインターフェイス42)を備える。制御部41は、調整機構18を制御してテンションバー55の付勢力を媒体情報MDに応じて調整する。よって、テンションバー55に接する媒体Mに媒体情報MD(媒体種MTと媒体サイズMSとのうち少なくとも一方)に応じた適切な張力を付与することができる。
(9)さらに搬送装置12は、テンションバー55が媒体Mに対して距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出する検出部17をテンションバー55に備える。搬送機構23が搬送動作を開始したときに、搬送機構23と巻取部22との間の部分の媒体Mが搬送され弛む速度にテンションバー55が追従できず、テンションバー55が一旦離れた媒体Mに向かって落下する。この落下過程で、検出部17がテンションバー55と媒体Mとが距離閾値Ls以下の距離に近づいたことを検出すると、調整機構18によってテンションバー55に制動力が付与されてその移動速度が低く抑えられる。よって、テンションバー55の媒体M上に落下した際の衝撃(衝突エネルギー)を小さく緩和することができる。したがって、テンションバー55が媒体M上に落下した際に媒体Mに過度な張力が発生することを回避できる。そのうえ、1つの調整機構18が異なる制御を兼ねるので、異なる制御ごとに調整機構を別々に設ける構成に比べ、印刷装置11をコンパクトに構成することができる。また、検出部17がテンションバー55に設けられ、テンションバー55が媒体Mに近づいたことを、媒体M又はテンションバー55が邪魔になることなく検出できるので、媒体M以外のものを媒体Mと間違える誤検出を防止できる。
(10)印刷装置11は、搬送装置12と、搬送装置12により搬送される媒体Mに印刷する印刷部13とを備える。よって、印刷装置11によって、上記(1)〜(9)で述べた搬送装置12の作用効果を同様に得ることができる。また、搬送機構23とロール体R2との間で媒体Mに接するテンションバー55に適切な付勢力が付与されるので、搬送機構23とロール体R2との間の印刷後の媒体Mに適切な張力を付与できる。よって、巻取部22が媒体Mを巻き取ってロール体R2を形成するときの巻ずれを抑制し、品質の高い印刷物を提供できる。
上記実施形態は以下に示す変更例でもよい。また、上記実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
・前記実施形態において、制御部41が調整機構18(移動機構)を制御し、テンションバー55が回動支点を中心とする回動位置(傾斜角θ)に応じて重心位置M3と回動支点53aとの相対位置を変化させてもよい。この構成によれば、テンションバー55の回動位置(傾斜角θ)に依存するテンションバー55の付勢力のばらつきを小さく抑えることができる。よって、テンションバー55の回動位置によらず媒体Mに適切な張力を付与できる。特に、制御部41は、調整機構18を制御し、テンションバー55が回動範囲の下限に近づくに連れて重心位置M3と回動支点53aとを近づける。換言すれば、制御部41は、調整機構18を制御し、テンションバー55が回動範囲の上限に近づくに連れて重心位置M3と回動支点53aとを離す。よって、例えば張力付与部15が回動位置(傾斜角θ)と張力との間に図13に曲線Cで示す対応関係をもつ特性を有していても、テンションバー55の回動位置によらず媒体Mに適切な張力を付与できる。
・図6において錘移動方式で張力付与部15の重心を移動させる構成において、錘体を移動させる移送機構72を、ベルト移動方式に替え、ボールねじ方式、リニアモーター方式としてもよい。また、調整機構18を構成する駆動源としてエアシリンダー等のシリンダーを用いてもよい。
・駆動連結方式の調整機構18は、電動モーター56等の駆動源を回動軸53に動力伝達可能に連結する構成に限定されない。駆動源等を含む、力を発生させる力発生源がその発生させた力(負荷を含む)を回動軸53に伝達可能に連結され、テンションバー55の付勢力を調整できればよい。力発生源が発生する力は粘性力(粘性負荷)でもよい。例えば、調整機構18は、テンションバー55の回動軸53に直結又は接離可能に接続される粘性抵抗機構により張力付与部15に粘性負荷を付与する。粘性抵抗機構として例えばロータリーダンパーを用い、ロータリーダンパーをテンションバー55の回動軸53に直結又は電磁クラッチを介して接離可能に取り付ける。ロータリーダンパーは粘性抵抗を複数段階に切替可能に構成することが好ましい。制御部41は電磁クラッチ又はロータリーダンパーを制御してテンションバー55の付勢力を調整する。また、力発生源が発生する力は弾性力(弾性負荷)でもよい。調整機構18は、テンションバー55の回動軸53に直結又は接離可能に接続される弾性体の弾性力を利用してテンションバー55の付勢力を調整する。例えば、調整機構18は、回動軸53と接離可能かつ回動可能に設けられた接続部材(例えば軸部材)と、接続部材を回動方向に付勢する捩じりコイルばねと、回動軸53と接続部材との間に介在する電磁クラッチとを備える。この場合、複数段の接続部材を間に電磁クラッチを介在させて設け、制御部41は複数の電磁クラッチのうち接続するものを選択してテンションバー55の付勢力を3段階以上の複数段階で調整する。力発生源によるテンションバー55の付勢方向は張力付与部15の回動力を加速させる加速方向と減速させる減速方向(制動方向)とのいずれであってもよい。例えば、力発生源の力が加わっていない状態の下で最大の付勢力が得られるように回動支点53aと重心位置M3との相対位置を設定した場合は、力発生部による力の付勢方向を減速方向とする。一方、力発生源の力が加わっていない状態の下で最小の付勢力が得られるように回動支点53aと重心位置M3との相対位置を設定した場合は、力発生部による力の付勢方向を加速方向とする。このように調整機構18は、粘性負荷と弾性負荷のうち一方を用いた場合、粘性負荷と弾性負荷のうち一方が張力付与部15に加えられることで、テンションバー55の付勢力が調整される。よって、比較的簡単な構成でテンションバー55の付勢力を調整することができる。
・テンションバー55の移動開始初期に重心位置M3を回動支点53aから一時的に遠ざけテンションバー55の付勢力を一時的に大きくしてもよい。この場合、テンションバー55が自重のみで落下する場合にゆっくり動き出すこところ、テンションバー55の落下開始初期の移動速度を相対的に速くし、搬送機構23による搬送動作の開始初期のテンションバー55の落下開始動作の応答遅れを相対的に小さく抑えることができる。
・前実施形態において、検出部17を無くし、調整機構18が兼用する2つの制御のうちテンションバー55が媒体M上に落下する際の衝撃を緩和する衝撃緩和制御を廃止してもよい。
・操作部の操作により張力付与部材の一例であるテンションバー55の付勢力を調整できる構成としてもよい。すなわち、媒体情報MDに依らず、ユーザーが操作部48を操作して付勢力の強さのレベル(張力のレベル)を数値等の入力値により指示する構成とする。制御部41は、操作部48から入力した入力値に応じた付勢力が得られるように駆動源である電動モーター56,75,85,93を駆動制御する。
・制御部41は、印刷装置11(又は搬送装置)の運転中(稼働中)にテンションバー55の付勢力を調整してもよい。例えばテンションバー55の回動位置(傾斜角θ)に応じてテンションバー55の付勢力を調整してもよい。前記実施形態では、テンションバー55が回動範囲の下限に近づくに連れて重心位置M3と回動支点53aとを近づけたが、これとは反対にテンションバー55が回動範囲の下限に近づくに連れて重心位置M3と回動支点53aとを遠ざけてもよい。要するに、テンションバー55の回動位置に依存する付勢力のばらつきを抑制できるように、テンションバー55の回動位置に応じて重心位置M3と回動支点53aとの相対位置を適切な張力が付与されるように制御すればよい。
・張力付与部材は、前記各実施形態で示したテンションバー55のような回動式に限定されない。例えば張力付与部材をY軸方向に移動可能に付勢したり、Z軸方向に移動可能に付勢したりする直動方式でもよい。この場合、張力付与部材の付勢力は、電動モーター等の駆動源の動力やばねの弾性力を利用して発生させればよい。
・流体移動方式の調整機構18で使用される移動体の一例としての流体は、液体に限らず、砂、粉、ビーズ等の粉粒体でもよい。
・搬送機構23と巻取部22の巻取軸22bに支持されたロール体R2との間で媒体Mに荷重を加えるテンションバー55を有する張力付与部15に限定されない。例えば給送部21の繰出軸21bに支持されたロール体R1と搬送機構23との間で媒体Mに荷重を加えるテンションバー55を有する張力付与部15でもよい。そして、印刷前の給送側の媒体Mに向かって付勢されたテンションバー(張力付与部材)の付勢力を調整する調整機構18を設ける構成でもよい。この構成によれば、制御部41が調整機構18を制御し、例えばテンションバー55がロール体R1から搬送機構23へ給送される途中の媒体Mを付勢する場合、媒体Mへの印刷の位置ずれを抑制できる。また、媒体情報MDに応じてテンションバー55の付勢力を調整する構成とした場合、印刷時の媒体Mが適切な位置に搬送されるため、例えば媒体Mへの印刷位置ずれを抑制できる。そして、ロール体R1と搬送機構23との間、及び搬送機構23とロール体R2との間の両方に張力付与部及び調整機構をそれぞれ設けることもできる。
・搬送動作を1回行う度に巻取動作を1回行ってもよいし、テンションバー55が下限位置に達したことをセンサー部60が検知する度に1回の巻取動作を行ってもよい。
・カウンターウエイト52を備えない構成としてもよい。
・印刷装置は、シリアルプリンターやラインプリンターに限定されず、キャリッジが主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。
・印刷装置は、インクジェット式プリンターに限らず、電子写真式プリンター、ドットインパクト式プリンター、熱転写式プリンター及び捺染印刷装置でもよい。
・媒体は、紙、布、フィルム、樹脂製シート等を挙げることができる。
・印刷装置は、ロール体から繰り出された長尺の薄型の基材(基板)からなる媒体に、例えば印刷技術を用いて、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体(インク)の液滴を吐出するものでもよい。例えば、機能材料の粒子として、配線材料等の金属粉を分散させた液状体の液滴を吐出し、基板に電気配線パターンを形成する印刷装置でもよい。また、機能材料の粒子として、色材(画素材料)の粉末を分散させた液状体の液滴を長尺状の基板に吐出し、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)及び面発光などの各種の方式のディスプレイ(表示装置用の表示基板)の画素を製造する印刷装置でもよい。