JPWO2005038295A1 - 動力伝達チェーン及びそれを用いた動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
Description
通常のチェーンでは、複数のピンの長さは互いに同一であるので、全てのピンが同じようにシーブ面に衝突することになる。そうすると、各ピンの衝突により発生する音の周波数が略等しくなるので、当該周波数で発生音が大きくなり、音圧レベルが高くなってしまう。そこで、特開昭63−53337号公報には、長さの相違する複数のピンを用いることにより、発生する音の周波数を分散させて、あるいは共鳴を抑制することにより、音圧レベルを下げる発明が提案されている。
更に詳細には、ピンの長さを実質的に同一としたまま、発生音を効果的に低減しうる動力伝達チェーンを提供することを第1の目的とする。また、多角形振動による発生音を更に低減し、運転時の発生音を効果的に抑制しうる動力伝達チェーン及びこれを用いた動力伝達装置を提供することを第2の目的とする。
なお、ピン長手方向長さが実質的に同一、とは、複数のピンの長手方向長さが、通常の方法で同一長さに作製しようとしたときに生じる誤差の範囲内にあることを意味する。
なお、ここでの「断面形状または断面積が相違する」の意味であるが、対比するピン相互間において、ピン長手方向位置が同一な各断面のそれぞれにおいて両ピンの断面形状または断面積を比較し、そのうちたとえ一の断面でも断面形状または断面積が相違すれば、「断面形状または断面積が相違する」に該当するものとする。
ここでピッチとは、単一のリンク内に挿通されるピン相互間のチェーン長手方向における間隔をいう。なお、このピッチは、ピンとストリップとの接点におけるピン相互間の間隔であり、かかるピッチは、チェーンを屈曲していない状態(真っ直ぐな状態)として測定する。
なお、長手方向長さが実質的に同一、とは、複数のチェーン摩擦伝達部材の長手方向長さが、通常の方法で同一長さに作製しようとしたときに生じる誤差の範囲内にあることを意味する。
このようにすると、チェーン摩擦伝達部材相互間の前記剛性を相違させることが容易に可能となる。
なお、ここでの「断面形状または断面積が相違する」の意味であるが、対比するチェーン摩擦伝達部材相互間において、そのチェーン幅方向位置が同一な各断面のそれぞれにおいて両チェーン摩擦伝達部材の断面形状または断面積を比較し、そのうちたとえ一の断面でも断面形状または断面積が相違すれば、「断面形状または断面積が相違する」に該当するものとする。
また、リンクのピッチが相違するから、摩擦伝達部材としての伝達ピンのチェーン長手方向ピッチを容易に相違させることができる。伝達ピンのチェーン長手方向ピッチが相違している場合、伝達ピンとプーリとの接触ピッチも相違するから、伝達ピンとプーリとの接触により発生する音の周期が分散され、発生する音圧レベルのピークが小さくなる。また、ピッチが長いリンクほどチェーン長手方向に幅広の伝達ピンを挿通する構成とした場合には、伝達ピンのピッチを相違させつつ伝達ピンのチェーン幅方向の力に対する剛性を相違させることが容易となり、発生音低減効果が更に高まる。
ここでピッチとは、単一のリンク内に挿通されるピン相互間のチェーン長手方向における間隔をいう。なお、このピッチは、第1ピンと第2ピンとの接点におけるピン相互間の間隔であり、単一のリンク内に設けられた第1貫通孔と第2貫通孔との距離により調整される。また、このピッチはチェーンを屈曲していない状態(真っ直ぐな状態)として測定する。
このようにすると、上述した各動力伝達チェーンを用いたので、動作時における発生音が小さいなど上記各チェーンの作用効果を備えた動力伝達装置とすることができる。
図1は本発明における第1発明の一実施形態に係るチェーン式無段変速機用のチェーン(以下単に「チェーン」ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。本形態に係るチェーン1は、全体として無端帯状をなし、複数の金属製リンク2と、これらリンク2を相互に連結するための複数の金属製ピン3と、これらピン3よりもピン長手方向長さが若干短い複数のストリップ5とから構成されている。リンク2及びピン3は、例えば軸受鋼等の金属からなる。なお、図1では、チェーン1の幅方向略中央付近のリンクの記載を一部省略している。
ピン3の端面3tは、ストリップ5の端面よりもチェーン幅方向外側に位置している。この突出したピン3が、プーリのシーブ面と接触することになる。
このようにピン3とストリップ5とが接触しているので、ピン3がプーリのシーブ面にクランプされる際、ピン3がピン軸中心に回転することが殆ど無くなる。このため、摩擦損失が低減し、高い動力伝達効率を確保することができる。
また、図2に示すように、太ピン3fの断面形状は、細ピン3hの断面形状をチェーン長手方向に拡大したような形状となっている。即ち、チェーン1に装着された状態において、太ピン3fの断面形状と細ピン3hの断面形状とを比較すると、両者はチェーン厚み方向(図2の上下方向)幅はほぼ同一であるが、太ピン3f断面のチェーン長手方向幅Lfは、細ピン3h断面のチェーン長手方向幅Lhよりも長い。
また、太ピン3fの断面積と細ピン3hの断面積とを比較すると、太ピン3fの断面積は、細ピン3hの断面積の1.1倍〜2倍とされている。
そして、長リンク2fのピッチP1は、短リンク2hのピッチP2よりも長くなっている。また、かかるピッチP1,P2に対応して、長リンク2fのチェーン長手方向長さXは、短リンク2hのチェーン長手方向長さYよりも長くなっている。
太ピン3fと細ピン3hとのピン長手方向長さは実質的に同一であるから、特定のピン3に摩耗が集中してしまうということがない。
そして、太ピン3fと細ピン3hとは断面積が相違しているので、チェーン式無段変速機50が作動する際の発生音を低減することができる。その原理は次の通りである。
図15に示すチェーン式無段変速機50において、チェーン1が各プーリ10,20のシーブ面12a,13a,22a,23aに進入する際に、チェーン1のピン3がこれらシーブ面に衝突して当該シーブ面を押す。この反作用で、ピン3はその端面3tからシーブ面から押され、ピン3はそのピン長手方向長さを圧縮させる方向の力を受けて変形する(この変形を以下、圧縮変形などという)。この力によりピン3は弾性変形し、その後に元の形状を回復するように変形する(この変形を以下、回復変形などという)が、この回復変形の際、再びシーブ面12a,13a,22a,23aを押すことになる。これによりプーリ10,20が振動し、この振動が音を発生させる。音が発生する要因は他にもあるが、前記原理による音が最も大きい。
よって、形状が比較的単純であるので、その作製が容易である。
そして、リンク2のピッチは、この各ピン3f、3hの断面形状に対応したものとされている。即ち、太ピン3fが挿通されるリンク2には、該太ピン3fに対応して比較的大きな貫通孔4である太貫通孔4fが設けられることになるが、この太貫通孔4fに対応すべくピッチがより長い長リンク2fが用いられている。
さらに本実施形態では、相違するピッチ長さに対応して、リンク自体のチェーン長手方向長さも相違させている。
このように、ピッチの相違する複数のリンク2を用い、ピッチが長いリンクほどチェーン長手方向に幅広のピンが挿通されているので、チェーン1の設計が容易となる。即ち、前記のように複数種のピンを用いて発生音を低減させようとする場合、ピン3の断面のチェーン長手方向幅のみを変えることにより複数種のピンを作製しておき、これに対応させて個々のリンク2のピッチを適宜変えることにより、ピッチ及びピン3断面のチェーン長手方向幅の異なるチェーン1を容易に設計できる。更に、かかるピッチ及びチェーン長手方向幅の相違に対応させて、チェーン自体の帯長手方向長さを変えることにより、例えばピン断面の上下方向(チェーン厚さ方向)幅を変える場合と比較して、チェーン1の設計が容易となる。
また、前述のように、ピンの断面積または断面形状は、ピン長手方向各位置の断面のそれぞれにおいて比較し、一の断面でも相違していればよいから、例えば、対比するピン相互間において、ピンの断面形状及び断面積がピン長手方向各位置のほとんどで同一であるが、一方のピンのみピン長手方向の一部分にくびれや凹部、あるいは凸部などがあり、当該部分のみにおいて断面形状または断面積が相違している場合であってもよい。この場合も、前記音発生原理における圧縮変形時や回復変形時などにプーリ10,20に与える力やタイミングなどが相違するからである。
(イ)ピンは、チェーン長手方向に幅広のもの(以下、太ピンという)と同幅狭のもの(以下、細ピンという)の2種類であり、リンクは、二つの貫通孔のうち一つに太ピンが挿通され残り一つの貫通孔に細ピンが挿通されたリンクAと、二つの貫通孔の両方とも細ピンが挿通されたリンクBの2種類がある場合、リンクBよりもリンクAのほうのピッチを長くする態様。
(ロ)ピンは太ピンと細ピンの2種類であり、リンクは、二つの貫通孔の両方とも太ピンが挿通されたリンクCと、二つの貫通孔のうち一つに太ピンが挿通され残り一つの貫通孔に細ピンが挿通されたリンクDと、二つの貫通孔の両方とも細ピンが挿通されたリンクEの合計3種類がある場合、これらリンクのピッチが、次の不等式
リンクC>リンクD>リンクE
の関係となっている場合。
これら(イ)及び(ロ)の例示からも分かるように、前記「ピッチが長いリンクほどチェーン長手方向に長いピンが挿通されている」とは、「単一のリンクに挿通されるピンの、当該挿通部分におけるチェーン長手方向幅の総和」が大きい場合ほど、ピッチの長いリンクを用いることにより、複数種のピンを有するチェーンの設計を容易とするものである。
このような不規則配列のうち最適な配列を求めるためには、例えば、ピンの配列パターンをランダムに変えた多数のチェーンにて実験を行ったり、コンピュータでシミュレーションを行ったりして、発生音の小さい最適な配列を決めることができる。
第1発明の音圧レベル低減効果を確認すべく、実施例及び比較例による検証を行った。図3は、ピン長手方向長さが実質的に同一で、且つ、ピンの種類が1種類で且つリンクの種類も1種類である比較例1のチェーンを備えた動力伝達装置において、作動時の発生音を測定し、この音の各周波数における音圧レベルを表示したグラフである。この比較例1のチェーンでは、各ピン相互間の間隔(ピッチ)はチェーン全長において等しくなっている。一方、図4は、ピンの長手方向長さが実質的に同一だが、ピンのチェーン長手方向幅が相違する2種類のピンと、リンクのピッチが相違する2種類のリンクとを備えた実施例1のチェーンを装着した場合のグラフである。この実施例1は、等ピッチである前述の比較例1とは異なり、ピン相互間の距離(ピッチ)をチェーン内で相違させている。ピン及びリンクの仕様を除き、実施例1の動力伝達装置と比較例1のそれとの仕様は全く同一である。
なお、実施例1では、ピッチP1が8.8mmのリンクと、ピッチP2が8.2mmのリンクという2種類のリンクを用い、且つ、チェーン長手方向幅Lfが2.5mmの太ピンと、チェーン長手方向幅Lhが2.0mm(幅Lfの80%)の細ピンという2種類のピンを用いた(図2参照)。また、ピンのチェーン厚さ方向幅La(図2参照)は、2種類のピン共に6mmとした。
図3及び図4に示すように、実施例1は比較例1よりも音圧レベルの最大値が約10dB小さくなった。
第2発明の一実施形態に係るチェーン式無段変速機用のチェーン(以下単に「チェーン」ともいう)100の要部構成の模式的斜視図は、上述した第1発明のチェーン1と同様、図1により示され、その基本構成はチェーン1と共通である。即ち、このチェーン100は、全体として無端帯状をなし、複数の金属製リンク2と、これらリンク2を相互に連結するための複数の金属製のピン3と、これらピン3よりもピン長手方向長さが若干短い複数のストリップ5とから構成されている。リンク2及びピン3は、例えば軸受鋼等の金属からなる。複数のストリップ5は全て同一形状とされている。一方、複数のピン3は異なる断面形状のものを含んでいるが、その長手方向長さは全てのピン3で同一である。ピン3の端面3tは、ストリップ5の端面よりもチェーン幅方向外側に位置しており、この端面3tがプーリのシーブ面と接触することになる。即ちこのチェーン1では、ピン3がチェーン摩擦伝達部材を兼ねた伝達ピンとされている。
なお、本発明におけるインボリュートには、インボリュートに近似したもの(略インボリュート)も含まれる。インボリュートに近似したものであっても、前記多角形振動をある程度抑制できるからである。
また、図2に示すように、太ピン3fの断面形状は、細ピン3hの断面形状をチェーン長手方向に拡大したような形状となっている。即ち、チェーン100に装着された状態において、太ピン3fの断面形状と細ピン3hの断面形状とを比較すると、両者はチェーン厚み方向(図2の上下方向)幅はほぼ同一であるが、太ピン3f断面のチェーン長手方向幅Lfは、細ピン3h断面のチェーン長手方向幅Lhよりも長い。
なお、太ピン3fの断面積と細ピン3hの断面積とを比較すると、太ピン3fの断面積は、細ピン3hの断面積の1.01倍〜2倍が好ましく、1.1倍〜2倍が更に好ましい。
そして、長リンク2fのピッチP1は、短リンク2hのピッチP2よりも長くなっている。また、かかるピッチP1,P2に対応して、長リンク2fのチェーン長手方向長さXは、短リンク2hのチェーン長手方向長さYよりも長くなっている。そして、各リンク2f,2hのピッチの相違に伴い、これら各リンクに挿通されたピン3のピッチも相違している。
ピン3とストリップ5との接触位置の軌跡が円のインボリュートとされているから、多角形振動が少なくなる。
この点に関し、先ず多角形振動から説明する。図8は、チェーンの側面視において、従来の一般的なチェーンがプーリに巻き掛けられる際のピンの軌跡の概略を示している。同図は、チェーンが図面左側から右側へと進行しながら図面右側に位置するプーリ(図示省略)に巻き掛けられる際のピンの軌跡を示したものであり、その横軸は、チェーンがプーリに噛み込まれ始める位置である噛込位置からの位置(mm)を示している。噛込位置よりもチェーン進行方向の先側(図面右側)では、チェーンがプーリに巻き掛けられた状態とされるので、ピンの軌跡はチェーン100の巻き掛け半径に対応した円弧形状となっているが、噛込位置よりもチェーン進行方向手前側(図面左側)ではピンの軌跡が波を打ったように上下に振動している。これが多角形振動である。このような多角形振動は、チェーンがリンクを連結したものであり、チェーン長手方向に屈曲させた際に完全に円弧にはならず多角形となってしまうことに起因する。つまりこの場合、噛込位置においてプーリの接線方向とピン進入方向とが異なってしまい、図8に示す進入角が生じて、ピンは下降しながらプーリと接触することになる。プーリとピンとが接触する瞬間のピンの下降量が初期噛込位置変化量として示されている。このピンの下降によりチェーンに上下運動が生じ、かかる上下振動の繰り返しにより多角形振動が生ずる。上述した接触位置の軌跡を円のインボリュートとすると、前記進入角(図8参照)が小さくなり、初期噛込位置変化量が減少して、多角形振動が抑制される。
そして、インボリュートの基礎円半径が異なる2種類以上のピン3及びストリップ5の組が形成されているから、多角形振動の共振が抑制され、該多角形振動による発生音が低減される。
図15に示すチェーン式無段変速機50において、チェーン100が各プーリ10,20のシーブ面12a,13a,22a,23aに進入する際に、チェーン100のピン3がこれらシーブ面に衝突して当該シーブ面を押す。この反作用で、ピン3はその端面3tからシーブ面から押され、ピン3はそのピン長手方向長さを圧縮させる方向の力を受けて変形する(この変形を以下、圧縮変形などという)。この力によりピン3は弾性変形し、その後に元の形状を回復するように変形する(この変形を以下、回復変形などという)が、この回復変形の際、再びシーブ面12a,13a,22a,23aを押すことになる。このような原理(以下、音発生原理ともいう)これによりプーリ10,20が振動し、この振動が音を発生させる。
また、太ピン3fと細ピン3hとのピン長手方向長さは実質的に同一であるから、特定のピン3に摩耗が集中してしまうということがない。
そして、リンク2のピッチは、この各ピン3f、3hの断面形状に対応したものとされている。即ち、太ピン3fが挿通されるリンク2には、該太ピン3fに対応して比較的大きな貫通孔4である太貫通孔4fが設けられることになるが、この太貫通孔4fに対応すべくピッチがより長い長リンク2fが用いられている。
さらに本実施形態では、相違するピッチ長さに対応して、リンク自体のチェーン長手方向長さも相違させている。
このように、ピッチの相違する複数のリンク2を用い、ピッチが長いリンクほどチェーン長手方向に幅広のピンが挿通されているので、チェーン100の設計が容易となる。即ち、前記のように複数種のピンを用いて発生音を低減させようとする場合、ピン3の断面のチェーン長手方向幅のみを変えることにより複数種のピン3を作製しておき、これに対応させて個々のリンク2のピッチを適宜変えることにより、ピッチ及びピン3断面のチェーン長手方向幅の異なるチェーン100を容易に設計できる。更に、かかるピッチ及びチェーン長手方向幅の相違に対応させて、チェーン自体の帯長手方向長さを変えることにより、例えばピン断面の上下方向(チェーン厚さ方向)幅を変える場合と比較して、チェーン100の設計が容易となる。
(イ)ピンは、チェーン長手方向に幅広のもの(以下、太ピンという)と同幅狭のもの(以下、細ピンという)の2種類であり、リンクは、二つの貫通孔のうち一つに太ピンが挿通され残り一つの貫通孔に細ピンが挿通されたリンクAと、二つの貫通孔の両方とも細ピンが挿通されたリンクBの2種類がある場合、リンクBよりもリンクAのほうのピッチを長くする態様。
(ロ)ピンは太ピンと細ピンの2種類であり、リンクは、二つの貫通孔の両方とも太ピンが挿通されたリンクCと、二つの貫通孔のうち一つに太ピンが挿通され残り一つの貫通孔に細ピンが挿通されたリンクDと、二つの貫通孔の両方とも細ピンが挿通されたリンクEの合計3種類がある場合、これらリンクのピッチが、次の不等式
リンクC>リンクD>リンクE
の関係となっている場合。
これら(イ)及び(ロ)の例示からも分かるように、前記「ピッチが長いリンクほどチェーン長手方向に長いピンが挿通されている」とは、「単一のリンクに挿通されるピンの、当該挿通部分におけるチェーン長手方向幅の総和」が大きい場合ほど、ピッチの長いリンクを用いることを意味し、これにより複数種のピンを有するチェーンの設計を容易とするものである。
なお、図11及び図12のグラフにおいて、回転半径小とはチェーンの巻き掛け半径が31.65mmの場合であり、回転半径大とは同巻き掛け半径が73.859mmの場合である。
また、インボリュートの基礎円半径が小さいピン3ほどピン剛性を小さくするのが好ましい。基礎円半径の小さいピンの方が発生音(打音)が大きい傾向にあるが、この基礎円半径の比較的小さいピンの剛性を比較的小さくすることで発生音(打音)の大きさを吸収(緩和)することができるからである。
第2発明の音圧レベル低減効果を確認すべく、実施例及び比較例による検証を行った。図13は、実施例2及び比較例2,3の動力伝達装置における運転時の発生音を同一条件で測定して比較したグラフである。実施例2は、上述した第2発明の実施形態と同様の構成とし、インボリュートの基礎円半径、ピン3の断面積、ピッチの3項目につきそれぞれ2種類ずつを混在させ且つそれぞれにつき不規則的に配列したものである。比較例3は、ピン3の断面形状は凸状の曲線(クラウニング)とされているもののインボリュートとはされておらず、またピンの剛性やピッチも1種類のみとされたものである。また、比較例2は、従来から自動車用CVT用として実用化されている金属ベルトであって、ベルト長手方向に対して垂直な向きに配置され且つベルト長手方向に多数重ねられた薄肉のコマをスチールバンドで連結した構造のものである。この比較例2は、比較例3のような従来の動力伝達チェーンと比較して発生音は少ないものの、屈曲性に比較的劣るために変速比の自由度が比較例3のようなチェーンタイプのものよりも小さいことが一般に知られている。
ドリブンプーリ20は、駆動輪側に接続された出力軸21に一体回転可能に取り付けられており、円錐面状のシーブ面22aを有する固定シーブ22と、このシーブ面22aに対向して配置される円錐面状のシーブ面23aを有する可動シーブ23とを備えている。そして、これらシーブ面22a,23aによりチェーン1(チェーン100)を側面から強圧で挟み込むようになっている。また、可動シーブ23には、油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、これにより可動シーブ23は出力軸21の軸方向に可動とされている。可動シーブ23が移動すると、対向するシーブ面22a,23aの対向距離(溝幅)が変化する。チェーン1(チェーン100)のチェーン幅は常に一定であるので、チェーンはそのチェーン幅に見合った径方向位置で巻き付き、チェーンの巻掛け半径が変化する。
逆に、よりハイギアな状態に変速する場合には、ドライブプーリ10側の溝幅を可動シーブ13の移動によって縮小させてチェーン1(チェーン100)のドライブプーリ10における巻掛け半径を大きくすると同時に、ドリブンプーリ20側の溝幅を可動シーブ23の移動によって拡大させてチェーン1(チェーン100)のドリブンプーリ20における巻掛け半径を小さくする。このようにして、無段変速機能が奏される。
本発明のチェーンは、かかるチェーン式無段変速機50のような動力伝達装置において、その動作時の発生音の音圧レベルを低減することができる。
第1貫通孔41と第2貫通孔42とを連通させる連通部Rを設けることにより、リンク2の変形が容易となり、ピン3やストリップ5から大きな力を受けた場合に貫通孔周縁部における応力集中を緩和することができ、リンクの耐久性が向上する。ピンやストリップをリンクに嵌合固定(圧入、焼嵌、冷嵌等による嵌合固定)する圧入チェーンにおいては特にこの応力集中緩和効果が大きい。
Claims (11)
- 貫通孔を有する複数のリンクと、前記貫通孔に挿通され前記複数のリンクを相互に連結する複数のピンと、を備え、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリとの間に架け渡されて用いられ、前記ピンの両端面と前記第1及び第2のプーリのシーブ面とが接触して動力を伝達する動力伝達チェーンであって、
前記複数のピンは、そのピン長手方向長さが実質的に全て同一であり、且つ、ピン長手方向に作用する力に対する剛性が相違する複数種のピンを含むことを特徴とする動力伝達チェーン。 - 複数のリンクと、これらを相互に連結する複数のピンと、を備え、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリとの間に架け渡されて用いられ、前記ピンの両端面と前記第1及び第2のプーリのシーブ面とが接触して動力を伝達する動力伝達チェーンであって、
前記複数のピンは、そのピン長手方向長さが実質的に同一であり、且つ、ピン長手方向に垂直な断面における断面形状または断面積が相違する複数種のピンを含むことを特徴とする動力伝達チェーン。 - 前記複数のピンのそれぞれは、単一のピン内におけるピン長手方向各位置での前記断面形状及び前記断面積が当該ピンの全長に亘って略同一とされているとともに、前記複数のピン相互間において前記断面積が相違する複数種のピンを含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の動力伝達チェーン。
- 前記複数のピンは前記断面においてチェーン長手方向幅が相違する複数種のピンを含み、且つ、前記複数のリンクは、そのピッチが相違する複数種のリンクを含むとともに、
前記ピッチが長いリンクほど前記チェーン長手方向に幅広のピンが挿通されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の動力伝達チェーン。 - 前記断面積が相違する前記複数種のピンにおいて、前記断面積が最大のピンの当該断面積は、前記断面積が最小のピンの当該断面積の1.1倍以上2倍以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動力伝達チェーン。
- 円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリとの間に架け渡されて用いられ、チェーン長手方向の所定間隔おきに設けられた複数のチェーン摩擦伝達部材の端面が前記第1及び第2のプーリのシーブ面と接触して動力を伝達する動力伝達チェーンであって、
チェーン長手方向に並ぶ第1及び第2の貫通孔を有する複数のリンクと、一のリンクの第1貫通孔と他のリンクの第2貫通孔とを貫通することによりチェーン幅方向に並ぶリンク同士をチェーン長手方向に屈曲可能に連結している複数の第1ピン及び複数の第2ピンとを備え、一のリンクの第1貫通孔に固定され且つ他のリンクの第2貫通孔に移動可能に嵌め入れられた前記第1ピンと一のリンクの第1貫通孔に移動可能に嵌め入れられ且つ他のリンクの第2貫通孔に固定された前記第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより前記屈曲が可能とされているとともに、これら第1ピンと第2ピンとの接触位置の軌跡が円のインボリュートとされかつ該インボリュートの基礎円半径が異なる2種類以上の第1ピン及び第2ピンの組が形成されており、
前記複数のチェーン摩擦伝達部材は、チェーン幅方向の力に対する剛性が異なる複数種のチェーン摩擦伝達部材を含むことを特徴とする動力伝達チェーン。 - 前記チェーン摩擦伝達部材は、その長手方向長さが実質的に全て同一であることを特徴とする請求項6に記載の動力伝達チェーン。
- 前記複数のチェーン摩擦伝達部材は、チェーン幅方向に垂直な断面における断面形状または断面積が相違する複数種のチェーン摩擦伝達部材を含むことを特徴とする請求項6又は7のいずれかに記載の動力伝達チェーン。
- 前記第1ピン又は前記第2ピンは、前記チェーン摩擦伝達部材を兼ねた伝達ピンであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の動力伝達チェーン。
- 複数の前記伝達ピンは、ピン長手方向に垂直な断面においてチェーン長手方向幅が相違する複数種の伝達ピンを含み、且つ、前記複数のリンクは、そのピッチが相違する複数種のリンクを含むことを特徴とする請求項9に記載の動力伝達チェーン。
- 円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、
円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、
これら第1及び第2のプーリの間に架け渡される動力伝達チェーンと、
を備えた動力伝達装置であって、
前記動力伝達チェーンが、請求項1〜10のいずれかに記載のものであることを特徴とする動力伝達装置。
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