JP4401681B2 - 光拡散体及びそれを用いた光学部材乃至光学デバイス - Google Patents

光拡散体及びそれを用いた光学部材乃至光学デバイス Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光入力部から光を入力し、拡散後に光出力部から出力させる光拡散体、及び、同光拡散体を用いた光学部材乃至光学デバイスに関し、光学部材の例としては例えば光拡散板、透過型あるいは反射型のスクリーンなどがあり、光学デバイスの例としては、白色光源として用いられる発光素子がある。
【0002】
【従来の技術】
樹脂マトリックス中に、同樹脂マトリックスと屈折率の異なる多数の粒子を分散させた光拡散体は、下記特許文献1〜2に例示されるように、種々のものが提案され、光拡散板や、透過型あるいは反射型のスクリーンの結像部に用いられている。通常、これらは板状の形状を有し、光拡散板や透過型のスクリーンの結像部などに用いる場合には、一方のメジャー面から光を入力し、他方のメジャー面から光を出力させる形態で使用され、反射型のスクリーンの場合なら、光入力に用いるメジャー面の反対面側に反射体を配し、光入力に用いたメジャー面を光出力にも兼用する形態で使用されている。
【0003】
いずれの使用形態においても、光入力部(一方のメジャー面)から拡散体内に導入された光は、樹脂マトリックス内に分散された粒子の径及び濃度に応じた頻度(確率)で粒子に遭遇し、その度に散乱を受ける。可視光を入出力する光拡散体に使用される粒子の径は、通常、最小0,5μm〜最大数十μmの範囲にあり、可視光の波長に比べて十分大きく、従って、光拡散体内での個々の散乱は、周知のミー散乱理論で近似的に記述できる。
【0004】
同理論で知られているように、個々の散乱の散乱効率及び散乱光の角度分布を左右するファクタとして、「光の波長」、「樹脂マトリックスと粒子の屈折率差」及び「粒子の径」の3つのパラメータがある。そして、実際に採用される粒子の添加濃度、径、光拡散体内の通過光路長(透過型であればほぼ板厚、反射型であれば板厚のほぼ2倍)の条件では、入力から出力までに受ける散乱の回数(多重度)はかなり大きくなる。その結果、光拡散体から出力される出力光は、これら多重散乱を経ることで複雑な態様でその属性が変化する。
【0005】
そこで、従来の光拡散体についてこの点を調べてみると、白色光を入力しても正面方向とその周辺方向への出力光が黄色味を帯びる傾向が強いことが判った。このことは、白色光入力時の正面方向とその周辺方向への出力光の色温度が下がり気味であることを意味している。光拡散体の実際面への応用、例えばプロジェクタから投影された光像を画像として結像部で結像して観察する透過型あるいは反射型のスクリーンを考えた場合、このような色温度の低下傾向は、画像の白色乃至青色部分が鮮やかに映らないという現象をもたらし、商品価値を著しく損なうものである。
【0006】
また、上記した色温度の問題に加えて、従来提案の光拡散体では、出力光(拡散光)の角度拡がりが十分(例えば半値拡がり角度30度以上)なものは、入力光量に対する出力光量の比(全光線透過率;出力側で立体角2πの範囲の積分光量)が低く、全光線透過率が高いものでは、光拡散が不十分で必要な角度拡がりがとれていなかったり、いわゆる「ホットスポット」(入力側の高輝度部がそのまま出力側から透けて観察される現象)が現れたりする場合が多かった。
【0007】
【特許文献1】
特開平1−269901号公報
【特許文献2】
特開2001−66701号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の基本的な目的は、白色光入力時等の正面方向とその周辺方向への出力光の色温度を高く保つことができ、且つ、全光線透過率の低下を抑えながら出力光に必要な角度拡がりを確保し易い光拡散体を提供することにある。また、本発明は、同光拡散体の特性を生かした光学部材乃至光学デバイスとして、光拡散板、投影された画像を結像させる透過型あるいは反射型のスクリーン、白色光源素子等を併せて提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先ず、光を入力する光入力部と、前記光入力部から入力された光を拡散後に出力させる光出力部を有する光拡散体に適用される。本発明の基本的な特徴に従い、前記光拡散体は、樹脂マトリックス中に、同樹脂マトリックスと異なる屈折率を有する第1群の粒子及び第2群の粒子を分散させた材料で構成される。ここで、第1群及び第2群の粒子は、それぞれ最頻径R1 、R2 (但し、R1 <R2 )を持つ、粒子径分布の拡がりが小さいグループ(最頻径に近い粒子が大多数を占める)を形成している。
【0010】
具体的に言えば、第1群の粒子は、個数粒径分布について第1の最頻径R1 を有するとともに、第1の最頻径R1 に対し±0.5μmの範囲内に70分率以上の個数を含み、第2群の粒子は、個数粒径分布について第1の最頻径R1 より大きい第2の最頻径R2 を有するとともに、第2の最頻径R2 に対し±0.5μmの範囲内に70分率以上の個数を含んでいる。
【0011】
即ち、本発明は、樹脂マトリックスに添加する異屈折率粒子(樹脂マトリックスと屈折率が異なる粒子;以下、同じ)として、各々径を揃えた大小2グループを用意し、そのブレンド添加により、一方のみでは実現できない複数の性質(高色温度、出力光の十分な角度拡がり、高全光線透過率の維持)を同時に実現するものである。詳細は後述するが(基本実施形態参照)、「第1群の粒子を高色温度、高全光線透過率の維持を損なわない範囲内で添加する一方、第2群の粒子を適量添加し、出力光の角度拡がりを補強する」というのが本発明の基本的な考え方である。具体的なブレンドの条件は下記の通りである。なお、下記諸条件1〜条件5の内、条件2及び条件3は樹脂マトリックス中に第1群の粒子を単独で分散させたと仮定した場合の条件として規定し、条件5は、樹脂マトリックス中に第2群の粒子を単独で分散させたと仮定した場合の条件として規定した。
【0012】
[条件1]
第1群の粒子は、下記の式(1)を満たす粒子であること。
0.75≦Qsca (B)/Qsca (R)≦1.25 ・・・(1)
ここで、Qsca (B)は、樹脂マトリックス中において第1群の粒子が起こす1回の散乱について、青色代表波長435nmにおける散乱効率を表わし、Qsca (R)は、同じく樹脂マトリックス中において第1群の粒子が起こす1回の散乱について、赤色代表波長615nmにおける散乱効率を表わす。散乱効率は、光の波長λ、粒子径r1 、粒子の屈折率n1 、樹脂マトリックスの屈折率nm を与えれば周知のミー散乱理論により近似的に計算される。
【0013】
なお、散乱効率計算時には、径r1 を最頻径R1 で代表させることができる。この条件の意味は、第1群の粒子に、「青色(短波長)〜赤色(長波長)の可視光について、散乱効率の波長依存性が小さい」という性質を要求することにある。
【0014】
また、言うまでもなく、この条件は、第1群の粒子の添加濃度には無関係であり、第1粒子の径、第1粒子の径及び樹脂マトリックスの屈折率の三者の関係を束縛する。
【0015】
[条件2]
下記の式(2)を満たすこと。
T1 (B)≧T1 (R) ・・・(2)
ここで、T1 (B)は、光入力部から青色代表波長435nmの光を入力した場合の光出力部における全光線透過率を表わし、T1 (R)は、光入力部から赤色代表波長615nmの光を入力した場合の光出力部における全光線透過率を表わす。
【0016】
この条件の意味は、第1群の粒子に、「全体として、青色光(短波長可視光)は、赤色光(長波長可視光)と同等かそれ以上に通し易い」という条件での添加を要求することにある。即ち、この条件は、第1粒子のQsca (B)/Qsca (R)と添加濃度に関係し、後述するように、添加濃度が高すぎると満たされなくなる可能性がある。
【0017】
この条件を、透過型スクリーンの結像部に用いるケースに適用すれば、照明光あるいは投影画像光が、入力側のメジャー面から全厚みを拡散されながら通過して出力側のメジャー面から出力された時、出射光全体(立体角2πの全範囲)で、赤成分が青成分よりも出力され易いようになる濃度の添加は禁止されることになる。
【0018】
また、反射型スクリーンの結像部に用いるケースでは、投影画像光が、入力側のメジャー面から全厚みを拡散されながら通過して他方のメジャー面側で反射され、入力側のメジャー面に戻って出力された時、出射光全体(立体角2πの全範囲)で、赤成分が青成分よりも出力され易いようになる濃度の添加は禁止される。
【0019】
[条件3]
下記(3)式
I(x)=I(0)/2 ・・・(3)
を満たすxについて、
下記式(4)
x≧15゜ ・・・(4)が成立すること。
【0020】
ここで、I(θ)は、白色光を光入力部から入力した場合に光出力部から出力される出力光の拡がり角度θ(0゜〜90゜)における光強度を表わす一般表式であり、I(0)はθ=0゜における光強度であり、xは白色光についての半値拡がり角度を表わす。
【0021】
この条件の意味は、第1粒子の添加濃度について、「単独添加で、白色光について、最低15゜の半値拡がり角度を確保する」ことにある。即ち、本発明では、先ず、第1群の粒子で、光拡散による角度拡がり機能の基礎部分として、最低15゜の半値拡がり角度(対白色光)を確保する。
【0022】
[条件4]
下記式(5)
T1 (c1 )≧0.8 ・・・(5)
ここで、T1 (c1 )は、第1粒子の重量濃度c1 (単独添加時)において、光入力部から白色光を入力した場合の光出力部における全光線透過率を表わす。
【0023】
この条件の意味は、第1群の粒子の添加濃度について、「第1粒子の重量濃度c1 を上げすぎて全光線透過率が大きく下がることがないようにする」ことにある。即ち、本発明では、第1群の粒子で光拡散による角度拡がり機能の基礎部分として、最低15゜の半値拡がり角度(対白色光)を確保しつつも(上記第4の条件)、第1群の粒子の添加濃度を抑制し、全光線透過率の低下を回避する。この条件4は、本発明が2種粒子のブレンドを採用する理由に関係している。
【0024】
即ち、第1群の粒子は光拡散能力に優れ、比較的低濃度で上記条件3(半値角度拡がり15゜以上)を満たせるが、そのことは同時に、濃度を上げていくと後方散乱が早めに起こり易いことを意味している(実例については後述する)。従って、第1群の粒子のみで、十分な角度拡がり(例えば半値角度拡がり30゜)を確保しようとすると、全光線透過率が低くなってしまう。つまり、十分な出力拡散光の半値角度拡がりの確保と、高い全光線透過率が確保は、互いにトレードオフの関係にあり、同時に実現することは困難である。本発明は、この困難を第2群の粒子とのブレンド添加で解決する。
【0025】
即ち、上記の「白色光について15゜の半値拡がり角度」は、実際の応用においては狭すぎる視野角条件に該当し、また、半値拡がり角度を更に大きくするために添加濃度を増大させると、散乱の多重度が高まり、後方散乱される光量が増え、全光線透過率が低下する。この制約と、上記条件2の制約から、実際に添加し得る第1群の粒子の濃度には限りがあり、単独添加で「明るく出力光の角度拡がりが十分で色温度も高い」光拡散体を得るのは困難と考えられる。そこで、本発明では、第1群の粒子の添加濃度は上記したような条件2〜4で抑え、第2群の粒子の添加により性能のかさ上げを達成する。
【0026】
第2群の粒子に関する条件5及び条件6は、次の通りである。
【0027】
[条件5]
第2群の粒子は、下記式(6)式を満たす粒子であること。
T2 (3c1 )≧0.8 ・・・(6)
ここで、T2 (3c1 )は、第2群の粒子の重量濃度を、第1群の粒子の重量濃度c1 (実際に添加する重量濃度)の3倍として単独添加した時、光入力部から白色光を入力した場合の光出力部における全光線透過率を表わす。
【0028】
この条件の意味は、第2群の粒子に、「第1群の粒子に比して前方散乱性が十分強く、全光線透過率の濃度依存性が小さい」という性質を要求することにある。つまり、本発明では、第2群の粒子として前方散乱性が十分強い粒子を選択することで、後方散乱光の生成を抑制して全光線透過率の低下を回避しつつ、出力光の角度拡がりの補強調整を行えるようにしている。
【0029】
なお、言うまでもなく、上記(6)式の条件は、第2粒子の実際の添加濃度を規制する条件ではなく、あくまでも樹脂マトリックス中における第2粒子の前方散乱性の強さを表現するものである。
【0030】
[条件6]
下記式(7)、(8)を満たすこと。
c2 ≧0.1(wt%) ・・・(7)
T2 (c2 )≧0.8 ・・・(8)
ここで、c2 は樹脂マトリックスに対して添加される重量濃度(wt%)であり、T(c2 )は同重量濃度の条件で光入力部から白色光を入力した場合の光出力部における全光線透過率を表わす。この条件の意味は、「全光線透過率の目立った低下を起こさない添加濃度範囲で、前方散乱性が十分強く、全光線透過率の濃度依存性が小さい第2群の粒子(条件参照)を添加して、出力光の角度拡がりの補強調整を必ず行なう」ということにある。
【0031】
このように、本発明は、樹脂マトリックスに対して、上記条件を満たす2種の異屈折率粒子のブレンド添加を行なうことにより、白色光入力時の正面方向とその周辺方向への出力光の色温度を高く保つことができ、且つ、全光線透過率の低下を抑えながら出力光に必要な角度拡がりを確保し得る光拡散体を提供するものである。
【0032】
本発明において、樹脂マトリックスに採用可能な代表的な材料の1つとして、ポリメチルメタクリレート(PMMA)がある。そして、樹脂マトリックスがポリメチルメタクリレートである場合に、第1群及び第2群の粒子として透光性のシリコーン樹脂粒子(ポリメチルシルセスオキサン粒子;以下、同じ)を用いることができる。後述するように、例えば最頻径R1 =約7.3μmのものを第1群の粒子として用意し、最頻径R2 =約9μmのものを第2群の粒子として用意して、PMMA中に分散させることで本発明の特徴を有する光拡散体が得られる。
【0033】
但し、一般には、樹脂マトリックスとそれに組み合わせて用いられる第1群及び第2群の粒子の材料は、これに限定されるものではなく、上述した諸条件を満たす限り一般に任意のものを選択して構わない。
【0034】
次に、上述した光拡散体は、板状の光学部材として用いることができる。即ち、上述した光拡散体を板状体に構成し、その一方のメジャー面を光入力部として用い、他方のメジャー面を光出力部として用いることができる。このような板状の光拡散体は、いわゆる「光拡散板」として、例えば照明光源のカバー、表示・広告灯のカバー等に用いることができる。
【0035】
また、周知の画像プロジェクタからの画像光を入力光として、光拡散体内で画像を形成し、透過型あるいは反射型のスクリーンとして用いることも可能である。言うまでもなく、反射型のスクリーンの結像部に用いる場合には、背面側に反射体が配置される。その場合、上記条件2〜条件5は、反射体が可視光を100%反射する鏡面を持つとして課せられるものとする。
【0036】
更に、周知のように、透過型あるいは反射型のスクリーンにおいては、外乱光(周囲からスクリーンに入射する画像光以外の光で、迷光とも言う;以下、同様)により画像が白っぽくなり、コントラストが低下することを防止するために、画像結像部に外乱光を吸収する光吸収材(例えばカーボンブラック)を添加することが一般的に行なわれており、本発明においても、この手法を適用することができる。その場合には、光吸収材の添加がなかったと仮定した場合に上記諸条件を満たす光拡散体に、光吸収材を添加したものがスクリーンの結像部に用いられる。言うまでもなく、光吸収材を添加すれば、結像部を構成する「光吸収材入りの光拡散体」の全光線透過率は低下するが、それでも、添加前の光拡散体が明るく色温度が高いので、優れた特性のスクリーンが得られる。
【0037】
なお、実施形態で後述するように、光拡散板あるいは透過型/反射型のスクリーンの結像部は、接着層の形態で構成されていても良い。また、透過型/反射型のスクリーンの結像部の前面あるいは背面側にフレネルレンズ、プリズムシート、反射防止膜等が設けられることもあり、結像部の表面をマット面とすることもある。
【0038】
本発明の光学デバイスへの適用としては、発光ダイオード(LED)を発光源として3原色の光を放出する発光部を覆うキャップ部に上述した光拡散体を用いた発光素子がある。この発光素子は、3原色の光を光拡散体で拡散し、明るく鮮やかな白色光として外部に出射する。なお、このような発光素子における「光入力部」は、「発光部からの光が入射する光拡散体の界面」であり、「光出力部」は「拡散光が出射する光拡散体の界面」である。また、全光線透過率や角度拡がりに関連する諸条件は、「発光部から光軸に沿って測った光拡散体の厚さ」と同じ厚さを持つ同材料の「光拡散板」を仮定して定めるものとする。
【0039】
なお、「全光線透過率」の下限については、第1粒子あるいは第2粒子の単独添加における条件とは別に、第1粒子と第2粒子のブレンド添加後の値についても、実用上の観点から例えば80%あるいは85%を下限として課すことも考えられる。この程度の全光線透過率は、後述する具体例で示すように、本発明では容易に達成できる値である。
【0040】
【発明の実施の形態】
[基本実施形態]
先ず、本発明の基本形態に相当する光拡散体とその特性について、図1〜図7を参照して説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、「第1群の粒子」、「第2群の粒子」を各々「第1粒子」、「第2粒子」と適宜略称する。
【0041】
図1(a)は、光拡散体を板状の形状とした本発明の基本形態を説明する図であり、同図に示したように、全体を符号30で表わした板状の光拡散体は、樹脂マトリックス20中に、第1粒子1と、第2粒子2を各々ほぼ均等に分散させたもので、具体的な材料としては、樹脂マトリックス20にはポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と言う)が用いられ、第1粒子1及び第2粒子2には、透光性のシリコーン樹脂粒子が採用されている。
【0042】
第1粒子1は、最頻径R1 =約7.3μmとして、R1 ±0.5μmの範囲に少なくとも70%の個数が収まるような粒子径の揃い方をしている粒子群を代表する粒子である。これに対して、第2粒子2は、最頻径R2 =約9μm(R1 <R2 )として、R2 ±0.5μmの範囲に少なくとも70%の個数が収まるような粒子径の揃い方をしている粒子群を代表する粒子である。
【0043】
図2は、公称粒径2μm、7.3μm、9μmの3種類の各シリコーン樹脂粒子製品について、粒径分布を測定した結果を示しており、公称粒径7.3μm、9μmの各シリコーン樹脂粒子製品は、第1粒子1及び第2粒子2として粒径の揃い方の条件を満足している。なお、同図のグラフの横軸は粒径(μm)を表わし、縦軸は個数の相対頻度(数字の値自身には特に意味はない)を表わしている。また、粒径分布は、各シリコーン樹脂粒子製品を適量単独添加した光拡散体(サンプル)を作成し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影し、画像処理により求めた。図中「モード径」とあるのは、「最頻径」と同意味である。
【0044】
図1(b)には、このような粒子1、2がPMMAマトリックス20中で起こす散乱(1回の散乱)の様子の概略的な特徴を示した。同図において、実線41、51は各々赤色光の第1粒子1及び第2粒子2による散乱後の角度分布を表わし、破線42、52は各々青色光の第1粒子1及び第2粒子2による散乱後の角度分布を表わしている。
【0045】
ミー散乱の理論で知られているように、個々の散乱の態様は、光の波長、各粒子の径、マトリックスとの屈折率の相違に依存して変化する。PMMAマトリックス20中にシリコーン樹脂粒子が存在する場合、可視光について、8μm付近に散乱光の角度拡がり(散乱光強度の角度依存特性)が大きく変わる点があるため、第2粒子2は第1粒子1に比べてはるかに強い前方散乱性を示している。換言すれば、伝播方向の角度分布を広げる作用は、第1粒子1は強く、第2粒子2は弱いということである。
【0046】
また、更に詳細に見ると、短波長である程、「波長に対する相対的な粒径」は大きくなる効果により、1回の散乱では、青色光の方が赤色光よりも前方へ向かう性質が強い。図1(b)における破線図形42、52が実線図形41、51より前方に若干突き出ているはそのことを表わしている。
【0047】
散乱効率については、図1(b)において、赤色光の散乱効率は実践図形41、51の面積で概念的に表現され、青色光の散乱効率は破線図形42、52の面積で概念的に表現されている。図示されているように、先ず赤色光、青色光のいずれに関しても、第1粒子1の方が第2粒子2より散乱効率は高い。また、第1粒子1では、赤色光と青色光で大きな散乱効率の差異はない。換言すれば、第1粒子1の散乱効率の波長依存性が小さい。第2粒子2については、後述するように、赤色光と青色光でかなりの散乱効率の差異がある。
【0048】
以上が、基本形態に係る光拡散体30で用いれらている第1粒子1と第2粒子2による樹脂マトリックス20中での散乱の基本的な特徴の概略である。以下、これを前提に、第1粒子と第2粒子について課された前述の諸条件について、順にその意義を、各条件に関連する特性データ、計測結果等を引用して説明する。なお、各式における変数、記号等の定義の繰り返し記載は省く。
【0049】
(条件1の関連説明);
前述したように、条件1は第1粒子について前出の(1)式を満たすことを要求している。
0.75≦Qsca (B)/Qsca (R)≦1.25 ・・・(1)
既述の通り、この条件の意味は、第1粒子に、「青色(短波長)〜赤色(長波長)の可視光について、散乱効率の波長依存性が小さい」ということである。
【0050】
そこで、PMMA−シリコーン樹脂粒子系について、青色代表光と赤色代表光との散乱効率の比、Qsca (B)/Qsca (R)が粒径の変化に応じてどのように変化するかをミー散乱理論に基づいて計算した結果を図3に示す。同図において、横軸は粒径(μm)を表わし、縦軸は青色代表光(435nm)と赤色代表光(615nm)との散乱効率の比、Qsca (B)/Qsca (R)を表わしている。
【0051】
このグラフから判るように、粒径約5.3μm〜約8.1μm及び約11.5μm〜約13.1μmの領域で、上記(1)式の条件は満たされる。本実施形態(基本形態)で採用されている第1粒子1の粒径(約7.3μm)はこの範囲にあり、従って第1粒子1は上記条件1を満たしている。言い換えれば、第1粒子1は、可視光を比較的均等な効率で散乱する粒子であり、短波長あるいは長波長の可視光に偏った効率で散乱する性質を持つ。
【0052】
なお、第2粒子2の粒径(約9μm)で、青色光の散乱効率が赤色光の散乱効率をかなり下回っている。このことから、一見すると、第2粒子2を添加することは、青色成分を殺すように思われる。しかし、スクリーン等への適用を考えると実際はむしろ有利に作用する。何故ならば、青色光の散乱効率が低いことは、第2粒子2を添加して出力光の角度拡がりを補強した場合、青色成分の方が赤色成分よりも角度拡がりの効果が小さくなる要因であり、正面周辺の方向から見た時、「白さ」の視覚感(鮮やかさ)を改善するように作用するからである。このことは、第2粒子に関する条件4、5との関わっており、詳細は後述する。
【0053】
(条件2の関連説明);
前述したように、条件2は第1粒子を前出の(2)式を満たすように添加することを要求している。
T1 (B)≧T1 (R) ・・・(2)
既述の通り、これは、第1群の粒子に、「全体として、青色光(短波長可視光)は、赤色光(長波長可視光)と同等かそれ以上に通し易い」という条件での添加を意味し、添加濃度が高すぎると満たされなくなる可能性がある。逆に言えば、そのようなケース以外では、一般にこの条件は満たされる。具体的には、次のように推察される。
【0054】
第1粒子による光吸収損失を無視すれば(例えば、ここで採用しているシリコーン樹脂粒子は、極端な高濃度でない限り、光吸収損失は無視できる程小さい)、全光線透過率は、1(100%)から後方散乱率を差し引いたものである。
【0055】
従って、第1粒子のQsca (B)/Qsca (R)が1より小さければ、添加濃度を増す程、多重散乱の効果による後方散乱の増大は赤色成分の方が顕著となり、上記(2)式は満たされ易くなると考えられる。PMMMA−シリコーン樹脂系の場合、前出の図3のグラフから、条件1を満たす前提では、粒径約7μm〜約8.1μmであればこのケースに当てはまる。
【0056】
一方、第1粒子のQsca (B)/Qsca (R)が1より大きい場合には、上記(2)式は添加濃度に関係なく満たされ難いように一見思わる。しかし、実際には、Qsca (B)/Qsca (R)>1でも、添加濃度が比較的低い場合には、上記(2)式は満たされ得る。その理由は、添加濃度が比較的低い場合には、散乱の多重度が低いため、散乱効率の波長依存性よりも散乱角度プロファイル(散乱光の散乱強度の角度特性)の波長依存性が後方散乱の多寡を大きく左右する故であると考えることができる。つまり、青色光の散乱効率が赤色光の散乱効率を上回っていても、個々の散乱において前方散乱性が赤色光よりも青色光で十分強く発揮されれば、散乱の多重度が小さい限り、後方散乱光は赤色光よりも発生し難くなる。
【0057】
ところで、この「個々の散乱において前方散乱性が青色光で強く発揮される」という前提は、現実に成立し得る条件であり、例えばPMMMA−シリコーン樹脂系で成立する。このことは、樹脂マトリックスと第1粒子の屈折率分散(波長依存性)に関係している。図4は、PMMAとシリコーン樹脂の屈折率分散を示したグラフで、横軸は波長(nm)、縦軸は屈折率(左側)及び屈折率差(右側)をを表わしている。
【0058】
3本のカーブは、上から順に、「PMMAマトリックスの屈折率」、「屈折率差(シリコーン樹脂粒子の屈折率−PMMAマトリックスの屈折率:符号がマイナスであることに注意)」、「シリコーン樹脂粒子の屈折率」を表わしている−このグラフから判るように、PMMAとシリコーン樹脂の屈折率差Δn(絶対値)は、青色光で小さく、赤色光で大きい。そのため、ミー散乱理論で知られているように、前方散乱性は赤色光よりも青色光で強く現れる。前出の図1(b)において、第1、第2粒子の双方で、破線図形42、52の方が実線図形41、51よりも尖っているのは、この事実に対応している。
【0059】
上記したことから、PMMMA−シリコーン樹脂系の場合、条件1を満たす前提で、粒径約5.3μm〜約7.3μmのケースでも、添加濃度が低ければ、上記(2)式が満たされ得ることが理解される。逆に言えば、上記(2)式は、拡散光の角度拡がりを確保するために添加される第1粒子の濃度を制限し得るものであり、本発明が青色成分を大切にして、出力光(拡散後に出力される光)に「鮮やかな白さ」を持たせようとしていることの1つの現れである。
【0060】
(条件3の関連説明);
前述したように、条件3は第1粒子について、前出の(3)式を満たすx(半値角度拡がり)が、前出の(4)式を満たすことを要求している。
I1 (x)=I1 (0)/2 ・・・(3)
x≧15゜ ・・・(4)
既述の通り、この条件の意味は、第1粒子の添加濃度について、「単独添加で、白色光について、最低15゜の半値拡がり角度を確保する」ことにある。この条件は、第1粒子の添加濃度の下限を左右する。但し、光入力部から光出力部に至る距離(光拡散板、透過型スクリーンでは厚さにほぼ対応;反射型スクリーンでは、ほぼ厚さの2倍に対応)によって、その下限は変化する。図5は、PMMAに、2.0μm、7.3μm、9.0μmの各シリコーン樹脂粒子(前出の図2のグラフに粒径分布を示した製品)を分散した2mm厚の板について、白色光の半値角度拡がりの値を実測したものである。
【0061】
このグラフから、図1(a)に示した光拡散体30の厚さを2mmとした時、x=15゜を与えるに必要最低限の第1粒子(粒径7.3μm)の添加濃度は、約0.8wt%であることが判る。また、このグラフから、粒径2.0μm、7.3μm、9.0μmの順に粒子径が大きくなる程、同じ半値角度拡がりを得るために必要な濃度が大きくなることが理解される。
【0062】
(条件4の関連説明);
前述したように、条件4は第1粒子について、前出の(5)式を満たすことを要求している。
T1 (c1 )≧0.8 ・・・(5)
既述の通り、この条件の意味は、第1群の粒子の添加濃度について、「第1粒子の重量濃度c1 を上げすぎて全光線透過率が大きく下がることがないようにする」ことにある。図6は、PMMAに、2.0μm、7.3μm、9.0μmの各シリコーン樹脂粒子(前出の図2のグラフに粒径分布を示した製品)を分散した2mm厚の板について、白色光の全光線透過率を実測した結果を示すグラフである。同グラフにおいて、横軸はPMMAマトリックスへの添加濃度をwt%で表わし、縦軸は、白色光の全光線透過率を表わしている。
【0063】
この同グラフから判るように、第1粒子(粒径7.3μm)の場合、添加濃度3wt%と4wt%の付近で全光線透過率が急低下し、全光線透過率0.8を割り込んでいる。このことは、出力拡散光の角度拡がりを大きくするために第1粒子の添加濃度を大きくすると、全光線透過率が低下する危険性が高まることを意味する(前述したトレードオフの関係)。
【0064】
本発明では、条件4で全光線透過率が0.8未満となるような高濃度の第1粒子の添加は禁止される。但し、全光線透過率0.8以上となる上限濃度は、当然、板厚(一般には、光入力部から光出力部までの光路距離)に応じて変化する。一般に、板厚(光路距離)が大きくなれば上限濃度は下がり、板厚(光路距離)が小さくなれば上限濃度は上がる。
【0065】
(条件5の関連説明);
前述したように、第2粒子は、下記式(6)式を満たすような粒子である。
T2 (3c1 )≧0.8 ・・・(6)
つまり、第2粒子は、第1の粒子の重量濃度c1 (実際に添加する重量濃度)の3倍の濃度で仮に単独添加した場合でも、光入力部から白色光を入力した場合の光出力部における全光線透過率が0.8を回らないということである。換言すれば、第2粒子は、第1粒子に比して前方散乱性が十分強く、全光線透過率の濃度依存性が小さいということである。
【0066】
図6のグラフから容易に判るように、本基本実施形態における第2粒子(粒径9μmのシリコーン樹脂粒子)は、板厚2mmの場合、10wt%以上でも80%をはるかに越える全光線透過率を示している。そして、前述の条件4から、第1粒子の添加濃度c1 の上限は、同じ板厚2mmで、3.5wt%程度であるから、本基本実施形態における第2粒子は、本条件5を満足している。なお、既述の通り、この条件は「第2粒子の実際の添加濃度c2 」を規制する条件ではない。「第2粒子の実際の添加濃度c2 」を規制する条件は、次に説明する条件6である。
【0067】
(条件6の関連説明);
既述の通り、第2粒子の実際の添加濃度c2 は、下記式(7)、(8)を満たすように規制される。
c2 ≧0.1(wt%) ・・・(7)
T2 (c2 )≧0.8 ・・・(8)
ここで、式(7)は、「少なくとも一定濃度の第2粒子を必ずブレンドする」ことを意味し、式(8)は、余りに過大な添加濃度は排除するということである。図6のグラフで示したように、前方散乱性が強い第2粒子はかなり高濃度で添加しても高い全光線透過率を維持するが、それにも当然限界はある。そのような過大な添加濃度は、この式(8)の条件で排除される。
【0068】
(ブレンドによる作用の説明);
第1粒子(7.3μmのシリコーン樹脂粒子)、第2粒子(9μmのシリコーン樹脂粒子)のブレンドによる作用を確認するために、図1(a)に示した光拡散体(板厚2mm;基本実施例サンプル)を第1粒子の添加濃度を2wt%、第2粒子の添加濃度を3wt%として作成し、白色光を面31から入力し、面32からの出力光の色温度の角度分布を実測した。また、比較のために、基本実施例サンプルと同形、同寸、同マトリックスで、第1粒子を添加濃度2wt%で単独添加した第1比較サンプルと、第2粒子を添加濃度3wt%で単独添加した第2比較サンプルについて、同じ色温度測定を行なった。面32からの出力光の色温度の角度分布を実測した。これらの結果を図7のグラフに示した。同グラフにおいて、横軸は出力面(面32に対応)の正面方向からのずれ角度を表わし、縦軸は色温度を表わす。このグラフから次のことが読み取れる。
【0069】
(i)第1粒子を添加濃度2wt%で単独添加した第1比較サンプルでは、正面方向周辺の色温度が低く、正面方向からはずれる程、色温度が高くなっている。このような特性は、一般に余り好ましくない。例えば画像投影用のスクリーンの結像部に適用した場合、正面方向から見た画像が黄味あるいは赤味を帯び、白色が鮮やかに見えない。
【0070】
(ii)第2粒子を添加濃度3wt%で単独添加した第2比較サンプルでは、正面方向周辺の色温度は高く、45゜付近から色温度が急落している。この特性から見る限り、画像投影用のスクリーンの結像部に適しているようにも思われる。しかし、第2粒子の単独添加では、図5のグラフで示したように、出力光の角度拡がりを確保する能力が弱く、粒子材料の消費量が増えてしまう。
【0071】
更に、実際上直面する深刻な問題として、第2粒子のように前方散乱性の強い粒子の単独添加を行なった場合、相当の高濃度まで、入力光がそのまま光拡散体を突き抜けて見える現象が発生し、入力光の光源(例えばプロジェクタの投光部)がいわゆる「ホットスポット」として観察される可能性が高まる。また、ホットスポットの出現まで至らなくとも、出力光(スクリーンの場合は画像)にぎらつき感が生じる。
【0072】
(iii)第1粒子を2wt%、第2粒子を3wt%ブレンド添加した基本実施例サンプルでは、正面方向から75゜付近までの広い角度範囲でほぼ一定(8000゜K以上)の色温度が維持されている。そして、この「8000゜K以上」という値は、鮮やかな白を表現する値である。角度拡がりについては、測定値を示していないが、図5のグラフから、27゜の半値角度に、第2粒子の添加による上乗せが行なわれ、30゜以上の半値角度が得られている。結局、基本実施例サンプルは、正面方向から75゜付近までの広い角度範囲から見て色特性が優れ、角度拡がりも十分確保された光拡散体であると言うことができる。また、ホットスポットやぎらつき感の問題も生じない。なお、本発明の実施例における半値角度の実測例については後述する。
【0073】
以上説明した本発明の基本実施形態に係る光拡散体30(図1(a))は、照明装置や表示灯等で用いる光拡散板などに用いることができるが、上述したように、色温度の特性に優れているため、カラーのTV画像、DVD画像等をプロジェクタで投影して観察する各種スクリーン(結像部)への適用性が高い。図8〜図17は、画像投影用のスクリーン(結像部)への適用例(例1〜例8)を列挙したものである。
【0074】
なお、これら図8〜図16及び図17において、光入力部(画像光入力部)はランプマーク(図8で符号Aを例示)を付した側の面であり、光出力部(画像光出力部;観察側の面)は顔マーク(図8で符号Bを例示)を付した側の面である。また、これらの例は、画像投影用のスクリーンとして説明されるが、入力光を画像投影光として、諸用途の光拡散板乃至光拡散器として使用できることは言うまでもない。
【0075】
(例1/例2)
図8は、本発明を透過型スクリーンに適用した第1の例を示し、上述した基本形態の板状の光拡散体を透過型スクリーンの結像部に用いている。即ち、周知のプロジェクタ(図示は省略;例えばカラーTV画像、DVD画像を投影するプロジェクタで、スクリーンの結像部内に画像を結像させるように調整されている;以下、同じ)から投影されたカラー画像光は、この板状の光拡散体内で結像し、その像が拡散光画像として正面方向及び斜め方向から観察される。
【0076】
ここで、上述した光拡散体の優れた特性により、明るく、また、色温度の高い白色(青色成分が豊かで鮮やかな白色)を持つカラー画像が観察される。そして、斜め方向から観察についても、かなりの広角度(正面方向から左右上下30゜以上)にわたって明るさがあまり落ちず、色温度も高いという長所が得られる。但し、周囲が明るい環境で使用した場合、外乱光(画像光以外の光)が拡散され、背景光として画像にかぶってしまうので、画像のコントラストが低下し、例えば画像の黒色が白っぽく見えてしまう。
【0077】
このような現象は、光拡散体をスクリーンに適用した場合に必ず起る問題で、これを回避するには、多少明るさは犠牲にするが、有機色素、カーボンブラック等からなる光吸収剤を光拡散体に添加すれば良い。その例(例2)を図9に示した。図9において、光拡散体に添加された光吸収剤は符号3で示されている。光吸収剤3に用いれられる材料は多種知られており、有機色素、カーボンブラック等がある。また、光吸収剤3の添加濃度は、必要に応じて加減すれば良く、特に制限はないが、明るさの低下を抑えるためには、最小限にとどめることが好ましい。なお、光吸収剤として波長選択性のあるもの(例えば有彩色の有機色素)を用いた場合には、それによる色合いの調整(例えば、赤色成分を更に抑える)も可能である。
【0078】
(例3/例4)
図10、図11は、各々本発明を透過型スクリーンに適用した第3及び第4の例を示している。これら例は、上記した第1の例の変形形態に相当する。即ち、第3の例(図10)で透過型スクリーンの結像部に用いているのは、上述の基本形態で説明した光拡散体の光入力部(画像光入力側の面)をマット処理面4としたものであり、第4の例(図11)で透過型スクリーンの結像部に用いているのは、同じく基本形態で説明した光拡散体の光入力部(画像光入力側の面)にマット処理を施した層5を形成したものである。
【0079】
これらの例の使用法(プロジェクタによる画像投影)や得られる特性は、第1の例(図8)と基本的には同じであるが、入力側のマット処理により、拡散光の角度拡がりが若干増加し、観察画像の視覚感に「柔らかさ」が出る。また、画像投影オフ時を含めて、スクリーンが透けて見える現象が防止される。なお、言うまでもなく、これら第3、第4の例においても、上記第2の例にならって光拡散体に光吸収剤を添加すれば、外乱光によるコントラスト低下が防止できる。また、有彩色の有機色素等の添加による色合いの調整も可能である。
【0080】
(例5)
図12は、本発明を透過型スクリーンに適用した第5を示している。この例も、上記した第1の例の変形形態に相当する。即ち、本例で透過型スクリーンの結像部に用いているのは、上記第1の例と同じく、基本形態で説明した光拡散体であるが、同光拡散体の光出力側(画像観察側)の面に付加層11を設けていること点で、第1の例とは異なる。
【0081】
付加層11には、必要に応じて多様なものが採用可能であり、例えば反射防止層、ITO層、ハードコート層、抗菌層、光吸収層などがある。反射防止層、光吸収層には、光出力側(画像観察側)から結像部に入射する外乱光を反射あるいは光吸収で抑える作用がある。また、ITO層は、スクリーンをいわゆるタッチパネルとして使用する場合に、信号電極のための透明電極層として使用し得る層であるが、アースをとって静電防止層としても使用出来る。ハードコート層は、スクリーン表面に傷が付くことを防止する。抗菌層はかびの発生を抑える上で有効である。
【0082】
言うまでもなく、本例においても、上記第2の例にならって光拡散体に光吸収剤を添加すれば、外乱光によるコントラスト低下が防止できる。また、有彩色の有機色素等の添加による色合いの調整も可能である。
【0083】
(例6/例7)
樹脂マトリックスを形成する材料として、透光性の接着剤あるいは透光性の印刷インク、塗布剤等を用いることもできる。図13に示した第6の例では、2枚の基板(透光性の樹脂板またはガラス板)6を、第1粒子1及び第2粒子2を添加した接着剤7で貼り合わせて透過型スクリーンを構成している。第1粒子1及び第2粒子2とその添加濃度に関する諸条件は、結像部を形成する接着剤7の層全体を「光拡散体」と見なして適用すれば良い。
【0084】
図14に示した第7の例では、基板(透光性の樹脂板またはガラス板)9の表面に、第1粒子1及び第2粒子2を添加した印刷インクあるいは塗布剤からなる層10を形成し、この層10を結像部として用いれば良い。この場合、第1粒子1及び第2粒子とその添加濃度に関する諸条件は、結像部を形成する層10全体を「光拡散体」と見なして適用すれば良い。
【0085】
なお、これらの例においても、上記第2の例にならって光拡散体を構成する層(第1、第2粒子添加)に光吸収剤を更に添加すれば、外乱光によるコントラスト低下が防止できる。また、有彩色の有機色素等の添加による色合いの調整も可能である。また、接着剤、インク、塗布剤等自身に光吸収性のものを用いたり、有彩色のものを用いることもできる。更に、基板6あるいは9の表面にマット処理を施して、上記第3、第4の例と同様の作用を付加しても良い。
【0086】
(例8/例9)
図15、図16は、各々本発明を透過型スクリーンに適用した第8及び第9の例を示している。これら例では、透過型スクリーンの結像部に、上述の基本形態で説明した光拡散体を用いる一方、光入力部(画像光入力側)に画像光の進行方向を補正する素子を配置している。先ず、図15に示した第8の例では、画像光入力側にフレネルレンズ12を配置して、画像光の進行方向を収束させている。なお、画像投影用のスクリーンにおけるこのようなフレネルレンズ12の使用法自体は周知である。
【0087】
図16に示した第9の例は、例えば画像光源(プロジェクタ)をスクリーンの斜め近傍に配置した場合に採用されるもので、光拡散体の光入力部(画像光入力側)に画像光の進行方向を補正するプリズムシート(多数の直線並行プリズム列を有する角度変換フィルム)13を設けて透過型スクリーンを構成する。画像光は、プロジェクタから先ず光路長調整用反射面16へ向い、その反射曲面で反射され、斜め配置による光路長調整が行なわれてから、プリズムシート13を介して光拡散体に入力され、画像が結像される。
【0088】
なお、光拡散体の出力側には、第5の例にならって、付加層11(例えば反射防止層、ITO層、ハードコート層、抗菌層、光吸収層など)が設けられている。また、これら第9、第210の例においても、上記第2の例にならって光拡散体に光吸収剤を添加すれば、外乱光によるコントラスト低下が防止できる。また、有彩色の有機色素等の添加による色合いの調整も可能である。
【0089】
(反射型スクリーンへの適用)
以上、本発明の透過型のスクリーン(結像部)への適用例について説明したが、反射型のスクリーン(結像部)への適用も可能である。図17はその一例を示す。同図に示したように、反射型のスクリーンでは、光拡散体の背面(光入力部と反対側の面)に反射層(反射体)8が設けられ、往復光路が光拡散に利用される。光拡散体としては、上記基本実施形態で説明したと同様のものを用いることができる。但し、第1粒子1及び第2粒子2の添加に関する諸条件について、既述の通り、「光入力部から光出力部までの距離」が実質2倍になっていることに注意する必要がある。
【0090】
別の言い方をすれば、前述した基本実施形態で示した2mmの厚さで透過型スクリーンの結像部として好適な特性が得られるのであれば、反射型スクリーンの結像部に用いる場合には、半分の厚さ(1mm)でほぼ同等の特性が得られるであろうということである。なお、反射型スクリーンにおいても、光拡散体に光吸収剤を添加すれば、外乱光によるコントラスト低下が防止できる。また、有彩色の有機色素等の添加による色合いの調整も可能である。
【0091】
(白色光源への適用)
図18は、本発明を3原色LED光混合型の白色光源素子に適用した例について説明する図である。同図において、符号14は3原色の光(赤色光、緑色光、青色光)の光を各々放出するLED(3個以上)を互いに近接させてマウントした発光部で、この発光部14を覆うようにキャップ部15が設けられている。キャップ部15には、エポキシ樹脂中に第1粒子1と第2粒子2を分散した光拡散体が採用される。
【0092】
第1粒子1、第2粒子2及びその添加濃度に関する諸条件は、第1粒子1及び第2粒子2を添加した「光拡散能のある部分」を「光拡散体」と見なして適用すれば良い。ここで、「光拡散能のある部分」は、通常、キャップ部15の全体であるが、場合によっては一部(例えばキャップの頂部周辺)にのみ第1粒子1、第2粒子2を局在させる場合もあり得る。
【0093】
また、既述の通り、このような発光素子における「光入力部」は、「発光部14からの光が入射する光拡散体(光拡散能のある部分)の界面」であり、「光出力部」は、「拡散光が出射する光拡散体の界面」である。例えば、本例のような発光素子で、キャップ部15全体に第1粒子1、第2粒子2が分散していれば、光入力部は、「発光部14とキャップ部15の接触位置」であり、光出力部は、「発光光軸がキャップ部15の外表面と交わる位置を「光出力部」と見なして前述の諸条件が課される。
【0094】
このように本発明を発光デバイスのキャップ部15に適用することで、発光部14から放出される3原色の光は、キャップ部15で良好な波長バランスで効率良く混合、拡散され、明るく鮮やかな白色光を発する光源として機能させることができる。即ち、キャップ部15の少なくとも一部に前述の諸条件を満たす拡散体を用いることで、青色成分が正面方向から過剰に外れた方向に散逸することなく、出力光に十分な角度拡がりを持ち、全体として後方散乱による光損失の少ない白色光源が提供される。
【0095】
なお、言うまでもないことであるが、3原色の光を各々放出するLEDは、必要に応じて色別に発光駆動可能に設計されることもあり、その場合には、それに応じて白色光だけでなく、種々の色合いの光を発する光源として機能する。本明細書ではこのような光源素子も「白色光源」の範疇に入れるものとする。
【0096】
最後に、具体的な製法等を含む2つの実施例1、2及び比較例1、2について説明する。
(実施例1)
・メタクリル酸メチル重合物 100重量部
・シリコーン樹脂粒子(粒径7.3μm); 1.5重量部
(最頻径7.3μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に80%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・シリコーン樹脂粒子(粒径9.0μm); 2.0重量部
(最頻径9.0μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に80%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・2.2アゾビスイソブチルニトリル 0.05重量部
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.02重量部
これらを添加混合した後、常法に従って、2.0mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニル製ガスケットを2枚の平行なガラス板に挟んで構成した鋳型に注入した。これを65℃の水槽で5時間浸漬し、次いで、120℃の空気槽で2時間加熱して重合を完了させ、冷却後、ガラス板より剥離させて板厚2.0mmの光拡散板サンプル(サンプル1)を得た。
【0097】
このサンプル1について、光学特性(全光線透過率、半値角及び色温度)の測定を行つた。全光線透過率は、日本電色工業(株)製のヘイズメーター、ND-1001-DPを用いて測定した。また、得られた出力拡散光の配光分布(半値角度)及び色温度は、トプコン(株)製の色彩輝度計、BM-7を用いて測定した。これら測定の結果は、下記表1のサンプルNo.1のデータ欄及び図19のグラフに記載した。
【0098】
(実施例2)
・メタクリル酸メチル重合物 100重量部
・シリコーン樹脂粒子(粒径7.3μm); 1.0重量部
(最頻径7.3μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に80%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・シリコーン樹脂粒子(粒径9.0μm); 2.0重量部
(最頻径9.0μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に80%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・2.2アゾビスイソブチルニトリル 0.05重量部
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.02重量部
これらを添加混合した後、常法に従って、2.0mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニル製ガスケットを2枚の平行なガラス板に挟んで構成した鋳型に注入した。これを65℃の水槽で5時間浸漬し、次いで、120℃の空気槽で2時間加熱して重合を完了させ、冷却後、ガラス板より剥離させて板厚2.0mmの光拡散板サンプル(サンプル1)を得た。
【0099】
このサンプル1について、光学特性(全光線透過率、半値角及び色温度)の測定を行つた。全光線透過率は、日本電色工業(株)製のヘイズメーター、ND-1001-DPを用いて測定した。また、得られた出力拡散光の配光分布(半値角度)及び色温度は、トプコン(株)製の色彩輝度計、BM-7を用いて測定した。これら測定の結果は、下記表1のサンプルNo.2のデータ欄及び図19のグラフに記載した。
【0100】
(比較例1)
・メタクリル酸メチル重合物 100重量部
・シリコーン樹脂粒子(粒径2.0μm); 1.0重量部
(最頻径2.0μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に70%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・シリコーン樹脂粒子(粒径4.5μm); 0.8重量部
(最頻径4.5μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に70%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・2.2アゾビスイソブチルニトリル 0.05重量部
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.02重量部
これらを添加混合した後、常法に従って、2.0mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニル製ガスケットを2枚の平行なガラス板に挟んで構成した鋳型に注入した。これを65℃の水槽で5時間浸漬し、次いで、120℃の空気槽で2時間加熱して重合を完了させ、冷却後、ガラス板より剥離させて板厚2.0mmの光拡散板サンプル(サンプル1)を得た。
【0101】
このサンプル1について、光学特性(全光線透過率、半値角及び色温度)の測定を行つた。全光線透過率は、日本電色工業(株)製のヘイズメーター、ND-1001-DPを用いて測定した。また、得られた出力拡散光の配光分布(半値角度)及び色温度は、トプコン(株)製の色彩輝度計、BM-7を用いて測定した。これら測定の結果は、下記表1のサンプルNo.3のデータ欄及び図19のグラフに記載した。
【0102】
(比較例2)
・メタクリル酸メチル重合物 100重量部
・シリコーン樹脂粒子(粒径2μm); 0.8重量部
(最頻径2.0μmを有し、同最頻径±0.5μm以内に70%以上の個数を含む真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・シリコーン樹脂粒子(粒径は不規則); 1.0重量部
(最頻径5.0μmを有するが、同最頻径±0.5μm以内に70%未満の個数しか含まない真球形状のポリメチルシルセスオキサン粒子((CH3 SiO1.5n ;GE東芝シリコーン株式会社製)
・2.2アゾビスイソブチルニトリル 0.05重量部
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.02重量部
これらを添加混合した後、常法に従って、2.0mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニル製ガスケットを2枚の平行なガラス板に挟んで構成した鋳型に注入した。これを65℃の水槽で5時間浸漬し、次いで、120℃の空気槽で2時間加熱して重合を完了させ、冷却後、ガラス板より剥離させて板厚2.0mmの光拡散板サンプル(サンプル1)を得た。
【0103】
このサンプル1について、光学特性(全光線透過率、半値角及び色温度)の測定を行つた。全光線透過率は、日本電色工業(株)製のヘイズメーター、ND-1001-DPを用いて測定した。また、得られた出力拡散光の配光分布(半値角度)及び色温度は、トプコン(株)製の色彩輝度計、BM-7を用いて測定した。これら測定の結果は、下記表1のサンプルNo.4のデータ欄及び図19のグラフに記載した。
【0104】
【表1】
Figure 0004401681
【0105】
ここで、図19のグラフは、第1及び第12実施例の各サンプル、第3及び第4比較例のサンプルについて、出力拡散光の色温度の角度特性の測定結果を表わすグラフで、横軸は測定方向の正面方向(0度)から傾斜角を表わし、縦軸は色温度(K度)を表わしている。表1に記載した色温度は正面方向で観測された色温度である。
【0106】
これらの表及びグラフから次のことが理解される。
(1)実施例1、2は、比較例1、2に比して、色温度が高く、特に、正面方向から42度付近の実用上重要な方向から見た色温度に明確な差がある。これは、入力光(例えば画像光)が同じ色合いであっても、より青色光成分に富んだ鮮やかな「白色」や「青色」等が得られることを意味する。
【0107】
(2)実施例1、2は、比較例1、2に比して、全光線透過率が格段に高い。このことは、全体として後方散乱によるロスが少なく、入力光が同じ強度でも、より明るい拡散光が得られることを意味している。
【0108】
(3)実施例1、2は、比較例1、2に比べると半値角度が狭いが、絶対値としては30度以上を確保している。また、全光線透過率が格段に高いので、半値角度が比較的狭くても実用上支障はない。
【0109】
(4)結局、総合評価としては、表1の最右欄に記したように、実施例1、2は優れた特性(○印)、比較例1、2は不満足な特性(×印)と言うことになる。これらの特性の優劣は、当然、同等の組成の光拡散体を、前述した透過型/反射型スクリーンの結像部や発光素子のキャップ部等に適用した際にも明確に現れる。即ち、実施例1、2に対応する光拡散体を用れば、色合いが鮮やかで明るい透過型/反射型スクリーンや、鮮やかで明るい白色光を出力する発光素子を得ることができる。
【0110】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、白色光入力時等の正面方向とその周辺方向への出力光の色温度を高く保つことができ、且つ、全光線透過率の低下を抑えながら出力光に必要な角度拡がりを確保した光拡散体を提供することが出来る。また、同光拡散体の特性を生かして、光拡散板、投影された画像を結像させる透過型あるいは反射型のスクリーン、白色光源素子等の色合いの特性(特に「白色」の鮮やかさ)や明るさの特性等を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の基本形態に係る板状の光拡散体を示した図であり、(b)は赤色光及び青色光に対する散乱特性を概念的に表わした図である。
【図2】3種類のシリコーン樹脂粒子製品について、粒径分布を測定した結果を示したグラフである。
【図3】PMMA−シリコーン樹脂粒子系について、青色代表光と赤色代表光との散乱効率の比、Qsca (B)/Qsca (R)の粒径依存性を示すグラフである。
【図4】PMMAとシリコーン樹脂の屈折率分散を屈折率差とともに示したグラフであ。
【図5】PMMAに、2.0μm、7.3μm、9.0μmの各シリコーン樹脂粒子を単独分散した2mm厚の板について、白色光の半値角度拡がりの値を実測した結果を示すグラフである。
【図6】PMMA−シリコーン樹脂粒子系における全光線透過率の濃度依存性を3種の粒子径について示すグラフである。
【図7】基本実施例サンプル、第1比較サンプル及び第2比較サンプルについて、出力拡散光の色温度の角度特性の測定結果を表わすグラフである。
【図8】本発明を透過型スクリーンに適用した第1の例について説明する図である。
【図9】本発明を透過型スクリーンに適用した第2の例について説明する図である。
【図10】本発明を透過型スクリーンに適用した第3の例について説明する図である。
【図11】本発明を透過型スクリーンに適用した第4の例について説明する図である。
【図12】本発明を透過型スクリーンに適用した第5の例について説明する図である。
【図13】本発明を透過型スクリーンに適用した第6の例について説明する図である。
【図14】本発明を透過型スクリーンに適用した第7の例について説明する図である。
【図15】本発明を透過型スクリーンに適用した第8の例について説明する図である。
【図16】本発明を透過型スクリーンに適用した第9の例について説明する図である。
【図17】本発明を反射型スクリーンに適用した例について説明する図である。
【図18】本発明を3原色LED光混合型の白色光源素子に適用した例について説明する図である。
【図19】第1実施例サンプル、第3比較サンプル及び第4比較サンプルについて、出力拡散光の色温度の角度特性の測定結果を表わすグラフである。
【符号の説明】
1 第1粒子
2 第2粒子
3 光吸収剤(有機色素)
4 マット処理面
5 マットフィルム
6、9 基板(樹脂/ガラス)
7 接着剤
8 反射層(反射体)
10 印刷層/塗布層
11 付加層(反射防止層/ITO層/ハードコート層/抗菌層/光吸収層)
12 フレネルレンズ
13 プリズムシート(角度変換フィルム)
14 LED(3原色発光ダイオード)
15 キャップ部
16 光路長調整用反射面
20 樹脂マトリックス
30 光拡散体
31 メジャー面(光入力部)
32 メジャー面(光出力部)
41、51 赤色光の散乱光
42、52 青色光の散乱光

Claims (8)

  1. 光を入力する光入力部と、前記光入力部から入力された光を拡散後に出力させる光出力部を有する光拡散体であって:
    樹脂マトリックス中に、前記樹脂マトリックスと異なる屈折率を有する第1群の粒子及び第2群の粒子を分散させた材料からなり、
    前記第1群の粒子は、個数粒径分布について第1の最頻径R1 を有するとともに、前記第1の最頻径R1 に対し±0.5μmの範囲内に70分率以上の個数を含み;
    前記第2群の粒子は、個数粒径分布について前記第1の最頻径R1 より大きい第2の最頻径R2 を有するとともに、前記第2の最頻径R2 に対し±0.5μmの範囲内に70分率以上の個数を含んでおり;
    前記第1群の粒子は、該第1群の粒子を前記樹脂マトリックス中に単独で分散させたと仮定した場合に、
    (a)下記の式(1)、
    0.75≦Qsca (B)/Qsca (R)≦1.25 ・・・(1)
    (ここで、Qsca (B)は、前記樹脂マトリックス中において前記第1群の粒子が起こす1回の散乱について、青色代表波長435nmにおける散乱効率を表わし、Qsca (R)は、同じく前記樹脂マトリックス中において前記第1群の粒子が起こす1回の散乱について、赤色代表波長615nmにおける散乱効率を表わす)を満たす粒子であり、
    (b)下記の式(2)、
    T1 (B)≧T1 (R) ・・・(2)
    (ここで、T1 (B)は、前記光入力部から青色代表波長435nmの光を入力した場合の前記光出力部における全光線透過率を表わし、T1 (R)は、前記光入力部から赤色代表波長615nmの光を入力した場合の前記光出力部における全光線透過率を表わす)
    を満たし、且つ、
    (c)下記式(3)、
    I1 (x)=I1 (0)/2 ・・・(3)
    を満たすxについて、
    下記式(4)、
    x≧15゜ ・・・(4)
    (ここで、I1 (θ)は、白色光を前記光入力部から入力した場合に前記光出力部から出力される出力光の拡がり角度θ(0゜〜90゜)における光強度を表わす一般表式であり、I1 (0)はθ=0゜における光強度であり、xは白色光についての半値拡がり角度を表わす)を満たし、且つ、下記式(5)、
    T1 (c1 )≧0.8 ・・・(5)
    (ここで、T1 (c1 )は、前記第1群の粒子の重量濃度c1 (単独添加時)において、前記光入力部から白色光を入力した場合の前記光出力部における全光線透過率を表わす)、
    を満たすような重量濃度c1 (wt%)で前記樹脂マトリックス中に分散されており;
    前記第2群の粒子は、該第2群の粒子を前記樹脂マトリックス中に単独で分散させたと仮定した場合に、
    (d)下記式(6)式を
    T2 (3c1 )≧0.8 ・・・(6)
    (ここで、T2 (3c1 )は、前記第2群の粒子の重量濃度を、前記第1群の粒子の重量濃度c1 (実際に添加する重量濃度)の3倍として単独添加した条件で、前記光入力部から白色光を入力した場合の前記光出力部における全光線透過率を表わす)、
    を満たす粒子であり、且つ、
    (e)下記式(7)、(8)
    c2 ≧0.1(wt%) ・・・(7)
    T2 (c2 )≧0.8 ・・・(8)
    (ここで、c2 は前記マトリックスに対する添加重量濃度(wt%)であり、T2 (c2 )は、重量濃度c2 (wt%;単独添加)の条件で前記光入力部から白色光を入力した場合の前記光出力部における全光線透過率を表わす)、
    を満たすような重量濃度c2 (wt%)で前記樹脂マトリックス中に分散されていることを特徴とする、前記光拡散体。
  2. 前記樹脂マトリックスがポリメチルメタクリレートであり、前記第1群の粒子及び前記第2群の粒子が、透光性のシリコーン樹脂粒子である、請求項1に記載された光拡散体。
  3. 第1のメジャー面と前記第1のメジャー面と反対側の第2のメジャー面を備えた板状の光拡散体であって、
    前記第1のメジャー面が前記光入力部を提供し、前記第2のメジャー面が前記光出力部を提供する、請求項1または請求項2に記載された光拡散体。
  4. 請求項1または請求項2に記載された光拡散体で構成された結像部を備えた透過型スクリーン。
  5. 光拡散体に、外乱光を吸収するための光吸収材料が更に含有されている結像部を備えた透過型スクリーンであって;
    前記光拡散体は、請求項1または請求項2に記載された光拡散体である、前記透過型スクリーン。
  6. 第1のメジャー面と前記第1のメジャー面と反対側の第2のメジャー面を有し、前記第1のメジャー面が前記光入力部と前記光出力部とを提供する板状の光拡散体からなる結像部と、前記第2のメジャー面に沿って配置された光反射体とを備えた反射型スクリーンであって;
    前記光拡散体は請求項1または請求項2に記載された光拡散体である、前記反射型スクリーン。
  7. 第1のメジャー面と前記第1のメジャー面と反対側の第2のメジャー面を有し、前記第1のメジャー面が前記光入力部と前記光出力部とを提供する板状の光拡散体からなる結像部と、前記第2のメジャー面に沿って配置された光反射体とを備えた反射型スクリーンであって;
    前記光拡散体は、請求項1または請求項2に記載された光拡散体に、外乱光を吸収するための光吸収材料が更に含有されている光拡散体である、反射型スクリーン。
  8. 発光ダイオードを発光源として3原色の光を放出する発光部と、前記発光部を覆うキャップ部とを備えた発光素子であって;
    前記キャップ部は請求項1または請求項2に記載された光拡散体を含み、前記発光部から放出された3原色の光は、前記光拡散体で拡散され、白色光として外部に出射される、前記発光素子。
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