JPWO2012157600A1 - 磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置 - Google Patents

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Abstract

本発明により、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体が提供される。本発明の磁気記録媒体は、少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層(30)と、シード層(31,32)と、配向制御層(33)と、垂直磁性層とを、この順で積層される。軟磁性下地層(30)は、アモルファス若しくは微結晶構造を有する。シード層(31,32)は、金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層(31)と、この上に島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層(32)とを含む。配向制御層(33)及び垂直磁性層は、第2のシード層(32)を起点にして、それぞれの結晶粒子が厚み方向に連続した柱状晶を構成している。

Description

本発明は、磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置に関するものである。
本願は、2011年5月17日に日本に出願された特願2011−110354号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)は、現在その記録密度が年率50%以上で増えており、今後もその傾向は続くと言われている。それに伴って高記録密度化に適した磁気ヘッド及び磁気記録媒体の開発が進められている。
現在、市販されている磁気記録再生装置に搭載されている磁気記録媒体は、磁性膜内の磁化容易軸が主に垂直に配向した、いわゆる垂直磁気記録媒体である。垂直磁気記録媒体は、高記録密度化した際にも、記録ビット間の境界領域における反磁界の影響が小さく、鮮明なビット境界が形成されるため、ノイズの増加が抑えられる。しかも高記録密度化に伴う記録ビット体積の減少が少なくて済むため、熱揺らぎ効果にも強い。このため、近年大きな注目を集めており、垂直磁気記録に適した媒体の構造が提案されている。
また、磁気記録媒体の更なる高記録密度化という要望に応えるべく、垂直磁性層に対する書き込み能力に優れた単磁極ヘッドを用いることが検討されている。このような単磁極ヘッドに対応するために、記録層である垂直磁性層と非磁性基板との間に、裏打ち層と称される軟磁性材料からなる層を設けることにより、単磁極ヘッドと磁気記録媒体との間の磁束の出入りの効率を向上させた磁気記録媒体が提案されている。
しかしながら、上述した裏打ち層を単に設けた磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置では、記録再生時の記録再生特性や、熱揺らぎ耐性、記録分解能において満足できるものではなく、これらの特性に優れた磁気記録媒体が要望されている。
とりわけ記録再生特性として、再生時における信号とノイズの比(S/N比)を大きくする高S/N化と、熱揺らぎ耐性の向上が重要であり、これらの両立は、これからの高記録密度化においては必須事項である。しかしながら、この2項目は相反する関係を有しているため、一方を向上させれば、一方が不十分となり、高レベルでの両立は重要な課題となっている。
このような課題を解決するために、3層の磁性層を、非磁性層等を用いてAFC(アンチ・フェロ・カップリング)結合させることにより、合成Mrt並びにPW50の低下という長所を享受しながら、S/N比の低下を起こさないことを特徴とする磁気記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
具体的に、この特許文献1には、基板と、前記基板上に設けられ、残留磁化Mr、厚さt、及び残留磁化・厚さ積Mrtを有する第1下部強磁性層と、前記第1下部強磁性層上に設けられた強磁性結合層と、前記強磁性結合層上に設けられ、Mrt値を有する第2下部強磁性層と、前記第2下部強磁性層上に設けられた反強磁性結合層と、前記反強磁性結合層上に設けられ、前記第1及び第2下部強磁性層のMrt値の合計よりも大きなMrt値を有する上部強磁性層とを有することを特徴とする磁気記録媒体が記載されている。
一方、垂直磁気記録媒体の記録再生特性、熱揺らぎ特性を向上させるために、配向制御層を用い、多層の磁性層を形成して、それぞれの磁性層の結晶粒子を連続した柱状晶とし、これにより磁性層の垂直配向性を高めることが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
また、配向制御層としては、例えばRuを用いることが開示されている。Ruは、その柱状晶の頂部にドーム状の凸部を有するため、この凸部上に磁性層等の結晶粒子を成長させ、また成長した結晶粒子の分離構造を促進し、また結晶粒子を孤立化させ、磁性粒子を柱状に成長させる効果を有する(例えば、特許文献3を参照。)。
また、配向制御層を構成する柱状晶を微細化するため、軟磁性層と配向制御層との間に、シード層として、NiW合金層を設けることが提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
また、基板上に軟磁性層と中間層と垂直記録層と保護層を有する構造の磁気記録媒体において、基板に近い側から第1の中間層はPd、Pt、Au、Ag、Rh、Ru、Tiよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主成分とした金属層であり、第2の中間層は酸素含有層であり、第3の中間層はPd、Pt、Au、Ag、Rh、Ru、Tiよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主成分とした金属層であり、第4の中間層はCo、Cr、Ru、Tiより選ばれた少なくとも1種の元素を主成分とする金属層であり、前記垂直記録層はCoを主成分とし、かつ酸素を含有する磁気記録媒体が提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
そして、この特許文献5の段落[0010]〜[0011]には、第1中間層によって垂直配向を制御し、第2中間層の酸素含有層と第3中間層の金属層において島状に孤立した構造(凸状の構造)を形成し、この凸形状を核としてさらに六方稠密構造の第4中間層を形成した四層構造中間層を用いて記録層に酸素を含有することで、記録層の保磁力及び角形比が向上、媒体ノイズが低減、耐熱減磁特性が向上することが記載されている。
特開2005−276410号公報 特開2004−310910号公報 特開2007−272990号公報 特開2007−179598号公報 特開2004−134041号公報
ところで、磁気記録媒体に対する高記録密度化の要求は留まることがなく、磁気記録媒体には今まで以上に高い特性の向上が求められている。具体的に、磁気記録媒体の記録密度を高めるためには、上述した配向制御層を構成する結晶を微細化し、この上に形成される柱状構造の磁性粒子を微細化する必要がある。
なお、上記特許文献5に記載の発明では、軟磁性層や第1中間層の形成に高温での熱処理を伴うため(段落[0022]を参照。)、これらの層の結晶化や結晶粒の肥大化が進行してしまい、磁性粒子の微細化が阻害されることがわかった。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体及びその製造方法、並びにそのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アモルファス若しくは微結晶構造を有する軟磁性下地層の上に、表面エネルギーの小さい金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層を形成し、その表面に、比較的融点が低く、且つ表面エネルギーが大きいfcc構造又はhcp構造を有する金属からなる第2のシード層を形成することによって、この第2のシード層の成長初期核の発生時に、軟磁性下地層や第1のシード層を構成する結晶粒子の影響を受けずに、第2のシード層を構成する結晶粒子が微細且つ均質なものとなることを見出した。そして、この第2のシード層を起点にして、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続して結晶成長させた各層の柱状晶を、微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子によって構成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、シード層と、配向制御層と、垂直磁性層とを、この順で積層した構成を少なくとも有する磁気記録媒体であって、
前記軟磁性下地層は、アモルファス若しくは微結晶構造を有し、
前記シード層は、金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層と、この上に島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層とを含み、
前記配向制御層及び前記垂直磁性層は、前記第2のシード層を起点にして、それぞれの結晶粒子が厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを特徴とする磁気記録媒体。
(2) 前記第1のシード層は、CrN、TiN、AlN、ZnO、TiO、MgOからなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体。
(3) 前記第1のシード層は、ZnO又はAlNを含むことを特徴とする前項(2)に記載の磁気記録媒体。
(4) 前記第1のシード層の膜厚は、0.4nm〜10nmの範囲内であることを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
(5) 前記第2のシード層は、Cu、Au、Agからなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする前項(1)〜(4)の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
(6) 前記第2のシード層は、Au又はAgを含むことを特徴とする前項(5)に記載の磁気記録媒体。
(7) 前記配向制御層は、Ru、Ru合金、CoCr合金からなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする前項(1)〜(6)の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
(8) 前記配向制御層は、Ruを含むことを特徴とする前項(7)に記載の磁気記録媒体。
(9) 非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、シード層と、配向制御層と、垂直磁性層とを、この順で積層した構成を少なくとも有する磁気記録媒体の製造方法であって、
前記軟磁性下地層をアモルファス若しくは微結晶構造とし、
前記シード層を、金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層と、この上に島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層とを含む構造とし、
前記第2のシード層を起点にして、前記配向制御層及び前記垂直磁性層を構成する結晶粒子が、それぞれ厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(10) 前項(1)〜(8)の何れか一項に記載の磁気記録媒体、又は、前項9)に記載の製造方法により製造された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
以上のように、本発明では、第2のシード層を起点にして、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続して結晶成長させた各層の柱状晶を、微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子によって構成することができる。これにより、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体及びその製造方法、並びにそのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することが可能である。
各層の柱状晶が基板面に対して垂直に成長した状態を示す断面図である。 本発明を適用した磁気記録媒体の特徴部分を模式的に示す断面図である。 本発明を適用した磁気記録媒体の一例を示す断面図である。 磁性層と非磁性層との積層構造を拡大して示す断面図である。 磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。 実施例1−1のサンプル表面を撮影したSEM写真である。 実施例1−2のサンプル表面を撮影したSEM写真である。 比較例1−2のサンプル表面を撮影したSEM写真である。
以下、本発明を適用した磁気記録媒体及び磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、多層化した磁性層の垂直配向性を高め、なお且つ、磁性粒子を微細化し、その結晶粒径を均質化するためには、配向制御層を構成する結晶粒子を微細化し、その結晶粒径を均質化する必要があることを解明した。
すなわち、図1に示すように、配向制御層11には、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部をドーム状の凸とする凹凸面11aが形成され、この凹凸面11aから厚み方向に磁性層(又は非磁性層)12の結晶粒子が柱状晶S1となって成長する。また、この柱状晶S1の上に形成される非磁性層(又は磁性層)13及び最上層の磁性層14の結晶粒子も、柱状晶S1に連続した柱状晶S2,S3となってエピタキシャル成長する。
このように、磁性層12〜14を多層化した場合、これら各層12〜14を構成する結晶粒子は、配向制御層11から最上層の磁性層14に至るまで連続した柱状晶S1〜S3となってエピタキシャル成長を繰り返す。なお、図1に示す層13は、グラニュラー構造を有する層であり、この層13を形成する柱状晶S2の周囲には酸化物15が形成されている。
したがって、配向制御層11の結晶粒子を微細化し、その結晶粒径を均質化すれば、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sを高密度化し、更に、これら各柱状晶Sの頂部から厚み方向に柱状に成長する各層12〜14の柱状晶S1〜S3も高密度化することが可能となる。
そして、本発明者は、このような知見に基づいて更なる検討を重ねた結果、少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、シード層と、配向制御層と、垂直磁性層とを、この順で積層した磁気記録媒体において、軟磁性下地層をアモルファス若しくは微結晶構造とし、シード層を、金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層と、この上に島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層とを含む構造とすることで、第2のシード層を起点にして、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続して結晶成長させた各層の柱状晶を、微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子によって構成できることを見出した。
すなわち、本発明における第2のシード層は、島状又は網状に形成された金属によって微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子を構成しており、この第2のシード層を起点にして、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続した柱状晶を結晶成長させた場合、各層の柱状晶を微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子によって構成することが可能である。
これにより、本発明では、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体を提供することが可能である。
以下、本発明を適用した磁気記録媒体の特徴部分について、図2を参照しながら更に詳細に説明する。
本発明を適用した磁気記録媒体では、図2において模式的に示すように、非磁性基板(図示せず。)の上に形成される軟磁性下地層30がアモルファス若しくは微結晶構造を有することで、この軟磁性下地層30の表面30aにおける平滑性を高め、この上に形成される第1のシード層31の表面31aにおける平滑性も高めている。さらに、第1のシード層31は、金属酸化物又は金属窒化物からなることで、その表面31aの平滑性を高めることが可能である。
そして、本発明では、この第1のシード層31の上に、島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層32を形成する。上述したように、第1シード層31の表面31aにおける平滑性は高められているため、この上に形成される金属(第2のシード層32)の成長初期核の発生確率を均一にすることができる。これにより、第2のシード層32を構成する結晶粒子は微細且つ均質なものとなる。
また、本発明では、第1のシード層31に表面エネルギーの小さい金属酸化物又は金属窒化物を選択し、この上に形成される第2のシード層32には、比較的融点が低く、且つ、表面エネルギーの大きいfcc構造又はhcp構造を有する金属を連続膜とならないような膜厚以下で成膜することで、金属(第2のシード層32)の結晶を島状又は網状に形成することができる。また、この金属の結晶粒径は均質なものとなる。
第1のシード層31については、CrN、TiN、AlN、ZnO、TiO、MgOからなる群から選ばれる何れか1種を含む金属酸化物又は金属窒化物を用いることが好ましく、この中でも特に、ZnO又はAlNを用いることが好ましい。また、第1のシード層31を成膜する際は、スパッタリング法等を用いることができる。
本発明では、このような金属酸化物又は金属窒化物を用いることで、第1のシード層31の表面エネルギーを小さくすると共に、その表面31aにおける平滑性を高めることができる。また、第1のシード層31の表面が平坦化されることによって、この上に成膜される第2のシード層32は、核発生密度が均質化し、且つ、その核が第1のシード層31との表面エネルギー差により微細化する。すなわち、図2に示すように、第1のシード層31を構成する結晶粒子と第2のシード層32を構成する結晶粒子とは、1:1に対応したエピタキシャル成長になるとは限らず、第2のシード層32を構成する結晶粒子の核発生密度を、第1のシード層31を構成する結晶粒子に対して同等以上とすることが可能である。
第1のシード層の膜厚は、0.4nm〜10nmの範囲内とすることが好ましく、0.6nm〜6nmとすることがより好ましく、0.8nm〜4nmとすることがもっとも好ましい。第1シード層の膜厚を上記の範囲内とすることで、その成膜後の表面平滑性を高めることができる。第1のシード層の膜厚を制御することにより表面平滑性が高まる理由は、金属酸化物もしくは金属窒化物はアモルファスもしくは結晶成長する材料であるが、アモルファス材料の場合は、連続化膜厚以上にすることが平坦化のために重要であり、また、結晶材料の場合は、連続化膜厚以上でかつ膜厚を薄く保つことが、平坦化のために重要だからである。
第2のシード層32については、Cu、Au、Agからなる群から選ばれる何れか1種を含む金属を用いることが好ましく、その中で特に、Au又はAgを用いることが好ましい。このような金属は、c面が配向し易く、また表面エネルギーが大きいため、微細で均質な島状又は網状の結晶を形成し易い。また、第2のシード層32を成膜する際は、スパッタリング法等を用いることができるが、この第2のシード層32を島状又は網状とするためには、成膜時間を短くして、第2のシード層32が連続膜となることを防ぐ必要がある。
そして、本発明では、この第2のシード層32の上に、配向制御層33を形成する。配向制御層33については、Ru、Ru合金、CoCr合金からなる群から選ばれる何れか1種を用いることが好ましく、その中で特に、Ruを用いることが好ましい。これにより、配向制御層33を構成する結晶粒子は、第2のシード層32を構成する結晶粒子と1:1で対応しながら、厚み方向に連続した柱状晶となってエピタキシャル成長する。
また、この配向制御層33を構成する各柱状晶の頂部には、ドーム状の凸部33aが形成されるため、この凸部33a上に形成される垂直磁性層(図示せず。)の結晶粒子を1:1で対応させながら、厚み方向に連続した柱状晶となるようにエピタキシャル成長させることができる。
配向制御層33を構成する結晶粒子の平均粒径は、6nm以下であることが好ましく、より好ましくは4nm以下である。従来の配向制御層を構成する結晶粒子は、その平均粒径が7〜9nm程度である。これに対して、本発明では、配向制御層33を構成する結晶粒子の平均粒径を6nm以下とすることができる。これにより、本発明では、磁気記録媒体の磁性粒子密度を2倍以上に高めることができ、その結果、磁気記録媒体の記録密度も2倍以上に高めることが可能である。
図3は、本発明を適用した磁気記録媒体の一例を示したものである。
この磁気記録媒体は、図3に示すように、非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2と、シード層9と、配向制御層3と、垂直磁性層4と、保護層5と、潤滑層6とを順次積層した構造を有している。
垂直磁性層4は、非磁性基板1側から、下層の磁性層4aと、中層の磁性層4bと、上層の磁性層4cとの3層を含み、磁性層4aと磁性層4bとの間に下層の非磁性層7aと、磁性層4bと磁性層4cとの間に上層の非磁性層7bを含むことで、これら磁性層4a〜4cと非磁性層7a,7bとが交互に積層された構造を有している。
さらに、図示を省略するものの、各磁性層4a〜4c及び非磁性層7a,7bを構成する結晶粒子は、配向制御層3を構成する結晶粒子と共に、厚み方向に連続した柱状晶を形成している。
非磁性基板1としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよく、例えば、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタ法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いることもできる。
ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどを用いることができ、アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラスや、アルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラスなどを用いることができる。セラミック基板としては、例えば、汎用の酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体、又はこれらの繊維強化物などを用いることができる。
非磁性基板1は、その平均表面粗さ(Ra)が2nm(20Å)以下、好ましくは1nm以下であるとことが、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。また、表面の微小うねり(Wa)が0.3nm以下(より好ましくは0.25nm以下。)であることが、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。また、端面のチャンファー部の面取り部と、側面部との少なくとも一方の表面平均粗さ(Ra)が10nm以下(より好ましくは9.5nm以下。)のものを用いることが、磁気ヘッドの飛行安定性にとって好ましい。なお、微少うねり(Wa)は、例えば、表面荒粗さ測定装置P−12(KLM−Tencor社製)を用い、測定範囲80μmでの表面平均粗さとして測定することができる。
また、非磁性基板1は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層2と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。この場合、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設けることが好ましく、これにより、これらを抑制することが可能となる。なお、密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(30Å)以上であることが好ましい。
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の、基板面に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含むアモルファス若しくは微結晶構造の軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど。)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど。)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど。)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど。)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど。)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど。)、FeMg系合金(FeMgOなど。)、FeZr系合金(FeZrNなど。)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
その他にも、軟磁性下地層2としては、Coを80at%以上含有し、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo等のうち少なくとも1種を含有し、アモルファス若しくは微結晶構造を有するCo合金を用いることができる。この具体的な材料としては、例えば、CoZr、CoZrNb、CoZrTa、CoZrCr、CoZrMo系合金などを好適なものとして挙げることができる。
軟磁性下地層2は、2層の軟磁性膜から構成されており、2層の軟磁性膜の間にはRu膜を設けることが好ましい。Ru膜の膜厚を0.4〜1.0nm、又は1.6〜2.6nmの範囲で調整することで、2層の軟磁性膜がAFC構造となる。このようなAFC構造を採用することで、いわゆるスパイクノイズを抑制することができる。
シード層9及び配向制御層3には、上述した図2に示す第1のシード層31、第2のシード層32及び配向制御層33を順に積層したものを採用できるため、その説明を省略するものとする。
また、配向制御層3と垂直磁性層4の間には、非磁性下地層8を設けることが好ましい。配向制御層3直上の垂直磁性層4の初期部には、結晶成長の乱れが生じやすく、これがノイズの原因となる。この初期部の乱れた部分を非磁性下地層8で置き換えることで、ノイズの発生を抑制することができる。
非磁性下地層8は、Coを主成分とし、さらに酸化物を含んだ材料からなることが好ましい。酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましく、その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。酸化物の含有量としては、磁性粒子を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。
また、非磁性下地層8は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。さらに、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr−SiO、CoCr−TiO−Cr、CoCr−Cr−TiO−SiOなどを好適に用いることができる。また、結晶成長の観点からPtを添加してもよい。
非磁性下地層8の厚みは、0.2nm以上3nm以下であることが好ましい。3nmの厚さを超えると、Hc及びHnの低下が生じるために好ましくない。
磁性層4aは、Coを主成分とし、さらに酸化物を含んだ材料からなり、この酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。また、磁性層4aは、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
磁性層4aは、図4に示すように、酸化物41を含む層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。また、磁性粒子42は、磁性層4a,4b、更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を有することにより、磁性層4aの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)を得ることができる。
このような構造を得るためには、含有させる酸化物41の量及び磁性層4aの成膜条件が重要となる。すなわち、酸化物41の含有量としては、磁性粒子42を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは6mol%以上13mol%以下である。
磁性層4a中の酸化物41の含有量として上記範囲が好ましいのは、この磁性層4aを形成した際、磁性粒子42の周りに酸化物41が析出し、磁性粒子42の孤立化及び微細化が可能となるためである。一方、酸化物41の含有量が上記範囲を超えた場合には、酸化物41が磁性粒子42中に残留し、磁性粒子42の配向性及び結晶性を損ね、更には磁性粒子42の上下に酸化物41が析出し、結果として磁性粒子42が磁性層4a〜4cを上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。また、酸化物41の含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
磁性層4a中のCrの含有量は、20at%以下(さらに好ましくは6at%以上16at%以下)であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲としたのは、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuを下げ過ぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるからである。
一方、Crの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子42の結晶性及び配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。また、Crの含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが高いため、垂直保磁力が高くなり過ぎ、データを記録する際、磁気ヘッドで十分に書き込むことができず、結果として高密度記録に適さない記録特性(OW)となるため好ましくない。
磁性層4a中のPtの含有量は、8at%以上25at%以下であることが好ましい。Ptの含有量を上記範囲としたのは、8at%未満であると、垂直磁性層4に必要な磁気異方性定数Kuが低くなるためである。一方、25at%を超えると、磁性粒子42の内部に積層欠陥が生じ、その結果磁気異方性定数Kuが低くなる。したがって、高密度記録に適した熱揺らぎ特性及び記録再生特性を得るためには、Ptの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
また、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42中にfcc構造の層が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。一方、Ptの含有量が上記範囲未満である場合には、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。
磁性層4aは、Co、Cr、Pt、酸化物41の他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
また、上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4aに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO){Cr含有量14at%、Pt含有量18at%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiOからなる酸化物組成が10mol%}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr)の他、(CoCrPt)−(Ta)、(CoCrPt)−(Cr)−(TiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)−(TiO)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO)、(CoCrPtB)−(Al)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y)、(CoCrPtRu)−(SiO)などの組成物を挙げることができる。
磁性層4bには、磁性層4aと同様の材料を用いることができるため、説明を省略するものとする。また、磁性層4bは、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。この磁性粒子42は、図4に示すように、磁性層4a,4b、更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を形成することにより、磁性層4bの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得ることができる。
磁性層4cは、Coを主成分とするとともに酸化物を含まない材料から構成することが好ましく、図6に示すように、層中の磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42から柱状にエピタキシャル成長している構造であることが好ましい。この場合、磁性層4a〜4cの磁性粒子42が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、磁性層4bの磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42からエピタキシャル成長していることで、磁性層4bの磁性粒子42が微細化され、さらに結晶性及び配向性がより向上したものとなる。
磁性層4c中のCrの含有量は、10at%以上24at%以下であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲とすることで、データの再生時における出力が十分確保でき、更に良好な熱揺らぎ特性を得ることができる。一方、Crの含有量が上記範囲を超える場合には、磁性層4cの磁化が小さくなり過ぎるため好ましくない。また、Cr含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が十分に生じず、記録再生時のノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
また、磁性層4cは、Co、Crの他に、Ptを含んだ材料であってもよい。磁性層4c中のPtの含有量は、6at%以上20at%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲にある場合には、高記録密度に適した十分な保磁力を得ることができ、更に記録再生時における高い再生出力を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性を得ることができる。
一方、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性層4c中にfcc構造の相が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。また、Ptの含有量が上記範囲未満である場合には、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。
磁性層4cは、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性を得ることができる。
また、上記元素の合計の含有量は、16at%以下であることが好ましい。一方、16at%を超えた場合には、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4cに適した材料としては、特に、CoCrPt系、CoCrPtB系を挙げることできる。CoCrPtB系の場合、CrとBの合計の含有量は、18at%以上28at%以下であることが好ましい。
磁性層4cに適した材料としては、例えば、CoCrPt系では、Co14〜24Cr8〜22Pt{Cr含有量14〜24at%、Pt含有量8〜22at%、残部Co}、CoCrPtB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt0〜16B{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、B含有量0〜16at%、残部Co}が好ましい。その他の系でも、CoCrPtTa系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、Ta含有量1〜5at%、残部Co}、CoCrPtTaB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta1〜10B{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、Ta含有量1〜5at%、B含有量1〜10at%、残部Co}の他にも、CoCrPtBNd系、CoCrPtTaNd系、CoCrPtNb系、CoCrPtBW系、CoCrPtMo系、CoCrPtCuRu系、CoCrPtRe系などの材料を挙げることができる。
垂直磁性層4の垂直保磁力(Hc)は、3000[Oe]以上とすることが好ましい。保磁力が3000[Oe]未満である場合には、記録再生特性、特に周波数特性が不良となり、また、熱揺らぎ特性も悪くなるため、高密度記録媒体として好ましくない。
垂直磁性層4の逆磁区核形成磁界(−Hn)は、1500[Oe]以上であることが好ましい。逆磁区核形成磁界(−Hn)が1500[Oe]未満である場合には、熱揺らぎ耐性に劣るため好ましくない。
垂直磁性層4は、磁性粒子の平均粒径が3〜12nmであることが好ましい。この平均粒径は、例えば垂直磁性層4をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、観察像を画像処理することにより求めることができる。
垂直磁性層4の厚みは、5〜20nmとすることが好ましい。垂直磁性層4の厚みが上記未満であると、十分な再生出力が得られず、熱揺らぎ特性も低下する。また、垂直磁性層4の厚さが上記範囲を超えた場合には、垂直磁性層4中の磁性粒子の肥大化が生じ、記録再生時におけるノイズが増大し、信号/ノイズ比(S/N比)や記録特性(OW)に代表される記録再生特性が悪化するため好ましくない。
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO、ZrOを含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1〜10nmとすることがヘッドと媒体の距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
潤滑層6には、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。
本発明では、非磁性基板1側の磁性層をグラニュラー構造の磁性層とし、保護層5側の磁性層を、酸化物を含まない非グラニュラー構造の磁性層とすることが好ましい。このような構成とすることにより、磁気記録媒体の熱揺らぎ特性、記録特性(OW)、S/N比等の各特性の制御・調整をより容易に行うことが可能となる。
また、本発明では、上記垂直磁性層4を4層以上の磁性層で構成することも可能である。例えば、上記磁性層4a,4bに加えて、グラニュラー構造の磁性層を3層で構成し、その上に、酸化物を含まない磁性層4cを設けた構成とし、また、酸化物を含まない磁性層4cを2層構造として、磁性層4a,4bの上に設けた構成とすることができる。
また、本発明では、垂直磁性層4を構成する3層以上の磁性層間に非磁性層7(図4では符号7a,7bで示す。)を設けることが好ましい。非磁性層7を適度な厚みで設けることで、個々の膜の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができる。その結果S/N比をより向上させることが可能である。
垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7としては、hcp構造を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、Ru、Ru合金、CoCr合金、CoCrX1合金(X1は、Pt、Ta、Zr、Re,Ru、Cu、Nb、Ni、Mn、Ge、Si、O、N、W、Mo、Ti、V、Zr、Bの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の元素を表す。)などを好適に用いることができる。
垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7として、CoCr系合金を用いる場合には、Coの含有量は、30〜80at%の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、磁性層間のカップリングを小さく調整することが可能であるからである。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7として、hcp構造を有する合金として、Ru以外では、例えばRu、Re、Ti、Y、Hf、Znなどの合金も用いることができる。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7として、その上下の磁性層の結晶性や配向性を損ねない範囲で、他の構造をとる金属や合金などを使用することもできる。具体的には、例えば、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ir、Mo、W、Ta、Nb、V、Bi、Sn、Si、Al、C、B、Cr又はそれらの合金を用いることができる。特に、Cr合金としては、CrX2(X2は、Ti、W、Mo、Nb、Ta、Si、Al、B、C、Zrの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の元素を表す。)などを好適に用いることが可能である。この場合のCrの含有量は60at%以上とすることが好ましい。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7としては、上記合金の金属粒子が酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物中に分散した構造のものを用いることが好ましい。さらに、この金属粒子が非磁性層7を上下に貫いた柱状構造を有することがより好ましい。このような構造とするためには、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiOなど、金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrNなど、金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiCなどをそれぞれ用いることができる。さらに、例えば、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr、CoCrPt−Ta、Ru−SiO、Ru−Si、Pd−TaCなどを用いることができる。
垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、垂直磁性膜の結晶成長や結晶配向を損なわない含有量であることが好ましい。また、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、合金に対して、4mol%以上30mol%以下であることが好ましい。
この非磁性層7中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲を超える場合には、金属粒子中に酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が残留し、金属粒子の結晶性や配向性を損ねるほか、金属粒子の上下にも酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が析出してしまい、金属粒子が非磁性層7を上下に貫く柱状構造となりにくくなり、この非磁性層7の上に形成された磁性層の結晶性や配向性を損ねるおそれがあるため好ましくない。一方、この非磁性層7中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲未満である場合には、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の添加による効果が得られないため好ましくない。
図5は、本発明を適用した磁気記録再生装置の一例を示すものである。
この磁気記録再生装置は、図3に示す構成を有する磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に情報を記録再生する磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。また、記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。また、本発明を適用した磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
実施例1では、先ず、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を減圧排気した後、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて、層厚10nmの密着層を成膜した。また、この密着層の上に、基板温度を100℃以下とし、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20at%、Zr含有量5at%、Ta含有量5at%、残部Co}のターゲットを用いて、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上に層厚0.7nmのRu層を成膜した後、再びCo−20Fe−5Zr−5Taのターゲットを用いて、層厚25nmの軟磁性層を成膜して、これを軟磁性下地層とした。
次に、軟磁性下地層の上に、ZnOターゲットを用いて、層厚20nmの第1のシード層を成膜した後、その表面に、Auターゲットを用いて、第2のシード層を成膜した。このとき、第2のシード層の層厚を0.5nm(実施例1−1)、1nm(実施例1−2)、1.5nm(比較例1−1)とした各サンプルを作製した。また、比較のため、ZnOの表面にAuを成膜しないサンプル(比較例1−2)も作製した。
そして、これら実施例1−1,1−2及び比較例1−1,1−2の各サンプルについて、その表面をSEMで観察したところ、比較例1−2では、ZnOの連続膜が形成されており、実施例1−1では、このZnOの表面にAuの結晶が島状に成長していた。一方、実施例1−2では、このZnOの表面にAuの結晶が網状に成長していた。一方、比較例1−1では、このZnOの表面にAuが連続膜として成長していた。なお、実施例1−2、実施例1−1、比較例1−2の各表面のSEM写真を、それぞれ図6、図7、図8に示す。
(実施例2)
実施例2では、上記実施例1で作製した実施例1−1,1−2及び比較例1−1,1−2の各サンプルを用いて、実際に磁気記録媒体を作製し、作製された各磁気記録媒体を、それぞれ実施例2−1,2−2及び比較例2−1,2−2とした。
磁気記録媒体を作製する際は、先ず、各サンプルの上に、Ruターゲットを用いて、層厚20nmの配向制御層を成膜した。なお、配向制御層を成膜する際は、スパッタ圧力を0.8Paとして層厚10nmのRuを成膜した後、スパッタ圧力を1.5Paとして層厚10nmのRuを成膜した。
次に、配向制御層の上に、91(Co15Cr16Pt)−6(SiO)−3(TiO){Cr含有量15at%、Pt含有量18at%、残部Coの合金を91mol%、SiOからなる酸化物を6mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}のターゲットを用いて、層厚9nmの磁性層を成膜した。なお、このときのスパッタ圧力は2Paとした。
次に、磁性層の上に、88(Co30Cr)−12(TiO){Cr含有量30at%、残部Coの合金を88mol%、TiOからなる酸化物を12mol%}のターゲットを用いて、層厚0.3nmの非磁性層を成膜した。
次に、非磁性層の上に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO){Cr含有量11at%、Pt含有量18at%、残部Coの合金を92mol%、SiOからなる酸化物を5mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}のターゲットを用いて、層厚6nmの磁性層を成膜した。なお、このときのスパッタ圧力は2Paとした。
次に、磁性層の上に、Ruターゲットを用いて層厚0.3nmの非磁性層を成膜した。
次に、非磁性層の上に、Co20Cr14Pt3B{Cr含有量20at%、Pt含有量14at%、B含有量3at%、残部Co}のターゲットを用いて、層厚7nmの磁性層を成膜した。なお、このときのスパッタ圧力は0.6Paとした。
次に、磁性層の上に、CVD法により層厚3.0nmの保護層を成膜し、次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜を成膜し、実施例2−1,2−2及び比較例2−1,2−2の各磁気記録媒体を得た。
そして、これら実施例2−1,2−2及び比較例2−1,2−2の各磁気記録媒体について、保磁力分散「ΔHc/Hc」、「SNR(dB)」、オーバーライト特性「OW(dB)」、ビットエラーレート「BER」を測定した。その測定結果を表1に示す。なお、ビットエラーレートは、「−log(エラービット数/総ビット数)」で算出した。
また、各磁気記録媒体について、それぞれ上記Co20Cr14Pt3Bの磁性層を形成しないサンプルを作製して磁性粒子の平均粒径を評価し易くし、このサンプルのグラニュラー構造を有する磁性層の平面TEM観察を行い、その磁性粒子の平均粒径<D>、及び、この平均粒径で規格化した粒径分散σ/<D>を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例2−1,2−2の磁気記録媒体は、磁性層が微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子によって構成されているため、比較例2−1,2−2の磁気記録媒体よりも優れた電磁変換特性を示していることがわかる。
(実施例3)
実施例3では、表2に示すように、上記実施例2−2と同様の磁気記録媒体を作製すると共に、第1のシード層、第2のシード層、配向制御層を変更した以外は上記実施例2−2と同様の条件で磁気記録媒体を作製し、これらを実施例3−1〜3−9とした。
そして、これら実施例3−1〜3−9の各磁気記録媒体について、保磁力分散「ΔHc/Hc」、「SNR(dB)」、オーバーライト特性「OW(dB)」、ビットエラーレート「BER」を測定した。その測定結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例3−1〜3−9の磁気記録媒体は、実施例2−1,2−2の磁気記録媒体と同様に、比較例2−1,2−2の磁気記録媒体よりも優れた電磁変換特性を示していることがわかる。
(実施例4)
実施例4では、表3に示すように、上記実施例2−2の磁気記録媒体において第1のシード層の膜厚を変化させ、他の条件は実施例2−2と同じにして磁気記録媒体を作製した。作製した磁気記録媒体について、保磁力分散「ΔHc/Hc」、「SNR(dB)」、オーバーライト特性「OW(dB)」、ビットエラーレート「BER」を測定した。その測定結果を表3に示す。
表3に示すように、第1のシード層の膜厚を変化させることにより、電磁変換特性が変化している。その中でも、実施例4−2〜4−6の磁気記録媒体は、特に優れた電磁変換特性を示していることがわかる。
本発明によれば、第2のシード層を起点にして、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続して結晶成長させた各層の柱状晶を、微細且つ均質な粒径を有する結晶粒子によって構成することができる。これにより、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体及びその製造方法、並びにそのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することが可能である。よって、本発明は、磁気記録媒体及びその製造方法、並びにそのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置に好適に用いることができる。
1…非磁性基板
2…軟磁性下地層
3…配向制御層
4…垂直磁性層
4a…下層の磁性層
4b…中層の磁性層
4c…上層の磁性層
5…保護層
6…潤滑層
7…非磁性層
7a…下層の非磁性層
7b…上層の非磁性層
8…非磁性下地層
9…シード層
11…配向制御層
11a…凹凸面
12〜14…磁性層又は非磁性層
S,S1〜S3…柱状晶
30…軟磁性下地層
31…第1のシード層
32…第2のシード層
33…配向制御層
50…磁気記録媒体
51…媒体駆動部
52…磁気ヘッド
53…ヘッド駆動部
54…記録再生信号処理系

Claims (10)

  1. 非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、シード層と、配向制御層と、垂直磁性層とを、この順で積層した構成を少なくとも有する磁気記録媒体であって、
    前記軟磁性下地層は、アモルファス若しくは微結晶構造を有し、
    前記シード層は、金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層と、この上に島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層とを含み、
    前記配向制御層及び前記垂直磁性層は、前記第2のシード層を起点にして、それぞれの結晶粒子が厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記第1のシード層は、CrN、TiN、AlN、ZnO、TiO、MgOからなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記第1のシード層は、ZnO又はAlNを含むことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記第1のシード層の膜厚は、0.4nm〜10nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
  5. 前記第2のシード層は、Cu、Au、Agからなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
  6. 前記第2のシード層は、Au又はAgを含むことを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体。
  7. 前記配向制御層は、Ru、Ru合金、CoCr合金からなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
  8. 前記配向制御層は、Ruを含むことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体。
  9. 非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、シード層と、配向制御層と、垂直磁性層とを、この順で積層した構成を少なくとも有する磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記軟磁性下地層をアモルファス若しくは微結晶構造とし、
    前記シード層を、金属酸化物又は金属窒化物からなる第1のシード層と、この上に島状又は網状に形成された金属からなる第2のシード層とを含む構造とし、
    前記第2のシード層を起点にして、前記配向制御層及び前記垂直磁性層を構成する結晶粒子が、それぞれ厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  10. 請求項1に記載の磁気記録媒体、又は、請求項9に記載の製造方法により製造された磁気記録媒体と、
    前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
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