JPWO2004084245A1 - 電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物 - Google Patents

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Abstract

(a)一般式 CH2=CR1−COOR2(1)(式中、R1は水素原子またはアルキル基を、R2は炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位を50〜98モル%、(b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位を1〜30モル%、および(c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を0.1〜10モル%有し、ガラス転移温度が−80℃〜0℃であるバインダーが、水に分散されてなる電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物を使用することによって、結着性が良好で、耐熱性に優れるバインダーを含有する新規な電気二重層キャパシタ用バインダー組成物、および該バインダーを有してなる電気二重層キャパシタ電極、並びに高容量で電気化学的に安定な電気二重層キャパシタを提供する。

Description

本発明は電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物、該バインダーを用いて製造された電極および該電極を有する電気二重層キャパシタに関する。
分極性電極と電解質界面で形成される電気二重層を利用した電気二重層キャパシタ、特にコイン型形状のものは、メモリバックアップ電源として近年急速に需要が伸びている。一方、電気自動車用電源等の大容量を必要とする用途に対しても、高出力密度を特徴とする電気二重層キャパシタの利用が注目されている。
電気二重層キャパシタの電極材料としては、主として活性炭などの炭素質材料が用いられるが、集電体に炭素質材料を保持させるために、炭素質材料とバインダーポリマー(以下、単にバインダーということがある。)を混合して用いるのが通常である。従来の電気二重層キャパシタ電極用バインダーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられてきた。また、集電体表面にバインダーを含む炭素質材料を結着させる方法として、バインダーの溶液、またはラテックスに炭素質材料を混合分散してスラリー(均一な塗料状)とし、集電体上に塗工、乾燥する方法が採られてきた。
しかし、バインダーとしてPTFEを使用した場合、使用量が少ないと集電体との結着性が十分ではなく、使用量が多いと電極の内部抵抗が高くなるという問題があった。
上記の問題点に対し、エラストマーをバインダーとして用いることにより、少量使用で柔軟性があり、結着力に優れた電極を提供する試みがされている。例えば、特定組成のスチレン−ブタジエン系重合体をバインダーとして用いる方法(特開平11−162794号公報参照)や、スチレン−ブタジエン系重合体とセルロース系ポリマーの混合物をバインダーとして用いる方法(特開2000−208368号公報、特開2001−307965号公報参照)が提案されている。
しかしながら、これらのバインダーは耐熱性が劣るという問題があった。すなわち電極材料として用いる活性炭は比表面積が大きいため、水分を吸着しやすい。そのため集電体上に塗工したスラリーを高温で乾燥して水分を除去する必要があるが、スチレン−ブタジエン系重合体をバインダーとして用いると、高温乾燥により柔軟性を失い、集電体から剥離したり、電気化学的安定性が低下したりするといった問題があった。
そこで本発明の目的は、結着性が良好で、耐熱性に優れるバインダーを含有する新規な電気二重層キャパシタ用バインダー組成物、および該バインダーを有してなる電極を提供することである。また本発明の他の目的は、高容量で電気化学的に安定な電気二重層キャパシタを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定組成のアクリル系共重合体を含有し、特定範囲のガラス転移温度を有するバインダーは、結着性、柔軟性および耐熱性に優れることを見出した。また、該バインダーを用いて製造した電極を有する電気二重層キャパシタは、高容量で電気化学的に安定であることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、(a)下記一般式
CH=CR−COOR (1)
(式中、Rは水素原子またはアルキル基を、Rは炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位を50〜98モル%、
(b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位を1〜30モル%、および
(c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を0.1〜10モル%有し、ガラス転移温度が−80℃〜0℃であるバインダーポリマーが、水に分散されてなる電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物が提供される。
また本発明によれば、上記の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物と、炭素質材料とを含有する電気二重層キャパシタ電極用スラリーが提供される。
さらに本発明によれば、(a)下記一般式
CH=CR−COOR (1)
(式中、Rは水素原子またはアルキル基を、Rは炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位を50〜98モル%、
(b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位を1〜30モル%、および
(c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を0.1〜10モル%有し、ガラス転移温度が−80℃〜0℃であるバインダーポリマーと炭素質材料とを含有する電極層が集電体に結着してある電気二重層キャパシタ電極、および該電極を有する電気二重層キャパシタが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物
本発明の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物は、(a)下記一般式
CH=CR−COOR (1)
(式中、Rは水素原子またはアルキル基を、Rは炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位、(b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位、および(c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を有するバインダーポリマーが、水に分散されてなるものである。
本発明に用いるバインダーポリマーの、前記(a)一般式(1)で表される化合物由来の単量体単位の含有量は、ポリマーの全量に対して50〜98モル%、好ましくは60〜90モル%である。一般式(1)で表される化合物由来の単量体単位の含有量が少なすぎると電極層の結着性および電極の柔軟性が低下する場合がある。
一般式(1)において、Rは水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、通常1〜10、好ましくは1〜3、より好ましくは1である。
は、炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。中でもアルキル基が好ましく、その炭素数は、より好ましくは3〜16、特に好ましくは4〜12である。
一般式(1)で表される化合物としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;が挙げられる。中でも、アクリル酸n−ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。
これら一般式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーの、(b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位の含有量は、ポリマーの全量に対して1〜30モル%、好ましくは3〜25モル%、より好ましくは5〜22モル%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位の含有量が多すぎると電極の柔軟性が劣り、また、耐熱性が低下する傾向がある。α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
バインダーポリマーの、(c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位の含有量は、ポリマーの全量に対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜7モル%、より好ましくは0.5〜5モル%である。多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位の含有量がこの範囲であると、耐電解液性の高いポリマーとすることができる。
多官能エチレン性カルボン酸エステルの例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールアクリレート、1,4−ブタンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、1,9−ノナンジオールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどのジアクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリル酸エステル類;などが挙げられる。
本発明に用いるバインダーポリマーは、上記(a)、(b)および(c)で示した単量体単位以外に、(d)エチレン性不飽和カルボン酸由来の単量体単位を有していてもよい。(d)エチレン性不飽和カルボン酸由来の単量体単位の含有量は、ポリマーの全量に対して好ましくは1〜10モル%、より好ましくは2〜7モル%である。エチレン性不飽和カルボン酸由来の単量体単位の含有量がこの範囲であると、電極層の集電体への結着性を向上させることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましい。
本発明に用いるバインダーポリマーは、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン由来の単量体単位を実質的に有さないことが好ましい。共役ジエン由来の単量体単位を有するポリマーは、分子鎖に二重結合を有するため、これに起因して架橋が進行し、または酸化劣化が生じるために加熱乾燥後の電極層の結着性が低下する場合がある。
本発明に用いるバインダーポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の共重合可能な単量体由来の単量体単位を含有していてもよい。上記共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの1−オレフィン;アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアルキル基に置換基を有するアクリル酸エステル;メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジルなどのアルキル基に置換基を有するメタクリル酸エステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸ブチル、クロトン酸イソブチル、クロトン酸n−アミル、クロトン酸イソアミル、クロトン酸n−ヘキシル、クロトン酸2−エチルヘキシル、クロトン酸ヒドロキシプロピルなどのクロトン酸エステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのマレイン酸ジエステル;フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸ジエステル;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチルなどのイタコン酸ジエステル;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;が挙げられる。
これらの単量体は2種以上併用してもよく、これらの単量体単位の含有量の合計はポリマーの全量に対し15モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)は、−80〜0℃、好ましくは−60〜−5℃、より好ましくは−50〜−10℃である。Tgが高すぎると、電極の柔軟性、結着性が低下し、電極層の集電体からの剥離が起きやすくなる。また、Tgが低すぎるとキャパシタの放電容量の低下を招く場合がある。
バインダーポリマーの粒子径は、通常50〜1000nm、好ましくは70〜800nm、より好ましくは100〜500nmである。粒子径が大きすぎるとバインダーとして必要な量が多くなりすぎ、電極の内部抵抗が増加するおそれがある。逆に、粒子径が小さすぎると炭素質材料の表面を覆い隠して反応を阻害する場合がある。ここで、粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだポリマー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。
バインダーポリマーの製法は特に限定されず、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法または溶液重合法などの公知の重合法により前記の各単量体を重合して得ることができる。中でも、乳化重合法で製造することが、ポリマーの粒子径の制御が容易であるので好ましい。
本発明のバインダー組成物は、上記のバインダーポリマーが水に分散されてなるものである。ポリマーを水に分散させる方法は特に限定されない。例えば、スプレードライ法や微粉砕により微粒子状としたポリマーを常法に従い水と混合分散させればよい。また、上記の乳化重合法によりバインダーポリマーを水分散体として得た場合は、必要に応じて濃縮、希釈などにより濃度を調整し、ポリマーを単離せずにそのまま本発明のバインダー組成物として用いることができる。水に分散されたバインダーポリマーの水中での濃度(固形分量)は、通常20〜70質量%である。
(2)電気二重層キャパシタ電極用スラリー
本発明の電気二重層キャパシタ電極用スラリーは、本発明のバインダー組成物と、炭素質材料とを含有し、必要に応じて増粘剤が含まれる。本発明の電極用スラリーにおいて、炭素質材料は、電極活物質および導電性付与材として作用する。
電気二重層キャパシタにおいて電解質イオンが吸着される電極活物質としては、活性炭、ポリアセン等からなり、かつ比表面積が30m/g以上、好ましくは200〜3500m/gである粉末が好ましい。また、カーボンファイバ、カーボンウィスカ、グラファイト等の繊維、または粉末も比表面積が上記の範囲内であれば使用することができる。活性炭としてはフェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系、またはヤシガラ系等を使用することができる。また、特開平11−317333号公報や特開2002−25867号公報などに記載される、黒鉛類似の微結晶炭素を有しその微結晶炭素の相間距離が拡大された非多孔性炭素も電極活物質として用いることができる。活物質の粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmであると、キャパシタ用電極の薄膜化が容易で、容量密度も高くできるので好ましい。
導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケチェンブラック、カーボンブラック等の導電性カーボンが挙げられ、上記電極活物質と混合して使用する。これら導電性付与剤を予め均一に分散した後、上記活物質と混合して使用することが好ましい。このように導電性付与剤を併用することにより、前記活物質同士の電気的接触が一段と向上し、電気二重層キャパシタの内部抵抗が低くなり、かつ容量密度を高くすることができる。電極活物質と導電性付与剤の配合比率は、活物質100質量部に対し、導電性付与剤が0.1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部である。
本発明のスラリーにおけるバインダーポリマーの量は、炭素質材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。バインダーポリマー量が少なすぎると電極から炭素質材料が脱落しやすくなり、逆に多すぎると炭素質材料がバインダーに覆い隠されて電極の内部抵抗が増大するおそれがある。
本発明のスラリーにおける増粘剤は、電極用スラリーの塗工性を向上させたり、流動性を付与したりする目的で用いられる。増粘剤の種類は特に限定されないが、水溶性のポリマーが好ましい。
水溶性ポリマーの具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸またはアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸またはマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。これらの水溶性ポリマーの使用量は、炭素質材料に対して0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部である。
本発明の電気二重層キャパシタ電極用スラリーは、本発明のバインダー組成物および電極活物質と、必要に応じて増粘剤および導電性付与材を、混合機を用いて混合して製造できる。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを用いることができる。混合方法や混合順序は特に限定されないが、増粘剤の水溶液と導電性付与材とを混合して導電性付与材を微粒子状に分散させた後、ここに電極活物質とバインダー組成物を添加し、均一に混合するのが好ましい。また、電極活物質と導電性付与材とを擂潰機、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、オムニミキサーなどの混合機を用いて先ず混合し、次いで増粘剤の水溶液を加えて電極活物質と導電性付与材を均一に分散させて、ここにバインダー組成物を添加して均一に混合するのも好ましい。これらの方法を採ることにより、容易に均一なスラリーを得ることができる。
(3)電気二重層キャパシタ電極
本発明の電気二重層キャパシタ電極は、前記のバインダーポリマーと炭素質材料とを含有する電極層が集電体に結着してあるものである。
集電体は、導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するとの観点から、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、金、白金などの金属材料が好ましく、アルミニウムおよび白金が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、通常、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものを用いる。
本発明の電気二重層キャパシタ電極は、集電体に、本発明の電極用スラリーを塗布し、乾燥することにより製造することができる。電極用スラリーの集電体への塗布方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。塗布するスラリー量も特に制限されないが、乾燥した後に形成される、炭素質材料、バインダーなどからなる電極層の厚さが、通常、0.005〜5mm、好ましくは0.01〜2mmになる量が一般的である。乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、通常120〜250℃、好ましくは150〜250℃である。さらに、乾燥後の集電体をプレスすることにより電極の活物質の密度を高めてもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法が挙げられる。
(4)電気二重層キャパシタ
本発明の電気二重層キャパシタは、上記の電極を有するものである。電気二重層キャパシタは、上記の電極や電解液、セパレーター等の部品を用いて、常法に従って製造することができる。具体的には、例えば、セパレーターを介して電極を重ね合わせ、これをキャパシタ形状に応じて巻く、折るなどして容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。
セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔膜または不織布、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜など公知のものを用いることができる。また、セパレーターに代えて固体電解質あるいはゲル電解質を用いてもよい。
電解液は、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した非水電解液が好ましい。
電解質としては、従来より公知のものがいずれも使用でき、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートなどが挙げられる。
これらの電解質を溶解させる溶媒(電解液溶媒)も、一般的に電解液溶媒として用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらは単独または二種以上の混合溶媒として使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特に断りがない限り質量基準である。
実施例および比較例中の試験および評価は以下の方法で行った。
<試験方法および評価方法>
(1)バインダーポリマーの組成比
バインダーポリマーの各単量体単位含有量(組成比)は、H−および13C−NMR測定により求めた。
(2)バインダーポリマーの粒子径
バインダーポリマーの粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだポリマー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径として求めた。
(3)ガラス転移温度(Tg)
バインダーポリマーのTgは、示差走査型熱量計(DSC)により、10℃/分で昇温して測定した。
(4)バインダーポリマーの電解液膨潤倍率
バインダー組成物を約0.1mm厚のポリマー膜ができるようにガラス板に塗布した後、室温で24時間風乾し、さらに120℃で2時間真空乾燥してキャストフィルムを作製する。このキャストフィルムを約2cm角に切り取って質量を測定した後、温度70℃の電解液中に浸漬する。浸漬したフィルムを72時間後に引き上げ、タオルペーパーで拭きとってすぐに質量を測定し、(浸漬後質量)/(浸漬前質量)の値を電解液膨潤倍率とした。なお、電解液としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。電解液膨潤倍率が小さいほど、バインダーポリマーの耐電解液性が高いことを示す。
(5)サイクリック・ボルタンメトリー(CV値)
アセチレンブラックとバインダー組成物とをアセチレンブラック:バインダーポリマー=100:40(固形分質量比)となるように混合し、均一なスラリーとする。得られるスラリーをアルミニウム箔に塗布し、80℃で30分間送風式乾燥機で乾燥した後、さらに150℃で20時間真空乾燥し、これを作用電極とする。対極および参照極にはリチウム金属箔を用い、上記(4)で用いたものと同じ電解液を用いてサイクリック・ボルタンメトリーを測定した。測定器はポテンショスタット(HA−301:北斗電工社製)および簡易型関数発生器(HB−111:北斗電工社製)を用いた。スイープ条件は60℃で開始電位3V、折り返し電位5V、スイープ速度5mV/s、三角波スイープで連続3回繰り返しの測定を行い、3回目の4.6Vでの単位面積当たりの電流値(CV値、単位はμA/cm)を測定した。CV値が小さいほど、バインダーポリマーが電気化学的に安定であることを示す。
(6)ピール強度
電極を幅2.5cm×長さ10cmの矩形に切り、電極層面を上にして固定した。電極表層面にセロハンテープを貼り付け、テープを50mm/分の速度で180°方向に剥離したときの応力(N/cm)を10回測定し、その平均値を求めてこれをピール強度とした。この値が大きいほど結着強度が高く、電極活物質が集電体から剥離しにくいことを示す。
(7)電気二重層キャパシタの放電容量
電気二重層キャパシタを70℃の恒温槽中で、4mAで2.5Vまで充電し、充電状態を2時間保持した後、1mA定電流で0Vまで放電し初期の放電容量を測定した。さらに同条件で再充電し、充電された状態で100時間保持した後、1mA定電流で放電し放電容量を測定した。単位はmWh/g(電極活物質あたり)である。
撹拌機付き反応容器に、表1に示す組成の単量体混合物100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、イオン交換水250部および過硫酸カリウム1.5部を仕込み、十分撹拌した後、80℃で5時間重合し、固形分量が約30%のラテックスを得た。重合転化率は95%以上であった。このラテックスを減圧濃縮し、固形分量が40%のラテックスとしてバインダー組成物を得た。このバインダー組成物を用いて、バインダーポリマーの組成比、粒子径、ガラス転移温度、電解液膨潤倍率およびサイクリック・ボルタンメトリーを測定した結果を表2に示す。
次いでこのバインダー組成物を固形分で5部、電極活物質として比表面積1500m/g、平均粒径10μmの高純度活性炭粉末を100部、導電性付与材としてアセチレンブラックを4部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(セロゲン7A:第一工業製薬社製)を2部仕込み、全固形分の濃度が43%となるように水を加え、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合した。その後、固形分濃度が41%になるように水で希釈してさらに10分間混合し、電極用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で30分送風乾燥機で乾燥した後、250℃で72時間、真空乾燥を行った。その後、ロールプレス機を用いてプレスを行い厚さ80μm、密度0.6g/cmの電極を得た。この電極を用いてピール強度を測定した結果を表2に示す。
上記により製造した電極を直径15mmの円形に切り抜いたものを2枚作成した。この2枚の電極の電極層面を対向させ、直径18mm、厚さ25μmの円形ポリプロピレン製多孔膜からなるセパレーターを挟んだ。これを、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、容器を封止して、直径20mm、厚さ約2mmのコイン型電気二重層キャパシタを製造した。なお、電解液としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。こうして得た電気二重層キャパシタについて、放電容量を測定した結果を表2に示す。
実施例2〜4,比較例1〜4
単量体混合物として表1に示す組成のものを用いた他は実施例1と同様にしてバインダー組成物、電極用スラリー、電極および電気二重層キャパシタを製造し、各特性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2004084245
Figure 2004084245
表2から明らかなように、本発明のバインダー組成物にかかるバインダーポリマーは電気的安定性が高く、また該バインダー組成物を用いて製造した電極は高温で乾燥しても高い結着強度を示した。さらに該電極を用いて製造した電気二重層キャパシタは初期放電容量が大きく、かつ高温で長時間保持しても容量低下が少なかった。
一方、スチレン−ブタジエン系重合体は電気的安定性が低く、かつ高温乾燥により柔軟性を失うため、該重合体をバインダーポリマーとして作成した電極は結着強度が低かった(比較例1)。また、アクリル酸メチル単位とメタクリル酸メチル単位を主成分とするバインダーポリマーおよびアクリロニトリル単位の含有量が多すぎるバインダーポリマーはいずれも柔軟性が低いため、これらを用いて作成した電極も結着強度が低い(比較例2,3)。さらに、多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を含有しないバインダーポリマーは電解液により膨潤するため結着力が低下し、キャパシタの初期容量が低下した(比較例4)。そして、これらの電極を用いて製造した電気二重層キャパシタは、高温で長時間保持した場合の容量低下が大きいものであった。
本発明のいくつかの実施態様について、上記に実施例として記載したが、上記実施例を変形した態様についても、本発明の教示および利点から実質的に離れない範囲において実施可能であることは、当業者にとって明らかであり、そのような変形した態様は、本発明の範囲に含まれる。また、上記比較例は、あくまで、上記実施例と比較することにより、上記実施例が優れた態様であることを示すために記載したものである。従って、上記比較例の内容においても、本発明の目的を達成することができる場合がある。
以上に説明したように、本発明によれば、結着性が良好で、耐熱性に優れるバインダーを含有する新規な電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物、および該バインダーを有してなる電気二重層キャパシタ電極、並びに高容量で電気化学的に安定な電気二重層キャパシタを得ることができる。

Claims (11)

  1. (a)下記一般式
    CH=CR−COOR (1)
    (式中、Rは水素原子またはアルキル基を、Rは炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位を50〜98モル%、
    (b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位を1〜30モル%、および
    (c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を0.1〜10モル%有し、ガラス転移温度が−80℃〜0℃であるバインダーポリマーが、水に分散されてなる電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物。
  2. 前記バインダーポリマーが、さらに、(d)エチレン性不飽和カルボン酸由来の単量体単位を1〜10モル%有するものである請求の範囲第1項に記載の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物。
  3. 前記バインダーポリマーの粒子径が、50〜1000nmである請求の範囲第1項または第2項に記載の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物。
  4. 請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物と、炭素質材料とを含有する電気二重層キャパシタ電極用スラリー。
  5. 前記炭素質材料が、比表面積が30m以上の活性炭を含む請求の範囲第4項に記載の電気二重層キャパシタ電極用スラリー。
  6. さらに、増粘剤を含む請求の範囲第4項または第5項に記載の電気二重層キャパシタ電極用スラリー。
  7. 請求の範囲第4項〜第6項のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ電極用スラリーを、集電体に塗布、乾燥する、電気二重層キャパシタ電極の製造方法。
  8. 前記乾燥を120〜250℃で行う請求の範囲第7項に記載の電気二重層キャパシタ電極の製造方法。
  9. (a)下記一般式
    CH=CR−COOR (1)
    (式中、Rは水素原子またはアルキル基を、Rは炭素数2〜18のアルキル基または炭素数3〜18のシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位を50〜98モル%、
    (b)α,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物由来の単量体単位を1〜30モル%、および
    (c)多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル由来の単量体単位を0.1〜10モル%有し、ガラス転移温度が−80℃〜0℃であるバインダーポリマーと、炭素質材料とを含有する電極層が集電体に結着してある電気二重層キャパシタ電極。
  10. バインダーポリマーが、さらに、(d)エチレン性不飽和カルボン酸由来の単量体単位を1〜10モル%有するものである請求の範囲第4項に記載の電気二重層キャパシタ電極。
  11. 請求の範囲第9項または第10項に記載の電気二重層キャパシタ電極を有する電気二重層キャパシタ。
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