JP2019037224A - チョコレート改良材 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は以下の2点にある。1)ソフトチョコレートに使用した場合であっても、強くカカオ風味を感じられる、チョコレートを得ること。2)ソフトチョコレートに使用した場合であっても、良好な口溶けと噛みだしを有する、チョコレートを得ること。【解決手段】下記条件(1)〜(4)を満たす油脂を含有する、チョコレート改良材を含有させることにより、上記課題が解決されたチョコレートが得られる。(1)S2Uの含有量が50〜70質量%。(2)S2U中に占めるSUSの比率が0.25〜0.60。(3)20℃におけるSFC(SFC-20)と、30℃におけるSFC(SFC-30)との比率(SFC-20/SFC-30)が、3以上。(4)構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸が、実質的にステアリン酸とパルミチン酸からなり、且つステアリン酸とパルミチン酸の質量比(St/P)が0.05〜7.0。【選択図】なし

Description

本発明は、チョコレート用の改良材に関する。
従来のチョコレートは、スナップ性と呼ばれる、パキッと割れる硬い物性を有するものが主流であったが、近年、嗜好の多様化に伴い、様々な食感のチョコレートが提案されており、特に人気を集めているのが、噛みだし(「噛み出し」と記載する場合もある)のやわらかいチョコレートである。(以下、単にソフトチョコレート、又はソフトなチョコレートと記載する場合がある。)
ソフトチョコレートは、(1)従来のチョコレートと異なり良好なスナップ性を有さない点、(2)従来のチョコレートと異なり噛みだしが軟らかい点、(3)従来のチョコレートと同等以上の良好な口溶けを有する点が特徴として挙げられる。
ソフトチョコレートは、チョコレート中の水分含量を高めたり、チョコレート中の油脂分の一部を、カカオ脂よりも融点の低い油脂で置換して、油相を構成することにより得られることが知られている。ソフトチョコレートを得る手法の一として、従来チョコレートの油脂分中のカカオ脂、及び/又はハードバターの一部を、例えば特許文献1で開示されているように、液状油で置換する手法が提案されてきた。
しかし、液状油を配合することで、汗かき現象が起きやすくなり、経時的に物性が不安定になってしまうという課題があった。また口溶けも悪化し易く、油性感が発生しやすいという課題があった。
加えて、チョコレートとしての品質の低下を引き起こしやすいことから、カカオ分由来のカカオ脂を多く混合することが出来ないという配合上の制約もあり、カカオ風味を強く感じられる、チョコレートを得ることが難しかった。
カカオ風味を強く感じさせるために、カカオ分由来のカカオ脂を、例えばチョコレートの油脂分中30質量%以上となるように多く含有させた場合、良好な口溶けを得る目的等から、テンパリングを行う必要があるため、近年ではテンパリング型のソフトチョコレートが多く検討されている。
テンパリング型のソフトチョコレートを得るための油脂として、例えば次のようなソフトチョコレート用のハードバターが開示されている。
特許文献2では、トリ飽和トリグリセリドの含有量が0.1〜1質量%、オレオイルジパルミチンの含有量が30〜65質量%、1(3)−オレオイルジパルミチン(PPO)の質量%/2−オレオイルジパルミチン(POP)の質量%が0.4以下であるハードバターが開示されている。
特許文献3では、トリグリセリドの2位に不飽和脂肪酸(U)が結合し、1,3位の少なくとも一方に飽和脂肪酸(S)が結合したトリグリセリド(SUX)(但し、Xは飽和又は不飽和脂肪酸を示す)を主成分とする油脂であって、該油脂中に、固形脂係数(SFI)5%に対応する温度よりも7.5℃低い温度(t)における固形脂係数[SFI(t)]が40%以上であり、かつ融点が15〜28℃である特定トリグリセリドを20重量%以上含むことを特徴とするソフトチョコレート用油脂が開示されている。
しかし、これらのソフトチョコレート用のハードバターを用いた場合であっても、好ましい噛みだしの軟らかさや口溶けといった食感、チョコレート特有の濃厚なカカオ風味が感じられるソフトなチョコレートを得ることは難しかった。
ところで、テンパリング型のチョコレートを製造する際、チョコレート改良材である、CBI(cacao butter improver、又はcocoa butter improver)と呼ばれる油脂組成物を、チョコレートの物性や食感をコントロールする目的から油相中に含有させることが知られている。
しかし、これまでスナップ性向上や耐熱性を向上させるためのCBIは開示されてきたが、軟らかな噛みだしや口溶け、濃厚なカカオ風味の発現といった、ソフトチョコレートの食感・風味を改良するためのCBIは開示されてこなかった。
特開2008-228677号公報 特開2014-117257号公報 特開平03-043042号公報
本発明の課題は以下の2点にある。
1)ソフトチョコレートに使用した場合であっても、強くカカオ風味を感じられる、チョコレートを得ること
2)ソフトチョコレートに使用した場合であっても、良好な口溶けと噛みだしを有する、チョコレートを得ること
本発明者らによる検討の結果、通常カカオ脂やテンパリング型ハードバターを含有し、テンパリング操作を要するチョコレートに対して、対称型のS2Uトリグリセリド(SUS:Sは飽和脂肪酸残基、Uは不飽和脂肪酸残基)の少ない油脂、即ち非対称型のS2Uトリグリセリド(SSU)を多く含有する油脂を含有させることは、固化不良、チョコレートのテクスチャの軟化等が起こり、品質の劣化を招くため、忌避することが当業者の常識であったところ、逆に噛みだしが軟らかい、ソフトなチョコレートの、風味や食感を調整するためのチョコレート改良材として、一定量加えることにより、好ましい風味発現性と口溶けが得られることを知見した。
特にS2Uの含有量、S2U中に占めるSUSの比率、20℃と30℃でのSFC(固体脂含量)の各測定値の比率、及びステアリン酸とパルミチン酸の質量比が特定範囲にあるチョコレート改良材を一定量加えることで、非常に優れたカカオ風味発現性(フレーバーリリース)と良好な口溶けを有する、噛みだしの軟らかいチョコレートが得られることを知見した。
本発明はこの知見に基づくものであり、下記条件(1)〜(4)を満たす油脂を含有する、チョコレート改良材を含有させることにより、上記課題が解決されたチョコレートが得られる。
(1)S2Uの含有量が50〜70質量%。
(2)S2U中に占めるSUSの比率(SUS/S2U)が0.25〜0.60。
(3)20℃におけるSFC(SFC-20)と、30℃におけるSFC(SFC-30)との比率(SFC-20/SFC-30)が、3以上。
(4)構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸が、実質的にステアリン酸とパルミチン酸からなり、且つステアリン酸とパルミチン酸の質量比(St/P)が0.05〜7.0。
本発明のチョコレート改良材によって、以下2点の効果が得られる。
まず、カカオ風味が強く感じられる、チョコレートが得られる。
また、良好な口溶けと噛みだしを有する、チョコレートが得られる。
以下、本発明の詳細について述べる。
本発明のチョコレート改良材は、下記条件(1)〜(4)を満たす油脂を含有することを特徴とする。このような本発明のチョコレート改良材は、噛みだしの軟らかさと良好な口溶けが得られ、カカオの風味を強く得ることができる。
(1)S2Uの含有量が50〜70質量%。
(2)S2U中に占めるSUSの比率(SUS/S2U)が0.25〜0.60。
(3)20℃におけるSFC測定値(SFC-20)と、30℃におけるSFC測定値(SFC-30)との比率(SFC-20/SFC-30)が、3以上。
(4)構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸が、実質的にステアリン酸とパルミチン酸からなり、且つステアリン酸とパルミチン酸の質量比(St/P)が0.05〜7.0。
初めに、本発明のチョコレート改良材に含有される油脂が満たすべき条件(1)〜(4)について述べる。
尚、本発明において、Sは飽和脂肪酸、Uは不飽和脂肪酸であり、S2Uはジ飽和モノ不飽和トリグリセリド、SSUは1,2-飽和-3-不飽和トリグリセリド、SUSは1,3-飽和-2-不飽和トリグリセリド、上記Stは構成脂肪酸におけるステアリン酸の質量比率、上記Pは構成脂肪酸におけるパルミチン酸の質量比率をそれぞれ意味する。
先ず、条件(1)について述べる。
本発明のチョコレート改良材に含有される油脂において、トリグリセリド組成中、S2Uトリグリセリドが50〜70質量%含有されることが必要である。
S2Uトリグリセリドの含有量が上記範囲である油脂を、後述するソフトチョコレートに用いた場合に、噛みだしの軟らかさと良好な口溶けを有するソフトチョコレートを得ることができる。
S2Uトリグリセリドの含有量が上記範囲外であると、ソフトチョコレートに用いた場合、噛みだしの硬さが過度に軟らかく、或いは過度に硬すぎる物性のソフトチョコレートとなるため好ましくない。
S2Uトリグリセリドは、53質量%以上含有されることが好ましく、55質量%以上含有されることがより好ましい。また、67質量%以下となることが好ましく、65質量%以下となることがより好ましい。尚、トリグリセリド組成については、例えば逆相HPLCで行われるトリグリセリド分子種分析により分析することが可能である。この逆相HPLCは、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法2.4.6.2」に則って、任意の条件で実施することができ、例えば、次のような条件で測定することが可能である。
・検出部:示差屈折検出器
・カラム:ドコシルカラム(DCS)
・移動相:アセトン:アセトニトリル=65:35(体積比)
・流速:1ml/min
・カラム温度:40℃
・背圧:3.8MPa
尚、ソフトチョコレートに用いた際に、好ましい噛みだしと口溶け、好ましいカカオ風味を得る観点から、S2Uトリグリセリド中の、所謂混酸型トリグリセリドであるPSO(パルミトイル-ステアリル-オレオイル-トリグリセリド)の量が25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることが最も好ましい。含量の上限に特に制限は無いが、工業的な生産性の観点から、50質量%である。尚、PSOは、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸が、1〜3位のいずれの結合位かを問わず、グリセロールの3つのOH基とそれぞれ結合したトリグリセリドである。
尚、上記のS2Uトリグリセリド含量とするのに加えて、汗かき現象等の品質低下を抑制し、且つ口溶けを良好にするため、チョコレート改良材に含まれる油脂のトリグリセリド組成中、SU2トリグリセリドの含有量を20〜35質量%とするのが好ましく、22〜32質量%とするのがより好ましい。尚、前記のトリグリセリド組成中、U3トリグリセリドについては5質量%以下であることが好ましい。SU2トリグリセリドは、モノ飽和ジ不飽和トリグリセリドであり、U3トリグリセリドはトリ不飽和トリグリセリドである。
また前記のトリグリセリド組成中、S3トリグリセリドについては、適度な噛みだしの軟らかさと、好ましい口溶けとを得る観点から、0.3〜5.0質量%とすることが好ましく、1.0〜5.0質量%とすることがより好ましく、1.5〜4.0質量%とすることがさらに好ましく、2.0〜3.5質量%とすることが最も好ましい。S3トリグリセリドはトリ飽和トリグリセリドである。
次に条件(2)について述べる。
本発明のチョコレート改良材に含有される油脂において、S2Uトリグリセリドに占めるSUSの比率が0.25〜0.60であることが必要である。
S2Uトリグリセリド中に占めるSUSトリグリセリドの比率が上記範囲にあることで、本発明品を含有するチョコレートの口溶けが好ましいものとなる。
S2Uトリグリセリド中に占めるSUSの比率が、0.25未満であった場合、ブルーム等の、チョコレートの品質を低下させる現象が経時的に生じるため、好ましくない。0.60超であった場合、得られるチョコレートの噛みだしが硬くなりすぎ、口残りする食感となってしまう。
尚、「口残りする」とは、口中で溶解(口溶け)した後、口中に残る感覚を指し、口残り性が改善された、とは、口溶けの後、口中に残らずにスッと消える感覚が得られることを指す。
S2Uトリグリセリド中に占めるSUSの比率は、好ましくは0.25〜0.55、より好ましくは0.25〜0.45であり、さらに好ましくは0.28〜0.43であり、最も好ましくは0.30〜0.40である。
次に条件(3)について述べる。
本発明のチョコレート改良材に含有される油脂において、20℃におけるSFC(SFC-20)と、30℃におけるSFC(SFC-30)との比率(SFC-20/SFC-30)が、3以上であることが必要である。該比率が3以上であることにより、ソフトチョコレートに用いた場合に、口中で好ましくスッと溶ける口溶けを有する、ソフトチョコレートを得ることが可能となる。
SFC-20/SFC-30の値は3以上であれば、好ましい口溶けを有するチョコレートを得ることが可能であるが、好ましくはSFC-20/SFC-30の値が4以上、より好ましくは5以上である。
尚、口溶けの観点からはSFC-20/SFC-30の値に上限はないが、室温下での保型性と口溶けとの両立を図る観点から、200以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、最も好ましくは9以下である。尚、上記のSFCは、次のようにして測定する。即ち、チョコレート改良材中に含有される油脂を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に順次30分保持後、SFCを測定する。
次に条件(4)について述べる。
本発明のチョコレート改良材に含有される油脂において、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸(S)が、実質的にステアリン酸とパルミチン酸からなり、且つステアリン酸とパルミチン酸の質量比(St/P)が0.05〜7.0であることが必要である。該質量比を0.05〜7.0とすることで、ソフトチョコレートに本発明品を含有させた場合に、良好な口溶けと噛みだしの軟らかさ、良好なフレーバーリリースを有するチョコレートを得ることが出来るため、カカオ風味を感じられるチョコレートが得られる。尚、構成脂肪酸組成中のステアリン酸及びパルミチン酸等の脂肪酸の含有量は、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.2.3−2013」や「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.4.3−2013」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
尚、本発明において「実質的にステアリン酸とパルミチン酸からなる」とは、本発明のチョコレート改良材に含有される油脂の構成脂肪酸の飽和脂肪酸中、ステアリン酸とパルミチン酸の含有量の和が90質量%以上、好ましくは95質量%以上であることを意味する。
尚、本発明において、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸中、炭素数14以下の飽和脂肪酸は5質量%未満であることが好ましい。
得られるチョコレートの口溶けにあわせ、カカオ風味をミドルからラストにかけて一層強く発現させる観点から、St/Pは0.1〜3.0であることが好ましく、0.3〜2.0であることがより好ましく、0.5〜1.5であることが最も好ましい。
St/Pを上記の範囲に調整することにより、従来よりも強く、カカオ風味を感じられるチョコレートが得られる。
尚、本発明のチョコレート改良材に用いられる油脂が上記条件(1)〜(4)に加えて、次の条件(5)を満たすことが好ましい。
(5)上昇融点が、25〜35℃である。
本発明のチョコレート改良材に用いられる油脂の上昇融点が25〜35℃であることで、ソフトチョコレートに含有させた場合に、室温下での保型性と口溶けとが両立された、ソフトチョコレートが得られるため好ましい。
上記範囲外であっても、ソフトチョコレートに含有させることで、ソフトなチョコレートを得ること自体は可能である。
しかし、本発明のチョコレート改良材に用いられる油脂の上昇融点が25℃未満であった場合、得られるソフトチョコレートの口溶けは良くなるが、室温下での保型性が悪化しやすく、また、噛みだしが軟らかくなりすぎる場合がある。
また、本発明のチョコレート改良材に用いられる油脂の上昇融点が35℃超であった場合、室温下での保型性は十分に得られるが、口溶けが悪化し易く、また、ソフトチョコレートとしては噛みだしが硬くなりすぎてしまう場合がある。
上昇融点の測定は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法3.2.2.2−2013」に則って測定することが出来るが、以下(i)〜(iv)に概略を述べる。
(i)内径1mm、外径2mm以下、長さ50〜80mmの両端が開いた毛細管の一端を、完全に融解した試料につけて、約10mmの高さまで満たした後、速やかに冷却固化し、−20〜0℃で1時間放置する。
(ii)試料を調製した毛細管を、長さ385〜390mm、水銀球の長さ15〜25mm、0.2℃目盛の温度計の下部にゴム輪又は適当な方法で密着させ、毛細管の下端と温度計の下端を揃える。
(iii)この温度計を適当な大きさのビーカー(内容量500〜1000ml)に水を満たした中に浸して、温度計の下端を水面下約30mmの深さにおく。
(iv)ビーカーの水を撹拌しながら、0.5〜2℃/min上昇するように加熱し、試料が毛細管中で上昇し始める温度を上昇融点とする。
本発明のチョコレート改良材に用いることのできる油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂が挙げられ、これらから選択された2種、又はそれ以上の油脂の混合物を使用することもできる。
本発明のチョコレート改良材では、これらの油脂の内から、上記条件(1)〜(4)を満たすように、1種又は2種以上が選択され、含有される。
とりわけ、室温下での保型性と口溶けとの両立を図る観点、また、S2Uトリグリセリド中に占めるSUSの比率を上述の範囲とする観点から、チョコレート改良材の一部又は全部にエステル交換油脂を使用することが好ましく、特にランダムエステル交換油脂を使用することが好ましい。
本発明のチョコレート改良材において1,3-位置特異的エステル交換油脂を選択した場合、通常SUSトリグリセリドが多く含有されている上、ソフトチョコレートに対して用いた場合、ソフトチョコレートの軟らかい噛みだしが好ましく得られない場合がある。
本発明においてはエステル交換処理の後、さらに水素添加や分別を行っていてもよく、本発明ではこの場合もエステル交換油脂として扱う。
ここで、本発明のチョコレート改良材に好ましく用いられるエステル交換油脂の製造方法について述べる。
上記(1)〜(4)を全て満たすエステル交換油脂は、例えば以下の方法に則って得ることが出来る。
まず、パルミチン酸とステアリン酸の含有量の和が、構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量の95質量%以上であり、パルミチン酸とステアリン酸の質量比(St/P)が好ましくは0.05〜8、より好ましくは0.2〜2.0、最も好ましくは0.3〜1.5である油脂配合物を調製する。
このような油脂配合物を得る為に用いられる油脂としては特に制限されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂のうちから、一種又は二種以上を選択し、混合して、上記の油脂配合物とすることができる。
特に、構成脂肪酸組成中のステアリン酸、パルミチン酸の含量を高め、St/Pを上記の好ましい範囲に調整し、且つ、トランス脂肪酸含量の低減、あるいはその増加を抑制する観点から、極度硬化油脂を油脂配合物中に含有させることが好ましい。
尚、用いることの出来る極度硬化油脂として、例えばパームの極度硬化油脂や大豆油の極度硬化油脂や菜種油の極度硬化油脂、ハイオレイックヒマワリ油、ハイエルシン菜種油の極度硬化油脂などが挙げられる。
また、極度硬化油脂を用いる場合は、トランス脂肪酸含量を実質的に含有させない観点から、沃素価3以下である極度硬化油脂を用いることが好ましく、沃素価1以下である極度硬化油脂を用いることがより好ましい。
次に調製された油脂配合物に対して、ランダムエステル交換を行う。
ランダムエステル交換は化学的触媒を用いる方法であっても酵素を用いる方法であってもよく、上記化学的触媒としては、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒等が挙げられ、上記酵素としては、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼ等が挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
尚、ランダムエステル交換された油脂配合物のSFC-20/SFC-30が、下述の分別の際、効率よく分別する観点から、0.5〜2.5であることが好ましく、0.7〜2.4であることがより好ましく、1.0〜2.3であることが最も好ましい。
上記の通りランダムエステル交換された油脂配合物を、以下に詳述する溶剤分別、又は晶析によって分別し、得られた低融点部、又は中融点部が、本発明のチョコレート改良材中に、上記条件(1)〜(4)を満たすエステル交換油脂として好ましく含有される。尚、上記条件(1)〜(4)を満たすエステル交換油脂を得るために、複数回分別操作を行っても構わない。その際、溶剤分別を、条件を変えて2段階あるいは3段階以上行ってもよく、晶析を、条件を変えて2段階あるいは3段階以上行ってもよく、溶剤分別と晶析を組合せてもよい。
分別の手法については任意に選択されるが、分別される油脂のSt/Pが0.4未満である場合、溶剤分別を用いることが好ましく、それ以外の場合は晶析により分別することが好ましい。
ここで、以下、溶剤分別を行う場合について述べる。
溶剤分別を行う際は、用いる溶剤については、分別に供するエステル交換油が溶解する溶剤であれば特に限定されないが、得られた分別油脂を食用に供することから、アセトン又はヘキサンを選択することが好ましい。
溶剤を使用する量については特に限定されないが、工業的生産性の点から、分別に供するエステル交換油100質量部に対して、50質量部以上の溶剤を加えることが好ましく、100〜1000質量部加えることがより好ましく、200〜500質量部加えることが最も好ましい。
尚、油脂を溶剤に溶解させる際は、分別によって除去する高融点画分を一旦十分に溶かして置く必要があるため、30〜70℃となるように加熱しておくことが好ましい。溶剤に溶解させた油脂を冷却し、保持する温度(冷却温度)については、有機溶剤の種類によって異なるが、アセトンを用いた場合は0〜30℃とすることが好ましく、ヘキサンを用いた場合は−10℃〜20℃とすることが好ましい。
尚、冷却温度で保持する時間(冷却時間)については、高融点画分を十分に析出させる観点から、0.1時間〜100時間とすることが好ましく、0.5〜50時間とすることがより好ましい。
更に冷却速度は低融点画分、中融点画分の抱き込みを防ぎながら、高融点画分を効率よく析出させる観点から、20℃/時間以下とすることが好ましく、工業的生産性の点から0.1〜15℃/時間であることが好ましい。
尚、冷却操作は、ジャケット冷却又は熱交換器等により行うことができる。冷却操作は、静置していても、撹拌しながら冷却してもよいが、析出した結晶の分散を良好に保ち、系全体を均一に冷却する点から、撹拌下で行うことが好ましい。尚、シード剤の添加の有無は適宜選択され、添加する場合は任意のタイミングで加えることが出来る。分別については常法により、冷却により生じた高融点画分の結晶のみを濾別した後、加熱等により溶剤を除去することで、低融点部、中融点部を得る。
次に晶析により分別を行う場合について述べる。
晶析とは、融解状態の油脂を冷却結晶化して、結晶部を析出させ、これを結晶部と液状部に分離することを指す。
尚、冷却結晶化する方法は特に限定されるものではなく、例えば、(1)攪拌しながら冷却結晶化する方法、(2)静置下で冷却結晶化する方法、(3)攪拌しながら冷却結晶化した後、さらに静置下で冷却結晶化する方法、(4)静置下で冷却結晶化した後、機械的攪拌により流動化する方法を挙げることができるが、結晶部と液状部の分離が容易な結晶化スラリーを得る点において、(1)、(3)、(4)のいずれかの方法を採ることが好ましく、より好ましくは(1)の方法を選択する。
結晶化温度は、結晶化スラリー中の結晶部の割合、即ち、結晶化温度での上記エステル交換油脂のSFC(固体脂含量)が、次の範囲となる温度で行うことが好ましい。
本発明における晶析においては、上記の冷却結晶化により得られる結晶化スラリー中の結晶部の割合、即ち、結晶化温度でのSFC(固体脂含量)を10〜70%とすることが好ましく、30〜60%とすることが好ましく、35〜55%とすることが最も好ましい。
固体脂含量(SFC)を上記範囲内とすることで、本発明のチョコレート改良材として有用な油脂成分を選択的に分離する際の効率を一層向上させることができる。
冷却温度や時間については、エステル交換油脂のSFCが上記範囲となるような条件であれば特に限定されないが、エステル交換油脂が完全溶解した状態から、30分〜30時間かけて、25〜60℃、好ましくは30〜50℃まで冷却し、該温度で30分〜80時間、好ましくは1〜70時間保持することにより、好ましく上記範囲のSFCを満たすことが出来る。
加えて、本発明の晶析においては、完全溶解されたエステル交換油脂が、上記範囲のSFCとなるまで冷却される際には、急冷でもよく、徐冷でもよく、又はこれらを組合せて、上記範囲のSFCに調整してもよいが、得られた結晶化スラリーの結晶部と液状部の分離を容易にし、かつ得られる液状部の収率を向上させるために、エステル交換油脂の結晶が析出する温度帯以下においては徐冷することが好ましい。
尚、本発明においてエステル交換油脂を急冷する場合、その冷却速度は5℃/時間以上であることが好ましく、5〜20℃/時間であることがより好ましく、徐冷する場合においては、その冷却速度は0.3〜3.5℃/時間であることが好ましく、0.5〜3.0℃/時間であることがより好ましい。
ここで、エステル交換油脂の結晶が析出する温度帯以下においては、上記範囲の好適なSFCが得られる温度まで冷却する過程の中で、1回又は2回以上、冷却により析出した結晶の熟成工程を経ることが、収率の向上と、好ましい口溶けのソフトチョコレートを得る観点から好ましい。
本発明における結晶の熟成工程とは、結晶をより均一な物にすると同時に更に結晶化を進めて、結晶部と液状部を濾別しやすい結晶状態とし、結果として収率を向上させる操作を指す。
具体的には25〜60℃、好ましくは30〜50℃の任意の温度で、定温の状態で、30分〜80時間保持することが挙げられる。尚、熟成工程の回数の上限は特に制限はないが、通常は5回、好ましくは4回である。
晶析を行うエステル交換油脂の組成に応じて、晶析条件は適宜調整されるが、好ましい晶析条件として、例えば完全溶解の状態から44〜50℃まで1〜2hで到達するよう急冷した後、25〜43℃、より好ましくは32〜43℃で結晶化スラリーを得るまでの間に、任意の温度で1回又は2回以上の熟成工程を経る晶析条件が好ましい。尚、各熟成工程間の温度移行は徐冷により行われることが好ましい。
結晶部と液状部とを分離する方法としては自然濾過、吸引濾過、圧搾濾過、遠心分離、及びこれらを組合せて用いることが出来るが、分離操作を簡便に、且つ効率的に行うために、フィルタープレスやベルトプレスなどを用いた圧搾濾過を選択することが好ましい。エステル交換油脂の結晶化時に、結晶化温度での固体脂含量が高く、高粘度の結晶化スラリーであったり、塊状に見える場合等においては、圧搾濾過時に圧力によりスラリー化するため、特に圧搾濾過が適している。
圧搾濾過によって分別を行なう場合の好ましい圧力は、0.2MPa以上、さらに好ましくは0.5〜5MPaであることが好ましい。尚、圧搾時の圧力は圧搾初期から圧搾終期にかけて徐々に上昇させることが好ましく、その圧力の上昇速度は1MPa/分以下、好ましくは0.5MPa/分以下、さらに好ましくは0.1MPa/分以下である。加圧速度が1MPa/分より大きいと、得られるエステル交換油脂の低融点部、又は中融点部の収率が低下する恐れがある。
上記のように溶剤分別、又は晶析を行い、本発明のチョコレート改良材に好ましく用いることの出来るランダムエステル交換油が得られる。
尚、本発明のチョコレート改良材に含有される油脂は、上記のようにして得られたエステル交換油脂の低融点部、又は中融点部を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、85質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。尚、上限は100質量%である。本発明においては、上述の油脂を、そのまま本発明のチョコレート改良材として用いることが可能である。
尚、本発明のチョコレート改良材が、上記のエステル交換油脂の低融点部、または中融点部を含有する場合に、その他の油脂を、チョコレート改良材中に混合し含有させることにより、本発明のチョコレート改良材を用いて得られるソフトチョコレートの噛みだしの硬さを調整することも可能である。
その他油脂としては、好ましくはパーム分別中融点部(パームミッドフラクション)やシア分別高融点部(シアステアリン)を本発明のチョコレート改良材中に含有させることが、本発明のチョコレート改良材を用いて得られたソフトチョコレートの、口溶け性や口残り性を損ねることなく、噛みだしを調整することができるため、好ましい。
尚、本発明のチョコレート改良材が上記のエステル交換油脂の低融点部、または中融点部を含有する場合の、これらのその他の油脂の含有量は好ましくは0〜30質量%である。
チョコレート改良材中の油脂分の量は、本発明の効果を十分に得る観点から、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。尚、チョコレート改良材中における油脂分の量の上限は100質量%である。
本発明のチョコレート改良材は、上述の油脂の他、本発明のチョコレート改良材としての機能を損ねない範囲、又は本発明のチョコレート改良材を含有するチョコレートの風味・食感を損ねない範囲で任意の副成分を含有することが可能である。
本発明のチョコレート改良材が含有することができる副成分として、例えば、乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を挙げることができる。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチンが挙げられる。
本発明では、グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンのうちの1種又は2種以上を使用することが好ましい。上記乳化剤を使用する場合、その添加量はチョコレート改良材100質量部中0.01〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.03〜3質量部であることがより好ましい。
酸化防止剤としては、風味を損ねるものでなければ、限定されるものではないが、トコフェロール又は茶抽出物を使用することが好ましい。
ここまで説明した本発明のチョコレート改良材は、本来の用途であるチョコレート用をはじめ、チョコレートを利用した、バタークリーム、シュガークリーム等の油相を連続相とするクリーム類、更には、サンドクリーム、マーガリン、ショートニング、アイスクリーム、ホイップクリーム等の原料油脂用として広く使用することができるが、中でも、後述するテンパリング型チョコレート、特にテンパリング型のソフトチョコレート用として使用することが特に好ましい。
次に本発明のチョコレートについて述べる。
本発明のチョコレートとは、上記のチョコレート改良材を、チョコレートの原料の一として、含有するものである。
本発明のチョコレートは、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート、準チョコレートだけでなく、カカオマス、ココアバター、ココア等を利用した生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品も含むものであり、カカオマスやココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、油脂類、糖類、乳化剤、香料、色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、常法により、ロール掛け、コンチング処理して得たものをいう。
本発明では、テンパリング型チョコレートであっても、ノーテンパリング型チョコレートであっても、問題なくチョコレート改良材を使用することが出来る。しかし、カカオ脂を多く含有させカカオ風味の強いチョコレートを得る観点、及び、本発明の食感の改良効果がより顕著に得られる点から、テンパリング型チョコレートに本発明品を用いることが好ましい。
尚、テンパリングとは、チョコレートの製造時に一定の温度条件を満たしながら冷却操作を行うことであり、トリグリセリド分子の配列を整え、適当な結晶型を有する油脂結晶を生じさせる操作である。テンパリング操作を行うことで、口溶けが良好なチョコレートとなりやすい。テンパリング型チョコレートとは、チョコレートの製造の過程で、このテンパリング操作を行ったチョコレートであることを意味する。
また、本発明のチョコレートは、上記チョコレートの中でもソフトチョコレートであることが好ましい。ソフトチョコレートとは、一般的なチョコレートが有する良好なスナップ性を有さず、噛みだしから軟らかいチョコレートをいう。ソフトチョコレートに関する明確な定義はないものの、本発明においては該ソフトチョコレートとして、チョコレート中の油分のSFCが20℃で40〜70%、25℃で10〜60%、30℃で0〜30%であるチョコレートをソフトチョコレートとし、より好ましくは20℃ で45〜55% 、25℃で15〜40%、30℃で0〜11%とする。
したがって、本発明品はテンパリング型のソフトチョコレートに用いられるのが最も好ましい。
本発明のチョコレートにおけるチョコレート改良材の含有量は、チョコレートに含まれる油脂中、チョコレート改良材の油分が、好ましくは60質量%以下、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。尚、本発明のチョコレートにおけるチョコレート改良材の含有量の下限は、チョコレートに含まれる油脂中、チョコレート改良材の油分が5質量%であることが好ましい。
チョコレート改良材の含有量が60質量%以下とする場合、チョコレートのカカオ風味が十分になりやすい他、ソフトチョコレートに用いた場合、噛みだしが過度に軟らかくなることを防止しやすく、ソフトチョコレートとして好ましい風味・食感としやすい。また、10質量%以上とする場合、本発明品の効果が得やすい上、ソフトチョコレートに用いた場合、噛みだしが硬くなりにくく、また良好な口溶けが得やすい。
また、本発明のチョコレートの油相中のカカオ脂の含有量は、チョコレートに含まれる油脂中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは70〜90質量%である。
尚、本発明においては、チョコレートの油相中のカカオ脂の一部を、任意のテンパリング型ハードバターで置換することが可能である。置換の比率については任意の比率で置換することが出来るが、良好なチョコレートの風味を得るため、油相中、カカオ脂とテンパリング型ハードバターの質量比が1:0.01〜2とすることが好ましく、1:0.05〜1とすることがより好ましい。チョコレートの油相中のカカオ脂の一部をテンパリング型ハードバターで置き換える場合には、カカオ脂とテンパリング型ハードバターの合計量が、上記のチョコレートの油相中のカカオ脂の好ましい含有量の範囲内であることが好ましい。
また、本発明のチョコレートが乳製品由来の乳脂を含有する場合には、油相中20質量%以下、好ましくは15質量%以下とすることが室温下での保型性と口溶けとの両立を図る観点から好ましい。
以下、実施例を基に本発明を更に詳述する。尚、本発明は実施例に限定されるものではない。
<検討1>
(製造例1)
表1の配合に則って、加温により液状となった油脂を4つ口フラスコ内で混合し、油脂配合物を得た。尚、この油脂配合物のSt/Pは1.0であった。
この後、液温を90℃に調温し、油脂配合物100質量部に対してナトリウムメトキシド0.2質量%添加し、真空下で1時間加熱しランダムエステル交換反応を行った。この後、クエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和し、更に白土を加えて漂白し、エステル交換された油脂配合物である、油脂E1(単に、E1と記載する場合がある。後述するE2〜E7も同様。)を得た。得られたE1のSFC-20/SFC-30は1.2であった。
(製造例2)
製造例1と同様に、表1の配合に則って、油脂配合物を調製した。尚、この油脂配合物のSt/Pは6.6であった。この後、製造例1と同様にランダムエステル交換反応を行い、E2を得た。得られたE2のSFC-20/SFC-30は1.1であった。
(製造例3)
製造例1と同様に、表1の配合に則って、油脂配合物を調製した。尚、この油脂配合物のSt/Pは0.1であった。この後、製造例1と同様にランダムエステル交換反応を行い、E3を得た。得られたE3のSFC-20/SFC-30は1.3であった。
(製造例4)
製造例1と同様に、表1の配合に則って、油脂配合物を調製した。尚、この油脂配合物のSt/Pは0.6であった。この後、製造例1と同様にランダムエステル交換反応を行い、E4を得た。得られたE4のSFC-20/SFC-30は1.2であった。
(製造例5)
製造例1と同様に、表1の配合に則って、油脂配合物を調製した。尚、この油脂配合物のSt/Pは0.6であった。この後、製造例1と同様にランダムエステル交換反応を行い、E5を得た。得られたE5のSFC-20/SFC-30は1.1であった。
(製造例6)
製造例1と同様に、表1の配合に則って、油脂配合物を調製した。尚、この油脂配合物のSt/Pは1.25であった。この後、製造例1と同様にランダムエステル交換反応を行い、E6を得た。得られたE6のSFC-20/SFC-30は1.2であった。
(製造例7)
製造例1と同様に、表1の配合に則って、油脂配合物を調製した。尚、この油脂配合物のSt/Pは0.49であった。この後、製造例1と同様にランダムエステル交換反応を行い、E7を得た。得られたE7のSFC-20/SFC-30は1.4であった。
Figure 2019037224
次に、製造例1〜7で得られた油脂E1〜E7を、次の実施例1〜5、比較例1〜2に述べるように分別処理を施して、チョコレート改良材EF1〜EF7を得た。
(実施例1)
実施例1では、1段階で晶析を行った。製造例1で得られた油脂E1を加熱し完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入した油脂E1を、油脂温度が46℃となるまで7.0℃/時間で急冷し、油脂温度が46℃に達温してから該温度での3時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が35℃となるまで2.2℃/時間で徐冷し、油脂温度が35℃に達温してから該温度での10時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。油脂E1を晶析槽に投入してから上記の10時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E1を50rpmで撹拌しながら行った。得られた結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF1(以下、単にEF1と記載する場合がある。後述するEF2〜EF7も同様)とした。
(実施例2)
実施例2では、2段階で晶析を行った。製造例2で得られた油脂E2を加熱し完全に溶解した状態(70℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入した油脂E2を、油脂温度が46℃となるまで12.0℃/時間で急冷し、油脂温度が46℃に達温してから該温度での2.5時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が42.0℃となるまで2.0℃/時間で徐冷し、油脂温度が42℃に達温してから該温度での3時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。油脂E2を晶析槽に投入してから上記の3時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E2を50rpmで撹拌しながら行った。
この結晶化スラリーを一旦濾過分別し、高融点部を除去し、得られた低融点部を、更に2段目の晶析に供した。1段目の晶析で得られた低融点部を完全に溶解した状態(60℃)で、再度ジャケット付ガラス製晶析槽に投入し、油脂温度が35℃になるまで12.5℃/時間で急冷し、油脂温度が35℃に達温してから該温度での29時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。低融点部を晶析槽に投入してから29時間の熟成工程を終えるまでの工程は、低融点部を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF2とした。
(実施例3)
実施例3では、溶剤分別による分別を行った。製造例3で得られた油脂E3 100質量部に対して、アセトンを400質量部加えた溶液を45℃に調温し、液温が20℃になるまで12.5℃/時間で急冷し、液温が20℃に達温してから該温度での2時間の熟成工程を経て、生じた結晶部分を濾別し、溶剤を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものをチョコレート改良材EF3とした。尚、溶剤分別はジャケット付ガラス製晶析槽で行い、液温が40℃達温した際にシード剤を溶剤−油脂溶液100質量部に対して4.2質量部添加した。
(実施例4)
実施例4では、1段階で晶析を行った。製造例4で得られた油脂E4を加熱し完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入した油脂E4を、油脂温度が46℃となるまで7.0℃/時間で急冷し、油脂温度が46℃に達温してから該温度での5時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が35.0℃となるまで2.2℃/時間で徐冷し、油脂温度が35℃に達温してから該温度での11時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。油脂E4を晶析槽に投入してから上記の11時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E4を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF4とした。
(実施例5)
実施例5では、1段階で晶析を行った。製造例4で得られた油脂E4を加熱し完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入した油脂E4を、油脂温度が44℃となるまで8.0℃/時間で急冷し、油脂温度が44℃に達温してから該温度での5時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が33℃となるまで2.2℃/時間で徐冷し、油脂温度が33℃に達温してから該温度での18時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。油脂E4を晶析槽に投入してから上記の18時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E4を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF4-2とした。
(実施例6)
実施例6では、1段階で晶析を行った。製造例4で得られた油脂E4を加熱し完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入した油脂E4を、油脂温度が44℃となるまで8.0℃/時間で急冷し、油脂温度が44℃に達温してから該温度での5時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が25℃となるまで2.2℃/時間で徐冷し、油脂温度が25℃に達温してから該温度での31時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。油脂E4を晶析槽に投入してから上記の31時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E4を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF4-3とした。
(比較例1)
製造例5で得られた油脂E5を加熱し完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入した油脂E5を、油脂温度が45℃となるまで8.3℃/時間で急冷し、油脂温度が45℃で3時間の熟成工程を経て、39.5℃で結晶化スラリーを得た。油脂E5を晶析槽に投入してから上記の3時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E5を40rpmで撹拌しながら行った。
尚、45℃から39.5℃への温度移行は1℃/時間での徐冷により行った。
この結晶化スラリーを濾過分別し、高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF5とした。
(実施例7)
比較例1で得られたチョコレート改良材EF5を加熱して完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入したEF5を、油脂温度が35℃となるまで、12.5℃/時間で急冷し、油脂温度が35℃に達温してから、当該温度での30時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。EF5を晶析槽に投入してから上記の30時間の熟成工程を終了するまでの工程は、EF5を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものをチョコレート改良材EF5-2として得た。
(実施例8)
比較例1で得られたチョコレート改良材EF5を加熱して完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入したEF5を、油脂温度が33℃となるまで、13.5℃/時間で急冷し、油脂温度が33℃に達温してから、当該温度での39時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。EF5を晶析槽に投入してから上記の39時間の熟成工程を終了するまでの工程は、EF5を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものをチョコレート改良材EF5-3として得た。
(比較例2)
製造例6で得られたE6を加熱し完全に溶解した状態で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入したE6を、油脂温度が48℃となるまで15℃/時間で急冷し、油脂温度が48℃、44℃、42℃の各温度でそれぞれ4時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。E6を晶析槽に投入してから上記の48℃、44℃、42℃の各温度での熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E6を50rpmで撹拌しながら行った。尚、48℃から44℃への温度移行は2℃/時間での徐冷により行い、44℃から42℃への温度移行は1℃/時間での徐冷により行った。
この結晶化スラリーを濾過分別し、高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF6として得た。
(実施例9)
製造例7で得られた油脂E7を加熱して完全に溶解した状態(60℃)で、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入した。投入したE7を、油脂温度が44℃となるまで、8℃/時間で急冷し、油脂温度が44℃に達温してから、当該温度で3時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が35.0℃となるまで1.8℃/時間で徐冷し、油脂温度が35℃に達温してから該温度での34.5時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。
油脂E7を晶析槽に投入してから上記の34.5時間の熟成工程を終了するまでの工程は、油脂E7を50rpmで撹拌しながら行った。この結晶化スラリーを濾過分別、及び圧搾に供し、得られた低融点部を常法により精製したものを、チョコレート改良材EF7とした。
尚、得られたチョコレート改良材EF1〜EF7の「S2Uの含有量」、「SUS/S2U」、「S2U中のPSOの含有量」、「S3の含有量」、「SU2の含有量」、「U3の含有量」、「SFC-20/SFC-30」、「飽和脂肪酸中におけるステアリン酸とパルミチン酸の含有量の和」、「St/P」、「上昇融点」について上記の方法にて測定した結果を<表2>に詳述した。尚、比較例3として菜種油についての値も併せて同表に示す。
Figure 2019037224
(実施例10〜18、比較例4〜6)
実施例1〜9、比較例1〜2で得られたチョコレート改良材EF1〜EF7並びに比較例3として菜種油を用いて、表3の配合に則って、下記の通りソフトチョコレートA〜Kを調製した。各実施例10〜18及び比較例4〜6のソフトチョコレートは、チョコレート中の油分のSFCが20℃で40〜70%、25℃で10〜60%、30℃で0〜30%の範囲内のものであり、そのうち各実施例10〜18及び比較例4〜5のソフトチョコレートは、チョコレート中の油分のSFCが20℃ で45〜55% 、25℃で15〜40%、30℃で0〜11%の範囲を満たすものであった。
得られたソフトチョコレートA〜Kについて、下述する官能評価基準に則って、コントロールと比較し評価を行った。尚、コントロール品は、チョコレート改良材をテンパリング型ハードバターで置換したものとした。
<ソフトチョコレートの製造方法>
カカオマス(油分含有量55質量%)、ココアバター、テンパリング型ハードバター((株)ADEKA製「ジェミニ」、トリグリセリド組成中のS2U含有量60.9質量%、SUS/S2Uは0.88、SFC-20/SFC-30は14.4、構成脂肪酸の飽和脂肪酸中のステアリン酸とパルミチン酸の和は96.4質量%、St/Pが0.11)、チョコレート改良材 EF1〜EF7、若しくは液状油、全脂粉乳(油分含有量25質量%)、粉糖、レシチンをホバートミキサーに投入し、ビーターを用いて中速で3分間混合し、さらに、ロール掛け、コンチングして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、15℃で冷却・固化した。さらに、これを離型して、18℃で1週間のエージングをとり、ソフトチョコレートを得た。
<官能評価>
「噛みだし」「口溶け」については、10人の専門パネラーにより下記評価基準に従って官能評価をさせ、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして<表4>及び<表5>に示した。評価は、18℃のソフトチョコレートをパネラーに喫食させて行った。評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△ 、0〜10点:×
<評価基準>
・噛みだし
5 点 適切な硬さを有しており、極めて良好な噛みだしの軟らかさを有している。
3 点 良好な噛みだしの軟らかさを有している。
1 点 割れることはないが噛みだしが硬い。若しくは軟らかく、ややべとつく。
0 点 噛みだしが硬く割れてしまう。若しくは過度に軟らかく、べとつく。
・口溶け
5 点 きわめて良好な口溶けである。
3 点 良好である。
1 点 やや不良である。
0 点 不良である。
・カカオ風味
5点 カカオ風味が強く感じられる。
3点 カカオ風味が感じられる。
1点 カカオ風味が弱く感じられる。
0点 カカオ風味が感じられない。
Figure 2019037224
Figure 2019037224
Figure 2019037224
実施例1〜9で得られたチョコレート改良材を含有する実施例10〜18のソフトチョコレートでは、噛みだし、口溶け、カカオ風味のいずれも良好であるという結果が得られた。特に、実施例10、13、14、15、16、17及び18のソフトチョコレートA、D、E、F、H、I及びKでは、噛みだしや口溶けが良好であり、ミドルからラストにかけて、チョコレートの濃厚な風味を感じることができ、非常に好ましいソフトチョコレートであった。この中でも、ソフトチョコレートE、Fでは噛みだしの軟らかさがより優れ、また、口残り性も更に良好であった。
比較的パルミチン酸よりもステアリン酸が多く含有されるチョコレート改良材EF2を用いた実施例11のソフトチョコレートB、及び、比較的ステアリン酸よりもパルミチン酸が多く含有されるチョコレート改良材EF3を用いた実施例12のソフトチョコレートCでは、カカオ風味が実施例10、13、14、15、16、17及び18のソフトチョコレートA、D、E、F、H、I及びKと比較して強くは得られなかった。このことから、ソフトチョコレートにおいてチョコレート改良材の構成脂肪酸中のステアリン酸とパルミチン酸の比率を調整することによって、得られるソフトチョコレートのカカオ風味の強度を制御することが出来る旨が示唆された。
比較例1、比較例2で得られたチョコレート改良材を含有する比較例4、比較例5のソフトチョコレートG、Jでは、口溶けが不良であり、フレーバーリリースが十分でなく、得られるカカオ風味も不十分なものであった。これはSFC-20/SFC-30の値が低く、喫食時の温度変化に対する物性の変化が緩やかであったためと考えられる。
液状油を含有させた、比較例6のソフトチョコレートLについて述べる。比較例3である液状油を含有させた当該ソフトチョコレートLでは、テンパリングを取りにくく、また、型からの剥がれ(以下、単に離型性と記述する場合がある)が非常に悪く、製造面で問題があった。また、ソフトチョコレートとしては過度に軟らかな物性であるため、ソフトチョコレートの特徴である軟らかな噛みだしを感じることが出来ず、べとついた食感であった。加えて、ソフトチョコレートに求められる、口中でスッと溶ける口溶けについても、過度に軟らかな物性であるために、ねばりを感じる食感となり、好ましい口溶けを得ることはできなかった。
<検討2>
(実施例5−1、5−2、6−1、6−2、8−1、8−2、9−1及び9−2)
上記実施例5、6、8及び9で得られたランダムエステル交換油脂の低融点部をベース油脂とし、このベース油脂と、パーム中融点部(パームミッドフラクション、融点33℃)とを用いて、チョコレート改良材を調製し、ソフトチョコレートの噛みだしの硬さを調整することを検討した。
具体的には、実施例5、6、8及び9で得られたランダムエステル交換油脂の低融点部と、パーム中融点部とを、それぞれ融解させた状態で、前者対後者で90:10、80:20の質量比で混合したものを、チョコレート改良材として用いたソフトチョコレートを製造し、官能評価により噛みだしと口溶けについて評価した。
尚、ソフトチョコレートの配合・製法は、検討1と同様である。
尚、実施例5、6、8及び9で得られたランダムエステル交換油脂の低融点部と、パーム中融点部とを、それぞれ融解させた状態で、前者対後者で90:10、80:20の質量比で混合したものの詳細については、表6に示した。
また、実施例5、6、8及び9で得られたランダムエステル交換油脂の低融点部については、それぞれ表6中に、実施例5品、実施例6品、実施例8品及び実施例9品としてベース油脂の項に示した。
尚、チョコレート改良材EF4-2、EF4-3、EF5-3及びEF-7(実施例5、6、8及び9)を用いたソフトチョコレートをコントロールとして、評価を行った。
Figure 2019037224
検討2の結果、実施例5−1、5−2、6−1、6−2、8−1、8−2、9−1及び9−2のいずれを用いて製造したソフトチョコレートも、カカオ風味が強く感じられ、良好な口溶けと噛みだしを有するものであった。
また実施例5品、実施例6品、実施例8品及び実施例9品のいずれのベース油脂を用いた場合であっても、チョコレート改良材中のパーム中融点部の含有量を増やすにつれて、得られるソフトチョコレートの噛みだしが、コントロールと比較して、少しずつ硬くなることが確認された。また、このことから、ソフトチョコレートとしての噛みだしを硬く調整することが可能であることが知見された。
各コントロールの噛みだしの硬さを比較すると、EF5-3(実施例8)使用品が検討した4品の内で最も硬く、次いでEF-7(実施例9)使用品、EF4-2(実施例5)使用品、EF4-3(実施例6)使用品の順であった。
また、異なるベース油脂を用いたチョコレート改良材中にパーム中融点部を同量含むもの同士を比較した場合においても、同様の傾向が官能評価により確認された。これはチョコレート改良材中のS2Uの含有量や、SFCに起因するものと推定される。
また、口溶け性はいずれのソフトチョコレートも、コントロールと同様に良好なものであり、チョコレート改良材中にパーム中融点部を含有させ、噛みだしを硬く調整した場合であっても、口溶け性に支障をきたさないことが確認された。
このように、チョコレート改良材中にパーム中融点部を加え、噛みだしを硬めに調整することにより、噛みだしの硬めの食感と、口中で溶けるスッと溶ける口溶けとの、食感の差が非常に好ましいソフトチョコレートが得られた。この食感の差がとりわけ大きく得られたのは、実施例5品とパーム中融点部が80:20の質量比で混合された実施例5−2のチョコレート改良材を用いたソフトチョコレートであり、口残り性も良好であった。

Claims (5)

  1. 下記条件(1)〜(4)を満たす油脂を含有する、チョコレート改良材。
    (1)S2Uの含有量が50〜70質量%。
    (2)S2U中に占めるSUSの比率(SUS/S2U)が0.25〜0.60。
    (3)20℃におけるSFC(SFC-20)と、30℃におけるSFC(SFC-30)との比率(SFC-20/SFC-30)が、3以上。
    (4)構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸が、実質的にステアリン酸とパルミチン酸からなり、且つステアリン酸とパルミチン酸の質量比(St/P)が0.05〜7.0。
    (尚、上記Sは飽和脂肪酸、上記Uは不飽和脂肪酸であり、上記S2Uはジ飽和モノ不飽和トリグリセリド、上記SUSは1,3-飽和-2-不飽和トリグリセリド、上記Stは構成脂肪酸におけるステアリン酸の質量比率、上記Pは構成脂肪酸におけるパルミチン酸の質量比率をそれぞれ意味する)
  2. 更に上記油脂が下記条件(5)を満たす、請求項1に記載のチョコレート改良材。
    (5)上昇融点が、25〜35℃である。
  3. テンパリング型チョコレート用である、請求項1又は2に記載のチョコレート改良材。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のチョコレート改良材を含有するチョコレート。
  5. ソフトチョコレートである、請求項4に記載のチョコレート。
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