JPWO2012067172A1 - 半芳香族ポリアミドフィルム、およびその製造方法 - Google Patents

半芳香族ポリアミドフィルム、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンとから構成される半芳香族ポリアミド樹脂を含有するフィルムであって、フィルム中に存在する0.01mm2以上の大きさのフィッシュアイが100個/1000cm2以下であることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルムである。

Description

本発明は、外観状の欠点であるフィッシュアイが低減された半芳香族ポリアミドフィルム、および該半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法に関する。
脂肪族ジアミンとフタル酸の重縮合体である半芳香族ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂と比較して、耐熱性をはじめとする種々の性能に優れている。そのため、近年、このような半芳香族ポリアミド樹脂をフィルムや成形体の用途に用いるための開発が進められている。JP09−012714Aには、半芳香族ポリアミド樹脂として、炭素数が9である脂肪族ジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン9Tが記載されている。ナイロン9Tは300℃近辺の高い融点を有し、かつ吸水性が比較的低い。そのため、各種の産業用途においてナイロン9Tを用いることが注目を浴びている。
ナイロン9Tは、上記のような特性を有することから、そのフィルムは従来の熱可塑性フィルムでは困難であった、耐熱性および寸法安定性を両立することが可能である。したがって、フィルム素材としての、ナイロン9Tの開発が盛んに進められている。特に、ナイロン9Tから得られたフィルムを、電子・電気部品、光学用などのいわゆる工業用フィルム分野において適用することが期待されている。
一方、現在、各種の工業用途においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが汎用されている。PETフィルムが汎用されている理由は、近年の品質の改善により、フィッシュアイ(塊状の異物による外観上の欠点)などが非常に少ないPETフィルムを、工業的に生産、実用化することが可能となったからである。ナイロン9Tから得られたフィルムにおいても、実用的な工業用途に適用するために、該フィルムにおけるフィッシュアイなどの欠点を極めて少なくすることが要求されている。
しかしながら、ナイロン9Tに代表される半芳香族ポリアミド樹脂を熱溶融工程によってフィルムに成形した場合においては、該熱溶融工程において、不溶あるいは不融のゲル状の異物が発生しやすいことが知られている。特に、融点が300℃近辺の半芳香族ポリアミド樹脂を用いた場合においては、溶融加工には、実質的に300℃以上という高温での加工が必要とされる。このような高温条件下で製膜して得られたフィルムにおいては、ゲル状の異物に由来する多量のフィッシュアイが形成されるという問題点がある。
JP2000−186141Aには、炭素数が9〜12である脂肪族ジアミンとテレフタル酸からなる半芳香族ポリアミド樹脂が用いられたフィルムを製造することが開示されている。しかしながら、JP2000−186141Aに開示された方法でフィルムを製造した場合においても、ゲル状の異物などにより、得られたフィルム中に多数のフィッシュアイ状の欠点が発生する。このような外観上の欠点を有するフィルムにおいては、工業用途フィルムとしての実用性に大きな問題がある。
上記のような問題を解決するため、本発明は、フィッシュアイの発生が低減され、かつ半芳香族ポリアミド樹脂が本来有するものである高い品質が維持された半芳香族ポリアミドフィルムを提供することを目的とする。さらに本発明は、このようなフィルムを工業的に生産する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンとから構成される半芳香族ポリアミド樹脂を含有するフィルムであって、フィルム中に存在する0.01mm以上の大きさのフィッシュアイが100個/1000cm以下であることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルム。
(2)半芳香族ポリアミド樹脂が亜リン酸触媒を用いて重合されたものであることを特徴とする(1)記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(3)さらに、リン系熱安定剤を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(4)リン系熱安定剤が、下記の一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする(3)記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
Figure 2012067172
(式中、R〜Rは、独立して、水素、2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基、または、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基を示す。)
(5)上記の一般式(I)で示される化合物のR〜Rが、すべて2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基であることを特徴とする(4)記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(6)さらに、ヒンダードフェノール系熱安定剤を含有することを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(7)ヒンダードフェノール系熱安定剤が、熱重量測定装置により測定される5%重量減少時の熱分解温度が320℃以上であることを特徴とする(6)記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(8)ヒンダードフェノール系熱安定剤が、アミド基を有することを特徴とする(6)または(7)記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(9)さらに、二官能型熱安定剤を含有することを特徴とする(1)〜(8)いずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルムを製造する方法であって、半芳香族ポリアミド樹脂を溶融して溶融ポリマーを得、該溶融ポリマーを絶対濾過径60μm以下の金属焼結フィルターを通した後、フィルム状に成形することを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
(11)金属焼結フィルターとして金属繊維焼結フィルターまたは金属粉末焼結フィルターを用いることを特徴とする(10)に記載の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
本発明によれば、外観上の欠点であるフィッシュアイが低減された高品質の半芳香族ポリアミドフィルムを提供することができる。そのため、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、産業資材、工業材料、家庭用品などの用途に好適に使用することができる。
さらに、本発明によれば、上述のような半芳香族ポリアミドフィルムを工業的に効率よく製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド樹脂(一般に、ナイロン9Tと称される)を含有するフィルムである。
まず、本発明に用いられる半芳香族ポリアミド樹脂について説明する。
半芳香族ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸を主成分として含むことが必要である。ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の割合は、60〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、85〜100モル%がさらに好ましい。ジカルボン酸成分において、テレフタル酸の割合が60モル%未満の場合には、得られるフィルムの耐熱性、低吸水性が低下する場合があるので好ましくない。
半芳香族ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分に含まれる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸や1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を例示することができる。
半芳香族ポリアミド樹脂のジアミン成分としては、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分として含むことが必要である。ジアミン成分中における炭素数が9である脂肪族ジアミンの割合は、60〜100モル%が好ましく、75〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。炭素数が9である脂肪族ジアミンの割合が60モル%未満の場合には、得られるフィルムの耐熱性、低吸水性、耐薬品性が低下する場合があるので好ましくない。
炭素数が9である脂肪族ジアミンとしては、1,9−ノナンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記のなかでも、成形性の観点から、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンを併用することが好ましい。
半芳香族ポリアミドを構成するジアミン成分に含まれる、上記の炭素数が9である脂肪族ジアミン以外のジアミンとしては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミン、4−メチル−1,8−オクタンアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環式ジアミン、フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
また、半芳香族ポリアミド樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、ε−カプロラクタム、ζ−エナントラクタム、η−カプリルラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム類が共重合されていてもよい。
前記モノマーの組み合わせで得られる半芳香族ポリアミド樹脂の中でも、耐熱性と成形性の観点から、テレフタル酸のみからなるジカルボン酸成分と、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとをジアミン成分中に60〜100モル%含有するジアミン成分から構成される半芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。
上記の半芳香族ポリアミド樹脂において、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの共重合比(モル比)は、(1,9−ノナンジアミン)/(2−メチル−1,8−オクタンジアミン)=50/50〜100/0であることが好ましく、70/30〜100/0であることがより好ましく、75/25〜95/5であることがさらに好ましい。1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンを上記の割合で併用した半芳香族ポリアミド樹脂は、耐熱性、低吸水性に優れたフィルムとすることができる。
半芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマーの種類およびその組成は、得られる半芳香族ポリアミド樹脂の融点(以下、「Tm」と略称することがある。)が、およそ280〜350℃の範囲になるように選択されることが好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂のTmをこの範囲とすることで、フィルムに加工する際の、半芳香族ポリアミド樹脂の熱分解を抑制することができる。半芳香族ポリアミド樹脂のTmが280℃未満であると、得られるフィルムの耐熱性が不十分となる場合がある。一方、Tmが350℃を超えると、フィルム製造時に熱分解が起こる場合がある。
半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度は、0.8〜2.0dl/gであることが好ましく、0.9〜1.8dl/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度をこの範囲とすることで、力学的特性が優れたフィルムを得ることができる。半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度が0.8dl/g未満であると、製膜してフィルム形状を保つのが困難となる場合がある。一方、2.0dl/gを超えると、フィルム製造時に、冷却ロールへの密着が困難となり、フィルムの外観が悪化する場合がある。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、市販品を好適に使用することができる。このような市販品としては、例えば、クラレ社製の「ジェネスタ(商品名)」が挙げられる。
次に、本発明に用いられる半芳香族ポリアミド樹脂の製造方法について説明する。半芳香族ポリアミド樹脂は、結晶性ポリアミド樹脂を製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミン成分とを原料とする溶液重合法または界面重合法、あるいはジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料としてプレポリマーを作製し、該プレポリマーを溶融重合または固相重合により高分子量化する方法などが挙げられる。
前記プレポリマーは、例えば、ジアミン成分、ジカルボン酸成分および重合触媒を一括で混合することで調製されたナイロン塩を、200〜250℃の温度で加熱重合することで得ることができる。
上記のプレポリマーの極限粘度は、0.1〜0.6dl/gであることが好ましい。プレポリマーの極限粘度をこの範囲とすることで、続く固相重合や溶融重合において、ジカルボン酸成分におけるカルボキシル基とジアミン成分におけるアミノ基のモルバランスの崩れを生じさせず、重合速度を速くすることができるという利点がある。上記のプレポリマーの極限粘度が0.1dl/g未満であると、重合時間が長くなり、生産性に劣る場合がある。一方、0.6dl/gを超えると、得られる半芳香族ポリアミド樹脂が着色してしまう場合がある。
上記のプレポリマーの固相重合は、好ましくは、減圧下または不活性ガス流通下でおこなわれる。また、固相重合の温度は200〜280℃であることが好ましい。固相重合の温度をこの範囲とすることで、得られる半芳香族ポリアミド樹脂の着色やゲル化を抑制することができる。固相重合の温度が200℃未満であると、重合時間が長くなるため生産性に劣る場合がある。一方、280℃を超えると、得られる半芳香族ポリアミド樹脂において、着色やゲル化が発現する場合がある。
また、上記のプレポリマーの溶融重合は、好ましくは、350℃以下の温度で行われる。重合温度が350℃を超えると、半芳香族ポリアミド樹脂の分解や熱劣化が促進される場合がある。そのため、このような半芳香族ポリアミド樹脂から得られたフィルムは、強度や外観に劣ることがある。なお、上記の溶融重合には、溶融押出機を用いた溶融重合も含まれる。
上記した半芳香族ポリアミド樹脂の重合に際して、重合触媒が用いられる。重合触媒としては、反応速度や経済性の観点から、リン系触媒が用いられることが好ましい。リン系触媒としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、それらの塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムなど)、またはそれらのエステル[例えば、2,2−メチレンビス(ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなど]が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、重合触媒として亜リン酸を用いて重合されて得られた半芳香族ポリアミド樹脂であることがより好ましい。重合触媒を亜リン酸とすることで、他の重合触媒(例えば、次亜リン酸触媒など)を用いて重合された半芳香族ポリアミド樹脂を用いる場合と比較して、フィルム製膜において、フィルターを用いることによる濾過の際の濾圧の上昇を抑制することができる。なお、濾圧の上昇を抑制することにより奏される効果については、後述する。
また、触媒である亜リン酸を用いて重合されて得られた半芳香族ポリアミド樹脂を用いることで、得られる樹脂のゲル化そのものを抑制することができる。その結果、フィッシュアイの発生が抑制される。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂における重合触媒の含有量は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の合計量に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましく、0.07〜1質量%であることがさらに好ましい。重合触媒の含有量をこの範囲とすることで、半芳香族ポリアミド樹脂の劣化を抑制しつつ、該半芳香族ポリアミド樹脂を効率よく重合することができる。重合触媒の含有量が0.01質量%未満であると触媒作用が発現しない場合がある。一方、5質量%を超えると、経済性の点で不利となる場合がある。
さらに、必要に応じて、ジアミン成分、ジカルボン酸成分および重合触媒と共に、末端封止剤が用いられてもよい。このような末端封止剤としては、半芳香族ポリアミド樹脂の末端におけるアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば、特に限定されない。例えば、末端封止剤としては、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などが挙げられる。
中でも、反応性、および封止された末端基の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましい。また、取扱いの容易さなどの点からモノカルボン酸がより好ましい。モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸などが挙げられる。
末端封止剤の使用量は、用いられる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件などによって適宜に選択することができる。末端封止剤の使用量としては、分子量の調整や樹脂の分解抑制の観点から、ジカルボン酸成分とジアミン成分の総モル数に対して、0.1〜15モル%が好ましい。
本発明に用いる半芳香族ポリアミド樹脂は、上記のような末端封止剤により分子鎖の末端基が封止されていることが好ましい。末端基の全量に対する末端封止されている末端基量の割合は、10モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。封止されている末端基量の割合を10モル%以上とすることで、溶融成形時における樹脂の分解や、縮合が進行することによる分子量の増加を抑制することができる。また、樹脂の分解による気泡の発生が抑制されるため、該半芳香族ポリアミド樹脂から得られるフィルムの外観を優れたものとすることができる。
次に、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムについて説明する。
上述のような半芳香族ポリアミド樹脂を含有する本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、フィッシュアイによる外観の低下が防止されている。より具体的には、0.01mm以上の大きさのフィッシュアイが100個/1000cm以下であることが必要であり、50個/1000cm以下であることが好ましく、20個/1000cm以下であることがさらに好ましい。半芳香族ポリアミドフィルム中の0.01mm以上の大きさのフィッシュアイが100個/1000cmを超えると、得られるフィルムの外観の悪さが目立って、商品価値が損なわれてしまう。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、製膜時の熱安定性を高め、フィルムの強度や伸度の劣化を防ぎ、使用時においても酸化や分解などに起因するフィルムの劣化を防止するため、熱安定剤を含有させることが好ましい。熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系熱安定剤、ヒンダードアミン系熱安定剤、リン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤、二官能型熱安定剤などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、イルガノックス1010(Irganox1010、BASFジャパン社製、化学式名:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、イルガノックス1076(Irganox1076、BASFジャパン社製、登録商標、化学式名:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、サイアノックス1790(Cyanox1790、サイアナミド社製、登録商標、化学式名:1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸)、イルガノックス1098(Irganox1098、BASFジャパン社製、登録商標、化学式名:N,N′−(ヘキサン−1,6‐ジイル)ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])、スミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社製、登録商標、化学式名:3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンなどが挙げられる。
ヒンダードアミン系熱安定剤としては、例えば、ナイロスタブ S−EED(Nylostab S−EED、登録商標、クラリアントジャパン社製、化学式名:2−エチル−2’−エトキシ−オキザルアニリド)などが挙げられる。
リン系熱安定剤としては、例えば、イルガフォス168(Irgafos168、BASFジャパン社製、登録商標、化学式名:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)、イルガフォス12(Irgafos12、BASFジャパン社製、登録商標、化学式名:6,6’,6”−[ニトリロトリス(エチレンオキシ)]トリス(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)、イルガフォス38(Irgafos38、BASFジャパン社製、登録商標、化学式名:ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸)、アデカスタブ329K(ADKSTAB329K、旭電化社製、登録商標、化学式名:トリス(モノ−ジノニルフェニル)ホスファイト)、アデカスタブPEP36(ADKSTAB PEP36、旭電化社製、登録商標、化学式名:ビス(2,6−ジ―tert―ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)、Hostanox P−EPQ(クラリアント社製、化学式名:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト)、GSY−P101(堺化学工業社製、登録商標、化学式名:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト)、スミライザーGP(住友化学社製、登録商標、化学式名:6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン)などが挙げられる。
イオウ系熱安定剤としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社製、登録商標、化学式名:ジステアリルチオジプロピオネート)、Seenox 412S(シプロ化成社製、登録商標、化学式名:ペンタエリスリトール テトラキス−(3−ドデシルチオプロピオネート)、Cyanox 1212(サイアナミド社製、登録商標、化学式名:ラウリルステアリルチオジプロピオネート)などが挙げられる。
二官能型熱安定剤としては、例えば、スミライザーGM(住友化学社製、登録商標、化学式名:2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)、スミライザーGS(住友化学社製、登録商標、化学式名:2−[1−(2‐ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート)などが挙げられる。
なかでも、フィルムの製膜時におけるフィルター昇圧を防止する観点からは、リン系熱安定剤が好ましく、一般式(I)で示されるリン系熱安定剤がより好ましく、一般式(I)のR〜Rがすべて2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基であるリン系熱安定剤がさらに好ましい。
Figure 2012067172
なお、上記式(I)中、R〜Rは、独立して、水素、2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基、または、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基を示す。
一般式(I)で示されるリン系熱安定剤としては、Hostanox P−EPQ、GSY−P101等が挙げられる。
フィルム強度の劣化を防止する観点からは、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤の熱分解温度は、320℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましい。熱分解温度が320℃以上のヒンダードフェノール系熱安定剤としては、スミライザーGA−80が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤は、アミド結合を有していれば、フィルム強度の劣化を防止することができる。アミド結合を有しているヒンダードフェノール系熱安定剤としては、イルガノックス1098が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤に二官能型熱安定剤を併用すれば、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
これらの熱安定剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時におけるフィルターの昇圧を防止することができ、フィルム強度の劣化を防止することができる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時におけるフィルターの昇圧を防止することができ、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤の組み合わせとしては、Hostanox P-EPQまたはGSY−P101と、スミライザーGA−80またはイルガノックス1098との組み合わせが好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤の組み合わせとしては、HostanoxP-EPQまたはGSY−P101と、スミライザーGA−80またはイルガノックス1098と、スミライザーGSの組み合わせが好ましく、GSY−P101、スミライザーGA−80およびスミライザーGSの組み合わせがより好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムにおける上記の熱安定剤の含有量としては、半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。熱安定剤の含有量が0.01質量部未満であると、分解を抑制できない場合がある。一方、2質量部を超えると、経済的に不利となる場合がある。なお、熱安定剤を2種以上併用する場合は、各々の熱安定剤の個別の含有量、および熱安定剤の合計の含有量のいずれもが、上記の範囲に入っていることが好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、滑り性を良好にするため、滑剤粒子が含有されていることが好ましい。滑剤粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムなどの無機粒子、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などの有機系微粒子が挙げられる。滑剤粒子の平均粒径は、摩擦特性、光学特性など、要求特性に応じて適宜選択することができるが、光学特性の観点からは、0.05〜5.0μmが好ましい。
また、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマー樹脂などが挙げられる。
顔料としては酸化チタンなどが挙げられる。耐候性改良剤としてはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。難燃剤としては臭素系難燃剤やリン系難燃剤などが挙げられる。強化剤としてはタルクなどが挙げられる。
なお、上記のような添加剤を本発明の半芳香族ポリアミドフィルムに含有させるには、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムを製造する際の任意の段階で添加すればよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムのヘイズは、10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。ヘイズをこの範囲とするためには、例えば、添加剤の粒子径や含有量を調節したり、熱処理条件を調節したりするなどの手法が採用される。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの厚みムラは、10%以下であることが好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下がさらに好ましい。厚みムラをこの範囲とすることで、加工時のフィルムのたるみやシワを減らすことができる。厚みムラをこの範囲とするためには、例えば、未延伸フィルムの形状を調節したり、延伸条件を調節したりするなどの手法が採用される。なお、厚みムラの定義および測定方法は、実施例において詳述する。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの熱収縮率は小さい方が好ましい。例えば、200℃、15分の熱風加熱による熱収縮率は、3.0%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。熱収縮率をこの範囲とするためには、例えば、熱処理や弛緩処理の条件を調節するなどの手法が採用される。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの引張強度は、長さ方向(TD)、幅方向(MD)ともに、150MPa以上であることが好ましく、引張伸度は、TDおよびMDともに、60%以上であることが好ましい。引張強度や引張伸度をこの範囲とするためには、例えば、延伸倍率の条件を調節するなどの手法が採用される。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、必要に応じて、その表面の接着性を向上させるための処理をほどこすことができる。接着性を向上させる方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、酸処理、火炎処理などが挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの表面には、易接着性、帯電防止性、離型性、ガスバリア性などの機能を付与するため、各種のコーティング剤が塗布されていてもよい。
コーティング剤としては、ポリビニルアルコール水溶液、ポリ塩化ビニリデンなどのガスバリア用塗料、ウレタン系、エステル系、オレフィン系などの分散体に代表される易接着用塗料、界面活性剤系、導電性高分子系、カーボン系、金属酸化物系などの帯電防止用塗料、ヒンダードアミン系、酸化亜鉛系などの紫外線吸収用塗料、アクリル系、シランカップリング剤系などのハードコート用塗料、シリコーン系、オレフィン系などの離型用塗料などが挙げられる。
なお、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムにコーティング剤を塗布する場合、延伸後のフィルムに塗布してもよく、延伸前のフィルムに塗布してもよい。また、延伸機の直前でコーティング剤を塗布し、さらに延伸機の予熱区間で乾燥することで、被膜形成させてもよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの表面には、金属またはその酸化物などの無機物、他種ポリマー、紙、織布、不織布、木材などを積層してもよい。
無機物としては、例えば、アルミ、アルミナ、シリカなどが挙げられる。
他種ポリマーとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)などのポリオレフィン系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などのカルボキシル基含有不飽和化合物およびその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3ジカルボン酸無水物などの酸無水物基含有不飽和化合物、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和化合物などにより、カルボキシル基またはその金属塩、酸無水物基、エポキシ基などの官能基が導入された、上記のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、PET/PEI共重合体、ポリアリレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシドなどのポリエーテル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルホンなどのポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトンなどのポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)などのポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネートなどのポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)などのフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、メラミンが挙げられる。
次に、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法について説明する。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法は、半芳香族ポリアミド樹脂を溶融して溶融ポリマーを得、該溶融ポリマーを絶対濾過径60μm以下の金属焼結フィルターを通した後、フィルム状に成形するものである。
より具体的には、以下のような製造方法である。すなわち、前記の半芳香族ポリアミド樹脂、必要に応じて熱安定剤や各種の添加剤を押出機で溶融混練し、溶融ポリマーを得る。そして該溶融ポリマーをフィルターで濾過し、濾過された溶融ポリマーをTダイなどのフラットダイを用いて、フィルム状に押出す。その後、フィルム状の溶融物を冷却ロールやスチールベルトなどの移動冷却体の冷却面に接触させて冷却することにより、半芳香族ポリアミドフィルムを得ることができる。この半芳香族ポリアミドフィルムは、実質的に未配向の未延伸フィルムである。
半芳香族ポリアミド樹脂の原料として、フィルムを製造する際に生成する規格外のフィルムや、耳トリムとして発生するスクラップ混合物を、バージン原料(不純物を含有しない半芳香族ポリアミド樹脂)に混合したものを用いる場合がある。その場合は、これらの混合物を、バージン原料に対してドライブレンドしたり溶融混練したりすることで、原料とすることができる。
溶融ポリマーを濾過するフィルターとしては、絶対濾過径が60μm以下の金属焼結フィルターを用いることが好ましい。なかでも、フィルターを構成する金属がランダムな方向で配置され、フィッシュアイの欠点となる微細な塊状物をより効果的に除去することができる観点から、金属繊維焼結フィルター、金属粉末焼結フィルターを用いることがより好ましい。また、濾過の際の濾圧の上昇を抑制しやすいことから、金属繊維焼結フィルターがさらに好ましい。なお、金属繊維焼結フィルター、金属粉末焼結フィルターではなく、網状の金属焼結フィルターを用いる場合には、上記の微細な塊状物を十分に取除くことができない場合がある。その結果、得られたフィルムにおいては、フィッシュアイの発生を十分に低減できない場合がある。
金属焼結フィルターの濾過径を表すものとしては、絶対濾過径と公称濾過径がある。絶対濾過径とは、JIS−B8356の方法に従って測定された、フィルターメディア(濾過材)を通過した最大のグラスビーズ粒径のサイズにより定義されるものである。一方、公称濾過径とは、JIS−B8356の方法に従って測定された、フィルターメディアによる捕集効率が95%であるコンタミナントの粒径(異物の粒径)のサイズにより定義されるものである。
金属繊維焼結フィルターは、単層のものであってもよいし、または濾過径の異なる2層以上の層が積層された構造を有するものであってもよい。
金属焼結フィルターの絶対濾過径は、60μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。絶対濾過径が小さいほどフィッシュアイの原因となる異物を除去する効果が高くなる。これにより、フィッシュアイが低減され、外観に優れたフィルムを製造することが可能となる。絶対濾過径が60μmを超えると、フィッシュアイを十分に抑制することができない。
本発明において上記焼結フィルターによって溶融ポリマーを濾過する場合、特定の触媒を用いて重合された半芳香族ポリアミドまたは特定の熱安定剤を用いて重合された半芳香族ポリアミドを用いると、効率的な異物の除去と濾圧上昇の防止を同時に行うことができる。より具体的には、亜リン酸触媒によって重合された半芳香族ポリアミドを金属焼結フィルターによって濾過した場合、濾過量の増加に伴って起る濾圧の上昇を、他の触媒、例えば次亜リン酸触媒によって重合されたポリマーを濾過する場合よりも抑制することができ、フィルター寿命を向上させることができる。
溶融ポリマーの押出温度は、半芳香族ポリアミド樹脂の融点以上かつ350℃以下であることが好ましい。押出温度が350℃を超えると、半芳香族ポリアミド樹脂の分解や熱劣化が促進される場合がある。
フィルムの製膜の際に用いる移動冷却体の温度は、40〜90℃に設定されることが好ましく、45〜70℃に設定されることがより好ましく、45〜60℃に設定されることがさらに好ましい。移動冷却体の設定温度が90℃を超えて高すぎると、得られたフィルムの移動冷却体の剥離が困難となる場合がある。また、冷却移動体の温度が40℃未満と低すぎると、フィルム状の溶融物が移動冷却体に接触した際に、冷却ムラが起りやすくなり、得られるフィルムの平坦性が損なわれる場合がある。
本発明の製造方法においては、均一な厚みのフィルムを得ることを目的として、溶融ポリマーを均一に移動冷却体に密着させ、冷却固化する方法を採用することが好ましい。そのような方法としては、エアーナイフキャスト法、静電印加法、バキュームチャンバ法などを挙げることができる。
本発明の製造方法においては、シリンダーやバレルの溶融部、計量部、単管、フィルター、Tダイなどの表面に対して、樹脂の滞留を防ぐため、その表面の粗さを小さくする処理がほどこされることが好ましい。表面の粗さを小さくする方法としては、極性の低い物質で改質する方法や、窒化珪素やダイヤモンドライクカーボンを蒸着させる方法などが挙げられる。
本発明の製造方法においては、半芳香族ポリアミド樹脂の未延伸フィルムを予熱し、延伸することが好ましい。得られる延伸フィルムの厚みとしては0.5μm〜1.5mmが好ましい。延伸フィルムとすることで、低吸水性、耐薬品性、耐熱性、力学的特性を向上させることができ、好ましく使用することができる。
フィルムを延伸する方法としては、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法などを挙げることができる。中でも、フィルムの厚み精度を良好とし、フィルムの幅方向の物性を均一とすることができる観点から、フラット式同時二軸延伸法を採用することが好ましい。
フラット式同時二軸延伸法を採用するための延伸装置としては、スクリュー式テンター、パンタグラフ式テンター、リニアモーター駆動クリップ式テンターなどを用いることができる。
フィルムの延伸倍率は、半芳香族ポリアミドフィルムの耐熱性や力学強度を良好にする観点から、MDおよびTDにおいて、それぞれ1.5倍〜10倍の範囲であることが好ましく、2倍〜5倍であることがより好ましい。
フィルムの延伸速度としては、MDおよびTDにおいて、延伸歪み速度がいずれも400%/分を超えていることが好ましく、800%/分以上かつ12000%/分以下であることがより好ましく、1200%/分以上かつ6000%/分以下であることがさらに好ましい。延伸歪み速度をこの範囲とすることで、未延伸フィルムを破断することなく延伸することができる。
延伸前にフィルムに対して予熱をおこなう際の予熱温度としては、(Tg−20℃)〜(Tg+40℃)であることが好ましく、(Tg−15℃)〜(Tg+35℃)であることがより好ましい。予熱温度をこの範囲とすることで、延伸ムラやフィルムの破断が発現することなく、安定して延伸をおこなうことができる。(Tg−20℃)未満であると、延伸時にフィルムが変形できずに破断する場合があり、一方、(Tg+40℃)を超えると、延伸前に結晶化して延伸時に破断したり、延伸ムラが生じたりする場合がある。ここで、Tgはガラス転移温度を示す。
また、延伸前のフィルムの予熱時間は、特に限定されず、1〜60秒が現実的な範囲である。
フィルムの延伸温度は、Tg以上であることが好ましく、Tgを超え(Tg+50℃)以下であることが好ましい。延伸温度をこの範囲とすることで、延伸ムラやフィルム破断を生じさせることなく安定して延伸することができる。Tg未満であると、フィルムが破断してしまう場合がある。一方、(Tg+50℃)を超えると、延伸ムラが発現する場合がある。
延伸をおこなった後、延伸のためのクリップでフィルムを把持したまま、熱固定処理を行うことが好ましい。熱固定処理を行うことで、得られるフィルムの高温での寸法安定性を向上させることができる。
熱固定処理温度は、フィルムの耐熱性や寸法安定性の観点から、200℃〜(Tm−5℃)であることが好ましく、240℃〜(Tm−10℃)であることがより好ましい。
さらに、熱固定処理をおこなった後、クリップでフィルムを把持したまま1〜10%の弛緩処理を行うことが好ましく、3〜7%の弛緩処理を行うことがより好ましい。弛緩処理をおこなうことで、得られるフィルムの高温での寸法安定性をさらに向上させることができる。
得られた半芳香族ポリアミドフィルムは、枚葉とされてもよいし、巻き取りロールに巻き取られることでフィルムロールの形態とされてもよい。各種用途への利用に際しての生産性の点から、フィルムロールの形態とすることが好ましい。フィルムロールとされた場合は、所望の巾にスリットされてもよい。
上述のようにして得られた本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、ナイロン9Tが本来有するものである特性に起因して、ナイロン9T以外のポリアミド樹脂が用いられた従来のポリアミドフィルムと比較すると、機械特性、フレキシブル性、接着性に優れ、耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、低吸水性に優れている。さらに、フィルムにおけるフィッシュアイの発生が低減されている。このため、以下のような分野において、好適に使用されることができる。すなわち、医薬品包装材料、レトルト食品などの食品包装材料、半導体パッケージ用などの電子部品包装材料、モーター、トランス、ケーブルなどのための電気絶縁材料、コンデンサ用途などの誘電体材料、カセットテープ、デジタルデータストレージ向けデータ保存用磁気テープ、ビデオテープなどの磁気テープ用材料、太陽電池基板、液晶板、導電性フィルム、表示機器などの保護板、LED実装基板、フレキシブルプリント配線板、フレキシブルフラットケーブルなどの電子基板材料、フレキシブルプリント配線用カバーレイフィルム、耐熱マスキング用テープ、工業用工程テープなどの耐熱粘着テープ、耐熱バーコードラベル、耐熱リフレクター、各種離型フィルム、耐熱粘着ベースフィルム、写真フィルム、成形用材料、農業用材料、医療用材料、土木、建築用材料、濾過膜など、家庭用、産業資材用のフィルムなどとして、好適に使用することができる。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
半芳香族ポリアミド樹脂および半芳香族ポリアミドフィルムの物性測定は、以下の方法によりおこなった。なお、(5)〜(10)を測定する場合は、温度20℃、湿度65%の環境下で測定をおこなった。
(1)半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度
濃度が96質量%である濃硫酸中に、30℃にて、半芳香族ポリアミド樹脂を、それぞれ、0.05g/dl、0.1g/dl、0.2g/dl、0.4g/dlの濃度となるように溶解させて、半芳香族ポリアミド樹脂の還元粘度を求めた。そして、各々の還元粘度の値を用い、濃度を0g/dlに外挿した値を極限粘度とした。
(2)半芳香族ポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
半芳香族ポリアミド樹脂10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC−7」)を用い、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで10℃/分で昇温し(1st Scan)、350℃にて5分間保持した。その後、100℃/分で20℃まで降温し、20℃にて5分間保持後、350℃まで20℃/分でさらに昇温した(2nd Scan)。そして、2nd Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度を融点とし、ガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間点を、ガラス転移温度とした。
(3)熱分解温度
半芳香族ポリアミド樹脂10mgを、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製、「TGA−7」)を用い、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで20℃/分で昇温した。昇温前の質量に対して5質量%が減少した温度を、熱分解温度とした。
(4)フィルターの昇圧時間
半芳香族ポリアミド樹脂を、シリンダー温度を320℃に加熱した単軸押出機に投入して溶融し、背面にブレーカープレートを有する平板フィルターで濾過し、その後、320℃に加熱したTダイから押し出した。押出の際、フィルターの単位面積当たりの流量が1kg/cm/時間となるように、押出量を設定した。そして、フィルター上流の圧力を経時的に記録した。押出開始からのフィルター上流圧力変化が10MPaに達するまでの時間を測定した。
(5)フィルムの厚み
厚み計(HEIDENHAIN社製、「MT12B」)を用い、フィルムの厚みを測定した。
(6)フィルムにおけるフィッシュアイ数
計測機としてオフラインフィッシュアイカウンター(フロンティアシステム社製)を用い、フィルムにおけるフィッシュアイの数を測定した。より具体的には、ロール状としたフィルム(厚さ:25μm)における任意の10点の位置から、サイズが20cm×20cmであるフィルムを10枚切り出し、大きさが0.01mm以上であるフィッシュアイの数を計測して平均値を求め、1000cm当たりに換算した。計測機の検出感度は、日本国立印刷局製造の「きょう雑物測定図表」にしたがって、0.01mm以上の大きさのゲルまたはフィッシュアイの数を検出することが可能である条件に調整した。
(7)フィルムの厚みムラ
フィルムの全幅方向の中心部の厚みと、フィルムの全巾方向の端部の厚みとを、測定した。測定位置は、フィルムの長手方向1m毎における10点とし、合計で30点(各々の中心部と両端部)の計測値を得た。計測値の最大値をLmax、最小値をLmin、LmaxとLminの平均値をLaとした。そして、以下の式で表される値を厚みムラRとした。
R=[(Lmax−Lmin)/2La]×100
なお、両端部とは、幅方向に沿ったフィルムにおいて、各々の両末端から中心に向かって全幅の10%の距離の位置のことをいう。
(8)フィルムのヘイズ
濁度計(日本電色工業社製、「NDH2000」)を用い、JIS K7136に従ってヘイズを測定した。
(9)フィルムの熱収縮率
JIS K7133に従って、200℃で15分間熱処理をした際のフィルムの収縮率を、MDおよびTDについて、それぞれ測定した。
(10)フィルムの引張強度および引張伸度
250℃の熱風乾燥機中に5分間静置した前後のフィルムのMDおよびTDについて、JIS K7127に従って測定した。サンプルの大きさは10mm×150mm、チャック間の初期距離は100mm、引張速度は500mm/分とした。ただし、実施例3については、熱風乾燥機の温度を230℃とした。
また、半芳香族ポリアミド樹脂の製造に用いた原料を以下に示す。
<原料モノマー>
(1)NMDA
1,9−ノナンジアミン
(2)MODA
2−メチル−1,8−オクタンジアミン
(3)TPA
テレフタル酸
<触媒>
(1)PA
亜リン酸
(2)SHP
次亜リン酸ナトリウム
<半芳香族ポリアミド樹脂>
(1)半芳香族ポリアミド樹脂A
1343gのNMDA、237gのMODA、1627gのTPA(平均粒径:80μm)(NMDA:MODA:TPA=85:15:99、モル比)、48.2gの安息香酸(BA)(ジカルボン成分とジアミン成分の総モル数に対して4.0モル%)、3.2gのPA(ジカルボン成分とジアミン成分の合計量に対して0.1質量%)、1100gの水を反応装置に入れ、窒素置換した。さらに、80℃で0.5時間、毎分28回転で撹拌した後、230℃に昇温した。その後、230℃で3時間加熱した。その後冷却し、反応物を取り出した。該反応物を粉砕した後、乾燥機中において、窒素気流下、220℃で5時間加熱し、固相重合してポリマーを得た。そして、シリンダー温度320℃の条件下で溶融混練してストランド状に押し出した。その後、冷却、切断して、ペレット状の半芳香族ポリアミド樹脂Aを調製した。
(2)〜(5)
半芳香族ポリアミド樹脂B〜E
表1に示すように、原料モノマーの組成、および重合触媒の種類と配合量を変更する以外は、半芳香族ポリアミド樹脂Aと同様の操作をおこなって、半芳香族ポリアミド樹脂B〜Eを調製した。
表1に、半芳香族ポリアミド樹脂A〜Eの組成および特性値を示す。
Figure 2012067172
<熱安定剤>
A.ヒンダードフェノール系安定剤
(1)GA
3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、(住友化学社製、「スミライザーGA−80」、熱分解温度:392℃)
(2)1098
N,N’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、(BASFジャパン社製、「イルガノックス1098」、熱分解温度:344℃)
B.リン系安定剤
(1)168
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、(BASFジャパン社製、「イルガフォス168」)
(2)GSY
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、(堺化学工業社製、「GSY−P101」(登録商標))
(3)EPQ
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、(クラリアント社製、「Hostanox P−EPQ」)
C.二官能型熱安定剤
(1)GS
2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、(住友化学社製、「スミライザーGS」)
<フィルター>
(1)NF−07:金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF−07」、公称濾過径:15μm、絶対濾過径:15μm)
(2)NF−10:金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF−10」、公称濾過径:30μm、絶対濾過径:30μm)
(3)NF−13:金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF−13」、公称濾過径:60μm、絶対濾過径:60μm)
(4)NPM−50:金属粉末焼結フィルター(日本精線社製、「NPM−50」、公称濾過径:50μm、絶対濾過径:50μm)
(5)♯400:平織金網フィルター(日本精線社製、「NM5P-38」、公称濾過径:38μm、絶対濾過径:75μm)
(6)♯800:平織金網フィルター(日本精線社製、「NM5P−15」、公称濾過径:15μm、絶対濾過径:60μm)
実施例1
100質量部の半芳香族ポリアミド樹脂A、および0.2質量部のGAを、シリンダー温度を320℃に加熱した、スクリュー径が50mmである単軸押出機に投入して溶融して、溶融ポリマーを得た。該溶融ポリマーを金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF−10」、絶対粒径:30μm)を用いて濾過した。その後、320℃にしたTダイよりフィルム状に押し出し、フィルム状の溶融物とした。50℃に設定した冷却ロール上に、該溶融物を静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸フィルム(厚さ:250μm)を得た。
なお、冷却ロールは、表面にセラミック(Al)を0.15mm厚に被覆したものを用いた。静電印加のための電極には、直径0.2mmのタングステン線を用いた。静電印加の際には、300W(15kV×20mA)の直流高圧発生装置を用い、6.5kVの電圧を印加した。また、溶融ポリマーの押出量は、フィルター単位面積あたりの流量が、1kg/cm/時間となるように設定した。未延伸フィルムを6時間連続で製膜してもフィルターの昇圧は見られず、半芳香族ポリアミドフィルムを安定して製造することが可能であった。
次に、この未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機(入口幅:193mm、出口幅:605mm)に導いて、同時二軸延伸をおこなった。延伸条件は、予熱部の温度が120℃、延伸部の温度が130℃、MD方向の延伸歪み速度が2400%/分、TD方向の延伸歪み速度が2760%/分、MD方向の延伸倍率が3.0倍、TD方向の延伸倍率が3.3倍であった。
そして、同テンター内で、270℃で熱固定を行い、フィルムの幅方向に5%の弛緩処理を施し、厚さ25μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムは、厚みムラが10%以下と均一性に優れ、ヘイズが1.5%と透明で外観も良好であった。実施例1の評価結果を表2に示す。
Figure 2012067172
実施例2、4〜16、比較例1〜4
表2および表3に示したように、半芳香族ポリアミド樹脂の種類と含有割合、熱安定剤の種類と含有割合、および用いるフィルターの種類を変更する以外は、実施例1と同様にして、半芳香族ポリアミドフィルムを製造した。
Figure 2012067172
実施例3
表2に示したように、半芳香族ポリアミド樹脂の種類と含有割合、熱安定剤の種類と含有割合、および用いるフィルターの種類を変更し、テンター内の熱固定温度を230℃とした以外は、実施例1と同様にして、半芳香族ポリアミドフィルムを製造した。
実施例17、18
実施例1および実施例16で半芳香族ポリアミドフィルムを製造する過程で得られる、未延伸フィルムの物性を評価し、それぞれ実施例17、18の評価とした。なお、実施例17および18で得られたフィルムにおいては、厚みおよびフィッシュアイ個数以外の評価をおこなわなかった。
実施例1〜18および比較例1〜4における半芳香族ポリアミドフィルムの組成、製造条件およびフィルム評価を、表2および表3に示す。
実施例1〜16で得られた半芳香族ポリアミドフィルムは、溶融ポリマーを、絶対濾過径が60μm以下の金属繊維焼結フィルター、または、金属粉末焼結フィルターで濾過し、製膜された。そのため、得られた半芳香族ポリアミドフィルムのフィッシュアイ数は100個/1000cm以下と少なく、外観に優れるものであった。また、各種の特性においても優れていた。なお、未延伸フィルムを得たものである実施例17および実施例18においても、フィッシュアイ数は十分に少ないものであった。
実施例4、5、11は、亜リン酸ではなく次亜リン酸ナトリウムを重合触媒とした半芳香族ポリアミド樹脂を用いたために、濾圧の上昇がやや早かった。
実施例6は、フィルターとして金属粉末焼結フィルターを用いたために、濾圧の上昇がやや早かった。
実施例1〜10、12〜16は、亜リン酸ではなく、次亜リン酸ナトリウムを重合触媒として得られた半芳香族ポリアミド樹脂を用いたが、熱安定剤として、一般式(I)で示されるリン系熱安定剤を用いたため、濾圧の上昇が抑えられていた。加えて、フィルムの力学特性が良好であり、また、熱処理による引張強度の低下が小さかった。なかでも、実施例13、16は、一般式(I)で示される化合物において、R〜Rがすべて2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基であり、さらに熱分解温度が320℃以上のヒンダードフェノール系熱安定剤であるスミライザーGA−80を併用したために、熱処理による引張強度の低下がより小さかった。また、実施例16は、さらに二官能型熱安定剤を併用したため、実施例13と比べると、引張強度の低下がさらに小さかった。
比較例1〜2においては、絶対濾過径が60μmよりも大きい金属繊維焼結フィルターを用いた。そのため、得られたフィルムにおけるフィッシュアイ数が100個/1000cm以上と多かった。
比較例3〜4においては、金属繊維焼結フィルターまたは金属粉末焼結フィルターではなく、金網フィルターを用いた。そのため、得られたフィルムにおけるフィッシュアイ数が100個/1000cm以上と多かった。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、外観上の欠点であるフィッシュアイが低減された高品質である。そのため、産業資材、工業材料、家庭用品などの用途に好適に使用することができ、非常に有効である。

Claims (11)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンとから構成される半芳香族ポリアミド樹脂を含有するフィルムであって、フィルム中に存在する0.01mm以上の大きさのフィッシュアイが100個/1000cm以下であることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルム。
  2. 半芳香族ポリアミド樹脂が亜リン酸触媒を用いて重合されたものであることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  3. さらに、リン系熱安定剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  4. リン系熱安定剤が、下記の一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項3記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
    Figure 2012067172
    (式中、R〜Rは、独立して、水素、2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基、または、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基を示す。)
  5. 上記の一般式(I)で示される化合物のR〜Rが、すべて2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル基であることを特徴とする請求項4記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  6. さらに、ヒンダードフェノール系熱安定剤を含有することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  7. ヒンダードフェノール系熱安定剤が、熱重量測定装置により測定される5%重量減少時の熱分解温度が320℃以上であることを特徴とする請求項6記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  8. ヒンダードフェノール系熱安定剤が、アミド基を有することを特徴とする請求項6または7記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  9. さらに、二官能型熱安定剤を含有することを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルムを製造する方法であって、半芳香族ポリアミド樹脂を溶融して溶融ポリマーを得、該溶融ポリマーを絶対濾過径60μm以下の金属焼結フィルターを通した後、フィルム状に成形することを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
  11. 金属焼結フィルターとして金属繊維焼結フィルターまたは金属粉末焼結フィルターを用いることを特徴とする請求項10に記載の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
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