JP5629033B1 - 親水性積層体、及びその製造方法、防汚用積層体、物品、及びその製造方法、並びに防汚方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、物品の表面を装飾及び保護する樹脂フィルム、ガラスなどが曇ること及び汚れることにより物品の視認性及び美観が低下することがある。
そのため、そのような物品の視認性及び美観の低下を防ぐために、前記樹脂フィルム及びガラスには、親水化処理が施されている。
<1> 樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを有し、
前記親水性樹脂層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角が、40℃未満であることを特徴とする親水性積層体である。
<2> 伸び率が、10%以上である前記<1>に記載の親水性積層体である。
<3> 親水性樹脂層のマルテンス硬度が、50N/mm2〜300N/mm2である前記<1>から<2>のいずれかに記載の親水性積層体である。
<4> 親水性樹脂層が、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の親水性積層体である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の親水性積層体を含有することを特徴とする防汚用積層体である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の親水性積層体の製造方法であって、
樹脂製基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する未硬化樹脂層形成工程と、
前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性樹脂層を形成する親水性樹脂層形成工程とを含むことを特徴とする親水性積層体の製造方法である。
<7> 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成される前記<6>に記載の親水性積層体の製造方法である。
<8> 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成される前記<6>に記載の親水性積層体の製造方法である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の親水性積層体を表面に有することを特徴とする物品である。
<10> 前記<9>に記載の物品の製造方法であって、
親水性積層体を加熱する加熱工程と、
加熱された前記親水性積層体を所望の形状に成形する親水性積層体成形工程と、
所望の形状に成形された前記親水性積層体の樹脂製基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する射出成形工程とを含むことを特徴とする物品の製造方法である。
<11> 加熱工程における加熱が、赤外線加熱により行われる前記<10>に記載の物品の製造方法である。
<12> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の親水性積層体を物品の表面に積層することにより前記物品の汚れを防ぐことを特徴とする防汚方法である。
本発明の親水性積層体は、樹脂製基材と、親水性樹脂層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記樹脂製基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、PC/PMMA積層体、ゴム添加PMMAなどが挙げられる。
前記樹脂製基材がフィルム状の場合、前記樹脂製基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜1,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
前記親水性樹脂層は、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角は、40°未満である。
前記親水性樹脂層は、前記樹脂製基材上に形成されている。
前記親水性樹脂層は、その表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有している。
前記微細な凸部及び凹部のいずれかは、前記親水性樹脂層において、前記樹脂製基材側と反対側の面に形成されている。
ここで、微細な凹部とは、前記親水性樹脂層の表面において、隣接する凹部の平均距離が、1,000nm以下であることをいう。
隣接する前記凹部の平均距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
隣接する前記凸部の平均距離及び隣接する前記凹部の平均距離が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均距離が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
前記凹部の平均深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜1,000nmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましく、10nm〜300nmが更に好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さが、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均高さ及び前記平均深さが、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
前記凸部の平均アスペクト比及び前記凹部の平均アスペクト比が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記アスペクト比が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
まず、凸部又は凹部を有する前記親水性樹脂層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、AFMの断面プロファイルから凸部又は凹部のピッチ、及び凸部の高さ又は凹部の深さを求める。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、ピッチP1、P2、・・・、P10と、高さ又は深さH1、H2、・・・、H10とを求める。
ここで、前記凸部のピッチは、前記凸部の頂点間の距離である。前記凹部のピッチは、前記凹部の最深部間の距離である。前記凸部の高さは、前記凸部間の谷部の最低点を基準とした前記凸部の高さである。前記凹部の深さは、前記凹部間の山部の最高点を基準とした前記凹部の深さである。
次に、これらのピッチP1、P2、・・・、P10、及び高さ又は深さH1、H2、・・・、H10をそれぞれ単純に平均(算術平均)して、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)を求める。
なお、前記凸部又は凹部のピッチが面内異方性を有している場合には、ピッチが最大となる方向のピッチを用いて前記Pmを求めるものとする。また、前記凸部の高さ又は前記凹部の深さが面内異方性を有している場合には、高さ又は深さが最大となる方向の高さ又は深さを用いて前記Hmを求めるものとする。
また、前記凸部又は凹部が棒状の場合には、短軸方向のピッチを、前記ピッチとして測定する。
なお、前記AFM観察においては、断面プロファイルの凸の頂点、又は凹の底辺が、立体形状の凸部の頂点、又は凹部の最深部と一致するようにするため、断面プロファイルを、測定対象となる立体形状の凸部の頂点、又は立体形状の凹部の最深部を通る断面となるように、切り出している。
凸部又は凹部を有する前記親水性樹脂層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、断面及び前記表面SのAFM像を得る。
そして、表面のAFM像を、最表面側を明るい像、深部側を暗い像にした場合、暗い像の中に、明るい像が島状に形成されている場合、その表面は、凸部を有するものとする。
一方、明るい像の中に、暗い像が島状に形成されている場合、その表面は、凹部を有するものとする。
例えば、図1A及び図1Bに示す表面及び断面のAFM像を有する親水性樹脂層の表面は、凸部を有している。図2A及び図2Bに示す表面及び断面のAFM像を有する親水性樹脂層の表面は、凹部を有している。
ここで、親水性樹脂層の表面の平均表面積率は、以下のようにして測定できる。
凸部又は凹部を有する前記親水性樹脂層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、前記表面SのAFM像を得る。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、表面積S1、S2、・・・、S10を求める。次に、これらの表面積S1、S2、・・・、S10と、それぞれの観察領域の面積との比(表面積/面積)SR1、SR2、・・・、SR10を単純に平均(算術平均)して、親水性樹脂層の表面の平均表面積率SRmを求める。
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角は、40°未満であり、20°以下が好ましく、15°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。前記純水接触角の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5°などが挙げられる。
前記純水接触角は、例えば、PCA−1(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で滑落法によって測定することができる。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性モノマーと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
前記親水性モノマーとしては、例えば、ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
ここで、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
前記ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおけるポリエチレングリコールユニットの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300〜1,000などが挙げられる。前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、MEPM−1000(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、ビスアジド化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリルなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレートなどが挙げられる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレート、フィラーなどが挙げられる。
これらは、前記親水性樹脂層の伸び率、硬度などを調整するために用いることがある。
前記イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、エトキシ化イソシアヌル酸(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、前記親水性積層体を成形加工後、前記親水性樹脂層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記親水性樹脂層のマルテンス硬度が高まることがある。
前記マルテンス硬度は、例えば、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定できる。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定する。
なお、前記親水性積層体を成形加工後、前記親水性樹脂層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記親水性樹脂層の鉛筆硬度が高まることがある。
前記鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定する。
前記その他の部材としては、アンカー層などが挙げられる。
前記アンカー層は、前記樹脂製基材と、前記親水性樹脂層との間に設けられる層である。
前記アンカー層を設けることにより、前記樹脂製基材と前記親水性樹脂層との接着性を向上できる。
前記アンカー層の屈折率は、干渉ムラを防止するために、前記親水性樹脂層の屈折率と近いことが好ましい。そのため、前記アンカー層の屈折率は、前記親水性樹脂層の屈折率の±0.10以内が好ましく、±0.05以内がより好ましい。または、前記アンカー層の屈折率は、前記親水性樹脂層の屈折率と前記樹脂製基材の屈折率との間であることが好ましい。
前記伸び率は、例えば、以下の方法により求めることができる。
前記親水性積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とする。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm)する。前記伸び率の測定においては、前記樹脂製基材の品種によって測定温度が異なり、前記伸び率は、前記樹脂製基材の軟化点近傍又は軟化点以上の温度で測定する。具体的には、10℃〜250℃の間である。例えば、前記樹脂製基材が、ポリカーボネートやPC/PMMA積層体の場合は、190℃で測定するのが好ましい。
本発明の親水性積層体の製造方法は、未硬化樹脂層形成工程と、親水性樹脂層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記親水性積層体の製造方法は、本発明の前記親水性積層体を製造する方法である。
前記未硬化樹脂層形成工程としては、樹脂製基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の前記親水性樹脂層の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
前記アンカー層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記アンカー層などが挙げられる。
前記親水性樹脂層形成工程としては、前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性樹脂層を形成する工程あれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写原盤は、微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記転写原盤の材質、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成することが好ましい。また、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成することが好ましい。
前記活性エネルギー線としては、前記未硬化樹脂層を硬化させる活性エネルギー線であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記活性エネルギー線などが挙げられる。
第1の実施形態は、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として転写原盤の表面をエッチングすることにより微細な凸部及び凹部のいずれかを形成した転写原盤を用いて行う前記親水性樹脂層形成工程の一例である。
図3Aは、転写原盤であるロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図3Cは、図3BのトラックTにおける断面図である。ロール原盤231は、上述した構成を有する親水性積層体を作製するための転写原盤、より具体的には、前記親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための原盤である。ロール原盤231は、例えば、円柱状又は円筒状の形状を有し、その円柱面又は円筒面が親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体232が2次元配列されている。図3Cにおいて、構造体232は、成形面に対して凹状を有している。ロール原盤231の材料としては、例えば、ガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
まず、図5Aの断面図に示すように、円柱状又は円筒状のロール原盤231を準備する。このロール原盤231は、例えば、ガラス原盤である。次に、図5Bの断面図に示すように、ロール原盤231の表面にレジスト層(例えば、フォトレジスト)233を形成する。レジスト層233の材料としては、例えば、有機系レジスト、無機系レジストなどが挙げられる。前記有機系レジストとしては、例えば、ノボラック系レジスト、化学増幅型レジストなどが挙げられる。前記無機系レジストとしては、例えば、金属化合物などが挙げられる。
次に、図5Cの断面図に示すように、ロール原盤231の表面に形成されたレジスト層233に、レーザー光(露光ビーム)234を照射する。具体的には、図4に示したロール原盤露光装置のターンテーブル256上にロール原盤231を載置し、ロール原盤231を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)234をレジスト層233に照射する。このとき、レーザー光234をロール原盤231の高さ方向(円柱状又は円筒状のロール原盤231の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光234を間欠的に照射することで、レジスト層233を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光234の軌跡に応じた潜像235が、レジスト層233の全面にわたって形成される。
次に、例えば、ロール原盤231を回転させながら、レジスト層233上に現像液を滴下して、レジスト層233を現像処理する。これにより、図5Dの断面図に示すように、レジスト層233に複数の開口部が形成される。レジスト層233をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光234で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図5Dの断面図に示すように、潜像(露光部)235に応じたパターンがレジスト層233に形成される。開口部のパターンは、例えば、所定の単位格子Ucの規則的な周期パターンである。
次に、ロール原盤231の上に形成されたレジスト層233のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤231の表面をエッチング処理する。これにより、図5Eの断面図に示すように、錐体形状を有する構造体(凹部)232を得ることができる。錐体形状は、例えば、トラックTの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状又は楕円錐台形状であることが好ましい。前記エッチングとしては、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体232のパターンを形成することができる。以上により、目的とするロール原盤231が得られる。
図6Aの断面図に示すような未硬化樹脂層236が形成された樹脂製基材211を用意する。
次に、図6Bの断面図に示すように、ロール原盤231と、樹脂製基材211上に形成された未硬化樹脂層236とを密着させ、未硬化樹脂層236に活性エネルギー線237を照射し未硬化樹脂層236を硬化させて微細な凸部及び凹部のいずれかを転写し、微細な凸部及び凹部のいずれか212aが形成された親水性樹脂層212を得る。
最後に、ロール原盤231から、得られた親水性樹脂層212を剥離して、親水性積層体を得る(図6C)。
なお、樹脂製基材211が紫外線などの活性エネルギー線を透過しない材料で構成されている場合には、活性エネルギー線を透過可能な材料(例えば、石英)でロール原盤231を構成し、ロール原盤231の内部から未硬化樹脂層236に対して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。なお、転写原盤は上述のロール原盤231に限定されるものではなく、平板状の原盤を用いるようにしてもよい。ただし、量産性向上の観点からすると、転写原盤として上述のロール原盤231を用いることが好ましい。
第2の実施形態は、レーザーを転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより微細な凸部及び凹部のいずれかを形成した転写原盤を用いて行う前記親水性樹脂層形成工程の一例である。
図7Aは、板状の原盤の構成の一例を示す平面図である。図7Bは、図7Aに示したa−a線に沿った断面図である。図7Cは、図7Bの一部を拡大して表す断面図である。板状の原盤331は、上述した構成を有する親水性積層体を作製するための原盤、より具体的には、前記親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための原盤である。板状の原盤331は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた表面を有し、その表面が親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体332が設けられている。図7Cに示す構造体332は、成形面に対して凹状を有している。板状の原盤331の材料としては、例えば、金属材料を用いることができる。前記金属材料としては、例えば、Ni、NiP、Cr、Cu、Al、Fe、及びその合金を用いることができる。前記合金としては、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。前記ステンレス鋼(SUS)としては、例えば、SUS304、SUS420J2などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
図8は、板状の原盤を作製するためのレーザー加工装置の構成の一例を示す概略図である。レーザー本体340は、例えば、サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)である。レーザー加工に用いるレーザーの波長は、例えば、800nmである。ただし、レーザー加工に用いるレーザーの波長は、400nmや266nmなどでもかまわない。繰り返し周波数は、加工時間と、形成される凹部又は凸部の狭ピッチ化とを考慮すると、大きいほうが好ましく、1,000Hz以上であることが好ましい。レーザーのパルス幅は短い方が好ましく、200フェムト秒(10−15秒)〜1ピコ秒(10−12秒)程度であることが好ましい。
F=P/(fREPT×S)
S=Lx×Ly
F:フルエンス
P:レーザーのパワー
fREPT:レーザーの繰り返し周波数
S:レーザーの照射位置での面積
Lx×Ly:ビームサイズ
なお、パルス数Nは、1箇所に照射されたパルスの数であり、以下の式で求められるものである。
N=fREPT×Ly/v
Ly:レーザーの走査方向のビームサイズ
v:レーザーの走査速度
まず、図9Aに示すように、板状の原盤331を準備する。この板状の原盤331の被加工面である表面331Aは、例えば、鏡面状態となっている。なお、この表面331Aは、鏡面状態となっていなくてもよく、例えば、表面331Aに、転写用のパターンよりも細かな凹凸が形成されていてもよいし、転写用のパターンと同等か、それよりも粗い凹凸が形成されていてもよい。
図10Aの断面図に示すような未硬化樹脂層333が形成された樹脂製基材311を用意する。
次に、図10Bの断面図に示すように、板状の原盤331と、樹脂製基材311上に形成された未硬化樹脂層333とを密着させ、未硬化樹脂層333に活性エネルギー線334を照射し未硬化樹脂層333を硬化させて板状の原盤331の微細な凸部及び凹部のいずれかを転写し、微細な凸部及び凹部のいずれかが形成された親水性樹脂層312を得る。
最後に、板状の原盤331から、得られた親水性樹脂層312を剥離して、親水性積層体を得る(図10C)。
なお、樹脂製基材311が紫外線などの活性エネルギー線を透過しない材料で構成されている場合には、活性エネルギー線を透過可能な材料(例えば、石英)で板状の原盤331を構成し、板状の原盤331の裏面(成形面とは反対側の面)から未硬化樹脂層333に対して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。
本発明の防汚用積層体は、本発明の前記親水性積層体を少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の部材を含有する。
前記防汚用積層体は、前記親水性積層体自体であってもよい。
前記防汚用積層体は、前記親水性積層体の親水性により、親水性の汚れを防ぐことができる。
本発明の物品は、本発明の前記親水性積層体を表面に有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形により形成されることが好ましい。
本発明の物品の製造方法は、加熱工程と、親水性積層体成形工程と、射出成形工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記物品の製造方法は、本発明の前記物品の製造方法である。
前記加熱工程としては、親水性積層体を加熱する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記親水性積層体は、本発明の前記親水性積層体である。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂製基材のガラス転移温度近傍若しくはガラス転移温度以上であることが好ましい。
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記親水性積層体成形工程としては、加熱された前記親水性積層体を所望の形状に成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させて、空気圧により、所望の形状に成形する工程などが挙げられる。
前記射出成形工程としては、所望の形状に成形された前記親水性積層体の樹脂製基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
まず、親水性積層体500を加熱する。加熱は赤外線加熱が好ましい。
続いて、図11Aに示すように、加熱した親水性積層体500を、第1金型501と第2金型502との間の所定の位置に配置する。このとき、親水性積層体500の樹脂製基材が第1金型501を向き、親水性樹脂層が第2金型502を向くように配置する。図11Aにおいて、第1金型501は、固定型であり、第2金型502は、可動型である。
なお、第2金型502が吸引穴504を有さず、第1金型501に圧空孔(図示せず)を有する場合には、第1金型501の圧空孔から親水性積層体500に圧空を送ることにより、第2金型502のキャビティ面に親水性積層体500を装着する。
最後に、第1金型501から突き出しピン508を押し出して、得られた物品507を取り出す。
まず、固定枠に固定された親水性積層体によって分断された装置内の両空間について、真空ポンプ等で空気を吸引し、前記両空間内を真空引きする。
この時、片側の空間に事前に射出成型した成形材料を設置しておく。同時に、親水性積層体が軟化する所定の温度になるまで赤外線ヒーターで加熱する。親水性積層体が加熱され軟化したタイミングで、装置内空間の成形材料がない側に大気を送り込むことにより真空雰囲気下で、成形材料の立体形状に、親水性積層体をしっかりと密着させる。必要に応じ、さらに大気を送り込んだ側からの圧空押付けを併用してもよい。親水性積層体が成形体に密着した後、得られた加飾成形品を固定枠から外す。真空成形は、通常80℃〜200℃、好ましくは110℃〜160℃程度で行われる。
本発明の防汚方法は、本発明の前記親水性積層体を物品の表面に積層することにより前記物品の汚れを防ぐ方法である。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形により形成されることが好ましい。
以下の実施例において、凸部の平均距離、凹部の平均距離、凸部の平均高さ、凹部の平均深さ、及び平均アスペクト比は、以下のようにして求めた。
まず、凸部又は凹部を有する親水性樹脂層の表面を原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、AFMの断面プロファイルから凸部又は凹部のピッチ、及び凸部の高さ又は凹部の深さを求めた。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、ピッチP1、P2、・・・、P10と、高さ又は深さH1、H2、・・・、H10とを求めた。
ここで、前記凸部のピッチは、前記凸部の頂点間の距離である。前記凹部のピッチは、前記凹部の最深部間の距離である。前記凸部の高さは、前記凸部間の谷部の最低点を基準とした前記凸部の高さである。前記凹部の深さは、前記凹部間の山部の最高点を基準とした前記凹部の深さである。
次に、これらのピッチP1、P2、・・・、P10、及び高さ又は深さH1、H2、・・・、H10をそれぞれ単純に平均(算術平均)して、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)を求めた。
前記Pmと、前記Hmとから、平均アスペクト比(Hm/Pm)を求めた。
凸部又は凹部を有する親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返しAFM像を得、表面積S1、S2、・・・、S10を求めた。次に、これらの表面積S1、S2、・・・、S10と、それぞれの観察領域の面積との比(表面積/面積)SR1、SR2、・・・、SR10を単純に平均(算術平均)して、親水性樹脂層の表面の平均表面積率SRmを求めた。
純水接触角は、PCA−1(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で滑落法によって測定した。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
親水性樹脂層のマルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定した。
親水性樹脂層の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定した。
伸び率は、以下の方法により求めた。
親水性積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とした。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm;測定温度=190℃)した。
親水性積層体の全光線透過率は、JIS K 7361に従って、HM−150(商品名;株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて評価した。
親水性積層体のヘイズは、JIS K 7136に従って、HM−150(商品名;株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて評価した。
親水性樹脂層の密着性は、JIS K 5400に従い、碁盤目(1mm間隔×100マス)セロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT24)剥離試験により評価した。
親水性積層体の加熱収縮率差は、以下の方法により求めた。
まず、100mm×100mmサイズの四角の試験片を切り出した。このとき、該試験片の縦方向及び横方向がそれぞれ、樹脂製基材の長手方向及び幅方向と一致するように切り出した。次いで、これをオーブンで190℃×30分間加熱した。オーブンから取り出して室温まで自然冷却した後、縦方向と横方向の長さをそれぞれ定規で測定した。両方向について加熱前の長さ(=100mm)からの変化率をそれぞれ算出し、その差の絶対値を求めた。これをN=10個の試験片で求め、それらの平均値を親水性積層体の加熱収縮率差とした。
<微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤(ガラスロール原盤)の作製>
まず、外径126mmのガラスロール原盤を準備し、このガラスロール原盤の表面に以下のようにしてレジスト層を形成した。即ち、シンナーでフォトレジストを質量比で1/10に希釈し、この希釈レジストをディッピング法によりガラスロール原盤の円柱面上に平均厚み70nm程度に塗布することにより、レジスト層を形成した。次に、ガラスロール原盤を、図4に示したロール原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光することにより、1つの螺旋状に連なると共に、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像がレジスト層にパターニングされた。具体的には、六方格子状の露光パターンが形成されるべき領域に対して、0.50mW/mのレーザー光を照射し六方格子状の露光パターンを形成した。
次に、上述のようにして得られたロール原盤を用いて、UVインプリントにより親水性積層体を作製した。具体的には、以下のようにして行った。
樹脂製基材として、三菱ガス化学株式会社製のDF02U(PMMA/PC積層)(平均厚み125μm)を用いた。
前記樹脂製基材のPMMA表面に、下記組成のアンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥、硬化後の平均厚みが0.7μmになるように塗布した。
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製) 15質量部
・A−9300−1CL(イソシアヌル酸基含有トリアクリレート) 15質量部
(新中村化学工業株式会社製)
・酢酸ブチル 68.8質量部
・イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.6質量部
・イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.6質量部
・KP323(信越化学工業株式会社製) 0.003質量部
・A−9300 32質量部
(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製)32質量部
・MPEM−1000 32質量部
(メトキシポリエチレングリコール1000メタクリレート、第一工業製薬株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF社製) 4質量部
<防曇性>
防曇性は、20℃の環境にて、親水性積層体の親水性樹脂層の表面に対して、該表面から法線方向に5cm離れた距離から息を大きく1回吐きかけ、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○: 親水性積層体に外観変化が全くなかった。
×: 親水性積層体に、水膜形成、白い曇りなどの、外観変化が確認された。
親水性樹脂層の耐擦り傷性は、ワイピングクロス(KBセーレン株式会社製、savina MX)に純水をしみ込ませ、これを親水性樹脂層の表面に置き、荷重75gf/13mmφにて1,000往復摺動(摺動ストローク:3cm、摺動周波数:60Hz)した後、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:外観及び防曇性に変化がなかった。
△:外観は変化なかったが、防曇性が劣化した。或いは、防曇性は劣化しなかったが、外観に傷付きや白濁等の変化があった。
×:外観に傷付きや白濁等の変化があり、且つ防曇性が劣化した。
まず、親水性積層体をその評価面(親水性樹脂層表面)が上になるように黒色アクリル板(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリライト)に両面粘着シート(日東電工株式会社製、商品名:LUCIACS CS9621T)を用いて貼合した。次に、白色蛍光灯下にて評価面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:評価面は黒く、干渉ムラが確認できなかった。
△:評価面はわずかに色付き、干渉ムラがかすかに確認された。
×:評価面は緑色や赤色等に色付き、干渉ムラが確認された。
図11A〜図11Fに示す方法によりインモールド成形を行い、成形後の親水性樹脂層の純水接触角、防曇性、及びマルテンス硬度を上記評価方法により評価した。また、成形品の外観を観察し、親水性樹脂層の傷付き、クラック、剥離の有無を評価した。
なお、親水性積層体を加熱する加熱工程における加熱(赤外線加熱)温度は、190℃とし、成形材料としてポリカーボネートを用いた。インモールド成形において、親水性積層体が最も伸びている部位の伸び率は、40%であった。純水接触角、及び防曇性は、親水性積層体において10%伸びている部位で評価した。
実施例1において、ガラスロール原盤を作製する際のエッチング時間を変更した以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図13Aに示す。図13Aのa−a線に沿った断面図を図13Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例2において、ガラスロール原盤を作製する際の露光パターンを反転させた以外は、実施例2と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図14Aに示す。図14Aのa−a線に沿った断面図を図14Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例1において、ガラスロール原盤を作製する際のエッチング時間を変更した以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図15Aに示す。図15Aのa−a線に沿った断面図を図15Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例3において、ガラスロール原盤を作製する際のエッチング時間を変更した以外は、実施例3と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図16Aに示す。図16Aのa−a線に沿った断面図を図16Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
<微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤(板状の原盤)の作製>
レーザー加工装置として、図8に示した装置を用いた。レーザー本体340としては、サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)を用いた。レーザー波長は800nm、繰り返し周波数は1,000Hz、パルス幅は220fsとした。
まず、板状の基材(SUS)の表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)をスパッタリング法により被覆することにより、原盤を作製した。次に、この原盤のDLC膜の表面に対して、前記レーザー加工装置を用いて微細な凹部を形成した。この際、表1に示すレーザー加工条件にてレーザー加工を行った。以上により、形状転写用の板状の原盤を得た。なお、原盤のサイズは、2cm×2cmの矩形状とした。
次に、上述のようにして得られた板状の原盤を用いて、UVインプリントにより親水性積層体を作製した。具体的には、以下のようにして行った。
実施例1の親水性積層体の作製において、ロール原盤を、上述のようにして得られた板状の原盤に代えた以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図17Aに示す。図17Aのa−a線に沿った断面図を図17Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例6において、板状の原盤を作製する際の条件を、表1に示す条件に変更した以外は、実施例6と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた実施例7の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図18Aに示す。図18Aのa−a線に沿った断面図を図18Bに示す。
得られた実施例8の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図19Aに示す。図19Aのa−a線に沿った断面図を図19Bに示す。
得られた実施例9の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図20Aに示す。図20Aのa−a線に沿った断面図を図20Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例1において、アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物、及び親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
・8BR−500 45質量部
(ウレタンアクリレートポリマー、大成ファインケミカル株式会社製)
・UV−7550(ウレタンアクリレート、日本合成工業株式会社製) 15質量部
・酢酸ブチル 38.8質量部
・イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.6質量部
・イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.6質量部
・KP323(信越化学工業株式会社製) 0.003質量部
・A−600 43質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 43質量部
・ライトエステルTHF(1000) 10質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
TOM成形(オーバーレイ成形)を行い、成形後の親水性樹脂層の純水接触角、防曇性、及びマルテンス硬度を上記評価方法により評価した。また、成形品の外観を観察し、親水性樹脂層の傷付き、クラック、剥離の有無を評価した。
なお、親水性積層体を加熱する加熱工程における加熱(赤外線加熱)温度は、150℃とし、成形材料としてポリカーボネート製8カーブレンズを用い、レンズの凹部に親水性積層体を貼付した。オーバーレイ成形において、親水性積層体が最も伸びている部位の伸び率は、75%であった。純水接触角、及び防曇性は、親水性積層体において75%伸びている部位で評価した。結果を表3に示す。
実施例10において、ガラスロール原盤を作製する際のエッチング時間を変更した以外は、実施例10と同様にして、親水性積層体を作製した。作製した親水性積層体について、実施例10と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例10において、アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物、及び親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例10と同様にして、親水性積層体を作製した。作製した親水性積層体について、実施例10と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
・8BR−500 45質量部
(ウレタンアクリレートポリマー、大成ファインケミカル株式会社製)
・UV−7550(ウレタンアクリレート、日本合成株式会社製) 15質量部
・酢酸ブチル 38.8質量部
・イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.6質量部
・イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.6質量部
・KP323(信越化学工業株式会社製) 0.003質量部
・A−600 48質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 28質量部
・ライトエステルTHF(1000) 20質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
実施例12において、ガラスロール原盤を作製する際のエッチング時間を変更した以外は、実施例12と同様にして、親水性積層体を作製した。作製した親水性積層体について、実施例10と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
実施例10において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例10と同様にして、親水性積層体を作製した。作製した親水性積層体について、実施例10と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
・A−600 33質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 43質量部
・ライトエステルTHF(1000) 20質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
実施例10において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例10と同様にして、親水性積層体を作製した。作製した親水性積層体について、実施例10と同様の評価を行った。結果を、表2及び表3に示す。
・A−600 23質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 43質量部
・ライトエステルTHF(1000) 30質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
実施例1において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたアンカー層付樹脂製基材にロール原盤を密着させなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
実施例1〜15の親水性積層体の伸び率は、10%以上であり、成形加工性にも優れていた。成形加工前の親水性樹脂層のマルテンス硬度は、50N/mm2以上であり、成形加工後の防曇性、外観にも優れていた。成形加工後の親水性樹脂層の表面を原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察したところ、凸部又は凹部の平均距離は成形加工前と比較して変化なく、凸部の平均高さ又は凹部の平均深さは成形加工前と比較して10%程度低く又は浅くなり、平均アスペクト比は成形加工前と比較して10%程度小さくなり、平均表面積率は成形加工前と比較して5%程度小さくなっていた。成形加工による親水性樹脂層の表面の微細な凸部又は凹部の変形は、防曇性能に影響がない範囲であった。
また、成形加工前後で、親水性樹脂層のマルテンス硬度は同じであった。
212 親水性樹脂層
231 ロール原盤
232 構造体
236 未硬化樹脂層
237 活性エネルギー線
311 樹脂製基材
312 親水性樹脂層
331 板状の原盤
332 構造体
333 未硬化樹脂層
334 活性エネルギー線
Claims (13)
- 樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを有し、
前記親水性樹脂層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角が、40°未満であり、
前記樹脂製基材と前記親水性樹脂層の間にアンカー層を有し、
前記アンカー層が少なくともウレタンアクリレートを含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有し、
伸び率が、10%以上75%以下であることを特徴とする親水性積層体。 - 樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを有し、
前記親水性樹脂層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角が、40°未満であり、
前記樹脂製基材と前記親水性樹脂層の間にアンカー層を有し、
前記アンカー層の屈折率が、前記親水性樹脂層の屈折率の±0.10以内、及び前記親水性樹脂層の屈折率と前記樹脂製基材の屈折率の間、の少なくともいずれかであり、
伸び率が、10%以上75%以下であることを特徴とする親水性積層体。 - 親水性積層体の面内におけるX方向の加熱収縮率とY方向の加熱収縮率との差が5%以内である請求項1から2のいずれかに記載の親水性積層体。
- 親水性樹脂層のマルテンス硬度が、50N/mm2〜300N/mm2である請求項1から3のいずれかに記載の親水性積層体。
- 親水性樹脂層が、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する請求項1から4のいずれかに記載の親水性積層体。
- 請求項1から5のいずれかに記載の親水性積層体を含有することを特徴とする防汚用積層体。
- 請求項1から5のいずれかに記載の親水性積層体の製造方法であって、
樹脂製基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する未硬化樹脂層形成工程と、
前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性樹脂層を形成する親水性樹脂層形成工程とを含むことを特徴とする親水性積層体の製造方法。 - 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成される請求項7に記載の親水性積層体の製造方法。
- 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成される請求項7に記載の親水性積層体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の親水性積層体を表面に有することを特徴とする物品。
- 請求項10に記載の物品の製造方法であって、
親水性積層体を加熱する加熱工程と、
加熱された前記親水性積層体を所望の形状に成形する親水性積層体成形工程と、
所望の形状に成形された前記親水性積層体の樹脂製基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する射出成形工程とを含むことを特徴とする物品の製造方法。 - 加熱工程における加熱が、赤外線加熱により行われる請求項11に記載の物品の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の親水性積層体を物品の表面に積層することにより前記物品の汚れを防ぐことを特徴とする防汚方法。
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