JPWO2014157597A1 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
高温熱水中という過酷な環境下ないし酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中において一定時間形態保持した後、速やかに分解するようコントロールされた樹脂組成物、およびそれらの構造体を提供する。
Description
本発明は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)とを含有する樹脂組成物に関する。
近年、地球環境保護の目的から、自然環境下で容易に分解される樹脂が注目され、世界中で研究されている。自然環境下で容易に分解される樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステルに代表される生分解性ポリマーが知られている。
とりわけ、ポリ乳酸は、植物由来の原料から得られる乳酸あるいはその誘導体を原料とするため生体安全性が高く、環境にやさしい高分子材料である。そのため汎用ポリマーとしての利用が検討され、フィルム、繊維、射出成形品などとしての利用が検討されている。
最近になって、こうした樹脂の易分解性と分解モノマーの水溶性に着目し、オイルフィールドの掘削技術への活用が検討されている(特許文献1〜3)。この用途では、熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することが要求される(図1参照)。しかしながら、一般的に脂肪族ポリエステルなどはその耐加水分解性が劣るため、120℃程度の中温までは使用可能であるが、高温の熱水中ではすぐに分解してしまい(図2参照)、所望の性能を発揮できないことが問題となっている。
また、芳香族ポリエステルなど分解の遅い樹脂は高温の熱水中においても素旱く分解せず(図3参照)、さらに分解した生じたモノマーが本用途の他成分と反応し、水中で析出してしまうことなどが問題となっている(特許文献4)。高温については、ハリバートン社が2008年に発行したレポート「U.S.Shale Gas」に記載の127℃〜193℃や、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が刊行する「石油・天然ガスレビュー」2002・5に記載の149℃以上など様々な定義がなされており、一般に125℃〜150℃よりも高い温度と考えられる。なお、本発明では、135℃よりも高い温度を高温とする。
一方、脂肪族ポリエステルなどの耐加水分解性を向上させるために、カルボジイミド化合物などの加水分解調整剤を用い、樹脂中の初期及び分解によって生じる酸性基を封止することで加水分解を抑制することは既に提案されている(特許文献4〜6)。
脂肪族ポリエステルの加水分解によって生じるカルボキシル基などの酸性基は自触媒となり加水分解を促進するため、これをカルボジイミド化合物などにより即座に封止することで、50〜120℃程度の湿熱環境下での耐加水分解性の向上が確認されている。
しかしながら、135℃よりも高温の熱水中での加水分解抑制に関して、樹脂あるいは加水分解調整剤の観点から十分な検討がなされていない。
以上のように、オイルフィールドの掘削技術において、135℃よりも高温の熱水中で図1のような所望の性能を発揮する樹脂組成物が未だ得られていないのが実状であった。
また、オイルフィールドの掘削技術の用途では、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することが要求される(図5参照。)が、しかしながら、一般的に脂肪族ポリエステルなどはその耐加水分解性が劣るため、中性付近の熱水中では使用可能であるが、酸性や塩基性の強い熱水中ではすぐに分解してしまい(図6参照)、所望の性能を発揮できないことも問題となっている。
また、芳香族ポリエステルなど分解の遅い樹脂は酸性や塩基性の強い熱水中においても素早く分解せず(図3参照)、さらに分解して生じたモノマーが本用途の他成分と反応し、水中で析出してしまうことなどが問題となっている。
とりわけ、ポリ乳酸は、植物由来の原料から得られる乳酸あるいはその誘導体を原料とするため生体安全性が高く、環境にやさしい高分子材料である。そのため汎用ポリマーとしての利用が検討され、フィルム、繊維、射出成形品などとしての利用が検討されている。
最近になって、こうした樹脂の易分解性と分解モノマーの水溶性に着目し、オイルフィールドの掘削技術への活用が検討されている(特許文献1〜3)。この用途では、熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することが要求される(図1参照)。しかしながら、一般的に脂肪族ポリエステルなどはその耐加水分解性が劣るため、120℃程度の中温までは使用可能であるが、高温の熱水中ではすぐに分解してしまい(図2参照)、所望の性能を発揮できないことが問題となっている。
また、芳香族ポリエステルなど分解の遅い樹脂は高温の熱水中においても素旱く分解せず(図3参照)、さらに分解した生じたモノマーが本用途の他成分と反応し、水中で析出してしまうことなどが問題となっている(特許文献4)。高温については、ハリバートン社が2008年に発行したレポート「U.S.Shale Gas」に記載の127℃〜193℃や、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が刊行する「石油・天然ガスレビュー」2002・5に記載の149℃以上など様々な定義がなされており、一般に125℃〜150℃よりも高い温度と考えられる。なお、本発明では、135℃よりも高い温度を高温とする。
一方、脂肪族ポリエステルなどの耐加水分解性を向上させるために、カルボジイミド化合物などの加水分解調整剤を用い、樹脂中の初期及び分解によって生じる酸性基を封止することで加水分解を抑制することは既に提案されている(特許文献4〜6)。
脂肪族ポリエステルの加水分解によって生じるカルボキシル基などの酸性基は自触媒となり加水分解を促進するため、これをカルボジイミド化合物などにより即座に封止することで、50〜120℃程度の湿熱環境下での耐加水分解性の向上が確認されている。
しかしながら、135℃よりも高温の熱水中での加水分解抑制に関して、樹脂あるいは加水分解調整剤の観点から十分な検討がなされていない。
以上のように、オイルフィールドの掘削技術において、135℃よりも高温の熱水中で図1のような所望の性能を発揮する樹脂組成物が未だ得られていないのが実状であった。
また、オイルフィールドの掘削技術の用途では、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することが要求される(図5参照。)が、しかしながら、一般的に脂肪族ポリエステルなどはその耐加水分解性が劣るため、中性付近の熱水中では使用可能であるが、酸性や塩基性の強い熱水中ではすぐに分解してしまい(図6参照)、所望の性能を発揮できないことも問題となっている。
また、芳香族ポリエステルなど分解の遅い樹脂は酸性や塩基性の強い熱水中においても素早く分解せず(図3参照)、さらに分解して生じたモノマーが本用途の他成分と反応し、水中で析出してしまうことなどが問題となっている。
本願の第1発明の目的は、上記従来の問題を解決し、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解する樹脂組成物を提供することにある。
また、本願の第2発明の目的は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解する樹脂組成物を提供することにある。
また、本願の第2発明の目的は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解する樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解する樹脂組成物について鋭意検討した。
その結果、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂を用い、酸性基濃度を低く維持できた場合、その間の加水分解が抑制され分子量の減少が緩やかとなるため重量と形状が保持し、酸性基濃度を低く維持できなくなった時点で急速に樹脂の分解が促進されることを見出した(図4参照)。
さらに検討を進めた結果、120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、135℃よりも高温の熱水中で効率的に酸性基濃度を低く維持し、その添加量によって樹脂の急速な分解のタイミングをコントロールできることを見出した。
即ち、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂と120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である加水分解調整剤を配合することにより、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明によれば、
1.水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記A1〜A3のいずれかを満たす樹脂組成物が提供される。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
また、本発明には以下も包含される。
2.B成分は120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である上記1記載の樹脂組成物。
3.135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下である上記1または2記載の樹脂組成物。
4.樹脂組成物の熱変形温度が135℃〜300℃である上記1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
5.A成分はポリエステルである上記1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
6.A成分は、主鎖が主として下記式(1)で表される乳酸単位からなる上記5記載の樹脂組成物。
7.A成分は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とにより形成されたステレオコンプレックス相を含む上記6記載の樹脂組成物。
8.B成分は、カルボジイミド化合物である上記1〜7いずれかに記載の樹脂組成物。
9.B成分は、下記式(2)で表されるカルボジイミド化合物である上記8記載の樹脂組成物。
(式中、R1〜R4は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。X、Yは各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。各々の芳香環は置換基によって結合し環状構造を形成していてもよい。)
10.B成分は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである上記9記載の樹脂組成物。
11.B成分は、下記式(3)で表される繰り返し単位からなるカルボジイミド化合物である上記8記載の樹脂組成物。
(式中、R5〜R7は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
12.上記1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
13.上記1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる繊維。
また、本発明者らは、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解する樹脂組成物についても鋭意検討した。
その結果、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステルを用い、ポリマー中の酸性基濃度を低く維持できた場合、その間の加水分解が抑制され分子量の減少が緩やかとなり、その間、樹脂の重量と形状がある程度保持され、ポリマー中の酸性基濃度を低く維持できなくなった時点で急速に樹脂の分解が促進されることを見出した(図8参照。)。
さらに検討を進めた結果、特定の要件を満足する加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で効率的に酸性基濃度を低く維持し、その添加量によって樹脂の急速な分解のタイミングをコントロールできることを見出した。
そして、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステルに、上記の酸性基との反応性が特定の要件を満足する加水分解調整剤を配合することにより、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で、樹脂の重量と形状とを一定時間保持した後に素早く分解することを見出し、本願の第2発明を完成した。
すなわち、本願の第2発明によれば、
14. 水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である加水分解調整剤(D成分)とを有する樹脂組成物であって、下記J1〜J2のいずれかを満たす樹脂組成物が提供される。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
また、本願の第2発明には以下も包含される。
15. 72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が1%以下である上記14記載の樹脂組成物。
16. A成分は、主鎖が主として下記式(1)で表される乳酸単位からなる上記14または15に記載の樹脂組成物。
17. 加水分解調整剤(D成分)は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である上記14〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
18. 上記14〜16のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
その結果、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂を用い、酸性基濃度を低く維持できた場合、その間の加水分解が抑制され分子量の減少が緩やかとなるため重量と形状が保持し、酸性基濃度を低く維持できなくなった時点で急速に樹脂の分解が促進されることを見出した(図4参照)。
さらに検討を進めた結果、120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、135℃よりも高温の熱水中で効率的に酸性基濃度を低く維持し、その添加量によって樹脂の急速な分解のタイミングをコントロールできることを見出した。
即ち、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂と120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である加水分解調整剤を配合することにより、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明によれば、
1.水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記A1〜A3のいずれかを満たす樹脂組成物が提供される。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
また、本発明には以下も包含される。
2.B成分は120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である上記1記載の樹脂組成物。
3.135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下である上記1または2記載の樹脂組成物。
4.樹脂組成物の熱変形温度が135℃〜300℃である上記1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
5.A成分はポリエステルである上記1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
6.A成分は、主鎖が主として下記式(1)で表される乳酸単位からなる上記5記載の樹脂組成物。
7.A成分は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とにより形成されたステレオコンプレックス相を含む上記6記載の樹脂組成物。
8.B成分は、カルボジイミド化合物である上記1〜7いずれかに記載の樹脂組成物。
9.B成分は、下記式(2)で表されるカルボジイミド化合物である上記8記載の樹脂組成物。
(式中、R1〜R4は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。X、Yは各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。各々の芳香環は置換基によって結合し環状構造を形成していてもよい。)
10.B成分は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである上記9記載の樹脂組成物。
11.B成分は、下記式(3)で表される繰り返し単位からなるカルボジイミド化合物である上記8記載の樹脂組成物。
(式中、R5〜R7は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
12.上記1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
13.上記1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる繊維。
また、本発明者らは、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解する樹脂組成物についても鋭意検討した。
その結果、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステルを用い、ポリマー中の酸性基濃度を低く維持できた場合、その間の加水分解が抑制され分子量の減少が緩やかとなり、その間、樹脂の重量と形状がある程度保持され、ポリマー中の酸性基濃度を低く維持できなくなった時点で急速に樹脂の分解が促進されることを見出した(図8参照。)。
さらに検討を進めた結果、特定の要件を満足する加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で効率的に酸性基濃度を低く維持し、その添加量によって樹脂の急速な分解のタイミングをコントロールできることを見出した。
そして、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステルに、上記の酸性基との反応性が特定の要件を満足する加水分解調整剤を配合することにより、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で、樹脂の重量と形状とを一定時間保持した後に素早く分解することを見出し、本願の第2発明を完成した。
すなわち、本願の第2発明によれば、
14. 水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である加水分解調整剤(D成分)とを有する樹脂組成物であって、下記J1〜J2のいずれかを満たす樹脂組成物が提供される。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
また、本願の第2発明には以下も包含される。
15. 72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が1%以下である上記14記載の樹脂組成物。
16. A成分は、主鎖が主として下記式(1)で表される乳酸単位からなる上記14または15に記載の樹脂組成物。
17. 加水分解調整剤(D成分)は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である上記14〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
18. 上記14〜16のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
本願第1の発明の樹脂組成物は、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することができる。
さらに、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂を使用するため、高温の熱水中で分解後は効率的に溶解し、一部の芳香族ポリエステルで問題となっている他成分との反応による析出などを大幅に軽減することが可能である。また、120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、定常的な分解抑制を行うことができ、その添加量によって高温の熱水中での樹脂の分解のタイミングをコントロールできる。
そのため、本発明の樹脂組成物はオイルフィールドの掘削技術において所望の性能を発揮し、この用途の樹脂成形品、とりわけ繊維として好適に用いることができる。
本願第2発明の樹脂組成物は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状とを保持した後に素早く分解することができる。
さらに、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステルを使用するため、分解後は効率的に水中に溶解し、一部の芳香族ポリエステルで問題となっている他成分との反応による析出などを大幅に軽減することが可能である。本願で特定した要件を満足する加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、加水分解調整剤が樹脂組成物中にある限り、一定水準の分解抑制能を発揮し続けることから、当該加水分解調整剤の添加量によって高温の熱水中での樹脂の分解のタイミングをコントロールできる。
そのため、本発明の樹脂組成物はオイルフィールドの掘削技術において所望の性能を発揮し、この用途の樹脂成形品として好適に用いることができる。
さらに、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂を使用するため、高温の熱水中で分解後は効率的に溶解し、一部の芳香族ポリエステルで問題となっている他成分との反応による析出などを大幅に軽減することが可能である。また、120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、定常的な分解抑制を行うことができ、その添加量によって高温の熱水中での樹脂の分解のタイミングをコントロールできる。
そのため、本発明の樹脂組成物はオイルフィールドの掘削技術において所望の性能を発揮し、この用途の樹脂成形品、とりわけ繊維として好適に用いることができる。
本願第2発明の樹脂組成物は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状とを保持した後に素早く分解することができる。
さらに、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステルを使用するため、分解後は効率的に水中に溶解し、一部の芳香族ポリエステルで問題となっている他成分との反応による析出などを大幅に軽減することが可能である。本願で特定した要件を満足する加水分解調整剤を酸性基の封止に用いることで、加水分解調整剤が樹脂組成物中にある限り、一定水準の分解抑制能を発揮し続けることから、当該加水分解調整剤の添加量によって高温の熱水中での樹脂の分解のタイミングをコントロールできる。
そのため、本発明の樹脂組成物はオイルフィールドの掘削技術において所望の性能を発揮し、この用途の樹脂成形品として好適に用いることができる。
図1は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するイメージ図であって、本願の第1発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
図2は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な脂肪族ポリエステルにおける挙動である。
図3は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な芳香族ポリエステルにおける挙動である。
図4は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、図1のような樹脂の重量(w)変化の挙動を達成するために必要な分子量(m)と酸性基量(g)の変化を表したイメージ図であって、本願の第1発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
図5は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するイメージ図であって、本願の第2発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
図6は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な脂肪族ポリエステルにおける挙動である。
図7は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な芳香族ポリエステルにおける挙動である。
図8は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、図5のような樹脂の重量(w)変化の挙動を達成するために必要な分子量(m)と酸性基量(g)の変化を表したイメージ図であって、本願の第2発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
図2は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な脂肪族ポリエステルにおける挙動である。
図3は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な芳香族ポリエステルにおける挙動である。
図4は、135℃より高温の熱水中で樹脂を使用した場合に、図1のような樹脂の重量(w)変化の挙動を達成するために必要な分子量(m)と酸性基量(g)の変化を表したイメージ図であって、本願の第1発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
図5は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するイメージ図であって、本願の第2発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
図6は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な脂肪族ポリエステルにおける挙動である。
図7は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、初期から急速に分解が進むイメージ図であって、一般的な芳香族ポリエステルにおける挙動である。
図8は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で樹脂を使用した場合に、図5のような樹脂の重量(w)変化の挙動を達成するために必要な分子量(m)と酸性基量(g)の変化を表したイメージ図であって、本願の第2発明の樹脂組成物において達成される挙動である。
以下、本願の第1発明について詳細に説明する。
1.水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記A1〜A3のいずれかを満たすことを特徴とする。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
<水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)>
本発明において水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)は、分解して生じたモノマーが水溶性を示し、また、分解によって生じた酸性基が自触媒作用を有する樹脂またはその樹脂の末端の少なくとも一部がB成分で封止されたものである。
ここで、水溶性とは25℃における水への溶解度が0.1g/L以上であることとする。水溶性モノマーの水への溶解度は、使用する樹脂組成物が分解後に水中に残らないという観点から、1g/L以上であることが好ましく、3g/L以上であることがより好ましく、5g/L以上であることがさらに好ましい。
また、主成分とは、構成成分の90モル%以上のことである。主成分の割合は好ましくは95〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%である。
A成分として、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。好ましくはポリエステルが例示される。
ポリエステルとしては、例えば、ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体とジオールあるいはそのエステル形成性誘導体、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、ラクトンから選択された1種以上を重縮合してなるポリマーまたはコポリマーが例示される。好ましくはヒトロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなるポリエステルが例示される。より好ましくはヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなる脂肪族ポリエステルが例示される。
かかる熱可塑性ポリエステルは、成形性などのため、ラジカル生成源、例えばエネルギー活性線、酸化剤などにより処理されてなる架橋構造を含有していてもよい。
ジカルボン酸あるいはエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。またシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどが挙げられる。
また、分子量200〜100,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。また、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられる。またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオ酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマー、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなるポリマーやそれらのコポリマーが例示される。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマーとしては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの重縮合体、もしくはコポリマーなどを例示することができる。なかでもポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトン、ならびにこれらのコポリマーなどが挙げられる。特にポリL−乳酸、ポリD−乳酸およびステレオコンプレックスポリ乳酸、ラセミポリ乳酸が挙げられる。
また脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とするポリマーが挙げられる。多価カルボン酸として、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸単位およびそのエステル誘導体が挙げられる。また、ジオール成分として炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどが挙げられる。また分子量200〜100,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。具体的には、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートならびにこれらのコポリマーなどが挙げられる。
ポリエステルは周知の方法(例えば、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(湯木和男著、日刊工業新聞社(1989年12月22日発行)などに記載)により製造することができる。
さらにポリエステルとしては、前記ポリエステルに加え、不飽和多価カルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体を共重合してなる不飽和ポリエステル樹脂、低融点ポリマーセグメントを含むポリエステルエラストマーが例示される。
不飽和多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水マレイン酸、フマル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水マレイン酸などが例示される。かかる不飽和ポリエステルには、硬化特性を制御するため、各種モノマー類が添加され、熱キュア、ラジカルキュア、光、電子線などの活性エネルギー線によるキュア処理により硬化、成形される。
さらに本発明においてポリエステルは、柔軟成分を共重合してなるポリエステルエラストマーでもよい。ポリエステルエラストマーは公知文献、例えば特開平11−92636号公報などに記載のごとく高融点ポリエステルセグメントと分子量400〜6,000の低融点ポリマーセグメントとからなるブロックコポリマーである。高融点ポリエステルセグメントだけでポリマーを形成した場合の融点が150℃以上であり、好適に使用できる。
ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなるポリエステルが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなる脂肪族ポリエステルがより好ましい。さらに、脂肪族ポリエステルがポリL−乳酸、ポリD−乳酸およびステレオコンプレックスポリ乳酸であることが特に好ましい。
ここで、ポリ乳酸は、主鎖が下記式(1)で表される乳酸単位からなる。本明細書において「主として」とは、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%の割合である。
式(1)で表される乳酸単位には、互いに光学異性体であるL−乳酸単位とD−乳酸単位がある。ポリ乳酸の主鎖は主として、L−乳酸単位、D−乳酸単位またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
ポリ乳酸は、主鎖が主としてD−乳酸単位よりなるポリD−乳酸、主鎖が主としてL−乳酸単位よりなるポリL−乳酸が好ましい。主鎖を構成する他の単位の割合は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%の範囲である。
主鎖を構成する他の単位としては、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位が例示される。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、成形品の機械物性および成形性を両立させるため、好ましくは5万〜50万、より好ましくは8万〜35万、さらに好ましくは12〜25万の範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。
ポリ乳酸(A成分)が、ポリD−乳酸またはポリL−乳酸であり、ホモ相ポリ乳酸であるとき、示差走査熱量計(DSC)測定で、150〜190℃の間に結晶融解ピーク(Tmh)を有し、結晶融解熱(△Hmsc)が10J/g以上であることが好ましい。かかる結晶融点および結晶融解熱の範囲を満たすことにより耐熱性を高めることができる。
また、ポリ乳酸の主鎖は、ポリL−乳酸単位とポリD−乳酸単位とにより形成されたステレオコンプレックス相を含むステレオコンプレックスポリ乳酸であることが好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上の結晶融解ピークを示すことが好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、下記式(i)で規定されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90〜100%であることが好ましい。
S = 〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶化度、とりわけXRD測定による結晶化度は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5〜60%、さらに好ましくは7〜60%、特に好ましくは10〜60%の範囲である。
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点は、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜230℃の範囲である。ステレオコンプレックスポリ乳酸のDSC測定による結晶融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは20〜80J/g、さらに好ましくは30〜80J/gの範囲である。ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点が190℃未満であると、耐熱性が悪くなる。また250℃を超えると、250℃以上の高温において成形することが必要となり、樹脂の熱分解を抑制することが困難となる場合がある。従って、本発明の樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上の結晶融解ピークを示すことが好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸において、ポリD−乳酸とポリL−乳酸の重量比は90/10〜10/90であることが好ましい。より好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは30/70〜70/30、とりわけ好ましくは40/60〜60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは5万〜50万、より好ましくは8万〜35万、さらに好ましくは12〜25万の範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、L−ラクチドまたはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧化、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で、固体状態て重合される。
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
触媒の使用量は、ラクチド1Kg当たり0.42×10−4〜100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4〜42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4〜16.8×10−4(モル)使用される。
ポリ乳酸の重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。かかる失活剤として、イミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンドが挙げられる。
またジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸が挙げられる。
また式xH2O・yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸が挙げられる。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が挙げられる。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が挙げられる。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が挙げられる。またこれらの酸の酸性塩が挙げられる。またこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エステルが挙げられる。またこれらの酸のホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
触媒失活能から、式xH2O・yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸が好ましい。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が好ましい。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が好ましい。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が好ましい。またこれらの酸の酸性塩が好ましい。またこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルが好ましい。
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3〜200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
ポリ乳酸は、含有ラクチド量が5,000ppm以下のものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、樹脂を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。溶融開環重合された直後のポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸は通常1〜5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。即ち、実用的な溶融安定性が達成される1,000ppm以下に設定するのが合理的である。さらに好ましくは700ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは100ppm以下の範囲が選択される。ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明成形品の溶融成形時の樹脂の安定性を向上せしめ、成形品の製造を効率よく実施できる利点および成形品の耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを重量比で10/90〜90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練させることにより得ることができる。接触温度はポリ乳酸の溶融時の安定性およびステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より、好ましくは220〜290℃、より好ましくは220〜280℃、さらに好ましくは225〜275℃の範囲である。
溶融混練の方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽、住友重機械工業株式会社製「バイボラック(登録商標)」、三菱重工業株式会社製N−SCR、株式会社日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型攪拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
<加水分解調整剤(B成分)>
本発明において加水分解調整剤(B成分)は、樹脂(A成分)の末端基および分解によって生じた酸性基を封止する剤である。すなわち、樹脂(A成分)の自触媒作用を抑制し、加水分解を遅延させる効果を有する剤である。
酸性基として、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。本発明においては、とりわけカルボキシル基が例示される。
使用する条件が135℃より高温の熱水中のため、B成分は120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上であることが好ましい。
ここで、120℃における耐水性とは、例えば、1)ジメチルスルホキシド50mlに1gのB成分を溶解させた系に、2gの水を加え、120℃で5時間還流させながら撹拌した時に、溶解している部分の解析から算出される5時間処理後に変化せず残っている剤の概算量、あるいは、2)ジメチルスルホキシドに溶解しない場合には、B成分を溶解させることができ、且つ親水性のある溶媒を用いて上記1)と同様の処理を行って求めた概算量を用いて、下記式(ii)で表される値である。なお、2)において、用いる溶媒の沸点が120℃未満であるときは、その溶媒に、B成分の少なくとも一部が溶解する範囲においてジメチルスルホキシドを混合し、その混合溶媒50mlを用いた。混合割合は通常は(1:2)〜(2:1)の範囲から選択すればよいが、上記条件を満たす限り特に限定されない。
2)において用いる溶媒としては、通常は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルから選べば溶解可能である。
耐水性(%) = 〔5h処理後の剤量/初期の剤量〕×100 (ii)
耐水性は、この他、同等の評価によって表してもよい。
不安定な剤を耐水評価した場合、加水分解によって剤の一部が変性し、酸性基の封止能が低下する。そのような剤は、高温の熱水中で使用した場合、水により失活するため、目的の酸性基を封止する能力が著しく低下してしまう。以上のことから、120℃における耐水性は、97%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.9%以上が特に好ましい。99.9%以上、すなわち高温の熱水中で安定であると、選択的かつ効率的に酸性基との反応を行うことができる。
また、190℃における酸性基との反応性とは、例えば、評価用ポリ乳酸100重量部に対し、加水分解調整剤のカルボキシル基と反応する基が、評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度の1.5倍当量に相当する量の剤を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度190℃、回転数30rpmで1分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、カルボキシル基濃度を測定し、下記式(iii)で与えられる値である。
反応性(%)=〔(評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (iii)
評価用ポリ乳酸としては、MWが12万から20万、カルボキシル基濃度が10〜30当量/tonであることが好ましい。このようなポリ乳酸としては、例えば、ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は22.1当量/ton)などを好適に使用することができ、その場合、加水分解調整剤のカルボキシル基と反応する基が33.15当量/tonとなる剤の量を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度190℃、回転数30rpmで1分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、カルボキシル基濃度を測定することで、反応性の値を求めることができる。
酸性基との反応性は、この他、同等の評価によって与えてもよい。
安定な剤を反応性評価した場合、上記条件で混練しても樹脂組成物のカルボキシル基濃度はほとんど変化しない。そのような剤は、高温の熱水中で使用した場合、目的の酸性基を封止する能力がほとんど発現しないため、樹脂(A成分)の分解を抑制できない。
以上のことから、190℃における酸性基との反応性は、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。80%以上、すなわち高温の熱水中での酸性基との反応性が高いと、効率的に酸性基との反応を行うことができる。
本発明の加水分解調整剤(B成分)は、120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上であることが重要である。すなわち、非常に安定な剤は、耐水性は高い値となるが、酸性基との反応性は低い値となり、その場合、高温の熱水中で目的の酸性基を封止する能力がほとんど発現しない。また、非常に不安定な剤は、酸性基との反応性は高い値となるが、耐水性は低い値となり、その場合、高温の熱水中で水により失活するため、目的の酸性基を封止する能力が著しく低下してしまう。
以上のことから、耐水性および酸性基との反応性が高い加水分解調整剤が本発明において好適に使用される。
B成分として、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物などの付加反応型の化合物が挙げられる。
また、これら化合物を2つ以上組合せて使用することができる。耐水性や酸性基との反応性の観点から、好ましくはカルボジイミド化合物が例示される。
カルボジイミド化合物としては、下記一般式(I)、(II)の基本構造を有するものを挙げることができる。
(式中、R、R’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。RとR’が結合し環状構造を形成していてもよく、スピロ構造などにより2つ以上の環状構造を形成していてもよい)
(式中、R、R’’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。nは2から1000の整数である。)
安定性や使いやすさの観点から、芳香族カルボジイミド化合物がより好ましい。例えば、下記式(2)、(3)のような芳香族カルボジイミド化合物が挙げられる。
(式中、R1〜R4は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。X、Yは各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。各々の芳香環は置換基によって結合し環状構造を形成していてもよく、スピロ構造などにより2つ以上の環状構造を形成していてもよい)
(式中、R5〜R7は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。nは2から1000の整数である。)
このような芳香族カルボジイミド化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートを脱炭酸縮合反応して合成されるポリカルボジイミド、これら2種の組合せなどが例示される。
高温の熱水中で使用する観点から、本発明において、とりわけビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドが好適に使用できる。
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドは、耐水性や反応性の観点から純度が高いほど良く、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい(ここで純度は後述の実施例記載の通り、HPLCによる測定で得られた面積から求める)。
また、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドは耐水性や反応性の観点から、下記式(4)、(5)で表される化合物の合計含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい(ここで下記式(4)、(5)で表される化合物の合計含有量は後述の実施例記載の通り、1H−NMRによる測定で求める)。
下記式(4)、(5)で表される化合物の合計含有量は5%以下の場合、高温の熱水中での効果がさらに向上する。この効果の向上は、80℃程度の温水中では確認できていないが、少なくとも180℃以上の高温の熱水中では有意な差が発現することが確認できており、下記式(4)、(5)で表される化合物の耐水性の観点から、135℃以上の高温域では有意な差が発現することが推察される。
(式中、R8〜R11は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つがプロピル基で、それ以外の基はイソプロピル基である。)
(式中、R12〜R15は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つの基がオルト位以外に置換している。)
純度の高いビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを得る方法としては、一般に公知な精製方法を使用することができる。具体的な方法として、蒸留、再結晶、洗浄、抽出、再沈殿、カラムなどが挙げられる。
とくに、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドと上記式(4)、(5)で表される化合物との混合物からビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドのみを精製する場合は、分子量が同じであり、溶媒への親和性も類似のため、再結晶による精製が好ましい。
再結晶に使用する溶媒はビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドと反応しないものであれば何でもよく、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール類、ヘキサンなどのアルカン類を用いることができる。また、2種類以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、下記A1〜A3のいずれかを満たす。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物は、所望の性能を発揮するために、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するようにコントロールすることが重要である。一定期間とは、用途により決定されるが、10分間〜12時間のいずれかであることが好ましい。また、所望の性能を発揮するという観点から、30分間〜6時間のいずれかがより好ましく、30分間〜4時間のいずれかがさらに好ましい。
樹脂の重量と形状を保持するとは、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であり、形状を表す体積変化量が50%以下であることが好ましい。例えば、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であっても、完全に加水溶解した状態では、樹脂の重量と形状を保持したとはいえない。所望の性能を発揮するという観点から、樹脂組成物の非水溶分の重量は70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、形状を表す体積変化量は30%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
ここで、樹脂の重量と形状の体積変化量とは、例えば、下記のような評価によって与えられる値である。
樹脂組成物300mgおよび蒸留水12mlを、110℃に予熱した密閉式溶解るつぼ(オーエムラボテック株式会社製、MR−28、内容積28ml)に仕込んで密閉し、予め所定温度に保持しておいた熱風乾燥機(光洋サーモシステム株式会社製、KLO−45M)内にるつぼを静置する。
るつぼを静置後、るつぼを熱風乾燥機に静置してからるつぼ内部の温度が所定の試験温度に到達する時間を試験開始時点とし、この試験開始時点から一定期間が経過した時点で、るつぼを熱風乾燥機から取り出す。熱風乾燥機から取り出したるつぼを20分間の空冷後、10分間の水冷により常温まで冷却した後、るつぼを開封して内部の試料および水を回収する。
内部の試料および水はろ紙(JIS P3801:1995、5種A規格)を用いてろ過を行い、ろ紙上に残る樹脂組成物を60℃、133.3Pa以下の真空にて3時間乾燥後、樹脂組成物の重量と形状の体積を測定し、下記式(iv)及び(v)から樹脂の重量と形状の体積変化量を求める。
重量(%)=[一定期間処理後の樹脂組成物の重量/初期の樹脂組成物の重量]×100(iv)
形状の体積変化量(%) = [一定期間処理後の樹脂組成物の体積/初期の樹脂組成物の体積]×100 (v)
ここで、形状の体積は樹脂組成物を実体顕微鏡により測定し求められる値である。
実体顕微鏡としては、例えば、ライカマイクロシステムズ株式会社製M205Cなどが使用できる。
なお、この評価では、樹脂組成物のサイズは、例えば、ペレット状であれば各辺が0.5mm〜5mmの立方体あるいは直方体に近いもの、繊維状であれば糸の太さが1μm〜1000μm、糸の長さが1mm〜40mmの繊維、フィルム状であれば厚みが50μm〜1000μm、縦と横の長さがそれぞれ5mm〜50mmのフィルムなどを通常使用することができる。
樹脂の重量と形状の体積変化量は、この他、同等の評価によって与えてもよい。素早く分解することとは、自触媒作用によりA成分の加水分解が促進している状態であり、酸性基の濃度が指数関数的に上昇する。逆に酸性基の濃度がB成分により低い状態を維持する間はA成分の分解が緩やかとなる。そのため、樹脂の重量と形状が保持される間は、樹脂組成物由来の酸性基の濃度が30当量/ton以下であることが好ましい。
30当量/tonよりも多い場合、自触媒作用によりA成分の加水分解が促進され、B成分の効果が十分に発揮されない。酸性基の濃度が低いほど、樹脂組成物の重量や形状の変化を抑制することができるため、所望の性能を発揮するという観点から、樹脂の重量と形状が保持される間は、樹脂組成物由来の酸性基の濃度が20当量/ton以下がより好ましく、10当量/ton以下がさらに好ましく、3当量/ton以下が特に好ましい。
ここで、樹脂組成物由来の酸性基の濃度は、例えば、上述した樹脂の重量と形状の体積変化量を求めるために用いた評価と同様にして樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物を1H−NMRにより測定することで求めることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、135℃から220℃の任意の温度の熱水中で好適に使用することができる。135℃以下では、A成分のみを使用し所望の性能を発揮できる場合がある。また220℃より高温では、本発明の樹脂組成物においても、すぐに分解してしまい、所望の性能を発揮できない場合がある。そのため、本発明の樹脂組成物は150℃から220℃の任意の温度の熱水中でより好適に使用することができ、170℃から210℃の任意の温度の熱水中でさらに好適に使用することができ、190℃〜210℃でさらに好適に使用することができる。
本発明の樹脂組成物は、下記A1〜A3のいずれかを満たす。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物が好適に使用できる範囲は温度によって変化する。また、A1〜A3において、規定した一定期間(1時間、2時間、3時間)よりも早い時間は樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であることが好ましい。
A1において、一定期間は3時間であり、その間、樹脂の重量と形状を保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、本発明で定義される2時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であってもよい。
A2において、一定期間は2時間であり、その間、樹脂の重量と形状を保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、本発明で定義される2時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であってもよい。
A3において、一定期間は1時間であり、その間、樹脂の重量と形状を保持することを示している。オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、本発明で定義される1時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であってもよい。
A1〜A3において規定した一定期間(1時間、2時間、3時間)後、B成分の酸性基を封止する効果が消え、酸性基の自触媒作用により樹脂の分解は促進され、それに伴い酸性基の濃度が指数関数的に上昇する。さらに、分解が進むと樹脂は水溶性モノマーとなり、水に溶解していく。その現象が一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に可能な限り早く起こることが、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際に適している。そのため、24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることが好ましい。上記理由より、18時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがより好ましく、12時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましく、6時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。例えば、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際、樹脂組成物は一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に速やかに水中に溶解することで、効果的に働くことができる。そのため、135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。また、使用後の水中の処理や所望の性能を発揮するという観点から、非水溶分は少ないほどよく、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物の熱変形温度は135℃〜300℃であることが好ましい。ここで、熱変形温度とは、樹脂組成物の融点あるいは軟化点を指す。樹脂組成物の使用が135℃より高温の熱水中を想定したものであるから、樹脂組成物の熱変形温度が高いほど、広範な温度領域で使用することができる。一方、300℃以下だと本発明の樹脂組成物の成型が比較的容易である。そのため、かかる樹脂組成物の熱変形温度は150℃〜300℃であることがより好ましく、165℃〜300℃であることがさらに好ましく、170℃〜300℃であることがよりさらに好ましく、175℃〜285℃であることがよりさらに好ましく、180℃〜285℃であることが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物において、B成分の添加量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、1〜30重量部である。1重量部よりも少ないと、135℃より高温の熱水中では、十分な酸性基の封止効果が発揮されない場合がある。また、30重量部よりも多いと、樹脂組成物からのB成分のブリードアウトや成型性の悪化、基質の特性が変性する、などがある場合がある。かかる観点より、B成分の添加量は、A成分とB成分の合計100重量部に対して、1.5〜20重量部が好ましく、2〜15重量部がより好ましく、2.5〜12.5重量部がさらに好ましい、3.0〜10重量部が特に好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)を溶融混練して製造することができる。
なお、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)としてポリ乳酸を採用した場合には、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のポリL−乳酸、ポリD−乳酸、および加水分解調整剤(B成分)を混合し、ステレオコンプレックスポリ乳酸を形成されると共に、本発明の樹脂組成物を製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを混合しステレオコンプレックスポリ乳酸を形成させた後、加水分解調整剤(B成分)を混合して製造することもできる。
加水分解調整剤(B成分)を、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)に添加、混合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のマスターバッチとして添加する方法、あるいは加水分解調整剤(B成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(B成分)を浸透させる方法などをとることができる。
溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のマスターバッチとして添加する方法をとる場合には、従来公知の混練装置を使用して添加する方法をとることができる。混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の反応容器、混合槽、混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。混合時間は特に指定はなく、混合装置、混合温度にもよるが、0.1分間から2時間、好ましくは0.2分間から60分間、より好ましくは0.2分間から30分間が選択される。
溶媒としては、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)および加水分解調整剤(B成分)に対し、不活性であるものを用いることができる。特に、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解する溶媒が好ましい。
溶媒としてはたとえば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどが挙げられる。ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
本発明において、溶媒は、樹脂組成物100重量部あたり1〜1,000重量部の範囲で適用される。1重量部より少ないと、溶媒適用に意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、反応効率の観点より1,000重量部程度である。
加水分解調整剤(B成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(B成分)を浸透させる方法をとる場合には、上記のごとき溶剤に溶解した加水分解調整剤(B成分)に固体の水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)を接触させる方法や、加水分解調整剤(B成分)のエマルジョン液に固体の水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)を接触させる方法などをとることができる。
接触させる方法としては、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)を浸漬する方法や、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)に塗布する方法、散布する方法などを好適にとることができる。
加水分解調整剤(B成分)による水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の酸性基の封止反応は、室温(25℃)〜300℃程度の温度で可能であるが、反応効率の観点より50〜280℃、より好ましくは100〜280℃の範囲ではより促進される。水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)は、溶融している温度ではより反応が進行しやすいが、加水分解調整剤(B成分)の揮散、分解などを抑制するため、300℃より低い温度で反応させることが好ましい。また水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の溶融温度を低下、攪拌効率を上げるためにも、溶媒を適用することは効果がある。
反応は無触媒で十分速やかに進行するが、反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒としては、一般的に加水分解調整剤(B成分)で使用される触媒が適用できる。これらは1種または2種以上使用することができる。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
また、本発明では加水分解調整剤(B成分)を2種以上組合せて使用してもよく、例えば、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の初期の酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(B成分)と、135℃より高温の熱水中で生じる酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(B成分)について別々のものを使用してもよい。
さらに、加水分解調整剤(B成分)の助剤、すなわち加水分解を遅延させるためにB成分の効果を補助する剤を併用することが好ましい。そのような剤としては、公知のあらゆるものが使用できるが、例えば、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の炭酸化物から選ばれる少なくとも一つの化合物が例示される。助剤の含有量は加水分解調整剤(B成分)100重量部当たり、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.7〜10重量部である。
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を失わない範囲で、公知のあらゆる添加剤、フィラーを添加して用いることができる。例えば、安定剤、結晶化促進剤、充填剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、末端封止剤などが挙げられる。
なお、添加剤については、発明の効果を失わないという観点から、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の分解を促進する成分、例えば、リン酸成分や樹脂組成物中で分解してリン酸成分を生じるようなホスファイト系添加剤など、については使用しないか、あるいは極力減量するか、あるいは失活するかなどの方法で影響を低減することが重要である。例えば、加水分解調整剤(B成分)と一緒に、それらを失活あるいは抑制する成分を併用する方法などを好適にとることができる。
<安定剤>
本発明の樹脂組成物には、安定剤を含有することができる。安定剤としては通常の熱可塑性樹脂の安定剤に使用されるものを用いることができる。例えば酸化防止剤、光安定剤等を挙げることができる。これらの剤を配合することで機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等を挙げることができる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物として、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス[3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ジアミン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等を挙げることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
ホスファイト系化合物としては、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものが好ましく、具体的には、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)、2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン「スミライザー(登録商標)」GP)等が挙げられる。
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
光安定剤としては、具体的には例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等を挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4’−オクトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のアルキルフェニルサリシレート類が挙げられる。
蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−「2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジメタノールとの縮合物等を挙げることができる。
本発明において安定剤成分は1種類で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。また安定剤成分として、ヒンダードフェノール系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
安定剤の含有量は水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
<結晶化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができる。結晶化促進剤を含有することで、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
即ち、結晶化促進剤の適用により、成形性、結晶性が向上し、通常の射出成形においても十分に結晶化し耐熱性、耐湿熱安定性に優れた成形品を得ることができる。加えて、成形品を製造する製造時間を大幅に短縮でき、その経済的効果は大きい。
本発明で使用する結晶化促進剤は一般に結晶性樹脂の結晶化核剤として用いられるものを用いることができ、無機系の結晶化核剤および有機系の結晶化核剤のいずれをも使用することができる。
無機系の結晶化核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。これらの無機系の結晶化核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01〜0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
有機系の結晶化核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(tert−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、分岐型ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明で使用する結晶化促進剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部である。
<充填剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の充填剤を含有することができる。充填剤成分を含有することで、機械的特性、耐熱性、および金型成形性に優れた成形品を得ることができる。
有機充填剤として、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維等の繊維状のもの、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、紙粉、木粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉等の粉末状のものが挙げられる。成形性の観点から紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉等の粉末状のものが好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末が好ましい。紙粉、木粉がより好ましい。特に紙粉が好ましい。
これら有機充填剤は天然物から直接採取したものを使用してもよいが、古紙、廃材木および古衣等の廃材をリサイクルしたものを使用してもよい。また木材として、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等が好ましい。
紙粉は成形性の観点から接着剤、とりわけ、紙を加工する際に通常使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョン等のエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤等のホットメルト接着剤等を含むものが好ましく例示される。
本発明において有機充填剤の配合量は特に限定されるものではないが、成形性および耐熱性の観点から、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜200重量部、さらに好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは15〜100重量部である。
有機充填剤の配合量が1重量部未満であると、組成物の成形性向上効果が小さく、300重量部を超える場合には充填剤の均一分散が困難になり、あるいは成形性、耐熱性以外にも材料としての強度、外観が低下する可能性があるため好ましくない。
本発明の組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤合有により、機械特性、耐熱性、成形性の優れた組成物を得ることができる。本発明で使用する無機充填剤としては、通常の熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粉末状のものを用いることができる。
具体的には例えば、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、イモゴライト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維およびホウ素繊維等の繊維状無機充填剤、層状珪酸塩、有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、粉末珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシクム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土フラーレンなどのカーボンナノ粒子等の板状や粒子状の無機充填剤が挙げられる。
層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロサイト、カネマイト、ケニヤイト等の各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられる。これらは天然のものであっても合成のものであって良い。これらのなかでモンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物やLi型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母が好ましい。
これらの無機充填剤のなかでは繊維状もしくは板状の無機充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラステナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、マイカ、およびカオリン、陽イオン交換された層状珪酸塩が好ましい。また繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
かかる充填剤はエチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または収束処理されていてもよく、またアミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤で処理されていても良い。
無機充填剤の配合量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.1〜200重量部、より好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部である。
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。本発明において使用する離型剤は通常の熱可塑性樹脂に用いられるものを使用することができる。
離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れたポリ乳酸成形品を得ることができる。
脂肪酸としては炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、等が挙げられる。
オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステアリン酸、等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5,000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪族ケトンとしては炭素数6以上のものが好ましく、高級脂肪族ケトン等が挙げられる。
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジステアレート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、が好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックッス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
<帯電防止剤>
本発明の樹脂組成物は、帯電防止剤を含有することができる。帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
本発明において帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
<可塑剤>
本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含有することができる。可塑剤としては一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤、等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸または単官能アルコールで末端封止されていても良い。
グリセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
多価カルボン酸系可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸イソデシル、アジピン酸−n−デシル−n−オクチル等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸エステルが挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックおよびまたはランダム共重合体、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物等の末端封止剤化合物等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
その他の可塑剤の具体的な例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(2−エチルブチレート)等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール類、ペンタエリスリトール類の脂肪酸エステル、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類等が挙げられる。
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤、ポリアルキレン系可塑剤、グリセリン系可塑剤、ペンタエリスリトール類、ペンタエリスリトール類の脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
可塑剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。本発明においては結晶化核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
<耐衝撃改良剤>
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有することができる。耐衝撃改良剤とは熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良に用いることができるものであり、特に制限はない。例えば以下の耐衝撃改良剤の中から選択される少なくとも1種を用いることができる。
耐衝撃改良剤の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えばエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル共重合体(例えばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム等が挙げられる。
さらに各種架橋度を有するものや各種ミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するものやコア層とそれを覆う1以上のシェル層とから構成され、また隣接する層が異種重合体から構成されるいわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体等も使用することができる。
さらに上記具体例に挙げた各種の(共)重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体およびブロック共重合体等のいずれであっても、本発明の耐衝撃改良剤として用いることができる。
耐衝撃改良剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは10〜20重量部である。
<その他>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含有させても良い。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、臭素系、リン系、シリコーン系、アンチモン化合物等の難燃剤を含有させても良い。
また、有機、無機系の染料、顔料を含む着色剤、例えば、二酸化チタン等の酸化物、アルミナホワイト等の水酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、紺青等のフェロシアン化物、ジンククロメート等のクロム酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、群青等の珪酸塩、マンガンバイオレット等のリン酸塩、カーボンブラック等の炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉等の金属着色剤等を含有させても良い。
また、ナフトールグリーンB等のニトロソ系、ナフトールイエローS等のニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタルイエロー等のアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルー等のフタロシアニン系、インダントロンブルー等の縮合多環系着色剤等、グラファイト、フッソ樹脂等の摺動性改良剤等の添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は単独であるいは2種以上を併用することもできる。
<成形品>
本発明の樹脂組成物よりなる成形品は、射出成形、押し出し成形、真空、圧空成形およびブロー成形等により成形できる。成形品として、ペレット、繊維、布帛、繊維構造体、フィルム、シート、シート不織布などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物よりなるペレットは、その溶融成形法は何ら限定されず、公知のペレット製造法により製造されたものが好適に使用できる。
即ち、ストランド、あるいは板状におしだされた樹脂組成物を、樹脂が完全に固化した後、あるいは完全には固化されないで、いまだ溶融状態にあるとき、空気中、あるいは水中でカッティングする等の手法が従来公知であるが、本発明においてはいずれも好適に適用できる。
射出成形は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の種類によって、成形条件を適宜設定すればよいが、射出成形時、成形品の結晶化、成形サイクルを上げる観点から、例えば、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がポリ乳酸であれば、金型温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。しかし、成形品の変形を防ぐ意味において、金型温度は、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
またこれらの成形品は、各種ハウジング、歯車、ギア等の電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装、外装部品等)および日用部品などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物からなる繊維および繊維構造体は通常の溶融紡糸およびその後の後加工により得られた材料を好適に使用することができる。
即ち、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)はエクストルーダー型やプレッシャーメルター型の溶融押出し機で溶融された後、ギアポンプにより計量され、パック内で濾過された後、口金に設けられたノズルからモノフィラメンント、マルチフィラメント等として吐出される。
口金の形状、口金数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。吐出された糸は直ちに冷却・固化された後集束され、油剤を付与されて巻き取られる。巻き取り速度は特に限定されるものではないが水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸のときには、ステレオコンプレックス結晶が形成され易くなることにより100m/分〜5,000m/分の範囲が好ましい。
巻き取られた未延伸糸はそのまま使用することもできるが、延伸して使用することができる。
未延伸で使用する場合、紡糸後、巻き取り前に水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度で、熱処理が行われることが好ましい。熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。
延伸を行う場合は紡糸工程と延伸工程は必ずしも分離する必要はなく、紡糸後、いったん巻き取ることなく引き続き延伸を行う直接紡糸延伸法を採用しても構わない。
延伸は1段延伸でも、2段以上の多段延伸でも良く、高強度の繊維を作製する観点から、延伸倍率は3倍以上が好ましく、さらには4倍以上が好ましい。好ましくは3〜10倍が選択される。しかし、延伸倍率が高すぎると繊維が失透し白化し繊維の強度が低下したり破断伸度が小さくなりすぎ繊維用途としては小さくなり過ぎたりして好ましくない。
延伸の予熱方法としては、ロールの昇温のほか、平板状あるいはピン状の接触式加熱ヒータ、非接触式熱板、熱媒浴などが挙げられるが、通常用いられる方法を用いればよい。延伸に引き続き、巻き取り前には水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度で、熱処理が行われることが好ましい。
熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。
延伸温度は例えば、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がポリ乳酸であれば、ガラス転移温度(Tg)から170℃、好ましくは60℃〜140℃、特に好ましくは70〜130℃の範囲が選択される。
本発明の樹脂組成物から得られる繊維は短繊維であってもよい。短繊維を製造する場合は、長繊維での延伸方法に加えて、用途に応じた所定の繊維長にロータリーカッター等でカットする工程、更に捲縮が必要とされる場合は、定長熱処理と弛緩熱処理の間に押し込みクリンパー等で捲縮を付与する工程が加わる。その際、捲縮付与性を高めるため、水蒸気や電熱ヒーター等でクリンパー前で予熱することができる。
また、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸であるときには、延伸後、テンション下、170℃〜220℃で熱固定することにより、高いステレオコンプレックッス結晶化度(S)、低い熱収縮性を有するとともに強度3.5cN/dTex以上のポリ乳酸繊維を得ることもできる。
本発明の樹脂組成物から得られる繊維および繊維構造体は、樹脂組成物からなる繊維単独で使用してもよく、他種繊維と混用することもできる。混用の態様としては、他種繊維からなる繊維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カバリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織物、混綿つめ綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトなどが例示される。混用する場合、樹脂組成物の特徴を発揮するため混用比率は1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上の範囲が選択される。
混用される他の繊維としてはたとえば、綿、麻、レーヨン、テンセルなどのセルロース繊維、ウール、絹、アセテート、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
また、本発明の樹脂組成物から得られるフィルム、シートは従来公知の方法により成形することができる。例えばフィルム、シートにおいては、押し出し成形、キャスト成形等の成形手法を用いることができる。即ち、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し、さらに延伸、熱処理して成形することができる。このとき、未延伸のフィルムはシートとしてそのまま実用に供することもできる。フィルム化に際し、事前に樹脂組成物および前述した各種成分を溶融混練した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混練を経て成形することもできる。未延伸フィルムを押し出し時、溶融樹脂にスルホン酸四級ホスホニウム塩などの静電密着剤を配合し表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることができる。
また、樹脂組成物および添加剤成分を共通溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、溶解、キャスト、乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。未延伸フィルムを機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直交する方向に横一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することができる。さらに該フィルムは、熱収縮性などの抑制のため延伸後、通常熱固定処理を行う。かくして得られた延伸フィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
本発明のフィルム、シートは単一の形態である以外、他種類のフィルム、シートと混用することもできる。混用の態様としては、他種材料からなるフィルム、シートとの各種組み合わせ、例えば、積層、ラミネートなどのほか、他種形態たとえば射出成形品、繊維構造体などとの組み合わせが例示できる。
以下、本願の第2の発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である加水分解調整剤(D成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記J1〜J2のいずれかを満たす。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
<水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)>
本発明において水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)は、分解して生じたモノマーが水溶性を示し、また、分解によって生じた酸性基が自触媒作用を有する樹脂またはその樹脂の末端の少なくとも一部が加水分解調整剤(D成分)で封止されたものである。
ここで、水溶性とは25℃における水への溶解度が0.1g/L以上であることとする。水溶性モノマーの水への溶解度は、使用する樹脂組成物が分解後に水中に残らないという観点から、1g/L以上であることが好ましく、3g/L以上であることがより好ましく、5g/L以上であることがさらに好ましい。
また、主成分とは、構成成分の90モル%以上のことである。主成分の割合は好ましくは95〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%である。
C成分として、公知の脂肪族ポリエステルが挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマー、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなるポリマーやそれらのコポリマーが例示される。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマー、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とするポリマーとしては、前掲の本願第1の発明におけるA成分の記載と同一である。
<加水分解調整剤(D成分)>
本発明において加水分解調整剤(D成分)は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の末端基および分解によって生じた酸性基を封止することで加水分解性を調整する剤である。すなわち、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の自触媒作用を抑制し、加水分解を遅延させる効果を有する剤である。
酸性基として、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。本発明においては、とりわけカルボキシル基が例示される。
使用する条件が酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中のため、加水分解調整剤(C成分)は100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である。
ここで、100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性とは、例えば、評価用ポリ乳酸95重量部に対し、加水分解調整剤を5重量部加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度200℃、回転数30rpmで2分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を評価し、同様に評価用ポリ乳酸を100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を用いて、下記式(vi)で与えられる値である。
反応性(%)=〔(100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (vi)
ここで、100℃の15%塩酸水溶液中での処理は、樹脂組成物(あらかじめ110℃10分の熱処理により結晶化させたものであり、各辺が0.5mm〜2mmのチップ状の形状とする)150mgと、15%塩酸水溶液(塩酸(和光純薬工業株式会社製、特級、35〜37%)を蒸留水により希釈して調製したもの)3mlをガラス製のネジ口試験管(株式会社マルエム製NN−13、内容積約5ml)に仕込んで密閉し、予め100℃に保持しておいた熱風乾燥機(株式会社東洋製作所製、FC−410)内に3時間静置したのちに試験管を取り出し、密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却した。その後、ろ過して得られたサンプルは、アセトン/水(70/30)混合液5mlで5回洗浄し、乾燥させたのちにカルボキシル基を測定した。評価用ポリ乳酸についても同様に処理した。
評価用ポリ乳酸としては、重量平均分子量が12万から20万、カルボキシル基濃度が10〜30当量/tonであることが好ましい。このようなポリ乳酸としては、例えば、ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(重量平均分子量は15万、カルボキシル基濃度は24.1当量/ton)などを好適に使用することができる。酸性基との反応性は、この他、同等の評価によって与えてもよい。
安定な剤を反応性評価した場合、樹脂組成物のカルボキシル基濃度の増加を抑える効果が小さい。そのような剤は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で使用した場合、目的の酸性基を封止する能力があまり発現しないため、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の分解を抑制する効果が低い。
以上のことから、100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性は、30%以上が好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。50%以上、すなわち15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が高いと、本用途の条件で効率的に酸性基との反応を行うことができる。
加水分解調整剤(D成分)として、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物などの付加反応型の化合物が挙げられる。また、これら化合物を2つ以上組合せて使用することができる。酸性基との反応性の観点から、好ましくはカルボジイミド化合物、エポキシ化合物が例示される。
カルボジイミド化合物としては、単官能のカルボジイミト化合物、2官能以上のカルボジイミド化合物のいずれも用いることができ、下記一般式(I)、(II)、(III)の基本構造を有するものを挙げることができる。
(式中、R、R’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。RとR’が結合し環状構造を形成していてもよく、スピロ構造などにより2つ以上の環状構造を形成していてもよい)
(式中、R’’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。nは2から1000の整数である。)
(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
分子量保持の観点から、2官能以上のカルボジイミド化合物が好ましい。例えば、下記式(6)、(7)のようなカルボジイミド化合物が挙げられる。
(式中Xは、下記式(6−1)で表される4価の基である。Ar1〜Ar4は各々独立に、置換基で置換されていてもよい、オルトフェニレン基または1,2−ナフタレン−ジイル基である)
(式中、rは各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。mは2から1000の整数である。)
このような芳香族カルボジイミド化合物の具体例としては、下記式(8)のような環状カルボジイミド、4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドをモノマーとする重合体、テトラメチルキシリレンカルボジイミドをモノマーとする重合体、それらの誘導体などが例示される。
エポキシ化合物としては、単官能のエポキシ化合物、2官能以上のエポキシ化合物のいずれも用いることができ、脂環式のエポキシ化合物、植物油をエポキシ化することで得られるエポキシ化植物油、グリシジル基を有するエポキシ化合物などを挙げることができる。
分子量保持の観点から、2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。
このようなエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキレート、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトンなどの脂環式エポキシ化合物、ジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。とりわけ、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートが好適に使用することができる。
<樹脂組成物>
本願の第2の発明の樹脂組成物は、下記J1〜J2のいずれかを満たす。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物は、所望の性能を発揮するために、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するようにコントロールすることが重要である。
一定期間とは、用途により決定されるが、10分間〜12時間のいずれかであることが好ましい。また、所望の性能を発揮するという観点から、30分間〜10時間のいずれかがより好ましく、30分間〜8時間のいずれかがさらに好ましい。
樹脂の重量と形状を保持するとは、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であり、形状を表す体積変化量が50%以下であることが好ましい。例えば、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であっても、完全に加水溶解した状態では、樹脂の重量と形状を保持したとはいえない。所望の性能を発揮するという観点から、樹脂組成物の非水溶分の重量は60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。また、形状を表す体積変化量は40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
樹脂の重量と形状は、樹脂組成物の重量平均分子量に大きく依存する。すなわち、樹脂の分解が進み、重量平均分子量が低くなった樹脂組成物は樹脂の重量と形状を保持できず、本用途で所望の性能を発揮することができない。
また、重量や形状を保持するとともに、本用途で効果的に機能を発揮するためには機械的物性を維持することが必要であるが、その観点からも重量平均分子量を維持することが重要である。
したがって、本発明の樹脂組成物は酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、重量平均分子量を保持することが重要であり、本発明の樹脂組成物の重量平均分子量保持率は50%以上であることが好ましい。50%よりも低くなると、機械的物性が低下し、さらに重量と形状の変化が顕著になる場合がある。そのため、所望の性能を発揮するという観点から、60%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましい。
ここで、樹脂の非水溶分の重量および重量平均分子量保持率とは、例えば、下記のような評価によって与えられる値である。
樹脂組成物(あらかじめ110℃10分の熱処理により結晶化させたものであり、各辺が0.5mm〜2mmのチップ状の形状とする)50mgおよび15%塩酸水溶液1mlを、ガラス製のネジ口試験管(マルエム社製NN−13、内容積約5ml)に仕込んで密閉する。
15%塩酸水溶液は、塩酸(和光純薬工業株式会社製、特級、35〜37%)を蒸留水により希釈して調製し、水酸化ナトリウム水溶液標準液にて中和滴定し、濃度を確認する。
試験温度が100℃以下の場合は、予め所定温度に保持しておいた熱風乾燥機(株式会社東洋製作所製、FC−410)内に上記試験管を静置する。所定時間経過後に試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却する。
試験温度が100℃を超え130℃以下の場合は、プレッシャークッカー(エスペック株式会社製、HASTチャンバーEHS−221M)内に上記試験管を静置する。プレッシャークッカー内の温度が試験温度に達してから所定時間後、降温を開始し、10分後にプレッシャークッカー内から試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却する。
試験管を常温(25℃)まで冷却したのち、試験管を開封して内部の樹脂組成物をガラスフィルタ(柴田科学株式会社製3GP100、ポアサイズ40−100μm)を用いてろ別し、ガラスフィルタ上に残る樹脂組成物を多量の蒸留水にて洗浄する。洗浄された樹脂組成物を、常温(25℃)、133.3Pa以下の真空にて1時間乾燥後、樹脂組成物の重量を測定する。非水溶分の重量は以下の式(vii)で計算される。
非水溶分の重量(%) = [分解試験後にろ別回収された樹脂組成物重量÷分解試験前の樹脂組成物重量]×100 (vii)
分解試験後の樹脂組成物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量(Mw)を測定し、その値をMw1とする。また、上記分解試験前の樹脂組成物のMwをGPCにて測定し、Mw0とする。重量平均分子量保持率は以下の式(viii)で計算される。
重量平均分子量保持率(%) = [Mw1/Mw0]×100 (viii)
樹脂の重量平均分子量変化率は、この他、同等の評価によって与えてもよい。
本発明の樹脂組成物は、下記J1〜J2のいずれかを満たす。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物が好適に使用できる範囲は温度によって変化する。また、J1〜J2において、規定した一定期間(6時間、1時間)よりも早い時間は樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上であることが好ましい。
J1において、一定期間は6時間であり、その間、樹脂組成物の重量平均分子量を保持し、樹脂の重量と形状を所望のレベルで保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中において、本発明で定義される6時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上であってもよい。
J2において、一定期間は1時間であり、その間、樹脂組成物の重量平均分子量を保持し、樹脂の重量と形状を所望のレベルで保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中において、本発明で定義される1時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上であってもよい。
J1〜J2において規定した一定期間(6時間、1時間)後、加水分解調整剤(D成分)の酸性基を封止する効果が消え、酸性基の自触媒作用により樹脂の分解は促進され、それに伴い重量平均分子量が急激に低下する。さらに、分解が進むと樹脂は水溶性モノマーとなり、水に溶解していく。その現象が一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に可能な限り早く起こることが、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際に適している。そのため、24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることが好ましい。上記理由より、18時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがより好ましく、12時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましく、8時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、100℃以上120℃以下の任意の温度の15%塩酸水溶液中において、72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。例えば、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際、樹脂組成物は一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に速やかに水中に溶解することで、効果的に働くことができる。そのため、100℃以上120℃以下の任意の温度の15%塩酸水溶液中において、72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。
また、使用後の水中の処理や所望の性能を発揮するという観点から、非水溶分は少ないほどよく、72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、特に1%以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、加水分解調整剤(D成分)の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と加水分解調整剤(D成分)との合計100重量部を基準として、0.1〜20重量部である。0.1重量部よりも少ないと、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中では、十分な酸性基の封止効果および分子量の保持効果が発揮されない場合がある。また、20重量部よりも多いと、樹脂組成物からの加水分解調整剤(D成分)のブリードアウトや成型性の悪化、基質の特性が変性する、などがある場合がある。かかる観点より、加水分解調整剤(D成分)の添加量は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と加水分解調整剤(D成分)の合計100重量部を基準として、0.5〜10重量部がより好ましく、1.0〜7.0重量部がさらに好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と加水分解調整剤(D成分)を溶融混練して製造することができる。
なお、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)としてポリ乳酸を採用した場合には、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)のポリL−乳酸、ポリD−乳酸、および加水分解調整剤(D成分)を混合し、ステレオコンプレックスポリ乳酸を形成されると共に、本発明の樹脂組成物を製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを混合しステレオコンプレックスポリ乳酸を形成させた後、加水分解調整剤(D成分)を混合して製造することもできる。
加水分解調整剤(D成分)を、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)に添加、混合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)のマスターバッチとして添加する方法、あるいは加水分解調整剤(D成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(D成分)を浸透させる方法などをとることができる。
溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)のマスターバッチとして添加する方法をとる場合には、従来公知の混練装置を使用して添加する方法をとることができる。混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の反応容器、混合槽、混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。混合時間は特に指定はなく、混合装置、混合温度にもよるが、0.1分間から2時間、好ましくは0.2分間から60分間、より好ましくは0.2分間から30分間が選択される。
溶媒としては、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)および加水分解調整剤(D成分)に対し、不活性であるものを用いることができる。特に、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解する溶媒が好ましい。
溶媒としてはたとえば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどが挙げられる。ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
本発明において、溶媒は、樹脂組成物100重量部あたり1〜1,000重量部の範囲で適用される。1重量部より少ないと、溶媒適用に意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、反応効率の観点より1,000重量部程度である。
加水分解調整剤(D成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(D成分)を浸透させる方法をとる場合には、上記のごとき溶剤に溶解した加水分解調整剤(D成分)に固体の水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(B成分)を接触させる方法や、加水分解調整剤(D成分)のエマルジョン液に固体の水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(C成分)を接触させる方法などをとることができる。
接触させる方法としては、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)を浸漬する方法や、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)に塗布する方法、散布する方法などを好適にとることができる。
加水分解調整剤(D成分)による水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の酸性基の封止反応は、室温(25℃)〜300℃程度の温度で可能であるが、反応効率の観点より50〜280℃、より好ましくは100〜280℃の範囲ではより促進される。水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)は、溶融している温度ではより反応が進行しやすいが、加水分解調整剤(D成分)の揮散、分解などを抑制するため、300℃より低い温度で反応させることが好ましい。また水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の溶融温度を低下、攪拌効率を上げるためにも、溶媒を適用することは効果がある。
反応は無触媒で十分速やかに進行するが、反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒としては、一般的に加水分解調整剤(B成分)で使用される触媒が適用できる。これらは1種または2種以上使用することができる。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
また、本発明では加水分解調整剤(D成分)を2種以上組合せて使用してもよく、例えば、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の初期の酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(D成分)と、酸性水中で生じる酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(D成分)について別々のものを使用してもよい。
さらに、加水分解調整剤(D成分)の助剤、すなわち加水分解を遅延させるために加水分解調整剤(D成分)の効果を補助する剤を併用することが好ましい。そのような剤としては、公知のあらゆるものが使用できるが、例えば、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の炭酸化物から選ばれる少なくとも一つの化合物が例示される。助剤の含有量は加水分解調整剤(D成分)100重量部当たり、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.7〜10重量部である。
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を失わない範囲で、公知のあらゆる添加剤、フィラーを添加して用いることができる。例えば、安定剤、結晶化促進剤、充填剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、末端封止剤などが挙げられる。
なお、添加剤については、発明の効果を失わないという観点から、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の分解を促進する成分、例えば、リン酸成分や樹脂組成物中で分解してリン酸成分を生じるようなホスファイト系添加剤など、については使用しないか、あるいは極力減量するか、あるいは失活するかなどの方法で影響を低減することが重要である。例えば、加水分解調整剤(D成分)と一緒に、それらを失活あるいは抑制する成分を併用する方法などを好適にとることができる。
<安定剤>
本発明の樹脂組成物には、安定剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した安定剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<結晶化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した安定剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<充填剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の充填剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した充填材をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した離型剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<可塑剤>
本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した可塑剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<耐衝撃改良剤>
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した耐衝撃改良剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<その他>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、前掲の本願の第1の発明で記載したその他成分(硬化性樹脂、難燃剤、染料、顔料、着色剤、摺動性改良剤等)をいずれも用いることができる。
<成形品>
本発明の樹脂組成物よりなる成形品は、射出成形、押し出し成形、真空、圧空成形およびブロー成形等により成形できる。成形品として、ペレット、繊維、布帛、繊維構造体、フィルム、シート、シート不織布などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物よりなる成形品を製造するにあたっては、前掲の本願の第1の発明で記載した方法はいずれも採用することができ、その条件も同一である。
また、本発明の樹脂組成物は、上記に挙げた成型品およびそれ以外の公知の成形方法により得られた成型品を原料として、粉砕チップおよび紛体として用いることができる。これら粉砕チップおよび紛体は、従来公知の粉砕方法、細断方法、裁断方法、あるいは溶剤を用いた再沈殿方法、およびその後の粒度選別方法により得られた材料を好適に使用することができる。
本発明の粉砕チップおよび紛体は、それ単独で用いることも、他の形態の成型品および他の樹脂や金属化合物等の材料と組み合わせて用いることもできる。
本発明の成形品は、必要に応じて他の樹脂や金属化合物等の固体材料または有機溶媒や油剤、ゲル等の液体材料を用いて被覆することができる。その場合は、目的となる分解性能を達するよう、被覆材料の種類や厚さ、ならびに本発明の成形品との接着性等を調節することが好ましい。
1.水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記A1〜A3のいずれかを満たすことを特徴とする。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
<水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)>
本発明において水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)は、分解して生じたモノマーが水溶性を示し、また、分解によって生じた酸性基が自触媒作用を有する樹脂またはその樹脂の末端の少なくとも一部がB成分で封止されたものである。
ここで、水溶性とは25℃における水への溶解度が0.1g/L以上であることとする。水溶性モノマーの水への溶解度は、使用する樹脂組成物が分解後に水中に残らないという観点から、1g/L以上であることが好ましく、3g/L以上であることがより好ましく、5g/L以上であることがさらに好ましい。
また、主成分とは、構成成分の90モル%以上のことである。主成分の割合は好ましくは95〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%である。
A成分として、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。好ましくはポリエステルが例示される。
ポリエステルとしては、例えば、ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体とジオールあるいはそのエステル形成性誘導体、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、ラクトンから選択された1種以上を重縮合してなるポリマーまたはコポリマーが例示される。好ましくはヒトロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなるポリエステルが例示される。より好ましくはヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなる脂肪族ポリエステルが例示される。
かかる熱可塑性ポリエステルは、成形性などのため、ラジカル生成源、例えばエネルギー活性線、酸化剤などにより処理されてなる架橋構造を含有していてもよい。
ジカルボン酸あるいはエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。またシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどが挙げられる。
また、分子量200〜100,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。また、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられる。またこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオ酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマー、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなるポリマーやそれらのコポリマーが例示される。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマーとしては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの重縮合体、もしくはコポリマーなどを例示することができる。なかでもポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトン、ならびにこれらのコポリマーなどが挙げられる。特にポリL−乳酸、ポリD−乳酸およびステレオコンプレックスポリ乳酸、ラセミポリ乳酸が挙げられる。
また脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とするポリマーが挙げられる。多価カルボン酸として、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸単位およびそのエステル誘導体が挙げられる。また、ジオール成分として炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどが挙げられる。また分子量200〜100,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。具体的には、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートならびにこれらのコポリマーなどが挙げられる。
ポリエステルは周知の方法(例えば、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(湯木和男著、日刊工業新聞社(1989年12月22日発行)などに記載)により製造することができる。
さらにポリエステルとしては、前記ポリエステルに加え、不飽和多価カルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体を共重合してなる不飽和ポリエステル樹脂、低融点ポリマーセグメントを含むポリエステルエラストマーが例示される。
不飽和多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水マレイン酸、フマル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水マレイン酸などが例示される。かかる不飽和ポリエステルには、硬化特性を制御するため、各種モノマー類が添加され、熱キュア、ラジカルキュア、光、電子線などの活性エネルギー線によるキュア処理により硬化、成形される。
さらに本発明においてポリエステルは、柔軟成分を共重合してなるポリエステルエラストマーでもよい。ポリエステルエラストマーは公知文献、例えば特開平11−92636号公報などに記載のごとく高融点ポリエステルセグメントと分子量400〜6,000の低融点ポリマーセグメントとからなるブロックコポリマーである。高融点ポリエステルセグメントだけでポリマーを形成した場合の融点が150℃以上であり、好適に使用できる。
ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなるポリエステルが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体からなる脂肪族ポリエステルがより好ましい。さらに、脂肪族ポリエステルがポリL−乳酸、ポリD−乳酸およびステレオコンプレックスポリ乳酸であることが特に好ましい。
ここで、ポリ乳酸は、主鎖が下記式(1)で表される乳酸単位からなる。本明細書において「主として」とは、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%の割合である。
式(1)で表される乳酸単位には、互いに光学異性体であるL−乳酸単位とD−乳酸単位がある。ポリ乳酸の主鎖は主として、L−乳酸単位、D−乳酸単位またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
ポリ乳酸は、主鎖が主としてD−乳酸単位よりなるポリD−乳酸、主鎖が主としてL−乳酸単位よりなるポリL−乳酸が好ましい。主鎖を構成する他の単位の割合は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%の範囲である。
主鎖を構成する他の単位としては、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位が例示される。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、成形品の機械物性および成形性を両立させるため、好ましくは5万〜50万、より好ましくは8万〜35万、さらに好ましくは12〜25万の範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。
ポリ乳酸(A成分)が、ポリD−乳酸またはポリL−乳酸であり、ホモ相ポリ乳酸であるとき、示差走査熱量計(DSC)測定で、150〜190℃の間に結晶融解ピーク(Tmh)を有し、結晶融解熱(△Hmsc)が10J/g以上であることが好ましい。かかる結晶融点および結晶融解熱の範囲を満たすことにより耐熱性を高めることができる。
また、ポリ乳酸の主鎖は、ポリL−乳酸単位とポリD−乳酸単位とにより形成されたステレオコンプレックス相を含むステレオコンプレックスポリ乳酸であることが好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上の結晶融解ピークを示すことが好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、下記式(i)で規定されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90〜100%であることが好ましい。
S = 〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶化度、とりわけXRD測定による結晶化度は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5〜60%、さらに好ましくは7〜60%、特に好ましくは10〜60%の範囲である。
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点は、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜230℃の範囲である。ステレオコンプレックスポリ乳酸のDSC測定による結晶融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは20〜80J/g、さらに好ましくは30〜80J/gの範囲である。ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点が190℃未満であると、耐熱性が悪くなる。また250℃を超えると、250℃以上の高温において成形することが必要となり、樹脂の熱分解を抑制することが困難となる場合がある。従って、本発明の樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上の結晶融解ピークを示すことが好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸において、ポリD−乳酸とポリL−乳酸の重量比は90/10〜10/90であることが好ましい。より好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは30/70〜70/30、とりわけ好ましくは40/60〜60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは5万〜50万、より好ましくは8万〜35万、さらに好ましくは12〜25万の範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、L−ラクチドまたはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧化、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で、固体状態て重合される。
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
触媒の使用量は、ラクチド1Kg当たり0.42×10−4〜100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4〜42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4〜16.8×10−4(モル)使用される。
ポリ乳酸の重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。かかる失活剤として、イミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンドが挙げられる。
またジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸が挙げられる。
また式xH2O・yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸が挙げられる。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が挙げられる。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が挙げられる。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が挙げられる。またこれらの酸の酸性塩が挙げられる。またこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エステルが挙げられる。またこれらの酸のホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
触媒失活能から、式xH2O・yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸が好ましい。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が好ましい。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が好ましい。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が好ましい。またこれらの酸の酸性塩が好ましい。またこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルが好ましい。
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3〜200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
ポリ乳酸は、含有ラクチド量が5,000ppm以下のものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、樹脂を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。溶融開環重合された直後のポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸は通常1〜5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。即ち、実用的な溶融安定性が達成される1,000ppm以下に設定するのが合理的である。さらに好ましくは700ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは100ppm以下の範囲が選択される。ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明成形品の溶融成形時の樹脂の安定性を向上せしめ、成形品の製造を効率よく実施できる利点および成形品の耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを重量比で10/90〜90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練させることにより得ることができる。接触温度はポリ乳酸の溶融時の安定性およびステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より、好ましくは220〜290℃、より好ましくは220〜280℃、さらに好ましくは225〜275℃の範囲である。
溶融混練の方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽、住友重機械工業株式会社製「バイボラック(登録商標)」、三菱重工業株式会社製N−SCR、株式会社日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型攪拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
<加水分解調整剤(B成分)>
本発明において加水分解調整剤(B成分)は、樹脂(A成分)の末端基および分解によって生じた酸性基を封止する剤である。すなわち、樹脂(A成分)の自触媒作用を抑制し、加水分解を遅延させる効果を有する剤である。
酸性基として、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。本発明においては、とりわけカルボキシル基が例示される。
使用する条件が135℃より高温の熱水中のため、B成分は120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上であることが好ましい。
ここで、120℃における耐水性とは、例えば、1)ジメチルスルホキシド50mlに1gのB成分を溶解させた系に、2gの水を加え、120℃で5時間還流させながら撹拌した時に、溶解している部分の解析から算出される5時間処理後に変化せず残っている剤の概算量、あるいは、2)ジメチルスルホキシドに溶解しない場合には、B成分を溶解させることができ、且つ親水性のある溶媒を用いて上記1)と同様の処理を行って求めた概算量を用いて、下記式(ii)で表される値である。なお、2)において、用いる溶媒の沸点が120℃未満であるときは、その溶媒に、B成分の少なくとも一部が溶解する範囲においてジメチルスルホキシドを混合し、その混合溶媒50mlを用いた。混合割合は通常は(1:2)〜(2:1)の範囲から選択すればよいが、上記条件を満たす限り特に限定されない。
2)において用いる溶媒としては、通常は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルから選べば溶解可能である。
耐水性(%) = 〔5h処理後の剤量/初期の剤量〕×100 (ii)
耐水性は、この他、同等の評価によって表してもよい。
不安定な剤を耐水評価した場合、加水分解によって剤の一部が変性し、酸性基の封止能が低下する。そのような剤は、高温の熱水中で使用した場合、水により失活するため、目的の酸性基を封止する能力が著しく低下してしまう。以上のことから、120℃における耐水性は、97%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.9%以上が特に好ましい。99.9%以上、すなわち高温の熱水中で安定であると、選択的かつ効率的に酸性基との反応を行うことができる。
また、190℃における酸性基との反応性とは、例えば、評価用ポリ乳酸100重量部に対し、加水分解調整剤のカルボキシル基と反応する基が、評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度の1.5倍当量に相当する量の剤を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度190℃、回転数30rpmで1分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、カルボキシル基濃度を測定し、下記式(iii)で与えられる値である。
反応性(%)=〔(評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (iii)
評価用ポリ乳酸としては、MWが12万から20万、カルボキシル基濃度が10〜30当量/tonであることが好ましい。このようなポリ乳酸としては、例えば、ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は22.1当量/ton)などを好適に使用することができ、その場合、加水分解調整剤のカルボキシル基と反応する基が33.15当量/tonとなる剤の量を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度190℃、回転数30rpmで1分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、カルボキシル基濃度を測定することで、反応性の値を求めることができる。
酸性基との反応性は、この他、同等の評価によって与えてもよい。
安定な剤を反応性評価した場合、上記条件で混練しても樹脂組成物のカルボキシル基濃度はほとんど変化しない。そのような剤は、高温の熱水中で使用した場合、目的の酸性基を封止する能力がほとんど発現しないため、樹脂(A成分)の分解を抑制できない。
以上のことから、190℃における酸性基との反応性は、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。80%以上、すなわち高温の熱水中での酸性基との反応性が高いと、効率的に酸性基との反応を行うことができる。
本発明の加水分解調整剤(B成分)は、120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上であることが重要である。すなわち、非常に安定な剤は、耐水性は高い値となるが、酸性基との反応性は低い値となり、その場合、高温の熱水中で目的の酸性基を封止する能力がほとんど発現しない。また、非常に不安定な剤は、酸性基との反応性は高い値となるが、耐水性は低い値となり、その場合、高温の熱水中で水により失活するため、目的の酸性基を封止する能力が著しく低下してしまう。
以上のことから、耐水性および酸性基との反応性が高い加水分解調整剤が本発明において好適に使用される。
B成分として、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物などの付加反応型の化合物が挙げられる。
また、これら化合物を2つ以上組合せて使用することができる。耐水性や酸性基との反応性の観点から、好ましくはカルボジイミド化合物が例示される。
カルボジイミド化合物としては、下記一般式(I)、(II)の基本構造を有するものを挙げることができる。
(式中、R、R’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。RとR’が結合し環状構造を形成していてもよく、スピロ構造などにより2つ以上の環状構造を形成していてもよい)
(式中、R、R’’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。nは2から1000の整数である。)
安定性や使いやすさの観点から、芳香族カルボジイミド化合物がより好ましい。例えば、下記式(2)、(3)のような芳香族カルボジイミド化合物が挙げられる。
(式中、R1〜R4は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。X、Yは各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。各々の芳香環は置換基によって結合し環状構造を形成していてもよく、スピロ構造などにより2つ以上の環状構造を形成していてもよい)
(式中、R5〜R7は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。nは2から1000の整数である。)
このような芳香族カルボジイミド化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートを脱炭酸縮合反応して合成されるポリカルボジイミド、これら2種の組合せなどが例示される。
高温の熱水中で使用する観点から、本発明において、とりわけビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドが好適に使用できる。
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドは、耐水性や反応性の観点から純度が高いほど良く、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい(ここで純度は後述の実施例記載の通り、HPLCによる測定で得られた面積から求める)。
また、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドは耐水性や反応性の観点から、下記式(4)、(5)で表される化合物の合計含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい(ここで下記式(4)、(5)で表される化合物の合計含有量は後述の実施例記載の通り、1H−NMRによる測定で求める)。
下記式(4)、(5)で表される化合物の合計含有量は5%以下の場合、高温の熱水中での効果がさらに向上する。この効果の向上は、80℃程度の温水中では確認できていないが、少なくとも180℃以上の高温の熱水中では有意な差が発現することが確認できており、下記式(4)、(5)で表される化合物の耐水性の観点から、135℃以上の高温域では有意な差が発現することが推察される。
(式中、R8〜R11は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つがプロピル基で、それ以外の基はイソプロピル基である。)
(式中、R12〜R15は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つの基がオルト位以外に置換している。)
純度の高いビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを得る方法としては、一般に公知な精製方法を使用することができる。具体的な方法として、蒸留、再結晶、洗浄、抽出、再沈殿、カラムなどが挙げられる。
とくに、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドと上記式(4)、(5)で表される化合物との混合物からビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドのみを精製する場合は、分子量が同じであり、溶媒への親和性も類似のため、再結晶による精製が好ましい。
再結晶に使用する溶媒はビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドと反応しないものであれば何でもよく、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール類、ヘキサンなどのアルカン類を用いることができる。また、2種類以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、下記A1〜A3のいずれかを満たす。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物は、所望の性能を発揮するために、135℃よりも高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するようにコントロールすることが重要である。一定期間とは、用途により決定されるが、10分間〜12時間のいずれかであることが好ましい。また、所望の性能を発揮するという観点から、30分間〜6時間のいずれかがより好ましく、30分間〜4時間のいずれかがさらに好ましい。
樹脂の重量と形状を保持するとは、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であり、形状を表す体積変化量が50%以下であることが好ましい。例えば、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であっても、完全に加水溶解した状態では、樹脂の重量と形状を保持したとはいえない。所望の性能を発揮するという観点から、樹脂組成物の非水溶分の重量は70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、形状を表す体積変化量は30%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
ここで、樹脂の重量と形状の体積変化量とは、例えば、下記のような評価によって与えられる値である。
樹脂組成物300mgおよび蒸留水12mlを、110℃に予熱した密閉式溶解るつぼ(オーエムラボテック株式会社製、MR−28、内容積28ml)に仕込んで密閉し、予め所定温度に保持しておいた熱風乾燥機(光洋サーモシステム株式会社製、KLO−45M)内にるつぼを静置する。
るつぼを静置後、るつぼを熱風乾燥機に静置してからるつぼ内部の温度が所定の試験温度に到達する時間を試験開始時点とし、この試験開始時点から一定期間が経過した時点で、るつぼを熱風乾燥機から取り出す。熱風乾燥機から取り出したるつぼを20分間の空冷後、10分間の水冷により常温まで冷却した後、るつぼを開封して内部の試料および水を回収する。
内部の試料および水はろ紙(JIS P3801:1995、5種A規格)を用いてろ過を行い、ろ紙上に残る樹脂組成物を60℃、133.3Pa以下の真空にて3時間乾燥後、樹脂組成物の重量と形状の体積を測定し、下記式(iv)及び(v)から樹脂の重量と形状の体積変化量を求める。
重量(%)=[一定期間処理後の樹脂組成物の重量/初期の樹脂組成物の重量]×100(iv)
形状の体積変化量(%) = [一定期間処理後の樹脂組成物の体積/初期の樹脂組成物の体積]×100 (v)
ここで、形状の体積は樹脂組成物を実体顕微鏡により測定し求められる値である。
実体顕微鏡としては、例えば、ライカマイクロシステムズ株式会社製M205Cなどが使用できる。
なお、この評価では、樹脂組成物のサイズは、例えば、ペレット状であれば各辺が0.5mm〜5mmの立方体あるいは直方体に近いもの、繊維状であれば糸の太さが1μm〜1000μm、糸の長さが1mm〜40mmの繊維、フィルム状であれば厚みが50μm〜1000μm、縦と横の長さがそれぞれ5mm〜50mmのフィルムなどを通常使用することができる。
樹脂の重量と形状の体積変化量は、この他、同等の評価によって与えてもよい。素早く分解することとは、自触媒作用によりA成分の加水分解が促進している状態であり、酸性基の濃度が指数関数的に上昇する。逆に酸性基の濃度がB成分により低い状態を維持する間はA成分の分解が緩やかとなる。そのため、樹脂の重量と形状が保持される間は、樹脂組成物由来の酸性基の濃度が30当量/ton以下であることが好ましい。
30当量/tonよりも多い場合、自触媒作用によりA成分の加水分解が促進され、B成分の効果が十分に発揮されない。酸性基の濃度が低いほど、樹脂組成物の重量や形状の変化を抑制することができるため、所望の性能を発揮するという観点から、樹脂の重量と形状が保持される間は、樹脂組成物由来の酸性基の濃度が20当量/ton以下がより好ましく、10当量/ton以下がさらに好ましく、3当量/ton以下が特に好ましい。
ここで、樹脂組成物由来の酸性基の濃度は、例えば、上述した樹脂の重量と形状の体積変化量を求めるために用いた評価と同様にして樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物を1H−NMRにより測定することで求めることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、135℃から220℃の任意の温度の熱水中で好適に使用することができる。135℃以下では、A成分のみを使用し所望の性能を発揮できる場合がある。また220℃より高温では、本発明の樹脂組成物においても、すぐに分解してしまい、所望の性能を発揮できない場合がある。そのため、本発明の樹脂組成物は150℃から220℃の任意の温度の熱水中でより好適に使用することができ、170℃から210℃の任意の温度の熱水中でさらに好適に使用することができ、190℃〜210℃でさらに好適に使用することができる。
本発明の樹脂組成物は、下記A1〜A3のいずれかを満たす。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物が好適に使用できる範囲は温度によって変化する。また、A1〜A3において、規定した一定期間(1時間、2時間、3時間)よりも早い時間は樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であることが好ましい。
A1において、一定期間は3時間であり、その間、樹脂の重量と形状を保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、本発明で定義される2時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であってもよい。
A2において、一定期間は2時間であり、その間、樹脂の重量と形状を保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、本発明で定義される2時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であってもよい。
A3において、一定期間は1時間であり、その間、樹脂の重量と形状を保持することを示している。オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、本発明で定義される1時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であってもよい。
A1〜A3において規定した一定期間(1時間、2時間、3時間)後、B成分の酸性基を封止する効果が消え、酸性基の自触媒作用により樹脂の分解は促進され、それに伴い酸性基の濃度が指数関数的に上昇する。さらに、分解が進むと樹脂は水溶性モノマーとなり、水に溶解していく。その現象が一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に可能な限り早く起こることが、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際に適している。そのため、24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることが好ましい。上記理由より、18時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがより好ましく、12時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましく、6時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。例えば、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際、樹脂組成物は一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に速やかに水中に溶解することで、効果的に働くことができる。そのため、135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。また、使用後の水中の処理や所望の性能を発揮するという観点から、非水溶分は少ないほどよく、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物の熱変形温度は135℃〜300℃であることが好ましい。ここで、熱変形温度とは、樹脂組成物の融点あるいは軟化点を指す。樹脂組成物の使用が135℃より高温の熱水中を想定したものであるから、樹脂組成物の熱変形温度が高いほど、広範な温度領域で使用することができる。一方、300℃以下だと本発明の樹脂組成物の成型が比較的容易である。そのため、かかる樹脂組成物の熱変形温度は150℃〜300℃であることがより好ましく、165℃〜300℃であることがさらに好ましく、170℃〜300℃であることがよりさらに好ましく、175℃〜285℃であることがよりさらに好ましく、180℃〜285℃であることが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物において、B成分の添加量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、1〜30重量部である。1重量部よりも少ないと、135℃より高温の熱水中では、十分な酸性基の封止効果が発揮されない場合がある。また、30重量部よりも多いと、樹脂組成物からのB成分のブリードアウトや成型性の悪化、基質の特性が変性する、などがある場合がある。かかる観点より、B成分の添加量は、A成分とB成分の合計100重量部に対して、1.5〜20重量部が好ましく、2〜15重量部がより好ましく、2.5〜12.5重量部がさらに好ましい、3.0〜10重量部が特に好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)を溶融混練して製造することができる。
なお、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)としてポリ乳酸を採用した場合には、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のポリL−乳酸、ポリD−乳酸、および加水分解調整剤(B成分)を混合し、ステレオコンプレックスポリ乳酸を形成されると共に、本発明の樹脂組成物を製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを混合しステレオコンプレックスポリ乳酸を形成させた後、加水分解調整剤(B成分)を混合して製造することもできる。
加水分解調整剤(B成分)を、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)に添加、混合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のマスターバッチとして添加する方法、あるいは加水分解調整剤(B成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(B成分)を浸透させる方法などをとることができる。
溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のマスターバッチとして添加する方法をとる場合には、従来公知の混練装置を使用して添加する方法をとることができる。混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の反応容器、混合槽、混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。混合時間は特に指定はなく、混合装置、混合温度にもよるが、0.1分間から2時間、好ましくは0.2分間から60分間、より好ましくは0.2分間から30分間が選択される。
溶媒としては、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)および加水分解調整剤(B成分)に対し、不活性であるものを用いることができる。特に、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解する溶媒が好ましい。
溶媒としてはたとえば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどが挙げられる。ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
本発明において、溶媒は、樹脂組成物100重量部あたり1〜1,000重量部の範囲で適用される。1重量部より少ないと、溶媒適用に意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、反応効率の観点より1,000重量部程度である。
加水分解調整剤(B成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(B成分)を浸透させる方法をとる場合には、上記のごとき溶剤に溶解した加水分解調整剤(B成分)に固体の水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)を接触させる方法や、加水分解調整剤(B成分)のエマルジョン液に固体の水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)を接触させる方法などをとることができる。
接触させる方法としては、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)を浸漬する方法や、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)に塗布する方法、散布する方法などを好適にとることができる。
加水分解調整剤(B成分)による水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の酸性基の封止反応は、室温(25℃)〜300℃程度の温度で可能であるが、反応効率の観点より50〜280℃、より好ましくは100〜280℃の範囲ではより促進される。水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)は、溶融している温度ではより反応が進行しやすいが、加水分解調整剤(B成分)の揮散、分解などを抑制するため、300℃より低い温度で反応させることが好ましい。また水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の溶融温度を低下、攪拌効率を上げるためにも、溶媒を適用することは効果がある。
反応は無触媒で十分速やかに進行するが、反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒としては、一般的に加水分解調整剤(B成分)で使用される触媒が適用できる。これらは1種または2種以上使用することができる。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
また、本発明では加水分解調整剤(B成分)を2種以上組合せて使用してもよく、例えば、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の初期の酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(B成分)と、135℃より高温の熱水中で生じる酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(B成分)について別々のものを使用してもよい。
さらに、加水分解調整剤(B成分)の助剤、すなわち加水分解を遅延させるためにB成分の効果を補助する剤を併用することが好ましい。そのような剤としては、公知のあらゆるものが使用できるが、例えば、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の炭酸化物から選ばれる少なくとも一つの化合物が例示される。助剤の含有量は加水分解調整剤(B成分)100重量部当たり、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.7〜10重量部である。
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を失わない範囲で、公知のあらゆる添加剤、フィラーを添加して用いることができる。例えば、安定剤、結晶化促進剤、充填剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、末端封止剤などが挙げられる。
なお、添加剤については、発明の効果を失わないという観点から、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の分解を促進する成分、例えば、リン酸成分や樹脂組成物中で分解してリン酸成分を生じるようなホスファイト系添加剤など、については使用しないか、あるいは極力減量するか、あるいは失活するかなどの方法で影響を低減することが重要である。例えば、加水分解調整剤(B成分)と一緒に、それらを失活あるいは抑制する成分を併用する方法などを好適にとることができる。
<安定剤>
本発明の樹脂組成物には、安定剤を含有することができる。安定剤としては通常の熱可塑性樹脂の安定剤に使用されるものを用いることができる。例えば酸化防止剤、光安定剤等を挙げることができる。これらの剤を配合することで機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等を挙げることができる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物として、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス[3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ジアミン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等を挙げることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
ホスファイト系化合物としては、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものが好ましく、具体的には、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)、2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン「スミライザー(登録商標)」GP)等が挙げられる。
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
光安定剤としては、具体的には例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等を挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4’−オクトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のアルキルフェニルサリシレート類が挙げられる。
蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−「2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジメタノールとの縮合物等を挙げることができる。
本発明において安定剤成分は1種類で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。また安定剤成分として、ヒンダードフェノール系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
安定剤の含有量は水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
<結晶化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができる。結晶化促進剤を含有することで、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
即ち、結晶化促進剤の適用により、成形性、結晶性が向上し、通常の射出成形においても十分に結晶化し耐熱性、耐湿熱安定性に優れた成形品を得ることができる。加えて、成形品を製造する製造時間を大幅に短縮でき、その経済的効果は大きい。
本発明で使用する結晶化促進剤は一般に結晶性樹脂の結晶化核剤として用いられるものを用いることができ、無機系の結晶化核剤および有機系の結晶化核剤のいずれをも使用することができる。
無機系の結晶化核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。これらの無機系の結晶化核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01〜0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
有機系の結晶化核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(tert−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、分岐型ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明で使用する結晶化促進剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部である。
<充填剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の充填剤を含有することができる。充填剤成分を含有することで、機械的特性、耐熱性、および金型成形性に優れた成形品を得ることができる。
有機充填剤として、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維等の繊維状のもの、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、紙粉、木粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉等の粉末状のものが挙げられる。成形性の観点から紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉等の粉末状のものが好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末が好ましい。紙粉、木粉がより好ましい。特に紙粉が好ましい。
これら有機充填剤は天然物から直接採取したものを使用してもよいが、古紙、廃材木および古衣等の廃材をリサイクルしたものを使用してもよい。また木材として、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等が好ましい。
紙粉は成形性の観点から接着剤、とりわけ、紙を加工する際に通常使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョン等のエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤等のホットメルト接着剤等を含むものが好ましく例示される。
本発明において有機充填剤の配合量は特に限定されるものではないが、成形性および耐熱性の観点から、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜200重量部、さらに好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは15〜100重量部である。
有機充填剤の配合量が1重量部未満であると、組成物の成形性向上効果が小さく、300重量部を超える場合には充填剤の均一分散が困難になり、あるいは成形性、耐熱性以外にも材料としての強度、外観が低下する可能性があるため好ましくない。
本発明の組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤合有により、機械特性、耐熱性、成形性の優れた組成物を得ることができる。本発明で使用する無機充填剤としては、通常の熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粉末状のものを用いることができる。
具体的には例えば、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、イモゴライト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維およびホウ素繊維等の繊維状無機充填剤、層状珪酸塩、有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、粉末珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシクム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土フラーレンなどのカーボンナノ粒子等の板状や粒子状の無機充填剤が挙げられる。
層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロサイト、カネマイト、ケニヤイト等の各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられる。これらは天然のものであっても合成のものであって良い。これらのなかでモンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物やLi型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母が好ましい。
これらの無機充填剤のなかでは繊維状もしくは板状の無機充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラステナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、マイカ、およびカオリン、陽イオン交換された層状珪酸塩が好ましい。また繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
かかる充填剤はエチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または収束処理されていてもよく、またアミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤で処理されていても良い。
無機充填剤の配合量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.1〜200重量部、より好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部である。
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。本発明において使用する離型剤は通常の熱可塑性樹脂に用いられるものを使用することができる。
離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れたポリ乳酸成形品を得ることができる。
脂肪酸としては炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、等が挙げられる。
オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステアリン酸、等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5,000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪族ケトンとしては炭素数6以上のものが好ましく、高級脂肪族ケトン等が挙げられる。
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジステアレート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、が好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックッス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
<帯電防止剤>
本発明の樹脂組成物は、帯電防止剤を含有することができる。帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
本発明において帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
<可塑剤>
本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含有することができる。可塑剤としては一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤、等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸または単官能アルコールで末端封止されていても良い。
グリセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
多価カルボン酸系可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸イソデシル、アジピン酸−n−デシル−n−オクチル等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸エステルが挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックおよびまたはランダム共重合体、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物等の末端封止剤化合物等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
その他の可塑剤の具体的な例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(2−エチルブチレート)等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール類、ペンタエリスリトール類の脂肪酸エステル、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類等が挙げられる。
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤、ポリアルキレン系可塑剤、グリセリン系可塑剤、ペンタエリスリトール類、ペンタエリスリトール類の脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
可塑剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。本発明においては結晶化核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
<耐衝撃改良剤>
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有することができる。耐衝撃改良剤とは熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良に用いることができるものであり、特に制限はない。例えば以下の耐衝撃改良剤の中から選択される少なくとも1種を用いることができる。
耐衝撃改良剤の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えばエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル共重合体(例えばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム等が挙げられる。
さらに各種架橋度を有するものや各種ミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するものやコア層とそれを覆う1以上のシェル層とから構成され、また隣接する層が異種重合体から構成されるいわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体等も使用することができる。
さらに上記具体例に挙げた各種の(共)重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体およびブロック共重合体等のいずれであっても、本発明の耐衝撃改良剤として用いることができる。
耐衝撃改良剤の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは10〜20重量部である。
<その他>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含有させても良い。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、臭素系、リン系、シリコーン系、アンチモン化合物等の難燃剤を含有させても良い。
また、有機、無機系の染料、顔料を含む着色剤、例えば、二酸化チタン等の酸化物、アルミナホワイト等の水酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、紺青等のフェロシアン化物、ジンククロメート等のクロム酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、群青等の珪酸塩、マンガンバイオレット等のリン酸塩、カーボンブラック等の炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉等の金属着色剤等を含有させても良い。
また、ナフトールグリーンB等のニトロソ系、ナフトールイエローS等のニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタルイエロー等のアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルー等のフタロシアニン系、インダントロンブルー等の縮合多環系着色剤等、グラファイト、フッソ樹脂等の摺動性改良剤等の添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は単独であるいは2種以上を併用することもできる。
<成形品>
本発明の樹脂組成物よりなる成形品は、射出成形、押し出し成形、真空、圧空成形およびブロー成形等により成形できる。成形品として、ペレット、繊維、布帛、繊維構造体、フィルム、シート、シート不織布などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物よりなるペレットは、その溶融成形法は何ら限定されず、公知のペレット製造法により製造されたものが好適に使用できる。
即ち、ストランド、あるいは板状におしだされた樹脂組成物を、樹脂が完全に固化した後、あるいは完全には固化されないで、いまだ溶融状態にあるとき、空気中、あるいは水中でカッティングする等の手法が従来公知であるが、本発明においてはいずれも好適に適用できる。
射出成形は、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)の種類によって、成形条件を適宜設定すればよいが、射出成形時、成形品の結晶化、成形サイクルを上げる観点から、例えば、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がポリ乳酸であれば、金型温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。しかし、成形品の変形を防ぐ意味において、金型温度は、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
またこれらの成形品は、各種ハウジング、歯車、ギア等の電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装、外装部品等)および日用部品などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物からなる繊維および繊維構造体は通常の溶融紡糸およびその後の後加工により得られた材料を好適に使用することができる。
即ち、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)はエクストルーダー型やプレッシャーメルター型の溶融押出し機で溶融された後、ギアポンプにより計量され、パック内で濾過された後、口金に設けられたノズルからモノフィラメンント、マルチフィラメント等として吐出される。
口金の形状、口金数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。吐出された糸は直ちに冷却・固化された後集束され、油剤を付与されて巻き取られる。巻き取り速度は特に限定されるものではないが水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸のときには、ステレオコンプレックス結晶が形成され易くなることにより100m/分〜5,000m/分の範囲が好ましい。
巻き取られた未延伸糸はそのまま使用することもできるが、延伸して使用することができる。
未延伸で使用する場合、紡糸後、巻き取り前に水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度で、熱処理が行われることが好ましい。熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。
延伸を行う場合は紡糸工程と延伸工程は必ずしも分離する必要はなく、紡糸後、いったん巻き取ることなく引き続き延伸を行う直接紡糸延伸法を採用しても構わない。
延伸は1段延伸でも、2段以上の多段延伸でも良く、高強度の繊維を作製する観点から、延伸倍率は3倍以上が好ましく、さらには4倍以上が好ましい。好ましくは3〜10倍が選択される。しかし、延伸倍率が高すぎると繊維が失透し白化し繊維の強度が低下したり破断伸度が小さくなりすぎ繊維用途としては小さくなり過ぎたりして好ましくない。
延伸の予熱方法としては、ロールの昇温のほか、平板状あるいはピン状の接触式加熱ヒータ、非接触式熱板、熱媒浴などが挙げられるが、通常用いられる方法を用いればよい。延伸に引き続き、巻き取り前には水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度で、熱処理が行われることが好ましい。
熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。
延伸温度は例えば、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がポリ乳酸であれば、ガラス転移温度(Tg)から170℃、好ましくは60℃〜140℃、特に好ましくは70〜130℃の範囲が選択される。
本発明の樹脂組成物から得られる繊維は短繊維であってもよい。短繊維を製造する場合は、長繊維での延伸方法に加えて、用途に応じた所定の繊維長にロータリーカッター等でカットする工程、更に捲縮が必要とされる場合は、定長熱処理と弛緩熱処理の間に押し込みクリンパー等で捲縮を付与する工程が加わる。その際、捲縮付与性を高めるため、水蒸気や電熱ヒーター等でクリンパー前で予熱することができる。
また、水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸であるときには、延伸後、テンション下、170℃〜220℃で熱固定することにより、高いステレオコンプレックッス結晶化度(S)、低い熱収縮性を有するとともに強度3.5cN/dTex以上のポリ乳酸繊維を得ることもできる。
本発明の樹脂組成物から得られる繊維および繊維構造体は、樹脂組成物からなる繊維単独で使用してもよく、他種繊維と混用することもできる。混用の態様としては、他種繊維からなる繊維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カバリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織物、混綿つめ綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトなどが例示される。混用する場合、樹脂組成物の特徴を発揮するため混用比率は1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上の範囲が選択される。
混用される他の繊維としてはたとえば、綿、麻、レーヨン、テンセルなどのセルロース繊維、ウール、絹、アセテート、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
また、本発明の樹脂組成物から得られるフィルム、シートは従来公知の方法により成形することができる。例えばフィルム、シートにおいては、押し出し成形、キャスト成形等の成形手法を用いることができる。即ち、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し、さらに延伸、熱処理して成形することができる。このとき、未延伸のフィルムはシートとしてそのまま実用に供することもできる。フィルム化に際し、事前に樹脂組成物および前述した各種成分を溶融混練した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混練を経て成形することもできる。未延伸フィルムを押し出し時、溶融樹脂にスルホン酸四級ホスホニウム塩などの静電密着剤を配合し表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることができる。
また、樹脂組成物および添加剤成分を共通溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、溶解、キャスト、乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。未延伸フィルムを機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直交する方向に横一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することができる。さらに該フィルムは、熱収縮性などの抑制のため延伸後、通常熱固定処理を行う。かくして得られた延伸フィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
本発明のフィルム、シートは単一の形態である以外、他種類のフィルム、シートと混用することもできる。混用の態様としては、他種材料からなるフィルム、シートとの各種組み合わせ、例えば、積層、ラミネートなどのほか、他種形態たとえば射出成形品、繊維構造体などとの組み合わせが例示できる。
以下、本願の第2の発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である加水分解調整剤(D成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記J1〜J2のいずれかを満たす。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
<水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)>
本発明において水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)は、分解して生じたモノマーが水溶性を示し、また、分解によって生じた酸性基が自触媒作用を有する樹脂またはその樹脂の末端の少なくとも一部が加水分解調整剤(D成分)で封止されたものである。
ここで、水溶性とは25℃における水への溶解度が0.1g/L以上であることとする。水溶性モノマーの水への溶解度は、使用する樹脂組成物が分解後に水中に残らないという観点から、1g/L以上であることが好ましく、3g/L以上であることがより好ましく、5g/L以上であることがさらに好ましい。
また、主成分とは、構成成分の90モル%以上のことである。主成分の割合は好ましくは95〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%である。
C成分として、公知の脂肪族ポリエステルが挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマー、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなるポリマーやそれらのコポリマーが例示される。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とするポリマー、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とするポリマーとしては、前掲の本願第1の発明におけるA成分の記載と同一である。
<加水分解調整剤(D成分)>
本発明において加水分解調整剤(D成分)は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の末端基および分解によって生じた酸性基を封止することで加水分解性を調整する剤である。すなわち、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の自触媒作用を抑制し、加水分解を遅延させる効果を有する剤である。
酸性基として、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。本発明においては、とりわけカルボキシル基が例示される。
使用する条件が酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中のため、加水分解調整剤(C成分)は100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である。
ここで、100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性とは、例えば、評価用ポリ乳酸95重量部に対し、加水分解調整剤を5重量部加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度200℃、回転数30rpmで2分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を評価し、同様に評価用ポリ乳酸を100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を用いて、下記式(vi)で与えられる値である。
反応性(%)=〔(100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (vi)
ここで、100℃の15%塩酸水溶液中での処理は、樹脂組成物(あらかじめ110℃10分の熱処理により結晶化させたものであり、各辺が0.5mm〜2mmのチップ状の形状とする)150mgと、15%塩酸水溶液(塩酸(和光純薬工業株式会社製、特級、35〜37%)を蒸留水により希釈して調製したもの)3mlをガラス製のネジ口試験管(株式会社マルエム製NN−13、内容積約5ml)に仕込んで密閉し、予め100℃に保持しておいた熱風乾燥機(株式会社東洋製作所製、FC−410)内に3時間静置したのちに試験管を取り出し、密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却した。その後、ろ過して得られたサンプルは、アセトン/水(70/30)混合液5mlで5回洗浄し、乾燥させたのちにカルボキシル基を測定した。評価用ポリ乳酸についても同様に処理した。
評価用ポリ乳酸としては、重量平均分子量が12万から20万、カルボキシル基濃度が10〜30当量/tonであることが好ましい。このようなポリ乳酸としては、例えば、ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(重量平均分子量は15万、カルボキシル基濃度は24.1当量/ton)などを好適に使用することができる。酸性基との反応性は、この他、同等の評価によって与えてもよい。
安定な剤を反応性評価した場合、樹脂組成物のカルボキシル基濃度の増加を抑える効果が小さい。そのような剤は、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で使用した場合、目的の酸性基を封止する能力があまり発現しないため、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の分解を抑制する効果が低い。
以上のことから、100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性は、30%以上が好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。50%以上、すなわち15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が高いと、本用途の条件で効率的に酸性基との反応を行うことができる。
加水分解調整剤(D成分)として、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物などの付加反応型の化合物が挙げられる。また、これら化合物を2つ以上組合せて使用することができる。酸性基との反応性の観点から、好ましくはカルボジイミド化合物、エポキシ化合物が例示される。
カルボジイミド化合物としては、単官能のカルボジイミト化合物、2官能以上のカルボジイミド化合物のいずれも用いることができ、下記一般式(I)、(II)、(III)の基本構造を有するものを挙げることができる。
(式中、R、R’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。RとR’が結合し環状構造を形成していてもよく、スピロ構造などにより2つ以上の環状構造を形成していてもよい)
(式中、R’’は各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。nは2から1000の整数である。)
(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
分子量保持の観点から、2官能以上のカルボジイミド化合物が好ましい。例えば、下記式(6)、(7)のようなカルボジイミド化合物が挙げられる。
(式中Xは、下記式(6−1)で表される4価の基である。Ar1〜Ar4は各々独立に、置換基で置換されていてもよい、オルトフェニレン基または1,2−ナフタレン−ジイル基である)
(式中、rは各々独立に炭素数1〜20の脂肪族基、3〜20の脂環族基、炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子を含んでいてもよい。mは2から1000の整数である。)
このような芳香族カルボジイミド化合物の具体例としては、下記式(8)のような環状カルボジイミド、4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドをモノマーとする重合体、テトラメチルキシリレンカルボジイミドをモノマーとする重合体、それらの誘導体などが例示される。
エポキシ化合物としては、単官能のエポキシ化合物、2官能以上のエポキシ化合物のいずれも用いることができ、脂環式のエポキシ化合物、植物油をエポキシ化することで得られるエポキシ化植物油、グリシジル基を有するエポキシ化合物などを挙げることができる。
分子量保持の観点から、2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。
このようなエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキレート、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトンなどの脂環式エポキシ化合物、ジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。とりわけ、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートが好適に使用することができる。
<樹脂組成物>
本願の第2の発明の樹脂組成物は、下記J1〜J2のいずれかを満たす。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物は、所望の性能を発揮するために、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解するようにコントロールすることが重要である。
一定期間とは、用途により決定されるが、10分間〜12時間のいずれかであることが好ましい。また、所望の性能を発揮するという観点から、30分間〜10時間のいずれかがより好ましく、30分間〜8時間のいずれかがさらに好ましい。
樹脂の重量と形状を保持するとは、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であり、形状を表す体積変化量が50%以下であることが好ましい。例えば、樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上であっても、完全に加水溶解した状態では、樹脂の重量と形状を保持したとはいえない。所望の性能を発揮するという観点から、樹脂組成物の非水溶分の重量は60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。また、形状を表す体積変化量は40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
樹脂の重量と形状は、樹脂組成物の重量平均分子量に大きく依存する。すなわち、樹脂の分解が進み、重量平均分子量が低くなった樹脂組成物は樹脂の重量と形状を保持できず、本用途で所望の性能を発揮することができない。
また、重量や形状を保持するとともに、本用途で効果的に機能を発揮するためには機械的物性を維持することが必要であるが、その観点からも重量平均分子量を維持することが重要である。
したがって、本発明の樹脂組成物は酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、重量平均分子量を保持することが重要であり、本発明の樹脂組成物の重量平均分子量保持率は50%以上であることが好ましい。50%よりも低くなると、機械的物性が低下し、さらに重量と形状の変化が顕著になる場合がある。そのため、所望の性能を発揮するという観点から、60%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましい。
ここで、樹脂の非水溶分の重量および重量平均分子量保持率とは、例えば、下記のような評価によって与えられる値である。
樹脂組成物(あらかじめ110℃10分の熱処理により結晶化させたものであり、各辺が0.5mm〜2mmのチップ状の形状とする)50mgおよび15%塩酸水溶液1mlを、ガラス製のネジ口試験管(マルエム社製NN−13、内容積約5ml)に仕込んで密閉する。
15%塩酸水溶液は、塩酸(和光純薬工業株式会社製、特級、35〜37%)を蒸留水により希釈して調製し、水酸化ナトリウム水溶液標準液にて中和滴定し、濃度を確認する。
試験温度が100℃以下の場合は、予め所定温度に保持しておいた熱風乾燥機(株式会社東洋製作所製、FC−410)内に上記試験管を静置する。所定時間経過後に試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却する。
試験温度が100℃を超え130℃以下の場合は、プレッシャークッカー(エスペック株式会社製、HASTチャンバーEHS−221M)内に上記試験管を静置する。プレッシャークッカー内の温度が試験温度に達してから所定時間後、降温を開始し、10分後にプレッシャークッカー内から試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却する。
試験管を常温(25℃)まで冷却したのち、試験管を開封して内部の樹脂組成物をガラスフィルタ(柴田科学株式会社製3GP100、ポアサイズ40−100μm)を用いてろ別し、ガラスフィルタ上に残る樹脂組成物を多量の蒸留水にて洗浄する。洗浄された樹脂組成物を、常温(25℃)、133.3Pa以下の真空にて1時間乾燥後、樹脂組成物の重量を測定する。非水溶分の重量は以下の式(vii)で計算される。
非水溶分の重量(%) = [分解試験後にろ別回収された樹脂組成物重量÷分解試験前の樹脂組成物重量]×100 (vii)
分解試験後の樹脂組成物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量(Mw)を測定し、その値をMw1とする。また、上記分解試験前の樹脂組成物のMwをGPCにて測定し、Mw0とする。重量平均分子量保持率は以下の式(viii)で計算される。
重量平均分子量保持率(%) = [Mw1/Mw0]×100 (viii)
樹脂の重量平均分子量変化率は、この他、同等の評価によって与えてもよい。
本発明の樹脂組成物は、下記J1〜J2のいずれかを満たす。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
本発明の樹脂組成物が好適に使用できる範囲は温度によって変化する。また、J1〜J2において、規定した一定期間(6時間、1時間)よりも早い時間は樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上であることが好ましい。
J1において、一定期間は6時間であり、その間、樹脂組成物の重量平均分子量を保持し、樹脂の重量と形状を所望のレベルで保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中において、本発明で定義される6時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上であってもよい。
J2において、一定期間は1時間であり、その間、樹脂組成物の重量平均分子量を保持し、樹脂の重量と形状を所望のレベルで保持することを示している。また、オイルフィールドの掘削技術などで所望の性能を発揮するという観点から、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中において、本発明で定義される1時間よりも長い一定期間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上であってもよい。
J1〜J2において規定した一定期間(6時間、1時間)後、加水分解調整剤(D成分)の酸性基を封止する効果が消え、酸性基の自触媒作用により樹脂の分解は促進され、それに伴い重量平均分子量が急激に低下する。さらに、分解が進むと樹脂は水溶性モノマーとなり、水に溶解していく。その現象が一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に可能な限り早く起こることが、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際に適している。そのため、24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることが好ましい。上記理由より、18時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがより好ましく、12時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましく、8時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、100℃以上120℃以下の任意の温度の15%塩酸水溶液中において、72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。例えば、オイルフィールドの掘削技術などで本発明の樹脂組成物を使用する際、樹脂組成物は一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に速やかに水中に溶解することで、効果的に働くことができる。そのため、100℃以上120℃以下の任意の温度の15%塩酸水溶液中において、72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下であることが好ましい。
また、使用後の水中の処理や所望の性能を発揮するという観点から、非水溶分は少ないほどよく、72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、特に1%以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、加水分解調整剤(D成分)の含有量は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と加水分解調整剤(D成分)との合計100重量部を基準として、0.1〜20重量部である。0.1重量部よりも少ないと、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中では、十分な酸性基の封止効果および分子量の保持効果が発揮されない場合がある。また、20重量部よりも多いと、樹脂組成物からの加水分解調整剤(D成分)のブリードアウトや成型性の悪化、基質の特性が変性する、などがある場合がある。かかる観点より、加水分解調整剤(D成分)の添加量は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と加水分解調整剤(D成分)の合計100重量部を基準として、0.5〜10重量部がより好ましく、1.0〜7.0重量部がさらに好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と加水分解調整剤(D成分)を溶融混練して製造することができる。
なお、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)としてポリ乳酸を採用した場合には、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)のポリL−乳酸、ポリD−乳酸、および加水分解調整剤(D成分)を混合し、ステレオコンプレックスポリ乳酸を形成されると共に、本発明の樹脂組成物を製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを混合しステレオコンプレックスポリ乳酸を形成させた後、加水分解調整剤(D成分)を混合して製造することもできる。
加水分解調整剤(D成分)を、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)に添加、混合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)のマスターバッチとして添加する方法、あるいは加水分解調整剤(D成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(D成分)を浸透させる方法などをとることができる。
溶液、融液あるいは適用する水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)のマスターバッチとして添加する方法をとる場合には、従来公知の混練装置を使用して添加する方法をとることができる。混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の反応容器、混合槽、混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。混合時間は特に指定はなく、混合装置、混合温度にもよるが、0.1分間から2時間、好ましくは0.2分間から60分間、より好ましくは0.2分間から30分間が選択される。
溶媒としては、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)および加水分解調整剤(D成分)に対し、不活性であるものを用いることができる。特に、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解する溶媒が好ましい。
溶媒としてはたとえば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどが挙げられる。ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
本発明において、溶媒は、樹脂組成物100重量部あたり1〜1,000重量部の範囲で適用される。1重量部より少ないと、溶媒適用に意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、反応効率の観点より1,000重量部程度である。
加水分解調整剤(D成分)が溶解、分散または溶融している液体に水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の固体を接触させ加水分解調整剤(D成分)を浸透させる方法をとる場合には、上記のごとき溶剤に溶解した加水分解調整剤(D成分)に固体の水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(B成分)を接触させる方法や、加水分解調整剤(D成分)のエマルジョン液に固体の水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(C成分)を接触させる方法などをとることができる。
接触させる方法としては、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)を浸漬する方法や、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)に塗布する方法、散布する方法などを好適にとることができる。
加水分解調整剤(D成分)による水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の酸性基の封止反応は、室温(25℃)〜300℃程度の温度で可能であるが、反応効率の観点より50〜280℃、より好ましくは100〜280℃の範囲ではより促進される。水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)は、溶融している温度ではより反応が進行しやすいが、加水分解調整剤(D成分)の揮散、分解などを抑制するため、300℃より低い温度で反応させることが好ましい。また水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の溶融温度を低下、攪拌効率を上げるためにも、溶媒を適用することは効果がある。
反応は無触媒で十分速やかに進行するが、反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒としては、一般的に加水分解調整剤(B成分)で使用される触媒が適用できる。これらは1種または2種以上使用することができる。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
また、本発明では加水分解調整剤(D成分)を2種以上組合せて使用してもよく、例えば、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の初期の酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(D成分)と、酸性水中で生じる酸性基の封止反応を行う加水分解調整剤(D成分)について別々のものを使用してもよい。
さらに、加水分解調整剤(D成分)の助剤、すなわち加水分解を遅延させるために加水分解調整剤(D成分)の効果を補助する剤を併用することが好ましい。そのような剤としては、公知のあらゆるものが使用できるが、例えば、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の炭酸化物から選ばれる少なくとも一つの化合物が例示される。助剤の含有量は加水分解調整剤(D成分)100重量部当たり、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.7〜10重量部である。
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を失わない範囲で、公知のあらゆる添加剤、フィラーを添加して用いることができる。例えば、安定剤、結晶化促進剤、充填剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、末端封止剤などが挙げられる。
なお、添加剤については、発明の効果を失わないという観点から、水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)の分解を促進する成分、例えば、リン酸成分や樹脂組成物中で分解してリン酸成分を生じるようなホスファイト系添加剤など、については使用しないか、あるいは極力減量するか、あるいは失活するかなどの方法で影響を低減することが重要である。例えば、加水分解調整剤(D成分)と一緒に、それらを失活あるいは抑制する成分を併用する方法などを好適にとることができる。
<安定剤>
本発明の樹脂組成物には、安定剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した安定剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<結晶化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した安定剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<充填剤>
本発明の樹脂組成物は、有機若しくは無機の充填剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した充填材をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した離型剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<可塑剤>
本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した可塑剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<耐衝撃改良剤>
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有することができ、前掲の本願の第1の発明で記載した耐衝撃改良剤をいずれも用いることができる。その使用量も同じである。
<その他>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、前掲の本願の第1の発明で記載したその他成分(硬化性樹脂、難燃剤、染料、顔料、着色剤、摺動性改良剤等)をいずれも用いることができる。
<成形品>
本発明の樹脂組成物よりなる成形品は、射出成形、押し出し成形、真空、圧空成形およびブロー成形等により成形できる。成形品として、ペレット、繊維、布帛、繊維構造体、フィルム、シート、シート不織布などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物よりなる成形品を製造するにあたっては、前掲の本願の第1の発明で記載した方法はいずれも採用することができ、その条件も同一である。
また、本発明の樹脂組成物は、上記に挙げた成型品およびそれ以外の公知の成形方法により得られた成型品を原料として、粉砕チップおよび紛体として用いることができる。これら粉砕チップおよび紛体は、従来公知の粉砕方法、細断方法、裁断方法、あるいは溶剤を用いた再沈殿方法、およびその後の粒度選別方法により得られた材料を好適に使用することができる。
本発明の粉砕チップおよび紛体は、それ単独で用いることも、他の形態の成型品および他の樹脂や金属化合物等の材料と組み合わせて用いることもできる。
本発明の成形品は、必要に応じて他の樹脂や金属化合物等の固体材料または有機溶媒や油剤、ゲル等の液体材料を用いて被覆することができる。その場合は、目的となる分解性能を達するよう、被覆材料の種類や厚さ、ならびに本発明の成形品との接着性等を調節することが好ましい。
以下、本願の第1の発明を実施例によりさらに具体的に説明する。各物性は以下の方法により測定した。
(1)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定は、以下の検出器およびカラムを使用し、クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
検出器;示差屈折計((株式会社島津製作所製)RID−6A。
カラム;東ソ−株式会社製TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−株式会社製TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの。
(2)カルボキシル基濃度:
実施例の樹脂組成物のカルボキシル基濃度は、1H−NMRによって確認した。NMRは、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製ECA600を使用した。溶媒は重クロロホルムとヘキサフルオロイソプロパノールを用い、ヘキシルアミンを添加して測定した。
それ以外の試料については、試料を精製o−クレゾールに溶解、窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
(3)ステレオコンプレックス結晶化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,TA−2920)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、10℃/分で250℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解温度(Tm*)およびステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHms)およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmh)を測定した。
また結晶化開始温度(Tc*)、結晶化温度(Tc)は上記測定試料を急速冷却し、さらに引き続き、同じ条件で第二サイクル測定を行い測定した。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(a)により求めた値である。
S(%) = [ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)] × 100 (a)
(但し、ΔHmsはステレオコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
(4)加水分解調整剤の耐水性評価:
(4−1)ジメチルスルホキシドを使用した耐水性評価
ジメチルスルホキシド50mlに1gの試料を溶解あるいは部分溶解させた系に、2gの水を加え、120℃で5時間還流させながら撹拌した後に得られた溶解サンプル部分をHPLCあるいは1H−NMRにより測定した。
NMRは、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製ECA600を使用した。溶媒は重ジメチルスルホキシドを用い、構造の変化量(積分値)から5時間後の剤量を求めた。
また、HPLCの条件は下記の通りで実施し、0時間の剤量の面積を100%として、5時間後の剤量の面積から剤量を求めた。
装置:株式会社島津製作所製超高速液体クロマトグラフィー「Nexera(登録商標)」
UV検出器:株式会社島津製作所製SPD−20A 254nm
カラム:ジーエルサイエンス製Inertsil Ph−33μm 4.6mm×150mm(またはこれと同等のカラムも使用できる)
カラム温度:40℃
試料の調整:ジメチルスルホキシド溶液をDMFで500倍に希釈して使用した。
注入量:2μl
移動相:A:メタノール、B:水
流量:1.0ml/min(0min:A/B=50/50→10min:A/B=98/2→18minまで保持→23min:A/B=50/50→30min)
得られた5時間後の剤量を用い、下記式(ix)から耐水性を求めた。
耐水性(%)=〔5h処理後の剤量/初期の剤量〕×100 (ix)
(4−2)それ以外の耐水性評価(B成分がテトラヒドロフランに溶解する場合の例示。)
テトラヒドロフラン25mlとジメチルスルホキシド25mlに1gの試料を溶解した系に、2gの水を加え、120℃で5時間還流させながら撹拌した後に得られた溶解サンプル部分をFT−IRにより測定した。
FT−IRの条件は下記の通りで実施し、剤の処理によって変化しない1つの基(アルキル鎖部分など)とカルボジイミド基の面積を用い、0時間のカルボジイミド基の面積と変化しない基の面積の商を100として、5時間後のカルボジイミド基の面積と変化しない基の面積の商から剤量を求めた。
得られた5時間後の剤量を用い、上記式(ix)から耐水性を求めた。
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製「Nicolet(登録商標)iN10」
測定法:顕微透過法
測定視野:50μm×50μm
分解能:4cm−1
測定波数:4000〜740cm−1
積算回数:128回
試料の調整:溶解サンプルをフッ化バリウムプレート上にのせ、溶媒を揮発させた。
(5)加水分解調整剤の酸性基との反応性評価:
ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は22.1当量/ton)を評価用ポリ乳酸に使用し、加水分解調整剤のカルボキシル基と反応する基が33.15当量/tonとなる剤の量を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度190℃、回転数30rpmで1分間溶融混練して得られた樹脂組成物についてカルボキシル基濃度を測定し、下記式(x)から酸性基との反応性を求めた。
反応性(%)=〔(評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (x)
(6)高温熱水中での湿熱評価:
樹脂組成物300mgおよび蒸留水12mlを、110℃に予熱した密閉式溶解るつぼ(オーエムラボテック株式会社製、MR−28、内容積28ml)に仕込んで密閉し、予め所定温度(150℃、170℃、190℃)に保持しておいた熱風乾燥機(光洋サーモシステム株式会社製、KLO−45M)内にるつぼを静置した。
るつぼを静置後、熱風乾燥機に静置してからるつぼ内部の温度が所定の試験温度に到達する時間を試験開始時点とし、この試験開始時点から一定期間が経過した時点で、るつぼを熱風乾燥機から取り出した。
熱風乾燥機から取り出したるつぼを20分間の空冷後、10分間の水冷により常温まで冷却した後、るつぼを開封して内部の試料および水を回収した。内部の試料および水はろ紙(JIS P3801:1995、5種A規格)を用いてろ過を行い、ろ紙上に残る樹脂組成物を60℃、133.3Pa以下の真空にて3時間乾燥後、樹脂組成物の重量とカルボキシル基濃度を測定した。重量は下記式(xi)からを求めた。
重量(%)=[一定期間処理後の樹脂組成物の重量/初期の樹脂組成物の重量]×100 (xi)
処理して得られた樹脂組成物の重量平均分子量を測定し、処理前の重量平均分子量を用いて分子量保持率を評価した。
(7)ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度評価:
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度はHPLCを用いて測定した。HPLCの条件は下記の通りで実施し、面積から純度を求めた。
LC本体:LC20A(株式会社島津製作所製)
カラム:Develosil ODS−MG−3
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
流量:0.2ml/min
試料の調整:試料をアセトニトリルで希釈して使用した。
注入量:1μl
移動相:A:水、B:アセトニトリル
グラジェント条件
Time 0 → 1 → 15 → 30(min)
Bconc. 60 → 60 → 100 → 100(%)
(8)ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度測定(前掲の化学式(4)で表される化合物、化学式(5)で表される化合物の含有量測定):
樹脂組成物に適用するビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド中に含まれる他化合物について1H−NMRにより測定した。NMRは、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製ECA600を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。前掲の化学式(4)で表される化合物、
(式中、R8〜R11は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つがプロピル基で、それ以外の基はイソプロピル基である。)、化学式(5)で表される化合物、
(式中、R12〜R15は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つの基がオルト位以外に置換している。)
の含有量の合計は、試料の積分値から算出した。
上記の化学式(4)で表される化合物、化学式(5)で表される化合物に由来するピークを検出できない場合には、その含有量は「0.1%未満」として表記した。
(9)温水中での湿熱評価:
試料を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHの条件で100時間処理した後、得られた試料の重量平均分子量を測定し、処理前の重量平均分子量を用いて分子量保持率を評価した。
以下、本実施例で使用する化合物を説明する。
<水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)>
水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)として、以下のポリ乳酸を製造、使用した。
[製造例1]ポリL−乳酸樹脂:
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し1.2倍当量の燐酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリL−乳酸樹脂を得た。
得られたポリL−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.2万、融解エンタルピー(ΔHmh)は49J/g、融点(Tmh)は175℃、ガラス転移点(Tg)55℃、カルボキシル基濃度は13当量/tonであった。
[製造例2]ポリD−乳酸樹脂:
製造例1のL−ラクチドのかわりにD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)を使用する以外は製造例1と同様の操作を行い、ポリD−乳酸樹脂を得た。
得られたポリD−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.1万、融解エンタルピー(ΔHmh)は48J/g、融点(Tmh)は175℃、ガラス転移点(Tg)55℃、カルボキシル基濃度は14当量/ton、であった。
[製造例3]ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1):
製造例1および2で得られたポリL−乳酸樹脂およびポリD−乳酸樹脂各50重量部よりなるポリ乳酸樹脂計100重量部並びに燐酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム(「アデカスタブ(登録商標)」NA−11:株式会社ADEKA製)0.04重量部をブレンダーで混合後、110℃で5時間乾燥し、径30mmφのベント式二軸押出機[株式会社日本製鋼所製TEX30XSST]に供給し、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量5kg/h、およびベント減圧度3kPaで溶融押出してペレット化し、ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を得た。
得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂(A1)の重量平均分子量は13万、融解エンタルピー(ΔHms)は56J/g、融点(Tms)は220℃、ガラス転移点(Tg)58℃、カルボキシル基濃度は16当量/ton、ステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%であった。
A2:ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は22.1当量/ton)
<加水分解調整剤(B成分)>
加水分解調整剤(B成分)として、以下の添加剤を使用した。
B1:DIPC(カルボジイミド化合物、川口化学工業株式会社製)
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度は99.9以上%、前掲の化学式(4)で表される化合物と化学式(5)で表される化合物との合計は0.1%未満B1´:ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(公知の方法で合成したもの)
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度は90.9%、前掲の化学式(4)で表される化合物と化学式(5)で表される化合物との合計は8.7%、その他不純物成分0.4%
B2:「スタバクゾール(登録商標)」P(カルボジイミド化合物、ラインケミー社製)
B3:「カルボジライト(登録商標)」LA−1(カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル株式会社製)
B4:1,3−ジ−p−トリルカルボジイミド(カルボジイミド化合物、アルドリッチ社製)
B5:「セロキサイド(登録商標)」2021P(エポキシ化合物、株式会社ダイセル製)
B6:BOX−210(オキサゾリン化合物、竹本油脂株式会社製)
各B成分の耐水性と酸性基との反応性は表1に記載した。耐水性が95%以上かつ酸性基との反応性が50%以上のものを○と判定し、実施例に使用した。また、それ以外のものは×と判定し、比較例に使用した。なお、B1とB4〜B6についてはジメチルスルホキシドを使用した耐水性評価を、B2とB3については、それ以外の耐水性評価を行った。
[実施例1]
A1とB1とを表2に記載の重量部混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度230℃、回転数30rpmで1.5分間溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、170℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。
[実施例2]
B1をB2に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[比較例1〜4]
B1をB3〜B6にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[実施例3]
A1とB1とを表2に記載の重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物について、190℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。190℃、1時間の熱水中に保持した前後で評価した分子量保持率は46%であった。
[実施例4]
B1をB2に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[比較例5〜8]
B1をB3〜B6にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[実施例5]
A1をA2に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物について、150℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。
[比較例9]
B1をB3に変更した以外は、実施例5と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[実施例6]
実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物を40℃で8時間除湿乾燥した後に230℃で溶融し、口径0.2mmの口金から吐出し、65℃にて3.5倍に延伸した後、180℃で結晶化させた。得られた繊維をロータリーカッターにてカットし、糸径50μm、長さ8mmの短繊維を得た。この繊維について、190℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。
[実施例7]
B1をB2に変更した以外は、実施例6と同様にして繊維を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
これらの結果から、耐水性および酸性基との反応性を両方満足するB1とB2を加水分解調整剤として使用した場合、樹脂組成物が高温の熱水中で所望の性能、すなわち、高温の熱水中で一定期間、樹脂の重量と形状を保持した後に素早く分解することを実現できることが分かる。また、耐水性および酸性基の少なくともどちらか一方を満足していないB3〜B6を使用した場合、樹脂組成物の分解が速く、十分な性能が得られないことが分かる。
なお、実施例において、高温の熱水中で処理した後、重量が1%未満のものは、十分に分解が進んでいると判断し、カルボキシル基濃度の測定および長時間の高温熱水中での湿熱評価を行わなかった。表2の該当部分は”−”と表記した。
[実施例8]
B1´100gをメタノール200mlに加え、60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却して析出してきた結晶をろ過回収し、乾燥することで精製品を得た。ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度は99.9%以上、前掲の化学式(4)で表される化合物と前掲の化学式(5)で表される化合物との合計含有量は0.1%未満であった。
得られた精製品をB1の代わりに用いた以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。分子量保持率は47%であった。
[実施例9]
B1をB1´に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。分子量保持率は32%であった。
[参考例1]
実施例3で作製した樹脂組成物を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHの条件で100時間処理した。処理後の分子量保持率は91%であった。
[参考例2]
B1をB1´に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHの条件で100時間処理した。処理後の分子量保持率は92%であった。
これらの結果から、成分Bがビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの場合には、前掲の化学式(4)で表される化合物、化学式(5)で表される化合物の合計含有量が少ない場合には、特に本発明の高温熱水で使用する上で効果が向上することが分かる。この効果の向上は、80℃の温水中では有意な差として発現しないことも確認されたことから、本発明が主とする用途においては重要な要素であることが分かる。
以下、本願の第2の発明を実施例によりさらに具体的に説明する。各物性は以下の方法により測定した。
(10)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定は、以下の検出器およびカラムを使用し、クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6A。
カラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの。
(11)カルボキシル基濃度:
試料を精製o−クレゾールに溶解、窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定して求めた。
(12)加水分解調整剤の酸性基との反応性評価:
ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は24.1当量/ton)を評価用ポリ乳酸に使用し、ポリ乳酸95重量部に対し、加水分解調整剤を5重量部加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度200℃、回転数30rpmで2分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を評価し、同様に評価用ポリ乳酸を100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を測定し、下記式(xii)から酸性基との反応性を求めた。
反応性(%)=〔(100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (xii)
(13)酸性水中での分解性評価:
樹脂組成物(あらかじめ110℃10分の熱処理により結晶化させたものであり、各辺が0.5mm〜2mmのチップ状の形状とする)50mgおよび15%塩酸水溶液1mlを、ガラス製のネジ口試験管(株式会社マルエム社製NN−13、内容積約5ml)に仕込んで密閉した。15%塩酸水溶液は、塩酸(和光純薬工業株式会社製、特級、35〜37%)を蒸留水により希釈して調製し、水酸化ナトリウム水溶液標準液にて中和滴定し、濃度を確認した。
試験温度が100℃以下の場合は、予め所定温度に保持しておいた熱風乾燥機(株式会社東洋製作所製、FC−410)内に上記試験管を静置した。所定時間経過後に試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却した。
試験温度が100℃を超え130℃以下の場合は、プレッシャークッカー(エスペック株式会社製、HASTチャンバーEHS−221M)内に上記試験管を静置した。プレッシャークッカー内の温度が試験温度に達してから所定時間後、降温を開始し、10分後にプレッシャークッカー内から試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却した。
試験管を常温(25℃)まで冷却したのち、試験管を開封して内部の樹脂組成物をガラスフィルタ(柴田科学株式会社製3GP100、ポアサイズ40−100μm)を用いてろ別し、ガラスフィルタ上に残る樹脂組成物を多量の蒸留水にて洗浄した。洗浄された樹脂組成物を、常温(25℃)、133.3Pa以下の真空にて1時間乾燥後、樹脂組成物の重量を測定した。非水溶分の重量は以下の式(xiii)で計算した。
非水溶分の重量(%) = [分解試験後にろ別回収された樹脂組成物重量÷分解試験前の樹脂組成物重量]×100 (xiii)
分解試験後の樹脂組成物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量(Mw)を測定し、その値をMw1とした。また、上記分解試験前の樹脂組成物のMwをGPCにて測定し、Mw0とする。重量平均分子量保持率は以下の式(xiv)で計算した。
重量平均分子量保持率(%) = [Mw1/Mw0]×100 (xiv)
以下、本実施例で使用する化合物を説明する。
<水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)>
水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)として、NatureWorks LLC製「NW3001D」(Mwは15万、カルボキシル基濃度は24.1当量/ton)を用いた。
<加水分解調整剤(D成分)>
加水分解調整剤(D成分)として、以下の添加剤を使用した。
D1:製造例1に挙げるカルボジイミド化合物CC1
D2:「カルボジライト(登録商標)」LA−1(カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル株式会社製)
D3:DIPC(カルボジイミド化合物、川口化学工業(株)製)
D4:「セロキサイド(登録商標)」2021P(エポキシ化合物、株式会社ダイセル製)
D5:BOX−210(オキサゾリン化合物、竹本油脂(株)製)
各加水分解調整剤(D成分)の酸性基との反応性は表3に記載した。酸性基との反応性が30%以上のものを○と判定し、実施例に使用した。また、それ以外のものは×と判定し、比較例に使用した。なお、反応性の値がマイナスとなる場合には0と表記し、×と判定した。
[製造例4]加水分解調整剤(D1)の合成:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、ジ−tert−ブチルシカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記式にて示す化合物(CC1:MW=516)を得た。CC1の構造はNMR、IRにより確認した。
[実施例10、11]
C1とD1とを表4に記載の重量部で混合し、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度200℃、回転数30rpmで2分間溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、100℃の15%塩酸水中での分解試験を行った。試験結果については、表4に示した。
[実施例12〜14]
D1をD2およびD4に変更した以外は、実施例 と同様に表5に記載の重量部で混合して樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表5に示した。
[比較例10]
C1をそのまま用い、実施例1と同様の方法で評価した。評価結果については、表4に示した。
[比較例11〜12]
D1をD3およびD5に変更した以外は、実施例10と同様に表3に記載の重量部で混合して樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表4に示した。
[実施例15〜19、比較例13〜15]
試験温度を100℃から120℃に変更した以外は、実施例10〜14および比較例10〜12と同様にして表4に記載の組成で樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表4に示した。
これらの結果から、酸性基との反応性を満足するD1、D2、D4を加水分解調整剤として使用した場合、樹脂組成物が酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で所望の性能、すなわち、酸性や塩基性など化学的に過酷な熱水中で一定期間、樹脂組成物の重量平均分子量を保持し、重量と形状を保持した後に、素早く分解することを実現できることが分かる。
また、酸性基との反応性を満足していないD3、D5を使用した場合、樹脂組成物の分解が速く、十分な性能が得られないことが分かる。
(1)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定は、以下の検出器およびカラムを使用し、クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
検出器;示差屈折計((株式会社島津製作所製)RID−6A。
カラム;東ソ−株式会社製TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−株式会社製TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの。
(2)カルボキシル基濃度:
実施例の樹脂組成物のカルボキシル基濃度は、1H−NMRによって確認した。NMRは、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製ECA600を使用した。溶媒は重クロロホルムとヘキサフルオロイソプロパノールを用い、ヘキシルアミンを添加して測定した。
それ以外の試料については、試料を精製o−クレゾールに溶解、窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
(3)ステレオコンプレックス結晶化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,TA−2920)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、10℃/分で250℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解温度(Tm*)およびステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHms)およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmh)を測定した。
また結晶化開始温度(Tc*)、結晶化温度(Tc)は上記測定試料を急速冷却し、さらに引き続き、同じ条件で第二サイクル測定を行い測定した。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(a)により求めた値である。
S(%) = [ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)] × 100 (a)
(但し、ΔHmsはステレオコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
(4)加水分解調整剤の耐水性評価:
(4−1)ジメチルスルホキシドを使用した耐水性評価
ジメチルスルホキシド50mlに1gの試料を溶解あるいは部分溶解させた系に、2gの水を加え、120℃で5時間還流させながら撹拌した後に得られた溶解サンプル部分をHPLCあるいは1H−NMRにより測定した。
NMRは、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製ECA600を使用した。溶媒は重ジメチルスルホキシドを用い、構造の変化量(積分値)から5時間後の剤量を求めた。
また、HPLCの条件は下記の通りで実施し、0時間の剤量の面積を100%として、5時間後の剤量の面積から剤量を求めた。
装置:株式会社島津製作所製超高速液体クロマトグラフィー「Nexera(登録商標)」
UV検出器:株式会社島津製作所製SPD−20A 254nm
カラム:ジーエルサイエンス製Inertsil Ph−33μm 4.6mm×150mm(またはこれと同等のカラムも使用できる)
カラム温度:40℃
試料の調整:ジメチルスルホキシド溶液をDMFで500倍に希釈して使用した。
注入量:2μl
移動相:A:メタノール、B:水
流量:1.0ml/min(0min:A/B=50/50→10min:A/B=98/2→18minまで保持→23min:A/B=50/50→30min)
得られた5時間後の剤量を用い、下記式(ix)から耐水性を求めた。
耐水性(%)=〔5h処理後の剤量/初期の剤量〕×100 (ix)
(4−2)それ以外の耐水性評価(B成分がテトラヒドロフランに溶解する場合の例示。)
テトラヒドロフラン25mlとジメチルスルホキシド25mlに1gの試料を溶解した系に、2gの水を加え、120℃で5時間還流させながら撹拌した後に得られた溶解サンプル部分をFT−IRにより測定した。
FT−IRの条件は下記の通りで実施し、剤の処理によって変化しない1つの基(アルキル鎖部分など)とカルボジイミド基の面積を用い、0時間のカルボジイミド基の面積と変化しない基の面積の商を100として、5時間後のカルボジイミド基の面積と変化しない基の面積の商から剤量を求めた。
得られた5時間後の剤量を用い、上記式(ix)から耐水性を求めた。
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製「Nicolet(登録商標)iN10」
測定法:顕微透過法
測定視野:50μm×50μm
分解能:4cm−1
測定波数:4000〜740cm−1
積算回数:128回
試料の調整:溶解サンプルをフッ化バリウムプレート上にのせ、溶媒を揮発させた。
(5)加水分解調整剤の酸性基との反応性評価:
ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は22.1当量/ton)を評価用ポリ乳酸に使用し、加水分解調整剤のカルボキシル基と反応する基が33.15当量/tonとなる剤の量を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度190℃、回転数30rpmで1分間溶融混練して得られた樹脂組成物についてカルボキシル基濃度を測定し、下記式(x)から酸性基との反応性を求めた。
反応性(%)=〔(評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (x)
(6)高温熱水中での湿熱評価:
樹脂組成物300mgおよび蒸留水12mlを、110℃に予熱した密閉式溶解るつぼ(オーエムラボテック株式会社製、MR−28、内容積28ml)に仕込んで密閉し、予め所定温度(150℃、170℃、190℃)に保持しておいた熱風乾燥機(光洋サーモシステム株式会社製、KLO−45M)内にるつぼを静置した。
るつぼを静置後、熱風乾燥機に静置してからるつぼ内部の温度が所定の試験温度に到達する時間を試験開始時点とし、この試験開始時点から一定期間が経過した時点で、るつぼを熱風乾燥機から取り出した。
熱風乾燥機から取り出したるつぼを20分間の空冷後、10分間の水冷により常温まで冷却した後、るつぼを開封して内部の試料および水を回収した。内部の試料および水はろ紙(JIS P3801:1995、5種A規格)を用いてろ過を行い、ろ紙上に残る樹脂組成物を60℃、133.3Pa以下の真空にて3時間乾燥後、樹脂組成物の重量とカルボキシル基濃度を測定した。重量は下記式(xi)からを求めた。
重量(%)=[一定期間処理後の樹脂組成物の重量/初期の樹脂組成物の重量]×100 (xi)
処理して得られた樹脂組成物の重量平均分子量を測定し、処理前の重量平均分子量を用いて分子量保持率を評価した。
(7)ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度評価:
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度はHPLCを用いて測定した。HPLCの条件は下記の通りで実施し、面積から純度を求めた。
LC本体:LC20A(株式会社島津製作所製)
カラム:Develosil ODS−MG−3
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
流量:0.2ml/min
試料の調整:試料をアセトニトリルで希釈して使用した。
注入量:1μl
移動相:A:水、B:アセトニトリル
グラジェント条件
Time 0 → 1 → 15 → 30(min)
Bconc. 60 → 60 → 100 → 100(%)
(8)ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度測定(前掲の化学式(4)で表される化合物、化学式(5)で表される化合物の含有量測定):
樹脂組成物に適用するビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド中に含まれる他化合物について1H−NMRにより測定した。NMRは、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製ECA600を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。前掲の化学式(4)で表される化合物、
(式中、R8〜R11は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つがプロピル基で、それ以外の基はイソプロピル基である。)、化学式(5)で表される化合物、
(式中、R12〜R15は炭素数3の脂肪族基であり、少なくとも1つの基がオルト位以外に置換している。)
の含有量の合計は、試料の積分値から算出した。
上記の化学式(4)で表される化合物、化学式(5)で表される化合物に由来するピークを検出できない場合には、その含有量は「0.1%未満」として表記した。
(9)温水中での湿熱評価:
試料を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHの条件で100時間処理した後、得られた試料の重量平均分子量を測定し、処理前の重量平均分子量を用いて分子量保持率を評価した。
以下、本実施例で使用する化合物を説明する。
<水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)>
水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)として、以下のポリ乳酸を製造、使用した。
[製造例1]ポリL−乳酸樹脂:
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し1.2倍当量の燐酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリL−乳酸樹脂を得た。
得られたポリL−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.2万、融解エンタルピー(ΔHmh)は49J/g、融点(Tmh)は175℃、ガラス転移点(Tg)55℃、カルボキシル基濃度は13当量/tonであった。
[製造例2]ポリD−乳酸樹脂:
製造例1のL−ラクチドのかわりにD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)を使用する以外は製造例1と同様の操作を行い、ポリD−乳酸樹脂を得た。
得られたポリD−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.1万、融解エンタルピー(ΔHmh)は48J/g、融点(Tmh)は175℃、ガラス転移点(Tg)55℃、カルボキシル基濃度は14当量/ton、であった。
[製造例3]ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1):
製造例1および2で得られたポリL−乳酸樹脂およびポリD−乳酸樹脂各50重量部よりなるポリ乳酸樹脂計100重量部並びに燐酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム(「アデカスタブ(登録商標)」NA−11:株式会社ADEKA製)0.04重量部をブレンダーで混合後、110℃で5時間乾燥し、径30mmφのベント式二軸押出機[株式会社日本製鋼所製TEX30XSST]に供給し、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量5kg/h、およびベント減圧度3kPaで溶融押出してペレット化し、ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を得た。
得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂(A1)の重量平均分子量は13万、融解エンタルピー(ΔHms)は56J/g、融点(Tms)は220℃、ガラス転移点(Tg)58℃、カルボキシル基濃度は16当量/ton、ステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%であった。
A2:ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は22.1当量/ton)
<加水分解調整剤(B成分)>
加水分解調整剤(B成分)として、以下の添加剤を使用した。
B1:DIPC(カルボジイミド化合物、川口化学工業株式会社製)
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度は99.9以上%、前掲の化学式(4)で表される化合物と化学式(5)で表される化合物との合計は0.1%未満B1´:ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(公知の方法で合成したもの)
ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度は90.9%、前掲の化学式(4)で表される化合物と化学式(5)で表される化合物との合計は8.7%、その他不純物成分0.4%
B2:「スタバクゾール(登録商標)」P(カルボジイミド化合物、ラインケミー社製)
B3:「カルボジライト(登録商標)」LA−1(カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル株式会社製)
B4:1,3−ジ−p−トリルカルボジイミド(カルボジイミド化合物、アルドリッチ社製)
B5:「セロキサイド(登録商標)」2021P(エポキシ化合物、株式会社ダイセル製)
B6:BOX−210(オキサゾリン化合物、竹本油脂株式会社製)
各B成分の耐水性と酸性基との反応性は表1に記載した。耐水性が95%以上かつ酸性基との反応性が50%以上のものを○と判定し、実施例に使用した。また、それ以外のものは×と判定し、比較例に使用した。なお、B1とB4〜B6についてはジメチルスルホキシドを使用した耐水性評価を、B2とB3については、それ以外の耐水性評価を行った。
[実施例1]
A1とB1とを表2に記載の重量部混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度230℃、回転数30rpmで1.5分間溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、170℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。
[実施例2]
B1をB2に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[比較例1〜4]
B1をB3〜B6にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[実施例3]
A1とB1とを表2に記載の重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物について、190℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。190℃、1時間の熱水中に保持した前後で評価した分子量保持率は46%であった。
[実施例4]
B1をB2に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[比較例5〜8]
B1をB3〜B6にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[実施例5]
A1をA2に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物について、150℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。
[比較例9]
B1をB3に変更した以外は、実施例5と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
[実施例6]
実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物を40℃で8時間除湿乾燥した後に230℃で溶融し、口径0.2mmの口金から吐出し、65℃にて3.5倍に延伸した後、180℃で結晶化させた。得られた繊維をロータリーカッターにてカットし、糸径50μm、長さ8mmの短繊維を得た。この繊維について、190℃での高温熱水中での湿熱評価を行った。評価結果については、表2に示した。
[実施例7]
B1をB2に変更した以外は、実施例6と同様にして繊維を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。
なお、実施例において、高温の熱水中で処理した後、重量が1%未満のものは、十分に分解が進んでいると判断し、カルボキシル基濃度の測定および長時間の高温熱水中での湿熱評価を行わなかった。表2の該当部分は”−”と表記した。
[実施例8]
B1´100gをメタノール200mlに加え、60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却して析出してきた結晶をろ過回収し、乾燥することで精製品を得た。ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの純度は99.9%以上、前掲の化学式(4)で表される化合物と前掲の化学式(5)で表される化合物との合計含有量は0.1%未満であった。
得られた精製品をB1の代わりに用いた以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。分子量保持率は47%であった。
[実施例9]
B1をB1´に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表2に示した。分子量保持率は32%であった。
[参考例1]
実施例3で作製した樹脂組成物を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHの条件で100時間処理した。処理後の分子量保持率は91%であった。
[参考例2]
B1をB1´に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHの条件で100時間処理した。処理後の分子量保持率は92%であった。
これらの結果から、成分Bがビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドの場合には、前掲の化学式(4)で表される化合物、化学式(5)で表される化合物の合計含有量が少ない場合には、特に本発明の高温熱水で使用する上で効果が向上することが分かる。この効果の向上は、80℃の温水中では有意な差として発現しないことも確認されたことから、本発明が主とする用途においては重要な要素であることが分かる。
以下、本願の第2の発明を実施例によりさらに具体的に説明する。各物性は以下の方法により測定した。
(10)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定は、以下の検出器およびカラムを使用し、クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6A。
カラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの。
(11)カルボキシル基濃度:
試料を精製o−クレゾールに溶解、窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定して求めた。
(12)加水分解調整剤の酸性基との反応性評価:
ネイチャーワークス社製ポリ乳酸「NW3001D」(MWは15万、カルボキシル基濃度は24.1当量/ton)を評価用ポリ乳酸に使用し、ポリ乳酸95重量部に対し、加水分解調整剤を5重量部加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度200℃、回転数30rpmで2分間溶融混練して得られた樹脂組成物について、100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を評価し、同様に評価用ポリ乳酸を100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後のカルボキシル基濃度を測定し、下記式(xii)から酸性基との反応性を求めた。
反応性(%)=〔(100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度−100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の樹脂組成物のカルボキシル基濃度)/100℃の15%塩酸水溶液中で3時間処理した後の評価用ポリ乳酸のカルボキシル基濃度〕×100 (xii)
(13)酸性水中での分解性評価:
樹脂組成物(あらかじめ110℃10分の熱処理により結晶化させたものであり、各辺が0.5mm〜2mmのチップ状の形状とする)50mgおよび15%塩酸水溶液1mlを、ガラス製のネジ口試験管(株式会社マルエム社製NN−13、内容積約5ml)に仕込んで密閉した。15%塩酸水溶液は、塩酸(和光純薬工業株式会社製、特級、35〜37%)を蒸留水により希釈して調製し、水酸化ナトリウム水溶液標準液にて中和滴定し、濃度を確認した。
試験温度が100℃以下の場合は、予め所定温度に保持しておいた熱風乾燥機(株式会社東洋製作所製、FC−410)内に上記試験管を静置した。所定時間経過後に試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却した。
試験温度が100℃を超え130℃以下の場合は、プレッシャークッカー(エスペック株式会社製、HASTチャンバーEHS−221M)内に上記試験管を静置した。プレッシャークッカー内の温度が試験温度に達してから所定時間後、降温を開始し、10分後にプレッシャークッカー内から試験管を取り出し、試験管を密閉したまま水冷により常温(25℃)まで冷却した。
試験管を常温(25℃)まで冷却したのち、試験管を開封して内部の樹脂組成物をガラスフィルタ(柴田科学株式会社製3GP100、ポアサイズ40−100μm)を用いてろ別し、ガラスフィルタ上に残る樹脂組成物を多量の蒸留水にて洗浄した。洗浄された樹脂組成物を、常温(25℃)、133.3Pa以下の真空にて1時間乾燥後、樹脂組成物の重量を測定した。非水溶分の重量は以下の式(xiii)で計算した。
非水溶分の重量(%) = [分解試験後にろ別回収された樹脂組成物重量÷分解試験前の樹脂組成物重量]×100 (xiii)
分解試験後の樹脂組成物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量(Mw)を測定し、その値をMw1とした。また、上記分解試験前の樹脂組成物のMwをGPCにて測定し、Mw0とする。重量平均分子量保持率は以下の式(xiv)で計算した。
重量平均分子量保持率(%) = [Mw1/Mw0]×100 (xiv)
以下、本実施例で使用する化合物を説明する。
<水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)>
水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)として、NatureWorks LLC製「NW3001D」(Mwは15万、カルボキシル基濃度は24.1当量/ton)を用いた。
<加水分解調整剤(D成分)>
加水分解調整剤(D成分)として、以下の添加剤を使用した。
D1:製造例1に挙げるカルボジイミド化合物CC1
D2:「カルボジライト(登録商標)」LA−1(カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル株式会社製)
D3:DIPC(カルボジイミド化合物、川口化学工業(株)製)
D4:「セロキサイド(登録商標)」2021P(エポキシ化合物、株式会社ダイセル製)
D5:BOX−210(オキサゾリン化合物、竹本油脂(株)製)
各加水分解調整剤(D成分)の酸性基との反応性は表3に記載した。酸性基との反応性が30%以上のものを○と判定し、実施例に使用した。また、それ以外のものは×と判定し、比較例に使用した。なお、反応性の値がマイナスとなる場合には0と表記し、×と判定した。
[製造例4]加水分解調整剤(D1)の合成:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、ジ−tert−ブチルシカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記式にて示す化合物(CC1:MW=516)を得た。CC1の構造はNMR、IRにより確認した。
[実施例10、11]
C1とD1とを表4に記載の重量部で混合し、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を使用して、窒素雰囲気下、樹脂温度200℃、回転数30rpmで2分間溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、100℃の15%塩酸水中での分解試験を行った。試験結果については、表4に示した。
[実施例12〜14]
D1をD2およびD4に変更した以外は、実施例 と同様に表5に記載の重量部で混合して樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表5に示した。
[比較例10]
C1をそのまま用い、実施例1と同様の方法で評価した。評価結果については、表4に示した。
[比較例11〜12]
D1をD3およびD5に変更した以外は、実施例10と同様に表3に記載の重量部で混合して樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表4に示した。
[実施例15〜19、比較例13〜15]
試験温度を100℃から120℃に変更した以外は、実施例10〜14および比較例10〜12と同様にして表4に記載の組成で樹脂組成物を作製し、同様の方法で評価した。評価結果については、表4に示した。
また、酸性基との反応性を満足していないD3、D5を使用した場合、樹脂組成物の分解が速く、十分な性能が得られないことが分かる。
Claims (18)
- 水溶性モノマーを主成分とする自触媒作用を有する樹脂(A成分)と加水分解調整剤(B成分)とを含有する樹脂組成物であって、下記A1〜A3のいずれかを満たす樹脂組成物。
A1:135℃から160℃の任意の温度の熱水中において、3時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A2:160℃から180℃の任意の温度の熱水中において、2時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
A3:180℃から220℃の任意の温度の熱水中において、1時間後に樹脂組成物由来の酸性基が30当量/ton以下かつ樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。 - B成分は120℃における耐水性が95%以上かつ190℃における酸性基との反応性が50%以上である請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
- 135℃から220℃の任意の温度の熱水中において、100時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が10%以下である請求の範囲第1項または第2項記載の樹脂組成物。
- 樹脂組成物の熱変形温度が135℃〜300℃である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の樹脂組成物。
- A成分はポリエステルである請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の樹脂組成物。
- A成分は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とにより形成されたステレオコンプレックス相を含む請求の範囲第6項記載の樹脂組成物。
- B成分は、カルボジイミド化合物である請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の樹脂組成物。
- B成分は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである請求の範囲第9項記載の樹脂組成物。
- 請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
- 請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる繊維。
- 水溶性モノマーを主成分とする脂肪族ポリエステル(C成分)と100℃の15%塩酸水溶液中における酸性基との反応性が30%以上である加水分解調整剤(D成分)とを有する樹脂組成物であって、下記J1〜J2のいずれかを満たす樹脂組成物。
J1:100℃の15%塩酸水溶液において、6時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。
J2:120℃の15%塩酸水溶液において、1時間後に樹脂組成物の重量平均分子量保持率が50%以上かつ24時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が50%以下。 - 72時間後に樹脂組成物の非水溶分の重量が1%以下である請求の範囲第14項記載の樹脂組成物。
- A成分は、主鎖が主として下記式(1)で表される乳酸単位からなる請求の範囲第14項または第15項に記載の樹脂組成物。
- 加水分解調整剤(D成分)は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第14項から第16項のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求の範囲第14項〜第17項のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
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