JPWO2008029642A1 - 食用油脂、その製造方法、及び該油脂組成物を含有するチョコレート - Google Patents

食用油脂、その製造方法、及び該油脂組成物を含有するチョコレート Download PDF

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Abstract

【課題】 ブルーム耐性を更に向上させることのできる食用油脂、及び従来のチョコレートよりも更にブルーム耐性が向上したチョコレートを提供すること。【解決手段】 エステル交換反応又はエステル化反応により得られ、下記要件(A)〜(D)を満たす食用油脂。(A)ヨウ素価が、15〜29である;(B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%である;(C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%である;(D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満である。【選択図】 なし

Description

本発明は、ブルーム耐性を有する食用油脂、その製造方法、及び該食用油脂を含有するチョコレートに関する。
チョコレートは、カカオマス、ココア、カカオ脂、粉乳、甘味料等を混合し、微粒化、精練、調温処理して製造される油脂性菓子である。チョコレートは、保存条件の影響によっては、チョコレートの表面に白い粉が吹いたような現象が発生する。この現象はブルームと呼ばれ、チョコレート中に含まれる砂糖に由来するシュガーブルームと、チョコレート中に含まれる油脂に由来するファットブルームとに大別される。このようなブルームの発生は、チョコレート製品の商品価値を著しく低下する。
従って、このようなファットブルームを防止するために、従来よりブルーム防止剤の開発が行われている。
例えば、特許文献1には、ある特定のチョコレート組成物において、C12〜C14の飽和脂肪酸とC16〜18の飽和脂肪酸をそれぞれ1つ以上含んだトリアシルグリセロールを主成分とする油脂(H2M+HM2脂肪)を0.5質量%以上配合することにより、チョコレートのブルームを抑制することが開示されている。
後述する試験油脂2〜4が、特許文献1で開示された油脂に相当する。
また、特許文献2には、構成脂肪酸としてC20〜24の飽和脂肪酸とC16〜22の不飽和脂肪酸を一定の割合で含有し、1分子中にC20〜24の飽和脂肪酸及びC16〜22の不飽和脂肪酸を少なくとも各1個以上有する混酸基トリアシルグリセロールを一定の割合で含有する油脂組成物からなるファットブルーム防止剤を配合することにより、チョコレートのブルームを抑制することが開示されている。
後述する試験油脂5が、特許文献2で開示された油脂に相当する。
また、特許文献3には、遊離脂肪酸としての融点が40℃より低い脂肪酸の残基(U)が1位または3位に結合し、残りに融点が45℃より高い飽和脂肪酸の残基(S)が結合するモノUジS型トリアシルグリセロール(SSU)が一定以上含まれ、全S中のステアリン酸残基またはパルミチン酸残基が一定以上である抗ブルーム剤を配合することにより、チョコレートのブルームを抑制することが開示されている。
後述する試験油脂6が、特許文献3で開示された油脂に相当する。
特開平6−292510号公報 特開昭62−6635号公報 特開平2−138937号公報
上記特許文献1〜3に開示されたブルーム防止剤等によれば、ある程度はチョコレートのブルームを防止することができる。しかしながら、いずれのブルーム防止剤も未だ十分な効果であると言い難い。
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、ブルーム耐性を更に向上させる食用油脂、その製造方法、及び従来のチョコレートよりも更にブルーム耐性が向上したチョコレートを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね検討した結果、エステル交換反応又はエステル化反応により得られ、ヨウ素価、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量、構成脂肪酸中のラウリン酸含量、及び構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が特定の範囲である油脂組成物が、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、エステル交換反応又はエステル化反応により得られ、下記要件(A)〜(D)を満たす食用油脂を提供する。
(A)ヨウ素価が、15〜29である;
(B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%である;
(C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%である;
(D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満である。
前記要件を満たす食用油脂は、上述の効果を発揮しうる。
また、本発明は、ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油と、ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂とを含有する混合油をエステル交換して得られる、前記食用油脂を提供する。
前記硬化油としては大豆硬化油が挙げられ、前記油脂としてはパーム核極度硬化油が挙げられる。
前記混合油中の前記硬化油と前記油脂との混合比は、好ましくは4:6〜7:3である。
上記特定の混合比により得られる油脂は、チョコレートに添加した場合のチョコレートの固さ及び口どけを考慮したとき、使いやすいものとなる。
前記食用油脂は、チョコレート用として用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明の食用油脂を含有するチョコレートを提供する。本発明の食用油脂は、チョコレートに添加した場合にブルーム防止効果を発揮しうるので、チョコレート用途が、本発明の食用油脂の用途の1つである。
また、本発明は、前記食用油脂を、チョコレートの全油脂中の0.5〜10質量%含有するチョコレートを提供する。
また、本発明は、ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油と、ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂とを含有する混合油をエステル交換することを含む食用油脂の製造方法であって、得られる食用油脂が下記要件(A)〜(D)を満たすように、前記混合油中の前記硬化油と前記油脂との混合比を調整する、食用油脂の製造方法を提供する。
(A)ヨウ素価が、15〜29である;
(B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%である;
(C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%である;
(D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満である。
この特定の食用油脂の製造方法により、上述の効果を発揮する食用油脂を得ることができる。
本発明によれば、チョコレートに配合することにより、従来のチョコレートと比較して、ブルーム耐性が著しく向上したチョコレートを製造することのできる食用油脂が提供される。
以下、まず、本発明の食用油脂について説明する。
すなわち、本発明の食用油脂は、エステル交換反応又はエステル化反応により得られ、下記要件(A)〜(D)を満たす食用油脂。
(A)ヨウ素価が、15〜29である;
(B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%である;
(C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%である;
(D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満である。
(エステル交換反応またはエステル化反応)
本明細書で用いられる「エステル交換反応またはエステル化反応」とは、例えば、グリセリンの水酸基と脂肪酸のカルボン酸とをエステルにする反応を意味する。エステル交換反応またはエステル化反応としては、酵素的又は化学的エステル交換、エステル化反応等が挙げられる。酵素的エステル交換としては、例えば、カンディダ属酵母(Candida SP.)由来のリパーゼやアルカリゲネス属(Alcaligenes SP.)由来のリパーゼ等を用いる方法が挙げられる。化学的エステル交換としては、例えば、ナトリウムメチラートを触媒として用いる方法が挙げられる。なお、エステル交換反応またはエステル化反応の方法については後述する。
本発明において「エステル交換反応またはエステル化反応による得られる食用油脂」としたのは、2種以上の油脂を混合しただけの混合油そのものを含まない趣旨である。混合油は35℃以上の温度で溶け残りが生じるため、チョコレート用途に適さないからである。また、混合油は、通常、分子内にラウリン酸を多く有する油脂や、分子内にトランス型脂肪酸を多く有する油脂が偏在しており、本発明の目的とする効果が小さいか、または得られないからである。すなわち、本発明の効果は、エステル交換反応またはエステル化反応により得られる食用油脂を用いることによって得られるものである。
本発明の食用油脂は、下記(A)〜(D)を満たす。
(A)ヨウ素価が、15〜29;
(B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%;
(C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%;
(D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満。
以下、(A)〜(D)について順次について説明する。
(ヨウ素価)
上記(A)の要件について説明する。
本明細書で用いられる、ヨウ素価とは、油脂100gに付加するヨウ素のグラム数を意味する。ヨウ素価が大きい油脂ほど、構成脂肪酸中の不飽和結合の数が多くなることを意味する。本発明の食用油脂のヨウ素価は15〜29であり、好ましくは15〜27であり、更に好ましくは16〜26であり、更に好ましくは18〜26であり、更に好ましくは19〜26であり、最も好ましくは20〜22である。ヨウ素価が上記範囲内であれば、本発明の効果を発揮し得るので好ましい。
(トランス型脂肪酸含量)
次に、上記(B)の要件について説明する。
本明細書で用いられる「トランス型脂肪酸」とは、脂肪酸のトランス型の幾何異性体を意味する。このようなトランス型脂肪酸は、例えば、不飽和脂肪酸を有する油脂を水素添加する際に生じることが知られている。発生する割合は、水素添加の条件により異なる。水素添加の条件は、オートクレーブの大きさ、水素圧、反応温度、触媒の種類、触媒添加量等の種々の要因により左右されるため一概に規定することができないが、これらは当業者であれば適宜調整して行うことが可能である。
本明細書で用いられる、食用油脂の「構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量」とは、食用油脂を構成する脂肪酸の総量に対するトランス型脂肪酸の質量%(以下、「%」と略す。以下、本明細書において、「%」と示す場合、特に断らない限り、質量%を意味する。)をいう。構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量の分析方法としては、例えば、油脂分子中の脂肪酸をメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで測定する方法が挙げられる。本発明の食用油脂の「構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量」は16〜29%であり、好ましくは16〜27%であり、更に好ましくは16〜25%であり、更に好ましくは18〜25%であり、更に好ましくは19〜25%、最も好ましくは19〜22%である。構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が上記範囲内であれば、本発明の効果を発揮し得るので好ましい。
(ラウリン酸含量)
次に、上記(C)の要件について説明する。
ラウリン酸とは、炭素数12の飽和脂肪酸(C12:0)を意味し、ドデカン酸とも呼ばれる。
本明細書で用いられる、食用油脂の「構成脂肪酸中のラウリン酸含量」とは、食用油脂を構成する脂肪酸の総量に対するラウリン酸の割合(質量%)を意味する。分析方法としては、例えば、油脂分子中の脂肪酸をメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで測定する方法が挙げられる。本発明の食用油脂の「構成脂肪酸中のラウリン酸含量」は13〜28%であり、好ましくは16〜28%であり、更に好ましくは18〜28%であり、更に好ましくは18〜26%であり、更に好ましくは18〜24%であり、最も好ましくは22〜24%である。構成脂肪酸中のラウリン酸含量が上記範囲内であれば、本発明の効果を発揮し得るので好ましい。
(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量)
次に、上記(D)の要件について説明する。
オレイン酸とは、炭素数18、二重結合を1つ有するシス型の不飽和脂肪酸(C18:1)を意味する。また、リノール酸とは、炭素数18、二重結合を2つ有するシス型の不飽和脂肪酸(C18:2)を意味し、また、リノレン酸とは、炭素数18、二重結合を3つ有するシス型の不飽和脂肪酸(C18:3)を意味する。
本明細書で用いられる、食用油脂の「構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量」とは、食用油脂を構成する脂肪酸の総量に対する、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸の総和の割合(質量%)を意味する。分析方法としては、例えば、油脂分子中の脂肪酸をメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで測定する方法が挙げられる。本発明の食用油脂の「構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量」は、10%未満であり、好ましくは7%未満であり、更に好ましくは6%未満であり、更に好ましくは3〜6%であり、更に好ましくは3〜4.5%であり、最も好ましくは3.9〜4.2%である。構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が上記範囲内であれば、本発明の効果を発揮し得るので好ましい。
油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸が、主にC18:1、C18:2、C18:3の場合には、「構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量」は、C18:1、C18:2及びC18:3の含量の総和から、トランス型脂肪酸の含量を差し引いて算出することができる。
本発明の食用油脂は、例えば、ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油と、ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂とを、後述する所望の割合で含有する混合油を、酵素又は化学触媒(ナトリウムメチラート等)を用いてエステル交換することにより製造することができる。
(ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油)
ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油について説明する。 ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油(原料油脂)としては、特に限定はないが、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、コーン油、紅花油、ひまわり油、これらの分別したもの及び/またはエステル交換したものから選択される油脂を水素添加して製造される硬化油等が挙げられる。また、上記硬化油を更に分別した油脂を用いてもよい。
ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油は、上記で述べたとおり、上記油脂を適宜水素添加して製造することができるが、水素添加の条件は当業者であれば適宜調整して決めることが可能である。
この硬化油のヨウ素価は45以下であり、ラウリン酸を含む油脂と混合することを考慮すれば、好ましくは25〜45であるもの、更に好ましくは35〜44であるもの、最も好ましくは40〜43のものを用いることができる。
この硬化油の構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は30質量%以上であり、ラウリン酸を含む油脂と混合することを考慮すれば、好ましくは30〜60質量%であり、更に好ましくは35〜50質量%であるものを用いることができる。
この硬化油の構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量は、上記トランス脂肪酸含量及びヨウ素価を満たす範囲であれば、特に限定されないが、ラウリン酸を含む油脂と混合することを考慮すれば、例えば、構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量は、好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは5〜20質量%のもの、最も好ましくは5〜10質量%のものを用いることができる。
上記硬化油としては、例えば、大豆油を水素添加して製造された大豆硬化油を用いることができる。大豆硬化油を用いる場合、ヨウ素価が25〜45で、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30〜60質量%のものを用いることができる。また、ヨウ素価が35〜44で、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸の含量が35〜50質量%であるものを用いることが好ましい。
本明細書において用いられる硬化油としては、具体的には、例えば、大豆油を水素添加して製する大豆硬化油(融点55℃)(構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量;40.5%、ヨウ素価42.2)が挙げられる。この場合、C18:1の量が、C18:2、C18:3と比べて多いことから、このトランス型脂肪酸の主成分は、C18:1のトランス型脂肪酸(エライジン酸)である。
(ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂)
次に、ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂について説明する。ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂(以下、原料油脂という場合がある。)としては特に限定はないが、例えば、パーム核油、ヤシ油等の油脂を水素添加および/または分別したもの等が挙げられる。
ヨウ素価が10以下であり、ラウリン酸含量が40質量%以上である油脂は、上記で述べたとおり、パーム核油、ヤシ油等の油脂を適宜水素添加および/または分別して製造することができ、この水素添加および分別の条件は、当業者であれば、適宜調整して決めることが可能である。
この原料油脂のヨウ素価は10以下であり、トランス型脂肪酸を含む油脂と混合することを考慮すれば、8以下のもの、5以下のもの、又は3以下のものを用いることができる。また、極度硬化油を用いる場合には、例えば2以下のものを用いることができる。
上記原料油脂の構成脂肪酸中のラウリン酸含量は40質量%以上であり、トランス型脂肪酸を含む油脂と混合することを考慮すれば、好ましくは40〜60質量%のもの、更に好ましくは40〜50質量%のものを用いることができる。
上記原料油脂の構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量は、上記ヨウ素価を満たす範囲であれば、特に限定されない。トランス型脂肪酸を含む油脂と混合することを考慮すれば、好ましくは10質量%以下のもの、更に好ましくは7質量%以下のもの、更に好ましくは5質量%以下のもの、最も好ましくは3質量%以下のものを用いることができる。また、極度硬化油を用いる場合には、例えば1質量%未満のもの、0.5質量%未満のものを用いることができる。
上記原料油脂としては、例えば、パーム核油を水素添加して製したパーム核極度硬化油を用いることができる。パーム核極度硬化油を用いる場合、その構成脂肪酸中のラウリン酸の含量が40〜60質量%のものを用いることができ、さらに40〜50質量%のものが好ましい。また、そのヨウ素価は2以下のものを用いることができ、さらに1以下のものを用いることがが好ましい。
上記原料油脂としては、例えば、パーム核油を水素添加して製したパーム核極度硬化油(ラウリン酸含量;46.3%、ヨウ素価;0.4)が挙げられる。
(混合油の混合比の調整)
本発明の食用油脂は、例えば、上記の硬化油と原料油脂とを、それぞれ1種以上で混合した混合油をエステル交換することにより得られる。
この混合油中の前記トランス型脂肪酸を含む油脂(硬化油)と前記ラウリン酸を含む油脂(原料油脂)の割合は、所望の割合で混合でき、この混合油をエステル交換して得られる油脂が、上記(A)〜(D)の構成要件を満たすものであれば良い。よって、混合油の混合比は、混合油をエステル交換して得られる油脂が、上記(A)〜(D)の構成要件を満たすものであれば、適宜調整することが可能である。
例えば、上記融点大豆硬化油と上記パーム核極度硬化油との混合比が4:6〜7:3であり、好ましくは4:6〜6:4であり、より好ましくは5:5〜6:4である混合油をエステル交換して得られる食用油脂を挙げることができる。これにより、上記(A)〜(D)の構成要件を満たす食用油脂を得ることができる。
これは、例えば後述する実施例の表10、表11及びこれらの説明で示す通り、混合油に用いる原料油脂のヨウ素価、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量及びラウリン酸含量がわかれば、当業者は適宜、混合油の混合比を調整して、上記(A)〜(D)の構成要件を満たす食用油脂を得ることが可能である。
本発明の食用油脂は、通常、上記硬化油を1種以上と上記油脂を1種以上とを混合した混合油を基に製造することができるが、必要に応じて、その他の油脂を混合油中に添加することもできる。
本発明の食用油脂の用途としては、食用であれば、特に用途は限定されない。例えば、マーガリン、ショートニングの原料油脂として用いることができ、またチョコレートの添加剤として用いることができる。
本発明は、本発明の食用油脂を含有するチョコレートを提供する。
本明細書で用いられる、チョコレートは、規約(チョコレート業の表示に関する公正競争規約)または法規上の規定に限定されるものではなく、カカオ脂またはカカオ代用脂を用いたチョコレート類及び油脂加工食品を意味する。このようなチョコレート類及び油脂加工食品の中には、チョコレート業の表示に関する公正競争規約(全国チョコレート業公正取引協議会)にいうチョコレート及び準チョコレートを含む。
チョコレートには、テンパー型チョコレートと非(ノン)テンパー型チョコレートがあるが、本発明の食用油脂は、いずれにも用いることができる。テンパー型チョコレートとは、製造に際し、油脂の結晶型を安定型にそろえる操作を伴うチョコレートを意味する。その操作としては、一般的にテンパリングが行われる。一方、非テンパー型チョコレートとは、上記の操作を行わないものを意味する。
テンパー型、非テンパー型のいずれのチョコレート類等も、少なからずブルーム発生が問題となる。本発明の食用油脂は、後述するブルーム耐性を有することから、チョコレートの添加剤として用いることが有効な用途の一つである。
本発明のチョコレート中に含まれる本発明の食用油脂の含有量に特に制限はないが、通常は、チョコレートの全油脂中の0.5〜10質量%である。好ましい含有量は、0.5〜5質量%である。本発明の食用油脂の含有量が、チョコレートの全油脂中の0.5質量%未満であると、ブルーム耐性を十分に発揮しない場合がある。一方、10質量%を超える場合には、その食用油脂の物性面より、製造されるチョコレートが、20℃付近で柔らかくなりすぎ、35℃付近で溶け残りが多くなり、チョコレートに適する物性を保てない場合がある。
市販のチョコレートは、一般に30〜50%の油分を含むものが多い。この場合には、例えば、本発明の食用油脂は、チョコレート全体に対して0.15〜5質量%で用いることが好ましい。
本発明の食用油脂の用途としては、上述したようにチョコレート用として用いることができる。前述した通り、チョコレートは保存条件によってはチョコレート表面に白い粉が吹いたような現象が発生し、品質が低下する場合があり、この現象は、ブルームと呼ばれている。本発明の食用油脂は、チョコレートに添加することにより、このブルームの発生を抑制する作用(ブルーム耐性)を有する。
従って、本発明の食用油脂は、チョコレート用に使用することに適しており(チョコレート用途)、この場合、本発明の食用油脂は、抗ブルーム剤として機能する。
本発明は、本発明の食用油脂を含有するチョコレートを提供する。
本発明の食用油脂(抗ブルーム剤)は、テンパー型チョコレート、非テンパー型チョコレートのいずれにも添加することができる。
また、本発明は、本発明の食用油脂と、カカオ脂及び/又はカカオ代用脂とを含有するチョコレート用原料油脂を提供する。なお、カカオ脂及びカカオ代用脂とは、2−不飽和−1,3−ジ飽和トリアシルグリセロールを主体とする油脂であり、主にチョコレート原料に用いるものを意味する。
この油脂は、チョコレートの原料として用いられるものであり。上記チョコレート用原料油脂中の本発明の食用油脂の濃度に特に限定はないが、例えば、全油脂中に0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%含有することができる。本発明の食用油脂の含有量が上記範囲であれば、他の油脂を含むものであっても良い。
本発明の食用油脂は、上述したように、ブルーム耐性を有する。以下、ブルーム耐性の評価方法について説明する。
ブルーム耐性は、一般的に、チョコレートを20℃付近の温度に一定時間置き、更に30℃付近の温度に一定時間置くという工程を1サイクルとする周期的な温度変化を行い、ブルームの発生を目視にて観察するブルーム試験で評価することができる。より多いサイクル数までブルームが発生しないとき、ブルーム耐性が強いと判断できる。ブルーム試験の方法は、以下の方法に限定されないが、例えば、20℃で12時間、更に32℃で12時間を1サイクルとする後述の実施例の方法を挙げることができる。
本発明の食用油脂は、チョコレートに添加したときにブルーム耐性の効果を発揮する。チョコレートは、種々の効果を有するとともに、さらにチョコレートとして適する固さ及び口どけ性であることが好ましい。そこで、本発明の食用油脂の中でも、チョコレートとして適する固さ及び口どけ性という観点では、さらに一定のSFC(solid fat content、固形脂含量)を示すものが好ましい。SFCの分析方法としては、例えば、パルスNMR固体脂含量測定装置を用いて、基準油脂分析試験法(暫定法)で行うことができる。
例えば、チョコレートにはカカオ脂が含まれているが、本発明の食用油脂のSFCは、カカオ脂のSFCより僅かに高めであることが好ましい。
チョコレートに含まれているカカオ脂は、2−不飽和−1,3−ジ飽和トリアシルグリセロールを主体とした油脂であるのに対して、本発明の食用油脂は、カカオ脂と全く異なるトリアシルグリセロールが主体となっている。一般的に、このような異なるトリアシルグリセロールを混合すると共晶状態となり、個々のトリアシルグリセロールの融点よりも低下する傾向がある。従って、本発明の食用油脂として、SFCがカカオ脂よりも僅かに高めのものを用いると、チョコレートとして適する固さとなる。
例えば、本発明の食用油脂をチョコレート用途に用いる場合、25℃におけるSFCが、カカオ脂のSFCに比べて、5%以上大きいこと(すなわち105%以上であること)が好ましい。具体的には、例えば25℃のSFCが62.4の場合には65.5以上であることが好ましい。25℃におけるSFCがこの範囲であれば、チョコレートに適した固さを考慮した場合に好ましい。
これに加え、35℃におけるSFCは、好ましくは38以下であり、更に好ましくは35以下であり、更に好ましくは33以下であり、最も好ましくは31以下である。35℃におけるSFCがこの範囲であれば、適当な口どけを考慮した場合に好ましい。
上記範囲の食用油脂は、前述の通り、チョコレートとして適する固さ及び口どけ性を有するため、使い勝手が良く好ましいが、他の範囲の食用油脂を用いた場合でもチョコレートの適する固さ及び口どけ性は、他の添加剤及び油脂により調整可能な場合がある。
次に、本発明の食用油脂の製造方法に用いられるエステル交換反応について説明する。エステル交換反応の方法に、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。
(食用油脂の製造方法)
本発明の食用油脂の製造方法に用いるエステル交換反応は、公知の方法で行うことができる。エステル交換反応は、酵素的又は化学的に行うことができるが、ここでは、一般的な酵素を用いたエステル交換反応による油脂の製造方法について説明する。
まず、複数の原料油脂を所望の割合で混合し、必要に応じて加熱しながら攪拌し、均一の混合油を得る。この混合油を必要に応じて加熱し均一に攪拌しながら、酵素製剤(例えばリパーゼ)を添加する。さらに一定時間一定温度で攪拌してエステル交換反応を進める。反応終了後、酵素製剤をろ過する。ろ液である油脂を、常法に従い、脱色、脱臭の精製処理を行い、本発明の食用油脂を得ることができる。
「原料油脂を所望の割合で混合」することについては、上述の通りである。エステル交換反応は、例えば、攪拌機付きのバッチ式容器等で行うことができる。酵素製剤の使用量は、例えば、反応に用いる油脂(混合油)に対して0.005〜10質量%用いることができる。エステル交換反応の条件は、例えば、30〜130℃の範囲で1〜72時間で行うことができる。反応に用いる油脂(混合油)中の水分量は、例えば、5〜1500(または5〜500)ppmで行うことができる。エステル交換反応の完了は、ガスクロマトグラフィーにより反応生成物のトリアシルグリセロール組成を測定することにより確認することができる。反応の停止は、酵素をろ過によって除去して行う。反応生成物である油脂は、常法により脱色、脱臭の精製処理を行う。必要があれば、精製処理の前に、水洗、乾燥処理を施してもよい。
次に、本発明の食用油脂を含むチョコレートの製造方法について説明する。
通常のチョコレートの製造方法と同様、カカオマス、砂糖、カカオ脂等を用いてチョコレート生地から製造することも可能であるが、市販のチョコレート生地に本発明の食用油脂を添加して、チョコレートを製造することもできる。
市販のチョコレート生地を用いる場合について説明する。
市販のチョコレート生地を一定の容器(ボウルや鍋等)に入れ、加温してチョコレートを溶解する。そのチョコレートを均一に攪拌しながら、本発明の食用油脂を添加して、更に加温しながら十分に攪拌する。次いで、テンパリングした後、型に入れて、冷蔵庫で冷却して固化させる。固化した後、冷蔵庫から出し、チョコレートを型から取り出す。そのチョコレートを熟成させ、本発明の食用油脂を含むチョコレートを製造することができる。
チョコレート生地の溶解は、例えば60℃の湯煎等を行い、溶解させることできる。テンパリングは、例えば、攪拌しながら26℃まで冷却し、次いで攪拌しながら30℃まで再加熱することにより行うことができる。冷蔵庫で固化させる場合、例えば、8℃で20分間冷却させて行うことができる。チョコレートの熟成は、例えば、20℃で1週間置くことにより行うことができる。
以下、ココアココアバターのみを使用したチョコレート、及び対称型トリアシルグリセロール含量が高いココアバター代用脂を使用したチョコレートに対する本発明の食用油脂の効果について説明する。
まず、以下に用いる略語について説明する。Sは炭素数16以上の長鎖飽和脂肪酸を意味し、Uは炭素数16以上の長鎖不飽和脂肪酸を意味する。S2Uとは、グリセリンにSが2個、Uが1個結合したトリアシルグリセロールを意味し、その中で、SUSとは対称型トリアシルグリセロールを、SSUとは非対称型トリアシルグリセロールを意味する。また、POPとは、グリセリンの1,3位の位置にパルミチン酸が、2位の位置にオレイン酸が結合したトリアシルグリセロールを意味する。
一般に、SSU割合の高いココアバター代用脂を添加して、チョコレートを構成する油脂のS2U含量中のSSU割合を高くすることにより、ブルームが生じにくくなることが知られている(例えば、特許文献3)。一方、(1)油脂としてココアバターのみを使用したチョコレート(カカオの量を多くしたもの)や、(2)対称型トリアシルグリセロール含量が高いココアバター代用脂を使用したチョコレート(室温でのスナップ性を改善するために特定の油脂を添加したもの)が市場では望まれている。しかし、これらは、チョコレートを構成する油脂のS2U含量中のSUS割合が高いことから、相対的にSSU割合が低くなり、保存時にブルームを生じやすいという問題がある。一方、チョコレートの口どけを良好にするために、特にPOP含量(SUSの1種)を高くした場合、耐熱性が若干劣るためブルームが発生しやすくなる。
本発明の食用油脂は、上記問題を有するチョコレートに対しても、ブルーム耐性を向上させることができる。
本発明の食用油脂を添加するチョコレート原料の油脂中のS2U含量、POP/S2UやSUS/S2Uには、特に限定はなく、どのようなチョコレート原料であっても用いることができる。
本発明の食用油脂は、チョコレート生地(本願発明に係る油脂の添加前のチョコレート)において、例えば、油脂中のS2U含量が70〜100%であり、POP/S2Uが0.1〜0.8の範囲にあるものに添加したとき、効果を発揮するため、好ましい。本発明の食用油脂を添加するチョコレート原料の油脂としては、S2U含量が好ましくは75〜95%であり、更に好ましくは80〜95%である。また、POP/S2Uの好ましい範囲は、適宜調整することができるが、好ましくは0.2〜0.5であり、さらに好ましくは油脂中のS2U含量が83〜92%であり、POP/S2Uが0.25〜0.43(より好ましくは0.25〜0.35)である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、以下の実施例において、部および%は、特に断りのない限り質量部又は質量%を表す。
実施例1
以下の実施例においては、パーム核極度硬化油としては、日清オイリオグループ社内製、大豆硬化油としては、日清オイリオグループ社内製(融点55℃)、パーム極度硬化油としては、横関油脂工業(株)製の「パーム極度硬化油」、ハイエルシン菜種極度硬化油としては、横関油脂工業(株)製の「ハイエルシン菜種極度硬化油」、ハイリノールサフラワー油としては、日清オイリオグループ社製の「日清サフラワー油」、菜種極度硬化油としては、横関油脂工業(株)製の「菜種極度硬化油」、ハイオレイックヒマワリ油としては、昭和産業(株)製の「オレインリッチ」を用いた。組成を表1に示す。表1中の「−」は、検出限界以下であることを示す。パーム核極度硬化油および大豆硬化油の組成の詳細については後述する。
Figure 2008029642
〔試験油脂1、2及び4の製造方法〕
表2に示す原料油脂を表2に示す配合割合で混合し、65〜70℃に加温しながら攪拌し、均一の混合油1.6kgを得た。この混合油を65〜70℃で攪拌しながら、混合油の全質量に対して0.3質量%のリパーゼ製剤を添加した。さらに、65〜70℃で、16時間攪拌してエステル交換反応を行った。
エステル交換反応終了後、リパーゼ製剤をろ過により除去した。ろ液である油脂を、常法に従い脱色、脱臭の精製処理を行い、試験油脂1、2及び4を得た。
〔試験油脂3の製造方法〕
上記試験油脂2を、エステル交換油1g当たり4mL換算量のアセトンに添加して溶解させ、攪拌下で25℃まで冷却した。次いで、析出した油脂をろ過により除去することにより、高融点部を除去した。次いで、ろ液からアセトンを除去し、常法に従い、脱色、脱臭の精製処理を行い、試験油脂3(収率:エステル交換油に対して50質量%)を得た。
〔試験油脂5の製造方法〕
表2に示す原料油脂を表2に示す配合割合で混合し、80℃に加温しながら攪拌し、均一の混合油1.6kgを得た。この混合油を80℃で攪拌しながら、混合油に対して0.1質量%のナトリウムメチラートを触媒として添加した。さらに、80℃にて30分加温し、エステル交換反応を行った。
エステル交換反応終了後、水洗いにて脱触媒した。この油脂を、常法に従い脱色、脱臭の精製処理を行い、エステル交換油を得た。
得られたエステル交換油1g当たり4ml換算量のアセトンに添加して溶解させ、攪拌下で35℃まで冷却した。次いで、析出した油脂をろ過により除去することにより、高融点部を除去した。
更に、このろ液部分を攪拌下10℃まで冷却し、析出した油脂をろ過により分取して、低融点部を除去した。
次いで、分取した油脂から溶剤を除去した後、常法に従い、脱色、脱臭の精製処理を行い、試験油脂5(収率:エステル交換油に対して45質量%)を得た。
なお、高融点部は、三飽和トリアシルグリセロールを主体とした油脂である。
〔試験油脂6の製造方法〕
表2に示す原料油脂を表2に示す配合割合で混合し、80℃に加温しながら攪拌し、均一の混合油1.6kgを得た。この混合油を80℃で攪拌しながら、混合油に対して0.1質量%のナトリウムメチラートを触媒として添加した。さらに、80℃で1時間加温し、エステル交換反応を行った。
エステル交換反応終了後、水洗いにて脱触媒した。この油脂を、常法に従い脱色、脱臭の精製処理を行い、エステル交換油を得た。
このエステル交換油1g当たり4ml換算量のアセトンに添加して溶解させ、攪拌下で30℃まで冷却した、析出した油脂をろ過により除去することにより、高融点部を除去した。
更に、このろ液部分を攪拌下10℃まで冷却した。次いで、析出した油脂をろ過により分取して、低融点部を除去した。
次いで、分取した油脂から溶剤を除去した後、常法に従い、脱色、脱臭の精製処理を行い、試験油脂5(収率:エステル交換油に対して40質量%)を得た。
なお、高融点部は、三飽和トリアシルグリセロールを主体とした油脂である。
上述のようにして得られた試験油脂1は実施例に相当し、試験油脂2〜6は比較例に相当する。表2中の「−」は、該当する原料油脂を用いていないか、または該当する処理を行っていないことを示す。
また、上述のようにして得られた試験油脂2〜4は上記特許文献1、試験油脂5は上記特許文献2、試験油脂6は上記特許文献3に記載の添加剤(油脂)に、それぞれ相当するものである。
Figure 2008029642
(脂肪酸組成、トランス型脂肪酸含量及びヨウ素価の測定)
試験油脂1〜6について、下記の方法により脂肪酸組成、トランス酸型脂肪酸含量及びヨウ素価を測定した。脂肪酸組成及びトランス型脂肪酸含量を表3に、ヨウ素価を表4に示す。
なお、表3中の「−」は、検出限界以下であることを示す。また、表3及び表10中に示される「トランス型脂肪酸」は、主にC18:1のトランス型脂肪酸である。また、表3及び表10中に示される「オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸の総含量」は、C18:1、C18:2及びC18:3の含量の総和から、トランス型脂肪酸の含量を差し引いて算出した値を示す。表3及び表10中に示されるC18:1、C18:2及びC18:3の含量には、それぞれシス型脂肪酸及びトランス型脂肪酸が含まれる。
<脂肪酸組成の測定方法>
脂肪酸組成は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(HP6890型ガスクロマトグラフィー(日本ヒューレットパッカード(株)製))を用いて、基準油脂分析試験法(2.4.1.1,2−1996、2.4.2.1,2−1996)に準拠して測定した。
<トランス型脂肪酸含量の測定方法>
トランス型脂肪酸含量は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(HP6890型ガスクロマトグラフィー(日本ヒューレットパッカード(株)製))を用いて、AOCS法(Ce 1f−96)に準拠して測定した。
<ヨウ素価の測定方法>
ヨウ素価は、基準油脂分析試験法(2.3.4.1−1996)に準拠して、ウィイス法により測定した。
Figure 2008029642
Figure 2008029642
(試験油脂を添加したチョコレートにおけるファットブルーム耐性の評価)
〔試験油脂を添加したチョコレートの製造方法〕
6個のステンレス製のボウルを準備し、下記の表5の組成を有する市販チョコレート(セレクショーネ ノアール(大東カカオ(株)製))(ダークチョコレート)500gを、それぞれのステンレス製のボウルに入れ、60℃の湯煎で溶解させた。それぞれのチョコレートに、試験油脂1〜6を4g添加して、60℃で十分に攪拌した。テンパリング(攪拌しながら26℃まで冷却し、次いで攪拌しながら30℃まで再加熱)した後、型に入れて、8℃の冷蔵庫で20分間冷却して固化させた。そして、冷蔵庫から出し、チョコレートを型から取り出した。そのチョコレートを20℃、1週間置き、試験油脂を添加したチョコレートを得た。得られたチョコレートの配合割合を表6に示す。
なお、表5の市販チョコレートの配合割合は、市販チョコレートの「原料表示」及び「栄養成分表示」から推定した割合である。表6のチョコレートの配合割合は、試験油脂の添加量及び表5の市販チョコレートの配合割合から算出したものである。
試験油脂1〜6を用いたものを試験例1〜6とした。試験例1は実施例に相当し、試験例2〜6は比較例に相当する。また試験油脂を未添加の市販チョコレートを対照例(試験例7)とした。
Figure 2008029642
Figure 2008029642
(市販チョコレート中の油分量)
市販チョコレートの油分量を求める。市販チョコレートの原料であるカカオマス中の約55%がココアバター(油分)である(全体の約34%に相当する)。また、ココアバターが油分である(全体の5%に相当する)。従って、市販チョコレート中の油分量は、約39%である。
(チョコレートの全油脂中のS2U含量、POP/S2U及び、SUS/S2U)
上記のように市販チョコレート中の油分量は約39%であり、この油分の全てがココアバターである。ココアバターのS2U含量は約85%であるから、チョコレートの全油脂中のS2U含量は約85%である。また、ココアバターのPOP含量は約19%であるから、POP/S2Uは約0.22である。また、ココアバターのS2U中のSUS含量は約99%であるから、チョコレートの油脂中のSUS/S2Uは約0.99である。
(試験油脂を添加したチョコレート中の全油分量における試験油脂の割合)
上述したように、市販チョコレートの油分量は約39%であるから、市販チョコレート500g中の油分量は、約195gである。これに試験油脂4gを添加したチョコレート中の油分量は、199gである。従って、この199g中の試験油脂4gの割合(チョコレート中の全油分量における試験油脂の割合)は、約2%である。
〔ブルーム試験〕
上記で製造したチョコレート(試験例1〜6)及び市販チョコレート(試験例7)を用いて、以下の方法により、ブルーム試験を行った。結果を表7に示す。
<ブルーム試験の方法>
チョコレートを20℃の温度で12時間、更に32℃の温度で12時間置き、これを1サイクルとする周期的な温度変化をかけて、11サイクル保存した。そして、2、3、7サイクル終了時に、目視によりブルームの発生の有無を確認した。結果を表7に示す。ブルームがないものを○、ブルームが生じたものを×として評価した。
Figure 2008029642
表7に示すとおり、試験例2〜7(比較例、対照例)のチョコレートは7サイクル終了時(168時間)にブルームが発生しており、商品としては不適であると判断されるが、試験例1(実施例)のチョコレートは7サイクル終了時(168時間)においてもブルームは発生しなかった。従って、試験例1のチョコレートは商品として優れていると言える。
上述したことより、本発明に係るチョコレートは非常に強いブルーム耐性を有していること、及び本発明に係る油脂が非常に強い耐ブルーム作用を有することがわかった。
実施例2
(固体脂含量の測定)
本発明にかかるチョコレートは、上記ブルーム耐性を有するものであるが、チョコレート組成物は一定の固さ及び溶けやすさを有することがより好まれる。そこで、固さ及び溶けやすさを評価するため、試験油脂1及び、表8に示す原料油脂の割合で製造した試験油脂8〜10を用いて、種々の温度条件下で下記の測定方法により固体脂含量(SFC(solid fat content))を測定した。結果を表9に示す。比較対照としては、カカオ脂を用いた。
<SFCの測定方法>
試験油脂1、8〜10について、パルスNMR固体脂含量測定装置(レゾナンス社製)を用いて、基準油脂分析試験法(暫定法)に準じて測定した。
カカオ脂についてはは、IUPAC法(IUPAC2.150(b)−S)によりSFCを測定した。
(試験油脂8,9,10の製造方法)
表8に示す原料油脂を表8に示す配合割合で用いたこと以外は、上記試験油脂1、2、4の製造方法と同様の方法により、試験例8、9、10を得た。いずれも実施例に相当する。
Figure 2008029642
Figure 2008029642
表9に示したとおり、試験油脂10はカカオ脂と比較して35℃及び40℃で固形分が多いものであった。また、チョコレートに添加する油脂としてはカカオ脂よりも少し固めのものを用いることがが好ましいが、試験油脂8は10〜30℃においてカカオ脂と近似した値を示し、柔らかいものであった。従って、チョコレートの固さ及び溶けやすさという点においては、試験油脂1及び試験油脂9が、より好ましいものであることがわかった。
〔大豆硬化油とパーム核極度硬化油の各配合比における脂肪酸組成〕
大豆硬化油及びパーム核極度硬化油の脂肪酸組成、及びヨウ素価(実測値)を測定して、各配合比におけるエステル交換油脂の脂肪酸組成及び、ヨウ素価(計算値)を求め、試験油脂1および試験油脂8の実測値と検証した。その結果を表10及び表11に示す。なお、表10中の「−」は、検出限界以下であることを示す。
Figure 2008029642
表10に示すとおり、実測値と計算値との誤差は、2%以下であった。
Figure 2008029642
表11に示すとおり、実測値と計算値との誤差は、1以下であった。
実施例3
(対称型トリアシルグリセロール含量が高い油脂を用いたチョコレートにおけるファットブルーム耐性の評価)
〔対称型トリアシルグリセロール含量が高い油脂の製造方法〕
対称型トリアシルグリセロール含量が高い油脂として、油脂中にPOP含量が高い油脂(POP濃縮油脂)を用いた。POP濃縮油脂は、常法により製造することができる(例えば、特開平11−169191参照)。
具体的には、以下のように製造することができる。直径2.2cm、長さ16cmのカラムに1,3位選択的リパーゼ(ノボ社製、商品名リポザイムIM)20gを充填した。カラムを40℃に調温し、40℃に調温したパーム油中融点画分を毎分1.8gの速度で流した。20時間後、反応油2100gを得た。反応油1600gを晶析容器に仕込み、アセトン8000gを加えて溶解した後、20℃に冷却し析出した固形分を濾過により除去した。液状部をさらに5℃まで冷却して得られた固形分を濾別した後、得られた固形分を定法によりアセトン除去および精製を行いPOP濃縮油脂1000gを得た。
<トリアシルグリセロール分析>
ガスクロマトグラフ測定方法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993))に準じて行った。ガスクロマトグラフィーとしては、HP6890(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
<対称型トリアシルグリセロール分析>
SUS/SSU比はLC−MS/MS(日本ウォーターズ社製 Quattromicro)にて分析した。
〔POP濃縮油脂〕
上記方法により、得られたPOP濃縮油脂を分析した。POP濃縮油脂の融点は32℃であり、ヨウ素価は31であった。POP濃縮油脂中のPOP含量は72重量%であり、S2U含量は92重量%であり、SUS含量は89重量%であり、SSU含量は3重量%であり、POP/S2U=0.78、SUS/S2U=0.97であった。
〔チョコレートの製造方法〕
表12に示す配合に基づいて、チョコレート製造の常法により、混合、ロール掛け、コンチングして溶融状態の生地を調整した(試験生地1,2)。それぞれの生地について、試験油脂1を、チョコレートの全油脂中の1%になるように添加した(100質量部の試験生地1又は2につき、試験油脂1を0.34質量部添加した)。次いで、テンパリングした後、型に流し込み、冷却固化させた。固まったチョコレートを型板から取り出し、20℃で1週間静置して試験用板チョコレートを得た(実施例1及び2)。比較例として、試験油脂1を添加しなかった生地を用いて、同様の方法により試験用板チョコレートを得た(比較例1及び2)。
Figure 2008029642
(試験生地1,2中の油分量)
カカオマス中の約55%がココアバター(油分)であり(全体の約22%に相当する)、ココアバター及びPOP濃縮油脂が油分である(全体の12%に相当する)。従って、試験生地1及び2中の油分は、約34%である。
(チョコレートの全油脂中のS2U含量、POP/S2U及び、SUS/S2U)
試験生地1;上記のようにチョコレート生地中の油分量は約34%であり、POP濃縮油脂は5%であり、ココアバターが29%である。POP濃縮油脂のS2U含量は92%であり、ココアバターのS2U含量は約85%であるから、チョコレートの全油脂中のS2U含量は86%である。また、POP濃縮油脂中のPOP含量は72%であり、ココアバター中のPOP含量は19%であるから、チョコレートの全油脂中のPOP含量は27%であり、POP/S2Uは0.31である。また、ココアバターのS2U中のSUS含量は99%であり、SSU含量は1%であり、POP濃縮油脂のS2U中のSUS含量は97%であり、SSU含量3%であるからチョコレートの油脂中のSUS/S2Uは約0.99である。
試験生地2;上記のようにチョコレート生地中の油分量は約34%であり、POP濃縮油脂は12%であり、ココアバターが22%である。チョコレートの全油脂中のS2U含量は88%、チョコレートの全油脂中のPOP含量は38%であり、チョコレートの全油脂中のPOP/S2Uは0.43、チョコレートの油脂中のSUS/S2Uは約0.98である。
〔ブルーム試験〕
試験用板チョコレート(実施例1及び2、比較例1及び2)を用いて、以下の方法により、ブルーム試験を行った。結果を表13に示す。
<ブルーム試験の方法>
試験用板チョコレートを20℃の時間に12時間、更に32℃の温度に12時間を1サイクルとする周期的な温度変化をかけて、5サイクル保存した。そして、1サイクル終了毎に、目視によりブルームの発生の有無を確認した。結果を表13に示す。
ブルームがないものを「○」、ブルームが生じたものを、その白色化の程度の応じて、「×1〜×5」(×1;少量の白色物(ブルーム)が発生〜×5;全面が白色化した。)の5段階で評価した。
Figure 2008029642
表13に示すとおり、POP濃縮油脂5重量%配合の生地において、比較例1(3サイクルでブルーム発生)に対して、実施例1(5サイクルでブルーム発生)の方がブルームの発生が遅延することがわかった。
POP濃縮油脂12%配合の生地においては、実施例2と比較例2ともに2サイクルでブルームが発生したが、2サイクルにおけるブルームの程度は実施例2に比べて比較例2の方が少ないことがわかった。すなわち、本発明の食用油脂は、POP含有量が高いチョコレートに含有させた場合にも、耐ブルーム性が向上することがわかった。
これにより、本発明に係る食用油脂は、ココアバターを使用したチョコレート又は、スナップ性を改善するために対称型トリアシルグリセロールを高濃度に含む油脂を使用したチョコレートにおいて、明らかに耐ブルーム性を向上させた。

Claims (8)

  1. エステル交換反応又はエステル化反応により得られ、下記要件(A)〜(D)を満たす食用油脂。
    (A)ヨウ素価が、15〜29である;
    (B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%である;
    (C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%である;
    (D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満である。
  2. ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油と、
    ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂とを含有する混合油をエステル交換して得られる、請求項1記載の食用油脂。
  3. 前記硬化油が大豆硬化油であり、
    前記油脂がパーム核極度硬化油である、請求項2記載の食用油脂。
  4. 前記混合油中の前記硬化油と前記油脂との混合比が4:6〜7:3である、請求項2又は3記載の食用油脂。
  5. チョコレート用である、請求項1〜4のいずれか1項記載の食用油脂。
  6. 請求項5記載の食用油脂を含有するチョコレート。
  7. 請求項5項記載の食用油脂を、チョコレートの全油脂中の0.5〜10質量%含有するチョコレート。
  8. ヨウ素価が45以下であり、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が30質量%以上である硬化油と、
    ヨウ素価が10以下であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含量が40質量%以上である油脂とを含有する混合油をエステル交換することを含む食用油脂の製造方法であって、
    得られる食用油脂が下記要件(A)〜(D)を満たすように、前記混合油中の前記硬化油と前記油脂との混合比を調整する、食用油脂の製造方法。
    (A)ヨウ素価が、15〜29である;
    (B)構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量が、16〜29質量%である;
    (C)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が、13〜28質量%である;
    (D)構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の総含量が、10質量%未満である。
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