JPWO2005097674A1 - 球状炭素材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

球状ビニル樹脂を酸化性ガス雰囲気中で酸化処理して球状の炭素前駆体を得、これを非酸化性ガス雰囲気中1000〜2000℃で炭素化することを特徴とする球状炭素材の製造方法。得られた球状炭素材は、例えば非水電解質二次電池の負極材料として、高い出力特性および耐久性を含む優れた適性を示す。

Description

本発明は、例えば非水電解質二次電池の負極材料として優れた適性を有する球状炭素材の製造方法に関する。
高エネルギー密度の二次電池として、炭素材を負極として用いる非水電解質系リチウム二次電池が提案されている(例えば、下記特許文献1〜4参照)。これは、リチウムの炭素層間化合物が電気化学的に容易に形成できることを利用したものであり、この電池を充電すると、例えばLiCoO等のカルコゲン化合物からなる正極中のリチウムは電気化学的に負極炭素の層間にドープされる。そして、リチウムをドープした炭素はリチウム電極として作用し、放電に伴ってリチウムは負極炭素の層間から脱ドープされ正極中へ戻る。
これら非水電解質系リチウム二次電池において、高エネルギー密度化を進めるには、正極物質の単位重量あたり脱ドープ・ドープされるリチウム量および負極物質の単位重量あたりドープ・脱ドープされるリチウム量を増加させ、さらに二次電池内に多くの正・負極材料を入れることが必要となる。このような観点で、特に負極材料としては、体積当たりのドープ・脱ドープ容量の高いことから黒鉛質材料が使用されてきた。
近年、非水電解質系リチウム二次電池は小型携帯機器用の電源用途ばかりでなく、ハイブリッド電気自動車(以後「HEV」と記す)用電源としての使用が期待されている。HEVでは車の動力源として電池のほかに内燃エンジンを搭載しているため、多量のエネルギーは不要であるが、車を駆動する、或いは車両の動力性能を充分賄うだけの高出力が要求される。さらに、低燃費を進めるには車両の制動エネルギーを効率良く回収することが不可欠であり、そのためには高入力特性も要求される。
一方、小型携帯機器用電源としての非水電解質系二次電池の寿命は、数年であったが、HEV用途では数百セルを直列に接続した電源システムと成るため、途中交換が困難であり、車両の寿命と同等以上、つまり10年以上の寿命と信頼性が要求される。
非水電解質系リチウム二次電池の出力特性の向上させる方法として、電極の厚み及び活物質の粒子径を制御することが提案されている(下記特許文献5)。すなわち、電極を薄くすることにより反応面積を大きくすることができ、電極の厚み方向での反応電位分布差を小さくすることができる。これにより、電極の表面側の層と集電体側の層との分極を小さくすることができ、大電流放電時の性能低下が低減されるため高出力が得られる。しかし、未だその出力は十分とは言えず、更なる高出力が求められている。また、電極を薄くすると正極および負極分の集電板やセパレーターなどを通常より多く使用することになり、電池のエネルギー密度が低下するという問題点があり、これらの改善も期待されている。
負極材料の信頼性に関して言えば、黒鉛質材料や乱層構造を有する易黒鉛化性炭素材は、リチウムのドープ・脱ドープ反応時に結晶子が膨張・収縮を繰り返すため、HEV用途の非水電解質二次電池用負極材料としては信頼性が乏しい。一方、難黒鉛化性炭素は、リチウムのドープ・脱ドープ反応による粒子の膨張収縮が小さく高いサイクル耐久性を有するため、HEV用非水電解質系リチウム二次電池用負極材料として有望視されている。しかし、難黒鉛化性炭素の構造は、炭素前駆体の構造やその後の熱処理条件により多様に変化し、良好な充放電特性を得るには構造制御が重要である。これまで良好な充放電能力を有する難黒鉛化性炭素粒子は、炭素前駆体またはそれを焼成したのち粉砕することにより得られたものであり、電極の活物質を薄層化するために不可欠な粒子の小粒子径化には多くの粉砕エネルギーが必要になるばかりでなく、粒子を小粒子径化すると微粉が増加し電池の信頼性の低下をもたらするという問題がある。さらに、小粒子径化のための粉砕と微粒子の除去を進めると粉砕収率が極めて低くなるという問題が発生する。
高エネルギー密度でデンドライトによる短絡が起こりにくく、信頼性の高い非水電解質二次電池として球状の形状を有する難黒鉛化性炭素を負極活物質として使用することが提案されている(下記特許文献6)。球状炭素を負極活物質として用いることにより、塗布等により活物質が均一に分布した負極を得ることが可能になり、デンドライトによる内部短絡が起りにくく、より理論電気容量に近い負極を与えることが意図されている。しかしながら、その球状難黒鉛化炭素の製法は、ほとんど開示されていない。また、その放電容量も最大で320mAh/gと黒鉛質材料の理論容量を超えるものではなく、充分に大きいとは言えない。
他方、球状の炭素材を得るためには、球状の合成樹脂を炭素化することも容易に考えられるところではあるが、実際には容易ではない。合成樹脂としては、熱により重縮合が進行する熱硬化性樹脂と、ラジカル重合により得られるビニル樹脂がある。熱硬化性樹脂は、一般に比較的良好な炭化収率を示すが、縮合初期段階で粘稠な縮合物であるため、取り扱いが困難であり、球状化するには更に多くの工程が必要となる。フェノール樹脂を原料とした球状難黒鉛化炭素が下記特許文献7に開示されているが、具体的にその原料となる球状フェノール樹脂の製法は開示されていない。また得られた球状難黒鉛化炭素の放電容量は185mAh/gとかなり低いものである。他方、ビニル樹脂は、ラジカル懸濁重合により、球状の重合物として得られるが、炭素化処理時に解重合や熱分解を起して殆んど炭素化物を残さないものが殆んどである。
特開昭57−208079号公報 特開昭62−90863号公報 特開昭62−122066号公報 特開平2−66856号公報 特開平11−185821号公報 特開平6−150927号公報 特開平6−20680号公報
上記事情に鑑み、本発明の主要な目的は、懸濁重合等により良好な球形度で得られる球状ビニル樹脂を出発原料として、良好な収率で球状炭素材を製造し得る球状炭素材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、非水電解質二次電池用負極材料として用いたときに高い出力特性と高い耐久性を有し、且つ高い放電容量を与え得る、球状炭素材の製造方法を提供することにある。
本発明者等の研究によれば、球状ビニル樹脂を酸化処理して得た炭素前駆体を炭素化工程に付すことが上記目的の達成に極めて有効であることが見出された。
すなわち、本発明の球状炭素材の製造方法は、球状ビニル樹脂を酸化性ガス雰囲気中で酸化処理して球状の炭素前駆体を得、これを非酸化性ガス雰囲気中1000〜2000℃で炭素化することを特徴とするものである。また、特定の組成のモノマー混合物から得られる、架橋された球状ビニル樹脂を原料として用いることが、特に好ましいことも見出されている。
本発明で特に好ましく用いられる球状のビニル樹脂は、例えば以下のようにして得られる。すなわち、ラジカル重合性のビニルモノマー及び重合開始剤を混合したモノマー混合物を分散安定剤を含有する水系分散媒体中に添加し、攪拌混合により懸濁してモノマー混合物を微細な液滴としたのち、ついで昇温することによりラジカル重合を進めて真球状のビニル樹脂を得ることができる。
(モノマー混合物)
ビニルモノマーとしては、酸化により炭素前駆体を与えるビニル樹脂を形成可能な任意のビニルモノマーが用いられるが、炭化収率の増大する架橋ビニル樹脂を与えるために、架橋剤を含むビニルモノマー混合物が好ましく用いられる。また、得られる球状ビニル樹脂からの炭素化収率が高く且つ得られる球状炭素の電池性能が好ましいという観点から、原料モノマー混合物としては、その10〜80重量%のスチレン系モノマーおよび10〜90重量%のアクリロニトリル系モノマーを含み、更にスチレン系モノマーの15重量%以上の架橋剤を含むモノマー混合物を用いることが特に好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレンに加えて、そのビニル基水素やフェニル基水素が置換されたスチレン誘導体、あるいはフェニル基の代わりに複素環式あるいは多環式化合物がビニル基に結合した化合物などが挙げられる。より具体的には、α−あるいはβ−メチルスチレン、α−あるいはβ−エチルスチレン、メトキシスチレン、フェニルスチレン、あるいはクロロスチレンなど、あるいはo、mあるいはp−メチルスチレン、エチルスチレン、メチルシリルスチレン、ヒドロキシスチレン、シアノスチレン、ニトロスチレン、アミノスチレン、カルボキシスチレン、あるいはスルホキシスチレン、スチレンスルホン酸ソーダなど、あるいはビニルピリジン、ビニルチオフェン、ビニルピロリドン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルビフェニル等が代表的なものとして含まれる。
またアクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。なかでも価格的にアクリロニトリルが好ましい。
モノマー混合物中に、スチレン系モノマーが10〜80重量%含まれることが好ましく、特に20〜70重量%含まれることが好ましい。スチレン系モノマーが10重量%未満であると、比較的水溶性のアクリロニトリル系モノマーが多くなり、懸濁重合に際して球状性の良いモノマー液滴の形成が困難になり易い。スチレン系モノマーが80重量%を超えると、アクリロニトリル系モノマーおよび架橋剤の量が必然的に小さくなるため、好ましくない。
他方、モノマー混合物中にアクリロニトリル系モノマーは、10〜90重量%(混合物中の架橋剤の最少量を考慮すると88.5重量%以下)、より好ましくは20〜80重量%、特に30〜70重量%含まれることが好ましい。アクリロニトリル系モノマーは形成されるビニル樹脂の炭化収率を向上し、更に得られる球状炭素材の比表面積を低下させ非水電解質二次電池の負極材料として用いる際の電解液の炭素表面での分解反応を抑制するために有効に作用する。アクリロニトリル系モノマーが10重量%未満では、上述の効果が乏しく、また90重量%を超えると、得られる球状ビニル樹脂の球状性が低下するため好ましくない。
モノマー混合物には、スチレン系モノマーの15重量%以上、特に20重量%以上、の割合(且つ上記スチレン系モノマーおよびアクリロニトリル系モノマーが、モノマー混合物中でのそれぞれの下限量である10重量%を下回ることのない様な割合で)の架橋剤が含まれることが好ましい。架橋剤がスチレン系モノマーの15重量%未満では、球状ビニル樹脂の酸化処理(不溶化処理)中に、球状ビニル樹脂が分解溶融した状態で酸化処理を行うことが困難となりがちである。
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメチレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルスルホン;グリコールまたはグリセロールの、ペンタエリトリトールの、グリコールのモノまたはジチオ誘導体の、およびレゾルシノールのポリビニルまたはポリアリルエーテル類;ジビニルケトン、ジビニルスルフィド、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカルボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバケート、トリアリルトリカルバリレート、トリアリルアコニテート、トリアリルシトレート、トリアリルホスフェート、N,N′−メチレンジアクリルアミド、1,2−ジ(α−メチルメチレンスルホンアミド)エチレン、トリビニルベンゼン、トリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセンおよびトリビニルシクロヘキサンから成る群より選択されてよい。特に好ましい架橋剤の例に含まれるものはポリビニル芳香族炭化水素(例えば、ジビニルベンゼン)、グリコールトリメタクリレート(例えば、エチレングリコールジメタクリレート)、およびポリビニル炭化水素(例えば、トリビニルシクロヘキサン)である。その熱分解特性の故に、最も好ましいものはジビニルベンゼンである。
上記したスチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー及び架橋剤に加えて、これら成分のそれぞれの必要量を確保する範囲内で、スチレン系モノマーおよびアクリロニトリル系モノマーと共重合可能な他のビニルモノマーを、モノマー混合物中に含めることもできる。
重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、重合性単量体に可溶性である油溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジ−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。
重合開始剤は、通常、単量体混合物中に含有させるが、早期重合を抑制する必要がある場合には、一部または全部を水系分散媒体中に含有させ、造粒工程中または造粒工程後に、重合性混合物の液滴中に移行させてもよい。重合開始剤は、ビニルモノマー100重量部に対して、0.001〜20重量部の割合で使用される。
(懸濁重合)
懸濁重合は、通常、分散安定剤(懸濁剤)を含有する水系分散媒体中で行われる。分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蓚酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。この他に補助安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等を使用することができる。分散安定剤は、重合性モノマー混合物100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用される。
分散安定剤を含有する水系分散媒体は、通常、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製する。重合時の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境で重合が行われる。水系分散媒体を酸性にするには、必要に応じて酸を加えて、系のpHを約3〜4に調整する。水酸化マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性環境の中で重合させる。
好ましい組み合わせの一つとして、コロイダルシリカと縮合生成物の組み合わせがある。縮合生成物は、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸の縮合生成物が好ましい。縮合物は、その酸価によって規定される。好ましくは、酸価が60以上95未満のものである。特に好ましくは、酸価が65以上90以下の縮合物である。さらに、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加すると、より均一な粒子形状を有する球状の合成樹脂が得られる。
懸濁重合における分散安定剤としてシリカ(コロイダルシリカ)を使用し、重合により形成された真球状の合成樹脂表面にシリカを保持した状態で炭素化することにより、炭素表面に安定な皮膜を形成し、炭素材の放置時に生じる表面酸化を抑制することができるため、安定剤としてシリカ(コロイダルシリカ)を使用することが特に好ましい。コロイダルシリカの使用量は、その粒子径によっても変わるが、通常、モノマー混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で使用される。縮合生成物は、モノマー混合物100重量部に対して、通常0.05〜2重量部の割合で使用される。塩化ナトリウム等の無機塩は、モノマー混合物100重量部に対して、0〜100重量部程度の割合で使用する。
他の好ましい組み合わせは、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物の組み合わせが挙げられる。水溶性窒素含有化合物の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミンが挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカとポリビニルピロリドンの組み合わせが好適に用いられる。他の好ましい組み合わせには、水酸化マグネシウム及び/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせがある。
分散安定剤としては、水溶性多価金属化合物(例えば、塩化マグネシウム)と水酸化アルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム)との水相中での反応により得られる難水溶性金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)のコロイドを用いることができる。また、リン酸カルシウムは、リン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの水相中での反応生成物を使用することが可能である。乳化剤として、陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
重合助剤として、水系分散媒体中に、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、水可溶性アスコルビン酸類、及び硼酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を存在させることができる。これらの化合物の存在下に懸濁重合を行うと、重合時に、重合粒子同士の凝集が起こらず、重合物が重合缶壁に付着することがなく、重合による発熱を効率的に除去しながら安定して球状の合成樹脂を製造することができる。亜硝酸アルカリ金属塩の中では、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウムが入手の容易性や価格の点で好ましい。アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸の金属塩、アスコルビン酸のエステルなどが挙げられるが、本発明においては、水可溶性のものが好適に用いられる。ここで、アスコルビン酸類について「水可溶性」とは、23℃の水に対する溶解性が1g/100cm以上であるものを意味し、アスコルビン酸とそのアルカリ金属塩が好ましい。これらの中でも、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸カリウムが、入手の容易性や価格、作用効果の点で、特に好適に用いられる。これらの化合物は、モノマー混合物100重量部に対して、通常、0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部の割合で使用される。
懸濁重合は、上記各種助剤を添加した、好ましくは水系の分散媒体100重量部に対し、モノマー混合物5〜150重量部、好ましくは15〜100重量部を分散させ、所望の粒径のモノマー混合物液滴を生ずるに適当な高速攪拌を行い、通常は液滴形成後は、その合一が起らない程度のより緩い攪拌速度下で、重合系を保持することにより行われる。重合温度は、開始剤の種類によっても異なるが、30〜100℃、好ましくは40〜80℃程度であり、重合時間は1〜40時間、好ましくは5〜30時間程度である。必要に応じて、モノマー混合物の一部を分割添加してもよい。また重合後期には重合を完結させるために温度を必要に応じて上昇させてもよい。
(球状ビニル樹脂)
上記懸濁重合における分散剤の選択および攪拌条件の制御等により、得られる球状ビニル樹脂の粒径は、一般に1〜2000μm程度の広範囲に調整可能である。特に分散剤として、コロイダルシリカを用いると、1〜100μm、特に3〜50μmの粒径の球状ビニル樹脂の調製が容易である。本発明で目的とする球状炭素材の好ましい用途としての、非水電解質二次電池用負極材料の場合、その好適な粒子径は1〜20μmであり、球状ビニル樹脂を熱処理し炭素化処理により炭素材とする際、熱収縮により樹脂の粒子径が30〜60%収縮するため、球状ビニル樹脂の好ましい粒子径は5〜40μm、さらに好ましくは5〜30μm、特に好ましく5〜20μmである。
なお、本発明法に用いる球状ビニル樹脂は、上記した懸濁重合以外にも、溶融ビニル樹脂の気体中あるいは熱水中への分散等によっても形成可能である。但し、上記した粒度の小粒径球状ビニル樹脂の調整には懸濁重合が好ましい。
(酸化処理)
かくして得られた球状ビニル樹脂を酸化(不融化)処理して架橋構造を発達させることにより、熱分解性高分子化合物である例えばポリスチレンに富む架橋球状ビニル樹脂であっても、良好な炭素化収率を示す球状の炭素前駆体とすることができる。酸化処理は、100℃から400℃までの温度で行うことが好ましい。焼成方法は、特に限定しないが均一な熱処理が可能であるとの観点から流動層を用いて行うことが好ましい。酸化剤としては、O、O、SO、NO、これらを空気、窒素等で希釈した混合ガス、または空気等の酸化性気体、あるいは硫酸、硝酸、過酸化水素水等の酸化性液体を用いることができる。
(炭素化)
球状の炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気中800〜2000℃で熱処理(炭素化)することにより本発明の球状炭素材が得られる。特に1000〜2000℃で熱処理することにより非水電解質二次電池用負極材料として好適な球状の炭素材を製造することができる。熱処理温度は好ましくは1000℃以上1500℃以下、さらに好ましくは1100℃以上1500℃以下である。
(球状炭素材)
かくして本発明法により得られる球状炭素材は、球状ビニル樹脂の炭素化の結果として、真球度が高く、均一粒径であることが特徴的である。その真球度は後述の画像解析による円形度Cとして、0.80以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.95以上で表わされる。また粒径の均一さは、後記粒径分布係数D/D比として3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下で代表される。
球状炭素材は、その好ましい用途である非水電解質二次電池負極材料としての使用を考えた場合、難黒鉛化炭素であることが好ましく、より具体的には、その好ましい特性としては、X回折法により求められる(002)平均層面間隔d002が0.365nm以上0.400nm以下,c軸方向の結晶子径Lc(002)が3nm以下,元素分析により求められる水素原子と炭素原子の原子比(H/C)が0.1以下,平均粒子径Dv50(μm)が1μm以上20μm以下;嵩比重が0.40以上0.60未満、比表面積S(m/g)と平均粒子径Dv50の積が3以上40以下、球状炭素表面に0.1重量%以上10重量%以下の珪素化合物で被覆されていること、窒素元素を0.5〜5重量%含有することなどが挙げられる。
以下、本発明の球状炭素材の非水電解質二次電池用負極材料としての利用形態に関して述べる。
(非水電解質二次電池負極材料)
得られた球状の炭素材は、そのまま、または例えばその1〜10重量%のアセチレンブラックや、ファーネスブラック等の導電性カーボンブラック等からなる導電助剤とともに用いられ、更に結合剤(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、電極合剤ペーストとした後、例えば、円形あるいは矩形の金属板等からなる導電性の集電材に塗布・乾燥後、加圧成形することにより、厚さが10〜200μmの層を形成するなどの方法により、電極製造に用いられる。結合剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR等、電解液と反応しないものであれば特に限定されない。ポリフッ化ビニリデンの場合、N−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられるが、SBRなどの水性エマルジョンを用いることもできる。結合剤の好ましい添加量は、本発明の球状炭素材100重量部に対して、0.5〜10重量部である。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の電気抵抗が大きくなり電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、球状炭素材粒子相互および集電材との結合が不充分となり好ましくない。本発明の球状炭素材は、その良好なドープ特性を利用して、非水電解質型二次電池の負極、特にリチウム二次電池の負極活物質として、リチウムドープ用負極の構成に用いることが好ましい。さらに活物質の目付けは少ないほど大きな出力が得られるので好ましい。好ましくは60g/m以下、更に好ましくは50g/m以下である。
本発明の球状炭素材を用いて、非水電解質二次電池の負極を形成した場合、正極材料、セパレータ、電解液など電池を構成する他の材料としては特に制限されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、或いは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
例えば、正極材料としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn等の複合金属カルコゲン化物が好ましく、適当なバインダーと電極に導電性を付与するための炭素材料とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより正極が形成される。
これら正極および負極との組み合わせで用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−プチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の有機溶媒の一種または二種以上を組合わせて用いることができる。また電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、LiN(SOCF等が用いられる。二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極層と負極層とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料等からなる透液性セパレータを介して、対向させ電解液中に浸漬することにより形成される。
セパレータの代わりに電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。以下の例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づく。
(1)粒径分布の測定:
試料約0.1gに対し分散剤(カチオン系界面活性剤「SNディスパーサント7347−C」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。つぎに、純水30mlを加え、超音波洗浄機で約2分間分散させたのち、粒径分布測定器(島津製作所製「SALD−3000J」)で、粒径0.5〜3000μmの範囲の粒径分布を求めた。
(2)平均粒径Dv50(μm):
上記(1)で求めた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって平均粒径Dv50(μm)とした。
(3)粒径分布係数D/D
上記(1)で求めた粒径分布から重量平均粒径D(=Σ(nD)/Σ(nD))と長さ平均径D(=ΣnD/Σn)(ここでDは個々の粒子径、nは該当粒子数)との比D/Dにより求めた。
(4)真球度:
炭素材粒子をエポキシ樹脂に埋め込み、研磨後、光学顕微鏡で観察し、平均粒子径Dv50±50%の粒径を有する粒子で且つ他の粒子との重なりおよび接触の無い粒子30個について高機能画像解析システム(旭エンジニアリング製「IP−500PC」)により粒子の平面画像解析を行い、下式による円形度Cの平均値をもって真球度とした。
Figure 2005097674
ここで、l:周囲長、S:面積である。
(5)かさ比重:
かさ比重の測定をJIS K−6721:1977に準じて測定した。具体的には、かさ比重測定器(蔵持科学機器製作所製)のダンパーの付いたロートに十分にかき混ぜた試料の約120mlを入れたのち、ダンパーを引き抜き、試料を受け器(100±0.5ml)に落とす。受け器から盛り上がった試料をガラス棒ですり落とした後、試料の入った容器の重さを0.1gまで正確に測り、次式によりかさ比重を小数点以下2桁まで求める。測定を3回繰り返し、その平均値を取る。
Figure 2005097674
(6)炭素材の平均層面間隔d002
炭素材粉末を試料ホルダーに充填し、グラファイトモノクロメーターにより単色化したCuKα線を線源としX線回折図形を得る。回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピークの位置をもとめる方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正する。CuKα線の波長を0.15418nmとし、Braggの公式によりd002を計算する。また、002回折線の積分法により求められた半値幅からシリコン粉末の(111)回折線の半値幅を差し引いた値βよりScherrerの式によりc軸方向の結晶子の厚みLc(002)を計算した。
Figure 2005097674
(7)水素/炭素(H/C)の原子比の測定:
CHNアナライザーによる元素分析により得られる試料中の水素及び炭素の重量割合から、水素/炭素の原子数の比として求めた。
(8)比表面積:
BETの式から誘導された近似式v=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvを求め、次式により試料の比表面積を計算した:比表面積=4.35×v(m/g)
ここに、vは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm/g)、vは実測される吸着量(cm/g)、xは相対圧力である。
具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質物質への窒素の吸着量を測定した。
粒子径約5〜50μmに粉砕した炭素材料を試料管に充填し、窒素ガスを30モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、炭素材に窒素を吸着させる。つぎに試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
実施例および比較例を記す。成分量比を表わす「%」は特に断らない限り重量%とする。
(実施例1)水5176kg中にコロイダルシリカ32g(固形分20重量%のシリカ分散液として160g)、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸化=75mgKOH/g)3.96g(50重量%で7.92g)、亜硝酸ナトリウム0.99gを順番に加えた水系分散媒体を調製し、これがpH3.5程度になるよう塩酸を添加し調整し、さらにホモジナイザーにて8000rpmで10分間分散処理を行った。一方、アクリロニトリル(AN)890g、スチレン(St)823g、ジビニルベンゼン(DVB)266g、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル10.69gからなるモノマー混合物を調製した。(便宜的にSt/DVB=76%/24%の混合物Aを、混合物A/AN=54%/45%で混合して得たモノマー混合物に相当する。)このモノマー混合物と水系分散媒体をホモジナイザーにより3200rpmで2分間攪拌混合し、モノマー混合物の微小液滴を造粒した。この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を攪拌機付重合缶(10L)に仕込み、温浴を使用し55℃で1時間反応させたのち、シランカップリング剤1.7gを42.8gの酸性水(pH3.5)に希釈したものを投入し、さらに30分経過後1%希塩酸27g投入し、さらに55℃で20時間反応させた。得られた重合生成物を水相からろ過後、乾燥し、ジェットミルで解砕し、平均粒子径(Dv50)17μmの真球状のビニル樹脂を得た。
得られた真球状のビニル樹脂を分散板付石英製の縦型環状炉に60g仕込み、下部より上部に向けて空気を流すことにより流動層を形成させ、280℃で1時間酸化処理を行うことにより、球状の炭素前駆体を得た。この炭素前駆体中の酸素元素の含有率を元素分析により求めた結果15重量%であった。得られた球状の炭素前駆体を窒素中600℃で1時間熱処理することにより球状の予備焼成炭素とした後、これを横型管状炉にて窒素雰囲気下1200℃まで昇温し、1時間保持して本焼成を行った後、冷却し、平均粒子径10μmの球状の炭素材を得た。
上記で得られた炭素材の概要を、以下の実施例および比較例で得られた炭素材の概要と共にまとめて後記表1に示す。
(実施例2)本焼成温度を、1200℃で1時間から、1300℃で1時間に変更する以外は、実施例1と同様にして球状の炭素材を得た。
(実施例3)球状の合成樹脂の酸化温度を280℃で1時間から260℃で1時間に変更し、球状の炭素前駆体の酸素含有率を15重量%から10重量%とする以外は、実施例2と同様にして球状の炭素材を得た。
(実施例4)モノマー混合物の組成をAN 1800g、St 77g、DVB 103g、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル10.69g(混合物A:St/DVB=43%/57%、モノマー混合物:混合物A/AN=9%/91%)とした以外は、実施例2と同様にして球状の炭素材を得た。
(実施例5)モノマー混合物の組成をAN 1380g、St 403g、DVB 177g、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル10.69g(混合物A:St/DVB=70%/30%、モノマー混合物:混合物A/AN=30%/70%)とした以外は、実施例2と同様にして球状の炭素材を得た。
(実施例6)モノマー混合物の組成をAN 590g、St 977g、DVB 413g、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル10.69g(混合物A:St/DVB=70%/30%、モノマー混合物:混合物A/AN=70%/30%)とし、本焼成温度を1300℃で1時間から1350℃で1時間に変更した以外は、実施例2と同様にして球状の炭素材を得た。
(実施例7)モノマー混合物の組成をSt 1194g、DVB 781g、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル10.69g(混合物A:St/DVB=59%/40%、モノマー混合物:混合物A/AN=100%/0%)とした以外は、実施例2と同様にして球状の炭素材を得た。
(実施例8)シランカップリング剤1.7gを42.8gの酸性水(pH3.5)に希釈したものを投入し、さらに30分経過後1%希塩酸27g投入する工程を省略することにより、得られた生成物からコロイドダルシリカをろ過時に除去し、これを乾燥、さらにジェットミルで解砕し、平均粒子径17μmの真球状のビニル樹脂を得た以外、実施例2と同様にして球状の炭素材を得た。
(比較例1)実施例1で得られた真球状の合成樹脂に対し、酸化処理を行わず予備焼成を行ったところ、樹脂が溶融発泡し目的の球状の炭素材が得られなかった。
(比較例2)本焼成温度を、1200℃で1時間を900℃で1時間に変更する以外は、実施例1と同様にして球状の炭素材を得た。
(比較例3)モノマー混合物の組成をSt 1750g、DVB 200g、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル10.69g(混合物A:St/DVB=89%/10%、モノマー混合物:混合物A/AN=100%/0%)とし、実施例1と同様の方法で真球状のビニル樹脂を得た。これを実施例1と同様の方法で酸化処理を行ったが、昇温中に合成樹脂が溶融し、球状の炭素前駆体を得ることができなかった。
(比較例4)軟化点210℃、キノリン不溶分1重量%、H/C原子比0.63の石油系ピッチ68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、190℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、径約500μmの紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1.5になるように破砕し、得られた破砕物を93℃に加熱した0.53重量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した水溶液中に投入し、攪拌分散し、冷却して球状ピッチ成形体スラリーを得た。大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍量の重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。この様にして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、260℃まで昇温し、260℃に1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。得られた酸化ピッチは酸素含有量が17重量%であった。次に酸化ピッチを窒素ガス雰囲気中(常圧)で600℃まで昇温し、600℃で1時間保持して仮焼成し、揮発分2%以下の炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を粉砕し、平均粒径10μmの粉末状炭素前駆体とした。次に粉末状炭素前駆体を焼成炉に仕込み、窒素気流中、焼成炉の温度が1200℃に到達したら、1200℃で1時間保持して本焼成を行った後、冷却し、粉末状の炭素材を製造した。
(比較例5)比較例4と同様の方法で調製した多孔性球状ピッチを流動床により、加熱空気を通じながら、160℃まで昇温し、160℃に1時間保持して酸化し、多孔性球状酸化ピッチを得た。得られた酸化ピッチは酸素含有量が2重量%であった。次に酸化ピッチを窒素ガス雰囲気中(常圧)で600℃まで昇温し、600℃で1時間保持して晶質化し、2%以下の炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を粉砕し、平均粒径12μmの粉末状炭素前駆体とした。次に粉末状炭素前駆体を焼成炉に仕込み、窒素気流中、焼成炉の温度が1200℃に到達したら、1200℃で1時間保持して本焼成を行った後、冷却し、平均粒子径10μmの粉末状の炭素材を製造した。
(比較例6)ニードルコークスを粉砕し、平均粒径12μmの粉末状炭素前駆体とした。次に粉末状炭素前駆体を焼成炉に仕込み、窒素気流中、焼成炉の温度が1200℃に到達したら、1200℃で1時間保持して本焼成を行った後、冷却し、平均粒子径10μmの粉末状の炭素材を製造した。
(比較例7)平均粒子径17μmの真球状のフェノール樹脂(マリリン:群栄化学製)を窒素ガス雰囲気中(常圧)で600℃まで昇温し、600℃で1時間保持して仮焼成し、揮発分2%以下の球状の炭素前駆体を得た。次に球状の炭素前駆体を焼成炉に仕込み、窒素気流中、焼成炉の温度が1200℃に到達したら、1200℃で1時間保持して本焼成を行った後、冷却し、真球状の炭素材を製造した。
(活物質のドープ−脱ドープ試験)
上記、実施例および比較例で得た炭素材を用いて、以下(a)〜(f)のようにして電極形成を行い、且つ電極性能および保存特性の評価を行った。
(a)電極作製
上記炭素材90重量部、ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業製「KF#1100」)10重量部にNMPを加えてペースト状にし、銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、銅箔より剥離させ直径15mmの円板状に打ち抜いた。なお、電極中の炭素材料の量は約20mgになるように調整した。
(b)試験電池の作製
本発明の炭素材は非水電解質二次電池の負極を構成するのに適しているが、電池活物質の放電容量(脱ドープ量)および不可逆容量(非脱ドープ量)を、対極の性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として、上記で得られた電極を用いてリチウム二次電池を構成し、その特性を評価した。
すなわち、上記各実施例または比較例の炭素材を用いて得られた直径15mmの円盤膜状電極を、2016サイズ(すなわち直径20mm、厚さ1.6mm)のコイン型電池用缶の内蓋にスポット溶接された直径17mmのステンレススチール網円盤に、プレスにより加圧して圧着して電極とした。
リチウム極の調製は、Ar雰囲気中のグローブボックス内で行った。予め2016サイズのコイン型電池用缶の外蓋に直径17mmのステンレススチール網円盤をスポット溶接した後、厚さ0.5mmの金属リチウム薄板を直径15mmの円盤状に打ち抜いたものをステンレススチール網円盤に圧着し、電極(対極)とした。
このようにして製造した電極の対を用い、電解液としてはプロピレンカーボネートとジメトキシエタンを容量比で1:1で混合した混合溶媒に1モル/リットルの割合でLiClOを加えたものを使用し、直径17mmのポリプロピレン製微細孔膜をセパレータを介して対向きさせ、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
(c)電池容量の測定
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った充放電は定電流定電圧法により行った。ここで、「充電」は試験電池では放電反応であるが、この場合は炭素材へのリチウム挿入反応であるので、便宜上「充電」と記述する。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、炭素材からのリチウムの脱離反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した定電流定電圧条件は、電池電圧が0Vになるまで一定の電流密度0.5mA/cmで充電を行い、その後、電圧を0Vに保持するように(定電圧に保持しながら)電流値を連続的に変化させて電流値が20μAに達するまで充電を継続する。このとき、供給した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量当たりの充電容量(mAh/g)と定義した。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が1.5Vに達するまで一定の電流密度0.5mA/cmで行い、このとき放電した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量当たりの放電容量(mAhg)と定義する。不可逆容量は、充電量−放電量として計算される。
同一試料を用いて作製した試験電池についてのn=3の測定値を平均して充放電容量および不可逆容量を決定した。
(d)急速放電性試験
上記構成のリチウム二次電池について、(c)と同様の方法で炭素材に充電した後、電流密度充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が1.5Vに達するまで一定の電流密度20mA/cmで行い、このとき放電した電気量を電極面積で除した値を急速放電容量(mAh/cm)と定義する。
(e)電極材料の保存特性試験
(c)の方法により負極材料製造直後(0日)の不可逆容量Iおよび露点−60℃、温度25℃の空気中で30日保管した電極の不可逆容量I30を測定し、以下の式により大気中劣化率を測定した。
Figure 2005097674
(f)繰り返し性能試験
上記実施例または比較例で得られた炭素材各90重量部、ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業製「KF#1100」)10重量部にNMPを加えてペースト状にし、銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径15mmの円板状に打ち抜くことにより負極電極を作製した。なお、電極中の炭素材料の量は約14mgに調整した。
コバルト酸リチウム(LiCoO)94重量部、カーボンブラック3重量部、ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業製「KF#1300」)3重量部にNMPを加えてペースト状にし、アルミニウム箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径14mmの円板状に打ち抜く。なお、(c)で測定した負極活物質の充電容量の80%となるよう正極電極中のコバルト酸リチウムの量を調整した。コバルト酸リチウムの容量を150mAh/gとして計算した。
このようにして調製した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒に1モル/リットルの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径17mmのポリプロピレン製微細孔膜をセパレータを介して対向させ、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
ここで採用した定電流定電圧条件は、電池電圧が4.2Vになるまで一定の電流密度3mA/cmで充電を行い、その後、電圧を4.2Vに保持するように(定電圧に保持しながら)電流値を連続的に変化させて電流値が50μAに達するまで充電を継続する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が2.75Vに達するまで一定の電流密度3mA/cmで行った。この充放および放電を25℃で25回繰り返したのち、45℃まで電池を加温し、45℃でさらに100回充放電を繰り返し100回後の放電容量を加温後最初の放電容量で除し、容量維持率(%)とした。
上記(a)〜(f)のようにして測定した実施例、比較例の炭素材の電気化学特性評価結果を、用いた炭素材の代表的物性のいくつかとともに下表2にまとめて記す。
Figure 2005097674
Figure 2005097674
上記表1および表2の結果を見れば明らかなように、本発明によれば球状ビニル樹脂を出発原料として、非水電解質二次電池の負極材料として用いた場合に急速出力特性および耐久性を含む優れた適性を示す球状炭素材の製造方法が提供される。得られた球状炭素材は、非水電解質二次電池の負極材料以外にも、その優れた真球度、粒径の均一性を利用して、例えば制電性(静電気非発生性)の良好な非金属ベアリング材としても優れた適性を示す他、吸着剤、各種充填材を含む多様な用途展開が期待される。

Claims (6)

  1. 球状ビニル樹脂を酸化性ガス雰囲気中で酸化処理して球状の炭素前駆体を得、これを非酸化性ガス雰囲気中1000〜2000℃で炭素化することを特徴とする球状炭素材の製造方法。
  2. 球状ビニル樹脂が150〜400℃の温度で酸化処理される請求項1に記載の製造方法。
  3. 球状ビニル樹脂が架橋ビニル樹脂からなる請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 球状ビニル樹脂が、その10〜80重量%のスチレン系モノマーおよび10〜90重量%のアクリロニトリル系モノマーを含み、更にスチレン系モノマーの15重量%以上の架橋剤を含むモノマー混合物の懸濁重合生成物からなる請求項3に記載の製造方法。
  5. 懸濁重合がモノマー混合物100重量部に対し、0.1〜10重量部のコロイダルシリカを分散安定剤として含む水性媒体中で行われる請求項4に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により製造された球状炭素材からなる非水電解質二次電池用負極材料。
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