以下に、本発明の光拡散シート、その製造方法、透過型スクリーン及び背面投射型表示装置について、図面を参照しつつ説明する。
(光拡散シート)
図1は、本発明の光拡散シートの一例を示す模式的な斜視図であり、図2は、図1に示す本発明の光拡散シートの模式的な断面図である。また、図3は、本発明の光拡散シートの他の形態を示す、一部切り欠いた状態を示す模式的な斜視図である。本発明の光拡散シート11A,11Bは、図1〜図3に示すように、厚さ方向の一方の面S1に多数の集光レンズが並設された光拡散シート本体(以下、単に「シート本体」という)12と、そのシート本体12の厚さ方向の他方の面S2上に形成された、光照射により液体との接触角が変化する接触角変化層14と、その接触角変化層14上に形成された光透過部15と、その光透過部15間に形成された光吸収部16とを有している。
集光レンズは、図1の光拡散シート11Aに示すように、一次元配列する凸シリンドリカルレンズ13Aであってもよいし、図3の光拡散シートBに示すように、二次元配列する単位凸レンズ13Bであってもよい。なお、図3に示す単位凸レンズ13Bは、いわゆるハエの目レンズのことであり、通常、面S1の縦横(二次元的)にそれぞれ一定のピッチで形成されている。なお、図1及び図3においては、理解を容易にするために、図2に示す接着層18と支持板19を図示していない態様で表している。
本発明の光拡散シート11A,11Bの特徴は、図2に示すように、光透過部15が光拡散剤17を含むことにあり、更に詳しくは、図1に示すように、集光レンズに入射した入射光が通過して液体との接触角が変化した領域14a(集光領域14aともう。)の接触角変化層14上に、光拡散剤17を含む光透過部15が形成されていることにある。本発明において、光照射により液体との接触角が変化した集光領域14aは、シート本体12の略法線方向からの平行光を集光レンズ側から入射させ、いわゆるセルフアライメント(自己整合)的に平面視でストライプ状に形成した領域である。図1において、符号14aは、液体との接触角が変化した集光領域であり、符号14bは、集光レンズに入射した入射光が通過しないために液体との接触角が変化しない領域(非集光領域ともう。)であり、この非集光領域14b上には、光吸収部16が設けられる。
図1において、凸シリンドリカルレンズ13Aの側からシート本体12に入射する入射光6は、通常、映像情報を有する映像光であり、実際の入射光6は平行光と平行光以外の光(略平行光)とを含む。本願においては、この入射光6を「略平行光」として説明する。また、入射光6は凸シリンドリカルレンズ13Aにより接触角変化層14表面の近傍で集光し、その接触角変化層14及び光透過部15を透過して出射光7として拡散する。
本発明において、図1に示すように、集光レンズが一次元配列する凸シリンドリカルレンズ13Aである場合には、光透過部15と光吸収部16はいずれもストライプ状となり、図3に示すように、集光レンズが単位凸レンズ13Bである場合には、光透過部15はマトリックス状となり、光吸収部16は格子状となる。すなわち、図1に示す光拡散シート11Aは、光を主に水平方向に拡散させる多数の凸シリンドリカルレンズ13Aを有するレンチキュラーレンズシートであるのに対し、図3に示す光拡散シート11Bは、光を水平方向及び鉛直方向に拡散させる多数の単位凸レンズ13Bを有するマイクロレンズアレイシートである点で相違するが、それ以外の具体的な構成は本願の趣旨の範囲で同様のものとすることができる。以下においては、図1に示す、集光レンズが一次元配列する凸シリンドリカルレンズ13Aである場合について説明する。
(シート本体)
シート本体12は、光透過性の透明又は半透明のシート状部材であり、その厚さ方向の一方の面S1に多数の凸シリンドリカルレンズ13Aが並設されている。図1に示す凸シリンドリカルレンズ13Aは、入射光6を接触角変化層表面の近傍で集光させる、いわゆるレンチキュラーレンズであり、通常、入射光6側の表面S1が凸状の曲面を有した縦長に延びるレンズである。シート本体12の入射光側の面S1は、縦長に延びる凸シリンドリカルレンズ13Aがその縦長に延びる方向と直交する方向(幅方向)に一次元的に並列した態様となっている。
一方、シート本体12の厚さ方向の他方の面S2は実質的な平坦面であり、その平坦面上に光透過部15と光吸収部16とが交互にストライプ状に形成されている。なお、前記の「実質的な」としたのは、他方の面S2が厳密な平担面のみを指すのではなく、例えば反射防止等のための微細凹凸を有する面等を含む意味である。
シート本体12は、ディスプレイ等の光透過性を有する光学シートに用いられる樹脂材料で形成されている。そうした樹脂材料としては、熱可塑性樹脂等を挙げることができ、電子ビーム(EB)等の電子線や紫外線(UV)等の放射線を透過させる熱可塑性樹脂等を好ましく挙げることができる。
シート本体12を形成する樹脂として、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、又は、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の樹脂を用いることができ、特にアクリル樹脂が好ましく用いられる。アクリル樹脂で形成されたシート本体12は、表面耐擦傷性、耐候性及び透明性等が良好となる。アクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主体とする樹脂を好ましく用いることができ、(i)メチルメタクリレートの単独重合体、又は、(ii)メチルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、無水マレイン酸、スチレン及びα−メチルスチレンの群から選択される1つ以上の樹脂との共重合体、又は、(iii)メチルメタクリレート単独重合体と上記共重合体との混合物、等を用いることができる。その中でも特に、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、又は、メタクリル樹脂とスチレン樹脂との共重合体樹脂(MS樹脂)が多く用いられる。なお、こうした重合体樹脂は、後述する他の実施形態で示すように、シート本体12が2層以上の樹脂層で構成された場合において、表面耐擦傷性、耐候性及び透明性等が良好であるという観点から、そのシート本体12の出光側の表面を形成する樹脂層の形成材料であることが好ましい。
シート本体12は、上述した樹脂材料を例えば押出成形機等で押出成形することにより形成される。また、シート本体12は、透明な基材シートの一方の面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、塗布された紫外線硬化樹脂をスタンパーで成型すると同時に紫外線照射により硬化させて凸シリンドリカルレンズ13Aを形成する、いわゆる「重合接着」で形成することも可能である。ここで用いる紫外線硬化樹脂としては、エポキシ、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ウレタンアクリレート系等の樹脂が用いられる。すなわち、後者のシート本体12は、図1及び図2に示すように、凸シリンドリカルレンズ13Aが形成された光拡散レンズ部12aと、その光拡散レンズ部12aの基材となる基材シート部12bとで構成されている。こうした構成からなる後者のシート本体12は、光源としてLCDやDLPを用いた場合のように、レンズピッチの小さい凸シリンドリカルレンズ13Aを形成する場合に特に好ましい。
シート本体12の厚さは、凸シリンドリカルレンズ13Aのレンズピッチ、焦点距離、及び所望の視野角範囲によって適宜設定されるが、光源側になる一方の面S1に形成された凸シリンドリカルレンズ13Aの凸状部の頂部から、観察者側となる他方の平坦面S2までの厚さは、通常、100μm以上200μm以下の範囲内である。
凸シリンドリカルレンズ13Aは、入射光6を光透過部15の近傍で集光させる、いわゆるレンチキュラーレンズであり、通常、入射光6側の表面が凸状の曲面を有した縦長の凸シリンドリカルレンズである。こうした凸シリンドリカルレンズ13Aは、入射光6を光透過部15の近傍で集光させ、光拡散シートの他の一方の面にストライプ状に形成された光透過部15から出射する出射光7の視野角を広げるように機能する。凸シリンドリカルレンズ13Aの凸状の曲面形状は、入射光6を光透過部15の近傍で集光することができる半球状又は半楕円状等に形成されている。
この凸シリンドリカルレンズ13Aは、レンズが縦長に延びる方向と直交する方向(通常は幅方向)に、所定のピッチで多数並列した態様で設けられている。凸シリンドリカルレンズ13Aのピッチは、凸シリンドリカルレンズ13AとLCD等の画素とのモアレが出ないピッチに設定されていることが好ましい。具体的な凸シリンドリカルレンズ13Aのピッチは、50μm以上150μm以下であることが好ましい。こうした凸シリンドリカルレンズ13Aは、シート本体12を押出成形する際に、周面に凸シリンドリカルレンズ13Aの賦形型を有する押出成形ロールを用いることにより形成することができる。
(接触角変化層)
接触角変化層14は、図1及び図2に示すように、上述したシート本体12の厚さ方向の他方の面S2(すなわち、凸シリンドリカルレンズ13Aが形成されていない側の面)上に形成されている。この接触角変化層14は、光照射により液体との接触角が変化する層であり、光照射される前は液体との接触角が高く、光照射された後には液体との接触角が低下する性質を有する層である。
本願において、光照射における光とは、波長400nm以下の光であり、通常、波長380以下の紫外線が好ましく使用される。また、本願における液体とは、光照射によって接触角が変化した接触角変化層14の上に設けられる光透過部形成用の塗布液のことであり、接触角変化層14を形成する材料は、その光透過部形成用塗布液が油性であるか水性であるかにより任意に選択される。更に詳しくは、油性の光透過部形成用塗布液を用いる場合には、光照射によって油性塗布液との接触角が低下する材料で接触角変化層14を形成することが望ましく、水性の光透過部形成用塗布液を用いる場合には、光照射によって水性塗布液との接触角が低下する材料で接触角変化層14を形成することが望ましい。
接触角変化層14は、光が照射されない部分においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。本発明において、光が照射されない部分は、光透過部形成用塗布液(以下、光透過部形成用インクともいう)が塗布されない部分であることから、前記のような10°以上の接触角とすることにより、撥インク性が十分となり、その部分に光透過部形成用インクが残存するのを防ぐことができる。一方、液体との接触角が小さい(例えば10°未満)場合は、撥インク性が十分でなく、その部分に光透過部形成用インクが残存する可能性が生じる。
一方、光が照射された部分においては、液体との接触角が低下し、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となる接触角変化層14であることが好ましい。本発明において、光が照射された部分は、光透過部形成用塗布液が塗布される部分であることから、前記のような10°未満又は10°以下の接触角とすることにより、親インク性が十分となり、その部分に光透過部形成用インクが満遍なく広がるのでムラ無く塗布することができる。一方、液体との接触角が大きい(例えば10°以上又は10°超)場合は、親インク性が十分でなく、その部分に光透過部形成用インクが満遍なく広がらないので、所望の精度でストライプ状の光透過部15及び光吸収部16を形成するすることができなくなることがある。
なお、接触角変化層14は、少なくとも、光透過部形成用塗布液が塗布される側の表面が所望の接触角に変化していればよく、接触角変化層の厚さ方向全部に亘って所望の接触角に変化している必要はない。また、液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、又はその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
接触角変化層14は、光触媒を含有する光触媒含有層であり、少なくとも光触媒とバインダー(結着剤ともいう)とから構成されている。接触角変化層14である光触媒含有層は光照射による光触媒の作用で臨界表面張力を高くすることができ、液体との接触角を低くすることができる。光触媒の作用機構は必ずしも明確ではないが、光照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明において、接触角変化層14として光触媒含有層を用いた場合、光触媒作用により、バインダーの一部である有機基や添加剤の酸化、分解等を生じさせることができ、光が照射された部分の濡れ性を変化させて親インク性とし、光が照射されない撥インク性部分との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。その結果、光透過部形成用塗布液を親インク性部分にのみ塗布することができる。
接触角変化層14である光触媒含有層は、少なくとも、光触媒と、光触媒作用により撥インク性から親インク性に変化するバインダーとを含有している。バインダーは、光触媒反応によって液体との接触角が低下する樹脂材料であり、例えば、光触媒反応により親インク性から撥インク性に変化する、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アルコキシシラン系化合物、塩素化樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。このとき、光透過部形成用塗布液が油性である場合には、光触媒反応により、撥油性から親油性に変化するバインダー樹脂材料が用いられ、光透過部形成用塗布液が水性である場合には、光触媒反応により、撥水性から親水性に変化するバインダー樹脂材料が用いられる。バインダー用樹脂材料は、適当な溶剤で希釈され、さらに光触媒を配合して接触角変化層形成用塗布液として調整され、グラビアコート、カーテンコート、ロールコート、インクジェット等の公知の塗布手段や印刷手段で塗布される。その後、溶媒を除去して接触角変化層が形成される。接触角変化層14の厚さは、1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
光触媒としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、及び酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種又は2種以上の物質を用いることが好ましい。この発明によれば、接触角変化層14が光触媒を含有する光触媒含有層であるので、光触媒反応を利用して、例えば撥インク性を有する接触角変化層14の表面を、セルフアライメント(自己整合)的にストライプ状の親インク性領域に変化させることができる。
上記の光触媒のうち、酸化チタン(TiO2)が好ましく用いられる。酸化チタンとしては、アナターゼ型とルチル型のいずれも使用することができるが、アナターゼ型酸化チタンは、バンドギャップエネルギーが高く、化学的にも安定で毒性も無く、入手も容易であるので特に好ましい。
光触媒の粒径については、光透過部15に含まれて悪影響を及ぼさない程度の粒径であり且つ所望の光触媒作用を発揮することができれば特に限定されないが、例えばアナターゼ型酸化チタンについて言えば、粒径が小さいものの方が光触媒反応が効率的に起こるので好ましい。具体的には、アナターゼ型酸化チタンの平均粒径としては、50nm以下のものが好ましく、20nm以下のものが特に好ましい。例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業製、STS−02、平均結晶子径7nm)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学製、TA−15、平均結晶子径12nm)を挙げることができる。
光触媒含有層は、光触媒がバインダー中に分散した状態で形成されている。光触媒は、バインダーをも光励起により分解するおそれがあるため、本発明に適用するバインダーは光触媒の光酸化作用に対して十分な抵抗性を有するものであることが好ましい。
バインダーの具体的な材料としては、例えば、主骨格がシロキサン結合(−Si−O−)を有するシリコーン樹脂を好ましく使用することができる。シリコーン樹脂は、ケイ素原子に有機基が結合しており、光触媒を光励起すれば、シリコーン分子のケイ素原子に結合した有機基は光触媒作用により酸素含有基に置換されて濡れ性が向上するので、濡れ性が変化する物質としての機能を示す。
シリコーン樹脂としては、一般式YnSiX4−n(n=1〜3)で表されるケイ素化合物の1種又は2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物を使用することができる。Yは、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、又はエポキシ基を挙げることができ、Xは、ハロゲン、メトキシル基、エトキシル基、又はアセチル基を挙げることができる。具体的には、例えば上述した特許文献2に記載のように、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;及び、それらの部分加水分解物;及びそれらの混合物を使用することができる。
また、シリコーン分子は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてフルオロアルキル基を含有してもよい。この場合には、光が照射されない部分の臨界表面張力を更に低下させることができる。したがって、光透過部形成用塗布液と、光が照射されない部分との反撥性が増し、光が照射されない部分(すなわち光吸収部16が形成される部分)への光透過部形成用塗布液の付着を妨げることができると共に、使用可能な光透過部形成用塗布液の構成材料の選択肢が増すこととなる。
具体的には、下記のフルオロアルコキシシランの1種又は2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物から形成される。また、フルオロアルキル基を含有する化合物としては、上述した特許文献2に記載の下記の化合物を挙げることができ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られているものを使用しても良い。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3、(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3、(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3、(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3、CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3、CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)5CH2CHn2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2、(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2、(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2SiCH3(OCH3)2、(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3(CF2)7SO2N(C2H5)CH2CH2CH2Si(OCH3)3
本発明のバインダーとしては、反応性の線状シリコーン、好ましくはジメチルポリシロキサンを低架橋密度で架橋することにより得られるシリコーンが好ましく、そうした反応性シリコーン化合物としては、縮合して架橋を行うものでも、架橋剤を用いて架橋を行うものであってもよい。反応性シリコーン化合物として、水性エマルジョン型のものを用いてもよい。水性エマルジョン型の化合物は、水性溶媒を用いるので、取り扱いが容易である。また、本発明のバインダーとして使用する反応性シリコーン化合物と共に、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシロキサン化合物を混合することによって撥インク性(撥油性)を高めてもよい。
こうして形成された接触角変化層14は、凸シリンドリカルレンズ13A側からシート本体12に略平行光(入射光6)を入射させたときに、その略平行光が凸シリンドリカルレンズ13Aで集光して通過する領域(集光領域14aという)に対応するところが、撥インク性から親インク性に変化した親インク性領域となる。一方、その略平行光が凸シリンドリカルレンズ13Aで集光して通過しない領域(非集光領域14bという)に対応するところは、撥インク性から親インク性に変化しない撥インク性領域となる。この親インク性領域は、凸シリンドリカルレンズ13A側からの略平行光で起こる光触媒反応を利用して形成された領域であり、この親インク性領域上に、後述する光透過部形成用塗布液が塗布されて、光透過部15が形成されることになる。
なお、上記の親インク性領域の上に光透過部形成用塗布液が塗布されて光透過部15を形成し、また、上記の撥インク性領域の上に光吸収部形成用塗布液が塗布されて光吸収部16が形成されるが、セルフアライメントによる製造段階での集光領域14a(親インク性領域)及び非集光領域14b(撥インク性領域)の幅と、完成品時での光透過部15及び光吸収部16の幅とが異なる場合がある。そのため、製造段階では、完成品時における所望幅の光透過部15及び光吸収部16を形成するために、適宜、入射させる略平行光の強度、照射時間、入射角度等を調整して、所定幅の集光領域と非集光領域を形成する。
(光透過部)
光透過部15は、接触角変化層上にストライプ状に形成されている。光透過部15が形成される接触角変化層14上の領域は、シート本体12の略法線方向と略平行な光を凸シリンドリカルレンズ13A側から照射することにより、凸シリンドリカルレンズ13Aで集光された光路に位置する、接触角が低下した集光領域14aである。接触角が低下した集光領域14aは、セルフアライメント(自己整合)的に精度よく形成されているので、その集光領域14a上に、その集光領域14aと親インク性のある光透過部形成用塗布液を塗布することにより、精度よく光透過部15を形成することができる。なお、光透過部形成用塗布液は、集光領域14aが親油性である場合には油性のものが用いられ、集光領域14aが親水性である場合には水性のものが用いられる。
光透過部15は、少なくとも光拡散剤17とバインダーとから構成されている。バインダーとしては、特に限定されない公知の印刷インキ用樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等を挙げることができる。バインダーの特性として、集光領域14aが油性インクに対して親インク性である場合には、バインダーとして油性のものを用いることが好ましく、集光領域14aが水性インクに対して親インク性である場合には、バインダーとして水性のものを用いることが好ましい。こうした、親インク性や撥インク性の調整は、親インク性の樹脂成分や撥インク性の樹脂成分をバインダー中に含有させることにより行うことができる。例えば、撥インク性のシリコーン樹脂やフッ素樹脂等を含有させたり、シリコーン化合物やフッ素化合物等を添加させたりすることができる。
光拡散剤17としては、一般的に光学シートに用いられる光拡散性微粒子等の光拡散剤であればよく、例えば、スチレン樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、MS樹脂(メタクリル−スチレン共重合樹脂)微粒子等の有機系微粒子、硫酸バリウム微粒子、ガラス微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、炭酸カルシウム微粒子、シリカ(二酸化珪素)微粒子、酸化チタン微粒子、ガラスビーズ等の無機系微粒子等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を上記のバインダー中に含有させることができる。
光透過部15中の光拡散剤17の含有量は、所望の光拡散性能に合わせて調整され、通常、0.1重量%以上30重量%以下の範囲内で含有させることができる。光拡散剤17の含有量が0.1重量%未満では、光透過部15において十分な光拡散性能を発揮させることができず、光拡散剤17の含有層が30重量%を超えると、光透過部15中での光拡散剤の分散性が悪くなったり、光透過性が顕著に低下したりすることがある。本発明においては、光透過部15内にこのような範囲内で光拡散剤を含有させるので、光支持板光吸収部よりも光源側の光拡散シート本体に含まれる光拡散剤の量を減少させることができる。その結果、光拡散シート本体に含まれる光拡散剤に当たって拡散する映像光の一部がストライプ状の光吸収部で吸収されるのを抑制することができると共に、輝度が低下したりコントラストが低下したりするという従来の問題を解決できる。また、同様に、光吸収部16よりも観察者側の層又は部材に含まれる光拡散剤の量を減少又は無くすことができるので、観察者側から入射する外光が光吸収部16で吸収される前に光拡散剤で散乱したり反射したりするのを抑制でき、その結果、コントラストが低下してしまうという従来の問題を解決することができる。
特に光拡散剤の含有量を1重量%以上20重量%以下の範囲内で含有させることが好ましく、この範囲とすることにより、視野角を拡大できると共に、輝度低下の抑制やコントラスト低下の抑制という格別の効果を奏する。
こうした光透過部15は、少なくとも光拡散剤とバインダーとを含む光透過部形成用塗布液を塗布することにより形成される。光透過部形成用塗布液には、更に必要に応じて、コーティング適性等を持たせるための溶剤を加えたり、添加剤等を加えたりすることができる。例えば、溶剤としては、アルコール系、エステル系、ケトン系、水等が挙げられ、添加剤としては、レベリング剤、分散剤等が挙げられる。
取り扱いが容易な光透過部形成用塗布液として、溶剤を含まない電離放射線硬化型塗布液(インキ)に光拡散剤を含有させたものを用いることができる。電離放射線硬化型塗布液は、通常、プレポリマー、モノマー、光重合開始剤を主成分とするが、電子線硬化型の塗布液の場合は光重合開始剤を含まなくてもよい。プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、シリコンアクリレート等が挙げられ、これらの中のうちの1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。モノマーとしては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;n−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー;ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピペリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能アクリルモノマー等が挙げられ、これらの中のうちの1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。光重合開始剤としては、例えば、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−1,2−プロパジオン−2−オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン、ハロゲン置換アルキル−アリルケトン等が挙げられる。その他必要に応じて脂肪族アミン、芳香族アミン等の光開始助剤、チオキサンソン等の光鋭感剤等を用いてもよい。
本発明においては、光透過部形成用塗布液を、接触角が低下したストライプ状の集光領域14aのみに塗布し、その後に硬化させることにより光透過部15を形成することができる。形成された光透過部15は、いわゆる土手状となり、その後に、非集光領域14bに塗布される光吸収部形成用塗布液を堰き止めるように作用する。光透過部形成用塗布液の塗布方法としては、グラビアコート、ロールコート、ビードコート、スプレイコート、インクジェット等公知の方法を適用することができる。
上記のように油性のバインダーを含む光透過部形成用塗布液で光透過部15を形成した場合には、後述する光吸収部形成用塗布液を水性のものとすることにより、光吸収部形成用塗布液が光透過部15上に付着するのを防ぐことができ、その結果、光透過部15と光吸収部16との境界を明確に区分けすることができる。一方、水性のバインダーを含む光透過部形成用塗布液で光透過部15を形成した場合には、後述する光吸収部形成用塗布液を油性のものとすることにより、光吸収部形成用塗布液が光透過部15上に付着するのを防ぐことができ、その結果、光透過部15と光吸収部16との境界を明確に区分けすることができる。
なお、上記のように、光透過部15は、形成された集光領域14a上に光透過部形成用塗布液を塗布して形成されるが、他の方法としては、光透過部15を形成した後にシート本体12の他方の面S2側から光を照射し、その照射領域について光吸収部形成用塗布液と接触角変化層14との濡れ性をよくしてもよい。
(光吸収部)
光吸収部16は、上述したストライプ状の光透過部間に、同じくストライプ状に形成されている。光吸収部16が形成される接触角変化層14上の領域は、上記光吸収部16が形成されない領域、すなわち、シート本体12の略法線方向と略平行な光を凸シリンドリカルレンズ13A側から照射することにより、凸シリンドリカルレンズ13Aで集光された光路以外の非集光領域14bである。上記光透過部15は精度よくストライプ状に形成されているので、その光透過部間の非集光領域14b上に、光吸収部形成用塗布液を塗布することにより光吸収部16を精度よく形成することができる。この光吸収部16は、光拡散シート11Aの出光面側からの外光を遮断又は吸収して光拡散シート面に結像した画像のコントラストを向上させる作用を有している。
光吸収部16は、少なくとも光吸収性顔料と、バインダーとを有する光吸収部形成用塗布液で形成される。バインダーとしては、上記の光透過部形成用塗布液の場合と同様、特に限定されない公知の印刷インキ用樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等を挙げることができる。バインダーの特性として、非集光領域14bが油性インクに対して親インク性である場合には、バインダーとして油性のものを用いることが好ましく、非集光領域14bが水性インクに対して親インク性である場合には、バインダーとして水性のものを用いることが好ましい。こうした、親インク性や撥インク性の調整は、親インク性の樹脂成分や撥インク性の樹脂成分をバインダー中に含有させることにより行うことができる。例えば、撥インク性のシリコーン樹脂やフッ素樹脂等を含有させたり、シリコーン化合物やフッ素化合物等を添加させたりすることができる。
光吸収性顔料としては、一般的に光学シートに用いられる光吸収性顔料であればよく、カーボンブラックが好ましく用いられる。光吸収部形成用塗布液中の光吸収性顔料の含有量は、所望の光吸収性能に合わせて調整され、通常、5重量%以上50重量%以下の範囲内で含有させることができる。光吸収性顔料の含有量が5重量%未満では、光吸収部16において十分な光吸収性能を発揮させることができず、光吸収性顔料の含有層が50重量%を超えると、コーティング適性が悪くなることがある。
光吸収部形成用塗布液には、更に必要に応じて、コーティング適性等を持たせるための溶剤を加えたり、添加剤等を加えたりすることができる。例えば、溶剤としては、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、水等が挙げられ、添加剤としては、レベリング剤、分散剤等が挙げられる。取り扱いが容易な光透過部形成用塗布液として、溶剤を含まない電離放射線硬化型塗布液(インキ)に光拡散剤を含有させたものを用いることができる。電離放射線硬化型塗布液は、通常、プレポリマー、モノマー、光重合開始剤を主成分とするが、電子線硬化型の塗布液の場合は光重合開始剤を含まなくてもよい。プレポリマー、モノマー、光重合開始剤、及び塗布方法については、上述した光透過部形成用塗布液の場合と同じであるので、ここでは省略する。
光吸収部形成用塗布液の塗布方法としては、グラビアコート、ロールコート、ビードコート、スプレイコート、インクジェット等公知の方法を適用することができる。光吸収部16の厚さは特に限定されない。
(支持板)
支持体19は、光拡散シート11Aの光透過部15で拡散した光を透過することができる光透過性と、比較的薄いシート本体12のたわみを防いで結像した画像のゆがみを防ぐことができる剛性とを有していることが望ましく、光透過部15上及び光吸収部上に、直接又は接着層18を介して設けられる。
支持体19は、光透過性の透明又は半透明のシート状部材であり、ディスプレイ等の光透過性を有する光学シートに用いられる樹脂材料で形成されている。光透過性を有する材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。好ましくは、光透過性と剛性に他に、表面耐擦傷性及び耐候性を考慮して選択されることが望ましい。
支持体19は、上述した樹脂材料を例えば押出成形機等で押出成形することにより形成される。支持体19の厚さは、光透過性及び剛性を考慮して適宜設定されるが、通常1mm〜5mmの範囲である。支持体は、1層の樹脂層で形成されていてもよいが、2層以上の樹脂層で形成されていてもよい。また、上記の光透過部15の説明箇所に挙げた光拡散剤を含有させた支持体19であってもよいし、その光拡散剤を有する拡散層を備える支持体であってもよいが、その含有量は、本発明の所期の目的を達成できる程度であることが好ましい。また、支持体には、種々の機能を付加するための透明層、反射防止層、低反射層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、汚染防止層、偏光フィルタ層、及び電磁波シールド層等を、その目的に応じて設けてもよい。
接着層18は、例えば、放射線硬化型の接着剤やポリマー粘着剤で形成される。放射線硬化型の接着剤としては、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の接着剤が好ましく用いられ、ポリマー粘着剤としては、アクリル系ポリマー粘着剤等が好ましく用いられる。接着層18の厚さは特に限定されないが、通常10〜100μm程度である。
(透過型スクリーン及び背面投射型表示装置)
図4〜図6は、本発明の透過型スクリーンの例を示す模式的な斜視図である。本発明の透過型スクリーン31,32,41は、図4〜図6に示すように、本発明の光拡散シート(11A,11B)と、フレネルレンズシート(21,22)とを有している。具体的には、図4は、凸シリンドリカルレンズ13Aが形成された光拡散シート11Aと、フレネルレンズシート21とを有する透過型スクリーン31を示す模式的な斜視図であり、図5は、単位凸レンズ13Bが形成された光拡散シート11Bと、フレネルレンズシート21とを有する透過型スクリーン32を示す模式的な斜視図であり、図6は、凸シリンドリカルレンズ13Aが形成された光拡散シート11Aと、他の形態のフレネルレンズシート22とを有する透過型スクリーン41を示す模式的な斜視図である。なお、図5においては、支持板19を便宜上省略していると共に、図4や図6に示すような支持板19と光拡散シート11Bとの間の層を便宜上省略しているが、それらは図4や図6と同様に含まれる。
透過型スクリーン31,32,41は、光拡散シート11A、11Bの映像光源側にフレネルレンズシート21,22を備えている。フレネルレンズシート21,22は、映像光源から拡大投射される映像光を観察者側に配置された光拡散シート11A,11Bへ略平行光に屈折させるレンズシートである。フレネルレンズシートとしては、そうした機能を有するフレネルレンズシートであれば、図4及び図5に示したように、フレネル中心がシート面内に存在するサーキュラーフレネルレンズシート21であってもよいし、図6に示したように、フレネル中心がシート面内に存在しない全反射フレネルレンズシート22であってもよい。この全反射フレネルレンズシート22は、屈折面から入った映像光を全反射させる全反射面を備えたフレネルレンズで構成されている。また、全反射フレネルレンズを一部に有するフレネルレンズシートであってもよい。
なお、本発明の透過型スクリーン31,32,41に用いられるフレネルレンズシート21,22は、通常、シート状の基材21a,22aと、その基材上に設けられたフレネルレンズ部21b,22bとで構成され、近年の単光源に対応したファインピッチで形成されている。その形成材料としては、放射線硬化型樹脂、具体的にはウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系等のアクリレート系樹脂材料が用いられる。そうしたフレネルレンズシート21,22の形成は、上記放射線硬化型樹脂をフレネルレンズの賦形型に塗布し、さらにその上に載せた基材上から放射線(例えば紫外線や電子線等)を照射して放射線硬化型樹脂を硬化させることにより行うことができる。その後、賦形型からシートを剥離してフレネルレンズシートを作製する。
光拡散シート11A,11Bは、上述した本発明に係る光拡散シートを適用でき、フレネルレンズシート21,22から入射した略平行光を拡散させて画像の視野角を広くする。
このような透過型スクリーン31,32,41を使用することにより、映像光源からの映像光を所定の角度範囲に拡散させることができるので、透過型スクリーン31,32,41の正面から水平方向(左右方向)にずれた位置で観察しても、良好な映像を観察することができる。
本発明の透過型スクリーン31,32,41は、光透過部15と光吸収部16とが所望の位置に精度よく形成された光拡散シート11A,11Bを備えるので、外光の反射防止の向上と、映像のコントラストの向上を実現できる。また、本発明の透過型スクリーン31,32,41は、光拡散シート11A,11Bの光透過部15と光吸収部16とがいわゆるセルフアライメント(自己整合)的に形成されているので、ピッチが小さくても精度のよい光透過部15と光吸収部16とが得られる。その結果、光源としてLCDやDLPを用いた背面投射型表示装置の透過型スクリーンとして好ましく用いることができ、コントラストのよい透過型スクリーンとすることができる。
(背面投射型表示装置)
図7は、本発明の透過型スクリーンが装着された背面投射型表示装置の例を示す模式的な構成図である。図7(A)は、フレネル中心がシート面内にあるサーキュラーフレネルレンズを有する透過型スクリーン31(図4参照)が装着された背面投射型表示装置の例であり、図7(B)は、フレネル中心がシート面外にある全反射型のサーキュラーフレネルレンズを有する透過型スクリーン41(図6参照)が装着された背面投射型表示装置の例である。
背面投射型表示装置50a,50bは、本発明の透過型スクリーン31,41を前面側の窓部に備えたものであり、比較的薄型の筐体51a,51bの底部に光源52が配置され、筐体51a,51bの後部壁内面には光源52からの光54を透過型スクリーン31,41に向かって反射させるミラー53a,53bが配置されている。このときの光源52は、LCD(Liquid Crystal Display)やDLP(Digital Light Processing)を用いた単管方式の単光源である。光源52から出射した光54は、ミラー53a,53bで透過型スクリーン31,41側に反射され、透過型スクリーン31,41に入射した後、前述したフレネルレンズシート21,22で略平行光に偏向され、さらに光拡散シート11Aで所望の拡散光55に偏向されて、透過型スクリーン31,41から観察者側に向かって出射する。
(光拡散シートの製造方法)
次に、本発明の光拡散シートの製造方法について説明する。図8は、本発明の光拡散シートの製造方法の一例を示す工程図である。以下においては、集光レンズとして凸シリンドリカルレンズ13Aが形成された例で説明しているが、上述と同様、凸シリンドリカルレンズ13Aの代わりに、単位凸レンズ13Bが集光レンズとして形成されたものであってもよい。
本発明の光拡散シートの製造方法は、図8に示すように、厚さ方向の一方の面S1に多数の凸シリンドリカルレンズ13Aが形成された光拡散シート本体12の他方の面S2上に、光照射により液体との接触角が変化する接触角変化層14を形成する工程と、その接触角変化層14上に光拡散剤17を含む光透過部15を形成する工程と、その光透過部15,15間に光吸収部16を形成する工程とを有することに特徴がある。なお、光拡散シートを製造するためのその他の製造、例えば、シート本体12、凸シリンドリカルレンズ13Aの製造については、従来公知の方法と同様である。
接触角変化層14上に光拡散剤17を含む光透過部15を形成する工程は、光拡散シート本体12の略法線方向と略平行な光6を凸シリンドリカルレンズ13A側から照射することにより、凸シリンドリカルレンズ13Aで集光された光が通過する領域(集光領域14a)の接触角変化層14の接触角を低下させるステップと、接触角が低下した領域(集光領域14a)の接触角変化層14上に、光拡散剤17を含む樹脂組成物を塗布するステップとを含んでいる。
接触角変化層14の集光領域14aに光を集光させて接触角を低下させるのに用いられる光学系としては、図9に示すように、光源として半導体レーザー81を用い、その半導体レーザー81から照射されたレーザー光線85をポリゴンミラー82でスキャンし、さらにコリメーターレンズ83で略平行光101にし、その略平行光86を凸シリンドリカルレンズ13A側から光拡散シート11Aに照射し、その光拡散シート11Aを透過した光の光強度をCCDセンサー84等の受光装置で検知する光学系を例示できる。本発明においては、こうした光学系により、光触媒作用によって接触角変化層14の集光領域の接触角を低下させることができる。また、水銀灯にルーバーを組み合わせて略平行光とした紫外線を、シート本体12の凸シリンドリカルレンズ13A側より照射することによっても接触角を低下させることができる。
以下、図8を参照しつつ、本発明の光拡散シートの製造方法について工程順に説明する。
先ず、図8(A)に示すように、凸シリンドリカルレンズ13Aが賦形されたシート本体12を用意する。なお、このシート本体12は、従来公知の種々の方法で形成できるが、例えば樹脂材料を押出成形機等で押出成形することにより形成したり、透明な基材シート部12bの一方の面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、塗布された紫外線硬化樹脂をスタンパーで成型すると同時に紫外線照射により硬化させて、その基材シート部12b上に凸シリンドリカルレンズ13Aを形成したりすることができる。なお、図8(A)中、符号S1は光源側(入光面側)の面を指しており、符号S2は観察者側(出光面側)の面を指している。こうして、厚さ方向の一方の面S1に凸シリンドリカルレンズ13Aが並設された光拡散シート本体12を形成する。
次いで、図8(B)に示すように、そのシート本体12の観察者側(出光面側)の面S2に、光照射により液体との接触角が変化する接触角変化層14を形成する。この工程において、接触角変化層14は、上述したような光触媒とバインダー用樹脂材料とを含む接触角変化層形成用塗布液を塗布することにより形成される。この接触角変化層用塗布液は、シート本体12の観察者側の面にダイコート、カーテンコート、ディップコート、ロールコート等の塗布手段や各種の印刷手段で塗布される。
次いで、図8(C)に示すように、この接触角変化層14が形成されたシート本体12の凸シリンドリカルレンズ13A側から略平行光6を照射する。この光照射により、接触角変化層14の少なくとも観察者側の外表面のうちで略平行光6の光路となった集光領域14aは、後で塗布される光吸収部形成用塗布液との接触角を低下させるように、光触媒反応によって親インク化処理される。なお、「少なくとも外表面」とは、接触角変化層14の観察者側の外表面S2のみが親インク化したものであっても、外表面S2を含む所定の厚さからなる層が親インク化したものであってもよいことを意味している。
この工程において、光触媒反応によって接触角を低下させる親インク化処理方法とは、酸化チタン等の光触媒粒子を含有する接触角変化層14を露光する方法である。すなわち、図8(C)に示すように、凸シリンドリカルレンズ13A側からシート本体12に略平行光6を照射し、その略平行光6を凸シリンドリカルレンズ13Aで集光した集光領域14aを露光する方法である。こうした方法により、接触角変化層14の観察者側表面S2における露光された部分の側鎖が光触媒反応により分解し、その分解部分が、光吸収部形成用塗布液との接触角を低下させるように親インク化処理される。
光触媒反応の原理は以下の通りである。酸化チタンを含有する接触角変化層14に380nm以下の略平行光6を照射することにより、光触媒粒子内で光電気化学反応が起こって水や酸素等から活性酸素種等が発生する。活性酸素種等は、光触媒粒子内での光電気化学反応に基づいて生じる活性酸素又は活性水酸基であり、それらの活性酸素種等が親油性である接触角変化層14の側鎖(例えばアルキル側鎖)にアタックし、その側鎖の結合が切断される。側鎖が切断された部分には、その活性酸素種等が入れ替わって結合して親インク性に変化する。こうして、集光領域14aが親インク性で、非集光領域14bが撥インク性を呈した接触角変化層14が形成される。この場合において、親インク性が、油性インクに対するものでるか、水性インクに対するものであるかは、既述したように、光透過部形成用塗布液と光吸収部形成用塗布液とを選択することによって任意に選定される。
シート本体12の凸シリンドリカルレンズ13Aに照射する光としては、略平行光6であることが好ましい。なお、略平行光6により親インク化処理を行う場合には、外光等が接触角変化層14に影響しないように、暗室等で行うことが好ましい。
次に、図8(D)に示すように、接触角変化層14の外表面のうちで略平行光6の光路となった集光領域14a上に、光拡散剤17を含有する光透過部形成用塗布液を塗布し、ストライプ状の光透過部15を形成する。上述したように、集光領域14aは、光照射による光触媒反応によって、光透過部形成用塗布液に対する接触角が低下しているので、接触角が低下した集光領域14aに係る接触角変化層14上に光透過部形成用塗布液を塗布することにより、光拡散剤とバインダーとを有する光透過部15を精度よく形成することができる。光透過部形成用塗布液の塗布方法は、既述したのでここでは省略する。
この工程において、光透過部形成用塗布液として、放射線硬化型樹脂組成物をバインダー用樹脂材料として用いた場合には、その放射線硬化型樹脂組成物を塗布するステップの後に、放射線を照射するステップを行うことが望ましい。放射線硬化型樹脂組成物で光透過部形成用塗布液を構成することは、工程時間の短縮と寸法精度の点で好ましい。
次に、図8(E)に示すように、接触角変化層14の外表面S2のうちで略平行光6の光路とならなかった非集光領域14b上に、少なくとも光吸収性顔料を含む光吸収部形成用塗布液を既述した各種の方法で塗布し、光透過部間にストライプ状の光吸収部16を形成する。具体的には、例えば光吸収部形成用塗布液を全面に塗布した後にドクターによって光透過部15上の塗布液を掻き落とす等の方法で光吸収部16を形成することができる。この光吸収部形成用塗布液も、上記の光透過部形成用塗布液と同様に、放射線硬化型樹脂組成物を主成分とするものであってもよい。
特に、光吸収部形成用塗布液が、非集光領域14bに対しては親インク性を有し(すなわち濡れ性がよく)、光透過部15に対しては撥インク性を有する(すなわち濡れ性がよくない)ものを選択することが好ましい。こうすることにより、光吸収部形成用塗布液が光透過部15上に残る、いわゆる「カブリ」等の問題を極力少なくすることができる。
次に、図8(F)に示すように、接着層18を形成し、さらに支持板19をその接着層18を介して光拡散シート11Aと貼り合わせる。こうして光透過部15と光吸収部16とがストライプ状に精度よく形成された光拡散シート11Aを製造することができる。
以上説明した光拡散シート11Aの製造方法は、非集光領域14b以外の領域、すなわち略平行光6の光路となった集光領域14aをセルフアライメント的に精度よく形成することができるので、非集光領域14bもセルフアライメント的に精度よく形成することができる。