JP2010182620A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】ケイ素を含む負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、充電による負極板の伸びに起因する内部短絡を防止する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池は、正極板14と負極板16とが捲回または積層された電極群18と、内部に空間を有する電池外装体11とを備え、電極群18および電解液は電池外装体11の空間に収容されており、負極板16は、複数の凸部を表面に有する負極集電体と、複数の凸部上にそれぞれ形成された活物質体を含む負極活物質層とを有し、活物質体はケイ素を含む。負極板16は、初充電によって負極集電体の表面と平行な方向に伸び、初充電を行う前の負極板16の第1方向に沿った幅をA1、電池外装体11の空間の第1方向に沿った長さをC1、初充電による負極板16の第1方向に沿った伸び率をB1%(B1>0)とすると、負極板16の初充電前の幅A1は、A1×(1+B1/100)<C1を満足する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ケイ素を含む負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が増大している。上記のような用途に用いられる電池には、高いエネルギー密度が要求される。このような要求に対して、リチウムイオン二次電池が注目され、その正極および負極のそれぞれにおいて、より高容量の活物質の開発が行われている。なかでも、非常に大きな容量が得られる活物質として、ケイ素(Si)もしくは錫(Sn)の単体、酸化物または合金が有望視されている。
しかしながら、これらの活物質を含む活物質層を集電体表面に形成することによってリチウムイオン二次電池用の負極を構成すると、充放電の繰り返しに伴って負極の変形が生じるという問題がある。
活物質としてカーボンを用いた従来の負極では、活物質層は、リチウムの吸蔵・放出に伴って厚さ方向に10%程度膨張・収縮する。このとき、集電体に平行な方向にはほとんど膨張・収縮しないため、負極が変形(塑性変形)するという問題はほとんど生じなかった。
これに対し、ケイ素やケイ素酸化物などの活物質は、リチウムイオンと反応する際に大きな体積変化を生じるため、充放電の際、活物質に対するリチウムイオンの挿入および脱離の反応によって活物質が大きく膨張・収縮する。その体積膨張率は例えば300倍である。このため、充放電を繰り返すと、負極に大きな応力が発生し、負極板が、活物質層の厚さ方向のみでなく、集電体と平行な方向にも膨張する。本明細書では、集電体と平行な方向に沿った負極板の膨張を「負極板の伸び」と称し、活物質層の厚さ方向に沿った膨張と区別する。負極板が伸びると、集電体にしわが生じたり、集電体が切れたりするおそれがある。集電体にしわが生じると、負極とセパレータとの間に空間が生じて、充放電反応が不均一になり、電池の特性を局部的に低下させるおそれがある。
このような問題を解決するために、上記のような活物質を含む活物質層(負極活物質層ともいう。)に、応力を緩和するための空隙を設けることが提案されている。特許文献1および特許文献2は、活物質からなる複数の柱状体が集電体上に配列された負極を提案している。このような柱状体は、集電体上に活物質の膜を形成し、これをフォトリソグラフィーによりパターニングすることによって形成される。または、メッキ技術を用いて集電体上に選択的に活物質を堆積させることによって形成される。この構成によると、柱状体間の空隙を埋めるように柱状体が膨張するので、膨張応力による電極特性の低下を抑えることができる。ただし、柱状体を形成する際にパターニング工程を行う必要があり、量産プロセスに適用することは困難である。
一方、本出願人による特許文献3および特許文献4には、集電体表面の法線方向に対して傾斜した長軸を有する柱状の活物質体を集電体表面に形成することを提案している。この構成によると、活物質体間にケイ素の膨張応力を緩和する空間を確保できるので、負極の変形を抑えることができ、サイクル特性の劣化を抑制できる。このような活物質体は、表面に凹凸パターンが形成された集電体上に、酸素を含む雰囲気下で、集電体の法線方向に対して傾斜した方向からケイ素粒子を蒸着させることによって得られる(斜め蒸着)。このとき、集電体上に成長したケイ素酸化物の影となる部分にはケイ素粒子が蒸着されないので(シャドウイング効果)、集電体表面に体積膨張を吸収する隙間を確保しつつ、ケイ素酸化物を成長させることができる。このように、特許文献3および特許文献4に提案された負極の形成方法では、斜め蒸着を行うことにより、シャドウイング効果を利用して活物質体が形成されるので、特許文献1および特許文献2に記載されているようなパターニング工程を行う必要がない。
特開2004−127561号公報 特開2003−303586号公報 国際公開第2007/015419号パンフレット 国際公開第2007/052803号パンフレット
しかしながら、本発明者が検討したところ、負極活物質層に応力を緩和するための空隙を設けることによって、活物質の膨張応力を緩和できるものの、膨張した活物質体同士の衝突による負極板の伸びを確実に防止することは困難であることがわかった。負極板は、電池外装体(電池ケース)内部の所定の空間(内部空間)に収容されているが、充電によって負極板が内部空間のサイズ以上に伸びてしまうと、電池外装体の極性の異なる部品に接触する可能性がある。この結果、内部短絡が発生し、電池機能が消失するおそれがある。
この問題をより具体的に説明する。電池外装体の内部空間には、負極板および正極板をセパレータを介して積層または捲回した電極群が収容される。内部空間は、封口板によって封じられる。この封口板および電池外装体は、例えば電極群の正極に電気的に接続されており、正の極性を有している。従って、充電によって伸びた負極板が封口板や電池外装体の内壁に触れると、内部短絡が生じてしまう。
内部短絡の問題は、高容量のリチウムイオン二次電池において特に顕著である。リチウムイオン二次電池の充放電容量を高めようとすると、負極板に含まれる負極活物質の量を多くする必要がある。従って、電池外装体に収容される負極板の面積や高さを可能な限り大きくすることが重要である。さらに、負極活物質の量を確保するためには、ケイ素を含む負極活物質を用いることが好ましい。上述したように、ケイ素を含む活物質の体積膨張率は極めて大きいため、活物質体同士の衝突による負極板の伸びを抑えることは難しい。従って、充放電容量を確保しつつ、負極板の伸びによる内部短絡を防止することは困難である。
なお、負極板の伸びは塑性変形であるため、一旦伸びてしまった後は、放電を行っても収縮しない。すなわち、負極板の伸びは、リチウムイオン二次電池を構成した後の最初の充電時にのみ生じる。本明細書では、負極板に伸びが生じる最初の充電を「初充電」と称して、負極板が伸びてしまった後に行われる充電と区別する。また、「初充電」は、リチウムイオン二次電池の通常の充放電動作において、負極板の伸びが最大になるまでの充電を指し、1回とは限らない。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、リチウムイオン二次電池において、初充電による負極板の伸びに起因する内部短絡を防止して信頼性を向上させることにある。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して捲回または積層された電極群と、リチウムイオン伝導性を有する電解液と、内部に空間を有する電池外装体とを備え、前記電極群および前記電解液は前記電池外装体の前記空間に収容されているリチウムイオン二次電池であって、前記負極板は、互いに間隔を空けて配列された複数の凸部を表面に有する負極集電体と、前記複数の凸部上にそれぞれ形成された活物質体を含む負極活物質層とを有しており、前記活物質体はケイ素を含み、前記負極板は、初充電によって前記負極集電体の表面と平行な方向に伸び、前記負極板の幅と平行な方向を第1方向とし、前記初充電を行う前において、前記負極板の第1方向に沿った幅をA1、前記電池外装体の前記空間の前記第1方向に沿った長さをC1とし、前記初充電による前記負極板の前記第1方向に沿った伸び率をB1%(B1>0)とすると、前記負極板の前記初充電前の幅A1は、A1×(1+B1/100)<C1を満足する。
ある好ましい実施形態において、前記負極集電体は、前記第1方向に亘って前記負極活物質層が形成されていない無地部を有しており、前記初充電前の幅A1は、初充電後における前記無地部の幅と略等しい。
ある好ましい実施形態において、前記正極板は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層を有しており、前記電極群において、前記負極活物質層と前記正極活物質層とが前記セパレータを介して対向するように捲回または積層されており、前記負極板は、前記第1方向に亘って前記正極活物質層と対向していない部分を有し、前記初充電前の幅A1は、初充電後における前記負極板の前記対向していない部分の幅と略等しい。
好ましくは、前記初充電による前記負極板の前記第1方向に沿った伸び率B1%は0.8%以上4.0%以下である。
ある好ましい実施形態において、前記初充電を行う前、隣接する活物質体の間には空隙が形成されており、前記負極集電体の表面に平行な平面上において、任意の方向における前記負極活物質層に占める前記空隙の割合の最小値は5%以上15%以下である。
前記初充電前の幅A1および初充電後の前記負極板の前記第1方向に沿った幅Aa1は、いずれも、前記正極板の前記第1方向に沿った幅よりも大きく、前記セパレータの前記第1方向に沿った幅よりも小さいことが好ましい。
ある好ましい実施形態において、前記電極群において、前記正極板と前記負極板とは捲回されており、前記電池外装体の前記空間の長さC1は、前記電池外装体の内部有効高さである。
ある好ましい実施形態において、前記電極群において、前記正極板と前記負極板とは積層されており、前記初充電を行う前において、前記負極板の前記第1方向と直交する第2方向に沿った幅をA2、前記初充電による前記負極板の前記第2方向における伸び率をB2%(B2>0)、前記電池外装体の前記空間における前記第2方向に沿った長さをC2とすると、前記負極板の前記裁断幅A2は、A2×(1+B2/100)<C2を満足する。
前記活物質体の成長方向は、前記負極集電体の法線方向に対して傾斜していてもよい。
前記活物質体は、前記負極集電体の表面に積み重ねられた複数の層を有し、前記複数の層のそれぞれの成長方向は、前記集電体の法線方向に対して交互に反対方向に傾斜していてもよい。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池用電極において、初充電による負極板の伸 び量を考慮して、初充電前の負極板の幅が設定されているので、充電によって伸びた負 極板と、電池外装体に設けられた極性の異なる部品とが接触することによって生じる内 部短絡を防止できる。従って、信頼性の高いリチウムイオン二次電池を提供できる。
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明によるリチウムイオン二次電池の第1実施形態を説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、捲回型の電極群を有する二次電池である。以下では、角型電池を例に説明するが、円筒型電池であってもよい。
図1は、本実施形態の二次電池の構成を例示する概略図である。電池100は、電極群18と、これを収容するアルミニウム製の電池外装体11とを有する。電極群18は、電池外装体11の内部に設けられた空間(内部空間)に収容されている。電池外装体11の開口は、負極端子12tを有する封口板12で塞がれている。内部空間における有効高さC1は、電池100の外寸の高さよりも、封口板12の厚さ、電池外装体11の厚さおよび端子取り出し用の部品(図示せず)の高さなどの分だけ小さくなる。
電極群18は、帯状の正極板14と帯状の負極板16とが、それらの間に配置されたセパレータ15とともに捲回された構成を有している。電極群18は、正極板14および負極板16の幅方向が、電池外装体11の内部空間の高さC1に沿った方向と平行になるように収容されている。ここでいう負極板16の「幅方向」とは、帯状の負極板16における長手方向ではなく、短い方の幅に沿った方向を指す。電極群18には、リチウムイオンを伝導する電解質(図示せず)が含浸されている。負極端子12tは、電極群18の負極板16に設けられた負極リード(図示せず)と電気的に接続されている。一方、電極群18の正極板14は、電池外装体11の内壁および封口板12と電気的に接続されている。従って、電池外装体11および封口板12は正極となる。
図2は、本実施形態における負極板16を例示する断面図である。負極板16は、負極集電体24と、複数の活物質体27を含む負極活物質層26とを有している。負極集電体24の表面には、複数の凸部25が互いに間隔を空けて配列されており、各活物質体27は、対応する凸部25の上にそれぞれ形成されている。活物質体27はケイ素を含んでおり、リチウムを吸蔵すると膨張し、リチウムを放出すると収縮する。
リチウムイオン二次電池に対する最初の充電(初充電)によって活物質体27が膨張すると、負極板16は、負極集電体24の表面の法線方向、すなわち活物質体27の高さ方向(活物質体27が積層構造を有する場合には、その積層方向)に膨張するとともに、活物質体27同士の接触によって、負極集電体24の表面と平行な方向にも伸びる。この後、放電を行うと、活物質体27は収縮するが、負極集電体(例えば銅などの金属箔)24は一旦伸びると収縮しない。従って、初充電を行った後のリチウムイオン二次電池の負極板16の幅は、初充電を行う前の幅よりも大きくなる。
ここで、図面を参照しながら、初充電前および初充電後における電極群18の構成を説明する。
図3(a)および(b)は、初充電を行う前の、本実施形態における電極群18の構成を説明するための上面図および断面図である。ここでは、わかりやすさのため、捲回されていない状態の正極板14、セパレータ15および負極板16の一方の端部のみを示している。
図示するように、正極板14と負極板16とが、セパレータ15を介して配置されている。正極板14は、正極集電体20およびその表面に形成された正極活物質層22を有している。負極板16は、図2を参照しながら前述したように、負極集電体24および負極活物質層26を有している。電極群18では、正極活物質層22と負極活物質層26とがセパレータ15を介して対向するように配置されている。
ここで、電池外装体11の内部空間の高さC1(図1)に沿った方向をd1とすると、方向d1に沿った正極板14の幅E1は、負極板16の幅A1よりも小さい。また、セパレータ15の方向d1に沿った幅F1は、正極板14の幅E1および負極板16の幅A1よりも大きい(F1>A1>E1)。セパレータ15の幅F1は、電池外装体11の内部有効高さC1以下になるように設計されている。一般的には、内部有効高さC1よりも加工精度(公差)を考慮した分だけ小さくなるように設計されている。
図3(a)および(b)に示す電極群18を有するリチウムイオン二次電池を製造し、初充電を行うと、負極活物質層26の活物質体が膨張し、負極板16が負極集電体24と平行な方向に伸びる。
図4は、初充電によって負極板16が伸びた後の電極群18の構成を説明するための上面図である。図4でも、わかりやすさのため、捲回されていない状態の正極板14、セパレータ15および負極板16aを示している。
図4からわかるように、正極板14の幅E1、およびセパレータ15の幅F1は、初充電を行う前の幅とほぼ等しい。これに対し、初充電後の負極板16aの幅Aa1は、初充電を行う前の負極板16の幅A1よりも大きくなる。ただし、初充電後の幅Aa1は、セパレータ15の幅F1および電池外装体11の内部有効高さC1よりも小さい。
このように、本実施形態では、初充電によって伸びた負極板16aの幅Aa1が電池外装体11の内部有効高さC1よりも小さくなるように、初充電前の負極板16の幅A1が設定されている。すなわち、初充電による負極板16の方向d1に沿った伸び率をB1%(B1=(初充電後の幅Aa1−初充電前の幅A1)/初充電前の幅A1)とすると、負極板16の初充電前の幅A1は下記式(1)を満足する。
1×(1+B1/100)<C1 (1)
一方、負極板16の初充電後の幅Aa1(=A1×(1+B1/100))が小さすぎると、充放電容量を確保できないおそれがある。従って、初充電後の幅Aa1は、例えば内部有効高さC1の95%以上、より好ましくは97%以上であることが好ましい。また、充電後の負極板の幅と内部有効高さとの差が1.2mm以下であることが好ましい。
本実施形態によると、負極板16の充電による伸び量を考慮して、負極板16の初充電前の幅A1を設定するので、負極板16が膨張によって面方向に伸び、その結果、初充電後の負極板16が電池外装体11に設けられた極性の異なる部品(本実施形態では、電池外装体11自体)に接することによって、内部短絡が生じることを防止できる。
従来は、内部有効高さC1、初充電前のセパレータ15の幅F1、負極板16の幅A1、正極板14の幅E1のそれぞれの差は加工精度(公差)のみで決められ、例えば1.0〜1.2mm程度であった。これに対し、本実施形態によると、初充電前の負極板16の幅A1が伸び率B1に応じて従来よりも小さくなるので、負極板16の幅A1とセパレータ15の幅F1との差は従来よりも大きくなる。
本実施形態における負極板16は、例えば、帯状の負極集電体の表面に負極活物質層を形成した後、負極集電体を所定の幅に裁断することによって製造される。このような場合、上記裁断幅が初充電前の負極板16の幅A1となる。なお、負極板16を製造する際に、負極活物質層26にリチウムを添加しておく場合もあるが、通常リチウムの添加量は僅かであり、このような添加によって負極板16の幅A1(裁断幅)は実質的に伸びない。
本実施形態では、負極板16の長手方向の端部に位置する負極活物質層26は正極活物質層22(図2)と対向していない。このため、負極板16の上記端部にはリチウムがほとんど吸蔵されず、その結果、負極板16aの端部の幅は図3(a)に示す初充電前の負極板16の幅A1と略等しくなる。従って、初充電前の幅A1が上記式(1)を満足しているかどうかは、初充電後の負極板16aから判断することができる。
上記式(1)における負極板16の伸び率B1はゼロよりも大きくなる(B1>0)。前述したように、本実施形態では、ケイ素を含む負極活物質を用いるので、充電による活物質体の体積膨張率が極めて高い。このため、活物質体の間に空隙を設けるのみでは、膨張した活物質体同士の衝突による負極板16の伸びを確実に防止することは困難だからである。また、伸び率B1が実質的にゼロであれば、充放電容量を十分に確保できない可能性がある。例えば、活物質体同士の衝突を防止できる程度まで空隙の割合を増大させ、伸び率B1を実質的にゼロにしようとすると、空隙の割合が極めて大きくなる。この結果、負極板16に含まれる負極活物質の量が減少して電池100の充放電容量が大幅に低下してしまう。
本実施形態による負極板16の伸び率B1は0.8%以上であることが好ましい。伸び率B1が0.8%未満では、内部短絡は生じ難いが、充放電容量を確保できない場合がある。同様の理由から、負極板16の伸び量(初充電後の幅Aa1−初充電前の幅A1)は1.0mm以上であることが好ましい。一方、伸び率B1は4.0%以下であることが好ましい。これにより、負極板16の大幅な変形(坐屈など)による電池特性の低下を抑制できる。また、このような大きな伸び率B1を考慮して負極板16の幅A1を決定すると、負極板16のサイズが小さくなりすぎて、結果的に充放電容量を確保できない可能性があるからである。
上記では、電池外装体11が正極の場合を例に説明したが、電池外装体11が負極の場合でも同様である。その場合、負極板16が伸びて、正極板14に接続された部品(正極リードなど)に接触することによる内部短絡を防止できる。
本実施形態における電極群18の構成は、図2〜図4を参照しながら前述した構成に限定されない。例えば、負極集電体24は、方向d1に亘って負極活物質層26が形成されていない無地部を有していてもよい。無地部は、負極板16のリード接続部としてリードの溶接に使用することができる。
以下、図5および図6を参照しながら、負極集電体24が無地部を有する場合の負極板16の構成を説明する。図5(a)および(b)は、初充電を行う前の負極板の一部を例示する上面図および断面図であり、図6は、初充電後の負極板の一部を例示する上面図である。簡単のため、図3および図4と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図5(a)および(b)からわかるように、負極集電体24は、負極活物質層26が形成されていない部分(無地部)28を端部に有している。無地部28は、例えば負極リードを取り出すために使用される。負極板16の長手方向に沿った無地部28の長さWは適宜選択される。例えば負極タブリードの幅(例えば2mm)以上である。一方、長さWが大きくなりすぎると、容量の低下を引き起こすため、例えば負極板16の幅A1の2倍以下であることが好ましい。このような負極板16を用いてリチウムイオン電池を構成し、初充電を行うと、図6に示すように、初充電後の負極板16aの無地部28以外の部分では、負極活物質層26の膨張応力により負極集電体24と平行な方向である方向d1に伸び、その幅Aa1は、初充電前の幅A1よりも大きくなる。これに対し、無地部28では、負極活物質層26の膨張による応力が小さく、負極集電体24と平行な方向にほとんど伸びない。このため、初充電後における無地部28の幅は、初充電前の負極板16の幅A1と略等しくなる。
図5および図6に示す構成でも、初充電による負極板16の方向d1に沿った伸び率をB1%(B1=(初充電後の幅Aa1−初充電前の幅A1)/初充電前の幅A1)とすると、A1×(1+B1/100)<C1を満足するように、負極板16の初充電前の幅A1が設定されている。これにより、上記と同様に、内部短絡を防止する効果を得ることができる。なお、初充電前の負極板16の幅A1は初充電後における無地部28の幅は略等しいので、初充電後の負極板16aから、初充電前の負極板16の構成が上記式を満足しているかどうかを判断することができる。
(第2実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明によるリチウムイオン二次電池の第2実施形態を説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、積層型の電極群を有するリチウムポリマー電解質イオン二次電池である。ポリマー電池では、電解液の代わりにポリマー電解質(真性ポリマー電解質またはゲルポリマー電解質)を使用している。
図7は、本実施形態の二次電池における電池外装体の内部空間と、内部空間に収容される電極群とを模式的に示す概略図である。
電池200は、電極群33と、これを収容する電池外装体30と、封口板35とを有する。電極群33は、セパレータを介して正極板と負極板とが積層された構成(積層数:例えば20層以下)を有している。正極板および負極板の構成は、第1実施形態で前述した構成と同様である。電極群33は、電池外装体11の内部に設けられた空間(内部空間)32に収容されている。封口板35は、内部空間32に電極群33を収容した後、内部空間32を封じるように電池外装体32の上に配置される。
本実施形態では、電極群33および内部空間32は、極板の法線方向から見て長方形または正方形の形状を有している。内部空間32における一方の辺に沿った方向をd1、方向d1と直交する方向をd2とすると、電極群33に含まれる負極板は、初充電によって方向d1および方向d2に沿って伸び、電池外装体30の極性の異なる部品に接するおそれがある。このため、負極板の方向d1、d2に沿った伸び量を考慮して、初充電前の負極板の方向d1、d2に沿った幅を設定することが好ましい。
具体的には、電池外装体30の内部空間32の方向d1、d2に沿った長さ(有効長さ)をそれぞれC1、C2とし、初充電前の負極板の方向d1、d2に沿った幅をA1、A2、初充電による負極板の方向d1、d2における伸び率をB1、B2%(B1、B2>0)とすると、初充電前の負極板の幅A1、A2は、下記式(1)および(2)の両方を満足することが好ましい。これにより、初充電によって負極板が伸びることによる内部短絡をより効果的に防止できる。
1×(1+B1/100)<C1 (1)
2×(1+B2/100)<C2 (2)
ただし、初充電前の負極板の幅A1、A2は、上記式(1)および(2)のうち少なくとも一方の式を満足するように設定されていればよい。これにより、負極板の伸びによる内部短絡を防止する効果を得ることができる。
また、前述の実施形態と同様に、負極板16の初充電後の幅Aa1およびAa2は、それぞれ、内部有効高さC1、C2の95%以上、より好ましくは97%以上であることが好ましい。これにより、高い充放電容量を得ることができる。
図8(a)および(b)は、それぞれ、本実施形態における初充電前および初充電後の電極群の一例を示す上面図である。上述したように、本実施形態における電極群は、正極板および負極板がセパレータ(ポリマー電解質)を介して複数回積層された構成を有するが、図8では、電極群に含まれる正極板および負極板の配置および形状を説明するために、正極板および負極板をそれぞれ1枚ずつ示し、セパレータを省略する。
図8(a)に示すように、初充電前の電極群は、所定の形状(ここでは長方形または正方形)に裁断された負極板16および正極板14を有している。負極板16の方向d1に沿った幅をA1、方向d2に沿った幅をA2とする。幅A1、A2は、正極板14における方向d1、d2に沿った幅よりも大きく、セパレータ(図示せず)における方向d1、d2に沿った幅よりも小さい。従って、負極板16の周縁部は、正極板14と対向していない。
このような電極群を用いてリチウムイオン二次電池を構成し、初充電を行うと、負極板16は、負極板16と平行な方向に伸びるが、正極板14はほとんど伸びない。初充電後の負極板16aでは、図8(b)に示すように、方向d1、d2に沿った幅Aa1、Aa2は、初充電前の負極板16の幅A1、A2よりも大きくなる。ただし、負極板16aのうち正極板14と対向していない部分はほとんど伸びていない。このため、負極板16aの周縁部における方向d1、d2に沿った幅は初充電前の幅A1、A2と略等しくなる。
本実施形態では、初充電後の負極板16aの幅Aa1、Aa2が、それぞれ、方向d1およびd2に沿ったセパレータ15の幅および内部空間の有効長さC1、C2(図7)よりも小さくなるように、すなわち上記の式(1)および(2)を満足するように、初充電前の負極板16の幅A1、A2を設定する。ここで、初充電前の幅A1、A2は負極板16aの周縁部における方向d1、d2に沿った幅と略等しいので、上記の2つの式(1)および(2)を満足するかどうかは、初充電後の負極板16aの形状のみによって判断することが可能である。
なお、本実施形態における負極板16は、正極板14と対向しない部分を有していなくてもよい。そのような場合でも、負極板16の周縁に少なくとも一つの辺に沿って無地部が形成されていれば、無地部は充電によってほとんど伸びないので、初充電後の負極板16aにおける無地部の幅から、無地部の幅方向に沿った初充電前の負極板16の幅および伸び率を得ることができる。例えば負極板16における方向d1に沿った辺に無地部が形成されている場合には、図6を参照しながら前述したように、初充電後の方向d1に沿った幅Aa1は、無地部の方向d1に沿った幅よりも大きくなる。無地部の方向d1に沿った幅は、初充電前の幅A1と略等しい。さらに、本発明者が検討したところ、方向d1に沿った伸び率B1および方向d2に沿った伸び率B2は互いに略等しくなる。よって、無地部が負極板16の一辺のみに沿って形成されている場合でも、互いに直交する2方向d1、d2に沿った伸び率B1、B2を求めることができる。従って、初充電後の負極板16aの形状から、初充電前の負極板16の幅A1、A2が上記2つの式を満足するかどうかを判断することが可能である。なお、無地部が、負極板16の一辺の一部のみに形成されている場合もある。この場合には、無地部と、無地部に隣接した活物質層が形成された部分との境界の伸び(変形)から、伸び率を求め、伸び率から初充電前の幅を算出できる。
一般に積層型のリチウム二次電池では、電極群18の積層数によって電池容量を調整できる。また、電池形状も高い自由度で設計できる。従って、本実施形態における電極群33の積層数は上記に限定されない。また、電極群18の形状も長方形または正方形に限定されない。どのような形状であっても、互いに直交する2つの方向に沿った伸び量を考慮して、初充電前の負極板の幅が設定されていると、上記と同様の効果が得られる。
<負極板の構成>
以下、上述した第1および第2実施形態で用いられる負極板の構成をより具体的に説明する。何れの実施形態でも、初充電前の負極板の負極活物質層は複数の活物質体を含んでおり、隣接する活物質体の間には空隙が形成されていることが好ましい。
図9(a)および(b)は、リチウムを吸蔵していない状態の負極板の一例を示す模式的な断面図および上面図である。
負極板1000は、表面に複数の凸部112を有する負極集電体111(以下、単に「集電体111」とする。)と、集電体111の表面に形成された負極活物質層115(以下、単に活物質層115」とする。)とを備える。複数の凸部112は、集電体111の表面に互いに間隔を空けて規則的に配列されている。「規則的に配列されている」とは、隣接する凸部112の間隔が所定の距離以上になるように調整されていればよく、金属箔に対する粗化処理によって形成された表面凹凸を含まない概念である。なお、複数の凸部112は、等間隔に配置されていなくてもよい。また、これらの凸部112は略同一の形状を有していなくてもよく、凸部112の幅や高さが互いに異なっていてもよい。典型的には、凸部112は格子状(千鳥格子状を含む)に配列されている。
活物質層115は、複数の凸部112の上にそれぞれ形成された活物質体114を有している。隣接する活物質体114の間には空隙116が形成されている。ここで、「活物質体114」は、各凸部112の上に支持された活物質から構成された柱状体を指す。また、「空隙116」は、リチウムを吸蔵していない状態の活物質体114の間に形成された空隙を指し、活物質体114の内部に含まれる空隙(例えば活物質体114の割れなど)は含まない。なお、図示する例では、各凸部112上に1つの活物質体114が支持されているが、2以上の活物質体114が支持されていてもよい。
活物質体114の成長方向Sは、集電体111の法線方向Dに対して傾斜している。法線方向Dに対して傾斜した成長方向Sを有する活物質体114は、例えば、酸素ガスが導入されたチャンバー内で、集電体111の表面に、集電体111の法線方向Dに対して傾斜した方向からケイ素を入射することによって形成できる(斜め蒸着)。なお、集電体111の法線方向Dは、集電体11の表面における凹凸を平均化して得られる仮想的な平面に対して垂直な方向をいうものとする。
図示する例では、各活物質体114は集電体111の表面に積み重ねられた複数の層を有し、複数の層のそれぞれの成長方向Sは、集電体の法線方向Dに対して交互に反対方向に傾斜している。このような活物質体114は、例えば蒸着方向を変化させて複数段階の蒸着を行うことによって形成できる。活物質層114を構成する層の数は、蒸着段数によって決まる。
図示する例では、各活物質体114は集電体111の表面に対して略直立した柱状であるが、成長方向Sに対応したジグザグ形状を有する場合もある。また、活物質体114は、一方向のみに傾斜した成長方向Sを有していてもよい。ただし、活物質体114が上述したような複数の層から形成されていると、活物質体114のリチウムイオン吸蔵時の体積膨張によって集電体111にかかる応力をより効果的に緩和できるので有利である。
本実施形態における複数の活物質体114は、図9(b)に示すように、上述した複数の凸部112の配置に対応して規則的に配置されている。複数の活物質体114は互いに接触せず、それらの間には空隙116が存在している。また、集電体111の表面に平行な平面図において、任意の方向(例えば方向118、119、120、121)における活物質層15に占める空隙16の割合(以下、単に「線空隙率」ともいう)は何れも5%以上である。本実施形態では、活物質層115の線空隙率は、集電体111の表面に形成された凸部112の配置やサイズ、活物質体114の蒸着条件などを適宜選択することによって制御され得る。これらの具体的な範囲については後述する。
図示する例では、方向118に沿って複数の活物質体114が配列ピッチL1で配列されており、この方向118に沿って活物質体114同士が最も接近している。すなわち、方向118は、最も接近した2つの活物質体114の距離(最近接距離)L2を規定している。「最近接距離」とは、各活物質体114がリチウムイオンを吸蔵していないときの、集電体111の表面に平行な平面上における隣接する活物質体114間の距離、すなわち隣接する活物質体114間の空隙の幅のうち最小値を指すものとする。このような場合、方向118における線空隙率は(L2/L1)×100(%)で表わされる。
本実施形態では、上述した方向118における線空隙率が、任意の方向における線空隙率の最小値(以下、「最小線空隙率」という)となる。最小線空隙率が5%以上であれば極板変形を抑制する効果が得られる。最小線空隙率が5%未満であれば、活物質体の膨張および収縮により、負極板に挫屈が生じるおそれがある。「挫屈」とは、負極板が長手方向に大きく伸びた結果、波状になることをいう。より好ましくは8%以上であり、これにより、活物質体114同士の接触による負極板の変形をより確実に抑制できる。一方、最小線空隙率は15%以下であることが好ましい。最小線空隙率が15%を超えると、充電容量が低下してしまう。その上、初充電による負極板の伸び量が極めて小さくなるので、内部短絡自体が生じ難くなり、本発明による効果が十分に得られないおそれがある。また、高い充電量を確保しつつ、本発明の効果を顕著に得るためには、任意の方向における線空隙率の平均値が20%以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、「線空隙率」および「最小線空隙率」は、電極1000を作製した後、リチウムを吸蔵させる前の活物質層115の線空隙率および最小線空隙率の平均値を指す。最小線空隙率が8%の電極の場合、充放電を行った後の最小線空隙率は8%よりも小さくなり、例えば6%となる。従って、リチウムを吸蔵させる前の活物質層115の最小線空隙率が8%以上であれば、初回充放電を行った後の最小線空隙率は6%以上となり、その結果、充放電の繰り返しによる電極の変形を抑制できる。なお、初回の充放電を行った際に活物質体114同士が接触して活物質体114が圧縮され、充放電後の最小線空隙率が充放電前よりも大きくなる場合もある。
リチウムを吸蔵させる前または充放電後の線空隙率や最小線空隙率は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて活物質層115の上面を観察することによって求められる。
本実施形態の電極1000では、集電体111と平行な平面上において、任意の方向における活物質層115の線空隙率が5%以上となるように、隣接する活物質体114の間隔(最近接距離)が制御されている。従って、充電状態、特に充電末期状態において、各活物質体114が膨張して隣接する活物質体114に接触することによって、集電体111にかかる応力を大幅に低減できる。その結果、充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本実施形態では、集電体111の表面に規則的に凸部112が配列されており、凸部112の配置(間隔、配列ピッチ)やサイズ(幅、高さなど)を適宜選択することによって、活物質体114の間の空隙116の幅を制御することが可能である。従って、集電体11の表面に平行な平面上の何れの方向においても十分な線空隙率を実現できる。
なお、図10に示すように、各活物質体114は、集電体111の法線方向Dに対して一方向に傾斜した成長方向Sを有していてもよい。このような構成は、集電体111の法線方向Dに対して傾斜した方向から蒸着原料を入射させることによって(斜め蒸着)形成できる。
次に、図面を参照しながら、集電体111における凸部112の好ましい配置やサイズを説明する。
図11(a)および図11(b)は、それぞれ、本実施形態における集電体111の凸部112を例示する模式的な平面図およびXI−XI’断面図である。
図示する例では、凸部112は菱形の上面を有する柱状体であるが、凸部112の形状はこれに限定されない。集電体111の法線方向Dから見た凸部112の正投影像は、正方形、長方形、台形、菱形、平行四辺形、五角形およびホームプレート型などの多角形、円形、楕円形などであってもよい。集電体111の法線方向Dに平行な断面の形状は正方形、長方形、多角形、半円形、およびこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、集電体111の表面に対して垂直な断面における凸部12の形状は、例えば多角形、半円形、弓形などであってもよい。なお、集電体111に形成された凹凸パターンの断面が曲線で構成された形状を有する場合など、凸部112と凸部以外の部分(「溝」、「凹部」などともいう)との境界が明確でないときには、凹凸パターンを有する表面全体の平均高さ以上の部分を「凸部112」とし、平均高さ未満の部分を「溝」または「凹部」とする。「凹部」は、図示する例のように連続した単一の領域であってもよいし、凸部112によって互いに分離された複数の領域であってもよい。さらに、本明細書における「隣接する凸部112の間隔」とは、集電体111に平行な平面上において、隣接する凸部112の間の距離であり、「溝の幅」または「凹部の幅」を指すものとする。
図11に示す集電体111では、菱形の上面を有する凸部112が向きを揃えて配列されており、菱形の長い方の対角線に沿った方向(X方向)の間隔dは、短い方の対角線に沿った方向(Y方向)の間隔eよりも長い。このような集電体111上に斜め蒸着により活物質層を形成する際には、Y方向に沿って蒸着を行うことが好ましい。X方向に沿って蒸着を行うよりもシャドウイング効果が大きく、活物質体の間により確実に空隙を確保できるからである。従って、帯状の負極板を用いて捲回型の電極群を構成する場合、「Y方向」は負極板の長手方向に相当し、「X方向」は負極板の幅方向(図2に示すd1方向)に相当する。
集電体111の平面図(図11(a))において、複数の凸部12の合計面積s1の、複数の凸部112の合計面積s1および凹部の合計面積s2との和に占める割合が10%以上30%以下であることが好ましい(0.1≦{s1/(s1+s2)}≦0.3)。言い換えると、集電体111の表面の法線方向から見て、集電体111の表面の面積に対する複数の凸部112の合計面積s1の割合が10%以上30%以下であることが好ましい。ここでいう「集電体111の表面の面積」は、集電体111の表面の法線方向から見て、集電体111の表面のうち活物質層115が形成される領域の面積を意味し、活物質層115が形成されずに端子として用いる領域などは含まない。
上記割合が10%未満であれば、活物質体114が凸部112以外の領域にも形成される可能性が高くなり、隣接する活物質体114の間に十分な空間を確保できなくなる場合がある。その結果、充電時の活物質体114の膨張を十分に緩和できず、極板の変形を引き起こすおそれがある。一方、上記割合が30%を超えると、隣接する活物質体114の間の空間が不足し、活物質体114の膨張を緩和するための十分な空間を確保できなくなるおそれがある。これに対し、上述したように、上記割合を10%以上30%以下に制御することにより、シャドウイング効果を利用して隣接する活物質体114の間に活物質体114の膨張のための空間をより確実に確保できる。
凸部112の高さHは3μm以上であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。高さHが3μm以上であれば、活物質体112を斜め蒸着で形成する際に、シャドウイング効果を利用して、凸部112の上のみに活物質体114を配置できるので、活物質体114の間に空隙116を確保できる。一方、凸部112の高さHは15μm以下であることが好ましく、より好ましくは12μm以下である。凸部112が15μm以下であれば、電極に占める集電体111の体積割合を小さく抑えることができるので、高いエネルギー密度を得ることが可能になる。
凸部112は、所定の配列ピッチで規則的に配列されていることが好ましく、例えば千鳥格子状、碁盤目状などのパターンで配列されていてもよい。凸部112の配列ピッチ(隣接する凸部112の中心間の距離)は例えば10μm以上100μm以下である。ここで、「凸部112の中心」とは、凸部112の上面における最大幅の中心点を指す。配列ピッチが10μm以上であれば、隣接する活物質体114の間に、活物質体114が膨張するための空間をより確実に確保できる。好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。一方、配列ピッチPが100μm以下であれば、活物質体114の高さを増大させることなく、高い容量を確保できる。好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。図示する例では、凸部112は、3つの方向に沿って配列されており、それぞれの方向における配列ピッチPa、Pb、Pcは何れも上記範囲内であることが好ましい。
また、凸部112の配列ピッチPaに対する凸部112の間隔dの割合は1/3以上2/3以下であることが好ましい。同様に、凸部112の配列ピッチPb、Pcに対する凸部112の間隔e、fの割合も1/3以上2/3以下であることが好ましい。これらの間隔d、e、fの割合が1/3以上であれば、各凸部112の上にそれぞれ活物質体114を形成したときに、凸部112の各配列方向における活物質体114の空隙の幅をより確実に確保できるので、十分な線空隙率が得られる。一方、間隔d、e、fの割合が2/3よりも大きくなると、凸部112の間の溝にも活物質が蒸着されてしまい、集電体111にかかる膨張応力が増大するおそれがある。
凸部112の上面における幅は200μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。これにより、シャドウイング効果を利用して活物質体114の間に十分な空隙を確保することが可能になるので、活物質の膨張応力による電極100の変形をより効果的に抑制できる。一方、凸部112の上面の幅が小さすぎると、活物質体114と集電体111との接触面積を十分に確保できない可能性があるので、凸部112の上面の幅は1μm以上であることが好ましい。特に凸部112が柱状の場合、その上面の幅が小さいと(例えば2μm未満)、凸部112が細くなり、充放電による応力に起因して凸部112が変形しやすくなる。従って、凸部112の上面の幅は、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、これにより、充放電による凸部12の変形をより確実に抑制できる。図示する例では、各配列方向に沿った凸部112の上面の幅a、b、cが、何れも上記範囲内であることが好ましい。
さらに、凸部112が、集電体111の表面に垂直な側面を有する柱状体である場合には、隣接する凸部112の間隔d、e、fは、それぞれ、凸部112の幅a、b、cの30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。これにより、活物質体114の間に十分な空隙を確保して膨張応力を大幅に緩和できる。一方、隣接する凸部112の間の距離が大きすぎると、容量を確保するために活物質層114の厚さが増大してしまうため、間隔d、e、fは、それぞれ凸部112の幅a、b、cの250%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以下である。
凸部112の上面は平坦であってもよいが、凹凸を有することが好ましく、その表面粗さRaは0.1μm以上であることが好ましい。ここでいう「表面粗さRa」とは、日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた「算術平均粗さRa」を指し、例えば表面粗さ計などを用いて測定できる。凸部112の上面の表面粗さRaが0.1μm未満であれば、例えば1つの凸部112の上面に複数の活物質体114が形成された場合に、各活物質体114の幅(柱径)が小さくなり、充放電時に破壊されやすくなる。より好ましくは0.3μm以上であり、これにより、凸部112の上に活物質体114が成長しやすく、その結果、活物質体114の間に十分な空隙を確実に形成できる。一方、表面粗さRaが大きすぎると(例えば100μm超)、集電体111が厚くなり、高いエネルギー密度が得られなくなるので、表面粗さRaは例えば30μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下である。特に、集電体111の表面粗さRaが0.3μm以上5.0μm以下の範囲内であれば、集電体111と活物質体114との付着力を十分に確保できるので、活物質体114の剥離を防止できる。
集電体111の材料は、例えば圧延法、電解法などで作製された銅または銅合金であることが好ましく、より好ましくは、比較的強度の大きい銅合金である。本実施形態における集電体111は、特に限定しないが、例えば銅、銅合金、チタン、ニッケル、ステンレスなどの金属箔の表面に、複数の凸部112を含む規則的な凹凸パターンを形成することによって得られる。金属箔としては、例えば圧延銅箔、圧延銅合金箔、電解銅箔、電解銅合金箔などの金属箔が好適に用いられる。
凹凸パターンが形成される前の金属箔の厚さは、特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であることが好ましい。50μm以下であれば、体積効率を確保でき、また、5μm以上であれば、集電体111の取り扱いが容易となり、引っ張り強度も確保できるからである。
凸部112の形成方法としては、特に限定しないが、例えば金属箔に対してレジスト樹脂等を利用したエッチングを行い、金属箔に所定のパターンの溝を形成し、溝が形成されていない部分を凸部112としてもよい。また、金属箔上にレジストパターンを形成し、電着、メッキ法によって、レジストパターンの溝部に凸部112を形成することもできる。あるいは、パターン彫刻により溝が形成された圧延ローラーを用いて、圧延ローラーの溝を金属箔の表面に機械的に転写する方法を用いてもよい。
本実施形態における活物質体114は、前述したように、集電体111の法線方向Dに対して傾斜した方向Sに沿って成長している。活物質体114の成長方向Sと法線方向Dとのなす角度(傾斜角度)αは5°以上であることが好ましく、より好ましくは10°以上である。良好な密着性を得るためには、活物質体114と集電体111との接触面積が大きい方がよく、すなわち、傾斜角度が0°であればよいが、その場合には、シャドウイング効果が生じないので、隣接する活物質体114の間に隙間を形成することができない。しかしながら、上記角度が5°以上であれば、活物質体114の間に隙間を形成しつつ十分な接触面積を得ることができる。一方、上記傾斜角度αは90°未満であればよいが、90°に近づくほど活物質体114を形成することが困難となる。また、集電体111の表面のうち活物質体114や凸部112によって影となって活物質が堆積しない部分の面積が増加し、電池のハイレート特性を低下させる場合があるため、80°以下であることが好ましく、より好ましくは70°未満である。斜め蒸着によって活物質体114を形成する場合には、活物質体114の傾斜角度αは、活物質体114を形成する際の蒸着角度によって決まる。なお、傾斜角度αは、例えば任意の2〜10個の活物質体114の傾斜角度を測定し、それらの値の平均値を算出することによって求めることができる。
活物質体114の傾斜角度αは、活物質体114の高さとともに変化してもよい。本実施形態のように、活物質体114が成長方向Sの異なる複数の部分を有している場合には、活物質体114における全ての成長方向Sが法線方向Dに対して傾斜しており、その傾斜角度αが何れも10°以上90°未満であることが好ましい。
本実施形態では、活物質層115に占める空隙116の体積の割合(以下、「体積空隙率」という)は10%以上70%以下であることが好ましい。体積空隙率が10%以上であれば、活物質体114の膨張収縮を空隙116によって効果的に吸収できるので、電極1000の変形を低減できる。一方、高容量を確保する観点から、体積空隙率は70%以下であることが好ましい。
活物質層115の厚さtは、活物質体114の高さと等しく、集電体111の凸部112の上面から活物質体114の頂部までの、集電体111の法線方向に沿った距離tを指し、例えば0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上である。これにより、十分なエネルギー密度を確保できるので、ケイ素を含む活物質の高容量特性を活かすことができる。また、厚さtが例えば3μm以上であれば、電極全体に占める活物質の体積割合がより大きくなり、さらに高いエネルギー密度が得られる。より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上である。一方、活物質層115の厚さtは例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。これにより、活物質層115による膨張応力を抑えることができ、また、集電抵抗を低くできるのでハイレートの充放電に有利である。また、厚さtが例えば30μm以下、さらに好ましくは25μm以下であれば、膨張応力による集電体111の変形をより効果的に抑制できる。
活物質層115の厚さtは、例えば次のような方法で測定できる。まず、活物質層115を形成した後の電極1000全体の厚さを測定する。凸部112および活物質層115が集電体11の一方の表面にのみ形成されている場合には、電極1000全体の厚さから、凸部112を含む集電体111の厚さ(金属箔の厚さと凸部112の高さとの和)を差し引くことによって、活物質層115の厚さtが得られる。凸部112および活物質層115が集電体111の両面に形成されている場合には、電極1000全体の厚さから、凸部112を含む集電体111の厚さ(金属箔の厚さと、その両面に形成された凸部112の合計高さとの和)を差し引くことによって、集電体111の両面に形成された活物質層115の合計厚さが得られる。
活物質体114の太さ(幅)は、特に限定されないが、充電時の膨張によって活物質体114に割れが生じることを防止するためには、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下である。また、活物質体114が集電体111から剥離することを防止するためには、活物質体114の幅は1μm以上であることが好ましい。活物質体114の太さは、例えば任意の2〜10個の活物質体114における、集電体111の表面に平行で、かつ、活物質体114の高さtの1/2となる面に沿った断面の幅の平均値で求められる。上記断面が略円形であれば、直径の平均値となる。
本実施形態では、活物質層115の単位面積あたりの容量は2mAh/cm2以上であることが好ましく、これにより高い電池エネルギーを得ることができる。一方、5%以上の線空隙率を確保しつつ単位面積あたりの容量を高くすると、活物質層115の厚さ(活物質体114の高さ)tが増大して充電時の膨張量が増えるので、膨張応力による集電体111の変形を十分に抑制できないおそれがある。従って、単位面積あたりの容量は8mAh/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは10mAh/cm2以下である。
本実施形態における活物質層115は、ケイ素元素を含む活物質を含む。例えばケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、および、ケイ素と窒素とを含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。活物質層115は、上記の物質のうち1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上の物質を含んでいてもよい。
ケイ素と窒素とを含む化合物は、さらに酸素を含んでいてもよい。例えば、活物質層115は、ケイ素と酸素と窒素とを含み、これらの元素のモル比が異なる複数の化合物から形成されていてもよいし、ケイ素の酸素とのモル比が異なる複数のケイ素酸化物の複合物から形成されていてもよい。
より好ましくは、活物質層115はケイ素酸化物(SiOx、ただし0<x<2)を含む。一般に、ケイ素酸化物を含む活物質では、ケイ素量に対する酸素量のモル比(以下、単に「酸素比率」ともいう)xが低いほど、高い充放電容量が得られるが、充電による体積膨脹率が大きくなる。一方、酸素比率xが高くなるほど、体積膨脹率は抑えられるが、充放電容量が低下する。本実施形態における活物質層115の酸素比率xの平均値は例えば0.01以上1以下、より好ましくは0.1より大きく1.0未満である。酸素比率xの平均値が0.1より大きいと、充放電に伴う膨張および収縮が抑えられているので、集電体111にかかる膨張応力を抑制できる。また、酸素比率xの平均値が1.0未満であれば、十分な充放電容量を確保でき、高率充放電特性を維持できる。なお、酸素比率xの平均値が0.2より大きく0.9以下であれば、適度な充放電サイクル特性と高率充放電特性とをバランス良く得ることができるので有利である。
また、成長方向の異なる各部分での酸素比率は0<x<2であればよく、各部分での酸素比率は異なっていてもよい。このような場合においては、酸素比率xの平均値は活物質層115全体の値を指す。
なお、本明細書では、活物質層115における「ケイ素量に対する酸素量のモル比xの平均値」は、活物質層115に補填または吸蔵されたリチウムを除いた組成である。また、活物質層115は、上記の酸素比率を有するケイ素酸化物を含んでいればよく、Fe、Al、Ca、Mn、Tiなどの不純物を含んでいてもよい。
活物質層115の形成には、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法などの真空プロセスやめっき法などが用いられ得るが、集電体111の法線方向Dから傾斜した方向から蒸着を行う斜め蒸着を用いることが好ましい。例えば、酸素ガスが導入されたチャンバー内で、集電体111の表面に、集電体111の法線方向Dに対して傾斜した方向からケイ素を入射することによって活物質体114を形成できる。
以下、図面を参照しながら、斜め蒸着によって活物質層115を形成する方法の一例を説明する。
図12は、活物質層115を形成する場合に用いられる蒸着装置の構成を例示する模式的な断面図である。
蒸着装置40は、真空チャンバー41と、真空チャンバー41を排気するための排気ポンプ47とを備えている。真空チャンバー41の内部には、集電体11を固定するための固定台43と、チャンバー41に酸素ガスを導入するガス導入配管42と、集電体11の表面にケイ素を供給するための蒸発源が装填された坩堝46とが設置されている。蒸発源として、例えばケイ素を用いることができる。また、図示しないが、蒸発源の材料を蒸発させるための電子ビーム加熱手段を備えている。ガス導入配管42は、酸素ノズル45を備えており、酸素ノズル45から出射する酸素ガスが集電体11の表面近傍に供給されるように位置付けられている。固定台43と坩堝46とは、坩堝46からの蒸着粒子(ここではケイ素原子)49が、集電体11の法線方向Dに対して角度(蒸着角度)ωの方向から集電体11の表面に入射するように配置されている。この例では、固定台43は回転軸を有しており、この回転軸のまわりに固定台43を回転させることによって、水平面50に対する固定台43の法線の角度θが所定の蒸着角度ωに等しくなるように調整される。ここで、「水平面」とは、坩堝46に装填された蒸発源の材料が気化されて固定台43に向う方向に対して垂直な面をいう。
集電体111の表面近傍に酸素ノズル45から酸素ガスを吹き付けながら、坩堝46に装填したケイ素を電子(EB)銃(図示せず)で電子線を照射して溶解し、集電体111の上に入射させることによって活物質層115を形成する(EB蒸着)。集電体111の表面では、ケイ素原子49と酸素ガスとが反応してケイ素酸化物が成長する。このとき、ケイ素原子49は、集電体111の法線方向Dに対して傾斜した方向から集電体111の表面に入射するために、集電体111の表面における凸部112の上に蒸着しやすく、凸部112の上でのみケイ素酸化物が柱状に成長する。一方、集電体111の表面のうち柱状に成長していくケイ素酸化物の影となる部分では、ケイ素原子が入射せず、ケイ素酸化物は蒸着しない(シャドウイング効果)。
このようにして、集電体111の各凸部112の上に複数の活物質体114が形成され、電極1000が完成する。活物質体114における酸素比率xの平均値は、例えば真空チャンバー41に導入する酸素ガス量(すなわち雰囲気の酸素濃度)を調整することにより制御できる。
なお、上記方法において、蒸着角度ωを一定にして蒸着を行うと、一方向に沿って成長した活物質体114が得られる。また、EB蒸着を行っている間に、固定台43を回転軸に沿って回転させて集電体111の設置方向を変えることにより、蒸着角度ωを変化させてもよい。例えば、蒸着角度ωを変化させながら第1段目〜第n段目(n≧2)の蒸着工程を行い、活物質体114を形成すると、得られる活物質体114は、その成長方向によってn個の部分に分けられる。本明細書では、それらのn個の部分を、集電体111の表面側から第1部分、第2部分、・・・第n部分と呼ぶ。
以下、図面を参照しながら、蒸着角度ωを変化させながら複数段階の蒸着を行うことによって活物質層15を形成する方法を具体的に説明する。図13(a)〜(d)は、活物質層115の形成方法の一例を説明するための模式的な工程断面図である。これらの図は、集電体111の表面に垂直であり、かつ、活物質体114の成長方向を含む断面を示している。
まず、図13(a)に示すように、表面に複数の凸部112が配列された集電体111を形成する。図示する断面において、これらの凸部112の幅は例えば10μmであり、隣接する凸部112によって規定される溝(凹部)113の幅は例えば20μmである。
次いで、図12を参照しながら説明した蒸着装置40の固定台43に集電体111を設置する。固定台43は、水平面50に対する固定台43の法線の角度θが例えば55°になるように配置される。坩堝46には、蒸発源としてSi(スクラップシリコン:純度99.999%)を装填する。
この後、図13(b)に示すように、坩堝46のケイ素を電子ビームで加熱して蒸発させ、集電体111の凸部112の上にケイ素原子49を入射させる。ケイ素原子49を入射させる方向52は、集電体111の法線方向Dに対して角度ω(ここでは55°)傾斜している。また、ケイ素原子49を入射させると同時に、ガス導入配管42によって酸素(O2)ガスを真空チャンバー41に導入し、酸素ノズル45から集電体111に向けて酸素ガスを供給する。このとき、例えば真空チャンバー41の内部は、圧力が3.5×10-2Paの酸素雰囲気とする。これにより、Siと酸素とが反応して得られるケイ素酸化物(SiOx)が、集電体111の凸部112の上に選択的に成長し、活物質体の第1部分114aが形成される(第1段目の蒸着工程)。このとき、隣接する凸部112の間の溝113の上にはケイ素原子49は付着せず、ケイ素酸化物は成長しない。
第1部分114aの成長方向S1は集電体111の法線方向Dに対して角度α1だけ傾斜している。この傾斜角度α1は、蒸着角度(ケイ素の入射角度)ωによって決まる。具体的には、成長方向の傾斜角度α1とケイ素の蒸着角度ωとは2tanα1=tanωの関係を満たすことが経験的に知られている。また、酸素導入量を変えることで真空槽内の圧力を制御することにより、上記関係式から計算される傾斜角度から低くなることも知られている。このように、傾斜角度α1は蒸着角度および真空槽内圧を変えることによって制御され得る。
得られた第1部分114aは、SiOxの化学組成を有する。ケイ素量に対する酸素量のモル比xの平均値は0.1より大きく1.0より小さい。ただし、第1部分114aにおけるケイ素量に対する酸素量のモル比xは、第1部分114aにおける集電体111の表面に近い方の側面(下側の側面)57の近傍で小さく、第1部分114aにおける集電体111の表面に遠い方の側面(上側の側面)58に向かって大きくなる。なお、第1部分114aにおけるxの平均値や第1部分114aの厚さは、蒸着時の出力、時間、真空チャンバー41に導入する酸素ガス量(すなわち雰囲気の酸素濃度)などを調整することにより制御される。
続いて、固定台43を回転軸のまわりに時計回りに回転させて、水平面50に対して、上記第1段目の蒸着工程における固定台43の傾斜方向と反対の方向に傾斜させる(θ=−55°)。
この後、図13(c)に示すように、第1段目の蒸着工程と同様に、坩堝46のケイ素を蒸発させて、集電体111の第1部分114aの上に入射させる。図示する断面において、ケイ素原子49を入射させる方向62は、集電体111の法線方向Dに対して、上記方向52と反対の方向に例えば55°(ω=−55°)傾斜している。また、第1段目の蒸着工程と同様に、ケイ素原子49を入射させると同時に、酸素ノズル45から集電体111に向けて酸素ガスを供給する。これにより、各第1部分114aの上にケイ素酸化物(SiOx)が成長し、活物質体の第2部分114bが形成される(第2段目の蒸着工程)。図示する断面において、第2部分114bの成長方向S2は、集電体111の法線方向Dに対して、第1部分114aの成長方向と反対の方向に角度α2(α2=−α1)だけ傾斜している。
第2部分114bも、前述した第1部分114aと同様の酸素濃度分布を有している。すなわち、第2部分114bにおけるケイ素量に対する酸素量のモル比xは、第2部分114bの下側の側面63から上側の側面64に向かって大きくなる。よって、第1部分114aおよび第2部分114bでは、xの増加方向が異なる。
この後、図13(d)に示すように、固定台43の角度θを再び第1段目の蒸着工程と同じ角度(ここでは55°)に戻して、第1段目の蒸着工程と同様の条件でケイ素酸化物を成長させる(第3段目の蒸着工程)。これにより、第2部分114bの上に、さらに第3部分114cが形成される。第3部分114cの成長方向S3の傾斜角度α3は第1部分114aの傾斜角度α1と同じである。また、第3部分114cの酸素濃度分布(xの増加方向)も第1部分114aと同じである。このようにして、3つの部分114a〜114cを有する活物質体114から構成される活物質層115が得られる。
なお、上記方法では、第1〜第3段目までの蒸着工程を行うことによって活物質層115を形成しているが、蒸着角度ωを例えば55°と−55°との間で交互に切り替えて、例えば第n段目(n≧2)まで蒸着を行うと、n個の部分を有する活物質体114を形成することができる。なお、各蒸着工程における蒸着時間は、特に限定しないが、略等しくなるように設定されることが好ましい。従って、全蒸着時間の1/nに設定されることが好ましい。
上記方法のように、複数段の蒸着工程によって活物質体114を形成すると、得られた活物質体114は、少なくとも1つの屈曲部を有する。ここで、「屈曲部」とは、集電体111の法線方向Dに対する活物質体114の傾斜方向が反転する部分を指す。活物質体114が複数の屈曲部を有する場合、その活物質体114は、活物質体114の集電体111側の面から、集電体111から離れる方向に向かってジグザグ状に延びる。ここで「ジグザグ状に延びる」とは、活物質体114が、集電体111の表面から縦方向に、集電体111の表面の法線方向Dからの傾斜方向を反転させながら延びることをいう。このように、活物質体114が屈曲部を有していたり、ジグザグ状に延びていると、活物質体114の膨張によって生じる応力を屈曲部で緩和することができるので、活物質体114の剥離、割れおよび微粉化を抑制できる。
なお、活物質体114を形成する際に、例えば30段以上の多段階の蒸着工程を行う場合や(n≧30)、各蒸着工程によって形成される部分の厚さが特に小さい(例えば0.5μm以下)場合には、図2(a)を参照しながら説明したように、活物質体114の断面形状は、成長方向Sに沿って傾斜したジグザグ形状にならずに、集電体111の法線方向Dに沿って直立した柱状になることもある。このような場合でも、活物質体114の断面観察により、活物質体114の成長方向Sが、底面から上面に向かってジグザグ状に延びていることを確認することができる。また、前述したように、活物質体114の各部分は幅方向に酸素分布を有しており、それぞれ上面側の側面で酸素濃度が高くなることから、活物質体114の酸素分布を測定することによって、成長方向Sや蒸着段数nなどを確認することも可能である。
斜め蒸着を利用して活物質層115を形成する際には、蒸着条件によって、活物質層115の線空隙率を制御することが可能である。具体的には、一方向に傾斜した活物質体114を有する活物質層115を形成する場合には、蒸着方向や蒸着角度ω、蒸着時間などの条件を適宜選択することにより、活物質体114の形状やサイズ(幅、高さ)を調整できるので、活物質層115における線空隙率を制御できる。また、図13(a)〜(d)を参照しながら説明した方法のように、複数段の蒸着工程を行って活物質体114を形成する場合には、蒸着段数nや、各蒸着工程の蒸着方向、蒸着角度ω、蒸着速度や蒸着時間などの蒸着条件を選択することにより、活物質層115における線空隙率を制御できる。
本発明者らは、一例として、蒸着条件(蒸着角度ω)の異なる3つのサンプル電極No.1〜No.3を作製し、それぞれの活物質層の最小線空隙率を測定したので、その結果を説明する。
サンプル電極No.1〜No.3は、何れも、同様の方法で形成された集電体を用いて作製した。集電体の形成は、銅箔の表面に、上面が菱形(対角線:10μm×20μm)の四角柱状の凸部(高さ:6μm)を、上記菱形の長い方の対角線に沿って20μm、短い方の対角線に沿って18μmの間隔を空けて配置することによって行った。集電体の引っ張り強度は11.0N/mmであった。この集電体表面に、図3を参照しながら説明した蒸着装置40を用いて、ケイ素酸化物を含む活物質層を形成し、サンプル電極No.1〜No.3を得た。サンプル電極No.1の活物質層は、蒸着角度ωを55°と−55°との間で切り替えながら、35段(n=35)の蒸着を行うことにより形成した。同様に、サンプル電極No.2の活物質層は、蒸着角度ωを60°と−60°との間で切り替えながら、また、サンプル電極No.3の活物質層は、蒸着角度ωを68°と−68°との間で切り替えながら、それぞれ、35段(n=35)の蒸着を行うことにより形成した。これらのサンプル電極の活物質層の厚さtは、何れも14μmとした。
図14(a)〜(c)は、それぞれ、サンプル電極No.1〜No.3における活物質層の上面を示す電子顕微鏡写真である。図14(a)に示すように、サンプル電極No.1の活物質層の最小線空隙率は、活物質体14の最近接距離を規定する方向65に沿った線空隙率となる。同様に、サンプル電極No.2およびNo.3の活物質層の最小線空隙率は、それぞれ、方向66および方向67に沿った線空隙率となる。これらの方向に沿った線空隙率を測定したところ、サンプル電極No.1(蒸着角度ω=55°、−55°)では約10%、サンプル電極No.2(蒸着角度ω=60°、−60°)では約11%、サンプル電極No.3(蒸着角度ω=68°、−68°)では約15%であった。この結果から、活物質層を形成する際の蒸着角度ωを変えることによって、最小線空隙率を制御できることを確認できた。なお、上記のサンプル電極において、蒸着角度ωが大きいほど最小線空隙率が大きくなる理由は、蒸着角度ωが大きくなるとシャドウイング効果が大きくなり、活物質(ケイ素酸化物)が堆積しない領域が増えるからである。
また、上述したサンプル電極No.1〜No.3の伸び率を測定したところ、サンプル電極No.1の伸び率は1.29%、サンプル電極No.2の伸び率は1.09%サンプル電極No.3の伸び率は0.37%であった。伸び率の測定方法は、後述する<実施例および比較例―1>で説明する方法と同様とした。
得られた伸び率と最小線空隙率との関係を図14(d)に示す。図14(d)から、最小線空隙率が小さいほど、伸び率が大きくなることがわかる。これは、最小線空隙率が小さいほど、活物質体同士の衝突によって負極板に生じる応力が大きくなるからと考えられる。
本実施形態における蒸着角度ωの好適な範囲は、蒸着段数nなどの他の蒸着条件に応じて変わるが、例えば5°以上、より好ましくは10°以上である。これにより、十分な線空隙率を確保しやすくなる。また、蒸着角度ωは90°未満であればよいが、90°に近づくほど活物質体を形成することが困難となるため、80°未満であることが好ましい。
一方、蒸着角度ωが等しいときには、蒸着段数nが多いほど線空隙率が大きくなる。この理由を以下に説明する。n段目の部分を(n−1)段目と異なる方向から成長させることにより、(n−1)段目に成長させた部分(活物質柱)が影となり、結果としてシャドウイング効果が効果的に発揮される。従って、蒸着段数nを増やすことにより活物質柱によるシャドウイング効果を向上させることができるので、蒸着段数nが大きいほど線空隙率が大きくなる。
本実施形態における蒸着段数nの好適な範囲は、蒸着角度ωなどの他の蒸着条件に応じて変わるが、例えば2以上である。これにより、十分な線空隙率を確保しやすくなる。また、蒸着段数nが多すぎると、蒸着プロセスに要する時間が長くなり、量産性が低下するため、100以下であることが好ましい。
本実施形態における負極板の構成は図9に示す構成に限定されない。図9に示す例では、各活物質体114は集電体111の表面に対して略直立した柱状であるが、活物質体を形成するための蒸着段数が小さい(例えば20段以下)場合などには、上述したように、各活物質体は、成長方向Sに対応したジグザグ形状を有することもある。以下、図面を参照して、このような構成の一例を説明する。
図15は、各活物質体がジグザグ形状を有する場合の本実施形態の電極の構成を例示する模式的な断面図である。
図15に示す電極2000は,集電体111の凸部112上にそれぞれ形成された複数の活物質体240を有している。各活物質体240は、集電体111の法線方向Dに対して傾斜した成長方向Sを有する複数の活物質部分、ここでは第1部分240a〜第7部分240gが積層された構造を有している。各活物質部分(例えば第2部分240b)の成長方向Sと、その下に位置する活物質部分(例えば第1部分240a)の成長方向Sとは、法線方向Dに対して互いに反対側に傾斜している。これらの活物質体240は活物質層を構成しており、その活物質層の線空隙率は5%以上である。
電極2000における活物質層は、図12に示す蒸着装置40を用い、図13(a)〜(d)を参照しながら前述した方法と同様の方法で、第1段目の蒸着工程から第7段目の蒸着工程までの7段の蒸着工程を行うことによって形成できる。
本実施形態で使用する蒸着装置の構成は、図12に示す構成に限定されない。図12に示す蒸着装置40は、簡単のため、所定のサイズに切り取った集電体を固定し、その片面のみに活物質を蒸着させる構成を有しているが、典型的には、集電体の両面に活物質を蒸着できるような構成を有している。生産性を高めるために、シート状の集電体を送出しロールと巻取りロールとの間で走行させながら、走行している集電体表面に活物質層を形成してもよい。さらに、送出しロールと巻取りロールとの間に複数個の成膜ロールをシリーズに配置し、集電体を一方向に移動させながらn段階の蒸着を行うこともできる。また、集電体の片面に活物質層を形成した後、集電体を反転させて集電体の他方の面にも活物質層を形成してもよい。必要に応じて、真空チャンバー内に複数の蒸発源や酸素ノズルを設けてもよい。
なお、第2実施形態で説明したような積層型の電極群に用いる負極板では、負極集電体の両面に負極活物質層が形成されていてもよい。そのような負極板は、表面および裏面に凹凸を有する集電体を用い、集電体の表面および裏面に斜め蒸着により活物質層を形成することによって得られる。負極集電体の両面に負極活物質層を有する場合には、活物質体の傾斜状態(成長方向、蒸着段数n、各蒸着工程によって得られた部分の成長方向など)は、全ての負極活物質層で同じであってもよいし、負極活物質体層毎に異なっていてもよい。また、同一の負極活物質層内に、傾斜状態の異なる活物質体が形成されていてもよい。さらに、負極集電体の両面に負極活物質層が形成されている場合、それぞれの面の負極活物質層における活物資体の傾斜状態は同じでもよいし、異なっていてもよい。
<実施例および比較例−1>
次に、本発明による実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を作製し、評価を行ったので、その方法および結果を説明する。
(1−i)負極集電体の作成
まず、本実施例および比較例で使用する負極集電体の製造方法を説明する。図16(a)〜(c)は、負極集電体の作成方法を説明するための断面工程図である。
図16(a)に示すように、厚さが27μmの銅箔(HCL−02Z、日立電線株式会社製)の両面に対して電解めっき法により粗化処理を行い、1μmの粒径を有する銅粒子を形成した。これにより、表面粗さRzが1.5μmの銅箔93を得た。表面粗さRzは、日本工業規格(JISB 0601−1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。なお、代わりにプリント配線基板用に市販されている粗面化銅箔を用いてもよい。
次いで、図16(b)に示すように、セラミックロール90にレーザー彫刻を用いて複数の溝(凹部)95を形成した。複数の溝95は、セラミックロール90の法線方向から見て菱形とした。菱形の対角線の長さは10μmおよび20μm、隣接する凹部95の短い方の対角線に沿った間隔を18μm、長い方の対角線に沿った間隔を20μmとした。また、各凹部95の深さは10μmとした。このセラミックロール90と、これに対向するように配置された他のロール(図示せず)との間に、銅箔93を線圧1t/cmで通過させることにより、圧延処理を行った。
このようにして、図16(c)に示すように、表面に複数の凸部92を有する集電体91を得た。このとき、ローラー間を通過した銅箔93のうち、セラミックロール90の凹部95以外の部分でプレスされた領域は、図示するように平坦化された。一方、銅箔93のうち凹部95に対応する領域は、平坦化されずに凹部95に入り込み、凸部92が形成された。凸部92の高さは、セラミックロール90の凹部95の深さより小さく、約6μmであった。
集電体91の平面図を図17に示す。図示するように、集電体91の凸部92の形状や配列は、セラミックロール90に形成された凹部95の形状および配列に対応していた。凸部92の上面は略菱形となり、その対角線の長さa、bはそれぞれ、約10μmおよび約20μmであった。また、隣接する凸部92の対角線aに沿った方向(Y方向)の間隔eは18μm、対角線bに沿った方向(X方向)の間隔dは20μmであった。さらに、凸部92の合計面積s1と凹部91の合計面積s2との和に対する凸部92の合計面積s1の割合(s1/(s1+s2))を求めると18%であった。
(1−ii)負極活物質層の形成
本実施例および比較例では、図12を参照しながら前述した蒸着装置40を用いて、斜め蒸着により負極活物質層を形成した。ここでは、より確実にシャドウイング効果を得るために、図16に示すY方向に沿って蒸着を行った。
まず、上記方法で得られた集電体91を、図12に示す真空チャンバー41の内部に配置された固定台43に設置し、純度が99.7%の酸素ガスを真空チャンバー41に供給しながら、蒸着ユニット(蒸発源、坩堝、電子ビーム発生装置をユニット化したもの)を用いてケイ素を蒸発源とするEB蒸着を行った。このとき、真空チャンバー41の内部は、圧力が3.5Paの酸素雰囲気とした。また、蒸発源のケイ素を蒸発させるために、電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏向させて蒸発源に照射させた。蒸発源には、半導体ウェハを形成する際に生じる端材(スクラップシリコン、純度:99.999%)を用いた。
蒸着にあたり、蒸着角度ωが65°となるように固定台43を傾斜させ、この状態で第一段目の蒸着工程を行い、活物質層の第1部分を形成した。このとき、第1部分の成膜速度を約8nm/sとし、酸素ノズル45より酸素流量を5sccmとし、第1部分の高さを2.0μmとした。続いて、固定台43を中心軸のまわりに時計回りに回転させ、上記第1段目の蒸着工程における固定台43の傾斜方向と反対方向に傾斜させて、蒸着角度ωを−65°とした。この状態で第1部分と同条件で蒸着を行い、第2部分を形成した。この後、固定台43の傾斜方向を再び第1段目の蒸着工程と同じ方向に変えて、蒸着角度ωを65°として同様の蒸着を行った。このようにして、蒸着角度ωを65°および−65°の間で交互に切り換えながら、7段の蒸着工程を行い、高さが14μmの活物質層を形成した。活物質層におけるケイ素量に対する酸素量のモル比xは、活物質層中ほぼ一定となり、その平均値は0.4であった。
以上の工程によって負極原反を得た。
(1−iii)伸び率の評価
上記方法で得られた負極原反を15mm角となるように成型し、負極板を得た。この負極板を、セパレータを介して、対極(金属リチウム)に対向するように配置して、伸び率評価用の電極群を得た。セパレータとしては、厚さが16μmのポリエチレン製の多孔膜(旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いた。なお、伸び率評価用の電極群では、対極として金属リチウムを使用するため上記負極板は正極となるが、リチウム吸蔵による負極板の伸び率は、上記負極板を負極として用いる場合の伸び率と同じである。
この電極群を、アルミニウムラミネートシートからなる外装ケースに挿入し、さらに、電解液を注入した後、アルミニウムラミネートを封口した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:1で混合した溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を用いた。このようにして、伸び率評価用のサンプル電池を完成させた。
次に、このサンプル電池の充電を行った。充電は、終止電圧0V(対Li電位)、電流値を0.1mA/ cm2とした。サンプル電池の充電容量は約6mAh/cm2であった。
充電を行った後のサンプル電池を分解し、充電後の負極板をジメチルカーボネート(DMC)を用いて洗浄した後、乾燥させた。続いて、充電後の負極板のX方向およびY方向に沿った長さを測定して、充電前の負極板のX方向およびY方向に沿った長さ(何れも15mm)に対する伸び率を求めた。この結果、X方向およびY方向に沿った負極板の伸び率は、何れも1.7%であった。
なお、上記「X方向」および「Y方向」は、図17に示すX方向およびY方向に対応している。
(1−iv)実施例および比較例の実電池の作成
上述した負極原反を用いて、アルミケースを外装体とする扁平の角型電池を作成した。
まず、角型電池用の正極の作成方法を説明する。正極活物質であるLiCoO2粉末を93重量部と、導電剤であるアセチレンブラック4重量部とを混合した。得られた粉末に結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN―メチル―2ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業(株)製の品番#1320)をPVDFの重量が3重量部となるように混合した。得られた混合物に適量のNMPを加えて、正極合剤用ペーストを調整した。得られた正極合剤用ペーストをアルミニウム箔からなる正極集電体(厚さ:15μm)の両面にドクターブレード法を用いて塗布した後、圧延して、密度が3.5g/cc、厚さが160μmの正極活物質層を形成した。これを85℃で十分に乾燥さることにより正極シートを作成した。この正極シートを裁断してサイズが30mm×510mmの帯状の正極を得た。正極集電体表面のうち負極活物質層と対向しない領域の一部で、正極集電体のアルミニウム箔を露出させて、露出させたアルミニウム箔にアルミニウム製の正極リードを溶接した。これにより角型電池用の正極が得られた。
次いで、前述した方法により得られた負極原反を31mm×500mmのサイズに裁断し、実施例の角型電池に用いる負極板Iを得た。また、上記負極原反を32mm×500mmのサイズに裁断し、比較例の角型電池に用いる負極板IIを得た。
この後、得られた負極板I、IIを用いて、それぞれ、図1を参照しながら前述した構成の角型電池を組み立てた。
再び図1を参照する。まず、正極板14および上記負極板I(負極板16)の間に、ポリエチレン製セパレータ15を介在させて、扁平な巻き芯により捲回することによって電極群18を構成した。この電極群18を電池外装体(角型アルミケース)11の内部に設けられた空間に挿入し、電解液を注入した後、封口板12をレーザーで溶接することによって封口した。これによって、角型アルミケース11と封口板12とからなる内部空間に電極群18を収容した。内部空間の有効高さC1は32.3mmであった。
このようにして、負極板Iを用いて実施例の角型電池を得た。同様にして、負極板IIを用いて比較例の角型電池を得た。
(1−v)実電池の評価
上記方法によって得られた実施例および比較例の角型電池に対して、下記の条件で充放電サイクル試験を行った。
充電時:定電流定電圧充電、1000mA、4.2Vカットオフ、0.50mAカットオフ
休止時間:10分間
放電時:定電流放電、1000mA、2.0Vカットオフ
休止時間:10分間
上記条件で充放電を繰り返した結果、実施例の角型電池では、電池容量の減少は観測されたが、電池機能は充放電回数が500回に達するまで維持された。
一方、比較例の角型電池では、充放電回数が5回に達した時点で充放電が不可能となり電池機能が喪失した。
評価後、電池機能が喪失した比較例の角型電池を分解して内部を観察したところ、負極板が伸びて封口板と接触し、内部短絡を発生させていることが確認された。比較例の角型電池における負極板IIの充電前の幅は32mmであったが、上記の伸び率測定の結果(伸び率1.7%)を考慮すると、充電によって負極板IIの幅は32.5mm(32×(1+1.7/100)=32.5)に伸びたものと予想される。この幅は、アルミケースの内部有効高さC1(32.3mm)以上である。従って、充電時の負極板IIの伸びによって、負極板IIと封口板とが接触し、内部短絡が発生したものと考えられる。なお、本実施例では、最初の5回の充電が「初充電」である。最初の4回の充電によって内部短絡が発生しなかった理由として、本比較例では、最初の4回の充電時には十分な量のリチウムが吸蔵されず(充電深度が浅く)、充電による伸び量が小さかったからと推測される。
これに対し、実施例の角型電池における負極板Iの幅は31mmであり、伸び率を考慮すると、充電後の負極板Iの幅は31.5mm(31×(1+1.7/100)=31.5)となる。この幅は、アルミケースの内部有効高さC1(32.3mm)よりも小さいため、負極板Iと封口板との接触が防止されたものと考えられる。
この結果から、負極板の伸び率を考慮して初充電前の負極板の幅を設定しておくことによって、内部短絡を防止でき、充放電信頼性の高い電池が得られることがわかった。
<実施例−2>
ここでは、蒸着段数、蒸着角度、集電体の引っ張り強度などの異なる電極1〜電極12を作製し、それぞれの活物質層における最小線空隙率の測定、および定電流充電による電極の変形(伸び率)の評価を行ったので、その方法および結果を説明する。
(2−i)電極の作製方法
・電極1
図15および図16を参照しながら前述した方法と同様の方法を用いて、<実施例および比較例―1>と同様の構成を有する集電体を作成した。
次いで、図12に示す蒸着装置40を用いて、集電体の表面に活物質層を形成した。蒸着にあたり、蒸着角度ωが75°となるように固定台43を傾斜させ、この状態で第1段目の蒸着工程を行い、活物質体の1段目の部分(第1部分)を形成した。第1部分の成膜速度を約8nm/sとし、酸素流量を30sccmとし、第1部分の高さを0.4μmとした。続いて、固定台43を中心軸のまわりに時計回りに回転させ、上記第1段目の蒸着工程における固定台43の傾斜方向と反対の方向に傾斜させて、蒸着角度ωを−75°とした。この状態で、酸素流量を25sccmとして蒸着を行い、第2部分を形成した(第2段目の蒸着工程)。この後、固定台43の傾斜方向を再び第1段目の蒸着工程と同じ方向に変えて、蒸着角度ωを75°、酸素流量を20sccmとして同様の蒸着を行った(第3段目の蒸着工程)。このようにして、蒸着角度ωを75°および−75°の間で交互に切り換えて、第7段目まで酸素流量、15sccm、10sccm、5sccm、1sccmと段階的に減少させて成膜した後、第8段目から第35段目までは酸素導入を行わずに蒸着を行い、高さが14μmの活物質体を形成し、活物質層(高さ:14μm)を得た。活物質層におけるケイ素量に対する酸素量のモル比xの平均値は0.4であった。
この後、固定台43から集電体を取り外し、活物質層が形成された面と反対側の面(裏面)が上になるように、再び固定台43に設置した。集電体の裏面に対して、上記と同様の方法で35段の蒸着工程を行い、活物質層(厚さ:14μm)を形成した。このようにして、両面に活物質層が形成された電極が得られた。得られた電極を「電極1」とした。
電極1の引っ張り強度を引っ張り試験機を用いて測定すると、10.1N/mmであった。また、この測定値から、活物質層の厚さ1μmあたりの引っ張り強度を算出すると、0.72N/mmであった。
・電極2
電極1と同様の集電体を用い、蒸着角度ωを70°および−70°の間で交互に切り換える点以外は、電極1と同様の方法で活物質層を形成した。得られた電極を「電極2」とした。
・電極3
電極1と同様の集電体を用い、蒸着角度ωを60°および−60°の間で交互に切り換える点以外は、電極1と同様の方法で活物質層を形成した。得られた電極を「電極3」とした。
・電極4
電極1と同様の集電体に対して、真空中、350℃で3分間の熱処理を行い、引っ張り強度を低下させた後、電極1と同様の方法で、集電体の両面に、それぞれ、活物質層(厚さ:14μm)の形成を行った。得られた電極を「電極4」とした。電極4の引っ張り強度は8.2N/mm、活物質層の厚さ1μmあたりの引っ張り強度は0.59N/mmであった。
・電極5
蒸着角度ωを60°および−60°の間で交互に切り換える点以外は、電極4と同様の方法で集電体に対する熱処理および活物質層の形成を行った。得られた電極を「電極5」とした。
・電極6
電極1で前述した方法と同様の方法で作製した集電体に対して、真空中、400℃で3分間の熱処理を行い、引っ張り強度を低下させた後、電極1と同様の方法で活物質層の形成を行った。得られた電極を「電極6」とした。電極6の引っ張り強度は6.2N/mm、活物質層の厚さ1μmあたりの引っ張り強度は0.44N/mmであった。
・電極7
蒸着角度ωを60°および−60°の間で交互に切り換える点以外は、電極6と同様の方法で集電体に対する熱処理および活物質層の形成を行った。得られた電極を「電極7」とした。
・電極8
蒸着角度ωを65°および−65°の間で交互に切り換える点および蒸着段数を7回(n=7)とした点及び酸素導入を5sccmで一定にした以外は、電極6と同様の方法で集電体に対する熱処理および活物質層の形成を行った。活物質層におけるケイ素量に対する酸素量のモル比xは、活物質層中ほぼ一定となり、その平均値は0.4であった。ただし、集電体の表面および裏面にそれぞれ形成された活物質層の厚さが何れも電極1の活物質層の厚さと同じ(14μm)となるように、各部分の高さを2.0μmとした。得られた電極を「電極8」とした。
・電極9
蒸着角度ωを55°および−55°の間で交互に切り換える点以外は、電極1と同様の方法で活物質層の形成を行った。活物質層におけるケイ素量に対する酸素量のモル比xは、活物質層中ほぼ一定となり、その平均値は0.4であった。得られた電極を「電極9」とした。
・電極10
蒸着角度ωを55°および−55°の間で交互に切り換える点以外は、電極6と同様の方法で集電体に対する熱処理および活物質層の形成を行った。得られた電極を「電極10」とした。
・電極11
電極1で前述した方法と同様の方法で作製した集電体に対して、真空中、370℃で3分間の熱処理を行い、引っ張り強度を低下させた後、蒸着角度ωを55°および−55°の間で交互に切り換える点および蒸着段数を7回(n=7)とした点及び酸素導入を5sccmで一定とした以外は、電極1と同様の方法で活物質層の形成を行った。ただし、集電体の表面および裏面にそれぞれ形成された活物質層の厚さが何れも電極1と同じ(14μm)となるように、各部分の高さを2μmとした。得られた電極を「電極11」とした。電極11の引っ張り強度は7.8N/mm、活物質層の厚さ1μmあたりの引っ張り強度は0.56N/mmであった。
・電極12
銅箔に凹凸パターンを形成し、集電体を作製した。凹凸パターンの凸部の合計面積s1と凹部の合計面積s2との和に対する凸部の合計面積A1の割合(s1/(s1+s2))は23%であった。得られた集電体の表面に、蒸着角度ωを60°として、斜め蒸着により、厚さが20μmの活物質層を形成した。他の電極1〜11と異なり、蒸着の際に蒸着方向を切り換えなかった。このため、活物質層は、集電体表面の法線に対して一方向に傾斜した活物質体から構成されていた。このようにして「電極12」を得た。
(2−ii)線空隙率の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、上記実施例および比較例の電極の表面を観察し、以下の方法で最小線空隙率を測定した。
本実施例では、電極の上面において、図9(b)を参照しながら説明したように、最も接近している2つの活物質体の間の最近接距離を含む線118と、これらの活物質体の中心を結ぶ線とが略一致する。従って、活物質体の中心間の距離L2に対する最近接距離L1の割合を算出し、10点間の平均値をもって最小線空隙率とした。この図において、「X方向」は、集電体表面に形成された凸部の上面(菱形)における長い方の対角線と平行であり、「Y方向」は、凸部の上面における短い方の対角線と平行である。
測定結果を表1に示す。表1に示す「活物質層の厚さ」は、集電体の表面および裏面にそれぞれ形成された活物質層の平均厚さを指す。なお、上述したように、本実施例および比較例では、各電極において、表面および裏面にそれぞれ形成された活物質層の厚さは互いに等しい。
Figure 2010182620
表1の結果から、電極1〜11の最小線空隙率は何れも5%より大きいことが確認できた。また、本実施例および比較例では、最小線空隙率は、蒸着段数nが同じなら蒸着角度ωが大きいほど、蒸着角度ωが同じなら蒸着段数nが多いほど増加していた。なお、例えば電極1および電極4では、蒸着段数nおよび蒸着角度ωが同じであるにもかかわらず、線空隙率が3%程度異なっているが、これは測定の誤差範囲内である。
一方、電極12の最小線空隙率は5%より小さく、3.2%であった。凸部領域の面積比が比較的大きい集電体を用い、一方向のみからの蒸着(蒸着段数n=1)によって活物質層を形成したため、活物質体間に十分な空隙を確保できなかったからと考えられる。
(2−iii)伸び率の評価
まず、上記の各電極を用いて、伸び率評価用の電池サンプルを作製した。
上記の各電極を電極サイズが15mm角となるように成型し、セパレータを介して、対極(金属リチウム)に対向するように配置して電極群を得た。セパレータとしては、厚さが16μmのポリエチレン製の多孔質膜(旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いた。この電極群を、アルミニウムラミネートシートからなる外装ケースに挿入し、さらに、電解液を注入した後、Alラミネートを封口した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:1で混合した溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を用いた。このようにして、伸び率評価用の電池サンプルを完成させた。
なお、これらの電池サンプルでは、各電極1〜13が正極となり、金属リチウムが負極となるが、実施例および比較例の各電極を負極とする電池サンプルを作製して定電流充電試験を行っても、以下と同様の結果が得られる。
次に、これらの電池サンプルの定電流充電を行った。定電流充電では、終止電圧を0V(対Li電位)、電流値を0.1mA/cm2とした。電池サンプルの充電容量は何れのサンプルにおいても約6mAh/cm2であった。
定電流充電を行った電池サンプルを分解し、ジメチルカーボネート(DMC)を用いて洗浄した後、乾燥させた。続いて、各電池サンプルにおける充電後(定電流充電後)のX方向およびY方向に沿った電極の長さを測定して、充電後の電極の面積を算出し、充電前の電極の面積(15mm×15mm)に対する面積の増加率を求めた。なお、上記のX方向およびY方向は、図9(b)に示すX方向およびY方向と同じである。具体的には、下記式により、面積の増加率を求めた。
(充電後のXおよびY方向に沿った電極の長さの積−充電前のXおよびY方向に沿った電極の長さの積)/(充電前のXおよびY方向に沿った電極の長さの積)
また、上述したように、X方向およびY方向に沿った伸び率は略等しいことから、上記面積の増加率の平方根が各方向に沿った「伸び率」となる。
伸び率の測定結果を表1に示す。この結果から、最小線空隙率が5%未満(充放電後には6%未満)と小さく、かつ、活物質層の厚さ1μmあたりの集電体の引っ張り強度の小さい電極12を用いた場合には、充電による伸び率が約3.5%と高く、電極が著しく変形したことがわかった。これは、空隙率が小さいために活物質体同士の接触によって集電体にかかる応力が大きくなるにもかかわらず、集電体の強度が十分でないからと考えられる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極板として電極12を用いると、負極板の幅は伸び率を考慮して設定されるので、電池外装体の空間に対して極めて小さくなる。このため、高い容量を確保できなくなるおそれがある。
これに対し、最小線空隙率が5%以上であり、かつ、活物質層の厚さ1μmあたりの集電体の引っ張り強度が0.3N/mm以上である実施例の電極1〜11を用いると、充電による伸び率を2.2%未満に抑えることができることがわかった。また、最小線空隙率が8%以上である実施例の電極1〜8を用いると、充電による伸び率を1.7%以下に抑えることができ、電極の変形を特に効果的に抑制できることを確認した。
また、最小線空隙率が非常に大きいときには(例えば18%以上)、充電しても活物質体同士が接触しにくいため、集電体の引っ張り強度にかかわらず、伸び率はゼロであった。このように伸び率がゼロまたは極めて小さい場合、伸び率を考慮して負極板の幅を設定しなくても内部短絡は生じ難いと考えられる。従って、伸び率がゼロより大きく、例えば0.5%以上(好ましくは0.8%以上、より好ましくは1.0%以上)の負極板を使用するときに、本発明による効果をより確実に得ることができる。
さらに、表1の結果から、最小線空隙率が小さくなると(例えば10%以下)、集電体の引っ張り強度が伸び率に与える影響が大きくなることもわかった。例えば、電極3および電極8の最小線空隙率は略等しいが、引っ張り強度の大きい集電体を用いた電極3の伸び率(約0.9%)は、引っ張り強度の小さい集電体を用いた電極8の伸び率(約1.7%)よりも低く抑えられていた。従って、電極の伸び率を確実に抑えるためには、活物質層の最小線空隙率に応じて、集電体の引っ張り強度を適正な範囲に制御することが重要であることがわかった。
(2−iv)定電流充放電後の線空隙率の測定
電極5、電極9および電極12については、上記(iii)と同様の方法で電池サンプルを作製し、以下の方法で、1回の定電流充放電を行った後の線空隙率を測定した。
まず、各電池サンプルに対して、終止電圧:0V(対Li電位)、電流値:0.1mA/cm2の条件で定電流充電を行った。電池サンプルの充電容量は何れのサンプルにおいても約6mAh/cm2であった。続いて、電流値:0.1mA/cm2、終止電圧:1.5V(対Li電位)の条件で放電した。放電後、電池サンプルを分解し、上記(ii)で説明した方法と同様の方法で、各電極の定電流充放電後の最小線空隙率を測定した。
測定結果を表1に示す。この結果から、リチウムを吸蔵させる前の活物質層が十分な線空隙率を有していれば、充放電後(定電流充放電後)の線空隙率を確保でき(例えば6%以上)、電極の変形を抑制できることがわかった。なお、電極5、電極9および電極12の充放電後の最小線空隙率は、何れも充放電前(リチウム吸蔵前)の最小線空隙率よりも大きくなった。これは、充放電の際に活物質体同士が接触し、各活物質体が圧縮されたためと考えられる。
表1に示す結果から、集電体の作製方法や厚さ、活物質層の形成方法や積層数などにかかわらず、活物質層の線空隙率および集電体の引っ張り強度を制御することにより、充電による負極板の伸び率を制御できることがわかった。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、コイン型、円筒型、扁平型、角型などの様々なリチウムイオン二次電池に適用できる。これらのリチウムイオン二次電池では、充電による負極板の伸びに起因する内部短絡を防止でき、高い信頼性を実現できる。さらに、高い充放電容量を確保しつつ、従来よりも優れた充放電サイクル特性を有するので、PC、携帯電話、PDA等の携帯情報端末や、ビデオレコーダー、メモリーオーディオプレーヤー等のオーディオビジュアル機器などに広く使用され得る。
本発明による第1実施形態のリチウムイオン二次電池を示す概略図である。 本発明による第1実施形態における負極板の模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第1実施形態における電極群の初充電を行う前の構成を説明するための上面図および断面図である。 図3に示す電極群の初充電後の構成を例示する上面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第1実施形態における他の負極板の初充電を行う前の構成を説明するための上面図および断面図である。 図5に示す負極板の初充電後の構成を例示する上面図である。 本発明による第2実施形態における電池外装体の内部空間と、内部空間に収容される電極群とを模式的に示す概略図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第2実施形態における電極群の初充電前および初充電後の構成を例示する上面図である。 (a)は、本発明による第1および第2実施形態における負極板の模式的な断面図であり、(b)は、(a)に示す負極活物質層の上面図である。 本発明による第1および第2実施形態における負極の他の構成を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第1および第2実施形態における集電体の表面形状を示す模式的な平面図および断面図である。 本発明による第1および第2実施形態において、負極活物質層の形成に使用される蒸着装置の一例を示す模式的な断面図である。 (a)〜(d)は、本発明による第1および第2実施形態の負極板の作製方法の一例を説明するための工程断面図である。 (a)〜(c)は、それぞれ、本発明による実施形態における活物質層の上面の電子顕微鏡写真であり、(d)は、(a)〜(c)に示すサンプル電極の最小線空隙率と伸び率との関係を示すグラフである。 本発明による第1および第2実施形態における負極のさらに他の構成を示す模式的な断面図である。 (a)〜(c)は、<実施例および比較例−1>で用いられる集電体の作製方法を説明するための模式的な工程断面図である。 <実施例および比較例−1>における集電体の表面形状を示す平面図である。
100、200 リチウムイオン二次電池
1000、2000 負極
11 電池外装体(電池ケース)
12 封口板
14 正極板
15 セパレータ
16 初充電前の負極板
16a 初充電後の負極板
18 電極群
1 内部有効高さ
1、A2 初充電前の負極板の幅
Aa1、Aa2 初充電後の負極板の幅
1 正極板の幅
1 セパレータの幅
20 正極集電体
22 正極活物質層
24 負極集電体
26 負極活物質層
28 無地部
111 集電体
112 凸部
114 活物質体
115 活物質層
116 空隙
118、119、120、121 集電体の表面に平行な平面における任意の方向
D 集電体表面の法線方向
S 活物質体の成長方向
2 最近接距離
1 方向118における活物質体の中心間の距離
t 活物質層の厚さ
41 真空チャンバー
42 ガス導入配管
43 固定台
46 坩堝
45 酸素ノズル
49 ケイ素原子
50 水平面

Claims (10)

  1. 正極板と負極板とがセパレータを介して捲回または積層された電極群と、リチウムイオン伝導性を有する電解液と、内部に空間を有する電池外装体とを備え、前記電極群および前記電解液は前記電池外装体の前記空間に収容されているリチウムイオン二次電池であって、
    前記負極板は、
    互いに間隔を空けて配列された複数の凸部を表面に有する負極集電体と、
    前記複数の凸部上にそれぞれ形成された活物質体を含む負極活物質層と
    を有しており、
    前記活物質体はケイ素を含み、
    前記負極板は、初充電によって前記負極集電体の表面と平行な方向に伸び、
    前記負極板の幅と平行な方向を第1方向とし、前記初充電を行う前において、前記負極板の第1方向に沿った幅をA1、前記電池外装体の前記空間の前記第1方向に沿った長さをC1とし、前記初充電による前記負極板の前記第1方向に沿った伸び率をB1%(B1>0)とすると、前記負極板の前記初充電前の幅A1は、A1×(1+B1/100)<C1を満足するリチウムイオン二次電池。
  2. 前記負極集電体は、前記第1方向に亘って前記負極活物質層が形成されていない無地部を有しており、前記初充電前の幅A1は、初充電後における前記無地部の幅と略等しい請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記正極板は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層を有しており、
    前記電極群において、前記負極活物質層と前記正極活物質層とが前記セパレータを介して対向するように捲回または積層されており、
    前記負極板は、前記第1方向に亘って前記正極活物質層と対向していない部分を有し、前記初充電前の幅A1は、初充電後における前記負極板の前記対向していない部分の幅と略等しい請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記初充電による前記負極板の前記第1方向に沿った伸び率B1%は0.8%以上4.0%以下である請求項1から3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記初充電を行う前、隣接する活物質体の間には空隙が形成されており、
    前記負極集電体の表面に平行な平面上において、任意の方向における前記負極活物質層に占める前記空隙の割合の最小値は5%以上15%以下である請求項1から4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記初充電前の幅A1および初充電後の前記負極板の前記第1方向に沿った幅Aa1は、いずれも、前記正極板の前記第1方向に沿った幅よりも大きく、前記セパレータの前記第1方向に沿った幅よりも小さい請求項1から5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記電極群において、前記正極板と前記負極板とは捲回されており、
    前記電池外装体の前記空間の長さC1は、前記電池外装体の内部有効高さである請求項1から6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記電極群において、前記正極板と前記負極板とは積層されており、
    前記初充電を行う前において、前記負極板の前記第1方向と直交する第2方向に沿った幅をA2、前記初充電による前記負極板の前記第2方向における伸び率をB2%(B2>0)、前記電池外装体の前記空間における前記第2方向に沿った長さをC2とすると、前記負極板の前記裁断幅A2は、A2×(1+B2/100)<C2を満足する請求項1から6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記活物質体の成長方向は、前記負極集電体の法線方向に対して傾斜している請求項1から8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記活物質体は、前記負極集電体の表面に積み重ねられた複数の層を有し、前記複数の層のそれぞれの成長方向は、前記集電体の法線方向に対して交互に反対方向に傾斜している請求項9に記載のリチウムイオン二次電池。
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