以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1から図7に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側および下側とし、図の上側を他方側および上側として定義する。
第1実施形態に係る緩衝器1は、減衰力調整式である。第1実施形態に係る緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒式の油圧緩衝器である。第1実施形態に係る緩衝器1は、シリンダ10を有する。シリンダ10は、円筒状の内筒11と有底円筒状の外筒12とを有する。内筒11は、作動流体としての油液が封入される。外筒12は、内筒11よりも大径で内筒11を覆うように同心状に設けられる。これら内筒11と外筒12との間にはリザーバ室13が形成されている。
内筒11内には、ピストン15が摺動可能に嵌装されている。このピストン15は、内筒11内を上室16と下室17との2室に区画している。内筒11内の上室16および下室17内には油液が封入されている。リザーバ室13内には油液とガスとが封入される。
内筒11内には、第一端部がシリンダ10の外部へと延出するピストンロッド18の第二端部が挿入されている。ピストン15は、シリンダ10内に挿入されたピストンロッド18の第二端部に連結されている。ロッドガイド21は、内筒11および外筒12の第一端開口部に装着されている。オイルシール22は、外筒12の第一端開口部に装着されている。ピストンロッド18は、ロッドガイド21と、オイルシール22とに挿通されてシリンダ10の外部へ延出されている。
ロッドガイド21は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差形状を有する。ロッドガイド21は、下部において内筒11の上端の内周部に嵌合し、上部において外筒12の上部の内周部に嵌合する。ベースバルブ23は、外筒12の底部に設けられて内筒11内の下室17とリザーバ室13とを画成する。内筒11の下端の内周部は、ベースバルブ23に嵌合されている。外筒12の上端部は、径方向内側に加締められている。オイルシール22およびロッドガイド21は、外筒12の上端部と内筒11とで挟持されている。
ピストンロッド18は、ロッド本体25と、先端ロッド26と、ナット27とを有している。ロッド本体25は、ロッドガイド21およびオイルシール22に挿通されて外部へと延出する。先端ロッド26は、ロッド本体25のシリンダ10内側の端部に螺合されて一体的に連結される。ナット27は、ロッド本体25とは反対側に位置する先端ロッド26の端部(図1の下側の端部。)に螺合されて一体的に連結される。
ロッド本体25の径方向の中央には、軸方向に沿う挿入穴28が、先端ロッド26側の端部(図1の下側。以下、「第二端部」と記載することがある。)から反対側の端部(図1の上側。以下、「第一端部」と記載することがある。)近傍の途中位置まで形成されている。また、先端ロッド26の径方向の中央には、軸方向に沿う貫通穴29が形成されている。これら挿入穴28と貫通穴29とがピストンロッド18の挿入穴30を構成している。よって、ピストンロッド18は中空に形成されている。メータリングピン31は、第二端側がベースバルブ23側に支持されている。ピストンロッド18の挿入穴30内には、メータリングピン31の中間部および第二端側が挿入されている。挿入穴30とメータリングピン31との間は、ピストンロッド18内で油液が流動可能なロッド内連通路(連通路)32が形成されている。
ピストンロッド18のロッド本体25の外周側には、ピストン15側に円環状のピストン側バネ受35が設けられ、ピストン側バネ受35のピストン15とは反対側に円環状のロッドガイド側バネ受36が設けられている。これらピストン側バネ受35およびロッドガイド側バネ受36は、ロッド本体25を内側に挿通させることでロッド本体25に沿って摺動可能に構成されている。ピストン側バネ受35とロッドガイド側バネ受36との間には、コイルスプリングからなるリバウンドスプリング38が、その内側にロッド本体25を挿通させるようにして介装されている。ロッドガイド側バネ受36において、リバウンドスプリング38とは反対側の位置には円環状の弾性材料からなる緩衝体39が設けられている。緩衝体39もロッド本体25を内側に挿通させることで、ロッド本体25に沿って摺動可能に構成されている。
この緩衝器1の例えば第一方側は車体により支持され、第二方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド18によって車体側に連結され、外筒12の底部の外側に取り付けられた取付アイ40によって車輪側に連結される。なお、これとは逆に緩衝器1の第二方側が車体により支持され、緩衝器1の第一方側に車輪側が固定されるように固定しても良い。
図2に示すように、ロッド本体25の第二端部には、挿入穴28よりも大径で挿入穴28に連通するネジ穴43が形成されている。
貫通穴29は、先端ロッド26のロッド内連通路32を形成する。貫通穴29は、ロッド本体25側に位置する大径穴部47と、ロッド本体25とは反対側に位置し、大径穴部47よりも小径の小径穴部48とから構成されている。先端ロッド26には、ロッド本体25側から順に、通路穴49、通路穴50および通路穴51が、いずれも径方向に貫通するように形成されている。通路穴49から51は、いずれも先端ロッド26の軸方向の大径穴部47の位置に形成されている。
先端ロッド26は、軸方向のロッド本体25側から順に、ネジ軸部55と、フランジ部56と、保持軸部57と、中間軸部58と、取付軸部59とを有している。ネジ軸部55は、ロッド本体25のネジ穴43に螺合される。ネジ軸部55がネジ穴43に螺合された状態で、ロッド本体25をフランジに当接させるため、フランジ部56は、ネジ軸部55およびロッド本体25よりもきい外径を有する。保持軸部57は、フランジ部56よりも小径であり、フランジ部56とは軸方向反対側の部分にオネジ61が形成されている。保持軸部57のオネジ61よりもフランジ部56側には、上記した通路穴49が形成されている。中間軸部58は、保持軸部57のオネジ61の谷径よりも若干小径の外径を有する。取付軸部59は、中間軸部58よりもさらに小径に形成されている。中間軸部58とは軸方向反対側における取付軸部59の端部に、オネジ62が形成されている。取付軸部59には、オネジ62よりも中間軸部58側の範囲に通路穴50及び通路穴51が形成されている。通路穴50は、中間軸部58側に位置する。通路穴51は、オネジ62側に位置する。
ピストン側バネ受35は、円筒状部65と、当接フランジ部66と、円筒状の突出部67とを有している。当接フランジ部66は、円筒状部65の軸方向一端側から径方向外側に延出して形成されている。突出部67は、当接フランジ部66の外周部から円筒状部65とは軸方向反対側に若干突出して形成されている。このピストン側バネ受35は、円筒状部65をリバウンドスプリング38の内側に配置した状態で、当接フランジ部66においてリバウンドスプリング38の軸方向の端部に当接する。
ピストン側バネ受35と先端ロッド26のフランジ部56との間には、伝達部材71とウエーブバネ72とが介装されている。伝達部材71は、円環形状を有し、ウエーブバネ72よりもピストン側バネ受35側に配置されている。伝達部材71は、基板部75と、筒状部76とを有する。基板部75は、有孔円板形状を有する。筒状部76は、基板部75の外周縁部から軸方向に延出して形成されている。筒状部76は、基板部75とは反対側が大径となる段差が形成されている。筒状部76は、その先端部の内周側に面取りが形成されることにより、筒状部76の先端部には他の部分よりも径方向に薄肉の当接部80が形成されている。
伝達部材71は、内側にロッド本体25が挿通している。伝達部材71は、基板部75が、ピストン側バネ受35の突出部67の内側に嵌合しつつ当接フランジ部66に当接するように構成されている。
ウエーブバネ72は、平面視で円環形状を有する。ウエーブバネ72は、自然状態では、図2の中心線から右側に示すように、径方向および周方向の少なくともいずれか一方の位置変化によって軸方向位置が変化するような形状を有する。ウエーブバネ72は、内側にロッド本体25を挿通させるとともに伝達部材71の筒状部76の内側に配置され、伝達部材71の基板部75のピストン側バネ受35とは反対側に配置されている。ウエーブバネ72は、軸方向に平坦となるように弾性変形させられることで軸方向への付勢力を発生させる。ウエーブバネ72は、その軸方向両側にある先端ロッド26のフランジ部56と伝達部材71とを軸方向に所定距離離間させるように付勢する。
ここで、ピストンロッド18がシリンダ10から突出する伸び側、つまり上側に移動すると、ピストンロッド18の先端ロッド26のフランジ部56とともに、ウエーブバネ72、伝達部材71、ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39が、ロッドガイド21側に移動し、所定位置で緩衝体39がロッドガイド21に当接する。
さらにピストンロッド18が突出方向(上側)に移動すると、緩衝体39が潰れた後、緩衝体39およびロッドガイド側バネ受36が、シリンダ10に対して停止状態となる。一方、図2に示す先端ロッド26のフランジ部56、ウエーブバネ72、伝達部材71およびピストン側バネ受35がさらに移動してリバウンドスプリング38の長さを縮ませる。その際のリバウンドスプリング38の付勢力がピストンロッド18の移動に対して抵抗する力として作用する。このようにして、内筒11内に設けられたリバウンドスプリング38が、ピストンロッド18に弾性的に作用してピストンロッド18の伸び切りを抑制する。なお、このようにリバウンドスプリング38がピストンロッド18の伸び切りの抵抗となることで、搭載された車両の旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑える。
ここで、ピストンロッド18が突出方向に移動して図1に示す緩衝体39がロッドガイド21に当接すると、上記したようにピストン側バネ受35がロッドガイド側バネ受36との間でリバウンドスプリング38の長さを縮ませる前に、ピストンロッド18のフランジ部56が伝達部材71とでウエーブバネ72をその付勢力に抗して押し潰す(図2の中心線から左側参照)。これにより、伝達部材71を若干軸方向のフランジ部56側に移動させる。
図3に示すように、先端ロッド26のフランジ部56側から順に、複数枚のディスク85と、開閉ディスク86と、複数枚の中間ディスク87と、当接ディスク88と、通路形成部材89と、介在部90と、ナット91とが、フランジ部56におけるピストン側バネ受35とは軸方向反対側に設けられている。
複数枚のディスク85は、いずれも有孔円板形状を有し、伝達部材71の当接部80の内径よりも小さい外径を有する。開閉ディスク86は、有孔円板形状を有し、伝達部材71の当接部80の外径と略等しい外径を有する。開閉ディスク86の外周側には、軸方向の第一面から第二面側に凹み、さらに軸方向の第二面から第一面側に突出する円環状の開閉部93が形成されている。開閉部93は伝達部材71の当接部80と同径に形成されている。
複数枚の中間ディスク87は、いずれも有孔円板形状を有し、開閉ディスク86よりも小さい外径を有する。また、当接ディスク88側の中間ディスク87の外周側には、複数の切欠87Aが設けられている。当接ディスク88は、有孔円板形状を有し、開閉ディスク86と同じ大きさの外径を有する。当接ディスク88の径方向中間部には、C字状の貫通孔88Aが形成されている。通路形成部材89は、有孔円板形状を有し、当接ディスク88よりも小さい外径を有する。通路形成部材89の内周側には複数の切欠89Aが設けられている。介在部90は複数枚の有孔円板形状の部材からなり、通路形成部材89よりも大きい外径を有する。中間ディスク87、当接ディスク88および通路形成部材89には通路96が形成されている。通路96は、中間ディスク87の径方向外側、つまり上室16を通路穴49に連通させる。通路96は、切欠87Aと、貫通孔88Aと、切欠89Aとにより構成されている。切欠87Aは、中間ディスク87の外周部に形成されている。貫通孔88Aは、当接ディスク88の径方向中間位置に形成されている。切欠89Aは、通路形成部材89の内周部に形成されている。
上記した複数枚のディスク85と、開閉ディスク86と、複数枚の中間ディスク87と、当接ディスク88と、通路形成部材89と、介在部90とが、それぞれの内側に保持軸部57を挿通させるようにして先端ロッド26に配置され、この状態でナット91がそのメネジ97においてオネジ61に螺合される。これにより、複数枚のディスク85、開閉ディスク86、複数枚の中間ディスク87、当接ディスク88、通路形成部材89および介在部90が、先端ロッド26のフランジ部56とナット91とによって軸方向に挟持される。
図3の中心線から右側に示すように、伝達部材71がウエーブバネ72の付勢力で先端ロッド26のフランジ部56から基板部75を軸方向に離間させた状態では、当接部80を開閉ディスク86の開閉部93から離間させている。よって、開閉部93を当接ディスク88から離間させている。ここで、開閉ディスク86の開閉部93と当接ディスク88との隙間と、中間ディスク87、当接ディスク88および通路形成部材89の通路96とがオリフィス98を構成している。このオリフィス98と、先端ロッド26の通路穴49とが、連通路99を構成している。連通路99は、上室16とロッド内連通路32とを連通させる。
図3の中心線から左側に示すように、リバウンドスプリング38の付勢力により伝達部材71が基板部75をフランジ部56側に移動させてウエーブバネ72を押し潰す。その結果、伝達部材71の当接部80が開閉ディスク86の開閉部93に当接して、開閉部93を当接ディスク88に当接させる。これにより、オリフィス98を閉塞させて上室16とロッド内連通路32との連通路99を介する連通を遮断する。
伝達部材71、ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39は、バネ機構100を構成している。バネ機構100は、内筒11内に設けられ、第一端が内筒11の端部側の図1に示すロッドガイド21に当接可能であり、第二端が図3に示す開閉ディスク86と当接可能である。バネ機構100は、図3に示すように、バネ力によりウエーブバネ72の付勢力に抗して開閉ディスク86を弁が閉じる方向に付勢する。そして、このバネ機構100と、オリフィス98を開閉する開閉ディスク86および当接ディスク88とが、通路面積調整機構101を構成している。通路面積調整機構101は、ピストンロッド18の位置により変化するリバウンドスプリング38の付勢力に応じてオリフィス98、つまり連通路99の通路面積を調整する。オリフィス98は、言い換えれば通路面積が可変の可変オリフィスである。
シリンダ10を基準としたピストンロッド18のストローク位置に対するオリフィス98の通路面積の関係は、通路面積調整機構101によって変化する。具体的に、オリフィス98の通路面積は、ピストンロッド18が縮み側の端位置から伸び側の所定の閉開始位置までの間にあるとき、最大の一定値となる。閉開始位置でバネ機構100がウエーブバネ72の付勢力に抗して開閉ディスク86を閉じ始める。このとき、オリフィス98の通路面積は、伸び側ほど比例的に小さくなり、ピストンロッド18が開閉ディスク86の開閉部93を当接ディスク88に当接させる所定の閉位置にあるとき最小となる。この所定の閉位置よりも伸び側では、オリフィス98の通路面積は、最小の一定値になる。
図2に示すように、ピストン15は、ピストン本体105と、円環状の摺動部材106とによって構成されている。ピストン本体105は、先端ロッド26に支持される。摺動部材106は、ピストン本体105の外周面に装着されてシリンダ10の内筒11内を摺動する。
ピストン本体105には、複数の連通路111と、複数の連通路112とが設けられている。連通路111は、上室16と下室17とを連通させ、ピストン15の上室16側への移動、つまり伸び行程において上室16から下室17に向けて油液が流れ出す(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)。連通路112は、ピストン15の下室17側への移動、つまり縮み行程において下室17から上室16に向けて油液が流れ出す(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)。連通路111は、円周方向において、各連通路111間に一カ所の連通路112を挟んで等ピッチで形成されている。連通路111は、ピストン15の軸方向第一端側(図2の上側)が径方向外側に開口し、軸方向第二端側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
そして、減衰力発生機構(減衰力発生手段)114が、半数の連通路111に対して設けられている。減衰力発生機構114は、ピストン15の移動を抑制して減衰力を発生させる。減衰力発生機構114は、ピストン15の軸方向の第二端側である下室17側に配置されている。連通路111は、ピストンロッド18がシリンダ10外に伸び出る伸び側にピストン15が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成している。これらに対して設けられた減衰力発生機構114は、伸び側の連通路111の油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構である。
また、残りの半数を構成する連通路112は、円周方向において、各連通路112間に一カ所の連通路111を挟んで等しいピッチで形成されている。連通路112は、ピストン15の軸線方向第二端側(図2の下側)が径方向外側に開口し、軸線方向第一端側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
そして、減衰力発生機構(減衰力発生手段)115が、これら残り半数の連通路112に設けられている。減衰力発生機構115は、ピストン15の移動を抑制して減衰力を発生させる。減衰力発生機構115は、ピストン15の軸方向の第一端側である軸線方向の上室16側に配置されている。連通路112は、ピストンロッド18がシリンダ10内に入る縮み側にピストン15が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成している。これらに対して設けられた減衰力発生機構115は、縮み側の連通路112の油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構である。
ピストン本体105は、略円板形状を有し、その中央には、挿通穴116が形成されている。挿通穴116は、軸方向に貫通して、上記した先端ロッド26の取付軸部59を挿通させる。ピストン本体105の下室17側の端部には、伸び側の連通路111の第二端開口位置の外側に、シート部117が円環状に形成されている。シート部117は、減衰力発生機構114を構成する。ピストン本体105の上室16側の第一端部には、縮み側の連通路112の第一端開口位置の外側に、シート部118が、円環状に形成されている。シート部118は、減衰力発生機構115を構成する。
ピストン本体105において、シート部117の挿通穴116とは反対側は、シート部117よりも軸線方向の高さが低い段差形状を有し、この段差形状の部分に縮み側の連通路112の第二端が開口している。また、同様に、ピストン本体105において、シート部118の挿通穴116とは反対側は、シート部118よりも軸線方向の高さが低い段差形状を有し、この段差形状の部分に伸び側の連通路111の第二端が開口している。
伸び側の減衰力発生機構114は、圧力制御型のバルブ機構である。減衰力発生機構114は、軸方向のピストン15側から順に、複数枚のディスク121と、減衰バルブ本体122と、複数枚のディスク123と、シート部材124と、複数枚のディスク125と、バルブ規制部126とを有している。
シート部材124は、底部131と、内側円筒状部132と、外側円筒状部133とを有している。底部131は、軸に直交する方向に沿う有孔円板形状を有する。内側円筒状部132は、軸方向に沿う円筒形状を有し、底部131の内周側に形成されている。外側円筒状部133は、軸方向に沿う円筒形状を有し、底部131の外周側に形成されている。底部131は、内側円筒状部132および外側円筒状部133に対し軸方向の第一端側にずれている。底部131には、軸方向に貫通する複数の貫通孔134が形成されている。内側円筒状部132の内側には、小径穴部135が形成されている。小径穴部135は、軸方向の底部131側に先端ロッド26の取付軸部59を嵌合させる。内側円筒状部132の内側には、軸方向の底部131とは反対側に小径穴部135より大径の大径穴部136が形成されている。シート部材124の外側円筒状部133には、その軸方向における底部131側の端部に、環状のシート部137が形成されている。このシート部137に複数枚のディスク125が着座する。
シート部材124の底部131と内側円筒状部132と外側円筒状部133とで囲まれた空間であって、軸方向の底部131とは反対側の空間(図3のピストン本体側)と、シート部材124の貫通孔134とは、パイロット室140を構成する。パイロット室140は、減衰バルブ本体122にピストン15の方向に圧力を加える。先端ロッド26の上記した通路穴51と、シート部材124の大径穴部136と、後述するディスク123に形成されたオリフィス151とが、ロッド内連通路32とパイロット室140とに接続されて、パイロット室流入通路141を構成している。パイロット室流入通路141は、パイロット室140にロッド内連通路32を介して上室16および下室17から油液を導入可能に構成されている。よって、パイロット室流入通路141を有する伸び側の減衰力発生機構114は、ロッド内連通路32に設けられている。
複数枚のディスク121は、ピストン15のシート部117よりも小さい外径を有する有孔円板形状を有する。減衰バルブ本体122は、ディスク145と、シール部材146とから構成されている。ディスク145は、ピストン15のシート部117に着座可能な有孔円板形状を有する。シール部材146は、円環形状を有し、ゴム材料からなり、ディスク145のピストン15とは反対の面の外周側に固着されている。減衰バルブ本体122とピストン15のシート部117とが、ピストン15に設けられた連通路111とシート部材124に設けられたパイロット室140との間に設けられている。減衰バルブ本体122とシート部117とは、伸び側の減衰バルブ147を構成している。伸び側の減衰バルブ147は、ピストン15の伸び側への移動によって連通路111に生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。よって、減衰バルブ147はディスクバルブである。なお、ディスク145には、ピストンロッド18の取付軸部59を挿通させる中央の孔以外に軸方向に貫通する部分は形成されていない。
減衰バルブ本体122のシール部材146は、シート部材124の外側円筒状部133の内周面に接触して、減衰バルブ本体122と外側円筒状部133との隙間をシールする。よって、減衰バルブ本体122とシート部材124との間の上記したパイロット室140は、減衰バルブ本体122に対し、ピストン15の方向、つまりシート部117に当接するように弁が閉じる方向に内圧を作用させる。減衰バルブ147は、パイロット室140を有するパイロットタイプの減衰バルブである。減衰バルブ本体122がピストン15のシート部117から離座して開くと、減衰バルブ147は、連通路111からの油液をピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17に流す。
複数枚のディスク123は、ディスク145よりも小径の有孔円板形状を有している。そのうちのシート部材124側のディスク123には開口部からなるオリフィス151が形成されている。上記したように、オリフィス151によってシート部材124の大径穴部136内とパイロット室140とが連通する。
複数枚のディスク125は、シート部材124のシート部137に着座可能な有孔円板形状を有している。複数枚のディスク125とシート部137とがディスクバルブ153を構成している。ディスクバルブ153は、シート部材124に設けられたパイロット室140と下室17との間の油液の流れを抑制する。複数枚のディスク125のうちのシート部137側のディスク125には、シート部137と当接した状態にあってもパイロット室140を下室17に連通させる開口部からなるオリフィス154が形成されている。ディスクバルブ153は、複数枚のディスク125がシート部137から離座することで、オリフィス154よりも広い通路面積でパイロット室140を下室17に連通させる。バルブ規制部126は、複数の円環状の部材からなり、複数枚のディスク125に当接して、ディスク125が開く方向への規定以上の変形を規制する。
縮み側の減衰力発生機構115も、伸び側の減衰力発生機構114と同様、圧力制御型のバルブ機構である。減衰力発生機構115は、軸方向のピストン15側から順に、複数枚のディスク181と、減衰バルブ本体182と、複数枚のディスク183と、シート部材184と、複数枚のディスク185と、バルブ規制部186とを有している。
シート部材184は、底部191と、内側円筒状部192と、外側円筒状部193とを有している。底部191は、軸直交方向に沿う有孔円板形状を有する。内側円筒状部192は、底部191の内周側に形成された軸方向に沿う円筒形状を有する。外側円筒状部193は、底部191の外周側に軸方向に沿って円筒状に形成されている。底部191は、内側円筒状部192および外側円筒状部193に対し軸方向の第一端側にずれている。底部191には、軸方向に貫通する複数の貫通孔194が形成されている。内側円筒状部192の内側には、小径穴部195が形成されている。小径穴部195は、軸方向の底部191側に先端ロッド26の取付軸部59を嵌合させる。底部191とは軸方向の反対側には、小径穴部195より大径の大径穴部196が形成されている。外側円筒状部193には、その軸方向の底部191側の端部に、環状のシート部197が形成されている。シート部197に複数枚のディスク185が着座する。
シート部材184の底部191と、内側円筒状部192と、外側円筒状部193とで囲まれた空間の内、底部191とは反対側の空間(底部191よりもピストン本体105側の空間)と貫通孔194とは、パイロット室200を構成する。パイロット室200は、減衰バルブ本体182にピストン15の方向に圧力を加える。先端ロッド26の通路穴50と、シート部材184の大径穴部196と、後述するディスク183に形成されたオリフィス211とが、ロッド内連通路32とパイロット室200とに接続されることにより、パイロット室流入通路201を構成している。パイロット室流入通路201は、上記構成により、パイロット室200にロッド内連通路32を介して上室16および下室17から油液を導入可能となる。よって、パイロット室流入通路201を有する縮み側の減衰力発生機構115は、ロッド内連通路32に設けられている。
複数枚のディスク181は、ピストン15のシート部118よりも小さい外径を有する有孔円板形状を有している。減衰バルブ本体182は、ディスク205と、シール部材206とを有する。ディスク205は、ピストン15のシート部118に着座可能な有孔円板形状を有する。シール部材206は、ゴム材料からなる円環形状を有し、ディスク205のピストン15とは反対の面の外周側に固着されている。減衰バルブ本体182とピストン15のシート部118とが、ピストン15に設けられた連通路112とシート部材184に設けられたパイロット室200との間に設けられて縮み側の減衰バルブ207を構成している。縮み側の減衰バルブ207は、ピストン15の縮み側への移動によって連通路112に生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。よって、減衰バルブ207はディスクバルブである。なお、ディスク205には、ピストンロッド18の取付軸部59を挿通させる中央の孔以外に軸方向に貫通する部分は形成されていない。
シール部材206は、シート部材184の外側円筒状部193の内周面に接触して、減衰バルブ本体182とシート部材184の外側円筒状部193との隙間をシールする。よって、減衰バルブ本体182とシート部材184の間のパイロット室200は、減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に対し、ピストン15の方向、つまりシート部118に当接するように弁が閉じる方向に内圧を作用させる。減衰バルブ207は、パイロット室200を有するパイロットタイプの減衰バルブである。減衰バルブ本体182がピストン15のシート部118から離座して開くと、減衰バルブ207は、連通路112からの油液をピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16に流す。
複数枚のディスク183は、ディスク205よりも小径の有孔円板形状を有している。そのうちのシート部材184のディスク183には開口部からなるオリフィス211が形成されている。オリフィス211によって、上記したように、シート部材184の大径穴部196内とパイロット室200とが連通する。
複数枚のディスク185は、シート部材184のシート部197に着座可能な有孔円板形状を有している。複数枚のディスク185とシート部197とが、ディスクバルブ213を構成している。ディスクバルブ213は、シート部材184に設けられたパイロット室200と、上室16との間の油液の流れを抑制する。複数枚のディスク185のうちのシート部197側のディスク185には、シート部197と当接した状態にあってもパイロット室200を上室16に連通させる開口部からなるオリフィス214が形成されている。ディスクバルブ213は、複数枚のディスク185がシート部197から離座することで、オリフィス214よりも広い通路面積でパイロット室200を上室16に連通させる。バルブ規制部186は、複数の円環状の部材からり、複数枚のディスク185に当接して、ディスク185が開く方向への規定以上の変形を規制する。
先端ロッド26の先端のオネジ62には、上記したナット27が螺合されている。ナット27は、ナット本体300と、保持部材301とからなる。ナット本体300は、金属製でオネジ62に螺合される環状に形成されている。保持部材301は、金属製で、ナット本体300に螺合される。ナット本体300には、保持部材301によって、リング部材302およびOリング303が保持されている。
ナット本体300は、環状の主部307と、略円筒状の筒状部308と、内フランジ部309とを有している。主部307は、内周部にメネジ305が形成され、外周部に工具係合部306が形成されている。メネジ305は、先端ロッド26のオネジ62に螺合される。工具係合部306は、外周部にレンチ等の締結工具が着脱可能に形成されている。筒状部308は、主部307の内周側かつ軸方向の第二端から軸方向外側(図2の下方)に延出して略円筒状に形成される。内フランジ部309は、筒状部308の軸方向の中間位置から全周にわたって径方向内方に突出して円環状に形成される。ナット本体300には、筒状部308の外周部にオネジ310が形成されている。
保持部材301は、筒状部316と、内フランジ部317とを有している。筒状部316は、内周部にメネジ314が形成され、外周部に工具係合部315が形成されている。メネジ314は、ナット本体300のオネジ310に螺合される。工具係合部315は、レンチ等の締結工具が着脱可能に形成されている。内フランジ部317は、筒状部316の軸方向の一端から全周にわたって径方向内方に突出する円環状に形成されている。内フランジ部317の内径はナット本体300の内フランジ部309の内径と同等に形成されている。
リング部材302は、金属製であって円環形状を有しており、その内周面および外周面のそれぞれの軸方向の両側は面取りされている。リング部材302は、厚さがナット本体300の筒状部308の内フランジ部309からの突出長さよりも若干薄く形成されている。また、リング部材302の内径は、ナット本体300の内フランジ部309および保持部材301の内フランジ部317の内径よりも小径である。リング部材302の外径は、内フランジ部309,317の内径よりも大径である。
Oリング303はゴム製の弾性部材であって円環形状を有している。Oリング303は、自然状態にあるとき、内径がリング部材302の外径よりも小さく、外径がナット本体300の筒状部308の内径よりも大きい。
上記ナット27を組み立てる場合、ナット本体300の筒状部308の内フランジ部309よりも突出する部分の内側にOリング303を嵌合させる。Oリング303の内側にリング部材302を嵌合させて、ナット本体300のオネジ310に保持部材301のメネジ314を螺合させる。その際に、ナット本体300の端面のうち、筒状部308の主部307とは反対側に位置する端面に内フランジ部317を当接させるまで保持部材301を締め込む。これにより、ナット本体300の内フランジ部309と保持部材301の内フランジ部317との間にOリング303およびリング部材302が保持される。その際に、Oリング303は、リング部材302の外周側に配されて弾性変形させられる。その結果、リング部材302の外周部とナット本体300の筒状部308との隙間を密封するとともに、その弾性力でリング部材302をナット27に対し同心状に保持する。この中立状態から、リング部材302は、Oリング303をさらに弾性変形させながら径方向の全方向に移動可能に構成されている。
上記のように予め組み立てられたナット27は、ナット本体300の軸方向の保持部材301とは反対側をバルブ規制部126側に配置して、メネジ314において先端ロッド26のオネジ62に螺合される。ナット27が締め付けられると、バルブ規制部126、複数枚のディスク125、シート部材124、複数枚のディスク123、減衰バルブ本体122、複数枚のディスク121、ピストン15、複数枚のディスク181、減衰バルブ本体182、複数枚のディスク183、シート部材184、複数枚のディスク185およびバルブ規制部186のそれぞれの内周側を、ナット27と先端ロッド26の中間軸部58の取付軸部59側の段面225との間に挟持する。この状態で、ピストンロッド18の第二端側にリング部材302が径方向に移動可能に配置される。
メータリングピン31は、金属製であり、図4に示すように、本体軸部229と、支持フランジ部230とを有している。支持フランジ部230は、本体軸部229の第一端から径方向に広がる。メータリングピン31は、図1に示すように支持フランジ部230においてベースバルブ23に支持される。図4に示すように、本体軸部229には、大径軸部231と、第1テーパ軸部232と、第2テーパ軸部233と、第3テーパ軸部234と、小径軸部235とを有している。大径軸部231は、支持フランジ部230側に形成されている。第1テーパ軸部232は、大径軸部231であって支持フランジ部230とは反対側の位置に形成されている。第2テーパ軸部233は、第1テーパ軸部232であって大径軸部231とは反対側の位置に形成されている。第3テーパ軸部234は、第2テーパ軸部233であって第1テーパ軸部232とは反対側の位置に形成されている。小径軸部235は、第3テーパ軸部234の第2テーパ軸部233とは反対側に形成されている。
図5はメータリングピン31の各部の径(ピン径R)と軸方向の位置(P)との関係を示すグラフである。軸方向位置Pa1から縮み側(図5の左側)は大径軸部231を示している。大径軸部231は一定径を有する。軸方向位置Pa1からPa2は第1テーパ軸部232を示している。第1テーパ軸部232は第二端側(ベースバルブ側、図4の左側)が大径軸部231に繋がり、第一端側(第2テーパ軸部233側、図4の右側)ほど小径となるテーパ状に形成されている。軸方向位置Pa2からPa3は第2テーパ軸部233を示している。第2テーパ軸部233は第二端側が第1テーパ軸部232に繋がり、第一端側ほど小径となるテーパ状に形成されている。軸方向位置Pa3からPa4は第3テーパ軸部234を示している。第3テーパ軸部234は第二端側が第2テーパ軸部233に繋がり、第一端側ほど小径となるテーパ状に形成されている。軸方向位置Pa4から伸び側(図5の右側)は小径軸部235を示している。小径軸部235は一端側が第3テーパ軸部234に繋がる一定径である。よって、小径軸部235は大径軸部231よりも小径である。大径側と小径側との径差を軸方向長さで割ったテーパ値は、軸方向位置Pa3からPa4の第3テーパ軸部234が、軸方向位置Pa1からPa2の第1テーパ軸部232よりも小さく、軸方向位置Pa2からPa3の第2テーパ軸部233が、軸方向位置Pa3からPa4の第3テーパ軸部234よりも小さい。言い換えれば、第1テーパ軸部232から第3テーパ軸部234までのテーパ値は、第1テーパ軸部232が最大であり、第2テーパ軸部233が最小であって、第3テーパ軸部234がこれらの中間の値である。
メータリングピン31は、図2に示すように、ナット27のリング部材302の内側と、挿入穴30とに挿入されている。挿入穴30は、ピストンロッド18の貫通穴29と挿入穴28とからなる。メータリングピン31は、ピストンロッド18との間にロッド内連通路32を形成している。ここで、ナット27のリング部材302とメータリングピン31との隙間は、ロッド内連通路32と下室17とをロッド内連通路32よりも狭い通路面積で連通させる。この結果、ナット27のリング部材302とメータリングピン31との隙間は、可変オリフィス(連通路)237となる。可変オリフィス237は、上記のように径が変化するメータリングピン31がナット27に対して相対移動する軸方向位置に応じて通路面積が変化する。言い換えれば、可変オリフィス237は、リング部材302の内周部と、メータリングピン31の外周部のリング部材302の内周部に対向する部分とで形成される。そのため、可変オリフィス237は、ピストンロッド18のシリンダ10に対する変位に応じて通路面積が変化可能に構成されている。つまり、可変オリフィス237は、ピストンロッド18の位置に応じて通路面積が変化する。
具体的に、可変オリフィス237は、メータリングピン31の大径軸部231がリング部材302と軸方向位置を合わせると通路面積が最も狭くなって実質的に油液の流通を規制する状態となる。また、可変オリフィス237は、メータリングピン31の小径軸部235がリング部材302と軸方向位置を合わせると通路面積が最も広くなり、油液の流通を許容する状態となる。さらに、可変オリフィス237は、メータリングピン31の第1テーパ軸部232、第2テーパ軸部233および第3テーパ軸部234がリング部材302と軸方向位置を合わせると、油液の流通を許容する状態となる。しかも、可変オリフィス237は、リング部材302が小径軸部235側に位置するほど通路面積が広くなるように構成されている。加えて、可変オリフィス237は、ピストンロッド18の第1テーパ軸部232から第3テーパ軸部234までの形状によって、リング部材302の伸び側への軸方向の移動量に対する通路面積の拡大率が変化する。すなわち、この拡大率は、リング部材302が第1テーパ軸部232上を移動するときが最も大きく、リング部材302が第2テーパ軸部233上を移動するときが最も小さい。また、拡大率は、リング部材302が第3テーパ軸部234上を移動するときが、第1テーパ軸部232上を移動するときより小さく、第2テーパ軸部233上を移動するときより大きい。
ナット27に保持されたリング部材302およびOリング303とシリンダ10側に設けられたメータリングピン31とが、通路面積調整機構(減衰力発生手段)238を構成している。通路面積調整機構238は、ピストンロッド18の位置により可変オリフィス237の通路面積を調整する。通路面積調整機構238は、言い換えれば、可変オリフィス237の通路面積をメータリングピン31により調整する。
シリンダ10を基準としたピストンロッド18のストローク位置に対する可変オリフィス237の通路面積の関係は、上記通路面積調整機構238によって変化する。可変オリフィス237の通路面積は、ピストンロッド18が、縮み側の最小長側所定位置Sa1よりも縮み側にあるとき、リング部材302と大径軸部231との軸方向位置が合い最小の一定値となる。また、最小長側所定位置Sa1から伸び側の第1中間所定位置Sa2までは、リング部材302と第1テーパ軸部232との軸方向位置が合い伸び側ほど比例的に大きくなる。このとき、可変オリフィス237の通路面積は、最大の拡大率で拡大する。また、第1中間所定位置Sa2から伸び側の第2中間所定位置Sa3まではリング部材302と第2テーパ軸部233との軸方向位置が合い、可変オリフィス237の通路面積は、伸び側ほど比例的に大きくなる。このとき、可変オリフィス237の通路面積は、最小の拡大率で拡大する。また、第2中間所定位置Sa3から伸び側の最大長側所定位置Sa4まではリング部材302と第3テーパ軸部234との軸方向位置が合い、可変オリフィス237の通路面積は、伸び側ほど比例的に大きくなる。このとき、可変オリフィス237の通路面積は、上記の中間の拡大率で拡大する。また、最大長側所定位置Sa4から伸び側ではリング部材302と小径軸部235との軸方向位置を合い、可変オリフィス237の通路面積は、最大の一定値となる。
図1に示すように、外筒12の底部と内筒11との間には、ベースバルブ23が設けられている。ベースバルブ23は、略円板状のベースバルブ部材241と、ディスク242と、ディスク243と、取付ピン244と、係止部材245と、支持板246とを有している。ベースバルブ部材241は、内筒11の下端に嵌合されて下室17とリザーバ室13とを仕切る。ディスク242は、ベースバルブ部材241の下側、つまりリザーバ室13側に設けられる。ディスク243は、ベースバルブ部材241の上側、つまり下室17側に設けられる。取付ピン244は、ベースバルブ部材241にディスク242およびディスク243を取り付ける。係止部材245は、ベースバルブ部材241の外周側に装着される。支持板246は、メータリングピン31の支持フランジ部230をベースバルブ部材241とで挟持する。取付ピン244は、ディスク242およびディスク243の径方向中央側をベースバルブ部材241との間で挟持する。
ベースバルブ部材241には、径方向の中央に取付ピン244が挿通されるピン挿通孔248が、このピン挿通孔248の外側に形成されている。ベースバルブ部材241には、下室17とリザーバ室13との間で油液を流通させる複数の通路穴249が、通路穴249の外側に形成されている。ベースバルブ部材241には、下室17とリザーバ室13との間で油液を流通させる複数の通路穴250が形成されている。リザーバ室13側のディスク242は、下室17から内側の通路穴249を介してリザーバ室13への油液の流れを許容する。その一方でリザーバ室13側のディスク242は、リザーバ室13から下室17への内側の通路穴249を介しての油液の流れを規制する。ディスク243は、リザーバ室13から外側の通路穴250を介して下室17への油液の流れを許容する。その一方でディスク243は、下室17からリザーバ室13への外側の通路穴250を介しての油液の流れを規制する。
ディスク242と、ベースバルブ部材241とは縮み側の減衰バルブ252を構成している。縮み側の減衰バルブ252は、縮み行程において開弁して下室17からリザーバ室13に油液を流すとともに減衰力を発生させる。ディスク243と、ベースバルブ部材241とはサクションバルブ253を構成している。サクションバルブ253は、伸び行程において開弁してリザーバ室13から下室17内に油液を流す。なお、サクションバルブ253は、ピストン15に設けられた縮み側の減衰力発生機構115との関係から、主としてピストンロッド18のシリンダ10への進入により生じる液の余剰分を排出するように、下室17からリザーバ室13に実質的に減衰力を発生させることなく液を流す機能を果たす。
係止部材245は、筒形状を有し、その内側にベースバルブ部材241を嵌合させる。ベースバルブ部材241は、係止部材245を介して内筒11の下端の内周部に嵌合している。係止部材245のピストン15側の端部には径方向内側に延出する係止フランジ部255が形成されている。支持板246の外周部は、係止フランジ部255におけるピストン15とは反対側に係止されている。支持板246の内周部がメータリングピン31における支持フランジ部230のピストン15側に係止されている。これにより、係止部材245および支持板246がメータリングピン31の支持フランジ部230を取付ピン244に当接する状態に保持する。その結果、メータリングピン31は、一端側の支持フランジ部230においてシリンダ10側に固定される。
第1実施形態に係る緩衝器1は、ピストンロッド18がシリンダ10に対し、図6に示す最小長側所定位置Sa1よりもシリンダ10の内部へ押し込まれる最小長側所定範囲Aa0では、リバウンドスプリング38の長さが縮まない。図2および図3の中心線から右側に示すように、通路面積調整機構101は、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100により押圧されずに開閉ディスク86を当接ディスク88から離間させて連通路99のオリフィス98の通路面積を最大にする。また、最小長側所定範囲Aa0では、通路面積調整機構238が、メータリングピン31の大径軸部231の軸方向位置にリング部材302を合わせて可変オリフィス237をほぼ閉塞させる。最小長側所定範囲Aa0では、ロッド内連通路32が上記連通路99を介して上室16に連通する。また、最小長側所定範囲Aa0では、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200とが、ロッド内連通路32を介して共に上室16に連通する。
最小長側所定範囲Aa0にあって、ピストンロッド18がシリンダ10の外部へ引き出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の連通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、パイロット室140は、連通路99、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141を介して上室16に連通している。パイロット室140は、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるため、上室16に近い圧力状態となり、上室16の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室140の圧力上昇が上室16の圧力上昇に追従可能である。このため、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が小さくなり、シート部117から離れにくい状態になる。よって、上室16からの油液は、連通路99およびロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141からパイロット室140を通り、ディスクバルブ153の複数枚のディスク125のオリフィス154を介して下室17に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が上記より速い時でも、減衰バルブ本体122がシート部117から離れることがない。上室16からの油液は、連通路99、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141からパイロット室140を通り、ディスクバルブ153の複数枚のディスク125を開きながら、シート部137と複数枚のディスク125との間を通って、下室17に流れ、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がる。以上により、最小長側所定範囲Aa0では、図6に実線で示す伸び行程の減衰力を示す伸び側減衰係数が高くほぼ一定したハードの伸び側ハード状態となる。
また、最小長側所定範囲Aa0にあって、ピストンロッド18がシリンダ10の内部へ押し込まれる縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の連通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室200は、連通路99、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201を介して上室16に連通している。このため、上室16に近い圧力状態となり、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部118から離れるように開いて、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16側に油液を流す。以上により、最小長側所定範囲Aa0では、図6に破線で示す縮み行程の減衰力を示す縮み側減衰係数は低くほぼ一定したソフトの状態となる。
以上、最小長側所定範囲Aa0では、ピストンロッド18が最小長側所定位置Sa1よりもシリンダ10の内部へ押し込まれる。最小長側所定範囲Aa0では、図6に実線で示すように伸び側減衰係数がハードの伸び側ハード状態となり、図6に破線で示すように縮み側減衰係数がソフトの状態となる最小長側特性となる。
また、最大長側所定範囲Aa4では、ピストンロッド18が、シリンダ10に対し、最大長側所定位置Sa4よりもシリンダ10の外部へ延出する。最大長側所定範囲Aa4では、緩衝体39がロッドガイド21に当接し、リバウンドスプリング38を含むバネ機構100の長さが縮んでいる。これにより、図2および図3の中心線から左側に示すように、通路面積調整機構101が、バネ機構100の伝達部材71によってウエーブバネ72を押し潰して開閉ディスク86を当接ディスク88に当接させて連通路99を閉塞させる。また、最大長側所定範囲Aa4では、通路面積調整機構238が、メータリングピン31の小径軸部235の軸方向位置にリング部材302を合わせて可変オリフィス237の通路面積を最大にする。この最大長側所定範囲Aa4では、ロッド内連通路32が可変オリフィス237を介して下室17に連通する。また、最大長側所定範囲Aa4では、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200とが、可変オリフィス237、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141,201を介して共に下室17に連通する。
最大長側所定範囲Aa4にあって、ピストンロッド18がシリンダ10の外部へ引き出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の連通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、パイロット室140は、可変オリフィス237、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141を介して下室17に連通している。パイロット室140は、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるため、下室17に近い圧力状態となって、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部117から離れるように開く。この結果、減衰バルブ本体122は、ピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。以上により、最大長側所定範囲Aa4では、図6に実線で示す伸び行程の伸び側減衰係数が低くなり、ソフトの伸び側ソフト状態となる。最小長側所定範囲Aa0と最大長側所定範囲Aa4との減衰係数の差が、減衰係数の可変幅wとなる。
また、最大長側所定範囲Aa4にあって、ピストンロッド18がシリンダ10の内部へ押し込まれる縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の連通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、パイロット室200は、可変オリフィス237、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201を介して下室17に連通している。パイロット室200は、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させるため、下室17に近い圧力状態となり、下室17の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室200の圧力上昇が下室17の圧力上昇に追従可能である。このため、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が小さくなり、シート部118から離れにくい状態になる。よって、下室17からの油液は、可変オリフィス237、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201からパイロット室200を通り、ディスクバルブ213の複数枚のディスク185のオリフィス214を介して上室16に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が上記より速い時でも、減衰バルブ本体182がシート部118から離れにくい状態である。そのため、下室17からの油液は、可変オリフィス237、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201からパイロット室200を通り、ディスクバルブ213の複数枚のディスク185を開きながら、シート部197と複数枚のディスク185との間を通って上室16に流れ、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がる。以上により、縮み行程の縮み側減衰係数は、伸び側減衰係数に比べて高くなり、縮み側減衰係数がハードの状態となる。
最大長側所定範囲の縮み行程であっても、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等において、ピストン速度がさらに高速の領域になると、パイロット室200の圧力上昇が下室17の圧力上昇に追従できなくなる。このとき、縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する差圧による力の関係は、ピストン15に形成された連通路112から加わる開方向の力がパイロット室200から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この領域では、ピストン速度の増加に伴い減衰バルブ207が開いて減衰バルブ本体182がシート部118から離れ、ディスクバルブ213のシート部197と複数枚のディスク185との間を通る上室16への油液の流れに加え、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16に油液を流すため、減衰力の上昇を抑えることができる。このときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がほとんどない。よって、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等においてピストン速度が速く周波数が比較的高い場合も、上記のようにピストン速度の増加に対する減衰力の上昇を抑えることで、ショックを十分に吸収する。
以上、最大長側所定範囲Aa4は、図6に実線で示すように伸び側減衰係数がソフトの伸び側ソフト状態となり、図6に破線で示すように縮み側減衰係数がハードの状態となる最大長側特性となる。
そして、ピストンロッド18が、シリンダ10に対し、最小長側所定位置Sa1と最大長側所定位置Sa4との間の中間所定範囲Sa1からSa4にあるとき、緩衝器1は、伸び側減衰係数が伸び側ハード状態と伸び側ソフト状態との間で変化する状態となる特性を有している。
中間所定範囲Sa1からSa4では、最小長側所定範囲Aa0と同様、リバウンドスプリング38が縮長せず、通路面積調整機構101は、連通路99のオリフィス98の通路面積を最大にする。また、中間所定範囲Sa1からSa4では、通路面積調整機構238が、リング部材302を、メータリングピン31の第1テーパ軸部232、第2テーパ軸部233および第3テーパ軸部234のいずれかと軸方向の位置を合わせて可変オリフィス237を開く。しかも、ピストンロッド18が、最小長側所定位置Sa1から最大長側所定位置Sa4に向かうほど可変オリフィス237を大きく開く。中間所定範囲Sa1からSa4では、ロッド内連通路32が、上記連通路99を介して上室16に連通すると共に可変オリフィス237を介して下室17に連通する。伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140は、上室16および下室17に連通する。しかも、パイロット室140は、ピストンロッド18が、最小長側所定位置Sa1側にあるほど下室17への連通量は狭められ、最大長側所定位置Sa4側にあるほど、下室17への連通量が拡大する。
ピストンロッド18が、中間所定範囲Sa1からSa4にあって、シリンダ10の外部へ引き出される伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の連通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、連通路99、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141を介して上室16に連通し、可変オリフィス237を介して下室17に連通している。このため、パイロット室140は、ピストンロッド18が、下室17に連通していない最小長側所定範囲Aa0にあるときよりも、低い圧力状態となって、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体122は、最小長側所定範囲Aa0よりも、受ける差圧が大きくなりシート部117から離れ易くなる。この結果、油液がピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17側に流れる。これにより、減衰力は下がる。加えて、連通路99、ロッド内連通路32および可変オリフィス237を介して、上室16から下室17に油液が流れる。これによっても、減衰力は下がる。
上記により、ピストンロッド18が中間所定範囲Sa1からSa4にあるときは、可変オリフィス237の通路面積が増えるほど減衰力が下がる。そして、可変オリフィス237の通路面積を決めるメータリングピン31のテーパ値は、第1テーパ軸部232が最も大きく、第2テーパ軸部233が最も小さく、第3テーパ軸部234がこれらの中間である。このため、可変オリフィス237は、ピストンロッド18に設けられたリング部材302の伸び側への軸方向の移動量に対する通路面積の拡大率が、リング部材302が第1テーパ軸部232上を移動するとき、すなわちピストンロッド18が最小長側所定位置Sa1から第1中間所定位置Sa2まで移動するときが最大となる。リング部材302が第2テーパ軸部233上を移動するとき、すなわち、ピストンロッド18が第1中間所定位置Sa2から第2中間所定位置Sa3まで移動するとき、通路面積の拡大率が最小となる。リング部材302が第3テーパ軸部234上を移動するとき、すなわち、ピストンロッド18が第2中間所定位置Sa3から最大長側所定位置Sa4まで移動するとき、通路面積の拡大率は、上記最大と最小との中間となる。
その結果、ピストンロッド18が中間所定範囲Sa1からSa4にあるときの伸び側減衰力特性は、ピストンロッド18のストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有する。具体的には、ピストンロッド18が、最小長側所定位置Sa1から第1中間所定位置Sa2までの第1中間所定範囲Sa1からSa2にあるときの減衰係数変化率αa1よりも、第1中間所定位置Sa2から第2中間所定位置Sa3までの第2中間所定範囲Sa2からSa3にあるときの減衰係数変化率αa2の方が小さくなる。また、ピストンロッド18が、第2中間所定位置Sa3から最大長側所定位置Sa4までの第3中間所定範囲Sa3からSa4にあるときの減衰係数変化率αa3が減衰係数変化率αa1よりも小さく且つ減衰係数変化率αa2よりも大きくなる。なお、小さい減衰係数変化率αa2のストローク範囲Sa2からSa3は、これよりも大きい減衰係数変化率αa1,αa3のストローク範囲Sa1からSa2とストローク範囲Sa3からSa4とを合わせた範囲よりも広くなる。加えて、小さい減衰係数変化率αa2が得られる第2中間所定範囲Sa2からSa3においては、減衰係数Cが、ピストンロッド18またはシリンダ10に加わる質量の変化に対し、臨界減衰係数Ccとの比C/Ccが一定となるように定められている。ばね定数をk、質量をwとすると、臨界減衰係数Ccは、2√(k・w)であり、よって質量に依存する。これに対し、比C/Ccが一定となるように減衰係数Cを調整する。その調整は、メータリングピン31の径を変化させて行う。
第1実施形態に係る緩衝器1は、以上に述べた位置感応の減衰力変化特性が得られる。
第1実施形態では、図7に示すように、車両Vの車体Bを支持する二つの前輪Wfおよび二つの後輪Wrのうち、二つの後輪Wrにのみ、上記した緩衝器1が車体Bとの間に取り付けられる。つまり、二つの前輪Wfには、緩衝器1とは異なる緩衝器1’が車体Bとの間に取り付けられる。そして、本実施形態に係る緩衝器1は、乗車人員および積載荷物がなく水平位置に停止した車体Bを支持する1G位置にあるとき、そのピストンロッド18が第1中間所定位置Sa2と第2中間所定位置Sa3との間の第2中間所定範囲Sa2からSa3にあり、リング部材302が第2テーパ軸部233の中間位置にあるように設定される。つまり、緩衝器1は、1G位置にあるとき、減衰係数変化率αa1からαa3のうちで最も小さい減衰係数変化率αa2の第2中間所定範囲Sa2からSa3にあるように設定される。
上記した特許文献1,2に記載の緩衝器は、位置感応型の緩衝器であるが、ピストンに形成された通路を開閉するディスクバルブにスプリングのバネ荷重を直接負荷して開弁圧を上げるように構成されている。そのため、伸び側の位置と、縮み側の位置とで、減衰力を調整できるようにするためには、スプリングが伸び側と縮み側とで2つ必要となる。また、減衰力可変幅を大きくとるためには、バネレートを高くする必要があるが、バネレートを高くすれば、バネ反力の作用も大きくなり、減衰力の変化が急激になるだけでなく、ピストンロッド18のストロークが小さくなり、搭載車両の乗り心地が悪くなる。また、減衰力可変幅を大きくし、反力を小さくする設定は出来ず、緩衝器の特性を自由に設計できないという問題があった。
これに対して、以上に述べた第1実施形態によれば、ピストンロッド18の位置によってオリフィス98の通路面積を調整する通路面積調整機構101と、ピストンロッド18の位置によって可変オリフィス237の通路面積を調整する通路面積調整機構238とを有する。そのため通路面積調整機構101と、通路面積調整機構238とにより、ピストンロッド18が最小長側所定位置Sa1よりもシリンダ10の内部へ押し込まれる最小長側所定範囲Aa0で、伸び側減衰係数がハードの伸び側ハード状態となり且つ縮み側減衰係数がソフトの状態となる最小長側特性を得ることができる。さらに、通路面積調整機構101と、通路面積調整機構238とにより、ピストンロッド18が最大長側所定位置Sa4よりもシリンダ10の外部へ延出する最大長側所定範囲Aa4で、伸び側減衰係数がソフトの伸び側ソフト状態となり且つ縮み側減衰係数がハードの状態となる最大長側特性を得ることができる。このように、油液が流通するオリフィス98,237の通路面積を調整するため、減衰力を滑らかに変化させることが可能となり、搭載車両の乗り心地が良好になる。
また、設計段階においても、通路面積調整機構101においては、リバウンドスプリング38のバネレートは変えずに開閉ディスク86の特性や中間ディスク87の切欠87Aの面積を変えるのみで反力特性を殆ど変えずに減衰力特性を調整できる。また、通路面積調整機構238においては、メータリングピン31のプロフィールを変えることで、反力特性を変えずに減衰力特性を変えることができる。これにより、設計自由度も高まり、減衰特性のチューニングも容易に行うことができる。以下各実施の形態も同様の効果を有する。
また、上記最大長側特性および最小長側特性が得られることで、バネ上を加振する力を小さく(つまりソフト)し、バネ上を制振する力を大きく(つまりハード)することができ、電子制御なしでスカイフック制御のような上質の乗り心地が得られる。
図5に破線で示すように、ピストンロッド18の大径軸部231の小径軸部235側の端部位置Pa1と小径軸部235の大径軸部231側の端部位置Pa4とを一定のテーパ値のテーパ面で繋ぎ、この一定の変化率の範囲に1G位置を設定する。この結果、ピストンロッド18が最小長側所定位置Sa1と最大長側所定位置Sa4との間にあるときに伸び側減衰係数を一定の変化率で繋ぎ、この一定の変化率の範囲に1G位置が設定される。つまり、伸び側ハード状態と伸び側ソフト状態とを一定の変化率で繋ぎ、この一定の変化率の範囲に1G位置が設定される。このように設定すると、乗車人数および積載重量が変化して緩衝器が伸縮した場合に、減衰係数が大きく変化し、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化が大きくなる。また、緩衝器1の微作動時でも減衰力変化が大きくなるため、良路での微操舵に対しても、ロールおよびピッチの両方向の制振性、応答性が悪化し、操縦安定性が悪化する。
これに対し、本実施形態では、図4と、図5の実線とで示すように、ピストンロッド18の大径軸部231と小径軸部235とを、テーパ値が最大の第1テーパ軸部232と、最小の第2テーパ軸部233と、中間の第3テーパ軸部234とで繋いでいる。その結果、図6に実線で示すように、ピストンロッド18が最小長側所定位置Sa1と最大長側所定位置Sa4との間の中間所定範囲Sa1からSa4にあるとき、伸び側減衰係数が伸び側ハード状態と伸び側ソフト状態との間で変化する状態となる伸び側減衰力特性を有する。そして、この伸び側減衰力特性は、ピストンロッド18のストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有する。伸び側減衰力特性は、最小長側所定位置Sa1からピストンロッド18が伸び側にストロークする初期、つまり最小長側所定位置Sa1から第1中間所定位置Sa2までの第1中間所定範囲Sa1からSa2で大きな減衰係数変化率αa1となる。このため、その後の第1中間所定位置Sa2から第2中間所定位置Sa3までの第2中間所定範囲Sa2からSa3に、減衰係数変化率αa1よりも小さな減衰係数変化率αa2を設定できる。そして、この減衰係数変化率αa2となる第2中間所定範囲Sa2からSa3に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率αa2とすることができる。したがって、乗車人数および積載重量が変化した場合であっても、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。また、緩衝器1の微作動時では減衰力変化が小さくなるため、良路での微操舵に対しても、ロールおよびピッチの両方向の制振性、応答性が向上する。操縦安定性については、1G位置での減衰係数変化率が大きいと、操舵入力に対して、旋回内側(伸び方向にストロークする側)のバネ上の浮き上がりが目立ち、ロール量が大きくなる。しかし、1G位置で小さい減衰係数変化率αa2とすることで、旋回内側のバネ上の浮き上がりを適度に抑えることができ、操縦安定性が向上する。つまり、入力が小さい良路では、コンベンショナルな緩衝器の操縦安定性および乗り心地を確保しつつ、悪路ではスカイフック制御の乗り心地を得ることが可能となる。なお、減衰係数変化率αa2を0としても良い。この場合、良路では、コンベンショナルな緩衝器と同様の操縦安定性と乗り心地となり、悪路のみ減衰係数を変化させることができる。
また、小さい減衰係数変化率αa2のストローク範囲Sa2からSa3の方が、これより大きい減衰係数変化率αa1のストローク範囲Sa1からSa2と減衰係数変化率αa3のストローク範囲Sa3からSa4とを合わせた範囲よりも広い。このため、乗車人数および積載重量の変化が比較的大きくても、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。後述する第2実施形態及び第3実施形態も同様である。
また、小さい減衰係数変化率αa2における減衰係数Cは、ピストンロッド18またはシリンダ10に加わる質量の変化に対し、臨界減衰係数Ccとの比C/Ccが一定となるように定められている。このため、乗車人数および積載重量の変化に対して、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化をさらに抑えることができる。後述する第2実施形態及び第3実施形態も同様である。
また、連通路である可変オリフィス237の通路面積を、ピストンロッド18の位置により調整する通路面積調整機構238を用いる。このため、ピストンロッド18の位置による上記のような減衰力特性の調整が容易かつ詳細にできる。後述する第2実施形態も同様である。
また、上記した緩衝器1を、前輪Wfおよび後輪Wrのうち、乗車人数および積載重量の変化の影響を大きく受ける後輪Wrのみに用いる。このため、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化を効果的に抑えることができる。後述する第2実施形態及び第3実施形態も同様である。
なお、大径軸部231および第1テーパ軸部232の境界外周部と、第1テーパ軸部232および第2テーパ軸部233の境界外周部と、第2テーパ軸部233および第3テーパ軸部234の境界外周部と、第3テーパ軸部234および小径軸部235の境界外周部とのうちの少なくともいずれか一つにR面取りを施しても良い。これにより、減衰係数の変化率が変わる際に減衰係数を滑らかに変化させることができる。後述する第2実施形態も同様である。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図8から図12に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図8に示す第2実施形態では、図1に示す第1実施形態のバネ機構100および通路面積調整機構101が設けられておらず、図9に示すように、通路穴49が常に上室16に連通している。また、先端ロッド26には、図2に示す第1実施形態の小径穴部48が形成されておらず、この部分も大径穴部47である。加えて、図2に示す第1実施形態の可変オリフィス237を構成するナット27は設けられておらず、代わりにナット501が設けられている。そして、先端ロッド26の大径穴部47の通路穴49と通路穴50との間に、径方向内方に突出する環状凸部502が形成されている。この環状凸部502は、ロッド内連通路32の一部となる可変オリフィス503をメータリングピン31との間に形成している。この環状凸部502とメータリングピン31とが、通路面積調整機構(減衰力発生手段)505を構成している。通路面積調整機構505は、ピストンロッド18の位置により、ロッド内連通路32の一部となる可変オリフィス503の通路面積を調整する。通路面積調整機構505は、言い換えれば、可変オリフィス503の通路面積をメータリングピン31により調整する。
第2実施形態のメータリングピン31は、図10に示すように、大径軸部511と、第1テーパ軸部512と、第2テーパ軸部513と、第3テーパ軸部514と、小径軸部515とを有している。大径軸部511は、本体軸部229のうち、支持フランジ部230とは反対側に位置する。第1テーパ軸部512は、大径軸部511の支持フランジ部230側に形成されている。第2テーパ軸部513は、第1テーパ軸部512の大径軸部511とは反対側に形成されている。第3テーパ軸部514は、第2テーパ軸部513における第1テーパ軸部512とは反対側に形成されている。小径軸部515は、第3テーパ軸部514の第2テーパ軸部513とは反対側に形成されている。
図11はメータリングピン31の各部(軸方向位置P)の径Rを拡大表示したグラフである。軸方向位置の左の端部からPc1までは大径軸部511を示しており、大径軸部511は一定径である。軸方向位置Pc1からPc2は第1テーパ軸部512を示している。第1テーパ軸部512は第一端側が大径軸部511に繋がり、第二端側ほど小径となるテーパ状に形成されている。軸方向位置Pc2からPc3は、第2テーパ軸部513を示している。第2テーパ軸部513は第一端側が第1テーパ軸部512に繋がり、第二端側ほど小径となるテーパ状に形成されている。軸方向位置Pc3からPc4は第3テーパ軸部514を示している。第3テーパ軸部514は第一端側が第2テーパ軸部513に繋がり、第二端側ほど小径となるテーパ状に形成されている。軸方向位置Pc4から図11の右側端部までは小径軸部515を示している。小径軸部515は一端側が第3テーパ軸部514に繋がる一定径である。よって、小径軸部515は大径軸部511よりも小径である。大径側と小径側との径差を軸方向長さで割ったテーパ値は、第3テーパ軸部514が第1テーパ軸部512よりも小さい。テーパ値は、第2テーパ軸部513が第3テーパ軸部514よりも小さい。言い換えれば、第1テーパ軸部512から第3テーパ軸部514までのテーパ値は、第1テーパ軸部512が最大であり、第2テーパ軸部513が最小であって、第3テーパ軸部514がこれらの中間値である。
可変オリフィス503は、シリンダ10に固定されたメータリングピン31と、ピストンロッド18の環状凸部502とで形成される。メータリングピン31の本体軸部229が上記形状を有することにより、可変オリフィス503は、ピストンロッド18のシリンダ10に対する変位に応じて通路面積が変化可能となる。つまり、可変オリフィス503は、ピストンロッド18の位置に応じて通路面積が変化する。
具体的に、可変オリフィス503は、メータリングピン31の大径軸部511が環状凸部502と軸方向位置を合わせると通路面積が最も狭くなって実質的に油液の流通を規制する状態となる。また、可変オリフィス503は、メータリングピン31の小径軸部515が環状凸部502と軸方向位置を合わせると通路面積が最も広くなり、油液の流通を許容する状態となる。さらに、可変オリフィス503は、メータリングピン31の第1テーパ軸部512、第2テーパ軸部513および第3テーパ軸部514が環状凸部502と軸方向位置を合わせると、油液の流通を許容する状態となる。しかも、環状凸部502が小径軸部515側に位置するほど通路面積が広くなるように構成されている。可変オリフィス503は、環状凸部502の縮み側への軸方向の移動量に対する通路面積の拡大率が、環状凸部502が第1テーパ軸部512上を移動するときが最も大きい。環状凸部502が第2テーパ軸部513上を移動するとき、通路面積の拡大率が最も小さい。環状凸部502が第3テーパ軸部514上を移動するとき、通路面積の拡大率は第1テーパ軸部512上を移動するときより小さく、第2テーパ軸部513上を移動するときより大きい。
シリンダ10を基準としたピストンロッド18のストローク位置に対する可変オリフィス503の通路面積の関係は、上記通路面積調整機構505によって変化する。可変オリフィス503の通路面積は、ピストンロッド18が伸び側の最大長側所定位置Sc1よりも伸び側にあるとき、環状凸部502と大径軸部511とが軸方向位置を合わせることになって最小のほぼ一定値となる。また、最大長側所定位置Sc1から縮み側の第1中間所定位置Sc2までは環状凸部502と第1テーパ軸部512とが軸方向位置が合う。これにより、可変オリフィス503の通路面積は、縮み側ほど比例的に大きくなる。このとき、可変オリフィス503の通路面積は、最大の拡大率で拡大する。また、第1中間所定位置Sc2から縮み側の第2中間所定位置Sc3までは環状凸部502と第2テーパ軸部513とが軸方向位置が合う。これにより、可変オリフィス503の通路面積は、縮み側ほど比例的に大きくなる。このとき、可変オリフィス503の通路面積は、最小の拡大率で拡大する。また、第2中間所定位置Sc3から縮み側の最小長側所定位置Sc4までは環状凸部502と第3テーパ軸部514との軸方向位置が合う。これにより、可変オリフィス503の通路面積は、伸び側ほど比例的に大きくなる。このとき、可変オリフィス503の通路面積は、上記の最大と最小との中間の拡大率で拡大する。また、最小長側所定位置Sc4から縮み側では環状凸部502と小径軸部515との軸方向位置が合う。これにより、可変オリフィス503の通路面積は、最大のほぼ一定値となる。
第2実施形態に係る緩衝器1は、最大長側所定範囲Ac0では、ピストンロッド18がシリンダ10に対し、図12に示す最大長側所定位置Sc1よりもシリンダ10の外部へ延出する。最大長側所定範囲Ac0では、通路面積調整機構505が、メータリングピン31の大径軸部511の軸方向位置に環状凸部502を合わせて可変オリフィス503をほぼ閉塞させる。
この最大長側所定範囲Ac0にあって、ピストンロッド18がシリンダ10の内部へ押し込まれる縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の油圧がピストン15に形成された縮み側の連通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。このとき、通路面積調整機構505により、メータリングピン31の大径軸部511の軸方向位置に環状凸部502を合わせて可変オリフィス503をほぼ閉塞させる。パイロット室200は、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させる。パイロット室200は、ロッド内連通路32を介して下室17に連通しているため、下室17に近い圧力状態となり、下室17の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室200の圧力上昇が下室17の圧力上昇に追従可能である。このため、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が小さくなり、シート部118から離れにくい状態になる。よって、下室17からの油液は、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201からパイロット室200を通り、ディスクバルブ213の複数枚のディスク185のオリフィス214を介して上室16に流れる。このとき、減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例するオリフィス特性の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が上記より速い時でも、減衰バルブ本体182がシート部118から離れにくい状態である。このとき、下室17からの油液は、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201からパイロット室200を通り、ディスクバルブ213の複数枚のディスク185を開きながら、シート部197と複数枚のディスク185との間を通って上室16に流れる。この結果、減衰力がピストン速度にほぼ比例するバルブ特性の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がる。以上により、最大長側所定範囲Ac0では、縮み行程の縮み側減衰係数がほぼ一定したハードの状態となる。
以上、ピストンロッド18が最大長側所定位置Sc1よりもシリンダ10の外部へ延出する最大長側所定範囲Ac0では、図12に示すように縮み側減衰係数がハードの縮み側ハード状態となる最大長側特性となる。
最小長側所定範囲Ac4では、ピストンロッド18が、シリンダ10に対し、最小長側所定位置Sc4よりもシリンダ10の内部へ押し込まれる。最小長側所定範囲Ac4では、通路面積調整機構505が、メータリングピン31の小径軸部515の軸方向位置に環状凸部502の位置を合わせて可変オリフィス503の通路面積を最大にする。最小長側所定範囲Ac4では、ロッド内連通路32が上記可変オリフィス503を介して上室16に連通し、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200とが、可変オリフィス503、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路141,201を介して共に上室16と下室17とに連通する。
縮み工程では、最小長側所定範囲Ac4において、ピストンロッド18がシリンダ10の内部へ押し込まれる。縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の圧力が、ピストン15に形成された縮み側の連通路112を介して縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。パイロット室200は、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させる。このとき、パイロット室200は、可変オリフィス503、ロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201を介して上室16に連通している。このため、パイロット室200は、上室16に近い圧力状態となって、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体182は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部118から離れるように開いて、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16側に油液を流す。また、ロッド内連通路32が連通路99を介して下室17の油液を上室16側に流す。よって、減衰力は下がる。以上により、最小長側所定範囲Ac4では、図12に示す縮み行程の縮み側減衰係数がほぼ一定したソフトの状態となる。
最小長側所定範囲Ac4ではピストンロッド18が最小長側所定位置Sc4よりもシリンダ10の内部へ押し込まれる。最小長側所定範囲Ac4では、図12に示すように縮み側減衰係数がソフトの縮み側ソフト状態となる最小長側特性となる。
ピストンロッド18が、シリンダ10に対し、最大長側所定位置Sc1と最小長側所定位置Sc4との間の中間所定範囲Sc1からSc4にあるとき、緩衝器1は、縮み側減衰係数が縮み側ハード状態と縮み側ソフト状態との間で変化する状態となる特性を有している。
中間所定範囲Sc1からSc4では、通路面積調整機構505が、メータリングピン31の第1テーパ軸部512、第2テーパ軸部513および第3テーパ軸部514のいずれかと軸方向の位置を環状凸部502に合わせて可変オリフィス503を開く。しかも、ピストンロッド18が、最大長側所定位置Sc1から最小長側所定位置Sc4に向かうほど可変オリフィス503を大きく開く。中間所定範囲Sc1からSc4では、ロッド内連通路32が、上記連通路99を介して上室16に連通すると共に下室17に連通する。縮み側の減衰力発生機構115のパイロット室200は、上室16および下室17に連通する。しかも、ピストンロッド18が、最大長側所定位置Sc1側にあるほど上室16への連通量は狭められ、最小長側所定位置Sc4側にあるほど、上室16への連通量が拡大する。
ピストンロッド18が、中間所定範囲Sc1からSc4にあって、シリンダ10の内部へ押し込まれる縮み行程では、ピストン15が下室17側に移動し、下室17の圧力が上がり上室16の圧力が下がる。すると、下室17の圧力が、ピストン15に形成された縮み側の連通路112を介して、縮み側の減衰力発生機構115の減衰バルブ207の減衰バルブ本体182に作用する。パイロット室200は、減衰バルブ本体182にシート部118の方向へのパイロット圧を作用させる。パイロット室200は、連通路99、可変オリフィス503を含むロッド内連通路32およびパイロット室流入通路201を介して上室16に連通しており、ロッド内連通路32を介して下室17に連通している。このため、パイロット室140は、ピストンロッド18が最大長側所定範囲Ac0にあるときよりも、低い圧力状態となって、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体182は、最大長側所定範囲Ac0よりも受ける差圧が大きくなりシート部118から離れ易くなって、ピストン15とシート部材184との間の径方向の通路208を介して上室16側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。加えて、連通路99、可変オリフィス503を含むロッド内連通路32を介して、下室17から上室16に油液が流れる。これによっても、減衰力は下がる。
ピストンロッド18が、中間所定範囲Sc1からSc4にあるときは、可変オリフィス503の通路面積が増えるほど減衰力が下がる。そして、上記したように、可変オリフィス503の通路面積を決めるメータリングピン31のテーパ値が、第1テーパ軸部512が最も大きく、第2テーパ軸部513が最も小さく、第3テーパ軸部514がこれらの中間となる。このため、可変オリフィス503は、ピストンロッド18に設けられた環状凸部502の縮み側への軸方向の移動量に対する通路面積の拡大率が、環状凸部502が第1テーパ軸部512上を移動するとき、すなわち、ピストンロッド18が最大長側所定位置Sc1から第1中間所定位置Sc2まで移動するとき、が最大となる。拡大率は、環状凸部502が第2テーパ軸部513上を移動するとき、すなわち、ピストンロッド18が第1中間所定位置Sc2から第2中間所定位置Sc3まで移動するとき、が最小となる。拡大率は、環状凸部502が第3テーパ軸部514上を移動するとき、すなわち、ピストンロッド18が第2中間所定位置Sc3から最小長側所定位置Sc4まで移動するとき、が、上記最大と最小との中間となる。
その結果、ピストンロッド18が中間所定範囲Sc1からSc4にあるときの伸び側減衰力特性は、ピストンロッド18のストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有する。具体的には、ピストンロッド18が、最大長側所定位置Sc1から第1中間所定位置Sc2までの第1中間所定範囲Sc1からSc2にあるときの減衰係数変化率αc1よりも、この第1中間所定位置Sc2から第2中間所定位置Sc3までの第2中間所定範囲Sc2からSc3にあるときの減衰係数変化率αc2の方が小さい。第2中間所定位置Sc3から最小長側所定位置Sc4までの第3中間所定範囲Sc3からSc4にあるときの減衰係数変化率αc3が減衰係数変化率αc1よりも小さく且つ減衰係数変化率αc2よりも大きくなる。小さい減衰係数変化率αc2のストローク範囲Sc2からSc3は、大きい減衰係数変化率αc1のストローク範囲Sc1からSc2および減衰係数変化率αc3のストローク範囲Sc3からSc4を合わせた範囲よりも広い。加えて、小さい減衰係数変化率αc2における減衰係数Cは、ピストンロッド18またはシリンダ10に加わる質量の変化に対し、臨界減衰係数Ccとの比C/Ccが一定となるように定められている。
第2実施形態に係る緩衝器1は、以上に述べた位置感応の減衰力変化特性が得られる。そして、小さい減衰係数変化率αc2となる第2中間所定範囲Sc2からSc3に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率αc2とすることができる。なお、第2実施形態において、伸び側の減衰力特性は、図12に実線で示すように、ハードとソフトとの間のミディアムのほぼ一定の特性となる。
第2実施形態では、ピストンロッド18が最大長側所定位置Sc1と最小長側所定位置Sc4との間にあるとき縮み側減衰係数が縮み側ハード状態と縮み側ソフト状態との間で変化する状態となる縮み側減衰力特性を有する。そして、縮み側減衰力特性は、ピストンロッド18のストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有する。最大長側所定位置Sc1からピストンロッド18が縮み側にストロークする初期の第1中間所定範囲Sc1からSc2は、大きな減衰係数変化率αc1とする。このため、その後の第1中間所定位置Sc2から第2中間所定位置Sc3の第2中間所定範囲Sc2からSc3に、減衰係数変化率αc1よりも小さな減衰係数変化率αc2を設定できる。そして、この減衰係数変化率αc2となる第2中間所定範囲Sc2からSc3に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率αc2とする。したがって、乗車人数および積載重量が変化した場合であっても、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を主に図13から図18に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図13に示す第3実施形態では、図14に示すように、ピストン15と伝達機構401との間に、図2に示す第1実施形態と同様のシート部材124、ディスク121,123,125および減衰バルブ本体122が設けられている。つまり、第3実施形態では、第1実施形態と同様の減衰力発生機構114を有している。また、図14に示すように、ピストンロッド18には、取付軸部59の外周部に軸方向に沿って、ロッド内通路602を構成する通路溝603が周方向に間隔をあけて複数形成されている。ピストン15のシート部117側に、連通路111を介して上室16に連通する通路溝604が形成されている。通路溝604とディスク123のオリフィス151とが通路溝603に連通している。
ピストンロッド18の取付軸部59には、ディスク125のピストン15とは反対側から順に、バルブ規制部126、ディスク609、中間ディスク610、複数枚のディスク611、介在部612、伝達機構401のベース部材405およびナット402が設けられている。介在部612は、複数の円環状の部材から構成される。バルブ規制部126は、ディスク609側の支持部材608がディスク609よりも大径となっている。ディスク609および中間ディスク610には通路615が形成されている。通路615が、中間ディスク610により形成されるディスク609およびディスク611の隙間の可変オリフィス616に連通している。通路615は、ピストンロッド18のロッド内通路602に連通している。よって、可変オリフィス616は、ロッド内通路602と下室17とを連通させる。
伝達機構401の伝達部材406の押圧突起416が、複数枚のディスク611のうち、ディスク609とは反対側のディスク611に当接している。図13に示すバネ機構421と、伝達部材406と、図14に示す可変オリフィス616を開閉するディスク611およびディスク609とが、通路面積調整機構621を構成している。通路面積調整機構621は、ピストンロッド18の位置により変化するバネ機構421の付勢力に応じて可変オリフィス616の通路面積を調整する。バネ機構421のばね定数は図15に示す特性を有している。バネ機構421で制御される可変オリフィス616の通路面積Rは図16に示すように設定される。
最小長側所定範囲Ad0では、図18に示すピストンロッド18が最小長側所定位置Sd1よりもシリンダ10の内部へ押し込まれる。最小長側所定範囲Ad0では、バネ機構421の小径コイルスプリング430および大径コイルスプリング432が伝達機構401に当接し、小径コイルスプリング430および大径コイルスプリング432の長さが縮んでいる。これにより、通路面積調整機構621が、伝達機構401の押圧突起416によって複数枚のディスク611を押圧してディスク609に当接させ、図16に示すように可変オリフィス616を閉塞させる。最小長側所定範囲Ad0では、ロッド内通路602が通路溝604および連通路111を介して上室16のみに連通し、減衰力発生機構114のパイロット室140が上室16のみに連通する。
伸び行程では、最小長側所定範囲Ad0にあって、ピストンロッド18がシリンダ10の外部へ引き出される。伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の連通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。このとき、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、オリフィス151、ロッド内通路602、通路溝604および連通路111を介して上室16に連通している。このため、上室16に近い圧力状態となり、上室16の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。この状態では、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が小さくなり、シート部117から離れにくい状態になる。これにより、伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰係数がほぼ一定したハードの伸び側ハード状態となる。
最大長側所定範囲Ad3では、ピストンロッド18が最大長側所定位置Sd3よりもシリンダ10の外部へ延出する。最大長側所定範囲Ad3では、バネ機構421から伝達機構401が離間していて、図16に示すように可変オリフィス616を開いている。ロッド内通路602が可変オリフィス616を介して下室17に連通する。そのため、伸び側の減衰力発生機構114のパイロット室140が、可変オリフィス616、ロッド内通路602およびオリフィス151を介して下室17に連通する。また、連通路111が、可変オリフィス616、ロッド内通路602および通路溝604を介して下室17に連通する。
伸び行程では、最大長側所定範囲Ad3において、ピストンロッド18がシリンダ10の外部へ引き出される。伸び行程では、ピストン15が上室16側に移動し、上室16の圧力が上がり下室17の圧力が下がる。すると、上室16の圧力が、ピストン15に形成された伸び側の連通路111を介して伸び側の減衰力発生機構114の減衰バルブ147の減衰バルブ本体122に作用する。パイロット室140は、減衰バルブ本体122にシート部117の方向へのパイロット圧を作用させる。このとき、パイロット室140は、オリフィス151、ロッド内通路602および可変オリフィス616を介して下室17に連通しているため、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ本体122は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部117から離れるように開いて、ピストン15とシート部材124との間の径方向の通路148を介して下室17側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。また、通路溝604、ロッド内通路602および可変オリフィス616が上室16と下室17とを連通させているため、油液を流す。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がほぼ一定したソフトの伸び側ソフト状態となる。
そして、ピストンロッド18が、シリンダ10に対し、最小長側所定位置Sd1と最大長側所定位置Sd3との間の中間所定範囲Sd1からSd3にあるとき、緩衝器1は、伸び側減衰係数が伸び側ハード状態と伸び側ソフト状態との間で変化する状態となる特性を有している。
中間所定範囲Sd1からSd3のうち、最小長側所定位置Sd1と中間所定位置Sd2との間の第1中間所定範囲Sd1からSd2では、ピストンロッド18に取り付けられた伝達機構401が、最小長側所定位置Sd1でバネ機構421の大径コイルスプリング432および小径コイルスプリング430の二つの長さを縮ませた状態から、小径コイルスプリング430による付勢力を受けない状態となる。この付勢力に抗して可変オリフィス616のディスク611を開く。このため、中間所定位置Sd2まで減衰係数が急激に下がる。つまり、第1中間所定範囲Sd1からSd2では、減衰係数変化率が大きい減衰係数変化率αd1となる。
中間所定範囲Sd1からSd3のうち、中間所定位置Sd2と最大長側所定位置Sd3との間の第2中間所定範囲Sd2からSd3では、ピストンロッド18に取り付けられた伝達機構401が、大径コイルスプリング432のみを縮長させた状態である。伝達機構401は、上室16の圧力によって、大径コイルスプリング432のみの縮み量に応じた大きさの付勢力に抗して可変オリフィス616のディスク611を開く。これにより、減衰係数変化率が、減衰係数変化率αd1よりも小さい減衰係数変化率αd2となる。よって、中間所定範囲Sd1からSd3の伸び側減衰力特性は、ピストンロッド18のストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有し、最小長側所定位置Sd1からピストンロッド18が伸び側にストロークする初期の第1中間所定範囲Sd1からSd2は減衰係数変化率を大きくする。
第3実施形態に係る緩衝器1は、以上に述べた位置感応の減衰力変化特性が得られる。そして、小さい減衰係数変化率αd2となる第2中間所定範囲Sd2からSd3に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率αd2とすることができる。
第3実施形態に係る緩衝器1は、ピストンロッド18が最小長側所定位置Sd1と最大長側所定位置Sd3との間の中間所定範囲Sd1からSd3にあるとき、伸び側減衰係数が伸び側ハード状態と伸び側ソフト状態との間で変化する状態となる伸び側減衰力特性を有する。そして、この伸び側減衰力特性は、ピストンロッド18のストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有し、最小長側所定位置Sd1からピストンロッド18が伸び側にストロークする初期、つまり最小長側所定位置Sd1から中間所定位置Sd2までの第1中間所定範囲Sd1からSd2で大きな減衰係数変化率αd1とする。このため、その後の中間所定位置Sd2から最大長側所定位置Sd3まで第2中間所定範囲Sd2からSd3に、減衰係数変化率αd1よりも小さな減衰係数変化率αd2を設定できる。そして、この減衰係数変化率αd2となる第2中間所定範囲Sd2からSd3に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率αd2とすることができる。したがって、乗車人数および積載重量が変化した場合であっても、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。
なお、第3実施形態においては、バネ機構421が、小径コイルスプリング430および大径コイルスプリング432の二本で上記した非線形の特性を得た。しかし、図18に示すように、一本で非線形の特性が得られる非線形コイルスプリング630を用いても良い。
以上に述べた実施形態によれば、作動流体が封入されるシリンダと、シリンダ内に摺動可能に嵌装され、前記シリンダ内を2室に区画するピストンと、ピストンに連結されると共にシリンダの外部に延出するピストンロッドと、ピストンの移動により前記2室間を前記作動流体が流れるように連通する連通路と、前記連通路に設けられ、前記ピストンの移動によって生じる前記作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生手段と、を備え、前記減衰力発生手段は、前記ピストンロッドが最小長側所定位置よりも前記シリンダの内部へ進入される範囲で伸び側減衰係数がハード状態となる最小長側特性と、前記ピストンロッドが最大長側所定位置よりも前記シリンダの外部へ延出する範囲で伸び側減衰係数がソフト状態となる最大長側特性と、前記ピストンロッドが前記最小長側所定位置と前記最大長側所定位置との間にあるとき伸び側減衰係数が前記ハード状態と前記ソフト状態との間で変化する状態となる特性とを有し、前記最小長側所定位置と前記最大長側所定位置との間の伸び側減衰力特性は、前記ピストンロッドのストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有し、少なくとも前記最小長側所定位置から前記ピストンロッドが伸び側にストロークするときは前記減衰係数変化率を大きくする。このように、伸び側減衰力特性は、ピストンロッドのストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有し、最小長側所定位置からピストンロッドが伸び側にストロークする初期は大きな減衰係数変化率とする。このため、その後に、これよりも小さな減衰係数変化率を設定できる。そして、この小さな減衰係数変化率となる範囲に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率とすることができる。したがって、乗車人数および積載重量が変化した場合であっても、搭載車両の乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。したがって、減衰力特性の一層の向上を図ることができる。
また、前記伸び側減衰力特性は、前記減衰係数変化率が大きい部分の範囲よりも小さい部分の範囲が広い。このため、乗車人数および積載重量の変化が比較的大きくても、搭載車両の乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。
また、前記減衰係数変化率が小さい部分における減衰係数は、前記ピストンロッドまたは前記シリンダに加わる質量の変化に対し、臨界減衰係数との比が一定となるように定められている。このため、乗車人数および積載重量の変化に対して、搭載車両Vの乗り心地や操縦安定性の特性変化をさらに抑えることができる。
また、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、前記シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出するピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記2室間を前記作動流体が流れるように連通する連通路と、前記連通路に設けられ、前記ピストンの移動によって生じる前記作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生手段と、を備え、前記減衰力発生手段は、前記ピストンロッドが最大長側所定位置よりも前記シリンダの外部へ延出する範囲で縮み側減衰係数がハード状態となる最大長側特性と、前記ピストンロッドが最小長側所定位置よりも前記シリンダの内部へ進入される範囲で縮み側減衰係数がソフト状態となる最小長側特性と、前記最大長側所定位置と前記最小長側所定位置との間では縮み側減衰係数が前記ソフト状態と前記ハード状態との間で変化する状態となる特性とを有、前記最大長側所定位置と前記最小長側所定位置との間の縮み側減衰力特性は、前記ピストンロッドのストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有し、少なくとも前記最大長側所定位置から前記ピストンロッドが縮み側にストロークするときは前記減衰係数変化率を大きくする。このように、縮み側減衰力特性は、ピストンロッドのストロークに対する減衰係数変化率が大きい部分と小さい部分とを有し、最大長側所定位置からピストンロッドが縮み側にストロークする初期は大きな減衰係数変化率とする。このため、その後に、これよりも小さな減衰係数変化率を設定できる。そして、この小さな減衰係数変化率となる範囲に1G位置を設定することによって、1G位置での減衰係数変化率を小さい減衰係数変化率とすることができる。したがって、乗車人数および積載重量が変化した場合であっても、搭載車両の乗り心地や操縦安定性の特性変化を抑えることができる。したがって、減衰力特性の一層の向上を図ることができる。
また、前記減衰力発生手段は、前記ピストンロッドの位置により前記連通路の通路面積を調整する通路面積調整機構を有する。このため、ピストンロッドの位置による減衰力特性の調整が容易かつ詳細にできる。
また、上記緩衝器を、前輪および後輪のうち、後輪側のみに用いる。このため、搭載車両の乗り心地や操縦安定性の特性変化を効果的に抑えることができる。
上記各実施の形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らない。例えば、外筒をなくしシリンダ10内の下室17の上室16とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。勿論、上記したベースバルブ23に本発明を適用することも可能である。また、シリンダ10の外部にシリンダ10内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合にも適用可能である。なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。