JP2019010024A - 非テンパー型のハードバター組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
製造工程において油脂の結晶状態を調整する技術であるテンパリング操作を必要としない非テンパー型のハードバターは、作業性の向上や、保存性の向上を図ることができるため、幅広く使用されている。
同時に、商品流通の観点から、常温での保管を行った場合であっても、「汗かき」現象やブルームの発生が抑えられた油性菓子が得られる非テンパー型のハードバターの検討が進められてきた。
また、特許文献3に開示されている非テンパー型のハードバターは、油性菓子に含まれる油脂分中のCB含有率が高められており、且つ、耐熱性を有している。しかしながら、同文献に記載の非テンパー型のハードバターは調製する際に、それぞれ別途製造されたUSU脂とSSU脂を混合する必要があり、又、各油脂を製造する際には各種動植物油脂と脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルコールエステルとを用いて、酵素エステル交換をそれぞれ行い、脂肪酸や脂肪酸アルコールエステルを除く工程をそれぞれとる必要があるため、ハードバター製造時の工程が複雑であった。そのため、より簡単な方法で製造できる非テンパー型のハードバターが求められていた。
(i)トランス型の不飽和脂肪酸及びラウリン酸を実質的に含まない非テンパー型のハードバター
(ii)油性菓子中にCBを高配合することができる、高いCB相溶性を有する非テンパー型のハードバター
(iii)油性菓子に常温で流通可能な耐熱性を付与できる非テンパー型のハードバター
(iv)油性菓子にブルーム耐性を付与できる非テンパー型のハードバター
(1)構成脂肪酸組成における、ステアリン酸(St)とパルミチン酸(P)との質量比(St/P)が、0.8〜1.5である。
(2)S2Uトリグリセリド(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)中のSSUトリグリセリド(1,2−ジ飽和−3−モノ不飽和トリグリセリド)の含有比(SSU/S2U)が0.5〜0.8である。
(3)パーティションナンバー(PN)が50〜54のトリグリセリドの含有量が45〜60質量%である。
本発明は、本知見に基づくものである。
また、本発明の非テンパー型のハードバター組成物によれば、従来の非テンパー型のハードバターと比較して、油性菓子中にCBを高配合することができるので、よりカカオ風味の良好な油性菓子を得ることができる。
更に、本発明の非テンパー型のハードバター組成物によれば、CBを高配合しても、常温で流通可能な耐熱性及びブルーム耐性を油性菓子に付与できるため、得られる油性菓子の経時的な物性の変化、並びに外観の変化を抑制することができる。
以下、本発明の非テンパー型のハードバター組成物(以下、本発明のハードバター組成物とも言う)について好ましい実施形態に基づき詳述する。
本発明において、「ラウリン酸を実質的に含まない」とは、ハードバター組成物の構成脂肪酸組成において炭素数6〜12の脂肪酸の含有量が5質量%未満、好ましくは3質量%未満であることを示すものとする。また、本発明において、「低トランス脂肪酸型である」とは、トランス型の不飽和脂肪酸を実質的に含まないことを意味し、「トランス型の不飽和脂肪酸を実質的に含まない」とは、本発明のハードバター組成物の構成脂肪酸組成においてトランス型の不飽和脂肪酸の含量が5質量%未満、好ましくは3質量%未満であることを示すものとする。更に、本発明において「常温」とは25℃を意味する。
本発明のハードバター組成物は、構成脂肪酸組成における、パルミチン酸(P)1質量部に対するステアリン酸(St)の含有量の質量比(St/P)が0.8〜1.5であることが必要である。
St/Pが0.8未満であった場合、本発明のハードバター組成物を用いて油性菓子を調製した際に、調製した油性菓子は耐熱性が乏しくなり、ブルーム耐性が低下する。また、St/Pが1.5超であった場合、調製した油性菓子の口溶けが悪化してしまう。
本発明のハードバター組成物は、構成脂肪酸組成におけるSt/Pの値が、好ましくは0.85〜1.4であり、より好ましくは0.9〜1.3であり、最も好ましくは1.0〜1.2である。
ハードバター組成物は、ラウリン酸やミリスチン酸等の、炭素数がパルミチン酸の炭素数未満の短鎖脂肪酸を多く含む場合、上述のようにソーピーフレーバーを発生し風味が損なわれやすくなる。また、アラキジン酸やベヘン酸等の、炭素数がステアリン酸の炭素数超の長鎖脂肪酸を多く含む場合、常温で流通可能な耐熱性を有する油性菓子を得ることができるが、口溶けが悪化しやすい。ハードバター組成物の構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸におけるステアリン酸及びパルミチン酸の含有量を95質量%以上とすることによって、風味及び口溶けが良好で、且つ、常温で流通可能な耐熱性を有するハードバター組成物を得ることができるため好ましい。
本発明のハードバター組成物においては、S2Uトリグリセリド(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)中のSSUトリグリセリド(1,2−ジ飽和−3−モノ不飽和トリグリセリド)の含有比が0.5〜0.8であることが必要である。尚、Sは飽和脂肪酸を意味し、Uは不飽和脂肪酸を意味する。
ハードバター組成物におけるS2Uトリグリセリド中のSSUトリグリセリドの含有比が上記範囲外にある場合、油性菓子の油脂分中のカカオバターの含有比率を、経日的にブルームを発生させることなく、後述の範囲まで高めることができなくなるため、本発明の課題を解決できない。
カカオバターとの相溶性を一層高める観点から、本発明のハードバター組成物においては、S2Uトリグリセリド中のSSUトリグリセリドの含有比が0.55〜0.75であることが好ましく、0.6〜0.7であることがより好ましく、0.63〜0.7であることが特に好ましい。
SU2トリグリセリドの含有量が17質量%未満の場合、口溶けを損ねやすく、22質量%超の場合、常温で保管中に「汗かき」現象やブルームが発生しやすくなる。尚、本発明のハードバター組成物におけるU3トリグリセリドの含有量は、5質量%未満が好ましい。
・検出部:示差屈折検出器
・カラム:ドコシルカラム
・移動相: アセトン:アセトニトリル=65:35
・流速:1ml/min
・カラム温度:40℃
・背圧:3.8MPa
まず、パーティションナンバー(PN)について述べる。
パーティションナンバー(PN:Partition number)とは、トリグリセリドのアシル基(所謂、脂肪酸残基)の総炭素数(TC:Total carbon number)とトリグリセリドのアシル基中の二重結合(DB:Double bond)の総箇所数から、次式より算出される値である。
[PN算出式] PN=TC−2×DB
・検出部:示差屈折検出器
・カラム:ドコシルカラム
・移動相: アセトン:アセトニトリル=65:35
・流速:1ml/min
・カラム温度:40℃
・背圧:3.8MPa
まず、パルミチン酸とステアリン酸との含有量の和が、構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量の95質量%以上であり、且つ、パルミチン酸とステアリン酸の質量比(St/P)が1.0以上、好ましくは1.1〜1.4である油脂配合物を調製する。
尚、極度硬化油脂を用いる場合は、構成脂肪酸中にステアリン酸を60質量%以上、好ましくは70質量%以上含有する極度硬化油脂を用いることが好ましい。ステアリン酸を60質量%以上含有する極度硬化油脂としては、例えば大豆油の極度硬化油脂、菜種油の極度硬化油脂及びハイオレイックヒマワリ油の極度硬化油脂などが挙げられる。
また、極度硬化油脂を用いる場合は、トランス脂肪酸を実質的に含有させない観点から、沃素価3以下である極度硬化油脂を用いることが好ましく、沃素価1以下である極度硬化油脂を用いることがより好ましい。
エステル交換は、ランダムエステル交換反応である場合があり、位置特異的なエステル交換反応である場合があるが、ランダムエステル交換反応によるエステル交換の方が、より優れた常温流通可能な耐熱性が得られるため好ましい。
また、エステル交換は化学的触媒を用いる方法である場合があり、酵素を用いる方法である場合がある。上記化学的触媒としては、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒等が挙げられる。上記酵素としては、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼ等が挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明においては、上記の冷却結晶化により得られる結晶化スラリー中の結晶部の割合、即ち、結晶化温度でのSFC(固体脂含量)が好ましくは10〜70%、より好ましくは30〜60%、最も好ましくは35〜55%となるように晶析を行うことが好ましい。
固体脂含量(SFC)が上記範囲外であった場合には、ハードバターとして有用な油脂成分のみを選択的に分離する際の効率が低下し、再度分別する必要が生じるおそれがあるため好ましくない。
尚、本発明においてエステル交換油脂を急冷する場合、その冷却速度は5℃/h以上であることが好ましく、5〜20℃/hであることがより好ましい。徐冷する場合においては、その冷却速度は0.3〜3.5℃/hであることが好ましく、0.5〜3.0℃/hであることがより好ましい。
本発明における結晶の熟成工程とは、結晶をより均一なものにすると同時に更に結晶化を進めて、結晶部と液状部を濾別しやすい結晶状態とし、結果として収率を向上させる操作を指す。具体的には30〜60℃、好ましくは35〜50℃の任意の温度で、定温の状態で、30分〜80時間保持する。尚、熟成工程の回数の上限は特に制限はないが、通常5回以下、好ましくは4回以下である。
エステル交換油脂の結晶化時に、結晶化温度での固体脂含量が高く、高粘度の結晶化スラリーであったり、塊状に見える場合等においては、圧搾濾過時に圧力によりスラリー化するため、特に圧搾濾過が適している。
圧搾濾過によって分別を行なう場合の好ましい圧力は、0.2MPa以上、更に好ましくは0.5〜5MPaであることが好ましい。尚、圧搾時の圧力は圧搾初期から圧搾終期にかけて徐々に上昇させることが好ましく、その圧力の上昇速度は1MPa/分以下、好ましくは0.5MPa/分以下、更に好ましくは0.1MPa/分以下である。加圧速度が1MPa/分より大きいと、得られるエステル交換油脂の低融点部、又は中融点部の収率が低下する恐れがある。
本発明の油性菓子は本発明のハードバター組成物を含有する。具体的には、本発明における油性菓子とは、油相を連続相とするチョコレート類やクリーム類等であって、その油相の全て、或いは一部に、本発明のハードバター組成物を用いたものを指す。
本発明のチョコレート類は、上記のハードバター組成物を、チョコレート類を構成する油脂として含有させたものである。
良好な風味と食感を有し、且つブルームを発生させることなく艶のあるチョコレートを得るために、本発明のハードバター組成物を含有するチョコレート類の油脂分中、カカオバターを5〜35質量%含有させることが好ましく、10〜35質量%含有させることがより好ましく、15〜35質量%含有させることが最も好ましい。
本発明のクリーム類は、本発明のハードバター組成物を、バタークリームやシュガークリームといった、油相を連続相とするクリーム類において、その油相の一部又は全部に使用したものである。
ここで、本発明のハードバター組成物は、上述したように、カカオバターとの相溶性が良好であることから、これを使用した本発明のクリーム類が、カカオバターを多く含有するクリーム類であっても、経日的なグレーニングの発生が抑制されたものとなり、保存性の高められたクリーム類を得ることができる。
パーム油32質量部、大豆油に沃素価が1以下となるまで水素添加を行った大豆極度硬化油45質量部、パーム分別硬部油23質量部からなる油脂配合物Aをナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、エステル交換油脂Aを得た。
油脂配合物Aの構成脂肪酸組成において、パルミチン酸の含量は33.4質量%、ステアリン酸の含量は41.9質量%、St/Pが1.2であった。
また、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量との和は、油脂配合物Aの構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の98.3質量%であった。
また、大豆極度硬化油の構成脂肪酸中のステアリン酸の含量は89質量%であった。
また、エステル交換油脂Aにおけるパーティションナンバーが50〜54のトリグリセリドの含有量は61.7質量%であった。
この結晶化スラリーを濾過分別し、高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものを、ハードバター組成物Aとした。
また、ハードバター組成物Aは、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量の和が、ハードバター組成物の構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の97.9質量%であった。
また、ハードバター組成物Aは、構成脂肪酸中のトランス型の不飽和脂肪酸含量が0.7質量%、炭素数6〜12の脂肪酸含量が0.2質量%であった。すなわち、ハードバター組成物Aは低トランス脂肪酸型であり、且つ、実質的にラウリン酸を含有しないハードバター組成物であった。
パーム油65質量部と、大豆油に沃素価が1以下となるまで水素添加を行った大豆極度硬化油35質量部からなる油脂配合物Bを、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、エステル交換油脂Bを得た。
油脂配合物Bの構成脂肪酸組成において、パルミチン酸の含量は26.8質量%、ステアリン酸の含量は25.7質量%、St/Pが0.96であった。
また、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量との和は、油脂配合物Bの構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の97.9質量%であった。
また、大豆極度硬化油の構成脂肪酸中のステアリン酸の含量は89質量%であった。
また、エステル交換油脂Aにおけるパーティションナンバーが50〜54のトリグリセリドの含有量は58.8質量%であった。
得られた低融点部を再度加熱溶解し、油脂温度が35℃となるまで12.5℃/hで冷却し、35℃で44時間の熟成工程を経た後、高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものを、ハードバター組成物Bとした。
また、ハードバター組成物Bは、SU2トリグリセリドの含有量が29.8質量%であり、パーティションナンバーが48のトリグリセリドの含有量が36.3質量%であり、パーティションナンバーが44及び46のトリグリセリドの含有量が11.2質量%であった。
また、ハードバター組成物Bは、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量の和が、ハードバター組成物の構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の97.4質量%であった。
また、ハードバター組成物Aは、構成脂肪酸中のトランス型の不飽和脂肪酸含量が0.8質量%、炭素数6〜12の脂肪酸含量が0.2質量%であった。すなわち、ハードバター組成物Bは低トランス脂肪酸型であり、且つ、実質的にラウリン酸を含有しないハードバター組成物であった。
パーム分別硬部油75質量部、パーム油に沃素価が1以下となるまで水素添加を行ったパーム極度硬化油25質量部からなる油脂配合物Cを、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してエステル交換油脂Cを得た。
油脂配合物Cの構成脂肪酸組成において、パルミチン酸の含量は57.1質量%、ステアリン酸の含量は17.3質量%、St/Pが0.3であった。
また、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量との和は、油脂配合物Cの構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の97.5質量%であった。
またパーム極度硬化油の構成脂肪酸中のステアリン酸の含量は53質量%であった。
また、エステル交換油脂Cの、パーティションナンバーが50〜54のトリグリセリドの含有量は24.8質量%であった。
この結晶化スラリーを濾過分別し、高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものを、ハードバター組成物Cとした。
また、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量の和は、ハードバター組成物の構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の97.4質量%であった。
また、ハードバター組成物Cは、構成脂肪酸中のトランス型の不飽和脂肪酸含量が0.7質量%、炭素数6〜12の脂肪酸含量が0.3質量%であった。すなわち、ハードバター組成物Cは低トランス脂肪酸型であり、且つ、実質的にラウリン酸を含有しないハードバター組成物であった。
パーム油55質量部とパーム極度硬化油45質量部からなる油脂配合物Dを、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してエステル交換油脂Dを得た。
油脂配合物Dの構成脂肪酸組成において、パルミチン酸の含量は46.7質量%、ステアリン酸の含量は25.8質量%、飽和脂肪酸中に占めるパルミチン酸とステアリン酸の和の比率は98.2質量%、St/Pは0.6であった。
また、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量の和は、油脂配合物Dの構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の98.2質量%であった。
またパーム極度硬化油の構成脂肪酸中のステアリン酸の含量は53質量%であった。
また、エステル交換油脂Dの、パーティションナンバーが50〜54のトリグリセリドの含有量は36.9質量%であった。
この結晶化スラリーを濾過分別し、高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものを、ハードバター組成物Dとした。
また、ステアリン酸の含有量とパルミチン酸の含有量の和は、ハードバター組成物の構成脂肪酸組成中の飽和脂肪酸の含有量の97.5質量%であった。
また、ハードバター組成物Dは、構成脂肪酸中のトランス型の不飽和脂肪酸含量が0.5質量%、炭素数6〜12の脂肪酸含量が0.2質量%であった。すなわち、ハードバター組成物Dは低トランス脂肪酸型であり、且つ、実質的にラウリン酸を含有しないハードバター組成物であった。
得られたハードバター組成物A〜Dを用いて、下表[配合表:チョコレート]に則って下記手順で、油脂分中のカカオバターの配合量が異なるチョコレート(検討1〜6)を作成した。
ハードバター組成物A〜Dのいずれか、カカオバター及びカカオマスを55℃に加温して溶解し、ココアパウダー、粉糖及びレシチンを添加し練り合わせてペースト状とし、ロール掛けした後、コンチングして、非テンパー型のチョコレート生地を得た。このチョコレート生地を型に注入し、5℃で12時間冷却・固化させ、非テンパー型の型チョコレートを調製した。
尚、カカオマス中の油脂分は55質量%であり、ココアパウダー中の油脂分は11質量%であり、これら油脂はカカオバターであった。
評価結果については、それぞれ表2〜4に示す。
◎+:極めて良好な口溶けである。
◎:良好である。
○:喫食後、やや遅れて口溶けが得られる。
△:不良である。
×:ワキシー感が口中に感ぜられ、極めて不良である。
上記手法で調製されたチョコレートを15℃、及び25℃(常温)の恒温槽で、調製日より90日間、静置保管し、その後、下記評価基準に従って、目視によるブルーム評価を行った。
−:チョコレートの表面にブルームが見られず、ツヤがある
±:チョコレートの表面にブルームは見られないが、ツヤがない
+:チョコレートの表面に一部にブルームが見られる
++:チョコレートの表面に激しいブルームが見られる
用いたハードバター組成物の種類に関わらず、チョコレート中の油脂分に占めるカカオバター含有量が増加するにつれて、口溶けが改良され、カカオ風味が増強される傾向が確認された。
一方、比較例1で調製したハードバター組成物Cでは、チョコレートを構成する油脂組成中のカカオバター含有量が低い領域において、他2種のハードバター組成物と比較し、口溶けが劣る結果となった。
比較例1で調製したハードバター組成物Cでは、チョコレートを構成する油脂組成中のカカオバター含有量に関わらず、又、保管温度に関わらず、ブルームが確認された。
実施例1で調製したハードバター組成物A、実施例2で調製したハードバター組成物B及び比較例2で調製したハードバター組成物Dの双方で、チョコレートを構成する油脂組成中のカカオバター含有量を20質量%まで高めても、経日的なブルームの発生は起こらないことが確認されたが、ハードバター組成物Dを用いた場合では、常温(25℃)保存下において、該油脂組成中のカカオバター含有量を20質量%とした際には、ブルームの発生は抑制されていたがチョコレートの表面からツヤが失われ、更にカカオバター含有量を高めた場合にはブルームの発生が確認された。
油脂組成中のカカオバター含有量を更に高めると、比較例2のハードバター組成物Dではブルームが生じる一方、実施例1のハードバター組成物A及び実施例2のハードバター組成物Bを用いたチョコレートでは、該油脂組成中のカカオバター含有量を40質量%まで高めると、保管温度を問わず、チョコレートの表面からツヤが失われていたが、ブルームの発生は抑えられた。
実施例1のハードバター組成物A及び実施例2のハードバター組成物Bを用いたチョコレートは、油脂組成中のカカオバター含有量が35質量%までは、15℃保管条件下、及び25℃保管条件下のいずれにおいてもブルームが発生せず、又、ツヤも失われず、好ましい外観を有するチョコレートを得ることができた。
したがって、従前知られた非テンパー型のハードバター組成物よりも、ステアリン酸含量の含有比率が一定範囲で高められた本発明のハードバター組成物は、カカオバターとの相溶性に非常に優れている。
そのため、本発明のハードバター組成物を用いた油性菓子の、油分中のカカオバターの含量を30質量%以上に高めても、従来のハードバター組成物を用いた場合とは全く異なり、経時的なブルームの発生を抑制することが可能である。
Claims (4)
- 下記条件(1)〜(3)を全て満たし、且つ、低トランス脂肪酸型である、非テンパー型のハードバター組成物。
(1)構成脂肪酸組成における、ステアリン酸(St)とパルミチン酸(P)との質量比(St/P)が、0.8〜1.5である。
(2)S2Uトリグリセリド(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)中のSSUトリグリセリド(1,2−ジ飽和−3−モノ不飽和トリグリセリド)の含有比(SSU/S2U)が0.5〜0.8である。
(3)パーティションナンバー(PN)が50〜54のトリグリセリドの含有量が45〜60質量%である。
(Sは飽和脂肪酸を表し、Uは不飽和脂肪酸を表す。) - パルミチン酸とステアリン酸との含有量の和が構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量の95質量%以上であり、且つ、パーティションナンバーが50〜54のトリグリセリドの含有量が50〜70質量%であるエステル交換油脂から、低融点部又は中融点部を分取する、非テンパー型のハードバター組成物の製造方法。
- 上記低融点部又は上記中融点部の分取が晶析によるものであり、該晶析の過程で析出した結晶の熟成工程を経る、請求項2記載の非テンパー型のハードバター組成物の製造方法。
- 請求項1記載の非テンパー型のハードバター組成物を含油する油性菓子。
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