JPWO2005017235A1 - マグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品及びその製造方法 - Google Patents

マグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に形成された導電性陽極酸化皮膜の上に直接金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品とする。リン酸根を0.1〜1mol/L含有し、pHが8〜14である電解液にマグネシウム又はマグネシウム合金を浸漬し、その表面を陽極酸化処理することによって、導電性を有する陽極酸化皮膜を形成することができ、その表面に電気めっきを施すことが可能となる。これにより、耐食性及び密着性に優れた金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品が提供される。

Description

本発明は、金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品に関する。より詳しくは、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に形成された導電性陽極酸化皮膜の上に直接金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品に関する。また、そのような製品の製造方法に関する。
マグネシウム及びマグネシウム合金は実用金属中で最も軽いために比強度が高く、放熱性も良好で、樹脂に比べてリサイクル性にも優れることから、近年、電気機器や自動車部品用途に広く用いられるようになってきている。中でも、小型軽量化の要求性能が高く、意匠性、リサイクル性の要求も高い電気機器の筐体として好適に使用されている。しかしながら、マグネシウム及びマグネシウム合金は腐食しやすいことから、耐食性を有する表面処理又は塗装が必要である。また同時に、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面を外観や硬度に優れる他の金属皮膜で覆うことも要望されている。
マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に金属めっきを施す方法の代表的なものとしては、「Dow法」や「坂田法」が例示される。「Dow法」は、マグネシウム又はマグネシウム合金に対して、複雑な前処理を施した後で、亜鉛置換処理(ジンケート処理)を施してから、シアン化銅水溶液を用いてストライクめっきを行うものである。また、「坂田法」は、酸性水溶液やアルカリ性水溶液を用いて複雑な前処理を施したマグネシウム又はマグネシウム合金に対して、ニッケル塩の水溶液を用いて無電解ストライクめっきを行うものである。
しかしながら、これらのめっき方法によって得られるめっき皮膜は、未だ耐食性が不十分である。これは、マグネシウムが実用金属の中で最も腐食しやすく、めっきを施しても簡単に耐食性を向上させることができないためであると考えられる。また、電解の最中に析出するめっき皮膜がマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材を覆うまでの間も、基材の腐食が進行しやすく、密着性の良好なめっき皮膜を得ることも困難である。さらに、複雑な前処理を必要とすることもあって、これらのめっき方法は、広く一般的には普及していない。しかも、「Dow法」においてはシアン化金属塩を使用するので、周辺環境や作業環境の保護の観点からは好ましくない。また、「Dow法」と「坂田法」のいずれの方法によってもフッ化物塩を使用するが、フッ素イオンを含有する場合には一般に廃液処理が困難になる場合が多く、この点からも好ましくない。環境保護の要求が厳しくなっている昨今では、シアン化物やフッ化物などを使用しないめっきプロセスが要望されている。
一方、マグネシウム又はマグネシウム合金に陽極酸化処理を施すことで優れた耐食性を付与することができる。代表的な処方として、「Dow17法」や「HAE法」と呼ばれる処方による陽極酸化処理が一般的に行われており、これによって実用上十分な耐食性を有する陽極酸化皮膜を形成することができる。また、特表平11−502567号公報(WO96/28591)(特許文献1)には、アンモニアとリン酸塩化合物を含有する電解液に浸漬してマグネシウム又はマグネシウム合金を陽極酸化処理する方法が記載されている。
また、マグネシウム又はマグネシウム合金を化成処理することによってもある程度の耐食性を付与することができ、導電性を有する皮膜を形成できることが下記の公報に記載されている。特開2000−96255号公報(特許文献2)には、一定量のカルシウム、マンガン及びリンを含有し、電気抵抗率が0.1Ω・cm以下である化成処理皮膜が記載されている。また、特開2000−328261号公報(特許文献3)には、pH1〜5の酸性水溶液でマグネシウム合金の表面をエッチングしてから、有機リン化合物を含有するpH7〜14のアルカリ性水溶液に接触させ、引き続き化成処理液に接触させるマグネシウム合金の表面処理方法が記載されており、表面抵抗値の小さい製品が得られる旨が記載されている。
プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイや携帯電話などにおいては、それから発生する電磁波を効率的に遮蔽できることが好ましい。マグネシウム及びマグネシウム合金は良好な電気伝導性を有することから、それを用いた電気機器の筐体は良好な電磁波シールド性を有することができる。また、多くの電気機器、特にデジタル電子機器においては、誤作動を防止するために、接地(アース)して電磁ノイズを除去することが重要であるが、このとき、筐体がマグネシウム又はマグネシウム合金であれば、そこに接地することも可能である。
ところが、前述のようにマグネシウム及びマグネシウム合金には、耐食性を有する表面処理又は塗装が必要である。マグネシウム又はマグネシウム合金に耐食性を付与するための陽極酸化処理を施したのでは、マグネシウム又はマグネシウム合金を絶縁性の酸化皮膜が覆ってしまい電磁波シールド性が失われてしまうとともに、接地することも不可能になる。そのため、例えば接地のための部分はマスキングしてから陽極酸化処理を行ったり、全面を陽極酸化処理してから一部の陽極酸化膜を削って除去したりする手法などが採用されていた。しかしながら、このような方法は操作が煩雑で生産コストを押し上げるものであった。
一方、化成処理によって形成される皮膜には、例えば上記特開2000−96255号公報や特開2000−328261号公報に記載された皮膜のように、電気伝導性を有するものが最近報告されている。しかしながら、マグネシウム又はマグネシウム合金に通電することで強固な酸化皮膜を形成する陽極酸化処理に比べると、単に処理液に浸漬するだけの化成処理で形成される皮膜は、その耐食性が十分ではない。近年のモバイル機器の筐体などでは、多様な環境下での耐食性が必要になることから、特にこの問題は重要である。そのため、化成処理で皮膜を形成した場合には、その上に更に複数層の塗装を施して何とか耐食性を確保しているのが現状である。しかしながら、形状の複雑な電気機器の筐体に均一な塗装を施すのは必ずしも容易ではなく、複数回の塗装工程を行ったのではコスト上昇が大きい。
陽極酸化皮膜上に金属めっきを施す試みがいくつか報告されている。例えば、特開昭55−18540号公報(特許文献4)には、マグネシウムあるいはマグネシウム合金を、既知の陽極酸化法で処理して一次皮膜を形成した後、金属塩水溶液中で交流電解し、二次皮膜を生成する方法が記載されている。しかしながらその実施例では、得られた皮膜の外観を観察しているだけであって、具体的な耐食性の評価や膜組成の分析が行われているわけではない。後に示される本願明細書の比較例でも示されるように、本件発明者が絶縁膜である陽極酸化皮膜上に電気めっきしようとしても、金属めっき皮膜を形成することは困難であった。
特開2001−152393号公報(特許文献5)には、マグネシウム合金の表面に陽極酸化処理して酸化物層を形成する第1工程と、酸化物層の上に熱硬化性樹脂塗料を塗布して封孔性樹脂層を形成する第2工程と、封孔性樹脂層の上に導電性塗料を塗布して導電性樹脂層を形成する第3工程と、導電性樹脂層の上にめっき処理する第4工程とからなるマグネシウム合金の陽極酸化処理方法が記載されている。この方法によれば、導電性塗料によって導電性が付与され、その後の電気めっきが可能となる。しかしながら、陽極酸化処理の後に複数の樹脂層を形成する操作が必要であり、操作が煩雑となって、製造コストも上昇する。なお、当該特開2001−152393号公報の出願人(株式会社田中産業)は、20年も前の公開公報である上記特開昭55−18540号公報の出願人(株式会社田中産業)と同じであることからも、上記特開昭55−18540号公報に記載の方法によっては、十分な性能の金属メッキ皮膜が得られていなかったことが推察される。
特表平11−502567号公報 特開2000−96255号公報 特開2000−328261号公報 特開昭55−18540号公報 特開2001−152393号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐食性及び密着性に優れた金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品を提供することを目的とするものである。また、そのような製品を得るための、環境を汚染しにくく、しかも低コストの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記目的は、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に形成された導電性陽極酸化皮膜の上に直接金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品を提供することによって達成される。マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に形成された陽極酸化皮膜が導電性を有することによって、その表面に金属めっき皮膜を電気めっきによって形成することが可能である。
従来、マグネシウム又はマグネシウム合金を陽極酸化処理して得られる皮膜は、酸化物を主成分とする皮膜であって、絶縁体であった。むしろ絶縁体であるからこそ、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材に腐食電流が流れることがなく、基材の酸化劣化を防止することができていると考えられていた。ところが、本発明者が鋭意検討した結果、陽極酸化皮膜でありながら十分な電気伝導性を有する皮膜が見出された。しかも従来から陽極酸化皮膜が有していた、優れた耐食性はそのまま保持していることも明らかになったものである。これにより、耐食性に優れる陽極酸化皮膜の表面に直接金属めっき皮膜を形成したマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品を提供できることとなった。特に、電磁波シールド性、接地特性などに優れた電気機器の筐体を提供することができるものである。
このとき、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材と金属めっき皮膜の表面との間の抵抗値が10Ω以下であることが好ましい。当該抵抗値が10Ω以下であるということは、陽極酸化皮膜の導電性が一定以上あるということであり、電気めっきがスムーズに進行するということである。前記陽極酸化皮膜の膜厚が0.01〜30μmであることが、耐食性と電気伝導性のバランスの点から好ましい。
本発明において、前記陽極酸化皮膜が多孔質層と遷移層とからなり、該遷移層がマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材と前記多孔質層との間に存在し、該遷移層のマグネシウム含有量が、前記多孔質層のマグネシウム含有量と前記基材のマグネシウム含有量との中間の値を示し、かつ該遷移層の酸素含有量が、前記多孔質層の酸素含有量と前記基材の酸素含有量との中間の値を示すことが好適である。このような遷移層を有することによって、良好な導電性と耐食性を得ることができる。当該遷移層の厚みは0.2〜5μmであることが好適である。
また、前記陽極酸化皮膜が、マグネシウム元素を10〜65重量%、酸素元素を25〜60重量%含有することが好適である。また、前記陽極酸化皮膜が、リン元素を4〜30重量%含有することが好ましい。アルミニウム元素を1〜20重量%含有することも好適である。また、本発明の陽極酸化皮膜は従来の陽極酸化皮膜が含有するような重金属元素を含有しなくても、優れた性能を発揮するものである。
導電性陽極酸化皮膜の上に直接形成される金属めっき被膜が、亜鉛、ニッケル、銅、金、銀、クロムからなる群から選択される金属又はそれらの金属の合金からなることが好ましい。これらの金属又は合金は、アルカリ性の電気めっき浴を用いて、良好な金属めっき皮膜を形成することが容易なものである。このような金属めっき被膜の厚みは、0.1〜100μmであることが好適である。また、前記金属めっき被膜の上に、さらに他の金属めっき皮膜が形成されてなることも好ましく、この場合には、様々な種類の金属めっき層を形成することが可能であり、用途に応じて装飾性や耐磨耗性などに優れた金属表面を得ることができる。
本発明の好適な実施態様は、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面の全部が陽極酸化皮膜で覆われ、該陽極酸化皮膜の表面の全部が前記金属めっき皮膜で覆われ、かつ該金属めっき皮膜の表面の一部にのみ樹脂塗装が施されて残余の部分の金属めっき皮膜が露出している製品である。このように一部に陽極酸化皮膜の露出部分を設けることで、電磁波シールド性や接地特性を確保しながら、樹脂塗装によって外観の美麗な、耐摩擦性に優れた製品を提供することができるものである。具体的には、筐体内面には樹脂塗装が施されず、筐体外面には樹脂塗装が施された電気機器の筐体が、特に好適な実施態様である。
また、本発明の目的は、リン酸根を0.1〜1mol/L含有し、pHが8〜14である電解液にマグネシウム又はマグネシウム合金を浸漬し、その表面を陽極酸化処理した後にめっき浴に浸漬して電気めっきを施して、前記陽極酸化皮膜の表面に直接金属めっき被膜を形成するマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品の製造方法を提供することによっても達成される。このとき、前記電解液がアンモニア又はアンモニウムイオンを0.2〜5mol/L含有することが好適である。
本発明の製造方法においては、陽極酸化処理に際してマグネシウム又はマグネシウム合金を予め酸性水溶液に浸漬してから、電解液に浸漬して陽極酸化処理することが好適である。適切に前処理してから陽極酸化処理に供することで、導電性を有する陽極酸化被膜が得られやすくなるものである。
また、本発明の目的は、相互に10mm離れた2つの端子間で測定した皮膜表面の抵抗値が10Ω以下である陽極酸化皮膜を表面に有するマグネシウム又はマグネシウム合金をめっき浴に浸漬して電気めっきを施して、前記導電性陽極酸化皮膜の表面に直接金属めっき被膜を形成するマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品の製造方法を提供することによっても達成される。皮膜表面の抵抗値が10Ω以下であることによって、電気めっきがスムーズに進行する。
前記陽極酸化皮膜の表面を予め酸性水溶液に浸漬してから、前記めっき浴に浸漬して電気めっきを施すことが好ましい。こうすることによって、陽極酸化皮膜と金属めっき皮膜との間の接着性が向上する。また、前記めっき浴のpHが7〜14.5であることも好ましい。めっき浴のpHが中性からアルカリ性の範囲にあることで、陽極酸化被膜が酸によって浸食されることを防止することができる。前記金属めっき皮膜を形成した後で、さらに他のめっき浴に浸漬して前記金属めっき皮膜の表面をさらに他の金属めっき皮膜で覆うことも好ましい。この場合には、様々なめっき条件を採用して、目的に応じて様々な金属皮膜を形成することが可能である。
耐食性及び密着性に優れた金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品を提供することができる。また、そのような製品を得るのに好適な製造方法を提供することができる。
陽極酸化皮膜を形成した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察し、断面形状を示した写真と、各元素の分布状況を示した写真とを合成したものである。 陽極酸化皮膜上に亜鉛めっきを施した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察し、断面形状を示した写真である。 陽極酸化皮膜上に亜鉛めっきを施した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察し、マグネシウム元素の分布状況を示した写真である。 陽極酸化皮膜上に亜鉛めっきを施した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察し、酸素元素の分布状況を示した写真である。 陽極酸化皮膜上に亜鉛めっきを施した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察し、亜鉛元素の分布状況を示した写真である。 陽極酸化皮膜上に亜鉛めっきを施した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察し、断面形状を示した写真と、各元素の分布状況を示した写真とを合成したものである。 マグネシウム合金基材と金属めっき皮膜の表面との間の抵抗値の測定方法を示した図である。
符号の説明
1 マグネシウム合金基材
2 陽極酸化皮膜
3 金属めっき皮膜
4 測定端子
5 抵抗値測定器
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に形成された導電性陽極酸化皮膜の上に直接金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品である。
原料とするマグネシウム又はマグネシウム合金は、マグネシウムを主成分とするものであればよく、マグネシウム単体からなる金属であっても良いし、合金であっても良い。通常は、成形性、機械的強度、延性などを付与するためにマグネシウム合金が好適に使用される。マグネシウム合金としては、Mg−Al系合金、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Al−Mn系合金、Mg−Zn−Zr系合金、Mg−希土類元素系合金、Mg−Zn−希土類元素系合金などが挙げられる。本発明の実施例ではMg−Al−Zn系合金を使用しており、得られた陽極酸化皮膜中にはアルミニウム元素が含まれていた。したがって、原料のマグネシウム合金としては上記各種の合金のうち、アルミニウムを含有するものであることが好ましいと推測される。
陽極酸化処理に供されるマグネシウム又はマグネシウム合金の形態は特に限定されない。ダイカスト法、チクソモールド法、プレス成形法、鍛造法などによって成形された成形品を用いることができる。成形時には、成形品の表面付近に形成される皺や中空部の内部に離型剤が残留する場合がある。陽極酸化処理する場合には、化成処理する場合に比べて、残留する離型剤を少なくすることが容易である。製品に残留する離型剤は、加熱された時に揮発して、樹脂塗膜にフクレを生じさせることがある。ここで、成形時に使用される離型剤としては、シリコーン化合物からなる離型剤が代表的である。
マグネシウム又はマグネシウム合金からなる成形品は、成形時に付着した離型剤などの有機物に由来する汚れを表面に有していることがあるので、脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂のための液としては界面活性剤やキレート剤を含有する水溶液が好適に使用される。
必要に応じて脱脂処理した後で、酸性水溶液に浸漬してから、電解液に浸漬して陽極酸化処理することが好ましい。酸性の水溶液に浸漬することによってマグネシウム又はマグネシウム合金の表面を適度にエッチングして、既に形成されている不十分な酸化皮膜や残存する有機物の汚れを除去することができる。酸性の水溶液としては特に限定されないが、リン酸水溶液が適度な酸性度を有しており好適である。リン酸水溶液を用いた場合には、エッチングと同時にリン酸マグネシウムが表面に形成されることもある。また、酸性水溶液に界面活性剤やキレート剤を配合して、脱脂処理を同時に行うこともできる。
また、こうして酸性の水溶液で処理した後で、さらにアルカリ性水溶液で洗浄してから陽極酸化処理に供することも好ましい。酸性水溶液中では不溶である成分(スマット)がマグネシウム又はマグネシウム合金の表面に付着していることがあることから、これを除去することが可能である。アルカリ性水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液が好適に使用される。
前記脱脂処理、酸性水溶液処理、アルカリ性水溶液処理のような各処理工程の後に、必要に応じて水洗や乾燥を施しても良い。こうして、必要に応じて前処理が施されたマグネシウム又はマグネシウム合金が電解液中に浸漬されて陽極酸化される。
陽極酸化処理に使用する電解液は、リン酸根を含有するアルカリ性の水溶液であることが好ましく、より具体的にはリン酸根を0.1〜1mol/L含有し、pHが8〜14である水溶液が好適である。適当な量のリン酸根を含有することで、適当な量のリン元素が陽極酸化膜に含まれることになる。また、アルカリ性にすることでマグネシウム又はマグネシウム合金の不必要な溶出を防止することができる。
ここでいうリン酸根は、遊離のリン酸、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩として電解液中に含まれるものである。また、リン酸が縮合して得られるポリリン酸やその塩の場合には、それらが加水分解して得られるリン酸根の数だけリン酸根を含有しているとする。塩の場合には、金属塩であってもよいし、アンモニウム塩のような非金属の塩であっても良い。リン酸根の含有量は0.1〜1mol/Lであることが好適である。より好適には0.15mol/L以上であり、さらに好適には0.2mol/L以上である。また、より好適には0.7mol/L以下であり、さらに好適には0.5mol/L以下である。
電解液のpHは8〜14であることが好適である。より好適にはpHは9以上であり、さらに好適には10以上である。また、より好適にはpHは13以下であり、さらに好適には12以下である。
また、電解液がアンモニア又はアンモニウムイオンを、それらの合計量として0.2〜5mol/L含有することが好ましい。これによって電解液のpHが適当なアルカリ性に保たれる。アンモニア又はアンモニウムイオンの含有量はより好適には0.5mol/L以上であり、さらに好適には1mol/L以上である。また、より好適には3mol/L以下であり、さらに好適には2mol/L以下である。
陽極酸化処理で使用される電解液は、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の成分を含有してもよいが、重金属元素を実質的に含有しないことが好ましい。ここで重金属元素とは、単体としての比重が4を超える金属元素のことをいい、従来の陽極酸化処理における代表的な電解液に含有されているものとして、クロム、マンガンなどが例示される。特に排出規制が厳しく有害なクロムを含有しないことが好ましい。なお、マグネシウム合金に含まれる重金属、例えば亜鉛が微量溶け出して電解液中に含まれることは通常あまり問題とはならない。また、本発明の電解液がフッ素元素を含有しないことも好ましい。フッ素元素を含有する水溶液は廃水処理が困難になることが多いからである。
前記電解液の中に、必要に応じて前処理したマグネシウム又はマグネシウム合金を浸漬し、これを陽極として通電することで陽極酸化処理が行われる。使用する電源は特に限定されるものではなく、直流電源でも交流電源でも使用可能であるが、直流電源を使用することが好ましい。また、直流電源を使用する際には、定電流電源と定電圧電源のいずれを使用しても良いが、定電流電源を使用することが好ましい。陰極材料は特に限定されず、例えばステンレス材などを好適に使用することができる。陰極の表面積は陽極酸化処理されるマグネシウム又はマグネシウム合金の表面積よりも大きいことが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、通常は10倍以下である。
電源として定電流電源を用いるときの陽極表面の電流密度は通常0.1〜10A/dmである。好適には0.2A/dm以上であり、より好適には0.5A/dm以上である。また、好適には6A/dm以下であり、より好適には3A/dm以下である。通電時間は通常10〜1000秒である。好適には50秒以上であり、より好適には100秒以上である。また、好適には700秒以下であり、より好適には500秒以下である。定電流電源で通電する際には、通電開始時の印加電圧は低いものの、時間の経過とともに印加電圧は上昇する。通電を終了する際の印加電圧は通常50〜600ボルトである。好適には200ボルト以上であり、より好適には250ボルト以上である。また、好適には500ボルト以下であり、より好適には400ボルト以下である。従来の陽極酸化処理方法である「Dow17法」や「HAE法」においては、印加電圧を100ボルト未満に設定することが多いのに対して、本発明の陽極酸化処理では、比較的高い電圧に設定するのが好ましい。これによって、シリコーン離型剤などの不純物を含有する部分でも酸化反応が進行しやすくなり、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面全体に導電性の良好な皮膜を形成しやすくなる。また、酸化反応に伴ってマグネシウム又はマグネシウム合金の表面から酸素ガスが盛んに発生するので、陽極酸化処理中に上記不純物が除去されやすくなる。通電中の電解液の温度は、通常5〜70℃である。好適には10℃以上である。また、好適には50℃以下であり、より好適には30℃以下である。
通電終了後、洗浄することにより、陽極酸化皮膜の表面に付着した電解液を除去する。洗浄に際しては、水のみではなく、酸性水溶液を用いて洗浄することが好ましい。電解液がアルカリ性であることから、酸性水溶液で洗浄することによって、樹脂塗装を行った場合に塗膜の密着性が改善される。酸性水溶液としては硝酸水溶液、塩酸水溶液、硫酸水溶液などを使用することができる。洗浄操作の後、乾燥する。このようにして、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成される。
こうして得られたマグネシウム又はマグネシウム合金は、相互に10mm離れた2つの端子間で測定した皮膜表面の抵抗値が10Ω以下である導電性陽極酸化皮膜を表面に有するものである。当該抵抗値は、陽極酸化皮膜の表面の相互に10mm離れた任意の2点に端子を押し付けて測定される抵抗値(Ω)である。マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材の抵抗値は小さいことから、実質的には、測定用の端子と、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材との間に存在する陽極酸化皮膜の厚み方向の電気抵抗に相関する値が測定されるものである。このように、導電性を有することによって、陽極酸化皮膜の表面に密着性に優れた電気めっき皮膜を形成することが可能になる。また、当該抵抗値は電磁波シールド性や接地特性の面からも好ましい数値である。前記抵抗値は好適には10Ω以下であり、より好適には10Ω以下である。一方、前記抵抗値が低すぎる場合には、製品の耐食性が低下するおそれがあり、好適には、0.1Ω以上であり、より好適には0.2Ω以上である。なお、表面処理していないマグネシウム又はマグネシウム合金からなる成形品の表面の抵抗値は、AZ91Dの場合で、通常0.1Ω未満の値を示す。
本発明で得られる陽極酸化皮膜は、図1にも示されるように、表面に通電中のスパークに由来すると思われる多数の孔が存在する場合が多い。この点で化成処理皮膜とは相違する。陽極酸化皮膜の膜厚は、0.01〜30μmであることが好適である。より好適には0.1μm以上であり、さらに好適には1μm以上、最適には5μm以上である。また、より好適には20μm以下であり、さらに好適には15μm以下である。陽極酸化皮膜の膜厚が厚いほど耐食性は向上するが、あまり厚すぎる場合には電気伝導率が低下して、電気めっきが困難になるおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがある。
本発明で形成される陽極酸化皮膜の化学組成は特に限定されるものではないが、マグネシウム元素を10〜65重量%、酸素元素を25〜60重量%含有するものが好適である。すなわち、マグネシウム又はマグネシウム合金が陽極酸化された結果の生成物である、酸化されたマグネシウムを構成成分として含有するものであることが好適である。マグネシウム元素の含有量はより好適には15重量%以上であり、さらに好適には18重量%以上である。また、より好適には45重量%以下であり、さらに好適には30重量%以下である。酸素元素の含有量はより好適には40重量%以上である。また、より好適には55重量%以下である。
前記陽極酸化皮膜が、リン元素を4〜30重量%含有することが好適である。リン元素の含有量はより好適には10重量%以上であり、さらに好適には15重量%以上である。また、より好適には25重量%以下である。また、アルミニウム元素を1〜20重量%含有することも好適である。アルミニウム元素の含有量はより好適には2重量%以上である。また、より好適には10重量%以下であり、さらに好適には5重量%以下である。マグネシウム、酸素以外の上記元素を適当量含有することで、耐食性を損なうことなく、良好な電気伝導性を有するようになるものと推測することができる。本発明の陽極酸化皮膜は本発明の効果を阻害しない範囲内で上記以外の元素を含んでいても構わない。しかしながら、原料のマグネシウム合金が元々含有していたものを除き、重金属、特にクロム元素を実質的に含有しないことが好ましい。また、フッ素元素も実質的に含有しないことが好ましい。
前記陽極酸化皮膜は、必ずしも膜全体が均一な構造を有している訳ではなく、後述するように、多孔質層と遷移層とを有する。また、膜厚が薄いほど膜全体としてもマグネシウムの含有量が大きくリン元素の含有量が小さくなる傾向も認められている。ただし、膜厚が小さくなるとマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材に含まれるマグネシウム元素をノイズとして拾ってしまうことがあるので、測定値としてはマグネシウム含有量が、実際の膜の化学組成よりも大きく表されることがある。
ここで形成される陽極酸化皮膜は、表面に多数の凹凸を有する多孔質の構造を有しているが、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材との界面には、当該基材の表面の全体を均一に覆うように、遷移層が形成されている(図1参照)。当該遷移層は、多孔質層とも、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材とも異なる、中間的な化学組成を有するものである。遷移層のマグネシウム含有量は前記基材よりも少ないが多孔質層よりも多く、遷移層の酸素含有量は前記基材よりも多いが多孔質層よりも少ない。すなわち、当該遷移層は、陽極酸化皮膜全体の厚みの大部分を占める多孔質層に比べて、酸化の程度が少なく、しかも細孔構造を有さない均質な層である。この遷移層の存在が、導電性や耐食性に大きな影響を与えているものと考えられる。当該遷移層の厚みは0.2〜5μmであることが好適である。遷移層の厚みは、より好適には0.5μm以上であり、さらに好適には1μm以上である。一方、遷移層の厚みは、より好適には3μm以下である。
このようにして形成された陽極酸化皮膜の上に金属めっき皮膜を形成する。本発明で得られる陽極酸化皮膜は導電性を有するので、電気めっきによって、陽極酸化皮膜の上に直接金属めっき皮膜を形成することができる。
陽極酸化皮膜を有するマグネシウム又はマグネシウム合金をめっき浴に浸漬する前に、予め酸性水溶液に浸漬することが好ましい。酸性の水溶液に浸漬することによって陽極酸化皮膜の表面を適度にエッチングして、表面を活性化することができる。これによって、金属めっき皮膜の密着性を向上させることができるとともに、金属めっき皮膜とマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材との間の電気伝導性を向上させることができる。酸性の水溶液としては特に限定されないが、硝酸、塩酸、硫酸などの強酸の希薄水溶液が好適に使用される。その後、必要に応じて水洗や乾燥処理を行ってから電気めっきに供する。また、酸性水溶液に浸漬する方法以外の表面処理を施しても構わない。
必要に応じて予め処理された陽極酸化皮膜を有するマグネシウム又はマグネシウム合金をめっき浴に浸漬する。本発明で使用されるめっき浴の組成は特に限定されず、通電によって析出可能な金属がイオンとして溶解した水溶液であればよい。皮膜を形成する金属は特に限定されるものではないが、亜鉛、ニッケル、銅、金、銀、クロムからなる群から選択される金属又はそれらの金属の合金であることが好適である。これらの金属又は合金は、アルカリ性の電気めっき浴を用いて、良好な金属めっき皮膜を形成することが容易なものだからである。
本発明で使用するめっき浴としては、電気めっき浴として一般的に使用されているめっき浴を採用することが可能である。しかしながら、陽極酸化皮膜が溶出するのを防止するためには、めっき浴のpHが7〜14.5であることが好ましい。めっき浴のpHが中性からアルカリ性の範囲にあることで、マグネシウムの酸化物を含有する陽極酸化被膜が酸によって浸食されるのを防止することができる。めっき浴のより好適なpHは8以上であり、また14以下である。めっき浴は、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の成分を含有してもよいが、シアン化物やフッ化物を含有しないことが好ましい。シアン化物は、毒性が強く周辺環境や作業環境に悪影響を及ぼしやすいからであり、またフッ化物を含有する水溶液は廃水処理が困難になることが多いからである。
前記めっき浴の中に、陽極酸化皮膜を表面に有するマグネシウム又はマグネシウム合金を浸漬し、これを陰極として通電することで金属めっき被膜が形成される。使用する電源は特に限定されるものではなく、直流電源でも交流電源でも使用可能であるが、直流電源を使用することが好ましい。また、直流電源を使用する際には、定電流電源と定電圧電源のいずれを使用しても良いが、定電流電源を使用することが好ましい。陽極材料は特に限定されず、形成しようとするめっき皮膜と同じ金属、あるいは白金やチタンなどを好適に使用することができる。電源として定電流電源を用いるときの陰極表面の電流密度は通常0.1〜10A/dm程度である。また、通電時間は通常10〜1000秒程度である。通電中の電解液の温度は、通常5〜70℃である。通電終了後、洗浄することにより、金属めっき皮膜の表面に付着しためっき液を洗浄除去し、乾燥して、金属めっき皮膜を表面に有するマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品が得られる。
金属めっき皮膜は、陽極酸化皮膜の表面を覆って形成される。このとき、陽極酸化皮膜は、その表面がかなり浸食されて、その上に金属めっき層が形成されている。陽極酸化皮膜の表面が浸食されるのは、陽極酸化処理後に予め酸性水溶液に浸漬する際や、金属めっきを施す際に陽極酸化皮膜の一部が削られるためであると考えられる。このように、陽極酸化皮膜が、表面を削られた多孔質構造を有しているので、金属めっき皮膜は陽極酸化皮膜の表面の細孔の中に食い込んでいて、密着性の良好な金属めっき層を形成することができる(図2〜6参照)。このとき、前述のように、陽極酸化皮膜の表面がかなり浸食されているので、金属めっき皮膜が前述の遷移層に接触又は近接している場所が存在する。このため、その部分を通じて良好な導電性が確保されているものと推定される。遷移層は金属めっき処理を行っても特に浸食されることはない。したがって、遷移層が金属めっき層とマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材との導通性を確保するとともに、耐食性を付与するのに貢献していると想定される。
本発明の製品の表面に形成される金属めっき皮膜の厚みは0.1〜100μmであることが好適である。金属めっき皮膜の厚みは、より好適には1μm以上である。また、より好適には50μm以下である。金属めっき皮膜の厚みは、めっきされる金属の種類や用途などによって適宜調整される。
こうして得られる本発明の製品において、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材と金属めっき皮膜の表面との間の抵抗値が10Ω以下であることが好適である。当該抵抗値が10Ω以下であるということは、陽極酸化皮膜の導電性が一定以上あるということであり、電気めっきがスムーズに進行するということである。特に、陽極酸化被膜中の遷移層が十分な導電性を有しているということである。マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材と金属めっき皮膜表面との間の抵抗値は、その両者に測定用端子を押し付けることによって測定される。具体的には、図7に示すように、製品の裏側の皮膜を削ってマグネシウム又はマグネシウム合金を露出させて、製品の表側の金属めっき皮膜との間で抵抗値を測定すればよい。製品の形態の影響は受けるものの、大まかな抵抗値を把握することは十分に可能である。後述のように複数の金属めっき層を有する場合には、金属めっき層の最表面に端子を当てて測定すればよい。また後述のように樹脂塗装を設けた場合には、樹脂塗装を除去して金属めっき層を露出させて、その表面に端子を当てて測定すればよい。ここで前記抵抗値は、より好適には10Ω以下、さらに好適には10Ω以下、最適には2Ω以下である。一方、前記抵抗値が小さすぎる場合には、耐食性が不十分になるおそれがあり、好適には10−2Ω以上である。
本発明の製品は、そのままでも使用可能であるが、金属めっき皮膜(下層)を形成した後で、さらに他のめっき浴に浸漬して前記金属めっき皮膜の表面をさらに他の金属めっき皮膜(上層)で覆うことも好ましい。陽極酸化皮膜の上にめっきを施す場合には、めっき浴のpHなど、浴組成の制約が大きく、必ずしもめっき処方の選択肢が広いわけではない。これに対して、一旦金属めっき被膜(下層)が形成された後は、用途に応じた様々な他のめっき皮膜(上層)を形成することが容易である。
このような他のメッキ皮膜(上層)としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム等の金属あるいはこれらの合金など、電気めっきあるいは無電解めっきによって施すことの可能な全てのさまざまな皮膜を形成することが可能である。また、さらに他のめっき皮膜を重ねても構わない。これらの他のめっき皮膜の厚みは特に限定されず、通常1〜100μm程度である。これによって、光沢、平滑性、硬度、導電性など、目的に応じた性能のめっき皮膜を形成することが可能である。例えば装飾性の高い鏡面を形成することも可能である。
金属めっき皮膜を表面に有する本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品の用途は特に限定されず、各種の電気機器、自動車用部品、レジャー用部品、福祉介護機器用部品などに使用することができる。使用に際しては、必要に応じて陽極酸化皮膜の表面に上塗りの塗装を施しても良いが、電気伝導性の良好な本発明の陽極酸化皮膜の特徴を活かすためには、製品の全体を絶縁膜からなる塗装で覆わない方が好ましい。
用いられる塗料は特に限定されず、金属表面の塗装に使用される各種の塗料を使用することができる。溶剤型塗料、水性塗料、粉体塗料などを使用して樹脂塗膜を形成することができる。塗布後に高温焼付けを要する熱硬化型の塗料であっても、比較的低温で溶剤や水を揮発させるだけでよい塗料であっても良いが、操作の容易な後者を使用することが好ましい。また、外観を美麗にするためには透明樹脂塗料を用いることが好ましく、適宜着色されたものを用いても良い。塗装方法も特に限定されず、スプレー塗装、浸漬塗装、電着塗装、粉体塗装などの公知の方法を採用することができる。一部に塗膜を有しない部分を有することが好ましい本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品においては、スプレー塗装や溶射法による粉体塗装が好適に採用される。
本発明の好適な実施態様は、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面の全部が陽極酸化皮膜で覆われ、該陽極酸化皮膜の表面の全部が前記金属めっき皮膜で覆われ、かつ該金属めっき皮膜の表面の一部にのみ樹脂塗装が施されて残余の部分の金属めっき皮膜が露出している製品である。このようにマグネシウム又はマグネシウム合金の表面の全部が陽極酸化皮膜で覆われることで、製品全体の耐食性が確保できる。また、当該陽極酸化皮膜の表面の全部が金属めっき皮膜で覆われることで、硬度などの性能を付与することができる。ただし、ここでいう全部とは、実質的に全部ということであり、陽極酸化処理時や電気めっき時に電源と導通させた接点部分など、皮膜が形成されていない部分が僅かにあっても構わない。また、金属めっき皮膜の表面の一部にのみ樹脂塗装が施されて残余の部分の金属めっき皮膜が露出していることで、電磁波シールド性や接地特性を確保しながら、樹脂塗装によって外観の美麗な、耐摩擦性に優れた製品を提供することができるものである。
特に好適な実施態様は、筐体内面には樹脂塗装が施されず、筐体外面には樹脂塗装が施された電気機器の筐体である筐体外面に樹脂塗装が施されることで、外観を美麗にできるのみならず、使用時の損傷を防止することができる。一方、筐体の内面では導電性を有する金属めっき皮膜が露出しているので、電気配線からの接地が容易に確保できるし、筐体内部の電子回路からの電磁波を効果的にシールドすることもできる。
こうして得られた本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品は、軽量性、強度、導電性などに優れており、各種の用途に使用することができる。携帯電話、パソコン、ビデオカメラ、スチルカメラ、光ディスクプレーヤー、ディスプレイ(CRT、プラズマ、液晶)、プロジェクターなどの電気機器の筐体や、自動車用部品、釣具などのレジャー用部品、福祉介護機器用部品などに使用することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施例中での試験方法は以下の方法に従って行った。
(1)陽極酸化皮膜及び金属めっき皮膜の断面形状観察
試験片を5mm×10mmの寸法に切断し、エポキシ樹脂に包埋してから、切断面を研磨して鏡面を得た。試料の断面方向から、日本電子株式会社製X線マイクロアナライザー「JXA−8900」を用いて電子顕微鏡写真を撮影した。このとき、各元素ごとの皮膜断面中の分布状況についても撮影した。また、この電子顕微鏡写真から各皮膜の膜厚を測定した。
(2)陽極酸化皮膜の化学組成分析
日本電子株式会社製X線マイクロアナライザー「JXA−8900」を用いて、皮膜の断面方向から膜組成の分析を行った。試料ごとに2ヶ所ずつ測定を行った。測定は、加速電圧15kV、試料照射電流2×10−8Aの条件で行った。データ解析は、ZAH補正によって行った。
(3)陽極酸化皮膜表面の抵抗値測定
三菱化学株式会社製低抵抗率計「ロレスターAP MCP−T400」を用い、二探針式プローブ「MCP−TP01」を使用して測定した。試験片の中央部分で陽極酸化皮膜の表面に測定端子を押し付けるようにして抵抗値(Ω)を測定した。前記プローブは10mmの間隔で測定端子が配置されたものであり、端子はベリリウム合金に金メッキしたもので、その先端形状は直径2mmの円柱状であり、端子を陽極酸化皮膜の表面に押し付ける荷重は端子1個あたり240gである。
(4)マグネシウム合金基材と金属めっき皮膜の表面との間の抵抗値測定図7に示すように、試料の裏面の金属めっき皮膜3と陽極酸化皮膜2を削ってマグネシウム合金基材1を露出させ、露出面とその反対側の金属めっき皮膜3の表面とに測定端子4を接触させて、抵抗値を測定した。抵抗値測定器5は、株式会社アドバンテスト製デジタル・マルチメータ「R6341B」である。
(5)耐食性の評価
金属めっき皮膜を形成した試料の表面にアクリル系クリヤー塗装を施した後、試験片の表面に、樹脂塗膜と陽極酸化皮膜とを貫通するように十文字状の切込み(クロスカット)を入れてから、JIS Z2371に準拠して5%塩水噴霧試験を行った。クロスカット部の腐食による膨れが1mm以上に達したときの時間を腐食発生時間とした。
(6)めっき皮膜の密着性の評価
JIS H8504に準拠したテープ剥離試験を行い、めっき皮膜の剥離及び膨れの有無を観察した。ここで、観察結果については以下のように分類評価した。
A:めっき皮膜の剥離あるいは膨れが全くなかった。
B:めっき皮膜の剥離あるいは膨れが一部発生した。
C:めっき皮膜の剥離あるいは膨れが著しく発生した。
実施例1
マグネシウム90重量%、アルミニウム9重量%及び亜鉛1重量%からなるASTM No.AZ91Dのマグネシウム合金を原料とし、チクソモールド法にて製造された170mm×50mm×2mmの寸法の合金板を試験片として使用した。上記試験片を2.2重量%のリン酸と微量の界面活性剤を含有する酸性水溶液に浸漬してから、イオン交換水で洗浄した。続いて、18重量%の水酸化ナトリウムを含有するアルカリ性水溶液に浸漬してからイオン交換水で洗浄し、試験片表面を前処理した。
リン酸水溶液とアンモニア水とを混合して、リン酸根を0.25mol/L、アンモニア又はアンモニウムイオンをその合計量で1.5mol/L含有する電解液を調製し、20℃に保った。この電解液のpHは11であった。この中に前記前処理を施したマグネシウム合金試験片を陽極として浸漬して、陽極酸化処理を行った。このときの陰極としては、前記陽極の4倍の表面積を有するSUS316Lの板を使用した。4種類の膜厚の陽極酸化皮膜を得るために、定電流電源を使用し陽極表面の電流密度が1A/dmとなるようにして、それぞれ約60秒、約150秒、約200秒又は約400秒の間通電した。通電開始時には低い印加電圧であったのが、通電終了時には、それぞれ約200ボルト、約250ボルト、約300ボルト又は約350ボルトまで上昇した。通電終了後、イオン交換水、硝酸水溶液、イオン交換水の順番で洗浄してから乾燥した。これにより、1μm、3μm、5μm又は10μmの厚みを有する陽極酸化被膜が形成された。ここでいう膜厚とは、多数の孔を有するために局所的な膜厚ムラのある皮膜において、陽極酸化皮膜の表面から基材のマグネシウム合金面までの平均的な距離のことである。
陽極酸化皮膜を10μmの厚みで形成した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察した結果を図1に示す。左上の写真(「SL」と記載)が、断面形状を観察した電子顕微鏡写真である。当該写真の下方約1/3がマグネシウム合金基材であり、中央約1/3が陽極酸化皮膜であり、上方約1/3が包埋処理に使用したエポキシ樹脂である。写真からわかるように、陽極酸化皮膜中には陽極酸化皮膜の表面に通電中のスパークに由来すると思われる多数の孔の存在が認められた。
中央上の写真(「Mg」と記載)、右上の写真(「O」と記載)、左下の写真(「Al」と記載)、中央下の写真(「P」と記載)及び右下の写真(「Zn」と記載)は、それぞれマグネシウム(Mg)、酸素(O)、アルミニウム(Al)、リン(P)及び亜鉛(Zn)の分布状況を示したものである。これらの図は、本来カラー表示によって濃度分布が示されているものを、白黒表示で本明細書に添付したものである。図1の右側に示されているのは、カラーバーであり、白黒表示では必ずしも明度と元素濃度とが比例していないことに注意が必要である。
これらの図によれば、陽極酸化皮膜は、その大部分を占める多孔質層と、当該多孔質層とマグネシウム合金基材との間に存在する遷移層とから構成されていることがわかる。多孔質層は、マグネシウム、酸素、アルミニウム及びリンを含有するものであり、大小の空孔を有している。また、遷移層の酸素濃度は、多孔質層の酸素濃度よりも低く、マグネシウム合金基材の酸素濃度よりも高い。また、遷移層のマグネシウム濃度は、多孔質層のマグネシウム濃度よりも高く、マグネシウム合金基材のマグネシウム濃度よりも低い。
図1中の右上の酸素(O)濃度分布の図によれば、マグネシウム合金基材には酸素は実質的に存在せず、多孔質層には存在することがわかる。そして、多孔質層とマグネシウム合金基材の間に存在する明るい帯状の部分が遷移層であり、その部分は、前記両者の中間的な量の酸素を含有している。また、中央上のマグネシウム(Mg)濃度分布の図によれば、マグネシウム合金基材にはマグネシウムが高濃度で存在し、多孔質層ではそれより低濃度で存在する。そして、多孔質層と基材の間に存在する明るい帯状の部分が遷移層であり、その部分は、前記両者の中間的な量のマグネシウムを含有している。カラー写真で見れば遷移層内においてもマグネシウム合金基材に近い部分ではマグネシウムが比較的多く、多孔質層に近い部分ではマグネシウムが比較的少ないことが確認された。すなわち、遷移層内部においても徐々にその濃度が変化していることが認められている。図1における遷移層の厚みは2μm程度であり場所にかかわらず比較的均一な層厚みで形成されている。しかも、遷移層の中には孔構造は認められず、均質な層がマグネシウム合金基材を覆っていることがわかる。
得られた陽極酸化皮膜の、5μm及び10μmの厚みの試料について、X線マイクロアナライザーを用いて、皮膜の断面方向から膜組成を分析した。その結果を表1に示す。陽極酸化皮膜の表面の抵抗値は、皮膜厚みが1、3、5及び10μmの陽極酸化皮膜について、それぞれ0.1Ω、0.4Ω、10Ω及び1000Ωであった。また、塩水噴霧試験(JIS Z2371準拠)での裸耐食性(レイティングナンバー9.0)は、それぞれ150、300、700及び1500時間であった。ここで、レイティングナンバー9.0とは、全面積に対する腐食面積の割合が0.07〜0.10%である場合をいい、上記時間は、そのような腐食面積の割合となるまでに要した時間を示している。すなわち、陽極酸化皮膜が厚くなるほど、表面の抵抗値は大きくなるが、耐食性が向上することがわかる。後述するように、10μmの膜厚で表面の抵抗値が1000Ωになった場合であっても電気めっきは十分に可能であるから、耐食性の観点からは、陽極酸化皮膜の膜厚は厚いほうが好ましい。
Figure 2005017235
得られた陽極酸化皮膜が形成された試料を、0.1%の硝酸水溶液に浸漬した後、水洗して、平均めっき厚が5μmになるように電気めっきを行った。亜鉛めっき用のめっき液は、ディップソール株式会社製「NZ−65」を使用した。これは、表2に示すような原料を調合して使用するものである。亜鉛−ニッケル合金めっき液は、ディップソール株式会社製「IZ−250」を使用した。これも、表2に示すような原料を調合して使用するものであり、ニッケル共析率が12〜18%の皮膜が得られるものである。また、銅めっきは上村工業株式会社製「ピロブライトPY−61」を使用した。これは、ピロリン酸銅を主成分とするものである。これらはいずれもシアン化物やフッ化物を含有しないアルカリ性のめっき液である。いずれの場合も5μmの膜厚で良好な金属めっき皮膜を形成することができた。めっき液の組成とめっき条件の詳細は、下記表2にまとめて示す。
Figure 2005017235
得られた試料のうち、陽極酸化皮膜の上に亜鉛皮膜を形成した試料について、マグネシウム合金基材と亜鉛皮膜の表面との間の抵抗値を、図7に示す方法にしたがって、測定したところ、陽極酸化皮膜の厚みが1μm、3μm、5μm及び10μmのいずれの場合においても、当該抵抗値は1〜1.5Ωの範囲に収まり、良好な導電性を示した。すなわち、本発明で形成されている陽極酸化皮膜の膜厚方向の抵抗値が小さいことが示された。このとき、陽極酸化皮膜の厚みが変化しても、前記抵抗値はあまり変化しなかった。また、陽極酸化皮膜の上に銅皮膜を形成した試料において、マグネシウム合金基材と銅皮膜の表面との間の抵抗値を測定したところ、陽極酸化皮膜の厚みが1μm、3μm、5μm及び10μmのいずれの場合においても、当該抵抗値は0.5〜1.0Ωの範囲に収まり、極めて良好な導電性を示した。この場合には、亜鉛めっきの場合よりもさらに良好な導電性を得ることができた。また、銅めっきの場合にも、亜鉛めっきの場合と同様に、陽極酸化皮膜の厚みが変化しても、前記抵抗値はあまり変化しなかった。
また、本実施例で陽極酸化処理に供した、チクソモールド法にて製造されたマグネシウム合金板の裏面を削って、図7に示すような方法に準じて、表裏面間の抵抗値を測定したところ、抵抗値は約1Ωであった。この抵抗値は、マグネシウムの表面に形成された薄い酸化物層のためにこのような値を示すものと考えられる。すなわち、本発明の方法にしたがって陽極酸化皮膜の表面に銅めっきを施した場合には、特に表面処理を施していないマグネシウム合金製品よりも良好な導電性を得ることができる。
得られた試料について、塩水噴霧試験による耐食性の評価結果を表5にまとめて示す。本実施例で得られためっき皮膜は、以降に示す比較例に比べて、良好な耐食性を有していることがわかる。特に陽極酸化皮膜による下地処理層の膜厚が厚くなるほど良好な耐食性を有することが明らかになった。また、銅めっきを施した試料について、皮膜の密着性を評価した結果も表5にまとめて示す。本実施例で得られためっき皮膜は、以下に示す比較例に比べて、良好な密着性が得られていることがわかる。
上述の方法と同様にして陽極酸化皮膜を10μmの厚みで形成し、その上に10μmの亜鉛めっきを施した試料について、皮膜断面をX線マイクロアナライザーで観察した結果を図2〜6に示す。図2は、断面形状を観察した電子顕微鏡写真である。これは、図6の左上の写真(「SL」と記載)に相当するものである。図2において、下方約1/3がマグネシウム合金基材であり、中央約1/3が亜鉛めっき皮膜であり、上方約1/3が包埋に使用したエポキシ樹脂である。マグネシウム合金基材と亜鉛めっき皮膜の間に陽極酸化皮膜が存在する。亜鉛めっきを施す前の試料を撮影した図1と比較すれば明らかなように、陽極酸化皮膜の表面は、その表面がかなり浸食されていて、その上に金属めっき層が形成されている。金属めっき皮膜は陽極酸化皮膜の表面の細孔の中に食い込んでいるので、密着性の良好な金属めっき層を形成することができると考えられる。
図3は、マグネシウム(Mg)の分布状況を、図4は酸素(O)の分布状況を、図5は亜鉛(Zn)の分布状況を、それぞれ示した図である。図3〜5は、白黒の濃淡によってそれぞれの元素の濃度を示したものであり、明るいほど高濃度である。また、図6において、中央上の写真(「Mg」と記載)、右上の写真(「Zn」と記載)、左下の写真(「O」と記載)、中央下の写真(「Al」と記載)及び右下の写真(「P」と記載)は、それぞれマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、酸素(O)、アルミニウム(Al)及びリン(P)の分布状況を示したものである。これらの5枚の写真は、本来カラー表示によって濃度分布が示されているものを、白黒表示で本明細書に添付したものである。図6の右側に示されているのは、カラーバーであり、白黒表示では必ずしも明度と濃度元素とが比例していないことに注意が必要である。
図6の中央上の写真に示されているように、亜鉛めっきを施した後においても、遷移層は残存していることがわかる。そして陽極酸化皮膜の表面がかなり浸食されているので、金属めっき皮膜が前述の遷移層に接触又は近接している場所が存在する。このため、その部分を通じて良好な導電性が確保されていると考えられる。前述のように、陽極酸化皮膜の厚みにかかわらず同程度の導電性を有しているのは、このためであると推定される。また、遷移層はマグネシウム合金基材を均一に覆っているので、遷移層が、マグネシウム合金基材の耐食性を付与するのに貢献していると考えられる。
比較例1
「Dow17法」と呼ばれる公知の陽極酸化皮膜形成方法を試験した例である。酸性フッ化アンモニウム360g/L、重クロム酸ナトリウム100g/L及びリン酸90mL/Lを含有する電解液を調製した。この中に実施例1と同じ前処理を施したマグネシウム合金試験片を陽極として浸漬し、交流電源を用いて通電して陽極酸化処理を行った。下記範囲内でめっき処理条件を調整して、1、3、5及び10μmの陽極酸化皮膜を形成した。
温度:71〜82(℃)
電流密度:0.5〜5(A/dm
電圧:95〜100(V)
時間:2.5〜15(分)
次に、実施例1と同様に硝酸水溶液に浸漬処理してから、表2に示す条件で亜鉛めっき処理、亜鉛−ニッケル合金めっき処理及び銅めっき処理を行った。しかしながら、いずれの陽極酸化皮膜の膜厚においても、いずれのめっき処理においても、通電中に陰極から僅かに水素ガスを発生するのみであって、ほとんど通電せず、めっき皮膜は形成されなかった。これは、陽極酸化皮膜が絶縁膜であるためであると考えられる。また、得られた試料の裏面を削って、図7に示すような方法に準じて、表裏面間の抵抗値を測定したところ、抵抗値は測定器の測定可能レンジをオーバーし、10Ωを超えた。
比較例2
「Dow法」と呼ばれる公知の金属めっき皮膜形成方法を試験した例である。実施例1と同じマグネシウム合金試験片を原料として用い、表3の工程にしたがって、ジンケート処理及びシアン化銅ストライクめっきを行った後、表2に示す条件で亜鉛めっき処理、亜鉛−ニッケル合金めっき処理及び銅めっき処理を行った。塩水噴霧試験による耐食性の評価結果とめっき皮膜の密着性の評価結果を表5にまとめて示す。
Figure 2005017235
比較例3
「坂田法」と呼ばれる公知の金属めっき皮膜形成方法を試験した例である。実施例1と同じマグネシウム合金試験片を原料として用い、表4の工程にしたがって、めっき前処理及び無電解ニッケルストライクめっきを行った後、表2に示す条件で亜鉛めっき処理、亜鉛−ニッケル合金めっき処理及び銅めっき処理を行った。塩水噴霧試験による耐食性の評価結果とめっき皮膜の密着性の評価結果を表5にまとめて示す。
Figure 2005017235
Figure 2005017235
以上示したように、導電性陽極酸化皮膜を各めっきの下地処理として用いることによって直接電気めっきを行うことが可能となる。表5に示されるように、この陽極酸化被膜の膜厚の増加に伴い、耐食性は向上し、下地の導電性陽極酸化皮膜が10μmの場合には、いずれのめっきにおいても、塩水噴霧試験における腐食発生時間が500時間以上であり、極めて優れた耐食性を示す。
これに対し、比較例2(Dow法)及び比較例3(坂田法)の試料においては、めっきを施したいずれのサンプルも24時間以内に腐食が発生し、実施例1の試料に比べて耐食性が著しく劣っている。この要因としては、マグネシウム合金上に直接異なった金属でのめっきを施しているため、異種金属による電食が発生しやすいためと考えられる。上層の金属めっき皮膜の厚みを増加させることによって耐食性を改善することは可能であるが、金属めっき皮膜の厚みが5μm程度の場合には、異種金属による電食を防止するために、金属めっき皮膜の下地として、実施例1で形成されたようなバリヤー層(遷移層)が必要であると考えられる。
また、金属めっき皮膜の密着性に関しては、実施例1の試料では下地の導電性陽極酸化皮膜の膜厚が1μmと薄い場合にはめっき被膜の一部に剥離が生じるが、3μm以上であれば、全く剥離や膨れは認められず、非常に優れた密着性が得られる。導電性陽極酸化皮膜の膜厚が3μm以上の際に優れた密着性が得られることが明らかになったが、この要因としては、上述のように、導電性陽極酸化被膜が非常にポーラスで凹凸が激しいため、この凹凸によるアンカー効果によって密着性が向上したためと思われる。これに対し、比較例2(Dow法)の試料ではめっき被膜が完全に剥離した。また比較例3(坂田法)の試料でも、めっき被膜の一部に剥離が生じた。

Claims (20)

  1. マグネシウム又はマグネシウム合金の表面に形成された導電性陽極酸化皮膜の上に直接金属めっき皮膜が形成されてなるマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品。
  2. マグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材と金属めっき皮膜の表面との間の抵抗値が10Ω以下である請求項1記載の製品。
  3. 前記陽極酸化皮膜が多孔質層と遷移層とからなり、該遷移層がマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材と前記多孔質層との間に存在し、該遷移層のマグネシウム含有量が、前記多孔質層のマグネシウム含有量と前記基材のマグネシウム含有量との中間の値を示し、かつ該遷移層の酸素含有量が、前記多孔質層の酸素含有量と前記基材の酸素含有量との中間の値を示す請求項1又は2に記載の製品。
  4. 前記遷移層の厚みが0.2〜5μmである請求項3記載の製品。
  5. 前記陽極酸化皮膜が、マグネシウム元素を10〜65重量%、酸素元素を25〜60重量%含有する請求項1〜4のいずれか記載の製品。
  6. 前記陽極酸化皮膜が、リン元素を4〜30重量%含有する請求項1〜5のいずれか記載の製品。
  7. 前記陽極酸化皮膜が、アルミニウム元素を1〜20重量%含有する請求項1〜6のいずれか記載の製品。
  8. 前記陽極酸化皮膜の膜厚が0.01〜30μmである請求項1〜7のいずれか記載の製品。
  9. 前記金属めっき被膜が、亜鉛、ニッケル、銅、金、銀、クロムからなる群から選択される金属又はそれらの金属の合金からなる請求項1〜8のいずれか記載の製品。
  10. 前記金属めっき被膜の厚みが、0.1〜100μmである請求項1〜9のいずれか記載の製品。
  11. 前記金属めっき被膜の上に、さらに他の金属めっき皮膜が形成されてなる請求項1〜10のいずれか記載の製品。
  12. マグネシウム又はマグネシウム合金の表面の全部が陽極酸化皮膜で覆われ、該陽極酸化皮膜の表面の全部が前記金属めっき皮膜で覆われ、かつ該金属めっき皮膜の表面の一部にのみ樹脂塗装が施されて残余の部分の金属めっき皮膜が露出している請求項1〜11のいずれか記載の製品。
  13. 筐体内面には樹脂塗装が施されず、筐体外面には樹脂塗装が施された電気機器の筐体である、請求項12記載の製品。
  14. リン酸根を0.1〜1mol/L含有し、pHが8〜14である電解液にマグネシウム又はマグネシウム合金を浸漬し、その表面を陽極酸化処理した後にめっき浴に浸漬して電気めっきを施して、前記陽極酸化皮膜の表面に直接金属めっき被膜を形成するマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品の製造方法。
  15. 前記電解液がアンモニア又はアンモニウムイオンを0.2〜5mol/L含有する請求項14記載の製品の製造方法。
  16. マグネシウム又はマグネシウム合金を予め酸性水溶液に浸漬してから、電解液に浸漬して陽極酸化処理する請求項14又は15記載の製品の製造方法。
  17. 相互に10mm離れた2つの端子間で測定した皮膜表面の抵抗値が10Ω以下である陽極酸化皮膜を表面に有するマグネシウム又はマグネシウム合金をめっき浴に浸漬して電気めっきを施して、前記導電性陽極酸化皮膜の表面に直接金属めっき被膜を形成するマグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品の製造方法。
  18. 前記陽極酸化皮膜の表面を予め酸性水溶液に浸漬してから、前記めっき浴に浸漬して電気めっきを施す請求項14〜18のいずれか記載の製品の製造方法。
  19. 前記めっき浴のpHが7〜14.5である請求項14〜18のいずれか記載の製品の製造方法。
  20. 前記金属めっき皮膜を形成した後で、さらに他のめっき浴に浸漬して前記金属めっき皮膜の表面をさらに他の金属めっき皮膜で覆う請求項14〜19のいずれか記載の製品の製造方法。
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