JP5244679B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置に関するものである。
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)は、現在その記録密度が年率50%以上で増えており、今後もその傾向は続くと言われている。それに伴って高記録密度化に適した磁気ヘッド及び磁気記録媒体の開発が進められている。
現在、市販されている磁気記録再生装置に搭載されている磁気記録媒体は、磁性膜内の磁化容易軸が主に垂直に配向した、いわゆる垂直磁気記録媒体である。垂直磁気記録媒体は、高記録密度化した際にも、記録ビット間の境界領域における反磁界の影響が小さく、鮮明なビット境界が形成されるため、ノイズの増加が抑えられる。しかも高記録密度化に伴う記録ビット体積の減少が少なくて済むため、熱揺らぎ効果にも強い。このため、近年大きな注目を集めており、垂直磁気記録に適した媒体の構造が提案されている。
また、磁気記録媒体の更なる高記録密度化という要望に応えるべく、垂直磁性層に対する書き込み能力に優れた単磁極ヘッドを用いることが検討されている。このような単磁極ヘッドに対応するために、記録層である垂直磁性層と非磁性基板との間に、裏打ち層と称される軟磁性材料からなる層を設けることにより、単磁極ヘッドと磁気記録媒体との間の磁束の出入りの効率を向上させた磁気記録媒体が提案されている。
垂直磁気記録媒体の記録再生特性、熱揺らぎ特性を向上させるために、配向制御層を用い、多層の磁性層を形成して、それぞれの磁性層の結晶粒子を連続した柱状晶とし、これにより磁性層の垂直配向性を高めることが提案されている(特許文献1を参照。)。また、この特許文献1には、配向制御層をスパッタリングにより形成するに際し、スパッタガス圧力を10Pa以上とすることにより磁性層の垂直磁気異方性を高めることが記載されている。
一方、配向制御層としてRuを用いることが開示されている(特許文献2を参照。)。Ruは、その柱状晶の頂部にドーム状の凸部を有するため、この凸部上に磁性層等の結晶粒子を成長させ、また成長した結晶粒子の分離構造を促進し、また結晶粒子を孤立化させ、磁性粒子を柱状に成長させる効果を有する旨が記載されている(特許文献3を参照。)。
一方、配向制御層として2つのRu層を使用し、基板側のRu層を低ガス圧(0.6Pa)、磁性層側のRu層を高ガス圧(10Pa)で成膜することにより、Ru層の配向性を高め、その上に成長する垂直磁性層の配向性を高め、また磁性粒子を微細化することが開示されている(特許文献4を参照。)。
特開2004−310910号公報 特開平7−244831号公報 特開2007−272990号公報 特開2002−197630号公報
ところで、磁気記録媒体に対する高記録密度化の要求は留まることがなく、磁気記録媒体には今まで以上に高い特性の向上が求められている。具体的に、磁気記録媒体の記録密度を高めるためには、上述した配向制御層を構成する結晶を微細化し、この上に形成される柱状構造の磁性粒子を微細化する必要がある。
上述のように、配向制御層を構成する結晶を微細化し、配向性を高めるためには、低ガス圧と高ガス圧のスパッタリングとをこの順で用いた2段成膜を用いる場合がある。しかしながら、高ガス圧のスパッタリングは、形成する膜の結晶性を低下させる。すなわち、ガス圧が高くなることにより、スパッタ粒子の平均自由行程が短くなり、エネルギーが低下すること、並びに成長結晶内にガス分子が混入し易くなることに起因して、形成する膜の結晶性が低下することになる。
また、配向制御層を2段で成膜するためには、2つの成膜室が必要となる。一方、1つの成膜室で行う場合は、2倍の成膜時間が必要となり、その結果、磁気記録媒体の製造コストの増加につながることになる。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体の製造方法、並びにそのような製造方法を用いて製造された磁気記録媒体を備える磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、
前記配向制御層はRu層又はRuを主成分とする層を含み、
前記垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が前記配向制御層を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、
前記Ru層又はRuを主成分とする層をスパッタリング法で形成し、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力をPa以下とすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法
(2) 前記配向制御層が、NiW合金層をさらにみ、
前記NiW合金層をスパッタリング法で形成し、スパッタリングガスとしてArを用いることを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3) 前記Ru層又はRuを主成分とする層を複数積層し、この複数積層した層の全てをスパッタリング法で形成する際に、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力をPa以下とすることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4) 前記配向制御層を構成する結晶粒子の粒径を5nm以下とすることを特徴とする前項(1)〜(3)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5) 前記磁性層がグラニュラー構造を有することを特徴とする前項(1)〜(4)の
何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法
以上のように、本発明によれば、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続した微細な柱状晶を高い配向性で成長させることができ、また、配向制御層を構成する結晶粒子を高密度化及び高硬度化することによって、その上に形成される磁性層のベースを安定させながら、磁気記録媒体の表面における傷付き耐性を向上させることが可能である。
したがって、本発明によれば、垂直磁性層の高い垂直配向性を達成し、更なる高記録密度化を可能とした信頼性の高い磁気記録媒体、並びにそのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することが可能である。
各層の柱状晶が基板面に対して垂直に成長した状態を示す断面図である。 本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を示す断面図である。 磁性層と非磁性層との積層構造を拡大して示す断面図である。 磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。 実施例1において成膜された配向制御層の断面TEM写真である。 比較例1において成膜された配向制御層の断面TEM写真である。
以下、本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明は、少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が配向制御層を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、配向制御層をスパッタリング法で形成し、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力を5Pa以下とすることを特徴とする。
なお、本発明では、ガス圧の測定に正確を期するため、真空計及び測定場所に注意して評価している。すなわち、Ar、Kr、Xeなどの不活性ガスはそれぞれ電離度が大きく異なるために、電離真空計では正確なガス圧を求めることが困難となる。そこで、本発明では、各不活性ガスのガス圧は、電離度の影響を受けない隔膜真空計にて評価した。また、ガス圧の測定場所は、なるべく放電空間に近いカソード近傍とした。
ここで、不活性ガスであるHe、Ne、Ar、Kr、Xeの原子量、イオン化ポテンシャル[eV]、原子半径[Å]をそれぞれ表1に示す。
従来、スパッタリングガスとしては、Arなどの不活性ガスが用いられている。一方、本発明で配向制御層のスパッタリングに使用するKr又はXeは、従来使用されていたArに比べ、イオン化ポテンシャルが低い。
したがって、本発明では、配向制御層をスパッタリングにより形成する際に、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用いることで、Arを用いる場合に比べて低圧で放電させることが可能となり、このスパッタリングガスの圧力を下げることができる。
また、本発明者の検討によると、磁気記録媒体の配向制御層として一般的に使用される、例えばRu系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金などを、Arを用いたスパッタリング法で形成する場合、先ず、0.6Pa〜0.8Paの低ガス圧で成膜して基板表面への核発生密度を高め、その後、10〜11Paの高ガス圧で成膜することにより柱状晶の頂部にドーム状の凸部を形成し、その凸部から磁性粒子を垂直配向成長させるのが効果的である。
しかしながら、上述したように、10〜11Paの高ガス圧でRu系合金等を成膜する場合は、スパッタ粒子の平均自由行程が短くなって、スパッタ粒子のエネルギーが低下し、膜の密度が低下してしまい、形成する膜の結晶性が低下することになる。さらに、成長結晶内にガス分子が混入することによって、形成する膜の結晶性及び密度が益々低下することになる。
これに対して、本発明では、スパッタリングガスとしてKr又はXeを使用することにより、上述したRu系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金などを用いた配向制御層を5Pa以下で成膜することが可能となり、その上に成長する磁性粒子の結晶性と垂直配向性の向上の両方を達成することができる。
また、本発明では、上記合金からなる配向制御層をスパッタリング法で形成する際に、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力を5Pa以下で成膜することによって、上記合金からなる配向制御層を1段で成膜できる利点がある。
また、本発明では、Ru層又はRuを主成分とする層を複数積層し、この複数積層した層の全てをスパッタリング法で形成する際に、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力を5Pa以下とする。具体的に、第1のRu層又はRuを主成分とする層を0.2Pa〜0.8Paで成膜し、その後、第2のRu層又はRuを主成分とする層を1Pa〜5Paで成膜する。これにより、第1の層で配向制御層の核発生密度を高め、第2の層で成長結晶を頂部にドーム状の凸部を有す柱状晶とすることができ、且つ、この第2の層の密度及び硬度を高めることが可能である。
本発明では、配向制御層をスパッタリング法で形成する際に、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力を5Pa以下とすることを特徴しているが、上述した表1に示すように、Kr及びXeは、Arに比べてイオン化ポテンシャルが低いため、低ガス圧でも電離し易く、一方、原子量が大きいため、高エネルギーのスパッタ粒子を形成することができる。
この効果は、KrよりXeの方が大きいため、本発明の効果を発現させるためには、Ar等の他の不活性ガスに対してKrを40体積%以上、Xeを30体積%以上含有させたスパッタリングガスを用いることが好ましい。さらに、Kr又はXeは、スパッタリングガス中になるべく多く含有させることが好ましく、最も好ましくは、Xeを100%で使用する。
以上のように、本発明は、磁性層の垂直配向性を高め、なお且つ、磁性粒子を微細化するためには、配向制御層を構成する結晶粒子を微細化し、また結晶性を高める必要があるとの考えに基づく。
すなわち、図1に示すように、配向制御層11には、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部をドーム状の凸とする凹凸面11aが形成され、この凹凸面11aから厚み方向に磁性層(又は非磁性層)12の結晶粒子が柱状晶S1となって成長する。また、この柱状晶S1の上に形成される非磁性層(又は磁性層)13及び最上層の磁性層14の結晶粒子も、柱状晶S1に連続した柱状晶S2,S3となってエピタキシャル成長する。
このように、磁性層12〜14を多層化した場合、これら各層12〜14を構成する結晶粒子は、配向制御層11から最上層の磁性層14に至るまで連続した柱状晶S1〜S3となってエピタキシャル成長を繰り返す。なお、図1に示す層13は、グラニュラー構造を有する層であり、この層13を形成する柱状晶S2の周囲には酸化物15が形成されている。
したがって、配向制御層11の結晶粒子を微細化すれば、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sを高密度化し、更に、これら各柱状晶Sの頂部から厚み方向に柱状に成長する各層12〜14の柱状晶S1〜S3も高密度化することが可能となる。
また、本発明では、配向制御層を構成する結晶粒子の粒径を5nm以下とすることが好ましく、より好ましくは3nm以下とする。従来の配向制御層を構成する結晶粒子は、その粒径が6〜9nm程度であったが、本発明では、この結晶粒径を5nm以下とすることが可能である。これにより、本発明では、磁気記録媒体の磁性粒子密度を2倍以上に高めることが可能となり、その結果、磁気記録媒体の記録密度も2倍以上に高めることが可能となる。
図2は、本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を示したものである。
この磁気記録媒体は、図2に示すように、非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2と、配向制御層3と、垂直磁性層4と、保護層5と、潤滑層6とを順次積層した構造を有している。
このうち、軟磁性下地層2と配向制御層3とが下地層を構成している。一方、垂直磁性層4は、非磁性基板1側から、下層の磁性層4aと、中層の磁性層4bと、上層の磁性層4cとの3層を含み、磁性層4aと磁性層4bとの間に下層の非磁性層7aと、磁性層4bと磁性層4cとの間に上層の非磁性層7bを含むことで、これら磁性層4a〜4cと非磁性層7a,7bとが交互に積層された構造を有している。
さらに、図示を省略するものの、各磁性層4a〜4c及び非磁性層7a,7bを構成する結晶粒子は、配向制御層3を構成する結晶粒子と共に、厚み方向に連続した柱状晶を形成している。
非磁性基板1としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよく、例えば、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタ法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いることもできる。
ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどを用いることができ、アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラスや、アルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラスなどを用いることができる。セラミック基板としては、例えば、汎用の酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体、又はこれらの繊維強化物などを用いることができる。
非磁性基板1は、その平均表面粗さ(Ra)が2nm(20Å)以下、好ましくは1nm以下であるとことが、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。また、表面の微小うねり(Wa)が0.3nm以下(より好ましくは0.25nm以下。)であることが、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。また、端面のチャンファー部の面取り部と、側面部との少なくとも一方の表面平均粗さ(Ra)が10nm以下(より好ましくは9.5nm以下。)のものを用いることが、磁気ヘッドの飛行安定性にとって好ましい。なお、微少うねり(Wa)は、例えば、表面荒粗さ測定装置P−12(KLM−Tencor社製)を用い、測定範囲80μmでの表面平均粗さとして測定することができる。
また、非磁性基板1は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層2と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。この場合、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設けることが好ましく、これにより、これらを抑制することが可能となる。なお、密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(30Å)以上であることが好ましい。
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含む軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど。)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど。)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど。)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど。)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど。)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど。)、FeMg系合金(FeMgOなど。)、FeZr系合金(FeZrNなど。)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
また、軟磁性下地層2としては、Feを60at%(原子%)以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrN等の微結晶構造、又は微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることができる。
その他にも、軟磁性下地層2としては、Coを80at%以上含有し、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo等のうち少なくとも1種を含有し、アモルファス構造を有するCo合金を用いることができる。この具体的な材料としては、例えば、CoZr、CoZrNb、CoZrTa、CoZrCr、CoZrMo系合金などを好適なものとして挙げることができる。
軟磁性下地層2の保磁力Hcは、100(Oe)以下(好ましくは20(Oe)以下。)とすることが好ましい。なお、1Oeは79A/mである。この保磁力Hcが上記範囲を超えると、軟磁気特性が不十分となり、再生波形がいわゆる矩形波から歪みをもった波形になるため好ましくない。
軟磁性下地層2の飽和磁束密度Bsは、0.6T以上(好ましくは1T以上)とすることが好ましい。このBsが上記範囲未満であると、再生波形がいわゆる矩形波から歪みをもった波形になるため好ましくない。
また、軟磁性下地層2の飽和磁束密度Bs(T)と軟磁性下地層2の層厚t(nm)との積Bs・t(T・nm)は、15(T・nm)以上(好ましくは25(T・nm)以上)であることが好ましい。このBs・tが上記範囲未満であると、再生波形が歪みを持つようになり、OW(OverWrite)特性(記録特性)が悪化するため好ましくない。
軟磁性下地層2は、2層の軟磁性膜から構成されており、2層の軟磁性膜の間にはRu膜を設けることが好ましい。Ru膜の膜厚を0.4〜1.0nm、又は1.6〜2.6nmの範囲で調整することで、2層の軟磁性膜がAFC構造となり、このようなAFC構造を採用することで、いわゆるスパイクノイズを抑制することができる。
軟磁性下地層2の最表面(配向制御層3側の面)は、この軟磁性下地層2を構成する材料が、部分的又は完全に酸化されて構成されていることが好ましい。例えば、軟磁性下地層2の表面(配向制御層3側の面)及びその近傍に、軟磁性下地層2を構成する材料が部分的に酸化されるか、若しくは上記材料の酸化物を形成して配されていることが好ましい。これにより、軟磁性下地層2の表面の磁気的な揺らぎを抑えることができるため、この磁気的な揺らぎに起因するノイズを低減して、磁気記録媒体の記録再生特性を改善することができる。
また、軟磁性下地層2上に形成される配向制御層3は、垂直磁性層4の結晶粒を微細化して、記録再生特性を改善することができる。このような材料としては、特に限定されるものではないが、hcp構造、fcc構造、アモルファス構造を有するものが好ましい。特に、Ru系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金が好ましく、またこれらの合金を多層化してもよい。例えば、基板側からNi系合金とRu系合金との多層構造、Co系合金とRu系合金との多層構造、Pt系合金とRu系合金との多層構造を採用することが好ましい。
例えば、Ni系合金であれば、Niを33〜96at%含む、NiW合金、NiTa合金、NiNb合金、NiTi合金、NiZr合金、NiMn合金、NiFe合金の中から選ばれる少なくとも1種類の材料からなることが好ましい。また、Niを33〜96at%含み、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cのうち少なくとも1種又は2種以上を含む非磁性材料であってもよい。この場合、配向制御層3としての効果を維持し、磁性を持たない範囲とするため、Niの含有量は33at%〜96at%の範囲とすることが好ましい。
本実施形態の磁気記録媒体では、配向制御層3をNiW合金層(下層)とRu層(上層)との2層構造とした場合、その層厚としてNiW合金層を6nm程度、Ru層を15nm程度にすることができる。この層厚は、記録時における磁気ヘッドと軟磁性下地層2との距離を小さくすることができるのでなるべく薄くした方が再生信号の分解能を低下させることなく記録再生特性を高めることができる。
また、配向制御層3は、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物中に金属粒子が分散した構造であってもよい。このような構造とするためには、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiOなど、金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrNなど、金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiCなどをそれぞれ用いることができる。さらに、例えば、NiTa−SiO、RuCo−Ta、Ru−SiO、Pt−Si、Pd−TaCなどを用いることができる。
配向制御層3中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、合金に対して、1mol%以上12mol%以下であることが好ましい。配向制御層3中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲を超える場合、金属粒子中に酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が残留し、金属粒子の結晶性及び配向性を損ねるほか、配向制御層3の上に形成された磁性層の結晶性及び配向性を損ねるおそれがあるため好ましくない。また、配向制御層3中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲未満である場合、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の添加による効果が得られないため好ましくない。
また、配向制御層3と垂直磁性層4の間には、非磁性下地層8を設けることが好ましい。配向制御層3直上の垂直磁性層4の初期部には、結晶成長の乱れが生じやすく、これがノイズの原因となる。この初期部の乱れた部分を非磁性下地層8で置き換えることで、ノイズの発生を抑制することができる。
非磁性下地層8は、Coを主成分とし、さらに酸化物41を含んだ材料からなることが好ましい。Crの含有量は、25at%(原子%)以上50at%以下とすることが好ましい。酸化物41としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましく、その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。酸化物の含有量としては、磁性粒子を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。
また、非磁性下地層8は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。さらに、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr−SiO、CoCr−TiO−Cr、CoCr−Cr−TiO−SiOなどを好適に用いることができる。また、結晶成長の観点からPtを添加してもよい。
非磁性下地層8の厚みは、0.2nm以上3nm以下であることが好ましい。3nmの厚さを超えると、Hc及びHnの低下が生じるために好ましくない。
磁性層4aは、図3に示すように、Coを主成分とし、さらに酸化物41を含んだ材料からなり、この酸化物41としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。また、磁性層4aは、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
磁性層4aは、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。また、磁性粒子42は、磁性層4a,4b、更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を有することにより、磁性層4aの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)を得ることができる。
このような構造を得るためには、含有させる酸化物41の量及び磁性層4aの成膜条件が重要となる。すなわち、酸化物41の含有量としては、磁性粒子42を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは6mol%以上13mol%以下である。
磁性層4a中の酸化物41の含有量として上記範囲が好ましいのは、この磁性層4aを形成した際、磁性粒子42の周りに酸化物41が析出し、磁性粒子42の孤立化及び微細化が可能となるためである。一方、酸化物41の含有量が上記範囲を超えた場合には、酸化物41が磁性粒子42中に残留し、磁性粒子42の配向性及び結晶性を損ね、更には磁性粒子42の上下に酸化物41が析出し、結果として磁性粒子42が磁性層4a〜4cを上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。また、酸化物41の含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
磁性層4a中のCrの含有量は、4at%以上19at%以下(さらに好ましくは6at%以上17at%以下)であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲としたのは、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuを下げ過ぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるからである。
一方、Crの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子42の結晶性及び配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。また、Crの含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが高いため、垂直保磁力が高くなり過ぎ、データを記録する際、磁気ヘッドで十分に書き込むことができず、結果として高密度記録に適さない記録特性(OW)となるため好ましくない。
磁性層4a中のPtの含有量は、8at%以上20at%以下であることが好ましい。Ptの含有量を上記範囲としたのは、8at%未満であると、垂直磁性層4に必要な磁気異方性定数Kuが低くなるためである。一方、20at%を超えると、磁性粒子42の内部に積層欠陥が生じ、その結果磁気異方性定数Kuが低くなる。したがって、高密度記録に適した熱揺らぎ特性及び記録再生特性を得るためには、Ptの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
また、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42中にfcc構造の層が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。一方、Ptの含有量が上記範囲未満である場合には、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。
磁性層4aは、Co、Cr、Pt、酸化物41の他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
また、上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4aに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO){Cr含有量14at%、Pt含有量18at%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiOからなる酸化物組成が10mol%}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr)の他、(CoCrPt)−(Ta)、(CoCrPt)−(Cr)−(TiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)−(TiO)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO)、(CoCrPtB)−(Al)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y)、(CoCrPtRu)−(SiO)などを挙げることができる。
磁性層4bは、図3に示すように、Coを主成分とし、更に酸化物41を含んだ材料からなることが好ましい。酸化物41としては、Cr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coの酸化物であることが好ましい。その中でも特に、TiO、Cr、SiOを好適に用いることができる。また、磁性層4bは、酸化物41を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
磁性層4bは、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。この磁性粒子42は、磁性層4a,4b、更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を形成することにより、磁性層4bの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得ることができる。
磁性層4b中の酸化物41の含有量は、磁性粒子42を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の化合物の総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは6mol%以上13mol%以下である。
磁性層4b中の酸化物41の含有量として上記範囲が好ましいのは、この磁性層4bを形成した際、磁性粒子42の周りに酸化物41が析出し、磁性粒子42の孤立化及び微細化が可能となるためである。一方、酸化物41の含有量が上記範囲を超えた場合には、酸化物41が磁性粒子42中に残留し、磁性粒子42の配向性及び結晶性を損ね、更には磁性粒子42の上下に酸化物41が析出し、結果として磁性粒子42が磁性層4a〜4cを上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。また、酸化物41の含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
磁性層4b中のCrの含有量は、4at%以上18at%以下(さらに好ましくは8at%以上15at%以下。)であることが好ましい。Crの含有量が上記範囲としたのは、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuを下げ過ぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。
一方、Crの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子42の結晶性及び配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。また、Crの含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが高いため、垂直保磁力が高くなり過ぎ、データを記録する際、磁気ヘッドで十分に書き込むことができず、結果として高密度記録に適さない記録特性(OW)となるため好ましくない。
磁性層4b中のPtの含有量は、10at%以上22at%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲であるのは、10at%未満であると、垂直磁性層4に必要な磁気異方性定数Kuが低くなるために好ましくない。また、22at%を超えると、磁性粒子42の内部に積層欠陥が生じ、その結果磁気異方性定数Kuが低くなるために好ましくない。高密度記録に適した熱揺らぎ特性及び記録再生特性が得られるためには、Ptの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
また、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42中にfcc構造の層が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。一方、Ptの含有量が上記範囲未満である場合には、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。
磁性層4bは、Co、Cr、Pt、酸化物41の他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
また、上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4cは、図3に示すように、Coを主成分とするとともに酸化物を含まない材料から構成することが好ましく、層中の磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42から柱状にエピタキシャル成長している構造であることが好ましい。この場合、磁性層4a〜4cの磁性粒子42が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、磁性層4bの磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42からエピタキシャル成長していることで、磁性層4bの磁性粒子42が微細化され、さらに結晶性及び配向性がより向上したものとなる。
磁性層4c中のCrの含有量は、10at%以上24at%以下であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲とすることで、データの再生時における出力が十分確保でき、更に良好な熱揺らぎ特性を得ることができる。一方、Crの含有量が上記範囲を超える場合には、磁性層4cの磁化が小さくなり過ぎるため好ましくない。また、Cr含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が十分に生じず、記録再生時のノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
また、磁性層4cは、Co、Crの他に、Ptを含んだ材料であってもよい。磁性層4c中のPtの含有量は、8at%以上20at%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲にある場合には、高記録密度に適した十分な保磁力を得ることができ、更に記録再生時における高い再生出力を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性を得ることができる。
一方、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性層4c中にfcc構造の相が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。また、Ptの含有量が上記範囲未満である場合には、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。
磁性層4cは、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性を得ることができる。
また、上記元素の合計の含有量は、16at%以下であることが好ましい。一方、16at%を超えた場合には、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4cに適した材料としては、特に、CoCrPt系、CoCrPtB系を挙げることできる。CoCrPtB系の場合、CrとBの合計の含有量は、18at%以上28at%以下であることが好ましい。
磁性層4cに適した材料としては、例えば、CoCrPt系では、Co14〜24Cr8〜22Pt{Cr含有量14〜24at%、Pt含有量8〜22at%、残部Co}、CoCrPtB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt0〜16B{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、B含有量0〜16at%、残部Co}が好ましい。その他の系でも、CoCrPtTa系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、Ta含有量1〜5at%、残部Co}、CoCrPtTaB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta1〜10B{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、Ta含有量1〜5at%、B含有量1〜10at%、残部Co}の他にも、CoCrPtBNd系、CoCrPtTaNd系、CoCrPtNb系、CoCrPtBW系、CoCrPtMo系、CoCrPtCuRu系、CoCrPtRe系などの材料を挙げることができる。
垂直磁性層4の垂直保磁力(Hc)は、3000[Oe]以上とすることが好ましい。保磁力が3000[Oe]未満である場合には、記録再生特性、特に周波数特性が不良となり、また、熱揺らぎ特性も悪くなるため、高密度記録媒体として好ましくない。
垂直磁性層4の逆磁区核形成磁界(−Hn)は、1500[Oe]以上であることが好ましい。逆磁区核形成磁界(−Hn)が1500[Oe]未満である場合には、熱揺らぎ耐性に劣るため好ましくない。
垂直磁性層4は、磁性粒子の平均粒径が3〜12nmであることが好ましい。この平均粒径は、例えば垂直磁性層4をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、観察像を画像処理することにより求めることができる。
垂直磁性層4の厚みは、5〜20nmとすることが好ましい。垂直磁性層4の厚みが上記未満であると、十分な再生出力が得られず、熱揺らぎ特性も低下する。また、垂直磁性層4の厚さが上記範囲を超えた場合には、垂直磁性層4中の磁性粒子の肥大化が生じ、記録再生時におけるノイズが増大し、信号/ノイズ比(S/N比)や記録特性(OW)に代表される記録再生特性が悪化するため好ましくない。
本発明では、非磁性基板1側の磁性層をグラニュラー構造の磁性層とし、保護層5側の磁性層を、酸化物を含まない非グラニュラー構造の磁性層とすることが好ましい。このような構成とすることにより、磁気記録媒体の熱揺らぎ特性、記録特性(OW)、S/N比等の各特性の制御・調整をより容易に行うことが可能となる。
また、本発明では、上記垂直磁性層4を4層以上の磁性層で構成することも可能である。例えば、上記磁性層4a,4bに加えて、グラニュラー構造の磁性層を3層で構成し、その上に、酸化物を含まない磁性層4cを設けた構成とし、また、酸化物を含まない磁性層4cを2層構造として、磁性層4a,4bの上に設けた構成とすることができる。
また、本発明では、垂直磁性層4を構成する3層以上の磁性層間に非磁性層7(図3では符号7a,7bで示す。)を設けることが好ましい。非磁性層7を適度な厚みで設けることで、個々の膜の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができる。その結果S/N比をより向上させることが可能である。
すなわち、非磁性層7の厚みは、垂直磁性層4を構成する各層の静磁結合を完全に切断しない範囲、具体的には0.1nm以上2nm以下(より好ましくは0.1以上0.8nm以下)とすることが好ましい。
本発明の3層以上の磁性層4a,4b,4cが強磁性結合(フェロ・カップリング結合、以下、FC結合と呼ぶ。)し、また、静磁結合が完全に切れた際には、M−Hループが2段階に反転するループになるために、容易に判別可能である。この2段ループが生じた場合は、磁気ヘッドからの磁界に対して磁気グレインが一斉に反転しないことを意味しており、その結果再生時のS/N比の著しい悪化や分解能の低下が生じるため好ましくない。
但し、Ru又はRu合金を用いた場合には、0.6nm以上1.2nm以下の範囲でAFC結合が生じる。本発明においては、AFC結合ではなく各磁性層4a,4b,4cがFCで静磁結合していることが必須である。
垂直磁性層4を構成する磁性層4a,4b,4c間に設ける非磁性層7としては、hcp構造を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、Ru、Ru合金、CoCr合金、CoCrX合金(Xは、Pt、Ta、Zr、Re,Ru、Cu、Nb、Ni、Mn、Ge、Si、O、N、W、Mo、Ti、V、Zr、Bの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の元素を表す。)などを好適に用いることができる。
垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7として、CoCr系合金を用いる場合には、Coの含有量は、30〜80at%の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、磁性層間のカップリングを小さく調整することが可能であるからである。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7として、hcp構造を有する合金として、Ru以外では、例えばRu、Re、Ti、Y、Hf、Znなどの合金も用いることができる。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7として、その上下の磁性層の結晶性や配向性を損ねない範囲で、他の構造をとる金属や合金などを使用することもできる。具体的には、例えば、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ir、Mo、W、Ta、Nb、V、Bi、Sn、Si、Al、C、B、Cr又はそれらの合金を用いることができる。特に、Cr合金としては、CrX(Xは、Ti、W、Mo、Nb、Ta、Si、Al、B、C、Zrの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の元素を表す。)などを好適に用いることが可能である。この場合のCrの含有量は60at%以上とすることが好ましい。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7としては、上記合金の金属粒子が酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物中に分散した構造のものを用いることが好ましい。さらに、この金属粒子が非磁性層7を上下に貫いた柱状構造を有することがより好ましい。このような構造とするためには、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiOなど、金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrNなど、金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiCなどをそれぞれ用いることができる。さらに、例えば、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr、CoCrPt−Ta、Ru−SiO、Ru−Si、Pd−TaCなどを用いることができる。
垂直磁性層4を構成する磁性層間に設ける非磁性層7中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、垂直磁性膜の結晶成長や結晶配向を損なわない含有量であることが好ましい。また、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、合金に対して、4mol%以上30mol%以下であることが好ましい。
この非磁性層7中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲を超える場合には、金属粒子中に酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が残留し、金属粒子の結晶性や配向性を損ねるほか、金属粒子の上下にも酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が析出してしまい、金属粒子が非磁性層7を上下に貫く柱状構造となりにくくなり、この非磁性層7の上に形成された磁性層の結晶性や配向性を損ねるおそれがあるため好ましくない。一方、この非磁性層7中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲未満である場合には、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の添加による効果が得られないため好ましくない。
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO、ZrOを含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1〜10nmとすることがヘッドと媒体の距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
潤滑層6には、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。
(磁気記録再生装置)
図4は、本発明を適用した磁気記録再生装置の一例を示すものである。
この磁気記録再生装置は、上記図2に示す構成を有する磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に情報を記録再生する磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。また、記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。また、本発明を適用した磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
実施例1では、先ず、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて層厚10nmの密着層を成膜した。また、この密着層の上に、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20at%、Zr含有量5at%、Ta含有量5at%、残部Co}のターゲットを用いて100℃以下の基板温度で、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上にRu層を層厚0.7nmで成膜した後、さらにCo−20Fe−5Zr−5Taの軟磁性層を層厚25nmで成膜して、これを軟磁性下地層とした。
次に、軟磁性下地層の上に、Ni−6W{W含有量6at%、残部Ni}ターゲット、Ruターゲットを用いて、スパッタ圧力を0.8PaとしてNiW層を5nm成膜した。以上のスパッタリング成膜は、スパッタリングガスにArを用いた。また、このNiW層の上に、スパッタリングガスにKr(100%)を使用して、スパッタ圧力を0.8Paとして第1のRu層を層厚10nmで成膜した後、スパッタ圧力を3Paとして第2のRu層を層厚10nmで成膜した。
以上のようにして形成された配向制御層の断面TEM写真を図5に示す。図5に示すように、第2のRu層の表面には、規則的なドーム形状が形成されていた。
次に、この配向制御層の上に、(Co15Cr16Pt)91−(SiO)6−(TiO)3{Cr含有量15at%、Pt含有量18at%、残部Coの合金を91mol%、SiOからなる酸化物を6mol%、Crからなる酸化物を3mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}の組成の磁性層をスパッタ圧力を2Paとして層厚9nmで成膜した。
次に、磁性層の上に、(Co30Cr)88−(TiO)12からなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した。
次に、非磁性層の上に、(Co11Cr18Pt)92−(SiO)5−(TiO)3からなる磁性層をスパッタ圧力を2Paとして層厚6nmで成膜した。
次に、磁性層の上に、Ruからなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した。
次に、非磁性層の上に、Co20Cr14Pt3B{Cr含有量20at%、Pt含有量14at%、B含有量3at%、残部Co}からなるターゲットを用いて、スパッタ圧力を0.6Paとして磁性層を層厚7nmで成膜した。
次に、CVD法により層厚3.0nmの保護層を成膜し、次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を成膜し、実施例1の磁気記録媒体を作製した。なお、作製された磁気記録媒体の磁性粒子の大きさを表面TEMにより観察したところ、約5nmであった。
そして、この実施例1の磁気記録媒体について、米国GUZIK社製のリードライトアナライザRWA1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、その記録再生特性、すなわちS/N比、記録特性(OW)、及び熱揺らぎ特性の各評価を行った。なお、磁気ヘッドには、書き込み側にシングルポール磁極を用い、読み出し側にTMR素子を用いたヘッドを使用した。
S/N比については、記録密度750kFCIとして測定した。
一方、記録特性(OW)については、先ず、750kFCIの信号を書き込み、次いで100kFCIの信号を上書し、周波数フィルターにより高周波成分を取り出し、その残留割合によりデータの書き込み能力を評価した。
一方、熱揺らぎ特性について、70℃の条件下で記録密度50kFCIにて書き込みを行った後、書き込み後1秒後の再生出力に対する出力の減衰率を(So−S)×100/(So)に基いて算出した。なお、この式中において、Soは書き込み後、1秒経過時の再生出力、Sは10000秒後の再生出力を表す。
その結果、実施例1で得られた磁気記録媒体の記録再生特性については、S/Nが18.1dB、OWが37.5dB、熱揺らぎが0.3%であった。
(比較例1)
比較例1では、第1のRu層及び第2のRu層を何れもArガスを用いたスパッタリングによって成膜した以外は、上記実施例1と同様の条件で配向制御層の形成を行った。
以上のようにして形成された配向制御層の断面TEM写真を図6に示す。図6に示すように、第2のRu層の表面には、上記実施例1の形状に比べて不規則で凸部も低いドーム形状が形成されていた。
そして、配向制御層を形成した後は、実施例1と同様の条件で磁気記録媒体を作製した。
以上のようにして作製された比較例1の磁気記録媒体について、磁性粒子の大きさを表面TEMにより観察したところ、約8nmであった。
また、比較例1で得られた磁気記録媒体の記録再生特性について、実施例1と同様に測定したところ、S/Nが17.5dB、OWが36.9dB、熱揺らぎが0.4%であった。
また、実施例1及び比較例1の磁気記録媒体について、傷付き(スクラッチ)耐性の評価を行った。具体的には、クボタコンプス社製のSAFテスター及びCandela社製の光学式表面検査装置(OSA)を用い、ディスクの回転数5000rpm、気圧100Torr、室温という測定条件にて、テスターでヘッドをロードさせたまま2000秒保持し、その後に、OSAにてスクラッチの本数をカウントした。
その結果、実施例1の磁気記録媒体では、OSAのスクラッチカウント数が230であり、比較例1の磁気記録媒体では、OSAのスクラッチカウント数が1150であり、実施例1の磁気記録媒体の方が傷付き耐性が高かった。
(実施例2〜5)
実施例2〜5については、配向制御層を下記表2の条件で形成した以外は、実施例1と同様の条件で磁気記録媒体を作製した。なお、実施例2,3,5では、配向制御層をRu層の一段成膜とし、層厚を半分の10nmとした。
そして、これら実施例2〜5の各磁気記録媒体についても、実施例1及び比較例1と同様の記録再生特性及び傷付き耐性の評価を行った。以下、これらをまとめたものを表2に示す。
表2に示す評価結果から、本発明の範囲である実施例1〜5の磁気記録媒体は、本発明の範囲外である比較例1の磁気記録媒体よりも、電磁変換特性及びスクラッチ耐性に優れていることがわかる。
1…非磁性基板
2…軟磁性下地層
3…配向制御層
4…垂直磁性層
4a…下層の磁性層
4b…中層の磁性層
4c…上層の磁性層
5…保護層
6…潤滑層
7…非磁性層
7a…下層の非磁性層
7b…上層の非磁性層
8…非磁性下地層
11…配向制御層
11a…凹凸面
12〜14…磁性層又は非磁性層
41…酸化物
42…磁性粒子(層7a,7bにおいては非磁性粒子)
50…磁気記録媒体
51…媒体駆動部
52…磁気ヘッド
53…ヘッド駆動部
54…記録再生信号処理系

Claims (5)

  1. 少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記配向制御層はRu層又はRuを主成分とする層を含み、
    前記垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が前記配向制御層を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、
    前記Ru層又はRuを主成分とする層をスパッタリング法で形成し、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力をPa以下とすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記配向制御層が、NiW合金層をさらにみ、
    前記NiW合金層をスパッタリング法で形成し、スパッタリングガスとしてArを用いることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記Ru層又はRuを主成分とする層を複数積層し、この複数積層した層の全てをスパッタリング法で形成する際に、スパッタリングガスとしてKr又はXeを用い、このスパッタリングガスの圧力をPa以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記配向制御層を構成する結晶粒子の粒径を5nm以下とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 前記磁性層がグラニュラー構造を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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