JP2001356142A - 電磁界強度算出装置、算出方法、および算出結果表示方法 - Google Patents

電磁界強度算出装置、算出方法、および算出結果表示方法

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JP2001356142A JP2000179085A JP2000179085A JP2001356142A JP 2001356142 A JP2001356142 A JP 2001356142A JP 2000179085 A JP2000179085 A JP 2000179085A JP 2000179085 A JP2000179085 A JP 2000179085A JP 2001356142 A JP2001356142 A JP 2001356142A
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義朗 田中
Katsumi Honma
克巳 本間
Takeshi Kishimoto
武士 岸本
Makoto Mukai
誠 向井
Shinichi Otsu
信一 大津
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非線形素子を含む電気回路装置の放射する電
磁界強度の解析において安定なインパルス応答計算を可
能とし、またモーメント法の計算量、逆FFTにおける
畳み込み計算量を削減する。 【解決手段】 モーメント法で用いられる解析周波数の
範囲を、周波数応答の実数部が零になる周波数のうち
で、解析周波数の最低値に最も近い範囲に決定する手段
2と、決定された範囲の解析周波数に対応して過渡解析
としてインパルス応答を求める手段3とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気回路装置の放射
する電磁界強度の算出方式に係り、更に詳しくは解析モ
デルを閉回路と開回路とに分類して計算を行うことによ
って安定したインパルス応答の計算を可能とし、また電
磁界強度算出のための計算量を削減することができる電
磁界強度算出装置、および算出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電気回路装置から放射される電磁波は、
例えばテレビやラジオなどの他の電波と干渉することか
ら、最近各国で厳しく規制されるようになった。このよ
うな規制の規格として日本ではVCCI規格があり、米
国ではFCC規格、ドイツではVDE規格がある。
【0003】このような電波規制を満足するためには、
シールド技術やフィルタ技術などのような種々の対策を
使う必要があり、これらの技術がどの程度放射電磁波を
減少させることができるか、定量的にシミュレートする
必要がある。このようなことから、高い精度で電気回路
装置から放射される電磁界強度を算出するための電磁界
強度算出装置の構築が必要となる。
【0004】任意形状の物体から放射される電磁界の強
度は、物体の各部に流れる電流が分かれば、容易に計算
することができる。この電流値は、理論的にはマクスウ
ェルの電磁界方程式を、与えられた境界条件の下で解く
ことによって得られるが、任意形状の物体を対象とする
複雑な境界条件の下での理論的な解法は現在知られてい
ない。
【0005】従って現在の電磁界強度算出装置で用いら
れる解法は全て近似的なものである。この近似的な解法
の代表的なものとして例えば分布定数線路近似法などの
回路解析と、モーメント法との2種類が知られている。
【0006】分布定数線路近似法は、一次元の構造物と
して近似できる物体に対して、分布定数線路(伝送線
路)の方程式を適用することによって電流を求める方法
である。計算は比較的簡単であり、計算時間および記憶
容量も解析要素数にほぼ比例して増加するに止まり、線
路の反射や共振などの現象も含めた解析が可能である。
【0007】この分布定数線路近似法による計算は、一
次元の構造物として近似できる物体については高速・高
精度の解析ができるが、近似できない物体については解
析できないという問題点がある。
【0008】これに対してモーメント法は、マクスウェ
ルの電磁界方程式から導かれる積分方程式の解法の1つ
であり、三次元の任意形状物体を扱うことができる。具
体的には物体を小さな要素に分割して電流の計算を行う
ものである。
【0009】モーメント法では、与えられた周波数に対
してメッシュ化された要素(パッチやワイヤ)の間の相
互インピーダンスや、相互アドミッタンスなどを算出
し、それらを用いて連立方程式を解くことによって解析
が実行されるが、この相互インピーダンスなどの計算に
長い時間を必要とすると共に、時間領域から周波数領域
に変換する時に、十分な数の周波数に変換されてそれら
の各周波数毎に相互インピーダンスなどの計算を実行し
なければならず、膨大な処理時間を必要とする。
【0010】またこの連立方程式の解を求めるために必
要な処理時間は、連立方程式の規模の増加と共に急増す
る。連立方程式の計算時間は連立方程式の係数行列の規
模、すなわち係数行列がn行、n列である時、その計算
時間はnによって決定され、その計算オーダはn3 のオ
ーダとなる。例えば連立方程式の係数行列の規模が2倍
になると、計算時間は8倍になる。
【0011】このように電気回路装置が放射する電磁界
強度を正確に算出することは実用的に非常に重要である
が、特に電気回路装置が非線形素子、すなわち半導体や
ICなどを含む場合には、電磁界強度を算出するために
特別な工夫が必要であった。その方法の一つは次の文献
に記述されている。
【0012】〔文献〕“Transient Analysis of Electr
omagnetic Systems with MultipleLumped Nonlinear Lo
ads”,IEEE Trans.on Antennas and Propagation, Vol.
AP-33, No.5,(May. 1985) この文献に記述された方法では、解析対象となるモデル
の性質に無関係にインパルス応答の計算が行われ、その
結果を用いて過渡解析および電磁波解析が行われる。
【0013】しかしながらこの方法では、例えばアンテ
ナのように回路がつながっていない解析対象、すなわち
開回路モデルと、伝送線路のように回路がつながってい
る解析対象、すなわち閉回路モデルとの区別無く解析が
行われる。その結果解析によって得られる波形、例えば
電圧波形が発散してしまうという結果が一部のモデルに
対して得られることになる。
【0014】図44、図45はそのような解析結果とし
ての電圧波形の例である。これらの図は伝送線路の入力
側、すなわち波源側に図のように高さ5Vのステップ電
圧を加え、伝送線路の出力側、すなわち負荷側での電圧
を計算した結果である。図44は負荷側をオープンにし
た場合、図45はコンデンサ負荷を接続した場合の例を
示し、いずれも負荷側の電圧が発散するという解析結果
が得られている。
【0015】また前述の文献による方法では、インパル
ス応答の結果としての周波数応答における解析周波数の
数の増加につれて、モーメント法の連立方程式の解を求
めるための計算時間が増大する。また周波数応答の逆フ
ーリエ変換として時間応答を求める時の畳み込み計算の
量もモデルの規模などに応じて急速に大きくなり、膨大
な計算が必要となるという問題点があった。
【0016】次に非線形素子を含むか含まないかにかか
わらず、このような電磁界強度算出装置では電磁界強度
の算出結果、および途中経過としての、例えば図44や
図45のような電圧波形などを適当なスケールで、電磁
界強度算出装置の利用者に対して、利用者が解析結果を
正しく理解できるように表示する必要がある。例えば図
45において、500nsから先で振動の振幅がどのよ
うな経過をたどるかは不明であり、例えばある大きさま
で振幅が増大してその後一定になるか否かなどを知るた
めには、縦軸の電圧スケールを変更すると共に、横軸の
時間のスケールも変更する必要がある。
【0017】このような変更は当然利用者がディスプレ
イを監視しながら表示装置に対して表示の変更を指示す
ることによって行われる。図46はそのような表示変更
処理の従来例のフローチャートである。同図において、
図45の横軸の時間のフルスケールを500nsから4
00μsに広げる場合を例として、図47、図48を用
いてその処理を説明する。
【0018】図46のステップS101において、図4
7(a)に示す数値ボックス、すなわち選択できる数字
を格納しているメモリの格納内容から、新しい横軸のフ
ルスケールの数値としての400が選択、または入力指
定され、ステップS102で図47(b)に示す単位ボ
ックスから新しい時間の単位μsが指定され、ステップ
S103で入力確定ボタン、すなわちEnter、またはO
Kのボタンがクリックされ、ステップS104でその変
更が波形表示に反映され、図45の横軸のフルスケール
が400μsとなって、図45よりもかなり広い時間範
囲に渡って電圧波形の表示が行われることになる。利用
者が図45の縦軸のフルスケールの値の変更を希望する
場合には、同様にしてステップS101からの処理を繰
り返し、例えば縦軸の電圧範囲を−50〜+50Vの範
囲に変更することもできる。
【0019】図48は、横軸のフルスケールを500n
sから400μsに変更する場合の数値、および単位の
表示領域の内容を示す。最初の状態においては図45の
ように横軸のフルスケールは500nsであり、ステッ
プS101で数値ボックスから数値400が選択され、
数値領域の値が500か400に変更される。ステップ
S102で単位ボックスから単位としてμsが指定さ
れ、単位がnsからμsに変更され、ステップS103
で入力確定ボタンOKがクリックされて、横軸のフルス
ケール変更結果が表示に反映されることになる。
【0020】しかしながらこのような表示変更処理方式
においては、例えば横軸のフルスケールを段階的に変更
する場合に、数値や単位の選択、および入力確定ボタン
のクリックを何回も繰り返す必要があり、また例えば横
軸のフルスケールを大きくしすぎた場合などには、もう
一度フルスケールの値を小さい値に変更しなおして最適
な表示結果を探す必要があり、利用者にとっては最適な
表示結果を得るまでの手間が大きいという問題点があっ
た。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたように、
従来の電磁界強度解析方式では開回路モデルと閉回路モ
デルとの区別なしに解析が行われるため、解析によって
得られる波形、例えば電圧波形が一部のモデルに対して
は発散してしまうという問題点があった。
【0022】また従来の方式では、周波数応答における
解析周波数の数の増加につれてモーメント法の連立方程
式の解を求めるための計算時間が膨大となり、また逆フ
ーリエ変換として時間応答を求める時の畳み込み計算の
量がモデルの規模に応じて急速に増大してしまうという
問題点があった。
【0023】更に従来の解析結果表示処理変更方式で
は、利用者にとって最適な表示結果を得るまでの手間が
大きいという問題点もあった。本発明の課題は、上述の
問題点に鑑み、第1に電磁界強度算出の対象となる電気
回路装置の解析モデルを閉回路モデルと開回路モデルと
に分類して、それぞれのモデルに対応したインパルス応
答の計算を行うことによって、解析結果としての波形の
発散などを防止し、安定したインパルス応答の計算を可
能とすることである。
【0024】また第2の課題は、モーメント法の計算に
おける連立方程式の解の計算量を決定する周波数応答に
おける解析周波数の数を減らし、また時間応答を構成す
るインパルス列のインパルスの数を限定することによっ
て、時間応答の計算を高速化することである。
【0025】更に第3の課題は、電磁界強度の算出結果
および途中経過としての波形の表示などにおいて、利用
者が例えば1つのコントロールボタンを何回かクリック
することによって、例えば横軸のフルスケールの数値と
単位が自動的に段階的に変更され、その結果として表示
結果も自動的に連続的かつ段階的に変更されるようにす
ることによって、利用者の手間を省くことができる解析
結果表示方式を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理構成
ブロック図である。同図は非線形素子、例えば半導体を
含む電気回路装置の放射する電磁界強度を算出する電磁
界強度算出装置1の原理構成ブロック図であり、装置1
は解析周波数決定手段2と、過渡解析手段3とを備え
る。
【0027】解析周波数決定手段2は、電気回路装置の
放射する電磁界強度の解析条件、例えば利用者から与え
られる解析条件に対応して、周波数領域におけるモーメ
ント法解析において用いられる解析周波数の範囲を限定
するものであり、電気回路装置の解析モデルに対するイ
ンパルス応答の結果である周波数応答の実数部が0にな
る周波数のうちで、解析周波数の最低値に最も近い周波
数までの範囲に、解析周波数の範囲を決定する。過渡解
析手段3は、決定された解析周波数の範囲に対応して解
析モデルに対する過渡解析を行う。
【0028】本発明の実施の形態においては、例えば解
析周波数決定手段2と過渡解析手段3との間に、擬似直
流解析実行手段、およびモデル分類手段が更に備えられ
る。擬似直流解析実行手段は、電気回路装置の解析モデ
ルに対してモーメント法の適用が可能な周波数のうちの
超低周波における解析として擬似直流解析を実行し、モ
デル分類手段はその結果として得られた擬似直流分の大
きさによって、解析モデルを閉回路モデルと開回路モデ
ルに分類し、過渡解析手段3はその分類結果に対応して
過渡解析を行う。
【0029】また実施の形態においては、過渡解析手段
3は周波数応答の逆フーリエ変換によって時間応答を求
める時に、積分方程式の離散化において台形公式、また
は矩形公式を使用することもできる。
【0030】また実施の形態においては、過渡解析手段
3は周波数応答の逆フーリエ変換によって時間応答を求
める時に、その時間応答を1個のインパルス、または2
個のインパルスで理想化することもできる。
【0031】更に本発明の実施の形態においては、モデ
ル分類手段は擬似直流分の大きさが、例えば1Vの電圧
を自由空間のインピーダンスとしての377Ωで割った
値をさらに1000で割った電流値より大きい時に解析
モデルを閉回路モデル、小さい時に開回路モデルに分類
することもできる。
【0032】そして解析モデルが開回路モデルに分類さ
れた時、過渡解析手段3は解析モデルに対する時間応答
としてのインパルス応答を構成するインパルス列から閾
値に満たないインパルスを除去するパルス列調整手段、
パルス列調整手段の出力に対して高域発振防止のための
補正を行う高域補正手段を更に備えることもできる。ま
た時間応答に対して信号入力時点からの光の伝搬速度に
よる時間遅れを求め、その時間遅れに整合するように時
間応答を調整する時間因果律調整手段を更に備えること
も、また開回路モデルに対する解析において生じた誤差
としての不平衡直流成分を時間応答から除去する不平衡
直流成分調整手段を備えることもできる。
【0033】本発明の実施の形態においては、解析モデ
ルが閉回路モデルに分類された時、過渡解析手段3は周
波数応答を逆フーリエ変換して得られた時間応答から直
流成分を除去する直流成分除去手段を備えることもで
き、また直流成分除去手段の出力としてのインパルス列
から閾値を求め、その閾値に満たない大きさのインパル
スを除去するパルス列調整手段を備えることもできる。
この時パルス列調整手段の出力に対して、インパルス列
のうちの最大のインパルスの位置を中心として、高域除
去のための窓関数を適用する窓関数適用手段を更に備え
ることもできる。
【0034】また本発明の実施の形態においては、解析
モデルが閉回路モデルに分類された時、過渡解析手段3
は直流成分が除去された時間応答としてのインパルス応
答に対して高域発振防止のための補正を行う高域補正手
段を備えることも、また直流成分が除去された時間応答
としてのインパルス応答に対して信号入力時点からの光
の伝搬速度による時間遅れを求め、その時間遅れに整合
するように時間応答を調整する時間因果律調整手段を備
えることも、除去された直流成分を再び加える前に、閉
回路モデルに対する解析において誤差として生じた不平
衡直流成分を時間応答から除去する不平衡直流成分調整
手段を備えることもできる。
【0035】本発明の電磁界強度算出方法としては、非
線形素子を含む電気回路装置の放射する電磁界強度の解
析条件に対応して、周波数領域においてモーメント法で
用いられる解析周波数の範囲を、電気回路装置の解析モ
デルに対するインパルス応答の結果としての周波数応答
の実数部が0になる周波数のうちで、解析周波数の最低
値に最も近い周波数までの範囲に決定し、決定された範
囲の解析周波数に対応した過渡解析を実行することにな
る。
【0036】また本発明の電磁界強度算出方法において
は、非線形素子を含む電気回路装置の解析モデルに対し
て、モーメント法の適用が可能な周波数のうちの超低周
波におけるモーメント法解析としての擬似直流解析を実
行し、その解析の結果として得られる擬似直流分の大き
さによって解析モデルを閉回路モデルと開回路モデルと
に分類し、分類の結果に対応して解析モデルに対する過
渡解析を実行することになる。
【0037】この時発明の実施の形態においては、過渡
解析において閉回路モデルに対する周波数応答を逆フー
リエ変換して得られた時間応答から直流成分を除去し、
直流成分が除去されたインパルス列から閾値を求め、閾
値に満たない大きさのインパルスをインパルス列から除
去する方法が用いられる。
【0038】本発明における記憶媒体として、非線形素
子を含む電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件
に対応して、周波数領域においてモーメント法で用いら
れる解析周波数の範囲を、電気回路装置の解析モデルに
対するインパルス応答の結果としての周波数応答の実数
部が0となる周波数のうち、解析周波数の最低値に最も
近い周波数までの範囲に決定するステップと、決定され
た範囲の解析周波数に対応した過渡解析を行うステップ
とを計算機に実行させるためのプログラムを格納した計
算機読出し可能可搬型記憶媒体が用いられる。
【0039】また本発明における記憶媒体として、非線
形素子を含む電気回路装置の解析モデルに対して、モー
メント法の適用が可能な周波数のうちの超低周波におけ
るモーメント法解析としての擬似直流解析を実行するス
テップと、その解析結果として得られる擬似直流分の大
きさによって解析モデルを閉回路モデルと開回路モデル
とに分類するステップと、分類の結果に対応して解析モ
デルに対する過渡解析を行うステップとを計算機に実行
させるためのプログラムを格納した計算機読出し可能可
搬型記憶媒体が用いられる。
【0040】更に本発明において、電気回路装置の放射
する電磁界強度を算出する電磁界強度算出装置は、電気
回路装置を対象とした解析の結果の表示にあたって、結
果の表示スケール、表示単位を段階的かつ自動的に変更
するためのユーザからの指示を受け取る表示指示入力手
段を備える。
【0041】発明の実施の形態においては、表示される
解析結果は波形ビューア、電磁流ベクトル、入力インピ
ーダンス、または電磁流分布であることができる。本発
明の記憶媒体として、電気回路装置を対象とした電磁界
強度解析の結果の表示にあたって、結果の表示スケー
ル、表示単位を段階的かつ自動的に変更するためのユー
ザからの指示を受け取るステップと、その指示の内容に
応じた解析結果の表示を行うステップとを計算機に実行
させるためのプログラムを格納した計算機読出し可能可
搬型記憶媒体が用いられる。
【0042】以上説明したように本発明によれば、モー
メント法で用いられる解析周波数の範囲が限定される。
また擬似直流解析の結果として、解析モデルが閉回路モ
デルと開回路モデルとに分類され、分類結果に対応した
過渡解析が行われる。更に解析結果の表示にあたって、
結果の表示スケール、表示単位が段階的かつ自動的に変
更される。
【0043】
【発明の実施の形態】図2は本発明の電磁界強度算出方
式の概念的な説明図である。本発明においては、モーメ
ント法と回路解析とを結合させることによって、非線形
素子を含む電気回路装置の放射する電磁界強度の算出が
行われる。
【0044】図2において中央に示される電気回路装置
の筐体は、例えば微小面積のパッチに分割され、モーメ
ント法によってその解析が行われる。この筐体には一般
に複数のポートが設けられ、そのうちのいくつかのポー
トには電圧源(波源)が接続され、またその他のポート
には例えば飽和特性を持つ非線形負荷が接続される。
【0045】中央の筐体は前述のパッチやワイヤで記述
され、モーメント法によってその解析が行われる世界で
ある。これに対して電圧源や非線形負荷は、例えば集中
定数(R,C,L等)で記述される回路解析の世界に属
し、モーメント法と回路解析を結合することによって電
磁界強度の算出が行われる。
【0046】図3はモーメント法と回路解析の結合のた
めのモデルを示し、図4はモーメント法による周波数応
答の高速逆フーリエ変換(逆FFT)による時間応答の
求め方の説明図である。図3において前述の複数(N
個)のポートのうちj番目(j=1,2,・・・,N)
のポートに電圧源(波源)が接続され、モーメント法モ
デルによって記述される筐体内部を介して、他のk番目
のポート(例えばショートされている)に電流が流れる
場合を考える。この時j番目のポートに流れる電流をI
jj,k番目のポートに流れる電流をIkjとする。
【0047】周波数領域においては基本周波数f1 と後
述する(解析周波数の個数nfft)の半分、すなわちnfft
/2番目までのf1 の高調波を解析周波数として解析が実
行される。この時j番目のポートに加えられる波源の電
圧は1Vであるとする。
【0048】図4において、後述するように周波数領域
の解析によって、周波数応答を示すIjjおよびIkjの実
数部(Real Part)と虚数部(Imaginary Part) とが、基
本周波数f1 からnfft/2番目までの各解析周波数に対し
て求められる。その後IjjおよびIkjの実数部に対して
は、折り返しの計算結果としてそれぞれの解析周波数に
対する以前に求められた値が使用され、それぞれの虚数
部に対しては符号を反転した値が使用されて周波数領域
における解析が終了する。そして求められた周波数領域
の解析結果を逆フーリエ変換することによって、時間領
域の応答、すなわち時間応答が電流IjjおよびIkjとし
て求められる。
【0049】このようにして求められたインパルス応答
を利用して、任意の電圧波形vj (t)がj番目のポー
トに与えられた時のk番目のポートに流れる電流i
k (t) は次の式(gはインパルス応答を表す)によって
表される。
【0050】
【数1】
【0051】時刻tをt=qΔtとして離散化すると、
時刻t=qΔtにおいてk番目のポートに流れる電流は
次式によって表される。
【0052】
【数2】
【0053】図5は電磁界強度算出装置の全体処理フロ
ーチャートである。同図において処理が開始されると先
ずステップS1で初期画面が表示され、ステップS2で
例えば前述のモーメント法における基本解析周波数f1
などの入力データの読み込みが行われ、ステップS3で
ソルバ、すなわち電磁界強度算出装置の起動が行われ、
利用者からの要求が直流(DC)解析であるか、交流
(AC)解析であるか、過渡(TR)解析であるかが判
定され、DC解析である時にはステップS4でその解析
が行われ、ステップS5で、例えば半導体ダイオードの
VI特性が表示されて、処理を終了する。
【0054】利用者からの要求が交流解析である場合に
は、ステップS6でその解析が行われ、ステップS7で
解析結果として電磁界マップ、放射パターン、電磁界ス
ペクトラム、電磁界ベクトル、電磁流ベクトル、電磁流
分布、入力インピーダンスなどが出力されて、処理を終
了する。なおステップS6のAC解析においては、一般
に過渡解析の結果として得られるポートの電圧や電流が
利用される。
【0055】利用者からの要求が過渡解析である場合に
は、ステップS8でその解析が行われ、その結果がステ
ップS9で電圧や電流波形の表示、あるいは電圧または
電流スペクトラムの表示として出力され、処理が終了す
ると共に、前述のようにその結果は必要に応じてステッ
プS6のAC解析に与えられる。
【0056】本発明の特徴は、ステップS8の過渡解析
の内部で解析対象のモデルがモーメント法モデルを含ん
でいる場合の処理にあり、その処理を説明するために、
図6に示される、ステップS8のTR解析の全体処理フ
ローチャートについてまず説明する。
【0057】同図において処理が開始されると、まずス
テップS10で時刻tの値が計算開始時刻t startの値
に設定され、ステップS11で時刻tが計算終了時刻t
stopより大きくなったか否かが判定され、大きくなった
場合には直ちに処理を終了する。
【0058】大きくない場合には、ステップS12で時
刻tの値がΔtだけインクリメントされ、ステップS1
3で解析対象のモデルがモーメント法モデルを含んでい
るか否かが判定され、含んでいる場合には図7で示すイ
ンパルス応答計算処理の結果が用いられ、ステップS1
5で回路解析が行われる。
【0059】ステップS13でモーメント法モデルを含
んでいないと判定されると、ステップS14のインパル
ス応答計算処理の結果を用いることなく、ステップS1
5で回路解析が行われる。この回路解析では、一般的な
節点解析、カットセット解析、混合解析などが実行され
る。回路解析の結果としてステップS16でポートの端
子電圧と電流の値が保存され、ステップS11以降の処
理が繰り返される。
【0060】図7はインパルス応答計算処理の詳細フロ
ーチャートである。同図において処理が開始されると、
ステップS20においてモーメント法モデルのインピー
ダンス計算、すなわち例えば筐体などが微小なパッチに
分割された場合にパッチ間のインピーダンスの計算など
が行われ、ステップS21でモーメント法モデルにおい
て全てのポートに対して、そのポートに波源を接続した
場合のそのポート自身に流れる電流、および他のポート
に流れる電流の周波数応答が求められる。この周波数応
答を求めるべき解析周波数については、図5のステップ
S3のソルバの起動の前に決定されてソルバに与えられ
るものとするが、その決定方法については後述する。
【0061】またこのステップS21では、後述するよ
うにインパルス応答の計算処理に必要な計算量を大幅に
削減するために、すでに決定されている解析周波数のう
ち実際の計算を行う解析周波数の限定が行われるが、そ
の限定についても後述する。
【0062】ステップS22ではモーメント法の適用が
可能な最低の周波数におけるモーメント法解析が擬似直
流解析として実施され、直流解析によって得られた擬似
直流電流値の大きさによって、解析モデルが開回路モデ
ル、すなわちアンテナのようなモデルと、閉回路モデ
ル、すなわち伝送線路のようなモデルとに分類される。
一般にアンテナのような開回路モデルでは原理的に直流
電流は流れず、これに対して伝送線路のような閉回路モ
デルではある程度の大きさの直流電流が流れる。そこで
直流電流がほとんど0の時に開回路モデル、ある程度大
きい時に閉回路モデルとすることができるが、その具体
的な判定の基準としては例えば1Vの電圧を自由空間の
インピーダンスの値としての377Ωで割った値の1/
1000より直流電流値が小さい場合に開回路モデル、
大きい場合に閉回路モデルに分類することができる。
【0063】ステップS22で実行される擬似直流解析
の周波数、すなわちモーメント法の適用が可能な最低の
周波数について説明する。後述するように、モーメント
法における解析周波数としては、ユーザによって指定さ
れる基本周波数f1 から、f 1 の高調波であって解析周
波数の上限としてのナイキスト周波数fn までの範囲の
周波数が用いられる。この基本周波数は、例えば5MHz
であり、ナイキスト周波数はfn =2.56GHz であ
る。擬似直流解析は、一般に基本周波数f1 よりもはる
かに低い周波数において実行される。
【0064】モーメント法の計算は、その計算が有効と
なる前提条件の範囲内で行われなければならない。モー
メント法モデルを構成する全ての解析要素、すなわちパ
ッチやワイヤの全ての長さが、解析周波数の波長がλで
ある時、例えば10-7λより大きく0.25λより小さ
い範囲にあるような解析周波数に対してのみ行われると
いうのがモーメント法計算の前提条件である。この前提
条件は当然本発明の実施形態に対応するものであり、全
ての場合についてこの範囲に限定されなければならない
という意味ではない。
【0065】解析周波数を小さくしていくと当然波長λ
が大きくなり、従って前述の範囲のうちで長い方の限
界、すなわち0.25λより全ての解析要素の長さが小
さい範囲に周波数が限定されなければならないことにな
る。そこで全ての解析要素のうちで最も長いものの長さ
が、0.25λより小さい範囲になるように解析周波数
の範囲は限定される。
【0066】全ての解析要素の中で最も長い要素の電気
的な長さをLとし、周波数をfとする。波長λは光速C
を周波数fで割った値となる。従って周波数fを小さく
していく時、モーメント法の適用範囲に周波数fが入っ
ていれば次式が満足される。
【0067】 L≦0.25λ=0.25×C/f ・・・(3) 基本周波数f1 が上式を満足していることは自明である
として、f1 の値から始めて周波数の値を半分にして上
式が満足されるか否かの判定を繰り返す。上式が満足さ
れない周波数に達した時、その直前の周波数がモーメン
ト法の適用が可能な最低の周波数となる。そしてこの周
波数を用いて擬似直流解析が実行される。
【0068】開回路モデルに分類された場合には周波数
応答に対して高速逆フーリエ変換が行われ、この変換結
果として基本的には時間応答が得られる。得られたイン
パルス応答に対してステップS24〜ステップS27の
処理が実行される。
【0069】まずステップS24では後述するパルス接
続数の設定が行われ、続いてステップS25でインパル
ス応答を安定化させるための処理として、高域発振防止
のための補正が行われる。この補正の詳細についても後
述する。
【0070】続いてステップS26で時間因果律を満た
すような調整処理が行われる。この処理では、ポート間
の直線距離と光速の関係から、例えばj番目のポートに
波源が与えられ、k番目のポートに応答が出力されるま
での時間が求められ、それ以前に時間応答としての出力
が生じた場合には、その出力は不適当なものとして調整
処理が行われる。
【0071】続いてステップS27で不平衡直流成分の
調整が行われる。前述のように開回路モデルは直流電流
が流れないモデルであり、ステップS23〜ステップS
26の処理の結果として直流成分が生じた場合にはその
成分、すなわち不平衡直流成分の除去が行われ、開回路
モデルに対するインパルス応答計算処理が終了する。
【0072】ステップS22で解析対象モデルが閉回路
モデルに分類された場合には、ステップS30でステッ
プS23におけると同様に高速逆フーリエ変換が行わ
れ、基本的な時間応答が得られる。そしてステップS3
1でその時間応答から直流成分が除去される。閉回路モ
デルでは直流成分がある程度以上の大きさを持っている
ため、ステップS32以降の処理において邪魔になる直
流成分をあらかじめ時間応答から除去しておくものであ
る。
【0073】続いてステップS32でステップS24に
おけると同様にパルス接続数の設定が行われるが、ここ
での処理は開回路モデルに対する処理とは一部が異な
る。このパルスの接続数の設定処理においては、後述す
るように閾値より小さい値を持つパルスがインパルス列
から除去され、その結果としてインパルス列がいくつの
パルスから構成されるかを検出することによってパルス
の接続数の設定が行われる。
【0074】ステップS33では、閾値より小さいイン
パルスがインパルス列から除去された結果に対して、最
大値を持つインパルスの時刻を中心に窓関数の適用が行
われる。この窓関数は高域の安定化を図るものであり、
例えばブラックマン窓が用いられる。このブラックマン
窓については次の文献に記述されている。 〔文献2〕石田・鎌田:ディジタル信号処理のポイント
P.194産業図書(1989)その後ステップS34〜ステップ
S36で開回路モデルに対するステップS25〜ステッ
プS27の処理、すなわち高域発振防止のための補正、
時間因果律を満たすような調整、および不平衡直流成分
の調整が行われ、最後にステップS37でステップS3
1で抜かれた直流成分が戻される。すなわち再度加えら
れて、インパルス応答を求める処理が終了する。
【0075】図8は周波数領域におけるモーメント法に
よる解析において用いられる解析周波数の数の決定方法
の詳細フローチャートである。同図の処理は、前述のよ
うに図5においてステップS3のソルバの起動の前に行
われるものであり、本発明にとって本質的な内容をなす
ものではないが、その処理の概要を説明する。
【0076】同図において処理が開始されるとまずステ
ップS40でユーザによって指定された解析データファ
イルから、図6のステップS12で用いられる時間刻み
Δtと、モーメント法における基本解析周波数としての
1 の値が読み取られる。そしてステップS41で、基
本的には回路解析部のデータとしての遮断周波数fmax
が、時間刻みΔtの値を用いて求められる。
【0077】続いてステップS42でモーメント法モデ
ルの解析周波数の上限としてのナイキスト周波数f
n と、モーメント法における解析周波数の数、すなわち
高速フーリエ変換における周波数の数nfftの値を求める
処理が行われる。この処理では、まずfn の初期値とし
て基本周波数f1 、解析周波数の数nfftの初期値として
2が設定されて、処理が開始される。このステップS4
2では、ナイキスト周波数fn は基本周波数f1 の2の
羃乗倍になるという性質があるため、前述の初期値から
n とnfftの値とをそれぞれ2倍にする処理が繰り返さ
れる。本実施形態では、この繰返しはステップS41で
求められたfmax の範囲内で、かつモーメント法モデル
を構成する全ての解析要素中で最短のものの長さ、例え
ばパッチの辺の長さが10-7λより小さくなる周波数の
直前の周波数まで繰り返される。ここでλはその解析周
波数に対する波長であり、モーメント法における解析周
波数が大きくなって最短の解析要素の長さが10-7λよ
り小さくなるとモーメント法の前提条件自体が崩れるた
めに、ナイキスト周波数fn の値はこの範囲内に限定さ
れる。
【0078】続いてステップS43でモーメント法のサ
ンプリング間隔、すなわちモーメント法モデルにおける
動作周期dtsampleの値が1/2fn として求められ、
ステップS44でこの値がユーザによって指定された時
間刻みΔtと比較され、Δtの方が値が大きい場合には
Δtがサンプリング間隔に一致するように、Δtの値の
修正が行われる。すなわちΔtの値はユーザによって指
定されるが、実際の計算は一般にこれより短い間隔で可
能であり、dtsampleの値の方が小さい場合にはΔtを
小さくして、計算を行うことになる。
【0079】ステップS45においてモーメント法モデ
ルのポート間の距離の最大値、すなわち複数のポートが
存在する場合には、ポート相互間の距離のうち最大距離
dmax の値が求められ、ステップS46で次式によって
定義される整数nの値が求められる。
【0080】
【数3】
【0081】nの意味について説明すると、まずポート
間の最大距離を光速Cで割ることにより、その距離に対
する信号伝播時間が求められる。そしてその値をサンプ
リング間隔で割ることによって、その伝播時間内におけ
るモーメント法の処理の動作回数が求められる。nはこ
の値に10を掛けたものとして定義される。ここで10
という値は、ポート間の距離の最大値に10を掛けるこ
とによって、例えば伝送線路で反射が返ってこないこと
を考慮した十分な距離を設定して、次のステップS47
で十分な数の解析周波数の数を決定するためである。
【0082】最後にステップS47で解析周波数の数nf
ftの値が、ステップS42で決定された範囲内で、かつ
ステップS46で決定されたnに最も近い2の倍数とさ
れて、処理を終了する。ただしこのnfftの値が256以
下の場合には、この解析周波数の数があまりに少ないと
計算上の精度に問題が出るため、本実施例ではその値を
256として処理を終了する。
【0083】次に本実施形態において、モーメント法の
連立方程式の計算量を削減するための解析周波数の限定
について説明する。図8で説明したように、この解析周
波数は基本周波数f1 、およびその高調波の周波数であ
り、周波数の個数はnfftである。本実施形態においては
この全部でnfft個の解析周波数のうちで、基本周波数f
1 に近いものだけを使用することにする。
【0084】図9、図10は周波数応答の実数部と虚数
部とを、解析周波数の最低周波数、すなわち基本周波数
1 から、最高周波数、すなわちnfft番目にあたる周波
数までについて示したものである。これらの図は2つの
ポート間で対称な伝送線路を例として、2つのポートの
うち一方に波源、もう一方のポートにマッチング抵抗、
すなわち特性インピーダンスに近い値の抵抗を接続した
場合の電流の周波数応答を示し、I00は0番目のポート
に波源を接続した場合のそのポート自身に流れる電流、
01は0番目のポートに波源を接続した場合の1番目の
ポートに流れる電流を示し、I10、I11も同様の意味で
ある。当然I00とI11の実数部同士、虚数部同士、また
01とI10の実数部同士、および虚数部同士はそれぞれ
等しくなる。
【0085】図9において波源を接続したポート自身に
流れる電流は、その実数部が大きく、虚数部が小さい。
これに対して図10、すなわち一方のポートに波源とし
1Vの電圧を加えた場合の他方のポートに流れる電流、
すなわちインパルス応答の結果としての周波数応答の実
数部と虚数部は、解析周波数に対して正弦波的に変化
し、実数部はcosine関数、虚数部はsine関数に相当す
る。そこで実数部が横軸を切る最小の周波数としてのf
a までについてモーメント法の連立方程式の計算を行え
ば、それ以上の解析周波数に対してはその結果を利用す
ることが可能となる。ポートが3つ以上ある場合には、
図10と同様の周波数応答が複数求められることになる
が、それぞれ求められるfa のうちで最大のものまでを
計算範囲とすることができる。
【0086】図11〜図14は図9,図10で説明した
ような周波数応答の逆フーリエ変換結果としての時間応
答の例である。図11は周波数応答I00、I11に対する
逆フーリエ変換の結果としての時間応答を示し、図12
はその応答の最初の部分の拡大図である。
【0087】また図13は周波数応答I01、I10の逆フ
ーリエ変換結果としての時間応答であり、図14はその
拡大図である。これらの図において時間応答は基本的に
は正、または負のインパルスの列として求められるが、
これらの図ではインパルスの頂点を結んだ波形として時
間応答を示している。
【0088】図15は図7のステップS24とステップ
S32で説明したパルス接続数設定処理のフローチャー
トである。同図において処理が開始されると、まずステ
ップS50で時間応答としてのインパルス列のうちか
ら、最大の高さを持つインパルスの高さVmax が求めら
れる。
【0089】続いてステップS51で、この最大値Vma
x の1/10を閾値として、その閾値より大きさが大き
いインパルスが探される。本実施形態では、波源側での
インパルスの印加時刻t=0から遠くない時刻にインパ
ルス応答のインパルス列が存在すると考えられることか
ら、インパルスの列のうち最初の1番目からnfft/2番
目までの計算時刻に対応するインパルス列から、閾値よ
り大きい値を持つものが探される。逆フーリエ変換によ
って求められる計算時刻はそれぞれ周波数応答の解析周
波数nfft個の解析周波数に対応するが、そのうちの前半
1/2だけが調べられ、閾値よりも大きい値を持つイン
パルスの数が閉回路モデルに対するパルスの持続数Kma
x として求められる。
【0090】開回路モデルに対するパルス持続数はKma
x +nfft/8の値に設定される。アンテナモデルのよう
な開回路モデルでは受端側でマッチングをとることが困
難であり、反射がある程度続くことを考慮して例えばnf
ft/8分の値を加えている。
【0091】図16は図7のステップS34で説明した
閉回路モデルに対する高域発振防止処理の詳細フローチ
ャートである。同図において処理が開始されると、まず
ステップS55で前述のnfft個の計算時刻のうち、前半
の時間領域が平坦域、遷移域、および遮断域に分類され
る。すなわちパルスの持続数Kmax を用いて、最初から
その1/2の時刻までが平坦域、次のKmax までの時刻
が遷移域、Kmax からnfft/2までの時刻が遮断域に分
類される。
【0092】続いてステップS56で平坦域のデータ、
すなわちインパルスの値はそのままとし、遮断域に対し
てはインパルスの高さを0とし、遷移域に対しては係数
として最初の方では1に近い値を、遮断域に近い所では
0に近い値を持つ係数1/2×〔1−cos (2πk/K
max )〕を乗算する。この係数は一種のフィルタのよう
なものであり、これも高域発振の抑制に役立つものであ
る。
【0093】例えばKmax の値が100とすると、遷移
域は計算時刻で50番目から100番目までの領域とな
る。この時データに乗算される係数の値はkが50に近
いほど1に近く、100に近いほど0に近い値となる。
すなわち平坦域に近いほどデータをそのまま活かし、遮
断域に近いほどデータを小さく修正する一種のフィルタ
であり、窓関数ではHann 窓関数に相当する。
【0094】このデータの修正が終了すると、ステップ
S57で移動平均法の手法に従って高域補正が行われ
る。この処理では安定化のための補正係数αを用いて、
ステップS56において修正されたk番目のデータとし
て次式によって計算される値が用いられる。αの値は本
実施形態では例えば0.95とする。
【0095】 α×data〔k〕+(1−α)×data〔k−1〕 ・・・(5) この移動平均法は、周波数応答を求めた後に逆フーリエ
変換の結果として時間応答を求める時、その時間応答に
精度のあまり良くない高調波成分が含まれるために、こ
の高調波成分をローパスフィルタでカットして高域補正
を行うものである。すなわち変化の激しい離散時間系列
に対しては、一般にローパスフィルタを用いて高調波成
分をあらかじめ除去することが望ましく、特に大量のデ
ータのうちの低周波成分だけを調べたい時には、その長
い系列を直接にFFT計算せずに移動平均をとることが
一般に行われる。この移動平均法は、時系列データを順
番にずらしながら、一般に系列のP個ずつの移動平均を
とっていくものであり、信号の高調波成分をカットする
だけでなく、サンプル値を間引くことによって、データ
処理の計算時間を短縮することもできる。
【0096】図7のステップS25,すなわち開回路モ
デルに対する高域発振防止のための補正処理では図16
のステップS55〜ステップS57で、パルスの持続数
としてKmax の代わりにKmax +nfft/8を用いること
によって全く同様の処理が実行される。
【0097】以上において図7のインパルス応答の計算
処理の詳細な説明を終了するが、最後に周波数応答の逆
フーリエ変換結果としてのインパルス列から、閾値の大
きさに満たないインパルスを除外してパルスの持続数を
設定し、パルスの個数を限定するような処理の極端な場
合として、逆フーリエ変換によって得られたインパルス
列をただ1つのインパルス、または2つのインパルスに
理想化する処理について説明する。この処理によって、
前述のパルスの持続数を1か2にすることができること
になる。
【0098】1つのインパルスだけで理想化する場合に
は、当然インパルス列のうちで最大の値を持つインパル
スを理想化されたただ1つのインパルスとすればよい。
これに対して2つのインパルスで理想化する場合には、
例えば図14に示した時間応答を滑らかな曲線で結ぶと
すると、時間応答の最大時刻は必ずしも計算時刻と一致
せず、計算時刻の間に入るために、その前後の計算時刻
の2つのインパルスに分解することが必要となる。
【0099】図17は時間応答の最大の時刻をaとし、
それをその前後の計算時刻、すなわちΔt毎のインパル
スに分割する場合のインパルス理想化の説明図である。
同図において時刻aにあるインパルス(時間応答の最大
値に対応)を、電磁界強度算出装置の利用者によって指
定された計算のタイムステップΔtのp番と、p+1倍
に対応する時刻m1 と、m2 とにある2つのインパルス
で理想化するものとする。
【0100】フーリエ変換の方式に関連して、時刻aに
ある高さA(前述のVmax に対応)のインパルスを時刻
1 、m2 にあるそれぞれ高さM1 およびM2 のインパ
ルスで理想化することを周波数領域の関係として次式の
ように表し、M1 ,M2 ,Aの関係を時間領域にも適用
することにする。
【0101】
【数4】
【0102】周波数領域においては、このAの値は擬似
直流解析における直流電流値として与えられる。図9で
は波源が接続されたポート自身に流れる電流の周波数応
答の実数部と虚数部とを、最低周波数としての基本周波
数から最高周波数としてのナイキスト周波数までの範囲
に対して示したが、この周波数の範囲を左側に広げ、擬
似直流解析の周波数、すなわちモーメント法の適用が可
能な超低周波数まで広げたとすると、その周波数におけ
る周波数応答の実数部の電流値が擬似直流電流値、すな
わちAの値として求められる。
【0103】時刻aの値は、図10で説明した周波数f
a 、すなわち周波数応答の実数部が最初に0となる周波
数を用いて次式によって与えられる。 a=1/4fa ・・・(7) このaをΔtで割ることによって、図17に示した前後
のインパルスの時刻に対応するp、およびp+1の値が
求められ、m1 およびm2 の時刻も求められる。
【0104】A,a,m1 、およびm2 の値を用いて、
時間領域における2つのインパルスの高さM1 ,および
2 は次式によって与えられる。
【0105】
【数5】
【0106】続いて本発明を用いた開回路モデルと閉回
路モデルに対する計算結果の例を説明する。図18は開
回路モデルとしてのアンテナのモデルを示す。同図にお
いて3本の素子を持つ八木アンテナのモデルが示されて
いる。
【0107】図19は閉回路モデルの例としての伝送線
路を示す。図でAは波源側であり、Bは負荷側であっ
て、伝送線路の特性インピーダンスZ0 は約11.66
Ωである。
【0108】図20は図19の伝送線路の波源側の拡大
図であり、波源側のポートには左上に示すようなパルス
状の電圧が加えられる。この波形は左下のPULSE のカッ
コ内の数字で、その波形が定められる。最初のV1はパ
ルスのLレベル、V2はHレベル、次のdは時刻t=0
からパルスの立ち上がりまでの遅れ時間(5ns)、次
のrはLレベルからHレベルまで立ち上がる時間、次の
fはHレベルからLレベルに立ち下がる時間、次のpw
はパルス幅としてのHレベルの継続時間、最後のper
はパルスの周期としての200nsを示している。なお
伝送線路の内側は誘電体であり、その比誘電率は4.7
である。
【0109】図21は図19の負荷側Bの部分の拡大図
であり、この負荷側のポートには、後述するように抵抗
やコンデンサなどの負荷が接続される。図22は波源側
に加えられる電圧波形VV1であり、図20の左上の波
形と同じものである。
【0110】図23は、図22の波源を波源側のポート
に加え、負荷側のポートをオープン(十分に大きな抵
抗、例えばR=109 Ω程度)にした場合の負荷側の電
圧VR2を、波源側の電圧VV1に加えて示したもので
ある。5Vのパルスの入力に対して、10Vの2倍反射
が出て、その反射が遠々と続いている。
【0111】図24は、図21の負荷側のポートに特性
インピーダンスの値を持つ抵抗を接続し、整合終端した
場合の波源側の電圧VV1と負荷側の電圧VR1とを示
す。VR1は、波源側の電圧に比べてその立ち上がりと
立ち下がりが少しだけ遅れる傾向があるが、整合終端の
ために反射がなく、ほぼ2つの波形が一致している。
【0112】図25は図24の波形の最初の部分を拡大
したものである。負荷側の電圧VR2が波源側の電圧V
V1より遅れて立ち上がっていることが示されている。
図26は、負荷側のポートにコンデンサ100pFを接
続した場合の負荷側の電圧VC1を、波源側の電圧VV
1と共に示したものである。電圧がLレベルに下がって
から振動の振幅が2倍になっているが、図45で示した
ような発散は起こっていない。
【0113】図27は負荷側のポートにダイオードを接
続した場合の電圧波形の例である。負荷側のポートに
は、オープン抵抗(=109 Ω)と並列にダイオードが
接続されている形式となっている。入力電圧がHレベル
の範囲では2倍反射が出ているが、Lレベルの範囲では
2〜3回の振動の後に波形がクランプされている。
【0114】図28は開回路モデルとしてのアンテナモ
デルに対する計算例である。図29はこの計算例に対す
るモデルを示し、送端側ではアンテナ素子の中央付近の
ポートに、PULSE のカッコ内で示されるパルス電圧波形
と50Ωの抵抗との直列回路が接続され、受端側では5
0Ωの抵抗が中央付近のポートに接続されたモデルを示
している。図28に示すように、開回路モデルに対して
も適切な計算結果が得られていることが分かる。
【0115】以上において本発明のインパルス応答の計
算処理とそれを用いた計算例について詳細に説明した
が、ここで従来の技術で説明した文献〔1〕の方法を用
いた従来の手法と、本発明の手法との計算量の比較につ
いて説明する。
【0116】具体例として周波数応答における解析周波
数の個数nfftを256、最高の解析周波数、すなわちナ
イキスト周波数fn を2GHz、ポートの数pを2、1組
の連立方程式に対する計算時間をA秒とすると、従来の
手法では連立方程式の解を求めるための計算時間はA×
p×nfft/2=A×256秒となる。すなわち256組
の連立方程式に対する計算時間が必要となる。次に時間
応答を求めるための計算時刻毎の1回あたりの畳み込み
計算回数はnfft×p2 =1024となる。
【0117】本発明の方法では連立方程式の解を求める
解析周波数は、前述のように周波数応答の実数部が最初
に0になるfa までの解析周波数の数となり、その値を
例えば16とし、またインパルス応答におけるパルス持
続数だけについて畳み込みの計算を行うことになるが、
このパルス持続数mを例えば9とする。この場合連立方
程式の解を求めるための時間はA×p×16=A×32
秒となり、従来手法の1/8に、また1回あたりの畳み
込み計算回数は9×p2 =36と、従来手法の1/28
になる。特にポート間の距離が短い場合はfa の値は小
さくなり、また過渡解析の時間が長いほど時間応答を求
めるための計算時刻の数が多くなるため、本発明の効果
は更に大きくなる。
【0118】次に本発明における電磁界強度算出装置に
よる解析結果の表示処理について図30〜図33を用い
て説明する。図30は、図46の従来例に対応する本発
明における解析結果表示変更処理のフローチャートであ
る。同図において、ステップS60において電磁界強度
算出装置の表示画面上で図31に示すアップダウンコン
トロールボタンが利用者によってクリックされると、ス
テップS61でそのクリックされた結果、すなわちアッ
プかダウンかに従って、図31(a)に示される数値ボ
ックス内の指定先が変更され、ステップS62で指定先
の変更が図32(b)に示す表示範囲に反映され、ステ
ップS63で必要があれば表示単位の変更が行われる。
【0119】ここで表示単位の変更が行われるのは数値
ボックス内で例えば指定先が1000から2にアップさ
れたときのように、数字があふれた場合であり、この場
合図32(c)の単位ボックスの指定先がMHzからGHz
に自動的に変更される。すなわち1000倍毎に、単位
表示が切り換えられる。
【0120】続いてステップS64で解析結果の表示に
対して指定先の変更が反映される。すなわち縦軸、また
は横軸のスケールの変更、波形やベクトルなどの表示の
変更が行われ、その後アップダウンコントロールボタン
のクリックが行われるたびに、ステップS60からの処
理が繰り返される。
【0121】図33はダウンコントロールボタンがクリ
ックされた場合の動作例である。クリック前に、例えば
横軸の時間のフルスケールが1μsである時にアップダ
ウンコントロールボタンのダウン側がクリックされる
と、フルスケールが500nsに変更され、数値の表示
と共に単位も自動的に変更される。
【0122】図34は本発明の実施形態における波形ビ
ューアの表示例、図35は入力インピーダンスの表示例
である。例えば図34において“Voltage ”の左側に時
間用のアップダウンコントロールボタン、またはEnter
ボタンの左側に電圧用のアップダウンコントロールボタ
ンが配置されている。
【0123】図36〜図42は波形ビューアにおける表
示変更結果の例である。図36において時間コントロー
ル用のダウンボタンを1回クリックすることにより図3
7のように表示が変更され、ダウンボタンのクリックを
繰り返すことによって、図38〜図42のように順次波
形表示の変更が行われる。
【0124】最後に本発明の電磁界強度算出装置のコン
ピュータシステムとしての実現について説明する。本発
明の電磁界強度算出装置は、一般的なコンピュータシス
テムを用いて構成することができる。図43はそのよう
なコンピュータシステムの構成ブロック図である。同図
においてコンピュータシステム11は基本的に本体12
と、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RA
M)などのメモリ13によって構成される。
【0125】本発明における電磁界強度算出のためのイ
ンパルス応答の計算処理などでは、メモリ13にその処
理のためのプログラムが格納され、そのプログラムが本
体12によって実行されることになる。前述の図5〜図
8,図15,図16、および図30のフローチャートに
示したプログラムや、本発明の特許請求の範囲の請求項
6,7、および10に記載されたプログラムなどはメモ
リ13に格納され、そのプログラムが本体12によって
実行されることにより、過渡解析の処理や、解析結果の
表示変更処理などを実現することができる。
【0126】またこのようなプログラムは、プログラム
提供者側からネットワーク14を介してコンピュータ1
1側に送られ、そのプログラムがロードされることによ
って実行されることもでき、また市販され、流通してい
る可搬型記憶媒体15に格納され、コンピュータ11に
そのような可搬型記憶媒体15がロードされることによ
って、実行することも可能である。
【0127】可搬型記憶媒体15としては、フロッピィ
ディスク、CD−ROM、磁気ディスク、光ディスク、
光磁気ディスクなど、市販され、流通している様々な形
式の記憶媒体を利用することができる。このような記憶
媒体に本発明に必要なプログラムなどが格納され、その
プログラムがコンピュータ11によって実行されること
により、本発明の過渡解析や、解析結果の表示変更処理
が行われる。
【0128】以上詳細に本発明の実施形態について説明
したが、本発明の実施形態は以上の記述に限定されるこ
となく、特許請求の範囲に記載された範囲の様々な形態
で実施することができることは当然である。
【0129】特に周波数応答や時間応答の計算処理にお
いて、例えば図8のステップS42でnfftの値を2の羃
乗となるようにしている点、ステップS46においてポ
ート間の距離の最大値を10倍にしている点、ステップ
S47でnfftの最小値を256としている点、モーメン
ト法の全ての解析要素の長さを10-7λ〜0.25λの
範囲に限定している点、図15のステップS51でパル
ス持続数を求めるための閾値を最大値の1/10として
いる点、図16のステップS55,ステップS56にお
ける平坦域、遷移域、および遮断域の設定と、値の修
正、ステップS57における安定化の補正係数として
0.95を用いる点などは、あくまで本実施形態におい
て実装しているプログラムに対応するものであり、全て
このような値に限定されるものでないことは当然であ
る。 <付記> (付記1) 非線形素子を含む電気回路装置の放射する
電磁界強度を算出する電磁界強度算出装置において、前
記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対応
して、周波数領域においてモーメント法で用いられる解
析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対す
るインパルス応答の結果として定義される周波数応答の
実数部が0になる周波数のうちで、前記解析周波数の最
低値に最も近い周波数までの範囲に決定する解析周波数
決定手段と、前記周波数応答の逆フーリエ変換によって
時間応答を求める時、積分方程式の離散化において台形
公式または矩形公式を積分公式として使用し、該解析周
波数決定手段によって決定された解析周波数に対応し
て、該解析モデルに対する過渡解析を行う過渡解析手段
とを備えることを特徴とする電磁界強度算出装置。 (付記2) 非線形素子を含む電気回路装置の放射する
電磁界強度を算出する電磁界強度算出装置において、前
記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対応
して、周波数領域においてモーメント法で用いられる解
析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対す
るインパルス応答の結果として定義される周波数応答の
実数部が0になる周波数のうちで、前記解析周波数の最
低値に最も近い周波数までの範囲に決定する解析周波数
決定手段と、前記周波数応答の逆フーリエ変換によって
時間応答を求める時、該時間応答を1個のインパルスで
理想化し、該解析周波数決定手段によって決定された解
析周波数に対応して、該解析モデルに対する過渡解析を
行う過渡解析手段とを備えることを特徴とする電磁界強
度算出装置。 (付記3) 非線形素子を含む電気回路装置の放射する
電磁界強度を算出する電磁界強度算出装置において、前
記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対応
して、周波数領域においてモーメント法で用いられる解
析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対す
るインパルス応答の結果として定義される周波数応答の
実数部が0になる周波数のうちで、前記解析周波数の最
低値に最も近い周波数までの範囲に決定する解析周波数
決定手段と、前記周波数応答の逆フーリエ変換によって
時間応答を求める時、該時間応答を2個のインパルスで
理想化し、該解析周波数決定手段によって決定された解
析周波数に対応して、該解析モデルに対する過渡解析を
行う過渡解析手段とを備えることを特徴とする電磁界強
度算出装置。 (付記4) 非線形素子を含む電気回路装置の放射する
電磁界強度を算出する電磁界強度算出装置において、前
記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対応
して、周波数領域においてモーメント法で用いられる解
析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対す
るインパルス応答の結果として定義される周波数応答の
実数部が0になる周波数のうちで、前記解析周波数の最
低値に最も近い周波数までの範囲に決定する解析周波数
決定手段と、前記電気回路装置の解析モデルに対してモ
ーメント法の適用が可能な超低周波におけるモーメント
法解析としての擬似直流解析を行う擬似直流解析実行手
段と、該擬似直流解析の結果として得られる擬似直流分
の大きさ大きい時に前記解析モデルを閉回路モデル、小
さい時に開回路モデルに分類するモデル分類手段と、該
モデル分類手段による分類結果に対応するとともに、前
記解析周波数決定手段によって決定された解析周波数に
対応して、該解析モデルに対する過渡解析を行う過渡解
析手段とを備えることを特徴とする電磁界強度算出装
置。 (付記5) 前記過渡解析手段が、前記開回路モデルに
対する時間応答としてのインパルス列から閾値を求め、
該閾値に満たない大きさのインパルスを除去するパルス
列調整手段を更に備えることを特徴とする付記4記載の
電磁界強度算出装置。 (付記6) 前記過渡解析手段が、前記パルス列調整手
段によって閾値に満たないインパルスが除去されたイン
パルス列に対して高域発振防止のための補正を行う高域
補正手段を更に備えることを特徴とする付記5記載の電
磁界強度算出装置。 (付記7) 前記過渡解析手段が、前記開回路モデルに
対する時間応答に対して信号入力時点からの光の伝搬速
度による時間遅れを求め、該時間遅れに整合するように
時間応答を調整する時間因果律調整手段を更に備えるこ
とを特徴とする付記4記載の電磁界強度算出装置。 (付記8) 前記過渡解析手段が、前記開回路モデルに
対する解析において誤差として生じた不平衡直流成分を
時間応答から除去する不平衡直流成分調整手段を更に備
えることを特徴とする付記4記載の電磁界強度算出装
置。 (付記9) 前記過渡解析手段が、前記閉回路モデルに
対する周波数応答を逆フーリエ変換して得られた時間応
答から直流成分を除去する直流成分除去手段を更に備え
ることを特徴とする付記4記載の電磁界強度算出装置。 (付記10) 前記過渡解析手段が、前記直流成分が除
去された時間応答を構成するインパルス列のうち最大の
インパルスの位置を中心として高域除去のための窓関数
を適用する窓関数適用手段を更に備えることを特徴とす
る付記9記載の電磁界強度算出装置。 (付記11) 前記過渡解析手段が、前記直流成分除去
手段の出力としてのインパルス列から閾値を求め、該閾
値に満たない大きさのインパルスを除去するパルス列調
整手段を更に備えることを特徴とする付記9記載の電磁
界算出装置。 (付記12) 前記過渡解析手段が、前記パルス列調整
手段の出力に対して高域発振防止のための補正を行う高
域補正手段を更に備えることを特徴とする付記11記載
の電磁界強度算出装置。 (付記13) 前記過渡解析手段が、前記直流成分が除
去された時間応答としてのインパルス列に対して信号入
力時点からの光の伝搬速度による時間遅れを求め、該時
間遅れに整合するように時間応答を調整する時間因果律
調整手段を更に備えることを特徴とする付記9記載の電
磁界強度算出装置。 (付記14) 前記過渡解析手段が、前記除去された直
流成分を再び加える前に、前記閉回路モデルに対する解
析において誤差として生じた不平衡直流成分を時間応答
から除去する不平衡直流成分調整手段を更に備えること
を特徴とする付記9記載の電磁界強度算出装置。
【0130】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、モ
ーメント法が適用可能な超低周波におけるモーメント法
解析としての擬似直流解析を行うことによって、解析対
象を開回路モデルと閉回路モデルとに分類して計算を行
うことが可能となり、モデルに依存しない安定したイン
パルス応答を計算することができ、解析結果としての解
の振動、または発散を抑制することが可能となる。
【0131】また周波数応答の計算において周波数領域
における解析周波数の数を限定すると共に、インパルス
応答におけるパルスの持続数を限定することによって、
モーメント法における連立方程式の解を求める時間を大
幅に短縮し、インパルス応答における1つの計算時刻に
対する畳み込み計算回数を少なくすることができる。
【0132】更に解析結果の表示変更処理において、段
階的かつ連続的、自動的な表示変更のための利用者によ
る操作を可能にすることによって、少ないクリック数で
利用者が1番見たい解析結果を表示でき、単位の調整が
不要となり、利用者の操作の手間を大幅に削減すること
も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成ブロック図である。
【図2】本発明の電磁界強度算出方式の概念的な説明図
である。
【図3】モーメント法と回路解析の結合のためのモデル
を示す図である。
【図4】モーメント法による周波数応答からの逆フーリ
エ変換による時間応答の求め方を説明する図である。
【図5】電磁界強度算出装置の全体処理のフローチャー
トである。
【図6】過渡解析の全体処理のフローチャートである。
【図7】インパルス応答計算処理の詳細フローチャート
である。
【図8】モーメント法における解析周波数の数の決定方
法の詳細フローチャートである。
【図9】周波数応答の実数部と虚数部とを示す図(その
1)である。
【図10】周波数応答の実数部と虚数部とを示す図(そ
の2)である。
【図11】周波数応答I00,I11に対する時間応答を示
す図である。
【図12】図11の最初の部分の拡大図である。
【図13】周波数応答I01,I10 の時間応答を示す図
である。
【図14】図13の最初の部分の拡大図である。
【図15】パルス持続数設定処理のフローチャートであ
る。
【図16】閉回路モデルに対する高域発振防止処理の詳
細フローチャートである。
【図17】時間応答における最大のインパルスを2つの
インパルスに分割するインパルス理想化の説明図であ
る。
【図18】開回路モデルとしてのアンテナのモデルを示
す図である。
【図19】閉回路モデルの例としての伝送線路を示す図
である。
【図20】図19の波源側の拡大図である。
【図21】図19の負荷側の拡大図である。
【図22】波源側に加えられる電圧波形を示す図であ
る。
【図23】図22の波源側の電圧に負荷側の電圧を加え
て示した図である。
【図24】負荷側のポートを整合終端した場合の電圧波
形を示す図である。
【図25】図24の最初の部分を拡大した図である。
【図26】負荷側のポートにコンデンサを接続した場合
の電圧波形を示す図である。
【図27】負荷側のポートにダイオードを接続した場合
の電圧波形を示す図である。
【図28】アンテナモデルに対する計算例を示す図であ
る。
【図29】図28の計算例に対するアンテナモデルを示
す図である。
【図30】本発明における電磁界強度解析結果表示変更
処理のフローチャートである。
【図31】アップダウンコントロールボタンを示す図で
ある。
【図32】数値ボックスおよび単位ボックスを示す図で
ある。
【図33】ダウンコントロールボタンがクリックされた
場合の動作例を示す図である。
【図34】波形ビューアの表示例を示す図である。
【図35】入力インピーダンスの表示例を示す図であ
る。
【図36】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その1)である。
【図37】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その2)である。
【図38】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その3)である。
【図39】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その4)である。
【図40】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その5)である。
【図41】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その6)である。
【図42】波形ビューアにおける表示変更結果の例を示
す図(その7)である。
【図43】本発明を実現するためのコンピュータシステ
ムの構成を示す図である。
【図44】電磁波解析の従来例による電圧波形の発散を
示す図(その1)である。
【図45】電磁波解析の従来例による電圧波形の発散を
示す図(その2)である。
【図46】電磁界強度解析結果表示変更処理の従来例の
フローチャートである。
【図47】従来例における数値ボックスと単位ボックス
とを示す図である。
【図48】従来の解析結果表示方式における数値および
単位の表示領域の内容の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電磁界強度算出装置 2 解析周波数決定手段 3 過渡解析手段 11 コンピュータ 12 コンピュータ本体 13 メモリ 14 ネットワーク 15 可搬型記憶媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岸本 武士 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 向井 誠 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 大津 信一 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 Fターム(参考) 5B046 AA07 DA01 GA01 JA10

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非線形素子を含む電気回路装置の放射す
    る電磁界強度を算出する電磁界強度算出装置において、 前記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対
    応して、周波数領域においてモーメント法で用いられる
    解析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対
    するインパルス応答の結果として定義される周波数応答
    の実数部が0になる周波数のうちで、前記解析周波数の
    最低値に最も近い周波数までの範囲に決定する解析周波
    数決定手段と、 該解析周波数決定手段によって決定された解析周波数に
    対応して、該解析モデルに対する過渡解析を行う過渡解
    析手段とを備えることを特徴とする電磁界強度算出装
    置。
  2. 【請求項2】 前記電磁界強度算出装置において、 前記電気回路装置の解析モデルに対してモーメント法の
    適用が可能な超低周波におけるモーメント法解析として
    の擬似直流解析を行う擬似直流解析実行手段と、 該擬似直流解析の結果として得られる擬似直流分の大き
    さによって、該解析モデルを閉回路モデルと開回路モデ
    ルとに分類するモデル分類手段とを更に備え、 前記過渡解析手段が該分類結果に対応して該解析モデル
    に対する過渡解析を行うことを特徴とする請求項1記載
    の電磁界強度算出装置。
  3. 【請求項3】 非線形素子を含む電気回路装置の放射す
    る電磁界強度を算出する電磁界強度算出方法において、 前記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対
    応して、周波数領域においてモーメント法で用いられる
    解析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対
    するインパルス応答の結果として定義される周波数応答
    の実数部が0になる周波数のうちで解析周波数の最低値
    に最も近い周波数までの範囲に決定し、 該決定された範囲の解析周波数に対応した過渡解析を実
    行することを特徴とする電磁界強度算出方法。
  4. 【請求項4】 非線形素子を含む電気回路装置の放射す
    る電磁界強度を算出する電磁界強度算出方法において、 前記電気回路装置の解析モデルに対してモーメント法の
    適用が可能な超低周波におけるモーメント法解析として
    の擬似直流解析を実行し、 該擬似直流解析の結果として得られる擬似直流分の大き
    さによって、該解析モデルを閉回路モデルと開回路モデ
    ルとに分類し、 該分類の結果に対応して該解析モデルに対する過渡解析
    を実行することを特徴とする電磁界強度算出方法。
  5. 【請求項5】 前記過渡解析において、 前記閉回路モデルに対する周波数応答を逆フーリエ変換
    して得られた時間応答から直流成分を除去し、 該直流成分が除去されたインパルス列から閾値を求め、 該閾値に満たない大きさのインパルスを該インパルス列
    から除去することを特徴とする請求項4記載の電磁界強
    度算出方法。
  6. 【請求項6】 非線形素子を含む電気回路装置の放射す
    る電磁界強度を算出する計算機によって用いられる記憶
    媒体において、 前記電気回路装置の放射する電磁界強度の解析条件に対
    応して、周波数領域においてモーメント法で用いられる
    解析周波数の範囲を、該電気回路装置の解析モデルに対
    するインパルス応答の結果として定義される周波数応答
    の実数部が0となる周波数のうち、解析周波数の最低値
    に最も近い周波数までの範囲に決定するステップと、 該決定された範囲の解析周波数に対応した過渡解析を行
    うステップとを計算機に実行させるためのプログラムを
    格納した計算機読出し可能可搬型記憶媒体。
  7. 【請求項7】 非線形素子を含む電気回路装置の放射す
    る電磁界強度を算出する計算機によって用いられる記憶
    媒体において、 前記電気回路装置の解析モデルに対してモーメント法の
    適用が可能な超低周波におけるモーメント法解析として
    の擬似直流解析を実行するステップと、 該擬似直流解析の結果として得られる擬似直流分の大き
    さによって該解析モデルを閉回路モデルと開回路モデル
    とに分類するステップと、 該分類の結果に対応して該解析モデルに対する過渡解析
    を行うステップとを計算機に実行させるためのプログラ
    ムを格納した計算機読出し可能可搬型記憶媒体。
  8. 【請求項8】 電気回路装置の放射する電磁界強度を算
    出する電磁界強度算出装置において、 前記電気回路装置を対象とした解析の結果の表示にあた
    り、結果の表示スケール、表示単位を段階的かつ自動的
    に変更するためのユーザからの指示を受け取る表示指示
    入力手段を備えることを特徴とする電磁界強度算出装
    置。
  9. 【請求項9】 前記表示される解析結果が波形ビュー
    ア、電磁流ベクトル、入力インピーダンス、または電磁
    流分布であることを特徴とする請求項8記載の電磁界強
    度算出装置。
  10. 【請求項10】 電気回路装置の放射する電磁界強度を
    算出する計算機によって用いられる記憶媒体において、 前記電気回路装置を対象とした解析の結果の表示にあた
    り、結果の表示スケール、表示単位を段階的かつ自動的
    に変更するためユーザからの指示を受け取るステップ
    と、 該指示の内容に応じた解析結果の表示を行うステップと
    を計算機に実行させるためのプログラムを格納した計算
    機読出し可能可搬型記憶媒体。
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