JPWO2009063715A1 - エアバッグ用クリップ - Google Patents

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Abstract

ガーニッシュを装着したままでも、簡単な操作で容易にピン部材をグロメットから取り外すことができるエアバッグ用クリップを提供する。エアバッグ用クリップ1は、グロメット10およびピン部材20を含む構成である。グロメット10は、ピン部材20が表面側から裏面側に向かって差し込まれる支持孔12と、ピン部材20の支持孔12からの抜けを規制する係合部15とを有している。またピン部材20は、頭部21から軸方向へ延出し、グロメット10の支持孔12に差し込まれて、グロメット10に対し軸方向に相対移動自在な一対の対向する側壁22を有している。各側壁22は、第2係止部26がグロメット10の係合部15に係止された状態において、支持孔12からグロメット10の表面側に露出した可撓領域25を内側へ撓ませることで、この係止状態が解除される構成である。

Description

この発明は、エアバッグ装置を収納した状態で車体にガーニッシュを取り付けるためのエアバッグ用クリップに関する。
近年、自動車側面からの衝突に対し、乗員をより安全に保護する目的で、車室側面側にもエアバッグ装置(サイドエアバッグ装置)が設けられるようになっている。
特許文献1は、エアバッグ装置を収納した状態で車体にガーニッシュを取り付けるためのエアバッグ用クリップ(保持具)を開示している。このエアバッグ用クリップ(保持具)は、同文献1の図2および図3に示されるように、ピン部材(11)とグロメット部材(12)からなり、ピン部材(11)の頭部がガーニッシュ(4)に装着されている。そして、ピン部材(11)の脚部(14)がグロメット部材(12)の筒部(22)内に挿入され、脚部(14)の第1係止爪(16)が筒部(22)の第1係合部(25)に係合した状態で、ガーニッシュ(4)をインナパネル(5)に取り付ける構成となっている。また、エアバッグ(31)が膨脹すると、第1係止爪(16)と第1係合部(25)の係合が解除されるとともに、第2係止爪(17)が第2係合部(26)に係合し、これによりガーニッシュ(4)とインナパネル(5)との間に隙間ができ、その隙間からエアバッグ(31)が展開する。なお、カッコ内の符号は、特許文献1に付されている符号である。
特開2002−37007号公報
さて、エアバッグ装置の保守点検や交換に際しては、車体からガーニッシュとエアバッグ用クリップが取り外される。上述した特許文献1のエアバッグ用クリップ(保持具)では、まず、ガーニッシュ(4)を横方向へスライドさせてピン部材(11)の頭部からガーニッシュを取り外し、次いでピン部材(11)を45度回転させることで第2係止爪(17)を第2係合部(26)と係合しない位置とし、この状態でグロメット部材(12)からピン部材(11)を引き抜く構成となっていた。
しかし、ガーニッシュは長尺でかつピラーやサイドルーフに沿って湾曲した形状であり、複数のピン部材における頭部が係止されているため、横方向へスライドさせてこれらピン部材頭部との係止状態を解除する作業は、困難を伴い煩雑であった。しかも、長尺なガーニッシュを横方向へスライドさせる際に、狭い車室内では、ガーニッシュを周囲の内装にぶつけやすく、ガーニッシュや他の内装を傷付けてしまうおそれがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ガーニッシュを装着したままでも、簡単な操作で容易にピン部材をグロメットから取り外すことができるエアバッグ用クリップの提供を目的とする。
本発明は、車体にガーニッシュが接触又は近接しそれらの間にエアバッグを収納するエアバッグ収納位置、および前記車体から前記ガーニッシュが離間して前記エアバッグを車室内へ展開させるエアバッグ展開位置、の各位置で前記ガーニッシュを保持可能なエアバッグ用クリップであって、
グロメットおよびピン部材を含み、前記ガーニッシュまたは車体のいずれか一方に当該ピン部材の頭部が取り付けられるとともに、他方に当該グロメットが取り付けられ、
前記グロメットは、前記ピン部材が表面側から裏面側に向かって差し込まれる支持孔と、前記ピン部材の前記支持孔からの抜けを規制する係合部とを有し、
前記ピン部材は、前記頭部から軸方向へ延出し、前記グロメットの支持孔に差し込まれて、当該グロメットに対し軸方向に相対移動自在な一対の対向する側壁を有し、
前記各側壁には、前記グロメットの係合部に係止して前記エアバッグ収納位置で前記ガーニッシュを保持するための第1係止部が頭部寄りに形成されるとともに、同じく前記グロメットの係合部に係止して前記エアバッグ展開位置で前記ガーニッシュを保持するための第2係止部が先端部寄りに形成されており、
さらに、各側壁は、前記第1係止部よりも先端部側の任意領域が内側へ弾性的に撓ませ可能な可撓領域を形成しており、前記第2係止部が前記グロメットの係合部に係止された状態において、前記支持孔からグロメットの表面側に露出した前記可撓領域を内側へ撓ませたとき、当該可撓領域の撓み変形に伴い前記第2係止部が変位して前記グロメットの係合部に対する係止状態が解除される構成であることを特徴とする。
上記構成の本発明は、エアバッグ展開位置において、車体とガーニッシュの隙間からラジオペンチ等の工具を挿入し、当該工具でピン部材の側壁を弾力的に撓ませるだけで、ピン部材とグロメットの係止状態を容易に解除することができる。よって、ガーニッシュを装着したままでも、容易にピン部材をグロメットから取り外すことができ、ガーニッシュや車室内の内装を傷付けるおそれがなく、エアバッグ装置の保守点検や交換作業の容易化を図ることができる。
また、前記ピン部材は、前記一対の側壁を一定の間隔を空けて対向配置してあり、且つ、当該各側壁間の中央位置に軸方向へリブが延出している構成とすることができる。
一対の側壁がリブを介して対向配置していることで、該側壁を均等に撓ませることができ、ピン部材の破損を防止することができる。また、エアバッグ装置の取外し作業では、一対の側壁が一方のみに偏って撓むと、側壁が撓んでいない一方に係合部が引っかかる場合があり、ピン部材とグロメットの係止状態を解除できないおそれがある。本発明では、リブが側壁の中央位置に延出していることで、側壁が一方のみ偏って撓むことを防止し、ピン部材とグロメットの係止状態の解除を速やかに実施することができる。
さらに、前記一対の側壁は、先端部が先端横柱で連結されており、前記第2係止部は当該先端部からテーパ状に延出する係止爪であることが好ましい。
先端横柱によって先端部が連結していることで、この先端横柱を支点として第2係止部を撓ませる構造となる。これによりエアバッグ展開時は、先端横柱が内側への撓みを防止し、グロメットから高荷重がかかっても係止状態を維持し、ピン部材をグロメットから取り外す時は、側壁を撓ませることで係止爪が連動して内側に撓むため、係止状態を容易に解除することができる。
また、前記グロメットは、前記支持孔の裏面側開口縁から軸方向に対向する一対の脚部が延出しており、当該脚部が前記ガーニッシュまたは車体のいずれか一方に係合する構成であり、さらにこれら脚部に挟まれた中間部を前記側壁が軸方向へ移動自在となっており、且つ前記脚部の根本付近に前記係合部が形成してあることが好ましい。
グロメットの係合部が脚部の根本付近にあることによって、これと相対するピン部材は、第1係止部から第2係止部までの移動距離を長くさせることができる。したがって、ピン部材の全長を短く形成しても、エアバッグ展開位置におけるガーニッシュと車体の隙間を充分に確保することができる。
また、前記各側壁に形成した可撓領域は、前記支持孔の内側面との間隔を狭小に保つよう平行に延びており、
さらに前記可撓領域と前記第1係止部との間にくびれ部を形成した構成とすることができる。
一対の側壁が平行に延びることで、エアバッグ展開時に、支持孔が側壁をぐらつかせずに案内することができる。よってピン部材が保持するガーニッシュを安定して車体から離間することが可能となる。また側壁のくびれ部は、ガーニッシュの取付け作業において、作業者に対し取付位置の認識を与えることができる。これにより、作業者は取付け作業を円滑に行えるようになる。
さらに、前記一対の側壁は、くびれ部で中間横柱により連結されていることが好ましい。
側壁は、中間横柱により第1係止部に対し所定の保持荷重を確保することができる。さらに中間横柱はくびれ部にあることで、可撓領域の弾性力を阻害することがない。
以上説明したように、本発明によれば、車体とガーニッシュの隙間からラジオペンチ等の工具を挿入し、当該工具でピン部材の側壁を弾力的に撓ませるだけで、ピン部材とグロメットの係止状態を容易に解除することができる。よって、ガーニッシュを装着したままでも、容易にピン部材をグロメットから取り外すことができ、ガーニッシュや車室内の内装を傷付けるおそれがなく、エアバッグ装置の保守点検や交換作業の容易化を図ることができる。
図1A、図1Bは本実施形態に係るサイドエアバッグ装置の構成を示す概略図であり、図1Aは通常時、図1Bはエアバッグ展開時である。 図2A、図2Bは本実施形態に係るエアバッグ用クリップの各部品を示す斜視図であり、図2Aはピン部材、図2Bはグロメットである。 図3A〜図3Dは本実施形態に係るエアバッグ用クリップのグロメットを示す展開図であり、図3Aは上面図、図3Bは正面図、図3Cは側面図、図3Dは底面図である。 図4A、図4Bは本実施形態に係るエアバッグ用クリップのピン部材を示す展開図であり、図4Aは正面図、図4Bは側面図である。 図5A〜図5Cは本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいて、エアバッグ収納位置のピン部材とグロメットの状態を示す図であり、図5Aは斜視図、図5Bは正面図、図5Cは側面図である。 図6は図5A〜図5Cの状態を示す車体とガーニッシュを含む側面断面図である。 図7A、図7Bは図5A〜図5Cのエアバッグ用クリップの断面図であり、図7Aは図5BのA−A線断面図、図7Bは図5CのB−B線断面図である。 図8A〜図8Cは本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいて、エアバッグ展開位置のピン部材とグロメットの状態を示す図であり、図8Aは斜視図、図8Bは正面図、図8Cは側面図である。 図9は図8A〜図8Cの状態を示す車体とガーニッシュを含む側面断面図である。 図10A、図10Bは図8A〜図8Cのエアバッグ用クリップの断面図であり、図10Aは図8BのA−A線断面図、図10Bは図8CのB−B線断面図である。 図11は本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいて、エアバッグ展開位置にあるピン部材とグロメットの係止状態の解除操作を示す斜視図である。 図12A、図12Bは図11の状態におけるエアバッグ用クリップの断面図であり、図12Aは可撓領域を撓ませた時、図12Bはピン部材とグロメットの分離時である。 図13A〜図13Cは各側壁の中間部に設けたリブの機能を説明するための断面図であり、図13Aは中間部にリブがないピン部材を撓ませた場合、図13Bは中間部にリブがあるピン部材、図13Cは図13Bのピン部材を撓ませた場合である。 図14A、図14Bは本発明のエアバッグ用クリップの変形例を示す図であり、図14Aはピン部材の斜視図、図14Bは図14Aの側壁の断面図である。 図15A、図15Bは上述した実施形態に係るエアバッグ用クリップの変形例を示す斜視図であり、図15Aはピン部材、図15Bはグロメットである。
符号の説明
1:エアバッグ用クリップ、2:サイドエアバッグ装置、3:インフレータ、4:エアバッグ、
10:グロメット、11:フランジ部、12:支持孔、13:脚部、14:取付孔用係合部、15:係合部、
20:ピン部材、21:頭部、22:側壁、23:第1係止部、24:くびれ部、25:可撓領域、26:第2係止部、27:先端横柱、28:上側中間横柱、29:下側中間横柱、30:リブ、
100:フロントガラス、101:サイドガラス、102:フロントピラー、103:ルーフサイド、104:車体、105:ガーニッシュ、106インストルメントパネル、
200:ペンチ
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1A乃至図13Cは、本発明の実施形態に係るエアバッグ用クリップの構成を説明するための図であり、図1A、図1Bは本実施形態に係るサイドエアバッグ装置の構成を示す概略図である。
本実施形態のエアバッグ用クリップ1は、自動車の車室においてサイドエアバッグ(またはカーテンエアバッグ)装置2を機能させるために用いられる。図1Aに示すように、サイドエアバッグ装置2は、自動車のフロントガラス100とサイドガラス101の間にあるフロントピラー102からルーフサイド103に沿って備えられる。またフロントピラー102やルーフサイド103(以下、単に車体104とも略する)には、車室の内装としてエアバッグ4を覆うガーニッシュ105(内装材、カバー材、トリム材等とも呼ばれる)が取り付けられる。
サイドエアバッグ装置2は、センサ(図示せず)、インフレータ3、エアバッグ4等を含み、側突時にエアバッグ4を展開させる構成である。サイドエアバッグ装置2のセンサは、車体側面の所定位置に設けられ、加速度や荷重を検出する。このセンサが規定値以上の加速度や荷重を検出すると、インフレータ3が作動する。
サイドエアバッグ装置2のインフレータ3は、エアバッグ4にガスを供給する機能を有しており、フロント側のインストルメントパネル106内、またはクォータピラー(図示せず)等に配設される。このインフレータ3は、センサが加速度や荷重を検出すると、ガーニッシュ105に収納されているエアバッグ4にガスを噴出し、エアバッグ4を膨脹させる。これによりエアバッグ4はガーニッシュ105を押し出し、車室のサイド側にエアバッグ4を展開することができる(図1B参照)。
本実施形態のエアバッグ用クリップ1は、以上のようなサイドエアバッグ装置2を稼働させるための機能を備える。すなわち、エアバッグ用クリップ1は、車体104にガーニッシュ105が接触又は近接しそれらの間にエアバッグ4を収納するエアバッグ収納位置、および車体104からガーニッシュ105が離間してエアバッグ4を車室内へ展開させるエアバッグ展開位置、の各位置でガーニッシュ105を保持するように形成してある。
図2A、図2Bは、本実施形態に係るエアバッグ用クリップの各部品を示す斜視図であり、図2Aはピン部材、図2Bはグロメットである。
図1A〜図2Bに示すように、このエアバッグ用クリップ1は、車体104に本体が取り付けられるグロメット10と、ガーニッシュ105に頭部21が取り付けられるピン部材20とを含む構成である。これらグロメット10及びピン部材20は、剛性を有した合成樹脂材によって一体成形される。
図3A〜図3Dは、本実施形態に係るエアバッグ用クリップのグロメットを示す展開図であり、図3Aは上面図、図3Bは正面図、図3Cは側面図、図3Dは底面図である。
図2A〜図3Dに示すように、エアバッグ用クリップ1のグロメット10は、車体104の取付孔(図示せず)の周縁に当接するフランジ部11が形成してある。そして、このフランジ部11の中央位置には、ピン部材20が表面側から裏面側に向かって差し込まれる支持孔12が穿設されている。
また、グロメット10は、フランジ部11の裏面側において、支持孔12の裏面側開口縁から軸方向に対向する一対の脚部13が延出している。この脚部13の側面中央部には、脚部13の延出方向と逆方向に延出し、テーパー状に突起部分が形成された取付孔用係合部14が設けられている。グロメット10を車体104に取り付ける場合は、この取付孔用係合部14の突起部分が車体104の取付孔に係止することで、該取付孔に保持される。またグロメット10を車体104から取り外す場合は、支持孔12から内側に撓んでいる取付孔用係合部14をマイナスドライバで引っ掛け、さらに内側へ撓ませることで、取付孔との係止状態を容易に解除できる。
さらに、グロメット10は、ピン部材20の支持孔12からの抜けを規制する係合部15が、脚部13の根本付近に形成してある。後述するピン部材20は、グロメット10の支持孔12に差し込まれ、この係合部15に係止される構成である。なお、本実施形態の係合部15は、支持孔12の裏面側開口縁から一定量突出して一対の脚部13を連結しており、脚部13の撓みを規制するリブとしても機能している。
図4A、図4Bは、本実施形態に係るエアバッグ用クリップのピン部材を示す展開図であり、図4Aは正面図、図4Bは側面図である。
図2A、図2B、図4A、図4Bに示すように、エアバッグ用クリップ1のピン部材20は、ガーニッシュ105の取付座(図示せず)に取り付ける頭部21と、この頭部21の裏面側から軸方向に延出する一対の対向する側壁22と、を備えている。ピン部材20の頭部21は、略コ字状にフランジが形成されている。そして、このコ字状の開口部分にガーニッシュ105の取付座が挿入されることで、該ガーニッシュ105を保持することが可能となる。
一方、軸方向に延在する一対の側壁22は、グロメット10の支持孔12に差し込まれる構成であり、一定の間隔を空けて対向配置してある。また側壁22の側面には、頭部21側から第1係止部23、くびれ部24、可撓領域25、第2係止部26が順に形成されている。
側壁22の第1係止部23は、側壁22の厚みを変えることにより、頭部21の根本部分からくびれ部24まで、頂部23aを介した山なりに形成してある。一対の第1係止部23は、グロメット10の係合部15に係止して、ガーニッシュ105をエアバッグ収納位置において保持する機能を有している。この第1係止部23は、所定の荷重(例えば11〜19kgの範囲)以上がかかることで、弾性的に内側方向に撓み、係止状態が解除される構成である。なお第1係止部23の形状は、グロメット10の係合部15との係止状態において、所定の荷重を得るために任意に設計してもよい。
側壁22のくびれ部24は、可撓領域25と第1係止部23との間に形成してあり、側壁22の中で最も薄い部分となっている。このくびれ部24は、第1係止部23が所定の荷重を得るために形成されるとともに、ガーニッシュ105の取付け作業において、作業者に対し取付位置の認識を与えさせることができる。これにより、作業者は取付け作業を円滑に行えるようになる。
側壁22の可撓領域25は、くびれ部24から第2係止部26まで平行に延ばして形成しており、弾性的に内側へ撓ませることが可能な領域としてある。この可撓領域25の延出量は、エアバッグ4の展開量によって適宜決められる。また可撓領域25は、グロメット10の支持孔12の内側面との間隔を狭小に保つように延在している。エアバッグ展開時には、この可撓領域が支持孔12が側壁22をぐらつかせずに案内する。これにより、ピン部材20が保持するガーニッシュ105を、車体104から安定して離間させることが可能となる。
一対の側壁22の先端部は、先端横柱27で互いに連結されている。第2係止部26は、側壁22の可撓領域25の外面に一体形成されている。具体的には、第2係止部26は、寸法Aの長さを有し、先端横柱27との連結部から第1係止部23の方向へ向かってテーパ状に可撓領域25の外面に形成されており、第1係止部23寄りの端面が係止爪26aとなっている。第2係止部26の係止爪26aは、グロメット10の係合部15に係止し、ガーニッシュ105をエアバッグ展開位置で保持する。このため、係止爪26aは、第1係止部23に対する所定の荷重以上がかかっても係止状態を保持する構成としてある。これによりエアバッグ用クリップは、エアバッグ4が膨脹したときでも、ガーニッシュ105を保持することができる。
上述したように、第2係止部26は、可撓領域25の外面に寸法Aの範囲で一体形成させているため、可撓領域25を内側に撓ませると、第2係止部26も、先端横柱27の連結部(すなわち、先端部)を支点に係止爪26aが内側へ移動するように撓む。これにより、グロメット10の係合部15との係止状態を容易に解除することができる。
図5A〜図5Cは、本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいて、エアバッグ収納位置のピン部材とグロメットの状態を示す図であり、図6は、図5A〜図5Cの状態を示す車体とガーニッシュを含む側面断面図であり、図7A、図7Bは、図5A〜図5Cのエアバッグ用クリップの断面図である。
サイドエアバッグ装置2を備える自動車にエアバッグ用クリップ1を適用する場合は、まずグロメット10の支持孔12にピン部材20の側壁22を差し込み、側壁22の第1係止部23まで軸方向に相対移動させる。さらに図5乃至図7に示すように、第1係止部23を係合部15に係止させることで、ピン部材20をグロメット10に保持した係止状態とする。その後、ピン部材20の頭部21をガーニッシュ105の取付座に取り付ける。そして、この状態にてガーニッシュ105を動かし、露出しているグロメット10を車体104の取付孔に取り付ける。これによりガーニッシュ105をエアバッグ収納位置に配設する。
このエアバッグ収納位置では、ガーニッシュ105の外縁が車体104と接触することになり、収納してあるエアバッグ4を密閉状態とする。またグロメット10に差し込まれたピン部材20の側壁22は、車体104内の中空部に突き出た状態となっている。
このエアバッグ収納位置では、一対の第1係止部23の頂部23aがグロメット10の係合部15に引っかかることで、ピン部材20がグロメット10に保持される。ここで、両部15、23の係止状態における保持力は、第1係止部23の弾性力によって決定される。なお、本実施形態のエアバッグ用クリップ1は、くびれ部24の位置に一対の側壁22を連結する上側中間横柱28が設けてある。この上側中間横柱28は、側壁22に設けてある第1係止部23の可撓性に対し所定の荷重を確保させることができる。
図8A〜図8Cは、本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいて、エアバッグ展開位置のピン部材とグロメットの状態を示す図であり、図9は、図8A〜図8Cの状態を示す車体とガーニッシュを含む側面断面図であり、図10A、図10Bは、図8A〜図8Cのエアバッグ用クリップの断面図である。
自動車が側突した場合は、エアバッグ4が膨張することによりガーニッシュ105が押し上げられる。このため、ガーニッシュ105をエアバッグ収納位置で保持していたエアバッグ用クリップ1は、第1係止部23と係合部15の係止状態に所定荷重以上がかかって係止状態が解除される。これにより側壁22は、グロメット10の支持孔12に案内されつつ相対移動し、図8A〜図10Bに示すように、新たに第2係止部26が係合部15と係止する状態となる。
サイドエアバッグ装置2は、このようなグロメット10に対するピン部材20の相対移動により、ガーニッシュ105が押し開けられて車体104から離間し、車室側面にエアバッグ4を展開する。これにより側突時の際に、自動車の搭乗者の頭部を有効に保護することができる。
このエアバッグ展開位置では、一対の第2係止部26の係止爪26aが係合部15に引っかかることで、ピン部材20がグロメット10に保持される。ここで、両部15、26の係止状態における保持力は、第1係止部23による保持力よりも充分大きいものとなっている。また本実施形態のエアバッグ用クリップ1は、ピン部材20の可撓領域25の頭部21寄りに、一対の側壁22を連結する下側中間横柱29が設けてある。この下側中間横柱29は、側壁22の可撓領域25を支持しており、これにより該側壁22は所定の弾性力を得ることが可能となる。
なお、エアバッグ展開位置におけるガーニッシュ105と車体104との隙間は、ピン部材20の第1係止部23から第2係止部26までの間隔と、グロメット10の支持孔12と係合部15の厚みによって設定されることになる。本実施形態のエアバッグ用クリップ1は、ピン部材20の第1係止部23を頭部21寄りに、第2係止部26を先端寄りに形成し、さらにグロメット10の係合部15を脚部13の根本付近に形成してある。このため、ガーニッシュ105と車体104との隙間が充分に広くなり、エアバッグ4を安定的に展開することが可能となる。
図11は、本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいてエアバッグ展開位置にあるピン部材とグロメットの係止状態の解除を示す斜視図であり、図12A
、図12Bは、図11のエアバッグ用クリップの断面図である。
メンテナンス等によりガーニッシュ105を車体104から取り外す場合は、図11、図12A、図12Bに示すように、エアバッグ展開位置においてエアバッグ用クリップ1のピン部材20の可撓領域25を撓ませることで取り外すことができる。
具体的な取外し作業手順としては、まずピン部材20の第2係止部26とグロメット10の係合部15とが係止するエアバッグ展開位置となるように、ガーニッシュ105を車体104から離間させる。このときエアバッグ展開位置では、ピン部材20の可撓領域25がグロメット10の支持孔12から表面側に露出した状態となる。
その後、車体104とガーニッシュ105との間に形成された隙間からペンチ200の先端を差し込み、このペンチ200によってピン部材20の露出している可撓領域25を挟み、内側へ撓ませる(図12A参照)。ピン部材20の可撓領域25と一体に形成された第2係止部26も、先端横柱27の連結部(すなわち、先端部)を支点に係止爪26aが内側へ移動するように撓む。これにより、係止爪26aとグロメット10の係合部15との間の係止状態が解除される。よって、ピン部材20とグロメット10が分離することとなり、ガーニッシュ105を車体104から取り外すことができる(図12B参照)。
図13A〜図13Cは、本実施形態に係るエアバッグ用クリップにおいて、ピン部材のリブの機能を説明するための側面断面図である。
図13Aに示すように、一対の側壁22を間隔D’だけ開けて平行に形成したのみで、中間部にリブを形成しなかった場合、ペンチ200で可撓領域25を撓ませたとき、一方の側壁22に撓みが偏ってしまうことがある。このような側壁22の撓みの偏りは、例えば、厚さのバラツキ、樹脂の冷却速度差による硬度のバラツキ、ペンチ200からの力の加え方等が影響している。このように側壁22の一方が偏って撓むと、撓みの少ない他方の側壁22に形成された第2係止部26の係止爪26aが、係合部15から解除されないおそれがある。
そこで、本実施形態のエアバッグ用クリップ1のピン部材20は、図13Bに示すように、一対の側壁22間の中央位置に軸方向に延出するリブ30を設けている。各側壁22とリブ30との間隔Dは同じであり、各側壁22をペンチ200で挟んで内側に撓ませると、それぞれの側壁22がリブ30に当接するまで撓む。
図13Cに示すように、リブ30に当接した状態にあっては、各側壁22の撓み量はともにDであり、左右均等に撓んでいる。よって、各側壁22に形成された第2係止部26の係止爪26aも均等に撓んで、ともに係合部15から解除される。これにより、ピン部材20とグロメット10の係止状態の解除を速やかに実施させることが可能となり、さらにピン部材20の破損を防止することもできる。
ピン部材20とグロメット10の分離後は、ピン部材20の可撓領域25からペンチ200を離すことで、この可撓領域25が弾性的に元の状態に戻ることになる。したがって、再度ガーニッシュ105を車体104に取り付ける際に、同じエアバッグ用クリップ1を再使用することができる。
以上のように、本実施形態のエアバッグ用クリップ1を用いることで、ピン部材20とグロメット10の係止状態を容易に解除することができ、車体104からガーニッシュ105を取り外す作業が容易になる。これは、例えばガーニッシュ104を並行にスライドさせて車体104から取り外すよりも、遙かに容易に取り外すことができ、取外し作業の能率を向上させることが可能となる。またピン部材20とグロメット10の係止状態を解除することで、ガーニッシュ105をスライドさせずに取り外すことができるため、取外し作業中にガーニッシュ105を車室の内装等にぶつけることを防止し、ガーニッシュ105及び車室の内装を傷つけることがない。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例や応用例が可能なことは勿論である。例えば、ピン部材20は、図14A、図14Bに示すように、頭部21の裏面側を二対の対向する側壁22a、22bによって方形として軸方向に延出させた形状でもよい。このような形状でも側壁22aを弾性的に撓ませることができ、上記実施形態と同じ機能を持つことができる。
〔変形例〕
図15A、図15Bは上述した実施形態に係るエアバッグ用クリップの変形例を示す斜視図であり、図15Aはピン部材、図15Bはグロメットである。
上述した実施形態では、グロメット10の一つの係合部15に、ピン部材20に形成した第1,第2係止部23、26をともに係合する構成であったが、これに限定されず各係止部23、26をそれぞれ別個の係合部へ係止させる構成であってもよい。
例えば、図15A,図15Bに示すように、ピン部材20の第1係止部23と第2係止部26をそれぞれ別の側面に形成する。そして、グロメット10には、ピン部材20の第1係止部23と対向する位置に第1係合部15aを、ピン部材20の第2係止部26と対向する位置に第2係合部15bをそれぞれ形成するようにしてもよい。

Claims (6)

  1. 車体にガーニッシュが接触又は近接しそれらの間にエアバッグを収納するエアバッグ収納位置、および前記車体から前記ガーニッシュが離間して前記エアバッグを車室内へ展開させるエアバッグ展開位置、の各位置で前記ガーニッシュを保持可能なエアバッグ用クリップであって、
    グロメットおよびピン部材を含み、前記ガーニッシュまたは車体のいずれか一方に当該ピン部材の頭部が取り付けられるとともに、他方に当該グロメットが取り付けられ、
    前記グロメットは、前記ピン部材が表面側から裏面側に向かって差し込まれる支持孔と、前記ピン部材の前記支持孔からの抜けを規制する係合部とを有し、
    前記ピン部材は、前記頭部から軸方向へ延出し、前記グロメットの支持孔に差し込まれて、当該グロメットに対し軸方向に相対移動自在な一対の対向する側壁を有し、
    前記各側壁には、前記グロメットの係合部に係止して前記エアバッグ収納位置で前記ガーニッシュを保持するための第1係止部が頭部寄りに形成されるとともに、同じく前記グロメットの係合部に係止して前記エアバッグ展開位置で前記ガーニッシュを保持するための第2係止部が先端部寄りに形成されており、
    さらに、各側壁は、前記第1係止部よりも先端部側の任意領域が内側へ弾性的に撓ませ可能な可撓領域を形成しており、前記第2係止部が前記グロメットの係合部に係止された状態において、前記支持孔からグロメットの表面側に露出した前記可撓領域を内側へ撓ませたとき、当該可撓領域の撓み変形に伴い前記第2係止部が変位して前記グロメットの係合部に対する係止状態が解除される構成であることを特徴とするエアバッグ用クリップ。
  2. 前記ピン部材は、前記一対の側壁を一定の間隔を空けて対向配置してあり、且つ、当該各側壁間の中央位置に軸方向へリブが延出していることを特徴とする請求項1のエアバッグ用クリップ。
  3. 前記一対の側壁は、先端部が先端横柱で連結されており、前記第2係止部は当該先端部からテーパ状に延出する係止爪であることを特徴とする請求項1のエアバッグ用クリップ。
  4. 前記グロメットは、前記支持孔の裏面側開口縁から軸方向に対向する一対の脚部が延出しており、当該脚部が前記ガーニッシュまたは車体のいずれか一方に係合する構成であり、さらにこれら脚部に挟まれた中間部を前記側壁が軸方向へ移動自在となっており、且つ前記脚部の根本付近に前記係合部が形成してあることを特徴とする請求項1のエアバッグ用クリップ。
  5. 前記各側壁に形成した可撓領域は、前記支持孔の内側面との間隔を狭小に保つよう平行に延びており、
    さらに前記可撓領域と前記第1係止部との間にくびれ部を形成したことを特徴とする請求項1のエアバッグ用クリップ。
  6. 前記一対の側壁は、くびれ部で中間横柱により連結されていることを特徴とする請求項5のエアバッグ用クリップ。
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