JP6772896B2 - 二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
また、非特許文献1には、負極としてMo6S8が使用されているが、この負極は電池の実用化の観点からは不十分である(Supplementary Materialsの2頁、”Materals”参照)。
本開示は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本開示の目的は、負極表面にSEI被膜を形成することによって充放電可能な二次電池が得られる製造方法を提供することである。
図1は、本開示の二次電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。本開示の一実施形態である二次電池100は、負極1、正極2、及び電解液3を備える。図1に示すように、電解液3の一方の面に負極1が存在し、電解液3の他方の面に正極2が存在する。なお、本開示の二次電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
本開示に使用される負極はチタン酸リチウムを含有する。チタン酸リチウムの中でも、良好なSEIが形成されやすいことから、負極活物質としてLi4T5O12を使用することが好ましい。
導電助剤としては、導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等を挙げることができる。
結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。
本開示に使用される正極は、通常、正極活物質を含む。
正極に用いる正極活物質としては、例えば、リチウムイオンに対して酸化還元反応性を示す材料であって、少なくとも1種の遷移金属元素を含む材料を使用できる。好適な正極活物質としては、酸化物材料、ポリアニオン材料、及び、有機材料等が挙げられ、例えば、LiMn2O4(LMO)等が使用できる。
正極は、正極活物質以外にも、例えば、導電助剤や結着剤を含んでいてもよい。導電助剤や結着材としては、例えば、上述したものを用いることができる。
正極は集電体を備えていてもよい。正極用の集電体としては、例えば、上述したものを用いることができる。
本開示に使用される電解液は、イミド酸化合物のリチウム塩及び水を含有する。
上述したように、水系電解液の電解質としてLiTFSI(イミド酸化合物のリチウム塩の一種)を使用すると、電位窓が拡大することが報告されている。電位窓が拡大する理由は、イミド酸化合物が、電極表面において化学反応することによってSEI被膜を形成し、このSEI被膜が水と電極との接触を阻害することで、水の分解が抑制されるためであると考えられる。
電位窓の拡大は、電圧出力が高い二次電池の製造を可能とするだけではなく、使用可能な電極材料の選択肢が増加するというメリットももたらす。すなわち、電解液の電気化学的に安定な電位領域に基づき電極材料が選ばれるため、電位窓の酸化側電位の向上幅が定量的に少ない場合であっても、これまで使用することができなかった電極材料が使用可能となる場合がある。
これらのイミド酸化合物のリチウム塩は、市販のものを用いてもよいし、予め合成したものを用いてもよい。
通常、電解液中のイミド酸化合物のリチウム塩の濃度が高くなるほど、電位窓は広くなるが、溶液の粘度が高くなるためLiイオン伝導度が低下する傾向がある。そのため、一般的には、Liイオン伝導度と電位窓の拡大効果を考慮して、求める電池の特性に合わせて濃度を設定する。
クーロン効率向上の理由は明らかではないが、上述のイミド酸化合物の電気化学反応物と併せて、ピロリン酸二水素ナトリウムの電気化学反応物がSEIに含まれることとなるため、SEIの耐電圧性が向上する結果、電解液が分解する副反応を抑えられるためであると考えられる。
特に、LiTFSI濃度が5mol/kg以上18mol/kg以下であると、従来技術の水系電解液と比較して極めて電位窓が広く、Liイオン伝導度の高い電解液となるため、更に好ましい。
さらにピロリン酸二水素ナトリウムを用いる場合、イミド酸化合物のリチウム塩とピロリン酸二水素ナトリウムを溶かす順番は特に限定されない。例えば、イミド酸化合物のリチウム塩が十分に溶けた母液中にピロリン酸二水素ナトリウムを加えてもよいし、イミド酸化合物のリチウム塩とピロリン酸二水素ナトリウムを同時期に水に加えてもよいし、ピロリン酸二水素ナトリウムを水中に溶かした後にイミド酸化合物のリチウム塩を加えてもよい。
なお、本開示における電解液については、リチウム塩濃度が比較的高いため、析出しないよう注意しながら、電池の組み立て前に恒温槽等により予め温度調整をすることが好ましい。
本開示の二次電池には、通常、セパレータを用いることができる。セパレータは、正極及び負極の間に配置されるものであり、正極と負極との接触を防止し、電解液を保持して電解質層を形成する機能を有する。本開示の二次電池には、水系電解液電池(例えば、NiMH、Zu−Air等)で通常用いられるセパレータが好ましく、例えばセルロース系の不織布等が好ましい。その他にも、セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース及びポリアミド等の樹脂等が挙げられる。
セパレータの膜厚は特に限定されず、一般的な二次電池に用いられるセパレータの膜厚と同様である。
本工程においては、上記組立工程により得られる電池の負極電位を、特定の電位に1時間以上保持する。ここで、特定の電位とは、上述した電解液のSEI形成電位よりも卑な電位であり、負極の酸化還元電位よりも貴な電位である。
上述したように、リチウムイオン電池にて、LiTFSIの濃度を高くすることで、水の電気分解時の電位窓が3Vまで拡大することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、高濃度のLiTFSI電解液と併せて、Li4Ti5O12(LTO)負極等のいわゆる高電位負極を用いた場合には、負極由来の酸化電流が得られない(後述する比較例1参照)。これは、負極が表面積の大きい細孔構造をとるため、電解液の拡散が不十分なものとなる結果、負極表面におけるSEI被膜が十分に形成されなかったためと考えられる。そこで、電位保持工程を実施し、負極の電位を上記特定の電位において保持することにより、SEI被膜を十分に形成でき、充放電可能な二次電池が得られる。
負極電位を負極の酸化還元電位よりも貴な電位に保持する理由は、負極電位を負極酸化還元電位以下の電位にすると、SEI形成反応よりも、副反応であるH2Oの還元分解が進行しやすくなるためである。負極に含まれるチタン酸リチウムの酸化還元電位は約1.5V(vs. Li/Li+)である。
上記電位の範囲内であれば、SEIが酸化分解されず、かつ副反応であるH2Oの還元分解が進行しにくいという効果が得られるため、負極電位を自由に設定することができる。
また、負極電位の保持時間は1時間以上である。負極電位の保持時間を1時間未満とすると、保持時間が短すぎるため、負極表面にSEI被膜が十分に形成されない。これは、後述する図6において、放電に由来する酸化電流が確認できないことからも明らかである。
負極電位の保持時間に上限はないが、例えば、5時間以下としてもよい。
電気化学測定装置として、マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いる。このとき、恒温槽によりセル温度を調整することが好ましい。
まず、サイクリックボルタンメトリー アドバンスト(CV advanced)により、開回路電位(OCP)から卑な電位方向へ掃引し、1.7V(vs. Li/Li+)以上2.8V(vs. Li/Li+)以下の範囲内の特定の電位まで到達した後、そのまま電位を保持する。電位保持時間は1時間以上5時間以下とする。掃引速度は特に限定されない。
電位保持時間が経過した後に電位保持工程が終了し、二次電池が完成する。その後の電位の掃引は特に限定されない。例えば、電位保持工程終了後に、サイクリックボルタンメトリー(CV)により上記特定の電位よりもさらに卑な電位方向に掃引してもよいし、電位方向を反転させて貴な電位方向に掃引してもよい。
[製造例1]
(1)電解液の調製
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の濃度が21mol/kgとなるように、LiTFSI(東京化成工業社製)及び水を混合し母液を調製した。得られた母液を超音波発生器に15分間かけ、当該母液の温度を、恒温槽を用いて35℃に保つことにより、水に対するLiTFSIの溶解を促した。母液を35℃でそのまま一晩放置し、これを電解液とした。
後述する電気化学測定の3時間以上前に、当該電解液を25℃の恒温槽にて温度調整をし、そのまま後述する方法にて電極の作製及び評価用セルの組付けを行った。
活物質としてLi4Ti5O12(LTO)を、導電助剤としてアセチレンブラックを、結着剤としてPvdF#5305を、それぞれ用意した。これらの作用極用材料を、質量比で活物質:導電助剤:結着剤=85:10:5となるように混合した。混合方法の詳細は以下の通りである。まず、活物質と導電助剤を乳鉢で混合した後、結着剤を添加した。得られた混合物に対し、粘性を確認しながら分散媒(NMP)をさらに添加した。これら材料が均一になるまで混合を続けた後、自転・公転方式ミキサー(製品名:あわとり練太郎、シンキー社製)にて、回転数3,000rpmの条件下でさらに10分間混合した。
得られたスラリーを集電体(SUS316L箔、ニラコ社製)上に載せ、ドクターブレード法により塗工した。その後、60℃の乾燥機にて一晩静置して溶媒を乾燥させ、作用極が得られた。得られた作用極はφ16mmで打ち抜き、空隙率40%になるようにロールプレスした。作用極は、その容量が0.3mAh/cm2の負極容量規制となるように作製した。
活物質としてLiMn2O4(LMO)を、導電助剤としてアセチレンブラックを、結着剤としてPvdF#5305を、それぞれ用意した。
あとは、上記作用極と同様に、材料の混合、集電体への塗工、打ち抜き及びロールプレスを行って、対極が得られた。対極は、その容量が0.6mAh/cm2の負極容量規制となるように作製した。
上記電解液、作用極及び対極と併せて、参照極としてAg/AgCl電極(インターケミ社製)を準備した。これら3つの電極を、開口径φ10mmの対向セルに組み付けた。このとき、極板間距離を約9mmとした。得られたセルに上記電解液を約2cc注液することにより、製造例1の評価用セルを製造した。
製造例1の「(1)電解液の調製」に替えて、以下の方法により電解液を調製した。
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の濃度が18mol/kgとなるように、LiTFSI(東京化成工業社製)及び水を混合し母液を調製した。得られた母液に対してピロリン酸二水素ナトリウム(Na2H2P2O7、アルドリッチ社製)を飽和量まで添加した。得られた溶液を超音波発生器に15分間かけ、当該溶液の温度を、恒温槽を用いて35℃に保つことにより、水に対するLiTFSI及びNa2H2P2O7の溶解を促した。混合液を35℃でそのまま一晩放置し、これを電解液とした。
あとは、製造例1と同様に「(2)作用極の作製」から「(4)評価用セルの組立て」までを実施することにより、製造例2の評価用セルを作製した。なお、後述する電気化学測定の3時間以上前に、電解液を25℃の恒温槽にて温度調整し、そのまま電極の塗工及び評価用セルの組立てを行った。
[実施例1]
製造例1の評価用セルについて、以下の方法により電気化学測定を実施した。電気化学測定においては、電位保持工程を実施した。
電気化学測定装置として、マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio Logic社製、型番:VMP3)を用いた。また、恒温槽(Espec社製、型番:LU−124)により評価時のセル温度を調整した。
電気化学測定の詳細は以下の通りである。サイクリックボルタンメトリー アドバンスト(CV advanced)により、開回路電位(OCP)から卑な電位方向へ掃引速度1mV/sで掃引し、−1.0V(vs. Ag/AgCl)(=2.2V(vs. Li/Li+))まで到達した後、そのまま電位を保持した(電位保持工程)。電位保持時間は1時間とした。その後、サイクリックボルタンメトリー(CV)により、掃引速度10mV/sで−1.8V(vs. Ag/AgCl)(=1.4V(vs. Li/Li+))まで掃引した後、掃引方向を貴な電位方向に反転させ、同じ掃引速度で0V(vs. Ag/AgCl)(=3.2V(vs. Li/Li+))まで掃引して、測定を終了した。
実施例1において、製造例1の評価用セルを製造例2の評価用セルに替えたこと以外は、実施例1と同様に電気化学測定を実施した。
実施例1において、電位保持時間を1時間から30分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気化学測定を実施した。
製造例2の評価用セルについて、以下の方法により電気化学測定を実施した。電気化学測定装置及び恒温槽は実施例1と同様のものを用いた。
サイクリックボルタンメトリー(CV)により、開回路電位(OCP)から卑な電位方向へ掃引速度10mV/sで掃引し、−1.8V(vs. Ag/AgCl)に到達した後、掃引方向を貴な電位方向に反転させ、同じ掃引速度で0V(vs. Ag/AgCl)まで掃引した。すなわち、比較例1においては、電位保持工程を実施しなかった。
図2は、製造例1及び製造例2の評価用セルに関するリニアスイープボルタモグラム(LSV)を重ねて示したグラフである。図3は、同様の2つの評価用セルについて、3.5V(vs. Li/Li+)を開始電圧としたLSVを重ねて示したグラフである。いずれのLSVにおいても、電位の掃引は、高電位側から低電位側へ、掃引速度1mV/sにて行った。
図2及び図3から分かるように、製造例1においては2.65V(vs. Li/Li+)、製造例2においては2.8V(vs. Li/Li+)において、それぞれ還元ピークが出現した。これらの還元ピークは、作用極表面へのSEI形成に由来すると考えられる。
比較例1のCVでは、作用極における放電反応に対応する酸化電流は観測されない。これは、電位保持工程により還元処理されていない比較例1の作用極が、表面積の大きい細孔構造を有するため、当該細孔構造中における電解液の拡散が不十分となり、その結果、SEIの形成が不十分となるためと考えられる。
これに対し、実施例2のCVにおいては、2.2V(vs. Li/Li+)において酸化波にピークが観測された。このピークは、放電に対応する酸化電流を示す。実施例2のクーロン効率は81%である。このように放電に対応する酸化電流が観測できた理由は、実施例2の二次電池が、電位保持工程において、SEI形成電位よりも卑な電位である2.2V(vs. Li/Li+)で1時間電位を保持することによって、作用極における細孔構造の表面積が小さくなるため、電解液拡散の影響を被ることなく、SEIが十分に形成されていることによると考えられる。
実施例1のCVにおいても、実施例2と同様に、2.2V(vs. Li/Li+)において酸化波にピークが観測された。このピークは、放電電流を示す。実施例1のクーロン効率は45%である。クーロン効率において実施例2の方が実施例1よりも優れる理由は、添加したピロリン酸二水素ナトリウムが電極の耐電圧性を向上することによって、還元反応時(すなわち、充電時)に電解液が分解する副反応を抑えるためであると考えられる。
図6の酸化波の−0.9V(vs. Ag/AgCl)のピークは、図5の実施例1の酸化波の2.2V(vs. Li/Li+)のピークに対応する。これら2つの図を比較すると分かるように、実施例1においては明確に確認できた放電の酸化電流ピーク(図5)が、参考例1においてはほぼ消失している(図6)。この結果は、電位保持工程の時間を1時間(実施例1)から30分間(参考例1)に変更すると、負極表面にSEI被膜が十分に形成されないことを意味するものと考える。
したがって、電位保持工程には、少なくとも30分を超える時間が必要であり、具体的には1時間以上が必要であると考えられる。
2 正極
3 電解液
100 二次電池
Claims (2)
- 二次電池の製造方法であって、
チタン酸リチウムを含有する負極、正極、及びイミド酸化合物のリチウム塩及び水を含有する水系電解液を用いて電池を組み立てる組立工程と、
前記組立工程により得られる電池の負極電位を、水系電解液における固体電解質界面形成電位よりも卑な電位であり、かつ負極の酸化還元電位よりも貴な電位で、1時間以上保持する電位保持工程と、
を有することを特徴とする、二次電池の製造方法。 - 前記水系電解液中の前記イミド酸化合物のリチウム塩の濃度が18mol/kg以上21mol/kg以下である、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
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