JPWO2015162982A1 - 難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーに対して、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を配合してなる。(A)成分:下記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩化合物(B)成分:下記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)成分:二酸化ケイ素本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、更に(D)成分として、酸化亜鉛を配合してなることが好ましい。(式中、n、X1、pの定義は明細書中を参照。)(式中、r、Y1、qの定義は明細書を参照。)

Description

本発明は、樹脂本来の物性を損なうことなく難燃性に優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ソフトセグメントと称される動きやすい長鎖部分と、ハードセグメントと称される極めて結晶性の強い部分とからなり、その特徴的な構造に由来した、弾性、伸び、機械的強度、耐磨耗性等の物性に優れ、これら樹脂物性を生かして、ホース、ベルト、電線、ケーブル、パイプ、靴底、自動車内外装材、各種成形品等、従来から種々の分野に用いられている。
この熱可塑性ポリウレタンエラストマーに難燃性を付与するために、難燃剤が配合されるが、ハロゲン系難燃剤の使用は、燃焼時に有害なガスを発生するという問題がある。そこで、ノンハロゲン系の難燃剤として、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、縮合リン酸エステル等の窒素及び/又はリンを含有する化合物を添加することが知られている(特許文献1)。
また、燃焼時に表面膨張層(Intumescent)を形成し、分解生成物の拡散や伝熱を抑制することによって難燃性を発揮させるリン酸塩系の難燃剤の使用も提案されている(特許文献2)。
しかしこれら従来のリン酸塩系の難燃剤を使用した場合、目的とする難燃性を発現させるためには、多量の添加を必要とし、それにより樹脂本来の有する物性が損なわれる場合があった。また、ドリッピングを防止するためにポリテトラフルオロエチレン等のドリップ防止剤を添加した場合も、樹脂本来の有する物性が損なわれる問題があった。
特開2001−49053号公報 WO2010/013400
従って本発明の第1の目的は、燃焼時に有害なガスを発生するハロゲン系難燃剤やフッ素系ドリップ防止剤を用いることなく、優れた難燃性と、樹脂本来の優れた物性を有した熱可塑性ポリウレタンエラストマーを提供することにある。
また本発明の第2の目的は、燃焼時にハロゲン由来の有害なガスを発生せず、優れた難燃性と、樹脂本来の優れた物性を有した成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーに対して、
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を配合してなることを特徴とする難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を提供するものである。
(A)成分:下記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩化合物
(B)成分:下記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩化合物
(C)成分:二酸化ケイ素
(式中、nは1〜100の数を表し、X1はアンモニア又は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体であり、pは0<p≦n+2を満たす数である。)
(式中、Z1及びZ2は同一でも異なっていてもよく、−NR56基〔ここでR5及びR6は同一又は異なって水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはメチロール基を表す〕、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である。)
(式中、rは1〜100を表し、Y1は〔R12N(CH2)mNR34〕で表されるジアミン、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミンであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R1、R2、R3及びR4は同一の基であっても異なってもよく、mは1〜10の整数であり、qは0<q≦r+2を満たす数である。)
また本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、更に(D)成分として、酸化亜鉛を配合することが好ましい。
また本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、上記(A)成分が、上記一般式(1)におけるnが2、pが2、X1がメラミン(上記一般式(2)におけるZ1及びZ2が−NH2)であるピロリン酸メラミンであることが好ましい。
また本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、上記(B)成分が、上記一般式(3)におけるqが1、Y1がピペラジンであるポリリン酸ピペラジンであることが好ましい。
また本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、上記ポリリン酸ピペラジンが、ピロリン酸ピペラジンであることが好ましい。
本発明の成形体は、上記いずれかの難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物から得られることを特徴とするものである。
本発明によれば、燃焼時に有害なガスを発生するハロゲン系難燃剤やフッ素系ドリップ防止剤を用いることなく、優れた難燃性と、樹脂本来の優れた物性を有した熱可塑性ポリウレタンエラストマーを提供することができる。また本発明によれば、燃焼時にハロゲン由来の有害なガスを発生せず、難燃性と優れた物性を有した成形体を提供することができる。
実施例1の試験片の表面膨張層の形成状態を示す写真である。 比較例1の試験片の表面膨張層の形成状態を示す写真である。
まず、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマーに用いられる熱可塑性ポリウレタンエラストマーについて説明する。
本発明で用いられる熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、一般に、ポリオール、ジイソシアネート、及び鎖延長剤を用いて調製される。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールが挙げられる。
ここで、ポリエステルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、及びアゼライン酸等;芳香族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等;脂環族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、及びヘキサヒドロイソフタル酸等;又はこれらの酸エステル若しくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等、又は、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
また、ポリエステルエーテルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、及びアゼライン酸等;芳香族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等;脂環族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、及びヘキサヒドロイソフタル酸等;又はこれらの酸エステル若しくは酸無水物と、ジエチレングリコール又はプロピレンオキサイド付加物等のグリコール等、若しくはこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物等が挙げられる。
さらに、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種又は2種以上と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
また、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)とポリヘキサメチレンカーボネート(PHL)との共重合体であっても良い。
また、ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。
前記ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましく用いられる。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)の調製に使用される前記鎖延長剤としては、低分子量ポリオールが使用される。この低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、及び、1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールが挙げられる。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、エステル(ラクトン)系ポリウレタン共重合体、エステル(アジぺート)系ポリウレタン共重合体、エーテル系ポリウレタン共重合体、カーボネート系ポリウレタン共重合体、エーテル・エステル系ポリウレタン共重合体が挙げられ、これらの具体的な市販品の例を挙げると、エステル(ラクトン)系ポリウレタン共重合体の具体的な市販品としては、エラストランC80A10(BASFジャパン(株)製)、エラストランC80A50(BASFジャパン(株)製)、レザミンP−4000シリーズ(大日精化工業(株)製)、レザミンP−4500シリーズ(大日精化工業(株)製)等;エステル(アジペート)系ポリウレタン共重合体の具体的な市販品としては、パンデックスT−5000V(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)、パンデックスTR−3080(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)、レザミンP−1000シリーズ(大日精化工業(株)製)、レザミンP−7000シリーズ(大日精化工業(株)製)等;エーテル系ポリウレタン共重合体の具体的な市販品としては、エラストラン1180A50(BASFジャパン(株)製)、パンデックスT−8180(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)、パンデックスT−8283(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)、パンデックスT−1190(ディーアイシーバイエルポリマー社製)、レザミンP−2000シリーズ(大日精化工業(株)製)等;カーボネート系ポリウレタン共重合体の具体的な市販品としては、パンデックスT−7890N(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)等;エーテル・エステル系ポリウレタン共重合体の具体的な市販品としては、デスモパンDesKU2−88586(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)、レザミンP−800シリーズ(大日精化工業(株)製)等が挙げられる。
これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
次に本発明の(A)成分について説明する。
本発明の(A)成分として用いられる上記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩化合物は、(ポリ)リン酸とアンモニア又は上記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体との塩である。
上記一般式(2)におけるZ1及びZ2で表される炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられ、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、これらアルキル基から誘導される基が挙げられる。Z1及びZ2がとりうる−NR56基におけるR5及びR6で表される炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、上記に挙げたアルキル基のうちの炭素原子数1〜6のものが挙げられる。
上記トリアジン誘導体の具体的な例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
(A)成分として好ましく使用される上記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩化合物としては、(ポリ)リン酸とメラミンとの塩又はポリリン酸アンモニウム化合物が挙げられる。
好ましく使用される(ポリ)リン酸とメラミンとの塩としては、例えば、オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン等が挙げられ、これらの中でも、上記一般式(1)におけるnが2、pが2、X1がメラミンであるピロリン酸メラミンが特に好ましい。リン酸とメラミンとの塩は次の方法によって得ることができる。例えばピロリン酸メラミンの場合は、ピロリン酸ナトリウムとメラミンとを任意の反応比率で塩酸を加えて反応させ、水酸化ナトリウムで中和してピロリン酸メラミンを得ることができる。
また、上記ポリリン酸アンモニウム化合物は、ポリリン酸アンモニウム単体若しくはポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物である。該ポリリンン酸アンモニウム単体としては市販品を使用することができ、市販品としては、クラリアント社製のエキソリット−422、エキソリット−700、モンサント社製のフォスチェク−P/30、フォスチェク−P/40、住友化学(株)社製のスミセーフ−P、チッソ(株)社製のテラージュ−S10、テラージュ−S20を挙げることができる。
上記のポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物としては、ポリリン酸アンモニウムを熱硬化性樹脂で被覆若しくはマイクロカプセル化したものや、メラミンモノマーや他の含窒素有機化合物等でポリリン酸アンモニウム表面を被覆したもの、界面活性剤やシリコン処理を行ったもの、ポリリン酸アンモニウムを製造する過程でメラミン等を添加し難溶化したもの等が挙げられる。
上記のポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物の市販品としては、クラリアント社製のエキソリット−462、住友化学(株)社製のスミセーフ−PM、チッソ(株)社製のテラージュ−C60、テラージュ−C70、テラージュ−C80等が挙げられる。
(A)成分は2種以上の混合物でもよい。
次に本発明の(B)成分について説明する。
本発明の(B)成分として用いられる上記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩化合物は、(ポリ)リン酸とY1で表されるジアミン(〔R12N(CH2)mNR34〕で表されるジアミン、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミン)との塩である。R1〜R4で表される炭素原子数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基としては、例えば、前記でZ1及びZ2で表されるアルキル基の具体例として挙げたもののうちの炭素原子数1〜5のものが挙げられる。
上記一般式(3)におけるY1で表されるジアミンとしては、具体的には、N,N,N',N'−テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、N,N'−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−ジエチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1、7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、ピペラジン、trans−2,5−ジメチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられ、全て市販品を用いることができる。
(B)成分として好ましく使用される上記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩化合物としては、(ポリ)リン酸とピペラジンとの塩が挙げられる。(ポリ)リン酸とピペラジンとの塩としては、具体的には、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン等が挙げられる。これらの中でも、上記一般式(3)におけるqが1、Y1がピペラジンであるポリリン酸ピペラジン、特にピロリン酸ピペラジンが好ましい。(ポリ)リン酸とピペラジンの塩は、次の方法によって得ることができる。例えばピロリン酸ピペラジンの場合は、ピペラジンとピロリン酸とを水中又はメタノール水溶液中で反応させて、水難溶性の沈殿として容易に得られる。ただし、ポリリン酸ピペラジンの場合、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、その他のポリリン酸の混合物からなるポリリン酸とピペラジンとから得られた塩でもよく、原料のポリリン酸の構成は特に限定されない。
(B)成分は2種以上の混合物でもよい。
上記(A)成分の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、好ましくは5〜60質量部、より好ましくは10〜30質量部、さらにより好ましくは12〜20質量部である。一方上記(B)成分の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは15〜45質量部、さらにより好ましくは18〜30質量部である。
また、上記(A)成分と(B)成分との合計配合量は、優れた難燃性を発揮するとともに熱可塑性ポリウレタンエラストマーの有する物性を損なわないために、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、好ましくは15〜65質量部、より好ましくは25〜55質量部、さらにより好ましくは30〜50質量部である。15質量部未満では十分な難燃性が得られない場合があり、65質量部を超えて配合すると、樹脂本来の有する物性を低下させる場合がある。
また、上記(A)成分と上記(B)成分との配合比率(質量基準)は、(A)/(B)=20/80〜50/50であることが好ましく、(A)/(B)=30/70〜50/50であることが更に好ましい。
次に本発明の(C)成分について説明する。
本発明の(C)成分は、二酸化ケイ素であり、これを配合することによりドリップを防止する効果を発揮する。
二酸化ケイ素の形態は粉末状、顆粒状、グラニュール状いずれでもよく、その種類は特に限定されないが、天然シリカ、合成シリカいずれでもよく、結晶質シリカ、非晶質シリカいずれでもよく、乾式シリカ、フュームドシリカ、フューズドシリカ、溶融シリカ、湿式シリカ、いずれでもよい。また内部に細孔を持つもの(いわゆる孔質ないし多孔質)であっても、細孔を持たないもの(いわゆる無孔質)であってもよい。
二酸化ケイ素は微粉末状のものが好ましく、その平均一次粒子径は0.005〜30μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmがさらに好ましい。平均一次粒子径が30μmを超えると、樹脂本来の有する物性を低下させる場合がある。平均一次粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計等を用いて測定することができる。
また二酸化ケイ素の表面はシランカップリング剤や表面処理剤等で表面処理されていてもよい。
二酸化ケイ素の、市販品としては日本アエロジル(株)製「AEROSIL」、トクヤマ(株)製「レオシール」、「トクシール」、塩野義製薬(株)製「カープレックス」、富士シリシア(株)製「サイリシア」、水澤化学工業(株)製「ミズカシル」等が挙げられる。
(C)成分の二酸化ケイ素の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜10.0質量部、より好ましくは0.5〜5.0質量部、さらにより好ましくは1.5〜3.0質量部である。0.1質量部未満では、ドリッピングの防止効果が出ない場合があり、10.0質量部を超えて配合すると樹脂本来の有する物性を低下させる可能性があるため好ましくない。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、さらに(D)成分として、酸化亜鉛を配合することが好ましい。該酸化亜鉛は表面処理されていてもよい。酸化亜鉛は市販品を使用することができ、例えば、酸化亜鉛1種(三井金属工業(株)製)、部分被膜型酸化亜鉛(三井金属工業(株)製)、ナノファイン50(平均粒径0.02μmの超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)、ナノファインK(平均粒径0.02μmの珪酸亜鉛被膜した超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)等があげられる。
(D)成分の酸化亜鉛の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5.0質量部、さらにより好ましくは1.0〜3.0質量部である。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、二次凝集の抑制や耐水性の改良のために、シリコーンオイルを配合してもよい。シリコーンオイルの例としては、ポリシロキサンの側鎖、末端がすべてメチル基であるジメチルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイル等や、これらのコポリマーが挙げられ、またこれらの側鎖及び/又は末端の一部に有機基を導入した、アミン変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、ポリエーテル変性、長鎖アルキル変性、フロロアルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、シラノール変性、ジオール変性、フェノール変性及び/又はアラルキル変性した変性シリコーンオイルを使用してもよい。
上記シリコーンオイルの具体例をあげると、ジメチルシリコーンオイルとして、KF−96(信越化学(株)製)、KF−965(信越化学(株)製)、KF−968(信越化学(株)製)等が挙げられ、メチルハイドロジェンシリコーンオイル又はメチルハイドロジェンポリシロキサン構造を有するシリコーンオイルとして、KF−99(信越化学(株)製)、KF−9901(信越化学(株))、HMS−151(Gelest社製)、HMS−071(Gelest社製)、HMS−301(Gelest社製)、DMS−H21(Gelest社製)などがあげられ、メチルフェニルシリコーンオイルの例としては、KF−50(信越化学(株)製)、KF−53(信越化学(株)製)、KF−54(信越化学(株)製)、KF−56(信越化学(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性品としては、例えば、X−22−343(信越化学(株)製)、X−22−2000(信越化学(株)製)、KF−101(信越化学(株)製)、KF−102(信越化学(株)製)、KF−1001(信越化学(株)製)、カルボキシル変性品としては、例えば、X−22−3701E(信越化学(株)製)、カルビノール変性品としては、例えば、X−22−4039(信越化学(株)製)、X−22−4015(信越化学(株)製)、アミン変性品としては、例えば、KF−393(信越化学(株)製)などがあげられる。
また、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、シランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤とは、有機官能基と共に加水分解性基を有する化合物であり、例えば、一般式A−(CH2k−Si(OR)3で表される。Aは有機官能基であり、kは1〜3の数を表し、Rはメチル基又はエチル基を表す。Aの有機基としては、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。本発明で使用するシランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが特に好ましい。
また、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、難燃性助剤として、多価アルコール化合物を配合してもよい。多価アルコール化合物は、複数のヒドロキシル基が結合している化合物であり、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール 、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等である。これら多価アルコール化合物のうち、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物の群から選ばれる一種以上が好ましく、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物が特に好ましく、ジペンタエリスリトールが最も好ましい。また、THEIC及びソルビトールも好適に使用できる。
ペンタエリスリトールの縮合物は、ペンタエリスリトールとペンタエリスリトールの縮合物の混合物でもよく(本発明ではこれを(ポリ)ペンタエリスリトール混合物という)、この(ポリ)ペンタエリスリトール混合物は、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、(ポリ)ペンタエリスリトール混合物の総量に対し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜40質量%であることを特徴とするものである(但し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物とn≧4のペンタエリスリトールの縮合物との合計の含有量は100質量%である。)。
前記(ポリ)ペンタエリスリトール混合物としては、難燃性の点から、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、混合物の総量に対し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が10〜30質量%であるものが好ましく、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であるものがより好ましく、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜5質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が10〜30質量%であるものが最も好ましい。
前記ペンタエリスリトール及びその縮合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
(式中、tは1以上の整数である。)
前記(ポリ)ペンタエリスリトール混合物としては、前記一般式(4)で示されるペンタエリスリトールの縮合物が分子内でエーテル結合したもの、中間メチロール基が他の分子とエーテル結合したもの、さらには網目状に連なったもの、分子がさらに連なり、大きくなって各所で大環状エーテル構造になったもの等も含まれていてよい。
前記(ポリ)ペンタエリスリトール混合物は、特に制限がなく公知の方法で製造することができる。例えば、ペンタエリスリトール及び/又はペンタエリスリトールの縮合物を、そのまま、或いは適当な触媒と溶媒の存在下、加熱脱水縮合反応させることによって製造することができる。
前記(ポリ)ペンタエリスリトール混合物の製造に用いられる触媒の例としては、アルコールの脱水縮合反応に通常使用される無機酸、有機酸等が挙げられる。無機酸としては、リン酸、硫酸等の鉱酸;これらの鉱酸の酸性塩;粘土鉱物(例えば、モンモリロナイト等)、シリカ・アルミナ、ゼオライト等の固体酸触媒等が挙げられる。有機酸としては、蟻酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
前記触媒の使用量は特に制限はないが、水溶性の酸触媒を用いる場合には、反応中の反応系内のpHが7未満、好ましくは5以下に維持できる量であればよい。また固体酸触媒を用いる場合には、通常、ペンタエリスリトールに対して0.1〜100質量%の使用量でよい。
前記(ポリ)ペンタエリスリトール混合物の製造に用いられる溶媒の例としては、ベンゼン、キシレン、デカリン、テトラリン等の炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、アニソール、フェニルエーテル、ジグライム、テトラグライム、18−クラウン−6等のエーテル類、酢酸メチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、γ−ブチロラクトン等のケトン類、N−メチルピロリジン−オン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピペリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のN−置換アミド類、N,N−ジエチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、キノリン等の三級アミン類、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の尿素誘導体、トリブチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、及びシリコーンオイル等が挙げられ、脱水処理したものでも含水品でも良い。
前記(ポリ)ペンタエリスリトール混合物の製造における加熱脱水縮合の反応温度は、通常約100〜280℃程度であり、より好ましくは、150〜240℃である。100℃より低いと反応が遅くなる場合があり、280℃より高いと縮合反応の制御が困難になる場合がある。
多価アルコール化合物を配合する場合の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜10.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部、さらにより好ましくは1.5〜3.0質量部である。
更に、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、必要に応じて滑剤を配合することも好ましい。このような滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、低分子量ポリエチレン、ポリエチレンワックス等の純炭化水素系滑剤;ハロゲン化炭化水素系滑剤;高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)等のエステル系滑剤;金属石鹸、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル系の滑剤や、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。
これら滑剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.3〜2質量部がより好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に、ハロゲンを含有しない、有機又は無機系の難燃剤又は難燃助剤の一種以上を使用することができる。それら難燃剤・難燃助剤としては、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、無機リン系難燃剤、ジアルキルホスフィン酸塩、シリコーン系難燃剤、金属酸化物、ホウ酸化合物、膨張性黒鉛、その他の無機系難燃助剤、その他の有機系難燃剤等が挙げられる。
上記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメラミン等が挙げられる。
上記金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(協和化学工業(株)製水酸化マグネシウムの商標)等が挙げられる。
上記、リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどがあげられる。
上記、縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等があげられる。
上記、無機リン系難燃剤としては、赤リンが挙げられる。
上記、ジアルキルホスフィン酸塩としては、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
上記、その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの無機化合物、及びその表面処理品が挙げられる。その具体例としては、例えば、TIPAQUE R−680(石原産業(株)製酸化チタンの商標)、キョーワマグ150(協和化学工業(株)製酸化マグネシウムの商標)、DHT−4A(ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)、アルカマイザー4(協和化学工業(株)製亜鉛変性ハイドロタルサイトの商標)、などの種々の市販品を用いることができる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、必要に応じて、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、老化防止剤等を配合してもよい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
これらフェノール系酸化防止剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
これらリン系酸化防止剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルチオプロピオン酸エステル類が挙げられる。
これらチオエーテル系酸化防止剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
これら紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましい。
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
これらヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましい。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニルジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系などが挙げられる。これらの老化防止剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部が好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマーには、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として強化材を配合してもよい。この強化材としては、通常合成樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙及びウール等の有機繊維状強化材、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト及び白土等の板状や粒状の強化材が挙げられる。これらの強化材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆又は集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤等で処理されていてもよい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として層状ケイ酸塩を配合してもよい。層状ケイ酸塩としては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、タルク等が挙げられ、その層間に、有機カチオン、第4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンがインターカレートされているものでもよい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、更に結晶核剤を配合してもよい。該結晶核剤としては一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを適宜用いることができ、本発明においては無機系結晶核剤及び有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。
上記無機系結晶核剤の具体例としては、カオリナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム及びフェニルホスホネート等の金属塩を挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレート等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等のリン化合物金属塩、及び2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を挙げることができる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、可塑剤を配合してもよい。該可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを適宜用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤等を挙げることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジン等の酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール成分とからなるポリエステルや、ポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等を挙げることができる。これらのポリエステルは、単官能カルボン酸若しくは単官能アルコールで末端が封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物等で末端が封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネート等を挙げることができる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコール等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等のセバシン酸エステル等を挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコール、或いはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、及び末端エーテル変性化合物等の、末端封鎖化合物等を挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド等を指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル及びパラフィン類等を挙げることができる。
本発明において可塑剤を使用する場合は、1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、更にアクリル系加工助剤を配合してもよい。アクリル系加工助剤は、(メタ)アクリル酸エステルの1種を重合又は2種以上を共重合させたものが使用できる。
また本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ドリップ防止剤を配合することも可能である。しかし、フッ素系ドリップ防止剤の配合は、ノンハロゲンという観点から好ましくなく、さらに、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの持つ物性、特に伸びを落とすため、好ましくない。ポリテトラフルオロエチレンの配合は特に好ましくない。
フッ素系ドリップ防止剤の例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−n−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ−t−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−2−エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物又はパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
その他、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、必要に応じて通常合成樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、金属石鹸、充点剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で、配合することができる。
本発明において、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及び(A)〜(D)成分以外の任意成分(但し熱可塑性ポリウレタンエラストマー以外の樹脂は除く)を配合する場合、その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し合計で100質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物には、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマー以外の合成樹脂を配合してもよい。このような合成樹脂の例としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂;石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステル及びポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサン、ポリ(2−オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物あるいはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴムポリエーテルスルホン、ポリサルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等を挙げることができる。更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。さらに合成樹脂の具体例を挙げると、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ニトリル系熱可塑性エラストマー、ナイロン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これら合成樹脂は、1種のみ使用してもよく、2種以上を使用してもよい。また合成樹脂はアロイ化されていてもよい。
合成樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に関わらず、使用することができる。
これら合成樹脂の中でも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレン重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン系共重合体が好ましい。
本発明において、熱可塑性ポリウレタンエラストマー以外の樹脂を配合する場合、その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し100質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の製造に際し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーに(A)、(B)及び(C)成分、必要に応じて更に(D)成分を配合するタイミングは特に制限されない。例えば、予め(A)〜(D)成分の中から選択される2種以上をワンパック化してから熱可塑性ポリウレタンエラストマーに配合してもよく、又は各々の成分を熱可塑性ポリウレタンエラストマーに対して配合してもよい。
ワンパック化する場合には、各成分を予め各々粉砕してから混合してもよく、又は予め各成分を混合してから粉砕してもよい。熱可塑性ポリウレタンエラストマー以外の樹脂や他の任意成分を配合する場合も同様である。
本発明の、難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は成形することにより、難燃性に優れた成形品を得ることができる。成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられ、樹脂板、シート、フィルム、異形品等の種々の形状の成形品が製造できる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物及びその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器、OA機器等のハウジング(枠、筐体、カバー、外装)や部品、自動車内外装材の用途に用いられる。
更に、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物及びその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組及び繰形、窓及びドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の、自動車、ハイブリッドカー、電気自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅及び建築用材料や、土木材料、衣料、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品、等の各種用途に使用される。
以下、実施例により本発明を詳細に示す。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、表1の配合は、すべて質量部基準である。
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(大日精化工業(株)製:レザミンP−2283)100質量部に、ステアリン酸カルシウム(滑剤)0.1質量部、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン(フェノール系酸化防止剤)0.1質量部、及びトリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤)0.1質量部とグリセリンモノステアレート0.3質量部(滑剤)、下記表1記載の成分を配合し、次いで200℃で押し出してペレットを製造した。得られたペレットを190℃で射出成型し、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を得た。また実施例1及び比較例1においては、長さ100mm、幅100mm、厚さ2mmの試験片も得た。
ここで、下記表1記載の(A)成分と(B)成分は以下の方法で製造した。
〔製造例1〕
(A)成分:ピロリン酸メラミン
ピロリン酸とメラミンを1:2のモル比で反応させて製造した。
〔製造例2〕
(B)成分:ピロリン酸ピペラジン
ピロリン酸とピペラジンを1:1のモル比で反応させて製造した。
実施例1〜5及び比較例1〜5について、得られた試験片を用いて難燃性試験として、下記試験方法で、UL−94V試験を行った。結果を表1に示す。
<難燃性UL−94V試験方法>
長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無等からUL−94V規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高のものであり、V−1、V−2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。
また、実施例1及び比較例1で得られた、長さ100mm、幅100mm、厚さ2mmの試験片を用いて、ISO5660に基づいて、コーンカロリーメーター((株)東洋精機製作所製 CONEIII)を用いて発熱速度(Heat Release Rate)を、下記の輻射熱の条件で測定した。総発熱量(MJ/m2)、最高発熱速度(kW/m2)、最高発熱速度継続時間(秒)を表1に示す(輻射熱条件:50kW/m2)。
測定後の試験片について、表面膨張層の形成状態の写真を撮影し、また表面膨張層の厚さの最大値を測定した。実施例1の試験片の写真を図1に、比較例1の試験片の写真を図2に示す。また厚さの最大値の結果を表1に示す。
表1に示すように、難燃性UL−94V試験結果において、実施例1〜5でいずれもV−0判定となった。これに対し、比較例1〜5では、ドリッピングにより綿着火し、いずれもV−2判定となった。また、実施例1は、総発熱量及び最高発熱温度の点でも比較例1に比べて優れた難燃性を示した。
また表1及び図1に示すように、実施例1では、充分な表面膨張層が形成され、分解生成物の拡散や伝熱を抑制できることがわかる。これに対し、比較例1では、表1及び図2に示すように、表面膨張層の形成が不充分であり、分解生成物の拡散や伝熱の抑制に劣ることがわかる。

Claims (6)

  1. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーに対して、
    下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を配合してなることを特徴とする難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
    (A)成分:下記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩化合物
    (B)成分:下記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩化合物
    (C)成分:二酸化ケイ素
    (式中、nは1〜100の数を表し、X1はアンモニア又は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体であり、pは0<p≦n+2を満たす数である。)
    (式中、Z1及びZ2は同一でも異なっていてもよく、−NR56基〔ここでR5及びR6は同一又は異なって水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはメチロール基を表す〕、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である。)
    (式中、rは1〜100を表し、Y1は〔R12N(CH2)mNR34〕で表されるジアミン、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミンであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R1、R2、R3及びR4は同一の基であっても異なってもよく、mは1〜10の整数であり、qは0<q≦r+2を満たす数である。)
  2. 更に(D)成分として、酸化亜鉛を配合してなる請求項1に記載された難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  3. 上記(A)成分として、上記一般式(1)におけるnが2、pが2、X1がメラミン(上記一般式(2)におけるZ1及びZ2が−NH2)であるピロリン酸メラミンを用いる請求項1又は2に記載された難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  4. 上記(B)成分として、上記一般式(3)におけるqが1、Y1がピペラジンであるポリリン酸ピペラジンを用いる請求項1〜3の何れか1項に記載された難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  5. 上記ポリリン酸ピペラジンが、ピロリン酸ピペラジンである請求項4に記載された難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載された難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物から得られる成形体。
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