JPWO2004001477A1 - 投写レンズ製造装置、投写レンズ製造方法、この投写レンズ製造方法により製造された投写レンズ、およびこの投写レンズを備えるプロジェクタ - Google Patents

投写レンズ製造装置、投写レンズ製造方法、この投写レンズ製造方法により製造された投写レンズ、およびこの投写レンズを備えるプロジェクタ Download PDF

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Abstract

投写レンズ(46)は、レンズ群(110)が順次配置され、内部に光路が設定された鏡筒(100)を備え、鏡筒(100)には、3群レンズ(113)を光軸に直交し互いに直交する位置に位置調整孔(122A)が形成されている。投写レンズ(46)をレンズ調整位置に保持する投写レンズ保持機構(550)と、光源装置(521)からの射出光に応じて形成されたテストパターン画像を投写レンズ(46)に導入する画像光射出機構(526)と、投写レンズ(46)を介して投写された画像光を検出しながら3群レンズ(113)の位置をX軸,Y軸に沿って調整するレンズ位置調整機構(570)と、調整後の3群レンズ(113)を接着固定する接着固定機構(580)とを備える。

Description

本発明は、投写レンズ製造装置、投写レンズ製造方法、この投写レンズ製造方法により製造された投写レンズ、およびこの投写レンズを備えるプロジェクタに関する。
従来、複数の色光を画像情報に応じて各色光ごとに変調する複数の液晶パネルと、各液晶パネルで変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズムと、このプリズムで合成された光束を拡大投写して投写画像を形成する投写レンズとを備えるプロジェクタが利用されている。
このようなプロジェクタに用いられる投写レンズとしては、投写画像において、解像度の低下や、歪曲収差および色収差等の収差の発生等を抑えるために、収束用レンズおよび発散用レンズを含む複数のレンズを組み合わせて構成された複合レンズが利用されている。しかしながら、これらのレンズを正しく機能させて投写画像の高品質を確保するためには、投写レンズを構成する各レンズの間の光軸(芯)位置を高精度に調整する必要があった。
このため、従来は、複数のレンズおよびこれらのレンズを保持するレンズ保持筒のそれぞれの外形精度を高めておいた上で、これらの部品から必要な部品を取り出して投写画像を観察し、光軸位置が合致するまで部品交換を行うトライアルアンドエラーにより高品質の投写レンズを製造していた。しかしながら、この場合には、外形精度のばらつきの影響が光軸位置合わせ精度よりも大きくなって高精度な光軸位置調整ができない上、トライアルアンドエラーによる製造作業のため作業も繁雑となっていた。
そこで、レンズ保持筒には、このレンズ保持筒内に形成される光路の照明光軸に直交する面内で筒上の均等な3箇所の位置にレンズ位置調整用の孔を形成し、かつ、これらの3つの位置調整孔に筒外から筒内の中心に向かうビス等のピン部材を取りつけて投写レンズを構成することが提案されている。このような投写レンズでは、これらの3本のピン部材を進退させることにより、ピン部材の先端で調整対象となるレンズを付勢して、このレンズの位置を照明光軸に直交する面内で調整している。
また、調整すべきレンズを所定位置でクランプし、このレンズが収容されたレンズ保持筒を移動させることで、レンズの位置を調整する方法も提案されている(例えば、特許文献1(特開平8−334664号公報(図1、第3頁))参照)。
さらに、歪吸収部が設けられたレンズ保持筒内に予めレンズをカシメて固定しておき、その後、レンズの位置を移動させて調整する方法もある(例えば、特許文献2(特開2002−189159号公報(図1、第3〜第4頁))参照)。この場合には、レンズの調整により生じた歪を歪吸収部で吸収しており、歪吸収部に生じる歪は、加熱することにより、解消させている。
また、レンズを保持するレンズ保持筒を第1レンズ保持筒と、この第1レンズ保持筒の外周側に設けられる第2レンズ保持筒の2部材で構成し、第1レンズ保持筒と第2レンズ保持筒の間に、レンズ保持ばねを配置する。そして、第2保持筒に設けられたねじでレンズ保持ばねを圧縮させ、第1レンズ保持筒を光軸直交方向に移動させ、調整する方法も提案されている(例えば、特許文献3(特開2002−40308号公報(図1、第3〜4頁))参照)。なお、この場合には、第1レンズ保持筒の前端に押え環を配置し、この押え環と、第2レンズ保持筒とで第1レンズ保持筒を挟み込み固定している。
しかしながら、従来は、製品である投写レンズ自体にピン部材を設けてレンズの位置を調整する方法では、投写レンズを構成する部材の点数が多くなり、投写レンズがコスト高になるとともに、小型化、軽量化できないという問題があった。
また、3方向でレンズの面内位置を調整する場合には、1つのピン部材を進退させた際に他の2つのピン部材も進退させなければならず、2つのピン部材をどれだけ動かす必要があるのか、換言すれば、ピン部材の進退とレンズの動く方向との関係がわかり難いため、光軸位置調整作業が繁雑になっていた。この際、各ピン部材の進退方向がそれぞれ異なることから、調整対象となるレンズに応じて位置調整孔の開口寸法もある程度大きく形成する必要があり、この場合には、この開口からの光束の漏れ等により、投写画像の品質低下を招くおそれもあった。
さらに、特許文献1に記載されたような方法では、レンズ保持筒を移動させているため、レンズ保持筒の移動に伴ってレンズ保持筒に固定された固定レンズまで移動させることとなり、調整用の光源に対する固定レンズの芯がずれてしまう。この場合には、固定レンズの光軸と、調整対象となるレンズの光軸とを一致させることが困難となり、レンズの光軸位置を高精度に調整することができない場合がある。
さらに、特許文献2に記載されたような方法では、レンズ保持筒に歪吸収部を設けなければならないので、レンズ保持筒、さらにはこのレンズ保持筒を備えた投写レンズが大型化するという問題がある。また、歪吸収部に生じる歪を、加熱することにより、解消させているため、レンズの材質に熱に弱いプラスチック等を採用することができない。これに加え、レンズ保持筒に固定されているレンズの位置を調整しており、レンズ保持筒の保持力に逆らってレンズの位置を調整することとなるので、微調整しにくく、レンズの光軸位置を高精度に調整することが困難となる可能性がある。
また、特許文献3に記載されたような方法では、投写レンズにレンズ保持ばねとねじとで構成される位置調整機構を設けているため、投写レンズを構成する部材が増加し、投写レンズの構造が複雑化してしまうという問題がある。さらに、このようなレンズ保持ばねとねじとで構成される位置調整機構を投写レンズ側に設けるためには、第1レンズ保持筒と第2レンズ保持筒の2つのレンズ保持筒を備える構成としなければならず、第1レンズ保持筒を第2レンズ保持筒に固定するため、第1レンズ保持筒の前端に押え環を設ける必要があり、投写レンズが光軸方向に大きくなってしまうという問題もある。
本発明の目的は、投写レンズを構成する部材の点数を減少して投写レンズのコスト削減や小型化、軽量化を図ることができるとともに、投写レンズを構成する複数のレンズの光軸位置を高精度に、かつ簡単に調整できて、高品質な画像投写を可能とし、さらには、使用するレンズの材質が制限されない投写レンズを簡単に製造できる投写レンズ製造装置、投写レンズ製造方法、この投写レンズ製造方法により製造された投写レンズ、およびこの投写レンズを備えるプロジェクタを提供することにある。
本発明に係る投写レンズ製造装置は、内部に所定の光路が設定されたレンズ保持筒と、この光路の照明光軸上に順次配置される複数のレンズとを備える投写レンズを製造する投写レンズ製造装置であって、前記レンズ保持筒には、前記複数のレンズのうちのいずれかのレンズの位置を、照明光軸に直交する面内で互いに直交する2つの軸に沿った方向に調整するために、前記各軸上にそれぞれ一対の位置調整孔が形成され、調整用の光束を射出する光源と、製造対象となる投写レンズを、前記照明光軸上で前記調整対象となるレンズの位置を調整する位置であるレンズ調整位置に保持する投写レンズ保持機構と、前記光源から射出された光束に基づいて、所定のテストパターンを含む画像光を形成し、前記レンズ調整位置に配置された投写レンズに導入する画像光射出機構と、この画像光が導入された投写レンズから投写された画像光を検出しながら、調整対象となるレンズの位置を、前記位置調整孔を介して前記2つの軸に沿った方向にそれぞれ調整する2つのレンズ位置調整機構と、この位置調整されたレンズを前記レンズ保持筒に接着固定する接着固定機構とを備えることを特徴とする。
ここで、例えば、複数のレンズとは、少なくとも2群以上のレンズ群で構成されるものであり、そのレンズの群数や、形状、寸法、機能は特に限定されない。また、調整対象となるいずれかのレンズとは、1または2以上の調整対象となるレンズのことであり、例えば、投写される画像の品質に最も影響度が大きいものを1つ選択して、このレンズを調整する構成を採用できる。なお、調整対象となるレンズの数に応じて、適宜、位置調整機構の設置数も変更できる。
また、製造対象となる投写レンズにおいて、レンズ保持筒には、この投写レンズが組み込まれるプロジェクタを構成する光学系の一端に取りつけるためのつば部が形成されたものを採用できる。
この場合において、投写レンズ保持機構は、例えば、板材の中央部分に円形開口が形成されたレンズ保持用の部材を含んで構成できる。つまり、円形開口にはレンズ保持筒が挿通され、円形開口の外周部分にはつば部が配置されることにより、投写レンズを保持する構成を採用できる。
また、例えば、位置調整孔は、投写レンズを構成する円筒状のレンズ保持筒において、収納された複数のレンズで形成される光路の照明光軸に直交し、かつ互いに直交するX軸,Y軸上の位置に形成できる。つまり、レンズ保持筒には、X軸上の対向する位置に形成された2つの位置調整孔と、Y軸上の対向する位置に形成された2つの位置調整孔との合計4つの位置調整孔として形成できる。具体的には、レンズ保持筒を投写側から見た場合に、レンズ保持筒の上下左右位置に形成できる。なお、直交する2軸は、照明光軸を通らない軸を採用することもできる。
位置調整機構としては、レンズ保持筒に形成された一対の位置調整孔にピン部材を挿入し、このピン部材を進退させることによりレンズの位置を調整する構成を採用できる。例えば、一対の位置調整孔に挿入され互いに対向するピン部材の先端で調整対象となるレンズを保持し、一方のピン部材の進退に応じて他方のピン部材がレンズ外周部分に当接したまま退行および進行する構成にできる。なお、このようなピン部材の進退は、コンピュータ等の制御により自動で行う構成や、作業者による手動で行う構成を採用できる。
さらに、画像光を検出する手段としては、投写レンズからスクリーン等に投写された画像光を、作業者が目視で検出する手段や、スクリーンの裏面側に配置されたCCDカメラ等の撮像装置で検出し画像処理を行う手段等を採用できる。なお、画像光をスクリーン等に投写せずに、前記撮像装置により、投写レンズから投写された画像光を直接検出する構成も採用できる。
また、所定のテストパターンとしては、例えば、線状の遮光部分が所定間隔でストライプ状に縦方向または横方向に配列されたもの等を採用できる。この際、RGBの3色毎に設けることができる。
本発明では、例えば、以下の手順で投写レンズを製造できる。
(1)まず、投写レンズを構成する円筒状のレンズ保持筒には、収納された複数のレンズにより形成された光路の照明光軸に直交し互いに直交するX軸,Y軸上の位置に位置調整孔を形成しておく。つまり、レンズ保持筒には、X軸上の対向する位置に形成された2つの位置調整孔と、Y軸上の対向する位置に形成された2つの位置調整孔との合計4つの位置調整孔が形成されている。
(2)このようなレンズ保持筒に対して、調整対象となるレンズを調整可能な遊嵌状態で配置するとともに、その他のレンズを外形基準で配置して接着固定した調整前の投写レンズを構成しておく。
(3)次に、投写レンズ保持機構により、この調整前の投写レンズをレンズ調整位置に保持させる(投写レンズ保持工程)。この際、レンズ位置調整機構を構成するピン部材を各位置調整孔に挿入させて、調整対象となるレンズの外周部分の4箇所を各ピン部材の先端で保持する。
(4)この状態で、光源から調整用の光束を射出し(光束射出工程)、画像光射出機構により、この調整用光束に基づいて所定のテストパターンを含む画像光を射出して調整前投写レンズに導入し(画像光検出工程)、スクリーン等に拡大投写させる。
(5)作業者は、例えば、スクリーン上の投写画像を見ながら、X軸側のレンズ位置調整機構により、調整対象となるレンズのX軸方向に沿った方向の位置を調整する(レンズ位置調整工程)。具体的には、X軸上の一対の位置調整孔に挿入された一対のピン部材を、その先端が調整対象となるレンズの外周部分に当接した状態としておく。一方、一対のピン部材は、その一方が進行すると他方が退行し、また、一方が退行すると他方が進行するように構成しておく。例えば、このような構成とすることにより、一対のピン部材を進退させてX軸方向に沿った方向にレンズ位置を手動で調整する。同様に、Y軸側のレンズ位置調整機構により、Y軸方向に沿ったレンズの位置を手動で調整する。これにより、複数のレンズ間の光軸位置を正確に調整できる。
また、光軸位置調整作業時では、投写画像の画質を観察しながら、フレア等の発生が最も少なくなり、所定のテストパターンの画像が鮮明となる位置にレンズを調整する。
(6)このようにして位置調整されたレンズをレンズ保持筒に接着剤を用いて接着固定する(接着固定工程)。
(7)最後に、投写レンズをレンズ保持位置から移動させ、投写レンズ製造装置から取り外すことにより、投写レンズを製造する。このような作業を繰り返すことにより、投写レンズを連続的に製造する。
本発明によれば、例えば、前述した手順等で投写レンズを製造することにより、投写レンズを構成するレンズのうちの1つのレンズを、互いに直交するX軸とY軸との両方向に沿って独立して高精度に位置調整できる。従って、従来のように3方向のピン部材で調整する場合に比べて、調整したい方向を簡単に把握できる。また、調整する部材も各軸方向に対応する2つのレンズ調整機構だけでよいから、光軸位置調整作業が簡単である。この際、各軸に沿って一対の位置調整孔を形成し、これらの一対の位置調整孔には、常に、まっすぐにレンズ位置調整機構を挿入し、進退させればよく、従来に比べて、位置調整孔の開口寸法を大きくする必要もない。このため、投写レンズからの光漏れ等を防止して、適切な画像を投写できる。
また、レンズ位置調整機構を、投写レンズ側ではなくレンズ製造装置側に設けたので、投写レンズを構成する部材の点数を減少できて、投写レンズの製造コストの低減や、小型化、軽量化を図ることができる。
さらに、本発明の製造装置では、レンズ保持筒ではなく、レンズ自身を移動させているため、レンズ保持筒に固定された他のレンズがある場合に、調整用の光源に対する固定された他のレンズの光軸位置がずれてしまうことがない。そのため、他のレンズと調整対象となるレンズの光軸位置の光軸を一致させることが容易となり、レンズの光軸位置を高精度に調整することができる。
さらに、本発明の製造装置では、調整対象となるレンズをレンズ保持筒に接着固定する前に、位置調整を行っているため、レンズの位置調整によりレンズ保持筒に歪が生じることがない。従って、レンズ保持筒に歪吸収部を設ける必要がないので、レンズ保持枠の小型化、投写レンズの小型化を図ることができる。また、レンズ保持筒に歪が生じないので、歪解消のためにレンズ保持筒を加熱する必要もない。従って、レンズの材質を熱に弱いものとすることもでき、レンズの材質が制限されない。さらに、レンズ保持筒に接着固定される前にレンズの調整を行っているので、レンズの位置の微調整を行いやすく、レンズの位置を高精度に調整することができる。
以上の投写レンズ製造装置において、前記レンズ位置調整機構は、前記軸上に形成された一つの位置調整孔にそれぞれ挿入され、前記調整対象となるレンズの外周部分に当接する2つのピン部材と、これらの2つのピン部材を互いに近接する方向に付勢する付勢部と、これらの2つのピン部材のうちの一方を他方に対して進退させるとともに、この一方の進行または退行に応じて前記他方を退行または進行させる進退部とを備えることが好ましい。
このような場合では、所定の一軸上にあって対向する位置調整孔にそれぞれピン部材を挿入し、付勢部により、これらのピン部材が互いに近接する方向に付勢してレンズを保持させる。この状態で進退部を操作して、一方のピン部材を進退させることにより、2つのピン部材でレンズを保持した状態のままレンズの位置を簡単に調整できる。また、他の軸においても同様に調整できる。
また、前記付勢部は、前記各ピン部材毎に配置され、このピン部材を流体による圧力で付勢するシリンダ装置であることが好ましい。
この場合には、シリンダ装置内での空気や油脂等の流体の圧力を常に一定に設定することにより、ピン部材の位置を常に一定にできる。このため、投写レンズを交換して次の投写レンズを製造する場合でも、調整対象となるレンズを光軸合致位置近傍の位置に調整でき、後は、投写レンズ毎の偏差を微調整するだけでよいから、位置調整作業をより一層簡略化できる。
また、前記進退部は、前記一方のピン部材を他方のピン部材に対して進退させるマイクロメータヘッドであることが好ましい。
この場合には、例えば、分解能が1μmレベル等の分解能の高いマイクロメータヘッドを採用できるので、光軸位置調整をより一層高精度に実施できる。なお、このマイクロメータヘッドは、製造対象となる投写レンズの設計に応じて、適宜、異なる分解能のものに変更できる。
以上において、前記投写レンズ保持機構を、前記レンズ位置調整機構が設置された位置から製造対象となる投写レンズの給材位置まで移動させる移動機構を備えることが好ましい。
この場合には、投写レンズ位置調整機構が設置された位置と投写レンズの給材位置との間で、レンズ保持機構を移動させる移動機構により、投写レンズの調整位置と給材位置とが分離されるため、他の機構等が干渉しない位置で投写レンズを簡単にセットできる。
ここで、前記移動機構は、前記レンズ保持機構に接続された腕部の基端を中心として、前記照明光軸に直交する面内の方向に前記レンズ保持機構を回動させて、このレンズ保持機構を前記照明光軸上および照明光軸外の間で移動させる回転移動装置を備えることが好ましい。
この場合には、レンズ保持機構が腕部の基端を中心に照明光軸の上と外との間で回動するため、照明光軸外で投写レンズをセットする構成とすれば、他の機構に干渉しない位置で簡単に投写レンズをセットでき、製造作業の効率化を図ることができる。
以上において、前記レンズ保持筒には、位置調整されたレンズを接着固定する接着剤を注入するための接着剤注入孔が形成され、前記接着固定機構は、前記接着剤注入孔に注入された光硬化型接着剤を硬化させる光線照射部を備えることが好ましい。
ここで、接着剤注入孔への接着剤の注入は、作業者が手作業で行ってもよく、また、投写レンズ製造装置の接着固定機構を前記接着剤注入孔に光硬化型接着剤を注入する接着剤注入部を備えるものとし、自動で光硬化型接着剤の注入を行ってもよい。
この場合、接着固定機構は、投写レンズに形成された接着剤注入孔に挿入される挿入部、例えば、紫外線硬化型接着剤注入用チューブを備え、この紫外線硬化型接着剤注入用チューブを介して、接着剤注入部から接着剤を注入するとともに、光線照射部から紫外線等の光線を照射する構成を採用できる。この際、前記ピン部材と紫外線硬化型接着剤注入用チューブとを略平行に配置して、これらの部材を一体化させた構成も採用でき、これに応じて、レンズ保持筒における接着剤注入孔の位置も適宜変更して形成すればよい。
このような場合には、レンズ位置調整機構によりレンズ位置を調整した状態で、接着剤注入孔を介して、接着剤注入部から光線硬化型接着剤を注入した後に、光線照射部から光線を照射することにより、レンズ保持筒にレンズを接着固定できる。このようにレンズ位置を固定したまま接着固定するので、接着固定時に発生する不良を最小限にできる。
また、前記投写レンズ製造装置において、前記光源と、配置された投写レンズとの間の光路には、前記光源からの光束が前記投写レンズに導入されないように遮光する遮光機構を備えることが好ましい。
ここで、遮光機構としては、光源と投写レンズとの間の光路に、光源光遮蔽用の板状部材等を挿入する構成を採用できる。
この場合には、光線照射部から光線を照射して光線硬化型接着剤硬化させる際に、光源からの光束が混入することにより、光線硬化型接着剤が誤って硬化することを防止できる。
以上の投写レンズ製造装置において、前記投写レンズの光路後段には、この投写レンズを介して投写された画像光を投影するスクリーンが配置されていることが好ましい。
この場合には、スクリーンに拡大して投写された画像を観察しながら、投写レンズの位置調整を行うことができるため、より一層正確に光軸位置調整を行うことができる。
以上の投写レンズ製造装置において、前記光源から前記投写レンズに至る光路は、略鉛直方向に沿った方向に形成されていることが好ましい。
この場合には、光路が鉛直方向となることから、投写レンズを構成する複数のレンズが水平方向に並設された状態となり、調整対象となるレンズの調整方向は、水平方向となる。従って、例えば、ピン部材に対して前述した挿入部(例えば紫外線硬化型接着剤注入用チューブ等)を水平方向に並べた構成を採用した場合でも、挿入部の先端に残った接着剤が鉛直方向に流れるため、ピン部材の先端に接着剤が付着することを防止でき、投写レンズを効率的に製造できる。
ここで、前記投写レンズ製造装置において、前記投写レンズの光路後段には、この投写レンズから射出された画像光の光路を曲折して反射する反射部材と、この反射された画像光を投影するスクリーンとを備えることが好ましい。
例えば、反射部材は、投写レンズから射出された画像光を略直角に反射する構成にできる。
このように投写レンズから射出された画像光を、反射部材で直角に反射してスクリーンに投写する場合には、製造装置の本体部分の光路方向と、スクリーン面とが平行に配置される。このため、製造装置の本体部分からスクリーンまでの光路を鉛直方向に沿った一直線状として構成する場合に比べて、スクリーン以外の製造装置の本体部分の寸法を小さくできる。
本発明に係る投写レンズの製造方法は、内部に所定の光路が設定されたレンズ保持筒と、この光路の照明光軸上に順次配置される複数のレンズとを備える投写レンズを製造する投写レンズの製造方法であって、前記レンズ保持筒には、前記複数のレンズのうちのいずれかのレンズの位置を、照明光軸に直交する面内で互いに直交する2つの軸に沿った方向に調整するために、前記各軸上にそれぞれ一対の位置調整孔が形成され、製造対象となる投写レンズを、前記照明光軸上で調整対象となるレンズの位置を調整する位置であるレンズ調整位置に保持する投写レンズ保持工程と、調整用の光束を光源から射出する光束射出工程と、前記光源から射出された光束に基づいて、所定のテストパターンを含む画像光を形成し、前記照明光軸上に配置された投写レンズに導入する画像光射出工程と、この画像光が導入された投写レンズから投写された画像光を検出しながら、調整対象となる前記レンズの位置を、前記位置調整孔を介して前記2つの軸に沿った方向にそれぞれ調整する2つのレンズ位置調整工程と、この位置調整されたレンズを前記レンズ保持筒に接着固定する接着固定工程とを備えることを特徴とする。
このような本発明によれば、前述した製造方法の手順と同様にして製造できるため、前述した投写レンズの製造装置と略同様の作用効果を奏することができ、本発明の目的を達成できる。つまり、投写レンズを構成するレンズのうちの1つのレンズを、互いに直交する2つの軸の両方向に沿って独立して高精度に位置調整できる。従って、従来に比べて、調整したい方向を簡単に把握できるため、光軸位置調整作業が簡単である。また、例えば、レンズの位置を調整するピン部材を製造装置側に設けて、投写レンズ側に設けない構成とすることにより、投写レンズを構成する部材の点数を減少できて、投写レンズの製造コストの低減や、小型化、軽量化を図ることができる。
さらに、本発明の製造方法では、レンズ保持筒ではなく、レンズを移動させているため、レンズ保持枠に固定された他のレンズがある場合に、調整用の光源に対する固定された他のレンズの光軸がずれてしまうことがない。そのため、他のレンズと調整対象となるレンズの光軸位置の光軸を一致させることが容易となり、レンズの光軸位置を高精度に調整することができる。
さらに、調整対象となるレンズを位置調整した後にレンズ保持筒に固定しているため、レンズの位置調整によりレンズ保持筒に歪が生じることがない。従って、レンズ保持筒に歪吸収部を設ける必要がないので、レンズ保持枠の小型化、投写レンズの小型化を図ることができる。また、レンズ保持筒に歪が生じないので、歪解消のためにレンズ保持筒を加熱する必要もない。従って、レンズの材質を熱に弱いものとすることもでき、レンズの材質が制限されない。さらに、レンズ保持筒に接着固定される前に、レンズの調整を行っているので、レンズの位置の微調整を容易に行うことができ、レンズの位置を高精度に調整することができる。
本発明に係る投写レンズは、前記投写レンズの製造方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、前述した投写レンズ製造装置または製造方法と略同様の作用効果を奏することができる。従って、高精度に光軸位置調整できて高品質の画像を投写でき、かつ製造コストを低減できる投写レンズを提供できる。
さらに、本発明に係るプロジェクタは、前記投写レンズを備えることを特徴とする。本発明によれば、前述した投写レンズと同様の作用効果を奏することができる。従って、製造コストを低減できた上で、高品質の画像を投写できる。
図1は、本発明の実施形態に係るプロジェクタを上方前面側から見た斜視図である。
図2は、前記プロジェクタを下方背面側から見た斜視図である。
図3は、前記プロジェクタの内部を示す斜視図であり、具体的には、図1の状態からアッパーケースを外した図である。
図4は、前記プロジェクタの内部を示す斜視図であり、具体的には、図3の状態から制御基板を外した図である。
図5は、前記プロジェクタを構成する光学ユニットを示す分解斜視図である。
図6は、前記光学ユニットを模式的に示す図である。
図7は、前記光学ユニットを構成する投写レンズを前方(投写)側から見た斜視図である。
図8は、前記投写レンズを示す分解斜視図である。
図9は、前記投写レンズを示す縦断面図である。
図10は、前記投写レンズを後方側から見た斜視図である。
図11は、前記投写レンズを製造する投写レンズ製造装置を側面から見た図である。
図12は、前記投写レンズ製造装置を構成する装置本体を側面側から見た図である。
図13は、前記装置本体を背面側から見た図である。
図14は、前記装置本体を構成する検査シートを示す側面図である。
図15は、前記検査シートを示す正面図である。
図16は、前記検査シートの一部を拡大して示す正面図である。
図17は、前記投写レンズ製造装置を構成するレンズ位置調整機構および接着固定機構の一部を拡大して示す平面図である。
図18は、前記投写レンズの製造手順を示すフローチャートである。
図19(A)及び図19(B)は、前記投写レンズの3群レンズがピン部材により保持された状態を示す模式図である。
図20は、本発明の第2実施形態にかかる投写レンズ製造装置を側面から見た図である。
図21(A)は、前記投写レンズのレンズ保持筒の注入孔に接着剤が注入された状態を示す模式図である。図21(B)は、前記注入孔に注入された接着剤を硬化させる状態を示す模式図である。
1.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.プロジェクタの主な構成〕
図1は、本発明に係るプロジェクタ1を上方前面側から見た斜視図である。図2は、プロジェクタ1を下方背面側から見た斜視図である。
図1または図2に示すように、プロジェクタ1は、射出成形によって成形された略直方体状の外装ケース2を備える。この外装ケース2は、プロジェクタ1の本体部分を収納する合成樹脂製の筐体であり、アッパーケース21と、ロアーケース22とを備え、これらのケース21,22は、互いに着脱自在に構成されている。
アッパーケース21は、図1,2に示すように、プロジェクタ1の上面、側面、前面、および背面をそれぞれ構成する上面部21A、側面部21B、前面部21Cおよび背面部21Dを含んで構成される。
同様に、ロアーケース22も、図1,2に示すように、プロジェクタ1の下面、側面、前面、および背面をそれぞれ構成する下面部22A、側面部22B、前面部22C、および背面部22Dを含んで構成される。
従って、図1,2に示すように、直方体状の外装ケース2において、アッパーケース21およびロアーケース22の側面部21B,22B同士が連続的に接続されて直方体の側面部分210が構成され、同様に、前面部21C,22C同士の接続で前面部分220が、背面部21D,22D同士の接続で背面部分230が、上面部21Aにより上面部分240が、下面部22Aにより下面部分250がそれぞれ構成される。
図1に示すように、上面部分240において、その前方側には操作パネル23が設けられ、この操作パネル23の近傍には音声出力用のスピーカ孔240Aが形成されている。
前方から見て右側の側面部分210には、2つの側面部21B,22Bを跨る開口211が形成されている。ここで、外装ケース2内には、後述するメイン基板51と、インターフェース基板52とが設けられており、この開口211に取りつけられるインターフェースパネル53を介して、メイン基板51に実装された接続部51Bと、インターフェース基板52に実装された接続部52Aとが外部に露出している。これらの接続部51B,52Aにおいて、プロジェクタ1には外部の電子機器等が接続される。
前面部分220において、前方から見て右側で、前記操作パネル23の近傍には、2つの前面部21C,22Cを跨ぐ円形状の開口221が形成されている。この開口221に対応するように、外装ケース2内部には、投写レンズ46が配置されている。この際、開口221から投写レンズ46の先端部分が外部に露出しており、この露出部分の一部であるレバー46Aを介して、投写レンズ46のフォーカス操作が手動で行えるようになっている。
前面部分220において、前記開口221の反対側の位置には、排気口222が形成されている。この排気口222には、安全カバー222Aが形成されている。
図2に示すように、背面部分230において、背面から見た右側には矩形状の開口231が形成され、この開口231からインレットコネクタ24が露出するようになっている。
下面部分250において、下方から見て右端側の中央位置には矩形状の開口251が形成されている。開口251には、この開口251を覆うランプカバー25が着脱自在に設けられている。このランプカバー25を取り外すことにより、図示しない光源ランプの交換が容易に行えるようになっている。
また、下面部分250において、下方から見て左側で背面側の隅部には、一段内側に凹んだ矩形面252が形成されている。この矩形面252には、外部から冷却空気を吸入するための吸気口252Aが形成されている。矩形面252には、この矩形面252を覆う吸気口カバー26が着脱自在に設けられている。吸気口カバー26には、吸気口252Aに対応する開口26Aが形成されている。開口26Aには、図示しないエアフィルタが設けられており、内部への塵埃の侵入が防止されている。
さらに、下面部分250において、後方側の略中央位置にはプロジェクタ1の脚部を構成する後脚2Rが形成されている。また、下面部22Aにおける前方側の左右の隅部には、同じくプロジェクタ1の脚部を構成する前脚2Fがそれぞれ設けられている。つまり、プロジェクタ1は、後脚2Rおよび2つ前脚2Fにより3点で支持されている。
2つの前脚2Fは、それぞれ上下方向に進退可能に構成されており、プロジェクタ1の前後方向および左右方向の傾き(姿勢)を調整して、投写画像の位置調整ができるようになっている。
また、図1,2に示すように、下面部分250と前面部分220とを跨るように、外装ケース2における前方側の略中央位置には、直方体状の凹部253が形成されている。この凹部253には、該凹部253の下側および前側を覆う前後方向にスライド自在なカバー部材27が設けられている。このカバー部材27により、凹部253には、プロジェクタ1の遠隔操作を行うための図示しないリモートコントローラ(リモコン)が収納される。
ここで、図3,4は、プロジェクタ1の内部を示す斜視図である。具体的には、図3は、図1の状態からプロジェクタ1のアッパーケース21を外した図である。図4は、図3の状態から制御基板5を外した図である。
外装ケース2には、図3,4に示すように、背面部分に沿って配置され、左右方向に延びる電源ユニット3と、この電源ユニット3の前側に配置された平面視略L字状で光学系としての光学ユニット4と、これらのユニット3,4の上方および右側に配置される制御部としての制御基板5とを備える。これらの各装置3〜5によりプロジェクタ1の本体が構成されている。
電源ユニット3は、電源31と、この電源31の下方に配置された図示しないランプ駆動回路(バラスト)とを含んで構成される。
電源31は、前記インレットコネクタに接続された図示しない電源ケーブルを通して外部から供給された電力を、前記ランプ駆動回路や制御基板5等に供給するものである。
前記ランプ駆動回路は、光学ユニット4を構成する図3,4では図示しない光源ランプに、電源31から供給された電力を供給するものであり、前記光源ランプと電気的に接続されている。このようなランプ駆動回路は、例えば、基板に配線することにより構成できる。
電源31および前記ランプ駆動回路は、略平行に上下に並んで配置されており、これらの占有空間は、プロジェクタ1の背面側で左右方向に延びている。
また、電源31および前記ランプ駆動回路は、左右側が開口されたアルミニウム等の金属製のシールド部材31Aによって周囲を覆われている。
シールド部材31Aは、冷却空気を誘導するダクトとしての機能に加えて、電源31や前記ランプ駆動回路で発生する電磁ノイズが、外部へ漏れないようにする機能も有している。
制御基板5は、図3に示すように、ユニット3,4の上側を覆うように配置されCPUや接続部51B等を含むメイン基板51と、このメイン基板51の下側に配置され接続部52Aを含むインターフェース基板52とを備える。
この制御基板5では、接続部51B,52Aを介して入力された画像情報に応じて、メイン基板51のCPU等が、後述する光学装置を構成する液晶パネルの制御を行う。
メイン基板51は、金属製のシールド部材51Aによって周囲を覆われている。メイン基板51は、図3ではわかり難いが、光学ユニット4を構成する上ライトガイド472の上端部分472A(図4)に当接している。
〔2.光学ユニットの詳細な構成〕
ここで、図5は、光学ユニット4を示す分解斜視図である。図6は、光学ユニット4を模式的に示す図である。
光学ユニット4は、図6に示すように、光源装置411を構成する光源ランプ416から射出された光束を光学的に処理して画像情報に対応した光学像を形成し、この光学像を拡大して投射するユニットであり、インテグレータ照明光学系41と、色分離光学系42と、リレー光学系43と、光学装置44と、投写レンズ46と、これらの光学部品41〜44,46を収納する合成樹脂製のライトガイド47(図5)とを備える。
インテグレータ照明光学系41は、光学装置44を構成する3枚の液晶パネル441(赤、緑、青の色光毎にそれぞれ液晶パネル441R,441G,441Bとする)の画像形成領域をほぼ均一に照明するための光学系であり、光源装置411と、第1レンズアレイ412と、第2レンズアレイ413と、偏光変換素子414と、重畳レンズ415とを備える。
光源装置411は、放射光源としての光源ランプ416と、リフレクタ417とを備え、光源ランプ416から射出された放射状の光線をリフレクタ417で反射して平行光線とし、この平行光線を外部へと射出する。光源ランプ416には、高圧水銀ランプを採用している。なお、高圧水銀ランプ以外に、メタルハライドランプやハロゲンランプ等も採用できる。また、リフレクタ417には、放物面鏡を採用している。なお、放物面鏡の代わりに、平行化凹レンズおよび楕円面鏡を組み合わせたものを採用してもよい。
第1レンズアレイ412は、光軸方向から見てほぼ矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。各小レンズは、光源ランプ416から射出される光束を、複数の部分光束に分割している。各小レンズの輪郭形状は、液晶パネル441の画像形成領域の形状とほぼ相似形をなすように設定されている。たとえば、液晶パネル441の画像形成領域のアスペクト比(横と縦の寸法の比率)が4:3であるならば、各小レンズのアスペクト比も4:3に設定する。
第2レンズアレイ413は、第1レンズアレイ412と略同様な構成を有しており、小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ413は、重畳レンズ415とともに、第1レンズアレイ412の各小レンズの像を液晶パネル441上に結像させる機能を有する。
偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413と重畳レンズ415との間に配置される。このような偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413からの光を1種類の偏光光に変換するものであり、これにより、光学装置44での光の利用効率が高められている。
具体的に、偏光変換素子414によって1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ415によって最終的に光学装置44の液晶パネル441上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネル441を用いたプロジェクタ1では、1種類の偏光光しか利用できないため、他種類のランダムな偏光光を発する光源ランプ416からの光束の略半分が利用されない。このため、偏光変換素子414を用いることにより、光源ランプ416から射出された光束を全て1種類の偏光光に変換し、光学装置44での光の利用効率を高めている。なお、このような偏光変換素子414は、たとえば特開平8−304739号公報に紹介されている。
色分離光学系42は、2枚のダイクロイックミラー421,422と、反射ミラー423とを備え、ダイクロイックミラー421、422によりインテグレータ照明光学系41から射出された複数の部分光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する機能を有している。
リレー光学系43は、入射側レンズ431と、リレーレンズ433と、反射ミラー432、434とを備え、色分離光学系42で分離された色光である赤色光を液晶パネル441Rまで導く機能を有している。
この際、色分離光学系42のダイクロイックミラー421では、インテグレータ照明光学系41から射出された光束のうち、赤色光成分と緑色光成分とは透過し、青色光成分は反射する。ダイクロイックミラー421によって反射した青色光は、反射ミラー423で反射し、フィールドレンズ418を通って、青色用の液晶パネル441Bに到達する。このフィールドレンズ418は、第2レンズアレイ413から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の液晶パネル441G、441Bの光入射側に設けられたフィールドレンズ418も同様である。
また、ダイクロイックミラー421を透過した赤色光と緑色光のうちで、緑色光は、ダイクロイックミラー422によって反射し、フィールドレンズ418を通って、緑色用の液晶パネル441Gに到達する。一方、赤色光は、ダイクロイックミラー422を透過してリレー光学系43を通り、さらにフィールドレンズ418を通って、赤色光用の液晶パネル441Rに到達する。
なお、赤色光にリレー光学系43が用いられているのは、赤色光の光路の長さが他の色光の光路長さよりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ431に入射した部分光束をそのまま、フィールドレンズ418に伝えるためである。なお、リレー光学系43には、3つの色光のうちの赤色光を通す構成としたが、これに限らず、例えば、青色光を通す構成としてもよい。
光学装置44は、入射された光束を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、色分離光学系42で分離された各色光が入射される3つの入射側偏光板442と、各入射側偏光板442の後段に配置される光変調装置としての液晶パネル441R,441G,441Bと、各液晶パネル441R,441G,441Bの後段に配置される射出側偏光板443と、色合成光学系としてのクロスダイクロイックプリズム444とを備える。
液晶パネル441R,441G,441Bは、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として用いたものである。
光学装置44において、色分離光学系42で分離された各色光は、これら3枚の液晶パネル441R,441G,441B、入射側偏光板442、および射出側偏光板443によって画像情報に応じて変調されて光学像を形成する。
入射側偏光板442は、色分離光学系42で分離された各色光のうち、一定方向の偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものであり、サファイアガラス等の基板に偏光膜が貼付されたものである。また、基板を用いずに、偏光膜をフィールドレンズ418に貼り付けてもよい。
射出側偏光板443も、入射側偏光板442と略同様に構成され、液晶パネル441(441R,441G,441B)から射出された光束のうち、所定方向の偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。また、基板を用いずに、偏光膜をクロスダイクロイックプリズム444に貼り付けてもよい。
これらの入射側偏光板442および射出側偏光板443は、互いの偏光軸の方向が直交するように設定されている。
クロスダイクロイックプリズム444は、射出側偏光板443から射出され、各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成するものである。
クロスダイクロイックプリズム444には、赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に沿って略X字状に設けられ、これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成される。
投写レンズ46は、光学装置44のクロスダイクロイックプリズム444で合成されたカラー画像を拡大して投写するものである。
ライトガイド47は、図5に示すように、各光学部品412〜415,418,421〜423,431〜434,442を上方からスライド式に嵌め込む溝部が形成された下ライトガイド471と、下ライトガイド471の上側開口を閉塞する蓋状の上ライトガイド472とを備えて構成される。
図5に示すように、平面視略L字状の下ライトガイド471の一端側には、光源装置411が収容されている。他端側には、下ライトガイド471に形成されたヘッド部473を介して、投写レンズ46がねじ止め固定されている。なお、投写レンズ46の詳細については後述する。
また、図5に示すように、下ライトガイド471に収納された光学装置本体45は、2つのばね部材50を挟んだ状態で下ライトガイド471にねじ止め固定される。この2つのばね部材50は、フィールドレンズ418および入射側偏光板442を下方へと付勢して位置を特定する。
〔3.投写レンズの構成〕
図7は、投写レンズ46を前方側(投写側)から見た斜視図である。図8は、投写レンズ46を示す分解斜視図である。図9は、投写レンズ46を示す縦断面図である。図10は、投写レンズ46を後方側から見た斜視図である。
投写レンズ46は、図6で示したように、光学装置本体45のクロスダイクロイックプリズム444で合成されたカラー画像を拡大して投写するものである。
投写レンズ46は、図7に示すように、内部に所定の光路が設定された樹脂製等の鏡筒100と、この鏡筒100内の光路の照明光軸上に順次配置される複数のレンズとしてのレンズ群110とを備える。
レンズ群110は、図8および図9に示すように、投写側(図中の右側)から順に、1群レンズ111、2群レンズ112、3群レンズ113、および4群レンズ114の合計4つのレンズの群として構成されている。
1群レンズ111は、あおり方向に拡大投写するための凹レンズであり、非球面レンズとして形成されている。2群レンズ112は、光束を調整する凸レンズである。3群レンズ113は、凹レンズ113Aに対して、この凹レンズ113Aよりも小さな寸法を有し入射側が非球面レンズとされた凸レンズ113Bが貼り合わされたバルサムレンズである。4群レンズ114は、画像光をのみこむ凸レンズであり、球面レンズとして形成されている。
前記クロスダイクロイックプリズムから射出された画像光は、球面レンズとされた4群レンズ114に入射した後に、バルサムレンズである3群レンズ113で色収差の補正がなされ、2群レンズ112で光量調整されてから、非球面レンズである1群レンズ111で歪曲補正をしながら外部へと拡大投写される。
鏡筒100は、図8および図9に示すように、前記下ライトガイドの一端側に固定されるレンズ保持筒としての鏡筒本体101と、この鏡筒本体101の投写側(図中右側)に取りつけられた前枠102と、鏡筒本体101における投写側とは反対側(図中左側)に取りつけられた後枠103とを備えている。
鏡筒本体101は、調整対象となる3群レンズ113を所定位置に調整して収納する合成樹脂製の部材であり、下ライトガイド471(図4)の一端部分である取り付け面にねじ止めされる平板状のつば部121と、このつば部121の投写側に形成された円筒状の姿勢調整部122と、接続部123を介して、この姿勢調整部122の投写側に形成され姿勢調整部122の径寸法よりも大きな径寸法を有する円筒状の取付部124とを備える。
つば部121は、前記下ライトガイドの取り付け面に取りつけられて、この下ライトガイドと投写レンズ46との接続用の矩形状で板状の部材である。
つば部121は、図9に示すように、中央部分に略円形の開口125Aが形成された矩形板状のつば部本体125と、開口125Aの外周外側で、つば部本体125の図中左側面から筒状に突出して形成された突出部126とを備える。
板状のつば部本体125に形成された開口125Aは、投写するための画像光を通すために、図中左右側の面を貫通して形成されている。
板状のつば部121の四隅部分には、図8に示すように、前記下ライトガイドに取り付け用のねじ挿通孔125Bが形成されている。
図9に示すように、円筒状の突出部126において、その円筒の内側部分は凹部126Aとされ、また、突出部126の図中左側の面126Lには、図示を一部省略するが、互いに略均等となる3個所にビス孔126Bが形成されている。
姿勢調整部122は、図8,9に示すように、つば部本体125に形成された開口125Aを囲む円筒状に形成され、3群レンズ113のうちの主に凹レンズ113Aを遊嵌状態で収納するものである。
姿勢調整部122において、図示を一部省略するが、その円筒の外周部分には、均等間隔となる図中の上下左右の4箇所に円形状の位置調整孔122Aが形成されている。つまり、4つの位置調整孔122Aのうち、円筒の中心を挟んだ図中の上下の対称位置には2つの位置調整孔122AVが、円筒の中心を挟んだ図中の左右の対称位置には2つの位置調整孔122AHが形成されている。これらの2つの位置調整孔122AVを繋ぐ直線と、2つの位置調整孔122AHを繋ぐ直線とは、互いに略直交する関係にある。
また、姿勢調整部122において、各位置調整孔122A(122AV,122AH)を挟んだ両側の均等位置には、流動状態の接着剤、例えば、紫外線硬化型接着剤等を注入するための接着剤注入孔122Bがそれぞれ形成されている。
以上より、姿勢調整部122は、図中の上下左右の均等位置に形成された4つの位置調整孔122Aと、これらの隣接する位置調整孔122Aの間に2つずつ合計8つの接着剤注入孔122Bとを含んで構成されることになる。
接続部123は、姿勢調整部122と取付部124との間を接続する円筒状の部材であり、姿勢調整部122および取付部124の径寸法よりも小さな寸法で形成されている。
図9に示すように、接続部123の図中右側には、2群レンズ112がはめ込まれるレンズ保持爪123Aが形成されている。レンズ保持爪123A内には、2群レンズ112が熱かしめにより取りつけられている。このレンズ保持爪123Aは、2群レンズ112の外形を基準に、2群レンズ112の芯位置が正確に光軸Z上の位置となるように形成されている。
また、接続部123の外周には、前記位置調整孔122Aに対応する位置に、姿勢調整部122と取付部124との接続を補強するリブ123Bが形成されている。
取付部124は、接続部123の図中右側から外周側へ張り出した円筒状として形成され、図中右側で前枠102を保持する部材である。図9に示すように、取付部124には、その内周面に沿ってめねじ124Aが形成されている。
また、取付部124の図中下部側には、ビス挿通孔124Bが形成されている。このビス挿通孔124Bには、その先端が取付部124の内部側に突出するように、取付部124の外部側からビス124Cが挿通されている。このビス124Cにより、前枠102の不必要な回転が防止されている。
前枠102は、円筒状の枠部材であり、レンズ保持枠102Aと、取付部124に取りつけられる接続部102Bとを備える。なお、図8,9では図示を省略したが、図4に示すように、接続部102Bの外周を覆うように、レバー46Aが形成された化粧用カバーが設けられる。
レンズ保持枠102Aは、1群レンズ111がはめ込まれる枠状の部分であり、このはめ込まれた1群レンズ111は、レンズ保持枠102Aに熱かしめにより固定される。このレンズ保持枠102Aは、1群レンズ111の外形を基準に、1群レンズ111の芯位置が正確に光軸Z上の位置となるように形成されている。
接続部102Bは、取付部124の内側に挿入される。接続部102Bの外周には、前記めねじ124Aに螺合するおねじ103Cが形成されている。これらのめねじ124Aとおねじ103Cとが螺合することにより、前枠102は、取付部124に対して光軸Zに沿った方向に進退する。これにより、投写画像のフォーカス調整が行えるようになっている。
図8,9に示すように、後枠103は、中央部分に略円形の開口131Aが形成された円板状の後枠本体131と、開口131Aの外周から図中右側へ筒状に突出した突出部132と、開口131Aの外周から図中左側に形成されレンズ保持爪133とを備える。
後枠本体131は、つば部本体125の突出部126の左側面126Lと接続される部分である。後枠本体131において、図中の右側面131Rの略均等間隔の3箇所の位置には、円周方向に沿って図中右側へ突出する調整部134が形成されている。
これらの調整部134は、傾斜方向が揃ったなだらかな傾斜面として、それぞれ形成されている。このため、後枠本体131は、自身が光軸Zを中心に回転することにより、つば部121に対して、傾斜による突出分だけ光軸Zに沿った方向に進退してフォーカス調整可能となっている。
また、調整部134には、この調整部134の形状に沿って左右方向に貫通するルーズ孔134Aが形成されており、このルーズ孔134Aは、後枠本体131も貫通している。つまり、後枠103を左右方向に貫通する孔である。このルーズ孔134Aを介して3つのビス135が挿通され、つば部121のビス孔126Bに接続される。
突出部132は、同心円状のスペーサ104を介して、つば部121の凹部126Aに挿入されて、3群レンズ113を図中右側へ付勢して保持する部材である。スペーサ104は、3群レンズ113の凹レンズ113Aの外周左側面部分のみに当接しており、スペーサ104の内側開口には、3群レンズ113の凸レンズ113Bが位置している。
レンズ保持爪133は、図10にも示すように、4群レンズ114がはめ込まれる枠状の部分であり、はめ込まれた4群レンズ114は、熱かしめにより固定される。このレンズ保持爪133は、4群レンズ114の外形を基準に、4群レンズ114の芯位置が正確に光軸Z上の位置となるように形成されている。
〔4.投写レンズ製造装置の構成〕
次に、投写レンズ46を製造する投写レンズ製造装置について説明する。
図11は、投写レンズ製造装置500を側面から見た図である。
投写レンズ製造装置500は、プロジェクタ1に用いられる投写レンズ46を製造するための装置であり、図11に示すように、装置本体501と、この装置本体501から射出された画像を投影するスクリーン502とを備える。
図12は、装置本体501を側面側から見た図である。図13は、装置本体501を背面側から見た図である。なお、図12,13に示すように、投写レンズ46の光軸Zに対して直交し、かつ互いに直交するXY座標を設定する。X軸およびY軸は、後述するが対向するピン部材が進退する方向上の軸である。
装置本体501は、図12,13に示すように、投写レンズ46の製造を主として行う部分であり、上下2段511,512に形成された装置台510と、この装置台510の上段511の上面511A側に配置された投写部520と、装置台510の下段512の上面512Aに配置された移動機構540と、この移動機構540に接続された投写レンズ保持機構550と、装置台510の下段512の上面512Aに配置された反射部材である反射ミラー560と、装置台510の上段511の下面511B側に配置されたレンズ位置調整機構570と、一部図示を省略した接着固定機構580とを備える。
装置台510は、図12に示すように、床や机等に配置され前述した各部品520,540,560,570を支持する部材であり、上段511および下段512の2段として構成されている。
上段511には、光源装置521から射出された光束を通す開口511Xが形成されている。開口511Xの周囲には、投写部520の一部を保持するための支持面511Yが形成されている。
下段512の下面512B側には、図示を一部省略するが4つの脚部513が設けられている。4つの脚部513は、床等に当接され装置本体501を4点で支持している。
投写部520は、所定のテストパターンを含む画像光を投写レンズ46に導入する装置であり、光源装置521と、第1レンズアレイ522と、第2レンズアレイ523と、偏光変換素子524と、重畳レンズ525と、検査シート526と、ダミープリズム527と、遮光装置528と、これらの部品521〜528を収納する筐体529と、この筐体529の側面部分に設置される複数のファン530とを備える。
光源装置521は、検査用の基準光束を射出する部分であり、図示を省略するが、光源ランプと、放物面リフレクタとを備える。前記放物面リフレクタは、その凹面が回転放物面形状となっており、前記光源ランプは、回転放物面形状の凹面の焦点位置近傍に配置されている。この構成により、前記光源ランプから射出され前記放物面リフレクタで反射された光束光は、略平行な光線束となって光源装置521から射出される。
第1レンズアレイ522は、プロジェクタ1を構成する第1レンズアレイ412と同様のものである。また、第2レンズアレイ523は、前記第2レンズアレイ413と同様のものである。さらに、偏光変換素子524は、前記偏光変換素子414と、重畳レンズ525は、前記重畳レンズ415と同様のものである。各部品522〜525は、前記各部品412〜415と同様の機能を有している。
ここで、図14は、検査シート526を示す側面図である。また、図15は、検査シート526を示す正面図である。さらに、図16は、検査シート526の一部を拡大して示す正面図である。
検査シート526は、光源装置521から射出された光束を導入して、解像度測定、色収差測定等を行うためのテストパターン画像を形成して、投写レンズ46に導入する画像光射出部として機能する。
検査シート526は、図14に示すように、透光性があり所定厚み寸法(例えば、1.1mm)で形成された石英ガラス製の基材の正面に、画像領域(テストパターン)TPが形成されたものであり、基材の縦横が所定寸法(例えば、13.0mm×16.0mm)とされ、その内部には縦横が所定寸法(例えば、8.4mm×11.2mm)の矩形状の画像領域(テストパターン)TPが形成されている。
テストパターンTPは、図15に示すように、9箇所に分割された9つの測定領域Aを備え、各測定領域Aには、解像度測定用テストパターンTP1と、フレア測定用テストパターンTP2と、色収差測定用テストパターンTP3と、フォーカス調整用テストパターンTP4と、該テストパターンTPの外周部分として形成され、歪曲収差測定用テストパターンTP5とのうちの全部または一部が縦方向または横方向として形成されている。
解像度測定用テストパターンTP1は、図16に示すように、遮光領域TPVが水平方向にストライプ状に配列されたパターンTP11と、遮光領域TPHが垂直方向にストライプ状に配列されたパターンTP12とを備える。
これらのパターンTP11,TP12の上下側には、数字TPNが形成されている。この数字TPNは、上下のいずれかに形成されたパターンTP11,TP12の空間周波数を表している。例えば、「30」の下方に配置された2つのパターンTP11、TP12は、空間周波数が30本/mmのパターンである。このパターンTP11,TP12を含む画像光をスクリーンに投影し、目視により判別可能な空間周波数を検出して、投写レンズ46の解像度を測定する。
また、これらのパターンTP11,TP12の図中右側には、透光領域である径が異なる5種類の円形小孔パターンSが形成され、自動検査を行う場合には、各小孔Sの孔径と透過した光の画像面積との差からフレア量を特定できる。
フレア測定用テストパターンTP2は、所定寸法で矩形状の遮光領域として構成され、この遮光領域には、大きさが異なる2種類の矩形状の透光領域P,Qの組みTP21〜TP24が4組形成されている。
図16において、透光領域P,Qの組みTP21〜TP24には、上から順番に、青色フィルタ,緑色フィルタ、赤色フィルタが設けられ、最下段の組みTP24には、色フィルタは設けられていない。このため、検査シート526を透過した画像光は、透光領域P,Qに対応する形状で、青色光,緑色光、赤色光,白色光の画像光としてスクリーン502上に投影される。スクリーン502に投影された矩形画像光の輪郭部分の鮮明さ(ぼけ具合)により、フレアを測定する。
色収差測定用テストパターンTP3は、矩形状の遮光領域として構成され、この遮光領域には、3つの矩形領域T1〜T3を含む略縦長矩形状の透光領域Tが6個形成されている。各透光領域Tは、その中央部分に段差が形成された構成となっている。これらの6個の透光領域T間の相違点は、前記段差の寸法、つまり、矩形領域T2の幅寸法(図中の左右方向の寸法)が段階的に変化していることである。また、図16において、矩形領域T1〜T3には、上から順番に赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタの各色フィルタが設けられている。
このため、検査シート526を透過した画像光は、略縦長矩形状で赤、緑、青の矩形領域T1〜T3に対応する画像光としてスクリーンに投影され、緑色領域を基準として、赤色領域と青色領域と間の段差の鮮明さ(ぼけ具合)により、色収差を測定する。
フォーカス調整用テストパターンTP4は、前記スクリーンに投影される画像光のフォーカス状態を調整する調整用のテストパターンであり、テストパターンTPの四隅部分に設けられている。
図12に戻って、ダミープリズム527は、前記プロジェクタ1のクロスダイクロイックプリズム444に対応する形状とされ、クロスダイクロイックプリズム444を模したガラス製のブロックである。ダミープリズム527の入射端面側には、固定板527Aが取りつけられている。固定板527Aは、装置台510の上段511の支持面511Yによって支持されている。固定板527Aに取りつけられたダミープリズム527は、上段511の開口511Xに収まっている。
図12に示すように、遮光装置528は、重畳レンズ525から射出された光束に応じた開口531Aが形成され、かつ筐体529に固定された基部531と、この基部531に対して、X軸に平行な軸を中心として回動し、開口531Aを覆う遮光板532とを備えて構成される。遮光装置528は、遮光板532を回動させて、重畳レンズ525から射出された光束の遮断と通過とを行っている。
筐体529は、内部の光束が漏れるのを防止する遮光用の筐体であり、装置台510の上段511の上面511Aに固定され、内部には、各部品521〜526を光路上にそれぞれ保持する保持部533が設けられている。これらの保持部533には、光束を通過させるための開口が形成されている。
複数のファン530は、図13に示すように、筐体529の図中左側の側面部分に鉛直方向に並設された3つの軸流ファン530A〜530Cと、図中正面の中央下部分に設置された軸流ファン530Dとを備えている。これらのファン530A〜530Dにより、筐体529内の過熱を防止している。
投写部520には、略鉛直方向に沿った方向に一直線状とされた光路が設定されている。また、投写部520は、プロジェクタ1において投写レンズ46が使用された場合と略同様の光束を投写レンズ46に入射するように構成されている。このため、プロジェクタに投写レンズを使用する場合と同様の環境下で投写レンズ46を製造でき、より使用時の条件に合った適切な投写レンズ46を製造できる。
移動機構540は、投写レンズ保持機構550を、レンズ位置調整機構570側の位置と、製造対象となる投写レンズ46を供給する給材位置との間で移動させるものであり、図12に示すように、装置台510の下段512の上面512Aに固定された直線移動装置541と、この直線移動装置541の先端側に設けられた回転移動装置542とを備える。
直線移動装置541は、装置台510の下段512の上面512Aに固定された基部541Aと、この基部541Aの上面に取りつけられたシリンダ541Bと、このシリンダ541Bに設けられ光軸Zと平行な方向、つまり略鉛直方向に沿って進退するピストン541Cとを備える。直線移動装置541は、シリンダ541B内の空気の圧力により、ピストン541Cを光軸Zに沿った方向に予め設定された分だけ移動させ、回転移動装置542を光軸Zに沿った方向に直線移動させている。
回転移動装置542は、ピストン541Cの先端に接続部材542Dを介して取りつけられた筒部542Aと、この筒部542Aに挿通された軸部542Bと、この軸部の先端に取りつけられた腕部542Cとを備える。回転移動装置542は、図13および後述する図17の矢印で示すように、軸部542Bを中心として腕部542Cを回動させることにより、投写レンズ保持機構550を、光路の照明光軸上および照明光軸外の間で移動させている。
投写レンズ保持機構550は、製造対象となる投写レンズ46を、照明光軸上において、3群レンズ113の位置を調整する位置であるレンズ調整位置に保持するものである。投写レンズ保持機構550は、図12に示すように、腕部542Cの先端側に取りつけられた基部551と、この基部上に設けられた保持部552とを備える。
基部551は、保持部552を支持するための板状の部材あり、その略中央位置には、投写レンズ46の鏡筒100を挿通するための開口551Aが形成されている。この嵌合凹部の周囲には、互いに均等間隔となる位置に4つの凹部が形成されている。
保持部552は、投写側を図12中の下方に向けて投写レンズ46を保持する治具であり、矩形板状の保持部本体552Aと、この保持部本体552Aの四隅に設けられ、前記4つの凹部のそれぞれに挿入される4つの脚部とを備える。なお、この保持部552は、製造する投写レンズ46の種類や寸法に応じて、適宜対応するものに交換して使用される。
保持部本体552Aの略中央位置には、円形の開口が形成されている。この開口には、鏡筒100が挿通される。また、開口の周囲には、投写レンズ46のつば部121の形状に対応した形状の嵌合凹部が形成されている。従って、保持部本体552Aの凹部につば部121が嵌合されることにより、外形基準で略正確な位置に、投写レンズ46が保持されるようになっている。
反射ミラー560は、投写レンズ46を介して射出された前記テストパターンを含む画像光の光路を略90°曲折して反射してスクリーンに導くものである。
レンズ位置調整機構570は、投写レンズ46を構成する3群レンズ113のXY平面上の位置を調整するものであり、X軸方向に沿って位置を調整するX軸方向レンズ調整機構570Xと、Y軸に沿って位置を調整するY軸方向レンズ調整機構570Yとを備える。これらの各方向レンズ調整機構570X,570Yの構成は同じであり同じ符号を付す。以下には、Y軸方向レンズ調整機構570Yの構成についてのみ説明し、X軸方向レンズ調整機構570Xの構成については説明を省略する。
Y軸方向レンズ調整機構570Yは、図12に示すように、装置台510の上段511の下面511Bに設けられた2つのスライダ513A,513Bを介して、Y軸に沿った方向にスライド移動可能に取りつけられた第1シリンダ装置571および第2シリンダ装置572を備える。これらのシリンダ装置571,572は付勢部として機能している。
図17は、レンズ位置調整機構および接着固定機構の一部を拡大して示す平面図である。
第1シリンダ装置571は、図12,17に示すように、スライダ513Aに取りつけられたシリンダ571Aと、このシリンダ571Aに設けられたピストン571Bと、このピストン571Bの先端に取りつけられた箱体571Cと、この箱体571C内に取りつけられた第1ピン部材571Dと、この第1ピン部材571DをY軸に沿った方向の進退を微調整する進退部としてのマイクロメータヘッド571Eとを備える。
シリンダ571Aは、内部に注入される空気の圧力具合により、ピストン571Bを、投写レンズ46に対しY軸に沿って進退させるものである。
ピストン571Bは、シリンダ571A内の空気圧によりY軸に沿って進退し、これに伴って、箱体571CもY軸に沿って進退させる。
第1ピン部材571Dは、図17に示すように、投写レンズ46の位置調整孔122Aに挿入され、投写レンズ46を構成する3群レンズ113のY軸方向の位置を調整するものである。第1ピン部材571Dの先端は、3群レンズ113の外周部分に当接する部分であり、この3群レンズ113を損傷させないように研磨されている。
マイクロメータヘッド571Eは、ピン部材571Dの進退を分解能1μmで、微調整可能に構成されている。
第2シリンダ装置572は、図12,17に示すように、スライダ513Bに取りつけられたシリンダ572Aと、このシリンダ572Aに設けられたピストン572Bと、このピストン572Bの先端に取りつけられた箱体572Cと、この箱体572C内に取りつけられた第2ピン部材572Dと、箱体572Cの下側に取りつけられたフォーカス調整部572Eとを備える。
第2シリンダ装置572は、第1シリンダ装置571とは、マイクロメータヘッド571Eを備えずに、フォーカス調整部572Eを備える点で相違しており、その他の部分については、略同様の構成である。
シリンダ572Aは、内部に注入される空気の圧力具合により、ピストン572Bを、投写レンズ46に対しY軸に沿って進退させる。なお、ピストン572Bは、前記ピストン571Bと同様の部材である。また、箱体572Cは前記箱体571Cと、第2ピン部材572Dは前記ピン部材571Dと、同様の部材である。
ここで、第1シリンダ装置571のシリンダ571A内の空気圧は、第2シリンダ装置572のシリンダ572A内の空気圧よりも大きな圧力として設定されている。このため、第1シリンダ装置571の第1ピン部材571Dが第2ピン部材572D側へ進行すると、第2シリンダ装置572の第2ピン部材572Dは、第1ピン部材571D側から退行することになる。また、第1ピン部材571Dが第2ピン部材572D側から退行すると、第2シリンダ装置572の第2ピン部材572Dは、第1ピン部材571D側へ進行することになる。
以上より、投写レンズ46を構成する3群レンズ113において、位置調整孔122Aに対応する部分、つまり、Y軸上の両端部分は、2つのピン部材571D,572Dの研磨された先端部分によって当接され、常に挟まれた状態で保持されることになる。このため、第1ピン部材571DがY軸に沿って進退すると、これに伴って、3群レンズ113は、鏡筒本体101内でY軸に沿って進退することになる。
尚、3群レンズ113は、X軸方向に各々配置された第1ピン部材571D及び第2ピン部材572Dに対しては、両ピン部材571D,572Dの研磨された先端部分の間をY軸方向へ沿って移動する。
フォーカス調整部572Eは、図13に示すように、レンズ調整位置に配置された投写レンズ46の前枠102に当接するロッド573と、このロッド573を進退させるマイクロメータ574とを備える。フォーカス調整部572Eは、マイクロメータ574を操作することにより、ロッド573で前枠102を回転させて、投写レンズ46のフォーカス調整を行う。
X軸方向レンズ調整機構570Xは、前記Y軸方向レンズ調整機構570Yと略同様の構成で同様の作用および機能を有しており、フォーカス調整部572Eを備えない点のみ相違している。このため、X軸方向レンズ調整機構570Xは、鏡筒本体101内での3群レンズ113のX軸に沿った方向の位置調整を行う。
尚、Y軸方向への調整時と同様に3群レンズ113はY軸方向に各々配置された第1ピン部材571D及び第2ピン部材572Dに対しては、両ピン部材571D,572Dの研磨された先端部分の間をX軸方向へ沿って移動する。
接着固定機構580は、図12または図17に示すように、3群レンズ113を鏡筒本体101に接着固定するものであり、ピン部材571D,572Dの両側に並べて配置され、それぞれ対応する接着剤注入孔122Bに挿入される合計8つの紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581と、注入孔122Bに注入された紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する紫外線照射用ファイバー582と、紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581に接続された紫外線硬化型接着剤注入部583と、紫外線照射用ファイバー582に接続された紫外線照射部(光線照射部)584とを備える。紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581および紫外線照射用ファイバー582の一部は、前記各箱体571C,572C内に収納されている。
接着固定機構580において、紫外線硬化型接着剤注入部583から紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581を介して紫外線硬化型接着剤を注入孔122Bに注入した後に、紫外線照射部584から紫外線照射用ファイバー582を介して紫外線を照射して、8箇所で3群レンズ113を鏡筒本体101の所定位置に接着固定している。すなわち、本実施形態では、紫外線硬化型接着剤の注入孔122Bへの挿入と、紫外線硬化型接着剤の紫外線照射とが連続して行われ、接着剤の注入と、紫外線照射とが自動化されている。
なお、紫外線照射時には、紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581を接着剤注入時の位置から後退させ、紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581内の接着剤に紫外線が照射されるのを防止している。
〔5.投写レンズの製造方法〕
投写レンズ46は、図18に示すフローチャートに従って製造される。
作業者は、3群レンズ113のみが遊嵌状態で配置され、その他の群レンズ111,112,114が予め外形基準で固定された調整前の投写レンズ46を用意する(処理S1)。
作業者は、投写レンズ製造装置500を起動させ(処理S2)、各構成部品を初期位置に移動させる(処理S3)。具体的には、投写レンズ保持機構550は、初期位置として照明光軸外の給材位置に位置する。また、遮光装置528の遮光板532は、初期位置として光路の外側に位置する。
作業者は、給材位置にある投写レンズ保持機構550において、その保持部552に形成された嵌合凹部に、調整前の投写レンズ46のつば部121を外形基準で正確に嵌合させ、この保持部552を基部551に取りつけることより、調整前の投写レンズ46を投写レンズ保持機構550に保持させる(処理S4)。
調整前の投写レンズ46を供給した後に、作業者は、移動機構540を駆動させる。この際、投写レンズ保持機構550は、直線移動装置541により鉛直方向上方へ移動するとともに、回転移動装置542により光軸Zに沿った軸を中心として回転移動する。そして、照明光軸上のレンズ調整位置に調整前の投写レンズ46を保持する(処理S5:投写レンズ保持工程)。
投写レンズ46をレンズ調整位置にセットした後に、作業者は、第1および第2シリンダ装置571,572を駆動させる。予め設定された圧力までシリンダ571A,572A内の空気圧が上昇し、レンズ位置調整機構570を構成する第1および第2ピン部材571D,572Dが互いに近接する方向に移動して、図19(A)及び図19(B)に示すように、これらのピン部材571D,572Dは、各位置調整孔122Aにそれぞれ挿入される。このため、挿入された4つのピン部材571D,572Dの研磨された先端により、3群レンズ113は、その外周部分が4点で保持される(処理S6)。また、シリンダ装置571,572の近接方向への移動に伴い、接着固定機構580の紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581は、投写レンズ46の接着剤注入孔122Bの近傍まで移動する。
なお、シリンダ571A,572A内の空気圧は、各ピン部材571D,572Dの先端が、群レンズ111〜114間の芯位置が概ね合致する位置となるように予め設定しておく。
この状態で、作業者は、投写部520を駆動させる。光源装置521から調整用の光束が射出され(処理S7:光束射出工程)、この射出された光束は、各光学部品を経て検査シート526を通過する際に所定のテストパターンTPを含む画像光となり、このテストパターンTPを含む画像光は、ダミープリズム527を介して調整前の投写レンズ46に導入される(処理S8:画像光射出工程)。この導入されたテストパターンTPを含む画像光は、反射ミラーにより前方側へ90°曲折された後、スクリーン502に拡大投写される(処理S9)。
作業者は、スクリーン502に投影されたテストパターンTPを含む画像光を観察しながら、スクリーン502上の画像光のフォーカス調整を行う(処理S10)。具体的には、作業者は、フォーカス調整用テストパターンTP4の画像光を観察しながら、フォーカス調整部572Eのマイクロメータ574を操作してロッド573を進退させ、前枠102を鏡筒本体101に対して回動させることにより、投影画像のフォーカス調整を行う。
次に、作業者は、スクリーン502上の投写画像を観察しながら、各テストパターンTP1〜TP3が最適(鮮明)で、かつフレア等の発生が最も小さくなるように、レンズ位置調整機構570を操作して、3群レンズ113のX軸方向およびY軸方向の位置をそれぞれ独立して調整する。
具体的には、作業者は、X軸方向レンズ調整機構570Xのマイクロメータヘッド571Eを操作して、X軸上の一対の位置調整孔122Aに挿入されたピン部材571D,572Dのうちの第1ピン部材571Dを第2ピン部材572D側へ進退させて、手動によりX軸方向の位置を微調整する(処理S11:レンズ位置調整工程)。
同様にして、作業者は、Y軸方向レンズ調整機構570Yのマイクロメータヘッド571Eを操作して、Y軸方向の3群レンズ113の位置を手動で調整する(処理S12:レンズ位置調整工程)。これにより、複数の群レンズ111〜114間の芯位置が正確に調整される。
3群レンズ113の位置調整をした後に、作業者は、遮光装置528を駆動させる(処理S13)。遮光装置528は、光路上に遮光板532を配置して、光源装置521から射出された光束が投写レンズ46に導入されることを遮るように機能する。
次に、作業者は、接着固定機構580を駆動する。4つのピン部材571D,572Dにより3群レンズ113が4点で保持されたまま、8つの接着剤注入孔122Bに接着固定機構580の各紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581が挿入され、紫外線硬化型接着剤注入部583から流動状態の紫外線硬化型接着剤が注入される(処理S14:接着固定工程)。紫外線硬化型接着剤注入後、接着固定機構580の紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581は、接着剤注入孔122Bから引き抜かれる。
この後に、注入された紫外線硬化型接着剤に対して紫外線照射部584から紫外線照射用ファイバー582を介して紫外線が照射され(処理S15:接着固定工程)、3群レンズ113が鏡筒本体101に接着固定される。
接着固定が終了すると、第1および第2シリンダ装置571,572を構成するシリンダ571A,572A内の空気圧が減圧され、シリンダ装置571,572のピストン571B,572Bは、互いに離間する方向に移動し、第1および第2ピン部材571D,572Dは位置調整孔122Aから引き抜かれ、これにより、3群レンズ113の保持が解除される(処理S16)。
次に、接着固定された投写レンズ46を保持する投写レンズ保持機構550は、照明光軸上のレンズ調整位置から照明光軸外の給材位置へと移動する(処理S17)。作業者は、給材位置の投写レンズ保持機構550から調整済みの投写レンズ46を取り出して、1つの投写レンズ46の製造を終了する(処理S18)。
製造された投写レンズ46を取り出した後に、前述と同様にして調整前の投写レンズ46を投写レンズ保持機構550に配置し、同様の手順で投写レンズ46を連続的に製造する(処理S19)。最後に、投写レンズ製造装置500の駆動を止めて製造を終了する(処理S20)。
〔6.実施形態の効果〕
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1−1)X軸方向およびY軸方向のレンズ位置調整機構570を備え、前述した手順で製造することにより、投写レンズ46を構成する3群レンズ113を互いに直交するX軸とY軸との両方向に沿って独立して高精度に位置調整できる。このため、従来の3方向で調整する場合に比べて、調整したい方向を簡単に把握できるため、調整作業が簡単である。
(1−2)X軸上の対向する位置調整孔122Aにそれぞれピン部材571D,572Dを挿入して、2つのピン部材571D,572Dで3群レンズ113を挟んで保持することにより、3群レンズ113のX軸方向の位置を簡単に調整できる。同様に、Y軸方向の位置も簡単に調整できる。
(1−3)X軸およびY軸に沿ってそれぞれ一対の位置調整孔122Aを形成し、これらの一対の位置調整孔122Aには、常に、まっすぐにピン部材571D,572Dが挿入され進退するため、従来のように位置調整孔122Aの開口寸法を大きくする必要もない。従って、光漏れ等が防止され適切な画像を投写可能な投写レンズ46を提供できる。
(1−4)ピン部材571D,572Dを、投写レンズ46側、つまりプロジェクタ1側に設けずに、投写レンズ製造装置500側に設けたので、投写レンズ46を構成する部材の点数を減少できて、投写レンズ46の製造コストの低減や、小型化、軽量化を図ることができる。
(1−5)投写レンズ製造装置500では、鏡筒本体101ではなく、3群レンズ113を移動させているため、鏡筒本体101に固定された4群レンズ114、2群レンズ112の光軸が、調整用の光源装置521に対してずれてしまうことがない。そのため、4群レンズ114、2群レンズ112と3群レンズ113の光軸位置の光軸を一致させることが容易となり、3群レンズ113の光軸位置を高精度に調整することができる。
(1−6)3群レンズ113を位置調整後に鏡筒本体101に接着固定しているため、3群レンズ113の位置調整により鏡筒本体101に歪が生じることがない。従って、鏡筒本体101に歪を吸収するための歪吸収部等を設ける必要がないので、鏡筒本体101の小型化、投写レンズ46の小型化を図ることができる。また、鏡筒本体101に歪が生じないので、歪解消のために鏡筒本体101を加熱する必要もない。従って、投写レンズに使用されるレンズ112〜113の材質を熱に弱いものとすることもでき、レンズの材質が制限されない。さらに、鏡筒本体101に接着固定される前に、3群レンズ113の調整を行っており、調整時には3群レンズ113が固定されていないので、3群レンズ113の光軸位置の微調整を容易に行うことができ、高精度な調整を行うことが可能となる。
(1−7)1μmレベルの高分解能のマイクロメータヘッド571Eを採用したので、群レンズ111〜115の光軸位置調整をより一層高精度に実施できる。
(1−8)第1および第2シリンダ装置571,572を構成するシリンダ571A,572A内の空気圧を常に一定に設定したので、ピン部材571D,572Dの位置が常に一定となる。このため、投写レンズ46を交換して次の投写レンズ46を製造する場合でも、調整対象となる3群レンズ113の芯を他の群レンズ111,112,114の芯に対して略合致する位置に調整できるから、後は、投写レンズ46毎の偏差を微調整するだけでよく、位置調整作業の迅速化、簡素化を図ることができる。
(1−9)移動機構540を備えることにより、投写レンズ保持機構550が照明光軸上のレンズ調整位置と、照明光軸外の給材位置との間で移動するので、投写レンズ46のセットを容易にでき、製造作業の効率化を図ることができる。
(1−10)レンズ位置調整機構570により3群レンズ113を保持した状態のままで、接着固定機構580により3群レンズ113を鏡筒本体101に接着固定できるため、接着固定時に発生する不良を最小限にできる。
(1−11)遮光装置528を備えることにより、接着固定の際に光源装置521からの光束が投写レンズ46側へ導入されるのを防止できる。このため、紫外線硬化型接着剤が誤って硬化することを防止できる。
(1−12)投写レンズ46から射出された画像光を反射ミラー560で略直角に反射してスクリーン502に投写するので、装置本体501の光路方向と、スクリーン502の面とが、略平行に配置される構成となる。このため、光源装置521からスクリーン502までを鉛直方向に沿った一直線状の光路とする場合に比べて、装置本体501の小型化を図ることができる。
(1−13)スクリーン502に拡大して投写された投写画像を観察しながら、投写レンズ46の位置調整を行うため、群レンズ111〜114間の光軸位置を正確に調整できる。
(1−14)投写部520から投写レンズ46までの光路を略鉛直方向とし、X軸およびY軸を水平方向としたので、接着固定機構580の紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581に接着剤が残っていたとしても、この接着剤はピン部材571D,572D側には流れないため、ピン部材571D,572Dの先端に接着剤が付着することを防止でき、投写レンズ46を効率的に製造できる。
(1−15)また、接着固定機構580は、紫外線硬化型接着剤注入部583及び紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581と、紫外線照射部584及び紫外線照射用ファイバー582とを備え、紫外線硬化型接着剤の注入孔122Bへの挿入と、紫外線硬化型接着剤の紫外線照射とが連続して行われ、接着剤の注入と、紫外線照射とが自動化されているため、3群レンズ113の固定に手間を要しない。
(1−16)以上より、高精度に光軸位置調整できて高品質の画像を投写でき、かつ製造コストを低減できる投写レンズ46を提供できる。このような投写レンズ46を採用したプロジェクタ1において、コストの低減や、小型化、軽量化を図ることができる。
2.第2実施形態
図20及び図21を参照して本発明の第2実施形態について説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
前記実施形態では、接着固定機構580は、紫外線硬化型接着剤注入部583及び紫外線硬化型接着剤注入用チューブ581と、紫外線照射用ファイバー582及び紫外線照射部584とを備え、紫外線硬化型接着剤の注入と、紫外線照射とが自動化されているとした。これに対し、本実施形態の接着固定機構580’は、図20に示すように紫外線硬化型接着剤注入部及び紫外線硬化型接着剤注入用チューブを備えておらず、接着剤の注入を作業者が手作業で行う。すなわち、本実施形態の接着固定機構580’は紫外線照射用ファイバー582と、この紫外線照射用ファイバー582に接続された紫外線照射部(光線照射部)584とを備えたものとなる。
このような本実施形態では、投写レンズ46は、前記実施形態と略同様の手順で製造されるが(図18参照)、図21(A)に示すような紫外線硬化型接着剤585の接着剤注入孔122Bへの注入は、作業者が手作業で行う点のみが前記実施形態と異なっている(図18に示す処理S14)。
なお、この際、投写レンズ46を投写レンズ保持機構550から取り外して紫外線硬化型接着剤585を注入し、再度、投写レンズ保持機構550に投写レンズ46を保持させてもよい。このようにすれば、紫外線硬化型接着剤585の接着剤注入孔122Bへの注入を容易に行うことができる。なお、投写レンズ製造装置500は、3群レンズ113の調整位置を記憶しているため、投写レンズ46を投写レンズ保持機構550から取り外した後、投写レンズ46を投写レンズ保持機構550に取りつけた場合であっても、再度、3群レンズ113の位置調整を行う必要はない。また、例え、再度、位置調整を行うことがあっても、微調整ですむため短時間で調整することができ、調整中に紫外線硬化型接着剤585が硬化してしまうことはない。
そして、図21(B)に示すように、注入された紫外線硬化型接着剤585に対して紫外線照射部584から紫外線照射用ファイバー582を介して紫外線を照射する(図18に示す処理S15)。
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態の(1−1)〜(1−13)(1−16)と略同様の効果を奏することができるうえ、以下の効果を奏することができる。(2−1)本実施形態では、紫外線硬化型接着剤585の注入孔122Bへの注入を手作業で行っており、接着固定機構580’は、紫外線硬化型接着剤注入部及び紫外線硬化型接着剤注入用チューブを備えない構成であるため、接着固定機構580’、さらには、投写レンズ製造装置500の構造を簡略化することができる。
3.実施形態の変形
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、作業者自身が各機構を操作して調整対象となるレンズの位置を調整する構成としたが、これに限らず、コンピュータ制御により自動的に調整する構成としてもよい。この場合には、例えば、スクリーン等に投写された画像をCCDカメラ等の撮像素子で撮像し、コンピュータで画像処理を行うことにより、レンズ位置を調整する構成を採用できる。また、スクリーンに投影せずに、直接CCDカメラ等の撮像素子で撮像する構成とすることもできる。
また、レンズの高軸位置調整だけの自動化に限らず、給材から取り出しまで全ての工程を自動で行う構成も採用できる。
前記実施形態において、付勢部として、ピン部材を投写レンズ側に空気圧で付勢するシリンダ装置を採用したが、これに限らず、例えば、板ばね、コイルばね等のばねやゴム等弾性部材、電磁的な付勢手段等の各種の付勢部を採用できる。また、流体として空気を採用したが、空気以外の気体や、油等の液体等も採用でき、任意の流体を採用できる。
前記実施形態において、位置調整孔122Aの数を4個、接着剤注入孔122Bの数を8個としたが、これらの数には限定されず、3個以下や9個以上としてもよい。また、孔の形状は、特に限定されないがピン部材の径に合わせて構成すればよい。
前記実施形態において、接着剤として紫外線硬化型接着剤を採用したが、これには限定されず、例えば、いわゆる瞬間接着剤等のその他の接着剤を採用してもよい。
また、前記実施形態において、3つの光変調装置を用いたプロジェクタを採用したが、これに限らず、例えば、1つの光変調装置のみを用いたプロジェクタ、2つの光変調装置を用いたプロジェクタ、または4つ以上の光変調装置を用いたプロジェクタとしてもよい。また、光変調装置として液晶パネルを採用したが、これに限らず、マイクロミラーを用いたデバイス等の液晶以外の光変調装置を採用してもよい。さらに、透過型の光変調装置ではなく、反射型の光変調装置を用いてもよい。
その他、本発明の実施時の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で、他の構造等としてもよい。
以上のように、本発明の投写レンズ製造装置、投写レンズ製造方法は、プロジェクタに使用される投写レンズを製造する製造装置、製造方法として有用である。特に、投写レンズを構成する部材の点数を減少してコスト削減や小型化、軽量化を図り、投写レンズを構成する複数のレンズの光軸位置を高精度に、かつ簡単に調整でき、高品質な画像投写を可能とし、さらには、使用するレンズの材質が制限されない投写レンズの製造に適している。

Claims (15)

  1. 内部に所定の光路が設定されたレンズ保持筒と、この光路の照明光軸上に順次配置される複数のレンズとを備える投写レンズを製造する投写レンズ製造装置であって、
    前記レンズ保持筒には、前記複数のレンズのうちのいずれかのレンズの位置を、前記照明光軸に直交する面内で互いに直交する2つの軸に沿った方向に調整するために、前記各軸上にそれぞれ一対の位置調整孔が形成され、
    調整用の光束を射出する光源と、
    製造対象となる投写レンズを、前記照明光軸上で前記調整対象となるレンズの位置を調整する位置であるレンズ調整位置に保持する投写レンズ保持機構と、
    前記光源から射出された光束に基づいて、所定のテストパターンを含む画像光を形成し、前記レンズ調整位置に配置された投写レンズに導入する画像光射出機構と、
    この画像光が導入された投写レンズから投写された画像光を検出しながら、調整対象となるレンズの位置を、前記位置調整孔を介して前記2つの軸に沿った方向にそれぞれ調整する2つのレンズ位置調整機構と、
    この位置調整されたレンズを前記レンズ保持筒に接着固定する接着固定機構とを備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  2. 請求項1に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記レンズ位置調整機構は、前記軸上の一対の位置調整孔にそれぞれ挿入され、前記調整対象となるレンズの外周部分に当接する2つのピン部材と、
    これらの2つのピン部材を互いに近接する方向に付勢する付勢部と、
    これらの2つのピン部材のうちの一方を他方に対して進退させるとともに、この一方の進行または退行に応じて前記他方を退行または進行させる進退部とを備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  3. 請求項2に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記付勢部は、前記ピン部材毎に配置され、このピン部材を流体による圧力で付勢するシリンダ装置であることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  4. 請求項2または請求項3に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記進退部は、前記一方のピン部材を他方のピン部材に対して進退させるマイクロメータヘッドであることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の投写レンズ製造装置において、
    前記投写レンズ保持機構を、前記レンズ位置調整機構が設置された位置から製造対象となる投写レンズの給材位置まで移動させる移動機構を備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  6. 請求項5に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記移動機構は、前記レンズ保持機構に接続された腕部の基端を中心として、前記照明光軸に直交する面内の方向に前記レンズ保持機構を回動させて、このレンズ保持機構を前記照明光軸上および照明光軸外の間で移動させる回転移動装置を備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の投写レンズ製造装置において、
    前記レンズ保持筒には、位置調整されたレンズを接着固定する接着剤を注入するための接着剤注入孔が形成され、
    前記接着固定機構は、前記接着剤注入孔に注入された光硬化型接着剤を硬化させる光線照射部を備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  8. 請求項7に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記接着固定機構は、前記接着剤注入孔に光硬化型接着剤を注入する接着剤注入部を備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  9. 請求項7又は請求項8に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記光源と、配置された投写レンズとの間の光路には、前記光源からの光束が前記投写レンズに導入されないように遮光する遮光機構を備えることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の投写レンズ製造装置において、
    前記投写レンズの光路後段には、この投写レンズを介して投写された画像光を投影するスクリーンが配置されていることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の投写レンズ製造装置において、
    前記光源から前記投写レンズに至る光路は、略鉛直方向に沿った方向に形成されていることを特徴とする投写レンズ製造装置。
  12. 請求項11に記載の投写レンズ製造装置において、
    前記投写レンズの光路後段には、この投写レンズから射出された画像光の光路を曲折して反射する反射部材と、この反射された画像光を投影するスクリーンとを備えること特徴とする投写レンズ製造装置。
  13. 内部に所定の光路が設定されたレンズ保持筒と、この光路の照明光軸上に順次配置される複数のレンズとを備える投写レンズを製造する投写レンズの製造方法であって、
    前記レンズ保持筒には、前記複数のレンズのうちのいずれかのレンズの位置を、照明光軸に直交する面内で互いに直交する2つの軸に沿った方向に調整するために、前記各軸上にそれぞれ一対の位置調整孔が形成され、
    製造対象となる投写レンズを、前記照明光軸上で調整対象となるレンズの位置を調整する位置であるレンズ調整位置に保持する投写レンズ保持工程と、
    調整用の光束を光源から射出する光束射出工程と、
    前記光源から射出された光束に基づいて、所定のテストパターンを含む画像光を形成し、前記照明光軸上に配置された投写レンズに導入する画像光射出工程と、
    この画像光が導入された投写レンズから投写された画像光を検出しながら、調整対象となる前記レンズの位置を、前記位置調整孔を介して前記2つの軸に沿った方向にそれぞれ調整するレンズ位置調整工程と、
    この位置調整されたレンズを前記レンズ保持筒に接着固定する接着固定工程とを備えることを特徴とする投写レンズの製造方法。
  14. 請求項13に記載の投写レンズの製造方法により製造されたことを特徴とする投写レンズ。
  15. 請求項14に記載の投写レンズを備えることを特徴とするプロジェクタ。
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