JPWO2017163507A1 - 積層型熱電変換素子 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、直接法に使用される素子として熱電変換素子が知られている。
その理由として、絶縁材料とn型半導体材料に共通の元素としてZrが含まれていることが推測される。絶縁材料とn型半導体材料に共通の元素が含まれると、異種材料間の接合性がよくなる。加えて、Zrは半導体特性を著しく低下させず絶縁層とn型層の焼結挙動を合わせることができるため、焼結による絶縁層とn型層の収縮率が高くなる。その結果、積層型熱電変換素子の密度が高くなるので発電能力が向上すると考えられる。
Ni及びMoを含む合金であることにより、n型層及び絶縁層との一体焼結時における焼結性が向上する。
また、上記p型層に含まれる、n型半導体として使用される上記材料にはZrが含まれることが好ましい。
p型層がn型半導体として使用される材料を含有していると、p型層とn型層の焼結挙動が近くなりやすいため好ましい。
特に、p型層にZrが含まれるとn型層、絶縁層、p型層のいずれにもZrが含まれることとなり3つの層の焼結挙動を合わせることができる。
p型層がn型層に含まれるn型半導体材料と同じ組成の上記n型半導体材料を含有していると、n型層、絶縁層、p型層のいずれにもZrが含まれることとなり3つの層の焼結挙動を合わせることができる。また、p型層にn型半導体材料を含有させる場合にn型層に含まれるn型半導体材料と同じ組成の材料を含有させるとn型層とp型層の焼結挙動がより近くなる。その結果、焼結による絶縁層、n型層、p型層の収縮率がいずれも高くなって積層型熱電変換素子の密度がより高くなるので発電能力をより向上させることができる。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
図1は、本発明の積層型熱電変換素子の一例を模式的に示す斜視図である。
本発明の積層型熱電変換素子1においては、p型半導体材料を含むp型層11と、n型半導体材料を含むn型層12とがpn接合対10を形成しており、pn接合対10が繰り返し配置されてなる。熱電変換素子におけるpn接合対10の配置方向の両末端は同じ導電型の層であることが好ましい。図1に示す積層型熱電変換素子1では積層型熱電変換素子1の両末端をn型層12としている。積層型熱電変換素子1の両末端であるn型層12における配置方向の面のうち露出面には、それぞれ電力取り出し用の電極14が設けられている。図1には図面手前側の電極のみを示している。
p型層11とn型層12の接合面では、その一部の領域においてp型半導体材料とn型半導体材料とが直接接合しており、他の領域においてはp型半導体材料とn型半導体材料とが絶縁層13を介して接合している。
n型半導体材料は、Sr、Ti、Zr、希土類元素及びOを含む複合酸化物である。希土類元素としてはLaを用いることが好ましい。
上記複合酸化物としては、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)のSrサイト及びTiサイトがLa及びZrで置換された材料が挙げられる。組成式としては(Sr1−xLax)(Ti1−yZry)O3の組成式(xとyはいずれも0より大きく1未満の数)で表される材料となる。上記組成式において、SrとLaとのモル量の合計を(Sr+La)、TiとZrとのモル量の合計を(Ti+Zr)としたとき、(Sr+La)/(Ti+Zr)で表される比はどのような比であってもよい。
なお、希土類元素としてLa以外の元素を用いた場合は上記組成式のLaの部分を他の希土類元素に置き換えたものとなる。
また、Zrは複合酸化物中にTiサイトを置換する形で存在していなくともよく、別途添加された形態のものであってもよい。
なお、n型層にはn型半導体材料以外の成分が含まれていてもよい。
Zr/(Ti+Zr)>0.1の場合、すなわちZrの量が多過ぎる場合は複合酸化物の焼結が抑制され、熱電変換材料の発電特性が低下する。また、層間で剥離が生じやすくなる。
なお、n型半導体材料の製造過程で、粉砕メディアとしてPSZ(部分安定化ジルコニア)を使用してもよいが、粉砕メディアとしてのPSZからn型半導体材料へのZrの混入量は極めて少なく、無視しうる量である。つまり、粉砕メディアとしてPSZを使用しただけでZrを含む化合物を加えないプロセスではZr/(Ti+Zr)で表されるモル比が0.0001≦Zr/(Ti+Zr)の規定を満たすことは考えられない。
また、Ni及びMoを含む合金であることが好ましい。また、Moの代わりにCr又はWを含む合金であってもよい。
p型層に含まれる、n型半導体として使用される材料の割合は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
p型層に含まれる、n型層に含まれるn型半導体材料と同じ組成のn型半導体材料の割合は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
絶縁材料中、M/(ZrO2+M)で表されるモル比が0.026≦M/(ZrO2+M)≦0.040の範囲に定められている。このモル比はZrO2と金属酸化物Mとのモル量の合計に対する金属酸化物Mのモル量の割合である。このモル比を満たすことによって、絶縁材料とn型半導体材料に共通の元素であるZrが絶縁材料中に好適な量で含まれることになるため、発電能力が向上する。
本発明の積層型熱電変換素子に含まれる絶縁材料中の、M/(ZrO2+M)で表されるモル比の測定はICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析法)を用いて行うことができる。
この場合、Y2O3/(ZrO2+Y2O3)で表されるモル比が0.026≦Y2O3/(ZrO2+Y2O3)≦0.040を満足することとなる。このモル比はZrO2とY2O3とのモル量の合計に対するY2O3のモル量の割合である。
以下、本発明の積層型熱電変換素子の製造方法の一例について説明する。
本発明の積層型熱電変換素子は、p型半導体材料、n型半導体材料、絶縁材料を準備し、本発明の積層型熱電変換素子の構造になるように各材料を積層して積層体を作製し、積層体を焼成することにより得ることができる。以下、本発明の積層型熱電変換素子の製造方法の一例について具体的に説明する。
p型半導体材料としては、Ni粉末及びMo粉末等の他の金属粉末を準備し、秤量する。
n型半導体材料の原料としては、焼成によりSr、Ti、Zr、希土類元素及びOを含む複合酸化物となる原料を準備し、秤量する。
例えば、Sr、Ti、Zr又は希土類元素を含む酸化物、炭酸塩、水酸化物、アルコキシド、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
これら中でも、SrCO3などのSr化合物、TiO2などのTi化合物、ZrO2などのZr化合物及び希土類元素の化合物(La2O3等)を含む粉末を好適に使用することができる。
p型半導体材料としての金属粉末、n型半導体材料の原料としての粉末の粒子径は特に限定されるものではないが、後の工程で均一に混合するのに適した粒子径であることが好ましい。
得られたスラリーをドクターブレード法、コンマコート等のシート成形法を用いてシート状に成形してn型層を形成するためのn型材料シートとする。ここでスラリーを得るために使用する溶媒としてはエキネン(商品名:エタノールを主剤とする混合溶剤)、トルエン等を用いることが好ましい。粉砕メディアとしてはジルコニアボールを用いることが好ましい。
p型層にn型半導体材料を含有させる場合は、ボールミルを用いた混合の際に、上記工程で仮焼後に得られたn型半導体材料をp型半導体材料に混合すればよい。また、上記工程で得られたn型半導体材料とは異なる、n型半導体として使用される任意の材料をp型半導体材料に混合してもよい。ここでスラリーを得るために使用する溶媒及び粉砕メディアとしては、n型材料シートを形成するためのスラリーを得るために使用したものと同様のものを用いることが好ましい。
部分安定化ジルコニア粉末にワニス及び溶剤を混合し、ロール機を用いて混錬して絶縁ペーストを得る。
例えば、絶縁ペーストを印刷したp型材料シート、絶縁ペーストを印刷したn型材料シート、絶縁ペーストを印刷していないn型材料シート、絶縁ペーストを印刷したp型材料シート、・・・の順に積層するようにしてもよい。絶縁ペーストを印刷していないn型材料シート又はp型材料シートを用いることで、積層型熱電変換素子における各p型層又はn型層の厚さを調整することができる。
積層体における各層の厚さ及び積層枚数(pn接合対の数)は、積層型熱電変換素子により得たい起電力及び電流、並びに、使用する負荷の抵抗によって決定することが好ましい。
切断した成形体を脱脂し、焼成を行うことで焼成体を得る。
積層体の圧着方法としては特に限定されるものではないが、等方静水圧プレス(CIP)法を好ましく用いることができる。焼成方法としてはホットプレス、SPS焼結(放電プラズマ焼結)、HIP(熱間等方圧加圧)焼結等の方法を用いることができる。また、焼成温度は1200℃以上、1400℃以下とすることが好ましい。焼成雰囲気としては、p型半導体材料であるNiを含む合金が酸化しない条件であることが好ましく、低酸素雰囲気であることが好ましい。低酸素雰囲気における酸素分圧は10−15MPa以上、10−10MPa以下とすることが好ましい。
また、得られた焼成体に研磨を行うことも好ましい。
(実施例1)
p型半導体材料の出発原料として、金属Ni粉末、金属Mo粉末、n型半導体材料の出発原料として、La2O3、SrCO3、TiO2、ZrO2を使用した。これらの出発原料を表1の組成となるように秤量した。
得られたn型半導体材料の粉末にトルエン、エキネン、バインダ等を添加してさらに混合し、得られたスラリーをコンマコーターでシート状に成形を行ってn型材料シートを得た。
作製した積層体を等方静水圧プレス法にて圧着して成形体を得た。
続いて、成形体を所定の大きさにダイシングソーで切断した。切断した成形体の大きさ(縦・横・厚み)を測定し、焼成前の素子の大きさとして記録した。得られた成形体の両末端に電極となる導電性ペーストを印刷した。成形体について大気中で脱脂を行った。その後、酸素分圧10−15MPa以上、10−10MPa以下の還元雰囲気中1200℃以上、1400℃以下の温度で焼成を行い、焼成体を得た。さらに焼成体の研磨を行い積層型熱電変換素子を作製した。
n型半導体材料及び絶縁材料の組成を表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして積層型熱電変換素子を作製した。
各実施例及び各比較例において、各実施例及び各比較例で使用したn型半導体材料と同じn型半導体材料をp型半導体材料に混合してp型材料シートの作製に使用した。
また、焼成前の素子の大きさも記録した。
(実施例17)
絶縁材料をCaO−ZrO2に変更した他は実施例3と同様にして積層型熱電変換素子を作製した。また、焼成前の素子の大きさも記録した。組成を表2に示した。
各実施例及び各比較例で製造した積層型熱電変換素子につき、焼成後の素子の大きさ(縦・横・厚み)を測定した。焼成後の素子の大きさは電極形成前の素子の大きさとした。
「収縮率(%)=100−(焼成後の素子の大きさ/焼成前の素子の大きさ)×100」を縦・横・厚みのそれぞれにつき計算して各方向の収縮率を算出した。3つの方向の収縮率の値の平均値を算出し、素子の収縮率とした。素子の収縮率を表3に示した。
各実施例及び各比較例で製造した積層型熱電変換素子について、下端(低温側)の温度をペルチェ素子を用いて20℃(ペルチェ素子の設定温度)に調整し、上端(高温側)の温度をヒータを用いて30℃(ヒータの設定温度)に調整して配置した。
電流発生機で電流を変化させ、素子の電圧値を測定することにより、出力が最大となる値を測定した。積層型熱電変換素子の上面30℃、下面20℃の温度差をつけた際の発電特性を表3に示した。
実施例2の積層型熱電変換素子について、積層型熱電変換素子の上面30℃、下面20℃の温度差をつけた際の電流−電圧特性、電流−発電特性を図2に示す。図2で上に凸になっている曲線が電流−発電特性であり、この曲線の頂点部分の電力(μW)を、出力が最大になる発電量とした。また、剥がれは目視によって確認した。
収縮率について、本発明の規定を満たす各実施例の積層型熱電変換素子は収縮率がいずれも高くなっているのに対し、本発明の規定を満たさない各比較例の積層型熱電変換素子は収縮率がいずれも低くなっていた。また、剥がれが発生していた比較例もあり、焼成工程において収縮が上手くできていない例であると考えられた。
このように、本発明の規定を満たす各実施例の積層型熱電変換素子は高い発電能力を有しており、その高い発電能力は、焼成工程において収縮率が高くなり積層型熱電変換素子の密度が高くなることに起因するものと推測された。
10 pn接合対
11 p型層
12 n型層
13 絶縁層
14 電極
Claims (7)
- p型半導体材料を含むp型層と、n型半導体材料を含むn型層と、絶縁材料を含む絶縁層とを備えた積層型熱電変換素子であって、
前記p型層と前記n型層とが接合することによりpn接合対が形成されており、前記p型層と前記n型層との接合面の一部の領域においては、前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とが直接接合し、前記接合面の他の領域においては、前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とが、前記絶縁層を介して接合し、
前記p型半導体材料は、Niを含む合金であり、
前記n型半導体材料は、Sr、Ti、Zr、希土類元素及びOを含む複合酸化物であり、かつ、Zr/(Ti+Zr)で表されるモル比が0.0001≦Zr/(Ti+Zr)≦0.1であり、
前記絶縁材料は、Y2O3及びCaOからなる群から選択された少なくとも1種の金属酸化物Mと、ZrO2とを含む部分安定化ジルコニアであり、かつ、M/(ZrO2+M)で表されるモル比が0.026≦M/(ZrO2+M)≦0.040であることを特徴とする積層型熱電変換素子。 - 前記絶縁材料に含まれる前記金属酸化物MがY2O3である請求項1に記載の積層型熱電変換素子。
- 前記p型半導体材料は、Ni及びMoを含む合金である請求項1又は2に記載の積層型熱電変換素子。
- 前記n型半導体材料に含まれる希土類元素がLaである請求項1〜3のいずれかに記載の積層型熱電変換素子。
- 前記p型層は、n型半導体として使用される材料をさらに含有する請求項1〜4のいずれかに記載の積層型熱電変換素子。
- 前記p型層に含まれる、n型半導体として使用される前記材料にはZrが含まれる請求項5に記載の積層型熱電変換素子。
- 前記p型層は、前記n型層に含まれるn型半導体材料と同じ組成の前記n型半導体材料をさらに含有する請求項1〜4のいずれかに記載の積層型熱電変換素子。
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