JP2006144855A - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 - Google Patents

動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 Download PDF

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繁夫 鎌本
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Abstract

【課題】リンク連結用の動力伝達部材の一対の端面のそれぞれが、プーリに摩擦係合することで、プーリとの間で動力の伝達を行う動力伝達チェーンにおいて、騒音低減と小型化を達成すること。
【解決手段】複数のリンクを連結するための第1のピン3の端面5には、各プーリの対応するシーブ面と接触するための接触領域20が設けられている。接触領域20の中心位置20a(図心)は、当該端面5の中心位置5a(図心)よりも、チェーン進行方向Xの後方に配置されている。
【選択図】 図5

Description

本発明は、動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置に関する。
自動車のプーリ式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)等の動力伝達装置に用いられる無端状の動力伝達チェーンには、複数のリンクと、これらのリンクを連結するピンとを備え、ピンの一対の端面のそれぞれが、プーリのテーパディスクの表面に摩擦係合することで、プーリとの間で動力の伝達を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
実開平3−84459号公報
このような動力伝達チェーンにおいて、騒音の低減が求められている。本発明は、これらの課題を解決することのできる動力伝達チェーンおよび動力伝達装置を提供することを目的とする。
動力伝達チェーンの許容伝達トルクは、ピンの端面とプーリのテーパディスクの表面との互いの接触面積や、プーリにおける動力伝達チェーンの巻き掛け半径や、ピンとプーリとの間の接触荷重に関連して決まる。ピンとプーリとの接触により、ピンは弾性的に変形するが、これが瞬時に行われるため、ピンに衝撃力が作用し、動力伝達チェーンを用いた動力伝達装置の騒音の一因となる。これを抑制するために、プーリのテーパディスクの表面とピンの端面の接触面積をより大きくして、両者の接触開始より最大接触圧力発生状態までの時間を長くし、前記衝撃力を緩和することが考えられるが、動力伝達チェーン(ピン)の大型化および動力伝達装置の大型化を招いてしまう。
そこで、本願発明者は、上記の課題を解決するため、ピンとプーリとの係合状態に着目して鋭意研究を行い、本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明は、複数のリンクと、これらのリンクを互いに連結する板状の動力伝達部材とを備え、動力伝達部材の各端面に、プーリのシーブ面への接触領域が形成される動力伝達チェーンにおいて、上記端面の接触領域の中心位置は、当該端面の中心位置よりもチェーン進行方向の後方に配置されることを特徴とするものである。
本発明によれば、動力伝達部材の端面とプーリのシーブ面との接触開始から最大接触圧力発生までの時間を長くすることができる。これにより、動力伝達部材の端面の形状を大型化することなく、動力伝達部材がプーリのシーブ面に接触する際の衝撃を緩和して、動力伝達部材がプーリのシーブ面に接触することに起因する騒音を低減することができる。したがって、動力伝達チェーンの小型化を達成することができる。
上記動力伝達部材は、チェーン進行方向の後方に対向する平坦面を含み、上記平坦面と直交する方向に関しての動力伝達部材の板厚をtとした場合、上記接触領域の中心位置と上記平坦面との距離はt/3以下であることが好ましい。これにより、ピンの接触領域をチェーン進行方向のより後端寄りに配置でき、動力伝達部材の端面とプーリのシーブ面との実質的な接触面積をより多くすることができる。
上記接触領域の中心位置は、上記端面の中心位置を含み上記平坦面と直交する平面と上記端面との交差線上に配置されることが好ましい。この場合、動力伝達部材がある角度をもってプーリに挟まれた場合に、動力伝達部材とプーリとが線接触となり、点接触の場合と比較して最大接触圧力を低減することができる。
上記交差線は、上記接触領域の中心位置よりもチェーン進行方向側にある前側部分を含み、上記前側部分は、上記接触領域の中心位置がチェーン幅方向に最も突出するように傾斜していることが好ましい。これにより、動力伝達部材の端面の接触領域が、プーリのシーブ面に接触し始めてから当該シーブ面に完全に接触するまでの時間をより長くすることができる。その結果、動力伝達部材に衝撃力が加わることを抑制して、実用上の耐久性をより向上することができる。
また、本発明は、相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する上記の動力伝達チェーンとを備えることを特徴とする動力伝達装置を提供するものである。本発明によれば、静粛性に優れ、且つコンパクトな動力伝達装置を実現することができる。
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドライブプーリ60と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
図2は、図1のドライブプーリ60(ドリブンプーリ70)およびチェーン1の部分的な拡大断面図である。図1および図2を参照して、ドライブプーリ60は、車両の駆動源に動力伝達可能に連なる入力軸61に取り付けられるものであり、固定シーブ62と可動シーブ63とを備えている。固定シーブ62および可動シーブ63は、相対向する一対のシーブ面62a,63aをそれぞれ有している。シーブ面62a,63aは円錐面状の傾斜面を含む。これらシーブ面62a,63a間に溝が区画され、この溝によってチェーン1を強圧に挟んで保持するようになっている。
また、可動シーブ63には、溝幅を変更するための油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、入力軸61の軸方向(図2の左右方向)に可動シーブ63を移動させることにより、溝幅を変化させるようになっている。それにより、入力軸61の径方向(図2の上下方向)にチェーン1を移動させて、入力軸61(プーリ60)に対するチェーン1の巻き掛け半径(有効半径)を変化できるようになっている。
一方、ドリブンプーリ70は、図1および図2に示すように、駆動輪(図示せず)に動力伝達可能に連なる出力軸71に一体回転可能に取り付けられており、ドライブプーリ60と同様に、チェーン1を強圧で挟む溝を形成するための相対向する一対のシーブ面73a,72aをそれぞれ有する固定シーブ73および可動シーブ72を備えている。
ドリブンプーリ70の可動シーブ72には、ドライブプーリ60の可動シーブ63と同様に油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、この可動シーブ72を移動させることにより溝幅を変化させるようになっている。それにより、チェーン1を移動させて、出力軸71(プーリ70)に対するチェーン1の巻き掛け半径を変化できるようになっている。
図3は、チェーン1の要部の断面平面図である。図4は、図3のII−II線に沿う断面図であり、チェーン直線部分を示している。なお、以下では、チェーン直線部分における構成を基準として説明する。
図3および図4を参照して、チェーン1は、複数のリンク2と、これらのリンク2を互いに連結する複数対の第1および第2のピン3,4とを備えている。対をなす第1および第2のピン3,4は、互いに転がり摺動接触するようになっている。なお、転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触のことをいう。
各リンク2は板状に形成されており、チェーン進行方向Xの前後に並ぶ一対の端部としての前端部7および後端部8を含んでいる。これら前端部7および後端部8には、第1の貫通孔としての前貫通孔9および第2の貫通孔としての後貫通孔10がそれぞれ形成されている。また、各リンク2における周縁部は、滑らかな曲線に形成されており、応力集中の生じ難い形状とされている。
リンク2を用いて、第1〜第3の列51〜53が形成されている。具体的には、第1の列51、第2の列52および第3の列53はそれぞれ、チェーン幅方向Wに並ぶ複数のリンク2を含んでいる。第1〜第3の列51〜53のそれぞれにおいて、同一列のリンク2は、チェーン進行方向Xの位置が互いに同じとなるように揃えられている。第1〜第3の列51〜53は、チェーン進行方向Xに沿って並んで配置されている。
第1〜第3の列51〜53のリンク2はそれぞれ、対応する第1および第2のピン3,4を用いて、対応する第1〜第3の列51〜53のリンク2と相互に屈曲可能に連結されている。
具体的には、第1の列51のリンク2の前貫通孔9と、第2の列52のリンク2の後貫通孔10とは、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応しており、これらの貫通孔9,10を挿通する第1および第2のピン3,4によって、第1および第2の列51,52のリンク2同士がチェーン進行方向Xに屈曲可能に連結されている。
同様に、第2の列52のリンク2の前貫通孔9と、第3の列53のリンク2の後貫通孔10とは、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応しており、これらの貫通孔9,10を挿通する第1および第2のピン3,4によって、第2および第3の列52,53のリンク2同士がチェーン進行方向Xに屈曲可能に連結されている。
図3において、第1〜第3の列51〜53は、それぞれ1つしか図示されていないが、チェーン進行方向Xに沿って第1〜第3の列51〜53が繰り返すように配置されている。そして、チェーン進行方向Xに互いに隣接する2つの列のリンク2同士が、対応する第1および第2のピン3,4によって順次に連結され、無端状をなすチェーン1が形成されている。
第1のピン3は、チェーン幅方向Wに延びる板状の動力伝達部材であり、リンク2の各貫通孔9,10を挿通している。第1のピン3の長手方向(チェーン幅方向W)の一対の端部が、チェーン幅方向Wの一対の端部に配置されるリンク2からチェーン幅方向Wにそれぞれ突出している。
図2を参照して、第1のピン3の一対の端面5は、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに摩擦接触(係合)するためのものである。第1のピン3は、上記対応するシーブ面62a,63a,72a,73a間に挟持され、これにより、第1のピン3と各プーリ60,70との間で動力が伝達される。第1のピン3は、その一対の端面5が直接動力伝達に寄与するため、例えば、軸受用鋼(SUJ2)等の高強度耐摩耗材料で形成されている。
再び図3および図4を参照して、第2のピン4(ストリップ、またはインターピースともいう)は、第1のピン3と同様の材料により形成された、チェーン幅方向Wに延びる板状の部材である。第2のピン4は、リンク2の各貫通孔9,10を挿通しており、隣り合う第1のピン3のチェーン進行方向Xの前方に配置されている。第2のピン4は、上記各プーリのシーブ面に接触しないように、第1のピン3よりも短く形成されている。チェーン進行方向Xに関して、第2のピン4は、第1のピン3よりも薄肉に形成されている。
第1のピン3は、対応する一のリンク2の前貫通孔9に遊嵌されてこのリンク2に対する相対移動が可能とされると共に、対応する他のリンク2の後貫通孔10に圧入嵌合されてこのリンク2に対する相対移動が規制されている。
具体的には、第1のピン3は、第1の列51のリンク2の前貫通孔9に遊嵌されて、第1の列51のリンク2に対する相対回転が可能とされると共に、第2の列52のリンク2の後貫通孔10に圧入嵌合されて、第2の列52のリンク2に対する相対回転が規制されている。同様に、第1のピン3は、第2の列52のリンク2の前貫通孔9に遊嵌されると共に、第3の列53のリンク2の後貫通孔10に圧入嵌合されている。
また、第2のピン4は、対応する一のリンク2の前貫通孔9に圧入嵌合されてこのリンク2に対する相対移動が規制されると共に、対応する他のリンク2の後貫通孔10に遊嵌されてこのリンク2に対する相対移動が可能とされている。
具体的には、第2のピン4は、第1の列51のリンク2の前貫通孔9に圧入嵌合されて、第1の列51のリンク2に対する相対回転が規制されると共に、第2の列52のリンク2の後貫通孔10に遊嵌されて、第2の列52のリンク2に対する相対移動(回転)が可能とされている。同様に、第2のピン4は、第2の列52のリンク2の前貫通孔9に圧入嵌合されると共に、第3の列53のリンク2の後貫通孔10に遊嵌されている。
上記の構成により、チェーン進行方向Xに隣接するリンク2が相互に屈曲する際、第1のピン3は、隣り合う第2のピン4に対して転がり摺動接触する。
図4を参照して、第1のピン3を基準とした、第1のピン3と隣り合う第2のピン4との接触線Sの軌跡が、概ねインボリュート曲線となるようにされている。
具体的には、第1のピン3の周面11(外周面)のうち、隣り合う第2のピン4と接触し得る接触部12が、断面インボリュート形状に形成されている。この接触部12は、チェーン進行方向Xの前方を向いている。また、第2のピン4の周面13(外周面)のうち、隣り合う第1のピン3と接触し得る接触部14が、チェーン進行方向Xと直交する平坦面(断面直線形状)に形成されている。この接触部14は、チェーン進行方向Xの後方を向いている。
第1のピン3の周面11は、チェーン幅方向W(図4の紙面に垂直な方向)に延びている。この周面11は、上記した接触部12と、接触部12に対向する平坦面としての背部17と、直交方向Vに関する一端部18および他端部19とを有している。なお、直交方向Vとは、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wの双方に直交する方向をいう。
背部17は、チェーン進行方向Xの後方を向く平坦面に形成されている。この背部17は、チェーン進行方向Xと直交する平面A(図4において、紙面に直交する平面)に対して、所定の迎え角B(例えば、10°)を有している。すなわち、背部17は、平面Aに対して、図の反時計回り方向に10°傾いており、チェーン内周側(直交方向Vの一方)を向いている。
一端部18は、接触部12および背部17のチェーン外周側端部間に配置されており、チェーン外周側に向けて凸湾曲する曲面に形成されている。他端部19は、接触部12および背部17のチェーン内周側端部間に配置されており、滑らかな面に形成されている。
図5は、図4の第1のピン3を単品で示した側面図である。図2および図5を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、第1のピン3の一対の端面5のそれぞれ(図5において、一方の端面5のみを図示)に、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aと接触するための接触領域20(図5において、ハッチングで図示)が設けられており、且つこの接触領域20の配置が最適化されている点にある。
第1のピン3の端面5は、第1のピン3の長手方向(チェーン幅方向W)の外側に向けて凸となる球面状に形成されている。
接触領域20は、第1のピン3の端面5の一部に設けられており、例えば、直交方向Vに長手に延びるとともに、チェーン進行方向Xに短手に延びている。
接触領域20の中心位置20a(図心)は、当該端面5の中心位置5a(図心)よりもチェーン進行方向Xの後方に配置されている。具体的には、第1のピン3の背部17と直交する方向Cに関して、第1のピン3の板厚をtとした場合、接触領域20の中心位置20aと背部17との距離dは、t/3以下(d≦t/3)に設定されている、本実施の形態において、上記接触領域20の中心位置20aと背部17との距離dは、例えばt/5に設定されている。
また、接触領域20の中心位置20aは、端面5の中心位置5aを含み背部17と直交する平面Eと上記端面5との交差線F上に配置されている。すなわち、中心位置20aは、端面5において、交差線F上に配置されている。
上記の構成により、接触領域20の中心位置20aは、直交方向Vに関する端面5の略中央部に配置されている。
図6は、図5のIII−III線に沿う一部断面図である。図6を参照して、第1のピン3の端面5には、例えばクラウニング加工が施されている。交差線Fは、そのチェーン進行方向Xの中間部が前端部および後端部に対してチェーン幅方向Wの外側に凸となる略円弧状をなしている。
交差線Fは、接触領域20の中心位置20aよりもチェーン進行方向側にある前側部分Faを含んでいる。この前側部分Faは、接触領域20の中心位置20aがチェーン幅方向Wの外側に最も突出するように傾斜している。端面5の頂部は、接触領域20を含んでいる。
以上が無段変速機100の概略構成である。図2を参照して、この無段変速機100の駆動時において、チェーン1の第1のピン3は、チェーン進行方向Xに移動されつつ、各プーリ60,70に挟持される。その結果、第1のピン3と各プーリ60,70との実質的な接触面積は、チェーン進行方向Xに関する第1のピン3の前端部が各プーリ60,70に挟持されたときに相対的に小さくなり、チェーン進行方向Xに関する第1のピン3の後端部が各プーリ60,70に挟持されたときに相対的に大きくなる傾向にある。
本実施の形態によれば、第1のピン3の端面5の接触領域20の中心位置20aを、当該端面5の中心位置5aよりもチェーン進行方向Xの後方に配置している。したがって、第1のピン3の端面5と各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aとの接触開始から最大接触圧力発生までの時間を長くすることができる。これにより、第1のピン3の端面5の形状を大型化することなく、第1のピン3が各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに接触する際の衝撃を緩和して、第1のピン3が各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに接触することに起因する騒音を低減することができる。したがって、チェーン1の小型化を達成することができる。
また、背部17と直交する方向Cに関して、接触領域20の中心位置20aと上記背部17との距離dをt/3以下にしている。これにより、第1のピン3の接触領域20を、端面5のチェーン進行方向Xのより後端寄りに配置でき、第1のピン3の端面5と各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aとの実質的な接触面積をより多くすることができる。
さらに、接触領域20の中心位置20aを、交差線F上に配置することにより、第1のピン3がある角度をもって各プーリ60,70に挟まれた場合に、第1のピン3と各プーリ60,70とが線接触となり、点接触の場合と比較して最大接触圧力を低減することができる。
また、交差線Fの前側部分Faは、接触領域20の中心位置20aがチェーン幅方向Wの外側に最も突出するように傾斜している。これにより、第1のピン3の端面5の接触領域20が、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに接触し始めてから当該対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに完全に接触するまでの時間をより長くすることができる。その結果、第1のピン3に衝撃力が加わることを抑制して、実用上の耐久性をより向上することができる。
さらに、第1のピン3に迎え角Bを設けることで、第1のピン3の配置を最適化して、各プーリ60,70との係合をより滑らかにすることができる。
また、第1のピン3を、対応するリンク2の前貫通孔9に遊嵌すると共に対応するリンク2の後貫通孔10に圧入嵌合し、第2のピン4を、対応するリンク2の前貫通孔9に圧入嵌合すると共に対応するリンク2の後貫通孔10に遊嵌している。これにより、第1のピン3の一対の端面5が各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに接触する際、隣り合う第2のピン4が、上記第1のピン3に対して転がり摺動接触することにより、リンク2同士の屈曲が可能とされている。
この際、互いに接触する第1および第2のピン3,4間において、互いの転がり接触成分が多くてすべり接触成分が極めて少なく、するとその結果、第1のピン3が上記各シーブ面62a,63a,72a,73aに対してほとんど回転しないこととなり、摩擦損失を低減して高い伝動効率を確保することができる。
さらに、隣り合う第1および第2のピン3,4の互いの接触線Sの軌跡が、概ねインボリュート形状を描くようにされていることにより、第1のピン3が各プーリ60,70に順次噛み込まれる際に、チェーン1に弦振動的な運動が生じることをより抑制できる。その結果、チェーン1の駆動時の騒音を十分に低減することができる。
このようにして、伝動効率、静粛性および実用上の耐久性に優れ、且つコンパクトな無段変速機100を実現することができる。
図7は、本発明の別の実施の形態の要部の一部断面側面図である。図4および図7を参照して、図7に示す実施の形態では、1本の(単一の)第1のピン3を用いて、隣り合うリンク2A同士を互いに連結している。なお、図7に示す実施の形態に関しては、図4に示す実施の形態と異なる点について主に説明し、同様の構成については、図に同様の符号を付してその説明を省略する。
リンク2Aの前貫通孔9Aの周縁の形状は、リンク2の前貫通孔9のうち、第2のピン4が挿通されていた部分が閉塞された形状に相当する。また、リンク2Aの後貫通孔10Aの周縁の形状は、リンク2の後貫通孔10のうち、第2のピン4が挿通されていた部分が閉塞された形状に相当する。
前貫通孔9Aの周縁のチェーン進行方向Xの前端部42は、直交方向Vに延びている。前貫通孔9Aに遊嵌された第1のピン3の接触部12は、リンク2Aの前端部42に対して転がり摺動接触する。
図7に示す実施の形態によれば、チェーン進行方向Xに隣り合う第1のピン3間の距離(ピッチ)をより短くできるので、チェーンをより小型化することができる。しかも各プーリに一時に噛み込まれる第1のピン3の数をより多くして、第1のピン3の一本当たりの負荷をより低減できるので、実用上の耐久性の更なる向上を達成することができる。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されない。例えば、図1〜図6に示す実施の形態において、第2のピン4は、リンク2に圧入嵌合されていなくてもよい。また、第2のピン4の接触部14の断面形状を、直線形状に形成しなくてもよい。さらに、第2のピン4の一対の端部が各プーリ60,70のシーブ面62a,63a,72a,73aに接触するようにしてもよい。
また、図7に示す実施の形態において、リンク2Aの前貫通孔9Aの前端部42の断面形状を直線形状に形成しなくてもよい。
さらに、上記各実施の形態において、第1のピン3の端面5は、球面状に限らず、球面状以外の曲面状であってもよい。また、交差線Fの形状が直線状または台形状(台形クラウニング状)をなしていてもよい。例えば、図8に示すように、交差線Fの形状を、チェーン進行方向Xの前端部から後端部に向かうにしたがって、チェーン幅方向Wの外側に向かうように傾斜する形状としてもよい。
また、接触領域20の中心位置20aの相異なる複数種類の第1のピン3を用いてもよい。この場合、隣り合う第1のピン3の接触領域20の中心位置20a間の距離(ピッチ)を変化させることができ、第1のピン3が各プーリ60,70に接触する際の接触音が共鳴することを防止できる。
さらに、第1のピン3の端面5の接触領域20の中心位置20aは、端面5の中心位置5aよりもチェーン進行方向Xの後方に配置されていればよく、この限りにおいて、背部17と直交する方向Cに関する接触領域20の中心位置20aと背部17との距離はt/3より大きくてもよい。また、接触領域20の中心位置20aは、交差線F上に配置されていなくてもよい。
また、第1のピン3は、リンク2に圧入嵌合されていなくてもよい。さらに、第1のピン3の接触部12の断面形状をインボリュート曲線に形成しなくてもよい。また、第1のピン3の迎え角Bの値は、上記例示した値より大きくてもよいし、小さくてもよい。
さらに、第1のピン3の長手方向の一対の端部のそれぞれの近傍に、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに係合するための動力伝達面を有する部材を配置し、第1のピン3と当該動力伝達面を有する部材とを含む動力伝達ブロックを設け、これを動力伝達部材としてもよい。
また、リンクの前貫通孔と後貫通孔の配置とを互いに入れ換えてもよい。さらに、リンクの前貫通孔と後貫通孔との間の柱部に連通溝(スリット)を設けてもよい。この場合、リンクの可撓性を増すことができ、リンクに生じる応力をより低減することができる。
また、ドライブプーリ60およびドリブンプーリ70の双方の溝幅が変動する態様に限定されるものではなく、何れか一方の溝幅のみが変動し、他方が変動しない固定幅にした態様であっても良い。さらに、上記では溝幅が連続的(無段階)に変動する態様について説明したが、段階的に変動したり、固定式(無変速)である等の他の動力伝達装置に適用しても良い。
本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機の要部構成を模式的に示す斜視図である。 図1のドライブプーリ(ドリブンプーリ)およびチェーンの部分的な拡大断面図である。 チェーンの要部の断面平面図である。 図3のII−II線に沿う断面図であり、チェーン直線部分を示している。 図4の第1のピンを単品で示した側面図である。 図5のIII−III線に沿う一部断面図である。 本発明の別の実施の形態の要部の一部断面側面図である。 本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
符号の説明
1 チェーン(動力伝達チェーン)
2,2A リンク
3 第1のピン(動力伝達部材)
5 端面
5a (端面の)中心位置
17 背部(平坦面)
20 接触領域
20a (接触領域の)中心位置
60 ドライブプーリ(第1のプーリ)
62a,63a シーブ面
70 ドリブンプーリ(第2のプーリ)
72a,73a シーブ面
100 無段変速機(動力伝達装置)
C 背部と直交する方向(平坦面と直交する方向)
d 距離(接触領域の中心位置と平坦面との距離)
E 平面(端面の中心位置を含み平坦面と直交する平面)
F 交差線
Fa 交差線の(前側部分)
t 板厚
X チェーン進行方向

Claims (5)

  1. 複数のリンクと、これらのリンクを互いに連結する板状の動力伝達部材とを備え、動力伝達部材の各端面に、プーリのシーブ面への接触領域が形成される動力伝達チェーンにおいて、
    上記端面の接触領域の中心位置は、当該端面の中心位置よりもチェーン進行方向の後方に配置されることを特徴とする動力伝達チェーン。
  2. 請求項1において、上記動力伝達部材は、チェーン進行方向の後方に対向する平坦面を含み、上記平坦面と直交する方向に関しての動力伝達部材の板厚をtとした場合、上記接触領域の中心位置と上記平坦面との距離はt/3以下であることを特徴とする動力伝達チェーン。
  3. 請求項2において、上記接触領域の中心位置は、上記端面の中心位置を含み上記平坦面と直交する平面と上記端面との交差線上に配置されることを特徴とする動力伝達チェーン。
  4. 請求項3において、上記交差線は、上記接触領域の中心位置よりもチェーン進行方向側にある前側部分を含み、上記前側部分は、上記接触領域の中心位置がチェーン幅方向に最も突出するように傾斜していることを特徴とする動力伝達チェーン。
  5. 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する請求項1,2,3または4記載の動力伝達チェーンとを備えることを特徴とする動力伝達装置。
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