JPWO2016203915A1 - 透明スクリーンおよびそれを備えた映像投影システム - Google Patents

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Abstract

【課題】光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性と透過光の視認性とを両立できる透明スクリーンの提供。【解決手段】本発明による透明スクリーンは、バインダと、微粒子とを含む光拡散層を備えた透明スクリーンであって、前記透明スクリーンは、変角分光光度計で測定したXYZ表色系におけるYを輝度としたときの散乱光輝度プロファイルが、下記の条件A〜C:A:入射光輝度を100としたとき、0°方向の出射光相対輝度が50以上95以下である、B:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1以下である、C:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005以上である、を満たすことを特徴とする。

Description

本発明は、光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性と透過光の視認性とを両立できる透明スクリーンに関する。また、当該透明スクリーンと、投射装置とを備える映像投影システムにも関する。
従来、プロジェクター用スクリーンとして、フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとを組み合わせたものが用いられてきた。近年、デパート等のショウウィンドウやイベントスペースの透明パーティション等にその透明性を維持したまま商品情報や広告等を投射表示する要望が高まってきている。また、将来的には、ヘッドアップディスプレイやウェアラブルディスプレイ等に用いられる透明性の高い投射型映像表示スクリーンの需要は、ますます高まると言われている。
しかし、従来のプロジェクター用スクリーンは透明性が低いため、透明パーティション等に適用できないという技術的課題があった。そこで、プロジェクター用スクリーンとして、表面に凹部を有するスクリーンが提案されている(特許文献1参照)。また、曝射法で得られたグラファイト相を有するナノダイヤモンドを酸化処理して得られたメジアン径0.01〜1μmのダイヤモンド微粒子を含む透明薄膜層を備えた透過型スクリーンが提案されている(特許文献2参照)。さらに、熱可塑性樹脂を含むマトリックス相および分散相からなる高分子フィルムからなる高透明反射型スクリーン用フィルムが提案されている(特許文献3参照)。
また、透過型スクリーンや反射型スクリーン等の各種スクリーンの表面への映り込みを防止するために、黒色微粒子と透明バインダとからなる防眩層を有する防眩性部材をスクリーンの表面に配置することが提案されている(特許文献4参照)。さらに、コントラストの低下を防止するために、集光レンズが設けられた透過型スクリーンを提供することが提案されている(特許文献5)。さらにまた、基板と、光吸収層と、光学多層膜と、光拡散層とが順に設けられた反射型スクリーンを提供することが提案されている(特許文献6参照)。
特開2006−146019号公報 特開2011−113068号公報 特開2008−112040号公報 特許第4571691号公報 特開2007−240686号公報 特開2005−99675号公報
しかしながら、本発明者らは、特許文献1〜6には、以下の技術的課題が存在することを知見した。特許文献1に記載のスクリーンは、ショウウィンドウやイベントスペースの透明パーティション等に適用した場合、使用にともなって当該凹凸部が擦り減るため、長期間性能を維持できないという技術的課題がある。また、光拡散粒子径が1〜20μmの大きさであるためフィルムが白濁し透明性が損なわれるという技術的課題もある。特許文献2に記載の透明スクリーンに用いるナノダイヤモンド粒子は、処理工程が多く、生産効率や生産コストに劣るという技術的課題がある。特許文献3に記載のスクリーンは、屈折率の異方性を発現させるため、少なくとも1方向に延伸を行うことで得られる。しかし、屈折率の異方性を出すための延伸では、延伸方向に垂直な方向の特性が不均一になる場合があるという技術的課題があり、さらなる改良が望まれている。特許文献4に記載のスクリーンは、平均粒径1〜6μmのカーボンブラック等の黒色微粒子を含む防眩性部材を備えているため、透明性に劣り、スクリーンがカーボンブラックの影響で灰色がかるという技術的課題がある。特許文献5に記載の透過型スクリーンは、集光レンズを備えるため、透明性が著しく損なわれるという技術的課題がある。特許文献6に記載の反射型スクリーンは、フッ素系樹脂からなる低屈折率層と金属酸化物を含む高屈折率層が積層された光学多層膜を備えており、これらの層界面で光が反射し、透明性が損なわれるという技術的課題がある。
本発明は上記の技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性と透過光の視認性とを両立できる透明スクリーンを提供することにある。また、本発明の目的は、該透明スクリーンを備えた映像投影システムを提供することにある。
本発明者らは、上記の技術的課題を解決するため、鋭意検討した結果、透明スクリーンの散乱光輝度プロファイルが特定の条件を満たすことによって、上記の技術的課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明の一態様によれば、
バインダと、微粒子とを含む光拡散層を備えた透明スクリーンであって、
前記透明スクリーンは、変角分光光度計で測定したXYZ表色系におけるYを輝度としたときの散乱光輝度プロファイルが、下記の条件A〜C:
A:入射光輝度を100としたとき、0°方向の出射光相対輝度が50以上95以下である、
B:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1以下である、
C:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005以上である、
を満たすことを特徴とする、透明スクリーンが提供される。
本発明の態様においては、前記光拡散層の厚さをt(μm)とし、前記バインダに対する前記微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、tとcが、下記数式(I):
0.05≦(t×c)≦50 ・・・(I)
を満たすことが好ましい。
本発明の態様においては、前記微粒子が光散乱微粒子または光反射微粒子であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記光散乱微粒子の一次粒子が、0.1〜2500nmのメジアン径を有することが好ましい。
本発明の態様においては、前記バインダの屈折率nと前記光散乱微粒子の屈折率nとの差の絶対値が0.1以上であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記光散乱微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、架橋アクリル樹脂、スチレン樹脂、およびシリカからなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記光反射微粒子が、光輝性薄片状微粒子であり、平均アスペクト比が3〜800であり、かつ正反射率が12〜100%であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記光輝性薄片状微粒子が、アルミニウム、銀、白金、金、チタン、ニッケル、スズ、スズ−コバルト合金、インジウム、クロム、酸化チタン、酸化アルミニウム、および硫化亜鉛からなる群から選択される金属系粒子、ガラスに金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料、または天然雲母もしくは合成雲母に金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記バインダが、有機系バインダまたは無機系バインダであることが好ましい。
本発明の態様においては、前記有機系バインダが、熱可塑性樹脂または自己架橋性樹脂であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、上記の透明スクリーンを備えた、車両用部材が提供される。
本発明の別の態様によれば、上記の透明スクリーンを備えた、建物用部材が提供される。
本発明の別の態様においては、上記の透明スクリーンと、透明スクリーンのスクリーン面の法線方向に対して±10°以上の角度から画像を投影する投射装置とを備えた、映像投影システムが提供される。
本発明によれば、光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性と透過光の視認性とを両立できる透明スクリーンを提供することができる。このような透明スクリーンは、特に短焦点型プロジェクター用透明スクリーンとして好適に用いることができる。
本発明による透明スクリーンの一実施形態の厚さ方向の断面図である。 本発明による透明スクリーンの一実施形態の厚さ方向の断面図である。 本発明による映像投影システムの一実施形態を示した模式図である。 散乱光輝度プロファイルの測定条件の概略図である。 実施例1の散乱光輝度プロファイルを示した図である。 比較例1の散乱光輝度プロファイルを示した図である。
<透明スクリーン>
本発明による透明スクリーンは、樹脂と、微粒子とを含む光拡散層を備えるものである。当該透明スクリーンは、光拡散層のみからなる単層構成であってもよいし、保護層、基材層、粘着層、および反射防止層等の他の層をさらに備える複層構成の積層体であってもよい。また、当該透明スクリーンは、ガラスや透明パーティション等の支持体を備えてもよい。当該透明スクリーンは、光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性と透過光の視認性とを両立できる。当該透明スクリーンは、ガラスウィンドウ、ヘッドアップディスプレイ、およびウェアラブルディスプレイ等に好適に用いることができ、特に短焦点型プロジェクター用透明スクリーンとして好適に用いることができる。さらに、本発明による透明フィルムは、車両用部材や建物用部材にも好適に用いることができる。なお、本発明において、「透明」とは、用途に応じた透過視認性を実現できる程度の透明性があれば良く、半透明であることも含まれる。
当該透明スクリーンは、変角分光光度計で測定したXYZ表色系におけるYを輝度としたときの散乱光輝度プロファイルが、下記の条件A〜C:
A:入射光輝度を100としたとき、0°方向の出射光相対輝度が、50以上95以下であり、好ましくは55以上90以下であり、さらに好ましくは60以上85以下である、
B:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1以下であり、好ましくは0.04以上1.0以下であり、さらに好ましくは0.06以上0.9以下であり、さらにより好ましくは0.075以上0.5以下である、
C:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005以上であり、好ましくは0.0007以上0.20以下であり、さらに好ましくは0.0009以上0.1以下であり、さらにより好ましくは0.001以上0.05以下である、
を満たす。条件Aを満たすことで、スクリーンの透明性が高くなる。条件Bを満たすことで、濁りが非常に少なくなる。人間の目は、透過光が数度低角に拡散しても濁りと認識するため、低角の散乱輝度は小さい方が良い。一方、プロジェクター光源が眩しいため、このような低角方向から投影画像を観るようなプロジェクターの配置は行わないのが通常であり、投影画像を鮮明に投影するという観点でも低角の散乱輝度は不要である。また、条件Cを満たすことで、プロジェクター投影画像をスクリーンに鮮明に映すことができる。投影像をはっきり表示するためには広角の散乱光輝度が必要である。すなわち、条件A〜Cを全て満たすことで、スクリーンの透明性が高いため透過光の視認性に優れ、かつスクリーンに鮮明な映像を表示することができる。また、このスクリーン面の法線方向に対して±10°以上の角度から画像を投影する投射装置を配置することで、スクリーンの背景と投影像を同時に視認可能な映像投影システムを提供することができる。
透明スクリーンは、背面投射型スクリーン(透過型スクリーン)でもよく、前面投射型スクリーン(反射型スクリーン)でもよい。すなわち、本発明による透明スクリーンを備える映像表示装置においては、投射装置(光源)の位置がスクリーンに対して観察者側にあってもよく、観察者と反対側にあってもよい。また、透明スクリーンは、平面であってもよく、曲面であってもよい。
当該透明スクリーンは、ヘイズ値が、好ましくは50%以下、より好ましくは1%以上40%以下であり、より好ましくは1.3%以上30%以下であり、さらにより好ましくは1.5%以上20%以下である。全光線透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは85%以上である。また、当該透明積層体は、拡散透過率が、好ましくは1.5%以上60%以下、より好ましくは1.7%以上55%以下であり、より好ましくは1.9%以上50%以下であり、さらにより好ましくは2.0%以上45%以下である。ヘイズ値、および全光線透過率が上記範囲内であれば、透明性が高く、透過視認性をより向上させることができ、拡散透過率が上記範囲内であれば、入射光を効率よく拡散させ、視野角をより向上させることができるため、スクリーンとしての性能に優れる。なお、本発明において、透明スクリーンのヘイズ値、全光線透過率および拡散透過率は、濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用いてJIS−K−7361およびJIS−K−7136に準拠して測定することができる。
当該透明スクリーンは、写像性が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。当該透明スクリーンの写像性が上記範囲内であれば、透明スクリーンを透過して見える像が極めて鮮明となる。なお、本発明において、写像性とは、JIS K7374に準拠して、光学くし幅0.125mmで測定した時の像鮮明度(%)の値である。
本発明による透明スクリーンの一実施形態の厚さ方向の模式図を図1に示す。透明スクリーン10は、バインダ12と、バインダ12中に分散した微粒子13とを含む光拡散層11とを備える。また、複層構成の透明スクリーンの一実施形態の厚さ方向の断面図を図2に示す。透明スクリーン20は、基材層23の一方の面に、光拡散層21が積層され、光拡散層21に保護層22がさらに積層されている。また、基材層23の他方の面(光拡散層21と反対側の面)に粘着層24が積層されている。以下、透明スクリーンの各構成について、詳述する。
(光拡散層)
光拡散層は、バインダと、微粒子とを含んでなる。微粒子としては下記の光散乱微粒子または光輝性薄片状微粒子を好適に用いることができる。このような微粒子を用いることで、光拡散層内で光を異方的に散乱反射させて、光の利用効率を高めることができる。
光拡散層は、厚さをt(μm)とし、前記バインダに対する前記微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、tとcが、下記数式(I):
0.05≦(t×c)≦50 ・・・(I)
を満たすことが好ましく、
0.1≦(t×c)≦40 ・・・(I−2)
を満たすことがより好ましく、
0.15≦(t×c)≦35 ・・・(I−3)
を満たすことがさらに好ましく、
0.3≦(t×c)≦30 ・・・(I−4)
を満たすことがさらにより好ましい。光拡散層の厚さtと濃度cが上記の数式(I)を満たす場合、スクリーンの光拡散層のバインダ中の微粒子の分散状態が疎である(バインダ中の微粒子の濃度が低い)ため、真直ぐに透過する光の割合を増やし(微粒子に衝突しない光の割合を増やし)、その結果、透過光の視認性を損なわずに、スクリーンに鮮明な映像を表示することができる。
光拡散層の厚さは、特に限定されるものではないが、用途、生産性、取扱い性、および搬送性の観点から、好ましくは0.1μm〜20mmであり、より好ましくは0.2μm〜15mmであり、さらに好ましくは1μm〜10mmである。光拡散層の厚さが上記範囲内であれば、スクリーンとしての強度を保ち易い。光拡散層は、樹脂成型体であってもよく、ガラスや樹脂等からなる基板に形成した塗膜であってもよい。光拡散層は単層構成であってもよく、塗布等で2種以上の層を積層させる、または2種以上の光拡散層を粘着剤等で貼り合わせた複層構成であってもよい。
光拡散層は、透明性の高いフィルムを得るために、透明性の高い有機系バインダまたは無機系バインダを用いることが好ましい。透明性の高い有機系バインダとしては、樹脂、例えば、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂および、電離放射線硬化性樹脂等の自己架橋性樹脂を用いることができる。透明性の高い樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂等が挙げられる。
透明性の高い熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、およびポリスチレン系樹脂を用いることが好ましく、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスチレン樹脂を用いることがより好ましい。これらの樹脂は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
透明性の高い電離放射線硬化型樹脂としては、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマー及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが好ましい。また、電離放射線硬化型樹脂は熱可塑性樹脂および溶剤と混合されたものであってもよい。電離放射線硬化型樹脂としては市販品を用いることができ、例えば、DIC(株)製ウレタンアクリレート型UV硬化性樹脂(商品名:ユニディックV−4018)等を使用することができる。
透明性の高い熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましい。
透明性の高い無機系バインダとしては、例えば、水ガラス、低軟化点を有するガラス材料、またはゾルゲル材料を挙げることができる。水ガラスとは、アルカリ珪酸塩の濃厚水溶液をいい、アルカリ金属としては通常ナトリウムが含まれている。代表的な水ガラスは、NaO・nSiO(n:正の任意の数)により示すことができ、市販品としては富士化学(株)社製珪酸ソーダを用いることができる。
低軟化点を有するガラス材料は、軟化温度が好ましくは150〜620℃の範囲にあるガラスであり、さらに好ましくは軟化温度が200〜600℃の範囲であり、最も好ましくは軟化温度が250〜550℃の範囲である。このようなガラス材料としては、PbO−B系、PbO−B−SiO系、PbO−ZnO−B系、酸成分及び金属塩化物を含む混合物を熱処理することにより得られる鉛フリー低軟化点ガラス等を挙げることができる。低軟化点ガラス材料には、微粒子の分散性および成形性向上のために、溶剤および高沸点有機溶剤等を混合することができる。
ゾルゲル材料は、熱や光、触媒などの作用により、加水分解重縮合が進行し、硬化する化合物群である。例えば、金属アルコキシド(金属アルコラート)、金属キレート化合物、ハロゲン化金属、液状ガラス、スピンオングラス、またはこれらの反応物であり、これらに硬化を促進させる触媒を含ませたものであってもよい。また、金属アルコキシド官能基の一部にアクリル基などの光反応性の官能基を有するものであってもよい。これらは、要求される物性に応じて、単独で用いても良いし、複数種類を組み合わせて用いても良い。ゾルゲル材料の硬化体とは、ゾルゲル材料の重合反応が十分に進行した状態を指す。ゾルゲル材料は、重合反応の過程において無機基板の表面と化学的に結合して、強く接着する。そのため、硬化物層としてゾルゲル材料の硬化体を用いることで、安定した硬化物層を形成することができる。
金属アルコキシドとは、加水分解触媒などによって任意の金属種を、水や有機溶剤と反応させて得られる化合物群であり、任意の金属種と、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、イソプロピル基等の官能基とが結合した化合物群である。金属アルコキシドの金属種としては、シリコン、チタン、アルミニウム、ゲルマニウム、ボロン、ジルコニウム、タングステン、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、スズなどが挙げられる。
例えば、金属種がシリコンの金属アルコキシドとしては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジフェニルシランジオール、ジメチルシランジオールなどや、これら化合物群のエトキシ基が、メトキシ基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシ基などに置き換わった化合物群などが挙げられる。これらのなかでも、トリエトキシシラン(TEOS)、TEOSのエトキシ基をメトキシ基に置き換えたテトラメトキシシラン(TMOS)が特に好ましい。これらは単独で用いても良く、複数種類を組み合わせて用いることもできる。
(溶剤)
これらの有機系バインダ、無機系バインダは必要に応じて溶剤をさらに含むものであって良い。溶剤としては、有機溶剤に限定されず、一般の塗料組成物に用いられる溶剤が使用可能である。例えば、水をはじめとする親水性溶媒も使用可能である。また、本発明のバインダが液体である場合は溶剤を含有しなくてもよい。
本発明による溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、2硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。溶剤の添加量は、バインダや微粒子の種類や後述する製造工程に好適な粘度範囲等に応じて、適宜調節することができる。
(光散乱微粒子)
光散乱微粒子は、略球状微粒子を用いることができ、真球状粒子を含んでいてもよく、凹凸や突起のある球状粒子を含んでいてもよい。バインダの屈折率nと光散乱微粒子の屈折率nとの差の絶対値が、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.2以上である。光拡散層を形成するバインダと光散乱微粒子の屈折率の差の絶対値が0.1以上であることで、散乱光強度を向上させることができ、バインダ中の微粒子の分散状態が疎であっても(バインダ中の微粒子の濃度が低くても)、広角散乱輝度を大きくすることができる。したがって、光拡散層内で光を異方的に散乱させ、視野角を向上し、光の利用効率を向上させることができる。
高屈折率を有する光散乱微粒子としては、例えば、屈折率nが好ましくは1.80〜3.55であり、より好ましくは1.9〜3.3であり、さらに好ましくは2.0〜3.0である、金属酸化物や金属塩を微粒化した金属系粒子を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(n=2.40)、酸化亜鉛(n=2.40)、酸化チタン(n=2.72)、および酸化セリウム(n=2.20)等を挙げることができる。金属塩としては、例えば、チタン酸バリウム(n=2.40)およびチタン酸ストロンチウム(n=2.37)等を挙げることができる。また、低屈折率を有する無機系光散乱微粒子としては、例えば、屈折率nが好ましくは1.35〜1.80であり、より好ましくは1.4〜1.75であり、さらに好ましくは1.45〜1.7であり、シリカ(酸化ケイ素、n=1.45)等を微粒子化した粒子が挙げられる。さらに低屈折率を有する有機系光散乱微粒子としては、例えば、アクリル樹脂系粒子、ポリスチレン樹脂系粒子が挙げられる。これらの光散乱微粒子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光散乱微粒子の一次粒子のメジアン径は好ましくは0.1〜2500nmであり、より好ましくは0.2〜1500nmであり、さらに好ましくは0.5〜500nmである。光散乱微粒子の一次粒子のメジアン径が上記範囲内であると、透過視認性を損なわずに投影光の十分な拡散効果が得られることで、透明スクリーンに鮮明な映像を投影することができる。なお、本発明において、光散乱微粒子の一次粒子のメジアン径(D50)は、動的光散乱法により粒度分布測定装置(大塚電子(株)製、商品名:DLS−8000)を用いて測定した粒度分布から求めることができる。
光散乱微粒子の含有量は、光拡散層の厚さや光散乱微粒子の屈折率に応じて適宜調節することができる。光拡散層中の光散乱微粒子の含有量は、バインダに対して、好ましくは0.0001〜2.0質量%であり、より好ましくは0.001〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.005〜0.5質量%であり、さらにより好ましくは0.01〜0.3質量%である。光拡散層中の光散乱微粒子の含有量が上記範囲内であれば、光拡散層の透明性を確保しながら、投射装置から出射される投影光を異方的に十分に拡散させることで、拡散光の視認性と透過光の視認性とを両立することができる。
(光輝性薄片状微粒子)
光輝性薄片状微粒子としては、薄片状に加工できる光輝性材料を好適に用いることができる。光輝性薄片状微粒子の正反射率は、好ましくは12.0%以上であり、より好ましくは15.0%以上であり、さらに好ましくは20.0%以上80.0%以下である。なお、本発明において、光輝性薄片状微粒子の正反射率は、以下のようにして測定した値である。
(正反射率)
分光測色計(コニカミノルタ(株)製、品番:CM−3500dを用いて測定した。適切な溶媒(水またはメチルエチルケトン)に分散させた光輝性薄片状微粒子をスライドガラス上に膜厚が0.5mm以上になるように塗布、乾燥させた。得られた塗膜付きガラス板について、ガラス面の法線に対して45度の角度でガラス面から塗膜へ光を入射したときの正反射率を測定した。光輝性薄片状微粒子を塗膜としたときの正反射率を測定することで、微粒子表面の酸化状態等を考慮した光輝性薄片状微粒子の反射性能を把握することができる。
光輝性薄片状微粒子としては、分散させるバインダの種類にもよるが、例えば、アルミニウム、銀、白金、金、チタン、ニッケル、スズ、スズ−コバルト合金、インジウムおよびクロム等の金属系微粒子、または、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび硫化亜鉛からなる金属系微粒子、ガラスに金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料、または天然雲母や合成雲母に金属酸化物を被覆した光輝性材料を用いることができる。光輝性薄片状微粒子は、市販のものを使用してもよく、例えば、大和金属粉工業株式会社製アルミニウムパウダーを好適に使用することができる。
金属系微粒子に用いる金属材料は、投影光の反射性に優れる金属が用いられる。具体的には、金属材料は、測定波長550nmにおける反射率Rが好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、さらにより好ましくは70%以上である。以下、本発明において、「反射率R」とは、金属材料に対して光を垂直方向から入射させたときの反射率を指す。反射率Rは金属材料固有値である屈折率nと消衰係数kの値を用いて下記式(1)により算出することができる。nおよびkは、例えばHandbook of Optical Constants of Solids: Volume 1(Edward D.Palik著)や、P.B. Johnson and R.W Christy, PHYSICAL REVIEW B, Vol.6, No.12, 4370-4379(1972)等に記載されている。
R={(1−n)+k}/{(1+n)+k} 式(1)
すなわち、測定波長550nmにおける反射率R(550)は、波長550nmで測定したときのnおよびkより算出できる。金属材料は、測定波長450nmにおける反射率R(450)と、測定波長650nmにおける反射率R(650)の差の絶対値が、測定波長550nmにおける反射率R(650)に対して25%以内であり、好ましくは20%以内であり、より好ましくは15%以内であり、さらに好ましくは10%以内である。このような金属材料を用いることで、反射型透明スクリーンとして用いた場合、投影光の反射性および色再現性に優れ、スクリーンとしての性能に優れる。
金属系微粒子に用いる金属材料は、誘電率の実数項ε’が、好ましくは−60〜0であり、より好ましくは−50〜−10である。なお、誘電率の実数項ε’は、屈折率nと消衰係数kの値を用いて下記式(2)により算出することができる。
ε’=n−k 式(2)
本発明はいかなる理論にも束縛されるものではないが、金属材料の誘電率の実数項ε’が上記数値範囲を満たすことで、以下の作用が生じ、透明光散乱体が反射型透明スクリーンとして好適に使用できると考えられる。すなわち、光が金属系微粒子の中に入ると、金属系微粒子中には光による振動電界が生じるが、同時に金属系微粒子の自由電子によって逆向きの電気分極が生じ電界を遮蔽してしまう。誘電率の実数光ε’が0以下であるとき、光が完全に遮蔽され金属系微粒子の中に光が入って行けない、すなわち、表面凹凸による拡散や金属系微粒子による光の吸収が無いという理想状態を仮定すると、光は全て金属系微粒子表面で反射されることになるため、光の反射性は強い。ε’が0より大きいとき、金属系微粒子の自由電子の振動は光の振動に追随出来ないため光による振動電界を完全には打ち消すことが出来ず、光は金属系微粒子の中に入ったり、透過したりする。その結果、金属系微粒子表面で反射されるのは一部の光だけになり、光の反射性は低くなる。また、酸化物等は振動に寄与できる自由電子が少ないため光の反射性が低い。
金属材料としては、上記の反射率R、好ましくはさらに誘電率を満たす金属材料を用いたものであればよく、純金属や合金も用いることができる。純金属としてはアルミニウム、銀、白金、チタン、ニッケル、およびクロムからなる群から選択されるものが好ましい。金属系微粒子としては、これらの金属材料からなる微粒子や、これらの金属材料を樹脂、ガラス、天然雲母もしくは合成雲母等に被覆した微粒子を用いることができる。また、金属系微粒子の形状は、特に限定されず、薄片状微粒子や略球状微粒子等を用いることができる。各種の金属材料について、各測定波長における屈折率nおよび消衰係数kを表1に、その値を用いて算出した反射率Rおよびε’を表2にまとめる。
光輝性薄片状微粒子は、一次粒子の平均径が好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜80μm、さらに好ましくは0.1〜50μm、さらにより好ましくは0.5〜30μmである。さらに、光輝性薄片状微粒子は、平均アスペクト比(=光輝性薄片状微粒子の平均径/平均厚さ)が好ましくは3〜800、より好ましくは4〜700、さらに好ましくは5〜600、さらにより好ましくは10〜500である。光輝性薄片状微粒子の平均径および平均アスペクト比が上記範囲内であると、透過視認性を損なわずに投影光の十分な散乱効果が得られることで、透明スクリーンに鮮明な映像を投影することができる。なお、本発明において、光輝性薄片状微粒子の平均径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置((株)島津製作所製、品番:SALD−2300)を用いて測定した。平均アスペクト比は、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:SU−1500)画像より算出した。
光拡散層中の光輝性薄片状微粒子の含有量は、光輝性薄片状微粒子の正反射率に応じて適宜調節することができ、バインダに対して、好ましくは0.0001〜5.0質量%であり、好ましくは0.0005〜3.0質量%であり、より好ましくは0.001〜2.0質量%である。光輝性薄片状微粒子を上記範囲のように低濃度でバインダ中に分散させて光拡散層を形成することによって、光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより、投影光の視認性と透過光の視認性とを向上することができる。
光拡散層には、用途に応じて、微粒子以外にも従来公知の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、および色材等が挙げられる。色材としては、カーボンブラック、アゾ系色素、アントラキノン系色素、ペリノン系色素等の色素または染料を用いることができる。また、液晶性化合物等を混合してもよい
(基材層)
基材層は、上記の光拡散層を支持するための層であり、透明スクリーンの強度を向上させることができる。基材層は、透明スクリーンの透過視認性や所望の光学特性を損なわないような透明性の高い材料、例えばガラスまたはバインダを用いて形成することが好ましい。このようなバインダとしては、例えば、上記の光拡散層と同様の透明性の高いバインダを用いることができる。また、上記したバインダを2種以上積層した複合フィルムまたはシートを使用してもよい。なお、基材層の厚さは、その強度が適切になるように材料に応じて適宜変更することができ、例えば、10〜1000μmの範囲としてもよい。
(保護層)
保護層は、透明スクリーンの表面側(観察者側)に積層されるものであり、耐光性、耐傷性、および防汚性等の機能を付与するための層である。保護層は、透明スクリーンの透過視認性や所望の光学特性を損なわないような樹脂を用いて形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、紫外線・電子線によって硬化する樹脂、即ち、電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもの、および熱硬化型樹脂を用いることができるが、これらの中でも電離放射線硬化型樹脂が特に好ましい。
電離放射線硬化型樹脂組成物の被膜形成成分は、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマー及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
上記電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、この中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法としては、前記電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法は通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
保護層は、上記の光拡散層上に上記電離放射(紫外線)線硬化型樹脂組成物の塗工液をスピンコート、ダイコート、ディップコート、バーコート、フローコート、ロールコート、グラビアコート等の方法で、光拡散層の表面に塗布し、上記のような手段で塗工液を硬化させることにより形成することができる。また、保護層の表面には、目的に応じて、凹凸構造、プリズム構造、マイクロレンズ構造等の微細構造を付与することもできる。
(粘着層)
粘着層は、透明スクリーンにフィルムを貼付するための層である。粘着層は、透明スクリーンの透過視認性や所望の光学特性を損なわないような粘着剤組成物を用いて形成することが好ましい。粘着剤組成物としては、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系等が挙げられる。合成ゴム系の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体が挙げられる。シリコーン樹脂系の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系樹脂粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸をいう。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシルおよび(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。 また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常は、アクリル系粘着剤中に30〜99.5質量部の割合で共重合されている。
また、アクリル系樹脂粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチルおよびβ−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
アクリル系樹脂粘着剤には、上記の他に、アクリル系樹脂粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルおよびアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドおよびN−エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびビニルピリジン等のアミノ基を含有するモノマーのような官能基を有するモノマー; アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレンおよびメチルスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
アクリル系樹脂粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。エチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチルおよびフマル酸ジブチル等のα,β−不飽和二塩基酸のジエステル; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどを挙げることができる。
粘着剤組成物としては、上記したアクリル系樹脂粘着剤の他、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体であっても良い。例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。 アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェニルオキシプロピル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体が挙げられる。
粘着剤は市販のものを使用してもよく、例えば、SKダイン2094、SKダイン2147、SKダイン1811L、SKダイン1442、SKダイン1435、およびSKダイン1415(以上、綜研化学(株)製)、オリバインEG−655、およびオリバインBPS5896(以上、東洋インキ(株)製)等(以上、商品名)を好適に使用することができる。
(反射防止層)
反射防止層は、透明スクリーンの最表面での反射や、外光からの映りこみを防止するための層である。反射防止層は、透明スクリーンの表面側(観察者側)に積層されるものであってもよく、両面に積層されるものであってもよい。特に透明スクリーンとして用いる際には観察者側に積層するのが好ましい。反射防止層は、透明スクリーンの透過視認性や所望の光学特性を損なわないような樹脂を用いて形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、紫外線・電子線によって硬化する樹脂、即ち、電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもの、および熱硬化型樹脂を用いることができるが、これらの中でも電離放射線硬化型樹脂が特に好ましい。また、反射防止層の表面には、目的に応じて、凹凸構造、プリズム構造、マイクロレンズ構造等の微細構造を付与することもできる。
反射防止層の形成方法としては、特に限定されないが、コーティングフィルムの貼合、フィルム基板に直接蒸着またはスパッタリング等でドライコートする方式、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、バー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、デイップコート等のウェットコート処理などの方式を用いることができる。
(機能性層)
本発明による透明スクリーンは、上記の各層以外にも、従来公知の様々な機能性層を備えてもよい。機能性層としては、染料や着色剤等を含んだ光吸収層、プリズムシート、マイクロレンズシート、フレネルレンズシート、およびレンチキュラーレンズシート等の光拡散層、紫外線および赤外線等の光線カット層等が挙げられる。
<透明スクリーンの製造方法>
本発明による透明スクリーンの製造方法は、光拡散層を形成する工程を含むものである。光拡散層を形成する工程は、混練工程と製膜工程からなるからなる押出成形法、キャスト成膜法、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、バー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、デイップコート、噴霧等を含む塗布法、射出成型法、カレンダー成型法、ブロー成型法、圧縮成型法、セルキャスト法など公知の方法により成型加工でき、成膜可能な膜厚範囲の広さから、押出成型法、射出成型法を好適に用いることができる。以下、透明スクリーンの製造方法の一例として、押出成型法の各工程について詳述する。
(混練工程)
混練工程は、押出機を用いて透明光散乱層を形成する工程である。押出機としては単軸または二軸混練押出機を用いることができ、二軸混錬押出機を用いる場合は、二軸混錬押出機のスクリュー全長にわたる平均値として、3〜1800KPa、好ましくは6〜1400KPaのせん断応力をかけながら樹脂と微粒子とを混錬して、樹脂組成物を得る工程である。せん断応力が上記範囲内であれば、微粒子を樹脂中に十分に分散させることができる。特に、せん断応力が3KPa以上であれば、微粒子の分散均一性をより向上させることができ、1800KPa以下であれば、樹脂の分解を防ぎ、フィルム内に気泡が混入するのを防止することができる。せん断応力は、二軸混錬押出機を調節することで、所望の範囲に設定することができる。本発明においては、微粒子を予め添加した樹脂(マスターバッチ)と、微粒子を添加していない樹脂とを混合したものを、二軸混錬押出機を用いて混練して、樹脂組成物を得てもよい。上記は混練工程の一例であり、単軸混練押出機を用いて微粒子を予め添加した樹脂(マスターバッチ)を作製しても良く、得られたマスターバッチから透明光散乱層を作製しても良く、マスターバッチ時に一般的に知られている分散剤を添加しても良い。
混練工程は、混合器を用いて樹脂と微粒子とを十分均一に混合した微粒子付着樹脂組成物を得た後、単軸または二軸混錬押出機を用いて該微粒子付着樹脂組成物と樹脂とを混練して、微粒子分散樹脂組成物を得ることもできる。混合器としては(株)加藤理機製作所製のKRTシリーズなどの容器回転式混合器や(株)徳寿工作所製のリボン型混合器などの回転羽根式混合器を用いることができる。このような混合器により十分に混合した樹脂組成物であれば大きな微粒子凝集体の発生を抑えることができ、単軸押出機を用いることができる。単軸混錬押出機のスクリュー形状とせん断応力は特に限定されず、フルフライトと呼ばれる全長が搬送エレメントのスクリューや、一部混練エレメントとを含むスクリューを用いることもできる。本発明においては、微粒子を予め添加した樹脂(マスターバッチ)と、微粒子を添加していない樹脂とを混合したものを、単軸混錬押出機を用いて混練して、樹脂組成物を得てもよい。また、一般的に用いられる分散剤を使用しても良い。なお、混練工程に用いる単軸混錬押出機は、シリンダー内に1本のスクリューが挿入されたものであり、スクリューの形状は特に限定されない。
樹脂組成物には、樹脂と微粒子以外にも、透明スクリーンの透過視認性や所望の光学性能を損なわない範囲で、従来公知の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、および安定剤等が挙げられる。なお、樹脂と微粒子は、上記で説明したとおりである。
混練工程に用いる二軸混錬押出機は、シリンダー内に2本のスクリューが挿入されたものであり、スクリューエレメントを組み合わせて構成される。スクリューは、少なくとも、搬送エレメントと、混練エレメントとを含むフライトスクリューを好適に用いることができる。混練エレメントは、ニーディングエレメント、ミキシングエレメント、およびロータリーエレメントからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような混練エレメントを含むフライトスクリューを用いることで、所望のせん断応力をかけながら、微粒子を樹脂中に十分に分散させることができる。
(製膜工程)
製膜工程は、混練工程で得られた樹脂組成物を製膜する工程である。製膜方法は、特に限定されず、従来公知の方法により、樹脂組成物からなるフィルムを製膜することができる。例えば、混練工程で得られた樹脂組成物を、融点以上の温度(Tm〜Tm+70℃)に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融する。溶融押出機としては、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
続いて、溶融した樹脂組成物を、例えばTダイ等のダイによりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。なお、上記の混練工程と連続して製膜工程を行う場合には、混練工程で得られた樹脂組成物を溶融状態のまま直接、ダイによりシート状に押出して、フィルムを成形することもできる。
製膜工程により得られたフィルムは、従来公知の方法により、さらに一軸延伸または二軸延伸してもよい。フィルムを延伸することで、フィルムの強度を向上させることができる。
(積層工程)
積層工程は、製膜工程で得られた樹脂フィルム(光拡散層)に、基材層、保護層、および粘着層等をさらに積層する工程である。各層の積層方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。各層をドライラミネートにより積層する場合には、透明スクリーンの透過視認性や所望の光学特性を損なわない範囲で接着剤等を使用してもよい。
<車両用部材>
本発明による車両用部材は、上記の透明スクリーンを備えてなる。車両用部材としては、フロントガラスやサイドガラス等が挙げられる。車両用部材は上記の透明スクリーンを備えることで、別途のスクリーンを設けなくても、車両用部材上に鮮明な画像を表示させることができる。
<建物用部材>
本発明による建物用部材は、上記の透明スクリーンを備えてなる。建物用部材としては、住宅の窓ガラス、コンビニや路面店のガラス壁等を挙げることができる。建物用部材は上記の透明スクリーンを備えることで、別途のスクリーンを設けなくても、建物用部材上に鮮明な画像を表示させることができる。
<映像投影システム>
本発明による映像投影システムは、上記の透明スクリーンと、透明スクリーンのスクリーン面の法線方向に対して±10°以上、好ましくは±15〜70°の角度から画像を投影する投射装置とを備えてなる。投射装置とは、スクリーン上に映像を投射できるものであれば特に限定されず、例えば、市販のリアプロジェクタやフロントプロジェクタを用いることができる。
本発明による透明スクリーンおよび映像投影システムの一実施形態の模式図を図3に示す。透明スクリーン31は、透明パーティション32の観察者33側に配置されている。透明スクリーン31は、透明パーティション32に貼付するために、粘着層を含むことが好ましい。透明スクリーン31が背面投射型スクリーンである場合、映像投影システムは、透明スクリーン31と、透明スクリーン31に対して観察者33と反対側(背面側)で、かつ透明スクリーンの法線方向に対して下側に15〜70°の位置に配置された投射装置34Aとを備えてなる。投射装置34Aから出射された投影光35Aは、透明スクリーン31の背面側から入射し、透明スクリーン31により異方的に拡散することで、観察者33は拡散光36Aを視認できる。一方、透明スクリーン31が前面投射型スクリーンである場合、映像投影システムは、透明スクリーン31と、透明スクリーン31に対して観察者33と同じ側(前面側)で、かつ透明スクリーンの法線方向に対して下側に15〜70°の位置に配置された投射装置34Bとを備えてなる。投射装置34Bから出射された投影光35Bは、透明スクリーン31の前面側から入射し、透明スクリーン31により異方的に拡散することで、観察者33は拡散光36Bを視認できる。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定解釈されるものではない。
実施例および比較例において、各種物性および性能評価の測定方法は次のとおりである。
(1)ヘイズ
濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。
(2)全光線透過率
濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用い、JIS K7361−1に準拠して測定した。
(3)散乱光輝度プロファイル
XYZ表色系におけるY値を輝度とし、変角分光光度計((株)村上色彩技術研究所製、品番:GSP−2)を用い、サンプルのない状態で測定した0度における出射光輝度を入射光輝度とした。次に、サンプルとして下記で作製した透明スクリ−ンをセットし、測定角を−80度〜+80度まで変化させて出射光輝度を測定し、入射光輝度との相対輝度を算出した。散乱光輝度プロファイルの測定方法の概略図を図4に示した。
(4)写像性
写像性測定器(スガ試験機(株)製、品番:ICM−1T)を用い、JIS K7374に準拠して、光学くし幅0.125mmで測定した時の像鮮明度(%)の値を写像性とした。像鮮明度の値が大きい程、透過写像性が高いことを示す。
(5)映像鮮明性
透明スクリ−ンの法線方向に対して下側に50°の角度で50cm離れた位置から、超短焦点型プロジェクター(セイコーエプソン社製、EB−535W)を用いて画像を投影した。次に、スクリ−ンの面上に焦点が合うようにプロジェクターの焦点つまみを調整した後、スクリ−ンの前方1mおよび後方1mの2ヶ所からスクリ−ンに映し出された画像を目視で下記の評価基準により評価した。
[評価基準]
◎:極めて鮮明に映像を視認することができた。
○:鮮明に映像を視認することができた。
△:映像の輪郭、色相がややぼやけて視認された。
×:映像の輪郭がぼやけ、スクリーンとして使用するには不適であった。
<透明スクリーンの作製>
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット((株)ベルポリエステル社製、銘柄IFG8L、屈折率1.68)と、PETペレットに対して0.6質量%の酸化ジルコニウム(ZrO)粉末(一次粒子のメジアン径11nm、屈折率2.40)とを、タンブラー混合器にて30分間混合して、表面に均一にZrO粉末が付着したPETペレットを得た。得られたペレットを、ストランドダイスを備えた二軸混練押出機のホッパーへ供給し、250℃で押し出して、ZrO粒子が練り込まれたマスターバッチを得た。得られたマスターバッチとPETペレット(銘柄IFG8L)とを1:3の割合で均一に混合した後、Tダイを備えた単軸混練押出機のホッパーに投入し、250℃で押し出して、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中のZrO粒子濃度は0.15質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対するZrO粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=11.25であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が80.9であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.11であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0029であった。この散乱光輝度プロファイルを図5に示す。
得られたスクリーンの全光線透過率は89%であり、ヘイズは6.5%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性は93%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともに、スクリーンに画像が十分に結像し、鮮明な映像を視認することができ、特に後方観察時に極めて鮮明な画像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[実施例2]
ポリカーボネート(PC)ペレット(住化スタイロンポリカーボネート(株)製、銘柄SD2201W、屈折率1.59)と、PCペレットに対して0.01質量%の酸化ジルコニウム(ZrO)粉末(一次粒子のメジアン径11nm、屈折率2.40)とを、タンブラー混合器にて30分間混合して、表面に均一にZrO粉末が付着したPCペレットを得た。得られたPCペレットを、ストランドダイスを備えた二軸混練押出機のホッパーへ供給し、押し出し温度270℃で押し出して、ZrO粒子が練り込まれたPCペレットを得た。得られたPCペレットを用い、射出成型機(日精樹脂工業(株)社製、商品名:FNX−III)にて厚さ3mm(3000μm)の板状成形物を作製した。板状成形物中のZrO粒子濃度は0.01質量%であった。板状成形物(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PCペレット(バインダ)に対するZrO粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=30であった。この板状成形物(光拡散層)をそのままスクリーンとして用いた。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が78.1であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.41であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0031であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は89%であり、ヘイズは7.7%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性73%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともに、スクリーンに画像が十分に結像し、鮮明な映像を視認することができ、特に後方観察時に極めて鮮明な画像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[実施例3]
PMMAペレット(三菱レーヨン(株)製、銘柄アクリペットVH、屈折率1.49)と、PMMAペレットに対して2.0質量%の酸化ジルコニウム(ZrO)粉末(一次粒子のメジアン径11nm、屈折率2.40)とを、タンブラー混合器にて30分間混合して、表面に均一にZrO粉末が付着したPMMAペレットを得た。得られたPMMAペレットを、ストランドダイスを備えた二軸混練押出機のホッパーへ供給し、250℃で押し出して、ZrO粒子が練り込まれたPMMAペレットを得た。得られたPMMAペレットをトルエン溶液に溶解させ、ポリマー濃度10質量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を透明ガラス板(厚さ3mm)にドクターブレード((有)イーガーコーポレーション社製)を用いて塗布した。ポリマー溶液が塗布されたガラス板をホットプレート上にて60℃2日間乾燥して、PMMA樹脂中にZrO微粒子が分散された光拡散層(厚さ3μm)を備えた透明スクリーンを作製した。光拡散層中のZrO粒子濃度は2.0質量%であった。光拡散層の厚さをt(μm)とし、PMMA(バインダ)に対するZrO粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=6であった。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が84.1であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.088であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0023であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は91%であり、ヘイズは4.5%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性は94%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともにスクリーンに画像が十分に結像し、鮮明な映像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[実施例4]
PETペレット((株)ベルポリエステル社製、銘柄IFG8L、屈折率1.68)と、PETペレットに対して0.01質量%の光輝性薄片状アルミニウム微粒子(一次粒子の平均径3μm、アスペクト比300、正反射率62.8%)とを、タンブラー混合器にて30分間混合して、表面に均一に薄片状アルミニウムが付着したPETペレットを得た。得られたPETペレットを、ストランドダイスを備えた二軸混練押出機のホッパーへ供給し、250℃で押し出して、薄片状アルミニウムが練り込まれたマスターバッチを得た。得られたマスターバッチとPETペレット(銘柄IFG8L)とを1:1の割合で均一に混合し、Tダイを備えた単軸混練押出機のホッパーに投入して250℃で押し出して、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中の薄片状アルミニウム微粒子濃度は0.005質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対する薄片状アルミニウムの濃度をc(質量%)としたとき、t×c=0.375であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が81.9であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.083であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0012であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は86%であり、ヘイズは4.5%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性は95%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともにスクリーンに画像が十分に結像し、極めて鮮明な映像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[実施例5]
PETペレットに対する薄片状アルミニウムの添加量を0.002質量%に変更した以外は、実施例4と同様にして、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中の薄片状アルミニウム微粒子濃度は0.001質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対する薄片状アルミニウムの濃度をc(質量%)としたとき、t×c=0.075であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が82.5であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.075であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0008であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは2.5%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性は95%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともに、スクリーンに画像が十分に結像し、極めて鮮明な映像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[実施例6]
実施例1で得られたZrO粒子が練り込まれたマスターバッチを、そのままTダイを備えた単軸混練押出機のホッパーに投入し、250℃で押し出して、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中のZrO粒子濃度は0.6質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対するZrO粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=45であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が51.9であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.0であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.045であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は89%であり、ヘイズは17.3%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性は88%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともにスクリーンに画像が十分に結像し、鮮明な映像を視認することができ、特に後方観察時に極めて鮮明な画像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[実施例7]
バインダとして市販のウレタンアクリレート型UV硬化性樹脂(DIC(株)製 ユニディックV−4018、溶媒として酢酸ブチル、イソプロピルアルコールを含有)を用い、不揮発分重量に対して光輝性薄片状微粒子として銀微粒子(一次粒子の平均径1μm、アスペクト比200、正反射率32.8%)を0.015質量%添加し、分散液Aを調製した。さらに、この分散液A100重量部に対して光重合開始剤(BASFジャパン(株)製、イルガキュア184)5重量部を添加し、光硬化性を有する分散液Bを得た。得られた分散液Bを、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)に、乾燥後の膜厚が25μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、70℃の熱風乾燥機で5分間乾燥した後、紫外線を照射することにより、光拡散層を作製した。光拡散層の厚さをt(μm)とし、ウレタンアクリレート型UV硬化性樹脂(バインダ)に対する銀粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=0.375であった。続いて、光拡散層上に厚さ2mmの透明ガラス板を積層し、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が80.1であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.080であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0010であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは4.6%であり、十分な透明性を有していた。また、写像性は77%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、前方観察時、後方観察時ともにスクリーンに画像が十分に結像し、鮮明な映像を視認することができ、特に後方観察時に極めて鮮明な画像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
[比較例1]
PETペレット((株)ベルポリエステル社製、銘柄IFG8L、屈折率1.68)と、PETペレットに対して2.0質量%の架橋アクリル樹脂微粒子(一次粒子の平均径3μm、屈折率1.49、(株)積水化成品工業社製、テクポリマーSSX−103)とを、タンブラー混合器にて30分間混合して、表面に均一に架橋アクリル樹脂微粒子が付着したPETペレットを得た。得られたペレットを、ストランドダイスを備えた二軸混練押出機のホッパーへ供給し、250℃で押し出して、架橋アクリル微粒子が練り込まれたマスターバッチを得た。得られたマスターバッチとPETペレット(銘柄IFG8L)とを1:1の割合で均一に混合し、Tダイを備えた単軸混練押出機のホッパーに投入し、250℃で押し出して、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中の架橋アクリル微粒子濃度は1.0質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対する架橋アクリル樹脂微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=75であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が51.8であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.2であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.00049であった。この散乱光輝度プロファイルを図6に示す。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは14.3%であった。また、写像性は38%であり、スクリーンを透過して見える像が不鮮明であった。さらに、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1を超えるため、スクリーンに濁りがあった。条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005未満のため、スクリーンに画像が十分に結像せず、前方観察時、後方観察時ともに、鮮明な映像を視認することができなかった。
[比較例2]
PETペレット((株)ベルポリエステル社製、銘柄IFG8L、屈折率1.68)と、PETペレットに対して2.0質量%のシリカ微粒子(一次粒子の平均径2.6μm、屈折率1.45)とを、タンブラー混合器にて30分間混合して、表面に均一にシリカ微粒子が付着したPETペレットを得た。得られたペレットを、ストランドダイスを備えた二軸混練押出機のホッパーへ供給し、250℃で押し出して、シリカ微粒子が練り込まれたマスターバッチを得た。得られたマスターバッチとPETペレット(銘柄IFG8L)とを1:1の割合で均一に混合し、Tダイを備えた単軸混練押出機のホッパーに投入して温度250℃で押し出して、厚さ75μmのフィルムを得た。フィルム中のシリカ微粒子濃度は1.0質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対するシリカ微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=75であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が68.5であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.73であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.00045であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは10.1%であった。また、写像性は32%であり、スクリーンを透過して見える像が不鮮明であった。さらに、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005未満のため、スクリーンに画像が十分に結像せず、前方観察時、後方観察時ともに、鮮明な映像を視認することができなかった。
[比較例3]
PETペレットに対するシリカ微粒子の添加量を4.0質量%に変更した以外は、実施例4と同様にして、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中のシリカ微粒子濃度は2.0質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対するシリカ微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=150であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が38.5であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.3であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.00049であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは17.1%であった。また、写像性は28%であり、スクリーンを透過して見える像が不鮮明であった。さらに、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が50未満であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1を超えるため、スクリーンに濁りがあった。条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005未満のため、スクリーンに画像が十分に結像せず、前方観察時、後方観察時ともに、鮮明な映像を視認することができなかった。
[比較例4]
PETペレットに対するZrOの添加量を1.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチを得た。得られたマスターバッチをそのままTダイを備えた単軸混練押出機のホッパーに投入し、250℃で押し出して、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィルム中のZrO粒子濃度は1.5質量%であった。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対するZrO粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=112.5であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が27.9であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.55であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.055であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は89%であり、ヘイズは55.5%であった。また、写像性は77%であり、スクリーンを透過して見える像が鮮明であった。さらに、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が50未満であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1を超えるため、スクリーンに濁りがあり、前方観察時、後方観察時ともに、鮮明な映像を視認することができなかった。
[比較例5]
フィルムの厚さを45μmにした以外は、実施例5と同様にして、フィルムを製膜した。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対する薄片状アルミニウムの濃度をc(質量%)としたとき、t×c=0.045であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が83.5であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が0.062であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.00032であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは1.5%であった。また、写像性は95%であった。さらに、映像鮮明性を目視で評価した結果、鮮明な映像を視認することができた。したがって、鮮明な背景の像と鮮明な投影画像を同時に視認することができた。
さらに、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005未満のため、スクリーンに画像が十分に結像せず、前方観察時、後方観察時ともに、鮮明な映像を視認することができなかった。
[比較例6]
フィルムの厚さを55μmにした以外は、実施例1と同様にして、フィルムを製膜した。フィルム(光拡散層)の厚さをt(μm)とし、PETペレット(バインダ)に対する架橋アクリル樹脂微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、t×c=55であった。得られたフィルム(光拡散層)を、一対の厚さ2mmの透明ガラス板で挟み、透明スクリーンを得た。
得られたスクリーンの散乱光輝度プロファイルを変角分光光度計で測定したところ、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が49.0であり、条件B:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1であり、条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.00049であった。
得られたスクリーンの全光線透過率は88%であり、ヘイズは11.2%であった。また、写像性は44%であり、スクリーンを透過して見える像が不鮮明であった。さらに、条件A:入射光輝度を100としたとき、0°方向出射光相対輝度が50未満であっため、スクリーンに濁りがあった。条件C:0°方向出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005未満のため、スクリーンに画像が十分に結像せず、前方観察時、後方観察時ともに、鮮明な映像を視認することができなかった。
実施例および比較例で作製した光拡散層およびスクリーンの詳細および評価結果を表3に示す。
10 透明スクリーン
11 光拡散層
12 バインダ
13 微粒子
20 透明スクリーン
21 光拡散層
22 保護層
23 基材層
24 粘着層
31 透明スクリーン
32 透明パーティション
33 観察者
34A、34B 投射装置
35A、35B 投影光
36A、36B 拡散光

Claims (14)

  1. バインダと、微粒子とを含む光拡散層を備えた透明スクリーンであって、
    前記透明スクリーンは、変角分光光度計で測定したXYZ表色系におけるYを輝度としたときの散乱光輝度プロファイルが、下記の条件A〜C:
    A:入射光輝度を100としたとき、0°方向の出射光相対輝度が50以上95以下である、
    B:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±5°方向の出射光相対輝度が1.1以下である、
    C:0°方向の出射光相対輝度を100としたとき、±50°方向の出射光相対輝度が0.0005以上である、
    を満たすことを特徴とする、透明スクリーン。
  2. 前記光拡散層の厚さをt(μm)とし、前記バインダに対する前記微粒子の濃度をc(質量%)としたとき、tとcが、下記数式(I):
    0.05≦(t×c)≦50 ・・・(I)
    を満たす、請求項1に記載の透明スクリーン。
  3. 前記微粒子が光散乱微粒子または光反射微粒子である、請求項1または2に記載の透明スクリーン。
  4. 前記光散乱微粒子の一次粒子が、0.1〜2500nmのメジアン径を有する、請求項3に記載の透明スクリーン。
  5. 前記バインダの屈折率nと前記光散乱微粒子の屈折率nとの差の絶対値が0.1以上である、請求項4に記載の透明スクリーン。
  6. 前記光散乱微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、架橋アクリル樹脂、スチレン樹脂、およびシリカからなる群より選択された少なくとも1種である、請求項4または5に記載の透明スクリーン。
  7. 前記光反射微粒子が、光輝性薄片状微粒子であり、平均アスペクト比が3〜800であり、かつ正反射率が12〜100%である、請求項3に記載の透明スクリーン。
  8. 前記光輝性薄片状微粒子が、アルミニウム、銀、白金、金、チタン、ニッケル、スズ、スズ−コバルト合金、インジウム、クロム、酸化チタン、酸化アルミニウム、および硫化亜鉛からなる群から選択される金属系微粒子、ガラスに金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料、または天然雲母もしくは合成雲母に金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料である、請求項7に記載の透明スクリーン。
  9. 前記バインダが、有機系バインダまたは無機系バインダである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の透明スクリーン。
  10. 前記有機系バインダが、熱可塑性樹脂または自己架橋性樹脂である、請求項9に記載の透明スクリーン。
  11. 前記熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の透明スクリーン。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の透明スクリーンを備えた、車両用部材。
  13. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の透明スクリーンを備えた、建物用部材。
  14. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の透明スクリーンと、前記透明スクリーンのスクリーン面の法線方向に対して±10°以上の角度から画像を投影する投射装置とを備えた、映像投影システム。
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