JPWO2003097741A1 - スチレン系エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はスチレン系エラストマーと層状無機化合物を含有してなるスチレン系エラストマー組成物に関する。
背景技術
近年、エラストマーの利用範囲が更に広がるに伴い、より高性能なものが求められるようになってきている。中でも機械的特性やガスバリア性に対する高性能化の要求は高い。
例えば、機械的特性を改善する目的で、エラストマーに無機フィラーを配合する技術が多数報告されている。
1)特開平8−333114号には、有機高分子材料の機械的特性を改良することを目的として、有機オニウムイオンのイオン結合により有機化された粘土鉱物を極性基を有するゲスト分子中に分散させた粘土複合材料が開示されている。
2)特開平11−92677号には、有機高分子材料の機械的特性を改良することを目的として、ポリマーを変性させて官能基を導入した変性ポリマーを得る工程と、該変性ポリマーと有機化クレイとを混練して両者を複合化する工程とからなることを特徴とする樹脂複合材料の製造方法が開示されている。
3)特開2000−86822号には、耐熱性に優れ、かつ常温においても優れた弾力性を有する樹脂複合材料を提供することを目的として、複数種類のセグメントよりなるブロック共重合体タイプの熱可塑性エラストマーの少なくとも1種類のセグメントに対し有機化クレイが分散していることを特徴とする樹脂複合材料が開示されている。
4)特開平11−92594号には、容易に複合化でき、かつ適用範囲の広い樹脂複合材を製造することができる樹脂複合材の提供を目的として、2種以上のポリマーと有機化クレイとからなり、上記2種以上のポリマーのうち、少なくとも1種が官能基を有することを特徴とする樹脂複合材が開示されている。
5)特開2002−37940号には、23℃パラキシレン可溶成分としてエラストマーを所定量含む結晶性ポリプロピレン、エチレン系不飽和結合含有カルボン酸、その無水物または誘導体でグラフト変性した結晶性ポリプロピレン、および有機化クレイを含むポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
エラストマーの中でも、スチレン系エラストマーは、柔軟性、耐寒性、耐吸湿性等に優れ、しかも容易にゴム弾性を有する成形体とすることができることから、既存の加硫ゴム代替としての用途のみならず、自動車、電気製品、建築、土木等の工業製品や医療、スポーツ用具、各種容器用部品(例えば、キャップライナー等)等、様々な分野で実用化されている。
スチレン系エラストマーの医療用途としては、例えば、以下のようなものが知られている。
1)特開2001−137338号は、シリンジ用ピストンの摺動部材の弾性摺接部にスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを用いることを開示している。
2)実開平5−53609号は、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン等の熱可塑性エラストマー樹脂のトリブロック共重合体にナフテン油を所定割合で配合した樹脂を用いて採血管用密封栓を成形することを開示している。
3)特開平10−201742号は、真空採血管の針刺し部およびシール部に、スチレン系エラストマー等の軟質合成樹脂を用いることを開示している。
4)特開平5−212104号は、医薬品用ゴム栓、シリンジ用ガスケット、減圧採血管用ゴム栓、薬液充填容器兼用シリンジ用ガスケット等の医薬・医療用熱可塑性シール性物品の製造用の加硫ゴム代替材料として、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体(例えば、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体等)を使用することを開示している。
また、スチレン系エラストマーの容器用部品への用途としては、例えば、以下のようなものが知られている:
1)特開平11−349753号は、エチレン−α−オレフィン共重合体、分岐状低密度ポリエチレンおよび熱可塑性エラストマーからなる、キャップライナー材用組成物を開示しており、熱可塑性エラストマーとしてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、水添スチレン−エチレン−プロピレン共重合体ゴム等のスチレン共重合体エラストマーを例示している。
2)キャップライナー材用組成物として、特開平11−130910号は、ポリプロピレン系樹脂、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体ゴムおよび流動パラフィンからなる組成物を開示しており、特開平11−157568号は、ポリプロピレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、水素添加スチレン−共役ジエンブロック共重合体ゴムおよび流動パラフィンからなる組成物を開示している。
3)特開2000−351880号および特開2000−355352号は、キャップライナー等の成型体用組成物として、熱可塑性エラストマーとケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体の組成物、熱可塑性エラストマー、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体および/またはポリアミド系樹脂の組成物をそれぞれ開示しており、両文献は、熱可塑性エラストマーとして、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマーを例示している。
4)特開2000−281117号には、キャップライナー用材料として、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、ゴム用軟化剤および/または流動パラフィンとポリエチレン樹脂からなる組成物を開示しており、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、水添スチレン−(イソプレン/ブタジエン)−スチレンブロック共重合体を例示している。
最近では、スチレン系エラストマーの機械的特性、耐薬品性、ゴム弾性を改良することを目的として、膨潤性ケイ酸塩を分散媒中でへき開し、アミノ化合物またはシラン系化合物と混合することによって調製した層状無機化合物を含有するスチレン系エラストマーが提案されている。
例えば、特開2000−129058号公報、特開2000−159960号公報には、スチレン系エラストマーを構成するモノマーと層状無機化合物を混合し、重合させることによって層状無機化合物を含有するスチレン系エラストマーを製造することが記載されている。また、層状無機化合物を含有するスチレン系エラストマーの他の製造方法として、層状無機化合物とスチレン系エラストマーを有機溶媒中で混合する方法も記載されている。
しかしながら、層状無機化合物とモノマーを混合した後、該モノマーを重合させる方法は操作が煩雑である。また、スチレン系エラストマーを製造する方法として一般的に使用されるリビングアニオン重合や配位重合は、極性官能基を有する化合物や水の存在下では重合が著しく阻害されることが知られており、極性が高く水分を含有しやすい層状無機化合物の存在下にモノマーを重合させる方法では、十分な重合反応を進行させることは難しい。
また、層状無機化合物とスチレン系エラストマーを有機溶媒中で混合する方法は、本質的に層状無機化合物が親水性であるため、スチレン系エラストマーを溶解しうる有機溶媒中では層状無機化合物が2次凝集しやすい。その結果、層状無機化合物をスチレン系エラストマー中に十分に微分散させることは困難である。
このように、上記の公報に開示された技術をもってしてもスチレン系エラストマー中に層状無機化合物を十分に微分散させることは困難であり、機械的特性の改善には自ずと限界がある。
また、スチレン系エラストマーのガスバリア性に関しては、無機フィラーを配合することによってある程度の改善が見られるが、ガスバリア性が十分に満足されるものは未だ得られていない。
しかして本発明は、スチレン系エラストマーに層状無機化合物を十分に微分散させることにより、スチレン系エラストマーのガスバリア性が改良され、良好な機械的特性を有するスチレン系エラストマー組成物を提供することを課題とする。
発明の要旨
本発明によれば、上記の課題は、(a)スチレン系エラストマー、(b)有機カチオンにより有機化された層状無機化合物および(c)上記(a)スチレン系エラストマーと相容性を有し、極性官能基を分子内に有する極性重合体(以下、これを「樹脂系相溶化剤」と略称することがある)からなり、該有機化された層状無機化合物の層間距離が15オングストローム以上であることを特徴とするスチレン系エラストマー組成物を提供することによって解決される。
すなわち、本発明は、(a)スチレン系エラストマー、(b)有機カチオンにより有機化された層状無機化合物、および(c)当該(a)スチレン系エラストマーと相容性を有し、極性官能基を分子内に有する極性重合体、からなるスチレン系エラストマー組成物であって、当該組成物中の当該(b)有機化された層状無機化合物の層間距離が15オングストローム以上であることを特徴とする、スチレン系エラストマー組成物を提供する。
発明の開示
本発明のスチレン系エラストマー組成物の各成分について、以下に詳細に説明する。
(a)スチレン系エラストマー[成分(a)]
(a)スチレン系エラストマーとしては、従来から公知のものを特に制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物あるいは共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体などが挙げられる。
かかるブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAで、オレフィン系化合物あるいは共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBで表したときに、式;A−B、(A−B)m−A〔式中、mは1〜10の整数を表す〕、(A−B)n−X〔式中、Xはカップリング剤から誘導されるn価の残基を表し、nは2〜15の整数を表す〕等の構造を有するブロック共重合体などが挙げられる。また、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックとオレフィン系化合物あるいは共役ジエン化合物からなる重合体ブロックがテーパー状に結合したブロック重合体もスチレン系エラストマーとして使用可能である。
これらのうちでも、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックAの2個以上と重合体ブロックBの1個以上が直鎖状に結合したブロック共重合体、特に式:A−B−Aで表されるトリブロック共重合体が好ましい。
上記したブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−、m−またはp−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物単位の含有量は特に限定されないが、得られるスチレン系エラストマー組成物の成形性および機械的特性の点から、好ましくは5〜75重量%であり、より好ましくは10〜65重量%である。
一方、上記ブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンなどが挙げられる。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。重合体ブロックBは、これらの化合物の1種から構成されていてもよいし、また、2種以上から構成されていてもよいが、ブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物から構成されていることが好ましく、得られるスチレン系エラストマー組成物のガスバリア性の点で、ブタジエンとイソプレンの混合物またはイソプレンから構成されていることがより好ましい。
重合体ブロックBは、脂肪族炭素−炭素二重結合を側鎖に含有していてもよい。例えば、共役ジエン化合物として、ブタジエンとイソプレンの混合物またはイソプレンを使用する場合、重合体ブロックBは、1,2−結合および3,4−結合に由来して側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を含有することがある。この場合、重合体ブロックB中の1,2−結合と3,4−結合の割合は特に限定されないが、1,2−結合と3,4−結合の合計が、ブロック共重合体を構成する構造単位の全量に対し30モル%以上の割合で含まれていることが好ましく、40モル%以上の割合で含まれていることがより好ましい。
重合体ブロックBは、共役ジエン化合物に由来する脂肪族炭素−炭素二重結合が水素添加されていてもよい。脂肪族炭素−炭素二重結合の水素添加率は、スチレン系エラストマー組成物の組成、用途等によって適宜選択されるが、耐熱性、耐候性等が必要とされる場合には、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
上記した脂肪族炭素−炭素二重結合の水素添加率は、一般に用いられている方法、例えば、ヨウ素価測定法、1H−NMR測定等によって算出することができる。
上記したブロック共重合体の好ましい例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体またはその水素添加物などが挙げられる。また、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体なども好ましい例として挙げられる。
また、これらのブロック共重合体は、本発明の趣旨を損なわない範囲で主鎖、側鎖、分子鎖の片末端または両末端にカルボキシル基またはその塩、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、エステル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホン酸基またはその誘導体、アミド基、メルカプト基、ハロゲン原子等の極性官能基を含有していてもよい。極性官能基の含有量は、特に制限されるものではないが、ブロック共重合体を構成する繰り返し単位の総モル量に対し0.05モル%未満であることが好ましく、0.04モル%以下であることがより好ましい。
極性官能基を有するブロック共重合体は、製造工程において、i)極性官能基を含有する化合物を重合停止剤として反応させる方法、ii)極性官能基を含有するオレフィン系化合物および/または極性官能基を含有する共役ジエン化合物を共重合または付加させる方法などによって製造することができる。
上記した極性官能基を含有するオレフィン系化合物および/または極性官能基を含有する共役ジエン化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;イタコン酸、マレイン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸の無水物;アクリルアミン、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有不飽和化合物;アクリルアミド、ビニルオキサゾリンなどが挙げられる。当該極性官能基を含有するオレフィン系化合物および/または極性官能基を含有する共役ジエン化合物としては、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ブロック共重合体として、必要に応じて有機過酸化物などの存在下において動的架橋したものを使用することもできる。
ブロック共重合体の数平均分子量は、特に制限されるものではないが、通常、10,000〜1,000,000の範囲内であり、好ましくは、30,000〜500,000の範囲内である。
本発明で使用するスチレン系エラストマーとしては、常温ではゴム弾性体としての挙動を示し、かつ、温度上昇によって塑性変形をする重合体であれば、上記したブロック共重合体以外の、芳香族ビニル化合物とオレフィン系化合物あるいは共役ジエン化合物とのランダム共重合体(以下、これらを「芳香族ビニル化合物系共重合体」と略称することがある)も好適に用いられる。かかる共重合体は、前記した極性官能基を含有していてもよく、その含有量は、特に制限されるものではないが、共重合体を構成する繰り返し単位の総モル量に対し0.05モル%未満であることが好ましく、0.04モル%以下であることがより好ましい。
また、かかる芳香族ビニル化合物系共重合体として、必要に応じて有機過酸化物などの存在下において動的架橋したものを使用することもできる。
芳香族ビニル化合物系共重合体の数平均分子量は、特に制限されるものではないが、通常、10,000〜1,000,000の範囲内であり、好ましくは、30,000〜500,000の範囲内である。
本発明で使用するスチレン系エラストマーとしては、上述したブロック共重合体あるいは芳香族ビニル化合物系共重合体と、ポリオレフィン系樹脂などの他の樹脂との組成物、さらに所望により可塑剤等の添加剤を配合してなる組成物なども好適に用いられる。
ここで、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、エチレン/アクリル酸エステル共重合体などが挙げられるが、中でもポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の使用量は上記のブロック共重合体あるいは芳香族ビニル化合物系共重合体100重量部に対して100重量部未満であることが好ましく、80重量部以下であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の使用量が上記の範囲を超えると、スチレン系エラストマーとしての機械的特性などを損なう場合がある。
また、可塑剤としては、非芳香族系ゴム用軟化剤が好適に使用される。その具体例としては、パラフィン系またはナフテン系のプロセスオイル、ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックスおよび流動パラフィンなどが挙げられるが、中でもパラフィン系プロセスオイルが好ましい。可塑剤の使用量は、上記のブロック共重合体あるいは芳香族ビニル化合物系共重合体100重量部に対して400重量部以下であることが好ましい。可塑剤の使用量が上記の範囲を超えると上記と同様にエラストマーの機械的特性が低下したり、可塑剤がブリードアウトする場合がある。
また、本発明で使用するスチレン系エラストマーには、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ポリオレフィン系樹脂の他にエチレン−プロピレン共重合ゴム;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS等のスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール樹脂;アクリル系樹脂等を添加することができる。さらに、必要に応じて、補強材(例えば、カーボンブラック、炭素繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル繊維等)、充填材、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、着色剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、発泡剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤、低収縮剤、増粘剤、離型剤、防曇剤、ブルーイング剤、シランカップリング剤等を添加することもできる。
スチレン系エラストマーとしては、市販されているものを使用することもできる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、「セプトン」または「ハイブラー」〔商品名;(株)クラレ製〕、「クレイトン」〔商品名;シェル(株)社製〕、「タフプレン」〔商品名;旭化成(株)社製〕、「ダイナロン」〔商品名;JSR(株)社製〕などが、スチレン/エチレン共重合体として、「インデックス」〔商品名;ダウ・ケミカル(株)社製〕などが、また、組成物として、例えば、「アロンAR」〔商品名;アロン化成(株)社製〕、「ラバロン」〔商品名;三菱化学(株)社製〕などが挙げられる。
(b)層状無機化合物[成分(b)]
次に本発明のスチレン系エラストマー組成物の構成成分である(b)層状無機化合物について説明する。
本発明で使用する層状無機化合物は粘土鉱物を主とするもので、例えば、膨潤性ケイ酸塩、燐酸ジルコニウム等が挙げられるが、工業的汎用性、取り扱いやすさ、得られる重合体組成物の物性等の観点から、膨潤性ケイ酸塩が好適に使用される。
ここでいう膨潤性ケイ酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと金属水酸化物の八面体シートからなり、水、水と任意の割合で混和する極性溶媒または水と該極性溶媒の混合溶媒中で膨潤する性質を有するケイ酸塩である。その例としては、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母、マイカなどが挙げられる。
スメクタイト族粘土としては、天然品または合成品が使用される。該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト、ベントナイトまたはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
また、膨潤性雲母としては、天然品または合成品が使用される。これらは、水、水と任意の割合で混和する極性溶媒または水と該極性溶媒の混合溶媒中で膨潤する性質を有している。膨潤性雲母としては、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、ナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。バーミキュライトに類するものには、トリオクトヘドラルバーミキュライト、ジオクトヘドラルバーミキュライトなどが挙げられる。
また、マイカとしては、例えば、マスコバイト、フィロゴパイト、バイオタイト、レピドライト、パラゴナイト、テトラシリシックマイカなどが挙げられる。
また、マイカにフッ素処理を行って膨潤性マイカとした物、あるいは水熱合成によって得られたものも挙げられる。
層状無機化合物は、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
層状無機化合物としては、上記したものの内で、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトおよび層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、入手が容易であることに加えて、スチレン系エラストマー組成物としたときの分散性に優れており、得られる組成物の物性改良効果の点から好ましい。
層状無機化合物は、有機カチオンによって有機化されていることが必要である。
上記有機カチオンとしては、アンモニウムイオン類、ホスホニウムイオン類、スルホニウムイオン類またはアミノ酸類などの正電荷を有する有機化合物などの有機オニウムイオンが好ましい。このうち、工業的汎用性等の観点からアンモニウムイオン類あるいはホスホニウムイオン類が好ましい。
アンモニウムイオンあるいはホスホニウムイオンとしては、例えば下記の化学式(1)で示されるものが好ましい。
(式中、Mは窒素原子またはリン原子を表し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ水素原子、ベンゼン環上に極性官能基を有していてもよいベンジル基または極性官能基で置換されていてもよい炭素数が1〜30のアルキル基を表す。ただしR1〜R4が同時に水素原子を表すことはない。また、R1〜R4において、極性官能基を有していてもよいベンジル基の数は2個以下であることが好ましい。)
上記において、炭素数が1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
また、上記ベンジル基や炭素数が1〜30のアルキルが有していてもよい極性官能基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基、ニトロ基、ハロゲン原子、エポキシ基などが挙げられるが、これらの中でも水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基が好ましい。
上記アンモニウムイオンあるいはホスホニウムイオンの対アニオンとしては、通常Cl−、Br−、I−、NO3 −、OH−、CH3COO−、HSO4 −、HCO3 −などが挙げられるが、Cl−、Br−、I−、NO3 −またはOH−が好ましい。
アンモニウムイオンの例としては、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ジメチルブチルアンモニウムイオン、1,2−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、メチルヘキシルアンモニウムイオン、3−ペンチルアンモニウムイオン、ジメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、2−オクチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、テトラメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルプロピルアンモニウムイオン、ジエチルプロピルアンモニウムイオン、ジブチルプロピルアンモニウムイオン、テトラメチルプロピルアンモニウムイオン、イソアミルアンモニウムイオン、エチルイソアミルアンモニウムイオン、2−ヘキセニルアンモニウムイオン、ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン、エチルジメチルプロピルアンモニウムイオン、ジイソブチルアンモニウムイオン、モノ−C6−20−アルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムイオン、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリラウリルメチルアンモニウムイオン、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリブチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
ホスホニウムイオンの具体例としては、トリメチルドデシルホスホニウムイオン、トリメチルヘキサデシルホスホニウムイオン、トリメチルオクタデシルホスホニウムイオン、トリブチルドデシルホスホニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオンなどが挙げられる。
また、スルホニウムイオンの具体例としては、トリメチルスルホニウムイオン、ジメチルドデシルスルホニウムイオン、ジメチルヘキサデシルスルホニウムイオン、ジメチルオクタデシルスルホニウムイオン、トリエチルスルホニウムイオン、ジエチルドデシルスルホニウムイオン、ジエチルヘキサデシルスルホニウムイオン、ジエチルオクタデシルスルホニウムイオン、トリブチルスルホニウムイオン、ジブチルドデシルホスホニウムイオン、ジブチルヘキサデシルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオンなどが挙げられる。
アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンあるいはスルホニウムイオンとして、極性官能基を有するものも好適に使用される。
例えば、水酸基を有するアンモニウムイオン、水酸基を有するホスホニウムイオンあるいは水酸基を有するスルホニウムイオンとしては、上記で例示したアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンあるいはスルホニウムイオンにおいて、アルキル基またはベンジル基の1ないし4個がヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基(例えば、2−ヒドロキシエチル基)、ヒドロキシプロピル基(例えば、3−ヒドロキシプロピル基)で置換されてなるイオンが具体例として挙げられる。アルコキシ基またはアリールオキシ基を有するアンモニウムイオン、アルコキシ基またはアリールオキシ基を有するホスホニウムイオンあるいはアルコキシ基またはアリールオキシ基を有するスルホニウムイオンとしては、上記で例示したアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンあるいはスルホニウムイオンにおいて、アルキル基またはベンジル基の1ないし4個が(CH2CH2O)pR基、(CH2CH(CH3)O)pR基あるいは(CH2CH2CH2O)pR基(ここでpは1〜50の整数を表し、Rは水素原子、炭素数が1〜30のアルキル基あるいはアラルキル基を表す)で表されるポリオキシアルキレン基で置換されたイオンが具体例として挙げられる。また、アシルオキシ基を有するアンモニウムイオン、アシルオキシ基を有するホスホニウムイオンあるいはアシルオキシ基を有するスルホニウムイオンとしては、例えば、上記で例示した水酸基を有するアンモニウムイオン、水酸基を有するホスホニウムイオンあるいは水酸基を有するスルホニウムイオンにおいて、該水酸基をアセチル基、ベンゾイル基等のアシル基で保護したものが具体例として挙げられる。
また、カルボキシル基、酸無水物基またはアルコキシカルボニル基を有するアンモニウムイオンとしては、例えばアミノ酸類から誘導されるカチオンなどが具体例として挙げられる。
ここでいうアミノ酸類は炭素数が4〜30であるものが好ましく、具体的にはリシン、アルギニン、γ−アミノシクロヘキシルカルボン酸、p−アミノヒドロシンナミック酸、ロイシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファンなどが挙げられる。
なお、上記のアミノ酸類において、カルボキシル基は、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル等の保護された形態であってもよい。
上記した有機カチオンを層状無機化合物に添加することによって、有機化された層状無機化合物を得ることができる。
有機カチオンの添加に先立ち、層状無機化合物は膨潤化されていることが好ましい。膨潤化処理は、具体的には、層状無機化合物を(i)水、(ii)水と任意の割合で混和する極性有機溶媒または(iii)水と該極性有機溶媒の混合溶媒中に浸漬することによって実施することができる。この際、十分に攪拌を行うことが望ましい。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール等のジオール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
有機化された層状無機化合物は、濾過、遠心分離等の常法に従って取得することができる。取得された層状無機化合物は、過剰量の有機カチオンを十分に洗浄して除去した後、乾燥することが望ましい。
有機カチオンの添加量は、例えば、カラム浸透法(「粘土ハンドブック」第576〜577頁、技法堂出版 参照)や、メチレンブルー吸着量測定法(日本ベントナイト工業会標準試験法,JBAS−107−91 参照)等の方法で層状無機化合物の陽イオン交換容量(CEC)を測定し、該測定値に基づいて決定することができる。有機カチオンの添加量は、CECに対して1当量以上であることが好ましく、1当量から10当量の範囲内であることがより好ましい。
(c)樹脂系相溶化剤[成分(c)]
次に本発明のスチレン系エラストマー組成物の構成成分である(c)樹脂系相溶化剤について説明する。
本発明で使用する(c)樹脂系相溶化剤は、上記成分(a)スチレン系エラストマーと相容性を有し、極性官能基を分子内に有する極性重合体である。
例えば、成分(c)として上記成分(a)スチレン系エラストマーと相容性を有しないものを用いた場合、スチレン系エラストマー組成物中で上述の(b)層状無機化合物を十分に分散させることができず、得られるスチレン系エラストマー組成物のガスバリア性を改良することができないので、好ましくない。
スチレン系エラストマーと相容性を有する重合体としては、例えば、ポリスチレン等のスチレン系重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物、ポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。(c)樹脂系相溶化剤としては、これらの重合体を基本構造とし、極性官能基を分子内に有する極性重合体を使用することができる。
上記ポリオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテン等のオレフィン系化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等のジエン系化合物類の単独重合体または共重合体などが挙げられる。また、ポリオレフィン系重合体中に含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合を水素添加したものを使用することもできる。
また、スチレン系重合体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−、m−またはp−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物の単独重合体または共重合体などが挙げられる。
また、スチレン−共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体またはその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体またはその水素添加物などが挙げられる。
また、ポリエステル系重合体としては、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン等のジオール成分と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸成分との縮重合で得られる重合体などが挙げられる。また、乳酸等のヒドロキシカルボン酸の単独または共縮重合体も好適に使用される。さらにはカプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合体も好適に使用される。
(c)樹脂系相溶化剤における極性官能基は、得られるスチレン系エラストマー組成物において、層状無機化合物の凝集、不均一分散を抑制し、層状無機化合物が十分に微分散されるようにするために、層状無機化合物と親和性あるいは反応性を有していることが好ましい。(c)樹脂系相溶化剤における極性官能基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、カルボキシル基またはその塩、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、酸無水物基、アルデヒド基、アセタール基、アミド基、イミド基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホン酸基またはその誘導体、エポキシ基などが挙げられるが、水酸基、カルボキシル基またはその塩、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、酸無水物基、エポキシ基が好ましい。
(c)樹脂系相溶化剤は、1種類の極性官能基のみを有していてもよいし、2種以上の極性官能基を有していてもよい。
(c)樹脂系相溶化剤中の極性官能基の含有量は、樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体を構成する繰り返し単位の総モル数に対して0.05モル%以上であることが好ましく、0.05モル%以上50モル%以下であることがより好ましい。使用する(a)スチレン系エラストマー、(b)層状無機化合物の種類およびそれらの使用量にもよるが、(c)樹脂系相溶化剤中の極性官能基の含有量が樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体を構成する繰り返し単位の総モル数に対して0.05モル%未満の場合、(a)スチレン系エラストマー中に(b)層状無機化合物を均一に分散させる効果が不十分となる場合がある。また、逆に(c)樹脂系相溶化剤中の極性官能基の含有量が樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体を構成する繰り返し単位の総モル数に対して50モル%を超えると、スチレン系エラストマー組成物を製造あるいは加工する際にゲル等が発生する場合がある。
極性官能基は、(c)樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体の分子鎖の片末端または両末端、分子鎖の途中または側鎖のいずれに含まれていてもよい。
極性重合体における極性官能基の分布に制限はなく、例えば、規則的な分布、ブロック状の分布、ランダム状の分布、テーパー状の分布、これらの全部または一部が混在している分布などであってもよい。
(c)樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体は、製造工程において、i)極性官能基を含有する化合物を重合停止剤として反応させる方法、ii)極性官能基を含有する化合物を共重合あるいは付加させる方法などによって製造することができる。
極性官能基を含有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;イタコン酸、マレイン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸の無水物;アクリルアミン、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有不飽和化合物;ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ホルムアルデヒド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;アクリルアミド、ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、などが挙げられ、これらの内の1種、または2種以上を使用することができる。
(c)樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体は、必要に応じて、ケン化されていてもよいし、アルカリ金属やアルカリ土類金属との塩の形となっていてもよい。さらには、(c)樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体は、多価金属によって架橋された、アイオノマーの構造を有していてもよい。
(c)樹脂系相溶化剤として使用される極性重合体の数平均分子量は、通常500〜500,000の範囲内であり、1,000〜300,000の範囲内であることが好ましい。
上記極性重合体の具体例を以下に示す。
(イ)カルボキシル基またはその塩を有する極性重合体
エチレン/アクリル酸共重合体、プロピレン/アクリル酸共重合体、エチレン/プロピレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、プロピレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/プロピレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/ブテン/アクリル酸共重合体、エチレン/ブテン/メタクリル酸共重合体、エチレン/ヘキセン/アクリル酸共重合体、エチレン/ヘキセン/メタクリル酸共重合体、エチレン/オクテン/アクリル酸共重合体、エチレン/オクテン/メタクリル酸共重合体、またはこれらの金属塩。
(ロ)水酸基を有する極性重合体
エチレン/アリルアルコール共重合体、プロピレン/アリルアルコール共重合体、エチレン/プロピレン/アリルアルコール共重合体、エチレン/メタリルアルコール共重合体、プロピレン/メタリルアルコール共重合体、エチレン/プロピレン/メタリルアルコール共重合体、エチレン/ブテン/アリルアルコール共重合体、エチレン/ブテン/メタリルアルコール共重合体、エチレン/ヘキセン/アリルアルコール共重合体、エチレン/ヘキセン/メタリルアルコール共重合体、エチレン/オクテン/アリルアルコール共重合体、エチレン/オクテン/メタリルアルコール共重合体。
エチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、プロピレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、エチレン/プロピレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、エチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、プロピレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、エチレン/ブテン/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、エチレン/ブテン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、エチレン/ヘキセン/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、エチレン/ヘキセン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、エチレン/オクテン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体。
片末端あるいは両末端ヒドロキシポリエチレン、片末端あるいは両末端ヒドロキシポリプロピレン、片末端あるいは両末端ヒドロキシポリエチレン/プロピレン共重合体、片末端あるいは両末端ヒドロキシポリエチレン/プロピレン/ブタジエン共重合体、片末端あるいは両末端ヒドロキシポリスチレン。
片末端あるいは両末端ヒドロキシポリブタジエン、片末端あるいは両末端ヒドロキシポリイソプレン、片末端あるいは両末端ヒドロキシポリ(イソプレン/ブタジエン)またはこれらの水素添加物。
片末端あるいは両末端ヒドロキシ(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体)、片末端あるいは両末端ヒドロキシ(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体)、片末端あるいは両末端ヒドロキシ〔ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体〕またはこれらの水素添加物。片末端あるいは両末端ヒドロキシ(ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体)。
(ハ)酸無水物基を有する極性重合体
エチレン/無水マレイン酸共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/ヘキセン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/オクテン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体。
無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン/プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン/プロピレン/ブタジエン共重合体、無水マレイン酸変性ポリスチレン。
無水マレイン酸変性(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体)、無水マレイン酸変性(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体)、無水マレイン酸変性〔ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体〕、無水マレイン酸変性(ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体)。
(ニ)エポキシ基を有する重合体
エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、プロピレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/プロピレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、プロピレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブテン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ブテン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ヘキセン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ヘキセン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/オクテン/グリシジルメタクリレート共重合体。
(ホ)アルコキシカルボニル基を有する重合体
エチレン/エチルアクリレート共重合体、プロピレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/プロピレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルメタクリレート共重合体、プロピレン/エチルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレン/エチルメタクリレート共重合体、エチレン/ブテン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブテン/エチルメタクリレート共重合体、エチレン/ヘキセン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ヘキセン/エチルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/オクテン/エチルメタクリレート共重合体。
なお、上記した(ハ)の酸無水物基を有する極性重合体をアルカリ等で中和することにより、カルボキシル基またはその塩を有する重合体を得ることができる。また、上記した(ハ)の酸無水物基を有する極性重合体をアンモニアやアミン類で中和し、必要に応じて脱水することにより、アミド基を有する重合体あるいはイミド基を有する重合体を得ることができる。
(c)樹脂系相溶化剤としては、上記した極性重合体の1種、または2種以上の混合物を使用することができる。
本発明のスチレン系エラストマー組成物を構成する、(a)スチレン系エラストマー(以下、成分(a)ともいう)、(b)層状無機化合物(以下、成分(b)ともいう)、および(c)樹脂系相溶化剤(以下、成分(c)ともいう)の重量比は、使用する各成分の種類、得られるスチレン系エラストマー組成物に要求される物性に応じて適宜決定されるが、通常、以下の範囲である。
成分(b)/成分(a)=0.01/100〜200/100、かつ
成分(c)/成分(a)=0.01/100〜5000/100。
(b)層状無機化合物の使用量が上記の範囲を越えると、得られるスチレン系エラストマー組成物の柔軟性、ゴム弾性、成形性等の物性が低下する場合がある。逆に、(b)層状無機化合物の使用量が上記の範囲より少ないと、層状無機化合物の添加による機械的特性やガスバリア性の改良効果が発揮されない場合がある。(b)層状無機化合物の使用量は、以下の範囲であることが好ましい。
成分(b)/成分(a)=0.03/100〜150/100 (重量比)
また、(c)樹脂系相溶化剤の使用量が上記の範囲を越えると、得られるスチレン系エラストマー組成物の柔軟性、ゴム弾性、成形性等の物性が低下する場合がある。逆に、(c)樹脂系相溶化剤の使用量が上記の範囲より少ないと、層状無機化合物をスチレン系エラストマー中に十分に微分散させることが困難となり、層状無機化合物の添加による機械的特性やガスバリア性の改良効果が発揮されない場合がある。(c)樹脂系相溶化剤の使用量は、以下の範囲であることが好ましい。
成分(c)/成分(a)=0.03/100〜3000/100 (重量比)
本発明のスチレン系エラストマー組成物には、本発明の趣旨を損なわない限り、通常のスチレン系エラストマー組成物に配合される各種添加物を添加しても差し支えない。ここでいう各種添加物としては、紫外線吸収剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤、各種オイル、各種鉱物油、発泡剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤、難燃剤、防カビ剤、低収縮剤、増粘剤、離型剤、防曇剤、ブルーイング剤、シランカップリング剤、補強材(例えば、カーボンブラック、炭素繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル繊維など)、充填材、酸化防止剤、抗菌剤などが挙げられる。
また、本発明のスチレン系エラストマー組成物には、本発明の趣旨を損なわない限り、通常のスチレン系エラストマー組成物に配合される他の重合体を添加しても差し支えない。ここでいう重合体としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS等のスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール樹脂;アクリル系樹脂等が挙げられる。
本発明のスチレン系エラストマー組成物は、成分(a)のスチレン系エラストマー、成分(b)の層状無機化合物および成分(c)の樹脂系相溶化剤、並びに必要に応じて、各種添加物や他の重合体を、常法に従って溶融混練することによって調製することができる。溶融混練は、例えば、バンバリーミキサー、プラストミル、一軸押出機、二軸押出機等を使用して実施することができる。
混練に際し、各成分の添加順序には特に制限はないが、
▲1▼(a)スチレン系エラストマー、(b)層状無機化合物および(c)樹脂系相溶化剤を一括して混合し、溶融混練する方法、あるいは
▲2▼(a)スチレン系エラストマーと(c)樹脂系相溶化剤を溶融混練して組成物とした後、(b)層状無機化合物を添加し、溶融混練する方法、
▲3▼(b)層状無機化合物と(c)樹脂系相溶化剤を溶融混練して組成物とした後、(a)スチレン系エラストマーを添加し、溶融混練する方法、
などが挙げられるが、▲3▼として示される方法が、好ましい。
なお、▲3▼の方法においては、(b)層状無機化合物と(c)樹脂系相溶化剤からなる組成物を一旦ペレット状とした後、(a)スチレン系エラストマー組成物を添加し、溶融混練してもよいし、溶融混練によって調製した(b)層状無機化合物と(c)樹脂系相溶化剤からなる溶融状態の組成物に、(a)スチレン系エラストマーをサイドフィード等によって添加し、混練してもよい。
また、溶融混練以外にも、例えば、
▲4▼有機溶媒中で上記(a)スチレン系エラストマー、(b)層状無機化合物および(c)樹脂系相溶化剤を混合する方法、
▲5▼有機溶媒に分散させた状態の(b)層状無機化合物を(a)スチレン系エラストマーと(c)樹脂系相溶化剤に添加する方法、
等によっても、本発明のスチレン系エラストマー組成物を調製することができる。
上記した、必要に応じて使用される各種添加物や他の重合体は、予め(a)スチレン系エラストマーあるいは(c)樹脂系相溶化剤に配合しておいてもよいし、(a)スチレン系エラストマーおよび(c)樹脂系相溶化剤とは別個の成分として配合してもよい。
上記のようにして調製される、本発明のスチレン系エラストマー組成物においては、有機化された層状無機化合物の層間距離が15オングストローム以上となっていることが必要である。
本発明においては、前記(b)層状無機化合物として、有機カチオンによって有機化されたものを使用すること、前記(c)樹脂系相溶化剤を使用することに加えて、スチレン系エラストマー組成物中で当該(b)層状無機化合物が上記のような層間距離を有することによって初めて、ガスバリア性が改良されたスチレン系エラストマー組成物を得ることが可能となる。
また、(b)層状無機化合物の層間距離が大きくなるに伴い、本発明のスチレン系エラストマー組成物は、ガスバリア性が向上する傾向を有することが見出された。
本発明のスチレン系エラストマー組成物において、層状無機化合物の層間距離は20オングストローム以上であることが好ましく、25オングストローム以上であることがより好ましく、30オングストローム以上であることがさらに好ましく、44オングストローム以上であることが非常に好ましい。
ここで、(b)層状無機化合物の層間距離は、広角X線回折を利用して検出される、層状無機化合物の(001)面に対応するピークに基づいて求めることができる。
本発明において、層状無機化合物における層間距離は、具体的には以下の方法で求める。
層状無機化合物の層間距離測定:
スチレン系エラストマー組成物から作製したフィルム(直径:4.5mm、厚さ:0.1mm)を用い、広角X線回折(XRD)測定装置[RINT 2400 X−RAYDIFFRACTOMETER(日本理学製)]を使用して、測定角度(2θ):2〜12度、スキャン速度:0.2度/minの条件で、X線回折パターンを測定する。
層状無機化合物に由来する、X線回折ピークの(001)面に対応するピークに基づいて、下記の式を用いて、層間距離d(オングストローム)を算出する。
d=λ/2sinθ
λ=1.54 (オングストローム)
本発明のスチレン系エラストマー組成物においては、有機化された(b)層状無機化合物の各層が完全に剥離した状態であることが非常に好ましい。従って、本発明においては、(b)層状無機化合物の層間距離には上限を設けていない。
本発明においては、スチレン系エラストマー組成物を広角X線回折によって測定した際に、(b)層状無機化合物に由来するピークが完全に消失したことを以って、(b)層状無機化合物の各層が完全に剥離した状態であると判断する。このような状態の本発明のスチレン系エラストマー組成物は、スチレン系エラストマーのガスバリア性が非常に良好であるので、非常に好ましい。また、このような状態の本発明のスチレン系エラストマー組成物は、含まれる(b)層状無機化合物が少量であっても当該組成物中に良好に分散するので、層状無機化合物を多量に組成物に添加した場合に生じるスチレン系エラストマーの柔軟性、成形性等の諸特性を損なうといった問題がなく、しかも低コストで、ガスバリア性を改良することが可能である。
本発明のスチレン系エラストマー組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、回転成形等の、熱可塑性エラストマーの成形において通常用いられる成形法によって、フィルム、シート、成形容器、ブロー容器等の成形品に加工することができる。
この場合、溶融混練によって調製されたスチレン系エラストマー組成物をそのまま成形に利用してもよいし、一旦ペレット化した後に成形してもよい。
また、本発明のスチレン系エラストマー組成物は、他の材料と複合化することによって、各種積層構造体に加工することも可能である。他の材料としては、例えば、本発明のスチレン系エラストマー組成物以外の他の各種熱可塑性樹脂またはその組成物、熱硬化性樹脂、紙、布帛、金属、木材、セラミックスなどが挙げられる。
本発明のスチレン系エラストマー組成物から得られる積層構造体としては、何ら限定されるものではないが、例えば、本発明のスチレン系エラストマー組成物よりなる層の1層と他の材料よりなる層の1層が積層した2層構造体、他の材料よりなる2つの表面層(表裏面層)の間に本発明のスチレン系エラストマー組成物よりなる層が中間層として存在する3層構造体、他の材料よりなる1つの層の表裏面に本発明のスチレン系エラストマー組成物よりなる層が積層された3層構造体などを挙げることができる。
積層構造体は、公知の方法、例えば、(i)前記した他の材料を本発明のスチレン系エラストマー組成物で溶融被覆して積層構造体を製造する方法、(ii)2つ以上の他の材料の間に本発明のスチレン系エラストマー組成物を溶融下に導入して接着、一体化させる方法、(iii)他の材料を金型内に配置(インサート)した状態で本発明のスチレン系エラストマー組成物を溶融下に金型内に充填して接着、一体化させる方法、(iv)他の材料が熱可塑性である場合は本発明のスチレン系エラストマー組成物と他の材料を共押出成形して接着、一体化させる方法などによって製造することができる。
また、本発明のスチレン系エラストマー組成物は、必要に応じ、各種製品や上記の積層構造体の製造において、ホットメルト接着剤として使用することもできる。
本発明のスチレン系エラストマー組成物を使用してなるホットメルト接着剤においては、その形態は特に制限されず、例えば、ペレットなどの粒状体、棒状体、フィルム、シート、板状体などの任意の形状をとり得る。
本発明のスチレン系エラストマー組成物においては、(b)層状無機化合物が十分に微分散されているので、ガスバリア性が著しく向上している。また、機械的特性も良好である。
ガスバリア性は、例えば、酸素透過係数で表現することができる。一方、本発明のスチレン系エラストマー組成物の酸素透過係数Pは、(b)層状無機化合物の分散状態との相関性が認められ、分散状態を示す指標と捉えることができる。従って、使用する各成分の種類、物性および使用量が同じであれば、スチレン系エラストマー組成物中で(b)層状無機化合物の分散状態が良好であるほど、すなわち、(b)層状無機化合物の層間距離が大きくなる(好ましくは、(b)層状無機化合物の各層が完全に剥離し、かつ(b)層状無機化合物が組成物中で微分散する)ほど、Pの値は小さくなり、ガスバリア性は良好になると考えてよい。
中でも望ましい態様においては、本発明のスチレン系エラストマー組成物の酸素透過係数Pと、(a)スチレン系エラストマーの酸素透過係数PTPEと、スチレン系エラストマー組成物における層状無機化合物の重量分率ΦFとの間に、下記の関係式が成立する。ここで、「スチレン系エラストマー組成物の酸素透過係数P」および「(a)スチレン系エラストマーの酸素透過係数PTPE」とは、後述の「酸素透過係数PおよびPTPEの測定方法」で説明するように、スチレン系エラストマー組成物および(a)スチレン系エラストマーをそれぞれフィルム状に成形して測定した酸素透過係数を意味する。
P<0.5×PTPE×(1−ΦF)/(1+ΦF/2) (1)
(式中、ΦFは、層状無機化合物の無機成分のみの重量分率である)
かかる関係式(1)が成立する場合、本発明のスチレン系エラストマー組成物のガスバリア性向上は十分なレベルにある。特に、このような本発明のスチレン系エラストマー組成物は、ガスバリア性が要求される物品、すなわちガスバリア性物品用の材料として実用に供することができるものである。
本発明においては、(a)スチレン系エラストマーの酸素透過係数PTPEおよびスチレン系エラストマー組成物の酸素透過係数Pは、具体的には以下の方法で求めることができる。
酸素透過係数P、PTPEの測定方法:
スチレン系エラストマー組成物から作製した厚さが0.1mmのフィルムを使用して、ガス透過性試験装置〔柳本ガスクロマトグラフG2800T(株式会社柳本製作所製)〕を用い、35℃、50%RHの条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて酸素透過量を測定し、この値から酸素透過係数Pを算出する。また、(a)スチレン系エラストマーから作製した厚さが0.1mmのフィルムを使用して、同様の方法で酸素透過係数PTPEを算出する。
スチレン系エラストマー組成物の酸素透過係数Pと、(a)スチレン系エラストマーの酸素透過係数PTPEとの間に上記の関係式(1)が成立しない組成物は、求めるガスバリア性を発現するために多量の(b)層状無機化合物の添加が必要であり、その結果、スチレン系エラストマー組成物の柔軟性の低下、成形性不良等の問題が生じるため好ましくない。
本発明により得られるスチレン系エラストマー組成物は、ガスバリア性物品[例えば、各種食品包装容器、農業用包装材、医療用包装材、ガソリンタンク、化粧品容器、薬剤容器、医薬品包装材、タイヤー用インナーチューブ、ラミネート品、各種容器用のフィルムやシート、シール材(例えば、O−リング、パッキン、ガスケット、蓋材、キャップ、キャップライナー等)等]、ホース、チューブ、自動車部品、シューズ用のエアクッション等の各種物品への用途に使用することができる。
中でも、本発明により得られるスチレン系エラストマー組成物は、ガスバリア性と柔軟性とが共に生かされる、シール材[例えば、O−リング、パッキン、ガスケット(例えば、シリンジ用ガスケット等)、蓋材(例えば、薬栓等)、キャップ(例えば、真空採血管のキャップ等)、キャップライナー等]用の材料として特に適している。
実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例においては、酸素透過係数の測定およびスチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離の測定は、上述の方法で行った。
実施例1
ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:MAE;無機物含有量:68重量%〕10gとエチレン/アクリル酸共重合樹脂〔樹脂系相溶化剤;(株)日本ポリケム製、商品名:ノバテックEAA A210K〕23gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練した後、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2002〕67gを加え、さらに溶融混練し、次いで室温まで冷却してスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、15,100cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、33.2オングストロームであった。
対照例1
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2002〕を、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融し、室温まで冷却した後、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数PTPEを前記した方法で測定したところ、72,400cc・20μm/m2・day・atmであった。
比較例1(1)
無処理合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:ME100〕10gとポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2002〕67gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練し、次いで室温まで冷却してスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、55,700cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、12.1オングストロームであった。
比較例1(2)
ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:MAE〕10gとポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2002〕67gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練し、次いで室温まで冷却して、スチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、31,600cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、32.4オングストロームであった。
比較例1(3)
ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:MAE;無機物含有量:68重量%〕10gに代えて無処理合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:ME100〕10gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数P(cc・20μm/m2・day・atm)を前記した方法で測定したところ、41,700cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、12.1オングストロームであった。
実施例2
樹脂系相溶化剤としてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)〔(株)住友化学工業製、商品名:ボンドファーストE〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、28,400cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、32.5オングストロームであった。
実施例3
樹脂系相溶化剤としてエチレン/エチルアクリレート共重合体〔(株)日本ユニカー製、商品名:NUCコポリマーNUC−6221〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、25,600cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、32.6オングストロームであった。
実施例4
樹脂系相溶化剤としてエチレン/メタクリル酸亜鉛塩共重合体アイオノマー〔(株)三井・デュポンポリケミカル製、商品名:ハイミラン1706Zn〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、22,200cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、32.8オングストロームであった。
実施例5
樹脂系相溶化剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン〔(株)三洋化成工業製、商品名:ユーメックス1001〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、19,400cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、33.4オングストロームであった。
実施例6
樹脂系相溶化剤として特開平10−306196号公報の参考例7に記載の方法に準じて合成したポリプロピレン−ポリ(アクリル酸/エチルアクリレート)型ジブロック共重合体〔ポリプロピレンブロックの数平均分子量:10,000、ポリ(アクリル酸/エチルアクリレート)ブロックの数平均分子量:40,000、ブロック共重合体の全繰り返し単位に対するアクリル酸に由来する構造単位の含有量:8.1モル%〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、29,400cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、32.6オングストロームであった。
実施例7
樹脂系相溶化剤として特開平10−306196号公報の参考例7に記載の方法に準じて合成したポリプロピレン−ポリ(アクリル酸/エチルアクリレート)型ジブロック共重合体〔ポリプロピレンブロックの数平均分子量:10,000、ポリ(アクリル酸/エチルアクリレート)ブロックの数平均分子量:10,000、ブロック共重合体の全繰り返し単位に対するアクリル酸に由来する構造単位の含有量:7モル%〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、16,000cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、37.1オングストロームであった。
実施例8
樹脂系相溶化剤として特開平10−306196号公報の参考例7に記載の方法に準じて合成したポリプロピレン−ポリ(アクリル酸/エチルアクリレート)型ジブロック共重合体〔ポリプロピレンブロックの数平均分子量:4,000、ポリ(アクリル酸/エチルアクリレート)ブロックの数平均分子量:4,000、ブロック共重合体の全繰り返し単位に対するアクリル酸に由来する構造単位の含有量:11モル%〕23gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、12,000cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、37.8オングストロームであった。
実施例9
層状無機化合物としてジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔(株)コープケミカル製、商品名:MEE;無機物含有量:70重量%〕10gを使用し、かつ、スチレン系エラストマーとしてポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔(株)クラレ製、商品名:セプトン2007〕を使用したこと以外は実施例5と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、9,600cc・20μm/m2・day・atmであり、後述する対照例2と比較すれば明らかなように、ガスバリア性の大幅な向上が認められた。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、X線回折パターンにおいて、合成雲母に由来するピークは完全に消失しており、層状無機化合物の各層が完全に剥離していることが確認できた。層間距離は44オングストローム以上である。
対照例2
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2007〕をラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融した後、室温まで冷却し、次いでプレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数を前記した方法で測定したところ、76,400cc・20μm/m2・day・atmであった。
比較例2(1)
無処理合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:ME100〕10gとポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2007〕67gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練し、次いで室温まで冷却してスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、58,700cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、12.1オングストロームであった。
比較例2(2)
ジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔(株)コープケミカル製、商品名:MEE〕10gとポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:セプトン2007〕67gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練し、次いで室温まで冷却してスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、48,000cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、26.1オングストロームであった。
比較例2(3)
ジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔(株)コープケミカル製、商品名:MEE〕10gに代えて無処理合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:ME100〕10gを使用したこと以外は実施例9と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数P(cc・20μm/m2・day・atm)を前記した方法で測定したところ、35,500cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、12.1オングストロームであった。
なお、比較対照のため、実施例9および比較例2(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物から得られたフィルム(厚さ:0.1mm)のX線回折パターンを図1に示す。
実施例10
スチレン系エラストマーとしてポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体の水素添加物〔(株)クラレ製、商品名:ハイブラー7125〕を使用したこと以外は実施例9と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、5,300cc・20μm/m2・day・atmであり、後述する対照例3と比較すれば明らかなように、ガスバリア性の大幅な向上が認められた。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、X線回折パターンにおいて、合成雲母に由来するピークは完全に消失しており、層状無機化合物の各層が完全に剥離していることが確認できた。層間距離は44オングストローム以上である。
対照例3
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン系エラストマー;(株)クラレ製、商品名:ハイブラー7125〕をラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融した後、室温まで冷却し、次いでプレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数を前記した方法で測定したところ、54,600cc・20μm/m2・day・atmであった。
比較例3(1)
無処理合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:ME100〕10gとポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体の水素添加物〔(株)クラレ製、商品名:ハイブラー7125〕67gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練し、次いで室温まで冷却して、スチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、32,700cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、12.0オングストロームであった。
比較例3(2)
ジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔(株)コープケミカル製、商品名:MEE;無機物含有量:70重量%〕10gとポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体の水素添加物〔(株)クラレ製、商品名:ハイブラー7125〕67gを、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製〕を使用して溶融混練し、次いで室温まで冷却して、スチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数P(cc・20μm/m2・day・atm)を前記した方法で測定したところ、26,000cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、24.9オングストロームであった。
比較例3(3)
ジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウムイオンで処理した合成雲母〔(株)コープケミカル製、商品名:MEE〕10gに代えて無処理合成雲母〔層状無機化合物;(株)コープケミカル製、商品名:ME100〕10gを使用したこと以外は実施例10と同様にしてスチレン系エラストマー組成物を得た。
得られたスチレン系エラストマー組成物を使用して、プレス成形を行い、フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数Pを前記した方法で測定したところ、28,100cc・20μm/m2・day・atmであった。また、スチレン系エラストマー組成物中の層状無機化合物の層間距離を前記した方法で測定したところ、12.1オングストロームであった。
なお、比較対照のため、実施例10および比較例3(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物からそれぞれ得られたフィルム(厚さ:0.1mm)のX線回折パターンを図2に示す(図2)。
さらに、本発明および比較例のスチレン系エラストマー組成物における分散状態を確認するため、以下の観察を行った。
実施例10および比較例3(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物から得られたシート(厚さ:1mm)をウルトラミクロトーム(商品名、ライカ社製)を使用して凍結超薄切片とした後、四酸化オスミウムで染色し、透過型電子顕微鏡(TEM;H−800NA型、日立製作所製;測定条件:加速電圧100KV)観察を行った。断面写真をそれぞれ図3および4に示す。
図3において、実施例10のスチレン系エラストマー組成物では、層状無機化合物が完全に層間剥離し、十分に分散していることが理解できる。一方、図4において、比較例3(2)のスチレン系エラストマー組成物では、層状無機化合物は層間剥離していないことが明らかである。
産業上の利用可能性
本発明によれば、ガスバリア性が向上し、機械的特性も良好なスチレン系エラストマー組成物が提供される。
本出願は日本国において出願された特願2002−147535を優先権主張の基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、本明細書において引用された特許および特許出願を含む文献は、引用したことによってその内容のすべてが開示されたと同程度に本明細書中に組み込まれるものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、後述の実施例9および比較例2(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物からなるフィルムの広角X線回折パターンである。図1の点線で示す比較例2(2)の2つのピークのうち、左側のピークは層状無機化合物の(001)面に対応するピークであり、右側のピークは層状無機化合物の(002)面に対応するピークである。
図2は、後述の実施例10および比較例3(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物からなるフィルムの広角X線回折パターンである。図2の点線で示す比較例3(2)の2つのピークのうち、左側のピークは層状無機化合物の(001)面に対応するピークであり、右側のピークは層状無機化合物の(002)面に対応するピークである。
図3は、後述の実施例10で得られたスチレン系エラストマー組成物からなるシートの超薄切片断面を透過型電子顕微鏡にて観察した写真(上)および当該組成物中での層状無機化合物(合成雲母)の分散状態を示した模式図(下)である。
図4は、後述の比較例3(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物からなるシートの超薄切片断面を透過型電子顕微鏡にて観察した写真(上)および当該組成物中での層状無機化合物(合成雲母)の分散状態を示した模式図(下)である。
図5は、図3に記載された、後述の実施例10で得られたスチレン系エラストマー組成物からなるシートの超薄切片断面を透過型電子顕微鏡にて観察した写真である。
図6は、図4に記載された、後述の比較例3(2)で得られたスチレン系エラストマー組成物からなるシートの超薄切片断面を透過型電子顕微鏡にて観察した写真である。
Claims (14)
- (a)スチレン系エラストマー、
(b)有機カチオンにより有機化された層状無機化合物、および
(c)当該(a)スチレン系エラストマーと相容性を有し、極性官能基を分子内に有する極性重合体、からなるスチレン系エラストマー組成物であって、
当該組成物中の当該(b)有機化された層状無機化合物の層間距離が15オングストローム以上であることを特徴とする、スチレン系エラストマー組成物。 - 広角X線回折測定パターンにおいて、前記(b)層状無機化合物に由来するピークが完全に消失していることを特徴とする請求項1記載の組成物。
- 前記(a)スチレン系エラストマーが、極性官能基を、当該エラストマーを構成する繰り返し単位の総モル量に対し0.05モル%未満の割合で含有するエラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
- 前記(b)層状無機化合物が、極性官能基を分子内に含有する有機カチオンにより有機化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記有機カチオンが、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の極性官能基を分子内に含有する有機カチオンである、請求項4記載の組成物。
- 前記(c)極性重合体が、極性官能基を、当該極性重合体を構成する繰り返し単位の総モル量に対し0.05モル%以上含有する重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記成分(a)、成分(b)および成分(c)の重量割合が、
成分(b)/成分(a)=0.01/100〜200/100、かつ
成分(c)/成分(a)=0.01/100〜5000/100
であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。 - 前記スチレン系エラストマー組成物の酸素透過係数Pと、前記(a)スチレン系エラストマーの酸素透過係数PTPEと、前記(b)層状無機化合物が重合体組成物において占める重量分率ΦFとの間に下記の関係式(1)が成立することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
P<0.5×PTPE×(1−ΦF)/(1+ΦF/2) (1) - (a)スチレン系エラストマー、
(b)有機カチオンにより有機化された層状無機化合物、および
(c)当該(a)スチレン系エラストマーと相容性を有し、極性官能基を分子内に有する極性重合体、
を溶融混練によって配合すること
からなる、請求項1記載の組成物の製造方法。 - (b)有機化された層状無機化合物と(c)極性重合体とを溶融混練して組成物を調製すること、および
当該組成物と(a)スチレン系エラストマーとを溶融混練すること
からなる、請求項1記載の組成物の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載されたスチレン系エラストマー組成物からなる、物品。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載されたスチレン系エラストマー組成物からなる、ガスバリア性物品。
- O−リング、パッキン、ガスケット、蓋材、キャップ、キャップライナーから選ばれるシール材である、請求項12のガスバリア性物品。
- 前記シール材が、キャップライナー、真空採血管のキャップ、薬栓、シリンジ用ガスケットから選ばれる、請求項13のガスバリア性物品。
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