JP2006044195A - 光硬化性シートおよびそれを用いた成形品 - Google Patents

光硬化性シートおよびそれを用いた成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 意匠性、耐磨耗性、耐候性、耐薬品性、加工性、シート取り扱い性等に優れた特性を有する光硬化性シート並びにそれを用いた成形品を開発する。
【解決手段】 光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)を含む光硬化性樹脂組成物(A)の層と、基材シート(B)と、さらに光硬化性樹脂組成物(A)層上に仮着されたカバーフィルム(C)を含む光硬化性シートにおいて、カバーフィルム(C)が、少なくとも微粘着層(C−1)とカバーフィルム基材(C−2)を含む光硬化性シートおよびそれを用いた成形品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光硬化性シートおよびその製造方法並びにこの光硬化性シートを用いた成形品およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた外観、意匠性、耐磨耗性、耐薬品性および耐候性を有し、表面粘着性のない光硬化性シートおよびその製造方法並びにこのシートを用いた成形品およびその製造法方法に関する。
プラスチック製品の成形と同時にその表面に装飾を施す方法として、(1)金型内表面に予め模様を付けておく方法、(2)金型内壁面に転写フィルムを装着し、成形と同時にフィルムの模様等を成形品の外面に転写する方法、(3)機能付シートまたは印刷シートを金型内壁面に貼り付けておき、成形と同時にそのシートを成形品表面に貼り付けする方法等が提案されている。(2)または(3)の方法については、例えば、耐候性付与シートまたは印刷シートを金型内壁面に形成した後、成形用樹脂を射出成形することにより、シートで表面が被覆された成形品を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
樹脂成形品は、これらの成形品に限らず、一般的な方法による成形品も含め、成形工程上や成形品の実使用環境上において、様々な傷付き要因にさらされる。長期にわたり、樹脂成形品の美麗さを保つためには、表面の耐傷付き性(耐磨耗性、表面硬度等)はそれらの成形品が具備すべき重要な特性である。
しかしながら、上記の技術は、加飾や機能性の付与を熱可塑性シートや印刷の転写で行っているため、得られた成形品の表面硬度が不十分なものであった。例えば、成形品に耐候性を付与する場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等からなる高耐候性シートを用いれば良いが、充分な表面硬度が得られないという問題がある。
これに対して、表面硬度の高い成形品を得ようとする場合には、予め架橋した表面硬度の高いシートを用いなければならない。しかしながら、そのようなシートは、立体形状の成形品への適用が困難である。
そこで、アクリル樹脂、反応性ビニル基を有する化合物および光重合開始剤を含有する樹脂組成物により形成される光硬化性樹脂層とシート基材とが積層されてなる光硬化性シートが提案された(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、光硬化させる前のシートは、低分子量の反応性ビニル基を有する化合物を含有するため、表面に粘着性が有り、あるいは表面の粘着性が時間と共に変化する等の現象が起こり、ロール状態での保存安定性が不良である。具体的には、粘着して巻き出せなかったり、低温で保存しないと両端より化合物がしみ出す等の問題があった。さらには、その表面粘着性のため、特に長時間連続して成形する際に金型面に付着して脱型できなかったり、あるいは印刷シートとして使用する場合の印刷工程において搬送ロールに貼りつくといった不具合が生じていた。
一方、側鎖に脂環式エポキシ基またはラジカル重合性不飽和基を有する樹脂と光重合開始剤からなる組成物を基材シートに積層することにより、インモールド成形またはインサート成形等に代表される上記(3)の方法に用いることができ、したがって意匠性の良好な成形品の製造に有利に用いることのできる、耐磨耗性、耐候性および耐薬品性に優れ、かつ、粘着性がなく、加工性および保存安定性に優れた光硬化性樹脂を表面に有する光硬化性シートが開示されている(例えば、特許文献5および6参照)。このような光硬化性シートは、成形品に加飾性を付与するばかりでなく、塗装の代替材料としての機能をも有する。
特許文献5および6に記載されるような光硬化性シートは、通常、光硬化性樹脂組成物および溶剤を含む混合溶液を基材シート上に塗工し、次いで加熱乾燥させて溶剤を揮発させることにより製造され、さらに基材シートの裏面に印刷層等を形成することにより、光硬化性加飾シートとすることもできる。
このような光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートにおいては、未反応の光硬化性樹脂組成物層が一般的に傷付きやすく、未反応時に付いた傷が最終成形品まで残ってしまうという問題が生じることがあった。また、埃や塵のような異物が未反応の光硬化性樹脂組成物層に付着し、最終成形品の意匠性を低下させるという問題を生じることもあった。
そこで、未反応時の光硬化性樹脂組成物層の傷付き防止、あるいは異物付着防止を目的として、光硬化性樹脂組成物層上にカバーフィルムを設けることが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
光硬化性シート上にカバーフィルムを設けることにより、上記した問題を解決することが可能である。しかしながら、カバーフィルムの種類によっては、光硬化性樹脂組成物層との密着性不足に起因して不具合を生じることがあった。例えば、光硬化性シートに対してストレスのかかる後工程(高速印刷工程等)で、カバーフィルムが一部剥離し、剥離したままの状態で光硬化性シートを取り扱うことにより未硬化の光硬化性樹脂組成物層が傷付くことがあった。特許文献7には、好適なカバーフィルムの態様について具体的には何らの開示も示唆もされてない。
本発明者らは、これらの光硬化性シートを開発する過程を通じて、未硬化時の光硬化性樹脂組成物層の傷付きや異物付着を防止し、かつ光硬化性樹脂組成物層との密着性/剥離性バランスの良好な、特定の態様を成すカバーフィルムを用いることにより、優れた諸物性(耐磨耗性、耐候性、耐薬品性、加工性、保存安定性、外観、シート取り扱い性等)を発現することが可能な光硬化性シートを得ることが可能であることを見出し、これにより本発明を完成するに至ったものである。
特開昭60−250925号公報 特公昭59−36841号公報 特公平8−2550号公報 特公平7−323号公報 特開2002−80550号公報 特開2002−79621号公報 特開2003−34002号公報
本発明の目的は、上記特許文献7において提案したカバーフィルムを仮被着した光硬化性シートの特性を改善し、意匠性、耐磨耗性、耐候性、耐薬品性、加工性、さらにはシート取り扱い性等に関して、さらに優れた特性を有する光硬化性シート並びにそれを用いた成形品を開発することにある。
すなわち、本発明は、光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)を含む光硬化性樹脂組成物(A)の層と、基材シート(B)と、さらに光硬化性樹脂組成物(A)層上に仮着されたカバーフィルム(C)を含む光硬化性シートにおいて、カバーフィルム(C)が、少なくとも微粘着層(C−1)とカバーフィルム基材(C−2)を含む光硬化性シートを提供する。
また、本発明は、上記光硬化性シートの基材シート(B)側に、印刷層、蒸着層、接着層およびプライマー層から選ばれる少なくとも1の層を形成した光硬化性加飾シートを提供する。
さらに、本発明は、上記光硬化性シートおよび光硬化性加飾シートの製造方法並びにこの光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを用いた成形品の製造方法およびそれによって得られる成形品を提供するものである。
本発明によれば、優れた諸物性(耐磨耗性、耐候性、耐薬品性、加工性、保存安定性、外観、シート取り扱い性等)を発現することが可能な光硬化性シート並びに意匠性に優れた成形品が提供される。
以下に、本発明の好ましい実施の態様について説明する。
本発明の光硬化性シートは、光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)を含む光硬化性樹脂組成物(A)の層と、基材シート(B)と、さらに光硬化性樹脂組成物(A)層上に仮被着されたカバーフィルム(C)を含む光硬化性シートにおいて、カバーフィルム(C)が、少なくとも微粘着層(C−1)とカバーフィルム基材(C−2)を含む光硬化性シートからなることを特徴とする。
光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)とは、1分子内に2個以上の光重合性官能基を有し、かつ、光重合反応により硬化して架橋体を形成することが可能な熱可塑性樹脂成分である。かかる成分の光重合性官能基としては、ビニル基や(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和基を有し、光ラジカル重合機構で反応する官能基や、脂環式エポキシ基等の光カチオン重合機構で反応する官能基等が挙げられる。
あるいは、熱可塑性樹脂(a−1)の耐候性の観点より、熱可塑性樹脂(a−1)は分子内に光重合性官能基を有するアクリル系樹脂であることが好ましい。
さらに、良好な耐磨耗性や耐薬品性発現の観点より、熱可塑性樹脂(a−1)は側鎖に光重合性官能基を有するアクリル系樹脂であることが、より好ましい。
特に、光硬化性樹脂組成物(A)が側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)を含み、かつ、(a−1)以外の架橋性化合物を実質的に含まない構成の場合、著しく良好な耐磨耗性と成形性、保存安定性が両立された光硬化性シートを得ることができるので好ましい。このように側鎖に光重合性官能基を有する構造を導入したことにより、側鎖間で架橋反応が進行するため、低分子量架橋性化合物を含有させることなく良好な耐磨耗性が発現すると共に、低分子量の架橋性化合物が存在しないことより、シート表面に粘着性が無く、保存安定性に優れるという利点を有する。
この光重合性官能基としては、光を照射することにより重合を進行せしめるものであり、好ましくはラジカル重合性不飽和基、または下記構造式(1)で示される脂環式エポキシ基が挙げられる。
Figure 2006044195
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が25〜175℃の、ポリマー側鎖中にラジカル重合性不飽和基を有するものが挙げられる。上記ガラス転移温度は、下限が30℃以上で、上限が150℃以下であることがさらに好ましい。
具体的には、ポリマーとして以下の化合物(1)〜(8)を重合または共重合させたものに対し、後述する方法(イ)〜(ニ)によりラジカル重合性不飽和基を導入したものを用いることができる。
(1) 水酸基を有する単量体:N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等
(2) カルボキシル基を有する単量体:(メタ)アクリル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等
(3) エポキシ基を有する単量体:グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等
(4) アジリジニル基を有する単量体:2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリル等
(5) アミノ基を有する単量体:(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等
(6) スルホン基を有する単量体:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等
(7) イソシアネート基を有する単量体:2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの等モル付加物のような、ジイソシアネートと活性水素を有するラジカル重合性単量体の付加物、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等
(8) さらに、上記の共重合体のガラス転移温度を調節したり、光硬化性シートの物性を調和させたりするために、上記の化合物をそれと共重合可能な単量体と共重合させることもできる。そのような共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のイミド誘導体、ブタジエン等のオレフィン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
次に、上述のようにして得た重合体に、以下に述べる方法(イ)〜(ニ)によりラジカル重合性不飽和基を導入する。
(イ) 水酸基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体等を縮合反応させる。
(ロ) カルボキシル基、スルホン基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、前述の水酸基を有する単量体を縮合反応させる。
(ハ) エポキシ基、イソシアネート基またはアジリジニル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、前述の水酸基を有する単量体またはカルボキシル基を有する単量体を付加反応させる。
(ニ) 水酸基またはカルボキシル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、エポキシ基を有する単量体またはアジリジニル基を有する単量体、あるいはイソシアネート基を有する単量体、またはジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステル単量体との等モル付加物を付加反応させる。
上記の反応は、微量のハイドロキノン等の重合禁止剤を加え、乾燥空気を送りながら行うことが好ましい。
本発明に用いられる、側鎖に脂環式エポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が25〜175℃である、ポリマー側鎖中に脂環式エポキシ基を有するものが挙げられる。上記ガラス転移温度は、下限が30℃以上であり、上限が150℃以下であることがさらに好ましい。それらの具体的な合成例を挙げると、例えば、第一の方法として、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(9)をラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合法等の公知の重合方法により単独重合させたり、上記(1)〜(8)に示すような他の共重合可能なモノマーと共重合させたりすることにより得ることができる。
また、側鎖に脂環式エポキシ基を有する熱可塑性樹脂は、上記単独重合や共重合以外の方法によっても得ることができる。例えば、第二の方法として、脂環式エポキシ基と第1の反応性基とを有する化合物と、第1の反応性基と反応する第2の反応性基を有する熱可塑性樹脂とを反応させることによって得ることができる。この第1の反応性基と第2の反応性基との組合せの代表的な例としては、下記の表1に示すようなイソシアネート基と水酸基との組合せが挙げられる。
Figure 2006044195
上記の第1の方法において用いられる、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(9)としては、他のラジカル重合性単量体と共重合可能なものであれば特に限定されないけれども、具体的には下記構造式(2)で示されるような化合物が挙げられる。
Figure 2006044195
(上式中、Rはメチル基または水素原子を表し、nは0〜5の整数である)
熱可塑性樹脂(a−1)の側鎖の光重合性官能基の量は、二重結合当量(側鎖ラジカル重合性不飽和基1個あたりの平均分子量)または脂環式エポキシ当量(側鎖脂環式エポキシ基1個あたりの平均分子量)が、仕込み値からの計算値で平均3000g/mol以下であることが、耐擦傷性、耐磨耗性向上の観点から好ましい。さらに好ましい範囲は、平均1200g/mol以下であり、最も好ましい範囲は、平均800g/mol以下である。
このように、架橋に関与する光重合性官能基を熱可塑性樹脂中に複数導入することにより、低分子量の架橋性化合物を使用する必要がなく、長期間の保管や加熱成形時においても、表面粘着性を有することなく、効率的に硬化物性を向上することが可能となる。
熱可塑性樹脂(a−1)の数平均分子量は、光硬化性樹脂組成物(A)を用いて形成した光硬化性シートをインサート成形やインモールド成形する際に、金型離型性が良好になる点や光硬化後のインサート/インモールド成形品の表面硬度の観点から、数平均分子量は5,000以上であることが好ましい。一方、合成の容易さや外観の観点、また基材シート(B)との密着性発現の観点から、数平均分子量が2,500,000以下であることが好ましい。さらに好ましくは、下限値が10,000以下でであり、上限値が1,000,000以下である。
また、熱可塑性樹脂(a−1)はガラス転移温度が25〜175℃に調節されていることが好ましい。上記ガラス転移温度の下限は30℃以上であることがさらに好ましい。また、上記ガラス転移温度の上限は150℃以下であることがさらに好ましい。インサート成形やインモールド成形時の光硬化性シートの金型剥離性や光硬化後のインサート/インモールド成形品の表面硬度の観点から、ガラス転移温度が25℃以上であることが好ましい。一方、光硬化性シートの取り扱い性の観点からガラス転移温度は175℃以下であることが好ましい。
また、得られる熱可塑性樹脂のガラス転移温度を考慮すると、ホモポリマーとして高いガラス転移温度を有するものとなるビニル重合性単量体を使用することが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂の耐候性向上の観点からは、ビニル重合性単量体として(メタ)アクリレート類を主成分として用いることが好ましい。
また、後述するように、本発明において用いる光硬化性樹脂組成物(A)中には無機微粒子(a−3)を添加してもよく、その場合には無機微粒子(a−3)の表面の官能基(ヒドロキシル基,カルボキシル基,シラノール基等)と反応しうる基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン化シリル基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を分子内に有するビニル重合性単量体は、得られる光硬化性樹脂組成物の剛性、靱性、耐熱性等の物性をさらに向上させるように働くため、かかる官能基がラジカル重合可能なビニル重合性単量体成分の一部として含有されていてもよい。
このような反応性の基を分子内に含有するビニル重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
光硬化性樹脂組成物(A)には、光重合開始剤(a−2)が含有されている。光重合開始剤(a−2)としては、光照射によってラジカルを発生させる光ラジカル重合開始剤や酸を生成する光カチオン重合開始剤が挙げられるが、側鎖の光重合性官能基がラジカル重合性不飽和基の場合は光ラジカル重合開始剤が使用され、脂環式エポキシ基の場合は光カチオン重合開始剤が使用される。
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができ、特に限定はないけれども、硬化時の黄変性や耐候時の劣化を考慮すると、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系のような分子内にアミノ基を含まない開始剤を用いるのがよい。例えば、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が好ましい。これらのうちには成形方法によっては一時的にその化合物の沸点以上の温度になるものがあるので、注意が必要である。成形品の表面硬度を上げるため、n−メチルジエタノールアミンなどの酸素による重合硬化阻害を抑制する添加剤を添加しても良い。また、これらの光重合開始剤の外に、成形時の熱を利用しての硬化も考慮して、各種過酸化物を添加してもよい。光硬化性シートに過酸化物を含有させる場合には、150℃、30秒程度で硬化させる必要があるので、臨界温度の低い過酸化物、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が好ましく用いられる。
光ラジカル重合開始剤の添加量は、硬化後の残存量が耐候性に影響するため、熱可塑性樹脂(a−1)100質量部に対して5質量部以下が望ましく、特に光ラジカル重合開始剤がアミノ系の光ラジカル重合開始剤である場合は、1質量部以下が好ましい。
光カチオン重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができ、特に限定されないが、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、鉄アレーン(芳香族炭化水素)錯体等が挙げられる。なかでも、脂環式エポキシ基を有する化合物との反応性、着色の問題等を考慮すると下記構造式(3)で示されるトリアリールスルホニウム塩がより好ましい。
Figure 2006044195
(上式中、R1は炭素−炭素結合もしくは炭素−硫黄結合を介する置換もしくは未置換の芳香族環を表し、R2およびR3は、それぞれ、置換あるいは未置換の芳香族環を表す)
光カチオン重合開始剤の添加量は、熱可塑性樹脂(a−1)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
光硬化性樹脂組成物(A)には、さらに耐擦傷性や耐磨耗性を向上させる目的で、無機微粒子(a−3)を添加することができる。無機微粒子(a−3)においては、得られる光硬化性樹脂組成物が透明となれば、その種類や粒子径、形態は特に制限されない。無機微粒子の例としては、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドープ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ドープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、入手の容易さや価格面、得られる光硬化性樹脂組成物層の透明性や耐磨耗性発現の観点から、特にコロイダルシリカが好ましい。
コロイダルシリカは、通常の水性分散液の形態や、有機溶媒に分散させた形態で用いることができるが、熱可塑性樹脂(a−1)とともに均一かつ安定に分散させるためには、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。
そのような有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等を例示することができる。熱可塑性樹脂とともに均一に分散させるためには、熱可塑性樹脂を溶解可能な有機溶媒を選択することが好ましいが、本発明の光硬化性シートを製造する際にこれらの有機溶媒は、後述するように、加熱乾燥させて揮発させるため、沸点が基材シート(B)の主たる構成成分である樹脂成分(b)のガラス転移温度より80℃以上高いと光硬化性シート内に残存し易く、また30℃以上高くても光硬化性シート内に残存する傾向が見られる。
有機溶媒に分散させた形態のコロイダルシリカとしては、例えば、メタノールシリカゾルMA−ST、イソプロピルアルコールシリカゾルIPA−ST、n−ブタノールシリカゾルNBA−ST、エチレングリコールシリカゾルEG−ST、キシレン/ブタノールシリカゾルXBA−ST、エチルセロソルブシリカゾルETC−ST、ブチルセロソルブシリカゾルBTC−ST、ジメチルホルムアミドシリカゾルDBF−ST、ジメチルアセトアミドシリカゾルDMAC−ST、メチルエチルケトンシリカゾルMEK−ST、メチルイソブチルケトンシリカゾルMIBK−ST(以上商品名、日産化学工業(株)製)等の市販品を用いることができる。
無機微粒子(a−3)の粒子径は、得られる光硬化性樹脂組成物層の透明性の観点から、通常は200nm以下であるのが好ましい。より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。また、無機微粒子(a−3)の添加量は、熱可塑性樹脂(a−1)の固形分100質量部に対して、無機微粒子固形分で5〜400質量部の範囲が好ましい。添加量の下限は、10質量部以上であることがさらに好ましい。また、添加量の上限は、200質量部以下であることがさらに好ましい。無機微粒子の添加量が5質量部未満の場合には、耐磨耗性向上効果が認められないことがあり、また添加量が400質量部を超えた場合には、光硬化性樹脂組成物(A)の保存安定性が低下するのみならず、得られる光硬化性シートの成形性が低下することがある。
上記無機微粒子(a−3)としては、下記構造式(4)で表されるシラン化合物によって、予め表面が処理されたものを用いてもよい。表面処理された無機微粒子の使用は、光硬化性樹脂組成物(A)の保存安定性がさらに良好となり、また得られる光硬化性シートの表面硬度および耐候性も良好となるので好ましい。
SiR4 a5 b(OR6c (4)
(上式中、R4およびR5は、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、エポキシ結合または炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、R6は水素原子またはエーテル結合、エステル結合、エポキシ結合もしくは炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、aおよびbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である)
前記構造式(4)で表されるシラン化合物のなかでも、下記構造式(5)〜(10)で表されるシラン化合物を好ましいものとして挙げることができる。
SiR7 a8 b(OR9c (5)
SiR7 n(OCH2CH2OCO(R10)C=CH24-n (6)
CH2=C(R10)COO(CH2pSiR11 n(OR93-n (7)
CH2=CHSiR11 n(OR93-n (8)
HS(CH2pSiR11 n(OR93-n (9)
Figure 2006044195
(上式中、R7およびR8は、それぞれ、エーテル結合、エステル結合またはエポキシ結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、R9は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、R10は水素原子またはメチル基を表し、R11は炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表し、aおよびbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数であり、nは0〜2の整数であり、pは1〜6の整数である)
前記構造式(5)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシエチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルトリエトキシシラン、ジエトキシエチルジメトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記構造式(6)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラキス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、テトラキス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
前記構造式(7)で表されるシラン化合物としては、例えば、β−アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記構造式(8)で表されるシラン化合物としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記構造式(9)で表されるシラン化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記構造式(10)で表されるシラン化合物としては、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
かかるシラン化合物は、無機微粒子(a−3)の固形分1モル部に対して、0〜3モル部の割合で使用することが好ましい。シラン化合物の使用量が3モル部を超える場合には、得られる光硬化性シートの耐磨耗性が低下することがある。シラン化合物で表面処理された無機微粒子は、少量の水の存在下で、シラン化合物と無機微粒子を加熱攪拌することにより得ることができる。
無機微粒子(a−3)を熱可塑性樹脂(a−1)に添加する方法としては、予め熱可塑性樹脂(a−1)を合成後に溶剤に溶解し、無機微粒子を混合する方法でも良いし、また熱可塑性樹脂(a−1)を構成するビニル重合性単量体と無機微粒子を混合した条件下で熱可塑性樹脂(a−1)を重合する方法等の任意の方法を選択することができる。
本発明において、光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)中の光重合性官能基が脂環式エポキシ基の場合には、脂環式エポキシ基と無機微粒子表面の官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、シラノール基等)が混合の間に架橋し、ゲル化を起こすことがある。このようなゲル化現象を防止するためには、アンモニアおよび沸点が100℃以下であるアミン化合物から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。光硬化性樹脂組成物(A)を用いて光硬化性シートを形成する際に、シート中に過剰に残存しないためには、アミン化合物の沸点は100℃以下であることが必要である。
かかるアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
また、上記アミン化合物の添加量は、熱可塑性樹脂(a−1)の固形分100質量部に対して、0.01〜0.5質量部の範囲であることが好ましい。光硬化性樹脂組成物(A)の安定性保持の観点から、その添加量は0.01質量部以上が好ましいが、添加量が0.5質量部を超えると、光硬化性シートをインサート成形やインモールド成形することによって得られた成形品を光硬化させても、光カチオン重合が進行せず、耐擦傷性や耐薬品性が劣ることがある。
光硬化性樹脂組成物(A)には、また、必要に応じて、増感剤、変性用樹脂、染料、顔料およびレベリング剤やハジキ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化安定剤等の添加剤を配合することができる。
上記の増感剤は光硬化反応を促進するものであって、その例としてはベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂(a−1)中の光重合性官能基が脂環式エポキシ基の場合は、上記変性用樹脂としては、光カチオン重合性を有することが好ましく、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、エポキシ基としてグリシジル基を有する熱可塑性樹脂等が挙げられる。
ただし、光硬化性樹脂組成物(A)は、前記熱可塑性樹脂(a−1)以外の架橋性化合物を実質的に含有しないのが好ましい。特に、40℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーや、分子量2,000以下の低分子量の架橋性モノマー、オリゴマーを実質的に含有しないのが好ましい。このような液体状あるいは分子量2,000以下の架橋性モノマー、オリゴマーを含有すると、長期間の保管や加熱成形時において表面粘着性を有するようになり、印刷工程において不具合を生じたり、インサート成形やインモールド成形時において金型を汚染したりする等の問題を生じることがある。50℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーを実質的に含有しないのがより好ましく、60℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーを実質的に含有しないのがさらに好ましい。
本発明においては、上記の如き光硬化性樹脂組成物(A)を用いているため、光硬化性樹脂組成物を基材シート(B)上に積層して光硬化性シートを形成した場合にも、光硬化性シートの表面は粘着性がなく、また表面の粘着性が時間と共に変化する等の現象も起こらず、ロール状態での保存安定性が良好となる。
光硬化性樹脂組成物(A)層の厚みは、1〜50μmの範囲が好ましく、2〜30μmの範囲がさらに好ましい。光硬化性樹脂組成物(A)層の厚みが1μm未満の場合には、光硬化性樹脂組成物(A)を硬化させても耐擦傷性や耐磨耗性、耐薬品性等の特性が低下することがある。また、光硬化性樹脂組成物(A)層の厚みが50μmを超える場合には、硬化不良が起き、そのため耐温水性や耐候性が低下することがある。
本発明の光硬化性シートの製造方法としては、例えば、光硬化性樹脂組成物(A)を有機溶媒等の溶剤(S)に十分に攪拌溶解させた光硬化性キャスト液組成物を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法や、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、ナイフコート法、コンマコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法等の公知のコート方法により基材シート(B)上に塗工し、溶剤(S)除去のための加熱乾燥を行った後、カバーフィルム(C)を光硬化性樹脂組成物(A)上に仮被着させる方法がある。
上記溶剤(S)としては、光硬化性樹脂組成物(A)の各成分を溶解または均一に分散させることができ、かつ、基材シート(B)の物性(機械的強度、透明性等)に実用上重大な悪影響を及ぼさず、さらに基材シート(B)の主たる構成成分である樹脂成分(b)のガラス転移温度より+80℃以下、好ましくは+30℃以下の沸点を有している揮発性の溶剤であれば、特に制限されない。そのような溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤、フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶剤、無水酢酸等の酸無水物系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤、チオフェン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2種以上の官能基を有する溶剤、あるいは水等の各種公知の溶剤を使用することができる。
本発明に用いる基材シート(B)としては、その使用方法によって好適なものが選ばれるが、例えば、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、セロファン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、軟質アクリル系樹脂等の材質からなるシートが挙げられる。また、これらの各シートの複合体、積層体などを使用することもできる。また、各シートの表面に対して、コロナ放電処理やプラズマ放電処理、グロー放電処理のような公知の表面処理を施すこともできる。なかでも、100℃加熱時における伸度が100%以上である熱可塑性樹脂シートが、インサート成形やインモールド成形時に金型形状への追従性が良好となるので好ましい。光硬化性樹脂組成物(A)との密着性や耐候性、透明性等を考慮すると、さらに熱可塑性アクリル樹脂シートが好ましく、より好ましくは架橋ゴム成分を有する熱可塑性アクリル樹脂シートである。架橋ゴム成分を有する透明熱可塑性アクリル樹脂シートとしては、特開平8−323934号公報、特開平9−263614号公報、特開平11−147237号公報、特開2001−10674号公報等に開示されているような透明熱可塑性アクリルシートがある。市販されている透明熱可塑性アクリルシートとしては、アクリプレンHBX−N47、HBS−006、HBD−013(以上、三菱レイヨン(株)製)、テクノロイS001、S003、SN101(以上、住友化学工業(株)製)、サンデュレンSD007、SD009(以上、鐘淵化学工業(株)製)が挙げられる。
基材シート(B)の厚みは、500μm以下が好ましく、100〜500μmがより好ましい。厚みを100μm以上にすると、成形品外観として十分な深み感が得られ、特に複雑な形状に成形する場合に延伸されても、十分な厚みを維持できる。また、これらの範囲の上限値は、剛性を適度に抑えて良好なラミネート性や二次加工性を維持する点、単位面積あたりの質量を抑えて経済性を保つ点、さらに安定して基材シートを製造する点等において意義がある。
また、塗装によって成形品に十分な厚みの塗膜を形成するには、十数回の重ね塗りが必要であり、コストがかかり、生産性が極端に悪くなるのに対して、上記で述べたような厚みの基材シートを用いた光硬化性シートを最表層に有する積層成形品であれば、基材シート自体が塗膜となるので、非常に厚い塗膜を容易に形成することができ、工業的に有利である。
また、基材シート(B)中には、必要に応じて、適宜、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の滑剤、シリカ、球状アルミナ、鱗片状アルミナ等の減摩剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、微粒子酸化セリウム系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、可塑剤、安定剤、着色剤等の各種添加剤を添加してもよい。
本発明の光硬化性シートは、基材シート(B)上に光硬化性樹脂組成物(A)層が積層された構造で、インサート成形やインモールド成形時の加工性に優れるだけでなく、各種物性(特に、耐候性−表面硬度(耐磨耗性、鉛筆硬度)−密着性のバランス)に優れた成形品を与えることが可能な光硬化性シートである。光硬化性樹脂組成物(A)層と基材シート(B)の間には、本発明の光硬化性シートの優れた性状を損なわない限りにおいて、さらに1層以上の光硬化性樹脂組成物層を積層することも可能である。この場合、新たに導入する1層以上の光硬化性樹脂組成物としては、光硬化性樹脂組成物(A)と同等もしくは類似の組成物を用いると、光硬化後の光硬化性シートの表面性状(特に、密着性、耐候性、外観、意匠性)が良好となる傾向にあり、好ましい。
本発明の光硬化性シートは、光硬化性樹脂組成物(A)層上にカバーフィルム(C)が仮被着されていることを特徴とする。カバーフィルム(C)を仮被着させることにより、未反応の光硬化性樹脂組成物(A)層表面の傷付きや異物付着を抑制することが可能となる。また、カバーフィルム(C)の仮被着は、光硬化性シートの機械的強度低下に起因する製造時の歩留り低下や取り扱い性低下の抑制という別の観点からも好ましい。具体的には、光硬化性シートを製造する際に使用する各種溶剤が基材シート(B)の一部を膨潤・溶解することにより、光硬化性シートの機械的強度が低下する傾向にある。この機械的強度低下は、しばしば後工程でのシート切れを誘発して製造歩留まり低下を招いたり、シート取り扱い性を低下させたりして、工業上問題となることがあった。そこで、カバーフィルムを仮被着させることにより、光硬化性シートの機械的強度を補強し、シート取り扱い性を良好なものとすることができる。
本発明のカバーフィルム(C)としては、カバーフィルム基材(C−2)と、その少なくとも片面に微粘着層(C−1)を設けたような態様を取ることが好ましい。このような態様においては、基材(C−2)と微粘着層(C−1)の組合せを適宜選定することにより、カバーフィルム(C)の耐熱性や光硬化性樹脂組成物(A)層に対する密着性/剥離性バランスをより広範な範囲で自由に調整することが可能となるので好ましい。
カバーフィルム基材(C−2)としては、公知の任意のフィルムを用いることができる。具体的には、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、塩化ビニル系フィルム、塩化ビニリデン系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、フッ素樹脂系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、セルローストリアセテート系フィルム等が挙げられる。また、これらのフィルムの複合体や積層体などを使用することもできる。さらに、これらのフィルムの表面に対して、コロナ放電処理やプラズマ放電処理、グロー放電処理のような公知の表面処理を施すことにより、微粘着層(C−1)との密着性を調整することもできる。
これらのフィルムの中で、コストの観点からポリオレフィン系フィルムやポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルムが好適である。ポリエステル系フィルムに使用し得る樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられ、これらのポリエステル系樹脂を公知の方法により製膜したフィルムを用いればよい。ポリアミド系フィルムに使用し得る樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ポリ−p−フェニレンイソフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド等が挙げられ、これらの樹脂を公知の方法により製膜したフィルムを用いればよい。さらに、耐熱性や寸法安定性、表面平滑性、コストの観点から、ポリエステル系フィルムがより好適である。
カバーフィルム基材(C−2)の厚みは、特に制限はないが、得られる光硬化性シートのコストや使用時の作業性を考慮すると、25〜150μm程度が好ましい。
本発明に用いられるカバーフィルム(C)は、カバーフィルム基材(C−2)上に微粘着層(C−1)を有する。微粘着層(C−1)としては、公知の粘着剤を薄層化することにより形成することができる。微粘着層(C−1)は、後述するようにインサート成形やインモールド成形する前まで光硬化性樹脂組成物(A)層に貼着し、インサート成形やインモールド成形する際は直ちに剥離されるので、光硬化性樹脂組成物(A)層に対して適度な密着性と良好な剥離性を有していることが必要である。
粘着剤としては、光硬化性樹脂組成物(A)層に対する良好な密着性/剥離性を発現する限りは特に制限はなく、熱硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、電子線硬化タイプ、ホットメルトタイプ等の公知の粘着剤を使用することができる。
公知の粘着剤としては、具体的には、アクリル系の一液型または二液型粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、微粘着層の耐久性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。具体的には、ソフトセグメントとなるモノマー(エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等)と、ハードセグメントとなるモノマー(メチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等)とを共重合したもの、あるいはこれらにさらに官能基含有モノマー((メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート等)を共重合したアクリル系粘着剤が好適に用いられる。さらに、イソシアネート系やエポキシ系架橋剤を配合した二液型は、塗工後に乾燥し、架橋硬化させることで、微粘着層の耐久性が増大したり、粘着剤の移行を抑制したりすることが可能となるので好ましい。
微粘着層(C−1)は、光硬化性樹脂組成物(A)層と貼り合せた後、再剥離する際、光硬化性樹脂組成物(A)層側に粘着剤の移行が無いことが必要であり、かかる要件を満足するためには、微粘着層(C−1)の剥離力は1〜80g/25mmの範囲であることが好ましい。剥離力が1g/25mm未満の場合、光硬化性シート取り扱い時に簡単にカバーフィルム(C)が剥がれてしまう懸念がある。また、剥離力が80g/25mmを超える場合は、カバーフィルムの剥離が困難であったり、微粘着層が光硬化性樹脂組成物(A)層に残存したりする懸念がある。なお、微粘着層(C−1)の剥離力は、ステンレス板(SUS304)に微粘着層面を貼り合せ、23℃で1日経過した後に300mm/分の速度で、180°の角度で剥離する際の力を表す。
上記の微粘着層(C−1)の形成は、ロールコーティング、メイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ドクターコーティング、リバースコーティング、スプレーコーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、ロールブラッシュ法、含浸法等の公知の方法で、カバーフィルム基材(C−2)上に上記の粘着剤を塗布した後、加熱処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等の公知の方法で乾燥、硬化させることで実施できる。
微粘着層(C−1)の厚みは、光硬化性樹脂組成物(A)層に対する良好な密着性と剥離性を示す限り特に制限はないが、コストの観点から0.5〜100μmの範囲であることが好ましく、3〜50μmの範囲がさらに好ましい。微粘着層(C−1)の厚みが0.5μm未満であると十分な密着効果が得られ無いことがあり、一方100μmを超えるものは過剰品質であり、不経済である。
微粘着層(C−1)は、基材(C−2)の片面に設けても、両面に設けても良い。微粘着層(C−1)を設けるにあたり、基材(C−2)と微粘着層(C−1)の密着性向上のために、基材(C−2)表面にコロナ放電等の各種放電処理や易接着コート剤塗布等の処理を行うこともできる。
本発明においては、微粘着層(C−1)を形成する際、カバーフィルム基材(C−2)の23℃/50%RH環境下における表面固有抵抗率が1×1012Ω/□以下であることが好ましい。基材(C−2)の表面固有抵抗率が1×1012Ω/□を超える場合、粘着剤塗工時に基材(C−2)が大量の静電気を帯電することがある。この場合、帯電した基材(C−2)上に塗工した粘着剤は部分的にハジキが発生するために、微粘着層(C−1)に厚み斑が生じることがある。微粘着層(C−1)の厚み斑は、光硬化性樹脂組成物(A)層上にカバーフィルムを仮着した際の圧着斑に繋がり、局所的に圧着力が強い部分では、光硬化性樹脂組成物(A)層が変形したり、微粘着層(C−1)の一部が光硬化性樹脂組成物(A)層側に転写されたりして、光硬化性シートの外観が著しく低下することがあり、好ましくない。また、基材(C−2)が帯電すると、カバーフィルム製造時や取り扱い時に埃や塵が付着し、やはり光硬化性シートの外観低下に繋がり、好ましくない。以上の観点より、カバーフィルム基材(C−2)の23℃/50%RH環境下における表面固有抵抗率は1×1012Ω以下が好ましく、1×1010Ω以下がさらに好ましい。
カバーフィルム基材(C−2)の表面固有抵抗率を1×1012Ω以下とするには、本発明の効果を損なわない範囲で、カバーフィルム基材中に公知の帯電防止剤を内添することにより達成できる。公知の帯電防止剤としては、カーボン系帯電防止剤、アルミニウム、ケイ素、銅、銀、金、インジウム等の金属系帯電防止剤、ATO、ITO等の金属酸化物系帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤、第四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第一〜三級アミノ基等のカチオン性基を有するカチオン系帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、さらには前述のノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性の各種帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤等が挙げられる。
また、カバーフィルム基材(C−2)中に帯電防止剤を内添する代わりに、カバーフィルム基材(C−2)の少なくとも片面に、23℃/50%RH環境下における表面固有抵抗率が1×1012Ω以下の帯電防止層(C−3)を設けることによっても、上記した基材(C−2)の帯電による問題を解決することが可能である。
帯電防止層(C−3)は、表面固有抵抗率が1×1012Ω以下であれば特に制限はなく、様々な態様のものが適用可能である。例えば、上記した公知の帯電防止剤を単独で、または他の膜形成能を有する樹脂組成物に混合して、基材(C−2)上にコーティングすることで、帯電防止層(C−3)を形成することができる。また、金属系帯電防止剤や金属酸化物系帯電防止剤を基材(C−2)上に蒸着したり、箔状にして基材(C−2)と貼り合せたりすることも可能である。
なお、カバーフィルム(C)が帯電防止層(C−3)を含む場合、微粘着層(C−1)は、密着性に問題なければ、基材(C−2)上にでも、帯電防止層(C−3)上にでも設けることができる。
本発明の光硬化性シートは、基材シート側に印刷層を設けることにより、光硬化性加飾シートとすることもできる。
印刷層は、成形品表面に模様や文字等の加飾を施すものである。加飾は、任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
印刷層に用いられるインキの顔料としては、例えば、次のものが使用できる。通常、顔料としては、黄色顔料としてポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料や黄鉛等の無機顔料、赤色顔料としてポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料や弁柄等の無機顔料、青色顔料としてフタロシアニンブルー等の有機顔料やコバルトブルー等の無機顔料、黒色顔料としてアニリンブラック等の有機顔料、白色顔料として二酸化チタン等の無機顔料が使用できる。
印刷層に用いられるインキの染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
また、インキの印刷方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法やロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いるのが良い。この際、本発明におけるように、低分子量の架橋性化合物を使用するのではなく、ポリマー同士を架橋させる構成の光硬化性樹脂組成物を用いた場合には、表面に粘着性が無く、印刷時のトラブルが少なく、歩留まりが良好である。
また、成形品表面に加飾を施すための層として、印刷層の代わりに蒸着層を設けてもよいし、印刷層と蒸着層の両方を設けてもよい。
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも1種の金属、またはこれらの合金もしくは化合物を使用して、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。
これらの加飾のための印刷層や蒸着層は、所望の成形品の表面外観が得られるように、成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚みを選択すればよい。
また、本発明の光硬化性シートは、基材シート側に印刷層および/または蒸着層、接着層および必要に応じてプライマーシートが形成された光硬化性加飾シートとすることができる。その場合、光硬化性加飾シートの好ましい厚み範囲は、30〜750μmである。シート厚みが30μm未満の場合には、深しぼり成形を行った際に、曲面でのシート厚みが著しく低下し、結果として耐擦傷性や耐薬品性等のシート物性が低下することがある。また、シート厚みが750μmを超える場合には、金型への形状追従性が低下することがある。
上記接着層には、印刷層または蒸着層と成形樹脂、印刷層または蒸着層とプライマーシートとの密着性を高める性質のものであれば、任意の合成樹脂状材料を選択して用いることができる。例えば、成形樹脂がポリアクリル系樹脂の場合は、ポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、成形樹脂がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を使用すればよい。さらに、成形樹脂がポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂である場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂、ブロックイソシアネートを用いた熱硬化型ウレタン樹脂等が使用可能である。なお、接着層の粘着性低減や耐熱性向上の目的に、疎水性シリカやエポキシ樹脂、石油樹脂等をさらに含有させることもできる。
上記プライマーシートは、必要に応じて形成されるものであり、ウレタン樹脂等公知の樹脂が使用可能である。なお、成形樹脂との密着性を高める目的から、成形樹脂と相溶性の材料からなるのが良い。現実的には、プライマーシートは成形樹脂と同じポリマー材料からなるのが好ましい。また、プライマーシートの存在は、射出成形品の表面欠陥が光硬化性樹脂組成物上に伝搬されるのを最少にするといった利点を与える。その場合、プライマーシートは、光硬化性樹脂組成物の完全に円滑な上面を呈しながら、成形樹脂の表面欠陥を吸収する程度の厚みを有することが必要である。
ところで、自動車のボディーパネルやスポイラー等のような成形品のサイズが大きく、かつ、成形品の肉厚が薄い場合には、成形樹脂から発生するガスが成形樹脂内に残留したり、金型内の空気が成形樹脂とシートの間に介在しやすくなったりして、成形樹脂に対するシートの密着性が低下するという問題が生じることがある。そのような場合、成形樹脂に接するシート面に、ガス透過性を有する層を設けることで、問題を解決することができる。そのようなガス透過性を有する層として、スパンデックス、アクリル繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維等で構成された編織布または不織布を挙げることができる。また、編織布/不織布の代わりに、発泡層からなるものを用いてもよい。発泡層の形成方法としては、公知の発泡剤を含む樹脂溶液を塗布した後に加熱等により発泡させて連続空孔を形成させる方法等が挙げられる。
本発明の光硬化性シートおよび光硬化性加飾シートは、二次元形状物に積層する場合、熱融着できる基材に対しては、熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。熱融着しない基材に対しては、接着剤を介して貼り合せることが可能である。三次元形状物に積層する場合は、インサート成形法やインモールド成形法等の公知の方法を用いることができ、生産性の点からインモールド成形法が好ましい。また、光硬化性シートに十分な厚みがある場合には、真空成形等の方法により、光硬化性シート単体で三次元形状の成形品とすることも可能である。
次に、上記の光硬化性シートおよび光硬化性加飾シートを積層した成形品の製造方法の一例について説明する。
まず、光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートから、仮被着されているカバーフィルム(C)を剥離除去する。なお、カバーフィルム(C)は、射出成形用金型内にシートを挿入配置する直前に剥離してもよいし、シートを射出成形用金型内に挿入配置する遥か以前に剥離しておいてもよい。ただし、光照射前の光硬化性樹脂組成物(A)層の防塵や傷付き防止を考慮すると、前者のほうが好ましい。なお、成形品の形状が複雑でない場合、カバーフィルムを剥離することなく後述する射出成形を行い、カバーフィルムが仮被着された光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートが表面に配置された樹脂成形体を得て、次いで光照射した後にカバーフィルムを剥離することも可能である。また、光照射する前にカバーフィルムを剥離することも可能である。
次に、光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを、光硬化性樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に向き合うように挿入配置する(すなわち、光硬化性樹脂組成物(A)層の反対側が成形樹脂と接する状態に配置する)。この際、長尺のシートのまま(ロールから巻き出しながら)必要部分を間欠的に送り込んでもよいし、シートを枚葉化して1枚ずつ送り込んでもよい。特に、加飾のための印刷層や蒸着層を有する長尺のシートを使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、加飾のための層と金型との見当が一致するようにするとよい。また、シートを間欠的に送り込む際に、シートの位置をセンサーで検出した後にシートを固定するようにすれば、常に同じ位置でシートを固定することができ、加飾のための層の位置ずれが生じないので便利である。
次いで、必要に応じて、光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを予備成形する。
例えば、ホットパック等の加熱手段によりシートをその軟化点以上に軟化させ、射出整形用金型に設けられた吸引孔を通じて真空吸引することにより金型形状にシートを追従させることで予備成形することができる。また、予め、射出成形用金型とは別の立体加工成形用型を用いて、真空成形法、圧空成形法、熱せられたゴムを押し付ける押圧成形法、プレス成形法等の公知の成形法により、シートを予め所望の形状に予備成形しておき、不要な部分を除去した後に、射出成形用金型に装填してもよい。なお、シートを金型内に挿入配置する前に、シートを予めシートの熱変形温度未満の温度に予熱しておくと、シートを金型内に挿入配置後に行う加熱時間を短縮することができ、生産性を向上させることが可能となる。
もちろん、シートを予備成形せずに、後述する成形樹脂の射出圧により、シートの成形および成形樹脂との一体化を同時に行うことも可能である。この際、シートを予め予備加熱して軟化させておくことも可能である。
その後、金型を閉じて、キャビティー内に溶融状態の成形樹脂を射出し、樹脂を固化させることにより、光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートが表面に配置された樹脂成形体を形成する。
このように、真空成形により光硬化性シートに三次元形状を付与する場合、光硬化性シートは高温時の伸度に富んでおり、非常に有利である。
本発明で使用する成形樹脂としては、その種類を問わず、射出成形可能な全ての樹脂が使用可能である。そのような成形樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレン系共重合体)系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の汎用の熱可塑性または熱硬化性樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂や各種変性樹脂を使用することもできる。なお、成形樹脂の成形後の収縮率を前記シートの収縮率に近似させることにより、成形品の反りやシートの剥がれ等の不具合を解消できるので好ましい。
最後に、金型内より成形品を取り出した後、光照射することにより成形品表面の光硬化性樹脂組成物を光硬化させる。
照射する光としては、電子線、紫外線、γ線等を挙げることができる。照射条件は、光硬化性樹脂組成物(A)層の光硬化特性に応じて定められるが、照射量は、通常、500〜10,000mJ/cm2程度である。これによって、光硬化性樹脂組成物が硬化して硬質の被膜が表面に形成された成形品を得ることができる。
成形品に接着された光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートのうち、不要な部分は必要に応じて適宜トリミングして除去する。このトリミングは、シートを金型内に挿入配置した後や、成形品に光照射する前、あるいは光照射した後に行うことができる。トリミングの方法としては、レーザー光線等を照射してシートを焼き切る方法、トリミング用の打ち抜き型を作製し、プレス加工によってシートを打ち抜く方法、人手によりシートをちぎるようにして除去する方法等、公知の方法により行うことができる。
本発明の成形品は、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器および材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。また、透明樹脂の上においてはその透明性を活かしたまま良好な耐磨耗性、耐候性および耐薬品性を有する表面が形成でき、自動車や鉄道車両、飛行機等の窓やヘッドランプカバー、風防部品等に好適に使用することができる。また、成形品の表面を塗装する場合に比べて工程数を省略することができて生産性もよく、環境に対する影響も少ない。
なお、上記では、成形品の製造方法として、射出成形を用いた製造方法について説明したが、射出成形の代わりにブロー成形を用いることも可能である。
このようにして得られた成形品は、成形と同時に色もしくはデザインが付与され、さらには短時間の光照射によって、耐磨耗性、耐薬品性および耐候性等が向上する。さらに、従来の成形後のスプレー塗装等と比較して、工程の短縮、歩留まりの向上、環境への影響低減がはかれる。特に、本発明の光硬化性シートは、加工性および保存安定性優れ、表面粘着性がなく、光硬化性樹脂組成物の層と基材シートとの密着性が良好なものであり、工業的利用価値が極めて高い。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、例中、「部」は「質量部」を意味する。また、実施例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート MMA
n−オクチルメルカプタン nOM
メチルエチルケトン MEK
グリシジルメタクリレート GMA
アゾビスイソブチロニトリル AIBN
ハイドロキノンモノメチルエーテル MEHQ
トリフェニルホスフィン TPP
アクリル酸 AA
合成例1((a−1)成分としての側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Aの合成)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、MEK50部を入れ、80℃に昇温した。窒素雰囲気下でGMA100部およびAIBN0.5部およびnOM1部の混合物を3時間かけて滴下した。その後、MEK80部とAIBN0.2部の混合物を加え、重合させた。4時間後、MEK50部、MEHQ0.5部、TPP2.5部およびAA50.1部を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。その後、冷却した後、反応物をフラスコより取り出し、側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Aの溶液を得た。
側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Aにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、ポリマー固形分量は約46重量%、数平均分子量は約2万5千、ガラス転移温度は約32℃、二重結合当量は平均216g/molであった。
合成例2((a−1)成分としての側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Bの合成)
窒素導入口、撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート100部、MEK60部およびAIBN0.3部を入れ、撹拌しながら湯浴の温度を75℃に上げ、その温度で2時間重合させた。次いで、AIBN0.7部を1時間おきに5回に分けて添加した後、フラスコ内温を溶剤の沸点まで上昇させてその温度でさらに2時間重合させた。その後、フラスコ内温度が50℃以下になってから、MEK90部を添加して重合反応物をフラスコより取り出し、側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Bの溶液を得た。
側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Bにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、ポリマー固形分量は約40重量%、数平均分子量は約1.2万、ガラス転移温度は約73℃、脂環式エポキシ当量(側鎖脂環式エポキシ基1個あたりの平均分子量)は平均196g/molであった。
合成例3((a−1)成分としての側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂Cの合成)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、MEK50部を入れ、80℃に昇温した。窒素雰囲気下でMMA79.9部、GMA20.1部およびAIBN0.5部の混合物を3時間かけて滴下した。その後、MEK80部とAIBN0.2部の混合物を加え、重合させた。4時間後、MEK74.4部、MEHQ0.5部、TPP2.5部およびAA10.1部を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。その後、冷却した後、反応物をフラスコより取り出し、側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂Cの溶液を得た。
側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂Cにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、ポリマー固形分量は約35質量%、数平均分子量は約3万、ガラス転移温度は約105℃、二重結合当量は平均788g/molであった。
コロイダルシリカの表面処理例(表面処理コロイダルシリカS1の調製)
Figure 2006044195
注)数値は固形分換算のモル部である。
1)IPA−ST:イソプロパノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業(株)製),シリカ粒子径=15nm
2)KBM503:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製),分子量=248
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、上記表2に記載の成分を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を75℃に上げ、その温度で2時間反応させることにより、イソプロパノール中に分散され、表面がシラン化合物で処理されたコロイダルシリカを得た。続いて、イソプロパノールを留去した後にトルエンを添加することを繰り返し、完全にイソプロパノールをトルエンに置換することにより、トルエン中に分散され、表面がシラン化合物で処理されたコロイダルシリカS1を得た。
光硬化性キャスト液組成物の調製例(光硬化性キャスト液組成物1〜3の調製)
合成した側鎖に光重合性官能基を有するアクリル樹脂A〜C、表面処理コロイダルシリカS1および表3の化合物を用いて、表3の組成を有する光硬化性キャスト液組成物1〜3を調製した。
Figure 2006044195
注)数値は固形分換算の質量部である。
1)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
2)トリフェニルスルホニウム6フッ化アンチモネート
カバーフィルムの製造例1
アクリル系粘着剤(帝国化学産業(株)製、SG−800)100部とイソシアネート硬化剤(日本ポリウレタン(株)製、コロネートHL)20部を混合した塗工液を、グラビアコーターを用いて二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ(株)製、帯電防止タイプ、X53、厚み25μm、片面コロナ処理)のコロナ処理面に塗布し、100℃、2分間塗膜を乾燥、硬化させて厚み10μmの微粘着層を設け、カバーフィルム(C1)を得た。この微粘着層は、ハジキによる塗布斑がなく、均一であった。カバーフィルム(C1)の特性を表4に示す。
カバーフィルムの製造例2
第四級アンモニウム塩型カチオン性高分子化合物(コニシ(株)製、ボンディップ−P主剤、固形分50%)50部とエポキシ樹脂硬化剤(コニシ(株)製、ボンディップ−P硬化剤、固形分7%)50部を混合し、混合溶剤(水/イソプロピルアルコールの重量比=1/1)で5重量%に希釈した塗工液を、グラビアコーターを用いて二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ(株)製、標準タイプ、T60、厚み25μm、片面コロナ処理)のコロナ処理面に塗布し、150℃、1分間塗膜を乾燥、硬化させて厚み0.3μmの帯電防止層を設けた。
次に、この帯電防止層の上に、カバーフィルム製造例1と同様にして厚み10μmの微粘着層を設け、カバーフィルム(C2)を得た。この微粘着層は、ハジキによる塗布斑がなく、均一であった。カバーフィルム(C2)の特性を表4に示す。
カバーフィルムの製造例3
カバーフィルムの製造例2と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ(株)製、標準タイプ、T60、厚み25μm、両面コロナ処理)の一方のコロナ処理面に、帯電防止層(厚み0.3μm)を設けた。
次に、この帯電防止層とは反対側のポリエステルフィルム面に、カバーフィルム製造例1と同様にして厚み10μmの微粘着層を設け、カバーフィルム(C3)を得た。この微粘着層は、ハジキによる塗布斑がなく、均一であった。カバーフィルム(C3)の特性を表4に示す。
カバーフィルムの製造例4
カバーフィルムの製造例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ(株)製、標準タイプ、T60、厚み25μm、片面コロナ処理)のコロナ処理面に微粘着層(厚み10μm)を設け、カバーフィルム(C4)を得た。しかし、この微粘着層は塗布斑があり、不均一であった。カバーフィルム(C4)の特性を表4に示す。
カバーフィルムの製造例5
カバーフィルム(C5)として、市販の低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−14、厚み25μm)をそのまま用いた。カバーフィルム(C5)の特性を表4に示す。
カバーフィルム評価方法
表面固有抵抗率:
JIS K7194に準じて、ハイレスタ−UPまたはロレスタ−GP(ともに(株)ダイアインスツルメンタル製)を用いて、23℃/50%RH環境下での表面固有抵抗率を測定した。
Figure 2006044195
実施例1
得られた光硬化性キャスト液組成物1をプロペラ型ミキサーで撹拌し、市販のアクリルシート(三菱レイヨン(株)製、アクリプレンHBX−N47、厚み125μm、巾730mm)上に、コンマロールコーターにより塗工幅690mmで塗工を行った。
引き続いて、下記表5の温度条件に設定したトンネル型乾燥炉(巾800mm、高さ100mm、長さ8m、4つの乾燥ゾーン(1ゾーンの長さ2m)に分割、シートの動きに対して向流になるように熱風を送り込む方式)の中を、5m/分の速度で通過させて溶剤を揮発させ、厚さ8μmの光硬化性樹脂層を形成した。この時の各乾燥ゾーンの滞在時間を表5に示す。
Figure 2006044195
続いて、カバーフィルム(C1)の微粘着層と光硬化性樹脂層が接するように、カバーフィルム(C1)をインラインで貼り合せてプレスロールを通し、1000mの長さでABS製コアにロール状に巻き取った。
このロール状態で、室温にて1ヶ月間保存した。
続いて、この光硬化性シートの後工程での取り扱い性を評価するために、グラビア印刷機を用いて、120m/分の速度でカバーフィルム(C1)が仮被着させた光硬化性シートの巻き出し/巻き取りを1回行った。この巻き出し/巻き取り後のカバーフィルム(C1)の浮きの有無を評価した。結果を表6に示す。
次に、光硬化性シートの一部を巻き出してカバーフィルムを手で剥離し、光硬化性樹脂層表面の状態を観察した。光硬化性樹脂層表面には何ら意匠上の欠陥は無く、良好であった。結果を表6に示す。
続いて、この光硬化性シートを枚葉化し、カバーフィルムを手で剥離した後、光硬化性樹脂組成物が金型の内壁面に向き合うように金型内に配置し、次いで赤外線ヒーター(温度350℃)で10秒間シートを予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真空吸引することにより金型形状にシートを追従させた。なお、この金型の形状は、切頭角錐形状で、切頭面のサイズは100mm×100mmで、底面のサイズは108mm×117mm、深さは10mmであり、切頭面の端部の曲率半径がそれぞれ3、5、7、10mmであった。その際の金型追従性を目視で評価したところ、各端部とも良好に追従していた。
次に、成形温度280〜300℃、金型温度40〜60℃の条件において、ポリカーボネート樹脂を成形樹脂として用いてインモールド成形を行い、光硬化性シートが成形品表面に密着した成形品を得た。この際の成形用金型の汚れを目視で評価した。結果を表6に示す。
次いで、紫外線照射装置を用いて、約700mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面物性を評価した。表6に示す通り、成形品の外観は非常に良好であり、またその他の表面物性も良好であった。
成形品物性評価方法
外観評価:
目視にて評価した。
鉛筆硬度試験:
JIS K5400に準じて、鉛筆としてユニ(三菱鉛筆(株)製、商品名)を使用して評価した。
碁盤目剥離試験:
JIS K5400に準じて、カッターで1×1mm幅の碁盤目を100マス作製し、ニチバン製セロテープ(商品名)を圧着後、90度の角度に剥離した後のフィルム外観を目視評価した。
○:外観変化なし
△:碁盤目周囲の剥離、もしくは碁盤目剥離少し有り
×:碁盤目周囲の剥離、および/もしくは碁盤目剥離著しい
耐酸性:
47重量%硫酸水溶液を用いて40℃で3時間スポット試験した後の外観を目視評価した。
○:良好
△:薄く跡有り
×:著しい跡有り
耐温水性:
40℃の温水中に24時間浸漬後のシート状態を目視評価した。
○:良好
△:薄く白化有り
×:著しい白化有り
透明性:
ASTM D1003に準じて、ヘイズメーターを用いて全光線透過率およびヘイズを測定した。
耐磨耗性:
テーバー磨耗試験(片側500g荷重、CS−10F磨耗輪を用い、回転速度60rpm、試験回数100回で試験を実施)後の曇価をヘイズメーターで測定した。そして(試験後の曇価)−(試験前の曇価)で表される数値を耐磨耗性(%)として示した。
耐候性:
サンシャインウエザーメーター(スガ試験機製)を用い、乾燥48分、雨12分のサイクルで2000時間曝露試験したときの外観を目視評価した。
○:良好
×:白化またはクラック有り
実施例2〜5
実施例1の光硬化性キャスト液組成物1およびカバーフィルム(C1)を、表6に示した組合せに変更した以外は、実施例1と同様にして光硬化性シートを製造し、インモールド成形品を得た。いずれの光硬化性シートも、カバーフィルムの浮きはなく、またカバーフィルム剥離後の光硬化性樹脂組成物層に意匠上の欠陥は認められなかった。また、いずれのインモールド成形品も、良好な表面物性を示した。結果を表6に示す。
実施例6〜8
実施例1の光硬化性キャスト液組成物1およびカバーフィルム(C1)を、表6に示した組合せに変更した以外は、実施例1と同様にして光硬化性シートを製造し、インモールド成形品を得た。いずれの光硬化性シートも、カバーフィルムの浮きはなく、良好であった。ただし、カバーフィルム剥離後の光硬化性樹脂組成物層には、カバーフィルムの微粘着層の一部が僅かに転写されていた。インモールド成形品は、いずれもカバーフィルムの微粘着層の転写痕が微かに認められるものの、良好な表面物性を示した。結果を表6に示す。
比較例1〜3
実施例1の光硬化性キャスト液組成物1およびカバーフィルム(C1)を、表6に示した組合せに変更した以外は、全て実施例1と同様にしてインモールド成形品を得た。いずれの光硬化性シートも、カバーフィルムの浮きが多数発生していた。また、カバーフィルムの浮きに起因して、未硬化の光硬化性樹脂層には多数の筋状跡が認められ、著しく意匠性の劣るものであった。また、得られた成形品も、筋状跡が残っており、著しく不良であった。結果を表6に示す。
Figure 2006044195
実施例9〜13
実施例1〜5と同様にして、それぞれのカバーフィルムを光硬化性樹脂層に仮被着させた光硬化性シートを製造した。
次いで、黒、茶、黄の各色の顔料から成るインキを用い、基材シート面に絵柄をグラビア印刷法によって印刷した後、光硬化性加飾シートを得た。
これらの光硬化性加飾シートを枚葉化し、カバーフィルムを剥離した後、光硬化性樹脂組成物が金型の内壁面に向き合うように金型内に配置し、次いで赤外線ヒーター(温度300℃)で15秒間シートを予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真空吸引することにより金型形状にシートを追従させた。
次に、成形温度220〜250℃、金型温度40〜60℃の条件において、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂を成形樹脂として用いてインモールド成形を行い、光硬化性加飾シートが成形品表面に密着した成形品を得た。その際のシートの金型追従性および金型離型性は共に良好であった。
次いで、紫外線照射装置を用いて、約700mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面硬度が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を有して意匠性に優れる成形品を得た。
実施例14〜16
実施例6〜8と同様にして、それぞれのカバーフィルムを光硬化性樹脂層に仮被着させた光硬化性シートを製造した。
次いで、実施例9と同様にして、基材シート面に絵柄を印刷して光硬化性加飾シートを製造し、インモールド成形品を得た。
得られた成形品は、微かにカバーフィルム微粘着層の転写痕が認められるものの、表面硬度が高く、印刷絵柄を有して意匠性に比較的優れる成形品を得た。
比較例4〜6
比較例1〜3と同様にして、それぞれのカバーフィルムを光硬化性樹脂層に仮被着させた光硬化性シートをロール状態で製造した。
このロール状態で、室温にて1ヶ月間保存した後、実施例9と同様にして、基材シート面に絵柄を印刷して光硬化性加飾シートを製造し、インモールド成形品を得た。
得られた光硬化性加飾シートには、カバーフィルムの浮きが多数発生していた。また、カバーフィルムの浮きに起因して、未硬化の光硬化性樹脂層には多数の筋状跡が認められ、著しく意匠性の劣るものであった。また、得られた成形品も、筋状跡が残っており、著しく不良であった。
実施例17〜21
実施例1〜5と同様にして、それぞれのカバーフィルムを光硬化性樹脂層に仮被着させた光硬化性シートを製造した。
次いで、黒、茶、黄の各色の顔料から成るインキを用い、基材シート面に絵柄をグラビア印刷法によって印刷した。
さらに、塩素化ポリプロピレン樹脂(塩素化度15%)からなる接着層を、印刷面にグラビア印刷法によって形成させた後、光硬化性加飾シートを得た。
これらの光硬化性加飾シートを枚葉化し、カバーフィルムを剥離した後、光硬化性樹脂組成物が金型の内壁面に向き合うように金型内に配置し、次いで赤外線ヒーター(温度300℃)で15秒間シートを予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真空吸引することにより金型形状にシートを追従させた。
次いで、成形温度200〜240℃、金型温度30〜60℃の条件において、ポリプロピレン系樹脂(タルクを20重量%含有、エチレン−プロピレン系ゴムを10重量%含有)を成形樹脂として用いてインモールド成形を行い、光硬化性加飾シートが成形品表面に密着した成形品を得た。その際のシートの金型追従性および金型離型性は共に良好であった。
次に、紫外線照射装置を用いて、約700mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面硬度や耐磨耗性が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を有して意匠性に優れる成形品を得た。
実施例22〜24
実施例6〜8と同様にして、それぞれのカバーフィルムを光硬化性樹脂層に仮被着させた光硬化性シートを製造した。
次いで、実施例17と同様にして、光硬化性加飾シートを製造し、インモールド成形品を得た。
得られた成形品は、微かにカバーフィルム微粘着層の転写痕が認められるものの、表面硬度が高く、印刷絵柄を有して意匠性に比較的優れるものであった。
本発明の光硬化性シートは、それを用いて得られる成形品において、光硬化性樹脂組成物の層に欠陥の無い良好な意匠性を具備し、かつ優れた諸物性(耐磨耗性、耐候性、耐薬品性、加工性、保存安定性等)を発現することが可能であり、またこれにより意匠性に優れた成形品を提供することができるので、本発明は産業上極めて有用である。

Claims (8)

  1. 光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)を含む光硬化性樹脂組成物(A)の層と、基材シート(B)と、さらに光硬化性樹脂組成物(A)層上に仮被着されたカバーフィルム(C)を含む光硬化性シートにおいて、
    カバーフィルム(C)が、少なくとも微粘着層(C−1)とカバーフィルム基材(C−2)を含むことを特徴とする光硬化性シート。
  2. カバーフィルム(C)が、さらに帯電防止層(C−3)を含む、請求項1記載の光硬化性シート。
  3. カバーフィルム(C)の微粘着層(C−1)が光硬化性樹脂組成物(A)層と貼着されている、請求項1または2に記載の光硬化性シート。
  4. 光硬化性樹脂組成物(A)が、さらに無機微粒子(a−3)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性シート。
  5. 光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)を含む光硬化性樹脂組成物(A)および溶剤(S)からなる光硬化性キャスト液組成物を、基材シート(B)上に塗工する工程、および塗工後の基材シート(B)を加熱して溶剤(S)を揮発させる工程、カバーフィルム(C)を光硬化性樹脂組成物(A)上に仮被着させる工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性シートの製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性シートの基材シート(B)側に、印刷層、蒸着層、接着層およびプライマー層から選ばれる少なくとも1の層を形成した光硬化性加飾シート。
  7. 請求項1〜4および6のいずれか1項に記載した光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートのカバーフィルム(C)を剥離する工程、カバーフィルム(C)を剥離した光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを、光硬化性樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に向き合うように挿入配置する工程、金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を固化させることにより光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートが表面に配置された樹脂成形品を形成する工程、および光照射することにより成形品表面の光硬化性樹脂組成物を光硬化させる工程を含む成形品の製造方法。
  8. 請求項1〜4および6のいずれか1項に記載した光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを最表面に有する成形品。
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