JPWO2009091012A1 - 銅または銅合金用のエッチング液、エッチング前処理液およびエッチング方法 - Google Patents

銅または銅合金用のエッチング液、エッチング前処理液およびエッチング方法 Download PDF

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Abstract

水を主成分とし、(1)1〜20質量%の塩化鉄(III)および(2)塩化鉄に対して5〜100質量%のシュウ酸を含有せしめたエッチング液、およびかかるエッチング液を用いたエッチング方法である。かかるエッチング方法において、銅または銅合金を溶解する成分及び酸から選択される少なくとも1種の成分を含む水溶液で前処理を行うことで、良好な歩留まりが実現できる。

Description

本発明は、高密度のプリント配線板製造に適した銅または銅合金用のエッチング液、銅または銅合金用のエッチング前処理液、該エッチング液または該エッチング前処理液を用いた銅または銅合金のエッチング方法に関する。
近年、電子機器の小型化高機能化が急速に進展し、これら機器に内蔵されるプリント配線板に関しても、高い回路密度を有するものが強く求められている。
プリント配線板の製造方法としては、あらかじめ銅箔を接着した基板上にスクリーン印刷、光リソグラフィ等の方法でレジストパターンを形成し、塩化鉄(III)水溶液等のエッチング液を用いて不要部分の銅箔を除去して導体パターンを作製する、いわゆるサブトラクティブ法が広く用いられている。しかし、この方法によりプリント配線板を製造する場合、レジストパターンの裏面にエッチング液が回りこみ、導体パターンのライン幅がレジストパターンのそれよりも細くなる、いわゆるサイドエッチが生じることが知られている。サイドエッチが生じると、導体パターンのトップ幅またはボトム幅が狭くなり、部品の実装に必要な面積が確保できなくなるという問題があることから、回路密度の高いプリント配線板をサブトラクティブ法で製造することは困難であった。
以上のような問題から、高い回路密度のプリント配線板を製造するためには、メッキにより回路を形成させるいわゆるアディティブ法が用いられている。しかしアディティブ法には、工程が複雑であり、かつ長い時間を要するメッキ工程を経るため、本質的にコストが非常に高くなるという問題がある。エッチング時のサイドエッチさえ抑制されれば、サブトラクティブ法によっても高い回路密度のプリント配線板を製造できることから、サイドエッチが高度に抑制されたエッチングを可能ならしめる技術が強く求められている。
図1は、エッチング法により得られる導体パターンの断面概略図である。基材3上に銅箔2で厚みtの導体パターンが設けられている。プリント配線板においては、隣接導体パターンとの電気的絶縁を確保するために、導体パターンのトップとボトムの両方で適切なスペースが確保される必要がある。トップ幅wあるいはボトム幅wが狭くなりすぎると、十分な電気的特性を維持することができない。また、トップ幅wが狭くなりすぎた場合には、表面への部品の実装が困難になるし、導体パターンのトップ幅wがレジストパターンのライン幅wよりも著しく狭くなった場合には、エッチングの最中に銅箔2からレジストパターン1が剥離して導体パターンが断線する等の問題も生じる。また、ボトム幅wが狭くなりすぎた場合には、基材3から導体が剥離して導体パターンが断線する等の問題が生じる。かかる問題を生じさせないために、導体パターンのトップ幅wおよびボトム幅wが、レジストパターンの幅wと比較して狭くなりすぎないことが求められるのである。
銅または銅合金のエッチングに用いるエッチング液としては、導体パターン幅の細り(w−wおよびw−w)が比較的小さい等の利点から、塩化鉄(III)の水溶液が広く使われている(例えば、プリント回路学会編、プリント回路技術便覧、日刊工業新聞社発行1978年2月28日、p649〜651参照)。しかし、従来のエッチング技術による限り、塩化鉄(III)水溶液を用いても得られるエッチファクター(2t/[w−w])の絶対値は、理想的な場合においても5、現実的には高々4程度である。すなわち、導体厚みが9μmの場合でw=wとなるまでエッチングを行った場合のw−wは理想的な場合で3.6μm、現実的には4.5μm以上はあった。エッチファクターがこの程度の場合、配線の微細化は銅厚9μmで40μmピッチ、すなわち隣接導体パターンの中心線間隔40μmが限界であり、これ以下のピッチを有する微細パターンを形成させることは不可能であった。
米国特許第3144368号明細書では、サイドエッチを抑制するための技術として、塩化鉄(III)を主成分としチオ尿素を添加したエッチング液を用いることが提案されている。しかし、本技術は、近年求められている非常に高密度な基板製造に用いるにはサイドエッチ抑制能力が不十分であるばかりか、発がん性が疑われるチオ尿素を使用したり、さらにエッチング液の保存・使用中に、有毒でかつ悪臭物質である硫化水素ガスが発生したりという労働衛生上および公害防止上重大な問題を有している。
さらに、米国特許出願公開第2005/016961号公報では、塩化鉄(III)等の酸化性金属塩と無機酸あるいは有機酸を成分とするエッチング液にベンゾトリアゾール等のアゾール化合物を添加することが提案されている。しかし、本技術もサイドエッチ抑制能力が不十分であるばかりか、生分解性が一般に低いアゾール化合物を使用するという環境保全上重大な問題を有している。
さらに、特開昭53−30435号公報では、塩化鉄(III)または塩化銅(II)を主成分とするエッチング液に、特定量のシュウ酸またはオキシカルボン酸を添加してなるエッチング液が提案されているが、かかるエッチング液は近年求められているような精密な加工を目的としたものではなく、上記の如きピッチの細かいプリント配線板の製造に用いた場合、エッチングがある程度進むと、エッチング速度が急激に増大してライン幅が急激に細くなり、事実上エッチングを制御することが不可能であった。
本発明の目的は、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することができ、従来実現が困難であった、サイドエッチが僅少であり、高い回路密度のプリント配線板を歩留まり良く製造するために適した銅または銅合金用のエッチング液、銅または銅合金用のエッチング前処理液および該エッチング液、エッチング前処理液を用いた銅または銅合金のエッチング方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、
1.水を主成分とし、(1)1〜20質量%の塩化鉄(III)および(2)塩化鉄に対して5〜100質量%のシュウ酸を含有することを特徴とする銅または銅合金用エッチング液、
2.水を主成分とし、銅または銅合金を溶解する成分及び酸から選択される少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする銅または銅合金用エッチング前処理液、
3.酸が1価の酸である上記2記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
4.酸が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である上記2記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
5.銅または銅合金を溶解する成分を含み、かつpHが3以下である上記2記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
6.銅または銅合金を溶解する成分が、塩化鉄(III)または塩化銅(II)である上記2または5記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
7.さらに、界面活性剤を含有する上記2〜6のいずれか記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
8.上記1記載のエッチング液を用いて被エッチング材をエッチングすることを特徴とする銅または銅合金エッチング方法、
9.上記2〜7のいずれか記載の前処理液を用いて被エッチング材の表面を前処理し、次いで、上記1記載のエッチング液を用いて被エッチング材をエッチングすることを特徴とする銅または銅合金エッチング方法、および
10.前処理後、被エッチング材を水洗してからエッチングする上記9記載の銅または銅合金エッチング方法
を提供するものである。
水を主成分とし、(1)1〜20質量%の塩化鉄(III)および(2)塩化鉄に対して5〜100質量%のシュウ酸を含有する本発明の銅または銅合金用のエッチング液及び該エッチング液を用いたエッチング方法によれば、著しいサイドエッチを生じることなく銅または銅合金をエッチングすることができる。また、水を主成分とし、銅または銅合金を溶解する成分及び酸から選択される少なくとも1種の成分を含有する本発明の銅または銅合金用のエッチング前処理液及び該前処理液により前処理を行うエッチング方法によれば、エッチング後、レジストパターンの無い部分に、被エッチング金属である銅または銅合金が粒状や筋状に残存する欠陥(以下、「残存欠陥」と記す)を防ぎ、よってこれにより製造される製品の歩留まりを向上させることができる。
本発明の前処理液に含まれる酸が、1価の酸であることにより、残存欠陥を高度に抑制することができる。本発明の前処理液に含まれる酸が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸であることによっても、残存欠陥を高度に抑制することができる。本発明の前処理液が、銅または銅合金を溶解する成分を含み、かつpHが3以下であることによっても、残存欠陥を高度に抑制することができる。本発明の前処理液が、界面活性剤を含有することによって、歩留まり向上効果を向上させることができる。
本発明の前処理液において、銅または銅合金を溶解する成分が、塩化鉄(III)または塩化銅(II)であることで、サイドエッチを増大させることや、製造工程を複雑にすることなく歩留まりを改善することができる。
前処理後、被エッチング材を水洗してからエッチングを行うことで、サイドエッチを増大させることなく歩留まりを改善することができる。
すなわち、本発明の銅または銅合金用のエッチング液、銅または銅合金用の前処理液および銅または銅合金のエッチング方法により、従来困難であった高い回路密度を有するプリント配線板のサブトラクティブ法による製造が可能になった。しかも、本発明のエッチング液は、硫化水素のような有毒ガスを発生せず、また処理方法が確立された成分のみからなることから使用後の処理も容易かつ完全に行うことができ、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することも容易である。また、本発明の好ましい実施態様においては、高い回路密度を有するプリント配線板を、良好な歩留まりで製造できるようになった。
図1はエッチング法により得られる導体パターンの断面概略図である。
図2は歩留まり評価用のプリント配線板のパターン概略図である。
図3は歩留まり評価用のプリント配線板の一部分の拡大概略図である。
図1〜図3中の符号を以下に説明する。
導体パターンにおけるラインのトップ幅
導体パターンにおけるラインのボトム幅
レジストパターンのライン幅
t 導体パターンの厚み(銅厚)
1 レジストパターン
2 銅箔(導体パターン)
3 基材
以下、銅または銅合金用のエッチング液を「エッチング液」、銅または銅合金用のエッチング前処理液を「前処理液」、銅または銅合金のエッチング方法を「エッチング方法」という。本発明のエッチング液、前処理液およびエッチング方法は、銅または銅合金用である。本発明における銅合金は、銅を75質量%以上含有する合金をいい、その例としては、青銅、丹銅、白銅等が挙げられる。銅を75質量%未満しか含有しない合金に本発明のエッチング方法を用いても、サイドエッチを小さくする効果は得られない場合が多い。
本発明のエッチング液は、第一の必須成分として塩化鉄(III)を含む。本発明のエッチング液における塩化鉄(III)の濃度はエッチング液の総量に対して1〜20質量%とすることが必要であり、2〜10質量%とすることが好ましい。塩化鉄(III)の濃度がこれより低い場合にはエッチングの速度が著しく遅くなって実用的でなく、また塩化鉄(III)の濃度がこれより高い場合にはサイドエッチの抑制が不十分になるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり用いる塩化鉄(III)の形態は特に限定されず、無水物または六水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されている塩化鉄(III)を適宜希釈して用いても差し支えない。なお、固形の塩化鉄(III)は通常六水和物(式量270.30)として供給されるが、本発明における塩化鉄(III)濃度の計算は無水物(式量162.21)を基準として行う。例えば、塩化鉄(III)10質量%を含む本発明のエッチング液1.0kgを調製する場合には、塩化鉄(III)六水和物はその1.0kg×10%×(270.30/162.21)=167gを用いることになる。
本発明のエッチング液は、第二の必須成分としてシュウ酸を含む。シュウ酸の添加量は塩化鉄(III)に対して5〜100質量%とすることが必要であり、5〜50質量%とすることが好ましい。シュウ酸の添加量がこれよりも少ない場合にはサイドエッチの抑制が不十分になり、また、シュウ酸の添加量がこれよりも多い場合にはエッチングに非常な長時間を必要としたり、微細スペースが十分にエッチングされなかったりという問題が生じるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり用いるシュウ酸の形態は特に限定されず、無水物または二水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されているシュウ酸を適宜希釈して用いてもよい。なお、固形のシュウ酸は通常二水和物(式量126.07)として供給されるが、本発明におけるシュウ酸濃度の計算は無水物(式量90.04)を基準として行う。例えば、シュウ酸1.0質量%を含む本発明のエッチング液1.0kgを調製する場合には、シュウ酸二水和物はその1.0kg×1.0%×(126.07/90.04)=14gを用いることになる。
本発明のエッチング液を用いてエッチングを行う場合、微細なパターンのエッチングに有利という理由から、スプレーエッチング法を用いることが好ましく、単位面積当たりの噴射液量を25〜200mL/cm・minとしたスプレーエッチング法を用いることがより好ましい。噴射液量がこれよりも少ない場合にはエッチング速度が著しく低下する場合があり、噴射液量がこれよりも多い場合にはレジストパターンの破壊が発生してラインが断線する場合があるからである。
また、本発明のエッチング液を用いてスプレーエッチングを行う場合、スプレーノズルへのエッチング液の供給圧(ゲージ圧、すなわち大気圧との相対圧。以下同じ)は、50〜500kPaとすることが好ましく、100kPa〜300kPaとすることがより好ましい。該供給圧が低すぎる場合にはエッチング速度が著しく低下する場合があり、該供給圧が高すぎる場合にはレジストパターンの破壊が発生してラインが断線する場合があるからである。
本発明のエッチング液を用いてエッチングを行う場合、エッチング液の温度は15〜50℃とすることが好ましく、25〜45℃とすることがより好ましい。該温度がこれよりも低い場合、細かいスペース部のエッチング速度が著しく低下することがあり、また該温度がこれよりも高い場合、サイドエッチの抑制が不十分になることがあるからである。
本発明のエッチング液には、界面活性剤、消泡剤、アルコール、グリコール等の濡れ促進剤等を含有せしめることもできるが必須ではない。
本発明のエッチング液を用いる場合、従来のエッチング液を用いる場合と比較して、残存欠陥が起こりやすい問題がある。プリント配線板の製造においてかかる現象が発生すると、本来絶縁されているべき隣接配線パターン間に導通が生じる欠陥、いわゆるショート欠陥になる。被エッチング材を取り扱う環境を清浄にすること、例えば、被エッチング材をクリーンルーム等の清浄な環境で取り扱うようにしたり、洗浄等の工程に用いる水としてイオン交換水や、逆浸透膜によって精製した水等の不純物の含有量が少ない水を用いたりすることで回避することができるが、これらの方法は大掛かりな設備を必要とし、またその維持・運転にも多量のエネルギーや労力を要するという問題がある。
かかる問題を回避するための手段として、エッチング前の被エッチング材を、前処理液として、酸を含む水溶液により処理することが有効である。かかる前処理液による処理により歩留まりが向上する理由は明らかではないが、シュウ酸と不溶性の塩を形成し本発明のエッチング液によるエッチングを阻害するアルカリ土類金属イオン等による被エッチング材表面の汚染物質が、かかる前処理液により除去されるためと推定される。
かかる前処理液に含まれる酸としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸等を使用することができる。ショート欠陥の抑制効果が高く、歩留まりをより向上させることができる点で、1価の酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸がより好ましく用いられる。かかる1価の酸としては、塩酸、硝酸、アミド硫酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸等が例示される。また、ショート欠陥の抑制効果が高く、歩留まりをより向上させることができる点で、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、すなわちカルボン酸基と水酸基の双方を有する脂肪族有機化合物も好ましく使用できる。脂肪族ヒドロキシカルボン酸の例としては乳酸、グリコール酸、クエン酸、イソクエン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられ、そのいずれもが本発明において好適に使用される。本発明において、脂肪族ヒドロキシカルボン酸はその価数を問わず好適に使用することができるが、高いショート欠陥の抑制作用を得るためには、カルボン酸基1個あたりの炭素数については、4以下であることが好ましい。
本発明において、前処理液に含まれる酸の量は0.5質量%以上10質量%未満が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。酸の量が少なすぎると歩留まり改善効果が十分でなくなる場合があり、また酸の量が多すぎると不経済になるのみならず、前処理中あるいはエッチング中に酸の作用によりレジストパターンが破損し、オープン欠陥、すなわち、本来残存すべき部分の被エッチング金属がエッチングされてしまう欠陥が発生しやすくなり、かえって歩留まりが低下する場合があるからである。あるいはオープン欠陥を生じさせないまでも、レジストパターンと被エッチング金属の境界に少量のエッチング液が浸入し、レジストパターンのライン形状が直線的であっても、導体パターンのライン形状にうねりが生じる場合があるからである。また、本発明において、前処理液に含まれる酸は1種でも良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明における、残存欠陥を回避するためのもう1つの手段として、エッチング前の被エッチング材を、前処理液として、銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液により処理することも有効である。本発明における、銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液とは、被エッチング材をかかる前処理液に30分間浸漬したとき、被エッチング金属である銅または銅合金が厚み0.5μm以上溶解される水溶液を言う。かかる前処理液による処理により、歩留まりが向上する理由は明らかではないが、被エッチング材表面に存在する各種の汚染物質が、被エッチング材の表層にある被エッチング金属と共に除去されるためと推定される。
かかる銅または銅合金を溶解する成分を含有する前処理液としては、塩化銅(II)水溶液、塩化鉄(III)水溶液、硫酸と過酸化水素の混合水溶液、過硫酸塩水溶液、硝酸、過ヨウ素酸カリウム水溶液等が挙げられる。
本発明において、前処理液に含まれる銅または銅合金を溶解する成分の濃度は、0.05質量%以上20質量%未満が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。濃度が低すぎると歩留まり改善効果が十分でなくなる場合があり、また濃度が高すぎると、被エッチング金属の除去量が不均一になり、レジストパターンのライン形状が直線的であっても、導体パターンのライン形状にうねりが生じる場合がある。なお、本発明の前処理液が、酸と銅または銅合金を溶解する成分の両方を含む場合や、硝酸のように銅または銅合金を溶解する酸を含む場合には、上記酸の量が多すぎる場合に発生しうる問題を回避するために、酸の量は5質量%以下であることが好ましい。
前処理液として、酸を含む水溶液と、銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液とのいずれがより有効であるかは一概には言えないが、被エッチング材表面の汚染が軽度である場合には、銅または銅合金を溶解する成分のみを含む水溶液を用いる場合よりも、酸のみを含む水溶液を用いる場合に、より高い歩留まりが得られるので好ましい。また、被エッチング材表面の汚染が重度の場合には、酸のみを含む水溶液を用いる場合は歩留まり改善効果がほとんど得られないことがあるのに対し、ある程度の歩留まりが得られることが多い銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液を用いることがより好ましい。ここで重度の汚染とは、例えば、レジストパターン形成後に長時間放置された場合に、被エッチング材表面に前記したアルカリ土類金属イオン等による汚染物質がこびりついた状態等をいう。
本発明において、銅または銅合金を溶解する成分を含む前処理液を用いる場合に、かかる前処理液のpHが3以下であることにより、被エッチング材表面の汚染が重度である場合にも、さらに高い歩留まりを得ることができることが多いので好ましい。
本発明の前処理液に界面活性剤を含ませることで、歩留まり向上の効果が更に向上することから好ましい。かかる界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(いわゆる、プルロニック系界面活性剤)、脂肪酸ペンタエリスリトールエステル等のノニオン系界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。特に本発明の前処理液のpHが5以下である場合には、アニオン系の界面活性剤、特にカルボン酸系の界面活性剤は有効に作用しないことがある。また、カチオン系の界面活性剤、両性界面活性剤は銅の表面に吸着して後のエッチングを阻害することがあるから、ノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。
本発明の前処理液を用いて被エッチング材を前処理する方法としては、被エッチング材を前処理液に浸漬する方法、前処理液を含有する布帛等を用いて被エッチング材の表面を拭く方法、被エッチング材の表面に前処理液をかけ流す方法、スプレーノズルを用いて被エッチング材の表面に前処理液を噴霧する方法等があるが、これらのうちスプレーにより噴射する方法が、連続的な処理を容易に行うことができ、かつ歩留まり向上の効果が高くなることから好ましく用いられる。
本発明において、前処理液として塩化鉄(III)水溶液または塩化銅(II)水溶液以外の水溶液を用いた場合、前処理液工程とエッチング工程の間には水洗工程を含むことが好ましい。エッチング液への異なる化学種がエッチング液に混入し、サイドエッチを増大させる等の問題を引き起こすことがあるからである。
前処理液として、塩化鉄(III)または塩化銅(II)を用いる場合にも、前処理液工程とエッチング工程の間に被エッチング材を水洗しても良い。ただし、塩化鉄(III)または塩化銅(II)を用いた場合には、エッチング液に前処理液が混入してもサイドエッチが増大する等の問題が生じにくいため、水洗工程を除いて、工程を簡略化できるという利点がある。
なお、本発明のエッチング液を使用後に廃棄する場合、最も基本的な重金属含有排水の処理工程の1種である水酸化カルシウムを添加してpHを弱アルカリに調整する工程により、含有有害化学種である鉄(II)イオン、鉄(III)イオン、銅(I))イオン、銅(II))イオンおよびシュウ酸イオンの全てが環境保全上問題のない程度まで容易に沈降除去されるため、チオ化合物、アゾール化合物、アミン化合物を含有するエッチング液が必要とするような、オゾン酸化等の特殊な排水処理工程は必要としない。
以下本発明の実施例を示す。
[実施例1]
<エッチング液の調製>
市販の40°ボーメの塩化鉄(III)水溶液(濃度37質量%)27g(無水物として10g)、シュウ酸二水和物0.70g(無水物として0.50g)に水を加え1kgとし、塩化鉄(III)1.0質量%、シュウ酸0.050質量%を含むエッチング液を調製した。
<被エッチング材1の作製>
厚み1.6mmのガラスエポキシ基材(FR−4規格)と厚み12μmの電解銅箔を接着した銅貼積層板の表面に、ポジ型液状レジストを、乾燥後の厚みが6μmになるように塗布・乾燥した。次いでライン/スペースの幅がそれぞれ15μm/15μmの評価用パターンを露光後、現像・水洗してレジストパターンを形成し、被エッチング材1を作製した。
<エッチング>
30℃に調整した上記エッチング液を、噴射面の直径が6.0cmの充円錐型スプレーノズルを用いて、ノズルへの液供給圧150kPa、噴射量880mL/min(単位面積当たり31mL/cm・min)で被エッチング材1に向け噴射してエッチングを行った。噴射時間120秒でラインのボトム幅(w)がwと同じ15μmになった。噴射時間をw=wとなる時間の1.2倍(144秒)にした場合のwは14μm、ラインのトップ幅(w)は8μmであった。さらに、噴射時間をw=wとなる時間の2.0(240秒)にした場合のwは12μm、wは8μmであった。
[実施例2〜8]
実施例1と同様にして、表1および表2に示す濃度の塩化鉄(III)およびシュウ酸を含むエッチング液を調製し、実施例1と同一の被エッチング材に、それぞれ規定の噴射条件でスプレーエッチングを行って、(1)w=w(15μm)となる噴射時間X(秒)、(2)噴射時間をXの1.2倍とした場合のwおよびw、(3)噴射時間をXの2.0倍とした場合のwおよびwを測定し、結果を表1および2に示した。
[比較例1〜7]
実施例1と同様にして、表2および表3に示す濃度の組成のエッチング液を調製し、実施例1と同一のレジストパターン形成済み基板に、それぞれ規定の噴射条件でスプレーエッチングを行って、同様の評価を行った。
実施例1〜8で明らかになるように、本発明により、従来公知のエッチング液を使用することでは困難であった、サイドエッチの発生が極めて少ないエッチングが可能になった。とりわけ実施例3〜6の如き、本発明のうちでも特に好適な条件でエッチングを行った場合には、十分なスペース幅が得られた後になお長時間エッチングを継続した場合のライン幅減少が微小であり、きわめて安定に所望の回路パターンを形成させることができた。
これに対し、本発明の必須の成分であるシュウ酸を含まない比較例1のエッチング液や、特許文献1及び2に記載されている従来公知の添加剤を添加した比較例2、3のエッチング液、シュウ酸の添加量が本発明で提案するものよりも少ない比較例4のエッチング液では、本発明のエッチング液よりも大きなサイドエッチが生じた。また、本発明の量範囲を超えてシュウ酸を含有する比較例5のエッチング液では、エッチングが進行しなかった。また、特許文献3に記載されている塩化鉄(III)の濃度が本発明で提案するものよりも高い比較例6、7のエッチング液では、噴射時間Xを越えた後のライン幅減少が急激であり、大きなサイドエッチが生じた。
[実施例9]
<エッチング液の調製>
市販の40°ボーメの塩化鉄(III)水溶液(濃度37質量%)13.5kg(無水物として5.00kg)、シュウ酸二水和物1.40kg(無水物として1.00kg)に水を加え100kgとし、塩化鉄(III)5.0質量%、シュウ酸1.0質量%を含むエッチング液100kgを調製した。
<前処理液の調製>
水980gに硫酸(濃度98質量%)20gを加え、よく混合して濃度2.0質量%の前処理液を調製した。
<被エッチング材2の作製>
厚み40μmのポリイミド絶縁材と厚み9μm銅箔の電解銅箔を接着した銅貼積層板に、ポジ型液状レジストを、乾燥後の厚みが6μmになるように塗布・乾燥した。ここに、図2に示す評価用くし型配線を1区画としたレジストパターンを100区画形成し、被エッチング材2を作製した。図3は、図2の波線楕円部分の拡大図である。評価用くし型配線は、ライン/スペースが15μm/15μmで構成されている。
<前処理>
被エッチング材2の表面に、上記前処理液をスプレーガンで噴霧し、エッチングの前処理を行った。
<エッチング>
実施例1で用いたものと同じスプレーエッチング装置を用い、被エッチング材2に上記エッチング液を90秒噴射して評価用プリント配線板を作製した。
[実施例10〜20]
前処理液の組成を表4に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして、評価用プリント配線板を作製し、歩留まりの評価を行った。
[実施例21]
前処理を行わなかった以外には、実施例9と同様にして評価用プリント配線板を作製し、歩留まりの評価を行った。
[実施例22〜23]
前処理液の組成を表4に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして評価用プリント配線板を作製し、歩留まりの評価を行った。
<評価>
実施例9〜23で作製した評価用プリント配線板の各区画につき、導体部Aと導体部B間の導通の有無を検査し、導体部Aと導体部Bの間に導通がなかったものを良品、導通があったものを不良品とし、良品数/(良品数+不良品数)の計算で歩留まり(%)を求めた。導体部Aと導体部Bの間に導通があることは、両導体部間のスペース部に残存欠陥が存在することで、ショート欠陥が生じていることを意味しており、このような場合、同様の条件で実用に供する配線板を製造しても同様のショート欠陥が発生しやすい。なお、プリント配線板の回路パターンに発生する欠陥には、ショート欠陥の他に、オープン欠陥、すなわち本来導通しているべき2点間が導通していない欠陥もあるが、光学的な検査の結果、実施例9〜23のエッチング条件におけるオープン欠陥の発生率はショート欠陥の発生率と比較して十分に小さく、本評価による歩留まりの結果に実質的な影響を与えるものではないことが確認されている。なお、実施例9〜23のいずれにおいても、ラインのトップ幅w、ラインのボトム幅wは12〜15μmの範囲にあり、サイドエッチの少ないエッチングが行われていた。
実施例9〜20と実施例21〜23を比較して分かるように、塩化鉄(III)およびシュウ酸を含むエッチング液でエッチングする場合に、酸を含む前処理液で被エッチング材を前処理することによって、ショート欠陥の発生の発生を抑制し、歩留まりを向上させることができる。
実施例9〜11と実施例12〜15を比較すれば分かるように、前処理液に用いる酸としては1価の酸が好ましく、これにより良好なショート欠陥の抑制効果を得ることができる。
さらに、実施例9〜14と実施例15〜17を比較すればから分かるように、前処理液に用いる酸としては脂肪族ヒドロキシカルボン酸がさらに好ましく、これによりさらに良好なショート欠陥の抑制効果を得ることができる。
また、実施例9と実施例18、実施例13と実施例19、実施例15と実施例20とを比較して分かるように、本発明の前処理液に界面活性剤を含有せしめることでショート欠陥の抑制効果をさらに増強することができる。これは、酸を含む前処理液に界面活性剤を併用した場合に初めて得られる効果であり、実施例23から分かるように、界面活性剤のみを含有する前処理液では高度なショート欠陥の抑制効果は得られない。
[実施例24]
被エッチング材2に、実施例20の前処理液を噴霧し、軽く絞った後に質量を測定した。その結果、1枚の被エッチング材2につき1.8gの前洗浄液が付着していることが判明した。そこで、前処理液による処理後水洗しないでエッチングする場合に相当する模擬実験として、1000枚の被エッチング材2をエッチングしたときにエッチング液に混入する量に相当する1800gの前処理液を実施例9のエッチング液に添加してエッチングした。
<評価>
実施例20および24で作製した評価用プリント配線板につき、導体パターンのトップ幅w/導体パターンのボトム幅wを測定したところ、実施例20の評価用プリント配線板については12.6μm/14.2μm、実施例24の評価用プリント配線板については11.4μm/13.8μmであった。
[実施例25]
酸を含む前処理液による処理の後に、水洗してからエッチングした場合に相当する模擬実験として、実施例9のエッチング液に1800gのイオン交換水を添加してエッチングした。このときのw/wは12.3μm/13.9μmであった。
実施例24と25を比較して分かるように、酸を含む前処理液による処理の後、水洗してからエッチングすることで、前処理液がエッチング液に混入することによるサイドエッチの増大を避けることができ、安定してエッチングすることができるようになる。
[実施例26]
<前処理液の調製>
728gの水に、過酸化水素(濃度30質量%)167g、硫酸(濃度95%)105gを加え、よく混合して過酸化水素濃度5.0質量%、硫酸濃度10質量%の前処理液を調製した。この前処理液のpHをガラス電極pH計で測定したところ1未満であった。また、実施例9で用いた銅貼積層板をこの前処理液に30分間浸漬した後、銅厚の減少量を測定したところ、6.3μmであった。
<前処理>
汚染が軽度の被エッチング材としては、実施例9の被エッチング材2をそのまま用いた。また汚染が重度の被エッチング材としては、実施例9の被エッチング材2を、実験台上に汚染防止措置を講ぜずに3日間放置した被エッチング材3ものを用いた。それぞれの被エッチング材に、前処理液をスプレーガンで20秒噴霧し、エッチングの前処理を行った。前処理後の被エッチング材はまず水道水にて洗浄、次いでイオン交換水で洗浄した後イオン交換水中に保存し、次のエッチングに用いた。
<エッチング>
前処理を行った被エッチング材2および3に、スプレーエッチング装置を用い、実施例9と同じエッチング液を90秒噴射して評価用プリント配線板を作製した。
[実施例27〜42]
前処理液の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用プリント配線板を作製した。また、各前処理液のpHおよび銅溶解量を測定したところ、表5に示すようであった。
[実施例43]
前処理液を水とした以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
[実施例44]
前処理を行わなかった以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
[比較例8]
エッチング液がシュウ酸を含まないこと、およびエッチング液の噴射時間を40秒にしたこと以外は、実施例44と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
[比較例9]
エッチング液がシュウ酸を含まないこと、およびエッチング液の噴射時間を40秒にしたこと以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
<評価>
実施例26〜44と比較例8〜9で作製した各評価用プリント配線板につき、実施例9〜23に行ったのと同様の評価を行い、歩留まりを求めた。なお、光学的な検査の結果、実施例26〜44のエッチング条件におけるオープン欠陥の発生率はショート欠陥の発生率と比較して十分に小さく、本評価の結果に実質的な影響を与えるものではないことが確認されている。また、実施例26〜44のいずれにおいても、ラインのトップ幅w、ラインのボトム幅wは12〜15μmの範囲にあり、サイドエッチの少ないエッチングが行われていた。
さらに、レジストパターンの縁が直線である部分につき、形成された導体パターンの縁形状を顕微鏡で観察し、非常に直線的である場合を良好、明らかにうねりが生じている場合を不良とし、良好、やや良好、普通、やや不良、不良の5段階に分類した。
実施例26〜39からわかるように、塩化鉄(III)およびシュウ酸を含むエッチング液でエッチングする場合に、被エッチング材を、銅または銅合金を溶解する成分を含有する前処理液で処理することで、ショート欠陥の発生を抑制し、歩留まりを向上させることができる。
それに対して、前処理液として水を用いた実施例43や前処理を行わなかった実施例44では、実施例26〜39と比較して、ショート欠陥が発生し、歩留まりが低かった。また、実施例26〜39と、実施例40および42の比較からわかるように、銅または銅合金に対して溶解力をもたない酸を含有する水溶液を前処理液として用いた場合では、汚染が軽度の被エッチング材2では歩留まり改善効果が得られるが、汚染が重度の被エッチング材3では歩留まり改善効果が不十分であった。そして、シュウ酸を含んでいない塩化鉄(III)水溶液でエッチングした比較例8、銅または銅合金を溶解する成分を含有する前処理液で処理し、シュウ酸を含んでいない塩化鉄(III)水溶液でエッチングした比較例9では、著しいサイドエッチと、それに起因するオープン欠陥が多数発生し、微細なパターンを有するプリント配線板を製造することはできなかった(歩留まり0%)。
また、実施例26〜39において、特に、実施例28と実施例29、実施例33と実施例34との比較からわかるように、前処理液としてpH3以下の酸性溶液を用いることで、高度な水準で歩留まりの向上が実現できる。
さらに、実施例28と実施例38、実施例31と実施例39の比較からわかるように、銅または銅合金を溶解する成分を含有する本発明の前処理液に界面活性剤を含ませることで、界面活性剤を含まない前処理液を用いた場合よりも高度な歩留まりの向上が実現できる。しかし、実施例41からわかるように、前処理液として界面活性剤を単独で用いた場合は、歩留まり向上の効果は得られず、実施例42からわかるように、前処理液として銅または銅合金に対して溶解力を持たないpH3以下の酸に界面活性剤を含ませた溶液を用いた場合は、汚染が軽度の被エッチング材2では大きな歩留まり改善効果が得られるが、汚染が重度の被エッチング材3に対する歩留まり改善効果は不十分であった。
なお、実施例26〜39のうち、前処理液が10質量%以上の酸を含む実施例26、27や、20質量%以上の銅または銅合金を溶解する成分を含有する実施例32、37には、レジストパターンの縁が直線であっても、導体パターンの縁にうねりが生じる傾向があった。
[実施例45]
汚染が軽度の被エッチング材2に、実施例26の前処理液を噴霧し、軽く絞った後に質量を測定した。その結果、1枚の被エッチング材2につき1.8gの前洗浄液が付着していることが判明した。そこで、前処理液による処理後水洗しないでエッチングする場合に相当する模擬実験として、1000枚の被エッチング材2をエッチングしたときにエッチング液に混入する量に相当する1800gの実施例26の前処理液を実施例9のエッチング液に添加し、その他の部分は実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。この評価用プリント配線板の導体パターンのトップ幅w/導体パターンのボトム幅wを測定したところ、実施例26の評価用プリント配線板の12.6μm/14.2μmに対し11.4μm/13.9μmであった。
[実施例46]
前処理液による処理の後に、水洗してからエッチングした場合に相当する模擬実験として、実施例9のエッチング液に1800gのイオン交換水を添加した以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。本実施例で作製した評価用プリント配線板のw/wは12.2μm/13.8μmであった。
[実施例47および48]
実施例45の如く、それぞれの前処理液1800gをエッチング液に添加してエッチングを行った以外には、実施例31、36と同様にして評価用プリント配線板を作製した。これらの実施例で作製した評価用プリント配線板のw/wは12.4μm/13.9μm、12.3μm/14.0μmであった。
実施例47および48で作製した評価用プリント配線板のwおよびwは、実施例46のそれとほぼ同じであり、前処理液として、塩化鉄(III)水溶液または塩化銅(II)水溶液を用いた場合には、前処理工程後の水洗をしなくても、サイドエッチが増大するなどの影響が生じにくいことが分かる。これに対し、実施例45の如く、前処理液が塩化鉄(III)水溶液または塩化銅(II)水溶液でない場合には、作製された評価用プリント配線板にやや大きなサイドエッチが生じることが分かる。
本発明のエッチング液は、プリント配線板の製造のみならず、リードフレーム、精密歯車、精密板ばね、エンコーダ用ディスクやストライプ、各種ステンシルの製造等のその他各種の産業用途においても、高度に制御された銅または銅合金のエッチングが必要な場合に好適に用いることができる。
本発明は、高密度のプリント配線板製造に適した銅または銅合金用のエッチング液、銅または銅合金用のエッチング前処理液、該エッチング液または該エッチング前処理液を用いた銅または銅合金のエッチング方法に関する。
近年、電子機器の小型化高機能化が急速に進展し、これら機器に内蔵されるプリント配線板に関しても、高い回路密度を有するものが強く求められている。
プリント配線板の製造方法としては、あらかじめ銅箔を接着した基板上にスクリーン印刷、光リソグラフィ等の方法でレジストパターンを形成し、塩化鉄(III)水溶液等のエッチング液を用いて不要部分の銅箔を除去して導体パターンを作製する、いわゆるサブトラクティブ法が広く用いられている。しかし、この方法によりプリント配線板を製造する場合、レジストパターンの裏面にエッチング液が回りこみ、導体パターンのライン幅がレジストパターンのそれよりも細くなる、いわゆるサイドエッチが生じることが知られている。サイドエッチが生じると、導体パターンのトップ幅またはボトム幅が狭くなり、部品の実装に必要な面積が確保できなくなるという問題があることから、回路密度の高いプリント配線板をサブトラクティブ法で製造することは困難であった。
以上のような問題から、高い回路密度のプリント配線板を製造するためには、メッキにより回路を形成させるいわゆるアディティブ法が用いられている。しかしアディティブ法には、工程が複雑であり、かつ長い時間を要するメッキ工程を経るため、本質的にコストが非常に高くなるという問題がある。エッチング時のサイドエッチさえ抑制されれば、サブトラクティブ法によっても高い回路密度のプリント配線板を製造できることから、サイドエッチが高度に抑制されたエッチングを可能ならしめる技術が強く求められている。
図1は、エッチング法により得られる導体パターンの断面概略図である。基材3上に銅箔2で厚みtの導体パターンが設けられている。プリント配線板においては、隣接導体パターンとの電気的絶縁を確保するために、導体パターンのトップとボトムの両方で適切なスペースが確保される必要がある。トップ幅wあるいはボトム幅wが狭くなりすぎると、十分な電気的特性を維持することができない。また、トップ幅wが狭くなりすぎた場合には、表面への部品の実装が困難になるし、導体パターンのトップ幅wがレジストパターンのライン幅wよりも著しく狭くなった場合には、エッチングの最中に銅箔2からレジストパターン1が剥離して導体パターンが断線する等の問題も生じる。また、ボトム幅wが狭くなりすぎた場合には、基材3から導体が剥離して導体パターンが断線する等の問題が生じる。かかる問題を生じさせないために、導体パターンのトップ幅wおよびボトム幅wが、レジストパターンの幅wと比較して狭くなりすぎないことが求められるのである。
銅または銅合金のエッチングに用いるエッチング液としては、導体パターン幅の細り(w−wおよびw−w)が比較的小さい等の利点から、塩化鉄(III)の水溶液が広く使われている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、従来のエッチング技術による限り、塩化鉄(III)水溶液を用いても得られるエッチファクター(2t/[w−w])の絶対値は、理想的な場合においても5、現実的には高々4程度である。すなわち、導体厚みが9μmの場合でw=wとなるまでエッチングを行った場合のw−wは理想的な場合で3.6μm、現実的には4.5μm以上はあった。エッチファクターがこの程度の場合、配線の微細化は銅厚9μmで40μmピッチ、すなわち隣接導体パターンの中心線間隔40μmが限界であり、これ以下のピッチを有する微細パターンを形成させることは不可能であった。
特許文献1では、サイドエッチを抑制するための技術として、塩化鉄(III)を主成分としチオ尿素を添加したエッチング液を用いることが提案されている。しかし、本技術は、近年求められている非常に高密度な基板製造に用いるにはサイドエッチ抑制能力が不十分であるばかりか、発がん性が疑われるチオ尿素を使用したり、さらにエッチング液の保存・使用中に、有毒でかつ悪臭物質である硫化水素ガスが発生したりという労働衛生上および公害防止上重大な問題を有している。
さらに、特許文献2では、塩化鉄(III)等の酸化性金属塩と無機酸あるいは有機酸を成分とするエッチング液にベンゾトリアゾール等のアゾール化合物を添加することが提案されている。しかし、本技術もサイドエッチ抑制能力が不十分であるばかりか、生分解性が一般に低いアゾール化合物を使用するという環境保全上重大な問題を有している。
さらに、特許文献3では、塩化鉄(III)または塩化銅(II)を主成分とするエッチング液に、特定量のシュウ酸またはオキシカルボン酸を添加してなるエッチング液が提案されているが、かかるエッチング液は近年求められているような精密な加工を目的としたものではなく、上記の如きピッチの細かいプリント配線板の製造に用いた場合、エッチングがある程度進むと、エッチング速度が急激に増大してライン幅が急激に細くなり、事実上エッチングを制御することが不可能であった。
米国特許第3144368号明細書 米国特許出願公開第2005/016961号公報 特開昭53−30435号公報
プリント回路学会編、プリント回路技術便覧、日刊工業新聞社発行1978年2月28日、p649〜651
本発明の目的は、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することができ、従来実現が困難であった、サイドエッチが僅少であり、高い回路密度のプリント配線板を歩留まり良く製造するために適した銅または銅合金用のエッチング液、銅または銅合金用のエッチング前処理液および該エッチング液、エッチング前処理液を用いた銅または銅合金のエッチング方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、
1.水を主成分とし、(1)1〜20質量%の塩化鉄(III)および(2)塩化鉄に対して5〜100質量%のシュウ酸を含有することを特徴とする銅または銅合金用エッチング液、
2.水を主成分とし、銅または銅合金を溶解する成分及び酸から選択される少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする銅または銅合金用エッチング前処理液、
3.酸が1価の酸である上記2記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
4.酸が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である上記2記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
5.銅または銅合金を溶解する成分を含み、かつpHが3以下である上記2記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
6.銅または銅合金を溶解する成分が、塩化鉄(III)または塩化銅(II)である上記2または5記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
7.さらに、界面活性剤を含有する上記2〜6のいずれか記載の銅または銅合金用エッチング前処理液、
8.上記1記載のエッチング液を用いて被エッチング材をエッチングすることを特徴とする銅または銅合金エッチング方法、
9.上記2〜7のいずれか記載の前処理液を用いて被エッチング材の表面を前処理し、次いで、上記1記載のエッチング液を用いて被エッチング材をエッチングすることを特徴とする銅または銅合金エッチング方法、および
10.前処理後、被エッチング材を水洗してからエッチングする上記9記載の銅または銅合金エッチング方法
を提供するものである。
水を主成分とし、(1)1〜20質量%の塩化鉄(III)および(2)塩化鉄に対して5〜100質量%のシュウ酸を含有する本発明の銅または銅合金用のエッチング液及び該エッチング液を用いたエッチング方法によれば、著しいサイドエッチを生じることなく銅または銅合金をエッチングすることができる。また、水を主成分とし、銅または銅合金を溶解する成分及び酸から選択される少なくとも1種の成分を含有する本発明の銅または銅合金用のエッチング前処理液及び該前処理液により前処理を行うエッチング方法によれば、エッチング後、レジストパターンの無い部分に、被エッチング金属である銅または銅合金が粒状や筋状に残存する欠陥(以下、「残存欠陥」と記す)を防ぎ、よってこれにより製造される製品の歩留まりを向上させることができる。
本発明の前処理液に含まれる酸が、1価の酸であることにより、残存欠陥を高度に抑制することができる。本発明の前処理液に含まれる酸が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸であることによっても、残存欠陥を高度に抑制することができる。本発明の前処理液が、銅または銅合金を溶解する成分を含み、かつpHが3以下であることによっても、残存欠陥を高度に抑制することができる。本発明の前処理液が、界面活性剤を含有することによって、歩留まり向上効果を向上させることができる。
本発明の前処理液において、銅または銅合金を溶解する成分が、塩化鉄(III)または塩化銅(II)であることで、サイドエッチを増大させることや、製造工程を複雑にすることなく歩留まりを改善することができる。
前処理後、被エッチング材を水洗してからエッチングを行うことで、サイドエッチを増大させることなく歩留まりを改善することができる。
すなわち、本発明の銅または銅合金用のエッチング液、銅または銅合金用の前処理液および銅または銅合金のエッチング方法により、従来困難であった高い回路密度を有するプリント配線板のサブトラクティブ法による製造が可能になった。しかも、本発明のエッチング液は、硫化水素のような有毒ガスを発生せず、また処理方法が確立された成分のみからなることから使用後の処理も容易かつ完全に行うことができ、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することも容易である。また、本発明の好ましい実施態様においては、高い回路密度を有するプリント配線板を、良好な歩留まりで製造できるようになった。
エッチング法により得られる導体パターンの断面概略図である。 歩留まり評価用のプリント配線板のパターン概略図である。 歩留まり評価用のプリント配線板の一部分の拡大概略図である。
以下、銅または銅合金用のエッチング液を「エッチング液」、銅または銅合金用のエッチング前処理液を「前処理液」、銅または銅合金のエッチング方法を「エッチング方法」という。本発明のエッチング液、前処理液およびエッチング方法は、銅または銅合金用である。本発明における銅合金は、銅を75質量%以上含有する合金をいい、その例としては、青銅、丹銅、白銅等が挙げられる。銅を75質量%未満しか含有しない合金に本発明のエッチング方法を用いても、サイドエッチを小さくする効果は得られない場合が多い。
本発明のエッチング液は、第一の必須成分として塩化鉄(III)を含む。本発明のエッチング液における塩化鉄(III)の濃度はエッチング液の総量に対して1〜20質量%とすることが必要であり、2〜10質量%とすることが好ましい。塩化鉄(III)の濃度がこれより低い場合にはエッチングの速度が著しく遅くなって実用的でなく、また塩化鉄(III)の濃度がこれより高い場合にはサイドエッチの抑制が不十分になるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり用いる塩化鉄(III)の形態は特に限定されず、無水物または六水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されている塩化鉄(III)を適宜希釈して用いても差し支えない。なお、固形の塩化鉄(III)は通常六水和物(式量270.30)として供給されるが、本発明における塩化鉄(III)濃度の計算は無水物(式量162.21)を基準として行う。例えば、塩化鉄(III)10質量%を含む本発明のエッチング液1.0kgを調製する場合には、塩化鉄(III)六水和物はその1.0kg×10%×(270.30/162.21)=167gを用いることになる。
本発明のエッチング液は、第二の必須成分としてシュウ酸を含む。シュウ酸の添加量は塩化鉄(III)に対して5〜100質量%とすることが必要であり、5〜50質量%とすることが好ましい。シュウ酸の添加量がこれよりも少ない場合にはサイドエッチの抑制が不十分になり、また、シュウ酸の添加量がこれよりも多い場合にはエッチングに非常な長時間を必要としたり、微細スペースが十分にエッチングされなかったりという問題が生じるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり用いるシュウ酸の形態は特に限定されず、無水物または二水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されているシュウ酸を適宜希釈して用いてもよい。なお、固形のシュウ酸は通常二水和物(式量126.07)として供給されるが、本発明におけるシュウ酸濃度の計算は無水物(式量90.04)を基準として行う。例えば、シュウ酸1.0質量%を含む本発明のエッチング液1.0kgを調製する場合には、シュウ酸二水和物はその1.0kg×1.0%×(126.07/90.04)=14gを用いることになる。
本発明のエッチング液を用いてエッチングを行う場合、微細なパターンのエッチングに有利という理由から、スプレーエッチング法を用いることが好ましく、単位面積当たりの噴射液量を25〜200mL/cm・minとしたスプレーエッチング法を用いることがより好ましい。噴射液量がこれよりも少ない場合にはエッチング速度が著しく低下する場合があり、噴射液量がこれよりも多い場合にはレジストパターンの破壊が発生してラインが断線する場合があるからである。
また、本発明のエッチング液を用いてスプレーエッチングを行う場合、スプレーノズルへのエッチング液の供給圧(ゲージ圧、すなわち大気圧との相対圧。以下同じ)は、50〜500kPaとすることが好ましく、100kPa〜300kPaとすることがより好ましい。該供給圧が低すぎる場合にはエッチング速度が著しく低下する場合があり、該供給圧が高すぎる場合にはレジストパターンの破壊が発生してラインが断線する場合があるからである。
本発明のエッチング液を用いてエッチングを行う場合、エッチング液の温度は15〜50℃とすることが好ましく、25〜45℃とすることがより好ましい。該温度がこれよりも低い場合、細かいスペース部のエッチング速度が著しく低下することがあり、また該温度がこれよりも高い場合、サイドエッチの抑制が不十分になることがあるからである。
本発明のエッチング液には、界面活性剤、消泡剤、アルコール、グリコール等の濡れ促進剤等を含有せしめることもできるが必須ではない。
本発明のエッチング液を用いる場合、従来のエッチング液を用いる場合と比較して、残存欠陥が起こりやすい問題がある。プリント配線板の製造においてかかる現象が発生すると、本来絶縁されているべき隣接配線パターン間に導通が生じる欠陥、いわゆるショート欠陥になる。被エッチング材を取り扱う環境を清浄にすること、例えば、被エッチング材をクリーンルーム等の清浄な環境で取り扱うようにしたり、洗浄等の工程に用いる水としてイオン交換水や、逆浸透膜によって精製した水等の不純物の含有量が少ない水を用いたりすることで回避することができるが、これらの方法は大掛かりな設備を必要とし、またその維持・運転にも多量のエネルギーや労力を要するという問題がある。
かかる問題を回避するための手段として、エッチング前の被エッチング材を、前処理液として、酸を含む水溶液により処理することが有効である。かかる前処理液による処理により歩留まりが向上する理由は明らかではないが、シュウ酸と不溶性の塩を形成し本発明のエッチング液によるエッチングを阻害するアルカリ土類金属イオン等による被エッチング材表面の汚染物質が、かかる前処理液により除去されるためと推定される。
かかる前処理液に含まれる酸としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸等を使用することができる。ショート欠陥の抑制効果が高く、歩留まりをより向上させることができる点で、1価の酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸がより好ましく用いられる。かかる1価の酸としては、塩酸、硝酸、アミド硫酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸等が例示される。また、ショート欠陥の抑制効果が高く、歩留まりをより向上させることができる点で、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、すなわちカルボン酸基と水酸基の双方を有する脂肪族有機化合物も好ましく使用できる。脂肪族ヒドロキシカルボン酸の例としては乳酸、グリコール酸、クエン酸、イソクエン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられ、そのいずれもが本発明において好適に使用される。本発明において、脂肪族ヒドロキシカルボン酸はその価数を問わず好適に使用することができるが、高いショート欠陥の抑制作用を得るためには、カルボン酸基1個あたりの炭素数については、4以下であることが好ましい。
本発明において、前処理液に含まれる酸の量は0.5質量%以上10質量%未満が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。酸の量が少なすぎると歩留まり改善効果が十分でなくなる場合があり、また酸の量が多すぎると不経済になるのみならず、前処理中あるいはエッチング中に酸の作用によりレジストパターンが破損し、オープン欠陥、すなわち、本来残存すべき部分の被エッチング金属がエッチングされてしまう欠陥が発生しやすくなり、かえって歩留まりが低下する場合があるからである。あるいはオープン欠陥を生じさせないまでも、レジストパターンと被エッチング金属の境界に少量のエッチング液が浸入し、レジストパターンのライン形状が直線的であっても、導体パターンのライン形状にうねりが生じる場合があるからである。また、本発明において、前処理液に含まれる酸は1種でも良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明における、残存欠陥を回避するためのもう1つの手段として、エッチング前の被エッチング材を、前処理液として、銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液により処理することも有効である。本発明における、銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液とは、被エッチング材をかかる前処理液に30分間浸漬したとき、被エッチング金属である銅または銅合金が厚み0.5μm以上溶解される水溶液を言う。かかる前処理液による処理により、歩留まりが向上する理由は明らかではないが、被エッチング材表面に存在する各種の汚染物質が、被エッチング材の表層にある被エッチング金属と共に除去されるためと推定される。
かかる銅または銅合金を溶解する成分を含有する前処理液としては、塩化銅(II)水溶液、塩化鉄(III)水溶液、硫酸と過酸化水素の混合水溶液、過硫酸塩水溶液、硝酸、過ヨウ素酸カリウム水溶液等が挙げられる。
本発明において、前処理液に含まれる銅または銅合金を溶解する成分の濃度は、0.05質量%以上20質量%未満が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。濃度が低すぎると歩留まり改善効果が十分でなくなる場合があり、また濃度が高すぎると、被エッチング金属の除去量が不均一になり、レジストパターンのライン形状が直線的であっても、導体パターンのライン形状にうねりが生じる場合がある。なお、本発明の前処理液が、酸と銅または銅合金を溶解する成分の両方を含む場合や、硝酸のように銅または銅合金を溶解する酸を含む場合には、上記酸の量が多すぎる場合に発生しうる問題を回避するために、酸の量は5質量%以下であることが好ましい。
前処理液として、酸を含む水溶液と、銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液とのいずれがより有効であるかは一概には言えないが、被エッチング材表面の汚染が軽度である場合には、銅または銅合金を溶解する成分のみを含む水溶液を用いる場合よりも、酸のみを含む水溶液を用いる場合に、より高い歩留まりが得られるので好ましい。また、被エッチング材表面の汚染が重度の場合には、酸のみを含む水溶液を用いる場合は歩留まり改善効果がほとんど得られないことがあるのに対し、ある程度の歩留まりが得られることが多い銅または銅合金を溶解する成分を含む水溶液を用いることがより好ましい。ここで重度の汚染とは、例えば、レジストパターン形成後に長時間放置された場合に、被エッチング材表面に前記したアルカリ土類金属イオン等による汚染物質がこびりついた状態等をいう。
本発明において、銅または銅合金を溶解する成分を含む前処理液を用いる場合に、かかる前処理液のpHが3以下であることにより、被エッチング材表面の汚染が重度である場合にも、さらに高い歩留まりを得ることができることが多いので好ましい。
本発明の前処理液に界面活性剤を含ませることで、歩留まり向上の効果が更に向上することから好ましい。かかる界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(いわゆる、プルロニック系界面活性剤)、脂肪酸ペンタエリスリトールエステル等のノニオン系界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。特に本発明の前処理液のpHが5以下である場合には、アニオン系の界面活性剤、特にカルボン酸系の界面活性剤は有効に作用しないことがある。また、カチオン系の界面活性剤、両性界面活性剤は銅の表面に吸着して後のエッチングを阻害することがあるから、ノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。
本発明の前処理液を用いて被エッチング材を前処理する方法としては、被エッチング材を前処理液に浸漬する方法、前処理液を含有する布帛等を用いて被エッチング材の表面を拭く方法、被エッチング材の表面に前処理液をかけ流す方法、スプレーノズルを用いて被エッチング材の表面に前処理液を噴霧する方法等があるが、これらのうちスプレーにより噴射する方法が、連続的な処理を容易に行うことができ、かつ歩留まり向上の効果が高くなることから好ましく用いられる。
本発明において、前処理液として塩化鉄(III)水溶液または塩化銅(II)水溶液以外の水溶液を用いた場合、前処理液工程とエッチング工程の間には水洗工程を含むことが好ましい。エッチング液とは異なる化学種がエッチング液に混入し、サイドエッチを増大させる等の問題を引き起こすことがあるからである。
前処理液として、塩化鉄(III)または塩化銅(II)を用いる場合にも、前処理液工程とエッチング工程の間に被エッチング材を水洗しても良い。ただし、塩化鉄(III)または塩化銅(II)を用いた場合には、エッチング液に前処理液が混入してもサイドエッチが増大する等の問題が生じにくいため、水洗工程を除いて、工程を簡略化できるという利点がある。
なお、本発明のエッチング液を使用後に廃棄する場合、最も基本的な重金属含有排水の処理工程の1種である水酸化カルシウムを添加してpHを弱アルカリに調整する工程により、含有有害化学種である鉄(II)イオン、鉄(III)イオン、銅(I)イオン、銅(II)イオンおよびシュウ酸イオンの全てが環境保全上問題のない程度まで容易に沈降除去されるため、チオ化合物、アゾール化合物、アミン化合物を含有するエッチング液が必要とするような、オゾン酸化等の特殊な排水処理工程は必要としない。
以下本発明の実施例を示す。
[実施例1]
<エッチング液の調製>
市販の40°ボーメの塩化鉄(III)水溶液(濃度37質量%)27g(無水物として10g)、シュウ酸二水和物0.70g(無水物として0.50g)に水を加え1kgとし、塩化鉄(III)1.0質量%、シュウ酸0.050質量%を含むエッチング液を調製した。
<被エッチング材1の作製>
厚み1.6mmのガラスエポキシ基材(FR−4規格)と厚み12μmの電解銅箔を接着した銅貼積層板の表面に、ポジ型液状レジストを、乾燥後の厚みが6μmになるように塗布・乾燥した。次いでライン/スペースの幅がそれぞれ15μm/15μmの評価用パターンを露光後、現像・水洗してレジストパターンを形成し、被エッチング材1を作製した。
<エッチング>
30℃に調整した上記エッチング液を、噴射面の直径が6.0cmの充円錐型スプレーノズルを用いて、ノズルへの液供給圧150kPa、噴射量880mL/min(単位面積当たり31mL/cm・min)で被エッチング材1に向け噴射してエッチングを行った。噴射時間120秒でラインのボトム幅(w)がwと同じ15μmになった。噴射時間をw=wとなる時間の1.2倍(144秒)にした場合のwは14μm、ラインのトップ幅(w)は8μmであった。さらに、噴射時間をw=wとなる時間の2.0(240秒)にした場合のwは12μm、wは8μmであった。
[実施例2〜8]
実施例1と同様にして、表1および表2に示す濃度の塩化鉄(III)およびシュウ酸を含むエッチング液を調製し、実施例1と同一の被エッチング材に、それぞれ規定の噴射条件でスプレーエッチングを行って、(1)w=w(15μm)となる噴射時間X(秒)、(2)噴射時間をXの1.2倍とした場合のwおよびw、(3)噴射時間をXの2.0倍とした場合のwおよびwを測定し、結果を表1および2に示した。
[比較例1〜7]
実施例1と同様にして、表2および表3に示す濃度の組成のエッチング液を調製し、実施例1と同一のレジストパターン形成済み基板に、それぞれ規定の噴射条件でスプレーエッチングを行って、同様の評価を行った。
実施例1〜8で明らかになるように、本発明により、従来公知のエッチング液を使用することでは困難であった、サイドエッチの発生が極めて少ないエッチングが可能になった。とりわけ実施例3〜6の如き、本発明のうちでも特に好適な条件でエッチングを行った場合には、十分なスペース幅が得られた後になお長時間エッチングを継続した場合のライン幅減少が微小であり、きわめて安定に所望の回路パターンを形成させることができた。
これに対し、本発明の必須の成分であるシュウ酸を含まない比較例1のエッチング液や、特許文献1及び2に記載されている従来公知の添加剤を添加した比較例2、3のエッチング液、シュウ酸の添加量が本発明で提案するものよりも少ない比較例4のエッチング液では、本発明のエッチング液よりも大きなサイドエッチが生じた。また、本発明の量範囲を超えてシュウ酸を含有する比較例5のエッチング液では、エッチングが進行しなかった。また、特許文献3に記載されている塩化鉄(III)の濃度が本発明で提案するものよりも高い比較例6、7のエッチング液では、噴射時間Xを越えた後のライン幅減少が急激であり、大きなサイドエッチが生じた。
[実施例9]
<エッチング液の調製>
市販の40°ボーメの塩化鉄(III)水溶液(濃度37質量%)13.5kg(無水物として5.00kg)、シュウ酸二水和物1.40kg(無水物として1.00kg)に水を加え100kgとし、塩化鉄(III)5.0質量%、シュウ酸1.0質量%を含むエッチング液100kgを調製した。
<前処理液の調製>
水980gに硫酸(濃度98質量%)20gを加え、よく混合して濃度2.0質量%の前処理液を調製した。
<被エッチング材2の作製>
厚み40μmのポリイミド絶縁材と厚み9μm銅箔の電解銅箔を接着した銅貼積層板に、ポジ型液状レジストを、乾燥後の厚みが6μmになるように塗布・乾燥した。ここに、図2に示す評価用くし型配線を1区画としたレジストパターンを100区画形成し、被エッチング材2を作製した。図3は、図2の波線楕円部分の拡大図である。評価用くし型配線は、ライン/スペースが15μm/15μmで構成されている。
<前処理>
被エッチング材2の表面に、上記前処理液をスプレーガンで噴霧し、エッチングの前処理を行った。
<エッチング>
実施例1で用いたものと同じスプレーエッチング装置を用い、被エッチング材2に上記エッチング液を90秒噴射して評価用プリント配線板を作製した。
[実施例10〜20]
前処理液の組成を表4に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして、評価用プリント配線板を作製し、歩留まりの評価を行った。
[実施例21]
前処理を行わなかった以外には、実施例9と同様にして評価用プリント配線板を作製し、歩留まりの評価を行った。
[実施例22〜23]
前処理液の組成を表4に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして評価用プリント配線板を作製し、歩留まりの評価を行った。
<評価>
実施例9〜23で作製した評価用プリント配線板の各区画につき、導体部Aと導体部B間の導通の有無を検査し、導体部Aと導体部Bの間に導通がなかったものを良品、導通があったものを不良品とし、良品数/(良品数+不良品数)の計算で歩留まり(%)を求めた。導体部Aと導体部Bの間に導通があることは、両導体部間のスペース部に残存欠陥が存在することで、ショート欠陥が生じていることを意味しており、このような場合、同様の条件で実用に供する配線板を製造しても同様のショート欠陥が発生しやすい。なお、プリント配線板の回路パターンに発生する欠陥には、ショート欠陥の他に、オープン欠陥、すなわち本来導通しているべき2点間が導通していない欠陥もあるが、光学的な検査の結果、実施例9〜23のエッチング条件におけるオープン欠陥の発生率はショート欠陥の発生率と比較して十分に小さく、本評価による歩留まりの結果に実質的な影響を与えるものではないことが確認されている。なお、実施例9〜23のいずれにおいても、ラインのトップ幅w、ラインのボトム幅wは12〜15μmの範囲にあり、サイドエッチの少ないエッチングが行われていた。
実施例9〜20と実施例21〜23を比較して分かるように、塩化鉄(III)およびシュウ酸を含むエッチング液でエッチングする場合に、酸を含む前処理液で被エッチング材を前処理することによって、ショート欠陥の発生の発生を抑制し、歩留まりを向上させることができる。
実施例9〜11と実施例12〜15を比較すれば分かるように、前処理液に用いる酸としては1価の酸が好ましく、これにより良好なショート欠陥の抑制効果を得ることができる。
さらに、実施例9〜14と実施例15〜17を比較すればから分かるように、前処理液に用いる酸としては脂肪族ヒドロキシカルボン酸がさらに好ましく、これによりさらに良好なショート欠陥の抑制効果を得ることができる。
また、実施例9と実施例18、実施例13と実施例19、実施例15と実施例20とを比較して分かるように、本発明の前処理液に界面活性剤を含有せしめることでショート欠陥の抑制効果をさらに増強することができる。これは、酸を含む前処理液に界面活性剤を併用した場合に初めて得られる効果であり、実施例23から分かるように、界面活性剤のみを含有する前処理液では高度なショート欠陥の抑制効果は得られない。
[実施例24]
被エッチング材2に、実施例20の前処理液を噴霧し、軽く絞った後に質量を測定した。その結果、1枚の被エッチング材2につき1.8gの前処理液が付着していることが判明した。そこで、前処理液による処理後水洗しないでエッチングする場合に相当する模擬実験として、1000枚の被エッチング材2をエッチングしたときにエッチング液に混入する量に相当する1800gの前処理液を実施例9のエッチング液に添加してエッチングした。
<評価>
実施例20および24で作製した評価用プリント配線板につき、導体パターンのトップ幅w/導体パターンのボトム幅wを測定したところ、実施例20の評価用プリント配線板については12.6μm/14.2μm、実施例24の評価用プリント配線板については11.4μm/13.8μmであった。
[実施例25]
酸を含む前処理液による処理の後に、水洗してからエッチングした場合に相当する模擬実験として、実施例9のエッチング液に1800gのイオン交換水を添加してエッチングした。このときのw/wは12.3μm/13.9μmであった。
実施例24と25を比較して分かるように、酸を含む前処理液による処理の後、水洗してからエッチングすることで、前処理液がエッチング液に混入することによるサイドエッチの増大を避けることができ、安定してエッチングすることができるようになる。
[実施例26]
<前処理液の調製>
728gの水に、過酸化水素(濃度30質量%)167g、硫酸(濃度95%)105gを加え、よく混合して過酸化水素濃度5.0質量%、硫酸濃度10質量%の前処理液を調製した。この前処理液のpHをガラス電極pH計で測定したところ1未満であった。また、実施例9で用いた銅貼積層板をこの前処理液に30分間浸漬した後、銅厚の減少量を測定したところ、6.3μmであった。
<前処理>
汚染が軽度の被エッチング材としては、実施例9の被エッチング材2をそのまま用いた。また汚染が重度の被エッチング材としては、実施例9の被エッチング材2を、実験台上に汚染防止措置を講ぜずに3日間放置した被エッチング材3を用いた。それぞれの被エッチング材に、前処理液をスプレーガンで20秒噴霧し、エッチングの前処理を行った。前処理後の被エッチング材はまず水道水にて洗浄、次いでイオン交換水で洗浄した後イオン交換水中に保存し、次のエッチングに用いた。
<エッチング>
前処理を行った被エッチング材2および3に、スプレーエッチング装置を用い、実施例9と同じエッチング液を90秒噴射して評価用プリント配線板を作製した。
[実施例27〜42]
前処理液の組成を表に示すように変更した以外は、実施例26と同様にして、評価用プリント配線板を作製した。また、各前処理液のpHおよび銅溶解量を測定したところ、表5に示すようであった。
[実施例43]
前処理液を水とした以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
[実施例44]
前処理を行わなかった以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
[比較例8]
エッチング液がシュウ酸を含まないこと、およびエッチング液の噴射時間を40秒にしたこと以外は、実施例44と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
[比較例9]
エッチング液がシュウ酸を含まないこと、およびエッチング液の噴射時間を40秒にしたこと以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。
<評価>
実施例26〜44と比較例8〜9で作製した各評価用プリント配線板につき、実施例9〜23に行ったのと同様の評価を行い、歩留まりを求めた。なお、光学的な検査の結果、実施例26〜44のエッチング条件におけるオープン欠陥の発生率はショート欠陥の発生率と比較して十分に小さく、本評価の結果に実質的な影響を与えるものではないことが確認されている。また、実施例26〜44のいずれにおいても、ラインのトップ幅w、ラインのボトム幅wは12〜15μmの範囲にあり、サイドエッチの少ないエッチングが行われていた。
さらに、レジストパターンの縁が直線である部分につき、形成された導体パターンの縁形状を顕微鏡で観察し、非常に直線的である場合を良好、明らかにうねりが生じている場合を不良とし、良好、やや良好、普通、やや不良、不良の5段階に分類した。
実施例26〜39からわかるように、塩化鉄(III)およびシュウ酸を含むエッチング液でエッチングする場合に、被エッチング材を、銅または銅合金を溶解する成分を含有する前処理液で処理することで、ショート欠陥の発生を抑制し、歩留まりを向上させることができる。
それに対して、前処理液として水を用いた実施例43や前処理を行わなかった実施例44では、実施例26〜39と比較して、ショート欠陥が発生し、歩留まりが低かった。また、実施例26〜39と、実施例40および42の比較からわかるように、銅または銅合金に対して溶解力をもたない酸を含有する水溶液を前処理液として用いた場合では、汚染が軽度の被エッチング材2では歩留まり改善効果が得られるが、汚染が重度の被エッチング材3では歩留まり改善効果が不十分であった。そして、シュウ酸を含んでいない塩化鉄(III)水溶液でエッチングした比較例8、銅または銅合金を溶解する成分を含有する前処理液で処理し、シュウ酸を含んでいない塩化鉄(III)水溶液でエッチングした比較例9では、著しいサイドエッチと、それに起因するオープン欠陥が多数発生し、微細なパターンを有するプリント配線板を製造することはできなかった(歩留まり0%)。
また、実施例26〜39において、特に、実施例28と実施例29、実施例33と実施例34との比較からわかるように、前処理液としてpH3以下の酸性溶液を用いることで、高度な水準で歩留まりの向上が実現できる。
さらに、実施例28と実施例38、実施例31と実施例39の比較からわかるように、銅または銅合金を溶解する成分を含有する本発明の前処理液に界面活性剤を含ませることで、界面活性剤を含まない前処理液を用いた場合よりも高度な歩留まりの向上が実現できる。しかし、実施例41からわかるように、前処理液として界面活性剤を単独で用いた場合は、歩留まり向上の効果は得られず、実施例42からわかるように、前処理液として銅または銅合金に対して溶解力を持たないpH3以下の酸に界面活性剤を含ませた溶液を用いた場合は、汚染が軽度の被エッチング材2では大きな歩留まり改善効果が得られるが、汚染が重度の被エッチング材3に対する歩留まり改善効果は不十分であった。
なお、実施例26〜39のうち、前処理液が10質量%以上の酸を含む実施例26、27や、20質量%以上の銅または銅合金を溶解する成分を含有する実施例32、37には、レジストパターンの縁が直線であっても、導体パターンの縁にうねりが生じる傾向があった。
[実施例45]
汚染が軽度の被エッチング材2に、実施例26の前処理液を噴霧し、軽く絞った後に質量を測定した。その結果、1枚の被エッチング材2につき1.8gの前処理液が付着していることが判明した。そこで、前処理液による処理後水洗しないでエッチングする場合に相当する模擬実験として、1000枚の被エッチング材2をエッチングしたときにエッチング液に混入する量に相当する1800gの実施例26の前処理液を実施例9のエッチング液に添加し、その他の部分は実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。この評価用プリント配線板の導体パターンのトップ幅w/導体パターンのボトム幅wを測定したところ、実施例26の評価用プリント配線板の12.6μm/14.2μmに対し11.4μm/13.9μmであった。
[実施例46]
前処理液による処理の後に、水洗してからエッチングした場合に相当する模擬実験として、実施例9のエッチング液に1800gのイオン交換水を添加した以外は、実施例26と同様にして評価用プリント配線板を作製した。本実施例で作製した評価用プリント配線板のw/wは12.2μm/13.8μmであった。
[実施例47および48]
実施例45の如く、それぞれの前処理液1800gをエッチング液に添加してエッチングを行った以外には、実施例31、36と同様にして評価用プリント配線板を作製した。これらの実施例で作製した評価用プリント配線板のw/wは12.4μm/13.9μm、12.3μm/14.0μmであった。
実施例47および48で作製した評価用プリント配線板のwおよびwは、実施例46のそれとほぼ同じであり、前処理液として、塩化鉄(III)水溶液または塩化銅(II)水溶液を用いた場合には、前処理工程後の水洗をしなくても、サイドエッチが増大するなどの影響が生じにくいことが分かる。これに対し、実施例45の如く、前処理液が塩化鉄(III)水溶液または塩化銅(II)水溶液でない場合には、作製された評価用プリント配線板にやや大きなサイドエッチが生じることが分かる。
本発明のエッチング液は、プリント配線板の製造のみならず、リードフレーム、精密歯車、精密板ばね、エンコーダ用ディスクやストライプ、各種ステンシルの製造等のその他各種の産業用途においても、高度に制御された銅または銅合金のエッチングが必要な場合に好適に用いることができる。
図1〜図3中の符号を以下に説明する。
導体パターンにおけるラインのトップ幅
導体パターンにおけるラインのボトム幅
レジストパターンのライン幅
t 導体パターンの厚み(銅厚)
1 レジストパターン
2 銅箔(導体パターン)
3 基材

Claims (10)

  1. 水を主成分とし、(1)1〜20質量%の塩化鉄(III)および(2)塩化鉄に対して5〜100質量%のシュウ酸を含有することを特徴とする銅または銅合金用のエッチング液。
  2. 水を主成分とし、銅または銅合金を溶解する成分及び酸から選択される少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする銅または銅合金用のエッチング前処理液。
  3. 酸が1価の酸である請求項2記載の銅または銅合金用のエッチング前処理液。
  4. 酸が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である請求項2記載の銅または銅合金用のエッチング前処理液。
  5. 銅または銅合金を溶解する成分を含み、かつpHが3以下である請求項2記載の銅または銅合金用のエッチング前処理液。
  6. 銅または銅合金を溶解する成分が、塩化鉄(III)または塩化銅(II)である請求項2または5記載の銅または銅合金用のエッチング前処理液。
  7. さらに、界面活性剤を含有する請求項2〜6のいずれか記載の銅または銅合金用のエッチング前処理液。
  8. 請求項1記載のエッチング液を用いて被エッチング材をエッチングすることを特徴とする銅または銅合金のエッチング方法。
  9. 請求項2〜7のいずれか記載の前処理液を用いて被エッチング材の表面を前処理し、次いで、請求項1記載のエッチング液を用いて被エッチング材をエッチングすることを特徴とする銅または銅合金エッチング方法。
  10. 前処理後、被エッチング材を水洗してからエッチングする請求項9記載の銅または銅合金のエッチング方法。
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