JPWO2018097259A1 - リチウムイオン二次電池用電解液、その製造方法、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
従来よりも電位窓の酸化側電位が向上したリチウムイオン電池用電解液を提供する。スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液であって、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する、リチウムイオン二次電池用電解液。
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池用電解液、その製造方法、及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池用の水系電解液については、含有する水の影響で電気化学的に安定な電位領域(電位窓)の範囲に限界があることが知られている。水系電解液の電位窓の拡大を試みた例として、例えば、非特許文献1には、電解質としてスルホンイミドのリチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)を使用した水溶液を、リチウムイオン電池の電解液として用いた実験例が開示されている。
Suo,L.et al.,Science,2015,350,938−943
しかし、リチウムイオン二次電池には更なる性能の向上が求められることから、非特許文献1に記載の電解液であっても、その性能が十分であるとはいえない。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する電解液において電位窓の酸化側電位が向上したリチウムイオン二次電池用電解液を提供することである。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する電解液において電位窓の酸化側電位が向上したリチウムイオン二次電池用電解液を提供することである。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液であって、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液において、前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液において、前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molであって、前記アニオンがピロリン酸イオンであることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液において、前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液において、前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molであって、前記アニオンがピロリン酸イオンであることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法であって、前記電解液に、添加剤として、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸イオン、及びホスフィン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを有するリン酸素酸、または、その塩を添加する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法において、前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法において、Li3PO4、LiH2PO4、NaH2PO4、Na2H2P2O7、Na2HPO3、及び、NaPH2O2からなる群から選択される少なくとも1種類のリン酸素酸塩を添加することが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法において、前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molとなるように調整し、前記リン酸素酸塩としてNa2H2P2O7を添加することが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法において、前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法において、Li3PO4、LiH2PO4、NaH2PO4、Na2H2P2O7、Na2HPO3、及び、NaPH2O2からなる群から選択される少なくとも1種類のリン酸素酸塩を添加することが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法において、前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molとなるように調整し、前記リン酸素酸塩としてNa2H2P2O7を添加することが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極、正極、及び電解液を有するリチウムイオン二次電池であって、前記電解液は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有し、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩より生じるアニオン、及びホスフィン酸、または、その塩より生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molであり、前記アニオンがピロリン酸イオンであることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molであり、前記アニオンがピロリン酸イオンであることが好ましい。
本発明によれば、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する電解液において電位窓の酸化側電位が向上したリチウムイオン二次電池用電解液、当該リチウムイオン二次電池用電解液の製造方法、及び、当該リチウムイオン二次電池用電解液を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、本開示のリチウムイオン二次電池用電解液、当該電解液の製造方法、及び、当該電解液を有するリチウム二次電池の順に、詳細に説明する。
1.リチウムイオン二次電池用電解液
本開示のリチウムイオン二次電池用電解液(以下、単に本開示の電解液と称することがある。)は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液であって、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。
本開示のリチウムイオン二次電池用電解液(以下、単に本開示の電解液と称することがある。)は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液であって、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。
上述したように、水系電解液の電解質としてスルホンイミドのリチウム塩であるLiTFSIを使用すると、電位窓が拡大することが報告されている。スルホンイミドが、電極表面において化学反応することによって皮膜(SEI;Solid Electrilyte Interface)を形成し、このSEIが水と電極の接触を阻害することで、水の分解が抑制されるためであると考えられている。
本開示においては、このようなスルホンイミドのリチウム塩に加えて、特定のリン酸素酸イオンを水系電解液に含有させることによって、電位窓の酸化側電位を更に向上させることが可能となる。
電位窓の酸化側電位を更に向上させることが可能となる理由は明らかではないが、上述のスルホンイミドの電気化学反応物に加えて、リン酸素酸イオンの電気化学反応物が、SEIに含まれることとなるため、Liイオン伝導度、膜厚、被覆率などが良好なSEIを形成できるためであると考えられる。
ここで電位窓の酸化側電位の向上は、電解液の電位窓を拡大して電圧出力が高いリチウムイオン二次電池の製造を可能とするだけではなく、使用可能な電極材料の選択肢が増加するというメリットももたらす。
すなわち、電解液の電気化学的に安定な電位領域に基づいて、電極材料を選択するため、電位窓の酸化側電位の向上幅が定量的に少ない場合であっても、これまで使用することができなかった電極材料が使用可能となる場合がある。そのため、単に酸化側電位の向上幅だけによって、その優位性を判断することは困難である。
本開示においては、このようなスルホンイミドのリチウム塩に加えて、特定のリン酸素酸イオンを水系電解液に含有させることによって、電位窓の酸化側電位を更に向上させることが可能となる。
電位窓の酸化側電位を更に向上させることが可能となる理由は明らかではないが、上述のスルホンイミドの電気化学反応物に加えて、リン酸素酸イオンの電気化学反応物が、SEIに含まれることとなるため、Liイオン伝導度、膜厚、被覆率などが良好なSEIを形成できるためであると考えられる。
ここで電位窓の酸化側電位の向上は、電解液の電位窓を拡大して電圧出力が高いリチウムイオン二次電池の製造を可能とするだけではなく、使用可能な電極材料の選択肢が増加するというメリットももたらす。
すなわち、電解液の電気化学的に安定な電位領域に基づいて、電極材料を選択するため、電位窓の酸化側電位の向上幅が定量的に少ない場合であっても、これまで使用することができなかった電極材料が使用可能となる場合がある。そのため、単に酸化側電位の向上幅だけによって、その優位性を判断することは困難である。
本開示の電解液では、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する水溶液を使用する。
本開示で電解質として使用されるスルホンイミドのリチウム塩は、リチウムイオン二次電池用電解液の使用できるものであれば、特に制限はなく、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI;CAS No.171611−11−3)、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI;CAS No.90076−65−6)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI;CAS No.132843−44−8)、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(CAS No.119229−99−1)、リチウムノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド(CAS No.176719−70−3)、及びリチウムN,N−ヘキサフルオロ−1,3,−ジスルホニルイミド(CAS No.189217−62−7)、などが挙げられる。
本開示の電解液をリチウムイオン二次電池の電解質層で使用する場合には、後述するリン酸素酸イオンと共に前記スルホンイミドが電極表面に良質な皮膜(SEI)を形成する。
本開示の電解液では、イミド構造と後述する特定のリン酸素酸アニオンが反応することで、良質な皮膜となることから、電解質がスルホンイミドのリチウム塩であれば、その種類にかかわらず電位窓の酸化側電位を向上することができる。
本開示で電解質として使用されるスルホンイミドのリチウム塩は、リチウムイオン二次電池用電解液の使用できるものであれば、特に制限はなく、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI;CAS No.171611−11−3)、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI;CAS No.90076−65−6)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI;CAS No.132843−44−8)、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(CAS No.119229−99−1)、リチウムノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド(CAS No.176719−70−3)、及びリチウムN,N−ヘキサフルオロ−1,3,−ジスルホニルイミド(CAS No.189217−62−7)、などが挙げられる。
本開示の電解液をリチウムイオン二次電池の電解質層で使用する場合には、後述するリン酸素酸イオンと共に前記スルホンイミドが電極表面に良質な皮膜(SEI)を形成する。
本開示の電解液では、イミド構造と後述する特定のリン酸素酸アニオンが反応することで、良質な皮膜となることから、電解質がスルホンイミドのリチウム塩であれば、その種類にかかわらず電位窓の酸化側電位を向上することができる。
これらのスルホンイミドのリチウム塩の中でも、LiTFSI、LiFSI、及びLiBETIは、高いLiイオン伝導度を有し電位窓の酸化側電位の向上効果が高いため好ましく、LiTFSI、LiFSIであると更に好ましい。
これらのスルホンイミドのリチウム塩は、市販のものを用いてもよいし、予め合成したものを用いてもよい。
これらのスルホンイミドのリチウム塩は、市販のものを用いてもよいし、予め合成したものを用いてもよい。
本開示の電解液におけるスルホンイミドのリチウム塩の濃度は、溶媒に対するスルホンイミドのリチウム塩の飽和濃度を超えない範囲において、求める電池の特性に応じて、適宜設定することができる。電解液中に固体のスルホンイミドのリチウム塩が残る場合には、固体成分が電池反応を阻害するおそれがあるためである。
通常、電解液中のスルホンイミドのリチウム塩の濃度が高くなるほど、電位窓は広くなるが、溶液の粘度が高くなるためLiイオン伝導度が低下する傾向がある。そのため、一般的には、Liイオン伝導度と電位窓の拡大効果を考慮して、求める電池の特性に合わせて濃度を設定する。
本開示の電解液では、求める電池の特性に合わせて設定されたスルホンイミドのリチウム塩がどのような濃度であっても、後述する特定のリン酸素酸イオンを含有させることにより、電位窓の酸化側電位を向上することが可能となる。
なお、本開示においては、電解液中のスルホンイミドのリチウム塩の濃度を、質量モル濃度、すなわち、溶媒1kgあたりのスルホンイミドのリチウム塩のmol数として示す。
従来技術と比較して、高い電位窓の酸化側電位とLiイオン伝導度を兼ね備える電解液を得ることができるため、後述する特定のリン酸素酸イオンと共にスルホンイミドとしてLiTFSIを含有する電解液では、溶媒として含有する水1kgあたりのLiTFSI量を10〜18molの範囲としてもよい。
通常、電解液中のスルホンイミドのリチウム塩の濃度が高くなるほど、電位窓は広くなるが、溶液の粘度が高くなるためLiイオン伝導度が低下する傾向がある。そのため、一般的には、Liイオン伝導度と電位窓の拡大効果を考慮して、求める電池の特性に合わせて濃度を設定する。
本開示の電解液では、求める電池の特性に合わせて設定されたスルホンイミドのリチウム塩がどのような濃度であっても、後述する特定のリン酸素酸イオンを含有させることにより、電位窓の酸化側電位を向上することが可能となる。
なお、本開示においては、電解液中のスルホンイミドのリチウム塩の濃度を、質量モル濃度、すなわち、溶媒1kgあたりのスルホンイミドのリチウム塩のmol数として示す。
従来技術と比較して、高い電位窓の酸化側電位とLiイオン伝導度を兼ね備える電解液を得ることができるため、後述する特定のリン酸素酸イオンと共にスルホンイミドとしてLiTFSIを含有する電解液では、溶媒として含有する水1kgあたりのLiTFSI量を10〜18molの範囲としてもよい。
本開示のリチウムイオン電池用電解液は、水を主たる溶媒として含有する。本発明の効果に影響を及ぼさない範囲であれば、溶媒として非水溶媒などの水以外の成分が含まれていてもよい。具体的には、溶媒中の水の含有量が95質量%以上でであってもよいし、99%以上であってもよい。
本開示の電解液には、スルホンイミドのリチウム塩以外のリチウム材料が含まれていてもよい。電解液中に含まれるリチウム材料の総モル数に対し、スルホンイミドのリチウム塩のモル比が0.1以上であってもよいし、スルホンイミドのリチウム塩のモル比が0.5以上であってもよい。
本開示の電解液には、スルホンイミドのリチウム塩以外のリチウム材料が含まれていてもよい。電解液中に含まれるリチウム材料の総モル数に対し、スルホンイミドのリチウム塩のモル比が0.1以上であってもよいし、スルホンイミドのリチウム塩のモル比が0.5以上であってもよい。
本開示の電解液は、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。
前記リン酸素酸イオンの濃度に特に制限はないが、上述のように、本開示の電解液では求める電池の特性に応じて比較的高濃度のスルホンイミドのリチウム塩との混合水溶液となる場合がある。本開示の電解液において、スルホンイミドのリチウム塩を比較的高濃度として前記リン酸素酸イオンが溶解しにくい状態である場合には、リン酸素酸イオンの濃度を可能な限り高くすることが好ましく、飽和状態であるとより好ましい。
本開示において、オルトリン酸イオンの用語は、PO4 3−、HPO4 2−、及びH2PO4 −の3種類の化学式で表されるアニオンを示し、ピロリン酸イオンの用語は、P2O7 4−、HP2O7 3−、H2P2O7 2−、及びH3P2O7 −の4種類の化学式で表されるアニオンを示すものとする。
また、本開示において、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンの用語は、電解液中に互変異性体として存在する可能性があるホスホン酸イオン(2価)、及び亜リン酸イオン(3価)の両方を示すものとする。ここで、ホスホン酸イオンの用語は、PHO3 2−、及びHPHO3 −の2種類の化学式で表されるアニオンを示し、亜リン酸イオンの用語は、PO3 3−、HPO3 2−、及びH2PO3 −の3種類の化学式で表されるアニオンを示すものとする。
また、本開示において、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンの用語は、電解液で互変異性体として存在する可能性があるホスフィン酸イオン(1価)、及び、亜ホスホン酸イオン(2価)の両方を示すものとする。ここで、ホスフィン酸イオンの用語は、PH2O2 −の1種類の化学式で表されるアニオンを示し、亜ホスホン酸イオンの用語は、PHO2 2−、及び、HPHO2 −の2種類の化学式で表されるアニオンを示すものとする。
本開示の電解液が含有するリン酸素酸イオンは、電解液のpHやスルホンイミドのリチウム塩等の影響により、解離や互変換の状態が異なり、上述した化学式で示されるアニオンの、どの状態または比率で存在するかを特定することは困難である。
上述の化学式で示されるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有するという条件が満たされれば、電解液の電位窓の酸化側電位が向上するという本開示の効果を達成することが可能である。
上述の化学式で示されるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有するという条件が満たされれば、電解液の電位窓の酸化側電位が向上するという本開示の効果を達成することが可能である。
本開示の電解液において、前記アニオンが、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオンであると電位窓の酸化側電位の向上効果が高いため好ましく、ピロリン酸イオンであると更に好ましい。
また、前記アニオンがピロリン酸イオンである場合には、前記スルホンイミドのリチウム塩がLiTFSIであって、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜21molであると、酸化側電位の向上のみならず、還元側電位が大きく低下し、電位窓の拡大効果が高くなるため好ましい。特に、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜18molであると、従来技術の水系電解液と比較して極めて電位窓が広く、Liイオン伝導度の高い電解液となるため、更に好ましい。
リン酸素酸イオンがピロリン酸イオンであって、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜21molである場合に、広い電位窓を示す理由は明らかではないが、他のリン酸素酸イオンとピロリン酸イオンでは、分極の状態が異なるため電極表面への吸着性に変化が生じること及び他のリン酸素酸イオンと比較してピロリン酸イオンの溶解度が高いことなどが影響していると考えられる。
また、前記アニオンがピロリン酸イオンである場合には、前記スルホンイミドのリチウム塩がLiTFSIであって、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜21molであると、酸化側電位の向上のみならず、還元側電位が大きく低下し、電位窓の拡大効果が高くなるため好ましい。特に、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜18molであると、従来技術の水系電解液と比較して極めて電位窓が広く、Liイオン伝導度の高い電解液となるため、更に好ましい。
リン酸素酸イオンがピロリン酸イオンであって、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜21molである場合に、広い電位窓を示す理由は明らかではないが、他のリン酸素酸イオンとピロリン酸イオンでは、分極の状態が異なるため電極表面への吸着性に変化が生じること及び他のリン酸素酸イオンと比較してピロリン酸イオンの溶解度が高いことなどが影響していると考えられる。
また、本開示の電解液のpHについても電解液として使用することができれば、特に制限はないが、3〜11の範囲であることが好ましく、5〜9の範囲であると更に好ましい。
2.リチウムイオン二次電池用電解液の製造方法
本開示のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法では、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液に、添加剤として、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸イオン、及びホスフィン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを有するリン酸素酸、または、その塩を添加する。ただし、上述の本開示のリチウムイオン二次電池用電解液は、必ずしも当該方法により製造されるリチウムイオン二次電池用電解液に限定されるものではない。
本開示のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法では、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液に、添加剤として、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸イオン、及びホスフィン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを有するリン酸素酸、または、その塩を添加する。ただし、上述の本開示のリチウムイオン二次電池用電解液は、必ずしも当該方法により製造されるリチウムイオン二次電池用電解液に限定されるものではない。
本開示の製造方法においてリン酸素酸、または、その塩を添加する母液として用いる、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する電解液及びその好ましい態様は、上述の1.リチウムイオン二次電池用電解液において説明したスルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する水溶液と同様である。
本開示の製造方法においては、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液に、添加剤として、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸イオン、及びホスフィン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを有するリン酸素酸、または、その塩を添加する。当該リン酸素酸塩としては、例えば、Li3PO4(リン酸三リチウム)、LiH2PO4(リン酸二水素リチウム)、NaH2PO4(リン酸二水素ナトリウム)、Na2H2P2O7(ピロリン酸二水素二ナトリウム)、Na2HPO3(亜リン酸水素二ナトリウム)、及び、NaPH2O2(ホスフィン酸ナトリウム、別名 次亜リン酸ナトリウム)を用いることができる。
上述のリン酸素酸、または、その塩を添加することより、前記スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液中に、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩より生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩より生じるアニオンが供給される。
上述のリン酸素酸、または、その塩を添加することより、前記スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液中に、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩より生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩より生じるアニオンが供給される。
電解液中に、前記特定のリン酸素酸イオンを供給することが可能な化合物であれば、酸の状態で添加しても、塩の状態で添加しても良く、電解液のpHなどによって適宜選択できる。通常、前記添加剤を添加するスルホンイミドのリチウム塩及び水を含有する水溶液のpHは中性付近であり、且つ、本開示の電解液は中性に近いpHで使用することから、塩の状態で添加することが好ましい。
前記リン酸素酸、または、その塩の添加量にも特に制限はないが、上述のように比較的高濃度の前記スルホンイミドのリチウム塩を含有する水溶液に対するリン酸素酸、または、その塩の溶解量は比較的少ないため、飽和となるように添加してもよい。固体の状態で溶け残った酸や塩がある場合には、そのまま使用してもよいし、除去して使用してもよい。
前記リン酸素酸塩としてNa2H2P2O7を添加する場合には、スルホンイミドのリチウム塩をとしてLiTFSIを使用し、水1kgあたりの当該LiTFSI量を5〜21molの範囲に調整することで、得られる電解液では、酸化側電位の向上のみならず、還元側電位が大きく低下し、電位窓の拡大効果が高くなるため好ましい。特に、水1kgあたりのLiTFSI量を5〜18mol/kgの範囲に調整することで、従来技術と比較して極めて電位窓が広く、Liイオン伝導度の高い電解液が得られるため、更に好ましい。
3.リチウムイオン二次電池
本開示のリチウムイオン二次電池は、負極、正極、及び電解液を有するリチウムイオン二次電池であって、前記電解液は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有し、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及びホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。また、本開示でのリチウムイオン二次電池では、セパレータ、導電助剤、及び結着剤等を適宜用いることができる。
本開示のリチウムイオン二次電池は、負極、正極、及び電解液を有するリチウムイオン二次電池であって、前記電解液は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有し、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及びホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する。また、本開示でのリチウムイオン二次電池では、セパレータ、導電助剤、及び結着剤等を適宜用いることができる。
本開示のリチウムイオン二次電池に使用する電解液は、1.リチウムイオン二次電池用電解液で示した本開示の電解液と同一であるため説明を省略する。
なお、本開示のリチウムイオン二次電池において、電解液の組成は充放電反応(酸化還元反応)によって変化し、また、繰り返し充放電されることによりその反応が蓄積されるため、厳密にその組成を特定することは困難である。しかし、どのような組成であっても、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有し、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩より生じるアニオン、及びホスフィン酸、または、その塩より生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有するため、酸化側の入出力電位が高いリチウムイオン二次電池とすることができる。
上述のように、スルホンイミドのリチウム塩及び前記特定のリン酸素酸イオンを含有するという条件が満たされれば、電極上に良質なSEIが形成されるため、電解液の電位窓の酸化側電位が向上する。
なお、本開示のリチウムイオン二次電池において、電解液の組成は充放電反応(酸化還元反応)によって変化し、また、繰り返し充放電されることによりその反応が蓄積されるため、厳密にその組成を特定することは困難である。しかし、どのような組成であっても、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有し、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩より生じるアニオン、及びホスフィン酸、または、その塩より生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有するため、酸化側の入出力電位が高いリチウムイオン二次電池とすることができる。
上述のように、スルホンイミドのリチウム塩及び前記特定のリン酸素酸イオンを含有するという条件が満たされれば、電極上に良質なSEIが形成されるため、電解液の電位窓の酸化側電位が向上する。
正極に用いる正極活物質としては、例えば、リチウムイオンに対して酸化還元反応性を示す材料であって、少なくとも1種の遷移金属元素を含む材料を使用できる。好適な正極活物質としては、酸化物材料、ポリアニオン材料、及び、有機材料等が挙げられる。
負極に用いる負極活物質としては、例えば、硫黄元素を主に含む材料、Mo6S8のシュブレル、Li4Ti5O12に代表されるリチウムチタン酸化物、硫黄、カーボン、Liと合金を形成することができるSiやSn等の材料、及び、金属有機構造体(MOF)等の材料を使用できる。良好なSEIが形成されやすいことから、負極活物質としてLi4Ti5O12を使用することが好ましい。
負極に用いる負極活物質としては、例えば、硫黄元素を主に含む材料、Mo6S8のシュブレル、Li4Ti5O12に代表されるリチウムチタン酸化物、硫黄、カーボン、Liと合金を形成することができるSiやSn等の材料、及び、金属有機構造体(MOF)等の材料を使用できる。良好なSEIが形成されやすいことから、負極活物質としてLi4Ti5O12を使用することが好ましい。
本開示のリチウムイオン二次電池には、通常、セパレータを用いることができる。セパレータは、正極及び負極の間に配置されるものであり、正極と負極との接触を防止し、電解液を保持して電解質層を形成する機能を有する。本開示のリチウムイオン二次電池においてはセパレータとして、水系電解液を使用する電池で通常用いられているセパレータを使用することができる。セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース及びポリアミド等の樹脂を挙げることができる。
また、本開示においてセパレータは、例えば、樹脂不織布、セルロース系の不織布等の不織布であっても良く、セルロース系の不織布であることが好ましい。また、前記セパレータの膜厚は、特に限定されるものではなく、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるセパレータの膜厚と同様である。
また、本開示においてセパレータは、例えば、樹脂不織布、セルロース系の不織布等の不織布であっても良く、セルロース系の不織布であることが好ましい。また、前記セパレータの膜厚は、特に限定されるものではなく、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるセパレータの膜厚と同様である。
電極等で使用する導電助剤や結着材については、リチウムイオン電池に通常使用されるものを用いることができる。
導電助剤としては、導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等を挙げることができる。
結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。
導電助剤としては、導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等を挙げることができる。
結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。
本開示のリチウムイオン二次電池は、正極、電解質層及び負極等を収納する電池ケースを備えていてもよい。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。
[実施例1]
1.リチウムイオン二次電池用電解液の調製
水1kgあたりのLiTFSIの物質量が21molとなるようにLiTFSI(東京化成工業株式会社製)及び水を混合し母液を調製した。得られた母液に対してLi3PO4(リン酸三リチウム、アルドリッチ社製)を1質量%となるように添加し、超音波発生器中で15分間拡散後、当該混合液の温度を、恒温槽を用いて40℃に保つことにより、水に対するLiTFSI及びLi3PO4の溶解を促した。混合液を40℃でそのまま一晩放置することにより、実施例1の電解液を調製した。
なお、実施例1の電解液では、添加したLi3PO4の全てが溶解することなく、一部が沈殿した飽和溶液の状態であった。そのため、当該電解液を静置して、沈殿したLi3PO4が混入しないように上澄のみを抽出して、以下の評価において使用した。
1.リチウムイオン二次電池用電解液の調製
水1kgあたりのLiTFSIの物質量が21molとなるようにLiTFSI(東京化成工業株式会社製)及び水を混合し母液を調製した。得られた母液に対してLi3PO4(リン酸三リチウム、アルドリッチ社製)を1質量%となるように添加し、超音波発生器中で15分間拡散後、当該混合液の温度を、恒温槽を用いて40℃に保つことにより、水に対するLiTFSI及びLi3PO4の溶解を促した。混合液を40℃でそのまま一晩放置することにより、実施例1の電解液を調製した。
なお、実施例1の電解液では、添加したLi3PO4の全てが溶解することなく、一部が沈殿した飽和溶液の状態であった。そのため、当該電解液を静置して、沈殿したLi3PO4が混入しないように上澄のみを抽出して、以下の評価において使用した。
2.電位窓評価用セルの準備
電位窓の評価には作用極及び対極にSUS316箔(ニラコ社製)、参照極にAg/AgCl(インターケミ社製)を用いた電池評価用バッチセル(SBIA、株式会社イーシーフロンティア製)を使用した。当該電池評価用バッチセルに対し、前記電解液を注液することにより、電位窓評価用セルを作製した。
電位窓の評価には作用極及び対極にSUS316箔(ニラコ社製)、参照極にAg/AgCl(インターケミ社製)を用いた電池評価用バッチセル(SBIA、株式会社イーシーフロンティア製)を使用した。当該電池評価用バッチセルに対し、前記電解液を注液することにより、電位窓評価用セルを作製した。
3.イオン抵抗測定用セルの準備
前記電位窓評価用セルにおいて参照極を使用せずに正極と負極のみを用いるイオン抵抗測定用セルを準備した。
前記電位窓評価用セルにおいて参照極を使用せずに正極と負極のみを用いるイオン抵抗測定用セルを準備した。
4.評価条件
電気化学測定装置として、マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio Logic社製、型番:VMP3)を用いた。また、恒温槽(Espec社製、型番:LU−124)により評価時のセル温度を調整した。
電気化学測定装置として、マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio Logic社製、型番:VMP3)を用いた。また、恒温槽(Espec社製、型番:LU−124)により評価時のセル温度を調整した。
4−1.電位窓の評価方法
電位窓の評価は、電位窓評価用セルを用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)により行った。セル温度は25℃とした。
まず、開回路電位(OCP)から貴な電位方向へ掃引速度1mV/sで掃引を開始し、5.2V(vsLi/Li+)を上限として掃引を繰り返した。OCPから5.2V(vs.Li/Li+)までの掃引中に現れた、水の酸化分解に対応すると考えられる電流の立ち上がり始める電位を、その電解液の酸化側電位とした。
また、同様のセルを別途用意して、OCPから卑な電位方向へ掃引速度1mV/sで掃引を開始し、1.4V(vs.Li/Li+)を下限として掃引を繰り返した。OCPから1.4V(vs.Li/Li+)までの掃引中に現れた、水の還元分解に対応すると考えられる電流の立ち上がり始める電位を、その電解液の還元側電位とした。
また、酸化側電位と還元側電位との間の電位領域を、その電解液の電位窓とし、この電位窓(ΔV)が広いほど、電気化学的に安定な電位領域が広いと評価できる。
電位窓の評価は、電位窓評価用セルを用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)により行った。セル温度は25℃とした。
まず、開回路電位(OCP)から貴な電位方向へ掃引速度1mV/sで掃引を開始し、5.2V(vsLi/Li+)を上限として掃引を繰り返した。OCPから5.2V(vs.Li/Li+)までの掃引中に現れた、水の酸化分解に対応すると考えられる電流の立ち上がり始める電位を、その電解液の酸化側電位とした。
また、同様のセルを別途用意して、OCPから卑な電位方向へ掃引速度1mV/sで掃引を開始し、1.4V(vs.Li/Li+)を下限として掃引を繰り返した。OCPから1.4V(vs.Li/Li+)までの掃引中に現れた、水の還元分解に対応すると考えられる電流の立ち上がり始める電位を、その電解液の還元側電位とした。
また、酸化側電位と還元側電位との間の電位領域を、その電解液の電位窓とし、この電位窓(ΔV)が広いほど、電気化学的に安定な電位領域が広いと評価できる。
4−2.イオン抵抗の測定方法
イオン抵抗の測定は、イオン抵抗測定用セルを用いて、交流インピーダンス法により行った。測定条件の詳細は下記の通りである。
電流:10mV交流
周波数:1〜100kHz
セル温度:25℃
イオン抵抗の測定は、イオン抵抗測定用セルを用いて、交流インピーダンス法により行った。測定条件の詳細は下記の通りである。
電流:10mV交流
周波数:1〜100kHz
セル温度:25℃
[実施例2〜実施例21、比較例1〜比較例9]
実施例1の「1.リチウムイオン電池用電解液の調製」において、LiTFSIの濃度、及び、使用した添加剤を下記表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2〜実施例21、及び比較例1〜比較例9の電解液を調製した。なお、各添加剤は、LiH2PO4(リン酸二水素リチウム、アルドリッチ社製)、NaH2PO4(リン酸二水素ナトリウム、アルドリッチ社製)、Na2H2P2O7(ピロリン酸二水素二ナトリウム、アルドリッチ社製)、Na2HPO3(亜リン酸水素二ナトリウム、アルドリッチ社製)、及び、NaPH2O2(ホスフィン酸ナトリウム、アルドリッチ社製)、並びに、Na2S2O3(チオ硫酸ナトリウム、アルドリッチ社製)、NaSCN(チオシアン酸ナトリウム、アルドリッチ社製)、及び、K2S(硫化カリウム、アルドリッチ社製)を用いた。
これらの電解液を用いて、実施例1と同様に電位窓評価用セル及びイオン抵抗測定用セルを準備し、これらのセルを評価に供した。
実施例1の「1.リチウムイオン電池用電解液の調製」において、LiTFSIの濃度、及び、使用した添加剤を下記表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2〜実施例21、及び比較例1〜比較例9の電解液を調製した。なお、各添加剤は、LiH2PO4(リン酸二水素リチウム、アルドリッチ社製)、NaH2PO4(リン酸二水素ナトリウム、アルドリッチ社製)、Na2H2P2O7(ピロリン酸二水素二ナトリウム、アルドリッチ社製)、Na2HPO3(亜リン酸水素二ナトリウム、アルドリッチ社製)、及び、NaPH2O2(ホスフィン酸ナトリウム、アルドリッチ社製)、並びに、Na2S2O3(チオ硫酸ナトリウム、アルドリッチ社製)、NaSCN(チオシアン酸ナトリウム、アルドリッチ社製)、及び、K2S(硫化カリウム、アルドリッチ社製)を用いた。
これらの電解液を用いて、実施例1と同様に電位窓評価用セル及びイオン抵抗測定用セルを準備し、これらのセルを評価に供した。
[実施例22、比較例10]
1.リチウムイオン二次電池用電解液の調製
実施例4で電解質として用いたLiTFSI(東京化成工業株式会社製)をLiFSI(キシダ化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様に、実施例22の電解液を調製した。また、比較例1で電解質として用いたLiTFSIをLiFSIに変更したこと以外は、比較例1と同様に、比較例10の電解液を調製した。
2.電位窓の評価
実施例22及び比較例10電解液を用いて、実施例1と同様に電位窓評価用セルを準備し、これらのセルを評価に供した。
3.充放電効率の評価
実施例22及び比較例10電解液を用いて、以下のように作製した電極を備える充放電効率評価用リチウムイオン二次電池を準備した。
1.62〜2.32V(vs.Li/Li+)の範囲内で充放電反応を100サイクル繰り返し、充放電反応時の電荷量からサイクル毎に充放電効率を求めた。
[電極作製条件]
活物質は作用極(負極)にLi4Ti5012(LTO)を、対極(正極)にLiMn204(LMO)を用いた。導電助剤にはアセチレンブランク、バインダーにはPVdFを用いた。集電体としては正負極共にSUS316L箔(ニラコ社製)を用いた。まず、活物質と導電助剤とを乳鉢で混合した後、PVdFを添加した。活物質と導電助剤とPVdFとの質量比は、活物質:導電助剤:PVdF=85:10:5とした。粘性を確認しながらNMPを添加し、乳鉢混合を続けて均―になった後で、軟膏容器に移し、混合機(商品名:あわとり練太郎、株式会社シンキー製)にて3000rpmで10分間混合した。このようにして得られたスラリーを金属箔上に載せ、ドクターブレードによって塗工した。その後、60℃の乾燥機にて一晩静置して溶媒を乾燥させて電極とした。得られた各電極をφ16mmで打ち抜き、空隙率が40%になるようにロールプレスにかけた。容量はLTOが0.3mAh/cm2、LMOが0.6mAh/cm2となるようにした。
1.リチウムイオン二次電池用電解液の調製
実施例4で電解質として用いたLiTFSI(東京化成工業株式会社製)をLiFSI(キシダ化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様に、実施例22の電解液を調製した。また、比較例1で電解質として用いたLiTFSIをLiFSIに変更したこと以外は、比較例1と同様に、比較例10の電解液を調製した。
2.電位窓の評価
実施例22及び比較例10電解液を用いて、実施例1と同様に電位窓評価用セルを準備し、これらのセルを評価に供した。
3.充放電効率の評価
実施例22及び比較例10電解液を用いて、以下のように作製した電極を備える充放電効率評価用リチウムイオン二次電池を準備した。
1.62〜2.32V(vs.Li/Li+)の範囲内で充放電反応を100サイクル繰り返し、充放電反応時の電荷量からサイクル毎に充放電効率を求めた。
[電極作製条件]
活物質は作用極(負極)にLi4Ti5012(LTO)を、対極(正極)にLiMn204(LMO)を用いた。導電助剤にはアセチレンブランク、バインダーにはPVdFを用いた。集電体としては正負極共にSUS316L箔(ニラコ社製)を用いた。まず、活物質と導電助剤とを乳鉢で混合した後、PVdFを添加した。活物質と導電助剤とPVdFとの質量比は、活物質:導電助剤:PVdF=85:10:5とした。粘性を確認しながらNMPを添加し、乳鉢混合を続けて均―になった後で、軟膏容器に移し、混合機(商品名:あわとり練太郎、株式会社シンキー製)にて3000rpmで10分間混合した。このようにして得られたスラリーを金属箔上に載せ、ドクターブレードによって塗工した。その後、60℃の乾燥機にて一晩静置して溶媒を乾燥させて電極とした。得られた各電極をφ16mmで打ち抜き、空隙率が40%になるようにロールプレスにかけた。容量はLTOが0.3mAh/cm2、LMOが0.6mAh/cm2となるようにした。
5.結果と考察
表1に、電解質としてLiTFSIを用いた実施例1〜実施例21、及び、比較例1〜比較例9の電解液の組成、並びに、電位窓の評価結果、及び、イオン抵抗の測定結果を示した。また、表2には、電解質としてLiFSIを用いた実施例22、及び、比較例10の電解液の組成、並びに、電位窓の評価結果を示した。
なお、図1にNa2H2P2O7を添加した電解液及び添加剤未使用の電解液の水1kgあたりのLiTFSI量と電位窓(ΔV)との関係を表すグラフを示した。また、図2には参考として、実施例5の電解液、比較例1及び比較例2の電解液のリニアスイープボルタモグラムを示した。更に、図3には、電解質として用いたLiFSIを用いた実施例22、及び、比較例10の電解液から作製したリチウムイオン二次電池のサイクル数と充放電効率の関係を示すグラフを示した。
比較例1〜6の結果より、水1kgあたりのLiTFSI量(電解液中のLiTFSIの濃度)が高くなるに従って、酸化側電位が高くなり、還元側電位は低くなる傾向が認められた。水1kgあたりのLiTFSI量が21molである比較例1で、酸化側電位が4.79V vs.Li/Li+及び還元側電位が2.01V vs.Li/Li+を示し、電位窓(ΔV)は2.78Vと最大であった。
比較例1と同じ水1kgあたりのLiTFSI量(21mol)である母液に、Na2S2O3、NaSCN、K2Sをそれぞれ添加した比較例7〜9の電解液では、酸化側電位が添加剤を含有しない比較例1より低く、電位窓全体としても縮小した。硫化物系の化合物を添加すると、これらの添加剤から生じたアニオンが電極表面に付着することによって、水の分解を促進し、かえって悪影響を及ぼすことが明らかとなった。
表1に、電解質としてLiTFSIを用いた実施例1〜実施例21、及び、比較例1〜比較例9の電解液の組成、並びに、電位窓の評価結果、及び、イオン抵抗の測定結果を示した。また、表2には、電解質としてLiFSIを用いた実施例22、及び、比較例10の電解液の組成、並びに、電位窓の評価結果を示した。
なお、図1にNa2H2P2O7を添加した電解液及び添加剤未使用の電解液の水1kgあたりのLiTFSI量と電位窓(ΔV)との関係を表すグラフを示した。また、図2には参考として、実施例5の電解液、比較例1及び比較例2の電解液のリニアスイープボルタモグラムを示した。更に、図3には、電解質として用いたLiFSIを用いた実施例22、及び、比較例10の電解液から作製したリチウムイオン二次電池のサイクル数と充放電効率の関係を示すグラフを示した。
比較例1〜6の結果より、水1kgあたりのLiTFSI量(電解液中のLiTFSIの濃度)が高くなるに従って、酸化側電位が高くなり、還元側電位は低くなる傾向が認められた。水1kgあたりのLiTFSI量が21molである比較例1で、酸化側電位が4.79V vs.Li/Li+及び還元側電位が2.01V vs.Li/Li+を示し、電位窓(ΔV)は2.78Vと最大であった。
比較例1と同じ水1kgあたりのLiTFSI量(21mol)である母液に、Na2S2O3、NaSCN、K2Sをそれぞれ添加した比較例7〜9の電解液では、酸化側電位が添加剤を含有しない比較例1より低く、電位窓全体としても縮小した。硫化物系の化合物を添加すると、これらの添加剤から生じたアニオンが電極表面に付着することによって、水の分解を促進し、かえって悪影響を及ぼすことが明らかとなった。
これらに対して、同じ水1kgあたりのLiTFSI量で比較した場合には、LiTFSI及び水を含有する母液に、Li3PO4、LiH2PO4、NaH2PO4、Na2H2P2O7、Na2HPO3、及び、NaPH2O2をそれぞれ添加した実施例1〜21の電解液では、添加剤を含有しない比較例1〜6の電解液よりも高い酸化側電位を示した。
特に、水1kgあたりのLiTFSI量が10〜18molの範囲内において前述のリン酸素酸塩をそれぞれ添加した実施例2、5〜7、11〜13、15、17及び20の電解液では、水1kgあたりのLiTFSI量が21molであり添加剤を含有しない比較例1の電解液より高い酸化側電位を示す上、イオン伝導度も向上することができるという極めて優れた効果を示すことが明らかとなった。比較例1〜6に示すように、LiTFSIのみを使用する従来技術の電解液では、酸化側電位を向上するために水1kgあたりのLiTFSI量(電解液中のLiTFSI濃度)を高くすると、粘性が高くなるためイオン抵抗も高くなる。本開示の電解液では、特定のリン酸素酸塩を添加することにより、電解液の粘性をあげることなく、酸化側電位を向上することができるため、LiTFSIのみを使用する従来技術の電解液よりも、酸化側電位とLiイオン伝導度が高い電解液を得ることができたと考えられる。
また、Na2H2P2O7を添加した実施例4〜9の電解液では、表1、並びに図1、及び図2に示すように、水1kgあたりのLiTFSI量が5〜21molの範囲において、同じ水1kgあたりのLiTFSI量である比較例と比較して、酸化側電位だけでなく、還元側の電位も拡張し、2.88〜3.33Vという極めて広い電位窓(ΔV)を示すことも明らかとなった。
Na2H2P2O7を添加した場合に、極めて広い電位窓を示す理由は明らかではないが、他のリン酸素酸イオンとピロリン酸イオンでは分極の状態が異なるため電極表面への吸着性に変化が生じたこと、及び他のリン酸素酸イオンと比較してピロリン酸イオンの溶解度が高いことなどが影響していると考えられる。
Na2H2P2O7を添加した場合に、極めて広い電位窓を示す理由は明らかではないが、他のリン酸素酸イオンとピロリン酸イオンでは分極の状態が異なるため電極表面への吸着性に変化が生じたこと、及び他のリン酸素酸イオンと比較してピロリン酸イオンの溶解度が高いことなどが影響していると考えられる。
また、電解質としてLiTFSIに変えてLiFSIを用いて、Na2H2P2O7を添加した実施例22の電解液では、表2に示すように、Na2H2P2O7未添加のLiFSIである比較例10と比較して、酸化側電位だけでなく、還元側の電位も拡張し、3.05Vという極めて広い電位窓(ΔV)を示すことも明らかとなった。そのため、電解質がスルホンイミドのリチウム塩であれば、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンと組み合わせることにより、電位窓の酸化側電位が向上すると考えられる。
なお、図3に示すように、LiFSIを用いたNa2H2P2O7未添加の比較例10の電解液から作製したリチウムイオン二次電池では、2サイクル以降の充放電効率が急激に低下した。これに対して、LiFSIを用いてNa2H2P2O7を添加した実施例22の電解液から作製したリチウムイオン二次電池では、充放電効率は、3サイクル目までに約50%まで充放電効率が上昇し、その後100サイクルまで、約50%程度の充放電効率を維持した。
これは、LiFSI及びNa2H2P2O7から形成されたSEIが、電解液中の水と電極の接触を阻害することにより、副反応である水の分解が抑制されるため、還元反応時の電流がより多くのチタン酸リチウム(LTO)の充電に利用された結果であると考えられる。
なお、図3に示すように、LiFSIを用いたNa2H2P2O7未添加の比較例10の電解液から作製したリチウムイオン二次電池では、2サイクル以降の充放電効率が急激に低下した。これに対して、LiFSIを用いてNa2H2P2O7を添加した実施例22の電解液から作製したリチウムイオン二次電池では、充放電効率は、3サイクル目までに約50%まで充放電効率が上昇し、その後100サイクルまで、約50%程度の充放電効率を維持した。
これは、LiFSI及びNa2H2P2O7から形成されたSEIが、電解液中の水と電極の接触を阻害することにより、副反応である水の分解が抑制されるため、還元反応時の電流がより多くのチタン酸リチウム(LTO)の充電に利用された結果であると考えられる。
以上の結果から、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液であって、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩より生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩より生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する、本開示のリチウムイオン二次電池用電解液は、電位窓の酸化側電位が向上することが証明された。
Claims (10)
- スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液であって、
オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及び、ホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する、リチウムイオン二次電池用電解液。 - 前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電解液。
- 前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molであって、前記アニオンがピロリン酸イオンである、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用電解液。
- スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有するリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法であって、
前記電解液に、添加剤として、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸イオン、及びホスフィン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを有するリン酸素酸、または、その塩を添加する、リチウムイオン二次電池用電解液の製造方法。 - 前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法。
- Li3PO4、LiH2PO4、NaH2PO4、Na2H2P2O7、Na2HPO3、及び、NaPH2O2からなる群から選択される少なくとも1種類のリン酸素酸塩を添加する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法。
- 前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molとなるように調整し、前記リン酸素酸塩としてNa2H2P2O7を添加する請求項5または6に記載のリチウムイオン二次電池用電解液の製造方法。
- 負極、正極、及び電解液を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記電解液は、スルホンイミドのリチウム塩及び水を含有し、
オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、亜リン酸、または、その塩が解離して生じるアニオン、及びホスフィン酸、または、その塩が解離して生じるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種類のアニオンを含有する、リチウムイオン二次電池。 - 前記スルホンイミドのリチウム塩がリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記水1kgあたりの前記LiTFSI量が5〜21molであり、前記アニオンがピロリン酸イオンである、請求項9に記載のリチウムイオン二次電池。
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