以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側および下側とし、逆に図の上側を他方側および上側として定義する。
第1実施形態の緩衝器は、減衰力調整式である。第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆる複筒式の油圧緩衝器である。本実施形態に係る緩衝器は、作動流体としての油液が封入される円筒状のシリンダ11と、このシリンダ11よりも大径でシリンダ11を覆うように同心状に設けられる有底円筒状の外筒12とを有している。これらシリンダ11と外筒12との間にリザーバ室13が形成されている。
シリンダ11内には、ピストン15が摺動可能に嵌装されている。このピストン15は、シリンダ11内を上室16と下室17との2室に区画している。シリンダ11内の上室16および下室17内には油液が封入され、シリンダ11と外筒12との間のリザーバ室13内には油液とガスとが封入される。
シリンダ11内には、一端がシリンダ11の外部へと延出されるピストンロッド18の他端が挿入されている。ピストン15は、このピストンロッド18のシリンダ11内の他端部に連結されている。ピストンロッド18は、シリンダ11および外筒12の一端開口部に装着されたロッドガイド21と、外筒12の一端開口部に装着されたオイルシール22とに挿通されてシリンダ11の外部へ延出されている。ロッドガイド21は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、下部においてシリンダ11の上端の内周部に嵌合し上部において外筒12の上部の内周部に嵌合する。シリンダ11の下端の内周部は、外筒12の底部に設けられてシリンダ11内の下室17とリザーバ室13とを画成するベースバルブ23に嵌合されている。外筒12の上端部は、内側に加締められており、オイルシール22およびロッドガイド21をシリンダ11とで挟持している。
ピストンロッド18は、ロッドガイド21およびオイルシール22に挿通されて外部へと延出されるロッド本体26と、ロッド本体26のシリンダ11内の端部に螺合されて一体的に連結される先端ロッド27とから構成されている。ロッド本体26の径方向の中央には、軸方向に沿う挿入穴28が、先端ロッド27側から反対側の端部近傍の途中位置まで形成されている。また、先端ロッド27の径方向の中央には、軸方向に沿う貫通穴29が形成されている。これら挿入穴28と貫通穴29とがピストンロッド18の挿入穴30を構成している。この挿入穴30内に、ベースバルブ23側に支持されたメータリングピン31が挿入されている。挿入穴30とメータリングピン31との間はピストンロッド18内で油液が流動可能なロッド内通路(第2の通路)32となっている。
ピストンロッド18のロッド本体26の外周側には、ピストン15側に円環状のピストン側バネ受35が、ピストン側バネ受35のピストン15とは反対側に円環状のロッドガイド側バネ受36が、それぞれ設けられている。これらピストン側バネ受35およびロッドガイド側バネ受36は、ロッド本体26を内側に挿通させることでロッド本体26に沿って摺動可能となっている。これらピストン側バネ受35およびロッドガイド側バネ受36の間には、コイルスプリングからなるリバウンドスプリング38が、その内側にロッド本体26を挿通させるようにして介装されている。ロッドガイド側バネ受36のリバウンドスプリング38とは反対には円環状の弾性材料からなる緩衝体39が設けられている。緩衝体39もロッド本体26を内側に挿通させることでロッド本体26に沿って摺動可能となっている。
この緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、他方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド18にて車体側に連結され、外筒12の底部の外側に取り付けられた取付アイ40にて車輪側に連結される。なお、これとは逆に緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。
図2に示すように、ロッド本体26の先端ロッド27側の端部には、挿入穴28よりも大径で挿入穴28に連通するネジ穴43が形成されている。
先端ロッド27のロッド内通路32を形成する貫通穴29は、ロッド本体26側の大径穴部47と、ロッド本体26とは反対側の、大径穴部47よりも小径の小径穴部48とから構成されている。先端ロッド27には、ロッド本体26側から順に、通路穴49、通路穴50および通路穴51が、いずれも径方向に貫通するように形成されている。これら通路穴49〜51は、いずれも先端ロッド27の軸方向の大径穴部47の位置に形成されている。
先端ロッド27は、軸方向のロッド本体26側から順に、ネジ軸部55と、フランジ部56と、保持軸部57と、中間軸部58と、取付軸部59とを有している。ネジ軸部55は、ロッド本体26のネジ穴43に螺合される。その際にロッド本体26を当接させるため、フランジ部56は、ネジ軸部55およびロッド本体26よりも大径の外径となっている。保持軸部57は、フランジ部56よりも小径となっており、軸方向のフランジ部56とは反対側の部分にオネジ61が形成されている。保持軸部57のオネジ61よりもフランジ部56側には、上記した通路穴49が形成されている。中間軸部58は、保持軸部57のオネジ61の谷径よりも若干小径の外径となっている。取付軸部59は、中間軸部58よりもさらに小径となっている。取付軸部59の、軸方向の中間軸部58とは反対側の端部に、オネジ62が形成されている。取付軸部59には、オネジ62よりも中間軸部58側の範囲に、中間軸部58側に位置して上記した通路穴50が形成されており、オネジ62側に位置して上記した通路穴51が形成されている。
ピストン側バネ受35は、円筒状部65と、円筒状部65の軸方向一端側から径方向外側に延出する当接フランジ部66と、当接フランジ部66の外周部から軸方向の円筒状部65とは反対側に若干突出する円筒状の突出部67とを有している。このピストン側バネ受35は、円筒状部65をリバウンドスプリング38の内側に配置した状態で当接フランジ部66においてリバウンドスプリング38の軸方向の端部に当接する。
ピストン側バネ受35と先端ロッド27のフランジ部56との間には、伝達部材71とウエーブバネ72とが介装されている。伝達部材71は、円環状をなしており、ウエーブバネ72よりもピストン側バネ受35側に配置されている。伝達部材71は、有孔円板状の基板部75と、その外周縁部から軸方向に延出する筒状部76とを有している。筒状部76は基板部75とは反対側が大径となる段差状をなしており、その先端部の内周側に面取りが形成されることにより、筒状部76の先端部には他の部分よりも径方向に薄肉の当接部80が形成されている。
伝達部材71は、内側にロッド本体26を挿通させており、その基板部75が、ピストン側バネ受35の突出部67の内側に嵌合しつつ当接フランジ部66に当接するように構成されている。
ウエーブバネ72は、平面視で円環状をなしている。ウエーブバネ72は、自然状態では、図2の中心線から右側に示すように、径方向および周方向の少なくともいずれか一方の位置変化によって軸方向位置が変化する形状をなしている。ウエーブバネ72は、その内側にロッド本体26を挿通させるとともに伝達部材71の筒状部76の内側に配置されて、伝達部材71の基板部75のピストン側バネ受35とは反対側に配置されている。ウエーブバネ72は、軸方向に平坦となるように弾性変形させられることで付勢力を発生させる。ウエーブバネ72は、その軸方向両側にある先端ロッド27のフランジ部56と伝達部材71とを軸方向に所定距離離間させるように付勢する。
ここで、ピストンロッド18がシリンダ11から突出する伸び側つまり上側に移動すると、ピストンロッド18の先端ロッド27のフランジ部56とともに、ウエーブバネ72、伝達部材71、ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39が、ロッドガイド21側に移動し、所定位置で緩衝体39がロッドガイド21に当接する。
さらにピストンロッド18が突出方向に移動すると、緩衝体39が潰れた後、緩衝体39およびロッドガイド側バネ受36が、シリンダ11に対して停止状態となる。その結果、移動する先端ロッド27の図2に示すフランジ部56、ウエーブバネ72、伝達部材71およびピストン側バネ受35がリバウンドスプリング38を縮長させ、その際のリバウンドスプリング38の付勢力がピストンロッド18の移動に対して抵抗となる。このようにして、シリンダ11内に設けられたリバウンドスプリング38が、ピストンロッド18に弾性的に作用してピストンロッド18の伸び切りを抑制する。なお、このようにリバウンドスプリング38がピストンロッド18の伸び切りの抵抗となることで、搭載された車両の旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑える。
ここで、ピストンロッド18が突出方向に移動して図1に示す緩衝体39がロッドガイド21に当接すると、上記したようにピストン側バネ受35がロッドガイド側バネ受36との間でリバウンドスプリング38を縮長させる前に、図2の中心線から左側に示すように、ピストンロッド18のフランジ部56が伝達部材71とでウエーブバネ72をその付勢力に抗して押し潰す。これにより、伝達部材71を若干軸方向のフランジ部56側に移動させる。
図3に示すように、先端ロッド27のフランジ部56の軸方向のピストン側バネ受35とは反対側には、フランジ部56側から順に、複数枚のディスク85と、開閉ディスク(弁部)86と、複数枚の中間ディスク87と、当接ディスク88と、通路形成部材89と、介在部90と、ナット91とが設けられている。
複数枚のディスク85は、いずれも有孔円板状をなしており、伝達部材71の筒状部76の内径よりも小径の外径となっている。開閉ディスク86は、有孔円板状をなしており、伝達部材71の筒状部76の外径と略同径の外径となっている。開閉ディスク86の外周側には、軸方向の一面から軸方向他側に凹み軸方向の他面から軸方向他側に突出する円環状の開閉部93が形成されている。開閉部93は伝達部材71の当接部80と同径となっている。
複数枚の中間ディスク87は、いずれも有孔円板状をなしており、開閉ディスク86よりも小径の外径となっている。また、当接ディスク88側の中間ディスク87の外周側には、複数の切欠87Aが設けられている。当接ディスク88は、有孔円板状をなしており、開閉ディスク86と同径の外径となっている。当接ディスク88の径方向中間部には、C字状の貫通孔88Aが形成されている。通路形成部材89は、有孔円板状をなしており、当接ディスク88よりも小径の外径となっている。通路形成部材89の内周側には複数の切欠89Aが設けられている。介在部90は複数枚の有孔円板状の部材からなり、通路形成部材89よりも大径の外径となっている。中間ディスク87、当接ディスク88および通路形成部材89には、中間ディスク87の径方向外側つまり上室16を通路穴49に連通させる通路96が形成されている。通路96は、中間ディスク87の外周部に形成された上記の切欠87Aと、当接ディスク88の径方向中間位置に形成された上記の貫通孔88Aと、通路形成部材89の内周部に形成された上記の切欠89Aとからなっている。
上記した複数枚のディスク85と、開閉ディスク86と、複数枚の中間ディスク87と、当接ディスク88と、通路形成部材89と、介在部90とが、それぞれの内側に保持軸部57を挿通させるようにして先端ロッド27に配置され、この状態でナット91がそのメネジ97においてオネジ61に螺合される。これにより、複数枚のディスク85、開閉ディスク86、複数枚の中間ディスク87、当接ディスク88、通路形成部材89および介在部90が、先端ロッド27のフランジ部56とナット91とに軸方向に挟持される。
図3の中心線から右側に示すように、伝達部材71がウエーブバネ72の付勢力で先端ロッド27のフランジ部56から軸方向に離間した状態では、当接部80を開閉ディスク86の開閉部93から離間させており、よって、開閉部93を当接ディスク88から離間させている。ここで、開閉ディスク86の開閉部93と当接ディスク88との隙間と、中間ディスク87、当接ディスク88および通路形成部材89の通路96とがオリフィス98を構成しており、このオリフィス98と、先端ロッド27の通路穴49とが、上室16とロッド内通路32とを連通させる通路(第2の通路)99を構成している。
図3の中心線から左側に示すように、リバウンドスプリング38の付勢力により伝達部材71が基板部75をフランジ部56側に移動させてウエーブバネ72を押し潰すと、その当接部80が開閉ディスク86の開閉部93に当接して開閉部93を当接ディスク88に当接させる。これにより、オリフィス98を閉塞させて上室16とロッド内通路32との通路99を介する連通を遮断する。
伝達部材71、ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39は、シリンダ11内に設けられ一端が図3に示す開閉ディスク86と当接可能であって他端がシリンダ11の端部側の図1に示すロッドガイド21に当接可能なバネ機構100を構成している。このバネ機構100は、図3に示すように、そのバネ力により開閉ディスク86をウエーブバネ72の付勢力に抗して閉弁方向に付勢する。そして、このバネ機構100と、オリフィス98を開閉する開閉ディスク86および当接ディスク88とが、ピストンロッド18の位置により変化するリバウンドスプリング38の付勢力に応じてオリフィス98つまり通路99の通路面積を調整する通路面積調整機構101を構成している。オリフィス98は、言い換えれば通路面積が可変の可変オリフィスになっている。
上記通路面積調整機構101による、緩衝器のストローク位置に対するオリフィス98の通路面積は、図4に示す実線のようになっている。つまり、オリフィス98の通路面積は、縮み側の全ストローク範囲および伸び側の所定位置S3までは、中立位置(1Gの位置(水平位置に停止した車体を支持する位置))を含んで最大の一定値であり、伸び側の所定位置S3でバネ機構100がウエーブバネ72の付勢力に抗して開閉ディスク86を閉じ始めると、伸び側ほど比例的に小さくなり、開閉ディスク86の開閉部93が当接ディスク88に当接する所定位置S4で最小となり、所定位置S4よりも伸び側では最小の一定値になる。
図2に示すように、ピストン15は、先端ロッド27に支持されるピストン本体105と、ピストン本体105の外周面に装着されてシリンダ11内を摺動する円環状の摺動部材106とによって構成されている。
ピストン本体105には、上室16と下室17とを連通させ、ピストン15の上室16側への移動つまり伸び行程において上室16から下室17に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1の通路)111と、ピストン15の下室17側への移動、つまり縮み行程において下室17から上室16に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1の通路)112とが設けられている。通路111は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路112を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン15の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
そして、これら半数の通路111に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構114が設けられている。減衰力発生機構114は、ピストン15の軸方向の一端側である下室17側に配置されている。通路111は、ピストンロッド18がシリンダ11外に伸び出る伸び側にピストン15が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成している。これらに対して設けられた減衰力発生機構114は、伸び側の通路111の油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
また、残りの半数を構成する通路112は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路111を挟んで等ピッチで形成されている。通路112は、ピストン15の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
そして、これら残り半数の通路112に、減衰力を発生する減衰力発生機構115が設けられている。減衰力発生機構115は、ピストン15の軸方向の他端側である軸線方向の上室16側に配置されている。通路112は、ピストンロッド18がシリンダ11内に入る縮み側にピストン15が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成している。これらに対して設けられた減衰力発生機構115は、縮み側の通路112の油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン本体105は、略円板形状をなしており、その中央には、軸方向に貫通して、上記した先端ロッド27の取付軸部59を挿通させるための挿通穴116が形成されている。ピストン本体105の下室17側の端部には、伸び側の通路111の一端開口位置の外側に、減衰力発生機構114を構成するシート部117が、円環状に形成されている。ピストン本体105の上室16側の端部には、縮み側の通路112の一端開口位置の外側に、減衰力発生機構115を構成するシート部118が、円環状に形成されている。
ピストン本体105において、シート部117の挿通穴116とは反対側は、シート部117よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路112の他端が開口している。また、同様に、ピストン本体105において、シート部118の挿通穴116とは反対側は、シート部118よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路111の他端が開口している。
伸び側の減衰力発生機構114は、圧力制御型のバルブ機構である。減衰力発生機構114は、軸方向のピストン15側から順に、複数枚のディスク121と、減衰バルブ本体122と、複数枚のディスク123と、シート部材124と、複数枚のディスク125と、バルブ規制部126とを有している。
シート部材124は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部131と、底部131の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側円筒状部132と、底部131の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側円筒状部133とを有している。底部131は、内側円筒状部132および外側円筒状部133に対し軸方向の一側にずれており、底部131には、軸方向に貫通する複数の貫通孔134が形成されている。内側円筒状部132の内側には、軸方向の底部131側に先端ロッド27の取付軸部59を嵌合させる小径穴部135が形成されており、軸方向の底部131とは反対側に小径穴部135より大径の大径穴部136が形成されている。シート部材124の外側円筒状部133には、その軸方向の底部131側の端部に、環状のシート部137が形成されている。このシート部137に複数枚のディスク125が着座する。
シート部材124の底部131と内側円筒状部132と外側円筒状部133とで囲まれた軸方向の底部131とは反対側の空間と、シート部材124の貫通孔134とは、減衰バルブ本体122にピストン15の方向に圧力を加えるパイロット室(第2の通路)140となっている。先端ロッド27の上記した通路穴51と、シート部材124の大径穴部136と、後述するディスク123に形成されたオリフィス151とが、ロッド内通路32とパイロット室140とに接続されて、このパイロット室140にロッド内通路32を介して上室16および下室17から油液を導入可能なパイロット室流入通路(第2の通路)141を構成している。
複数枚のディスク121は、ピストン15のシート部117よりも小径の外径を有する有孔円板状をなしている。減衰バルブ本体122は、ピストン15のシート部117に着座可能な有孔円板状のディスク145と、ディスク145のピストン15とは反対の外周側に固着されたゴム材料からなる円環状のシール部材146とから構成されている。減衰バルブ本体122とピストン15のシート部117とが、ピストン15に設けられた通路111とシート部材124に設けられたパイロット室140との間に設けられてピストン15の伸び側への移動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰バルブ147を構成している。よって、この減衰バルブ147はディスクバルブとなっている。なお、ディスク145には、ピストンロッド18の取付軸部59を挿通させる中央の孔以外に軸方向に貫通する部分は形成されていない。
減衰バルブ本体122のシール部材146は、シート部材124の外側円筒状部133の内周面に接触して、減衰バルブ本体122と外側円筒状部133との隙間をシールする。よって、減衰バルブ本体122とシート部材124との間の上記したパイロット室140は、減衰バルブ本体122に、ピストン15の方向つまりシート部117に当接する閉弁方向に内圧を作用させる。減衰バルブ147は、パイロット室140を有するパイロットタイプの減衰バルブであり、減衰バルブ本体122がピストン15のシート部117から離座して開くと、通路111からの油液をピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17に流す。
複数枚のディスク123は、ディスク145よりも小径の有孔円板状をなしており、そのうちのシート部材124側のものには開口部からなるオリフィス151が形成されている。上記したように、このオリフィス151によってシート部材124の大径穴部136内とパイロット室140とが連通する。
複数枚のディスク125は、シート部材124のシート部137に着座可能な有孔円板状をなしている。複数枚のディスク125とシート部137とが、シート部材124に設けられたパイロット室140と下室17との間の油液の流れを抑制するディスクバルブ153を構成している。複数枚のディスク125のうちのシート部137側のものには、シート部137と当接状態にあってもパイロット室140を下室17に連通させる開口部からなるオリフィス154が形成されている。ディスクバルブ153は、複数枚のディスク125がシート部137から離座することでオリフィス154よりも広い通路面積でパイロット室140を下室17に連通させる。バルブ規制部126は、複数の円環状の部材からなっており、複数枚のディスク125に当接してその開方向への規定以上の変形を規制する。
縮み側の減衰力発生機構115も、伸び側と同様、圧力制御型のバルブ機構である。減衰力発生機構115は、軸方向のピストン15側から順に、複数枚のディスク181と、減衰バルブ本体182と、複数枚のディスク183と、シート部材184と、複数枚のディスク185と、バルブ規制部186とを有している。
シート部材184は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部191と、底部191の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側円筒状部192と、底部191の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側円筒状部193とを有している。底部191は、内側円筒状部192および外側円筒状部193に対し軸方向の一側にずれており、底部191には、軸方向に貫通する複数の貫通孔194が形成されている。内側円筒状部192の内側には、軸方向の底部191側に先端ロッド27の取付軸部59を嵌合させる小径穴部195が形成されており、軸方向の底部191とは反対側に小径穴部195より大径の大径穴部196が形成されている。外側円筒状部193には、その軸方向の底部191側の端部に、環状のシート部197が形成されており、このシート部197に複数枚のディスク185が着座する。
シート部材184の底部191と内側円筒状部192と外側円筒状部193とで囲まれた底部191とは反対側の空間と貫通孔194とは、減衰バルブ本体182にピストン15の方向に圧力を加えるパイロット室(第2の通路)200となっている。先端ロッド27の上記した通路穴50と、シート部材184の大径穴部196と、後述するディスク183に形成されたオリフィス211とが、ロッド内通路32とパイロット室200とに接続されて、このパイロット室200にロッド内通路32を介して上室16および下室17から油液を導入可能なパイロット室流入通路(第2の通路)201を構成している。
複数枚のディスク181は、ピストン15のシート部118よりも小径の外径を有する有孔円板状をなしている。 減衰バルブ本体182は、ピストン15のシート部118に着座可能な有孔円板状のディスク205と、ディスク205のピストン15とは反対の外周側に固着されたゴム材料からなる円環状のシール部材206とからなっている。減衰バルブ本体182とピストン15のシート部118とが、ピストン15に設けられた通路112とシート部材184に設けられたパイロット室200との間に設けられてピストン15の縮み側へ移動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰バルブ207を構成している。よって、この減衰バルブ207はディスクバルブとなっている。なお、ディスク205には、ピストンロッド18の取付軸部59を挿通させる中央の孔以外に軸方向に貫通する部分は形成されていない。
シール部材206は、シート部材184の外側円筒状部193の内周面に接触して、減衰バルブ本体182とシート部材184の外側円筒状部193との隙間をシールする。よって、減衰バルブ本体182とシート部材184の間の上記したパイロット室200は、減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に、ピストン15の方向つまりシート部118に当接する閉弁方向に内圧を作用させる。減衰バルブ207は、パイロット室200を有するパイロットタイプの減衰バルブである。減衰バルブ本体182がピストン15のシート部118から離座して開くと、通路112からの油液をピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16に流す。
複数枚のディスク183は、ディスク205よりも小径の有孔円板状をなしており、そのうちのシート部材184のものには開口部からなるオリフィス211が形成されている。このオリフィス211によって、上記したように、シート部材184の大径穴部196内とパイロット室200とが連通する。
複数枚のディスク185は、シート部材184のシート部197に着座可能な有孔円板状をなしている。複数枚のディスク185とシート部197とが、シート部材184に設けられたパイロット室200と、上室16との間の油液の流れを抑制するディスクバルブ213を構成している。複数枚のディスク185のうちのシート部197側のものには、シート部197と当接状態にあってもパイロット室200を上室16に連通させる開口部からなるオリフィス214が形成されている。ディスクバルブ213は、複数枚のディスク185がシート部197から離座することでオリフィス214よりも広い通路面積でパイロット室200を上室16に連通させる。バルブ規制部186は、複数の円環状の部材からなっており、複数枚のディスク185に当接してその開方向への規定以上の変形を規制する。
先端ロッド27の先端のオネジ62には、ナット220が螺合されている。ナット220は、オネジ62に螺合されるメネジ221が内周部に形成されるとともに外周部にレンチ等の締結工具が装着される本体部222と、本体部222の軸方向一端側から径方向内方に延出する内フランジ部223とを有している。
ナット220は、その本体部222の内フランジ部223とは反対側をバルブ規制部126側にして先端ロッド27に螺合される。ナット220は、締め付けられると、バルブ規制部126、複数枚のディスク125、シート部材124、複数枚のディスク123、減衰バルブ本体122、複数枚のディスク121、ピストン15、複数枚のディスク181、減衰バルブ本体182、複数枚のディスク183、シート部材184、複数枚のディスク185およびバルブ規制部186のそれぞれの内周側を、先端ロッド27の中間軸部58の取付軸部59側の段面225との間に挟持する。
メータリングピン31は、図1に示すように、ベースバルブ23に支持される支持フランジ部230と、支持フランジ部230よりも小径で支持フランジ部230から軸方向に延出する大径軸部232と、大径軸部232の支持フランジ部230とは反対側から軸方向に延出するテーパ軸部233と、テーパ軸部233の大径軸部232とは反対側から軸方向に延出する小径軸部234とを有している。大径軸部232は一定径であり、図2に示すように、小径軸部234は大径軸部232よりも小径の一定径である。テーパ軸部233は、大径軸部232の小径軸部234側の端部に連続するとともに小径軸部234の大径軸部232側の端部に連続しており、これらを繋ぐように小径軸部234側ほど小径となるテーパ状をなしている。
メータリングピン31は、ナット220の内フランジ部223の内側と、ピストンロッド18の貫通穴29と挿入穴28とからなる挿入穴30に挿入されている。メータリングピン31は、ピストンロッド18との間にロッド内通路32を形成している。ナット220の内フランジ部223とメータリングピン31との隙間は、ロッド内通路32と下室17とを連通させるオリフィス(第2の通路)235となっている。このオリフィス235は、大径軸部232が内フランジ部223と軸方向位置を合わせると通路面積が最も狭くなって実質的に油液の流通を規制する状態となる。また、オリフィス235は、小径軸部234が内フランジ部223と軸方向位置を合わせると通路面積が最も広くなり、油液の流通を許容する状態となる。さらに、オリフィス235は、テーパ軸部233が内フランジ部223と軸方向位置を合わせると、テーパ軸部233の小径軸部234側ほど通路面積が徐々に広くなるように構成されている。ナット220はピストンロッド18と一体に移動することから、ナット220の内フランジ部223とメータリングピン31とが、ピストンロッド18の位置によりオリフィス235の通路面積を調整する通路面積調整機構236を構成しており、オリフィス235は、ピストンロッド18の位置に応じて通路面積が変化する可変オリフィスになっている。通路面積調整機構236は、言い換えれば、オリフィス235の通路面積をメータリングピン31により調整する。
上記通路面積調整機構236による、緩衝器のストローク位置に対するオリフィス235の通路面積は、図4に示す破線のようになっている。つまり、オリフィス235の通路面積は、縮み側の所定位置S1よりも縮み側では、内フランジ部223と大径軸部232とが軸方向位置を合わせることになって最小の一定値となり、所定位置S1から中立位置を挟んで伸び側の所定位置S2までは内フランジ部223とテーパ軸部233とが軸方向位置を合わせることになって伸び側ほど比例的に大きくなり、この所定位置S2から伸び側では内フランジ部223と小径軸部234とが軸方向位置を合わせることになって最大の一定値となる。
図1に示すように、外筒12の底部とシリンダ11との間には、上記したベースバルブ23が設けられている。このベースバルブ23は、下室17とリザーバ室13とを仕切る略円板状のベースバルブ部材241と、このベースバルブ部材241の下側つまりリザーバ室13側に設けられるディスク242と、ベースバルブ部材241の上側つまり下室17側に設けられるディスク243と、ベースバルブ部材241にディスク242およびディスク243を取り付ける取付ピン244と、ベースバルブ部材241の外周側に装着される係止部材245と、メータリングピン31の支持フランジ部230を支持する支持板246とを有している。取付ピン244は、ディスク242およびディスク243の径方向中央側をベースバルブ部材241との間で挟持する。
ベースバルブ部材241は、径方向の中央に取付ピン244が挿通されるピン挿通孔248が、このピン挿通孔248の外側に、下室17とリザーバ室13との間で油液を流通させる複数の通路穴249が、これら通路穴249の外側に、下室17とリザーバ室13との間で油液を流通させる複数の通路穴250が、それぞれ形成されている。リザーバ室13側のディスク242は、下室17から内側の通路穴249を介してリザーバ室13への油液の流れを許容する一方でリザーバ室13から下室17への内側の通路穴249を介しての油液の流れを規制する。ディスク243は、リザーバ室13から外側の通路穴250を介して下室17への油液の流れを許容する一方で下室17からリザーバ室13への外側の通路穴250を介しての油液の流れを規制する。
ディスク242は、ベースバルブ部材241とによって、縮み行程において開弁して下室17からリザーバ室13に油液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ252を構成している。ディスク243は、ベースバルブ部材241とによって、伸び行程において開弁してリザーバ室13から下室17内に油液を流すサクションバルブ253を構成している。なお、サクションバルブ253は、ピストン15に設けられた縮み側の減衰力発生機構115との関係から、主としてピストンロッド18のシリンダ11への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室17からリザーバ室13に実質的に減衰力を発生させることなく液を流す機能を果たす。
係止部材245は、筒状をなしており、その内側にベースバルブ部材241を嵌合させる。ベースバルブ部材241は、この係止部材245を介してシリンダ11の下端の内周部に嵌合している。係止部材245のピストン15側の端部には径方向内側に延出する係止フランジ部255が形成されている。支持板246は、外周部が係止フランジ部255のピストン15とは反対側に係止され、内周部がメータリングピン31の支持フランジ部230のピストン15側に係止されている。これにより、係止部材245および支持板246がメータリングピン31の支持フランジ部230を取付ピン244に当接する状態に保持する。
以上の構成の第1実施形態の油圧回路図は図5に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に並列に、伸び側の減衰力発生機構114および縮み側の減衰力発生機構115が設けられており、ロッド内通路32が、リバウンドスプリング38で制御されるオリフィス98を介して上室16に連通するとともにメータリングピン31で制御されるオリフィス235を介して下室17に連通している。そして、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140が、ロッド内通路32にオリフィス151を介して連通し、縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200が、ロッド内通路32にオリフィス211を介して連通している。
第1実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲では、緩衝体39がロッドガイド21に当接し、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100が縮長している。これにより、図2および図3のいずれも中心線から左側に示すように、通路面積調整機構101が、バネ機構100の伝達部材71によってウエーブバネ72を押し潰して開閉ディスク86を当接ディスク88に当接させて通路99を閉塞させる。また、この最大長側所定範囲では、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の小径軸部234の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235の通路面積を最大にする。この最大長側所定範囲では、ロッド内通路32が上記オリフィス235を介して下室17に連通し、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200とが、オリフィス235、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141,201を介して共に下室17に連通する。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、オリフィス235、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141を介して下室17に連通しているため、下室17に近い圧力状態となって、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部117から離れるように開いて、ピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室200は、オリフィス235、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路201を介して下室17に連通しているため、下室17に近い圧力状態となり、下室17の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室200の圧力上昇が下室17の圧力上昇に追従可能であるため、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が小さくなり、シート部118から離れにくい状態になる。よって、下室17からの油液は、オリフィス235、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路201からパイロット室200を通り、ディスクバルブ213の複数枚のディスク185のオリフィス214を介して上室16に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が上記より速い時でも、減衰バルブ本体182がシート部118から離れにくい状態であり、下室17からの油液は、オリフィス235、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路201からパイロット室200を通り、ディスクバルブ213の複数枚のディスク185を開きながら、シート部197と複数枚のディスク185との間を通って上室16に流れ、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がる。以上により、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて高くなり、縮み側減衰力がハードの状態となる。
なお、最大長側所定範囲の縮み行程であっても、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等において、ピストン速度がさらに高速の領域になると、パイロット室200の圧力上昇が下室17の圧力上昇に追従できなくなり、縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する差圧による力の関係は、ピストン15に形成された通路112から加わる開方向の力がパイロット室200から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この領域では、ピストン速度の増加に伴い減衰バルブ207が開いて減衰バルブ本体182がシート部118から離れる、ディスクバルブ213のシート部197と複数枚のディスク185との間を通る上室16への流れに加え、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16に油液を流すため、減衰力の上昇を抑えることになる。このときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がほとんどない。よって、ピストン速度が速く周波数が比較的高い、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等において、上記のようにピストン速度の増加に対する減衰力の上昇を抑えることで、ショックを十分に吸収する。
以上、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲は、図6の位置S4よりも伸び側(図6の右側)の範囲であり、図6に実線で示すように伸び側減衰力がソフトの状態となり、図6に破線で示すように縮み側減衰力がハードの状態となる最大長側特性となる。図7に実線で示すように、ピストン速度が遅い場合も速い場合も、伸び側減衰力がソフトの状態となり且つ縮み側減衰力がハードの状態となる最大長側特性となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、リバウンドスプリング38が縮長せず、図2および図3の中心線から右側に示すように、通路面積調整機構101は、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100により押圧されずに開閉ディスク86を当接ディスク88から離間させて通路99のオリフィス98の通路面積を最大にする。また、最小長側所定範囲では、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の大径軸部232の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235を閉塞させる。この最小長側所定範囲では、ロッド内通路32が上記通路99を介して上室16に連通し、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200とが、ロッド内通路32を介して共に上室16に連通する。
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、通路99、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141を介して上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となり、上室16の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室140の圧力上昇が上室16の圧力上昇に追従可能であるため、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が小さくなり、シート部117から離れにくい状態になる。よって、上室16からの油液は、通路99およびロッド内通路32およびパイロット室流入通路141からパイロット室140を通り、ディスクバルブ153の複数枚のディスク125のオリフィス154を介して下室17に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が上記より速い時でも、減衰バルブ本体122がシート部117から離れることなく、上室16からの油液は、通路99、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141からパイロット室140を通り、ディスクバルブ153の複数枚のディスク125を開きながら、シート部137と複数枚のディスク125との間を通って、下室17に流れ、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がることになる。以上により、伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室200は、通路99、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路201を介して上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となり、パイロット圧が下がることになる。よって、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部118から離れるように開いて、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16側に油液を流す。 以上により、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて減衰力が低くなり、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
以上、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲は、図6の位置S1よりも縮み側(図6の左側)の範囲であり、図6に実線で示すように伸び側減衰力がハードの状態となり、図6に破線で示すように縮み側減衰力がソフトの状態となる最小長側特性となる。図7に破線で示すように、ピストン速度が遅い場合も速い場合も、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる最小長側特性となる。また、例えば中立位置にあるとき、図7に伸び側を二点鎖線で、縮み側を破線で示すように、ピストン速度が遅い場合も速い場合も、伸び側減衰力がミディアムの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる。
第1実施形態の緩衝器は、以上に述べた位置感応の減衰力変化特性が得られる。
上記した特許文献1,2に記載のものは、位置感応型の緩衝器であるが、ピストンに形成された通路を開閉するディスクバルブにスプリングのバネ荷重を直接負荷して開弁圧を上げるようになっており、伸び側の位置と、縮み側の位置とで、減衰力を調整できるようにするためには、スプリングが伸び側と縮み側とで2つ必要となってしまう。また、減衰力可変幅を大きくとるためには、バネレートを高くする必要があるが、バネレートを高くすれば、バネ反力の作用も大きくなり、減衰力の変化が急激になるだけでなく、ピストンロッド18のストロークが小さくなり、搭載車両の乗り心地が悪くなってしまう。 また、減衰力可変幅を大きくし、反力を小さくする設定は出来ず、緩衝器の特性を自由に設計できないという問題があった。
これに対して、以上に述べた第1実施形態によれば、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲で、伸び側減衰力がソフトの状態となり且つ縮み側減衰力がハードの状態となる最大長側特性と、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲で、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる最小長側特性とを、ピストンロッド18の位置によってオリフィス98の通路面積を調整する通路面積調整機構101と、ピストンロッド18の位置によってオリフィス235の通路面積を調整する通路面積調整機構236とで得ることができる。このように、油液が流通するオリフィス98,235の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。 また、設計段階においても、通路面積調整機構101においては、リバウンドスプリング38のバネレートは変えずに開閉ディスク86の特性や中間ディスク87の切欠87Aの面積を変えるのみで反力特性を殆ど変えずに減衰力特性を調整でき、また、通路面積調整機構236においては、メータリングピン31のプロフィールを変えることで、反力特性を変えずに減衰力特性を変えることができる。これにより、設計自由度も高まり、減衰特性のチューニングも容易に行うことができる。以下各実施の形態も同様の効果を有する。
また、上記最大長側特性および最小長側特性が得られることで、バネ上を加振する力を小さく(つまりソフト)し、バネ上を制振する力を大きく(つまりハード)することができ、電子制御なしでスカイフック制御のような上質の乗り心地が得られる。図8に搭載車両の悪路走行時の乗り心地の効果を説明するためのバネ上加速度を示す。図8に破線で示す位置感応の機能がない場合に対して、図8に実線で示す位置感応の機能を有する第1実施形態によれば、特に周波数がf1〜f2の範囲でバネ上加速度が下がっていることがわかる。これは、バネ上の動きが小さくなり、乗り心地が向上していることを示している。
また、伸び側の通路111に設けられた減衰バルブ147のパイロット室140と、縮み側の通路112に設けられた減衰バルブ207のパイロット室200とに、通路99、ロッド内通路32、パイロット室流入通路141、パイロット室流入通路201およびオリフィス235が接続されているため、通路面積調整機構101,236で減衰バルブ147,207のパイロット室140,200のパイロット圧を調整して減衰バルブ147,207の開弁圧を調整することになる。つまり、通路面積調整機構101,236は、ピストンロッド18の位置に感応して減衰バルブ147,207の開弁圧を調整することになる。したがって、減衰力をより滑らかに変化させることが可能となる。
また、通路面積調整機構236は、オリフィス235をメータリングピン31により調整するため、ピストンロッド18の位置に応じて通路面積を安定的に調整できる。したがって、安定した減衰力特性を得ることができる。
また、通路面積調整機構101は、シリンダ11内に設けられ一端が通路99を開閉する開閉ディスク86と当接可能であって他端がシリンダ11の端部側のロッドガイド21に当接可能なバネ機構100のバネ力で開閉ディスク86を閉弁方向に付勢するため、開閉ディスク86を閉弁方向に付勢するバネ機構100を、ピストンロッド18の伸び出しを規制する機構と兼用可能になる。
なお、メータリングピン31の径は上記のように、大径軸部232と小径軸部234との2段階に限られず、3段階以上としても良い。例えば、大径軸部232と小径軸部234との間に大径軸部232よりも小径かつ小径軸部234よりも大径の一定径の中径軸部を設ければ、ピストンロッド18が最大長側所定位置と最小長側所定位置との間の中間所定範囲にあるときに、以下の特性が得られる。
ピストンロッド18が中間所定範囲にあるとき、最小長側所定範囲と同様、通路面積調整機構101が、バネ機構100により押圧せずに開閉ディスク86を当接ディスク88から離間させて通路99の通路面積を最大にしているものの、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の中径軸部の軸方向位置に内フランジ部223を合わせていてオリフィス235の通路面積を最小長側所定範囲よりも広くする。この中間所定範囲では、パイロット室140およびパイロット室200の圧力は、最小長側所定範囲にあるときよりも下室17の圧力に近くなる。
よって、伸び行程では、パイロット室140の圧力が最小長側所定範囲よりも低くなるため、伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122が受ける差圧が最小長側所定範囲よりも大きくなり、減衰力が最小長側所定範囲にあるときのハードの状態よりは低いが最大長側所定範囲にあるソフトの状態よりは高いミディアムの状態になる。他方、縮み行程では、通路面積調整機構101が、通路99の通路面積を最大にしているため、最小長側所定範囲と同様、減衰力が低く、ソフトの状態となる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図9および図10に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態では、ピストンロッド18が一部相違している。第2実施形態のピストンロッド18は、第1実施形態のロッド本体26および先端ロッド27の様に分割されていない。また、外周側に第1実施形態のフランジ部56は形成されておらず、かわりに別体のフランジ部材270が加締めにより取り付けられている。さらに、メータリングピン31とでロッド内通路32を形成する挿入穴271が一定径で形成されていて、通路穴49,51は挿入穴271に連通している。なお、第1実施形態の通路穴50は形成されていない。
また、伝達部材71の筒状部76が軸方向に短く、第1実施形態の当接部80は形成されていない。また、基板部75とフランジ部材270との間にウエーブバネ72が介装されている。さらに、ピストン側バネ受35の円筒状の突出部67が、伝達部材71を越えてピストン15側まで延出しており、突出部67には径方向に貫通する通路穴272が複数形成されている。
加えて、第1実施形態の複数枚のディスク85、開閉ディスク86、複数枚の中間ディスク87、当接ディスク88、通路形成部材89、介在部90およびナット91は設けられていない。よって、ピストンロッド18には、ナット91を螺合させるオネジ61も形成されておらず、通路穴49と段面225との間の距離も短くなっている。
また、第1実施形態の縮み側の減衰バルブ本体182、複数枚のディスク183、シート部材184およびバルブ規制部186が設けられておらず、縮み側のディスク185が、ピストン15のシート部118に直接当接して通路112を開閉する。つまり、縮み側のディスク185とピストン15のシート部118とがディスクバルブ213を構成している。
そして、ピストンロッド18の段面225と、ディスク185のピストン15とは反対側との間に、押圧機構274が介装されている。この押圧機構274は、バネ受275とバネ受276とコイルスプリングからなる押圧バネ277とからなっている。
バネ受275は、円筒状部280と円筒状部280の軸方向の一端から径方向外方に延出するフランジ部281とを有している。バネ受275は、円筒状部280が、その内側にピストンロッド18の取付軸部59を挿通させた状態で、そのフランジ部281側の端部にて段面225に当接している。円筒状部280の外周部は、フランジ部281側の大径部282とフランジ部281とは反対側の小径部283とからなっており、小径部283は大径部282よりも小径となっている。
バネ受276は、円筒状部286と、円筒状部286の軸方向の一端から径方向外方に延出するフランジ部287とを有しており、フランジ部287には、径方向の中間位置に円環状をなして軸方向の円筒状部286とは反対側に突出する凸状部288が形成されている。バネ受276は、フランジ部287をピストン15側に向けた状態で、円筒状部286において、バネ受275の小径部283に嵌合しており、この小径部283の範囲内で軸方向に移動可能となっている。
押圧バネ277は、バネ受275のフランジ部281と、バネ受276のフランジ部287との間に介装されており、バネ受276を凸状部288において、ディスクバルブ213のディスク185にピストン15とは反対側から当接させる。また、ディスク185からピストン15とは反対方向の力を受けると、バネ受276は、押圧バネ277の付勢力に抗してバネ受275の小径部283を摺動してディスク185のシート部118から離れる方向への変形を許容する。
ピストンロッド18が突出方向に所定値以上移動すると、第1実施形態と同様、バネ機構100がリバウンドスプリング38を縮長させながらピストン側バネ受35をピストン15の方向に移動させることになるが、その前に、図9の中心線から左側に示すように、ピストンロッド18に固定されたフランジ部材270が伝達部材71とでウエーブバネ72をその付勢力に抗して押し潰すことになり、これにより、伝達部材71およびピストン側バネ受35を若干軸方向のフランジ部材270側に移動させる。これにより、ピストン側バネ受35の円筒状の突出部67が、バネ受276のフランジ部287に当接する。これにより、バネ機構100のリバウンドスプリング38の付勢力がディスクバルブ213のディスク185に閉弁方向に直接作用することになる。また、バネ機構100の付勢力が解除されると、ウエーブバネ72の付勢力によって図9の中心線から右側に示すように、伝達部材71およびピストン側バネ受35が若干軸方向のフランジ部材270とは反対側に移動する。これにより、バネ機構100のリバウンドスプリング38の付勢力がディスクバルブ213のディスク185に作用することがなくなる。
以上の構成の第2実施形態の油圧回路図は図10に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に、第1実施形態と同様の伸び側の減衰力発生機構114と、縮み側のディスクバルブ213とが並列で設けられている。そして、第1実施形態と同様に伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140がロッド内通路32にオリフィス151を介して連通する一方、縮み側のディスクバルブ213にリバウンドスプリング38の付勢力が作用するようになっている。
第2実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲では、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100が縮長している。これにより、バネ機構100のピストン側バネ受35が、伝達部材71を介してウエーブバネ72をバネ受276との間で押し潰しており、ディスクバルブ213のディスク185を閉弁方向に付勢する。また、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の小径軸部234の軸方向位置に内フランジ部223を合わせており、オリフィス235の通路面積を最大とする。この最大長側所定範囲では、ロッド内通路32がオリフィス235を介して下室17に連通することになり、他方で、ピストンロッド18のオリフィスとしての通路穴49を介して上室16に連通する。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、オリフィス235、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141を介して下室17に連通するとともにロッド内通路32、ピストンロッド18の通路穴49およびピストン側バネ受35の通路穴272を介して上室16に連通しているため、これらの中間の圧力状態となって、パイロット圧が下がることになる。よって、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部117から離れるように開いて、ピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213のディスク185に作用する。このとき、バネ機構100がバネ受276を介してディスク185にシート部118の方向への付勢力を作用させているため、ディスクバルブ213が開弁しにくくなり、縮み側減衰力が伸び行程の伸び側減衰力に比べて高くなり、ハードの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、リバウンドスプリング38が縮長せず、ディスクバルブ213のディスク185は、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100により押圧されない状態となる。また、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の大径軸部232の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235を閉塞させる。この最小長側所定範囲では、ロッド内通路32がピストンロッド18の通路穴49を介して上室16に連通することになり、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140が、ロッド内通路32を介して上室16のみに連通する。
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、ピストンロッド18の通路穴49、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141を介して上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となり、上室16の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、第1実施形態と同様、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が小さくなり、シート部117から離れにくい状態になる。これにより、伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213のディスク185に作用する。このとき、ディスク185は、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100により押圧されない状態であるため、シート部118から離れ易くなり、縮み側の通路112の油液が、押圧機構274のバネ受276を押圧バネ277の付勢力に抗して移動させながらディスク185を開き、ピストン15とディスク185との隙間を介して上室16側に流れる。これにより、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて減衰力が低くなり、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
以上に述べた第2実施形態の緩衝器によれば、位置感応の縮み側の減衰力特性を低コストで得ることができる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図11および図12に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態では、ピストンロッド18が一部相違している。第3実施形態のピストンロッド18は、第2実施形態の通路穴49,51が形成されていない。これらにかえて、取付軸部59に挿入穴271内に開口するオリフィスとしての通路穴291が径方向に沿って形成されている。また、第3実施形態のピストンロッド18には、通路穴291とオネジ62との間の外周部に、軸方向に延びる通路溝292が形成されている。
また、第3実施形態では、第2実施形態の伝達部材71およびウエーブバネ72が設けられておらず、ピストン側バネ受35に、第2実施形態の突出部67は形成されていない。さらに、第2実施形態の押圧機構274も設けられていない。加えて、伸び側の減衰バルブ本体122、複数枚のディスク123、シート部材124およびバルブ規制部126が設けられておらず、伸び側の複数枚のディスク125が、ピストン15のシート部117に直接当接して通路111を開閉する。つまり、伸び側のディスク125とピストン15のシート部117とがディスクバルブ153を構成している。
また、第3実施形態では、ピストン側バネ受35のピストン15側に伝達部材295が設けられている。この伝達部材295は、円筒状部296とその軸方向の中間部から径方向内方に突出する円環状の内フランジ部297とを有しており、内フランジ部297の内周部にピストンロッド18を嵌合させている。これにより、伝達部材295は、ピストンロッド18の外周面に沿って摺動する。円筒状部296のピストン15側の端部にはピストン15側に突出する突起部298が複数形成されている。円筒状部296の軸方向の突起部298とは反対側の端部には径方向に貫通する通路溝299が形成されている。また、内フランジ部297には軸方向に貫通する通路穴300が複数形成されている。伝達部材295は、円筒状部296の軸方向の突起部298とは反対側の端部において、ピストン側バネ受35の当接フランジ部66に当接するようになっている。
また、第3実施形態では、ピストンロッド18の取付軸部59側の段面225とディスク185との間に、段面225側から順に、段面225に当接する複数の円環状の部材からなる介在部303、逆止弁機構305、有孔円板状の開閉ディスク(弁部)306、有孔円板状の中間ディスク307、有孔円板状の当接ディスク308、有孔円板状のベース部材309および複数の円環状の部材からなるバルブ規制部310が設けられている。
逆止弁機構305は、伝達部材295の円筒状部296の内側に配置されるもので、軸方向から順に、シート部材313と、弁ディスク314と、通路形成部材315と、蓋部316とを有している。シート部材313は、有孔円板状の基板部317と基板部317の外周部から軸方向一側に突出する円筒状部318とからなっており、基板部317には、軸方向に貫通する通路穴319が複数形成されている。弁ディスク314は基板部317に対し当接および離間して通路穴319を閉塞および開放することになり、弁ディスク314および基板部317が逆止弁320を構成している。逆止弁320は、通路穴319が上室16内に開口するように配置されることになり、上室16側からの油液の流れのみを許容するものである。つまり、逆止弁320は、伸び側の逆止弁となっており、よって、逆止弁機構305も、伸び側の逆止弁機構となっている。通路形成部材315には、径方向に貫通する通路穴321が複数形成されており、これら通路穴321がピストンロッド18の通路穴291に連通している。蓋部316は、複数の有孔円板状の部材からなっており、シート部材313の円筒状部318の基板部317とは反対側に当接して、シート部材313内に内部通路322を画成する。
逆止弁機構305の内部通路322と、通路形成部材315の通路穴321と、ピストンロッド18の通路穴291と、ロッド内通路32と、オリフィス235とが、上室16と下室17とを連通させる通路(第2の通路)323を構成する。よって、メータリングピン31がオリフィス235を開閉することで、上室16と下室17とを連通させる通路323を開閉する。
開閉ディスク306は、伝達部材295の突起部298に当接可能な外径となっている。中間ディスク307は、開閉ディスク306よりも小径の外径となっている。当接ディスク308は、開閉ディスク306と同径の外径となっている。ベース部材309は、当接ディスク308よりも若干大径の外径となっている。中間ディスク307、当接ディスク308およびベース部材309には、中間ディスク307の径方向外側をピストンロッド18の通路溝292に連通させる通路324が形成されている。通路324は、中間ディスク307の外周部に形成された切欠部と、当接ディスク308の内周部に形成された切欠部と、ベース部材309の内周部の当接ディスク308側に形成された溝部とからなっている。バルブ規制部310は、縮み側の複数枚のディスク185に当接してその開方向への規定以上の変形を規制する。
また、第3実施形態では、ピストンロッド18の取付軸部59のディスク125とナット220との間に、ナット220側から順に、複数の円環状の部材からなる介在部325および逆止弁機構327が設けられている。
逆止弁機構327は、軸方向から順に、シート部材329と、弁ディスク330と、通路形成部材331と、蓋部333とを有している。シート部材329は、有孔円板状の基板部334と基板部334の外周部から軸方向一側に突出する円筒状部335とからなっており、基板部334には、軸方向に貫通する通路穴336が複数形成されている。弁ディスク330は基板部334に対し当接および離間して通路穴336を閉塞および開放することになり、弁ディスク330および基板部334が逆止弁337を構成している。逆止弁337は、通路穴336が下室17内に開口するように配置されることになり、下室17側からの油液の流れのみを許容するものである。つまり、逆止弁337は、縮み側の逆止弁となっており、よって、逆止弁機構327も、縮み側の逆止弁機構となっている。通路形成部材331には、径方向に貫通する通路穴338が複数形成されており、これら通路穴338がピストンロッド18の通路溝292に連通している。蓋部333は、複数の有孔円板状の部材からなっており、シート部材329の円筒状部335の基板部334とは反対側に当接して、シート部材329内に内部通路341を画成する。
上記した開閉ディスク306は、当接ディスク308から離間した状態では、伝達部材295を介してピストン側バネ受35をフランジ部材270から軸方向に離間させている。開閉ディスク306と当接ディスク308との隙間がオリフィス340を構成している。このオリフィス340と、中間ディスク307、当接ディスク308およびベース部材309の通路324と、ピストンロッド18の通路溝292と、通路形成部材331の通路穴338と、逆止弁機構327の内部通路341とが、上室16と下室17とを連通させる通路(第2の通路)342を構成する。
リバウンドスプリング38を含むバネ機構100の付勢力により、そのピストン側バネ受35がフランジ部材270に当接するように移動すると、ピストン側バネ受35に当接する伝達部材295が開閉ディスク306を当接ディスク308に当接させることになり、オリフィス340を閉塞させて、オリフィス340を含む通路342を介する上室16と下室17との連通を遮断する。
伝達部材295、ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39は、シリンダ11内に設けられ一端が開閉ディスク306と当接可能であって他端がシリンダ11の端部側のロッドガイド21に当接可能なバネ機構100を構成している。このバネ機構100は、図11に示すように、そのバネ力により開閉ディスク306を閉弁方向に付勢する。そして、このバネ機構100と、オリフィス340を開閉する開閉ディスク306および当接ディスク308とが、ピストンロッド18の位置により変化するリバウンドスプリング38の付勢力に応じてオリフィス340つまり通路342の通路面積を調整する通路面積調整機構343を構成している。オリフィス340は、言い換えれば通路面積が可変の可変オリフィスになっている。
以上の構成の第3実施形態の油圧回路図は図12に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に並列に、伸び側のディスクバルブ153および縮み側のディスクバルブ213が設けられており、ロッド内通路32が、メータリングピン31で制御されるオリフィス235を介して下室17に連通するとともに、オリフィスとしての通路穴291および逆止弁320を介して上室16に連通している。また、リバウンドスプリング38で制御されるオリフィス340の下室17側に逆止弁337が設けられている。
第3実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲では、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100が縮長している。これにより、通路面積調整機構343が、バネ機構100の伝達部材295によって開閉ディスク306を当接ディスク308に当接させてオリフィス340を閉塞させる。また、最大長側所定範囲では、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の小径軸部234の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235の通路面積を最大とし、ロッド内通路32を下室17に連通させる。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、伝達部材295の通路溝299および通路穴300を介して伸び側の逆止弁機構305の通路穴319から弁ディスク314の一方側に上室16側の圧力が作用し、下室17からオリフィス235、ロッド内通路32、通路穴291および通路穴321を介して弁ディスク314の他方側に下室17側に近い圧力が作用し、弁ディスク314の差圧が大きくなる。よって、弁ディスク314が比較的容易に基板部317から離座して逆止弁320が開き、通路穴321、通路穴291、ロッド内通路32およびオリフィス235を介して下室17側に油液が流れる。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213のディスク185に作用する。ディスク185には他方で上室16側の圧力が作用しているものの、ディスク185は逆止弁320の弁ディスク314よりも剛性が高いため、容易にはピストン15のシート部118から離座せず、上記した伸び行程よりも減衰力は上がる。つまり、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて高くなり、縮み側減衰力がハードの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、リバウンドスプリング38が縮長せず、通路面積調整機構343は、開閉ディスク306を当接ディスク308から離間させてオリフィス340の通路面積を最大にするとともに、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の大径軸部232の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235を閉塞させる。この最小長側所定範囲では、オリフィス340、通路324、通路溝292および通路穴338を介して縮み側の逆止弁機構327の内部通路341に連通する。
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側のディスクバルブ153のディスク125に作用する。ディスク125には他方で下室17側の圧力が作用しているものの、ディスク125の剛性が高いため、容易にはピストン15のシート部117から離座せず、減衰力は上がる。つまり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、縮み側の逆止弁機構327の通路穴336から弁ディスク330の一方側に下室17側の圧力が作用し、オリフィス340、通路323、通路溝292、通路穴338を介して他方側に上室16側の圧力が作用する。逆止弁337の弁ディスク330は、ディスクバルブ153のディスク125よりも剛性が低いため、容易に基板部334から離座して、通路穴336から内部通路341、通路穴338、通路溝292、通路323およびオリフィス340つまり通路342を介して上室16に流れることになり、上記した伸び行程よりも減衰力は下がる。つまり、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて低くなり、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
以上に述べた第3実施形態の緩衝器によれば、上室16と下室17とを連通させる通路323が、逆止弁320が設けられた伸び側の内部通路322を有しており、上室16と下室17とを連通させる通路342が、逆止弁337が設けられた縮み側の内部通路341を有しているため、逆止弁320,337を用いて伸び側減衰力および縮み側減衰力を容易にソフトの状態にできる。
なお、第3実施形態において縮み側の逆止弁機構327および通路面積調整機構343をなくしても良い。このように構成すれば、最大長側所定範囲では、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となり、最小長側所定範囲では、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる特性が得られる。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に図13および図14に基づいて第2,第3実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2,第3実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第4実施形態のピストンロッド18は、第3実施形態の通路溝292が形成されていない。また、第2実施形態のバネ機構100、ウエーブバネ72および押圧機構274が用いられており、押圧機構274とピストンロッド18の段面225との間に第3実施形態の伸び側の逆止弁機構305が設けられている。加えて、第3実施形態と同様にディスク125がピストン15のシート部117に直接当接して伸び側のディスクバルブ153を構成している。さらに、第3実施形態の縮み側の逆止弁機構327は設けられていない。
以上の構成の第4実施形態の油圧回路図は図14に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に並列に、伸び側のディスクバルブ153および縮み側のディスクバルブ213が設けられており、ロッド内通路32が、メータリングピン31で制御されるオリフィス235を介して下室17に連通するとともに、オリフィスとしての通路穴291および逆止弁320を介して上室16に連通している。加えて、第2実施形態と同様、縮み側のディスクバルブ213にリバウンドスプリング38の付勢力が作用するようになっている。
第4実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲では、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100が縮長している。これにより、バネ機構100は、ピストン側バネ受35によって伝達部材71を介してフランジ部材270とでウエーブバネ72を押し潰し、突出部67をバネ受276に当接させて、ディスクバルブ213のディスク185を閉弁方向に付勢する。また、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の小径軸部234の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235の通路面積を最大とする。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、ピストン側バネ受35の通路穴272を介して伸び側の逆止弁機構305の通路穴319から弁ディスク314の一方側に上室16側の圧力が作用し、下室17からオリフィス235、ロッド内通路32、通路穴291および通路穴321を介して弁ディスク314の他方側に下室17側に近い圧力が作用し、弁ディスク314の差圧が大きくなる。よって、弁ディスク314が比較的容易に基板部317から離座して逆止弁320が開き、通路穴321、通路穴291、ロッド内通路32およびオリフィス235を介して下室17側に油液が流れる。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213のディスク185に作用する。このとき、バネ機構100がピストン側バネ受35を介してディスク185にシート部118の方向への付勢力を作用させているため、ディスクバルブ213が開弁しにくくなり、縮み側減衰力が伸び行程の伸び側減衰力に比べて高くなり、ハードの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、リバウンドスプリング38が縮長せず、ディスクバルブ213のディスク185は、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100により押圧されない状態となる。また、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の大径軸部232の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235を閉塞させる。
この最小長側所定範囲にあるとき、伸び行程では、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側のディスクバルブ153の、一方から下室17の圧力が作用するディスク125に他方から作用することになってディスク125の差圧が大きくなり、縮み行程では、下室17の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213の、一方から上室16の圧力が作用するディスク185に他方から作用することになってディスク185の差圧が大きくなり、いずれも減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力および縮み側減衰力の両方がソフトの状態となる。
第4実施形態によれば、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲で、伸び側減衰力がソフトの状態となり且つ縮み側減衰力がハードの状態となり、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となる特性を、ピストンロッド18の位置によりオリフィス235の通路面積を調整する通路面積調整機構236で得ることができる。このように、油液が流通するオリフィス235の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態を主に図15および図16に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第5実施形態では、第1実施形態のメータリングピン31は設けられておらず、ピストンロッド18が一部相違している。第5実施形態のピストンロッド18は、第1実施形態のロッド本体26および先端ロッド27の様に分割されていない。また、外周側に第1実施形態のフランジ部56は形成されておらず、かわりに第2実施形態と同様の別体のフランジ部材270が加締めにより取り付けられている。さらに、ピストンロッド18には、第1実施形態の挿入穴30および通路穴49〜51は形成されておらず、取付軸部59の外周部に軸方向に沿って、ロッド内通路(第2の通路)500を構成する通路溝501が周方向に間隔をあけて複数形成されている。この通路溝501に、減衰力発生機構114,115のオリフィス151,211が開口している。
また、ベースバルブ23(図15では図示略、図1参照)からコイルスプリングからなる縮み側スプリング502が延びている。また、この縮み側スプリング502のピストン15側の端部にバネ受503が嵌合している。バネ受503は、縮み側スプリング502に嵌合する円筒状部504と、縮み側スプリング502の端部に当接する当接フランジ部505とを有している。
また、ピストン側バネ受35に第1実施形態の突出部67および円筒状部65は形成されておらず有孔円板状をなしている。ピストン側バネ受35のピストン15側に、第1伝達体508、第2伝達体509および介在部510が一体化されてなる伝達部材511が設けられている。伝達部材511はバネ機構100を構成している。
第1伝達体508は、円筒状部513とその軸方向の中間部から径方向内方に突出する円環状の内フランジ部514とを有しており、円筒状部513の軸方向の内フランジ部514とは反対側の端部には径方向に貫通する通路溝515が形成されている。
第2伝達体509は、円筒状部518と、円筒状部518の軸方向の端部から径方向外方に突出する円環状の段状部519と、段状部519の軸方向の円筒状部518とは反対側から径方向外方に突出する円環状の外フランジ部521とを有している。第2伝達体509は、円筒状部518の内周部にピストンロッド18を嵌合させており、円筒状部518の外周部を第1伝達体508の内フランジ部514の内周部に嵌合させている。第2伝達体509は、ピストンロッド18の外周面に沿って摺動する。外フランジ部521の軸方向の円筒状部518とは反対側の端面にはピストン15側に突出する突起部522が複数形成されている。
介在部510は、複数枚の有孔円板状の部材からなりは、第1伝達体508の円筒状部513と、第2伝達体509の外フランジ部521との間に介装されている。第1伝達体508は、円筒状部513の軸方向の通路溝515側の端部において、ピストン側バネ受35に当接するようになっている。
また、第5実施形態では、ピストンロッド18の取付軸部59側の段面225とバルブ規制部186との間に、段面225側から順に、段面225に当接する複数の円環状の部材からなる介在部525、第1実施形態と同様の複数枚のディスク85、開閉ディスク86、中間ディスク87および当接ディスク88が設けられている。第5実施形態では、開閉ディスク86に軸方向に突出する第1実施形態の開閉部93は形成されておらず、複数枚のディスク85が開閉ディスク86と同径となっている。また、オリフィス98を構成する通路96が、中間ディスク87および当接ディスク88に形成されており、この通路96がピストンロッド18のロッド内通路500に連通している。そして、複数枚のディスク85の当接ディスク88とは反対側に伝達部材511の突起部522が当接している。なお、ピストン15の両側の第1実施形態のディスク121,181は設けられておらず、ピストン15と減衰バルブ本体122,182との間に軸方向の隙間が形成されている。これにより、伝達部材511がピストンロッド18に対し軸方向に移動可能となり、開閉ディスク86を当接ディスク88に当接させることができるようになっている。
さらに、第5実施形態では、ピストンロッド18の取付軸部59に、バルブ規制部126のピストン15とは反対側から順に、上記した当接ディスク88と同様の当接ディスク528、上記した複数枚の中間ディスク87と同様の中間ディスク529、上記した開閉ディスク86と同様の開閉ディスク(弁部)530、上記した複数枚のディスク85と同様の複数枚のディスク531、複数の円環状の部材からなる介在部532、円環状のベース部材533およびナット220が設けられている。開閉ディスク530と当接ディスク528との隙間と、中間ディスク529および当接ディスク528に形成された上記通路96と同様の通路535とが、オリフィス98と同様のオリフィス(第2の通路)536を構成しており、通路535がピストンロッド18のロッド内通路500に開口している。オリフィス536は、ロッド内通路500と下室17とを連通させる。
ベース部材533には外周部に嵌合突起部540が形成されている。そして、ナット220を覆いつつこの嵌合突起部540に嵌合するように伝達体541が取り付けられている。伝達体541は円筒状部542とその一端を閉塞する蓋部543とを有しており、円筒状部542の軸方向の蓋部543とは反対側の内周部に形成された嵌合凹部544に上記したベース部材533の嵌合突起部540を嵌合させることで、ベース部材533と一体化されて伝達部材546となる。円筒状部542の軸方向の蓋部543とは反対側の端面にはピストン15側に突出する突起部545が複数形成されている。そして、複数枚のディスク531の当接ディスク528とは反対側に突起部545が当接している。なお、上記したピストン15と減衰バルブ本体122,182との間の軸方向の隙間によって伝達部材546がピストンロッド18に対し軸方向に移動可能となり、開閉ディスク530を当接ディスク528に当接させることができるようになっている。
縮み側スプリング502、バネ受503および伝達部材546は、バネ機構550を構成している。そして、このバネ機構550と、オリフィス536を開閉する開閉ディスク530および当接ディスク528とが、ピストンロッド18の位置により変化する縮み側スプリング502の付勢力に応じてオリフィス536の通路面積を調整する通路面積調整機構551を構成している。なお、ナット220には、第1実施形態の内フランジ部223は形成されていない。
以上の構成の第5実施形態の油圧回路図は図16に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に、第1実施形態と同様の伸び側の減衰力発生機構114と、縮み側の減衰力発生機構115とが並列で設けられている。そして、第1実施形態と同様に減衰力発生機構114,115のパイロット室140,200がロッド内通路500にオリフィス151,211を介して連通している。さらに、上室16とロッド内通路500との間のオリフィス98にリバウンドスプリング38の付勢力が作用し、下室17とロッド内通路500との間のオリフィス536に縮み側スプリング502の付勢力が作用している。
第5実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲では、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100が縮長している。これにより、通路面積調整機構101が、バネ機構100の伝達部材511の突起部522によって複数枚のディスク85を介して開閉ディスク86を押圧しオリフィス98を閉塞させる。この最大長側所定範囲では、ロッド内通路500がオリフィス536を介して下室17のみに連通することになり、減衰力発生機構114,115のパイロット室140,200が、オリフィス536、ロッド内通路500およびオリフィス151,211を介して下室17のみに連通する。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、オリフィス151、ロッド内通路500およびオリフィス536を介して下室17に連通しているため、下室17に近い圧力状態となって、パイロット圧が下がることになる。よって、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部117から離れるように開いて、ピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室200は、オリフィス211、ロッド内通路500およびオリフィス536を介して下室17に連通しているため、下室17に近い圧力状態となって、パイロット圧が上がることになる。よって、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が小さくなり、シート部118から離れにくくなり、開弁しにくくなる。これにより、縮み側減衰力が伸び行程の伸び側減衰力に比べて高くなり、ハードの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、バネ受503が伝達部材546に当接し、縮み側スプリング502を含むバネ機構550が縮長している。これにより、通路面積調整機構551が、伝達部材546の突起部545によって複数枚のディスク531を介して開閉ディスク530を押圧しオリフィス536を閉塞させる。この最小長側所定範囲では、ロッド内通路500がオリフィス98を介して上室16のみに連通することになり、減衰力発生機構114,115のパイロット室140,200が、オリフィス98、ロッド内通路500およびオリフィス151,211を介して上室16のみに連通する。
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、オリフィス151、ロッド内通路500およびオリフィス98を介して上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となり、上室16の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。この状態では、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が小さくなり、シート部117から離れにくい状態になる。これにより、伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧が、ピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室200は、オリフィス211、ロッド内通路500およびオリフィス98を介して上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となって、パイロット圧が下がることになる。よって、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部118から離れるように開いて、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16側に油液を流す。これにより、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて減衰力が低くなり、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
「第6実施形態」
次に、第6実施形態を主に図17および図18に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第6実施形態では、第2実施形態の伝達部材71、ウエーブバネ72および押圧機構274は設けられていない。さらに、図17では図示しない位置にフランジ部材270およびピストン側バネ受35が、ディスク185と離間するように設けられている。
そして、メータリングピン31の大径軸部232と小径軸部234との間に、大径軸部232より小径かつ小径軸部234より大径の一定径の中径軸部560が形成されており、大径軸部232と中径軸部560との間にテーパ軸部561が、中径軸部560と小径軸部234との間にテーパ軸部562が、それぞれ形成されている。テーパ軸部561は、大径軸部232の中径軸部560側の端部に連続するとともに中径軸部560の大径軸部232側の端部に連続しており、これらを繋ぐように中径軸部560側ほど小径となるテーパ状をなしている。テーパ軸部562は、中径軸部560の小径軸部234側の端部に連続するとともに小径軸部234の中径軸部560側の端部に連続しており、これらを繋ぐように小径軸部234側ほど小径となるテーパ状をなしている。
以上の構成の第6実施形態の油圧回路図は図18に示すようになっている。つまり、第2実施形態に対して、縮み側のディスクバルブ213にリバウンドスプリング38の付勢力が作用しないようになっている。
第6実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲であっても、図示略のリバウンドスプリングがディスクバルブ213のディスク185を閉弁方向に付勢することはない。他方、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の小径軸部234の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235の通路面積を最大とする。この最大長側所定範囲では、ロッド内通路32がオリフィス235を介して下室17に連通することになり、また、ピストンロッド18のオリフィスとしての通路穴49を介して上室16に連通する。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、パイロット室140の圧力が上室16と下室17との中間になり、第2実施形態と同様に、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213の、一方から上室16の圧力を受けるディスク185に他方から作用する。その結果、ディスク185の差圧が大きくなり、ディスクバルブ213が開弁し易くなり、縮み側減衰力もソフトの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の大径軸部232の軸方向位置に内フランジ部223を合わせてオリフィス235を閉塞させる。この最小長側所定範囲では、ロッド内通路32がピストンロッド18の通路穴49を介して上室16に連通することになり、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140が、ロッド内通路32を介して上室16のみに連通する。
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。このとき、第2実施形態と同様に、パイロット室140が上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となり、減衰バルブ本体122は、差圧が小さくなる。これにより、伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213の、一方から上室16の圧力を受けるディスク185に他方から作用する。その結果、ディスク185の差圧が大きくなり、ディスクバルブ213が開弁し易くなり、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
また、ピストンロッド18が最大長側所定位置と最小長側所定位置との間の中間所定範囲にあるときは、通路面積調整機構236が、メータリングピン31の中径軸部560の軸方向位置に内フランジ部223を合わせていてオリフィス235の通路面積を最小長側所定範囲よりも広く最大長側所定位置よりも狭くする。この中間所定範囲では、パイロット室140の圧力は、最小長側所定範囲にあるときよりも上室16の圧力に近くなる。
よって、伸び行程では、パイロット室140の圧力が最小長側所定範囲よりも高くなるため、伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122が受ける差圧がやや小さくなり、減衰力が最小長側所定範囲にあるときのハードの状態よりは低いが最大長側所定範囲にあるソフトの状態よりは高いミディアムの状態になる。他方、縮み行程では、最大長側所定位置および最小長側所定範囲と同様、減衰力が低く、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
以上の第6実施形態によれば、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲で、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となり、ピストンロッド18が最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる特性を、ピストンロッド18の位置によってオリフィス235の通路面積を調整する通路面積調整機構236で得ることができる。このように、作動流体が流通するオリフィス235の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。
なお、第6実施形態の通路面積調整機構236にかえて、第5実施形態の通路面積調整機構551を用いて、オリフィス536の通路面積を調整しても、最大長側所定範囲では、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となり、最小長側所定範囲では、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる特性が得られる。
「第7実施形態」
次に、第7実施形態を主に図19および図20に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第7実施形態では、ピストンロッド18が一部相違している。第7実施形態のピストンロッド18は、第1実施形態のロッド本体26および先端ロッド27の様に分割されていない。また、外周側に第1実施形態のフランジ部56は形成されておらず、かわりに第2実施形態と同様の別体のフランジ部材270が加締めにより取り付けられている。さらに、メータリングピン31も設けられておらず、ロッド内通路32を形成する挿入穴571が一定径で形成されている。通路穴49,50は挿入穴571に連通しており、第1実施形態の通路穴51は形成されていない。
また、第1実施形態の通路面積調整機構101は設けられておらず、リバウンドスプリング38がリバウンドスプリング本体572と補助スプリング573とに分割され、ピストン側バネ受35のピストン15とは反対側に、ピストンロッド18に摺動可能となるように中間バネ受575が設けられている。リバウンドスプリング本体572がロッドガイド側バネ受36(図19では図示略、図1参照)と中間バネ受575との間に介装され、補助スプリング573が中間バネ受575とピストン側バネ受35との間に介装されている。
中間バネ受575は、円筒状部576と、その軸方向の中間部から径方向に延出するフランジ部577とを有しており、円筒状部576の内周部においてピストンロッド18の外周部に摺接し、フランジ部577においてリバウンドスプリング本体572と補助スプリング573とに当接する。中間バネ受575は、リバウンドスプリング38を伸縮させながらピストンロッド18を摺動することで通路穴49内のオリフィス578の通路面積を可変とする。中間バネ受575を含むバネ機構100とオリフィス578とが、上室16と下室17とをロッド内通路32を介して連通させる通路の面積を調整する通路面積調整機構582を構成している。
加えて、第1実施形態の複数枚のディスク85、開閉ディスク86、複数枚の中間ディスク87、当接ディスク88、通路形成部材89、介在部90およびナット91は設けられていない。
また、第1実施形態の伸び側の減衰バルブ本体122、複数枚のディスク123およびシート部材124が設けられておらず、伸び側のディスク125が、ピストン15のシート部117に直接当接して通路111を開閉する。つまり、伸び側のディスク125とピストン15のシート部117とがディスクバルブ153を構成している。
そして、ナット220の内フランジ部223の内側が通路面積が一定のオリフィス580を構成している。
以上の構成の第7実施形態の油圧回路図は図20に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に、第1実施形態と同様の縮み側の減衰力発生機構115と、伸び側のディスクバルブ153とが並列で設けられている。そして、第1実施形態と同様に縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200がロッド内通路32にオリフィス211を介して連通するようになっている。ロッド内通路32は、リバウンドスプリング38により通路面積が可変となるオリフィス578を介して上室16に連通し、通路面積が一定のオリフィス580を介して下室17に連通している。
第7実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲であると、通路面積調整機構582のリバウンドスプリング38が縮長して中間バネ受575がオリフィス578を閉塞している。また、ロッド内通路32がナット220のオリフィス580を介して下室17に連通している。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側のディスクバルブ153の、一方から下室17の圧力が作用するディスク125に他方から作用する。これにより、ディスク125は容易に開き、これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室200は、オリフィス580を介して下室17に連通しているため、開きにくくなり、縮み側減衰力が伸び行程の伸び側減衰力に比べて高くなり、ハードの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最大長側所定範囲以外にある、中間所定範囲と最小長側所定位置よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲とでは、リバウンドスプリング38が縮長せず、中間バネ受575がオリフィス578を開放している。この最小長側所定範囲では、ロッド内通路32がピストンロッド18の通路穴49を介して上室16に連通するとともにオリフィス580を介して下室17に連通する。この状態では、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となる。
「第8実施形態」
次に、第8実施形態を主に図21〜図24に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第8実施形態では、第1実施形態の通路面積調整機構101および通路99は設けられていない。また、第1実施形態の縮み側の減衰バルブ本体182、複数枚のディスク183およびシート部材184が設けられておらず、縮み側のディスク185が、ピストン15のシート部118に直接当接して通路112を開閉する。つまり、縮み側のディスク185とピストン15のシート部118とがディスクバルブ213を構成している。
ナット220には、別体の保持部材610により円環状のシール部材611が保持されており、ナット220とメータリングピン31との隙間は常時閉塞されている。具体的にナット220には本体部222から軸方向に延出する筒状部612を有しており、この筒状部612の本体部222とは反対側に内フランジ部223が形成されている。この内フランジ部223には軸方向外側かつ内周側に保持穴部613が形成されており、この保持穴部613にシール部材611が嵌合されている。保持部材610は、筒状部612の外周部のオネジ614に螺合するメネジ615が形成された筒状部616と、筒状部616の軸方向の端部から径方向内方に広がる内フランジ部617とを有しており、保持穴部613のシール部材611の脱落を内フランジ部617によって規制する。よって、第8実施形態では、第1実施形態の通路面積調整機構236は設けられていない。加えて、メータリングピン31は、第1実施形態とは逆に、ベースバルブ23(図21では図示略、図1参照)側に小径軸部234が形成され軸方向のロッドガイド21(図21では図示略、図1参照)側に大径軸部232が形成され、これらの間にこれらを繋ぐようにテーパ軸部233が形成されている。
ピストンロッド18のロッド本体26に、ロッド内通路32を上室16に連通させるオリフィス(第2の通路)600を形成する通路穴601が形成されている。
そして、先端ロッド27の大径穴部47の小径穴部48とは反対側の端部には、嵌合穴部602が形成されており、この嵌合穴部602にリング部材603が圧入されている。このリング部材603は、内径が大径穴部47よりも小径となっており、ロッド内通路32に小径穴部604を形成する。この小径穴部604がメータリングピン31との間に、オリフィス605を構成しており、バネ機構100と、メータリングピン31と小径穴部604とが、ピストンロッド18の位置によりロッド内通路32の通路面積を調整する通路面積調整機構606を構成している。オリフィス605によってロッド内通路32は、オリフィス605よりも上室16側が通路部607となり、オリフィス605よりもパイロット室140側が通路部608となっている。
オリフィス605の通路面積は、図22に示すように、最大長側所定位置S12よりもシリンダ11の外部へ延出される伸び側の最大長側所定範囲では狭く、最小長側所定位置S11よりもシリンダ11の内部へ進入される縮み側の最小長側所定範囲では広くなる。
以上の構成の第8実施形態の油圧回路図は図23に示すようになっている。つまり、上室16および下室17の間に、第1実施形態と同様の伸び側の減衰力発生機構114と、縮み側のディスクバルブ213とが並列で設けられている。そして、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140がロッド内通路32の通路部608にオリフィス151を介して連通する。さらに、ロッド内通路32の通路部607,608の間に、メータリングピン31によって通路面積が可変となるオリフィス605が設けられ、通路部607と上室16との間にオリフィス600が設けられている。
第8実施形態の緩衝器は、ピストンロッド18が最大長側所定位置S12よりもシリンダ11の外部へ延出される最大長側所定範囲では、メータリングピン31の大径軸部232にピストンロッド18の小径穴部604が軸方向位置を合わせている。これにより、通路面積調整機構606が、ロッド内通路32の通路部608つまりパイロット室140の、上室16への連通を規制している。
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、上室16への連通が規制されているため、パイロット圧は変化しない。よって、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が大きくなり、容易にはシート部117から離れることができ、これにより、図24に示すように減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213の、一方から上室16の圧力を受けているディスク185に他方から作用する。これにより、差圧が大きくなり、ディスクバルブ213が開弁し易くなり、縮み側減衰力も低く、図24に示すようにソフトの状態となる。
他方、ピストンロッド18が最小長側所定位置S11よりもシリンダ11の内部へ進入される最小長側所定範囲では、メータリングピン31の小径軸部234にピストンロッド18の小径穴部604が軸方向位置を合わせる。これにより、通路面積調整機構606が、オリフィス605の通路面積を広げ、ロッド内通路32を介してパイロット室140を上室16へ連通させることになる。
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の外部へ延出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、ピストンロッド18の通路穴601、ロッド内通路32およびパイロット室流入通路141を介して上室16に連通しているため、上室16に近い圧力状態となり、上室16の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、第1実施形態と同様、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が小さくなり、シート部117から離れにくい状態になる。これにより、図24に示すように伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド18がシリンダ11の内部へ進入される縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の通路112を介して縮み側のディスクバルブ213の、一方で上室16の圧力を受けるディスク185に他方から作用する。よって、ディスク185の差圧が高くなり、シート部118から離れ易くなり、縮み側の通路112の油液が、ディスク185を開き、ピストン15とディスク185との隙間を介して上室16側に流れる。これにより、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて減衰力が低くなり、図24に示すように縮み側減衰力がソフトの状態となる。
「第9実施形態」
次に、第9実施形態を主に図25に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第9実施形態では、上述した第1実施形態から第8実施形態に示す緩衝器と並列に車高を調整する機構を配するよう構成している。図25に概略的に示すように、第9実施形態のサスペンション装置700は、車体701と車輪702との間に配置されて、車輪702を車体701に対し上下動可能に支持するものである。このサスペンション装置700は、1つの車輪702に上述した第1実施形態から第8実施形態に示す何れかの緩衝器703及び車高調整機構704が設けられており、図25では図示は略すが四つ全ての車輪702それぞれに緩衝器703および車高調整機構704の二本が設けられている。なお、車高調整機構704は全ての車輪に設けるのではなく、後輪側だけに用いるようにしてもよい。
以上の構成の第9実施形態では、上述した第1実施形態から第8実施形態に示す緩衝器703を、中立位置(1Gの位置(水平位置に停止した車体を支持する位置))の付近から位置の変化に敏感に感応するよう調整する。つまり、図6においてS1からS4の間にある1G位置での傾きを大きくするようにすると、乗車人員や積載荷重による車高の変化により乗り心地や操縦安定性への影響が大きくなる。そこで、図25に示すように上述した第1実施形態から第8実施形態に示す緩衝器703と並列に車高を調整する車高調整機構701を配するよう構成する。車高調整機構704を緩衝器703と並列に配置することにより、車高調整機構704で乗車人員や積載荷重に係わらず中立位置に保つことができ、緩衝器703の特徴を維持することができる。なお、車高調整機構704としては、例えば、特開2010−120580に示すようなコンプレッサからの圧縮空気を利用し、圧縮空気の供給量を調整することにより車高を調整するエアサスペンションや、例えば特開2009−180355に示されるように、車高の変化に応じて車両を本来の高さに調整するポンピング機能を備えたセルフレベライザ等を用いる。
以上に述べた実施形態によれば、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記2室間を作動流体が流れるように連通する第1の通路および第2の通路と、前記第1の通路に設けられ、前記ピストンの移動によって生じる前記作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、を備え、前記ピストンロッドが最大長側所定位置よりも前記シリンダの外部へ延出される範囲で、伸び側減衰力がソフトの状態となり且つ縮み側減衰力がハードの状態となる最大長側特性、および、前記ピストンロッドが最小長側所定位置よりも前記シリンダの内部へ進入される範囲で、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となる最小長側特性のうちの少なくともいずれか一方の特性となるよう、前記ピストンロッドの位置により前記第2の通路の通路面積を調整する通路面積調整機構を設けた。このように、作動流体が流通する第2の通路の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。
また、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記2室間を作動流体が流れるように連通する第1の通路および第2の通路と、前記第1の通路に設けられ、前記ピストンの移動によって生じる前記作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、を備え、前記ピストンロッドが最大長側所定位置よりも前記シリンダの外部へ延出される範囲では、伸び側減衰力がソフトの状態となり且つ縮み側減衰力がハードの状態となり、前記ピストンロッドが最小長側所定位置よりも前記シリンダの内部へ進入される範囲では、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となるよう、前記ピストンロッドの位置により前記第2の通路の通路面積を調整する通路面積調整機構を設けた。このように、作動流体が流通する第2の通路の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。
また、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記2室間を作動流体が流れるように連通する第1の通路および第2の通路と、前記第1の通路に設けられ、前記ピストンの移動によって生じる前記作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、を備え、前記ピストンロッドが最大長側所定位置よりも前記シリンダの外部へ延出される範囲では、伸び側減衰力および縮み側減衰力がともにソフトの状態となり、前記ピストンロッドが最小長側所定位置よりも前記シリンダの内部へ進入される範囲では、伸び側減衰力がハードの状態となり且つ縮み側減衰力がソフトの状態となるよう、前記ピストンロッドの位置により前記第2の通路の通路面積を調整する通路面積調整機構を設けた。このように、作動流体が流通する第2の通路の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。
また、前記減衰バルブは、伸び側および縮み側の減衰バルブであって、伸び側および縮み側の少なくとも一方の減衰バルブは、パイロット室を有するパイロットタイプの減衰バルブであり、前記第2の通路は、前記パイロット室に接続されている。これにより、減衰バルブのパイロット室のパイロット圧を、ピストンロッドの位置に応じて通路面積調整機構で調整して減衰バルブの開弁圧を調整することができる。したがって、減衰力をより滑らかに変化させることが可能となる。
また、前記通路面積調整機構は、前記第2の通路をメータリングピンにより調整する。これにより、ピストンロッドの位置に応じて通路面積を安定的に調整できる。したがって、安定した減衰力特性を得ることができる。
また、前記通路面積調整機構は、前記第2の通路を開閉する弁部と、前記シリンダ内に設けられ一端が前記弁部と当接可能であって他端が前記シリンダ端部側に当接可能なバネ機構からなり、該バネ機構のバネ力により前記弁部を閉弁方向に付勢する。これにより、弁部を閉弁方向に付勢するバネ機構を、ピストンロッドの伸び出しを規制する機構と兼用可能になる。
また、前記第2の通路は、逆止弁を有する伸び側および縮み側の少なくとも一方の通路を有する。これにより、逆止弁を用いて伸び側減衰力および縮み側減衰力の少なくとも一方を容易にソフトの状態にできる。
上記各実施の形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ11内の下室17の上室16とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。勿論、上記したベースバルブ23に本発明を適用することも可能である。また、シリンダ11の外部にシリンダ11内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合にも適用可能である。
なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。