本発明は、被測定物からの電磁界の放射により形成された電磁界分布を測定する電磁界分布測定方法及びその装置並びにコンピュータプログラム及び情報記録媒体に関するものである。
従来、EMI(Electro Magnetic Interference)対策として電子機器から放射される電磁波による電磁界の強度測定を行う方法としては、以下に示すようなものが規定されている。
例えば、測定対象となる電子機器、すなわち被測定物(供試機器)をオープンスペースに設置し、この被測定物から3mから10m等の距離をもってループアンテナやダイポールアンテナを設置して測定するものである。このようにアンテナを被測定物から十分な距離をおいて設置した場合には、ループアンテナにおいては遠方放射電磁界の磁界成分だけを測定でき、ダイポールアンテナにおいては電界成分だけを測定できる。そして、遠方放射電磁界の一方の成分を測定すれば他方を算出することができる。また、オープンスペースではなく電波暗室において測定する方法も規定されている。
一方、被測定物において電磁波の放射源を特定する場合もある。例えば、回路基板上においてどの部位から電磁波が強く放射されているかを特定する場合である。このような場合には、前述した測定とは異なり被測定物の近傍において電磁界強度を測定する。一般的には、小型ループアンテナを被測定物に近接させて電磁界の磁界成分を測定している。すなわち、電磁結合による誘電起電力を利用して被測定物によって発生される電磁界の磁界成分を検出するものである。このようにして検出された磁界成分を、演算処理することによって信号の大きさと位相を算出することになるが、従来はこのような磁界成分を測定できる測定器として、例えばベクトルネットワークアナライザやベクトルシグナルアナライザ、スペクトラムアナライザなどがあった。これらの測定器を用いて、ループアンテナ等のセンサを走査することにより被測定物における電流電圧分布を求めて、放射源を特定している。
ところで、前記オープンスペース等による測定方法は広大な設置スペースや多額の設備投資が必要である。そこで近年、放射電磁波強度の評価法として、TEMセルと呼ばれる同軸伝送線路を用いた評価方法が注目されている。この評価方法では、同軸伝送線路の内部導体と外部導体の間に被測定物を配置し、内部導体の一端からの出力により評価するものである。この方法では、比較的小規模の設備で評価が可能であるという利点がある。
一方、前記ループアンテナを用いて電磁波の放射源を精度よく特定するためには、電界成分による影響を排除する必要がある。このためループアンテナにシールドを設けたシールデッド・ループアンテナがしばしば用いられる。このシールデッド・ループアンテナでは、電界成分の影響を受けづらいので、磁界成分のみの測定を比較的高精度で行うことができる。
また、空間に形成された電磁界の電界成分と磁界成分のそれぞれを小型且つ簡易な設備で容易且つ正確に測定することができる電磁界強度の測定方法及び装置の一例としては、再表02/084311号公報に開示されているものが知られている。
この再表02/084311号公報に開示される電磁界の電界強度及び磁界強度を測定する方法では、導体を電磁界内に配置し、導体から出力される出力電流であって電磁界に対して異なる方向に出力される複数の出力電流を同時に測定することにより各出力電流の大きさ及び出力電流間の位相差を測定し、測定した複数の出力電流の大きさ及び位相差に基づき各出力電流に含まれる電界により導体に生じる電界成分電流と磁界により導体に生じる磁界成分電流とを算出し、算出した電界成分電流及び磁界成分電流の大きさに基づき電磁界の電界強度及び磁界強度を算出する。
一般に、電磁界が形成されている空間に導体を配置すると、この導体からは電界により生じる電流(電界成分電流)と磁界により生じる電流(磁界成分電流)との合成電流が出力される。ここで、導体の特定の箇所から出力される電流のうち電界成分電流は、導体が電磁界に対して相対的に方向を変えても一定である。一方、導体の特定の箇所から出力される電流のうち磁界成分電流は、導体が電磁界に対して相対的に方向を変えると、その大きさ及び方向(位相)が変動する。従って、導体から互いに異なる方向に出力される複数の出力電流を同時に測定することにより、その大きさ及び出力電流間の位相差をそれぞれ測定できる。そして、各出力電流の大きさ及び出力電流間の位相差に基づき、出力電流に含まれる電界成分電流及び磁界成分電流を算出するので、導体位置における正確な電磁界強度を測定することができる。
再表02/084311号公報
しかしながら、スペクトラムアナライザによるノイズ信号の測定は、周波数を走査しながらある周波数のエネルギーを測定してスペクトラムを表示しており、測定信号が時間的に変化する場合には、測定値が変動してばらついてしまう。さらに、センサを走査しながら測定する場合も同様に測定値が変動してばらついてしまうため、正確な分布測定ができないことがあった。さらにこの場合、時間変化の要因については測定することができなかった。
また、測定信号レベルが小さく、しかも時間による変化がある場合、ノイズフロア(熱雑音のためランダムに変化する)との切り分けが非常に難しくなり、正確な測定ができないことがあった。例えば、携帯電話内部のノイズはこのような微弱な信号であるため、このノイズが携帯電話の受信感度に与える影響の評価のためには、新たな測定が必要になる。
さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合、その最大値や平均値だけではデジタル通信システムの受信感度への影響を十分に反映しないため、従来のノイズ測定のスペクトラム測定では測定受信感度の関係が十分ではない。即ち、測定信号の大きさの因子だけでは受信感度への影響を十分に反映しないため、この測定信号で作成した電磁界分布のマッピングと受信感度との関係が明確にならないことがあった。このため、スペクトラムの最大値が大きいところで必ずしもデジタル通信への妨害が大きい、あるいはスペクトラムレベルの小さいところで必ずしも妨害が小さいという関係にはならない。この関係を考慮した周波数測定を行うことが課題である。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測定値の時間的変動を考慮した電磁界分布を測定可能な電磁界分布測定方法及びその装置並びにコンピュータプログラム及び情報記録媒体を提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、電磁波の放射源となる被測定物の近傍空間における電界及び/又は磁界の強度をプローブにより検出し、前記被測定物の近傍における電磁界分布を測定する電磁界分布測定方法において、前記被測定物の近傍空間における任意の測定位置に前記プローブを走査し、複数の測定位置において前記強度を所定の測定時間にわたって検出する検出ステップと、
前記被測定物における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布を算出する分布算出ステップとを実行する電磁界分布測定方法を提案する。
本発明の電磁界分布測定方法によれば、信号の大きさが変動する近傍電磁界の測定の場合、被測定物の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定の測定時間にわたって強度信号を検出し、プローブによる測定結果に基づいて、各測定座標における電界及び/又は磁界の少なくとも何れか一方の強度を前記測定時間にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布を算出するので、前記時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係が明確になる。
また、本発明では、上記の電磁界分布測定方法を実現する装置として、電磁波の放射源となる被測定物の近傍における電磁界分布を測定する電磁界分布測定装置において、被測定物の近傍空間における前記強度に対応した信号を出力するプローブと、前記プローブを任意の測定座標に走査させる走査手段と、前記プローブが位置する測定座標毎に、前記信号を所定の測定時間にわたって検出して前記プローブによる測定結果を記憶する検出手段と、前記検出手段に基づき前記強度を前記測定時間にわたって算出する強度算出手段と、前記強度算出手段に基づき前記被測定物の各測定座標における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布を算出する分布算出手段とを備えている電磁界分布測定装置を提案する。
本発明の電磁界分布測定装置によれば、電磁波の放射源となる被測定物の近傍空間における測定面においてプローブが任意の測定座標に走査されて、所定の測定時間における電界及び/又は磁界の強度が測定され、プローブが位置する測定座標毎にプローブによる測定結果が記憶される。さらに、プローブが位置する測定座標とプローブによる測定結果とに基づき電界及び/又は磁界の少なくとも何れか一方の強度が前記測定時間にわたって算出され、この算出された強度に基づいて被測定物近傍位置の各測定座標における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布が算出される。
これにより、信号の大きさが変動する近傍電磁界の測定の場合にも、被測定物の近傍空間における所定の測定面内の1つ以上の測定座標のそれぞれにおいて測定時間の間の信号を検出して、プローブによる測定結果に基づいて、各測定座標における電界及び/又は磁界の少なくとも何れか一方の強度を測定時間にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における前記測定時間内の時間的変化を含む測定面内の電磁界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係が明確になる。
また、本発明では、電磁波の放射源となる被測定物の近傍空間における電界及び/又は磁界の強度から前記被測定物の近傍における電磁界分布を算出するコンピュータプログラムにおいて、被測定物の近傍空間の任意の測定座標おける前記強度に対応した信号を所定の測定時間にわたって検出して記憶する検出ステップと、前記検出ステップに基づき前記測定座標における前記強度を前記測定時間にわたって算出する強度算出ステップと、前記強度算出ステップに基づき前記被測定物における前記測定時間内の時間変化に対応した前記強度の分布を算出する分布算出ステップとを含むコンピュータプログラムを提案する。
また、本発明は、上記コンピュータプログラムが記録されている情報記録媒体を提案する。
さらに、本発明は、電子機器に搭載される被測定物の近傍空間における電磁界分布を示す評価データが記録された情報記録媒体であって、前記被測定物の任意の測定座標における電界及び/又は磁界の強度が、各測定座標における振幅確率分布を示す評価データとして記録されている情報記録媒体を提案する。
本発明の電磁界分布測定方法及びその装置によれば、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
また、本発明のコンピュータプログラム及びこれを記憶した情報記録媒体によれば、上記の電磁界測定方法を実施する装置を容易に実現することができる。
また、本発明の電磁界分布データが記憶されている情報記録媒体によれば、ICや複合モジュール等の電子部品単体を被測定物として上記の電界分布の測定を行い、測定結果の電界分布データを情報記録媒体に記憶あるいは記録し、この情報記録媒体を被測定物の電子部品と共にユーザに提供すれば、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズが発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
本発明の第1実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第1実施形態における電磁界センサを示す構成図
本発明の第1実施形態における電磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第1実施形態における測定原理を説明する図
本発明の第1実施形態における振幅確率の算出方法を説明する図
本発明の第1実施形態における電磁界分布の表示例を示す図
本発明の第1実施形態における電磁界分布の表示例を示す図
電磁界強度のスペクトラム測定結果の一例を示す図
電磁界強度のスペクトラム測定結果の一例を示す図
電磁界強度の振幅確率分布の一例を示す図
電子部品単体の電磁界分布測定を説明する図
電子部品単体の電磁界分布測定を説明する図
本発明の第2実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第2実施形態における電界センサを示す構成図
本発明の第2実施形態における電界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第3実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第3実施形態における磁界センサを示す構成図
本発明の第3実施形態における他の磁界センサを示す図
本発明の第3実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第5実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
所定測定座標における電磁界分布を横軸をチャネル(周波数)とし縦軸を等確率のレベルの値として表したグラフ
所定測定座標における電磁界分布を横軸をチャネル(周波数)とし縦軸を等レベルの振幅確率の値として表したグラフ
本発明の第5実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第6実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第6実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第7実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第7実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
符号の説明
1…被測定物、2…電磁界分布測定装置、3…電磁界センサ(プローブ)、4…センサ走査装置、5,6…ミキサ、7,8…A/Dコンバータ、9…発振器、10…分波器、11…コンピュータ装置、12…信号時間波形演算部、13…電磁界情報記憶部、14…走査装置制御部、15…電磁界分布情報算出部、16…電磁界分布表示部、17…電磁界分布データ記録部、31…ループアンテナ、32,33…同軸ケーブル、34,35…接続コネクタ、100…電磁界分布測定装置、101…電界センサ(プローブ)、103…電界情報記憶部、105…電界分布情報算出部、106…電界分布表示部、111…モノポールアンテナ、112…同軸ケーブル、113…接続コネクタ、200…電磁界分布測定装置、201…磁界センサ(プローブ)、203…磁界情報記憶部、205…磁界分布情報算出部、206…磁界分表示部、300…電磁界分布測定装置、309…発振器、312…信号時間波形演算部、313…電磁界情報記憶部、314…走査装置制御部、315…電磁界分布情報算出部、316…電磁界分布表示部、317…電磁界分布データ記録部、400…電磁界分布測定装置、409…発振器、413…電磁界情報記憶部、414…走査装置制御部、415…電磁界分布情報算出部、416…電磁界分布表示部、417…電磁界分布データ記録部、500…電磁界分布測定装置、509…発振器、513…電磁界情報記憶部、514…走査装置制御部、515…電磁界分布情報算出部、516…電磁界分布表示部、517…電磁界分布データ記録部。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、1は被測定物で、例えば電子機器の回路基板である。2は被測定物1から放射される電磁界の分布を被測定物1の近傍において測定する電磁界分布測定装置である。
なお、被測定物1は、回路基板上に搭載された各電子部品とすることができ、さらに各電子部品群から構成された回路ブロックとすることができる。
電磁界分布測定装置2は、走査用の電磁界センサ(プローブ)3と、センサ走査装置4、ミキサ5,6、アナログ/ディジタル(以下、A/Dと称する)コンバータ7,8、発振器9、分波器10、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、信号時間波形演算部12と、電磁界情報記憶部13、走査装置制御部14、電磁界分布情報算出部15、電磁界分布表示部16、電磁界分布データ記録部17を備えている。
この電磁界分布測定装置2は、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面における近傍電磁界の強度分布を測定するものである。強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する電磁界の強度分布を電磁界分布測定装置2によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用の電磁界センサ3は、図2に示すように、ループアンテナ31を有する。このループアンテナ31はシールドを備えていないループ状の導体である。本実施形態では、ループアンテナ31は、被測定物1に接近できるように方形のループアンテナとして形成されている。ループアンテナ31の両端は、それぞれ同軸ケーブル32,33の中心導体と接続し、各同軸ケーブル32,33の他端側には接続コネクタ34,35が設けられている。
各接続コネクタ34,35は、同軸ケーブル(図示せず)を介してミキサ5,6に接続されている。ここで、ループアンテナ31の一端側及び他端側とミキサ5,6との特性インピーダンスは一致している。本実施形態における電磁界センサ3は、外部導体が銅、誘電体がフッ素樹脂で構成され、特性インピーダンスが50Ω、直径約1mmの同軸ケーブルを加工することにより形成されている。
また、各ミキサ5,6には分波器10を介して発振器9で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5,6の出力端子はA/Dコンバータ7,8に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7,8の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7,8によって変換されたデータはコンピュータ装置11の信号時間波形演算部12に入力される。
信号時間波形演算部12及び電磁界情報記憶部13は、走査装置制御部14の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標毎に電磁界情報記憶部13に記憶される。
走査装置制御部14は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をループアンテナ31が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御する。
電磁界分布情報算出部15は、電磁界情報記憶部13に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する。尚、ここで算出される電磁界分布は、各測定座標毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されている。
電磁界分布表示部16は、電磁界分布情報算出部15に記憶されている電磁界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部17は、電磁界分布情報算出部15に記憶されている電磁界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図3に示すフローチャートを参照して説明する。図3は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部14は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電磁界センサ3の走査を行い、電磁界センサ3の位置する座標情報を取得して電磁界情報記憶部13に記憶する(SA1)と共に、信号時間波形演算部12によって被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電磁界情報記憶部13に記憶する(SA2)。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標毎に電磁界情報記憶部13に記憶される。
次に、電磁界分布情報算出部15が、電磁界情報記憶部13に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SA3)。尚、本実施形態では、電磁界分布として電界強度と磁界強度のそれぞれに関する振幅確率の分布を記憶しており、測定結果を表示する際には何れかを選択して表示可能としている。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SA4)、終了していないときは前記SA1の処理に移行し、終了したときは電磁界分布情報算出部15に記憶されている電磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SA5)。この後、電磁界分布表示部16が、このファイルを読み出して(SA6)、電磁界分布表示部16により測定結果の電磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部17によって測定結果の電磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SA7)。尚、測定結果の電磁界分布を表示する際には、上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。
本実施形態について図4及び図5を参照して説明する。図4は本発明の測定原理を説明する図、図5は振幅確率の算出方法を説明する図である。
まず、図4を参照して本発明の動作原理ついて説明する。図4に示すように、被測定物1のある点に、ある周波数の電圧V(=Asin(ωt+θv))と電流I(=Bsin(ωt+θc))が存在していると仮定する。この点の直上に、両端が同じインピーダンスで終端されている線状の微小な導体31を配置する。このとき導体31には、電圧Vと電界結合して電流(以下、電界成分電流と言う。)Ieが生じるとともに、電流Iと磁界結合して電流(以下、磁界成分電流と言う。)Imが生じる。したがって、導体31の両端からの出力電流O1及びO2は、電界成分電流Ieと磁界成分電流Imの合成電流となる。ここで、導体31の両端から出力される電界成分電流Ieは互いに同位相となるが、磁界成分電流Imは互いに逆位相となる。すなわち、電界成分電流Ieは導体31の向きに応じて変化するが、磁界成分電流Imは導体31の向きに依存しない。本発明は、このことを利用して互いに出力方向が異なる複数の出力電流に基づき、電界成分電流と磁界成分電流を算出することにより、導体31が位置する測定座標における電界強度及び磁界強度を算出する。
以下その方法についてさらに詳細に説明する。
図3において、導体31の両端から出力される出力電流O1及びO2は、各々式(3)及び(4)で表される。
O1 = αAsin(ωt+θv) + βBsin(ωt+θc) …(1)
O2 = αAsin(ωt+θv) - βBsin(ωt+θc) …(2)
ここでα及びβは係数である。したがって、式(3)及び(4)のように、両端の出力電流O1及びO2の和と差をとることで、導体31に流れる電界成分電流Ie及び磁界成分電流Imを算出することができる。
Ie = (O1 + O2)/2 …(3)
Im = (O1 - O2)/2 …(4)
この微小導体31をプローブとして用いることで、導体31が位置する測定座標における電磁界強度を測定することができる。
また、所定座標における電界強度或いは磁界強度の振幅確率を算出する際には、次の式(5)を用いて算出する。
ここで、D(E
k)は振幅確率、T
0は、図5に示すように、測定対象座標における測定時間であり、T
i(i=1〜n、nは自然数)は測定した強度が所定の閾値E
kを連続して越えていた時間である。従って、式(5)により測定時間T
0内において測定した強度が閾値E
kを越えていた総時間(T
1+…+T
n)の割合が閾値E
kのときの振幅確率D(E
k)として算出される。
上記のように算出した振幅確率D(Ek)により、例えば、図6に示すように電界或いは磁界の測定強度が所定の閾値(例えば-50dBm)を越える振幅確率D(Ek)の分布を電磁界分布としてマッピング表示したり、または、図7に示すように、測定した振幅確率D(Ek)が所定の値(例えば10-4)を越える電界或いは磁界の測定強度の分布を電磁界分布としてマッピング表示することができる。
図6は、測定面内において、電界或いは磁界の測定強度が-50dBmを越える振幅確率D(Ek)が10-4〜10-3となる領域と、10-3〜10-2となる領域、10-2〜10-1となる領域、10-1〜1となる領域を表している。また、図7は、測定面内において、振幅確率D(Ek)が10-4を越える出力レベルが、-55dBm〜-50dBmとなる領域と、-50dBm〜-45dBmとなる領域、-45dBm〜-40dBmとなる領域、-40dBm〜-35dBmとなる領域、-35dBm〜-30dBmとなる領域、-30dBm〜-25dBmとなる領域、-25dBm〜-20dBmとなる領域、-20dBm〜-15dBmとなる領域を表している。
これにより、電界或いは磁界の測定強度が変動する近傍電磁界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定時間T0の信号を検出し、各測定座標における電界又は磁界の強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電磁界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。
例えば、機種の異なる2種類の携帯電話のスペクトラムを測定すると図8及び図9のような測定結果が得られた。図8は第1携帯電話のスペクトラム特性であり、図9は第2携帯電話のスペクトラム特性であり、それぞれ横軸が周波数を表し、縦軸が出力を表す。これらのスペクトラム特性を比較しても双方の違いを明確に得ることはできない。しかし、これら2つの携帯電話から出力される電磁界強度の振幅確率分布を求めると、図10に示すようにその違いを明確に把握することができる。図10において、A1は第1携帯電話の振幅確率分布(APD:Amplitude Probability Distribution)であり、A2は第2携帯電話の振幅確率分布であり、横軸が出力を表し、縦軸が振幅確率を表す。図10において、「1E+00」とは確率1/1E+00、つまりスペクトラムのパルス数において1回中1回と言う意味である。また、「1E-07」とは確率1/1E+07、つまり1E+07(107)回中1回という意味である。また、図10は、所定の一定時間内の上記周波数帯域内で、スペクトラムが閾値となる所定の強度を越える確率分布を表している。例えば、第2携帯電話で-60dBm以上の出力値を出す確率は1/1E-05(1E+05回中に1回)ということになる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電界或いは磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電磁界強度の振幅確率分布を電磁界分布として時間的変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎に測定時間T0内の電磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標における分布を電磁界分布としても時間的変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、図11に示すように電子装置50を構成する複数の回路ブロック51〜57のうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、図12に示すように電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリア61に分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図13は第2実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1実施形態と第2実施形態との相違点は、本第2実施形態では、被測定物1から放射される電界の分布を被測定物1の近傍において測定する電磁界分布測定装置100を構成したことである。
電磁界分布測定装置100は、走査用の電界センサ(プローブ)101と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器9、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、電界情報記憶部103、走査装置制御部14、電界分布情報算出部105、電界分布表示部106、電磁界分布データ記録部17を備えている。
この電磁界分布測定装置100は、被測定物1の近傍電界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する電界の強度分布を電磁界分布測定装置100によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用の電界センサ101は、図14に示すように、モノポールアンテナ111を有し、このモノポールアンテナ111はシールドを備えていない直線状の導体である。モノポールアンテナ111は、同軸ケーブル112の一端側の中心導体に接続され、同軸ケーブル112の他端側には接続コネクタ113が設けられている。
接続コネクタ113は、同軸ケーブル(図示せず)を介してミキサ5に接続されている。ここで、モノポールアンテナ111とミキサ5との特性インピーダンスは一致している。本実施形態における電界センサ101は、外部導体が銅、誘電体がフッ素樹脂で構成され、特性インピーダンスが50Ω、直径約1mmの同軸ケーブルを加工することにより形成されている。
また、ミキサ5には発振器9で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の電界情報記憶部103に入力される。
電界情報記憶部103は、走査装置制御部14の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に電界情報記憶部103に記憶される。
走査装置制御部14は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ101が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御する。
電界分布情報算出部105は、電界情報記憶部103に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率D(Ek)の分布を電界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される電界分布は、各測定座標毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されている。
電界分布表示部106は、電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部17は、電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図15に示すフローチャートを参照して説明する。図15は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部14は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電界センサ101の走査を行い、電界センサ101の位置する座標情報を取得して電界情報記憶部103に記憶する(SB1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電界情報記憶部103に記憶する(SB2)。これにより、時間的な変化を含めて電界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に電界情報記憶部103に記憶される。
次に、電界分布情報算出部105が、電界情報記憶部103に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SB3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SB4)、終了していないときは前記SB1の処理に移行し、終了したときは電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SB5)。この後、電界分布表示部106が、このファイルを読み出して(SB6)、電界分布表示部106により測定結果の電界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部17によって測定結果の電界分布データを情報記録媒体に記録する(SB7)。尚、測定結果の電界分布を表示する際には、上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する電界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、電界強度が変動する近傍電界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定時間T0の信号を検出し、各測定座標における電界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電界の測定強度の因子だけではなく時間変動も考慮して電界分布を測定しているので、電界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電界強度の振幅確率分布を電界分布として時間的変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎に測定時間T0内の電界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標における分布を電界分布としても時間的変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図16は第3実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1実施形態と第3実施形態との相違点は、本第3実施形態では、被測定物1から放射される磁界の分布を被測定物1の近傍において測定する電磁界分布測定装置200を構成したことである。
電磁界分布測定装置200は、走査用の磁界センサ(プローブ)201と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器9、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、磁界情報記憶部203と、走査装置制御部14、磁界分布情報算出部205、磁界分布表示部206、電磁界分布データ記録部17を備えている。
この電磁界分布測定装置200は、被測定物1の近傍磁界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する磁界の強度分布を電磁界分布測定装置200によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用磁界センサ201は、シールデッドループ構造となっている。本実施形態では、図17に示すように、多層プリント配線板によりシールデッドループ構造を実現している。具体的には、第1層221及び第3層223にシールド用のパターン224,225を設けるとともに、第2層222に心線に相当するパターン226を設けている。各パターン224〜226間の接続はスルーホール227により実現している。また、各パターンの224〜226は配線板の端部に設けた接続コネクタ228にそれぞれ接続している。このような構造により、図18に示すような一般的なシールデッドループアンテナと同様に磁気センサとして機能する。なお、本実施形態では多層プリント配線板を用いたセンサを用いたが、図18に示すような一般的なシールデッドループアンテナ202であっても本発明は実施できる。しかしながら、多層プリント配線板を用いたセンサでは、小型化が容易であること及び被測定物への接近が容易であることから分解能の向上が期待できる点で、一般的なシールデッドループアンテナ202よりも好適である。
接続コネクタ228は、同軸ケーブル(図示せず)を介してミキサ5に接続されている。ここで、磁界センサ201とミキサ5との特性インピーダンスは一致している。
また、ミキサ5には発振器9で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の磁界情報記憶部203に入力される。
磁界情報記憶部203は、走査装置制御部14の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて磁界の強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に磁界情報記憶部203に記憶される。
走査装置制御部14は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ201が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御する。
磁界分布情報算出部205は、磁界情報記憶部203に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に磁界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率D(Ek)の分布を磁界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される磁界分布は、各測定座標毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されている。
磁界分布表示部206は、磁界分布情報算出部205に記憶されている磁界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部17は、磁界分布情報算出部205に記憶されている電磁界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図19に示すフローチャートを参照して説明する。図19は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部14は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において磁界センサ201の走査を行い、磁界センサ201の位置する座標情報を取得して磁界情報記憶部203に記憶する(SC1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ磁界情報記憶部203に記憶する(SC2)。これにより、時間的な変化を含めて磁界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に磁界情報記憶部203に記憶される。
次に、磁界分布情報算出部205が、磁界情報記憶部203に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に磁界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SC3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SC4)、終了していないときは前記SC1の処理に移行し、終了したときは磁界分布情報算出部205に記憶されている磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SC5)。この後、磁界分布表示部206が、このファイルを読み出して(SC6)、磁界分布表示部206により測定結果の磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部17によって測定結果の磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SC7)。尚、測定結果の磁界分布を表示する際には、上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する磁界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、磁界強度が変動する近傍磁界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定時間T0の信号を検出し、各測定座標における磁界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の磁界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した磁界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動も考慮して磁界分布を測定しているので、磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では磁界強度の振幅確率分布を磁界分布として時間的変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎に測定時間T0内の磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標における分布を磁界分布としても時間的変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図20は第4実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1実施形態と第4実施形態との相違点は、第4実施形態では、被測定物1から放射される電磁界の分布を被測定物1の近傍の複数の測定座標で測定する際に、各測定座標において複数の周波数チャネルを走査して各周波数チャネルにおける電磁界強度の変化を測定し、周波数の変化に対応した電磁界強度の変化を測定する電磁界分布測定装置300を構成したことである。
電磁界分布測定装置300は、走査用の電磁界センサ(プローブ)3と、センサ走査装置4、ミキサ5,6、アナログ/ディジタル(以下、A/Dと称する)コンバータ7,8、発振器309、分波器10、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、信号時間波形演算部312と、電磁界情報記憶部313、走査装置制御部314、電磁界分布情報算出部315、電磁界分布表示部316、電磁界分布データ記録部317を備えている。
この電磁界分布測定装置300は、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面における近傍電磁界の強度分布を測定するものである。強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電磁波が形成する電磁界の強度分布を電磁界分布測定装置300によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
各ミキサ5,6には分波器10を介して発振器309で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5,6の出力端子はA/Dコンバータ7,8に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7,8の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7,8によって変換されたデータはコンピュータ装置11の信号時間波形演算部312に入力される。ここで、発振器309の発振周波数は走査装置制御部314によって制御され、これにより各測定座標毎に複数の周波数チャネルにおける電磁界分布の測定を行えるようになっている。
信号時間波形演算部312及び電磁界情報記憶部313は、走査装置制御部314の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標に対応させて各周波数チャネル毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標における各周波数チャネル毎に電磁界情報記憶部313に記憶される。
走査装置制御部314は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をループアンテナ31が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御すると共に、各測定座標において所定時間T0毎に発振器309の発振周波数を変化させ、前述した複数の周波数チャネルのそれぞれにおける測定を行えるようにする。
電磁界分布情報算出部315は、電磁界情報記憶部313に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標において全ての周波数チャネルにわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する。尚、ここで算出される電磁界分布は、各測定座標の各周波数チャネル毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されていると共に、これに加えて、各測定座標毎に、図21及び図22に示すように横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸をレベル或いは振幅確率の値としたデータで表されている。図21は所定測定座標における電磁界分布を横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸を等確率のレベルの値としたグラフで表したものであり、図22は所定測定座標における電磁界分布を横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸を等レベルの振幅確率の値としたグラフで表したものである。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図23に示すフローチャートを参照して説明する。この図23は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部314は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電磁界センサ3の走査を行い、電磁界センサ3の位置する座標情報を取得して電磁界情報記憶部313に記憶する(SD1)と共に、信号時間波形演算部312によって被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電磁界情報記憶部313に記憶する(SD2)。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に電磁界情報記憶部313に記憶される。
次に、電磁界分布情報算出部315が、電磁界情報記憶部313に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に各周波数チャネルの電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標での複数の周波数チャネル(複数の周波数)にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SD3)。尚、本実施形態では、電磁界分布として電界強度と磁界強度のそれぞれに関する振幅確率の分布を記憶しており、測定結果を表示する際には何れかを選択して表示可能としている。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標及び全ての測定対象となる周波数チャネルにおける測定が終了したか否かを判定し(SD4)、終了していないときは前記SD1の処理に移行し、終了したときは電磁界分布情報算出部315に記憶されている電磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SD5)。この後、電磁界分布表示部316が、このファイルを読み出して(SD6)、電磁界分布表示部316により測定結果の電磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部317によって測定結果の電磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SD7)。尚、測定結果の電磁界分布を表示する際には、周波数チャネル及び上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する電磁界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、電磁界強度が変動する近傍電界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて各周波数チャネル毎に所定時間T0の信号を検出し、各測定座標での各周波数チャネルにおける電界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標の各周波数チャネルにおける所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電界分布を算出するので、時間変動及び周波数変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動及び周波数変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電磁界強度の振幅確率分布を電磁界分布として時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に測定時間T0内の電磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標及び全周波数チャネルにおける分布を電界分布としても時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図24は第5実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1及び第2実施形態と第5実施形態との相違点は、第5実施形態では、被測定物1から放射される電界の分布を被測定物1の近傍の複数の測定座標で測定する際に、各測定座標において複数の周波数チャネルを走査して各周波数チャネルにおける電界強度の変化を測定し、周波数の変化に対応した電界強度の変化を測定する電磁界分布測定装置400を構成したことである。
電磁界分布測定装置400は、走査用の電界センサ(プローブ)101と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器409、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、電界情報記憶部413、走査装置制御部414、電界分布情報算出部415、電界分布表示部416、電磁界分布データ記録部417を備えている。
この電磁界分布測定装置400は、被測定物1の近傍電界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する電界の強度分布を電磁界分布測定装置400によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用の電界センサ101は、図14に示したものと同様である。また、ミキサ5には発振器409で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の電界情報記憶部413に入力される。
電界情報記憶部413は、走査装置制御部414の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に各周波数チャネルのそれぞれにおける電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標に対応させて各周波数チャネル毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化及び周波数の変化を含めて電界の強度の測定結果が、測定した各測定座標における各周波数チャネル毎に電界情報記憶部413に記憶される。
走査装置制御部414は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ101が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御すると共に、各測定座標において所定時間T0毎に発振器409の発振周波数を変化させ、前述した複数の周波数チャネルのそれぞれにおける測定を行えるようにする。
電界分布情報算出部415は、電界情報記憶部413に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標において全ての周波数チャネルにわたる振幅確率D(Ek)の分布を電界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される電界分布は、各測定座標の各周波数チャネル毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されていると共に、これに加えて、各測定座標毎に、図21及び図22に示したように横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸をレベル或いは振幅確率の値としたデータで表されている。
電界分布表示部416は、電界分布情報算出部415に記憶されている電界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部417は、電界分布情報算出部415に記憶されている電界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図25に示すフローチャートを参照して説明する。図25は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部414は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電界センサ101の走査を行い、電界センサ101の位置する座標情報を取得して電界情報記憶部413に記憶する(SE1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電界情報記憶部413に記憶する(SE2)。これにより、時間的な変化を含めて電界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に電界情報記憶部413に記憶される。
次に、電界分布情報算出部415が、電界情報記憶部413に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に各周波数チャネルの電界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標での複数の周波数チャネル(複数の周波数)にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SE3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SE4)、終了していないときは前記SE1の処理に移行し、終了したときは電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SE5)。この後、電界分布表示部416が、このファイルを読み出して(SE6)、電界分布表示部416により測定結果の電界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部417によって測定結果の電界分布データを情報記録媒体に記録する(SE7)。尚、測定結果の電界分布を表示する際には、周波数チャネル及び上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する電界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、電界強度が変動する近傍電界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて各周波数チャネル毎に所定時間T0の信号を検出し、各測定座標での各周波数チャネルにおける電界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標の各周波数チャネルにおける所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電界分布を算出するので、時間変動及び周波数変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電界の測定強度の因子だけではなく時間変動及び周波数変動も考慮して電界分布を測定しているので、電界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電界強度の振幅確率分布を電界分布として時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に測定時間T0内の電界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標及び全周波数チャネルにおける分布を電界分布としても時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
図26は第6実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1及び第3実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1及び第3実施形態と第6実施形態との相違点は、第6実施形態では、被測定物1から放射される磁界の分布を被測定物1の近傍の複数の測定座標で測定する際に、各測定座標において複数の周波数チャネルを走査して各周波数チャネルにおける磁界強度の変化を測定し、周波数の変化に対応した磁界強度の変化を測定する電磁界分布測定装置500を構成したことである。
電磁界分布測定装置500は、走査用の磁界センサ(プローブ)201と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器509、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、磁界情報記憶部513と、走査装置制御部514、磁界分布情報算出部515、磁界分布表示部516、電磁界分布データ記録部517を備えている。
この電磁界分布測定装置500は、被測定物1の近傍磁界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する磁界の強度分布を電磁界分布測定装置200によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用磁界センサ201は、図17或いは図18に示したものと同様である。また、ミキサ5には発振器509で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の磁界情報記憶部513に入力される。
磁界情報記憶部513は、走査装置制御部514の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に各周波数チャネルのそれぞれにおける磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標に対応させて各周波数チャネル毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化及び周波数の変化を含めて磁界の強度の測定結果が、測定した各測定座標における各周波数チャネル毎に磁界情報記憶部513に記憶される。
走査装置制御部514は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ201が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御すると共に、各測定座標において所定時間T0毎に発振器509の発振周波数を変化させ、前述した複数の周波数チャネルのそれぞれにおける測定を行えるようにする。
磁界分布情報算出部515は、磁界情報記憶部513に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に磁界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率D(Ek)の分布を磁界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される磁界分布は、各測定座標の各周波数チャネル毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されていると共に、これに加えて、各測定座標毎に、図21及び図22に示したように横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸をレベル或いは振幅確率の値としたデータで表されている。
磁界分布表示部516は、磁界分布情報算出部515に記憶されている磁界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部517は、磁界分布情報算出部515に記憶されている磁界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図27に示すフローチャートを参照して説明する。図27は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部514は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において磁界センサ201の走査を行い、磁界センサ201の位置する座標情報を取得して磁界情報記憶部513に記憶する(SF1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ磁界情報記憶部513に記憶する(SF2)。これにより、時間的な変化を含めて磁界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に磁界情報記憶部513に記憶される。
次に、磁界分布情報算出部515が、磁界情報記憶部513に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に各周波数チャネルの磁界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標での複数の周波数チャネル(複数の周波数)にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SF3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SF4)、終了していないときは前記SF1の処理に移行し、終了したときは磁界分布情報算出部205に記憶されている磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SF5)。この後、磁界分布表示部516が、このファイルを読み出して(SF6)、磁界分布表示部516により測定結果の磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部517によって測定結果の磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SF7)。尚、測定結果の磁界分布を表示する際には、周波数チャネル及び上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する磁界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、磁界強度が変動する近傍磁界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて各周波数チャネル毎に所定時間T0の信号を検出し、各測定座標での各周波数チャネルにおける磁界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標の各周波数チャネルにおける所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の磁界分布を算出するので、時間変動及び周波数変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した磁界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動及び周波数変動も考慮して磁界分布を測定しているので、磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では磁界強度の振幅確率分布を磁界分布として時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に測定時間T0内の磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標及び全周波数チャネルにおける分布を磁界分布としても時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
尚、上記各実施形態において、情報記録媒体は、電子データを記憶した媒体に限らず、紙等に記録した媒体であっても差し支えない。
尚、上記各実施形態においては、周波数チャネルを所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいうものとして説明したが、上記周波数帯域幅に限定されることはない。さらに、各周波数チャネルをそれぞれ異なる特定の周波数としても良い。
時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布の測定が可能になり、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布の測定ができるので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
本発明は、被測定物からの電磁界の放射により形成された電磁界分布を測定する電磁界分布測定方法及びその装置並びにコンピュータプログラム及び情報記録媒体に関するものである。
従来、EMI(Electro Magnetic Interference)対策として電子機器から放射される電磁波による電磁界の強度測定を行う方法としては、以下に示すようなものが規定されている。
例えば、測定対象となる電子機器、すなわち被測定物(供試機器)をオープンスペースに設置し、この被測定物から3mから10m等の距離をもってループアンテナやダイポールアンテナを設置して測定するものである。このようにアンテナを被測定物から十分な距離をおいて設置した場合には、ループアンテナにおいては遠方放射電磁界の磁界成分だけを測定でき、ダイポールアンテナにおいては電界成分だけを測定できる。そして、遠方放射電磁界の一方の成分を測定すれば他方を算出することができる。また、オープンスペースではなく電波暗室において測定する方法も規定されている。
一方、被測定物において電磁波の放射源を特定する場合もある。例えば、回路基板上においてどの部位から電磁波が強く放射されているかを特定する場合である。このような場合には、前述した測定とは異なり被測定物の近傍において電磁界強度を測定する。一般的には、小型ループアンテナを被測定物に近接させて電磁界の磁界成分を測定している。すなわち、電磁結合による誘電起電力を利用して被測定物によって発生される電磁界の磁界成分を検出するものである。このようにして検出された磁界成分を、演算処理することによって信号の大きさと位相を算出することになるが、従来はこのような磁界成分を測定できる測定器として、例えばベクトルネットワークアナライザやベクトルシグナルアナライザ、スペクトラムアナライザなどがあった。これらの測定器を用いて、ループアンテナ等のセンサを走査することにより被測定物における電流電圧分布を求めて、放射源を特定している。
ところで、前記オープンスペース等による測定方法は広大な設置スペースや多額の設備投資が必要である。そこで近年、放射電磁波強度の評価法として、TEMセルと呼ばれる同軸伝送線路を用いた評価方法が注目されている。この評価方法では、同軸伝送線路の内部導体と外部導体の間に被測定物を配置し、内部導体の一端からの出力により評価するものである。この方法では、比較的小規模の設備で評価が可能であるという利点がある。
一方、前記ループアンテナを用いて電磁波の放射源を精度よく特定するためには、電界成分による影響を排除する必要がある。このためループアンテナにシールドを設けたシールデッド・ループアンテナがしばしば用いられる。このシールデッド・ループアンテナでは、電界成分の影響を受けづらいので、磁界成分のみの測定を比較的高精度で行うことができる。
また、空間に形成された電磁界の電界成分と磁界成分のそれぞれを小型且つ簡易な設備で容易且つ正確に測定することができる電磁界強度の測定方法及び装置の一例としては、再表02/084311号公報に開示されているものが知られている。
この再表02/084311号公報に開示される電磁界の電界強度及び磁界強度を測定する方法では、導体を電磁界内に配置し、導体から出力される出力電流であって電磁界に対して異なる方向に出力される複数の出力電流を同時に測定することにより各出力電流の大きさ及び出力電流間の位相差を測定し、測定した複数の出力電流の大きさ及び位相差に基づき各出力電流に含まれる電界により導体に生じる電界成分電流と磁界により導体に生じる磁界成分電流とを算出し、算出した電界成分電流及び磁界成分電流の大きさに基づき電磁界の電界強度及び磁界強度を算出する。
一般に、電磁界が形成されている空間に導体を配置すると、この導体からは電界により生じる電流(電界成分電流)と磁界により生じる電流(磁界成分電流)との合成電流が出力される。ここで、導体の特定の箇所から出力される電流のうち電界成分電流は、導体が電磁界に対して相対的に方向を変えても一定である。一方、導体の特定の箇所から出力される電流のうち磁界成分電流は、導体が電磁界に対して相対的に方向を変えると、その大きさ及び方向(位相)が変動する。従って、導体から互いに異なる方向に出力される複数の出力電流を同時に測定することにより、その大きさ及び出力電流間の位相差をそれぞれ測定できる。そして、各出力電流の大きさ及び出力電流間の位相差に基づき、出力電流に含まれる電界成分電流及び磁界成分電流を算出するので、導体位置における正確な電磁界強度を測定することができる。
再表02/084311号公報
しかしながら、スペクトラムアナライザによるノイズ信号の測定は、周波数を走査しながらある周波数のエネルギーを測定してスペクトラムを表示しており、測定信号が時間的に変化する場合には、測定値が変動してばらついてしまう。さらに、センサを走査しながら測定する場合も同様に測定値が変動してばらついてしまうため、正確な分布測定ができないことがあった。さらにこの場合、時間変化の要因については測定することができなかった。
また、測定信号レベルが小さく、しかも時間による変化がある場合、ノイズフロア(熱雑音のためランダムに変化する)との切り分けが非常に難しくなり、正確な測定ができないことがあった。例えば、携帯電話内部のノイズはこのような微弱な信号であるため、このノイズが携帯電話の受信感度に与える影響の評価のためには、新たな測定が必要になる。
さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合、その最大値や平均値だけではデジタル通信システムの受信感度への影響を十分に反映しないため、従来のノイズ測定のスペクトラム測定では測定受信感度の関係が十分ではない。即ち、測定信号の大きさの因子だけでは受信感度への影響を十分に反映しないため、この測定信号で作成した電磁界分布のマッピングと受信感度との関係が明確にならないことがあった。このため、スペクトラムの最大値が大きいところで必ずしもデジタル通信への妨害が大きい、あるいはスペクトラムレベルの小さいところで必ずしも妨害が小さいという関係にはならない。この関係を考慮した周波数測定を行うことが課題である。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測定値の時間的変動を考慮した電磁界分布を測定可能な電磁界分布測定方法及びその装置並びにコンピュータプログラム及び情報記録媒体を提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、電磁波の放射源となる被測定物の近傍空間における電界及び/又は磁界の強度をプローブにより検出し、前記被測定物の近傍における電磁界分布を測定する電磁界分布測定方法において、前記被測定物の近傍空間における任意の測定位置に前記プローブを走査し、複数の測定位置において前記強度を所定の測定時間にわたって検出する検出ステップと、
前記被測定物における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布を算出する分布算出ステップとを実行する電磁界分布測定方法を提案する。
本発明の電磁界分布測定方法によれば、信号の大きさが変動する近傍電磁界の測定の場合、被測定物の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定の測定時間にわたって強度信号を検出し、プローブによる測定結果に基づいて、各測定座標における電界及び/又は磁界の少なくとも何れか一方の強度を前記測定時間にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布を算出するので、前記時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係が明確になる。
また、本発明では、上記の電磁界分布測定方法を実現する装置として、電磁波の放射源となる被測定物の近傍における電磁界分布を測定する電磁界分布測定装置において、被測定物の近傍空間における前記強度に対応した信号を出力するプローブと、前記プローブを任意の測定座標に走査させる走査手段と、前記プローブが位置する測定座標毎に、前記信号を所定の測定時間にわたって検出して前記プローブによる測定結果を記憶する検出手段と、前記検出手段に基づき前記強度を前記測定時間にわたって算出する強度算出手段と、前記強度算出手段に基づき前記被測定物の各測定座標における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布を算出する分布算出手段とを備えている電磁界分布測定装置を提案する。
本発明の電磁界分布測定装置によれば、電磁波の放射源となる被測定物の近傍空間における測定面においてプローブが任意の測定座標に走査されて、所定の測定時間における電界及び/又は磁界の強度が測定され、プローブが位置する測定座標毎にプローブによる測定結果が記憶される。さらに、プローブが位置する測定座標とプローブによる測定結果とに基づき電界及び/又は磁界の少なくとも何れか一方の強度が前記測定時間にわたって算出され、この算出された強度に基づいて被測定物近傍位置の各測定座標における前記測定時間内の時間変化情報を含む前記強度の分布が算出される。
これにより、信号の大きさが変動する近傍電磁界の測定の場合にも、被測定物の近傍空間における所定の測定面内の1つ以上の測定座標のそれぞれにおいて測定時間の間の信号を検出して、プローブによる測定結果に基づいて、各測定座標における電界及び/又は磁界の少なくとも何れか一方の強度を測定時間にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における前記測定時間内の時間的変化を含む測定面内の電磁界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係が明確になる。
また、本発明では、電磁波の放射源となる被測定物の近傍空間における電界及び/又は磁界の強度から前記被測定物の近傍における電磁界分布を算出するコンピュータプログラムにおいて、被測定物の近傍空間の任意の測定座標おける前記強度に対応した信号を所定の測定時間にわたって検出して記憶する検出ステップと、前記検出ステップに基づき前記測定座標における前記強度を前記測定時間にわたって算出する強度算出ステップと、前記強度算出ステップに基づき前記被測定物における前記測定時間内の時間変化に対応した前記強度の分布を算出する分布算出ステップとを含むコンピュータプログラムを提案する。
また、本発明は、上記コンピュータプログラムが記録されている情報記録媒体を提案する。
さらに、本発明は、電子機器に搭載される被測定物の近傍空間における電磁界分布を示す評価データが記録された情報記録媒体であって、前記被測定物の任意の測定座標における電界及び/又は磁界の強度が、各測定座標における振幅確率分布を示す評価データとして記録されている情報記録媒体を提案する。
本発明の電磁界分布測定方法及びその装置によれば、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。さらに、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
また、本発明のコンピュータプログラム及びこれを記憶した情報記録媒体によれば、上記の電磁界測定方法を実施する装置を容易に実現することができる。
また、本発明の電磁界分布データが記憶されている情報記録媒体によれば、ICや複合モジュール等の電子部品単体を被測定物として上記の電界分布の測定を行い、測定結果の電界分布データを情報記録媒体に記憶あるいは記録し、この情報記録媒体を被測定物の電子部品と共にユーザに提供すれば、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズが発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、1は被測定物で、例えば電子機器の回路基板である。2は被測定物1から放射される電磁界の分布を被測定物1の近傍において測定する電磁界分布測定装置である。
なお、被測定物1は、回路基板上に搭載された各電子部品とすることができ、さらに各電子部品群から構成された回路ブロックとすることができる。
電磁界分布測定装置2は、走査用の電磁界センサ(プローブ)3と、センサ走査装置4、ミキサ5,6、アナログ/ディジタル(以下、A/Dと称する)コンバータ7,8、発振器9、分波器10、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、信号時間波形演算部12と、電磁界情報記憶部13、走査装置制御部14、電磁界分布情報算出部15、電磁界分布表示部16、電磁界分布データ記録部17を備えている。
この電磁界分布測定装置2は、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面における近傍電磁界の強度分布を測定するものである。強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する電磁界の強度分布を電磁界分布測定装置2によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用の電磁界センサ3は、図2に示すように、ループアンテナ31を有する。このループアンテナ31はシールドを備えていないループ状の導体である。本実施形態では、ループアンテナ31は、被測定物1に接近できるように方形のループアンテナとして形成されている。ループアンテナ31の両端は、それぞれ同軸ケーブル32,33の中心導体と接続し、各同軸ケーブル32,33の他端側には接続コネクタ34,35が設けられている。
各接続コネクタ34,35は、同軸ケーブル(図示せず)を介してミキサ5,6に接続されている。ここで、ループアンテナ31の一端側及び他端側とミキサ5,6との特性インピーダンスは一致している。本実施形態における電磁界センサ3は、外部導体が銅、誘電体がフッ素樹脂で構成され、特性インピーダンスが50Ω、直径約1mmの同軸ケーブルを加工することにより形成されている。
また、各ミキサ5,6には分波器10を介して発振器9で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5,6の出力端子はA/Dコンバータ7,8に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7,8の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7,8によって変換されたデータはコンピュータ装置11の信号時間波形演算部12に入力される。
信号時間波形演算部12及び電磁界情報記憶部13は、走査装置制御部14の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標毎に電磁界情報記憶部13に記憶される。
走査装置制御部14は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をループアンテナ31が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御する。
電磁界分布情報算出部15は、電磁界情報記憶部13に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する。尚、ここで算出される電磁界分布は、各測定座標毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されている。
電磁界分布表示部16は、電磁界分布情報算出部15に記憶されている電磁界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部17は、電磁界分布情報算出部15に記憶されている電磁界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布測定装置の動作を図3に示すフローチャートを参照して説明する。図3は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部14は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電磁界センサ3の走査を行い、電磁界センサ3の位置する座標情報を取得して電磁界情報記憶部13に記憶する(SA1)と共に、信号時間波形演算部12によって被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電磁界情報記憶部13に記憶する(SA2)。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標毎に電磁界情報記憶部13に記憶される。
次に、電磁界分布情報算出部15が、電磁界情報記憶部13に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SA3)。尚、本実施形態では、電磁界分布として電界強度と磁界強度のそれぞれに関する振幅確率の分布を記憶しており、測定結果を表示する際には何れかを選択して表示可能としている。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SA4)、終了していないときは前記SA1の処理に移行し、終了したときは電磁界分布情報算出部15に記憶されている電磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SA5)。この後、電磁界分布表示部16が、このファイルを読み出して(SA6)、電磁界分布表示部16により測定結果の電磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部17によって測定結果の電磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SA7)。尚、測定結果の電磁界分布を表示する際には、上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。
本実施形態について図4及び図5を参照して説明する。図4は本発明の測定原理を説明する図、図5は振幅確率の算出方法を説明する図である。
まず、図4を参照して本発明の動作原理ついて説明する。図4に示すように、被測定物1のある点に、ある周波数の電圧V(=Asin(ωt+θv))と電流I(=Bsin(ωt+θc))が存在していると仮定する。この点の直上に、両端が同じインピーダンスで終端されている線状の微小な導体31を配置する。このとき導体31には、電圧Vと電界結合して電流(以下、電界成分電流と言う。)Ieが生じるとともに、電流Iと磁界結合して電流(以下、磁界成分電流と言う。)Imが生じる。したがって、導体31の両端からの出力電流O1及びO2は、電界成分電流Ieと磁界成分電流Imの合成電流となる。ここで、導体31の両端から出力される電界成分電流Ieは互いに同位相となるが、磁界成分電流Imは互いに逆位相となる。すなわち、電界成分電流Ieは導体31の向きに応じて変化するが、磁界成分電流Imは導体31の向きに依存しない。本発明は、このことを利用して互いに出力方向が異なる複数の出力電流に基づき、電界成分電流と磁界成分電流を算出することにより、導体31が位置する測定座標における電界強度及び磁界強度を算出する。
以下その方法についてさらに詳細に説明する。
図4において、導体31の両端から出力される出力電流O1及びO2は、各々式(1)及び(2)で表される。
O1 = αAsin(ωt+θv) + βBsin(ωt+θc) …(1)
O2 = αAsin(ωt+θv) - βBsin(ωt+θc) …(2)
ここでα及びβは係数である。したがって、式(3)及び(4)のように、両端の出力電流O1及びO2の和と差をとることで、導体31に流れる電界成分電流Ie及び磁界成分電流Imを算出することができる。
Ie = (O1 + O2)/2 …(3)
Im = (O1 - O2)/2 …(4)
この微小導体31をプローブとして用いることで、導体31が位置する測定座標における電磁界強度を測定することができる。
また、所定座標における電界強度或いは磁界強度の振幅確率を算出する際には、次の式(5)を用いて算出する。
ここで、D(Ek)は振幅確率、T0は、図5に示すように、測定対象座標における測定時間であり、Ti(i=1〜n、nは自然数)は測定した強度が所定の閾値Ekを連続して越えていた時間である。従って、式(5)により測定時間T0内において測定した強度が閾値Ekを越えていた総時間(T1+…+Tn)の割合が閾値Ekのときの振幅確率D(Ek)として算出される。
上記のように算出した振幅確率D(Ek)により、例えば、図6に示すように電界或いは磁界の測定強度が所定の閾値(例えば-50dBm)を越える振幅確率D(Ek)の分布を電磁界分布としてマッピング表示したり、または、図7に示すように、測定した振幅確率D(Ek)が所定の値(例えば10-4)を越える電界或いは磁界の測定強度の分布を電磁界分布としてマッピング表示することができる。
図6は、測定面内において、電界或いは磁界の測定強度が-50dBmを越える振幅確率D(Ek)が10-4〜10-3となる領域と、10-3〜10-2となる領域、10-2〜10-1となる領域、10-1〜1となる領域を表している。また、図7は、測定面内において、振幅確率D(Ek)が10-4を越える出力レベルが、-55dBm〜-50dBmとなる領域と、-50dBm〜-45dBmとなる領域、-45dBm〜-40dBmとなる領域、-40dBm〜-35dBmとなる領域、-35dBm〜-30dBmとなる領域、-30dBm〜-25dBmとなる領域、-25dBm〜-20dBmとなる領域、-20dBm〜-15dBmとなる領域を表している。
これにより、電界或いは磁界の測定強度が変動する近傍電磁界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定時間T0の信号を検出し、各測定座標における電界又は磁界の強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電磁界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。
例えば、機種の異なる2種類の携帯電話のスペクトラムを測定すると図8及び図9のような測定結果が得られた。図8は第1携帯電話のスペクトラム特性であり、図9は第2携帯電話のスペクトラム特性であり、それぞれ横軸が周波数を表し、縦軸が出力を表す。これらのスペクトラム特性を比較しても双方の違いを明確に得ることはできない。しかし、これら2つの携帯電話から出力される電磁界強度の振幅確率分布を求めると、図10に示すようにその違いを明確に把握することができる。図10において、A1は第1携帯電話の振幅確率分布(APD:Amplitude Probability Distribution)であり、A2は第2携帯電話の振幅確率分布であり、横軸が出力を表し、縦軸が振幅確率を表す。図10において、「1E+00」とは確率1/1E+00、つまりスペクトラムのパルス数において1回中1回と言う意味である。また、「1E-07」とは確率1/1E+07、つまり1E+07(107)回中1回という意味である。また、図10は、所定の一定時間内の上記周波数帯域内で、スペクトラムが閾値となる所定の強度を越える確率分布を表している。例えば、第2携帯電話で-60dBm以上の出力値を出す確率は1/1E-05(1E+05回中に1回)ということになる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電界或いは磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電磁界強度の振幅確率分布を電磁界分布として時間的変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎に測定時間T0内の電磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標における分布を電磁界分布としても時間的変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、図11に示すように電子装置50を構成する複数の回路ブロック51〜57のうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、図12に示すように電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリア61に分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図13は第2実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1実施形態と第2実施形態との相違点は、本第2実施形態では、被測定物1から放射される電界の分布を被測定物1の近傍において測定する電磁界分布測定装置100を構成したことである。
電磁界分布測定装置100は、走査用の電界センサ(プローブ)101と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器9、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、電界情報記憶部103、走査装置制御部14、電界分布情報算出部105、電界分布表示部106、電磁界分布データ記録部17を備えている。
この電磁界分布測定装置100は、被測定物1の近傍電界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する電界の強度分布を電磁界分布測定装置100によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用の電界センサ101は、図14に示すように、モノポールアンテナ111を有し、このモノポールアンテナ111はシールドを備えていない直線状の導体である。モノポールアンテナ111は、同軸ケーブル112の一端側の中心導体に接続され、同軸ケーブル112の他端側には接続コネクタ113が設けられている。
接続コネクタ113は、同軸ケーブル(図示せず)を介してミキサ5に接続されている。ここで、モノポールアンテナ111とミキサ5との特性インピーダンスは一致している。本実施形態における電界センサ101は、外部導体が銅、誘電体がフッ素樹脂で構成され、特性インピーダンスが50Ω、直径約1mmの同軸ケーブルを加工することにより形成されている。
また、ミキサ5には発振器9で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の電界情報記憶部103に入力される。
電界情報記憶部103は、走査装置制御部14の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に電界情報記憶部103に記憶される。
走査装置制御部14は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ101が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御する。
電界分布情報算出部105は、電界情報記憶部103に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率D(Ek)の分布を電界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される電界分布は、各測定座標毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されている。
電界分布表示部106は、電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部17は、電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図15に示すフローチャートを参照して説明する。図15は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部14は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電界センサ101の走査を行い、電界センサ101の位置する座標情報を取得して電界情報記憶部103に記憶する(SB1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電界情報記憶部103に記憶する(SB2)。これにより、時間的な変化を含めて電界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に電界情報記憶部103に記憶される。
次に、電界分布情報算出部105が、電界情報記憶部103に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に電界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SB3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SB4)、終了していないときは前記SB1の処理に移行し、終了したときは電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SB5)。この後、電界分布表示部106が、このファイルを読み出して(SB6)、電界分布表示部106により測定結果の電界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部17によって測定結果の電界分布データを情報記録媒体に記録する(SB7)。尚、測定結果の電界分布を表示する際には、上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する電界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、電界強度が変動する近傍電界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定時間T0の信号を検出し、各測定座標における電界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電界の測定強度の因子だけではなく時間変動も考慮して電界分布を測定しているので、電界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電界強度の振幅確率分布を電界分布として時間的変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎に測定時間T0内の電界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標における分布を電界分布としても時間的変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図16は第3実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1実施形態と第3実施形態との相違点は、本第3実施形態では、被測定物1から放射される磁界の分布を被測定物1の近傍において測定する電磁界分布測定装置200を構成したことである。
電磁界分布測定装置200は、走査用の磁界センサ(プローブ)201と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器9、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、磁界情報記憶部203と、走査装置制御部14、磁界分布情報算出部205、磁界分布表示部206、電磁界分布データ記録部17を備えている。
この電磁界分布測定装置200は、被測定物1の近傍磁界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する磁界の強度分布を電磁界分布測定装置200によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用磁界センサ201は、シールデッドループ構造となっている。本実施形態では、図17に示すように、多層プリント配線板によりシールデッドループ構造を実現している。具体的には、第1層221及び第3層223にシールド用のパターン224,225を設けるとともに、第2層222に心線に相当するパターン226を設けている。各パターン224〜226間の接続はスルーホール227により実現している。また、各パターンの224〜226は配線板の端部に設けた接続コネクタ228にそれぞれ接続している。このような構造により、図18に示すような一般的なシールデッドループアンテナと同様に磁気センサとして機能する。なお、本実施形態では多層プリント配線板を用いたセンサを用いたが、図18に示すような一般的なシールデッドループアンテナ202であっても本発明は実施できる。しかしながら、多層プリント配線板を用いたセンサでは、小型化が容易であること及び被測定物への接近が容易であることから分解能の向上が期待できる点で、一般的なシールデッドループアンテナ202よりも好適である。
接続コネクタ228は、同軸ケーブル(図示せず)を介してミキサ5に接続されている。ここで、磁界センサ201とミキサ5との特性インピーダンスは一致している。
また、ミキサ5には発振器9で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の磁界情報記憶部203に入力される。
磁界情報記憶部203は、走査装置制御部14の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて磁界の強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に磁界情報記憶部203に記憶される。
走査装置制御部14は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面を磁界センサ201が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御する。
磁界分布情報算出部205は、磁界情報記憶部203に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に磁界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率D(Ek)の分布を磁界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される磁界分布は、各測定座標毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されている。
磁界分布表示部206は、磁界分布情報算出部205に記憶されている磁界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部17は、磁界分布情報算出部205に記憶されている電磁界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図19に示すフローチャートを参照して説明する。図19は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部14は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において磁界センサ201の走査を行い、磁界センサ201の位置する座標情報を取得して磁界情報記憶部203に記憶する(SC1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ磁界情報記憶部203に記憶する(SC2)。これにより、時間的な変化を含めて磁界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎に磁界情報記憶部203に記憶される。
次に、磁界分布情報算出部205が、磁界情報記憶部203に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に磁界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SC3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SC4)、終了していないときは前記SC1の処理に移行し、終了したときは磁界分布情報算出部205に記憶されている磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SC5)。この後、磁界分布表示部206が、このファイルを読み出して(SC6)、磁界分布表示部206により測定結果の磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部17によって測定結果の磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SC7)。尚、測定結果の磁界分布を表示する際には、上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する磁界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、磁界強度が変動する近傍磁界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて所定時間T0の信号を検出し、各測定座標における磁界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標における所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の磁界分布を算出するので、時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した磁界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動も考慮して磁界分布を測定しているので、磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では磁界強度の振幅確率分布を磁界分布として時間的変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎に測定時間T0内の磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標における分布を磁界分布としても時間的変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図20は第4実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1実施形態と第4実施形態との相違点は、第4実施形態では、被測定物1から放射される電磁界の分布を被測定物1の近傍の複数の測定座標で測定する際に、各測定座標において複数の周波数チャネルを走査して各周波数チャネルにおける電磁界強度の変化を測定し、周波数の変化に対応した電磁界強度の変化を測定する電磁界分布測定装置300を構成したことである。
電磁界分布測定装置300は、走査用の電磁界センサ(プローブ)3と、センサ走査装置4、ミキサ5,6、アナログ/ディジタル(以下、A/Dと称する)コンバータ7,8、発振器309、分波器10、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、信号時間波形演算部312と、電磁界情報記憶部313、走査装置制御部314、電磁界分布情報算出部315、電磁界分布表示部316、電磁界分布データ記録部317を備えている。
この電磁界分布測定装置300は、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面における近傍電磁界の強度分布を測定するものである。強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電磁波が形成する電磁界の強度分布を電磁界分布測定装置500によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
各ミキサ5,6には分波器10を介して発振器309で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5,6の出力端子はA/Dコンバータ7,8に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7,8の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7,8によって変換されたデータはコンピュータ装置11の信号時間波形演算部312に入力される。ここで、発振器309の発振周波数は走査装置制御部314によって制御され、これにより各測定座標毎に複数の周波数チャネルにおける電磁界分布の測定を行えるようになっている。
信号時間波形演算部312及び電磁界情報記憶部313は、走査装置制御部314の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標に対応させて各周波数チャネル毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標における各周波数チャネル毎に電磁界情報記憶部313に記憶される。
走査装置制御部314は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をループアンテナ31が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御すると共に、各測定座標において所定時間T0毎に発振器309の発振周波数を変化させ、前述した複数の周波数チャネルのそれぞれにおける測定を行えるようにする。
電磁界分布情報算出部315は、電磁界情報記憶部313に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標において全ての周波数チャネルにわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する。尚、ここで算出される電磁界分布は、各測定座標の各周波数チャネル毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されていると共に、これに加えて、各測定座標毎に、図21及び図22に示すように横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸をレベル或いは振幅確率の値としたデータで表されている。図21は所定測定座標における電磁界分布を横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸を等確率のレベルの値としたグラフで表したものであり、図22は所定測定座標における電磁界分布を横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸を等レベルの振幅確率の値としたグラフで表したものである。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図23に示すフローチャートを参照して説明する。この図23は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部314は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電磁界センサ3の走査を行い、電磁界センサ3の位置する座標情報を取得して電磁界情報記憶部313に記憶する(SD1)と共に、信号時間波形演算部312によって被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度と方向及び磁界の強度と方向を算出して、その算出結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電磁界情報記憶部313に記憶する(SD2)。これにより、時間的な変化を含めて電界の強度と方向及び磁界の強度と方向の測定結果が、測定した各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に電磁界情報記憶部313に記憶される。
次に、電磁界分布情報算出部315が、電磁界情報記憶部313に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に各周波数チャネルの電界強度と磁界強度のそれぞれについて、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標での複数の周波数チャネル(複数の周波数)にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SD3)。尚、本実施形態では、電磁界分布として電界強度と磁界強度のそれぞれに関する振幅確率の分布を記憶しており、測定結果を表示する際には何れかを選択して表示可能としている。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標及び全ての測定対象となる周波数チャネルにおける測定が終了したか否かを判定し(SD4)、終了していないときは前記SD1の処理に移行し、終了したときは電磁界分布情報算出部315に記憶されている電磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SD5)。この後、電磁界分布表示部316が、このファイルを読み出して(SD6)、電磁界分布表示部316により測定結果の電磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部317によって測定結果の電磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SD7)。尚、測定結果の電磁界分布を表示する際には、周波数チャネル及び上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する電磁界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、電磁界強度が変動する近傍電界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて各周波数チャネル毎に所定時間T0の信号を検出し、各測定座標での各周波数チャネルにおける電界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標の各周波数チャネルにおける所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電界分布を算出するので、時間変動及び周波数変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動及び周波数変動も考慮して電磁界分布を測定しているので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電磁界強度の振幅確率分布を電磁界分布として時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に測定時間T0内の電磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標及び全周波数チャネルにおける分布を電界分布としても時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図24は第5実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1及び第2実施形態と第5実施形態との相違点は、第5実施形態では、被測定物1から放射される電界の分布を被測定物1の近傍の複数の測定座標で測定する際に、各測定座標において複数の周波数チャネルを走査して各周波数チャネルにおける電界強度の変化を測定し、周波数の変化に対応した電界強度の変化を測定する電磁界分布測定装置400を構成したことである。
電磁界分布測定装置400は、走査用の電界センサ(プローブ)101と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器409、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、電界情報記憶部413、走査装置制御部414、電界分布情報算出部415、電界分布表示部416、電磁界分布データ記録部417を備えている。
この電磁界分布測定装置400は、被測定物1の近傍電界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する電界の強度分布を電磁界分布測定装置400によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用の電界センサ101は、図14に示したものと同様である。また、ミキサ5には発振器409で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の電界情報記憶部413に入力される。
電界情報記憶部413は、走査装置制御部414の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に各周波数チャネルのそれぞれにおける電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標に対応させて各周波数チャネル毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化及び周波数の変化を含めて電界の強度の測定結果が、測定した各測定座標における各周波数チャネル毎に電界情報記憶部413に記憶される。
走査装置制御部414は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ101が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御すると共に、各測定座標において所定時間T0毎に発振器409の発振周波数を変化させ、前述した複数の周波数チャネルのそれぞれにおける測定を行えるようにする。
電界分布情報算出部415は、電界情報記憶部413に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に複数の周波数チャネルのそれぞれにおける電界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標において全ての周波数チャネルにわたる振幅確率D(Ek)の分布を電界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される電界分布は、各測定座標の各周波数チャネル毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されていると共に、これに加えて、各測定座標毎に、図21及び図22に示したように横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸をレベル或いは振幅確率の値としたデータで表されている。
電界分布表示部416は、電界分布情報算出部415に記憶されている電界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部417は、電界分布情報算出部415に記憶されている電界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図25に示すフローチャートを参照して説明する。図25は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部414は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において電界センサ101の走査を行い、電界センサ101の位置する座標情報を取得して電界情報記憶部413に記憶する(SE1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に電界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ電界情報記憶部413に記憶する(SE2)。これにより、時間的な変化を含めて電界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に電界情報記憶部413に記憶される。
次に、電界分布情報算出部415が、電界情報記憶部413に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に各周波数チャネルの電界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標での複数の周波数チャネル(複数の周波数)にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SE3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SE4)、終了していないときは前記SE1の処理に移行し、終了したときは電界分布情報算出部105に記憶されている電界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SE5)。この後、電界分布表示部416が、このファイルを読み出して(SE6)、電界分布表示部416により測定結果の電界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部417によって測定結果の電界分布データを情報記録媒体に記録する(SE7)。尚、測定結果の電界分布を表示する際には、周波数チャネル及び上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する電界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、電界強度が変動する近傍電界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて各周波数チャネル毎に所定時間T0の信号を検出し、各測定座標での各周波数チャネルにおける電界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標の各周波数チャネルにおける所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の電界分布を算出するので、時間変動及び周波数変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、電界の測定強度の因子だけではなく時間変動及び周波数変動も考慮して電界分布を測定しているので、電界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では電界強度の振幅確率分布を電界分布として時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に測定時間T0内の電界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標及び全周波数チャネルにおける分布を電界分布としても時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
図26は第6実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図である。図において、前述した第1及び第3実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。前述した第1及び第3実施形態と第6実施形態との相違点は、第6実施形態では、被測定物1から放射される磁界の分布を被測定物1の近傍の複数の測定座標で測定する際に、各測定座標において複数の周波数チャネルを走査して各周波数チャネルにおける磁界強度の変化を測定し、周波数の変化に対応した磁界強度の変化を測定する電磁界分布測定装置500を構成したことである。
電磁界分布測定装置500は、走査用の磁界センサ(プローブ)201と、センサ走査装置4、ミキサ5、A/Dコンバータ7、発振器509、コンピュータ装置11とから構成されている。
また、コンピュータ装置11は、磁界情報記憶部513と、走査装置制御部514、磁界分布情報算出部515、磁界分布表示部516、電磁界分布データ記録部517を備えている。
この電磁界分布測定装置500は、被測定物1の近傍磁界の強度分布を測定するものであり、強度分布の測定中は、被測定物1は動作状態にさせ、被測定物1の動作中に放射される所定の周波数チャネルの電磁波が形成する磁界の強度分布を電磁界分布測定装置200によって測定する。尚、本実施形態では、上記周波数チャネルとは所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいう。
走査用磁界センサ201は、図17或いは図18に示したものと同様である。また、ミキサ5には発振器509で生成された周波数変換用の基準信号が入力され、ミキサ5の出力端子はA/Dコンバータ7に接続されている。これにより、A/Dコンバータ7の入力信号がダウンコンバートされると共に、入力信号はディジタルデータに変換され、A/Dコンバータ7によって変換されたデータはコンピュータ装置11の磁界情報記憶部513に入力される。
磁界情報記憶部513は、走査装置制御部514の制御信号に基づき動作し、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に各周波数チャネルのそれぞれにおける磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標に対応させて各周波数チャネル毎に所定時間T0ずつ記憶する。これにより、時間的な変化及び周波数の変化を含めて磁界の強度の測定結果が、測定した各測定座標における各周波数チャネル毎に磁界情報記憶部513に記憶される。
走査装置制御部514は、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面をモノポールアンテナ201が走査するようにセンサ走査装置4の駆動を制御すると共に、各測定座標において所定時間T0毎に発振器509の発振周波数を変化させ、前述した複数の周波数チャネルのそれぞれにおける測定を行えるようにする。
磁界分布情報算出部515は、磁界情報記憶部513に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に磁界強度について、所定の閾値を用いた振幅確率D(Ek)を算出し、閾値毎に全ての測定座標にわたる振幅確率D(Ek)の分布を磁界分布として記憶する。尚、振幅確率D(Ek)の算出方法は前述した第1実施形態と同様である。また、ここで算出される磁界分布は、各測定座標の各周波数チャネル毎に横軸を時間とし縦軸を振幅確率の値としたデータで表されていると共に、これに加えて、各測定座標毎に、図21及び図22に示したように横軸を周波数チャネル(周波数)とし縦軸をレベル或いは振幅確率の値としたデータで表されている。
磁界分布表示部516は、磁界分布情報算出部515に記憶されている磁界分布をマッピング表示する。
電磁界分布データ記録部517は、磁界分布情報算出部515に記憶されている磁界分布情報のデータを、コンパクトディスク(CD)やDVD或いはフレキシブル磁気ディスク等の持ち運びが容易に行えるコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録する。
次に、本実施形態の電磁界分布装置の動作を図27に示すフローチャートを参照して説明する。図27は、コンピュータ装置11のプログラム処理を説明するフローチャートである。
測定が開始されると、走査装置制御部514は被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内において磁界センサ201の走査を行い、磁界センサ201の位置する座標情報を取得して磁界情報記憶部513に記憶する(SF1)と共に、被測定物1の近傍に設定された所定の測定面内における測定対象となる各測定座標毎に磁界の強度を入力して、その入力結果を各測定座標毎に所定時間T0ずつ磁界情報記憶部513に記憶する(SF2)。これにより、時間的な変化を含めて磁界強度の測定結果が、測定した各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に磁界情報記憶部513に記憶される。
次に、磁界分布情報算出部515が、磁界情報記憶部513に記憶されている測定結果に基づいて、各測定座標毎に各周波数チャネルの磁界強度について、所定の測定対象となる1つ以上の閾値を用いた振幅確率を算出し、閾値毎に全ての測定座標での複数の周波数チャネル(複数の周波数)にわたる振幅確率の分布を電磁界分布として記憶する(SF3)。
次いで、コンピュータ装置11は、走査範囲が終了したか否か、すなわち全ての測定対象となる座標における測定が終了したか否かを判定し(SF4)、終了していないときは前記SF1の処理に移行し、終了したときは磁界分布情報算出部205に記憶されている磁界分布の測定結果の情報をファイルに書き出す(SF5)。この後、磁界分布表示部516が、このファイルを読み出して(SF6)、磁界分布表示部516により測定結果の磁界分布を表示すると共に、電磁界分布データ記録部517によって測定結果の磁界分布データを情報記録媒体に記録する(SF7)。尚、測定結果の磁界分布を表示する際には、周波数チャネル及び上記振幅確率の閾値を指定して表示することが可能である。また、振幅確率を指定して、指定した振幅確率に該当する磁界強度の分布を表示させることも可能である。
これにより、磁界強度が変動する近傍磁界の測定の場合、被測定物1の近傍空間における所定の測定面内の複数の測定座標のそれぞれにおいて各周波数チャネル毎に所定時間T0の信号を検出し、各測定座標での各周波数チャネルにおける磁界強度を所定時間T0にわたって算出し、算出した強度に基づき各測定座標の各周波数チャネルにおける所定時間T0内の時間的変化を含む測定面内の磁界分布を算出するので、時間変動及び周波数変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した磁界分布が測定可能となる。
さらに、本実施形態は、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、磁界の測定強度の因子だけではなく時間変動及び周波数変動も考慮して磁界分布を測定しているので、磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
尚、上記実施形態では磁界強度の振幅確率分布を磁界分布として時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握できるようにしたが、各測定座標毎及び各周波数チャネル毎に測定時間T0内の磁界強度の平均値を算出して、この平均値を用いて全測定座標及び全周波数チャネルにおける分布を磁界分布としても時間的変化及び周波数変化を考慮した分布状態を把握することができる。
また、上記実施形態では、被測定物1の上面から所定距離の仮想平面を測定面としたが、被測定物1を囲む面、例えば被測定物1を囲む直方体の6つの面を測定面として電磁界分布を測定しその測定結果をマッピング表示するようにしても良い。
また、前述したように電子装置を構成する複数の回路ブロックのうちのノイズを発生する可能性のあるICや複合モジュール部品などの電子部品のそれぞれについて、電子部品単体での電磁界分布データを取得してマトリックス状の複数のエリアに分割してマッピングしたデータを情報記録媒体に記憶あるいは記録させて、この情報記憶媒体を被測定物の電子部品に添付してユーザに提供しても良い。尚、周知の不揮発性メモリを備えたRFタグに前述した電子部品の電磁界分布データを記憶させて、これを電子部品に添付、装着、埋設するなどしても良い。
このように、ICや複合モジュール部品等の電子部品単体を被測定物1として上記の電磁界分布の測定を行い、測定結果の電磁界分布データを記憶あるいは記録した情報記録媒体を被測定物1の電子部品と共にユーザに提供することにより、ユーザは電子部品のどの部分から最もノイズとなる電磁波が発生しているのかを知ることができ、これを考慮してこの電子部品を用いた電子回路或いは電子装置の設計を行うことができる。
また、上記のコンピュータプログラムを記録した情報記録媒体を作成することにより、汎用のコンピュータ装置を用いて上記の電磁界分布測定装置を容易に構成することができる。
尚、上記各実施形態において、情報記録媒体は、電子データを記憶した媒体に限らず、紙等に記録した媒体であっても差し支えない。
尚、上記各実施形態においては、周波数チャネルを所定周波数を中心として所定の周波数帯域幅(例えば、上下0.1MHzの帯域幅)を有する周波数帯をいうものとして説明したが、上記周波数帯域幅に限定されることはない。さらに、各周波数チャネルをそれぞれ異なる特定の周波数としても良い。
時間変動を考慮し且つノイズフロア(熱雑音)の影響を低減した電磁界分布の測定が可能になり、ディジタル通信機の受信感度に及ぼす影響を測定する場合においても、測定信号の大きさの因子だけではなく時間変動も考慮して電磁界分布の測定ができるので、電磁界分布のマッピングと受信感度との関係を明確にすることができる。
本発明の第1実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第1実施形態における電磁界センサを示す構成図
本発明の第1実施形態における電磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第1実施形態における測定原理を説明する図
本発明の第1実施形態における振幅確率の算出方法を説明する図
本発明の第1実施形態における電磁界分布の表示例を示す図
本発明の第1実施形態における電磁界分布の表示例を示す図
電磁界強度のスペクトラム測定結果の一例を示す図
電磁界強度のスペクトラム測定結果の一例を示す図
電磁界強度の振幅確率分布の一例を示す図
電子部品単体の電磁界分布測定を説明する図
電子部品単体の電磁界分布測定を説明する図
本発明の第2実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第2実施形態における電界センサを示す構成図
本発明の第2実施形態における電界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第3実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第3実施形態における磁界センサを示す構成図
本発明の第3実施形態における他の磁界センサを示す図
本発明の第3実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第4実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
所定測定座標における電磁界分布を横軸をチャネル(周波数)とし縦軸を等確率のレベルの値として表したグラフ
所定測定座標における電磁界分布を横軸をチャネル(周波数)とし縦軸を等レベルの振幅確率の値として表したグラフ
本発明の第4実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第5実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第5実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
本発明の第6実施形態における電磁界分布測定装置を示す構成図
本発明の第6実施形態における磁界分布測定方法を説明するフローチャート
符号の説明
1…被測定物、2…電磁界分布測定装置、3…電磁界センサ(プローブ)、4…センサ走査装置、5,6…ミキサ、7,8…A/Dコンバータ、9…発振器、10…分波器、11…コンピュータ装置、12…信号時間波形演算部、13…電磁界情報記憶部、14…走査装置制御部、15…電磁界分布情報算出部、16…電磁界分布表示部、17…電磁界分布データ記録部、31…ループアンテナ、32,33…同軸ケーブル、34,35…接続コネクタ、100…電磁界分布測定装置、101…電界センサ(プローブ)、103…電界情報記憶部、105…電界分布情報算出部、106…電界分布表示部、111…モノポールアンテナ、112…同軸ケーブル、113…接続コネクタ、200…電磁界分布測定装置、201…磁界センサ(プローブ)、203…磁界情報記憶部、205…磁界分布情報算出部、206…磁界分表示部、300…電磁界分布測定装置、309…発振器、312…信号時間波形演算部、313…電磁界情報記憶部、314…走査装置制御部、315…電磁界分布情報算出部、316…電磁界分布表示部、317…電磁界分布データ記録部、400…電磁界分布測定装置、409…発振器、413…電磁界情報記憶部、414…走査装置制御部、415…電磁界分布情報算出部、416…電磁界分布表示部、417…電磁界分布データ記録部、500…電磁界分布測定装置、509…発振器、513…電磁界情報記憶部、514…走査装置制御部、515…電磁界分布情報算出部、516…電磁界分布表示部、517…電磁界分布データ記録部。