JP6571971B2 - 水産加工食品用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂組成物及び水産加工食品 - Google Patents

水産加工食品用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂組成物及び水産加工食品 Download PDF

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Description

本発明は、水産加工食品の原料の食用油脂として使用される水産加工食品用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂組成物及び水産加工食品に関する。
赤身等の脂肪分の少ない魚肉はマグロのトロのような部位に比べるとコク味がなく、油性感に乏しい。
そのため赤身等の脂肪分の少ない魚肉と食用油脂を混合し、脂肪分の多いトロ風の水産加工食品を製造することが行われてきた。例えば、マグロ赤身をフードプロセッサー等で粉砕し、食用油脂であるショートニングや油中水型乳化物等の可塑性油脂を加えて練り合わせたねぎトロ風の水産加工食品は、寿司種やおにぎりの具等に広く利用されている。
これらの水産加工食品を製造する過程では、マグロ等の水産物の鮮度を保持するため、冷蔵温度帯(10℃)よりも低い温度条件下で加工されることが多い。そこで使用される油脂組成物は、このような温度条件下でも油脂組成物を魚肉に素早くなじませ、全体に油が分散した状態にすることが、低温で混合する際の作業性等の点から求められている。
また、油脂組成物は、製造から使用までに際しては、10℃程度の冷蔵温度において長期保存しても硬さ変化が少ないことが、硬くなり過ぎて作業性が低下すること等を回避するためにも重要である。そして冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温(15〜30℃)に曝されたときにも液状油の染みだしが少ないことも求められる。この液状油は油脂中の2不飽和トリグリセリド及び3不飽和トリグリセリド等の低融点トリグリセリドであり、液状油が染みだすと、消費者の目に留まる20℃での外観(テカリ)が悪くなる等の不具合が生じる。
そして水産加工食品として供される場合においては、口に入れた際に速やかに溶ける口溶け感と、滑らかな食感が、水産加工食品の美味しさをだすために重要である。水産加工食品における魚肉の口溶け感と共に、これに混合される油脂組成物にも良好な口溶け感があり、そして油脂組成物がザラツキなく滑らかであると、例えば赤身の場合にはトロのような食感になる。水産加工食品に含まれる油脂組成物に粗大化した結晶があると、ザラツキを感じさせて滑らかさを損なう要因ともなり得る。
従来、水産加工食品に使用される油脂組成物として、各種の植物油脂や動物油脂及びこれらの油脂を原料とし触媒を用いて水素添加した部分硬化油や極度硬化油が使用されてきた。
これらのうち水素添加した部分硬化油は一般にトランス酸量が高く、近年では、消費者の健康意識の高まりと共にトランス酸を低減させたいという要求も出てきていることから、トランス酸の少ないパーム油やその分別油、極度硬化油等が使用されてきている。
しかし、パーム油やその分別油は、油脂を低温で長期保存した場合に結晶が粗大化し、魚肉に添加した場合に滑らかな食感を得ることが難しい。そして極度硬化油は液状油との相溶性に難点があり、経時的に液状油の染みだしが生じやすく、また良好な口溶けを得ることが難しい。
このような背景において、上記のような点を改良することを目的として、パーム油やその分別油を含む原料を用いたエステル交換油脂を使用することが提案されている(特許文献1、2)。
特許文献1には、パーム油やその分別油を単独で又は液状油と共にエステル交換反応を行って得られるエステル交換油脂を含有する水産加工食品用油脂組成物が提案され、特許文献2には、パーム分別軟質油を含むエステル交換油脂と極度硬化油を含有する水産加工食品用油脂組成物が提案されている。
しかし、上記のような油脂組成物の魚肉への分散性、長期保存時の硬さ変化、液状油の染みだし、そして水産加工食品の口溶け、滑らかさは、油脂組成物の製造時における、結晶化の程度や結晶の性状のような油脂の結晶化挙動が密接に影響する。例えば、ショートニング状の水産加工食品用油脂組成物は、加温下で均一に溶解した油脂組成物を、急冷捏和装置によって急冷しながら結晶化させつつ練り合わせて製造されるが、このような急冷条件における、結晶化の程度や結晶の性状のような油脂の結晶化挙動が密接に影響する。特許文献1、2のようにパーム系分別油脂単独で又は液状油と共にエステル交換反応した油脂を主成分とする油脂組成物は、結晶核となる油脂が存在しないため、結晶化が遅く、そのため急冷捏和装置で急冷する際に十分に練られず、可塑性に劣る傾向があるため、魚肉と混合する際の分散性にはさらなる改善の余地があった。また結晶化が遅いと液状油の染みだしの要因ともなり得る。そして製造後に徐々に結晶化が進行するため経時的な物性変化が大きいなど、前述のような各種の物性や食感にはさらなる改善の余地があった。一例を挙げると、パーム油はエステル交換反応することで経時的な結晶の粗大化は抑制できるものの、口溶けは悪くなる傾向があり、また特許文献1のように液状油等の他の油脂と組み合わせると、結晶核となる油脂が不足して他の油脂との相溶性が必ずしも十分ではない傾向があり、経時的に液状油の染みだしが起こりやすくなる。また相溶性が悪いと十分な可塑性が得られないため分散性も低下しやすい。そして特許文献2のようにパーム系油脂のエステル交換油脂を極度硬化油と組み合わせると、極度硬化油を使用しているため口に入れた際に速やかに溶ける口溶け感は得られにくい。
このような結晶化の程度や結晶の性状のような油脂の結晶化挙動に関して、油脂組成物の結晶化を促進させることで特性の改善を図った技術が提案されている(特許文献3、4)。
特許文献3には、特定のトリグリセリドを含有するパーム分別油を用いる技術が提案され、特許文献4には、特定のトリグリセリドを含む油脂に動植物性ワックスを含有させる技術が提案されている。一方、油脂に乳化剤を入れ食感の改善を図る技術として、特許文献5には、油脂にポリグリセリン脂肪酸エステルを添加し鮮魚の魚肉などの水産物の食感を改良する技術が提案されている。
国際公開第2012/105548号 特開2013−215171号公報 特許第5085810号公報 特開2014−11962号公報 特開2006−166780号公報
しかし、特許文献3で使用されている分別油は硬質油であることから、良好な口溶けを得るのが難しく、使用用途としては、フライ油、ショートニング、マーガリン、チョコレート、カレーのルー、又はシチューのルーなどが想定されるにとどまっていた。また、特許文献4のようにワックスを使用すると良好な風味と口溶けを得ることが難しく、しかもその用途は、製菓、製パン用に限定されていた。
一方、特許文献5では使用されている油脂が菜種油などの液状油であるため、ポリグリセリン脂肪酸エステルを配合しても、結晶化されず、液状のままであるため、水産物に添加した場合に油脂の染みだしを抑制することが難しく、また液状であるため、水産加工食品と混合の際に分散性が悪く、水産加工食品用により適した技術が望まれている。
このように、水産加工食品用油脂組成物に特有の課題である上記のような油脂組成物の魚肉への分散性、長期保存時の硬さ変化、液状油の染みだし、そして水産加工食品の口溶け、滑らかさとの関連において、油脂の結晶化の促進等の観点から特性を改善することは検証や実証が十分であるとは言い難い側面があった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、魚肉への分散性が良く、油脂組成物を魚肉へ素早くなじませることができ、冷蔵温度で長期保存しても硬さ変化が少なく、さらに冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしが少なく、水産加工食品の口溶けが良好で、かつザラツキの少ない滑らかな食感の水産加工食品を得ることができる水産加工食品用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂組成物及び水産加工食品を提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定油脂とパーム油の固化開始を一定温度以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂に添加することで、水産加工食品用油脂組成物の製造時、特に可塑性油脂組成物とするための急冷条件において、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になり、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の水産加工食品用油脂組成物は、油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有し、前記油脂は、2不飽和及び3不飽和トリグリセリドの含有量が55〜92質量%であり、かつ2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜3.0であることを特徴としている。
また、本発明の水産加工食品用油脂組成物では、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂を含有することが好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記の水産加工食品用油脂組成物を含有することを特徴としている。
本発明の水産加工食品は、上記の水産加工食品用油脂組成物又は上記の可塑性油脂組成物を含有することを特徴としている。
本発明によれば、魚肉への分散性が良く、油脂組成物を魚肉へ素早くなじませることができ、冷蔵温度で長期保存しても硬さ変化が少なく、さらに冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしが少なく、水産加工食品の口溶けが良好で、かつザラツキの少ない滑らかな食感の水産加工食品を得ることができる。
実施例1の油脂結晶の顕微鏡写真である(倍率100倍)。 比較例4の油脂結晶の顕微鏡写真である(倍率100倍)。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の水産加工食品用油脂組成物は、水産加工食品用油脂組成物の製造時において、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。特に、ショートニング状の水産加工食品用油脂組成物は、加温下で均一に溶解した油脂組成物を、急冷捏和装置によって急冷しながら結晶化させつつ練り合わせて可塑性油脂組成物として製造されるが、本発明の水産加工食品用油脂組成物は、この製造時における急冷条件において、3飽和トリグリセリドや2飽和トリグリセリドのような結晶化しやすい油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。
このように油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、マグロ等の水産物の鮮度を保持するために、冷蔵温度帯(10℃)よりも低い温度条件下で加工される際にも適度な硬さと滑らかさを有し、そのため魚肉への分散性が良く、油脂組成物を魚肉の全体に素早くなじませることができ、低温で混合する際の作業性が良好である。
そして、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、冷蔵温度で長期保存しても、製造後に徐々に結晶化が進行することによる経時的な物性変化が小さく、硬くなり過ぎて作業性が低下すること等を抑制できる。
さらに、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしが抑制され、20℃での外観(テカリ)が悪くなること等の不具合を抑制できる。
また、均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、水産加工食品の口溶けが良好で、かつ粗大化した油脂結晶によるザラツキの少ない滑らかな食感の水産加工食品を得ることができる。
(油脂)
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。なお、トリグリセリドの構成脂肪酸の略称として、S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、を用いる。
飽和脂肪酸Sは、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つ又は3つの飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。
飽和脂肪酸Sとしては、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
不飽和脂肪酸Uは、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つ又は3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸Uとしては、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、およびリノレン酸(18:3)、エルカ酸(22:1)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数と二重結合数の組み合わせである。
本発明の水産加工食品用油脂組成物に使用される油脂は、1分子のグリセロールに2分子の飽和脂肪酸Sと1分子の不飽和脂肪酸Uが結合した2飽和トリグリセリドとして、1位及び3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合した対称型トリグリセリド(SUS)と、1位及び2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合した非対称型トリグリセリド(SSU)とを含む。また、1位、2位、及び3位の全てに飽和脂肪酸Sが結合した3飽和トリグリセリドを含み、その他に1分子のグリセロールに2分子の不飽和脂肪酸Uと1分子の飽和脂肪酸Sが結合した2不飽和トリグリセリド、1位、2位、及び3位の全てに不飽和脂肪酸Uが結合した3不飽和トリグリセリドをさらに含む。
本発明の水産加工食品用油脂組成物における油脂の含有量は、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは90〜99.8質量%、さらに好ましくは96〜99.8質量%である。
本発明の水産加工食品用油脂組成物に使用される油脂は、2不飽和及び3不飽和トリグリセリドの含有量は55〜92質量%、好ましくは60〜85質量%である。この範囲内であると、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルと併用することで、魚肉への分散性が良く、冷蔵温度で長期保存しても硬さ変化が少ないため低温で混合する際の作業性が良好で、さらに冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしを抑制できる。また水産加工食品の口溶けが良好で、水産加工食品を口に入れた際に水産加工食品用油脂組成物が速やかに溶けて良好な口溶けが得られ、かつザラツキの少ない滑らかな食感の水産加工食品を得ることができる。2不飽和及び3不飽和トリグリセリドの含有量が55質量%以上であると、魚肉への分散性と口溶けが良く、水産加工食品を口に入れた際に水産加工食品用油脂組成物が速やかに溶けて良好な口溶けが得られる。92質量%以下であると魚肉への分散性が良く、かつ液状油の染みだしが抑制されるため20℃での外観(テカリ)が悪くなることを抑制できる。
本発明の水産加工食品用油脂組成物に使用される油脂は、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜3.0、好ましくは0.2〜2.0である。この範囲内であると、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルと併用することで、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、魚肉への分散性が特に良好になり、油脂組成物を魚肉へ素早くなじませることができる。また冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしを特に抑制できる。さらに、水産加工食品は滑らかな食感が特に向上する。
本発明の水産加工食品用油脂組成物に使用される油脂としては、パーム油、ヤシ油、パーム核油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、コーン油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油等の植物油脂、ラード、牛脂等の動物油脂、乳脂、これらの分別油、硬化油(部分水素添加油又は極度硬化油)、エステル交換油脂等が挙げられる。これらは油脂中の2不飽和及び3不飽和トリグリセリドの含有量とSUS/SSUのバランスを適宜調整するために、1種又は2種以上を選択する。
なお、硬化油は、原料の植物油脂又は動物油脂を常法によりニッケル触媒等の触媒を用いて水素添加することによって得ることができる。極度硬化油は、ヨウ素価が好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
また、動物油脂としては、動物の脂肉から溶出法により採取した脂肪を精製したものを用いることができ、その精製方法も特に制限はなく、溶剤分別等により得られる分別油であってもよい。
好ましい例としては、20℃で固形状の油脂と、20℃で液状を呈する液状油を組み合わせて使用する。
20℃で固形状の油脂として、パーム系油脂、パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂、ラードが好ましい。
ここでパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油、及びこれらの硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部(パームステアリン等)、軟質部(パームオレイン等)、中融点部(PMF等)等を用いることができる。これらの中でも、ヨウ素価30〜60のパーム系油脂を使用することが好ましく、このようなパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油等が挙げられる。
上記20℃で液状を呈する液状油としては、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油を分別したスーパーオレイン等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の水産加工食品用油脂組成物における上記20℃で液状を呈する液状油の含有量は、20℃で固形状の油脂における2不飽和及び3不飽和トリグリセリドの含有量等にも依存し、パーム分別軟質油等を使用する場合は少なめにすることもできるが、典型的には、油脂全量に対して87質量%以下が好ましく、10〜87質量%がより好ましく、15〜75質量%がさらに好ましく、30〜75質量%が特に好ましい。
本発明の水産加工食品用油脂組成物に使用される油脂は、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂を含有することが好ましく、35質量%以上である油脂を含有することがさらに好ましい。この油脂を含有することで、この油脂が結晶核となるため、結晶化がより促進される。そのため油脂組成物の魚肉への分散性の向上、長期保存時の硬さ変化の抑制、液状油の染みだし抑制、そして水産加工食品の口溶け、滑らかさの向上に、特に効果を発揮し易くなる。また、より口溶けを向上する観点から、3飽和トリグリセリドの含有量は90質量%以下の油脂を含有することが好ましく、80質量%以下の油脂を含有することがより好ましく、60質量%以下である油脂を含有することがさらに好ましい。
3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂としては、特に限定されるものではないが、植物油脂又は動物油脂の硬化油(部分水素添加油又は極度硬化油)や分別油の硬質油、これを含む油脂を原料とするエステル交換油脂等が挙げられる。
その中でも、植物油脂又は動物油脂の極度硬化油、あるいはこれを含む油脂を原料とするエステル交換油脂が好ましい。ここで植物油脂の極度硬化油としては、ヤシ極度硬化油、パーム極度硬化油、パーム核極度硬化油、菜種極度硬化油等が挙げられ、動物油脂の極度硬化油としては、ラード極度硬化油、牛脂極度硬化油等が挙げられる。
特に、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂として、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を用いると、口溶けが向上するのでより好適である。
上記パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂は、ヨウ素価が20〜45であることが好ましく、25〜40であることがより好ましい。この範囲であると、結晶化を促進するとともに、水産加工食品として口溶けがより良好なものを得ることができる。
ここでパーム系油脂としては、前述したものが挙げられ、ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
上記パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を得るために用いるエステル交換反応は、化学的エステル交換反応であっても酵素的エステル交換反応であってもよい。化学的エステル交換反応は、ナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる、位置特異性の乏しいエステル交換反応である(ランダムエステル交換反応とも言われる)。
化学的エステル交換反応は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.05〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、触媒を水洗にて洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
酵素的エステル交換反応は、リパーゼを触媒として用いて行われる。リパーゼとしては、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用するができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応とすることもできるし、1、3位特異性の高いエステル交換反応とすることもできる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
1、3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
酵素的エステル交換反応は、例えば、リパーゼ粉末または固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末または固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂の含有量は、油脂全量に対して3〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。特に、3飽和トリグリセリドの含有量が100質量%である極度硬化油として、融点が50℃以上である油脂を含有する場合は、油脂全量に対し、5質量%以下であると口溶けが良好となることから好ましい。
トランス型脂肪酸は動脈硬化症のリスクを増加させると言われており、健康への影響が懸念される点を考慮し、本発明の水産加工食品用油脂組成物は、トランス酸量が0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましい。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明の水産加工食品用油脂組成物は、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。
パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルと併用することで、魚肉への分散性が良く、冷蔵温度で長期保存しても硬さ変化が少ないため低温で混合する際の作業性が良好で、さらに冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしを抑制できる。また水産加工食品の口溶けが良好で、水産加工食品を口に入れた際に水産加工食品用油脂組成物が速やかに溶けて良好な口溶けが得られ、かつザラツキのない滑らかな食感の水産加工食品を得ることができる。
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上、好ましくは1.1℃以上、より好ましくは1.4〜4.0℃上昇させるものである。パーム油の固化開始温度の上昇値がこの範囲内であると、水産加工食品用油脂組成物の製造時、特に可塑性油脂組成物とするための急冷条件において、3飽和トリグリセリドや2飽和トリグリセリドのような結晶化しやすい油脂が結晶核となり、結晶化が促進され、かつ結晶が微細化される。
本発明において、パーム油の固化開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値である。固化開始温度の測定には、示差走査熱量計(型番:DSC Q1000、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いることができる。より詳細には、パーム油100質量部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部を添加し、80℃から毎分10℃の速度で冷却し、固化開始温度を測定した。
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルでは、HLB値は1.0〜7.0であり、好ましくは2.0〜5.5であり、より好ましくは4.0〜5.5である。HLB値がこの範囲であると、パーム油の固化開始温度を上昇させるのに適している。
ここでHLB値は、Griffin式(Atlas社法)により求めることができる。
本発明においては、上記のようなポリグリセリン脂肪酸エステルとして、市販のものを用いることができる。例えば、阪本薬品工業(株)製のSY−グリスターPS−3S、SY−グリスターPS−5S、SY−グリスターTHL−50、及びSY−グリスターHB−750等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂全量に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.2〜4.0質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.1質量%以上であると、3飽和トリグリセリドや2飽和トリグリセリドのような結晶化しやすい油脂が結晶核となり、結晶化が促進され、かつ結晶が微細化される。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が10質量%以下であると、乳化剤としての異味が最終製品の水産加工食品に影響を及ぼすことを抑制できる。
(その他の成分)
本発明の水産加工食品用油脂組成物は、その効果を損なわない範囲において、上記の油脂及びポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて、食品添加物等のその他の成分を配合することができる。
食品添加物は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、乳化剤、酸化防止剤、着色料、フレーバー、調味料、酸味料、甘味料、食塩等が挙げられる。
乳化剤としては、結晶促進や微細化を阻害しないものであれば添加することができる。例えば、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸やL−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。
着色料としては、カロテン色素、アナトー色素、ベニコウジ色素、クチナシ色素、ウコン色素、コチニール色素、アカビート色素、タマリンド色素等が挙げられる。
フレーバーとしては、合成香料、天然香料等が挙げられる。
調味料としては、アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、L−酒石酸、乳酸等が挙げられる。
甘味料としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等の二糖類、およびオリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物等の多糖類等の糖質やアスパルテーム、ステビア、サッカリン等が挙げられる。
(水産加工食品用油脂組成物の製造)
本発明の水産加工食品用油脂組成物は、例えば、原料となる1種又は2種以上の前述したような油脂を加温下で溶解し、溶解した油脂中に前述したポリグリセリン脂肪酸エステルと、必要に応じて前述した食品添加物等のその他の成分とを添加し、公知の方法で均一に分散し、溶解することによって製造することができる。
製造工程において加温下で溶解状態にある本発明の水産加工食品用油脂組成物は、急冷捏和装置によって、急冷しながら練り合わせることで、ショートニング又は油中水型油脂組成物である可塑性油脂組成物として得ることができる。ショートニングはガス入りとすることもできる。
急冷捏和処理は、通常、可塑性油脂組成物を製造する場合と同様にして行うことができる。例えば、冷却条件は、20℃/分以上、好ましくは30℃/分以上とすることができる。また、急冷捏和処理は、従来公知の急冷捏和装置を用いて行うことができ、必要に応じてガス、例えば窒素等を混入することもできる。密閉状態で連続的に急冷し、同時に捏和して均質な油脂組成物を得る装置としては、ボテーター、パーフェクター、コンビネーター、ネクサス等を用いることができる。
(水産加工食品)
本発明の水産加工食品は、魚肉等の水産物を粉砕等により加工し、これに本発明の水産加工食品用油脂組成物を均一に混合することにより製造することができる。例えば魚肉の赤身をミンチ状に粉砕し、これに本発明の水産加工食品用油脂組成物を均一に混合することにより、赤身を脂身のような風味と食感に向上させることができ、さらに外観として明るい良好な色調を付与することができる。
本発明の水産加工食品用油脂組成物は、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、マグロ等の水産物の鮮度を保持するため、冷蔵温度帯(10℃)よりも低い温度条件下で加工される際にも適度な硬さと滑らかさを有し、魚肉への分散性が良く、油脂組成物を魚肉の全体に素早くなじませることができ、低温で混合する際の作業性が良好である。そして、冷蔵温度で長期保存しても、製造後に徐々に結晶化が進むことによる経時的な物性変化が小さく、硬くなり過ぎて作業性が低下すること等を抑制できる。さらに、冷蔵温度で長期保存した場合や、調理時や喫食時等の室温に曝された場合にも液状油の染みだしが抑制され、20℃での外観(テカリ)が悪くなること等の不具合を抑制できる。
本発明の水産加工食品において対象となる水産物としては、特に限定されないが、魚肉、特に脂肪分の少ない生魚肉を使用した場合に、本発明の水産加工食品用油脂組成物によって風味と食感を特に改善することができる。
本発明の水産加工食品用油脂組成物は、均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、水産加工食品の口溶けが良好で、かつ粗大化した油脂結晶によるザラツキのない滑らかな食感の水産加工食品を得ることができる。
魚肉としては、例えば、マグロ、鮭、鰹等を使用することができ、マグロとしては、クロマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ミナミマグロ、ビン長、タイセイヨウマグロ等の種類があるが、特に制限なく使用することができる。マグロの赤身をミンチ状にし、これに本発明の水産加工食品用油脂組成物を均一に混合することにより、ねぎトロ風食品として好適に使用できる。
本発明の水産加工食品における水産加工食品用油脂組成物の使用量は、特に限定されないが、本発明の効果を得る点を考慮すると、例えば全量に対して5〜30質量%である。
本発明の水産加工食品には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、着色料、フレーバー、調味料、酸味料、甘味料、食塩、pH調整剤等のその他の成分を配合してもよい。
本発明の水産加工食品は、そのまま喫食に供されてもよいが、軍艦巻きや手巻き寿司等の寿司種、おにぎりやのり巻きの具等として好適に使用することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1及び表2における各原料の配合量は質量部を示す。1.測定方法
各油脂のヨウ素価は基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
油脂における2不飽和トリグリセリド及び3不飽和トリグリセリドの合計含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
油脂における対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)により求めたSUS型トリグリセリドとSSU型トリグリセリドの質量より算出した。
2.水産加工食品用油脂組成物の製造
表1及び表2に示す配合比にて各原料油脂をタンク内で混合し、プロペラ撹拌機で撹拌しながら75℃に調温後、乳化剤を添加し、均一に分散し溶解させた混合物をパーフェクターで急冷捏和して、ショートニングの可塑性油脂として水産加工食品用油脂組成物を得た。
(エステル交換油脂1〜3)
エステル交換油脂1は次の方法で製造した。パーム核極度硬化油20質量%、パーム軟質油50質量%、パーム油極度硬化油30質量%を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭し、エステル交換油脂1を得た。エステル交換油脂1のSUS含有量は14.3質量%、SSU含有量は28.7質量%、3飽和トリグリセリドの含有量は、39.5質量%、ヨウ素価29であった。
エステル交換油脂2は次の方法で製造した。パーム核極度硬化油15質量%、パーム軟質油55質量%、パーム油極度硬化油30質量%を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭し、エステル交換油脂2を得た。エステル交換油脂2のSUS含有量は14.7質量%、SSU含有量は29.3質量%、3飽和トリグリセリドの含有量は、35.3質量%、ヨウ素価32であった。
エステル交換油脂3は次の方法で製造した。パーム分別軟質油に、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭し、エステル交換油脂3を得た。エステル交換油脂3のSUS含有量は11.1質量%、SSU含有量は22.2質量%、3飽和トリグリセリドの含有量は、9.1質量%、ヨウ素価56であった。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル1〜3)
水産加工食品用油脂組成物に添加したポリグリセリン脂肪酸エステル1〜3の詳細は、表3に示すとおりである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度(℃)の上昇値は、以下のようにして測定した。まず、パーム油(ヨウ素価53)100質量部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部を添加し、それを測定用のアルミニウムパンに3.5mg量り、さらにサンプルを何も入れない空パン(リファレンス)を用いて、示差走査熱量計(型番:DSC Q1000、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)で以下の条件で固化開始温度を測定した。
次に、同様にして、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度を測定した。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度とポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度の差を、パーム油の固化開始温度(℃)の上昇値とした。
<測定条件>
示差走査熱量計のセル内の温度を80℃まで昇温し、5分間保持し、完全にサンプルを溶解させた。その後、毎分10℃(10℃/min.)で80℃から−40℃まで降温させ、その過程における固化開始温度(発熱ピークにおける発熱開始温度)を測定した。固化開始温度は、ベースラインとピークとの接線における交点とした。
さらに、実施例1、比較例4の油脂組成物を製造後、5℃で3日間保存した後、顕微鏡で観察した。その結果の顕微鏡写真を図1、図2に示す。
図1では、5μm以下の細かい結晶が均一に析出し、結晶量は多かった。
図2では、結晶が5μmを超えて成長していた。
これらの結果から、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、急冷時において結晶化が促進され、かつ微細結晶を得ることができることが分かった。
細かい結晶を多く有する場合、非常に滑らかな食感の食品が得られた。一方結晶が成長していると口中に入れたときにザラツキを感じることがあった。
3.評価
実施例1〜14及び比較例1〜5の油脂組成物について、次の評価を行った。
[経時的な物性変化]
200mlのビーカーに水産加工食品用油脂組成物を可塑性油脂として作製したものを150g入れ、10℃にて2時間保持した後、8時間保持した後のレオメータ(測定条件 プランジャー:直径8mm円柱状、速度:60mm/分、深度:接触面から5mm)により測定し、2時間保持した後と8時間保持した後の硬さの変化率を下記式より求め、以下の基準で評価した。
変化率=(|8時間保持後の硬さ−2時間保持後の硬さ|)/2時間保持後の硬さ×100
評価基準
◎:変化率が80%未満
○:変化率が80%以上100%未満
△:変化率が100%以上120%未満
×:変化率が120%以上
[油脂の染みだし]
前記において作製した可塑性油脂80gをプラスチック製のシャーレ(90φ×20mm)に移し、10℃に調温した恒温器内で4週間保管した後、以下の基準で評価した。
なお、比較例5は、パーフェクターにより急冷可塑化したが、流動状であり、可塑性を示さなかった。また、比較例5の油脂は、シャーレに入れたときには既に液状であり、油脂の染みだしがある状態であった。
評価基準
◎:染みだしは全く見られなかった。
○:染みだしが若干見られた。
△:染みだしが見られた。
×:染みだしがかなり見られた。
(水産加工食品の作製)
10℃に調温したマグロの赤身肉900gをフードプロセッサーに入れ、粉砕しミンチ状にした。さらに、上記で作製しておいた実施例1〜14、比較例1〜5の可塑性油脂100gをフードプロセッサーに加え均一に分散するまで混合し水産加工食品を得た。
[マグロへの分散性]
マグロの赤身肉への分散性について、前記の水産加工食品の作製時にフードプロセッサーで混合しながら、5秒毎に目視観察し以下の基準で評価した。
評価基準
◎:5秒以内で全体に油脂組成物が分散している状態になった。
○:5秒超10秒以内で全体に油脂組成物が分散している状態になった。
△:10秒超15秒以内で全体に油脂組成物が分散している状態になった。
×:15秒以内では全体に油脂組成物が分散している状態にならなかった。
[水産加工食品の口溶け]
前記において作製した水産加工食品を10℃に調温した恒温器内で1日保管した後、パネル10名により口溶けを以下の基準で評価した。
なお、パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
評価基準
◎:10名中8名以上が良好であると評価した。
○:10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:良好であると評価したのは10名中2名以下であった。
[20℃の水産加工食品の染みだし]
水産加工食品の喫食時の状態を確認するため、トレシングペーパーに炊飯を1cm厚のシート状に敷きつめ、その上に、前記において作製した水産加工食品を0.5cm厚に敷きつめた。これを20℃に調温した恒温器内で1時間保管した後、トレシングペーパーへの油の染みだしを観察し、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:染みだしは全く見られなかった。
○:染みだしが若干見られた。
△:染みだしが見られた。
×:染みだしがかなり見られた。
[水産加工食品の食感(滑らかさ)]
前記において作製した水産加工食品を10℃に調温した恒温器内で1日保管した後、パネル10名により口の中での滑らかさを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:10名中8名以上がザラツキなく滑らかであると評価した。
○:10名中7〜5名がザラツキなく滑らかであると評価した。
△:10名中4〜3名がザラツキなく滑らかであると評価した。
×:ザラツキなく滑らかであると評価したのは10名中2名以下であった。
上記の評価結果を表4及び表5に示す。

Claims (3)

  1. 油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有し、前記油脂は、2不飽和及び3不飽和トリグリセリドの含有量が55〜92質量%であり、かつ2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜3.0であり、前記油脂は、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂を含有する水産加工食品用油脂組成物。
  2. 請求項1に記載の水産加工食品用油脂組成物を含有する可塑性油脂組成物。
  3. 請求項1に記載の水産加工食品用油脂組成物又は請求項2に記載の可塑性油脂組成物を含有する水産加工食品。
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