JP7377831B2 - 二次電池の集電体および二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池に用いられる集電体と、該集電体を備える二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
一般的に二次電池に用いられる電極は、集電体(例えば、金属箔)と、該集電体の表面に形成された合材層とを備えている。合材層には電荷担体(例えばリチウムイオン)を吸蔵・放出可能な活物質が含まれており、かかる電荷担体の吸蔵・放出に伴って活物質の体積変化が生じる。この活物質の体積変化が繰り返されることにより、合材層が集電体から剥離し易くなり得るため、かかる体積変化による負荷が緩和されることが望ましい。例えば、特許文献1には、集電体として、複数の金属箔が積層したリチウムイオン二次電池用積層金属箔が開示されている。かかる金属箔は粗面化した面を有しており、金属箔の粗面化した面同士が当接するように積層させることで、該粗面化した面同士の間に空隙を有する。これにより、活物質の体積変化による金属箔への負荷を緩和できる、とされている。
特開2007-26913号公報
ところで、二次電池の電極に異物が混入した場合には、内部短絡が生じ得る。内部短絡が生じると、短絡電流により二次電池の温度が上昇し得る。そのため、二次電池は、温度上昇を抑制するために、内部短絡時に電池内部の電流をより迅速に遮断する機能を有することが望ましい。また、二次電池の容量保持率の改善や、電気抵抗の低減等の電池性能の向上の観点から、合材層が集電体から剥離しにくいことが望ましい。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、内部短絡時に電池内部の電流を遮断しやすく、容量保持率および電気抵抗の低減率に優れた二次電池の集電体を提供することを目的とする。また、かかる集電体を備える二次電池を提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、ここに開示される集電体は、二次電池の電極に用いられる集電体であって、樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属層とが積層した積層構造を備えている。上記金属層の表面は、複数の凸部および複数の凹部が設けられた粗面部を有しており、該粗面部には、樹脂コート層が形成されている。そして、上記複数の凸部のうち、少なくとも一部の凸部は、上記樹脂コート層から露出した露出部を有することを特徴とする。
かかる構成によれば、内部短絡時に、短絡電流によって生じる熱により樹脂層および樹脂コート層が溶融し、樹脂層および樹脂コート層の体積が増加する。これにより、金属層に圧力が加わり、金属層(例えば、厚みの薄い凹部)を破断させることができる。この結果、電気抵抗が急激に増加し、電池内部の電流を遮断することができる。また、本発明者らの検討により、金属層の粗面部に樹脂コート層が存在することで合材層が剥離し難くなり、容量保持率の向上および電気抵抗の低減が実現されることが確かめられた。これは、合材層が金属層よりも樹脂コート層への接着性が高いことや、樹脂コート層から露出した凸部によって、合材層と集電体との接触面積が増加すること等による効果であると推測される。また、特に低温下では樹脂コート層が収縮し、合材層を集電体へ引き寄せることができるため、低温下における電気抵抗(以下、「低温抵抗」ともいう)を低減することができる。
また、ここで開示される集電体の好ましい一態様では、上記露出部を有する凸部の割合は、上記複数の凸部全体の20個数%以上である。これにより、合材層の剥離の抑制と、合材層と金属層との間に生じる電気抵抗の低減とを両立することができる。
また、ここで開示される集電体の好ましい一態様では、上記露出部を有する凸部において、該凸部の高さ方向に対して該露出部が占める割合の平均値は5%以上99%以下である。また、より好ましい一態様では、上記露出部が占める上記割合の平均値は95%以下である。これにより、凸部の露出部と合材層との接触面積の増大と、樹脂コート層による合材層の剥離防止への寄与とのバランスが良好となり、より優れた容量保持率および電気抵抗の低減が実現される。
また、ここで開示される集電体の好ましい一態様では、上記樹脂層と上記金属層との積層方向に沿った上記集電体の断面のSEM像を異なる視野でn枚(nは少なくとも4又はそれを上回る自然数)取得したとき、上記SEM像のそれぞれで観察される上記金属層の最も薄い部分の厚みxの平均値X(μm)と、最も厚い部分の厚みyの平均値Y(μm)は、0.8μm≦X≦3μm、および、2μm≦Y≦11μmを具備する。これにより、特に高いレベルで容量保持率の向上と電気抵抗(例えば低温抵抗)の低減とが実現される。
また、ここで開示される集電体の好ましい一態様では、上記樹脂コート層は導電性粒子を含む。これにより、合材層と集電体間の電気抵抗(例えば低温抵抗)をより低減することができる。
また、ここで開示される集電体の好ましい一態様では、上記樹脂層は、導電性粒子を含む。また、好ましい一態様では、上記樹脂層は、無機フィラーを含む。これにより、容量保持率および低温抵抗がより改善される。
また、上記目的を実現するための他の側面として、正極と、負極とを備える二次電池が提供される。この二次電池は、上記正極および上記負極の少なくともどちらか一方に、ここで開示される集電体を備える。これにより、内部短絡時に電池内部の電流を遮断しやすく、容量保持率および電気抵抗の低減率に優れた二次電池が実現される。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係る負極集電体の構成を模式的に示す拡大断面図である。 変形例に係る負極集電体の構成を模式的に示す拡大断面図である。
以下、二次電池の典型例であるリチウムイオン二次電池に好適に採用される集電体を例として、図面を適宜参照しながらここに開示される技術について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、各図における符号Wは「幅方向」を示し、符号Tは「厚み方向」を示す。なお、これらの方向は説明の便宜上定めた方向であり、ここに開示される二次電池の設置態様を限定することを意図したものではない。
また、本明細書において数値範囲をA~B(ここでA,Bは任意の数値)と記載している場合は、A以上B以下を意味するものであり、Aを上回る範囲かつBを下回る範囲を包含する。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを用い、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返しの充放電が可能な電池一般をいう。リチウムイオン二次電池における電解質は、例えば、非水電解液、ゲル状電解質、固体電解質等であり得る。
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、外装体10の内部に電極体20と、非水電解質(図示せず)とを収容している。正極集電端子42の一端は外装体10の内部で正極50と電気的に接続されており、負極集電端子44の一端は、外装体10の内部で負極60と電気的に接続されている。また、正極集電端子42および負極集電端子44の他端は外装体10の外部に露出している。
外装体10は、ラミネートフィルムによって袋状に形成されている。外装体10は電極体20と非水電解液とを内部に収容する収容空間を有しており、該収容空間の周縁を熱溶着(ヒートシール)することで封止することができる。
ラミネートフィルムを構成する材質には特に制限はなく、典型的には、箔状の金属と樹脂シートが貼り合わされる構成のものが使用され得る。例えば、熱溶着のための無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)の表面に、耐熱性、シール強度、耐衝撃性等を付与する目的で、アルミニウム等の金属層を設け、さらに該金属層の表面にポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(PA)、あるいはナイロン製フィルム等からなる外部樹脂層を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
電極体20は、正極50および負極60の電極シートがセパレータ70を介して絶縁された状態で複数積層されて構成されている。ここでは、正極50および負極60の電極シートは矩形状の幅広面を備えており、該幅広面同士が対向するように積層されている。なお、ここでは電極体20の積層方向は厚み方向Tである。
正極50の電極シート(正極シート)は、矩形状の幅広面を有するシート状の正極集電体52と、該正極集電体52の表面に塗工された正極合材層54と、を備えている。正極集電体52の幅方向(図1中のW方向)の片側の縁部には、正極合材層54が形成されていない正極集電体露出部が設けられている。積層された正極シートそれぞれの正極集電体露出部は上記積層方向(図1中T方向)から束状に接合されることにより、正極端子接合部56を形成している。
負極60の電極シート(負極シート)は、矩形状の幅広面を有するシート状の負極集電体62と、該負極集電体62の表面に塗工された負極合材層64と、を備えている。負極集電体62の幅方向(図1中のW方向)の片側の縁部には、負極合材層64が形成されていない負極集電体露出部が設けられている。積層された負極シートそれぞれの負極集電体露出部は上記積層方向(図1中T方向)から束状に接合されることにより、負極端子接合部66を形成している。
正極集電端子42は板状の導電部材であり、一端が外装体10の内部で正極端子接合部56と接合されており、他端が外装体10の外部に露出している。正極集電端子42が外装体10を貫通する部分では、厚み方向Tから正極集電端子42を挟むように2枚のラミネートフィルムが重ね合わされており、正極集電端子42の表面にラミネートフィルムが溶着している。なお、かかる溶着の強度を向上させるために、例えば、樹脂からなる溶着フィルムを正極集電端子42とラミネートフィルムとの間に介入させてもよい。
負極集電端子44については、一端が負極端子接合部66と接合されていること以外は上述した正極集電端子42と同様の構成であってよい。
正極50が備える正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔を使用することができる。正極50が備える正極合材層54には正極活物質が含まれる。正極活物質としては、例えば層状構造やスピネル構造等のリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5,LiCrMnO、LiFePO等)が挙げられる。また、正極合材層54は、導電助剤、分散剤、バインダ等を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。分散剤としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)等を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
正極合材層54は、正極活物質と必要に応じて用いられる材料(導電助剤、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電体52の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
図2は、負極集電体62の構成を模式的に示す断面拡大図である。負極集電体62の詳細な構成については後述する。
負極合材層64は、負極集電体62の両面に形成されている(図1参照)。負極合材層64は、負極活物質を含んでおり、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料や、Si、SiO等のシリコン材料等を使用し得る。また、負極合材層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
負極合材層64は、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電体62の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
非水電解質は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能である。例えば、非水溶媒中に、支持塩を含有させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下程度が好ましい。
また、非水電解液は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。かかる添加剤としては、具体的には、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等の芳香族化合物に代表される過充電時にガスを発生させ得る化合物からなる過充電添加剤;界面活性剤;分散剤;増粘剤;凍結防止剤等が挙げられる。非水電解液全体に対するこれらの添加剤の濃度は、添加剤の種類にもよって異なるが、通常6質量%程度以下(典型的には0.5質量%~4質量%)とすることができる。
以下、負極集電体62の構成について詳細に説明する。図2に示すように、負極集電体62は、樹脂層62aと、金属層62bと、樹脂コート層62cとが積層した積層構造を備える。大まかには、樹脂層62aの両面に金属層62bが形成されており、金属層62bの表面に樹脂コート層62cが形成されている。
樹脂層62aは、内部短絡時の温度上昇によって体積増加を起こす樹脂であればよく、例えば、熱可塑性樹脂によって構成されている。熱可塑性樹脂は融点に達したとき、固体から液体に状態が変化するため、体積が増大する。かかる樹脂層62aの体積の増大により、金属層62bに圧力が加わるため、金属層62bを破断させることできる。金属層62bが破断されることにより、電気抵抗が急激に増加するため、電池内部の電流を遮断することができる。これにより、内部短絡時に電池の温度上昇を抑制することができる。
樹脂層62aを構成する熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、1気圧における融点が265℃以下である熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。かかる性質を有するものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等が挙げられる。さらに、1気圧における融点が200℃以下である熱可塑性樹脂を用いることがより好ましく、例えば、PVA、PE、PP、PVDF等を使用することが好ましい。樹脂層62aがより低い融点を有することにより、リチウムイオン二次電池100に内部短絡が生じたとき、より低い温度で電池内部の電流を遮断することができる。一方で、樹脂層62aを構成する樹脂の融点が低すぎる場合には、リチウムイオン二次電池100の通常使用時にも樹脂層62aが溶融する虞がある。そのため、樹脂層62aを構成する樹脂の1気圧における融点は、90℃以上が好ましく、例えば、100℃以上であるとよい。なお、熱可塑性樹脂は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、樹脂層の融点は、一般的な示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)によって測定することができる。
樹脂層62aは、導電性粒子を含み得る。樹脂層62aが導電性粒子を含むことにより、負極集電体62の導電性が向上するため、電気抵抗がより低減される。導電性粒子としては、例えば、カーボン粉末や導電性金属粉末等を用いることができる。カーボン粉末としては種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末等のカーボン粉末を用いることができる。導電性金属粉末としては、例えば、銅粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末等を用いることができるが、なかでも金属層62bを構成する金属と同じ金属で構成されている導電性金属粉末を用いることが好ましい。例えば、金属層62bが銅箔である場合、導電性粒子として銅粉末を用いることが好ましい。なお、導電性粒子は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
導電性粒子の大きさは特に制限されるものではないが、例えば、平均粒子径が凡そ10nm~10μmであって、20nm~5μmであることが好ましい。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、レーザー回折散乱法によって得られる体積基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)のことをいう。
樹脂層62aは、無機フィラーを含み得る。無機フィラーとしては、例えば、絶縁性を有する無機酸化物やガラスを用いることができる。樹脂層62aが絶縁性を有する無機フィラーを含むことにより、電気抵抗が低減される。これは、無機フィラーにより、金属層62b内に生じ得る電子密度の不均一性が改善されるからであると推測される。無機酸化物としては、例えば、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)等を用いることができる。無機フィラーは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。なお、無機フィラーの形状は、特に制限されるものではなく、例えば、粒子状、繊維状、板状、フレーク状等であってよい。
無機フィラーの平均粒子径は、特に制限されるものではなく、レーザー回折散乱法に基づく平均粒子径が例えば0.1μm~10μmであり、0.5μm~5μmであってもよい。
樹脂層62aの平均厚みは、0.1μm以上であればよく、例えば10μm以上であり得る。かかる平均厚みであれば、樹脂層62aが溶融した際に、金属層62bを破断させる圧力を伴う体積変化が生じるため好ましい。また、特に制限されるものではないが、樹脂層62aの平均厚みは、典型的には80μm以下であって、例えば40μm以下であり得る。内部短絡時の安全性の観点から、樹脂層62aの厚みは大きいほど溶融時の体積変化が大きくなり好ましいが、電池の高容量化および電池の軽量化の観点からは、必要以上の厚みを有することは好ましくない。なお、樹脂層62aの厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察などによって測定することができる。
金属層62bは、導電性を有する層である。金属層62bは、従来リチウムイオン二次電池の負極集電体に使用される金属箔によって構成することができ、例えば、銅、銅を主体とした合金、チタン、ニッケル等の金属箔を使用することができる。なお、ここで銅を主体とした合金とは、構成成分の50wt%以上が銅である合金のことをいう。
図2に示す負極集電体62においては、金属層62bの表面(樹脂層62aと対向しない側の面)に複数の凸部62b1および複数の凹部62b2が設けられた粗面部を有しており、反対側の表面は平面である。粗面部には樹脂コート層62cが形成されており、凹部62b2に樹脂が堆積している。複数の凸部62b1のうち、少なくとも一部の凸部62b1は、樹脂コート層62cから露出した露出部62b3を有している。
金属層62bが粗面部を有することにより、金属層62b中に比較的厚みの薄い部分を設けることができるため、内部短絡時に金属層62bの厚みの薄い部分を起点として金属層62bが破断されやすくなる。また、露出部62b3を有することで、負極集電体62の表面に形成される負極合材層64と、負極集電体62との接触面積を増大することができるため、負極合材層64が剥離し難くなる。さらに、露出部62b3により、金属層62bと負極合材層64とが直接接触することができるため、良好な導電パスを確保することができ、電気抵抗を低減することができる。
金属層62bの粗面部の算術平均粗さRaは特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm~15μmであって、0.5μm~5μmであり得る。算術平均粗さRaは、例えば、JIS B0601:2001に基づき、触針式の表面粗さ測定器を用いて測定することができる。
金属層62bの最も薄い部分の厚みx(μm)の平均値X(μm)は、特に制限されるものではないが、金属層62bの強度を確保する観点から、例えば0.1μm以上であって、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましい。また、金属層62bの最も厚みの薄い部分は、内部短絡時に破断する起点となるため、例えば、5μm以下であるとよく、4μm以下が好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
金属層62bの最も厚い部分の厚みy(μm)の平均値Y(μm)は、特に制限されるものではないが、例えば、1μm以上であって、2μm以上、4μm以上であり得る。また、かかる平均値Yは、例えば12μm以下であって、11μm以下であり得る。
本発明者らの検討によれば、金属層62bの最も薄い部分の厚みx(μm)の平均値X(μm)が0.8μm以上3μm以下(0.8μm≦X≦3μm)であるとき、金属層62bの最も厚い部分の厚みy(μm)の平均値Y(μm)は、2μm以上11μm以下(2μm≦Y≦11μm)、かつ、X<Yであることが好ましい。これにより、負極合材層64がより剥離し難くなり、容量保持率と、電気抵抗の低減率とがより良好となる。
金属層62bの最も薄い部分の厚みx(μm)と、最も厚い部分の厚みy(μm)は、樹脂層62aと金属層62bとの積層方向(図2中のT方向)に沿った金属層62bの断面SEM像に基づいて測定することができる。上記断面SEM像を所定の倍率(例えば、倍率:4000倍)で、それぞれが異なる視野となるようにn枚(nは少なくとも4またはそれを上回る自然数、例えば10枚以上)取得する。そして、各SEM像において、金属層62bの最も薄い部分の厚みx(μm)および最も厚い部分の厚みy(μm)を測定し、上記xの平均値X(μm)、上記yの平均値Y(μm)を求めることができる。なお、図2に示すように、上記最も薄い部分の厚みxは典型的には凹部の位置に存在し、上記最も厚い部分の厚みyは、典型的には凸部の位置に存在する。なお、各視野において、金属箔の最も厚い部分の厚みyが視野内に収まらない場合には、かかる厚みyを測定するために適宜倍率を調整してもよい。
また、金属層62bにおいて、隣り合う凸部62b1間の距離は特に限定されるものではないが、かかる距離が1μm以下であることが好ましい。これにより、凸部62b1の個数が増加し、金属層62bの表面積が増大する。この結果、金属層62bと負極合材層64との接触面積が増大し、より負極合材層64が剥離し難くなるため、容量保持率が向上する。なお、「凸部62b1間の距離」とは、樹脂層62aと金属層62bの積層方向(厚み方向T)に沿った断面SEM像において、隣り合う凸部62b1のそれぞれの最も高い部分の間の距離のことを指す。
金属層62bの粗面部は、公知の粗面化処理方法によって形成することができ、例えば、レーザー照射、エッチング、スパッタリング、イオンプレーティング、PLD(Pulsed Laser Deposition)等を用いることができる。なかでも、薬液を用いたエッチング処理によって形成することが好ましい。エッチング処理であれば、形成される凸部62b1間の距離をより短くすることができ、例えば1μm以下とすることができる。
樹脂コート層62cは、金属層62bの粗面部に形成されている。より詳細には、樹脂コート層62cは、主に凹部62b2内に形成されており、凸部62b1の少なくとも一部を覆っている。また、複数の凸部62b1のなかに、凸部62b1の全体部分が樹脂コート層62cによって覆われたもの(即ち、露出部62b3を有さない凸部62b1)が存在していてもよい。樹脂コート層62cは、負極合材層64を負極集電体62により強固に接着させるバインダとしての機能を有しており、負極合材層64の剥離をよりよく防止することができる。特に、低温下においては、樹脂コート層62cが収縮し、負極合材層64を負極集電体62へより密着させることができるため、電気抵抗をより低減することができる。また、樹脂コート層62cは、内部短絡時の温度上昇によって溶融するため、金属層62bの凹部62b2へ圧力をかけることができる。これにより、内部短絡時には、金属層62bは、樹脂層62aと樹脂コート層62cとの両側から圧力がかけられるため、より確実に金属層62bを破断させることができる。
樹脂コート層62cを構成する樹脂の種類は、上述の樹脂層62aを構成し得る樹脂として例示したものと同じであってよい。そのなかでも好適例としては、合材層のバインダとして従来用いられている樹脂が挙げられ、例えばPVDFを好適に用いることができる。これにより、負極合材層64の剥離をより好適に防ぐことができる。
樹脂コート層62cと樹脂層62aは、同じ樹脂で構成されていてもよく、異なる樹脂で構成されていてもよいが、樹脂層62aを構成する樹脂と樹脂コート層62cを構成する樹脂との融点の差が小さいことが好ましい。例えば、かかる融点の差が100℃以下であるとよく、50℃以下がより好ましい。これにより、内部短絡時に樹脂層62aと樹脂コート層62cが溶融するタイミングが近くなるため、金属層62bを破断させ易くなる。
樹脂コート層62cは、負極合材層64と金属層62bとの間の導電性を向上させる観点から、導電性粒子を含むことが好ましい。導電性粒子としては、上述した樹脂層62aに使用し得るものを採用することができる。
金属層62bと負極合材層64との接触面積を増大させる観点から、露出部62b3を有する凸部62b1の存在割合が高いことが好ましい。例えば、複数の凸部62b1全体の個数に対する露出部62b3を有する凸部62b1の割合は、20個数%以上であることが好ましく、30個数%以上がより好ましく、50個数%以上がさらに好ましく、80個数%以上が特に好ましく、例えば100個数%であってよい。
露出部62b3を有する凸部62b1は、露出部62b3と、樹脂コート層62cに覆われた部分とを有するが、露出部62b3の占める割合が低すぎる場合、金属層62bと負極合材層64との接触面積が小さくなりすぎる。そのため、負極合材層64の剥離が生じやすくなり得ると共に、電気抵抗が増加し得る。したがって、凸部62b1の高さ方向(図2中、厚み方向T)において、凸部62b1の高さT1に対する露出部62b3の高さT3(即ち、凸部62b1の高さT1と樹脂コート層62cの厚みT2との差)の占める割合の平均値は、例えば5%以上であるとよく、10%以上が好ましく、例えば30%以上であり得る。一方で、露出部62b3の占める割合が高すぎる場合、樹脂コート層62cが形成される厚みが不十分となり、上述した樹脂コート層62cの効果が不十分になる。そのため、凸部62b1の高さT1に対して、露出部62b3の高さT3の占める割合の平均値は、例えば99%以下であるとよく、95%以下がより好ましく、90%以下であり得る。なお、上記露出部62b3が占める割合は、樹脂層62aと金属層62bとの積層方向に沿った断面SEM像に基づき測定することができる。また、このとき、露出部62b3を有する凸部62b1を無作為にm個(mは少なくとも5、又はそれを上回る自然数)を選択し、選択された凸部62b1の露出部62b3が占める割合の平均値を求めることとする。
凸部62b1の高さT1、樹脂コート層62cの厚みT2および露出部62b3の高さT3の測定方法は、上述した金属層62bの厚みの測定方法と同様であってよく、樹脂層62aと金属層62bとの積層方向に沿った断面SEM像に基づいて測定することができる。なお、凸部62b1の高さT1は、上記断面SEM像において、凸部62b1の左右に存在する凹部62b2の最下点(最も高さの低い部分)同士を結んだ線と、凸部62b1の頂点(最も高い点)から積層方向に向かって引いた線との交点を求め、該凸部62b1の頂点と、該交点との距離を測定することで求めることができる。
負極集電体62において、金属層62bの粗面部および樹脂コート層62cは、負極合材層64が形成される範囲全体にわたって設けられていることが好ましい。これにより、負極合材層64全体が負極集電体62から剥離し難くなる。また、内部短絡が負極合材層64のいずれの位置で生じても、金属層62bの破断が迅速に生じるため、安全性がより高くなる。
樹脂層62aおよび樹脂コート層62cは、負極端子接合部66に形成されていないことが好ましい。これにより、負極端子接合部66は、複数の負極シートの金属層62b同士を直接接合することができるため、導電性および接合強度に優れた負極端子接合部66とすることができる。
以上、ここに開示される集電体(負極集電体62)の構成について説明したが、ここで開示される集電体の構成はこれに限られない。以下、変形例を図3に示して説明する。
(変形例)
図3は、負極集電体62の変形例の構成を模式的に示す拡大断面図である。この変形例は、金属層62bと樹脂層62aとの界面にも粗面部が存在する。これにより、樹脂層62aと金属層62bとの接触面積が増大し、金属層62bがより強固に樹脂層62aと接着することができる。なお、変形例において、金属層62bの最も厚い部分の厚みy(μm)は、図3に示すように、金属層62bの両側の表面に存在するの凸部まで含めた厚みで測定される。
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモーター用の高出力動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。リチウムイオン二次電池100は、複数個が電気的に接続された組電池の形態で使用することもできる。
以上、負極集電体62を例に、ここで開示される集電体の構成を説明したが、ここで開示される集電体は、正極集電体52としても採用することができる。この場合には、金属層62bを構成する金属箔を正極に用いられる金属箔(例えばアルミニウム箔)に変更すればよく、他の構成は同様であってよい。
また、一例として積層電極体を備えたラミネート型の非水電解液リチウムイオン二次電池について詳細に説明したが、これは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、積層電極体の代わりに、正極シートと負極シートとを、セパレータシートを介して捲回した捲回電極体を備えていてもよい。また、外装体10の代わりに、アルミニウム等の金属材料で構成された電池ケースを用いてもよい。また、電解質として固体電解質を使用する全固体電池や、ポリマー電解質を使用するポリマー電池であってもよい。
以下、ここに開示される技術に関する試験例を説明するが、ここに開示される技術をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
[試験例1]
<負極集電体の準備>
試験例1では、例1~11の11種類の負極集電体を作製し、リチウムイオン二次電池の性能を評価した。まず、銅箔と、ポリエチレン(PE)からなる樹脂シート(厚さ:10μm)とを準備した。例1および例2では、粗面部を有さない銅箔を負極集電体として使用した。例3~11では、上記樹脂シートの両面に、両面に粗面部を有する銅箔を貼り合わせ、100℃~250℃で1分~30分間ホットプレスすることにより銅箔を樹脂シートへ溶着させた。次に、導電性粒子とPVDFとN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とが混合された混合液に、上記作製した樹脂シートに溶着した銅箔を浸し、銅箔表面にディップコートを行った。その後、この銅箔を乾燥させることで銅箔の表面に樹脂コート層を形成した。そして、この樹脂コート層をブラシで200rpmの速度で削ることで、樹脂コート層の厚みを調整し、各例の負極集電体を作製した。なお、樹脂コート層に導電性粒子を含む例では、導電性粒子としてアセチレンブラック(AB)または銅(Cu)粒子を用いた。各例で用いた導電性粒子の種類を表1に示す。また、例7~9は、導電性粒子としてAB、無機フィラーとしてアルミナ(Al)粉末の少なくともどちらか一方を含む樹脂シートを用いた。各例で用いた無機フィラーの種類を表1に示す。
<負極シートの作製>
シリコン酸化物の粉末と、黒鉛とを80:20の重量比で混合したものを負極活物質として準備した。また、バインダとしてスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を準備した。そして、負極活物質:SBR:CMC=90:5:5の重量比となるように秤量し、固形分率が66質量%となるように分散媒であるイオン交換水を加え、プラネタリーミキサーを用いて混合した。このようにして負極合材層形成用ペーストを調製した。
次に、上記負極合材層形成用ペーストを、ダイコータを用いて帯状に上記準備した各例の負極集電体の両面の銅箔表面に塗布し、乾燥させた。なお、各例の負極集電体の両面にこの操作を行った。その後、この負極集電体にプレス処理を行い、負極シートを作製した。
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM)の粉末、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA)を準備した。これらを、NCM:AB:PVDF:PVA=90:8:1.8:0.2の重量比となるように秤量し、固形分が56質量%となるように分散媒であるNMPを加え、プラネタリーミキサーを用いて混合した。このようにして、正極合材層形成用ペーストを調製した。
次に、上記正極合材層形成用ペーストを、ダイコータを用いて帯状にアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させた。そして、乾燥した正極合材層形成用ペーストを備えたアルミニウム箔をプレス処理することにより、正極シートを作製した。
また、セパレータシートとしてPP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを用意した。
上記作製した正極シートと負極シートとを上記セパレータシートを介して対向させて積層し、積層型電極体を作製した。該積層型電極体に集電端子を取り付け、アルミラミネート袋に収容した。そして、積層電極体に非水電解液を含浸させ、アルミラミネート袋の開口部を封止し密閉することによって評価用リチウムイオン二次電池を作製した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:3の体積比で混合し、さらにビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
<負極シートの断面の解析>
上記作製した例3~11の負極集電体の樹脂層と銅箔との積層方向における断面をSEMを用いて4000倍の倍率で観察し、4か所の異なる視野の断面SEM像を得た。得られた断面SEM像それぞれにおいて、銅箔の最小厚みxと、最大厚みyとを測定した。なお、各例で樹脂層の両面に銅箔が存在するため、各視野それぞれにおいて、各銅箔の最小厚みxおよび最大厚みyを測定した。そして、上記4か所の異なる視野の断面SEM像それぞれで得られた上記最小厚みxおよび最大厚みyの値を用いて、各例の銅箔の最小厚みの平均値X(μm)と、最大厚みの平均値Y(μm)を求めた。その値をそれぞれ「平均最小厚みX(μm)」、「平均最大厚みY(μm)」として表1に示す。なお、例1および例2は銅箔の厚みの測定値を示す。
また、各視野で銅箔の樹脂コート層が形成されている側の表面に存在する凸部の個数をカウントし、その中で、凸部の高さの5%以上が樹脂コート層から露出している凸部の個数を測定した。そして、かかる樹脂コート層から露出している凸部の個数の割合を「露出部を有する凸部の割合(個数%)」として表1に示す。
<活性化処理と初期容量測定>
上記作製した各評価用リチウムイオン二次電池を25℃の環境下に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。このときの放電容量を初期容量とした。なお、ここで「1C」とは、1時間でSOC(state of charge)を0%から100%まで充電できる電流の大きさのことをいう。
<低温抵抗の測定>
上記活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、3.70Vの開放電圧に調整し、-5℃の温度環境下に置いた。かかる環境下で、3Cの電流値で25秒間放電し、このときの電圧変化量ΔVを求めた。また、20Cとなる電流値を求めた。そして、(ΔV/20Cの電流値)の計算値を低温抵抗として求めた。例1の評価用リチウムイオン二次電池の低温抵抗を1.00とした場合の、各例の評価用リチウムイオン二次電池の低温抵抗の比を規格化低温抵抗として表1に示す。
<容量保持率の測定>
上記活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を3.3Vの開放電圧に調整し、25℃の環境下に置いた。充放電は定電流方式とし、1Cの電流値で4.2Vまで充電し、その後1Cの電流値で3.3Vまで放電した。この充放電を1サイクルとして、500サイクル繰り返した。その後、500サイクル後の容量を上記初期容量と同様の方法で測定した。そして、(500サイクル後の容量/初期容量)×100の値を算出することにより、容量保持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
<安全性試験>
上記活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/10Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、満充電状態になった各評価用リチウムイオン二次電池を25℃の環境下に置いた。次に、各評価用リチウムイオン二次電池の中央付近に直径3mmの鉄製の釘を10mm/secの速度で貫通させた。このときの各評価用リチウムイオン二次電池の外表面温度を熱電対で測定し、最高温度を測定した。このときの最高温度が150℃未満であった場合を「◎」、150℃以上200℃未満であった場合を「〇」、200℃以上であった場合を「×」として、結果を表1に示す。
Figure 0007377831000001
表1に示すように、粗面部を持たない金属箔を集電体として用いた例1および例2と比較して、例3~11の方が、安全性試験の結果が良好であり、容量保持率も向上していた。また、これに加え、例3~11は、低温抵抗が例1よりも低くなった。これにより、樹脂層と、粗面部を有する金属箔と、樹脂コート層とを有する集電体を用いることで、優れた安全性を有するだけでなく、容量保持率の向上および低温抵抗の低減等の電池性能の向上が実現されることがわかる。
また、例3~11を比較すると、樹脂コート層に導電性粒子を含むとき、より優れた容量維持率および低温抵抗の低減が実現されることがわかる。また、樹脂コート層に導電性粒子を含むことにより、安全性試験の結果もより良好になることがわかる。
また、例4、5、10、11を比較すると、樹脂コート層から露出した凸部の割合が30個数%以上であるとき、容量保持率の向上および低温抵抗の低減がより高いレベルで実現されることがわかる。
さらに、例6~9を比較すると、樹脂層に導電性粒子及び/又は無機フィラーを含む場合に、容量保持率の向上及び低温抵抗の低減が特に高いレベルで実現されることがわかる。
[試験例2]
試験例2では、樹脂コート層の厚みについて検討した。具体的には、樹脂コート層から露出した露出部を有する凸部に注目し、凸部における露出部の占める割合について調べた。ここでは、例12~19の8種類の負極集電体を作製して試験を行った。これらの負極集電体は、上述の試験例1の例5と同様にして作製した後、各例で樹脂コート層をブラシで削る割合を調整することで、様々な厚みの樹脂コート層を作製した。そして、試験例1と同様にして評価用リチウムイオン二次電池を作製し、試験例1と同様にして各種評価試験を実施した。なお、試験例2では、負極シートの断面の解析において、露出部を有する凸部を各視野で4個ずつ(即ち、各例で合計16個ずつ)無作為に選択し、該凸部の高さ方向(樹脂シートと銅箔との積層方向)における、該凸部の高さ全体に対して露出部が占める割合を算出した。この結果を表2に示す。また、表には示していないが、例12~19の負極集電体において、露出部を有する凸部の数はいずれも約30個数%であった。
Figure 0007377831000002
表2に示すように、凸部の高さ方向における露出部の割合が99%以下であれば、高い安全性が実現され、容量保持率および低温抵抗にも優れたリチウムイオン二次電池が実現されることがわかる。特に、凸部の高さ方向における露出部の割合が95%以下であるとき、より高いレベルの安全性と、より優れた容量保持率および低温抵抗が実現されることがわかる。
[試験例3]
試験例3では、用いた銅箔の平均最小厚みXおよび平均最大厚みYの範囲について検討した。具体的には、用いる銅箔にエッチング処理を行い、粗面部の程度の異なる銅箔を複数準備し、これらを用いて例20~26の負極集電体を作製した。銅箔以外の構成は、上述の例5と同様として、各例の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の試験例1と同様にして各種評価試験を実施した。結果を表3に示す。
Figure 0007377831000003
表3に示すように、例5、例20~26のいずれにおいても優れた安全性が実現されており、容量保持率および低温抵抗に優れていた。このなかでも、例5、例24~26では特に優れた容量保持率および低温抵抗が実現されていた。このことから、金属層の平均最小厚みXが0.8μm以上3μm以下、かつ、平均最大厚みYが2μm以上11μm以下であることが好適であることがわかる。
10 外装体
20 電極体
42 正極集電端子
44 負極集電端子
50 正極
52 正極集電体
54 正極合材層
56 正極端子接合部
60 負極
62 負極集電体
62a 樹脂層
62b 金属層
62b1 凸部
62b2 凹部
62b3 露出部
62c 樹脂コート層
64 負極合材層
66 負極端子接合部
70 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池

Claims (8)

  1. 二次電池の電極に用いられる集電体であって、
    樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属層とが積層した積層構造を備えており、
    前記金属層の表面は、複数の凸部および複数の凹部が設けられた粗面部を有しており、 前記粗面部には、樹脂コート層が形成されており、
    前記複数の凸部のうち、少なくとも一部の凸部は前記樹脂コート層から露出した露出部を有
    前記露出部を有する凸部の割合は、前記複数の凸部全体の20個数%以上であり、
    前記露出部を有する凸部において、該凸部の高さ方向に対して該露出部が占める割合の平均値は5%以上99%以下である、
    集電体。
  2. 前記露出部を有する凸部の割合は、前記複数の凸部全体の30個数%以上である、請求項1に記載の集電体。
  3. 前記露出部が占める前記割合の平均値は95%以下である、請求項1または2に記載の集電体。
  4. 前記樹脂層と前記金属層との積層方向に沿った前記集電体の断面のSEM像を異なる視野でn枚(nは少なくとも4又はそれを上回る自然数)取得したとき、前記SEM像のそれぞれで観察される前記金属層の最も薄い部分の厚みxの平均値X(μm)と、最も厚い部分の厚みyの平均値Y(μm)は、
    0.8μm≦X≦3μm、および、2μm≦Y≦11μm
    を具備する、請求項1~のいずれか一項に記載の集電体。
  5. 前記樹脂コート層は、導電性粒子を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の集電体。
  6. 前記樹脂層は、導電性粒子を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の集電体。
  7. 前記樹脂層は、無機フィラーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の集電体。
  8. 正極と、負極とを備える二次電池であって、
    前記正極および前記負極の少なくともどちらか一方に、請求項1~のいずれか一項に記載の集電体を備える、二次電池。
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