JPWO2007049730A1 - 細胞質雑種Lactuca属植物およびその作出方法 - Google Patents

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Abstract

本発明はレタスのF1品種作成に有用な細胞質雄性不稔レタス及びその作出方法を提供することを目的とする。本発明は、Helianthus属植物の細胞質に由来する遺伝子を細胞質内に有する、好ましくは細胞質雄性不稔性である細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部に関する。本発明はまた、この細胞質雑種Lactuca属植物の作出方法に関する。

Description

細胞質雑種Lactuca属植物およびその作出方法に関する。
従来から植物品種には、固定品種と雑種第一代(以下、F1と記す)品種があるが、主要作物においてはF1品種が普及している。F1品種は、雑種強勢(ヘテロシス)によって、生育が旺盛になることにより、生育速度が速く、収量性が高まるなど大きな利点がある。加えて、病害虫への耐性や、耐寒・耐暑性などの環境適応性の向上も期待できる。またF1品種の遺伝子型はヘテロ性でありながら同一の遺伝子型であるため、表現型は極めて高い均一性を示すため生産物の市場性が高まる。さらに優性遺伝子に支配されている有用形質を集積しやすく、迅速な育種が可能となる。また、次世代以降は形質の分離が起こることで品質の均一性を保てないため、F1種子を毎年生産する必要があり、品種育成者の権利が保護されることも大きな利点である。
以上のような理由から、F1品種は、主要作物において栽培品種の主流を占めるようになった。しかし、F1種子を商業的に大量生産するためには、コストをかけずに容易に除雄する方法を必要とする。果菜類のトマト、メロン、キュウリ、カボチャ、花卉類のペチュニア、トルコギキョウなどのように、1回の交配により多くの種子が得られる場合には、人手による除雄、交配を行うことにより、経済的なF1種子の生産が可能である。しかし、花の構造上、除雄を効率的に行うことが極めて困難な作物や、1回の交配により得られる種子が少ないため、人手による交配では大量に交雑種子を得ることが難しく、経済的にF1種子の生産が行えない作物も多い。このような作物では、雄性不稔性の遺伝的特性を利用し、雄性不稔植物を種子親とする採種によって、多大な労力とコストを要する除雄の作業を省力化することができるため、雄性不稔性を利用した採種方法の開発は非常に重要である。
雄性不稔性は、多くの植物種で発見されている。また、細胞融合技術を使用した雄性不稔植物の作出方法が多くの有用作物で確立されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19)。雄性不稔性の機構は多種多様であるが、核遺伝子型雄性不稔性(Genetic Male Sterility)と細胞質雄性不稔性(Cytoplasmic Male Sterility)の2つに大別できる。核遺伝子型雄性不稔性は、核内遺伝子によって雄性不稔性が引き起こされる。一方、細胞質雄性不稔性は、細胞質遺伝要因と核遺伝子の相互作用により雄性不稔を発現する。
レタスは世界各国で生産され、市場規模の非常に大きな野菜であり、F1品種化が強く望まれている。また、非特許文献1,非特許文献2には、レタスにおける雑種強勢の発現について記載されている。核遺伝子型雄性不稔レタスを利用してF1植物を作出し、従来の固定種と比較することで雑種強勢の発現を調査しており、その結果、F1植物が顕著な雑種強勢を示すことが報告されている。そこで、レタスの雄性不稔性を利用したF1種子の効率的な採種技術の確立が強く要望されてきたが、未だ確立されていないのが現状である。例えば、非特許文献3は、レタスの核遺伝子型雄性不稔性の遺伝様式を明らかにしたものであるが、雄性不稔性が不安定であり、雌性にも障害が現れるため(非特許文献7)、実用的な利用には課題が残っていた。同じ著者によって非特許文献4と非特許文献5に同様の報告がなされている。また実際、核遺伝子型雄性不稔性を利用した、F1品種の商品化がなされているが、雄性不稔性が不安定であり、従来の固定種に取って代わるまでには至っていない(非特許文献6)。
さらに近年になって、新しいタイプのレタスの核遺伝子型雄性不稔系統が見出されている。例えば、特許文献1、非特許文献1に記載されている系統‘MS1024’は、病害抵抗性選抜後代の中から見つけ出されたものであるが、花粉粒をまったく生じさせない雄性不稔性である点や、採種量が高い点で非特許文献3などに記載された核遺伝子型雄性不稔植物よりも優れている。
しかしながら、核遺伝子型雄性不稔植物を商業的なF1種子の生産に利用するには、採種コストの点で問題を生じる。これまでに発見されたレタスの核遺伝子型雄性不稔性は、劣性遺伝子がホモ接合(homozygosis)していることによる雄性不稔性である(非特許文献7)。劣性遺伝子がホモ接合(homozygosis)した雄性不稔植物はそれ自身では自殖できないため、雄性不稔系統を維持・増殖するためには、雄性不稔遺伝子をヘテロ接合(heterozygosis)に持つ個体を交配し、後代から雄性不稔遺伝子をホモ接合にもつ個体を選択しなければならない。交雑後代において可稔植物個体と不稔植物個体は1:1に分離するため、その交雑後代の約50%が雄性不稔植物個体である。そのため、商業的なF1種子の生産のためには、採種圃場において何らかの方法で可稔植物個体を選別し、抜き取る必要がある。特にレタスは花器が小さいため、不稔植物個体と可稔植物個体との判別が容易ではなく、細い花茎に多数の花をつけるため、抜き取り作業がより煩雑となる。
また、開花時期は個体ごとにずれるため、花の外見を基準にして可稔個体の完全な抜き取りを行うことは大変な労力を要するうえ、抜き取りミスによるF1種子の純度の低下により種子の品質が悪化するという問題も生じる。
さらに育種面においても、雄性不稔遺伝子を持つ個体が開花期以外は視覚的に区別できないため、育種効率が悪く、長い育種年限を要する。可稔性植物と不稔性植物との判別を容易にするには、種子または生育初期に形態と連鎖した遺伝子を見出し利用するか、雄性不稔遺伝子に連鎖するDNAマーカーを開発して雄性不稔植物のみを選択するような工夫が必要である。現在レタスにおいてその研究がなされているが、その技術は未だ確立されていない。
上述のようにレタスの核遺伝子型雄性不稔性の遺伝様式が明らかになってから、長い年月が経過しているにもかかわらず、核遺伝子型雄性不稔レタスを利用したF1品種の開発には多くの課題が残されており、市場性の高いF1品種の開発は未だ困難である。
一方、細胞質雄性不稔性を利用したF1種子の生産は、ヒマワリ、テンサイ、ジャガイモ、イネ、コムギ、ニンジン、タマネギ、ネギなどでは古くから実用化され、商業的な生産システムが確立している。また、アブラナ科植物のキャベツ、ブロッコリー、ダイコン、ハクサイなどでは、自家不和合性を利用したF1品種の採種が広く用いられていたが、近年になり、より高品質な種子が求められるようになったことから、細胞質雄性不稔性を利用したF1種子の生産が拡大している。
一般に、安定的な雄性不稔性を持つ細胞質雄性不稔植物を作出できれば、連続戻し交雑を行うことにより、その細胞質雄性不稔性を多くの優良系統に導入し、F1品種作成のための種子親を育成することが可能となる。細胞質雄性不稔性は、細胞質遺伝するため、後代植物はすべて雄性不稔性を示す。細胞質雄性不稔系統は、当該系統と核ゲノムが同一であって細胞質が正常である維持系統との交配により、維持・増殖が容易である。上述の核遺伝子型雄性不稔性を利用する場合のように、採種圃場において種子親の可稔個体を抜き取る作業が必要ないため効率的であり、抜き取りミスによるF1種子の純度の低下の問題もなくなる。
以上のような背景から、細胞質雄性不稔植物を利用したF1種子の採種方法は、核遺伝子型雄性不稔性を利用した場合と比較して経済的・商業的実用性が極めて高いと言える。
上記のように高い有用性が期待されるにもかかわらず、レタスにおいては、細胞質雄性不稔レタスを用いたF1種子の採種法は開発されていない。これは、レタスについて、レタスの細胞質に導入されて細胞質雄性不稔性を引き起こすことが可能な細胞質を有する、交雑可能な近縁の素材が同種または同属内に存在しないからである。
一方、キク科のヒマワリ属のヒマワリ栽培種(Helianthus annuus L.)においては、種間交雑により、数多くの細胞質雄性不稔植物が見出されており、F1品種が実用化されている。これらのことは非特許文献9〜13等に報告されている。キク科野菜の細胞質雄性不稔植物の作出例としては、ヒマワリとチコリの細胞融合により、細胞質雄性不稔チコリが作出できることが知られている。このような技術は例えば、特許文献2、特許文献3、非特許文献14から非特許文献17に開示されている。
非特許文献14は、細胞質雄性不稔チコリ作出の最初の報告であり、ヒマワリの細胞質を細胞融合技術によって、チコリに導入することにより細胞質雄性不稔チコリが作出できることを明らかにした。非特許文献14はまた、作出された細胞質雄性不稔チコリにおけるミトコンドリアゲノムが、チコリのミトコンドリアゲノムとヒマワリのミトコンドリアゲノムとが組み換えられたものであることを報告している。さらに非特許文献16、非特許文献17では、前記細胞質雄性不稔チコリの後代での細胞質雄性不稔性の発現とミトコンドリアDNA構造の分析結果を報告している。
特許文献2にはキク科植物の細胞質雄性不稔植物及びその作出方法が記載されている。この特許文献2で実際に作成されたことが示されている細胞質雄性不稔植物は、非特許文献14と同じ細胞質雄性不稔チコリのみである。特許文献2には、細胞質雄性不稔レタスについての言及はあるものの、プロトプラストの培養方法と融合処理の方法が現在形の文章で言及されているに過ぎず、実際に細胞質雑種レタスまたは細胞質雄性不稔レタスを作成するための方法及び実験結果は記載されていない。細胞融合技術においては、プロトプラストの単離・融合の工程までは、比較的容易に行うことができる。例えば、動物細胞と植物細胞のプロトプラストをそれぞれ単離し融合させることさえも可能である。しかし、系統学的に遠縁間での融合細胞を培養して分裂させ、さらに植物体を再生させる工程は技術的困難性が非常に高い。これは、融合処理のストレスが融合細胞の分裂を阻害したり、異種の核と細胞質の間での相互の遺伝的不親和性などが技術的困難性を高める原因となるためである。この困難性を克服して植物体を再生するためには、融合細胞の細胞膜を傷めないような融合方法の開発、新しいゲノムの組合せを有する融合細胞においても分裂や植物体の再生が可能となるような培養方法の開発が必要となる。すなわち、融合細胞の培養技術とそれに続く融合細胞からの植物体の再生技術は、細胞融合技術の中核となる技術である。さらに、雄性不稔性を発現させるためには、系統学的に適度な遠縁関係にある異種間のミトコンドリアゲノムの組換えや再編成を生じさせることが必要となる。すなわち、遠縁間の細胞質雑種植物が作出可能となっても、雄性不稔性を発現する植物を作出できるかどうかは予測できないため、実際に細胞質雑種植物を作出し、雄性不稔性を有する個体を選抜する工程が不可欠である。従って、特許文献2には、レタスの細胞質雄性不稔植物作出のために重要となる技術の開示が行なわれていない。これらの理由から、細胞質雄性不稔レタスの作出方法の開発は従来から強く望まれていたにもかかわらず、特許文献2の開示後もレタスの細胞質雄性不稔植物作出の成功に関する報告例は存在しない。
特許文献3ではヒマワリの細胞質雄性不稔性の原因遺伝子とされるorf522を、非対称細胞融合によりチコリ属植物に導入し、細胞質雄性不稔チコリを作出する方法について開示されている。
非特許文献15は新たな研究グループによる細胞質雄性不稔チコリの作出例であり、近年においても実用的な細胞質雄性不稔チコリの作出を目的に研究が続けられている。
以上のように、ヒマワリのミトコンドリアDNAの一部を、細胞融合により導入した細胞質雄性不稔チコリの作出例は数多く報告されている。しかしながら、レタスはチコリと同じキク科に属するにもかかわらず、細胞質雄性不稔レタスの作出例は報告されていない。細胞質雄性不稔ヒマワリを用いた細胞質雄性不稔レタスの作出が困難であるのは、レタスの核ゲノムは、チコリの核ゲノムと比べて、ヒマワリのミトコンドリアゲノムと遺伝的親和性が低いことが原因であると思われる。
また、ヒマワリの細胞質雄性不稔遺伝子をチコリに導入して細胞質雄性不稔チコリを得た後、該チコリとレタスを交雑して細胞質雄性不稔性をレタスに導入する方法も考えられるが、レタスとチコリは属が異なる遠縁関係にあるため、有性的な交雑は困難であり、このような手法によって、細胞質雄性不稔レタスを作出する試みは成功例が知られていない。
以上のように、細胞質雄性不稔レタスの作出の技術的困難性は非常に高く、未だ成功例はない。しかしながら、細胞質雄性不稔レタスを利用したレタスのF1品種化のメリットは大きい。そこで、細胞質雄性不稔レタスの作出が強く望まれていた。
特開2005−110623号公報 欧州特許第0771523号明細書 国際公開WO97/45548号パンフレット 特開昭62−232324号公報 特開昭63−79548号公報 特開平2−303426号公報 特開昭63−36776号公報 特開昭64−20041号公報 特開平1−218530号公報 特開平10−052185号公報 米国特許第5254802号明細書 特開平10−108676号公報 特開平10−108677号公報 特開2001−145497号公報 特開平02−138927号公報 特開平01−206931号公報 国際公開WO99/55143号パンフレット 国際公開WO95/09910号パンフレット 国際公開WO97/09873号パンフレット 特許第3635036号公報 高田勝也,藤野雅丈(1987)レタスのF1種子の採種に関する研究(第1報)雄性不稔系を親としたF1の雑種強勢について,園学学会 昭和62年度春季大会 研究発表要旨208−209 高田勝也,藤野雅丈(1986)レタスの雄性不稔性利用技術の開発(1)F1組み合わせにおける雑種強勢発現について,野菜・茶業試験場盛岡支場研究年報No.1.87−93. Edwrd J.Ryder(1967)A recessive male sterility gene in Lettuce(Lactica sativa L.)Pro.Am.Soc.Hortic.Sci.91,366−368 Ryder,E,J Proceeding of the American society for horticultural Science 1963 Vol.83 585−589 An epistatically controlled pollen sterile in Lettuce(Lactica sativa L) Ryder,E,J Science 1989vol.114(1)129−133 Studies of three new genes,linkage,and epistasis in Lettuce 品種登録出願書類「ファイン」カネコ種苗 第1745号 芹沢 啓明 園芸学会雑誌第73巻 別冊2 p566 レタスの劣性雄性不稔遺伝子 Matsumoto,E Plant cell reports 1991.vol9(10)Interspecific somatic hybridization between lettuce(Lactica sativa)and wild species L.virosa L.H.Rieseberg,C.Van Fossen,D.Arias,and R.L.Carter The journal of heredity1994:85(3)233−238 Cytoplasmic male sterility in Sunflower:origin,Inheritance,and Frequency in Natural Populations R.Horn Theor Appl Genet(2002)104:562−570 Molecular diversity of male sterility inducing and male−fertile cytoplasms in the genus Helianthus S.Sukno,J.Ruso Euphytica(1999)106:69−78 Interspecific hybridization between sunflower and wild perennial Herianthus species via embryo rescue R.Horn W.Friedt Plant Breeding 116(1997)317−322 Fertility restoration of new CMS sources in sunflower(Helianthus annuus L.) Horn,R Plant molecular biology;an international journal on fundamental research and genetic engineering July 1991 v17(1)29−36 A mitochondrial 16kDaprotein is associated with cytoplasmic male sterility in sunflower. C.Rambaud,J.Dubois,J.Vasseur(1993)Male−sterile chicory cybrids obtained by intergeneric protoplast fusion,Theor Appl Genet 87:347−352 S.Varotto,E.Nenz,M.Lucchin,P.Parrini(2001)Production of asymmetric somatic hybrid plants between Cichorium intybus L.and Helianthus annuus L.,Theor Appl Genet 102:950−956 C.Rambaud,A.Bellamy,A.Dubreucq,J.−C.Bourquin and J.Vasseur(1997)Molecular analysis of the fourth progeny of plants derived from a cytoplasmic male sterile chicory cybrid,Plant Breeding 116:481−486 A.Dubreucq Theor Appl Genet(1999):1094−1105 Analyses of mitochondrial DNA structure and expression in three cytoplasmic male−sterile chicories originating from somatic hyvridisation between fertile chicoly and CMS sunflower protoplasts 水谷 高幸 Bull.Fac.Agr.,Saga Univ 67:109−118(1989)レタス及び日本産近縁野生種のプロトプラストからの植物体再生及び細胞融合
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みて、レタスのF1種子の生産に有用な細胞質雑種Lactuca属植物レタス及びその作出方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ヒマワリとレタスの融合雑種細胞の培養方法、細胞質雑種植物の再生方法の技術により、安定した細胞質雄性不稔レタスを作出し、これを利用してレタスのF1種子が効率的に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の発明を包含する。
(1)Helianthus属植物由来のプロトプラストとLactuca属植物由来のプロトプラストを細胞融合し、次いで融合細胞を培養し、培養された融合細胞から植物体を再生することを特徴とする細胞質雑種Lactuca属植物の作出方法。
(2)Helianthus属植物由来のプロトプラストがH.annuus L.に由来するプロトプラストであるか、またはH.petiolaris、H.argophyllus、H.debilis、H.decapetalus、H.giganteus、H.rigidus、H.salicifolius、H.anomalus、H.bolanderi、H.exilis、H.maximiliani、H.neglectus、H.praecox、もしくはH.tuberosus由来の細胞質を有するH.annuus L.の細胞質置換系統に由来するプロトプラストである(1)記載の方法。
(3)Lactuca属植物由来のプロトプラストがLactuca sativa L.、L.serriola、L.aculeate、L.scarioloides、L.azerbaijanica、L.georgica、L.dregeana、L.altaica、L.saligna、L.virosa、L.tatarica、L.indica、もしくはL.debilis、またはそれらの種間交雑植物に由来するプロトプラストである(1)または(2)記載の方法。
(4)Helianthus属植物が細胞質雄性不稔性を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)Helianthus属植物がミトコンドリアに雄性不稔遺伝子を有する、(4)記載の方法。
(6)細胞質雑種Lactuca属植物が細胞質雄性不稔性を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により作出された細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(8)細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、(7)記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
(9)Helianthus属植物のミトコンドリアに由来する遺伝子を細胞質内に有する細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(10)Helianthus属植物がH.annuus L.であるか、またはH.petiolaris、H.argophyllus、H.debilis、H.decapetalus、H.giganteus、H.rigidus、H.salicifolius、H.anomalus、H.bolanderi、H.exilis、H.maximiliani、H.neglectus、H.praecox、もしくはH.tuberosus由来の細胞質を有するH.annuus L.の細胞質置換系統である(9)記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(11)細胞質雑種Lactuca属植物がLactuca sativa L.、L.serriola、L.aculeate、L.scarioloides、L.azerbaijanica、L.georgic、L.dregeana、L.altaica、L.saligna、L.virosa、L.tatarica、L.indica、もしくはL.debilis、またはそれらの種間交雑植物に由来するものである(9)または(10)記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(12)Helianthus属植物のミトコンドリアに由来する遺伝子が雄性不稔遺伝子である(9)〜(11)のいずれかに記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(13)細胞質雄性不稔性を有する、(9)〜(12)のいずれかに記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(14)細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、(9)〜(13)のいずれかに記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
(15)受託番号FERM BP−10421である細胞質雑種Lactuca属植物の種子、該種子から生育させた細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(16)細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである(15)記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
(17)受託番号FERM BP−10647である細胞質雑種Lactuca属植物の種子、該種子から生育させた細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
(18)細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、(17)記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
(19)(6)記載の方法により作出された細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
(20)(13)記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
(21)(15)記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
(22)(17)記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
(23)(19)〜(22)のいずれかに記載の方法により作出された雑種第一代種子または該種子から生育させた雑種第一代植物。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005−311598号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、供試材料に用いた細胞質雄性不稔ヒマワリ2系統と雄性可稔ヒマワリ1系統、レタスの栽培品種13品種からDNAを抽出し、ヒマワリミトコンドリア遺伝子orf522に特異的なプライマー(上図)及びorf873に特異的なプライマー(下図)を用いてPCRを行った結果を示す電気泳動写真である。
図2は、ヒマワリミトコンドリア遺伝子orf522及びorf873に特異的なプライマーを用いて、細胞質雑種植物の検定を行った結果の一例を示す電気泳動写真である。
図3は、供試材料に用いた細胞質雄性不稔ヒマワリ2系統と雄性可稔ヒマワリ1系統、レタスの栽培品種13品種からDNAを抽出し、葉緑体遺伝子rbcLに特異的なプライマーを用いてPCRを行い、その増幅産物をTaqIで切断したときのPCR−RFLPパターンを示す電気泳動写真である。
図4は、レタス栽培品種‘テルミー’の花の形態を示した図である(A:花序、B:頭花、C:頭花の中心部(倍率×20)、D:雌蕊と葯筒(倍率×64))。
図5は、細胞質雄性不稔レタスの花の形態を示した図である(A:花序、B:頭花、C:頭花の中心部(倍率×20)、D:花粉の付着した雌蕊と葯筒(倍率×64))。
図6は、細胞質雄性不稔レタスの染色体の観察結果を示す図である。
図7は、細胞質雄性不稔レタスに、雄性可稔レタスの花粉を交配することによって後代種子が得られることを示した図である。
図8は、細胞質雄性不稔レタスのBC3世代14個体の葉からDNAを抽出し、ヒマワリミトコンドリア遺伝子orf873に特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果を示す電気泳動写真である。
図9Aは、細胞質雄性不稔レタスのBC3世代14個体の葉からDNAを抽出し、ミトコンドリア遺伝子atp6、cox II、cobに特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果を示す電気泳動写真である。ミトコンドリア遺伝子atp6、cox II、cobの場合は、PCR増幅産物をさらに制限酵素で消化したPCR−RFLPの結果である。
図9Bは、細胞質雄性不稔レタスのBC3世代14個体の葉からDNAを抽出し、ミトコンドリア遺伝子rps3、trnNとtrnY、trnSとtrnPに特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果を示す電気泳動写真である。
図10は、細胞質雄性不稔レタスのBC3世代14個体の葉からDNAを抽出し、葉緑体遺伝子rbcLに特異的なプライマーを用いてPCRを行い、その増幅産物をTaqIで切断したときのPCR−RFLPパターンを示す電気泳動写真である。
図11は、細胞質雄性不稔レタス‘1216−2−T1’בテルミー’のF1植物の花器と雌蕊の形態を示した図である。
図12は、細胞質雄性不稔レタス‘1216−2−T1’בステディー’のF1植物の花器と雌蕊の形態を示した図である。
図13は、細胞質雄性不稔レタス‘1216−2−T1’בロジック’のF1植物の花器と雌蕊の形態を示した図である。
図14は、細胞質雄性不稔レタス‘1216−2−T1’בマイヤー’のF1植物の花器と雌蕊の形態を示した図である。
図15は、細胞質雄性不稔レタス‘1216−2−T1’とレタス野生種L.serriolaとの交雑種の植物体、花器、雌蕊の形態を示した図である。
本発明による融合雑種細胞及び細胞質雑種植物は、下記の手段からなる方法により作成することができる。
(1)プロトプラストの調製
(2)プロトプラストの融合処理
(3)融合雑種細胞の培養
(4)マイクロカルスからの植物体の再生
(5)細胞質雑種植物の選抜
(6)優良系統の選抜
(7)細胞質雄性不稔植物の利用とF1種子の生産
各工程の詳細は下記の通りである。
(1)プロトプラストの調製
(i)Lactuca属植物由来のプロトプラストの単離
プロトプラストの調製に用いるLactuca属植物は、Lactuca sativa L.、L.serriola、L.aculeate、L.scarioloides、L.azerbaijanica、L.georgica、L.dregeana、L.altaica、L.saligna、L.virosa、L.tatarica、L.indica、もしくはL.debilis、またはそれらの種間交雑植物であることが好ましく、なかでも、レタスの栽培種であるL.sative L.が好ましい。L.sative L.は、var.angustana(アスパラレタス、茎レタス等を含む。),var.longifolia(コス、ロメインレタス、立レタス等を含む。),var.crispa(葉レタス(リーフレタス、ルースリーフレタス)等を含む。)、var.capitata(ヘッドレタス、玉レタス、バターヘッド、サラダナ、クリスプヘッド、キャベツタイプレタス等を含む。)などに類別されており、これらはいずれも生態的に分化した同一種内での変種である。本発明にはL.sative L.に属するいずれの変種も好適に用いることができる。なお、エンダイブやチコリーなどはレタスに類似した特性も認められるが、Lactuca属には属さないため、レタスには含められていない(野菜園芸大百科7 レタス・セルリー 1989年4月30日第1刷発行 発行所 社団法人 農山魚村文化協会 P87)。
プロトプラストを得るために使用する細胞組織としては、収量性が高く、分裂活性が高い葉肉組織を供試することが望ましいが、胚軸や茎、カルスなどの他の組織も材料として用いてもよい。
プロトプラストを単離する方法は通常用いられる方法(非特許文献8、18)などで良く、特に制限されない。まず、レタスの細胞組織を細切し、酵素処理することによってプロトプラストを単離する。ここでは、プロトプラスト単離用酵素溶液を使用する。この溶液は主に細胞壁分解酵素、浸透圧調整剤を含む無機塩緩衝液である。細胞壁分解酵素としては、植物の細胞壁の分解に使用できるものであれば特に制限されないが、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられる。本発明では、メイセラーゼとマセロザイムR−10の組み合わせが好ましい。浸透圧調整剤としては、一般的な糖アルコール類、例えばマンニトール、ソルビトール、グルコース等を用いることができ、マンニトールが好ましく、0.3M〜0.7Mの濃度のマンニトールが特に好ましい。さらに、酵素溶液には、プロトプラストの膜の安定化のために、無機塩を添加することが望ましく、例えば表1記載の組成のCPW塩(Cocking and Peberdy,1974)を添加すると好適である。酵素処理は、25〜30℃で8〜20時間静置処理すると好適である。
Figure 2007049730
酵素処理により単離したプロトプラストを30〜100μmの孔径のナイロンメッシュで濾過し、遠心分離してプロトプラストを集めて酵素液を除く。次にプロトプラストを洗浄液に懸濁し、プロトプラストを洗浄する。洗浄液としては、一般的に用いられるCPW塩溶液に浸透圧調整剤として糖アルコール類を添加したものを用いることもできるが、後に単離するHelianthus属植物由来プロトプラストとの融合時に下記組成のS液(文献:Lenee P,Chupeau Y,Plant Sci.43:69−75(1986)参照)を用いることが望ましいため、ここでは洗浄液として表2記載の組成を有するS液を用いるのが好ましい。
Figure 2007049730
次に、Lactuca属植物プロトプラストの単独での分裂を防ぐために不活化処理を行うことが望ましい。不活化処理は、ヨード酢酸、ヨードアセトアミド等のヨード化合物を溶解したCPW塩溶液などにプロトプラストを懸濁させることで行える。本発明ではヨードアセトアミドを5mM〜30mMの濃度に調整したCPW溶液に懸濁し5〜20分間処理を行うと好適である。
次に遠心分離を利用してS液での洗浄操作を1〜3回繰り返すことが好ましい。プロトプラストの懸濁液には、導管や細胞の断片も混入するため、さらに密度勾配遠心分離法等により、プロトプラストを精製する。精製に用いる試薬には、糖類、合成コロイド等が挙げられるが、本発明ではショ糖液の利用が好適であり、15%〜20%のショ糖液の利用が特に好適である。プロトプラストの精製後、血球計算盤によって細胞密度を計測し、細胞融合に適した細胞密度になるようにS液によって液量を調整する。プロトプラストの細胞密度は、1×10〜1×10細胞/mlが好ましく、液量の調整にはS液の利用が好ましい。
(ii)Helianthus属植物由来のプロトプラストの単離
本発明の細胞質提供材料として利用できるのは、Helianthus属植物である。Helianthus属植物のなかでもヒマワリの栽培品種であるHelianthus annuus L.あるいは、H.petiolaris、H.argophyllus、H.debilis、H.decapetalus、H.giganteus、H.rigidus、H.salicifolius、H.anomalus、H.bolanderi、H.exilis、H.maximiliani、H.neglectus、H.praecox、もしくはH.tuberosus由来の細胞質を有するH.annuus L.の細胞質置換系統が好ましい。
本発明に用いられるHelianthus属植物は細胞質雄性不稔系統であることが好ましい。従来H.annuus L.においては、多数の細胞質雄性不稔系統が作出されている。それらは栽培種の自然突然変異や種々の種間交雑後代から得られることが知られている。具体的には、H.annuus L.の自然突然変異体あるいは、上述のH.annuus L.の各種細胞質置換系統から育成された細胞質雄性不稔系統が知られており、分子生物学的手法によりその多様性も報告されている(非特許文献10)。すなわちH.annuus L.においては、すでに多くの細胞質雄性不稔性を有する細胞質置換系統が育成されている。本発明においては、Helianthus属植物の種々の細胞質置換系統を細胞質提供材料として使用することができる。
本発明において細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物を得るためには、細胞質提供材料として細胞質雄性不稔遺伝子を有するHelianthus属植物を用いるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。Helianthus属植物由来のプロトプラストと、Lactuca属植物由来のプロトプラストとを細胞融合する際に両植物中のミトコンドリアゲノム間でゲノムの組換えや再編成が引き起こされた結果、細胞質雄性不稔性を発現する系統が得られる場合もある。こうして作出される細胞質雄性不稔性の雑種Lactuca属植物もまた本発明に包含される。
また細胞融合に用いられるHelianthus属植物細胞は放射線処理により核ゲノムを不活化したものを用いることができる。Helianthus属植物細胞の核ゲノムを不活化することにより、Helianthus属植物細胞とLactuca属植物細胞の細胞融合後、Helianthus属植物の核ゲノムに影響を受けることなく、Lactuca属植物の核ゲノムが有する再分化能力によりHelianthus属植物由来の細胞質遺伝子を有するLactuca属植物の植物体の再生が可能である。
以上の通り本発明においては、Helianthus属植物の様々な素材を細胞質提供細胞として選択することが可能であり、多様な遺伝的背景を持った細胞質雑種Lactuca属植物の作出が可能である。
Helianthus属植物由来のプロトプラストを調製するには、まず、Helianthus属植物の細胞組織を細切し、プロトプラスト単離用酵素溶液に浸漬することによってプロトプラストを単離する。使用する細胞組織としては、収量性が高く細胞膜が丈夫であるため、胚軸を供試することが好ましいが、葉や茎などの他の組織を材料としてもよい。細胞壁分解酵素は、Lactuca属植物の場合と同様に、植物の細胞壁の分解に使用できるものであれば特に制限されないが、本発明では、ドリセラーゼとマセロザイムR−10の組み合わせで用いるのが好ましい。また、Helianthus属植物の胚軸から分離したプロトプラストは比重が軽いため、細胞壁分解酵素はKClやNaClなどの無機塩を主体として浸透圧を調整した溶液、例えば本発明ではS液を用いるのが好適である。酵素処理は、25〜30℃で8〜20時間静置処理すると好適である。酵素処理により単離したプロトプラストを、30〜100μmの孔径のナイロンメッシュで濾過する。Helianthus属植物由来プロトプラストの核遺伝子は不要であるため、単離したプロトプラストは放射線の照射により核遺伝子を不活化させることが望ましい。照射する放射線としては、X線、γ線、紫外線等が挙げられるが、核遺伝子を不活化できれば、特に限定されるものではない。照射線量は核を不活化できる範囲で、できる限り低照射量で行うことが好ましい。例えば、本発明での軟X線の照射の場合0.1Gy〜0.6Gyの照射量が好ましい。
(2)プロトプラストの融合処理
次に以上のように不活化処理した両種のプロトプラストの細胞融合を行う。融合方法としては、公知の電気融合法(Planta,151,26−32,1981)、PEG法(Planta,120,215−227,1974)、デキストラン法(Jap.J.Genet.,50,235,1975)などが挙げられ特に限定されないが、本発明ではPEG法を改変した方法を用いるのが好ましい。
(3)融合雑種細胞の培養
融合処理した細胞は、Lactuca属植物由来のプロトプラストの培養に好適な培地で培養することが好ましい。Lactuca属植物由来のプロトプラストの培養方法としては様々な方法が知られており、本発明にはいずれの方法も好適に用いることができるが、本発明に用いるには、公知の方法(Nishio,T.,et al.,Japanese journal of breeding,38,165−171)に改良を加えた方法が好ましい。このNishioらの方法は、Lactuca属植物のプロトプラストの効率的な培養方法として優れている。しかしながらNishioらの方法は本発明に直接適用することはできない。なぜなら、Nishioらの報告において培養する、融合処理を行わないLactuca属植物単独のプロトプラストは細胞膜の損傷が少なく、培養初期からゲランガムを含む固体培地での培養が可能であるのに対して、本発明において培養する融合処理後の細胞は、処理のストレスにより細胞膜が壊れやすくなっているため、Nishioらの方法では融合細胞をゲランガムと混合する際に、融合細胞が破裂して効率的な培養を行うことが困難であるからである。そのため本発明においては、融合処理後の細胞をゲランガムを含まない液体培地で初期培養し、細胞膜の再生を促した後、培養3〜7日後に培地にゲランガムを添加すると好適である。Nishioらの方法にこのような改良を加えることによって、融合細胞を効率的に培養することが可能となる。融合細胞は分裂を繰り返し、マイクロカルスを形成するので浸透圧を低減した新しい培地に継代すると好適である。
(4)マイクロカルスからの植物体の再生
マイクロカルスが数mmにまで生長した段階で、再分化培地に移植し再分化させる。再分化培地は、材料とするLactuca属植物やマイクロカルスの状態により反応の差はあるが、例えば0.3〜1.0mg/lのBAを含むMS培地(Muraslge,T.& Skoog,Physiol.Plant.,15,473−497(1962))などを用いると好適である。再生したシュートは発根培地、例えば1/2濃度のMS培地などに移植して発根させ、植物体を再生させる。再生した植物体は、順化して温室内へ植え出す。
(5)細胞質雑種植物の選抜
上記の手順で再生した植物体、ならびに材料に使用したHelianthus属植物およびLactuca属植物の葉からDNAを抽出する。例えばH.annuus L.のミトコンドリアに特異的な遺伝子としては、例えばorf522,orf708,orf873などが挙げられるが、これらの遺伝子をマーカーとしてPCR法によって検出することによって、H.annuus L.のミトコンドリア遺伝子が導入された細胞質雑種植物を判別することができる。まず、標的とする遺伝子を特異的に増幅するプライマーを設計してPCRを行う。次に電気泳動を行って予想されるサイズのバンドを確認する。このようにして、Lactuca属植物の植物体にHelianthus属植物のミトコンドリアDNAが導入されている個体を選抜できる。また、PCR−RFLP法(Tsumura,Y.,Yoshimura,K.Tomaru,N.et al.,Theor.Appl.Genet.91,1222−1236,1995)を用いて、Helianthus属植物由来のミトコンドリアDNAを、Lactuca属植物由来のミトコンドリアDNAと識別して検出してもよい。
また、PCR分析により選抜した細胞質雑種植物の葉緑体が、Lactuca属植物由来であることをPCR−RFLP法を用いて確認することが望ましい。PCR−RFLP法に利用される葉緑体遺伝子としてはrbcL,matKなどが挙げられるが、Helianthus属植物とLactuca属植物の間で多型を検出できるものであれば特に限定されない。標的の葉緑体遺伝子領域を特異的に増幅するプライマーを設計してPCRを行う。PCRの増幅産物を制限酵素処理し、制限酵素サイトの違いによるRFLPを検出して、葉緑体の由来を確認する。核遺伝子との親和性の点からLactuca属植物由来の葉緑体を有する個体を選抜することが望ましい。
以上のDNAでの確認は、順化した植物体で行うことができるが、カルスの段階で行ってもよい。また更にフローサイトメトリーや染色体の観察などにより、倍数性の検定も行っておくことが望ましい。
(6)優良系統の選抜
得られた細胞質雑種植物の中から、雄性不稔形質を有し、その他の器官が形態的な異常を伴わない系統を選抜する。特に維性不稔性のように生殖器官に障害があると、雌性稔性すなわち種子の結実性も低下することが多い傾向にあるので、雌性稔性の高い系統を選抜することが重要である。PCR−RFLP分析などにより、細胞質雑種植物のミトコンドリアゲノムを分析し、そのデータを選抜の判断材料とするとより効率的な選抜が可能である。例えば、Helianthus属植物のミトコンドリア遺伝子の一部が導入されたことにより、雄性不稔形質が発現しているにもかかわらず、ミトコンドリア遺伝子の多くがLactuca属植物と同一である個体は、Lactuca属植物の核との親和性が高く、雄性不稔性以外の形質が正常である可能性が高い。
更に、選抜した雄性不稔個体に、正常細胞質のレタスの花粉を交配し、交雑後代において雄性不稔性が細胞質遺伝していることを確認する。また、多数の交雑後代を様々な環境下で栽培し、雄性不稔性が安定しているか確認する。
優良系統を選抜できる可能性を高めるには、選抜の候補となる細胞質雑種Lactuca属植物の数を多くする手法が有効である。また、比較的少数の候補となる細胞質雑種Lactuca属植物の中から細胞質雄性不稔性を有する優良系統植物を一次選抜した後、当該優良系統植物の細胞質をさらに改良してより望ましい優良系統を得る手法も有効である。どちらの手法を採用しても優良系統を選抜することができるし、2つの手法を組み合わせてもよい。細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物の細胞質をさらに改良するための好ましい方法としては、細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物を細胞質提供素材として用いて、任意のレタスとの非対称細胞融合を行うことなどが挙げられる。このような非対称細胞融合を行なうことにより、例えばミトコンドリアゲノムに組み換えやゲノムの再編成が引き起こされ、細胞質雄性不稔性を保持し、レタスの核遺伝子との親和性がより高い細胞質を有する系統を選抜できる可能性が高まる。
上記手順により作出され選抜された細胞質雑種Lactuca属植物はHelianthus属植物の細胞質、好ましくはミトコンドリア、に由来する遺伝子を細胞質内に有する。当該細胞質雑種Lactuca属植物はLactuca属植物の核ゲノムを有し、好ましくは更にLactuca属植物の葉緑体ゲノムを有する。本発明はまた当該細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部に関する。本発明において「細胞質雑種Lactuca属植物の後代」とは、細胞質雑種Lactuca属植物に交配可能なLactuca属植物の花粉を交配することによって得られる、当該細胞質を細胞質遺伝により引き継ぐ次世代及び次世代以降の細胞質雑種Lactuca属植物を意味する。本発明において「細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部」とは、当該植物体の1個以上の細胞または1個以上の細胞からの細胞質を含むものであり、具体的には花、葉、茎、根等の器官または組織、或いは、これらの器官または組織からの細胞(細胞から調製されたプロトプラストを含む)もしくは細胞質、或いは前記細胞もしくは細胞質の集合体を意味する。
(7)細胞質雄性不稔植物の利用とF1種子の生産
本発明の方法で作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物に、優良なLactuca属植物の系統を連続戻し交雑することにより、後代として、細胞質雄性不稔性を有する優良系統を得ることができる。こうして得られた細胞質雄性不稔性を有する優良系統はF1種子を得るための種子親として利用することができる。
また、より好ましい方法として、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物を細胞質提供素材として用いて、任意のレタスとの非対称細胞融合を行うことにより、短期間のうちに細胞質雄性不稔性を有する種子親を育成できる。このような非対称細胞融合を行なうことにより、例えばミトコンドリアゲノムに組み換えやゲノムの再編成が引き起こされ、細胞質雄性不稔性を保持し、レタスの核遺伝子との親和性がより高い細胞質を有する系統を選抜できる。
さらに、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物の細胞質は、Lactuca属のほかの種にも導入することが可能である。Lactuca属植物には、約100種の野生種が知られており、レタス栽培品種L.sativaは、Lactuca小節の9つ野生種であるL.serriola、L.aculeate、L.scarioloides、L.azerbaijanica、L.georgica、L.dregeana、L.altaica、L.saligna、L.virosa、と交雑可能である(特許文献17)。
交雑が可能であれば、従来育種技術の連続戻し交雑法により、細胞質と核を入れ換えて、新たな細胞質と核の組み合わせを作り出すこと(核置換)が容易に行える。すなわち、これら野生種または、これらの種間雑種は、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物との交雑により細胞質雄性不稔性を発現する細胞質を容易に導入することができる。また、胚・胚珠培養により適用範囲を広げることも可能である。さらに、Lactuca属においては、野生種の有用形質を導入する目的で、細胞融合により野生種との体細胞雑種が多数育成されている(例えば、特許文献17、Plant cell reports 9:531−534(1991)、非特許文献18)。そのような野生種としては、例えばL.tatarica,L.virosa,L.indica,L.debilisなどが挙げられ、これらの細胞融合技術を用いることにより、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物の細胞質を多くのLactuca属野生種やそれらの種間雑種に導入することが可能である。このとき、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物に放射線等を照射して核を不活化させ、細胞質提供細胞として非対称細胞融合を行うことにより、細胞質の導入をより効率的に行うことができる。従って、これら連続戻し交雑法や細胞融合などの従来技術を利用することによって、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物の細胞質を、多くのLactuca属植物に導入することが可能である。野生種の有用遺伝子を導入したレタスの種間雑種植物などにも細胞質雄性不稔性を導入することが可能となり有用である。
以上のことから、本発明により作出した細胞質雄性不稔性の細胞質雑種Lactuca属植物または該植物から上記の手順で育成または作出された後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することにより、Lactuca属植物の効率的なF1種子の生産が可能となる。交配方法は、花粉親系統の花粉が、種子親の雌蕊に受粉されればよく特に限定されないが、例えば風媒、虫媒(例えば特許文献20)による受粉や、人手によって花粉親系統の花粉を種子親の雌蕊に付着させる人工交配などの通常の方法が適用できる。採種を行う地域、施設に適合した経済的な手法を選択することが好ましい。
上記の手順でレタスをF1品種化することにより、優良形質を付与したレタス品種の迅速な育種が可能となり、生産物の均一性や環境適応性などに優れた市場性の高いレタス品種の作出が可能となる。
以下の実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)プロトプラストの調製
(i)レタスプロトプラストの単離
本実施例では、レタス品種‘テルミー’(サカタのタネ)を供試した例を示した。滅菌した種子をショ糖10g/l、寒天8g/lを添加したMS培地に置床し、20℃、16時間照明下で1か月間培養した。展開した本葉を約1g採取し、約2mmの大きさに細切した後に、0.4%メイセラーゼ,0.08%マセロザイムR−10,マンニトールを含むCPW塩溶液10mlに浸漬し、25℃、16時間静置した。
プロトプラストの懸濁液を92μmのナイロンメッシュで濾過した。プロトプラスト懸濁液を500rpmで3分間遠心分離した後、上澄みを除去して15mMのヨードアセトアミドを含むS液2mlを加えて懸濁し、25℃で5分間静置した。ヨードアセトアミド処理したプロトプラストを300rpmで3分間遠心分離した後、上澄みを除去してS液10mlに懸濁し洗浄した。S液による洗浄は、3回繰り返した。300rpmで3分間遠心分離して上澄みを除去し、20%のショ糖を含んだCPW塩溶液を加えて、9.5mlにして懸濁し、その上にS液0.5mlを重ね、1000rpm、5分間遠心分離した。
精製されたプロトプラストが、上層のS液層中に浮上するのでパスツールピペットで吸い取り遠心管に入れて、2mlのS液を加えてプロトプラストを懸濁した。懸濁液を少量取り血球計算板を用いてプロトプラストの細胞密度を求め、S液を加えて1×10個/mlに調製した。
(ii)ヒマワリのプロトプラストの単離
本実施例では、切花ヒマワリの栽培品種‘のぞみ’(サカタのタネ)(ヒマワリ特異的なorf522,orf873遺伝子を有する)と切花ヒマワリ育種系統‘IB5’(ヒマワリ特異的なorf873遺伝子を有するがorf522は有しない)を供試した例を示した。滅菌した種子をショ糖10g/l、寒天8g/lを添加したMS培地に置床し、25℃暗所において7日間培養した。50mm前後に伸張した胚軸を長さ1cmに切断し、さらに胚軸の伸長方向に2分割した。切断した胚軸約10本分を0.5%セルラーゼオノズカR−10、0.1%マセロザイムR−10を含むS液10mlに浸漬し、16時間静置した。
プロトプラストの懸濁液を92μmのナイロンメッシュで濾過した。遠心管に17%のショ糖を含んだCPW塩溶液2mlを入れ、その上にプロトプラスト懸濁液を重ね、1200rpmで5分間遠心分離した。精製されたプロトプラストがバンド状に集まるので、プロトプラストを吸わないように上層の液を除去し、17%のショ糖を含んだCPW塩溶液を加えて、9.5mlにしてプロトプラストを懸濁した。その上にS液0.5mlを重ね、1200rpmで5分間遠心分離した。
プロトプラストが浮上し、上層のS液層中へ移動するので、パスツールピペットで吸い取り、プラスチックシャーレに移して軟X線を0.5Gy照射した。軟X線を照射したプロトプラスト懸濁液を遠心管に移し、17%のショ糖を含んだCPW塩溶液を加えて、9.5mlにした。その上にS液0.5mlを重ねて1200rpmで5分間遠心分離した。S液層中に移ったプロトプラストを遠心管に移し、S液を加えて10mlにして懸濁した。懸濁液を少量取り血球計算板を用いてプロトプラストの細胞密度を求め、S液を加えて3×10個/mlに調製した。
(2)プロトプラストの融合処理
ヨードアセトアミド処理したレタスプロトプラスト懸濁液と軟X線照射したヒマワリプロトプラスト懸濁液を等量混合し、9cmシャーレの底面中央に混合液を2ml滴下した。30分間静置後、PEG溶液(PEG3350 300g/l,CaCl・2HO 1,500mg/l,KHPO 100mg/l、pH5.5)3mlをプロトプラスト混合液の周辺に滴下した。
1分後CPW塩溶液3.mlをプロトプラスト混合液の周辺に滴下した。さらに2分後CPW塩溶液3.5mlをプロトプラスト混合液の周辺に滴下した。5分後シャーレの縁から、滴下した液を静かに吸い上げて除去し、CPW塩溶液20mlをシャーレの縁から加えた。このCPW塩溶液での洗浄の操作を5分間隔で3回繰り返した。
(3)融合雑種細胞の培養
洗浄液を除去後、コハク酸二ナトリウム六水和物2.7g/l,カザミノ酸1.0g/l,NAA 1.0mg/l,BA 0.3mg/l,0.3Mショ糖を含み、NHNOを200mg/lに低減させた1/2濃度のMS培地(以下、レタスプロトプラスト培養用培地という)10ml(pH5.8)を添加し、25℃暗所において培養した。
培養開始から3日後、4倍濃度のレタスプロトプラスト培養用培地(0.3Mショ糖濃度)5mlと0.6%ゲランガムを含む0.3Mショ糖溶液5ml(pH5.8)を混合することにより、半固体化状態のゲル培地中で培養を継続した。
培養開始10日後に、ショ糖濃度を0.15Mに改変したレタスプロトプラスト培養用培地10ml中に、融合雑種細胞の含まれた培地10mlをゲルとともに移した。培養開始20日後には、マイクロカルスが肉眼で確認できるようになるので、1.0%ショ糖、0.3%ゲランガムを含んだレタスプロトプラスト培養用培地(固体培地,pH5.8)に移植した。
(4)マイクロカルスからの植物体の再生
培養開始30日後、マイクロカルスが2mm程度の大きさになったときに、NAA0.1mg/l,BA 0.3mg/l,1.0%ショ糖,0.8%寒天を含むMS培地(pH5.8)に移植した。
培養開始40〜60日後、カルスから再分化したシュートを、1.0%ショ糖,0.8%寒天を含む1/2MS培地(pH5.8)へ移植することにより発根し、細胞質雑種植物を再生した。
細胞質雑種植物は、バーミキュライトに移植して順化を行い、温室内で栽培を行った。
(5)ヒマワリに特異的なミトコンドリア遺伝子を有する細胞質雑種植物の選抜
細胞質雑種植物の葉より公知の方法(Jhingan,A.K.(1992),Methods in molecular and cellularbiology 3:15−22)に従って全DNAを抽出した。
PCR法によりヒマワリ特異的なDNAを検出するため、公知の塩基配列情報(Gene Bank登録番号 Z23237,X62592)よりorf522,orf873遺伝子に特異的なプライマーを設計した(表3)。抽出した全ゲノムDNAを鋳型とし、プライマーorf522−Fとorf522−R,プライマーorf873−Fとorf873−Rの各組み合わせを用いてPCRを行った。PCRは、熱変性94℃1分、アニーリング60℃2分、伸長反応72℃2分を35サイクル繰り返した。PCR産物は、1.8%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド溶液に浸漬後、UV照射下で写真撮影を行い予想されるサイズ(209bp,798bp)のバンドの有無を確認した。
Figure 2007049730
目的DNA断片の特異的な増幅を確認するため、細胞質雄性不稔ヒマワリ2系統と雄性可稔ヒマワリ1系統(育種系統‘0S06’)、表4に示したレタスの栽培品種13品種からDNAを抽出し、ヒマワリミトコンドリア遺伝子orf522及びorf873に特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果を図1に示した。図1は、供試材料に用いた細胞質雄性不稔ヒマワリ2系統(レーン1,2)と雄性可稔ヒマワリ1系統(レーン3)、レタスの栽培品種13品種(レーン4〜16)からDNAを抽出し、ヒマワリミトコンドリア遺伝子orf522に特異的なプライマー(上図)及びorf873に特異的なプライマー(下図)を用いてPCRを行った結果を示す電気泳動写真である(図1中の符号の説明:M:分子量マーカー、1:のぞみ、2:IB5、3:0S06、4:テルミー、5:ステディー、6:ロジック、7:マイヤー、8:Vレタス、9:サンタナス、10:シリウス、11:アスレ、12:ブルータス7号、13:スパーク、14:サントス2号、15:デジェロ、16:サウザー)。図1から明らかなように、ヒマワリ栽培品種’のぞみ’の場合には、orf522(209bp)とorf873(798bp)のバンドが検出され、ヒマワリ育種系統’IB5’ではorf873(798bp)のバンドが検出された。一方、供試したレタス13品種全てにおいて、いずれのバンドも検出されなかった。この結果から、orf522に特異的なプライマーとorf873に特異的なプライマーを用いて、レタスDNAを鋳型にPCRを行った場合、特異的なDNAが増幅されないことを確認した。この結果から、非対称細胞融合により得られた植物体のDNAを抽出し、PCRを行うことにより、ヒマワリに特異的なミトコンドリア遺伝子を有している細胞質雑種植物を選抜することが可能となった。
図2には、本実施例で得られた細胞質雑種植物を検定した結果の一例を示した。図2はヒマワリミトコンドリア遺伝子orf522及びorf873に特異的なプライマーを用いて、細胞質雑種植物の検定を行った結果の一例を示す電気泳動写真である(図2中の符号の説明:M:分子量マーカー、1:のぞみ、2〜7:細胞質提供材料として‘のぞみ’を供試して作出した細胞質雑種植物、8:IB5、9〜14:細胞質提供材料として‘IB5’を供試して作出した細胞質雑種植物)。ヒマワリとして‘のぞみ’と‘IB5’の2種類の細胞質を供試したが、どちらのヒマワリ品種からも細胞質雑種植物を作出することが可能であった。
図2のレーン3、5において、orf522が導入されているにもかかわらず、orf873のバンドが欠失している個体が検出され、これらはミトコンドリアの組換えが生じた結果であると考えられた。
Figure 2007049730
Figure 2007049730
次に、PCR−RFLP法により葉緑体の由来を特定するため、公知の塩基配列情報(Gene Bank登録番号L13929)よりヒマワリ葉緑体のrbcL遺伝子に特異的なプライマーを設計した(表3)。抽出した全ゲノムDNAを鋳型とし、プライマーrbcL−F,プライマーrbcL−Rの組み合わせを用いてPCRを行った。PCRは、熱変性94℃ 1分、アニーリング60℃ 2分、伸長反応72℃ 2分を35サイクル繰り返した。PCR産物を制限酵素TaqIで消化し、1.8%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイド溶液に浸漬し、UV照射下で写真撮影を行って、バンドの切断状況を確認した。rbcL遺伝子は、ヒマワリとレタスで相同性が高く、同じサイズのバンドが増幅されるため、PCR産物を制限酵素TaqIで消化し、制限酵素サイトの違いによるRFLPを検出して由来を特定することが可能となった。図3は、供試材料に用いた細胞質雄性不稔ヒマワリ2系統(レーン1,2)と雄性可稔ヒマワリ1系統(レーン3)、レタスの栽培品種13品種(レーン4〜16)からDNAを抽出し、葉緑体遺伝子rbcLに特異的なプライマーを用いてPCRを行い、その増幅産物をTaqIで切断したときのPCR−RFLPパターンを示す電気泳動写真である(図3中の符号の説明:M:分子量マーカー、1:のぞみ、2:IB5、3:0S06、4:テルミー、5:ステディー、6:ロジック、7:マイヤー、8:Vレタス、9:サンタナス、10:シリウス、11:アスレ、12:ブルータス7号、13:スパーク、14:サントス2号、15:デジェロ、16:サウザー)。図3に示したように、レタスではTaqIの制限酵素サイトが存在しないため、1096bpのサイズのバンドが1本検出されるが、ヒマワリではTaqIの制限酵素サイトが存在するため、311bpと785bpの2本のバンドが検出され、容易に由来を識別することが可能であった。この結果から、非対称細胞融合により得られた植物体のDNAを抽出し、PCR−RFLPを行うことにより、レタス葉緑体を有する細胞質雑種植物を選抜することが可能となった。
(6)細胞質雄性不稔植物の選抜
細胞質雑種植物は、レタス由来の核遺伝子と導入されたヒマワリ由来のミトコンドリア遺伝子の不親和性によって、形態異常を示す個体が多く現れるため、そのような個体は排除した。ミトコンドリアは、細胞融合によって高頻度で組み換えやゲノムの再編成が起こるため、再生する個体毎に形態の変化が観察された。特に花器においては、不親和性により形態異常を引き起こしやすいため、多数の細胞質雑種植物を作出し、雄性不稔形質を有し、且つその他の形態が正常な優良系統を選抜した。一般的に、レタスは、雄蕊先熟で雌蕊が葯筒の中を伸長する過程で受粉するため、開花時には図4に示すように雌蕊に花粉が多量に付着する。このためレタスでは自殖率が非常に高い。本発明において選抜した最も有望と思われる細胞質雄性不稔系統(以下‘1216−2’と記す(ヒマワリ‘IB5’由来))は、図5に示すように雌蕊に花粉粒の付着が全く見られず、葯筒の中にも花粉粒の存在は全く認められなかった。また、花器やその他器官の形態に明確な差は認められなかった。また、染色体数を調査した結果、2n=18であり通常のレタスと同じであった(図6)。
選抜した細胞質雄性不稔系統‘1216−2’に、正常細胞質のレタスの花粉を交配することによって、図7に示すように正常に結実し、種子が得られたことから、雌性稔性が維持されていることを確認した。
さらに、‘1216−2’に雄性可稔のレタスの花粉を交配して得た後代の植物がすべて雄性不稔性を示したことから、雄性不稔性が細胞質に起因し、細胞質遺伝していることを確認した。
‘1216−2’に‘テルミー’を2回戻し交雑したBC3世代(1216−2−T1−1〜14)14個体を供試して、ヒマワリミトコンドリア遺伝子orf873を特異的に増幅するプライマーを用いてPCRを行った場合の結果を図8に示した(図8中の符号の説明:M:分子量マーカー、S:IB5、L:テルミー、1〜14:細胞質雄性不稔レタスBC3 14個体(1216−2−T1−1〜14))。いずれの個体もorf873を有しており、この結果からレタスにおいてヒマワリのミトコンドリア遺伝子が安定的に遺伝することが明らかとなった。
また、公知のヒマワリ、レタスのミトコンドリア遺伝子の塩基配列情報(Gene Bank登録番号X82387,X62341,X98362,AF319170,X73425,X87209)に基づいて、表3に示すプライマーを設計し、その他のミトコンドリア遺伝子についてもPCR及びPCR−RFLP法を用いて分析を行った。ミトコンドリア遺伝子rps3、trnNとtrnYの遺伝子間領域(以下、trnN−trnYと記す)、trnSとtrnPの遺伝子間領域(以下、trnS−trnPと記す)は、PCR増幅産物のサイズの違いから、ミトコンドリア遺伝子atp6、coxII、cobはPCR−RFLP法により、すなわちPCR増幅産物を制限酵素で消化し、切断パターンの違いで遺伝子型を識別し分析を行った。さらに葉緑体遺伝子rbcLについてもPCR−RFLP法での分析を行った。PCR及びPCR−RFLP法による電気泳動写真を図9に示した(図9中の符号の説明:M:分子量マーカー、S:IB5、L:テルミー、1〜14:細胞質雄性不稔レタスBC3 14個体(1216−2−T1−1〜14))。また、結果のまとめを表5に示した。
Figure 2007049730
この結果から、atp6のミトコンドリア遺伝子がヒマワリ型を示したが、その他の分析したミトコンドリア遺伝子がいずれもレタス型を示すことが明らかとなった。図10は、細胞質雄性不稔レタスのBC3世代14個体の葉からDNAを抽出し、葉緑体遺伝子rbcLに特異的なプライマーを用いてPCRを行い、そのPCR増幅産物をさらに制限酵素で消化したPCR−RFLPの結果を示す電気泳動写真である(図10中の符号の説明:M:分子量マーカー、S:IB5、L:テルミー、1〜14:細胞質雄性不稔レタスBC3 14個体(1216−2−T1−1〜14))。図10に示したPCR−RFLPの結果から、葉緑体遺伝子rbcLもすべてレタス型を示した。すなわち、本発明において作出した細胞質雄性不稔レタスにヒマワリのミトコンドリア遺伝子の一部のみが組み込まれ、葉緑体はレタスに由来することが明らかとなった。また、供試した後代14個体において、いずれも同じバンドパターンを示したことから、ミトコンドリアゲノムが安定していると考えられた。ただし、図9、図10及び表5の結果は細胞質雄性不稔性を発現する個体の分析結果の一例を示したものであり、細胞質雄性不稔レタスが必ずしもこのようなバンドパターンのみを示すとは限らない。
以上の結果より、非対称細胞融合によって、ヒマワリの一部のミトコンドリアDNAを導入することにより、細胞質雄性不稔レタスを作出できることが明らかとなった。これまでの細胞質の分析の結果から、雄性不稔性の原因となるミトコンドリア遺伝子の組み込みや、雄性不稔性を誘発するミトコンドリア遺伝子の組換え、ミトコンドリアゲノムの再編成などが引き起こされることによって、雄性不稔性が引き起こされたと考えられた。
すなわち、本発明により育成された細胞質雑種レタスは、ミトコンドリアゲノムの改変による細胞質雄性不稔形質を有し、尚且つレタスの核ゲノムとの親和性の高いミトコンドリアゲノムを有するという、ミトコンドリアゲノムが高度に組み換えられた細胞質雄性不稔レタスであることが明らかとなった。
(7)細胞質雄性不稔植物の利用とF1種子の生産
作出した細胞質雄性不稔レタス、例えば‘1216−2’に‘テルミー’を交配して得た後代の‘1216−2−T1’に、花粉親として市販のレタス固定種5品種‘テルミー’(サカタのタネ)、‘ステディー’(ツルタ種苗株式会社)、‘ロジック’(横浜植木株式会社)、‘マイヤー’(住化農業資材株式会社)、‘Vレタス’(カネコ種苗株式会社)を交配し、F1種子を採種した。
F1種子をプラグトレーに播種して育苗した後、温室内で10号鉢に定植し、通常の栽培を行い特性の調査を行った。1系統・品種あたり3株を供試した。いずれの系統・品種も正常に生育した。各系統・品種の雄性不稔の調査は、1株当たり10花を供試し、実体顕微鏡を用いて詳細な観察を行った。また、花弁の色、花器の形態についても開花中に順次観察し、開花後の自殖種子の有無も調査した。その調査結果を表6に示した。‘1216−2−T1’と上記固定種5品種とのF1系統は、全個体において100%の雄性不稔性を示した。また、図11〜14に示したように、‘テルミー’以外のレタス栽培品種を交配した場合にも、自殖による雌蕊への花粉粒の付着は全く観察されず、葯の中にも花粉粒の存在は認められなかった。さらに、図15に示したようにレタス野生種L.serriolaの花粉を交配した交雑後代においても自殖による雌蕊への花粉粒の付着は全く観察されず、同様に葯の中にも花粉粒の存在は認められなかった。
この結果から、核遺伝子が‘テルミー’以外の遺伝子型に変化しても花粉が生成されず、雄性不稔性が維持されていたことから、細胞質に起因して雄性不稔性が発現することが裏付けられた。よって本発明により作出した細胞質雑種植物は、安定的な細胞質雄性不稔性を示すことが明らかとなった。
また、雌性稔性を調査するため、花粉を生成しない細胞質雄性不稔系統については、F1を採種したときと同じ品種の花粉を交配した。1株あたり10花を調査し、1花あたり10粒以上の種子を形成する能力を有する系統・品種を雌性稔性’有’とした。表6に示したように、細胞質雄性不稔系統は、遺伝子型の違いに関わらず、いずれも雌性稔性を有していたことから、本発明により作出した細胞質雄性不稔レタスは、効率的なF1種子の生産に利用可能であることを確認した。
Figure 2007049730
‘1216−2’に‘テルミー’を交配して得た後代の‘1216−2−T1’の種子は2005年9月29日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に国際寄託されている(寄託者が付した識別のための表示SSC−LET−05−001、受託番号FERM BP−10421)。
‘1216−2−T1’を細胞質提供素材として用いて、‘Vレタス’(カネコ種苗株式会社)との非対称細胞融合を行い、細胞質雄性不稔性の細胞質雑種‘50125−3’を作出した。‘50125−3’の花は、雌蕊に花粉粒の付着が全く見られず、葯の中にも花粉粒の存在は全く認められなかった。また、‘Vレタス’と比較して、花器などの形態に明確な差は認められなかった。選抜した細胞質雄性不稔系統‘50125−3’に、正常細胞質のレタスの花粉を交配することによって、正常に結実し、種子が得られたことから、雌性稔性が維持されていることを確認した。さらに、‘50125−3’に雄性可稔のレタスの花粉を交配して得た後代の植物がすべて雄性不稔性を示したことから、雄性不稔性が細胞質に起因し、細胞質遺伝していることを確認した。
‘50125−3’に‘Vレタス’を交配して得た後代の‘50125−3−V1−1〜10’10個体における、PCR及びPCR−RFLP法による、ミトコンドリア遺伝子の分析結果を表7に示した。細胞質提供素材として用いた‘1216−2−T1’に比較して、例えば‘50125−3−V1−1〜10’は、ヒマワリ型とレタス型の両方のatp6遺伝子を保持している点に違いがみられた。
ただし、表7の結果は細胞質雄性不稔性を発現する個体の分析結果の一例を示したものであり、細胞質雄性不稔レタスが必ずしもこのようなバンドパターンのみを示すとは限らない。
‘50125−3’に‘Vレタス’を交配して得た後代の‘50125−3−V1’の種子は2006年7月31日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に国際寄託されている(寄託者が付した識別のための表示SSC−LET−06−001、受託番号FERM BP−10647)。
Figure 2007049730
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本発明によりヒマワリ由来の細胞質を有する細胞質雑種レタスが提供される。
本発明による細胞質雑種レタスが細胞質雄性不稔レタスである場合、本レタスを種子親として用いることにより、核遺伝子型雄性不稔植物を商業的なF1種子の生産に用いた場合と異なり、効率的で純度の高いF1種子の採種が可能となる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
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Claims (23)

  1. Helianthus属植物由来のプロトプラストとLactuca属植物由来のプロトプラストを細胞融合し、次いで融合細胞を培養し、培養された融合細胞から植物体を再生することを特徴とする細胞質雑種Lactuca属植物の作出方法。
  2. Helianthus属植物由来のプロトプラストがH.annuus L.に由来するプロトプラストであるか、またはH.petiolaris、H.argophyllus、H.debilis、H.decapetalus、H.giganteus、H.rigidus、H.salicifolius、H.anomalus、H.bolanderi、H.exilis、H.maximiliani、H.neglectus、H.praecox、もしくはH.tuberosus由来の細胞質を有するH.annuus L.の細胞質置換系統に由来するプロトプラストである請求項1記載の方法。
  3. Lactuca属植物由来のプロトプラストがLactuca sativa L.、L.serriola、L.aculeate、L.scarioloides、L.azerbaijanica、L.georgica、L.dregeana、L.altaica、L.saligna、L.virosa、L.tatarica、L.indica、もしくはL.debilis、またはそれらの種間交雑植物に由来するプロトプラストである請求項1または2記載の方法。
  4. Helianthus属植物が細胞質雄性不稔性を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. Helianthus属植物がミトコンドリアに雄性不稔遺伝子を有する、請求項4記載の方法。
  6. 細胞質雑種Lactuca属植物が細胞質雄性不稔性を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の方法により作出された細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  8. 細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、請求項7記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
  9. Helianthus属植物のミトコンドリアに由来する遺伝子を細胞質内に有する細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  10. Helianthus属植物がH.annuus L.であるか、またはH.petiolaris、H.argophyllus、H.debilis、H.decapetalus、H.giganteus、H.rigidus、H.salicifolius、H.anomalus、H.bolanderi、H.exilis、H.maximiliani、H.neglectus、H.praecox、もしくはH.tuberosus由来の細胞質を有するH.annuus L.の細胞質置換系統である請求項9記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  11. 細胞質雑種Lactuca属植物がLactuca sativa L.、L.serriola、L.aculeate、L.scarioloides、L.azerbaijanica、L.georgica、L.dregeana、L.altaica、L.saligna、L.virosa、L.tatarica、L.indica、もしくはL.debilis、またはそれらの種間交雑植物に由来するものである請求項9または10記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  12. Helianthus属植物のミトコンドリアに由来する遺伝子が雄性不稔遺伝子である請求項9〜11のいずれか1項記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  13. 細胞質雄性不稔性を有する、請求項9〜12のいずれか1項記載の細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  14. 細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、請求項9〜13のいずれか1項記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
  15. 受託番号FERM BP−10421である細胞質雑種Lactuca属植物の種子、該種子から生育させた細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  16. 細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、請求項15項記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
  17. 受託番号FERM BP−10647である細胞質雑種Lactuca属植物の種子、該種子から生育させた細胞質雑種Lactuca属植物、その後代、またはそれらの植物体の一部。
  18. 細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部が、該植物体の細胞または細胞質を含むものである、請求項17項記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代の植物体の一部。
  19. 請求項6記載の方法により作出された細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
  20. 請求項13記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
  21. 請求項15記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
  22. 請求項17記載の細胞質雑種Lactuca属植物またはその後代を種子親とし、該植物と交配可能なLactuca属植物を花粉親として交配し、交配後の種子親から雑種第一代種子を採種することを含む、雑種第一代種子の作出方法。
  23. 請求項19〜22のいずれか1項記載の方法により作出された雑種第一代種子または該種子から生育させた雑種第一代植物。
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