JP2015136885A - 親水性積層体、及びその製造方法、並びに物品、及びその製造方法 - Google Patents

親水性積層体、及びその製造方法、並びに物品、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】凹凸構造を有する親水性積層体において、防曇性に優れ、かつ防曇性の経時安定性にも優れる親水性積層体などの提供。
【解決手段】基材と、前記基材上に親水性層とを有し、前記親水性層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、前記親水性層の表面の純水接触角が、50°以下であり、前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さのいずれかが、100nm以下である親水性積層体である。
【選択図】図1A

Description

本発明は、親水性を有し、建築用途、産業用途、自動車用途、光学用途、太陽電池パネルなどの広範囲に使用できる親水性積層体、及びその製造方法、並びに前記親水性積層体を用いた物品、及びその製造方法に関する。
種々の物品には、その表面を装飾及び保護するために、その表面に樹脂フィルム、ガラスなどが貼り付けられている。
しかし、物品の表面を装飾及び保護する樹脂フィルム、ガラスなどが曇ることにより物品の視認性及び美観が低下することがある。
そのため、そのような物品の視認性及び美観の低下を防ぐために、前記樹脂フィルム及びガラスには、防曇化処理が施されている。
防曇化の技術として、例えば、親水性のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンイミンなどの親水性樹脂に種々の架橋剤を組み合わせて形成した吸水層により、水滴を形成させない技術が知られている。
しかし、この技術の場合、吸水層の厚みは3μm〜60μm程度のため、吸収する水分量に限度があり、次々と水滴が付着すると水分を吸水層内に吸収しきれなくなり、吸湿飽和点に達するとその表面に水滴ができて曇ってしまうという問題がある。また、低温時には、吸収できる水分量が低下するため、より曇り易くなってしまう(「低温時」の具体例は、スキーゴーグルのレンズ内側や、ガラス窓の冷蔵室や冷凍室に接する面に使用する場合、など)という問題がある。また、過剰に水を吸収すると、変形(波打ち・垂れ下がり・引きつり、など)を生じたり、水滴汚染(水滴を生じたときに溶解などに起因して水滴斑ができる)やべとつきを生じたりするという問題がある。また、水分を吸収するとともに膨潤するため、機械強度が低下したり(磨耗や引っ掻きで傷つき易くなる)、耐薬品性が低下するという問題がある。
そこで、表面層に凹凸構造を設けることで、濡れ易い表面にして防曇性を高める技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。表面に凹凸構造を設ける技術は、光の反射防止機能を付与するために従来より行われている。そして、前記凹凸構造においては、表面が汚れるとその汚れの除去が困難となることから、前述の提案の技術と同様に、防汚性などを高めることを目的に表面層の親水性を高める技術が種々提案されている(例えば、特許文献2〜9参照)。
しかし、これらの提案の技術においては、経時における防曇性の低下について考慮されておらず、経時における物理的な接触による凹凸構造の劣化によって防曇性が低下してしまうという問題がある。
したがって、凹凸構造を有する親水性積層体において、防曇性に優れ、かつ防曇性の経時安定性にも優れる親水性積層体、及びその製造方法、並びに前記親水性積層体を用いた物品、及びその製造方法の提供が求められているのが現状である。
特開2009−271298号公報 特許第4689718号公報 特許第4796659号公報 特開2007−187868号公報 特開2008−158293号公報 特開2011−169961号公報 特開2012−242525号公報 特許第5260790号公報 特開2013−182007号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、凹凸構造を有する親水性積層体において、防曇性に優れ、かつ防曇性の経時安定性にも優れる親水性積層体、及びその製造方法、並びに前記親水性積層体を用いた物品、及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基材と、前記基材上に親水性層とを有し、
前記親水性層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
前記親水性層の表面の純水接触角が、50°以下であり、
前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さのいずれかが、100nm以下であることを特徴とする親水性積層体である。
<2> 伸び率が、40%以上である前記<1>に記載の親水性積層体である。
<3> 親水性層の平均表面積率が、1.10以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の親水性積層体である。
<4> 凸部の平均高さ及び凹部の平均深さのいずれかが、60nm以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の親水性積層体である。
<5> 基材が、樹脂製基材及びガラス製基材のいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の親水性積層体である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の親水性積層体の製造方法であって、
基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する未硬化樹脂層形成工程と、
前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性層を形成する親水性層形成工程とを含むことを特徴とする親水性積層体の製造方法である。
<7> 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成される前記<6>に記載の親水性積層体の製造方法である。
<8> 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成される前記<6>に記載の親水性積層体の製造方法である。
<9> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の親水性積層体を表面に有することを特徴とする物品である。
<10> 前記<9>に記載の物品の製造方法であって、
親水性積層体を加熱する加熱工程と、
加熱された前記親水性積層体を所望の形状に成形する親水性積層体成形工程と、
所望の形状に成形された前記親水性積層体の基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する射出成形工程とを含むことを特徴とする物品の製造方法である。
<11> 加熱工程における加熱が、赤外線加熱により行われる前記<10>に記載の物品の製造方法である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、凹凸構造を有する親水性積層体において、防曇性に優れ、かつ防曇性の経時安定性にも優れる親水性積層体、及びその製造方法、並びに前記親水性積層体を用いた物品、及びその製造方法を提供することができる。
図1Aは、凸部を有する親水性層の表面の一例を示す原子間力顕微鏡(AFM)像である。 図1Bは、図1Aのa−a線に沿った断面図である。 図2Aは、凹部を有する親水性層の表面の一例を示すAFM像である。 図2Bは、図2Aのa−a線に沿った断面図である。 図3Aは、転写原盤であるロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。 図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。 図3Cは、図3BのトラックTにおける断面図である。 図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。 図5Aは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Bは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Cは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Dは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Eは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図6Aは、ロール原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図6Bは、ロール原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図6Cは、ロール原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図7Aは、転写原盤である板状の原盤の構成の一例を示す平面図である。 図7Bは、図7Aに示したa−a線に沿った断面図である。 図7Cは、図7Bの一部を拡大して表す断面図である。 図8は、板状の原盤を作製するためのレーザー加工装置の構成の一例を示す概略図である。 図9Aは、板状の原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図9Bは、板状の原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図9Cは、板状の原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図10Aは、板状の原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図10Bは、板状の原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図10Cは、板状の原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図11Aは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Bは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Cは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Dは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Eは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Fは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図12Aは、実施例1の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像である。 図12Bは、図12Aのa−a線に沿った断面図である。 図13Aは、実施例2の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像である。 図13Bは、図13Aのa−a線に沿った断面図である。 図14Aは、実施例3の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像である。 図14Bは、図14Aのa−a線に沿った断面図である。 図15Aは、比較例1の親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像である。 図15Bは、図15Aのa−a線に沿った断面図である。
(親水性積層体)
本発明の親水性積層体は、基材と、親水性層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂製基材、無機製基材などが挙げられる。前記無機製基材としては、例えば、ガラス製基材、石英製基材、サファイア製基材などが挙げられる。
前記樹脂製基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、PC/PMMA積層体、ゴム添加PMMAなどが挙げられる。
前記基材は、透明性を有することが好ましい。
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、板状、ブロック状などが挙げられる。
前記基材がフィルム状の場合、前記基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産性の点から、5μm〜1,000μmが好ましく、5μm〜500μmがより好ましく、50μm〜500μmが特に好ましい。
前記基材の表面には、文字、模様、画像などが印刷されていてもよい。
前記基材は、曲面を有していてもよい。
前記基材の表面には、前記親水性積層体を成形加工時、前記基材と成形材料との密着性を高めるため、又は成形加工時の成形材料の流動圧から前記文字、前記模様、及び前記画像を保護するために、バインダー層を設けてもよい。前記バインダー層の材質としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレンブチルアルコール系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等の各種バインダーの他、各種接着剤を用いることができる。なお、前記バインダー層は2層以上設けてもよい。使用するバインダーは、成形材料に適した感熱性、感圧性を有するものを選択できる。
<親水性層>
前記親水性層は、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記親水性層の表面の純水接触角は、50°以下である。
前記親水性層は、前記基材上に形成されている。
前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さのいずれかは、100nm以下である。
前記親水性層としては、成形加工性に優れる点から、樹脂製の親水性層(以下、「親水性樹脂層」と称することがある)であることが好ましい。
前記親水性層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機材料、無機材料、有機−無機ハイブリッド材料などが挙げられる。前記有機材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物などが挙げられる。前記無機材料としては、例えば、金属、半金属酸化物(シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ等)などが挙げられる。前記有機−無機ハイブリッド材料としては、例えば、前記無機材料からなる粒子と前記有機材料との混合物、金属アルコキシド及び/又は半金属アルコキシドの加水分解・重縮合物などが挙げられる。
−微細な凸部、及び微細な凹部−
前記親水性層は、その表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有している。
前記微細な凸部及び凹部のいずれかは、前記親水性層において、前記基材側と反対側の面に形成されている。
ここで、微細な凸部とは、前記親水性層の表面において、隣接する凸部の平均距離が、1,000nm以下であることをいう。
ここで、微細な凹部とは、前記親水性層の表面において、隣接する凹部の平均距離が、1,000nm以下であることをいう。
前記凸部、及び前記凹部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錐体状、柱状、針状、球体の一部の形状(例えば、半球体状)、楕円体の一部の形状(例えば、半楕円体状)、多角形状などが挙げられる。これらの形状は数学的に定義される完全な形状である必要はなく、多少の歪みがあってもよい。
前記凸部又は前記凹部は、前記親水性層の表面に2次元配列されている。その配列は、規則的な配列であってもよいし、ランダムな配列であってもよい。前記規則的な配列としては、充填率の点から、最密充填構造が好ましい。
隣接する前記凸部の平均距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
隣接する前記凹部の平均距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
隣接する前記凸部の平均距離及び隣接する前記凹部の平均距離が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均距離が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
前記凸部の平均高さは、100nm以下であり、80nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。前記凸部の平均高さの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30nmが好ましい。
前記凹部の平均深さは、100nm以下であり、80nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。前記凹部の平均深さの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30nmが好ましい。
前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さが、100nm以下を超えると、耐摩耗性が不十分であり、親水性積層体は、防曇性の経時安定性が不十分となる。
前記凸部の平均アスペクト比(前記凸部の平均高さ/隣接する前記凸部の平均距離)及び前記凹部の平均アスペクト比(前記凹部の平均深さ/隣接する前記凹部の平均距離)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001〜1,000が好ましく、0.10〜10がより好ましく、0.10〜1.0が更に好ましく、0.20〜0.50が特に好ましい。
前記凸部の平均アスペクト比及び前記凹部の平均アスペクト比が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記アスペクト比が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
ここで、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)は、以下のようにして測定できる。
まず、凸部又は凹部を有する前記親水性層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、AFMの断面プロファイルから凸部又は凹部のピッチ、及び凸部の高さ又は凹部の深さを求める。これを前記親水性層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、ピッチP1、P2、・・・、P10と、高さ又は深さH1、H2、・・・、H10とを求める。
ここで、前記凸部のピッチは、前記凸部の頂点間の距離である。前記凹部のピッチは、前記凹部の最深部間の距離である。前記凸部の高さは、前記凸部間の谷部の最低点を基準とした前記凸部の高さである。前記凹部の深さは、前記凹部間の山部の最高点を基準とした前記凹部の深さである。
次に、これらのピッチP1、P2、・・・、P10、及び高さ又は深さH1、H2、・・・、H10をそれぞれ単純に平均(算術平均)して、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)を求める。
なお、前記凸部又は凹部のピッチが面内異方性を有している場合には、ピッチが最大となる方向のピッチを用いて前記Pmを求めるものとする。また、前記凸部の高さ又は前記凹部の深さが面内異方性を有している場合には、高さ又は深さが最大となる方向の高さ又は深さを用いて前記Hmを求めるものとする。
また、前記凸部又は凹部が棒状の場合には、短軸方向のピッチを、前記ピッチとして測定する。
なお、前記AFM観察においては、断面プロファイルの凸の頂点、又は凹の底辺が、立体形状の凸部の頂点、又は凹部の最深部と一致するようにするため、断面プロファイルを、測定対象となる立体形状の凸部の頂点、又は立体形状の凹部の最深部を通る断面となるように、切り出している。
ここで、前記親水性層の表面に形成されている微細な形状が、凸部であるか、凹部であるかは、以下のようにして判断することができる。
凸部又は凹部を有する前記親水性層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、断面及び前記表面SのAFM像を得る。
そして、表面のAFM像を、最表面側を明るい像、深部側を暗い像にした場合、暗い像の中に、明るい像が島状に形成されている場合、その表面は、凸部を有するものとする。
一方、明るい像の中に、暗い像が島状に形成されている場合、その表面は、凹部を有するものとする。
例えば、図1A及び図1Bに示す表面及び断面のAFM像を有する親水性層の表面は、凸部を有している。図2A及び図2Bに示す表面及び断面のAFM像を有する親水性層の表面は、凹部を有している。
前記親水性層の表面の平均表面積率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.10以上が好ましく、1.20以上がより好ましく、1.30以上が特に好ましい。前記表面積率とは、ある指定した領域における対象物の表面形状によって生じている表面積と該指定領域の面積との比(表面積/面積)である。前記平均表面積率が、1.10未満であると、前記親水性層に付着した親水性成分が濡れ広がる効果が不足し、防曇性が得られにくくなることがある。前記平均表面積率が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均表面積率が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
ここで、前記親水性層の表面の平均表面積率は、以下のようにして測定できる。
凸部又は凹部を有する前記親水性層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、前記表面SのAFM像を得る。これを前記親水性層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、表面積S1、S2、・・・、S10を求める。次に、これらの表面積S1、S2、・・・、S10と、それぞれの観察領域の面積との比(表面積/面積)SR1、SR2、・・・、SR10を単純に平均(算術平均)して、親水性層の表面の平均表面積率SRmを求める。
−純水接触角−
前記親水性層の表面の純水接触角は、50°以下であり、40°以下が好ましく、10°以下がより好ましい。前記純水接触角の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2°などが挙げられる。
前記純水接触角は、例えば、PCA−1(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で滑落法によって測定することができる。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。滴下後、5秒後の接触角を、評価面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とする。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
前記純水接触角を得る方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記親水性層の材質を、平滑膜としたときに純水接触角が70°以下となる材質とすることなどが挙げられる。前記親水性層の材質を、平滑膜としたときに純水接触角が70°を超える材質とした場合、水が凹凸構造の底まで浸透できなくなる傾向にある。その結果、空気をかみ込み、前記親水性層の表面の純水接触角は、前記平滑膜の純水接触角の値よりも高まってしまい、防曇性が得られないことがある。
前記平滑膜の純水接触角は、例えば、溶媒に溶解した前記親水性層を形成する材料を、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂製基材上に、コイルバー、アプリケーターなどで塗布し、前記溶媒を乾燥除去して、平滑膜を得、その平滑膜に対して、前述の方法で純水接触角を測定することで求めることができる。前記親水性層が硬化処理を経て得られている場合には、前記平滑膜を得る際には、同様の硬化処理を行う。
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性モノマーと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
−−親水性モノマー−−
前記親水性モノマーとしては、例えば、ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
ここで、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
前記ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物との反応によって得られるモノ若しくはポリアクリレート、又はモノ若しくはポリメタクリレートなどが挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール、3価のアルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。前記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300〜1,000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。前記4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
前記ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおけるポリエチレングリコールユニットの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300〜1,000などが挙げられる。前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、MEPM−1000(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
前記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記スルホン酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、末端スルホン酸変性ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートなどが挙げられる。これらは、塩を形成していてもよい。前記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記カルボン酸基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、リン酸エステルを有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記親水性モノマーは、単官能の親水性モノマーであることが好ましい。
前記親水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200以上が好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15質量%〜99.9質量%が好ましく、20質量%〜90質量%がより好ましく、25質量%〜50質量%が特に好ましい。
前記親水性モノマーの代わりに、アジド基、フェニルアジド基、キノンアジド基、スチルベン基、カルコン基、ジアゾニウム塩基、ケイ皮酸基、アクリル酸基等から選択された1つ以上を含む感光基を導入したポリマーを用いてもよい。前記ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール系、ポリビニルブチラール系、ポリビニルピロリドン系、ポリアクリルアミド系、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリオキシアルキレン系ポリマーなどが挙げられる。
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、ビスアジド化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリルなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレートなどが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が特に好ましい。
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレート、フィラーなどが挙げられる。
これらは、前記親水性層(前記親水性樹脂層)の伸び率、硬度などを調整するために用いることがある。
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜45質量%が好ましく、15質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。
前記イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、エトキシ化イソシアヌル酸(メタ)アクリレートが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜45質量%が好ましく、15質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化錫、酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫、五酸化アンチモンなどが挙げられる。前記シリカとしては、例えば、中実シリカ、中空シリカなどが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、使用時には、有機溶剤を用いて希釈して用いることができる。前記有機溶剤としては、例えば、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化する。前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波などが挙げられる。
前記親水性層のマルテンス硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50N/mm〜300N/mmが好ましく、50N/mm〜290N/mmがより好ましく、50N/mm〜280N/mmが特に好ましい。前記親水性積層体を成形加工する際、例えば、ポリカーボネートの射出成形時には、親水性積層体は、290℃、200MPaで加熱加圧される。このとき、前記親水性層の表面の微細な凸部及び凹部のいずれかは変形することがある。変形としては、例えば、微細な凸部の高さが低くなること、微細な凹部の深さが浅くなることなどがある。防曇性能に影響がない範囲では変形してもよいが、変形しすぎると純水接触角が高くなり防曇性能が劣化する。前記マルテンス硬度が、50N/mm未満であると、前記親水性積層体を成形加工する際に前記親水性層の表面の微細な凸部及び凹部のいずれかが変形しすぎてしまい、純水接触角が高くなり防曇性能が劣化すること、及び、前記親水性積層体を製造又は成形加工する際のハンドリング及び面清掃等の、通常使用時の面清掃などで前記親水性層に傷が入り易いことがあり、300N/mmを超えると、抜き加工、曲げ加工、成形加工時、前記親水性層にクラックが発生したり、前記親水性層が剥離することがある。前記マルテンス硬度が、前記特に好ましい範囲内であると、前記親水性積層体を、防曇性能を劣化させることなく、且つ傷付き、クラック、剥離等の不良を発生させることなく、様々な三次元形状に容易に成形加工できる点で有利である。
なお、前記親水性積層体を成形加工後、前記親水性層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記親水性層のマルテンス硬度が高まることがある。
また、同じ凸部の平均高さ(又は凹部の平均深さ)で比較した場合、前記親水性層のマルテンス硬度が高いほど、耐摩耗性が優れる傾向にある。
前記マルテンス硬度は、例えば、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定できる。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定する。
前記親水性層の鉛筆硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、B〜4Hが好ましく、HB〜4Hがより好ましく、F〜4Hが特に好ましい。前記鉛筆硬度が、B未満である(Bより柔らかい)と、前記親水性積層体を製造又は成形加工する際のハンドリングや面清掃等の、通常使用時の面清掃などで前記親水性層に傷が入り易い。また、前記親水性積層体を成形加工する際に前記親水性層の表面の微細な凸部及び凹部のいずれかが変形しすぎてしまい、純水接触角が高くなり防曇性能が劣化することがある。前記鉛筆硬度が、4Hを超える(4Hより硬い)と、成形加工時、前記親水性層にクラックが発生したり、前記親水性層が剥離することがある。前記鉛筆硬度が、前記特に好ましい範囲内であると、前記親水性積層体を、防曇性能を劣化させることなく、且つ傷付き、クラック、剥離等の不良を発生させることなく、様々な三次元形状に容易に成形加工できる点で有利である。
なお、前記親水性積層体を成形加工後、前記親水性層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記親水性層の鉛筆硬度が高まることがある。
前記鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定する。
前記親水性層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.1μm〜30μmが特に好ましい。
<その他の部材>
前記その他の部材としては、アンカー層などが挙げられる。
−アンカー層−
前記アンカー層は、前記基材と、前記親水性層との間に設けられる層である。
前記アンカー層を設けることにより、前記基材と前記親水性層との接着性を向上できる。
前記アンカー層の屈折率は、干渉ムラを防止するために、前記親水性層の屈折率と近いことが好ましい。そのため、前記アンカー層の屈折率は、前記親水性層の屈折率の±0.10以内が好ましく、±0.05以内がより好ましい。または、前記アンカー層の屈折率は、前記親水性層の屈折率と前記基材の屈折率との間であることが好ましい。
前記アンカー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成できる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤としては、例えば、前記親水性層の説明において例示した前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤がそれぞれ挙げられる。前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
前記アンカー層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜5μmがより好ましく、0.3μm〜3μmが特に好ましい。
なお、前記アンカー層には、反射率低減や帯電防止の機能を付与してもよい。
前記親水性積層体の伸び率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%以上が好ましく、40%以上が好ましく、40%〜200%がより好ましく、40%〜150%が特に好ましい。前記伸び率が、10%未満であると、成形加工が困難になることがある。前記伸び率が、前記特に好ましい範囲内であると、成形加工性に優れる点で有利である。
前記伸び率は、例えば、以下の方法により求めることができる。
前記親水性積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とする。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm)する。前記伸び率の測定においては、前記基材の品種によって測定温度が異なり、前記伸び率は、前記基材の軟化点近傍又は軟化点以上の温度で測定する。具体的には、10℃〜250℃の間である。例えば、前記基材が、ポリカーボネートやPC/PMMA積層体の場合は、190℃で測定するのが好ましい。
前記親水性積層体を、インサート成型、オーバーレイ成型などに適用する場合、前記基材には前記樹脂製基材を使用し、前記親水性積層体の伸び率は10%以上であることが好ましい。前記オーバーレイ成型としては、例えば、TOM工法(Three−dimension Over−lay Method)などが挙げられる。
前記親水性積層体は、前記親水性積層体の面内におけるX方向とY方向の加熱収縮率差が小さい方が好ましい。前記親水性積層体の前記X方向と前記Y方向とは、例えば、親水性積層体がロール形状の場合、ロールの長手方向と幅方向とに相当する。成形時の加熱工程に使用する加熱温度にて、親水性積層体におけるX方向の加熱収縮率とY方向の加熱収縮率との差は5%以内であることが好ましい。この範囲外であると、成形加工時に、前記親水性層に剥離やクラックが発生したり、基材の表面に印刷された前記文字、前記模様、前記画像などが変形や位置ズレを起こしてしまい、成形加工が困難になることがある。
前記親水性積層体は、インモールド成形用フィルム、インサート成形用フィルム、オーバーレイ成形用フィルムに特に適している。
前記親水性積層体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の親水性積層体の製造方法が好ましい。
(親水性積層体の製造方法)
本発明の親水性積層体の製造方法は、未硬化樹脂層形成工程と、親水性層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記親水性積層体の製造方法は、本発明の前記親水性積層体を製造する方法である。
<未硬化樹脂層形成工程>
前記未硬化樹脂層形成工程としては、基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記基材などが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の前記親水性層の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
前記未硬化樹脂層は、前記基材上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して、必要に応じて乾燥を行うことにより形成される。前記未硬化樹脂層は、固体の膜であってもよいし、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される低分子量の硬化性成分によって流動性を有した膜であってもよい。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
前記未硬化樹脂層は、活性エネルギー線が照射されていないため、硬化していない。
前記未硬化樹脂層形成工程においては、アンカー層が形成された前記基材の前記アンカー層上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して前記未硬化樹脂層を形成してもよい。
前記アンカー層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記アンカー層などが挙げられる。
<親水性層形成工程>
前記親水性層形成工程としては、前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性層を形成する工程あれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−転写原盤−
前記転写原盤は、微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記転写原盤の材質、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成することが好ましい。また、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成することが好ましい。
−活性エネルギー線−
前記活性エネルギー線としては、前記未硬化樹脂層を硬化させる活性エネルギー線であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記活性エネルギー線などが挙げられる。
ここで、前記親水性層形成工程の具体例を、図を用いて説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として転写原盤の表面をエッチングすることにより微細な凸部及び凹部のいずれかを形成した転写原盤を用いて行う前記親水性層形成工程の一例である。
まず、転写原盤及びその製造方法について説明する。
〔転写原盤の構成〕
図3Aは、転写原盤であるロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図3Cは、図3BのトラックTにおける断面図である。ロール原盤231は、上述した構成を有する親水性積層体を作製するための転写原盤、より具体的には、前記親水性樹層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための原盤である。ロール原盤231は、例えば、円柱状又は円筒状の形状を有し、その円柱面又は円筒面が親水性層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体232が2次元配列されている。図3Cにおいて、構造体232は、成形面に対して凹状を有している。ロール原盤231の材料としては、例えば、ガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
ロール原盤231の成形面に配置された複数の構造体232と、前記親水性層の表面に配置された複数の凸部又は凹部とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤231の構造体232の配列、大きさ、形状、配置ピッチ、高さ又は深さ、及びアスペクト比などは、前記親水性層の凸部又は凹部と同様である。
〔ロール原盤露光装置〕
図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
レーザー光源241は、記録媒体としてのロール原盤231の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば、波長λ=266nmの記録用のレーザー光234を発振するものである。レーザー光源241から出射されたレーザー光234は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)242へ入射する。電気光学素子242を透過したレーザー光234は、ミラー243で反射され、変調光学系245に導かれる。
ミラー243は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー243を透過した偏光成分はフォトダイオード244で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子242を制御してレーザー光234の位相変調を行う。
変調光学系245において、レーザー光234は、集光レンズ246により、ガラス(SiO)などからなる音響光学素子(AOM:Acousto−Optic Modulator)247に集光される。レーザー光234は、音響光学素子247により強度変調され発散した後、レンズ248によって平行ビーム化される。変調光学系245から出射されたレーザー光234は、ミラー251によって反射され、移動光学テーブル252上に水平かつ平行に導かれる。
移動光学テーブル252は、ビームエキスパンダ253、及び対物レンズ254を備えている。移動光学テーブル252に導かれたレーザー光234は、ビームエキスパンダ253により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ254を介して、ロール原盤231上のレジスト層へ照射される。ロール原盤231は、スピンドルモータ255に接続されたターンテーブル256の上に載置されている。そして、ロール原盤231を回転させると共に、レーザー光234をロール原盤231の高さ方向に移動させながら、ロール原盤231の周側面に形成されたレジスト層へレーザー光234を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光234の移動は、移動光学テーブル252の矢印R方向への移動によって行われる。
露光装置は、上述した複数の凸部又は凹部の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構257を備えている。制御機構257は、フォーマッタ249とドライバ250とを備える。フォーマッタ249は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光234の照射タイミングを制御する。ドライバ250は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子247を制御する。
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォーマッタ信号と回転コントローラを同期させて信号を発生し、音響光学素子247により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子パターンなどの2次元パターンを記録することができる。
〔レジスト成膜工程〕
まず、図5Aの断面図に示すように、円柱状又は円筒状のロール原盤231を準備する。このロール原盤231は、例えば、ガラス原盤である。次に、図5Bの断面図に示すように、ロール原盤231の表面にレジスト層(例えば、フォトレジスト)233を形成する。レジスト層233の材料としては、例えば、有機系レジスト、無機系レジストなどが挙げられる。前記有機系レジストとしては、例えば、ノボラック系レジスト、化学増幅型レジストなどが挙げられる。前記無機系レジストとしては、例えば、金属化合物などが挙げられる。
〔露光工程〕
次に、図5Cの断面図に示すように、ロール原盤231の表面に形成されたレジスト層233に、レーザー光(露光ビーム)234を照射する。具体的には、図4に示したロール原盤露光装置のターンテーブル256上にロール原盤231を載置し、ロール原盤231を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)234をレジスト層233に照射する。このとき、レーザー光234をロール原盤231の高さ方向(円柱状又は円筒状のロール原盤231の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光234を間欠的に照射することで、レジスト層233を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光234の軌跡に応じた潜像235が、レジスト層233の全面にわたって形成される。
潜像235は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックTをなすように配置されると共に、所定の単位格子Ucの規則的な周期パターンで形成される。潜像235は、例えば、円形状又は楕円形状である。潜像235が楕円形状を有する場合には、その楕円形状は、トラックTの延在方向に長軸方向を有することが好ましい。
〔現像工程〕
次に、例えば、ロール原盤231を回転させながら、レジスト層233上に現像液を滴下して、レジスト層233を現像処理する。これにより、図5Dの断面図に示すように、レジスト層233に複数の開口部が形成される。レジスト層233をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光234で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図5Dの断面図に示すように、潜像(露光部)235に応じたパターンがレジスト層233に形成される。開口部のパターンは、例えば、所定の単位格子Ucの規則的な周期パターンである。
〔エッチング工程〕
次に、ロール原盤231の上に形成されたレジスト層233のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤231の表面をエッチング処理する。これにより、図5Eの断面図に示すように、錐体形状を有する構造体(凹部)232を得ることができる。錐体形状は、例えば、トラックTの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状又は楕円錐台形状であることが好ましい。前記エッチングとしては、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体232のパターンを形成することができる。以上により、目的とするロール原盤231が得られる。
〔転写処理〕
図6Aの断面図に示すような未硬化樹脂層236が形成された基材211を用意する。
次に、図6Bの断面図に示すように、ロール原盤231と、基材211上に形成された未硬化樹脂層236とを密着させ、未硬化樹脂層236に活性エネルギー線237を照射し未硬化樹脂層236を硬化させて微細な凸部及び凹部のいずれかを転写し、微細な凸部及び凹部のいずれか212aが形成された親水性層212を得る。
最後に、ロール原盤231から、得られた親水性層212を剥離して、親水性積層体を得る(図6C)。
なお、基材211が紫外線などの活性エネルギー線を透過しない材料で構成されている場合には、活性エネルギー線を透過可能な材料(例えば、石英)でロール原盤231を構成し、ロール原盤231の内部から未硬化樹脂層236に対して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。なお、転写原盤は上述のロール原盤231に限定されるものではなく、平板状の原盤を用いるようにしてもよい。ただし、量産性向上の観点からすると、転写原盤として上述のロール原盤231を用いることが好ましい。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、レーザーを転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより微細な凸部及び凹部のいずれかを形成した転写原盤を用いて行う前記親水性層形成工程の一例である。
まず、転写原盤及びその製造方法について説明する。
〔転写原盤の構成〕
図7Aは、板状の原盤の構成の一例を示す平面図である。図7Bは、図7Aに示したa−a線に沿った断面図である。図7Cは、図7Bの一部を拡大して表す断面図である。板状の原盤331は、上述した構成を有する親水性積層体を作製するための原盤、より具体的には、前記親水性層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための原盤である。板状の原盤331は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた表面を有し、その表面が親水性層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体332が設けられている。図7Cに示す構造体332は、成形面に対して凹状を有している。板状の原盤331の材料としては、例えば、金属材料を用いることができる。前記金属材料としては、例えば、Ni、NiP、Cr、Cu、Al、Fe、及びその合金を用いることができる。前記合金としては、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。前記ステンレス鋼(SUS)としては、例えば、SUS304、SUS420J2などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
板状の原盤331の成形面に設けられた複数の構造体332と、前記親水性層の表面に設けられた複数の凸部又は凹部とは、反転した凹凸関係にある。即ち、板状の原盤331の構造体332の配列、大きさ、形状、配置ピッチ、及び高さ又は深さなどは、前記親水性層の凸部又は凹部と同様である。
〔レーザー加工装置の構成〕
図8は、板状の原盤を作製するためのレーザー加工装置の構成の一例を示す概略図である。レーザー本体340は、例えば、サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)である。レーザー加工に用いるレーザーの波長は、例えば、800nmである。ただし、レーザー加工に用いるレーザーの波長は、400nmや266nmなどでもかまわない。繰り返し周波数は、加工時間と、形成される凹部又は凸部の狭ピッチ化とを考慮すると、大きいほうが好ましく、1,000Hz以上であることが好ましい。レーザーのパルス幅は短い方が好ましく、200フェムト秒(10−15秒)〜1ピコ秒(10−12秒)程度であることが好ましい。
レーザー本体340は、垂直方向に直線偏光したレーザー光を射出するようになっている。そのため、本装置では、波長板341(例えば、λ/2波長板)を用いて、偏光方向を回転などさせることで、所望の方向の直線偏光又は円偏光を得るようにしている。また、本装置では、四角形の開口を有するアパーチャー342を用いて、レーザー光の一部を取り出すようにしている。これは、レーザー光の強度分布がガウス分布となっているので、その中央付近のみを用いることで、面内強度分布の均一なレーザー光を得るようにしている。また、本装置では、直交させた2枚のシリンドリカルレンズ343を用いて、レーザー光を絞ることにより、所望のビームサイズになるようにしている。板状の原盤331を加工する際には、リニアステージ344を等速で移動させる。
板状の原盤331へ照射されるレーザーのビームスポットは、四角形形状であることが好ましい。ビームスポットの整形は、例えば、アパーチャー、シリンドリカルレンズなどによって行うことができる。また、ビームスポットの強度分布は、なるべく均一であることが好ましい。これは、型に形成する凹凸の深さなどの面内分布をなるべく均一化することが好ましいためである。一般的には、ビームスポットのサイズは、加工を行いたい面積よりも小さいため、ビームを走査することで加工を行いたい面積全てに凸凹形状を付与する必要がある。
前記親水性層の表面の形成に用いられる原盤(型)は、例えば、SUS、NiP、Cu、Al、Fe等の金属などの基板に、パルス幅が1ピコ秒(10−12秒)以下の超短パルスレーザー、いわゆるフェムト秒レーザーを用いてパターンを描画することにより形成される。また、レーザー光の偏光は、直線偏光であっても円偏光であっても楕円偏光であってもよい。このとき、レーザー波長、繰り返し周波数、パルス幅、ビームスポット形状、偏光、サンプルへ照射するレーザー強度、レーザーの走査速度などを適宜設定することにより、所望の凹凸を有するパターンを形成することができる。
所望の形状を得るために変化させることが可能なパラメーターには以下のようなものが挙げられる。フルエンスは、パルス1つあたりのエネルギー密度(J/cm)であり、以下の式で求められるものである。
F=P/(fREPT×S)
S=Lx×Ly
F:フルエンス
P:レーザーのパワー
fREPT:レーザーの繰り返し周波数
S:レーザーの照射位置での面積
Lx×Ly:ビームサイズ
なお、パルス数Nは、1箇所に照射されたパルスの数であり、以下の式で求められるものである。
N=fREPT×Ly/v
Ly:レーザーの走査方向のビームサイズ
v:レーザーの走査速度
また、所望の形状を得るために板状の原盤331の材質を変化させてもいい。板状の原盤331の材質によってレーザー加工される形状は変化する。SUS、NiP、Cu、Al、Fe等の金属などを用いるほかに、原盤表面に、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの半導体材料を被覆してもよい。前記原盤表面に前記半導体材料を被覆する方法としては、例えば、プラズマCVD、スパッタリングなどが挙げられる。被覆する前記半導体材料としては、DLCのほかにも、例えば、フッ素(F)を混入したDLC、窒化チタン、窒化クロムなどを使用できる。被覆して得られる被膜の平均厚みは、例えば、1μm程度とすればよい。
〔レーザー加工工程〕
まず、図9Aに示すように、板状の原盤331を準備する。この板状の原盤331の被加工面である表面331Aは、例えば、鏡面状態となっている。なお、この表面331Aは、鏡面状態となっていなくてもよく、例えば、表面331Aに、転写用のパターンよりも細かな凹凸が形成されていてもよいし、転写用のパターンと同等か、それよりも粗い凹凸が形成されていてもよい。
次に、図8に示したレーザー加工装置を用いて、以下のようにして板状の原盤331の表面331Aをレーザー加工する。まず、板状の原盤331の表面331Aに対して、パルス幅が1ピコ秒(10−12秒)以下の超短パルスレーザー、いわゆるフェムト秒レーザーを用いてパターンを描画する。例えば、図9Bに示したように、板状の原盤331の表面331Aに対して、フェムト秒レーザー光Lfを照射すると共に、その照射スポットを表面331Aに対してスキャンさせる。
このとき、レーザー波長、繰り返し周波数、パルス幅、ビームスポット形状、偏光、表面331Aへ照射するレーザーの強度、レーザーの走査速度等が適宜設定されることにより、図9Cに示すように、所望の形状を有する複数の構造体332が形成される。
〔転写処理〕
図10Aの断面図に示すような未硬化樹脂層333が形成された基材311を用意する。
次に、図10Bの断面図に示すように、板状の原盤331と、基材311上に形成された未硬化樹脂層333とを密着させ、未硬化樹脂層333に活性エネルギー線334を照射し未硬化樹脂層333を硬化させて板状の原盤331の微細な凸部及び凹部のいずれかを転写し、微細な凸部及び凹部のいずれかが形成された親水性層312を得る。
最後に、板状の原盤331から、得られた親水性層312を剥離して、親水性積層体を得る(図10C)。
なお、基材311が紫外線などの活性エネルギー線を透過しない材料で構成されている場合には、活性エネルギー線を透過可能な材料(例えば、石英)で板状の原盤331を構成し、板状の原盤331の裏面(成形面とは反対側の面)から未硬化樹脂層333に対して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。
(その他の親水性積層体の製造方法)
本発明の前記親水性積層体の製造方法以外の、本発明の前記親水性積層体を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凹凸構造を有する基材上に、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する前記親水性層を形成する方法などが挙げられる。前記凹凸構造を有する基材の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記親水性層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記凹凸構造を有する基材上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成し、前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させる方法、(2)真空成形方法などが挙げられる。そうすることにより、前記基材の凹凸構造が前記親水性層の表面形状に反映され、前記親水性積層体を製造できる。
前記基材、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布方法、及び前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明、及び本発明の前記親水性積層体の製造方法の説明において例示したものが挙げられる。
前記真空成形方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。
(物品)
本発明の物品は、本発明の前記親水性積層体を表面に有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、自動車、オートバイ、建設機械、船舶などに搭載される計器類のカバー、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、計器類のカバー、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形、オーバーレイ成形により形成されることが好ましい。
前記親水性積層体は、前記物品の表面の一部に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
前記物品の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の物品の製造方法が好ましい。
(物品の製造方法)
本発明の物品の製造方法は、加熱工程と、親水性積層体成形工程と、射出成形工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記物品の製造方法は、本発明の前記物品の製造方法である。
<加熱工程>
前記加熱工程としては、親水性積層体を加熱する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記親水性積層体は、本発明の前記親水性積層体である。
前記加熱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、赤外線加熱であることが好ましい。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基材のガラス転移温度近傍若しくはガラス転移温度以上であることが好ましい。
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<親水性積層体成形工程>
前記親水性積層体成形工程としては、加熱された前記親水性積層体を所望の形状に成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させて、空気圧により、所望の形状に成形する工程などが挙げられる。
<射出成形工程>
前記射出成形工程としては、所望の形状に成形された前記親水性積層体の基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記成形材料としては、例えば、樹脂などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂、各種複合樹脂、各種変性樹脂などが挙げられる。
前記射出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させた前記親水性積層体の基材側に、溶融した前記成形材料を流し込む方法などが挙げられる。
前記物品の製造方法は、インモールド成形装置、インサート成形装置、オーバーレイ成形装置を用いて行うことが好ましい。
ここで、本発明の物品の製造方法の一例を、図を用いて説明する。この製造方法はインモールド成形装置を用いた製造方法である。
まず、親水性積層体500を加熱する。加熱は赤外線加熱が好ましい。
続いて、図11Aに示すように、加熱した親水性積層体500を、第1金型501と第2金型502との間の所定の位置に配置する。このとき、親水性積層体500の樹脂製基材が第1金型501を向き、親水性樹脂層が第2金型502を向くように配置する。図11Aにおいて、第1金型501は、固定型であり、第2金型502は、可動型である。
第1金型501と第2金型502との間に親水性積層体500を配置した後、第1金型501と第2金型502とを型締めする。続いて、第2金型502のキャビティ面に開口されている吸引穴504で親水性積層体500を吸引して、第2金型502のキャビティ面に親水性積層体500を装着する。そうすることにより、キャビティ面が親水性積層体500で賦形される。また、このとき、図示されていないフィルム押さえ機構で親水性積層体500の外周を固定し位置決めしてもよい。その後、親水性積層体500の不要な部位をトリミングする(図11B)。
なお、第2金型502が吸引穴504を有さず、第1金型501に圧空孔(図示せず)を有する場合には、第1金型501の圧空孔から親水性積層体500に圧空を送ることにより、第2金型502のキャビティ面に親水性積層体500を装着する。
続いて、親水性積層体500の樹脂製基材に向けて、第1金型501のゲート505から溶融した成形材料506を射出し、第1金型501と第2金型502を型締めして形成したキャビティ内に注入する(図11C)。これにより、溶融した成形材料506がキャビティ内に充填される(図11D)。更に、溶融した成形材料506の充填完了後、溶融した成形材料506を所定の温度まで冷却して固化する。
その後、第2金型502を動かして、第1金型501と第2金型502とを型開きする(図11E)。そうすることにより、成形材料506の表面に親水性積層体500が形成され、かつ所望の形状にインモールド成形された物品507が得られる。
最後に、第1金型501から突き出しピン508を押し出して、得られた物品507を取り出す。
前記オーバーレイ成形装置を用いる場合の製造方法は、下記の通りである。これは、親水性積層体を成形材料の表面に直接加飾する工程であり、その一例としては、TOM(Three dimension Overlay Method)工法が挙げられる。前記TOM工法を用いた本発明の物品の製造方法の一例を下記に説明する。
まず、固定枠に固定された親水性積層体によって分断された装置内の両空間について、真空ポンプ等で空気を吸引し、前記両空間内を真空引きする。
この時、片側の空間に事前に射出成型した成形材料を設置しておく。同時に、親水性積層体が軟化する所定の温度になるまで赤外線ヒーターで加熱する。親水性積層体が加熱され軟化したタイミングで、装置内空間の成形材料がない側に大気を送り込むことにより真空雰囲気下で、成形材料の立体形状に、親水性積層体をしっかりと密着させる。必要に応じ、さらに大気を送り込んだ側からの圧空押付けを併用してもよい。親水性積層体が成形体に密着した後、得られた加飾成形品を固定枠から外す。真空成形は、通常80℃〜200℃、好ましくは110℃〜160℃程度で行われる。
オーバーレイ成形の際には、前記親水性積層体と前記成形材料とを接着するために、前記親水性積層体の親水性面とは反対側の面に粘着層を設けてもよい。前記粘着層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。前記粘着層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材上に前記親水性樹脂層を形成後に、前記樹脂製基材の前記親水性樹脂層側とは逆側に、粘着層用塗工液を塗工して、前記粘着層を形成する方法などが挙げられる。また、剥離シート上に粘着層用塗工液を塗工して前記粘着層を形成した後に、前記樹脂製基材と前記剥離シート上の前記粘着層とをラミネートして、前記樹脂製基材上に前記粘着層を積層してもよい。
また、本発明の前記物品は、成形材料の代わりに次のようなものへ真空成形法により親水性積層体を積層したものでもよい。例えば、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(あるいはフィルム)などである。前記各種素材としては、例えば、木質繊維板、金属素材、ガラス、セラミックス、窯業系材料、非陶磁器窯業系材料、樹脂素材などが挙げられる。前記木質繊維板としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)などが挙げられる。前記金属素材としては、例えば、鉄、アルミニウムなどが挙げられる。前記セラミックスとしては、例えば、陶磁器などが挙げられる。前記非セメント窯業系材料としては、例えば、石膏などが挙げられる。前記非陶磁器窯業系材料としては、例えば、ALC(軽量気泡コンクリート)などが挙げられる。前記樹脂素材としては、例えば、ゴムなどが挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<凸部の平均距離、凹部の平均距離、凸部の平均高さ、凹部の平均深さ、平均アスペクト比、及び平均表面積率>
以下の実施例において、凸部の平均距離、凹部の平均距離、凸部の平均高さ、凹部の平均深さ、及び平均アスペクト比は、以下のようにして求めた。
まず、凸部又は凹部を有する親水性樹脂層の表面を原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、AFMの断面プロファイルから凸部又は凹部のピッチ、及び凸部の高さ又は凹部の深さを求めた。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、ピッチP1、P2、・・・、P10と、高さ又は深さH1、H2、・・・、H10とを求めた。
ここで、前記凸部のピッチは、前記凸部の頂点間の距離である。前記凹部のピッチは、前記凹部の最深部間の距離である。前記凸部の高さは、前記凸部間の谷部の最低点を基準とした前記凸部の高さである。前記凹部の深さは、前記凹部間の山部の最高点を基準とした前記凹部の深さである。
次に、これらのピッチP1、P2、・・・、P10、及び高さ又は深さH1、H2、・・・、H10をそれぞれ単純に平均(算術平均)して、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)を求めた。
前記Pmと、前記Hmとから、平均アスペクト比(Hm/Pm)を求めた。
凸部又は凹部を有する親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返しAFM像を得、表面積S1、S2、・・・、S10を求めた。次に、これらの表面積S1、S2、・・・、S10と、それぞれの観察領域の面積との比(表面積/面積)SR1、SR2、・・・、SR10を単純に平均(算術平均)して、親水性樹脂層の表面の平均表面積率SRmを求めた。
<防曇性>
<<純水接触角>>
純水接触角は、PCA−1(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で滑落法によって測定した。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。滴下後、5秒後の接触角を、評価面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とした。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
<<呼気試験>>
25℃50%RHの環境にて、親水性積層体の親水性樹脂層の表面に対して、該表面から法線方向に5cm離れた距離から息を大きく1回吐きかけ、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:親水性積層体に外観変化が全くなかった。
○:親水性積層体は白く曇らなかったが、親水性樹脂層の表面に水膜が形成されたのが確認された。
×:親水性積層体は白く曇った。
<<耐摩耗性>>
ザブィーナMX(KBセーレン株式会社製)を親水性樹脂層の表面に置き、荷重75gf/直径13mmにて10,000往復摺動(摺動ストローク:3cm、摺動周波数:60Hz)した後、純水接触角、呼気試験、外観を評価した。純水接触角及び呼気試験の評価方法は上記と同様。外観は下記評価基準で評価した。
〔外観の評価基準〕
○:外観変化がなかった。
×:傷つき及び白濁の少なくともいずれかが確認された。
<<耐水性>>
親水性積層体を40℃の水中に24時間浸漬させ、取り出した直後にティッシュ(大王製紙株式会社製エリエール)で水を拭き取った。その後、呼気試験、外観、鉛筆硬度を評価し、以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
○:呼気による白化なし、外観変化なし、且つ鉛筆硬度の低下(軟化)が1ランク以内。
×:次のいずれか一つ以上に該当。(1)呼気による白化発生、(2)外観変化あり、(3)鉛筆硬度の低下(軟化)が2ランク以上。
<<耐低温環境試験>>
親水性積層体を5℃に設定した冷蔵庫内にて30分間保持した後、25℃50%RHの環境に取り出したときの曇り具合を評価し、以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:曇りがなかった。
○:白く曇らなかったが、親水性樹脂層の表面に水膜が形成されたのが確認された。
×:白く曇った。
<マルテンス硬度>
親水性樹脂層のマルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定した。
<鉛筆硬度>
親水性樹脂層の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定した。
<伸び率>
伸び率は、以下の方法により求めた。
親水性積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とした。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm;測定温度=190℃)した。
<全光線透過率>
親水性積層体の全光線透過率は、JIS K 7361に従って、HM−150(商品名;株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて評価した。
<ヘイズ>
親水性積層体のヘイズは、JIS K 7136に従って、HM−150(商品名;株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて評価した。
<密着性>
親水性樹脂層の密着性は、JIS K 5400に従い、碁盤目(1mm間隔×100マス)セロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT24)剥離試験により評価した。
<加熱収縮率差>
親水性積層体の加熱収縮率差は、以下の方法により求めた。
まず、100mm×100mmサイズの四角の試験片を切り出した。このとき、該試験片の縦方向及び横方向がそれぞれ、樹脂製基材の長手方向及び幅方向と一致するように切り出した。次いで、これをオーブンで190℃×30分間加熱した。オーブンから取り出して室温まで自然冷却した後、縦方向と横方向の長さをそれぞれ定規で測定した。両方向について加熱前の長さ(=100mm)からの変化率をそれぞれ算出し、その差の絶対値を求めた。これをN=10個の試験片で求め、それらの算術平均値を親水性積層体の加熱収縮率差とした。
<成型加工性1>
親水性積層体の親水性樹脂層が形成された側とは反対側に粘着層を設け、これをTOM工法(Three−dimension Over−lay Method)により、ポリカーボネート製4カーブレンズの凹側に一体化させた。その後、呼気試験、外観を評価し、以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
○:呼気による白化なし、外観変化なし。
×:次のいずれか一つ以上に該当。(1)呼気による白化発生、(2)外観変化(クラック、剥離、シワ)あり。
<成型加工性2>
親水性積層体の親水性樹脂層が形成された側とは反対側に粘着層を設け、これをフィルムインサート成型によりポリカーボネートと一体化させ、凹側に親水性樹脂層を設けた4カーブレンズを作製した。その後、呼気試験、外観を評価し、以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
○:呼気による白化なし、外観変化なし。
×:次のいずれか一つ以上に該当。(1)呼気による白化発生、(2)外観変化(クラック、剥離、シワ)あり。
(実施例1)
<微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤(ガラスロール原盤)の作製>
まず、外径126mmのガラスロール原盤を準備し、このガラスロール原盤の表面に以下のようにしてレジスト層を形成した。即ち、シンナーでフォトレジストを質量比で1/10に希釈し、この希釈レジストをディッピング法によりガラスロール原盤の円柱面上に平均厚み70nm程度に塗布することにより、レジスト層を形成した。次に、ガラスロール原盤を、図4に示したロール原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光することにより、1つの螺旋状に連なると共に、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像がレジスト層にパターニングされた。具体的には、六方格子状の露光パターンが形成されるべき領域に対して、0.50mW/mのレーザー光を照射し六方格子状の露光パターンを形成した。
次に、ガラスロール原盤上のレジスト層に現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、図示しない現像機のターンテーブル上に未現像のガラスロール原盤を載置し、ターンテーブルごと回転させつつガラスロール原盤の表面に現像液を滴下してその表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層が六方格子パターンに開口しているレジストガラス原盤が得られた。
次に、ロールエッチング装置を用い、CHFガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原盤の表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の領域はレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部がガラスロール原盤に形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、Oアッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するガラスロール原盤を得た。
<親水性積層体の作製>
次に、上述のようにして得られたロール原盤を用いて、UVインプリントにより親水性積層体を作製した。具体的には、以下のようにして行った。
樹脂製基材として、三菱ガス化学株式会社製のDF02U(PMMA/PC積層)(平均厚み125μm)を用いた。
前記樹脂製基材のPMMA表面に、下記組成のアンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥、硬化後の平均厚みが0.7μmになるように塗布した。
−アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製) 20質量部
・A−9300−1CL(新中村化学工業株式会社製) 20質量部
・酢酸ブチル 56質量部
・Irgacure 907(BASF社製) 1質量部
・Irgacure 184(BASF社製) 3質量部
乾燥後、未硬化のアンカー層に、メタルハライドを用いて、照射量500mJ/cmで紫外線を照射して、紫外線硬化したアンカー層付樹脂製基材を得た。
下記組成の親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を、得られる親水性樹脂層の平均厚みが3.2μmとなるように、アンカー層付樹脂製基材のアンカー層上に塗布した。親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたアンカー層付樹脂製基材と、上述のようにして得られたロール原盤とを密着させ、メタルハライドランプを用いて、樹脂製基材側から照射量1,500mJ/cmで紫外線を照射して、親水性樹脂層を硬化させた。その後、親水性樹脂層と、ロール原盤とを剥離した。
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・SR203(テトラヒドロフルフリルメタクリレート、サートマー社製) 16質量部
・M−215(イソシアヌル酸EO 変性ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 80質量部
・Lucirin TPO(BASF社製) 4質量部
以上により、親水性樹脂層の表面に微細な凸部を有する親水性積層体を得た。得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図12Aに示す。図12Aのa−a線に沿った断面図を図12Bに示す。
得られた親水性積層体について、上述の方法により、凸部の平均距離(又は凹部の平均距離)(Pm)、凸部の平均高さ(又は凹部の平均深さ)(Hm)、平均アスペクト比(Hm/Pm)、防曇性(純水接触角、呼気試験、耐摩耗性、耐水性、耐低温環境試験)、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、密着性、加熱収縮率差、成型加工性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、ガラスロール原盤を作製する際のレジスト層の露光パターンを変更した以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図13Aに示す。図13Aのa−a線に沿った断面図を図13Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(実施例3)
実施例1において、ガラスロール原盤を作製する際のレジスト層の露光パターンを変更し、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製) 32質量部
・A−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学工業株式会社製) 32質量部
・MPEM−1000(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、第一工業製薬株式会社製) 32質量部
・Lucirin TPO(BASF社製) 4質量部
得られた親水性積層体の親水性樹脂層の表面のAFM像を図14Aに示す。図14Aのa−a線に沿った断面図を図14Bに示す。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(実施例4)
実施例2において、アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物、及び親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例2と同様にして、親水性積層体を作製した。
−アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・8BR−500 45質量部
(ウレタンアクリレートポリマー、大成ファインケミカル株式会社製)
・UV−7550(ウレタンアクリレート、日本合成工業株式会社製) 15質量部
・酢酸ブチル 38.8質量部
・Irgacure 184(BASF社製) 0.6質量部
・Irgacure 907(BASF社製) 0.6質量部
・KP323(信越化学工業株式会社製) 0.003質量部
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・A−600 33質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 43質量部
・ライトエステルTHF(1000) 20質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(実施例5)
実施例2において、アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物、及び親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例2と同様にして、親水性積層体を作製した。
−アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・8BR−500 45質量部
(ウレタンアクリレートポリマー、大成ファインケミカル株式会社製)
・UV−7550(ウレタンアクリレート、日本合成株式会社製) 15質量部
・酢酸ブチル 38.8質量部
・Irgacure 184(BASF社製) 0.6質量部
・Irgacure 907(BASF社製) 0.6質量部
・KP323(信越化学工業株式会社製) 0.003質量部
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・A−600 48質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 28質量部
・ライトエステルTHF(1000) 20質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(比較例1)
実施例1において、ガラスロール原盤を作製する際のレジスト層の露光パターンを変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
作製した積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたアンカー層付樹脂製基材にロール原盤を密着させなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
作製した積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(比較例3)
比較例2において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、比較例2と同様にして、積層体を得た。
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製) 95質量部
・Lucirin TPO(BASF社製) 5質量部
作製した積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(比較例4)
実施例2において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製) 95質量部
・Lucirin TPO(BASF社製) 5質量部
作製した積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
(比較例5)
比較例1において、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を下記組成に変更した以外は、比較例1と同様にして、積層体を得た。
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・CN985B88(脂肪族ウレタンアクリレート、サートマー社製) 95質量部
・Lucirin TPO(BASF社製) 5質量部
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5は、防曇特性の耐摩耗性、耐水性、及び耐低温環境に優れていた。また、成型加工性にも優れていた。
特に、実施例4及び実施例5においては、親水性積層体の親水性樹脂層が形成された側とは反対側に粘着層を設け、これをTOM工法(Three−dimension Over−lay Method)により、ポリカーボネート製8カーブレンズの凹側に一体化させたときにも、呼気による白化なく、且つ外観変化なかった。また、実施例4及び実施例5においては、親水性積層体の親水性樹脂層が形成された側とは反対側に粘着層を設け、これをフィルムインサート成型によりポリカーボネートと一体化させ、凹側に親水性樹脂層を設けた8カーブレンズを作製したときにも、呼気による白化なく、且つ外観変化なかった。
比較例1では、突起(凸部)の高さが100nmよりも高く、耐摩耗性の試験にて、2,000回往復摺動後、突起が破壊されて純水接触角が上がってしまった。また、2,000回往復摺動後、純水接触角は33°であったが、傷がつき、呼気による曇りが発生した。
比較例2では、純水接触角が50°を超えたため、呼気試験が「×」であった。
比較例3、比較例4、及び比較例5より、親水性樹脂層のベタ膜(平滑膜)の純水接触角が70°を超える場合、表面にナノ凹凸構造を設けても純水接触角は50°以下にならず、防曇性が得られなかった。
本発明の親水性積層体は、眼鏡、ゴーグル等のレンズ内側、冷蔵室、冷凍室等の扉、蓋、戸などに組み込まれたガラス窓の室内側等の布などで繰り返し払拭される用途、及び低温環境下で使用される用途に特に適している。
211 基材
212 親水性層
231 ロール原盤
232 構造体
236 未硬化樹脂層
237 活性エネルギー線
311 基材
312 親水性層
331 板状の原盤
332 構造体
333 未硬化樹脂層
334 活性エネルギー線

Claims (11)

  1. 基材と、前記基材上に親水性層とを有し、
    前記親水性層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
    前記親水性層の表面の純水接触角が、50°以下であり、
    前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さのいずれかが、100nm以下であることを特徴とする親水性積層体。
  2. 伸び率が、40%以上である請求項1に記載の親水性積層体。
  3. 親水性層の平均表面積率が、1.10以上である請求項1から2のいずれかに記載の親水性積層体。
  4. 凸部の平均高さ及び凹部の平均深さのいずれかが、60nm以下である請求項1から3のいずれかに記載の親水性積層体。
  5. 基材が、樹脂製基材及びガラス製基材のいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の親水性積層体。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の親水性積層体の製造方法であって、
    基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する未硬化樹脂層形成工程と、
    前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性層を形成する親水性層形成工程とを含むことを特徴とする親水性積層体の製造方法。
  7. 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成される請求項6に記載の親水性積層体の製造方法。
  8. 転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかが、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成される請求項6に記載の親水性積層体の製造方法。
  9. 請求項1から5のいずれかに記載の親水性積層体を表面に有することを特徴とする物品。
  10. 請求項9に記載の物品の製造方法であって、
    親水性積層体を加熱する加熱工程と、
    加熱された前記親水性積層体を所望の形状に成形する親水性積層体成形工程と、
    所望の形状に成形された前記親水性積層体の基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する射出成形工程とを含むことを特徴とする物品の製造方法。
  11. 加熱工程における加熱が、赤外線加熱により行われる請求項10に記載の物品の製造方法。
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