JPWO2009119093A1 - リチウム二次電池用電極およびその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用電極およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

リチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、(A)表面に複数の凸部12を有する集電体11を用意する工程と、(B)集電体11の表面の法線に対して傾斜した方向Eから、蒸発させた原料を入射させることにより、複数の凸部12上に、対応する複数の柱状体14を形成する工程と、(C)複数の柱状体14を酸化させることにより、原料の酸化物を含む複数の活物質体18を形成する工程とを包含する。

Description

本発明は、リチウム二次電池用電極およびその製造方法に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が増大している。上記のような用途に用いられる電池には、高いエネルギー密度が要求される。このような要求に対して、リチウム二次電池が注目され、その正極および負極のそれぞれにおいて、従来よりも高容量の活物質の開発が行われている。なかでも、非常に大きな容量が得られる活物質として、ケイ素(Si)もしくは錫(Sn)の単体、酸化物または合金が有望視されている。
しかし、これらの活物質を用いてリチウム二次電池用の電極を構成すると、充放電の繰り返しに伴って電極の変形が生じるという問題がある。上記のような活物質は、リチウムイオンと反応する際に大きな体積変化を生じるため、充放電の際、活物質に対するリチウムイオンの挿入および脱離の反応によって活物質が大きく膨張・収縮する。そのため、充放電を繰り返すと、電極に大きな応力が発生して歪みが生じ、しわや切れ等を引き起こすおそれがある。また、電極に歪みが生じて変形すると、電極とセパレータとの間に空間が生じて、充放電反応が不均一になり、電池の特性を局部的に低下させるおそれがある。従って、上記の活物質を用いて、十分な充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池を得ることは困難であった。
これらの課題を解決するため、特許文献1では、斜方蒸着により複数の柱状の活物質体からなる活物質層を形成することが提案されている。これにより、隣接する活物質体の間に空隙を設けることができるので、活物質の膨張による応力を緩和できる。
また、特許文献2には、集電体上に凹凸パターンを設けておき、斜方蒸着により凹凸パターンの各凸部上に活物質体を形成することが提案されている。これにより、隣接する活物質体間により確実に空隙を形成できるので、活物質の膨張による応力をより効果的に緩和できる。従って、膨張応力に起因する電極の変形を抑制できる。
ここで、斜め蒸着によって複数の活物質体が形成される理由を説明する。表面に凹凸を有する集電体に対して蒸着材料を斜めから入射させると、集電体表面の各凸部は、蒸着材料の照射されない影となる領域を形成する。このため、斜め蒸着を行うと、蒸着材料は集電体の各凸部上に堆積しやすく、各凸部上に活物質体が柱状に成長する。活物質体が成長すると、活物質体自体も集電体に影を形成するので、集電体表面には、凸部および柱状に成長していく活物質体の影となり、蒸着材料が堆積しない領域が形成される(シャドウイング効果)。この結果、複数の活物質体が間隔を空けて配置された構造を有する活物質層を得ることができる。なお、活物質体の間隔は、蒸着方向および集電体の表面凹凸の大きさなどによって調整できる。
また、特許文献1および特許文献2に記載された電極の製造方法では、反応性蒸着により、ケイ素酸化物(SiOx、0<x<2)からなる活物質体を形成している。なお、一般に、ケイ素を含む活物質では、その酸素比率(上記x)が低いほど、高い充放電容量が得られるが、充電による体積膨脹率が大きくなる。充放電サイクル特性の低下を抑制するためには、ケイ素単体ではなく、ケイ素酸化物を用いることが好ましいからである。このため、ケイ素酸化物の酸素比率xは、充放電サイクル特性と充放電特性とのバランスを考慮して、適宜選択される。
国際公開第2007−015419号パンフレット 国際公開第2007−094311号パンフレット
上述したように、斜方蒸着を用いれば、シャドウイング効果を利用して集電体の各凸部上に選択的に活物質(例えばケイ素酸化物)を成長させることができるので、凸部上に柱状の活物質体を形成することできる。
しかしながら、斜方蒸着を用いた場合でも、集電体の表面のうち凸部が形成されていない部分(凹部)に、一部の活物質が堆積する可能性がある。この理由については後述する。凹部上に堆積する活物質の量が多くなると、活物質体間に十分な空隙を確保できなくなるおそれがある。また、凹部上に堆積された活物質の膨張応力によって、集電体にしわや切れが生じやすくなるおそれもある。さらに、集電体の変形(伸び)によって活物質が剥離しやすくなる。この結果、充放電サイクル特性が低下する可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電容量を確保しつつ、隣接する活物質体の間に十分な空隙を確保することによって充放電サイクル特性を高めることにある。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、(A)表面に複数の凸部を有する集電体を用意する工程と、(B)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、前記複数の凸部上に、対応する複数の柱状体を形成する工程と、(C)前記複数の柱状体を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む複数の活物質体を形成する工程とを包含する。
ある好ましい実施形態において、前記工程(C)は、前記複数の柱状体が形成された集電体に対して、酸化雰囲気中で加熱処理を行う工程を含む。
ある好ましい実施形態において、前記集電体は主成分として金属を含み、前記工程(B)は、前記複数の柱状体のうち隣接する柱状体の間において、前記集電体の表面の一部が露出するように、前記蒸発させた蒸着原料を前記集電体の表面に堆積させる工程であり、前記工程(C)は、前記集電体の前記露出した表面を酸化させることにより、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層を形成する工程を含む。
前記工程(B)は、圧力が0.1Pa以下のチャンバー内で行われることが好ましい。
前記原料はケイ素を含み、前記活物質体はケイ素酸化物を含むことが好ましい。
前記活物質体のケイ素量に対する酸素量のモル比xの平均値は0.5より大きく、かつ、1.5未満であってもよい。
ある好ましい実施形態において、前記集電体は銅を含み、前記抵抗層は銅を含む酸化物からなる。
前記加熱処理の温度は100℃以上600℃以下であってもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の他の製造方法は、(a)主成分として金属を含む集電体の表面に複数の柱状体を間隔を空けて形成し、前記複数の柱状体の前記間隔において前記集電体の表面の一部を露出させる工程と、(b)前記複数の柱状体が形成された集電体に対して、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、前記複数の柱状体を酸化させて複数の活物質体を形成するとともに、前記集電体の前記露出した表面を酸化させて前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層を形成する工程とを包含する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極のさらに他の製造方法は、(A)表面に複数の凸部を有する集電体を用意する工程と、(a1)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、各凸部上に第1柱状部分を形成する工程と、(a2)前記第1柱状部分を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む第1部分を形成する工程と、(b1)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、前記第1部分上に第2柱状部分を形成する工程と、(b2)前記第2柱状部分を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む第2部分を形成する工程とを包含し、これによって、前記各凸部上に、前記第1および第2部分を含む活物質体を形成する。
本発明のリチウム二次電池用電極は、上記の何れかの方法により製造される。
本発明の他のリチウムイオン二次電池用電極は、表面に複数の凸部を有する集電体と、前記複数の凸部上に間隔を空けて支持された複数の活物質体と、前記複数の活物質体のうち隣接する活物質体の間に配置され、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層とを備え、前記集電体は主成分として金属を含んでおり、前記抵抗層は前記金属の酸化物を含んでいる。
本発明の電極の製造方法によると、蒸着によってケイ素を含む柱状体を形成した後、柱状態を酸化させることによって、所望の酸素比率x(ケイ素量に対する酸素量のモル比)を有する活物質体を形成する。従って、蒸着時に酸素ガスをチャンバ内に供給することによって、所望の酸素比率を有するケイ素酸化物を形成する必要がない。このため、真空度の高いチャンバ内で蒸着を行うことが可能となり、蒸発させた原料粒子の集電体表面における堆積位置の指向性を高めることできる。この結果、集電体表面のうち凸部が形成されていない部分(凹部)上に堆積する活物質の量を低減できる。よって、活物質体の間に十分な空隙を確保でき、活物質の膨張応力に起因する充放電サイクル特性の低下を抑制できる。また、集電体の変形(伸び)による活物質の剥離を抑制できる。さらに、酸化工程によって活物質体の酸素比率xを制御することにより、充放電容量を確保しつつ、充放電サイクル特性を高めることができる。
上記酸化工程において、柱状体を酸化させるとともに、集電体表面のうち活物質が堆積されなかった部分(露出部分)を酸化させて抵抗層を形成することが好ましい。これにより、充電時に、集電体表面にリチウムが析出することを抑制できるので、リチウム二次電池の安全性を高めることができる。
(a)〜(c)は、本発明による第1の実施形態の電極の製造方法を示す模式的な断面図である。 (a)は、従来の蒸着工程を説明するための模式的な拡大断面図であり、(b)は、第1の実施形態における蒸着工程を説明するための模式的な拡大断面図である。 蒸着工程における蒸発させた原料粒子の入射角度θの好適な範囲を説明するための模式的な断面図である。 加熱温度と、柱状体が形成された集電体の重量増加率との関係を示すグラフである。 反応性蒸着によって形成されたケイ素酸化物のXPSを示す図である。 第1の実施形態における活物質体の他の例を示す模式的な断面図である。 第1の実施形態における活物質体のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本実施形態における集電体11の凸部12を例示する模式的な平面図およびIX−IX’断面図である。 第1の実施形態の電極を負極として用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、実施例および比較例−1で使用する真空蒸着装置の模式的な断面図であり、互いに直交する面に沿った断面を示している。 (a)および(b)は、それぞれ、電極1および電極Aの断面SEM像を示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、電極2および電極Bの側面図である。 (a)〜(e)は、本発明による第2の実施形態の電極の製造方法を示す模式的な断面図である。 (a)〜(d)は、本発明による第2の実施形態の電極の製造方法の他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、本発明による第3の実施形態の電極の製造方法を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、本発明による第3の実施形態の電極の製造方法の他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、本発明による第3の実施形態の電極の製造方法のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 本発明による第3の実施形態の電極の他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第3の実施形態の電極のさらに他の例を示す模式的な斜視図および断面図である。 電極7および電極Dの活物質層を形成するために使用した蒸着装置の模式的な断面図である。 (a)および(b)は、電極3〜6の構造を説明するための平面図および断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、参考の実施形態のリチウム二次電池用負極の一部を示す模式的な断面図である。 参考の実施形態の他のリチウム二次電池用負極の一部を示す模式的な断面図である。 参考の実施形態のリチウムイオン二次電池の模式的な断面図である。 参考の実施形態のリチウムイオン二次電池における極板群を示す模式的な断面図である。
符号の説明
11 集電体
12 凸部
13 凹部
14、26’、28’ 柱状体
16 蒸着層
18、26、28 活物質体
20 活物質層
22 蒸発源
90 抵抗層
110 集電体(負極集電体)
112 活物質層(負極活物質層)
112a 集電体表面のうち活物質と接していない領域
114 抵抗層
116 開口部
118 空隙
120 膨れ部
122、125 活物質体
124 空間
130 正極集電体
132 正極活物質層
140 正極
144 セパレータ
145 外装ケース
146 正極リード
147 負極リード
148 樹脂材料
151 集電体
154 固定台
155 ターゲット
200、201、202、203 負極
300 リチウムイオン二次電池
600 蒸着装置
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明によるリチウムイオン二次電池用電極(以下、単に「電極」と呼ぶ。)の第1の実施形態を説明する。本実施形態の電極は、リチウムイオン二次電池の負極および正極のいずれにも適用できるが、好ましくはリチウムイオン二次電池用の負極として用いられる。
図1(a)〜(c)は、本実施形態の電極の製造方法の一例を説明するための断面工程図である。ここでは、集電体の表面に、複数の活物質体を有する活物質層を形成する方法を例に説明する。
まず、図1(a)に示すように、表面に複数の凸部12を有する集電体11を作製する。複数の凸部12は、集電体11の表面に互いに間隔を空けて規則的に配列されていることが好ましい。この集電体11の表面に、斜方蒸着によりケイ素を含む原料を堆積させる。本実施形態では、蒸発源としてケイ素を用い、蒸発させたケイ素粒子を、集電体表面の法線Dに対して角度(入射角度)θだけ傾斜させた方向(蒸着方向)Eから入射させる。
本実施形態では、真空チャンバ内で蒸着を行う。このとき、チャンバー内に酸素ガスを導入しないので、反応性蒸着を行う場合よりも真空度の高いチャンバー内(チャンバー内の圧力:例えば0.1Pa以下、より好ましくは0.01Pa以下)で蒸着を行うことができる。
図1(a)に示す蒸着工程では、上述したシャドウイング効果により、集電体11の表面のうち各凸部12の影となる部分にはケイ素粒子が堆積しにくい。このため、ケイ素粒子は凸部12上に選択的に堆積する。この結果、図1(b)に示すように、各凸部12上にケイ素を含む原料が柱状に堆積する。本明細書では、蒸着によって得られた柱状の堆積物14を「柱状体」と称する。また、複数の柱状体14を含む膜16を「蒸着層」と称する。柱状体14は、集電体表面の法線Dに対して傾斜した方向(成長方向)Sに沿って成長する。なお、成長方向Sの集電体11の法線Dに対する傾斜角(成長角度)αと上記入射角度θとは、経験的に2tanα=tanθの関係を満たすことが知られている。従って、入射角度θを制御することにより、柱状体14の成長方向Sを制御することができる。
また、本実施形態では、チャンバ内に酸素ガスを導入しないで蒸着を行うため、比較的酸素比率の低い柱状体14が形成される。柱状体14のケイ素量に対する酸素量のモル比(以下、「酸素比率」と略す。)xは例えば0.2以下になる。
この後、図1(c)に示すように、柱状体14が形成された集電体11に対して、酸化雰囲気で加熱処理を行う。酸化雰囲気は、酸素、オゾンなどの酸化ガス雰囲気であることが好ましい。加熱処理温度は例えば300℃、加熱時間は1時間とする。これにより、柱状体14が酸化されて、ケイ素酸化物(SiOx、0<x<2)を含む活物質体18となる。本明細書では、酸化された後の柱状の構造体18を「活物質体」と称して、酸化される前の柱状体14(図1(b))と区別する。また、活物質体18を含む膜20を「活物質層」と称して、酸化される前の蒸着層16(図1(b))と区別する。
このようにして、複数の活物質体18を含む活物質層20を得る。隣接する活物質体18の間には、活物質の膨張応力を緩和するための空隙が形成されている。なお、充電時には各活物質体18が膨張するので、隣接する活物質体同士が接触する場合もある。
活物質体18におけるケイ素量に対する酸素量のモル比(酸素比率)xの平均値は、0.5よりも大きく、1.5未満であることが好ましい。活物質がケイ素酸化物などの酸化物である場合、その酸素比率が低いほどリチウム吸蔵能力が高くなるので、充電時の体積膨張率が高くなる。逆に、酸素比率が高くなるにつれて、リチウム吸蔵能力が低下して、充電時の体積膨張率も低くなる。従って、活物質体の酸素比率xを0.5より大きくすることにより、充放電反応により生じる活物質の膨張・収縮を抑制できる。これにより、膨張収縮に伴う集電体への応力(膨張応力)を緩和できるので、膨張応力に起因する電極の変形や活物質層の剥離を抑えることが可能になる。この結果、充放電サイクル特性の低下を抑えることができる。一方、酸素比率xが大きくなりすぎると、活物質の体積膨張率を抑制することができるが、充放電容量が減少する。このため、酸素比率xを1.5未満に抑えることにより、充放電容量を確保することができる。このように、酸素比率xが0.5より大きく1.5未満であれば、電極の高容量化と高信頼性とを両立させることができる。
なお、本明細書では、「ケイ素量に対する酸素量のモル比(酸素比率)xの平均値」は、活物質体18に補填または吸蔵されたリチウムを除いた組成である。また、活物質体18は、上記の酸素比率を有するケイ素酸化物を含んでいればよく、Fe、Al、Ca、Mn、Tiなどの不純物を含んでいてもよい。
本実施形態の方法によると、蒸着工程によって活物質構造(柱状体の形状)を形成し、その後の酸化工程によって活物質体18の組成を制御することが可能になる。従って、蒸着工程では活物質体18の組成を考慮して酸素ガスをチャンバ内に供給する必要がない。このため、チャンバ内のガス圧力をより低下させた状態で蒸着を行うことができるので、柱状体の形状に対する制御性を向上できる。この結果、高い充放電容量を確保しつつ、活物質構造に起因する充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能になる。
以下、本実施形態における蒸着工程および酸化工程によるメリットおよび好適な条件について、説明する。
<蒸着工程>
まず、図2を参照しながら、本実施形態の方法によると、従来よりも柱状体の形状制御性を向上できる理由を説明する。
従来、ケイ素酸化物を含む活物質層を斜方蒸着によって形成するためには、反応性蒸着を行う必要があった(例えば特許文献2)。図2(a)は、従来の蒸着工程を説明するための図であり、単一の活物質体を示す模式的な断面拡大図である。図示するように、従来は、ケイ素を蒸発源22として用い、集電体11の表面近傍に酸素ガスを供給しながら、蒸発源22から蒸発させたケイ素粒子を集電体11の表面に入射させる。これにより、ケイ素粒子と酸素ガスとが集電体11の表面で反応して、集電体11の凸部12上にケイ素酸化物が成長する(反応性蒸着)。このようにして、ケイ素酸化物からなる活物質体24が形成される。
このように、従来は、所定の組成を有するケイ素酸化物(SiOx、例えば0.5<x≦1.5)を蒸着によって形成しようとすると、チャンバ内に酸素ガスを導入しながら蒸着を行う必要があった。しかしながら、この方法によると、集電体11の表面近傍に酸素ガスが存在することによって、チャンバ内の真空度が低下(チャンバー内のガス圧力が増加)する。チャンバ内のガス圧力は、酸素ガスの流量にもよるが、例えば0.1Paよりも高くなる。本出願人による国際公開第2007−063765号パンフレットでは、チャンバ内の圧力を0.005Paに設定した後、酸素ガスを70sccmの流量でチャンバ内に導入することによってケイ素酸化物を蒸着している。この文献には、蒸着時のチャンバ内の圧力が0.13Paであることが記載されている。このような真空度の低いチャンバ内では、ケイ素粒子の平均自由工程が小さくなる。すなわち、蒸発源から蒸発したケイ素粒子が集電体11の表面に到達するまでに、酸素分子などの他の粒子と衝突する回数が多くなる。ケイ素粒子の進行方向は、他の粒子との衝突によって様々な方向に変化する。この結果、ケイ素粒子は、蒸発源と集電体表面との配置によって定まる方向(蒸着方向)Eとは異なる方向から集電体表面に到達し、そこに堆積する。従って、集電体表面におけるケイ素粒子の堆積位置の指向性が低下する。
ケイ素粒子の指向性が低下すると、集電体11の表面のうち凸部12の影となる領域上にもケイ素酸化物が堆積しやすくなる。また、活物質体24は、上述した式2tanα=tanθで定まる成長方向からずれた方向に成長する。この結果、入射角度θなどの蒸着条件によって活物質体24の形状を十分に制御できなくなる。具体的には、上記式によって決まる方向とは異なる様々な方向に沿って活物質が成長しやすくなり、活物質体24の幅(太さ)が増大する。
このように、従来の方法では、集電体11の凸部12が形成されていない領域(凹部)13上にもケイ素酸化物が堆積し、かつ、活物質体24の幅も増大するおそれがある。このため、隣接する活物質体24の間に十分な空隙を形成できない可能性がある。また、凹部13上に堆積するケイ素酸化物の量が多くなると、活物質の膨張・収縮によって、活物質の剥離が生じやすくなる。
これに対し、本実施形態では、蒸着時にチャンバ内に酸素ガスを導入する必要がない。あるいは、酸素ガス導入量を抑制することができる。蒸着によって得られる柱状体の酸素比率xが低くても、その後の酸化工程において、柱状体の酸化度を高めることができるからである。
図2(b)は、本実施形態における蒸着工程を説明するための図であり、単一の活物質体を示す模式的な断面拡大図である。本実施形態では、チャンバ内に酸素ガスを導入しないため、チャンバ内の真空度を従来よりも高めることができる。従って、蒸発源22から蒸発したケイ素粒子の平均自由工程が大きくなり、集電体11の表面における堆積位置の指向性を高めることができる。このため、図示するように、集電体11の凹部13上に堆積するケイ素粒子の量を、従来よりも大幅に減少させることができる。また、柱状体14の成長方向は、上記式によって決まる方向から大きく外れない。よって、柱状体14の幅(太さ)を従来よりも低減できる。なお、この蒸着工程後に酸化工程を行うが、酸化工程後に得られる活物質体18の形状は柱状体14の形状と略同じである。
原料粒子の指向性は、チャンバ内の真空度、蒸着温度、集電体と蒸発源との距離などによっても変わるので一概には言えないが、チャンバ内の真空度が例えば0.1Pa以下、より好ましくは0.01Pa以下であることが好ましい。特に、酸素ガスをチャンバ内に導入しないで蒸着を行う場合には、チャンバ内の圧力を例えば0.001Pa以下まで低くすることができる。これにより、上記効果をより確実に得ることができる。
本実施形態では、集電体11の凸部12が形成されていない領域(凹部)13に蒸発源から蒸発させた原料粒子(ここではケイ素粒子)が入射しないように、蒸着方向Eの傾斜角度(入射角度)θを設定することが好ましい。
図3は、本実施形態における入射角度θの好適な範囲を説明するための模式的な断面図である。なお、以下の説明では、蒸発源から蒸発した原料粒子が他の粒子と衝突することなく集電体11の表面に到達すると仮定する。
図示するように、入射角度θ、電体11の凸部12の高さH、隣接する凸部12の間隔dが式:d=H×tanθを満足するときの蒸着方向を方向30b、このときの入射角度を角度θbとする。この蒸着方向30bよりも集電体11の法線Dに対する傾斜の小さい方向から蒸着を行うと(例えば蒸着方向30a)、集電体11の凹部13に一部の原料粒子が入射し、堆積する。一方、蒸着方向30bよりも傾斜させた方向から蒸着を行うと(例えば蒸着方向30c)、凹部13の略全体が凸部12の影となるので、シャドウイング効果により凹部13上には原料粒子が入射しない。従って、入射角度θは下記式を満足するように設定されることが好ましい。
d<H×tanθ(d:凸部の間隔、H:凸部の高さ、θ:入射角度)
なお、前述したように、入射角度θは、チャンバ内における蒸発源と集電体11の表面との配置によって決まる角度である。
このように入射角度θの好適な範囲は、凸部12の間隔dおよび高さHによって変わるが、例えば5°以上、好ましくは10°以上である。これにより、柱状体14の間に十分な空隙を確保しやすくなる。また、入射角度θは90°未満であればよいが、90°に近づくほど柱状体14を形成することが困難となるため、80°未満であることが好ましい。より好ましくは、20°以上75°以下である。
<酸化工程>
本実施形態では、上記蒸着工程によって得られた柱状体14を酸化させる。これにより、柱状体14と略同じ形状を有し、かつ、所望の酸素比率xを有する活物質体18を形成する。柱状体14の酸化は、例えば酸化ガス雰囲気中で、柱状体14が形成された集電体11を加熱することによって行うことができる。
なお、例えば特開2004−319469号公報には、活物質の膨張を抑えて、充放電サイクル特性を向上させる目的で、活物質に対して加熱処理を行って活物質表面に薄い表面層(例えば酸化ケイ素層)を形成することを開示している。これに対し、本実施形態は、活物質の組成(酸素比率)を制御するために加熱処理を行うものであり、加熱処理の目的が全く異なっている。また、上記公報では、比較的緻密な薄膜に対して熱処理を行うため、薄膜の表面に表面層が形成されるものの、薄膜内部の酸化度を高めることは困難である。これに対し、本実施形態では、集電体11の凸部12によるシャドウイング効果を利用して、十分な空隙を有する蒸着層16を形成している。このため、その後の酸化工程によって、蒸着層16の表面のみでなく、蒸着層16に含まれる各柱状体14内部の活性面まで酸化させることができる。この結果、柱状体14の表面のみでなく、内部の酸素比率も高めることができ、より均一な組成を有する活物質体18が得られる。
本実施形態では、以下に説明するように、例えば加熱温度、酸化ガス雰囲気における酸化ガス分圧、加熱時間などの加熱処理条件を調整することにより、酸化後に得られる活物質体18の組成を制御できる。
本発明者は、柱状体14が形成された集電体サンプルを作製し、酸化ガス雰囲気(ここでは大気)中で加熱して、サンプルの重量変化を調べた。結果を図4に示す。図4は、加熱温度とサンプルの重量増加率との関係を示すグラフである。サンプルの重量が増加するほど、柱状体14の酸化度が高くなったことを意味する。この結果では、加熱温度が高くなるにつれて、柱状体14における酸素比率が高くなっている。従って、加熱温度を制御することにより、活物質体18の酸素比率を制御できることがわかる。なお、100℃以下の温度では、サンプルの重量が僅かに減少しているが、これは吸着水が柱状体から脱離したためであり、実際には酸化が進んでいると考えられる。
加熱温度は、活物質体18の高さ、活物質層20全体に占める活物質体18の体積率、柱状体14の組成などにもよるが、例えば100℃以上であれは、柱状体14の酸化度をより確実に高めることができる。一方、集電体11の耐熱性や製造プロセス上の観点から、加熱温度は例えば600℃以下であることが好ましい。より好ましくは200℃以上600℃以下である。
図4に示すグラフでは、温度が400℃のときに重量増加率が急激に高くなっている。これは400℃の温度でサンプルを10分間保持していたからである。このことから、加熱時間(柱状体14を所定の温度で保持する時間)によって、酸素比率を制御できることも確認できる。加熱時間は例えば60秒以上であることが好ましい。これにより、柱状体14の表面のみでなく、柱状体14内部の活性面も酸化させ、より均一な組成を有する活物質体18を得ることができる。一方、加熱時間が長くなりすぎると、生産性が低下するため、24時間以下であることが好ましい。
酸化ガス雰囲気における酸化ガスの分圧は、特に限定しないが、例えば100Pa以上であれば、柱状体14をより確実に酸化できるので好ましい。酸化ガスとしては、酸素、オゾンなどを用いることができる。
本実施形態における活物質体18に含まれるケイ素酸化物は、安定な4価のSiをより多く含む点で、反応性蒸着によって得られるケイ素酸化物と異なっている。図5は、反応性蒸着によって形成されたケイ素酸化物のXPSである。XPSを用いると、Siの酸化状態がわかる。図示するように、反応性蒸着によって得られたケイ素酸化物は、0価から4価のSi価数が混在しており、このうち4価のSiの占める割合は比較的低い。これに対し、本実施形態のように蒸着後に酸化されることによって得られたケイ素酸化物では、安定な4価のSiの占める割合が高くなる。従って、本実施形態におけるケイ素酸化物のXPSでは、図5に示すXPSよりも、4価のSiのピーク(結合エネルギー:103〜104eV程度)が増える。
本実施形態における活物質体は、集電体11の法線Dに対して傾斜した成長方向Sを有していればよく、活物質体の形状は、図1(c)に示す形状に限定されない。
図6および図7は、本実施形態における他の活物質体を例示する模式的な断面図である。図6および図7に示す活物質体は積層構造を有している。
図6に示す例では、活物質体26は、集電体11の凸部12上に積み重ねられた複数の部分p1〜p5を有している(積層数:5)。複数の部分p1〜p5のそれぞれの成長方向G1〜G5は、集電体11の法線方向に対して交互に反対方向に傾斜している。
活物質体26は、次のようにして形成される。まず、蒸着方向を切り換えながら複数回(ここでは5回)の斜め蒸着を行うことによって、集電体11の表面にジグザグ状の柱状体を形成する。次いで、図1(c)と同様の方法で、柱状体を酸化させることにより、図示するような活物質体26を得る。なお、ジグザグ状の柱状体を形成するための具体的な蒸着条件は、例えば本出願人による国際公開第2007/086411号パンフレットに記載されている。
図7に示す例では、活物質体28は、25個の部分p1、p2・・・が積み重ねられた構造を有している(積層数:25)。活物質体28も、上記と同様に、まず、蒸着方向を切り換えながら複数回の斜め蒸着を行って柱状体を形成し、次いで、柱状体を酸化させることによって得られる。図7に示す例のように、積層数が多くなると(例えば20層以上)、ジグザグ形状を有さず、集電体11の表面に直立した形状となる場合がある。
また、図1(a)〜(c)では、ケイ素酸化物を含む活物質層20の形成方法を説明したが、代わりに、リチウムを吸蔵・放出し得る他の酸化物(例えば錫酸化物)を含む活物質層を形成してもよい。この場合には、斜方蒸着によって錫(Sn)を含む蒸着層を形成し、これを酸化することによって、錫酸化物を含む活物質層を形成することができる。
本実施形態では、集電体11の表面に凸部12が配列されており、凸部12の配置(間隔、配列ピッチ)やサイズ(幅、高さなど)を適宜選択することによって、活物質体18の間の空隙の幅を制御することが可能である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態における凸部12の好ましい配置やサイズを説明する。
図8(a)および図8(b)は、それぞれ、本実施形態における集電体11の凸部12を例示する模式的な平面図およびIX−IX’断面図である。
図示する例では、凸部12は菱形の上面を有する柱状体であるが、凸部12の形状はこれに限定されない。集電体11の法線方向Dから見た凸部12の正投影像は、正方形、長方形、台形、菱形、平行四辺形、五角形およびホームプレート型などの多角形、円形、楕円形などであってもよい。集電体11の法線方向Dに平行な断面の形状は正方形、長方形、多角形、半円形、およびこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、集電体11の表面に対して垂直な断面における凸部12の形状は、例えば多角形、半円形、弓形などであってもよい。なお、集電体11に形成された凹凸パターンの断面が曲線で構成された形状を有する場合など、凸部12と凸部以外の部分(「溝」、「凹部」などともいう)との境界が明確でないときには、凹凸パターンを有する表面全体の平均高さ以上の部分を「凸部12」とし、平均高さ未満の部分を「溝」または「凹部」とする。「凹部」は、図示する例のように連続した単一の領域であってもよいし、凸部12によって互いに分離された複数の領域であってもよい。さらに、本明細書における「隣接する凸部12の間隔」とは、集電体11に平行な平面上において、隣接する凸部12の間の距離であり、「溝の幅」または「凹部の幅」を指すものとする。
また、集電体11の平面図(図8(a))において、複数の凸部12の合計面積A1の、複数の凸部12の合計面積A1および凹部の合計面積A2との和に占める割合が10%以上30%以下であることが好ましい(0.1≦{A1/(A1+A2)}≦0.3)。言い換えると、集電体11の表面の法線方向から見て、集電体11の表面の面積に対する複数の凸部12の合計面積A1の割合が10%以上30%以下であることが好ましい。ここでいう「集電体11の表面の面積」は、集電体11の表面の法線方向から見て、集電体11の表面のうち活物質層20が形成される領域の面積を意味し、活物質層20が形成されずに端子として用いる領域などは含まない。
上記割合が10%未満であれば、活物質体18が凸部12以外の領域にも形成される可能性が高くなり、隣接する活物質体18の間に十分な空間を確保できなくなる場合がある。その結果、充電時の活物質体18の膨張を十分に緩和できず、極板の変形を引き起こすおそれがある。一方、上記割合が30%を超えると、隣接する活物質体18の間の空間が不足し、活物質体18の膨張を緩和するための十分な空間を確保できなくなるおそれがある。これに対し、上述したように、上記割合を10%以上30%以下に制御することにより、シャドウイング効果を利用して隣接する活物質体18の間に活物質体18の膨張のための空間をより確実に確保できる。
凸部12の高さHは3μm以上であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。高さHが3μm以上であれば、活物質体12を斜め蒸着で形成する際に、シャドウイング効果を利用して、凸部12の上に活物質体18を選択的に配置できるので、活物質体18の間に空隙を確保できる。一方、凸部12の高さHは15μm以下であることが好ましく、より好ましくは12μm以下である。凸部12が15μm以下であれば、電極に占める集電体11の体積割合を小さく抑えることができるので、高いエネルギー密度を得ることが可能になる。
凸部12は、所定の配列ピッチで規則的に配列されていることが好ましく、例えば千鳥格子状、碁盤目状などのパターンで配列されていてもよい。凸部12の配列ピッチ(隣接する凸部12の中心間の距離)は例えば10μm以上100μm以下である。ここで、「凸部12の中心」とは、凸部12の上面における最大幅の中心点を指す。配列ピッチが10μm以上であれば、隣接する活物質体18の間に、活物質体18が膨張するための空間をより確実に確保できる。好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。一方、配列ピッチPが100μm以下であれば、活物質体18の高さを増大させることなく、高い容量を確保できる。好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。図示する例では、凸部12は、3つの方向に沿って配列されており、それぞれの方向における配列ピッチPa、Pb、Pcは何れも上記範囲内であることが好ましい。
また、凸部12の配列ピッチPaに対する凸部12の間隔dの割合は1/3以上2/3以下であることが好ましい。同様に、凸部12の配列ピッチPb、Pcに対する凸部12の間隔e、fの割合も1/3以上2/3以下であることが好ましい。これらの間隔d、e、fの割合が1/3以上であれば、各凸部12の上にそれぞれ活物質体18を形成したときに、凸部12の各配列方向における活物質体18の空隙の幅をより確実に確保できるので、十分な線空隙率が得られる。一方、間隔d、e、fの割合が2/3よりも大きくなると、凸部12の間の溝にも活物質が蒸着されてしまい、集電体11にかかる膨張応力が増大するおそれがある。
凸部12の上面における幅は200μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。これにより、シャドウイング効果を利用して活物質体18の間に十分な空隙を確保することが可能になるので、活物質の膨張応力による電極100の変形をより効果的に抑制できる。一方、凸部12の上面の幅が小さすぎると、活物質体18と集電体11との接触面積を十分に確保できない可能性があるので、凸部12の上面の幅は1μm以上であることが好ましい。特に凸部12が柱状の場合、その上面の幅が小さいと(例えば2μm未満)、凸部12が細くなり、充放電による応力に起因して凸部12が変形しやすくなる。従って、凸部12の上面の幅は、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、これにより、充放電による凸部12の変形をより確実に抑制できる。図示する例では、各配列方向に沿った凸部12の上面の幅a、b、cが、何れも上記範囲内であることが好ましい。
さらに、凸部12が、集電体11の表面に垂直な側面を有する柱状体である場合には、隣接する凸部12の間隔d、e、fは、それぞれ、凸部12の幅a、b、cの30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。これにより、活物質体18の間に十分な空隙を確保して膨張応力を大幅に緩和できる。一方、隣接する凸部12の間の距離が大きすぎると、容量を確保するために活物質層14の厚さが増大してしまうため、間隔d、e、fは、それぞれ凸部12の幅a、b、cの250%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以下である。
凸部12の上面は平坦であってもよいが、凹凸を有することが好ましく、その表面粗さRaは0.1μm以上であることが好ましい。ここでいう「表面粗さRa」とは、日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた「算術平均粗さRa」を指し、例えば表面粗さ計などを用いて測定できる。凸部12の上面の表面粗さRaが0.1μm未満であれば、例えば1つの凸部12の上面に複数の活物質体18が形成された場合に、各活物質体18の幅(柱径)が小さくなり、充放電時に破壊されやすくなる。より好ましくは0.3μm以上であり、これにより、凸部12の上に柱状体14が成長しやすく、その結果、活物質体18の間に十分な空隙を確実に形成できる。一方、表面粗さRaが大きすぎると(例えば100μm超)、集電体11が厚くなり、高いエネルギー密度が得られなくなるので、表面粗さRaは例えば30μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下である。特に、集電体11の表面粗さRaが0.3μm以上5.0μm以下の範囲内であれば、集電体11と活物質体18との付着力を十分に確保できるので、活物質体18の剥離を防止できる。
集電体11の材料は、例えば圧延法、電解法などで作製された銅または銅合金であることが好ましく、より好ましくは、比較的強度の大きい銅合金である。本実施形態における集電体11は、特に限定しないが、例えば銅、銅合金、チタン、ニッケル、ステンレスなどの金属箔の表面に、複数の凸部12を含む規則的な凹凸パターンを形成することによって得られる。金属箔としては、例えば圧延銅箔、圧延銅合金箔、電解銅箔、電解銅合金箔などの金属箔が好適に用いられる。
凹凸パターンが形成される前の金属箔の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上50μm以下であることが好ましい。50μm以下であれば、体積効率を確保でき、また、1μm以上であれば、集電体11の取り扱いが容易となるからである。金属箔の厚さは、より好ましくは6μm以上40μm以下、さらに好ましくは8μm以上33μm以下である。
凸部12の形成方法としては、特に限定しないが、例えば金属箔に対してレジスト樹脂等を利用したエッチングを行い、金属箔に所定のパターンの溝を形成し、溝が形成されていない部分を凸部12としてもよい。また、金属箔上にレジストパターンを形成し、電着、メッキ法によって、レジストパターンの溝部に凸部12を形成することもできる。あるいは、パターン彫刻により溝が形成された圧延ローラーを用いて、圧延ローラーの溝を金属箔の表面に機械的に転写する方法を用いてもよい。
活物質層20の厚さは、活物質体18の高さと等しく、集電体11の凸部12の上面から活物質体18の頂部までの、集電体11の法線方向に沿った距離を指し、例えば0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上である。これにより、十分なエネルギー密度を確保できるので、ケイ素を含む活物質の高容量特性を活かすことができる。また、活物質層20の厚さが例えば3μm以上であれば、電極全体に占める活物質の体積割合がより大きくなり、さらに高いエネルギー密度が得られる。より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上である。一方、活物質層20の厚さは例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。これにより、活物質層20による膨張応力を抑えることができ、また、集電抵抗を低くできるのでハイレートの充放電に有利である。また、活物質層20の厚さが例えば30μm以下、より好ましくは25μm以下であれば、膨張応力による集電体11の変形をより効果的に抑制できる。さらに、酸化工程によって、活物質層20の厚さ方向に亘ってより均一に酸素比率xを高めることができる。
活物質体18の太さ(幅)は、特に限定されないが、充電時の膨張によって活物質体18に割れが生じることを防止するためには、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下である。また、活物質体18が集電体11から剥離することを防止するためには、活物質体18の幅は1μm以上であることが好ましい。活物質体18の太さは、例えば任意の2〜10個の活物質体18における、集電体11の表面に平行で、かつ、活物質体18の高さの1/2となる面に沿った断面の幅の平均値で求められる。上記断面が略円形であれば、直径の平均値となる。
次に、本実施形態の電極を用いたリチウムイオン二次電池の構成を説明する。図9は、本実施形態の電極を負極として用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図である。リチウムイオン二次電池50は、負極40と、正極39と、負極40および正極39の間に設けられた微多孔性フィルムなどからなるセパレータ34とを備えている。正極39は、正極集電体32と、正極活物質を含む正極合剤層33とを有している。負極40は、負極集電体37と、SiOxを含む負極活物質層36とを有している。負極40および正極39は、セパレータ34を介して、負極活物質層36と正極合剤層33とが対向するように配置されている。セパレータ34は正極39の上に配置され、必要に応じて電解質溶液を含んでいる。負極40、正極39およびセパレータ34は、リチウムイオン伝導性を有する電解質とともに、ガスケット38を有する封口板35によって、ケース31の内部に収納されている。また、図示しないが、ケース31の内部には、ケース31における空間(ケース内高さの不足分)を埋めるためのステンレス製スペーサが配置されている。ケース31は、封口板35の周縁部を、ガスケット38を介してかしめることにより密封されている。
本発明は、負極の構成に特徴を有することから、リチウム二次電池においては、負極以外の構成要素は特に限定されない。例えば、正極活物質層には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)などのリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができるが、これに限定されない。また、正極活物質層は、正極活物質のみで構成してもよいし、正極活物質と結着剤と導電剤を含む合剤で構成してもよい。また、正極活物質層を負極活物質層と同様に、ジグザグ形状を有する複数の正極活物質体で構成してもよい。なお、正極集電体には、Al、Al合金、Ni、Tiなどを用いることができる。
リチウムイオン伝導性の電解質には、様々なリチウムイオン伝導性の固体電解質や非水電解液が用いられる。非水電解液には、非水溶媒にリチウム塩を溶解したものが好ましく用いられる。非水電解液の組成は特に限定されない。
セパレータや外装ケースも特に限定されず、様々な形態のリチウム二次電池に用いられている材料を特に限定なく用いることができる。
(実施例および比較例―1)
以下、本発明による電極の実施例および比較例を説明する。ここでは、実施例として電極1、比較例として電極Aを作製した。また、各電極における活物質体の形状制御性を調べるために、活物質体の成長角度αの測定を行った。さらに、各電極の充放電特性評価を行った。
(i)電極の作製方法
(i−1)電極1
・集電体の作製
まず、電極1で用いた集電体の作製方法を説明する。厚さが27μmの銅箔(HCL−02Z、日立電線株式会社製)の両面に対して電解メッキ法により粗化処理を行い、1μmの粒径を有する銅粒子を形成した。これにより、表面粗さRzが1.5μmの粗化銅箔93を得た。なお、表面粗さRzは日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。なお、代わりに、プリント配線基板用に市販されている粗面化銅箔を用いてもよい。
次いで、セラミックローラーにレーザー彫刻を用いて複数の溝(凹部)を形成した。複数の溝は、セラミックローラーの法線方向から見て菱形とした。菱形の対角線の長さを10μmおよび20μm、隣接する凹部の短い方の対角線に沿った間隔を18μm、長い方の対角線に沿った間隔を20μmとした。また、各凹部の深さは10μmとした。このセラミックローラーと、これに対向するように配置された他のローラーとの間に、銅箔を線圧1t/mmで通過させることにより、圧延処理を行った。
このようにして、表面に複数の凸部を有する集電体を得た。凸部の高さは約6μmであった。
・Si蒸着層の形成
図10(a)および(b)は、それぞれ、本実施例で使用する真空蒸着装置の模式的な断面図であり、互いに直交する面に沿った断面を示している。
上記方法で得られた集電体67を、図10に示す真空蒸着装置60の真空チャンバ62の内部に配置された固定台63に設置し、蒸着ユニット(蒸発源、坩堝66、電子ビーム発生装置をユニット化したもの)を用いてケイ素を蒸発源とするEB蒸着を行った。このとき、蒸着粒子の入射方向と集電体67の法線とのなす角度θが65°(θ=65°)となるように、固定台63を水平面69に対して65°傾斜させた(ω=65°)。また、蒸発源のケイ素を蒸発させるために、電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏向させて蒸発源に照射させた。蒸発源には、半導体ウェハを形成する際に生じる端材(スクラップシリコン、純度:99.999%)を用いた。蒸着時のチャンバ62内には酸素ガスを導入しなかった。
・蒸着層の酸化
上記方法で得られた、電極を用いて、大気中、300℃で1時間の酸化処理を行った。これにより得られた電極を電極1とした。
(i−2)電極A
上記実施例と同様の方法で、集電体を作製した。比較例では、活物質層を形成する手法として、チャンバ内に酸素を導入した反応性蒸着を用いた。実施例1と同様の装置を用いて、チャンバ62内にガス導入配管65および酸素ノズル64から酸素ガスを導入し、真空度が0.13Paとなるように酸素流量を制御して蒸着を行った。これにより得られた電極を電極Aとした。
(ii)評価
(ii―1)形状
得られた粒子の形状に関して、実施例および比較例で得られた電極1、電極Aを用いて断面形状を観察した。
図11(a)および(b)は、それぞれ、電極1および電極Aの断面SEM像を示す図である。この結果、電極1の活物質体18の成長角度αは52°、電極Aの活物質体24の成長角度が30°であることがわかった。さらに、電極1では、凹部13上に堆積されている活物質の量は、電極Aよりも低減されていることがわかった。また、電極1の活物質体18は、電極Aの活物質体24よりも細くなっていることから、電極1の蒸着工程の方が電極Aの蒸着工程よりも高い形状制御性を発揮することが確認された。これは、電極Aの蒸着工程では、蒸着層形成時にチャンバ内に酸素ガスを導入しており、チャンバ内の真空度が低下し、ケイ素粒子の平均自由行程が減少したためであると考えられる。
(ii−2)充放電特性
電極1、電極Aを用いて、図9に示す構成を有するサンプルコイン型電池を作製し、充放電特性を評価した。
上記の電極を直径が12.5mmの円形状に成型し、コイン型電池用電極を作製した。次いで、直径15mmの円形状に打ち抜いた金属リチウム(厚さ:300μm)を封口板に貼り付けた。この後、厚さが20μmの旭化成製のポリエチレンからなる微多孔性セパレータを円形状の金属リチウムの上に配置し、その上にコイン型電池用電極を配置した。続いて、1.2M LiPF6,エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=3/5/2(体積比)となるように調整した電解液を滴下した。厚さを調整する為に厚さが100μmのステンレス板を配置し、その上にケースを置いた後、かしめ機を用いて封口した。このようにして、電池1及び電池Aを得た。
得られた各電池について、充放電装置を用いて、以下の条件で充放電試験を行った。
充電:定電流充電 0.1mA、 終止電圧 0V、 休止時間30分
放電:定電流放電 0.1mA、 終止電圧 1.5V
この後、上記充放電試験における1サイクル目の不可逆容量率を次式により求めた。
不可逆容量(%)=100−{(放電容量)/(充電容量)}×100
この結果、電池1の付加逆容量率は28%、電池Aの付加逆容量率は34%であった。付加逆容量率は活物質組成と相関があり、いずれの電極も酸素組成xが約0.7程度であることが確認された。
上記の結果より、本実施形態の製造方法によると、反応性蒸着によって同程度の組成を有する活物質層を形成する場合と比べて、活物質層の構造(活物質体の形状や空隙率)に対する制御性(形状制御性)を向上できることが確認された。
(実施例および比較例―2)
本実施例では、35層の活物質体を形成し、その断面形状を観察した。また、酸化前の柱状体および酸化後の活物質体の酸素濃度分布を調べたので、その結果を説明する。
(i)電極の形成方法
(i−1)電極2
電極1と同様の集電体の表面に、図10に示す真空蒸着装置60を用いて、Si蒸着層の形成を行った。本実施例では、固定台63の水平面からの傾斜角度を切り換えることにより、蒸着方向の傾斜角度(入射角度)θを65°と−65°との間で切り換えながら、50回の蒸着工程を行った。蒸着時のチャンバ62内には酸素ガスを導入しなかった。蒸着時のチャンバー内の圧力は8×10-3Paであった。これにより、複数の柱状体(積層数:50層)を含むSi蒸着層を形成した。
この後、大気中、300℃の温度で30分間の熱処理を行うことにより、Si蒸着層を酸化させ、複数の活物質体(積層数:50層)を含む活物質層を形成した。このようにして、電極2を得た。
(i−2)電極B
電極1と同様の集電体の表面に、図10に示す真空蒸着装置60を用いてSi蒸着層を形成した。蒸着は、チャンバ62内に酸素ガスを導入しながら行った。酸素ガスの流量は、チャンバー内の圧力が0.13Paとなるように制御した。また、電極2と同様に、蒸着方向を切り替えながら50回の蒸着工程を行った。これにより、複数の活物質体(積層数:50層)を含む活物質層を形成し、電極Bを得た。
(ii)評価
図12(a)および(b)は、それぞれ、電極2および電極Bの側面図である。この結果、電極2の活物質体は、電極Bの活物質体よりも細くなっていることがわかる。従って、電極2の作製方法の方が高い形状制御性を発揮することが確認された。また、電極2では、集電体の凹部上に堆積された活物質の量が電極Bよりも低減されていることが確認できた。これは、電極Bでは、蒸着層形成時にチャンバ内に酸素ガスを導入しており、チャンバ内の真空度が低下し、ケイ素粒子の平均自由行程が減少したためであると考えられる。
(iii)柱状体および活物質体の酸素濃度分布
電極2の酸化工程を行う前の柱状体内部の酸素分布、および、電極2の酸化工程後の活物質体内部の酸素分布をX線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて確認した。この結果、活物質体の亀裂部分の近傍で、特に酸化度が高められていることがわかった。また、活物質体の表面のみでなく、活物質体内部の活性面まで酸化されていた。これは、活物質体の比表面積が非常に大きい(10m2/g、100nm粒子に相当)からと考えられる。
また、電極2を用いてサンプル電池を形成し、前述の実施例および比較例−1と同様の方法で不加逆容量を求めたところ、27%であった。これにより、活物質体の酸素比率xの平均値が0.6であることがわかった。一方、酸化工程を行う前の柱状体が形成された集電体を電極として、サンプル電池を形成し、同様に不加逆容量を求めたところ、19%であった。従って、柱状体の酸素比率xの平均値は0.39であることがわかった。
以上の結果から、本実施形態によると、酸化工程によって、活物質体に酸化度の高い表面層が生じるのではなく、活物質体全体が酸化されることが確認された。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による電極の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、集電体上にSiを含む蒸着層を形成し、これを酸化する工程を複数回繰り返す点で、前述の実施形態の方法と異なる。
図13(a)〜(e)は、本実施形態の電極の製造方法の一例を説明するための断面工程図である。簡単のため、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
まず、図13(a)に示すように、集電体11の表面に、方向Eから蒸発させた原料粒子(ここではケイ素粒子)を入射させる。これにより、図13(b)に示すように、集電体11の各凸部12上にケイ素を含む柱状部分14aを成長させる。この後、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状部分14aを酸化させる。これにより、図13(c)に示すように、ケイ素酸化物を含む第1部分18aを得る。次いで、図13(d)に示すように、斜方蒸着により、第1部分18a上にさらにSiを堆積させて柱状部分14bを形成する。蒸着方向Eは、図13(a)に示す蒸着工程における蒸着方向Eと同じであってもよいし、異なっていてもよい。この後、図13(e)に示すように、柱状部分14bを酸化させる。このようにして、ケイ素酸化物を含む活物質体18からなる活物質層20を得る。
なお、上記方法では、蒸着および酸化工程を2回繰り返したが、3回以上繰り返してもよい。複数回繰り返すことにより、より厚い活物質層20を形成することができる。本実施形態における入射角度θなどの蒸着条件および加熱温度などの加熱処理条件は、前述した実施形態の条件と同様である。
Siを含む蒸着層を酸化することによりSiOxを含む活物質層を形成する工程では、蒸着層内の酸素の拡散速度によって、蒸着層のうち酸化される部分の厚さが決まる。従って、蒸着層に空隙が少なく、かつ、蒸着層が厚すぎると、蒸着層全体を酸化させることができない場合もある。これに対し、上記方法によると、活物質層20の厚さにかかわらず、活物質層20の厚さ全体に亘って、その組成(酸素比率x)をより確実に制御できる。特に厚さの大きい活物質層(厚さ:例えば5μm以上)を形成する際に、本実施形態の方法を好適に適用できる。
図14(a)〜(d)は、本実施形態の電極の製造方法の他の例を説明するための断面工程図である。簡単のため、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
この例では、まず、集電体11の表面に、方向Eから蒸発させた原料粒子(ここではケイ素粒子)を入射させる。これにより、図14(a)に示すように、集電体11の各凸部12上に、方向G1に沿って、ケイ素を含む柱状部分p1’を成長させる。この後、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状部分p1’を酸化させる。これにより、図14(b)に示すように、ケイ素酸化物を含む第1部分p1を得る。次いで、集電体11の法線に対して、図14(a)に示す蒸着工程における蒸着方向とは反対側に傾斜した方向から、原料粒子を入射させる。これにより、図14(c)に示すように、各第1部分p1上に、方向G2に沿って、ケイ素を含む柱状部分p2’を成長させる。方向G2は、集電体11の法線に対して、第1部分の成長方向G1と反対側に傾斜している。この後、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状部分p2’を酸化させる。これにより、図14(d)に示すように、ケイ素酸化物を含む第2部分p2を得る。このようにして、蒸着方向を切り換えながら、複数回の蒸着および酸化工程を繰り返すことにより、例えば図6を参照しながら前述したように、ジグザグ状の活物質体を形成できる。
さらに、本実施形態においても、図7に示す例のように、積層数が多くなると(例えば20層以上)、ジグザグ形状を有さず、集電体11の表面に直立した形状となる場合がある。
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による電極の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、酸化工程において、蒸着層を酸化するだけでなく、集電体の露出表面を酸化して抵抗層を形成する点で、前述の実施形態の方法と異なる。
図15(a)および(b)は、本実施形態の電極の製造方法の一例を説明するための断面工程図である。簡単のため、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
まず、図15(a)に示すように、斜方蒸着により、銅などの金属を主成分とする集電体11の表面に、複数の柱状体14を含む蒸着層16を形成する。蒸着層16の形成方法は、図1(a)および(b)を参照しながら前述した方法と同様である。このとき、隣接する柱状体14の間で、集電体11の表面の一部が露出するように、集電体11の凸部12の高さH、隣接する凸部12の間隔d、入射角度θ、チャンバ内の真空度などを調整する(図3参照)。なお、少なくとも隣接する2つの柱状体14の間において集電体11の表面が露出していればよく、全ての柱状体14の間隔で露出していなくてもよい。
次に、図15(b)に示すように、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状体14を酸化させて活物質体16を含む活物質層20を形成する。この加熱処理では、集電体11の露出表面も酸化されて、集電体11の材料よりも比抵抗の高い抵抗層90が形成される。抵抗層90は、集電体11に含まれていた金属の酸化物(例えば酸化銅)を含む。加熱処理の温度、時間、酸化ガス雰囲気における酸化ガスの分圧などの加熱処理条件は、前述した実施形態における条件と同様である。このようにして、本実施形態の電極を得る。
上記方法によると、前述した実施形態と同様の効果に加えて、集電体11の表面に抵抗層90が形成されることにより、以下のような利点が得られる。
従来の電極(負極)では、集電体の表面の一部が活物質で覆われておらず、露出している場合に、充電時に、集電体の露出した表面と対向するように配置された正極活物質層から供給されるリチウムの一部は、活物質層に吸蔵されずに集電体の露出表面に析出するおそれがある。これは、リチウム二次電池の安全性を低下させる要因となるおそれがある。負極に金属リチウムが析出すると、負極の熱安定性が低下するからである。また、金属リチウムがリチウムデンドライトとして析出すると、正負極間での内部短絡が生じる原因となる可能性もある。
これに対し、本実施形態では、集電体11の露出表面に抵抗層90が形成されているので、集電体11上へのリチウム析出反応の抵抗が増大し、リチウムの析出が生じにくい。また、抵抗層90は、集電体11の表面のうち活物質と接していない領域にのみ形成されるので、充放電反応における抵抗を増大させることなく、リチウムの析出を抑制できる。従って、高いレート特性を確保しつつ、従来よりも安全性に優れた電池が得られる。さらに、柱状体14を酸化させる加熱処理によって抵抗層90を形成できるので、製造工程数を増加させることなく、上記電池を製造できる。
本実施形態における抵抗層90の比抵抗は集電体11の材料の比抵抗よりも大きければよいが、1mΩ・cm以上であることが好ましい。抵抗層90の比抵抗が低いと、リチウム析出反応における抵抗が大きくならず、十分な析出抑制効果が得られないおそれがあるが、比抵抗が1mΩ・cm以上であれば、リチウム析出をより確実に抑制できる。
抵抗層90の厚さは0.005μm以上10μm以下であることが好ましい。抵抗層90が10μm以下であれば、集電体11の抵抗が増大することを抑制できる。一方、抵抗層90の厚さが0.005μm以上であれば、リチウム充放電反応における抵抗をより確実に増大させることができる。より好ましくは0.010μm以上であり、これにより、より効果的に上記抵抗を増大させてリチウムの析出を抑制できる。なお、集電体11として銅箔を用い、抵抗層90として銅箔の表面を酸化させた酸化銅からなる層を形成する場合には、集電体11の材料(銅)の比抵抗は例えば1.694×10-3mΩ・cmであり、酸化銅からなる抵抗層90は酸素の比率や処理温度によって変化するが、その比抵抗は最大で1×105〜106mΩ・cmとなる。なお、抵抗層90の厚さは、加熱温度、加熱時間などの加熱処理条件によって調整され得る。
本実施形態の方法は図15に示す方法に限定されない。図16(a)および(b)は、本実施形態の電極の製造方法の他の例を示す模式的な工程断面図である。図16(a)に示すように、蒸着方向を切り換えながら複数回の蒸着工程(斜方蒸着)を行うことにより、金属を含む集電体11の各凸部12上に、積層数が25層の柱状体28’を形成する。この場合も、隣接する柱状体28’の間において、集電体11の表面の一部が露出するように、集電体11の凸部12の形状や配列ピッチおよび蒸着条件を制御する。
次いで、図16(b)に示すように、酸化ガス雰囲気中で加熱処理を行う。これにより、柱状体28’を酸化させて活物質体28を形成するとともに、集電体11の露出表面を酸化させて、金属酸化物を含む抵抗層90を形成する。
図17(a)および(b)は、本実施形態の電極の製造方法のさらに他の例を示す模式的な断面工程図である。図17(a)に示すように、蒸着方向を切り換えながら複数回の斜方蒸着を行うことにより、金属を含む集電体11の各凸部12上に、積層数が5層の柱状体26’を形成する。この場合も、隣接する柱状体26’の間において、集電体11の表面の一部が露出するように、集電体11の凸部12の形状や配列ピッチおよび蒸着条件を制御する。
次いで、図17(b)に示すように、酸化ガス雰囲気中で加熱処理を行う。これにより、柱状体26’を酸化させて活物質体26を形成するとともに、集電体11の露出表面を酸化させて、金属酸化物を含む抵抗層90を形成する。
図15〜図17に示す方法では、斜方蒸着を用いて、集電体11の表面の一部が露出するように、複数の柱状体14、28’、26’を形成しているが、斜方蒸着とは異なる方法で複数の柱状体を形成してもよい。
図18は、本実施形態のさらに他の電極を例示する模式的な断面図である。図18に示す電極203では、表面に凹凸パターンが形成された集電体110の表面に、複数の活物質体122からなる活物質層112が形成されている。各活物質体122は、集電体110の各凸部(突起)上に配置されている。集電体110のうち活物質体122と接していない領域には抵抗層114が形成されている。このような構成によると、活物質体122の間に活物質体がリチウムを吸蔵して膨張することによる応力(膨張応力)を緩和するための空間124を確保できるので、膨張応力による活物質層112の剥離を防止でき、かつ、凸部の側面部分(突起側面)も含めて集電体110の表面のうち活物質が堆積されなかった部分にリチウムが析出することを防止できる。また、凸部側面に抵抗層114を形成することも可能になる。
電極203は、次のようにして形成される。まず、集電体110の表面に所定の形状を有する凸部を形成し、この上にレジスト層を形成する。この後、レジスト層を露光・現像し、凸部上に開口部を有するレジスト体を形成する。次いで、レジスト体の開口部に、電解めっき法によりケイ素または錫を含む柱状体を形成する。この後、レジスト体を除去する。このような方法により、集電体110の各凸部上に柱状体を含む膜を形成するとともに、集電体110の各凹部の表面を露出させる。集電体110の凸部上に柱状体を形成する形成方法および柱状体の構成は、例えば特開2004−127561号公報に開示されている。続いて、柱状体が形成された集電体110に対して、酸化ガス雰囲気で加熱処理を行う。加熱処理条件は前述した実施形態で説明した条件と同様である。加熱処理では、柱状体が酸化して活物質体122となるとともに、集電体110の露出表面が酸化して、金属酸化物(例えば酸化銅)を含む抵抗層90が形成される。このようにして、複数の活物質体122を含む活物質層112と、隣接する活物質体122の間に形成された抵抗層90とを有する電極203を得る。
また、図19(a)および(b)は、本実施形態のさらに他の電極を例示する斜視図および断面図である。図19に示す電極は、集電体110の表面に配列された複数の活物質体125と、集電体110のうち活物質体125が形成されていない部分に形成された抵抗層114とを有している。
図19に示す電極は、次のようにして形成される。まず、集電体110の表面に活物質膜を形成し、これをパターニングする。これにより、集電体110の表面に複数の柱状体を形成するとともに、集電体110の表面のうち柱状体が形成されていない部分を露出させる。パターニングによる柱状体の形成方法は例えば特開2004−127561号公報に開示されている。続いて、柱状体が形成された集電体110に対して、酸化ガス雰囲気で加熱処理を行う。加熱処理条件は前述した実施形態で説明した条件と同様である。加熱処理では、柱状体が酸化して活物質体125となるとともに、集電体110の露出表面が酸化して抵抗層114が形成される。このようにして、複数の活物質体125を含む活物質層112と、隣接する活物質体125の間に形成された抵抗層114とを有する電極を得る。
本実施形態における集電体11の凸部12の形状や配列ピッチ、活物質層の厚さ、活物質材料、活物質体の組成は、前述の第1の実施形態における凸部12の形状や配列ピッチ、活物質層の厚さ、活物質材料、活物質体の組成と同様である。また、本実施形態の集電体は、主成分として銅を含むことが好ましく、例えば圧延銅箔、圧延銅合金箔、電解銅箔、電解銅合金伯、さらに粗化処理を施した電解銅箔、粗化処理を施した圧延銅箔などであることが好ましい。
(実施例および比較例−3)
本実施例では、蒸着法によって活物質層が形成された集電体に対し、種々の方法で抵抗層を形成して評価実験用の電極3〜6を作製した。また、比較のため、抵抗層を有さない電極Cを作製したので、その方法を説明する。さらに、電極3〜6および電極Cを用いた電池の特性を評価し、比較を行ったので、評価方法および評価結果を説明する。
(i)電極の作製
(i−1)電極3〜6
・活物質膜の作製
本実施例では、活物質膜の形成に(株)アルバック製の蒸着装置を使用した。図20は、本実施例で使用した蒸着装置の模式的な断面図である。
蒸着装置600は、真空容器150と、真空容器150を排気する排気系(図示せず)とを備えている。真空容器150内には、集電体151を固定する固定台154が設けられ、固定台154の鉛直下方には、集電体151の表面に活物質を堆積させるターゲット155が配置されている。また、図示しないが、ターゲット155の材料を加熱して蒸発させるための電子ビーム加熱手段が設けられている。本実施例では、ターゲット155として、純度99.9999%のケイ素単体((株)高純度化学研究所製)を用いた。
まず、厚さが35μm、表面粗さRzが5μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)を40mm×40mmのサイズに裁断して集電体51を作製した。なお、表面粗さRzは日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。
次いで、この集電体151を蒸着装置600の固定台154に設置し、集電体151の表面に対してターゲット155から蒸発したケイ素を入射させた。ターゲット155に照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを500mAに設定した。ターゲット155からのケイ素単体の蒸気は集電体151の表面に供給された。集電体151の法線に対する蒸着方向の傾斜角度θは0°とした。その結果、集電体151の表面に、ケイ素からなる活物質膜が得られた。蒸着時間は、活物質膜の厚さが10μmとなるように調整した。このようにして、表面に活物質膜が形成された集電体を4個作製した。
・抵抗層の形成
上記方法で活物質膜が形成された4個の集電体を、それぞれ、直径が12.5mmの円形に成形した。次いで、活物質膜の端部(幅:2mm)を剥離して集電体表面を露出させた。
続いて、これらの集電体に対し、大気中で、下記表1に示す条件(アニール温度、アニール時間)でアニール処理を行った。この結果、集電体の露出部分では、集電体の表面近傍のCuが酸化して酸化銅からなる抵抗層が形成された。このとき、活物質膜も酸化され、ケイ素酸化物を含む活物質層が得られた。このようにして、評価実験用の電極1〜4を得た。
図21(a)および(b)は、それぞれ、評価実験用の電極1〜4の構造を示す模式的な平面図および断面図である。図示するように、これらの電極は、円形の集電体160と、その上に形成された活物質層162とを有しており、活物質層162の剥離によって露出された集電体160の表面には、抵抗層164が形成されている。
次いで、各電極の抵抗層164の厚さtを、表1に示すアニール時間・アニール温度のサンプルに対して、電極断面を電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron microscope)を用いて観測した。その結果、抵抗層164の厚さtは、アニール温度が高く、かつ、アニール時間が長いほど大きくなった。
Figure 2009119093
(i−2)電極C
上記(i−1)と同様の方法で集電体上に活物質膜を形成し、活物質膜の端部(幅:2mm)を剥離して集電体を露出させた。アニール処理は行わなかった。このようにして、抵抗層を有さない電極Cを得た。
(ii)試験電池No.3〜No.6および試験電池Cの作製
評価実験用の電極3〜6および電極Cを用いて、リチウム金属を対極とするコイン型の試験電池No.3〜No.6および試験電池Cを作製した。なお、これらの電池では、上記の各電極が正極となり、金属リチウムが負極となるが、上記の各電極を負極とする電池を作製して後述する充放電試験を行っても同様の結果が得られる。
まず、厚さが300μmの金属リチウム箔(本荘ケミカル(株)製)を直径17mmの円形に成形し、コイン電池封口板に圧着して、対極(ここでは負極)とした。この上に、セパレータを介して、電極3を配置した。ここでは、セパレータとして、厚さが20μmのポリエチレン製の多孔質フィルム(旭化成ケミカルズ(株)製)を用いた。
また、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を、負極およびセパレータにそれぞれ含浸させた。その後、厚さが100μmの集電板、外装ケース(SUS製)を配置し、かしめ封口を行った。このようにして、コイン型の試験電池No.3を得た。
同様にして、電極4〜6および電極Cを用いてコイン型電池を作製し、それぞれ、試験電池No.3〜No.6および試験電池Cとした。
(iii)試験電池の評価方法および結果
まず、各試験電池について、以下の条件で充電試験を行った。
電流値:0.1mA
終止電圧:−20mV (対Li対極電位)
充電試験の後、各試験電池を分解して電極を取り出した。取り出した電極を、ジメチルカーボネートを用いて洗浄した後、乾燥し、その表面を観察した。
この結果、試験電池No.3〜No.6で使用した電極3〜6では、リチウムの析出が確認されなかった。これに対し、試験電池Cで使用した電極Cでは、集電体の露出部分(活物質と接していない部分)上にリチウム金属の析出が確認された。従って、抵抗層を設けることにより、集電体の露出部分に対するリチウム金属の析出を抑制できることが確認された。
なお、実施例および比較例―3では、抵抗層の効果を評価するために、故意に活物質層の一部を剥離して抵抗層を形成した。蒸着工程において、集電体の表面の一部を露出したまま残すように、複数の柱状体を間隔を空けて成長させ、集電体の露出表面に抵抗層を形成する場合(図15〜図17参照)でも同様の効果が得られる。さらに、活物質層形成時に活物質層にピンホールが形成された場合や、塗工法によって形成された活物質層が膨れて、集電体との間に空隙が生じた場合などに、活物質と接していない集電体表面に抵抗層を形成しても同様の効果が得られる。
(参考の実施形態)
上記リチウムイオン二次電池では、想定外の方法や環境下での使用などが原因で過充電状態になったときに、負極上に金属リチウムが析出してしまう場合がある。これは、リチウム二次電池の安全性を低下させる要因となるおそれがある。負極に金属リチウムが析出すると、負極の熱安定性が低下するからである。また、金属リチウムがリチウムデンドライトとして析出すると、正負極間での内部短絡が生じる原因となる可能性もある。
負極上にリチウムが析出する理由は以下のように考えられる。負極集電体上に負極活物質層を形成する際に、負極活物質層にピンホールが生じて負極集電体の表面が完全に被覆されない場合や、負極活物質層が負極集電体の表面から部分的に剥離してしまう場合がある。このように、負極集電体の表面に、負極活物質層で覆われていない部分(「集電体の露出部」とする)が生じると、充電時に、負極集電体の当該表面と対向するように配置された正極活物質層から供給されるリチウムの一部は、負極活物質層に吸蔵されずに負極集電体の露出部に析出してしまう。
これに対し、リチウムの析出を抑制するための活物質材料が提案されている(例えば特開平11−297311号公報、特開平9−293536号公報)。しかしながら、負極活物質の材料の選択の幅が狭くなり、さらなる高容量化を図ることが困難となる可能性がある。
一方、特許3754374号明細書は、集電体上にケイ素および錫のうち少なくとも一方を含む活物質層を有する負極において、活物質層と集電体との界面における反応・拡散を適切に制御する目的で、集電体と活物質層との間に酸化膜を設けることを提案している。また、特開2005−78963号公報は、Cuからなる負極集電体が過放電によって溶解することを抑制するために、負極集電体の表面に溶解防止膜を形成し、溶解防止膜の上に活物質層を形成することを提案している。溶解防止膜として、例えば金属酸化膜、フッ素系樹脂膜などを用いることが例示されている。これらの特許文献では、リチウムの析出を抑制する目的とは異なる目的で、集電体上に酸化膜や溶解防止膜を形成した後、その上に活物質層を形成することが提案されている。本願発明者が検討したところ、これらの特許文献に提案された負極では、集電体表面全体が集電体の材料(例えばCu)よりも高い抵抗を有する膜(以下、「高抵抗膜」と称する)で覆われているため、リチウム析出反応が生じにくくなる。その結果、活物質体層のピンホールや剥離に起因するリチウムの析出を抑制することができると考えられる。
特許3754374号明細書に提案された構成では、その目的を考慮すると、高抵抗膜である酸化膜は集電体表面全体を覆うように形成される必要がある。同様に、特開2005−78963号公報に提案された構成では、高抵抗膜である溶解防止膜は集電体表面全体を覆うように形成される必要がある。これらの構成によると、集電体表面と活物質層との間に高抵抗膜が存在するので、充放電反応における抵抗が増大してしまう可能性がある。充放電反応における抵抗が増大すると、ハイレートの充放電特性が低下するおそれがある。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、前記集電体の表面に接して形成されたリチウムを吸蔵および放出する物質からなる活物質層と、前記集電体の前記表面のうち前記活物質と接していない領域に形成され、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層とを備える。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極によると、集電体の表面のうち活物質と接していない領域には、集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層が形成されているので、集電体の表面上にリチウムが析出することを抑制できる。また、抵抗層は活物質と接していない領域に形成されているので、集電体表面に下地として高抵抗な膜を形成する構成(特許文献4、5)と比べて、充放電反応における抵抗を増大させることなく、上述したリチウムの析出抑制効果を得ることができる。従って、レート特性を低下させることなく、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることが可能になる。さらに、本発明によれば、活物質層の材料や構成、形成方法などにかかわらず、リチウムの析出を抑制できるので有利である。
従って、本実施形態によれば、高容量、高出力、長寿命、および高いレート特性を有し、かつ、従来よりもさらに安全性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できる。また、本実施形態の製造方法によれば、製造工程を複雑化させることなく、生産性に優れた簡便な方法で、上記リチウム二次電池用負極を製造できる。
以下、図面を参照しながら、本実施形態によるリチウムイオン二次電池用負極を説明する。図22(a)および(b)は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極(以下、「負極」ともいう)の一部を示す模式的な断面図である。
まず、図22を参照する。負極200は、集電体110と、集電体110の表面に形成されたリチウムを吸蔵および放出する活物質からなる活物質層112とを備える。活物質層112は、集電体110の表面に接するように形成されており、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域112aには、集電体110の材料よりも比抵抗の高い抵抗層114が形成されている。
負極100では、活物質層112は、活物質層112の上面から集電体110の表面に達する開口部116を有しており、集電体110の表面のうち上記のような開口部116によって露出された領域(すなわち、活物質と接していない領域)112aに抵抗層114が形成されている。活物質層112の開口部116は、活物質層112を形成する際に生じたピンホールであってもよいし、活物質層112が形成された後にその一部が剥離した剥離部であってもよい。そのような剥離部は、活物質層112の端部が剥離した切り欠き部であってもよい。あるいは、例えば活物質層112内に膨張応力を緩和するために、または他の目的で、活物質層112に故意に形成されたものであってもよい。
抵抗層114は、金属酸化物層および有機物層などであってもよい。この中でも、耐熱性、充放電反応における電位安定性などの観点から金属酸化物層であることが好ましい。
抵抗層114の形成方法は特に限定されない。抵抗層114は、例えば、活物質層112を形成した後に集電体110の露出部分を酸化することによって形成された酸化物層であってもよい。これにより、抵抗層114を容易に形成できるだけでなく、集電体110と抵抗層114との密着性をより確実に確保できるので有利である。あるいは、図22(b)に示す負極201のように、活物質層112を形成した後に、集電体110の材料と反応する有機物を添加して、有機物からなる抵抗層114を形成することもできる。
本実施形態の負極200、201は、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域112a上に抵抗層114が形成されているので、そのような領域112a上にリチウムが析出することを抑制できる。
前述したように、特許3754374号明細書および特開2005−78963号公報に提案された構成では、集電体表面と活物質層との間に高抵抗膜が存在し、充放電反応における抵抗が増大するという問題があった。これに対し、本実施形態では、抵抗層114は、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域にのみ形成されているので、充放電反応における抵抗を増大させることなく、上述したリチウムの析出抑制効果を得ることができる。従って、レート特性を低下させることなく、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることが可能になる。
また、本実施形態では、リチウムの析出を抑えるために活物質の材料を限定しない。このため、活物質層112の材料を高い自由度で選択できるので、さらなる高容量化を実現できる。
本実施形態における活物質層112はスパッタ法、蒸着法などの真空プロセスを用いて形成することができる。真空プロセスを用いると、活物質層112と集電体110との密着性を良好に確保できるので好ましい。
真空プロセスの代わりに、紛状の活物質材料を結着剤および溶媒と混合したペーストを集電体の表面に塗工して形成する塗工法を用いて活物質層を形成してもよい。本発明者が検討したところ、塗工によって活物質層を形成すると、活物質層(塗工膜)のピンホールなどによって露出された集電体表面のみでなく、活物質層の一部が膨れて集電体表面から浮いてしまった部分(膨れ部)の下の集電体表面にもリチウムが析出する可能性があることが分かった。そこで、活物質層にピンポールなどの開口部が無い場合でも、活物質層に膨れ部が生じていれば、その下方に位置する集電体表面に抵抗層を形成することが好ましい。
図23は、本実施形態の他のリチウム二次電池用負極を例示する模式的な断面図であり、上述したような塗工法を用いて形成された活物質層を備えている。図23に示す負極202では、塗工膜である活物質層112は、集電体110の表面から部分的に浮いてしまい、活物質層112と集電体110との間に空隙118を有する膨れ部120が形成されている。集電体110の表面のうち脹れ部120の下に位置し、活物質と接していない領域112aには抵抗層114が形成されている。このように、塗工法を用いて形成された活物質層112が部分的に集電体110から浮いてしまった場合でも、抵抗層114を設けることにより、集電体110の表面にリチウムが析出することを防止できる。なお、図23に示す抵抗層114は、例えば活物質層112の形成後に、集電体110を加熱処理して領域112aの表面部分を酸化することによって形成できる。
本実施形態における活物質層112は、表面に凹凸を有する集電体を用い、集電体の凸部のみに選択的に形成された活物質体を含んでいてもよい。あるいは、集電体110に形成された活物質膜をパターニングすることによって得られた複数の柱状の活物質体から構成されていてもよい。また、活物質層112はポーラスな膜であってもよい。活物質としてSnを用いる場合には、メッキ法によって活物質層112を形成することもできる。さらに、抵抗層114の形成は、活物質層112の形成前に行われてもよい。
本実施形態では、抵抗層114の表面の少なくとも一部は活物質層112と接していないことが好ましい。抵抗層114の表面に接して活物質層112が形成されていると、充放電反応における抵抗が増大し、充放電特性が低下するおそれがあるからである。抵抗層114の表面全体が活物質と接していないと特に有利である。また、抵抗層114の好ましい厚さの範囲は、前述の実施形態で説明した範囲と同様である。
本実施形態における抵抗層114は、抵抗層が厚くなり、ハイレート特性を低下させる恐れがある場合は、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域112aにのみ形成されており、活物質層112の表面上に形成されていないことが好ましい。これにより、ハイレート特性を確保しつつ、リチウム析出反応を抑制できる。
本実施形態における活物質層112の材料としては、リチウムを可逆的に吸蔵および放出する公知のものを特段の制限なく用いることができる。例えば、従来から非水電解質二次電池に用いられている天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛材料、非晶質炭素材料、また、Liと合金化することが知られているAl、Sn、Siなどの化合物、酸化物などが挙げられる。
より好適には、Si、SnなどのLiと合金化する活物質が用いられる。これらの活物質を用いると、高容量化を達成することが可能となる。さらに好ましくは、活物質層112はSiの酸化物またはSnの酸化物を含む。これにより、高容量化と優れたサイクル特性とを両立させることができる。
集電体110の構成材料は特に限定されず、銅、チタン、ニッケル、ステンレスなどであってもよいが、高容量化および電位に対する安定性の観点から、銅あるいは銅を含む合金であることが好ましい。集電体110として、例えば電解銅箔、電解銅合金箔、粗化処理を施した電解銅箔、粗化処理を施した圧延銅箔などを用いることができる。
集電体110の表面には凹凸が形成されていることが好ましい。集電体110の表面に凹凸が形成されていると、集電体110の表面と活物質と接触面積が大きくなるので、活物質層112との密着性を高めることができるからである。また、集電体110は規則的な凹凸パターンを有していてもよい。
次に、図面を参照しながら、本実施形態の負極を適用して得られたリチウムイオン二次電池の構成の一例を説明する。
図24は、本実施形態の負極を用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図であり、図25は、図24に示す電池における極板群を示す模式的な拡大断面図である。
図24に示すように、リチウムイオン二次電池300は、正極140と、負極200と、負極200および正極140の間に設けられたセパレータ144とを有する極板群と、極板群を収容する外装ケース145とを備えている。正極140は、正極集電体130と、正極集電体130に形成された正極活物質層132とを有している。負極200は、図22(a)を参照しながら前述した構成を有している。正極集電体130および集電体(負極集電体)110は、それぞれ正極リード146および負極リード147の一端と接続されており、正極リード146および負極リード147の他端は外装ケース145の外部に導出されている。セパレータ144には、リチウムイオン伝導性を有する電解質が含浸されている。負極200、正極140およびセパレータ144は、リチウムイオン伝導性を有する電解質とともに、外装ケース145の内部に収納され、樹脂材料148によって封止されている。
次に、リチウムイオン二次電池300における極板群の構成をより詳しく説明する。図25に示すように、負極200および正極140は、セパレータ144を介して、負極200の活物質層(負極活物質層)112と正極活物質層132とが対向するように配置されている。負極集電体110の正極140側の表面のうち、正極140と対向する部分(正負極対向部)Pに位置し、かつ、活物質が堆積されていない領域(活物質非堆積部)には抵抗層114が形成されている。ここでいう「活物質非堆積部」は、活物質を堆積しなかった部分(活物質未形成部)の他、活物質膜形成後にその一部を除去することによって得られた活物質除去部、活物質膜の一部が剥離して生じた活物質剥離部も含む。活物質非堆積部は全て抵抗層114で覆われていることが好ましいが、活物質非堆積部の少なくとも一部が抵抗層114で覆われていればリチウム析出防止効果が得られる。なお、負極集電体110の表面のうち正負極対向部P以外の領域ではリチウムは析出しにくいため、負極集電体110の表面が露出していてもよい。
従来のリチウムイオン二次電池では、負極と正極との対向部において、集電体表面に活物質非堆積部が存在すると、電池充電反応時に、集電体の活物質非堆積部にリチウムが析出する可能性がある。リチウムが析出すると、熱安定性の低下や正負極間での内部短絡の要因となり得る。これに対し、本実施形態のリチウムイオン二次電池300によると、集電体表面の活物質非堆積部上に抵抗層を形成することにより、集電体上へのリチウム析出反応の抵抗を増大させることができる。その結果、リチウム析出が生じにくく、安全性を向上させることができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池300は、図22に示す負極200を備えるが、代わりに図23を参照しながら前述した負極202を備えていてもよく、同様の効果が得られる。
なお、図24および図25では、積層型のリチウムイオン二次電池の一例を示したが、本実施形態のリチウム二次電池用負極は、スパイラル型(捲回型)の極板群を有する円筒型電池や角型電池などにも適用できる。積層型電池では、正極と負極とを3層以上に積層してもよい。ただし、全ての正極活物質層が負極活物質層と対向し、かつ、全ての負極活物質層が正極活物質層と対向するように、両面もしくは片面に正極活物質層を有する正極と、両面もしくは片面に負極活物質層を有する負極とを用いる。集電体の両面に活物質層を有する負極を用いる場合には、集電体の何れの表面においても、活物質と接していない部分に抵抗層を設けることが好ましい。
次に、本実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下の実施例は本実施形態を限定するものではない。
(実施例および比較例−4)
本実施例では、塗工法で形成された活物質層を有する集電体に抵抗層を形成して電極7を作製した。また、比較のため、抵抗層を有さない電極Dを作製した。さらに、実施例の電極7および電極Dを用いた電池の特性を評価し、比較を行ったので、電極および電池の作製方法、電池の評価方法およびその結果を説明する。
(i)電極の作製
(i−1)電極7
まず、活物質を含むペーストを作製した。本実施例では、活物質としてリチウムを吸蔵、放出可能な鱗片状黒鉛(活物質)を100重量部、結着剤としてSBRの水溶性ディスパージョンを固形分で1重量部、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1重量部に、溶剤として水を加え、混練分散させることによってペーストを得た。
次いで、厚さが10μmの銅箔を集電体として用い、上記ペーストを集電体上に塗着した。続いて、110℃の温度で30分間乾燥した後、圧延を行い、活物質層を得た。得られた活物質層の厚さは70μmであった。
この後、活物質層が形成された集電体を直径が12.5mmの円形に成形し、実施例1と同様に、活物質層の端部(幅:2mm)を剥離して集電体表面を露出させた。
次いで、大気中、200℃の温度で1時間のアニール処理を行い、集電体の露出部分を酸化することによって酸化銅からなる抵抗層を形成した。このようにして、評価実験用の電極7を得た。電極7の構成は、図21(a)および(b)を参照しながら説明した構成と同様である。
(i−2)電極D
電極7と同様の方法で、集電体上に塗工法により活物質層を形成し、活物質層の端部(幅:2mm)を剥離して集電体表面を露出させた。アニール処理は行わなかった。このようにして、抵抗層を有さない電極Dを得た。
(ii)試験電池No.7および試験電池Dの作製
上記電極7および電極Dを用いて、前述の実施例および比較例−3における試験電池の作製方法と同様の方法でコイン型電池を作製し、それぞれ、試験電池No.7および試験電池Dとした。
(iii)試験電池の評価方法および結果
試験電池No.7および試験電池Dに対して、前述の実施例および比較例−3における評価方法と同様の方法で充放電試験を行い、リチウム析出の有無を確認した。
この結果、試験電池No.7に使用された電極7にはリチウムの析出は確認されなかったが、試験電池Dの電極Dにはリチウムが析出していた。従って、集電体の露出表面に抵抗層を形成することにより、集電体の表面に対するリチウム金属の析出を抑制でき、リチウム析出による正負極の短絡及び熱安定性の低下を抑制できることがわかった。
本発明は、様々な形態のリチウム二次電池に適用することができるが、特に、高容量および良好なサイクル特性が要求されるリチウム二次電池において有用である。本発明を適用可能なリチウム二次電池の形状は、特に限定されず、例えばコイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型などの何れの形状でもよい。また、正極、負極およびセパレータからなる極板群の形態は、捲回型でも積層型でもよい。電池の大きさは、小型携帯機器などに用いる小型でも電気自動車等に用いる大型でもよい。
本発明のリチウム二次電池は、例えばPC、携帯電話、PDAなどの携帯情報端末、携帯電子機器、ビデオレコーダーやメモリーオーディオプレーヤーなどのオーディオビジュアル機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源に用いることができるが、用途は特に限定されない。
本発明は、リチウム二次電池用電極およびその製造方法に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が増大している。上記のような用途に用いられる電池には、高いエネルギー密度が要求される。このような要求に対して、リチウム二次電池が注目され、その正極および負極のそれぞれにおいて、従来よりも高容量の活物質の開発が行われている。なかでも、非常に大きな容量が得られる活物質として、ケイ素(Si)もしくは錫(Sn)の単体、酸化物または合金が有望視されている。
しかし、これらの活物質を用いてリチウム二次電池用の電極を構成すると、充放電の繰り返しに伴って電極の変形が生じるという問題がある。上記のような活物質は、リチウムイオンと反応する際に大きな体積変化を生じるため、充放電の際、活物質に対するリチウムイオンの挿入および脱離の反応によって活物質が大きく膨張・収縮する。そのため、充放電を繰り返すと、電極に大きな応力が発生して歪みが生じ、しわや切れ等を引き起こすおそれがある。また、電極に歪みが生じて変形すると、電極とセパレータとの間に空間が生じて、充放電反応が不均一になり、電池の特性を局部的に低下させるおそれがある。従って、上記の活物質を用いて、十分な充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池を得ることは困難であった。
これらの課題を解決するため、特許文献1では、斜方蒸着により複数の柱状の活物質体からなる活物質層を形成することが提案されている。これにより、隣接する活物質体の間に空隙を設けることができるので、活物質の膨張による応力を緩和できる。
また、特許文献2には、集電体上に凹凸パターンを設けておき、斜方蒸着により凹凸パターンの各凸部上に活物質体を形成することが提案されている。これにより、隣接する活物質体間により確実に空隙を形成できるので、活物質の膨張による応力をより効果的に緩和できる。従って、膨張応力に起因する電極の変形を抑制できる。
ここで、斜め蒸着によって複数の活物質体が形成される理由を説明する。表面に凹凸を有する集電体に対して蒸着材料を斜めから入射させると、集電体表面の各凸部は、蒸着材料の照射されない影となる領域を形成する。このため、斜め蒸着を行うと、蒸着材料は集電体の各凸部上に堆積しやすく、各凸部上に活物質体が柱状に成長する。活物質体が成長すると、活物質体自体も集電体に影を形成するので、集電体表面には、凸部および柱状に成長していく活物質体の影となり、蒸着材料が堆積しない領域が形成される(シャドウイング効果)。この結果、複数の活物質体が間隔を空けて配置された構造を有する活物質層を得ることができる。なお、活物質体の間隔は、蒸着方向および集電体の表面凹凸の大きさなどによって調整できる。
また、特許文献1および特許文献2に記載された電極の製造方法では、反応性蒸着により、ケイ素酸化物(SiOx、0<x<2)からなる活物質体を形成している。なお、一般に、ケイ素を含む活物質では、その酸素比率(上記x)が低いほど、高い充放電容量が得られるが、充電による体積膨脹率が大きくなる。充放電サイクル特性の低下を抑制するためには、ケイ素単体ではなく、ケイ素酸化物を用いることが好ましいからである。このため、ケイ素酸化物の酸素比率xは、充放電サイクル特性と充放電特性とのバランスを考慮して、適宜選択される。
国際公開第2007−015419号パンフレット 国際公開第2007−094311号パンフレット
上述したように、斜方蒸着を用いれば、シャドウイング効果を利用して集電体の各凸部上に選択的に活物質(例えばケイ素酸化物)を成長させることができるので、凸部上に柱状の活物質体を形成することできる。
しかしながら、斜方蒸着を用いた場合でも、集電体の表面のうち凸部が形成されていない部分(凹部)に、一部の活物質が堆積する可能性がある。この理由については後述する。凹部上に堆積する活物質の量が多くなると、活物質体間に十分な空隙を確保できなくなるおそれがある。また、凹部上に堆積された活物質の膨張応力によって、集電体にしわや切れが生じやすくなるおそれもある。さらに、集電体の変形(伸び)によって活物質が剥離しやすくなる。この結果、充放電サイクル特性が低下する可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電容量を確保しつつ、隣接する活物質体の間に十分な空隙を確保することによって充放電サイクル特性を高めることにある。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、(A)表面に複数の凸部を有する集電体を用意する工程と、(B)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、前記複数の凸部上に、対応する複数の柱状体を形成する工程と、(C)前記複数の柱状体を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む複数の活物質体を形成する工程とを包含する。
ある好ましい実施形態において、前記工程(C)は、前記複数の柱状体が形成された集電体に対して、酸化雰囲気中で加熱処理を行う工程を含む。
ある好ましい実施形態において、前記集電体は主成分として金属を含み、前記工程(B)は、前記複数の柱状体のうち隣接する柱状体の間において、前記集電体の表面の一部が露出するように、前記蒸発させた蒸着原料を前記集電体の表面に堆積させる工程であり、前記工程(C)は、前記集電体の前記露出した表面を酸化させることにより、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層を形成する工程を含む。
前記工程(B)は、圧力が0.1Pa以下のチャンバー内で行われることが好ましい。
前記原料はケイ素を含み、前記活物質体はケイ素酸化物を含むことが好ましい。
前記活物質体のケイ素量に対する酸素量のモル比xの平均値は0.5より大きく、かつ、1.5未満であってもよい。
ある好ましい実施形態において、前記集電体は銅を含み、前記抵抗層は銅を含む酸化物からなる。
前記加熱処理の温度は100℃以上600℃以下であってもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の他の製造方法は、(a)主成分として金属を含む集電体の表面に複数の柱状体を間隔を空けて形成し、前記複数の柱状体の前記間隔において前記集電体の表面の一部を露出させる工程と、(b)前記複数の柱状体が形成された集電体に対して、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、前記複数の柱状体を酸化させて複数の活物質体を形成するとともに、前記集電体の前記露出した表面を酸化させて前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層を形成する工程とを包含する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極のさらに他の製造方法は、(A)表面に複数の凸部を有する集電体を用意する工程と、(a1)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、各凸部上に第1柱状部分を形成する工程と、(a2)前記第1柱状部分を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む第1部分を形成する工程と、(b1)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、前記第1部分上に第2柱状部分を形成する工程と、(b2)前記第2柱状部分を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む第2部分を形成する工程とを包含し、これによって、前記各凸部上に、前記第1および第2部分を含む活物質体を形成する。
本発明のリチウム二次電池用電極は、上記の何れかの方法により製造される。
本発明の他のリチウムイオン二次電池用電極は、表面に複数の凸部を有する集電体と、前記複数の凸部上に間隔を空けて支持された複数の活物質体と、前記複数の活物質体のうち隣接する活物質体の間に配置され、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層とを備え、前記集電体は主成分として金属を含んでおり、前記抵抗層は前記金属の酸化物を含んでいる。
本発明の電極の製造方法によると、蒸着によってケイ素を含む柱状体を形成した後、柱状態を酸化させることによって、所望の酸素比率x(ケイ素量に対する酸素量のモル比)を有する活物質体を形成する。従って、蒸着時に酸素ガスをチャンバ内に供給することによって、所望の酸素比率を有するケイ素酸化物を形成する必要がない。このため、真空度の高いチャンバ内で蒸着を行うことが可能となり、蒸発させた原料粒子の集電体表面における堆積位置の指向性を高めることできる。この結果、集電体表面のうち凸部が形成されていない部分(凹部)上に堆積する活物質の量を低減できる。よって、活物質体の間に十分な空隙を確保でき、活物質の膨張応力に起因する充放電サイクル特性の低下を抑制できる。また、集電体の変形(伸び)による活物質の剥離を抑制できる。さらに、酸化工程によって活物質体の酸素比率xを制御することにより、充放電容量を確保しつつ、充放電サイクル特性を高めることができる。
上記酸化工程において、柱状体を酸化させるとともに、集電体表面のうち活物質が堆積されなかった部分(露出部分)を酸化させて抵抗層を形成することが好ましい。これにより、充電時に、集電体表面にリチウムが析出することを抑制できるので、リチウム二次電池の安全性を高めることができる。
(a)〜(c)は、本発明による第1の実施形態の電極の製造方法を示す模式的な断面図である。 (a)は、従来の蒸着工程を説明するための模式的な拡大断面図であり、(b)は、第1の実施形態における蒸着工程を説明するための模式的な拡大断面図である。 蒸着工程における蒸発させた原料粒子の入射角度θの好適な範囲を説明するための模式的な断面図である。 加熱温度と、柱状体が形成された集電体の重量増加率との関係を示すグラフである。 反応性蒸着によって形成されたケイ素酸化物のXPSを示す図である。 第1の実施形態における活物質体の他の例を示す模式的な断面図である。 第1の実施形態における活物質体のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本実施形態における集電体11の凸部12を例示する模式的な平面図およびIX−IX’断面図である。 第1の実施形態の電極を負極として用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、実施例および比較例−1で使用する真空蒸着装置の模式的な断面図であり、互いに直交する面に沿った断面を示している。 (a)および(b)は、それぞれ、電極1および電極Aの断面SEM像を示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、電極2および電極Bの側面図である。 (a)〜(e)は、本発明による第2の実施形態の電極の製造方法を示す模式的な断面図である。 (a)〜(d)は、本発明による第2の実施形態の電極の製造方法の他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、本発明による第3の実施形態の電極の製造方法を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、本発明による第3の実施形態の電極の製造方法の他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、本発明による第3の実施形態の電極の製造方法のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 本発明による第3の実施形態の電極の他の例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第3の実施形態の電極のさらに他の例を示す模式的な斜視図および断面図である。 電極7および電極Dの活物質層を形成するために使用した蒸着装置の模式的な断面図である。 (a)および(b)は、電極3〜6の構造を説明するための平面図および断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、参考の実施形態のリチウム二次電池用負極の一部を示す模式的な断面図である。 参考の実施形態の他のリチウム二次電池用負極の一部を示す模式的な断面図である。 参考の実施形態のリチウムイオン二次電池の模式的な断面図である。 参考の実施形態のリチウムイオン二次電池における極板群を示す模式的な断面図である。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明によるリチウムイオン二次電池用電極(以下、単に「電極」と呼ぶ。)の第1の実施形態を説明する。本実施形態の電極は、リチウムイオン二次電池の負極および正極のいずれにも適用できるが、好ましくはリチウムイオン二次電池用の負極として用いられる。
図1(a)〜(c)は、本実施形態の電極の製造方法の一例を説明するための断面工程図である。ここでは、集電体の表面に、複数の活物質体を有する活物質層を形成する方法を例に説明する。
まず、図1(a)に示すように、表面に複数の凸部12を有する集電体11を作製する。複数の凸部12は、集電体11の表面に互いに間隔を空けて規則的に配列されていることが好ましい。この集電体11の表面に、斜方蒸着によりケイ素を含む原料を堆積させる。本実施形態では、蒸発源としてケイ素を用い、蒸発させたケイ素粒子を、集電体表面の法線Dに対して角度(入射角度)θだけ傾斜させた方向(蒸着方向)Eから入射させる。
本実施形態では、真空チャンバ内で蒸着を行う。このとき、チャンバー内に酸素ガスを導入しないので、反応性蒸着を行う場合よりも真空度の高いチャンバー内(チャンバー内の圧力:例えば0.1Pa以下、より好ましくは0.01Pa以下)で蒸着を行うことができる。
図1(a)に示す蒸着工程では、上述したシャドウイング効果により、集電体11の表面のうち各凸部12の影となる部分にはケイ素粒子が堆積しにくい。このため、ケイ素粒子は凸部12上に選択的に堆積する。この結果、図1(b)に示すように、各凸部12上にケイ素を含む原料が柱状に堆積する。本明細書では、蒸着によって得られた柱状の堆積物14を「柱状体」と称する。また、複数の柱状体14を含む膜16を「蒸着層」と称する。柱状体14は、集電体表面の法線Dに対して傾斜した方向(成長方向)Sに沿って成長する。なお、成長方向Sの集電体11の法線Dに対する傾斜角(成長角度)αと上記入射角度θとは、経験的に2tanα=tanθの関係を満たすことが知られている。従って、入射角度θを制御することにより、柱状体14の成長方向Sを制御することができる。
また、本実施形態では、チャンバ内に酸素ガスを導入しないで蒸着を行うため、比較的酸素比率の低い柱状体14が形成される。柱状体14のケイ素量に対する酸素量のモル比(以下、「酸素比率」と略す。)xは例えば0.2以下になる。
この後、図1(c)に示すように、柱状体14が形成された集電体11に対して、酸化雰囲気で加熱処理を行う。酸化雰囲気は、酸素、オゾンなどの酸化ガス雰囲気であることが好ましい。加熱処理温度は例えば300℃、加熱時間は1時間とする。これにより、柱状体14が酸化されて、ケイ素酸化物(SiOx、0<x<2)を含む活物質体18となる。本明細書では、酸化された後の柱状の構造体18を「活物質体」と称して、酸化される前の柱状体14(図1(b))と区別する。また、活物質体18を含む膜20を「活物質層」と称して、酸化される前の蒸着層16(図1(b))と区別する。
このようにして、複数の活物質体18を含む活物質層20を得る。隣接する活物質体18の間には、活物質の膨張応力を緩和するための空隙が形成されている。なお、充電時には各活物質体18が膨張するので、隣接する活物質体同士が接触する場合もある。
活物質体18におけるケイ素量に対する酸素量のモル比(酸素比率)xの平均値は、0.5よりも大きく、1.5未満であることが好ましい。活物質がケイ素酸化物などの酸化物である場合、その酸素比率が低いほどリチウム吸蔵能力が高くなるので、充電時の体積膨張率が高くなる。逆に、酸素比率が高くなるにつれて、リチウム吸蔵能力が低下して、充電時の体積膨張率も低くなる。従って、活物質体の酸素比率xを0.5より大きくすることにより、充放電反応により生じる活物質の膨張・収縮を抑制できる。これにより、膨張収縮に伴う集電体への応力(膨張応力)を緩和できるので、膨張応力に起因する電極の変形や活物質層の剥離を抑えることが可能になる。この結果、充放電サイクル特性の低下を抑えることができる。一方、酸素比率xが大きくなりすぎると、活物質の体積膨張率を抑制することができるが、充放電容量が減少する。このため、酸素比率xを1.5未満に抑えることにより、充放電容量を確保することができる。このように、酸素比率xが0.5より大きく1.5未満であれば、電極の高容量化と高信頼性とを両立させることができる。
なお、本明細書では、「ケイ素量に対する酸素量のモル比(酸素比率)xの平均値」は、活物質体18に補填または吸蔵されたリチウムを除いた組成である。また、活物質体18は、上記の酸素比率を有するケイ素酸化物を含んでいればよく、Fe、Al、Ca、Mn、Tiなどの不純物を含んでいてもよい。
本実施形態の方法によると、蒸着工程によって活物質構造(柱状体の形状)を形成し、その後の酸化工程によって活物質体18の組成を制御することが可能になる。従って、蒸着工程では活物質体18の組成を考慮して酸素ガスをチャンバ内に供給する必要がない。このため、チャンバ内のガス圧力をより低下させた状態で蒸着を行うことができるので、柱状体の形状に対する制御性を向上できる。この結果、高い充放電容量を確保しつつ、活物質構造に起因する充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能になる。
以下、本実施形態における蒸着工程および酸化工程によるメリットおよび好適な条件について、説明する。
<蒸着工程>
まず、図2を参照しながら、本実施形態の方法によると、従来よりも柱状体の形状制御性を向上できる理由を説明する。
従来、ケイ素酸化物を含む活物質層を斜方蒸着によって形成するためには、反応性蒸着を行う必要があった(例えば特許文献2)。図2(a)は、従来の蒸着工程を説明するための図であり、単一の活物質体を示す模式的な断面拡大図である。図示するように、従来は、ケイ素を蒸発源22として用い、集電体11の表面近傍に酸素ガスを供給しながら、蒸発源22から蒸発させたケイ素粒子を集電体11の表面に入射させる。これにより、ケイ素粒子と酸素ガスとが集電体11の表面で反応して、集電体11の凸部12上にケイ素酸化物が成長する(反応性蒸着)。このようにして、ケイ素酸化物からなる活物質体24が形成される。
このように、従来は、所定の組成を有するケイ素酸化物(SiOx、例えば0.5<x≦1.5)を蒸着によって形成しようとすると、チャンバ内に酸素ガスを導入しながら蒸着を行う必要があった。しかしながら、この方法によると、集電体11の表面近傍に酸素ガスが存在することによって、チャンバ内の真空度が低下(チャンバー内のガス圧力が増加)する。チャンバ内のガス圧力は、酸素ガスの流量にもよるが、例えば0.1Paよりも高くなる。本出願人による国際公開第2007−063765号パンフレットでは、チャンバ内の圧力を0.005Paに設定した後、酸素ガスを70sccmの流量でチャンバ内に導入することによってケイ素酸化物を蒸着している。この文献には、蒸着時のチャンバ内の圧力が0.13Paであることが記載されている。このような真空度の低いチャンバ内では、ケイ素粒子の平均自由工程が小さくなる。すなわち、蒸発源から蒸発したケイ素粒子が集電体11の表面に到達するまでに、酸素分子などの他の粒子と衝突する回数が多くなる。ケイ素粒子の進行方向は、他の粒子との衝突によって様々な方向に変化する。この結果、ケイ素粒子は、蒸発源と集電体表面との配置によって定まる方向(蒸着方向)Eとは異なる方向から集電体表面に到達し、そこに堆積する。従って、集電体表面におけるケイ素粒子の堆積位置の指向性が低下する。
ケイ素粒子の指向性が低下すると、集電体11の表面のうち凸部12の影となる領域上にもケイ素酸化物が堆積しやすくなる。また、活物質体24は、上述した式2tanα=tanθで定まる成長方向からずれた方向に成長する。この結果、入射角度θなどの蒸着条件によって活物質体24の形状を十分に制御できなくなる。具体的には、上記式によって決まる方向とは異なる様々な方向に沿って活物質が成長しやすくなり、活物質体24の幅(太さ)が増大する。
このように、従来の方法では、集電体11の凸部12が形成されていない領域(凹部)13上にもケイ素酸化物が堆積し、かつ、活物質体24の幅も増大するおそれがある。このため、隣接する活物質体24の間に十分な空隙を形成できない可能性がある。また、凹部13上に堆積するケイ素酸化物の量が多くなると、活物質の膨張・収縮によって、活物質の剥離が生じやすくなる。
これに対し、本実施形態では、蒸着時にチャンバ内に酸素ガスを導入する必要がない。あるいは、酸素ガス導入量を抑制することができる。蒸着によって得られる柱状体の酸素比率xが低くても、その後の酸化工程において、柱状体の酸化度を高めることができるからである。
図2(b)は、本実施形態における蒸着工程を説明するための図であり、単一の活物質体を示す模式的な断面拡大図である。本実施形態では、チャンバ内に酸素ガスを導入しないため、チャンバ内の真空度を従来よりも高めることができる。従って、蒸発源22から蒸発したケイ素粒子の平均自由工程が大きくなり、集電体11の表面における堆積位置の指向性を高めることができる。このため、図示するように、集電体11の凹部13上に堆積するケイ素粒子の量を、従来よりも大幅に減少させることができる。また、柱状体14の成長方向は、上記式によって決まる方向から大きく外れない。よって、柱状体14の幅(太さ)を従来よりも低減できる。なお、この蒸着工程後に酸化工程を行うが、酸化工程後に得られる活物質体18の形状は柱状体14の形状と略同じである。
原料粒子の指向性は、チャンバ内の真空度、蒸着温度、集電体と蒸発源との距離などによっても変わるので一概には言えないが、チャンバ内の真空度が例えば0.1Pa以下、より好ましくは0.01Pa以下であることが好ましい。特に、酸素ガスをチャンバ内に導入しないで蒸着を行う場合には、チャンバ内の圧力を例えば0.001Pa以下まで低くすることができる。これにより、上記効果をより確実に得ることができる。
本実施形態では、集電体11の凸部12が形成されていない領域(凹部)13に蒸発源から蒸発させた原料粒子(ここではケイ素粒子)が入射しないように、蒸着方向Eの傾斜角度(入射角度)θを設定することが好ましい。
図3は、本実施形態における入射角度θの好適な範囲を説明するための模式的な断面図である。なお、以下の説明では、蒸発源から蒸発した原料粒子が他の粒子と衝突することなく集電体11の表面に到達すると仮定する。
図示するように、入射角度θ、電体11の凸部12の高さH、隣接する凸部12の間隔dが式:d=H×tanθを満足するときの蒸着方向を方向30b、このときの入射角度を角度θbとする。この蒸着方向30bよりも集電体11の法線Dに対する傾斜の小さい方向から蒸着を行うと(例えば蒸着方向30a)、集電体11の凹部13に一部の原料粒子が入射し、堆積する。一方、蒸着方向30bよりも傾斜させた方向から蒸着を行うと(例えば蒸着方向30c)、凹部13の略全体が凸部12の影となるので、シャドウイング効果により凹部13上には原料粒子が入射しない。従って、入射角度θは下記式を満足するように設定されることが好ましい。
d<H×tanθ(d:凸部の間隔、H:凸部の高さ、θ:入射角度)
なお、前述したように、入射角度θは、チャンバ内における蒸発源と集電体11の表面との配置によって決まる角度である。
このように入射角度θの好適な範囲は、凸部12の間隔dおよび高さHによって変わるが、例えば5°以上、好ましくは10°以上である。これにより、柱状体14の間に十分な空隙を確保しやすくなる。また、入射角度θは90°未満であればよいが、90°に近づくほど柱状体14を形成することが困難となるため、80°未満であることが好ましい。より好ましくは、20°以上75°以下である。
<酸化工程>
本実施形態では、上記蒸着工程によって得られた柱状体14を酸化させる。これにより、柱状体14と略同じ形状を有し、かつ、所望の酸素比率xを有する活物質体18を形成する。柱状体14の酸化は、例えば酸化ガス雰囲気中で、柱状体14が形成された集電体11を加熱することによって行うことができる。
なお、例えば特開2004−319469号公報には、活物質の膨張を抑えて、充放電サイクル特性を向上させる目的で、活物質に対して加熱処理を行って活物質表面に薄い表面層(例えば酸化ケイ素層)を形成することを開示している。これに対し、本実施形態は、活物質の組成(酸素比率)を制御するために加熱処理を行うものであり、加熱処理の目的が全く異なっている。また、上記公報では、比較的緻密な薄膜に対して熱処理を行うため、薄膜の表面に表面層が形成されるものの、薄膜内部の酸化度を高めることは困難である。これに対し、本実施形態では、集電体11の凸部12によるシャドウイング効果を利用して、十分な空隙を有する蒸着層16を形成している。このため、その後の酸化工程によって、蒸着層16の表面のみでなく、蒸着層16に含まれる各柱状体14内部の活性面まで酸化させることができる。この結果、柱状体14の表面のみでなく、内部の酸素比率も高めることができ、より均一な組成を有する活物質体18が得られる。
本実施形態では、以下に説明するように、例えば加熱温度、酸化ガス雰囲気における酸化ガス分圧、加熱時間などの加熱処理条件を調整することにより、酸化後に得られる活物質体18の組成を制御できる。
本発明者は、柱状体14が形成された集電体サンプルを作製し、酸化ガス雰囲気(ここでは大気)中で加熱して、サンプルの重量変化を調べた。結果を図4に示す。図4は、加熱温度とサンプルの重量増加率との関係を示すグラフである。サンプルの重量が増加するほど、柱状体14の酸化度が高くなったことを意味する。この結果では、加熱温度が高くなるにつれて、柱状体14における酸素比率が高くなっている。従って、加熱温度を制御することにより、活物質体18の酸素比率を制御できることがわかる。なお、100℃以下の温度では、サンプルの重量が僅かに減少しているが、これは吸着水が柱状体から脱離したためであり、実際には酸化が進んでいると考えられる。
加熱温度は、活物質体18の高さ、活物質層20全体に占める活物質体18の体積率、柱状体14の組成などにもよるが、例えば100℃以上であれは、柱状体14の酸化度をより確実に高めることができる。一方、集電体11の耐熱性や製造プロセス上の観点から、加熱温度は例えば600℃以下であることが好ましい。より好ましくは200℃以上600℃以下である。
図4に示すグラフでは、温度が400℃のときに重量増加率が急激に高くなっている。これは400℃の温度でサンプルを10分間保持していたからである。このことから、加熱時間(柱状体14を所定の温度で保持する時間)によって、酸素比率を制御できることも確認できる。加熱時間は例えば60秒以上であることが好ましい。これにより、柱状体14の表面のみでなく、柱状体14内部の活性面も酸化させ、より均一な組成を有する活物質体18を得ることができる。一方、加熱時間が長くなりすぎると、生産性が低下するため、24時間以下であることが好ましい。
酸化ガス雰囲気における酸化ガスの分圧は、特に限定しないが、例えば100Pa以上であれば、柱状体14をより確実に酸化できるので好ましい。酸化ガスとしては、酸素、オゾンなどを用いることができる。
本実施形態における活物質体18に含まれるケイ素酸化物は、安定な4価のSiをより多く含む点で、反応性蒸着によって得られるケイ素酸化物と異なっている。図5は、反応性蒸着によって形成されたケイ素酸化物のXPSである。XPSを用いると、Siの酸化状態がわかる。図示するように、反応性蒸着によって得られたケイ素酸化物は、0価から4価のSi価数が混在しており、このうち4価のSiの占める割合は比較的低い。これに対し、本実施形態のように蒸着後に酸化されることによって得られたケイ素酸化物では、安定な4価のSiの占める割合が高くなる。従って、本実施形態におけるケイ素酸化物のXPSでは、図5に示すXPSよりも、4価のSiのピーク(結合エネルギー:103〜104eV程度)が増える。
本実施形態における活物質体は、集電体11の法線Dに対して傾斜した成長方向Sを有していればよく、活物質体の形状は、図1(c)に示す形状に限定されない。
図6および図7は、本実施形態における他の活物質体を例示する模式的な断面図である。図6および図7に示す活物質体は積層構造を有している。
図6に示す例では、活物質体26は、集電体11の凸部12上に積み重ねられた複数の部分p1〜p5を有している(積層数:5)。複数の部分p1〜p5のそれぞれの成長方向G1〜G5は、集電体11の法線方向に対して交互に反対方向に傾斜している。
活物質体26は、次のようにして形成される。まず、蒸着方向を切り換えながら複数回(ここでは5回)の斜め蒸着を行うことによって、集電体11の表面にジグザグ状の柱状体を形成する。次いで、図1(c)と同様の方法で、柱状体を酸化させることにより、図示するような活物質体26を得る。なお、ジグザグ状の柱状体を形成するための具体的な蒸着条件は、例えば本出願人による国際公開第2007/086411号パンフレットに記載されている。
図7に示す例では、活物質体28は、25個の部分p1、p2・・・が積み重ねられた構造を有している(積層数:25)。活物質体28も、上記と同様に、まず、蒸着方向を切り換えながら複数回の斜め蒸着を行って柱状体を形成し、次いで、柱状体を酸化させることによって得られる。図7に示す例のように、積層数が多くなると(例えば20層以上)、ジグザグ形状を有さず、集電体11の表面に直立した形状となる場合がある。
また、図1(a)〜(c)では、ケイ素酸化物を含む活物質層20の形成方法を説明したが、代わりに、リチウムを吸蔵・放出し得る他の酸化物(例えば錫酸化物)を含む活物質層を形成してもよい。この場合には、斜方蒸着によって錫(Sn)を含む蒸着層を形成し、これを酸化することによって、錫酸化物を含む活物質層を形成することができる。
本実施形態では、集電体11の表面に凸部12が配列されており、凸部12の配置(間隔、配列ピッチ)やサイズ(幅、高さなど)を適宜選択することによって、活物質体18の間の空隙の幅を制御することが可能である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態における凸部12の好ましい配置やサイズを説明する。
図8(a)および図8(b)は、それぞれ、本実施形態における集電体11の凸部12を例示する模式的な平面図およびIX−IX’断面図である。
図示する例では、凸部12は菱形の上面を有する柱状体であるが、凸部12の形状はこれに限定されない。集電体11の法線方向Dから見た凸部12の正投影像は、正方形、長方形、台形、菱形、平行四辺形、五角形およびホームプレート型などの多角形、円形、楕円形などであってもよい。集電体11の法線方向Dに平行な断面の形状は正方形、長方形、多角形、半円形、およびこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、集電体11の表面に対して垂直な断面における凸部12の形状は、例えば多角形、半円形、弓形などであってもよい。なお、集電体11に形成された凹凸パターンの断面が曲線で構成された形状を有する場合など、凸部12と凸部以外の部分(「溝」、「凹部」などともいう)との境界が明確でないときには、凹凸パターンを有する表面全体の平均高さ以上の部分を「凸部12」とし、平均高さ未満の部分を「溝」または「凹部」とする。「凹部」は、図示する例のように連続した単一の領域であってもよいし、凸部12によって互いに分離された複数の領域であってもよい。さらに、本明細書における「隣接する凸部12の間隔」とは、集電体11に平行な平面上において、隣接する凸部12の間の距離であり、「溝の幅」または「凹部の幅」を指すものとする。
また、集電体11の平面図(図8(a))において、複数の凸部12の合計面積A1の、複数の凸部12の合計面積A1および凹部の合計面積A2との和に占める割合が10%以上30%以下であることが好ましい(0.1≦{A1/(A1+A2)}≦0.3)。言い換えると、集電体11の表面の法線方向から見て、集電体11の表面の面積に対する複数の凸部12の合計面積A1の割合が10%以上30%以下であることが好ましい。ここでいう「集電体11の表面の面積」は、集電体11の表面の法線方向から見て、集電体11の表面のうち活物質層20が形成される領域の面積を意味し、活物質層20が形成されずに端子として用いる領域などは含まない。
上記割合が10%未満であれば、活物質体18が凸部12以外の領域にも形成される可能性が高くなり、隣接する活物質体18の間に十分な空間を確保できなくなる場合がある。その結果、充電時の活物質体18の膨張を十分に緩和できず、極板の変形を引き起こすおそれがある。一方、上記割合が30%を超えると、隣接する活物質体18の間の空間が不足し、活物質体18の膨張を緩和するための十分な空間を確保できなくなるおそれがある。これに対し、上述したように、上記割合を10%以上30%以下に制御することにより、シャドウイング効果を利用して隣接する活物質体18の間に活物質体18の膨張のための空間をより確実に確保できる。
凸部12の高さHは3μm以上であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。高さHが3μm以上であれば、活物質体12を斜め蒸着で形成する際に、シャドウイング効果を利用して、凸部12の上に活物質体18を選択的に配置できるので、活物質体18の間に空隙を確保できる。一方、凸部12の高さHは15μm以下であることが好ましく、より好ましくは12μm以下である。凸部12が15μm以下であれば、電極に占める集電体11の体積割合を小さく抑えることができるので、高いエネルギー密度を得ることが可能になる。
凸部12は、所定の配列ピッチで規則的に配列されていることが好ましく、例えば千鳥格子状、碁盤目状などのパターンで配列されていてもよい。凸部12の配列ピッチ(隣接する凸部12の中心間の距離)は例えば10μm以上100μm以下である。ここで、「凸部12の中心」とは、凸部12の上面における最大幅の中心点を指す。配列ピッチが10μm以上であれば、隣接する活物質体18の間に、活物質体18が膨張するための空間をより確実に確保できる。好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。一方、配列ピッチPが100μm以下であれば、活物質体18の高さを増大させることなく、高い容量を確保できる。好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。図示する例では、凸部12は、3つの方向に沿って配列されており、それぞれの方向における配列ピッチPa、Pb、Pcは何れも上記範囲内であることが好ましい。
また、凸部12の配列ピッチPaに対する凸部12の間隔dの割合は1/3以上2/3以下であることが好ましい。同様に、凸部12の配列ピッチPb、Pcに対する凸部12の間隔e、fの割合も1/3以上2/3以下であることが好ましい。これらの間隔d、e、fの割合が1/3以上であれば、各凸部12の上にそれぞれ活物質体18を形成したときに、凸部12の各配列方向における活物質体18の空隙の幅をより確実に確保できるので、十分な線空隙率が得られる。一方、間隔d、e、fの割合が2/3よりも大きくなると、凸部12の間の溝にも活物質が蒸着されてしまい、集電体11にかかる膨張応力が増大するおそれがある。
凸部12の上面における幅は200μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。これにより、シャドウイング効果を利用して活物質体18の間に十分な空隙を確保することが可能になるので、活物質の膨張応力による電極100の変形をより効果的に抑制できる。一方、凸部12の上面の幅が小さすぎると、活物質体18と集電体11との接触面積を十分に確保できない可能性があるので、凸部12の上面の幅は1μm以上であることが好ましい。特に凸部12が柱状の場合、その上面の幅が小さいと(例えば2μm未満)、凸部12が細くなり、充放電による応力に起因して凸部12が変形しやすくなる。従って、凸部12の上面の幅は、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、これにより、充放電による凸部12の変形をより確実に抑制できる。図示する例では、各配列方向に沿った凸部12の上面の幅a、b、cが、何れも上記範囲内であることが好ましい。
さらに、凸部12が、集電体11の表面に垂直な側面を有する柱状体である場合には、隣接する凸部12の間隔d、e、fは、それぞれ、凸部12の幅a、b、cの30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。これにより、活物質体18の間に十分な空隙を確保して膨張応力を大幅に緩和できる。一方、隣接する凸部12の間の距離が大きすぎると、容量を確保するために活物質層14の厚さが増大してしまうため、間隔d、e、fは、それぞれ凸部12の幅a、b、cの250%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以下である。
凸部12の上面は平坦であってもよいが、凹凸を有することが好ましく、その表面粗さRaは0.1μm以上であることが好ましい。ここでいう「表面粗さRa」とは、日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた「算術平均粗さRa」を指し、例えば表面粗さ計などを用いて測定できる。凸部12の上面の表面粗さRaが0.1μm未満であれば、例えば1つの凸部12の上面に複数の活物質体18が形成された場合に、各活物質体18の幅(柱径)が小さくなり、充放電時に破壊されやすくなる。より好ましくは0.3μm以上であり、これにより、凸部12の上に柱状体14が成長しやすく、その結果、活物質体18の間に十分な空隙を確実に形成できる。一方、表面粗さRaが大きすぎると(例えば100μm超)、集電体11が厚くなり、高いエネルギー密度が得られなくなるので、表面粗さRaは例えば30μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下である。特に、集電体11の表面粗さRaが0.3μm以上5.0μm以下の範囲内であれば、集電体11と活物質体18との付着力を十分に確保できるので、活物質体18の剥離を防止できる。
集電体11の材料は、例えば圧延法、電解法などで作製された銅または銅合金であることが好ましく、より好ましくは、比較的強度の大きい銅合金である。本実施形態における集電体11は、特に限定しないが、例えば銅、銅合金、チタン、ニッケル、ステンレスなどの金属箔の表面に、複数の凸部12を含む規則的な凹凸パターンを形成することによって得られる。金属箔としては、例えば圧延銅箔、圧延銅合金箔、電解銅箔、電解銅合金箔などの金属箔が好適に用いられる。
凹凸パターンが形成される前の金属箔の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上50μm以下であることが好ましい。50μm以下であれば、体積効率を確保でき、また、1μm以上であれば、集電体11の取り扱いが容易となるからである。金属箔の厚さは、より好ましくは6μm以上40μm以下、さらに好ましくは8μm以上33μm以下である。
凸部12の形成方法としては、特に限定しないが、例えば金属箔に対してレジスト樹脂等を利用したエッチングを行い、金属箔に所定のパターンの溝を形成し、溝が形成されていない部分を凸部12としてもよい。また、金属箔上にレジストパターンを形成し、電着、メッキ法によって、レジストパターンの溝部に凸部12を形成することもできる。あるいは、パターン彫刻により溝が形成された圧延ローラーを用いて、圧延ローラーの溝を金属箔の表面に機械的に転写する方法を用いてもよい。
活物質層20の厚さは、活物質体18の高さと等しく、集電体11の凸部12の上面から活物質体18の頂部までの、集電体11の法線方向に沿った距離を指し、例えば0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上である。これにより、十分なエネルギー密度を確保できるので、ケイ素を含む活物質の高容量特性を活かすことができる。また、活物質層20の厚さが例えば3μm以上であれば、電極全体に占める活物質の体積割合がより大きくなり、さらに高いエネルギー密度が得られる。より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上である。一方、活物質層20の厚さは例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。これにより、活物質層20による膨張応力を抑えることができ、また、集電抵抗を低くできるのでハイレートの充放電に有利である。また、活物質層20の厚さが例えば30μm以下、より好ましくは25μm以下であれば、膨張応力による集電体11の変形をより効果的に抑制できる。さらに、酸化工程によって、活物質層20の厚さ方向に亘ってより均一に酸素比率xを高めることができる。
活物質体18の太さ(幅)は、特に限定されないが、充電時の膨張によって活物質体18に割れが生じることを防止するためには、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下である。また、活物質体18が集電体11から剥離することを防止するためには、活物質体18の幅は1μm以上であることが好ましい。活物質体18の太さは、例えば任意の2〜10個の活物質体18における、集電体11の表面に平行で、かつ、活物質体18の高さの1/2となる面に沿った断面の幅の平均値で求められる。上記断面が略円形であれば、直径の平均値となる。
次に、本実施形態の電極を用いたリチウムイオン二次電池の構成を説明する。図9は、本実施形態の電極を負極として用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図である。リチウムイオン二次電池50は、負極40と、正極39と、負極40および正極39の間に設けられた微多孔性フィルムなどからなるセパレータ34とを備えている。正極39は、正極集電体32と、正極活物質を含む正極合剤層33とを有している。負極40は、負極集電体37と、SiOxを含む負極活物質層36とを有している。負極40および正極39は、セパレータ34を介して、負極活物質層36と正極合剤層33とが対向するように配置されている。セパレータ34は正極39の上に配置され、必要に応じて電解質溶液を含んでいる。負極40、正極39およびセパレータ34は、リチウムイオン伝導性を有する電解質とともに、ガスケット38を有する封口板35によって、ケース31の内部に収納されている。また、図示しないが、ケース31の内部には、ケース31における空間(ケース内高さの不足分)を埋めるためのステンレス製スペーサが配置されている。ケース31は、封口板35の周縁部を、ガスケット38を介してかしめることにより密封されている。
本発明は、負極の構成に特徴を有することから、リチウム二次電池においては、負極以外の構成要素は特に限定されない。例えば、正極活物質層には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)などのリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができるが、これに限定されない。また、正極活物質層は、正極活物質のみで構成してもよいし、正極活物質と結着剤と導電剤を含む合剤で構成してもよい。また、正極活物質層を負極活物質層と同様に、ジグザグ形状を有する複数の正極活物質体で構成してもよい。なお、正極集電体には、Al、Al合金、Ni、Tiなどを用いることができる。
リチウムイオン伝導性の電解質には、様々なリチウムイオン伝導性の固体電解質や非水電解液が用いられる。非水電解液には、非水溶媒にリチウム塩を溶解したものが好ましく用いられる。非水電解液の組成は特に限定されない。
セパレータや外装ケースも特に限定されず、様々な形態のリチウム二次電池に用いられている材料を特に限定なく用いることができる。
(実施例および比較例―1)
以下、本発明による電極の実施例および比較例を説明する。ここでは、実施例として電極1、比較例として電極Aを作製した。また、各電極における活物質体の形状制御性を調べるために、活物質体の成長角度αの測定を行った。さらに、各電極の充放電特性評価を行った。
(i)電極の作製方法
(i−1)電極1
・集電体の作製
まず、電極1で用いた集電体の作製方法を説明する。厚さが27μmの銅箔(HCL−02Z、日立電線株式会社製)の両面に対して電解メッキ法により粗化処理を行い、1μmの粒径を有する銅粒子を形成した。これにより、表面粗さRzが1.5μmの粗化銅箔93を得た。なお、表面粗さRzは日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。なお、代わりに、プリント配線基板用に市販されている粗面化銅箔を用いてもよい。
次いで、セラミックローラーにレーザー彫刻を用いて複数の溝(凹部)を形成した。複数の溝は、セラミックローラーの法線方向から見て菱形とした。菱形の対角線の長さを10μmおよび20μm、隣接する凹部の短い方の対角線に沿った間隔を18μm、長い方の対角線に沿った間隔を20μmとした。また、各凹部の深さは10μmとした。このセラミックローラーと、これに対向するように配置された他のローラーとの間に、銅箔を線圧1t/mmで通過させることにより、圧延処理を行った。
このようにして、表面に複数の凸部を有する集電体を得た。凸部の高さは約6μmであった。
・Si蒸着層の形成
図10(a)および(b)は、それぞれ、本実施例で使用する真空蒸着装置の模式的な断面図であり、互いに直交する面に沿った断面を示している。
上記方法で得られた集電体67を、図10に示す真空蒸着装置60の真空チャンバ62の内部に配置された固定台63に設置し、蒸着ユニット(蒸発源、坩堝66、電子ビーム発生装置をユニット化したもの)を用いてケイ素を蒸発源とするEB蒸着を行った。このとき、蒸着粒子の入射方向と集電体67の法線とのなす角度θが65°(θ=65°)となるように、固定台63を水平面69に対して65°傾斜させた(ω=65°)。また、蒸発源のケイ素を蒸発させるために、電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏向させて蒸発源に照射させた。蒸発源には、半導体ウェハを形成する際に生じる端材(スクラップシリコン、純度:99.999%)を用いた。蒸着時のチャンバ62内には酸素ガスを導入しなかった。
・蒸着層の酸化
上記方法で得られた、電極を用いて、大気中、300℃で1時間の酸化処理を行った。これにより得られた電極を電極1とした。
(i−2)電極A
上記実施例と同様の方法で、集電体を作製した。比較例では、活物質層を形成する手法として、チャンバ内に酸素を導入した反応性蒸着を用いた。実施例1と同様の装置を用いて、チャンバ62内にガス導入配管65および酸素ノズル64から酸素ガスを導入し、真空度が0.13Paとなるように酸素流量を制御して蒸着を行った。これにより得られた電極を電極Aとした。
(ii)評価
(ii―1)形状
得られた粒子の形状に関して、実施例および比較例で得られた電極1、電極Aを用いて断面形状を観察した。
図11(a)および(b)は、それぞれ、電極1および電極Aの断面SEM像を示す図である。この結果、電極1の活物質体18の成長角度αは52°、電極Aの活物質体24の成長角度が30°であることがわかった。さらに、電極1では、凹部13上に堆積されている活物質の量は、電極Aよりも低減されていることがわかった。また、電極1の活物質体18は、電極Aの活物質体24よりも細くなっていることから、電極1の蒸着工程の方が電極Aの蒸着工程よりも高い形状制御性を発揮することが確認された。これは、電極Aの蒸着工程では、蒸着層形成時にチャンバ内に酸素ガスを導入しており、チャンバ内の真空度が低下し、ケイ素粒子の平均自由行程が減少したためであると考えられる。
(ii−2)充放電特性
電極1、電極Aを用いて、図9に示す構成を有するサンプルコイン型電池を作製し、充放電特性を評価した。
上記の電極を直径が12.5mmの円形状に成型し、コイン型電池用電極を作製した。次いで、直径15mmの円形状に打ち抜いた金属リチウム(厚さ:300μm)を封口板に貼り付けた。この後、厚さが20μmの旭化成製のポリエチレンからなる微多孔性セパレータを円形状の金属リチウムの上に配置し、その上にコイン型電池用電極を配置した。続いて、1.2M LiPF6,エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=3/5/2(体積比)となるように調整した電解液を滴下した。厚さを調整する為に厚さが100μmのステンレス板を配置し、その上にケースを置いた後、かしめ機を用いて封口した。このようにして、電池1及び電池Aを得た。
得られた各電池について、充放電装置を用いて、以下の条件で充放電試験を行った。
充電:定電流充電 0.1mA、 終止電圧 0V、 休止時間30分
放電:定電流放電 0.1mA、 終止電圧 1.5V
この後、上記充放電試験における1サイクル目の不可逆容量率を次式により求めた。
不可逆容量(%)=100−{(放電容量)/(充電容量)}×100
この結果、電池1の付加逆容量率は28%、電池Aの付加逆容量率は34%であった。付加逆容量率は活物質組成と相関があり、いずれの電極も酸素組成xが約0.7程度であることが確認された。
上記の結果より、本実施形態の製造方法によると、反応性蒸着によって同程度の組成を有する活物質層を形成する場合と比べて、活物質層の構造(活物質体の形状や空隙率)に対する制御性(形状制御性)を向上できることが確認された。
(実施例および比較例―2)
本実施例では、35層の活物質体を形成し、その断面形状を観察した。また、酸化前の柱状体および酸化後の活物質体の酸素濃度分布を調べたので、その結果を説明する。
(i)電極の形成方法
(i−1)電極2
電極1と同様の集電体の表面に、図10に示す真空蒸着装置60を用いて、Si蒸着層の形成を行った。本実施例では、固定台63の水平面からの傾斜角度を切り換えることにより、蒸着方向の傾斜角度(入射角度)θを65°と−65°との間で切り換えながら、50回の蒸着工程を行った。蒸着時のチャンバ62内には酸素ガスを導入しなかった。蒸着時のチャンバー内の圧力は8×10-3Paであった。これにより、複数の柱状体(積層数:50層)を含むSi蒸着層を形成した。
この後、大気中、300℃の温度で30分間の熱処理を行うことにより、Si蒸着層を酸化させ、複数の活物質体(積層数:50層)を含む活物質層を形成した。このようにして、電極2を得た。
(i−2)電極B
電極1と同様の集電体の表面に、図10に示す真空蒸着装置60を用いてSi蒸着層を形成した。蒸着は、チャンバ62内に酸素ガスを導入しながら行った。酸素ガスの流量は、チャンバー内の圧力が0.13Paとなるように制御した。また、電極2と同様に、蒸着方向を切り替えながら50回の蒸着工程を行った。これにより、複数の活物質体(積層数:50層)を含む活物質層を形成し、電極Bを得た。
(ii)評価
図12(a)および(b)は、それぞれ、電極2および電極Bの側面図である。この結果、電極2の活物質体は、電極Bの活物質体よりも細くなっていることがわかる。従って、電極2の作製方法の方が高い形状制御性を発揮することが確認された。また、電極2では、集電体の凹部上に堆積された活物質の量が電極Bよりも低減されていることが確認できた。これは、電極Bでは、蒸着層形成時にチャンバ内に酸素ガスを導入しており、チャンバ内の真空度が低下し、ケイ素粒子の平均自由行程が減少したためであると考えられる。
(iii)柱状体および活物質体の酸素濃度分布
電極2の酸化工程を行う前の柱状体内部の酸素分布、および、電極2の酸化工程後の活物質体内部の酸素分布をX線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて確認した。この結果、活物質体の亀裂部分の近傍で、特に酸化度が高められていることがわかった。また、活物質体の表面のみでなく、活物質体内部の活性面まで酸化されていた。これは、活物質体の比表面積が非常に大きい(10m2/g、100nm粒子に相当)からと考えられる。
また、電極2を用いてサンプル電池を形成し、前述の実施例および比較例−1と同様の方法で不加逆容量を求めたところ、27%であった。これにより、活物質体の酸素比率xの平均値が0.6であることがわかった。一方、酸化工程を行う前の柱状体が形成された集電体を電極として、サンプル電池を形成し、同様に不加逆容量を求めたところ、19%であった。従って、柱状体の酸素比率xの平均値は0.39であることがわかった。
以上の結果から、本実施形態によると、酸化工程によって、活物質体に酸化度の高い表面層が生じるのではなく、活物質体全体が酸化されることが確認された。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による電極の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、集電体上にSiを含む蒸着層を形成し、これを酸化する工程を複数回繰り返す点で、前述の実施形態の方法と異なる。
図13(a)〜(e)は、本実施形態の電極の製造方法の一例を説明するための断面工程図である。簡単のため、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
まず、図13(a)に示すように、集電体11の表面に、方向Eから蒸発させた原料粒子(ここではケイ素粒子)を入射させる。これにより、図13(b)に示すように、集電体11の各凸部12上にケイ素を含む柱状部分14aを成長させる。この後、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状部分14aを酸化させる。これにより、図13(c)に示すように、ケイ素酸化物を含む第1部分18aを得る。次いで、図13(d)に示すように、斜方蒸着により、第1部分18a上にさらにSiを堆積させて柱状部分14bを形成する。蒸着方向Eは、図13(a)に示す蒸着工程における蒸着方向Eと同じであってもよいし、異なっていてもよい。この後、図13(e)に示すように、柱状部分14bを酸化させる。このようにして、ケイ素酸化物を含む活物質体18からなる活物質層20を得る。
なお、上記方法では、蒸着および酸化工程を2回繰り返したが、3回以上繰り返してもよい。複数回繰り返すことにより、より厚い活物質層20を形成することができる。本実施形態における入射角度θなどの蒸着条件および加熱温度などの加熱処理条件は、前述した実施形態の条件と同様である。
Siを含む蒸着層を酸化することによりSiOxを含む活物質層を形成する工程では、蒸着層内の酸素の拡散速度によって、蒸着層のうち酸化される部分の厚さが決まる。従って、蒸着層に空隙が少なく、かつ、蒸着層が厚すぎると、蒸着層全体を酸化させることができない場合もある。これに対し、上記方法によると、活物質層20の厚さにかかわらず、活物質層20の厚さ全体に亘って、その組成(酸素比率x)をより確実に制御できる。特に厚さの大きい活物質層(厚さ:例えば5μm以上)を形成する際に、本実施形態の方法を好適に適用できる。
図14(a)〜(d)は、本実施形態の電極の製造方法の他の例を説明するための断面工程図である。簡単のため、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
この例では、まず、集電体11の表面に、方向Eから蒸発させた原料粒子(ここではケイ素粒子)を入射させる。これにより、図14(a)に示すように、集電体11の各凸部12上に、方向G1に沿って、ケイ素を含む柱状部分p1’を成長させる。この後、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状部分p1’を酸化させる。これにより、図14(b)に示すように、ケイ素酸化物を含む第1部分p1を得る。次いで、集電体11の法線に対して、図14(a)に示す蒸着工程における蒸着方向とは反対側に傾斜した方向から、原料粒子を入射させる。これにより、図14(c)に示すように、各第1部分p1上に、方向G2に沿って、ケイ素を含む柱状部分p2’を成長させる。方向G2は、集電体11の法線に対して、第1部分の成長方向G1と反対側に傾斜している。この後、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状部分p2’を酸化させる。これにより、図14(d)に示すように、ケイ素酸化物を含む第2部分p2を得る。このようにして、蒸着方向を切り換えながら、複数回の蒸着および酸化工程を繰り返すことにより、例えば図6を参照しながら前述したように、ジグザグ状の活物質体を形成できる。
さらに、本実施形態においても、図7に示す例のように、積層数が多くなると(例えば20層以上)、ジグザグ形状を有さず、集電体11の表面に直立した形状となる場合がある。
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による電極の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、酸化工程において、蒸着層を酸化するだけでなく、集電体の露出表面を酸化して抵抗層を形成する点で、前述の実施形態の方法と異なる。
図15(a)および(b)は、本実施形態の電極の製造方法の一例を説明するための断面工程図である。簡単のため、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
まず、図15(a)に示すように、斜方蒸着により、銅などの金属を主成分とする集電体11の表面に、複数の柱状体14を含む蒸着層16を形成する。蒸着層16の形成方法は、図1(a)および(b)を参照しながら前述した方法と同様である。このとき、隣接する柱状体14の間で、集電体11の表面の一部が露出するように、集電体11の凸部12の高さH、隣接する凸部12の間隔d、入射角度θ、チャンバ内の真空度などを調整する(図3参照)。なお、少なくとも隣接する2つの柱状体14の間において集電体11の表面が露出していればよく、全ての柱状体14の間隔で露出していなくてもよい。
次に、図15(b)に示すように、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、柱状体14を酸化させて活物質体16を含む活物質層20を形成する。この加熱処理では、集電体11の露出表面も酸化されて、集電体11の材料よりも比抵抗の高い抵抗層90が形成される。抵抗層90は、集電体11に含まれていた金属の酸化物(例えば酸化銅)を含む。加熱処理の温度、時間、酸化ガス雰囲気における酸化ガスの分圧などの加熱処理条件は、前述した実施形態における条件と同様である。このようにして、本実施形態の電極を得る。
上記方法によると、前述した実施形態と同様の効果に加えて、集電体11の表面に抵抗層90が形成されることにより、以下のような利点が得られる。
従来の電極(負極)では、集電体の表面の一部が活物質で覆われておらず、露出している場合に、充電時に、集電体の露出した表面と対向するように配置された正極活物質層から供給されるリチウムの一部は、活物質層に吸蔵されずに集電体の露出表面に析出するおそれがある。これは、リチウム二次電池の安全性を低下させる要因となるおそれがある。負極に金属リチウムが析出すると、負極の熱安定性が低下するからである。また、金属リチウムがリチウムデンドライトとして析出すると、正負極間での内部短絡が生じる原因となる可能性もある。
これに対し、本実施形態では、集電体11の露出表面に抵抗層90が形成されているので、集電体11上へのリチウム析出反応の抵抗が増大し、リチウムの析出が生じにくい。また、抵抗層90は、集電体11の表面のうち活物質と接していない領域にのみ形成されるので、充放電反応における抵抗を増大させることなく、リチウムの析出を抑制できる。従って、高いレート特性を確保しつつ、従来よりも安全性に優れた電池が得られる。さらに、柱状体14を酸化させる加熱処理によって抵抗層90を形成できるので、製造工程数を増加させることなく、上記電池を製造できる。
本実施形態における抵抗層90の比抵抗は集電体11の材料の比抵抗よりも大きければよいが、1mΩ・cm以上であることが好ましい。抵抗層90の比抵抗が低いと、リチウム析出反応における抵抗が大きくならず、十分な析出抑制効果が得られないおそれがあるが、比抵抗が1mΩ・cm以上であれば、リチウム析出をより確実に抑制できる。
抵抗層90の厚さは0.005μm以上10μm以下であることが好ましい。抵抗層90が10μm以下であれば、集電体11の抵抗が増大することを抑制できる。一方、抵抗層90の厚さが0.005μm以上であれば、リチウム充放電反応における抵抗をより確実に増大させることができる。より好ましくは0.010μm以上であり、これにより、より効果的に上記抵抗を増大させてリチウムの析出を抑制できる。なお、集電体11として銅箔を用い、抵抗層90として銅箔の表面を酸化させた酸化銅からなる層を形成する場合には、集電体11の材料(銅)の比抵抗は例えば1.694×10-3mΩ・cmであり、酸化銅からなる抵抗層90は酸素の比率や処理温度によって変化するが、その比抵抗は最大で1×105〜106mΩ・cmとなる。なお、抵抗層90の厚さは、加熱温度、加熱時間などの加熱処理条件によって調整され得る。
本実施形態の方法は図15に示す方法に限定されない。図16(a)および(b)は、本実施形態の電極の製造方法の他の例を示す模式的な工程断面図である。図16(a)に示すように、蒸着方向を切り換えながら複数回の蒸着工程(斜方蒸着)を行うことにより、金属を含む集電体11の各凸部12上に、積層数が25層の柱状体28’を形成する。この場合も、隣接する柱状体28’の間において、集電体11の表面の一部が露出するように、集電体11の凸部12の形状や配列ピッチおよび蒸着条件を制御する。
次いで、図16(b)に示すように、酸化ガス雰囲気中で加熱処理を行う。これにより、柱状体28’を酸化させて活物質体28を形成するとともに、集電体11の露出表面を酸化させて、金属酸化物を含む抵抗層90を形成する。
図17(a)および(b)は、本実施形態の電極の製造方法のさらに他の例を示す模式的な断面工程図である。図17(a)に示すように、蒸着方向を切り換えながら複数回の斜方蒸着を行うことにより、金属を含む集電体11の各凸部12上に、積層数が5層の柱状体26’を形成する。この場合も、隣接する柱状体26’の間において、集電体11の表面の一部が露出するように、集電体11の凸部12の形状や配列ピッチおよび蒸着条件を制御する。
次いで、図17(b)に示すように、酸化ガス雰囲気中で加熱処理を行う。これにより、柱状体26’を酸化させて活物質体26を形成するとともに、集電体11の露出表面を酸化させて、金属酸化物を含む抵抗層90を形成する。
図15〜図17に示す方法では、斜方蒸着を用いて、集電体11の表面の一部が露出するように、複数の柱状体14、28’、26’を形成しているが、斜方蒸着とは異なる方法で複数の柱状体を形成してもよい。
図18は、本実施形態のさらに他の電極を例示する模式的な断面図である。図18に示す電極203では、表面に凹凸パターンが形成された集電体110の表面に、複数の活物質体122からなる活物質層112が形成されている。各活物質体122は、集電体110の各凸部(突起)上に配置されている。集電体110のうち活物質体122と接していない領域には抵抗層114が形成されている。このような構成によると、活物質体122の間に活物質体がリチウムを吸蔵して膨張することによる応力(膨張応力)を緩和するための空間124を確保できるので、膨張応力による活物質層112の剥離を防止でき、かつ、凸部の側面部分(突起側面)も含めて集電体110の表面のうち活物質が堆積されなかった部分にリチウムが析出することを防止できる。また、凸部側面に抵抗層114を形成することも可能になる。
電極203は、次のようにして形成される。まず、集電体110の表面に所定の形状を有する凸部を形成し、この上にレジスト層を形成する。この後、レジスト層を露光・現像し、凸部上に開口部を有するレジスト体を形成する。次いで、レジスト体の開口部に、電解めっき法によりケイ素または錫を含む柱状体を形成する。この後、レジスト体を除去する。このような方法により、集電体110の各凸部上に柱状体を含む膜を形成するとともに、集電体110の各凹部の表面を露出させる。集電体110の凸部上に柱状体を形成する形成方法および柱状体の構成は、例えば特開2004−127561号公報に開示されている。続いて、柱状体が形成された集電体110に対して、酸化ガス雰囲気で加熱処理を行う。加熱処理条件は前述した実施形態で説明した条件と同様である。加熱処理では、柱状体が酸化して活物質体122となるとともに、集電体110の露出表面が酸化して、金属酸化物(例えば酸化銅)を含む抵抗層90が形成される。このようにして、複数の活物質体122を含む活物質層112と、隣接する活物質体122の間に形成された抵抗層90とを有する電極203を得る。
また、図19(a)および(b)は、本実施形態のさらに他の電極を例示する斜視図および断面図である。図19に示す電極は、集電体110の表面に配列された複数の活物質体125と、集電体110のうち活物質体125が形成されていない部分に形成された抵抗層114とを有している。
図19に示す電極は、次のようにして形成される。まず、集電体110の表面に活物質膜を形成し、これをパターニングする。これにより、集電体110の表面に複数の柱状体を形成するとともに、集電体110の表面のうち柱状体が形成されていない部分を露出させる。パターニングによる柱状体の形成方法は例えば特開2004−127561号公報に開示されている。続いて、柱状体が形成された集電体110に対して、酸化ガス雰囲気で加熱処理を行う。加熱処理条件は前述した実施形態で説明した条件と同様である。加熱処理では、柱状体が酸化して活物質体125となるとともに、集電体110の露出表面が酸化して抵抗層114が形成される。このようにして、複数の活物質体125を含む活物質層112と、隣接する活物質体125の間に形成された抵抗層114とを有する電極を得る。
本実施形態における集電体11の凸部12の形状や配列ピッチ、活物質層の厚さ、活物質材料、活物質体の組成は、前述の第1の実施形態における凸部12の形状や配列ピッチ、活物質層の厚さ、活物質材料、活物質体の組成と同様である。また、本実施形態の集電体は、主成分として銅を含むことが好ましく、例えば圧延銅箔、圧延銅合金箔、電解銅箔、電解銅合金伯、さらに粗化処理を施した電解銅箔、粗化処理を施した圧延銅箔などであることが好ましい。
(実施例および比較例−3)
本実施例では、蒸着法によって活物質層が形成された集電体に対し、種々の方法で抵抗層を形成して評価実験用の電極3〜6を作製した。また、比較のため、抵抗層を有さない電極Cを作製したので、その方法を説明する。さらに、電極3〜6および電極Cを用いた電池の特性を評価し、比較を行ったので、評価方法および評価結果を説明する。
(i)電極の作製
(i−1)電極3〜6
・活物質膜の作製
本実施例では、活物質膜の形成に(株)アルバック製の蒸着装置を使用した。図20は、本実施例で使用した蒸着装置の模式的な断面図である。
蒸着装置600は、真空容器150と、真空容器150を排気する排気系(図示せず)とを備えている。真空容器150内には、集電体151を固定する固定台154が設けられ、固定台154の鉛直下方には、集電体151の表面に活物質を堆積させるターゲット155が配置されている。また、図示しないが、ターゲット155の材料を加熱して蒸発させるための電子ビーム加熱手段が設けられている。本実施例では、ターゲット155として、純度99.9999%のケイ素単体((株)高純度化学研究所製)を用いた。
まず、厚さが35μm、表面粗さRzが5μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)を40mm×40mmのサイズに裁断して集電体51を作製した。なお、表面粗さRzは日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。
次いで、この集電体151を蒸着装置600の固定台154に設置し、集電体151の表面に対してターゲット155から蒸発したケイ素を入射させた。ターゲット155に照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを500mAに設定した。ターゲット155からのケイ素単体の蒸気は集電体151の表面に供給された。集電体151の法線に対する蒸着方向の傾斜角度θは0°とした。その結果、集電体151の表面に、ケイ素からなる活物質膜が得られた。蒸着時間は、活物質膜の厚さが10μmとなるように調整した。このようにして、表面に活物質膜が形成された集電体を4個作製した。
・抵抗層の形成
上記方法で活物質膜が形成された4個の集電体を、それぞれ、直径が12.5mmの円形に成形した。次いで、活物質膜の端部(幅:2mm)を剥離して集電体表面を露出させた。
続いて、これらの集電体に対し、大気中で、下記表1に示す条件(アニール温度、アニール時間)でアニール処理を行った。この結果、集電体の露出部分では、集電体の表面近傍のCuが酸化して酸化銅からなる抵抗層が形成された。このとき、活物質膜も酸化され、ケイ素酸化物を含む活物質層が得られた。このようにして、評価実験用の電極1〜4を得た。
図21(a)および(b)は、それぞれ、評価実験用の電極1〜4の構造を示す模式的な平面図および断面図である。図示するように、これらの電極は、円形の集電体160と、その上に形成された活物質層162とを有しており、活物質層162の剥離によって露出された集電体160の表面には、抵抗層164が形成されている。
次いで、各電極の抵抗層164の厚さtを、表1に示すアニール時間・アニール温度のサンプルに対して、電極断面を電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron microscope)を用いて観測した。その結果、抵抗層164の厚さtは、アニール温度が高く、かつ、アニール時間が長いほど大きくなった。
Figure 2009119093
(i−2)電極C
上記(i−1)と同様の方法で集電体上に活物質膜を形成し、活物質膜の端部(幅:2mm)を剥離して集電体を露出させた。アニール処理は行わなかった。このようにして、抵抗層を有さない電極Cを得た。
(ii)試験電池No.3〜No.6および試験電池Cの作製
評価実験用の電極3〜6および電極Cを用いて、リチウム金属を対極とするコイン型の試験電池No.3〜No.6および試験電池Cを作製した。なお、これらの電池では、上記の各電極が正極となり、金属リチウムが負極となるが、上記の各電極を負極とする電池を作製して後述する充放電試験を行っても同様の結果が得られる。
まず、厚さが300μmの金属リチウム箔(本荘ケミカル(株)製)を直径17mmの円形に成形し、コイン電池封口板に圧着して、対極(ここでは負極)とした。この上に、セパレータを介して、電極3を配置した。ここでは、セパレータとして、厚さが20μmのポリエチレン製の多孔質フィルム(旭化成ケミカルズ(株)製)を用いた。
また、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を、負極およびセパレータにそれぞれ含浸させた。その後、厚さが100μmの集電板、外装ケース(SUS製)を配置し、かしめ封口を行った。このようにして、コイン型の試験電池No.3を得た。
同様にして、電極4〜6および電極Cを用いてコイン型電池を作製し、それぞれ、試験電池No.3〜No.6および試験電池Cとした。
(iii)試験電池の評価方法および結果
まず、各試験電池について、以下の条件で充電試験を行った。
電流値:0.1mA
終止電圧:−20mV (対Li対極電位)
充電試験の後、各試験電池を分解して電極を取り出した。取り出した電極を、ジメチルカーボネートを用いて洗浄した後、乾燥し、その表面を観察した。
この結果、試験電池No.3〜No.6で使用した電極3〜6では、リチウムの析出が確認されなかった。これに対し、試験電池Cで使用した電極Cでは、集電体の露出部分(活物質と接していない部分)上にリチウム金属の析出が確認された。従って、抵抗層を設けることにより、集電体の露出部分に対するリチウム金属の析出を抑制できることが確認された。
なお、実施例および比較例―3では、抵抗層の効果を評価するために、故意に活物質層の一部を剥離して抵抗層を形成した。蒸着工程において、集電体の表面の一部を露出したまま残すように、複数の柱状体を間隔を空けて成長させ、集電体の露出表面に抵抗層を形成する場合(図15〜図17参照)でも同様の効果が得られる。さらに、活物質層形成時に活物質層にピンホールが形成された場合や、塗工法によって形成された活物質層が膨れて、集電体との間に空隙が生じた場合などに、活物質と接していない集電体表面に抵抗層を形成しても同様の効果が得られる。
(参考の実施形態)
上記リチウムイオン二次電池では、想定外の方法や環境下での使用などが原因で過充電状態になったときに、負極上に金属リチウムが析出してしまう場合がある。これは、リチウム二次電池の安全性を低下させる要因となるおそれがある。負極に金属リチウムが析出すると、負極の熱安定性が低下するからである。また、金属リチウムがリチウムデンドライトとして析出すると、正負極間での内部短絡が生じる原因となる可能性もある。
負極上にリチウムが析出する理由は以下のように考えられる。負極集電体上に負極活物質層を形成する際に、負極活物質層にピンホールが生じて負極集電体の表面が完全に被覆されない場合や、負極活物質層が負極集電体の表面から部分的に剥離してしまう場合がある。このように、負極集電体の表面に、負極活物質層で覆われていない部分(「集電体の露出部」とする)が生じると、充電時に、負極集電体の当該表面と対向するように配置された正極活物質層から供給されるリチウムの一部は、負極活物質層に吸蔵されずに負極集電体の露出部に析出してしまう。
これに対し、リチウムの析出を抑制するための活物質材料が提案されている(例えば特開平11−297311号公報、特開平9−293536号公報)。しかしながら、負極活物質の材料の選択の幅が狭くなり、さらなる高容量化を図ることが困難となる可能性がある。
一方、特許3754374号明細書は、集電体上にケイ素および錫のうち少なくとも一方を含む活物質層を有する負極において、活物質層と集電体との界面における反応・拡散を適切に制御する目的で、集電体と活物質層との間に酸化膜を設けることを提案している。また、特開2005−78963号公報は、Cuからなる負極集電体が過放電によって溶解することを抑制するために、負極集電体の表面に溶解防止膜を形成し、溶解防止膜の上に活物質層を形成することを提案している。溶解防止膜として、例えば金属酸化膜、フッ素系樹脂膜などを用いることが例示されている。これらの特許文献では、リチウムの析出を抑制する目的とは異なる目的で、集電体上に酸化膜や溶解防止膜を形成した後、その上に活物質層を形成することが提案されている。本願発明者が検討したところ、これらの特許文献に提案された負極では、集電体表面全体が集電体の材料(例えばCu)よりも高い抵抗を有する膜(以下、「高抵抗膜」と称する)で覆われているため、リチウム析出反応が生じにくくなる。その結果、活物質体層のピンホールや剥離に起因するリチウムの析出を抑制することができると考えられる。
特許3754374号明細書に提案された構成では、その目的を考慮すると、高抵抗膜である酸化膜は集電体表面全体を覆うように形成される必要がある。同様に、特開2005−78963号公報に提案された構成では、高抵抗膜である溶解防止膜は集電体表面全体を覆うように形成される必要がある。これらの構成によると、集電体表面と活物質層との間に高抵抗膜が存在するので、充放電反応における抵抗が増大してしまう可能性がある。充放電反応における抵抗が増大すると、ハイレートの充放電特性が低下するおそれがある。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、前記集電体の表面に接して形成されたリチウムを吸蔵および放出する物質からなる活物質層と、前記集電体の前記表面のうち前記活物質と接していない領域に形成され、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層とを備える。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極によると、集電体の表面のうち活物質と接していない領域には、集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層が形成されているので、集電体の表面上にリチウムが析出することを抑制できる。また、抵抗層は活物質と接していない領域に形成されているので、集電体表面に下地として高抵抗な膜を形成する構成(特許文献4、5)と比べて、充放電反応における抵抗を増大させることなく、上述したリチウムの析出抑制効果を得ることができる。従って、レート特性を低下させることなく、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることが可能になる。さらに、本発明によれば、活物質層の材料や構成、形成方法などにかかわらず、リチウムの析出を抑制できるので有利である。
従って、本実施形態によれば、高容量、高出力、長寿命、および高いレート特性を有し、かつ、従来よりもさらに安全性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できる。また、本実施形態の製造方法によれば、製造工程を複雑化させることなく、生産性に優れた簡便な方法で、上記リチウム二次電池用負極を製造できる。
以下、図面を参照しながら、本実施形態によるリチウムイオン二次電池用負極を説明する。図22(a)および(b)は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極(以下、「負極」ともいう)の一部を示す模式的な断面図である。
まず、図22を参照する。負極200は、集電体110と、集電体110の表面に形成されたリチウムを吸蔵および放出する活物質からなる活物質層112とを備える。活物質層112は、集電体110の表面に接するように形成されており、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域112aには、集電体110の材料よりも比抵抗の高い抵抗層114が形成されている。
負極100では、活物質層112は、活物質層112の上面から集電体110の表面に達する開口部116を有しており、集電体110の表面のうち上記のような開口部116によって露出された領域(すなわち、活物質と接していない領域)112aに抵抗層114が形成されている。活物質層112の開口部116は、活物質層112を形成する際に生じたピンホールであってもよいし、活物質層112が形成された後にその一部が剥離した剥離部であってもよい。そのような剥離部は、活物質層112の端部が剥離した切り欠き部であってもよい。あるいは、例えば活物質層112内に膨張応力を緩和するために、または他の目的で、活物質層112に故意に形成されたものであってもよい。
抵抗層114は、金属酸化物層および有機物層などであってもよい。この中でも、耐熱性、充放電反応における電位安定性などの観点から金属酸化物層であることが好ましい。
抵抗層114の形成方法は特に限定されない。抵抗層114は、例えば、活物質層112を形成した後に集電体110の露出部分を酸化することによって形成された酸化物層であってもよい。これにより、抵抗層114を容易に形成できるだけでなく、集電体110と抵抗層114との密着性をより確実に確保できるので有利である。あるいは、図22(b)に示す負極201のように、活物質層112を形成した後に、集電体110の材料と反応する有機物を添加して、有機物からなる抵抗層114を形成することもできる。
本実施形態の負極200、201は、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域112a上に抵抗層114が形成されているので、そのような領域112a上にリチウムが析出することを抑制できる。
前述したように、特許3754374号明細書および特開2005−78963号公報に提案された構成では、集電体表面と活物質層との間に高抵抗膜が存在し、充放電反応における抵抗が増大するという問題があった。これに対し、本実施形態では、抵抗層114は、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域にのみ形成されているので、充放電反応における抵抗を増大させることなく、上述したリチウムの析出抑制効果を得ることができる。従って、レート特性を低下させることなく、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることが可能になる。
また、本実施形態では、リチウムの析出を抑えるために活物質の材料を限定しない。このため、活物質層112の材料を高い自由度で選択できるので、さらなる高容量化を実現できる。
本実施形態における活物質層112はスパッタ法、蒸着法などの真空プロセスを用いて形成することができる。真空プロセスを用いると、活物質層112と集電体110との密着性を良好に確保できるので好ましい。
真空プロセスの代わりに、紛状の活物質材料を結着剤および溶媒と混合したペーストを集電体の表面に塗工して形成する塗工法を用いて活物質層を形成してもよい。本発明者が検討したところ、塗工によって活物質層を形成すると、活物質層(塗工膜)のピンホールなどによって露出された集電体表面のみでなく、活物質層の一部が膨れて集電体表面から浮いてしまった部分(膨れ部)の下の集電体表面にもリチウムが析出する可能性があることが分かった。そこで、活物質層にピンポールなどの開口部が無い場合でも、活物質層に膨れ部が生じていれば、その下方に位置する集電体表面に抵抗層を形成することが好ましい。
図23は、本実施形態の他のリチウム二次電池用負極を例示する模式的な断面図であり、上述したような塗工法を用いて形成された活物質層を備えている。図23に示す負極202では、塗工膜である活物質層112は、集電体110の表面から部分的に浮いてしまい、活物質層112と集電体110との間に空隙118を有する膨れ部120が形成されている。集電体110の表面のうち脹れ部120の下に位置し、活物質と接していない領域112aには抵抗層114が形成されている。このように、塗工法を用いて形成された活物質層112が部分的に集電体110から浮いてしまった場合でも、抵抗層114を設けることにより、集電体110の表面にリチウムが析出することを防止できる。なお、図23に示す抵抗層114は、例えば活物質層112の形成後に、集電体110を加熱処理して領域112aの表面部分を酸化することによって形成できる。
本実施形態における活物質層112は、表面に凹凸を有する集電体を用い、集電体の凸部のみに選択的に形成された活物質体を含んでいてもよい。あるいは、集電体110に形成された活物質膜をパターニングすることによって得られた複数の柱状の活物質体から構成されていてもよい。また、活物質層112はポーラスな膜であってもよい。活物質としてSnを用いる場合には、メッキ法によって活物質層112を形成することもできる。さらに、抵抗層114の形成は、活物質層112の形成前に行われてもよい。
本実施形態では、抵抗層114の表面の少なくとも一部は活物質層112と接していないことが好ましい。抵抗層114の表面に接して活物質層112が形成されていると、充放電反応における抵抗が増大し、充放電特性が低下するおそれがあるからである。抵抗層114の表面全体が活物質と接していないと特に有利である。また、抵抗層114の好ましい厚さの範囲は、前述の実施形態で説明した範囲と同様である。
本実施形態における抵抗層114は、抵抗層が厚くなり、ハイレート特性を低下させる恐れがある場合は、集電体110の表面のうち活物質と接していない領域112aにのみ形成されており、活物質層112の表面上に形成されていないことが好ましい。これにより、ハイレート特性を確保しつつ、リチウム析出反応を抑制できる。
本実施形態における活物質層112の材料としては、リチウムを可逆的に吸蔵および放出する公知のものを特段の制限なく用いることができる。例えば、従来から非水電解質二次電池に用いられている天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛材料、非晶質炭素材料、また、Liと合金化することが知られているAl、Sn、Siなどの化合物、酸化物などが挙げられる。
より好適には、Si、SnなどのLiと合金化する活物質が用いられる。これらの活物質を用いると、高容量化を達成することが可能となる。さらに好ましくは、活物質層112はSiの酸化物またはSnの酸化物を含む。これにより、高容量化と優れたサイクル特性とを両立させることができる。
集電体110の構成材料は特に限定されず、銅、チタン、ニッケル、ステンレスなどであってもよいが、高容量化および電位に対する安定性の観点から、銅あるいは銅を含む合金であることが好ましい。集電体110として、例えば電解銅箔、電解銅合金箔、粗化処理を施した電解銅箔、粗化処理を施した圧延銅箔などを用いることができる。
集電体110の表面には凹凸が形成されていることが好ましい。集電体110の表面に凹凸が形成されていると、集電体110の表面と活物質と接触面積が大きくなるので、活物質層112との密着性を高めることができるからである。また、集電体110は規則的な凹凸パターンを有していてもよい。
次に、図面を参照しながら、本実施形態の負極を適用して得られたリチウムイオン二次電池の構成の一例を説明する。
図24は、本実施形態の負極を用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図であり、図25は、図24に示す電池における極板群を示す模式的な拡大断面図である。
図24に示すように、リチウムイオン二次電池300は、正極140と、負極200と、負極200および正極140の間に設けられたセパレータ144とを有する極板群と、極板群を収容する外装ケース145とを備えている。正極140は、正極集電体130と、正極集電体130に形成された正極活物質層132とを有している。負極200は、図22(a)を参照しながら前述した構成を有している。正極集電体130および集電体(負極集電体)110は、それぞれ正極リード146および負極リード147の一端と接続されており、正極リード146および負極リード147の他端は外装ケース145の外部に導出されている。セパレータ144には、リチウムイオン伝導性を有する電解質が含浸されている。負極200、正極140およびセパレータ144は、リチウムイオン伝導性を有する電解質とともに、外装ケース145の内部に収納され、樹脂材料148によって封止されている。
次に、リチウムイオン二次電池300における極板群の構成をより詳しく説明する。図25に示すように、負極200および正極140は、セパレータ144を介して、負極200の活物質層(負極活物質層)112と正極活物質層132とが対向するように配置されている。負極集電体110の正極140側の表面のうち、正極140と対向する部分(正負極対向部)Pに位置し、かつ、活物質が堆積されていない領域(活物質非堆積部)には抵抗層114が形成されている。ここでいう「活物質非堆積部」は、活物質を堆積しなかった部分(活物質未形成部)の他、活物質膜形成後にその一部を除去することによって得られた活物質除去部、活物質膜の一部が剥離して生じた活物質剥離部も含む。活物質非堆積部は全て抵抗層114で覆われていることが好ましいが、活物質非堆積部の少なくとも一部が抵抗層114で覆われていればリチウム析出防止効果が得られる。なお、負極集電体110の表面のうち正負極対向部P以外の領域ではリチウムは析出しにくいため、負極集電体110の表面が露出していてもよい。
従来のリチウムイオン二次電池では、負極と正極との対向部において、集電体表面に活物質非堆積部が存在すると、電池充電反応時に、集電体の活物質非堆積部にリチウムが析出する可能性がある。リチウムが析出すると、熱安定性の低下や正負極間での内部短絡の要因となり得る。これに対し、本実施形態のリチウムイオン二次電池300によると、集電体表面の活物質非堆積部上に抵抗層を形成することにより、集電体上へのリチウム析出反応の抵抗を増大させることができる。その結果、リチウム析出が生じにくく、安全性を向上させることができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池300は、図22に示す負極200を備えるが、代わりに図23を参照しながら前述した負極202を備えていてもよく、同様の効果が得られる。
なお、図24および図25では、積層型のリチウムイオン二次電池の一例を示したが、本実施形態のリチウム二次電池用負極は、スパイラル型(捲回型)の極板群を有する円筒型電池や角型電池などにも適用できる。積層型電池では、正極と負極とを3層以上に積層してもよい。ただし、全ての正極活物質層が負極活物質層と対向し、かつ、全ての負極活物質層が正極活物質層と対向するように、両面もしくは片面に正極活物質層を有する正極と、両面もしくは片面に負極活物質層を有する負極とを用いる。集電体の両面に活物質層を有する負極を用いる場合には、集電体の何れの表面においても、活物質と接していない部分に抵抗層を設けることが好ましい。
次に、本実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下の実施例は本実施形態を限定するものではない。
(実施例および比較例−4)
本実施例では、塗工法で形成された活物質層を有する集電体に抵抗層を形成して電極7を作製した。また、比較のため、抵抗層を有さない電極Dを作製した。さらに、実施例の電極7および電極Dを用いた電池の特性を評価し、比較を行ったので、電極および電池の作製方法、電池の評価方法およびその結果を説明する。
(i)電極の作製
(i−1)電極7
まず、活物質を含むペーストを作製した。本実施例では、活物質としてリチウムを吸蔵、放出可能な鱗片状黒鉛(活物質)を100重量部、結着剤としてSBRの水溶性ディスパージョンを固形分で1重量部、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1重量部に、溶剤として水を加え、混練分散させることによってペーストを得た。
次いで、厚さが10μmの銅箔を集電体として用い、上記ペーストを集電体上に塗着した。続いて、110℃の温度で30分間乾燥した後、圧延を行い、活物質層を得た。得られた活物質層の厚さは70μmであった。
この後、活物質層が形成された集電体を直径が12.5mmの円形に成形し、実施例1と同様に、活物質層の端部(幅:2mm)を剥離して集電体表面を露出させた。
次いで、大気中、200℃の温度で1時間のアニール処理を行い、集電体の露出部分を酸化することによって酸化銅からなる抵抗層を形成した。このようにして、評価実験用の電極7を得た。電極7の構成は、図21(a)および(b)を参照しながら説明した構成と同様である。
(i−2)電極D
電極7と同様の方法で、集電体上に塗工法により活物質層を形成し、活物質層の端部(幅:2mm)を剥離して集電体表面を露出させた。アニール処理は行わなかった。このようにして、抵抗層を有さない電極Dを得た。
(ii)試験電池No.7および試験電池Dの作製
上記電極7および電極Dを用いて、前述の実施例および比較例−3における試験電池の作製方法と同様の方法でコイン型電池を作製し、それぞれ、試験電池No.7および試験電池Dとした。
(iii)試験電池の評価方法および結果
試験電池No.7および試験電池Dに対して、前述の実施例および比較例−3における評価方法と同様の方法で充放電試験を行い、リチウム析出の有無を確認した。
この結果、試験電池No.7に使用された電極7にはリチウムの析出は確認されなかったが、試験電池Dの電極Dにはリチウムが析出していた。従って、集電体の露出表面に抵抗層を形成することにより、集電体の表面に対するリチウム金属の析出を抑制でき、リチウム析出による正負極の短絡及び熱安定性の低下を抑制できることがわかった。
本発明は、様々な形態のリチウム二次電池に適用することができるが、特に、高容量および良好なサイクル特性が要求されるリチウム二次電池において有用である。本発明を適用可能なリチウム二次電池の形状は、特に限定されず、例えばコイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型などの何れの形状でもよい。また、正極、負極およびセパレータからなる極板群の形態は、捲回型でも積層型でもよい。電池の大きさは、小型携帯機器などに用いる小型でも電気自動車等に用いる大型でもよい。
本発明のリチウム二次電池は、例えばPC、携帯電話、PDAなどの携帯情報端末、携帯電子機器、ビデオレコーダーやメモリーオーディオプレーヤーなどのオーディオビジュアル機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源に用いることができるが、用途は特に限定されない。
11 集電体
12 凸部
13 凹部
14、26’、28’ 柱状体
16 蒸着層
18、26、28 活物質体
20 活物質層
22 蒸発源
90 抵抗層
110 集電体(負極集電体)
112 活物質層(負極活物質層)
112a 集電体表面のうち活物質と接していない領域
114 抵抗層
116 開口部
118 空隙
120 膨れ部
122、125 活物質体
124 空間
130 正極集電体
132 正極活物質層
140 正極
144 セパレータ
145 外装ケース
146 正極リード
147 負極リード
148 樹脂材料
151 集電体
154 固定台
155 ターゲット
200、201、202、203 負極
300 リチウムイオン二次電池
600 蒸着装置

Claims (12)

  1. (A)表面に複数の凸部を有する集電体を用意する工程と、
    (B)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、前記複数の凸部上に、対応する複数の柱状体を形成する工程と、
    (C)前記複数の柱状体を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む複数の活物質体を形成する工程と
    を包含するリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  2. 前記工程(C)は、前記複数の柱状体が形成された集電体に対して、酸化雰囲気中で加熱処理を行う工程を含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  3. 前記集電体は主成分として金属を含み、
    前記工程(B)は、前記複数の柱状体のうち隣接する柱状体の間において、前記集電体の表面の一部が露出するように、前記蒸発させた蒸着原料を前記集電体の表面に堆積させる工程であり、
    前記工程(C)は、前記集電体の前記露出した表面を酸化させることにより、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層を形成する工程を含む請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  4. 前記工程(B)は、圧力が0.1Pa以下のチャンバ内で行われる請求項1から3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  5. 前記原料はケイ素を含み、前記活物質体はケイ素酸化物を含む請求項1から4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  6. 前記活物質体のケイ素量に対する酸素量のモル比xの平均値は0.5より大きく、かつ、1.5未満である請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  7. 前記集電体は銅を含み、前記抵抗層は銅を含む酸化物からなる請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  8. 前記加熱処理の温度は100℃以上600℃以下である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  9. (a)主成分として金属を含む集電体の表面に複数の柱状体を間隔を空けて形成し、前記複数の柱状体の前記間隔において前記集電体の表面の一部を露出させる工程と、
    (b)前記複数の柱状体が形成された集電体に対して、酸化雰囲気中で加熱処理を行うことにより、前記複数の柱状体を酸化させて複数の活物質体を形成するとともに、前記集電体の前記露出した表面を酸化させて前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層を形成する工程と
    を包含するリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  10. (A)表面に複数の凸部を有する集電体を用意する工程と、
    (a1)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、各凸部上に第1柱状部分を形成する工程と、
    (a2)前記第1柱状部分を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む第1部分を形成する工程と、
    (b1)前記集電体の表面の法線に対して傾斜した方向から、蒸発させた原料を入射させることにより、前記第1部分上に第2柱状部分を形成する工程と、
    (b2)前記第2柱状部分を酸化させることにより、前記原料の酸化物を含む第2部分を形成する工程と
    を包含し、これによって、前記各凸部上に、前記第1および第2部分を含む活物質体を形成するリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  11. 請求項1から10いずれかに記載の方法により製造されたリチウム二次電池用電極。
  12. 表面に複数の凸部を有する集電体と、
    前記複数の凸部上に間隔を空けて支持された複数の活物質体と、
    前記複数の活物質体のうち隣接する活物質体の間に配置され、前記集電体の材料よりも比抵抗の高い抵抗層と
    を備え、
    前記集電体は主成分として金属を含んでおり、前記抵抗層は前記金属の酸化物を含んでいるリチウムイオン二次電池用電極。
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