JPH1030039A - ポリオレフィン系複合材料およびその製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン系複合材料およびその製造方法

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JPH1030039A
JPH1030039A JP34625196A JP34625196A JPH1030039A JP H1030039 A JPH1030039 A JP H1030039A JP 34625196 A JP34625196 A JP 34625196A JP 34625196 A JP34625196 A JP 34625196A JP H1030039 A JPH1030039 A JP H1030039A
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JP
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polyolefin
composite material
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carboxylic acid
lipophilic
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Application number
JP34625196A
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English (en)
Inventor
Hirofumi Inoue
浩文 井上
Teruo Hosokawa
輝夫 細川
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Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 層状珪酸塩化合物を有機溶媒等の膨潤・分散
溶媒等で膨潤・ヘき開することなく、無溶媒下での混合
・溶融混練するだけで得られる高い機械的強度、耐熱性
等を発揮するポリオレフィン系複合材料。 【解決手段】 (a)不飽和カルボン酸若しくはその誘
導体と、それらとの反応性比の積が1以下となる単量体
とからなる共重合体部分が、ポリオレフィン中にグラフ
ト及び/又はブロックで存在する変性ポリオレフィン、
若しくは、該変性ポリオレフィンを少なくとも1重量%
以上含有するポリオレフィンを99.9〜60重量%
と、(b)膨潤性層状珪酸塩にテトラアルキルアンモニ
ウムカチオンを挿入してなる親油性層間化合物を0.1
〜40重量%とを有してなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐衝撃性、耐熱性
に優れ、自動車部品、家電製品材料、航空機部品、建築
用材料等に応用することができるポリオレフィン系複合
材料、および従来の方法に比べ非常に簡便でかつ経済的
な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリプロピレンを始めとする
ポリオレフィン樹脂の諸特性、特に機械的特性及ぴ耐熱
性を改良するために、剛性の高い無機質フィラーの混
合、溶融混練の検討が行われている。無機質フィラーを
添加したポリオレフィン樹脂組成物は、優れた剛性と耐
熱性を有することから、特に自動車部品や家電製品分野
等の成形材料として広く用いられている。複合材料の剛
性、耐衝撃性や耐熱性等の高性能化は、フィラーをサブ
ミクロンレベルに細かくし、かつ分散制御によりなされ
ることが知られている(特願平5−30446号参
照)。しかしながら、この方法は、フィラーを超微粒子
化するために粉砕と分級の工程を繰り返し行う必要があ
るため、フィラーのコストが非常に高く、経済的でな
い。また、樹脂組成物中にフィラーを分散する手段とし
て、層状化合物にアミン類を導入し層間を広げた後、目
的とするモノマーを層間に含有させ、このモノマーを重
合する際に放出されるエネルギーによって層状粘土鉱物
を自己崩壊させ、ナノメーターレベルで分散させる方法
が知られている(例えば、特開昭62−74957号公
報、特開昭64−9202号公報等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この手
法では効率よくフィラーを均一分散することができる
が、その重合反応はラジカル重合、あるいは縮重合系に
限られている。さらに、層間に導入するモノマーである
エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン等のポリオ
レフィン系モノマーは、非極性であるため、層間に安定
に存在させるためにはこれらを液状にして高圧下、もし
くは高濃度下で重合反応させなければならない。しか
し、単独あるいは共重合系であってもそれらをモノマー
として使うには実際上困難であり、また、モノマーを重
合させる特有の重合設備が必要であるため、製品価格に
高い固定費を担うため経済的でない。更に、ポリオレフ
ィンで使われるアニオン系配位重合系やラジカル重合系
に上記方法を適用すると、層間に存在するアミノ酸など
に存在する活性水素が反応雰囲気中で触媒毒として作用
するため、生成するポリマーの高分子量化や立体規則性
の制御が困難であるため不適当である。また、フィラー
をポリオレフィン中に分散させる手段として、アンモニ
ウム塩等のオニウム塩を層間に把持させた珪酸塩化合物
を用いる方法が知られている(特開平6−41346号
公報、特開平7−70357号公報参照)。しかしなが
ら、これらの方法では、オニウム塩で親油化された層状
珪酸塩を微細かつ均一に分散させるために、有機溶媒等
からなる膨潤・分散溶媒を用い、層間を5nm以上に膨
潤・ヘき開させた状態の化合物を用いる必要がある。し
かし、この方法では、溶媒除去などの環境面等で実用的
でなく、溶媒の存在下での混練は生産性が悪く経済的で
ない。また、生成した複合材料中に溶媒等を完全に除去
することが困難であり、組成物の耐熱性、剛性等の性能
の低下を及ぼす。したがって、無溶媒下でのポリオレフ
ィン中への微細かつ均一な分散が望まれる。即ち、この
ような微細かつ均一なフィラーの分散は、ポリアミド中
においては可能とされているが、ポリオレフィン中で分
散させたものは従来なかった。本発明は前記課題を解決
するためになされたもので、層状珪酸塩化合物を有機溶
媒等の膨潤・分散溶媒等で膨潤・ヘき開することなく、
無溶媒下での混合・溶融混練するだけで得られる高い機
械的強度、耐熱性等を発揮するポリオレフィン系複合材
料を目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の如
き従来の技術の問題点を解決すべく鋭意研究し、各種の
系統的実験を重ねた結果、本発明を成すに至ったもので
ある。本発明のポリオレフィン系複合材料は、(a)不
飽和カルボン酸若しくはその誘導体(以下、M1と称す
る)と、M1との反応性比の積が1以下となる単量体
(以下、M2と称する)とからなる共重合体部分が、ポ
リオレフィン中にグラフト及び/又はブロックで存在す
る変性ポリオレフィン、若しくは、該変性ポリオレフィ
ンを少なくとも1重量%以上含有するポリオレフィンを
99.9〜60重量%と、(b)膨潤性層状珪酸塩にテ
トラアルキルアンモニウムカチオンを挿入してなる親油
性層間化合物を0.1〜40重量%とを有してなること
を特徴とするものである。この際、M1の反応性比と、
2の反応性比がそれぞれ共に1以下であることが望ま
しい。
【0005】また、膨潤性層状珪酸塩は、電荷密度が4
0〜150Å2/charge、底面間距離d(001)が7〜15
Å、陽イオン交換容量(以下、CECと称する)が25
〜200ミリ当量/100gであることが望ましい。また、
テトラアルキルアンモニウムカチオンは、主鎖長がC4
〜C30のアルキル基を少なくとも一つ有し、膨潤性層
状珪酸塩のCECに対し0.3〜5当量含有されること
が望ましい。さらに、本発明のポリオレフィン系複合材
料においては、その膨潤性層状珪酸塩は、長さが300
Å以上で、10層以下の積層状態で均一に分散している
ものである。本発明のポリオレフィン系複合材料の製造
方法は、上記変性ポリオレフィンまたは該変性ポリオレ
フィンを少なくとも1重量%以上含有するポリオレフィ
ンと、膨潤性層状珪酸塩にテトラアルキルアンモニウム
カチオンを挿入してなる親油性層間化合物とを無溶媒下
で溶融混練することを特徴とするものである。特に、M
1とM2からなる共重合体部分が、ポリオレフィン中にグ
ラフト及び/又はブロックで存在する変性ポリオレフィ
ン中に、膨潤性層状珪酸塩にテトラアルキルアンモニウ
ムカチオンを挿入してなる親油性層間化合物を無溶媒下
で分散させた後に、ポリオレフィンと溶融混練すること
が望ましい。これらの製造方法において使用する変性ポ
リオレフィンとしては、ポリオレフィンに電離性放射線
を照射した後に、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体
と、それらとの反応性比の積が1以下となる単量体とを
接触して得られたものが好ましい。また、ポリオレフィ
ンに電離性放射線を照射した後に、不飽和カルボン酸若
しくはその誘導体と、それらとの反応性比の積が1以下
となる単量体とを接触して得られた変性ポリオレフィン
と、膨潤性層状珪酸塩にテトラアルキルアンモニウムカ
チオンを挿入してなる親油性層間化合物とを無溶媒下で
接触混練させた後に、カップリング剤の存在下でポリオ
レフィンと接触混合することも望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳説する。本発
明の成分(a)には、不飽和カルボン酸もしくはその誘
導体(M1)と、単量体(M2)をグラフト共重合又はブ
ロック共重合した変性ポリオレフィン、若しくは、その
変性ポリオレフィンを少なくとも1重量%以上含有する
ポリオレフィンが用いられる。ここで、不飽和カルボン
酸もしくはその誘導体(M1)の反応性比r1と、単量体
(M2)の反応性比r2の積(r1・r2)は1以下である
ことが必要である。本発明で用いる反応性比の積(r1
・r2)は、周知のように、一般に交互共重合性の尺度
として用いられ、下記計算式により求めることができる
(参照「Polymer Handbook」SECOND EDITION J. BRANDR
UP ・ E. H. IMMERGUT, Editors withthe collaboration
of W. McDOWELL A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION、
「共重合1 −反応解析−」発行:培風館 昭和50年
6月20日)。 r1・r2=exp[−(e1−e22] ここで、e1、e2はそれぞれ成分M1、M2に対する反応
速度定数に関係する値であって、極性効果の程度を表わ
すパラメータである。また、不飽和カルボン酸若しくは
その誘導体M1の反応性比r1と単量体M2の反応性比r2
は共に1以下であることが望ましい。しかし、反応性比
1が1以上であっても、反応性比の積が1以下であれ
ば、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体M1と単量体
2の共重合度は低くなるものの、不飽和カルボン酸若
しくはその誘導体の単独グラフト種の重合度を単量体M
2の存在によって高めることができ、ポリオレフィンの
主鎖に多量の極性基を導入することができる。
【0007】本発明の成分(a)における不飽和カルボ
ン酸もしくはその誘導体(M1)としては、不飽和カル
ボン酸誘導体、酸無水物、およびエポキシ基、アミド
基、オニウム塩基、水酸基もしくはイミド基含有誘導
体、金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸の具体例
としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フ
マル酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンド−ビシクロ
−[2,2,1]−1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−
5−へプテン−2,3−ジカルボン酸、エンド−ビシク
ロ−[2,2,1]−5−へプテン−2,3−ジカルボン
酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン
酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、ソル
ビン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。無水物の具
体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水
シトラコン酸、エンド−ビシクロ−[2,2,1]−1,
4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−へプテン−2,3
−無水ジカルボン酸、エンド−ビシクロ−[2,2,1]
−5−へプテン−2,3−無水ジカルボン酸、シス−4
−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸等が例示
される。エポキシ基含有誘導体の具体例としては、アク
リル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン
酸グリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリ
シジルエステル、ブテントリカルボン酸ジグリシジルエ
ステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステ
ル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリ
シジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、
3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−3−メチル
−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4
−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロ
ヘキセンモノオキシド等が例示される。アミド基含有誘
導体の具体例としては、アリルアミン、メタクリル酸ア
ミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル
酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、メタクリル
アミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、
マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,
N−ジエチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジ
アミド等が例示される。オニウム塩基含有誘導体の具体
例としては、塩化アクリル酸エチルトリメチルアンモニ
ウム、塩化メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウ
ム、4−ビニルピリジン塩酸塩等が例示される。水酸基
含有誘導体の具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキ
シエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリ
ル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロ
キシプロピル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロ
キシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒド
ロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−
ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−
ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−
ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン等が例示され
る。イミド基含有誘導体の具体例としては、マレイミ
ド、N−ブチルマレイイミド、N−フェニルマレイミ
ド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。金
属塩の具体例としては、アクリル酸ナトリウム、アクリ
ル酸カルシウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル
酸カルシウム等が例示される。
【0008】本発明における単量体M2とは、単量体M1
との反応性比の積(r1・r2)が1以下(好ましくは、
1,r2共に1以下)の不飽和化合物であり、スチレン
系、ビニルピリジン系、ジエン系、ニトリル系等が挙げ
られる。スチレン系単量体の具体例としては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、o−メチル−α−メチルスチ
レン、m−メチル−α−メチルスチレン、p−メチル−
α−メチルスチレン、p−メトキシ−α−メチルスチレ
ン、p−クロロメチル−α−メチルスチレン、2−クロ
ロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロス
チレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p
−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、p−クロロメ
チルスチレン、p−クロロベンジルスチレン、p−メト
キシスチレン、p−エトキシスチレン、p−フェノキシ
スチレン、p−(クロロメトキシ)−スチレン、p−
(クロロフェノキシ)−スチレン等が例示される。ビニ
ルピリジン系単量体の具体例としては、2−ビニルピリ
ジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン N−
オキサイド、2−ビニル−5−メチルピリジン、2−ビ
ニル−5−エチルピリジン等が例示される。ジエン系単
量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレ
ン、2−エチル−1,3−ブタジエン等が例示される。
ニトリル系単量体の具体例としては、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル、アリルシアニド、2−ブテン
ニトリル、シス−ペンテンニトリル、トランス−ペンテ
ンニトリル等が例示される。
【0009】単量体M1、M2の反応性比の積(r1
2)が1以下(好ましくは、r1,r2共に1以下)と
なる具体的なM1、M2の組合せを表1に示すが、グラフ
ト化ポリオレフィンを製造する際に使用される単量体M
1、M2の組合せはこれに限定されず、上記の単量体を適
宜組み合わせて選択することができる。
【0010】
【表1】 表1中、 r1・r2=exp[−(e1−e22] r1=[Q1/Q2]exp[−e1(e1−e2)] r2=[Q2/Q1]exp[−e2(e2−e1)] Qとeの値は、J. BRANDRUP et al. ed;"Polymer Handb
ook", Interscienceより引用した。
【0011】なかでも、M1としてメタクリル酸グリシ
ジル、無水マレインもしくはメタクリル酸グリシジル、
2としてスチレン系単量体とした組合せが好ましく、
とりわけメタクリル酸グリシジルとスチレンとの組合せ
が好適である。
【0012】本発明において、変性ポリオレフィンを製
造する際に使用される有機過酸化物に特に限定はなく、
適宜選択することができ、単独、もしくは2種以上併用
してもよい。有機過酸化物の具体例としては、ジ−t−
ブチルパーオキサイド、t−ジクミルパーオキサイド、
ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイ
ド、アセチルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイ
ド等のジアシルパーオキサイド、ジ−i−プロピルパー
オキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキ
シカーボネート等のパーオキシカーボネート、t−ブチ
ルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシラウレ
ート等のパーオキジエステル、メチルエチルケトンパー
オキシド等のケトンパーオキシド、1,1−ビス−t−
ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ビス−t−
ブチルパーオキシオクタン等のパーオキシケタール、t
−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパー
オキサイド等のハイドロパーオキサイド、2,2'−アゾ
ビスイソブチロニトリル、2,2'−アソビス(2,4,
4)−トリメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が例
示される。
【0013】本発明の成分(a)におけるポリオレフィ
ンとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−へキ
セン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン
の単独重合体或いは2種以上からなるランダムまたはブ
ロック共重合体が等が挙げられる。ポリオレフィンの具
体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1
−ブテン、ポリ1−へキセン、ポリイソブテン、ポリ3
−メチル−1−ペンテン、ポリ4−メチル−1−ペンテ
ン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブ
テン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン
共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン
−プロピレン−1−ブテン共重合体、デセン−1−メチ
ル−1−ペンテン共重合体等が例示される。
【0014】本発明において、ポリオレフィンに、不飽
和カルボン酸またはその誘導体M1と、そのM1との反応
性比の積(r1・r2)が1以下(好ましくは、r1とr2
は共に1以下)の単量体M2をグラフト共重合させる方
法は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法もしくは塊
状重合法(押出機による方法を含む。)等の種々の方法
によって製造できる。製造方法の具体例としては、ポリ
オレフィンとグラフト単量体および有機過酸化物とをタ
ンブラー、へンシェルミキサー、リボンミキサー等で十
分混合した後、溶融混練装置内で溶融混練を行い変性ポ
リオレフィンを得る方法、ポリオレフィンをキシレンな
どの有機溶剤に溶解した後、窒素雰囲気下で有機過酸化
物を加え撹拌しながら加熱反応せしめ、反応冷却後洗
浄、濾過、乾燥を行ない変性ポリオレフィンを得る方
法、ポリオレフィンにグラフト単量体の存在下で紫外線
や放射線を照射する方法、ポリオレフィンに電離性放射
線を照射した後にグラフト単量体を接触混合する方法、
および酸素やオゾンと接触させる方法などが例示され
る。
【0015】本発明における変性ポリオレフィンは、単
量体M1が95〜5重量%、および単量体M2が95〜5
%からなる単量体混合物を、ポリオレフィン100重量
部に対して、0.01〜50重量部グラフト共重合する
ことにより得られる。単量体混合物の配合が0.01重
量部未満では樹脂組成物の改質効果が認められず、50
重量部をこえるとグラフト反応効率が低下し、未反応も
しくはグラフトしていない共重合化合物が変性ポリオレ
フィン中に残留するために、耐熱性、耐薬品性等の性能
が低下する。また、本発明における変性ポリオレフィン
製造における有機過酸化物の配合は、100重量部のポ
リオレフィンに対して0.01〜10重量部である。有
機過酸化物の配合が0.01重量部未満では、樹脂組成
物の改質効果が認められず、10重量部を超えると、ポ
リオレフィンが本来有している物性が損なわれ、耐熱
性、耐薬品性等の性能が低下する。また成分(a)に
は、ポリオレフィンに通常用いられる酸化防止剤、紫外
線吸収剤、光安定剤等の抗対候性剤、造核剤、滑剤、耐
電防止剤、着色剤、可塑剤、表面光沢改良剤等の種々の
添加剤を、本発明の効果を損ねない範囲で添加すること
ができる。
【0016】本発明における成分(b)には、膨潤性層
状珪酸塩にテトラアルキルアンモニウムカチオンを挿入
してなる親油性層間化合物が用いられる。本発明におけ
る膨潤性層状珪酸塩とは、電荷密度が40〜150Å2
/charge、底面間距離d(001)が7〜15Å、25〜2
00ミリ当量/100g陽イオン交換容量(CEC)を
有する膨潤性粘土化合物等が例示される。膨潤性粘土化
合物には、珪酸マグネシウムまたは珪酸アルミニウムか
ら構成される層状フィロ珪酸鉱物等が挙げられる。その
具体例としては、モンモリロナイト、サポナイト、ハイ
デライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブン
サイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、トリオクタヘド
ラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュラ
イト等のバーミキュライト類、マスコバイト、フィロゴ
バイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、
テトラシリシックマイカ等のマイカ類などが例示され
る。さらに、タルクにフッ素処理を行って膨潤性マイカ
に合成した化合物、或いは水熱合成によって上記のよう
な構造を得たものが例示される。
【0017】さらに、層間に担持されているカチオン
に、ナトリウム、カリウム、リチウム等異なる同種のイ
オンの置換による種々の化合物が適用できる。膨潤性層
状珪酸塩の層電荷密度は40〜150Å2/chargeであ
ることが好ましく、40〜100Å2/chargeであれば
さらに好ましい。電荷密度が40Å2/chargeよりも小
さいと上述したような膨潤性層状珪酸塩が存在せず、電
荷密度が150Å2/chargeよりも大きいと珪酸塩層ど
うしの電荷による相互作用が大きいため、合成樹脂に分
散させたときに良好な分散性を示さず、複合材料の機械
的強度および耐熱性の改善が不十分であるので好ましく
ない。また、膨潤性層状珪酸塩は25〜200ミリ当量
/100g陽イオン交換容量(CEC)のものが良く、
50〜150ミリ当量/100g陽イオン交換容量であ
ればより好ましい。25ミリ当量/100g陽イオン交
換容量よりも小さいと、親油性層間化合物中の有機カチ
オン含有量が少なくなるため、合成樹脂に分散させたと
きに良好な分散性を示さず、複合材料の機械的強度およ
び耐熱性の改善が不十分である。200ミリ当量/10
0g陽イオン交換容量よりも大きいと、低融点有機物で
ある有機カチオンの含有量が多くなるため、耐熱性が低
下してしまうので好ましくない。
【0018】本発明におけるテトラアルキルアンモニウ
ムカチオンは、下記化学式に示される構造を有する正電
荷有機化合物である。
【化1】 化学式中のR1、R2、R3およびR4は、炭素数が1以上
のアルキル基であって、少なくともそのアルキル基の中
の1つが、主鎖長で炭素数C4〜C30が好ましい。炭
素数がC4未満では、膨潤性層状珪酸塩の層間の結合力
を弱めるまで十分に広げることができず、また膨潤性層
状珪酸塩の親油性を向上させることができないため、樹
脂中にフィラーが均一分散せず、本発明の効果を発現す
るに至らない。炭素数がC30以上では、テトラアルキ
ルアンモニウムカチオンの分子サイズが大きいため層間
に入りにくく、層間に導入された絶対量が少ないため、
上記同様本発明の効果を発現するに至らない。また、R
1、R2、R3およびR4の少なくとも1つであって末端に
官能基を有するものであっても良い。官能基としては、
例えば、カルボン酸、水酸基、アミノ基などが挙げられ
る。これらの官能基を末端に有するテトラアルキルアン
モニウム化合物としては、N−アルキルアミノカルボン
酸、N−アルキルアミノアルコール、N−アルキルアミ
ン等が挙げられる。N−アルキルアミノカルボン酸の具
体例としては、N−nドデシルN,Nジメチル4−アミ
ノブチルカルボン酸、N−nドデシルN,Nジメチル6
−アミノヘキシルカルボン酸、N−nドデシルN,Nジ
メチル8−アミノオクチルカルボン酸、N−nドデシル
N,Nジメチル10−アミノデシルカルボン酸、N−n
ドデシルN,Nジメチル12−アミノラウリルカルボン
酸、N−nドデシルN,Nジメチル14−アミノテトラ
デシルカルボン酸、N−nドデシルN,Nジメチル16
−アミノヘキサデシルカルボン酸、N−nドデシルN,
Nジメチル18−アミノオクタデシルカルボン酸、N−
nドデシルN,Nジメチル20−アミノエイコシルカル
ボン酸等が挙げられる。N−アルキルアミノアルコール
の具体例としては、N−nドデシルN,Nジメチル4−
アミノブタノール、N−nドデシルN,Nジメチル6−
アミノヘキサノール、N−nドデシルN,Nジメチル8
−アミノオクタノール、N−nドデシルN,Nジメチル
10−アミノデカノール、N−nドデシルN,Nジメチ
ル12−アミノラウリルノール、N−nドデシルN,N
ジメチル14−アミノテトラデカノール、N−nドデシ
ルN,Nジメチル16−アミノヘキサデカノール、N−
nドデシルN,Nジメチル18−アミノオクタデカノー
ル、N−nドデシルN,Nジメチル20−アミノエイコ
サノール等が挙げられる。N−アルキルアミンの具体例
としては、4−アミノブチルN−nドデシルN,Nジメ
チルアンモニウム、6−アミノヘキシルN−nドデシル
N,Nジメチルアンモニウム、8−アミノオクチルN−
nドデシルN,Nジメチルアンモニウム、10−アミノ
デシルN−nドデシルN,Nジメチルアンモニウム、1
2−アミノラウリルN−nドデシルN,Nジメチルアン
モニウム、14−アミノテトラデシルN−nドデシル
N,Nジメチルアンモニウム、16−アミノヘキサデシ
ルN−nドデシルN,Nジメチルアンモニウム、18−
アミノオクタデシルN−nドデシルN,Nジメチルアン
モニウム、20−アミノエイコシルN−nドデシルN,
Nジメチルアンモニウム等が挙げられる。尚、化学式
中、Xは種々のハロゲン元素であるが、特に塩素が好ま
しい。
【0019】本発明の親油性層間化合物は、膨潤性層状
珪酸塩にこの有機カチオンを挿入させることで、膨潤化
と共にイオン交換反応させ親油化処理し得られる。親油
化処理として具体的には、膨潤性層状珪酸塩の粉末を水
やアルコール等で十分溶媒和させた後、上記有機カチオ
ンを加え、撹拌し、膨潤性層状珪酸塩の層間に担持して
いる金属カチオンを有機カチオンに置換させる。その
後、未置換の有機カチオンを洗浄し、濾過、乾燥する。
有機カチオンの添加量は、例えばカラム浸透法(参照:
「粘土ハンドブック」第567〜577頁、技法堂出
版)や、メチレンブルー吸着量測定法(日本ベントナイ
ト工業会標準試験法、JBAS−107−91)等の方
法で膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量(CEC)を
測定し決定される。有機カチオンの添加量は、CECに
対して0.3〜5当量の範囲が好ましいが、特に0.3〜
2当量の範囲が最も好ましい。有機カチオンの添加量が
CECに対して0.3当量未満であるとポリオレフィン
との親和性およびポリオレフィン系複合材料中の層状珪
酸塩の分散の低下を及ぼし、5当量より多いとポリオレ
フィン系複合材料の耐熱性や剛性等が低下する。
【0020】本発明のポリオレフィン系複合材料は、
(a)単量体M1と、単量体M2をグラフト共重合した変
性ポリオレフィンもしくは、該変性ポリオレフィンを少
なくとも1重量%以上含有するポリオレフィンと、
(b)親油性層間化合物とをタンブラー、へンシェルミ
キサー、リボンミキサー等で十分混合した後、溶融混練
装置を用い溶融混練を行い、剪断による分散を行えばよ
い。この際、溶媒を必要とせず、無溶媒下で行なうこと
ができる。また、親油性層間化合物を変性ポリオレフィ
ン中に分散させた後、さらにポリオレフィンを添加し複
合材料を製造する方法が好適である。この後工程でのポ
リオレフィンとの接触混合においては、カップリング剤
の存在下で行なうことが望ましい。カップリング剤を用
いることによって、変性ポリオレフィン中の極性基と有
機カチオンの末端官能基とが容易に化学結合を形成する
ことができ、ポリオレフィン主鎖に効率良く固定するこ
とができるからである。そのようなカップリング剤とし
ては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,
4−トリレンジイソシアネート、2,4トリレンジイソ
シアネートと2,6−トリレンイソシアネートとの混合
物、ジフェニールメタンジイソシアネート、1,5−ナ
フチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネー
ト、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジ
イソシアネート等を挙げることができる。
【0021】溶融混練装置の具体例としては、バンバリ
ーミキサー、ローター付きコンティニュアスミキサー、
二軸押出機(スクリュー回転方向が異方向、同方向)等
が挙げられる。本発明のポリオレフィン系樹脂組成物中
の各成分の割合は、(a)共重合変性ポリオレフィンも
しくは、該変性ポリオレフィンを少なくとも1重量%以
上含有するポリオレフィンの99.9〜60重量%、お
よび(b)親油性層間化合物0.1〜40重量%からな
るポリオレフィン系複合材料である。親油性層間化合物
が、0.1重量%未満では複合材料の耐熱性や機械的特
性等を改善するには至らず、40重量%を超えると、樹
脂成分が少ないため層状珪酸塩の分散が不十分、もしく
は凝集につながり本発明の効果を発現するに至らない。
【0022】本発明の複合材料中の層状珪酸塩は、底面
間距離が7〜15Å、長さが300Å以上の珪酸塩層
が、10層以下の積層体でかつ樹脂中に均一に分散して
いる。このように、複合材料中において層状珪酸塩が、
底面間距離が7〜15Å、長さが300Å以上であっ
て、10層以下の積層体で均一に分散していることによ
り、アスペクト比が極めて大きく、剛性、耐衝撃性等の
機械的特性が高いものとなる。特に、積層した層の数は
少ないほど分散性が向上し好ましい。この分散は、共重
合変性ポリオレフィン中に存在するカルボキシル基、エ
ポキシ基、水酸基等の官能基と親油性層間化合物との間
に物理的および化学的相互作用と、同時に混合・溶融混
練による剪断力を作用させることにより、親油性層間化
合物の珪酸塩層と層との間に働く引力(ファンデアワー
ルス力、静電引力など)に打ち勝ち剥離分散し生じる。
すなわち、M1の単独変性ポリオレフィンでは、官能基
量が少ないため、層状珪酸塩との相互作用小さく、親油
性層間化合物を有機溶媒等の膨潤・分散溶媒等で膨潤・
ヘき開することなく均一に分散し得ないが、本発明の成
分(a)は、変性ポリオレフィン中にM1、M2の共重合
体部分を有するため、M1の単独変性ポリオレフィンに
比べ官能基量が多く、層状珪酸塩と強い相互作用を生じ
る。そのため、層状珪酸塩化合物を有機溶媒等の膨潤・
分散溶媒等で膨潤・ヘき開することなく、溶媒を使用す
ることなく混合・溶融混練するだけで、本発明の特長を
有するポリオレフィン系複合材料を製造でき、その製造
方法は従来の方法より非常に簡便でかつ経済的な方法で
ある。
【0023】また、本発明の方法より得られたポリオレ
フィン系複合材料は、上記のような優れた特徴を有する
ばかりでなく、重合法など従来のフィラーを分散する手
段に用いた工程に較べ非常に簡略化でき、経済的かつ効
果的にポリオレフィン系複合材料を製造することが可能
である。すなわち、(1)本発明の方法は既存の混練機
を用いるため、重合法に較べ非常に簡略化できる。
(2)イオン結合などの強い化学相互作用を利用して、
親油性層間化合物を剥離・分散させるため、層状鉱物の
粉砕や混合方法が簡略化でき、かつ過粉砕によるアスペ
クト比の低下も生じない。(3)本発明で得られたポリ
オレフィン系複合材料は直接射出成形や加熱加圧縮成形
などが利用でき、経済的かつ効果的に製造することが可
能である。更に、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
には、ポリオレフィンに通常用いられる高酸化剤、紫外
線吸収剤等の抗対候性剤、滑剤、耐電防止剤、着色剤等
を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができ
る。
【0024】
【実施例】実施例および比較例により更に詳しく説明す
るが、本発明はこれらの実施例により限定されるもので
はない。まず、3種類のホモポリオレフィン(PP−
1、PP−2、PP−3)を調製した。 [PP−1] メルトフローレート(MFR)=30
(g/10分)、昭和電工(株)製 [PP−2] MFR=6.0(g/10分)、昭和電工
(株)製 [PP−3] MFR=0.5(g/10分)、昭和電工
(株)製
【0025】これらのホモポリオレフィンを使用して以
下の共重合変性ポリオレフィンA〜I及び単独変性ポリ
オレフィンA〜Fを調製した。 [共重合変性ポリオレフィンA]共重合変性ポリオレフ
ィンAは、上記PP−1を100重量部に対して、メタ
クリル酸グリシジル(GMA)5.0重量部、スチレン
5.0重量部、有機過酸化物(t−ブチルパーオキシベ
ンゾエイト、日本油脂(株)製“パーブチルZ”)1
5.0重量%をへンシェルミキサーで均一に混合した
後、同方向二軸混練機(神戸製鋼所(株)製 KTX−
30)にて、200℃、平均滞留時間は約3分で加熱・
混練した。その結果、GMA(M1)の付加量l.6重量
%、スチレン(M2)の付加量1.2重量%、MFR=7
5(g/10分)の共重合変性ポリオレフィンA(GS−P
P1)を得た。
【0026】[共重合変性ポリオレフィンB〜F]共重
合変性ポリオレフィンA(GS−PP1)と同様にし
て、表2中に示す配合量のGMA又は無水マレイン酸を
使用して共重合変性ポリオレフィンB〜E(GS−PP
2、GS−PP3、MS−PP1、MS−PP2)を調
製した。また、PP−1の代りにPP−2を使用したこ
と以外は上記共重合変性ポリオレフィンA(GS−PP
1)と同様にして共重合変性ポリオレフィンF(GS−
PP4)を調製した。 [単独変性ポリオレフィンA〜F]単量体M2(スチレ
ン)を使用しないこと以外は、上記変性ポリオレフィン
A〜Fとそれぞれ同様にして、比較例の単独変性ポリオ
レフィンA〜F(G−PP1、G−PP2、G−PP
3、M−PP1、M−PP2、G−PP4)を調製し
た。尚、表2において、共重合変性ポリオレフィン中の
1、M2の付加量は、核磁気共鳴スペクトル(NM
R)、もしくは/および赤外線吸収スペクトル(IR)
により測定し決定した。
【0027】
【表2】
【0028】[共重合変性ポリオレフィンG]γ線を5
0kGyの条件で照射した上記PP−3を100重量部
に対して、グリシジルメタアクリレート6.0重量部、
ブチルビニルエーテル0.2重量部を混合接触した後、
窒素気流中で60℃、5分間の熱処理を施してグラフト
化してポリプロピレンを得た。これを共重合変性ポリオ
レフィンG(GM−PP3)とする。このポリマーにお
けるGMA(M1)の付加量は3.5重量%、ブチルビニ
ルエーテル(M2)の付加量は0.02重量%であった。
尚、電離性放射線の照射されたPP−3についてESR
測定をしたところ、ポリマーラジカルが存在していた
が、熱処理後にはポリマーラジカルは消失していた。 [共重合変性ポリオレフィンH]γ線を50kGyの条
件で照射した上記PP−3を100重量部に対して、グ
リシジルメタメチルアクリレート10.0重量部、ベン
ジルビニルエーテル0.01重量部を混合接触した後、
窒素気流中で60℃、15分間の熱処理を施してグラフ
ト化してポリプロピレンを得た。これを共重合変性ポリ
オレフィンH(GM−PP4)とする。このポリマーに
おけるGMA(M1)の付加量は8.0重量%、ベンジル
ビニルエーテル(M2)の付加量は0.005重量%であ
った。 [共重合変性ポリオレフィンI]γ線を50kGyの条
件で照射した上記PP−3を100重量部に対して、グ
リシジルメタアクリレート10.0重量部、Nビニルピ
ロリドン0.1重量部を混合接触した後、窒素気流中で
60℃、25分間の熱処理を施してグラフト化してポリ
プロピレンを得た。これを共重合変性ポリオレフィンI
(GM−PP5)とする。このポリマーにおけるGMA
(M1)の付加量は6.5重量%、Nビニルピロリドン
(M2)の付加量は0.02重量%であった。
【0029】また、以下に示す親油性層間化合物A〜H
を調製した。 [親油性層間化合物A(TSM−1)]フッ素型合成マ
イカ(コープケミカル(株)社製“ME−100”、陽
イオン交換容量(CEC)=80meq/100g)をビーカー
内の蒸留水に浸漬し、撹拌して懸濁液とした。この懸濁
液を約60℃で撹拌しながら、フッ素型合成マイカ10
0gに対して塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム
80mmol(市販試薬)を添加し、良く撹拌を行い均質な
懸濁液に調整した。この溶液を洗浄、遠心分離し、凍結
乾燥後粉砕して親油性層間化合物Aを生成した。有機カ
チオンの膨潤性層状珪酸塩への挿入の確認は、生成した
親油性層間化合物の層間距離をX線回折装置(理学
(株)製:RINT2000)を用いた粉末X線回折法により行
った。このX線回折測定から、親油性層間化合物Aの層
間距離が、1.0nm(フッ素型合成マイカ)から3.6
nmに増加することが確認された。また、層間への有機
カチオンの含有量の確認は、示唆熱/熱天秤測定(理学
(株)製:TG−DTA)装置を用いた熱重量測定によ
りを行った。その結果、親油性層間化合物Aの有機カチ
オン含有量は、40wt%であった。
【0030】[親油性層間化合物B(TSM−2)]親
油性層間化合物Aと同様な方法で、フッ素型合成マイカ
100gと塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム
(48mmol/100g)から親油性層間化合物Bを生成し
た。層間距離は3.5nm、有機カチオン含有量は30
wt%であった。 [親油性層間化合物C(TSM−3)]親油性層間化合
物Aと同様な方法で、フッ素型合成マイカと塩化ジオク
タデシルジメチルアンモニウム(32mmol/100g)から
親油性層間化合物Cを生成した。層間距離は3.2n
m、有機カチオン含有量は17wt%であった。 [親油性層間化合物D(TSM−4)]親油性層間化合
物Aと同様な方法で、フッ素型合成マイカと塩化オクチ
ルトリメチルアンモニウム(80mmol/100g、市販試
薬)から、親油性層間化合物Dを生成した。層間距離は
1.3nm、有機カチオン含有量は17wt%であっ
た。
【0031】[親油性層間化合物E(TSM−5)]親
油性層間化合物Aと同様な方法で、フッ素型合成マイカ
と塩化へキサデシルトリメチルアンモニウム(80mmol
/100g、市販試薬)から親油性層間化合物Eを生成し
た。層間距離は1.8nm、有機カチオン含有量は21
wt%であった。 [親油性層間化合物F(SMC−1)]親油性層間化合
物Aと同様な方法で、親水性スメクタイト(コープケミ
カル(株)社製“SWN”、陽イオン交換容量(CE
C)=100meq/100g)と塩化ジオクタデシルジメチル
アンモニウム(100mmol/100g)から親油性層間化合
物Fを生成した。層間距離は2.1nm、有機カチオン
含有量は42wt%であった。 [親油性層間化合物G(SMC−2)]親油性層間化合
物Aと同様な方法で、親水性スメクタイトと塩化ジオク
タデシルジメチルアンモニウム(60mmol/100g)から
親油性層間化合物Gを生成した。層間距離は2.0n
m、有機カチオン含有量は37wt%であった。 [親油性層間化合物H(TSM−6)]上記親油性層間
化合物Aと同様の方法でフッ素型合成マイカ(コープケ
ミカル(株)社製“ME−100”、陽イオン交換容量
(CEC)=80meq/100g)と、有機カチオンをN,N
−ジオクタドデシル,N−メチルヘキシルアミノアルコ
ールクロリドと反応させてイオン置換量80meq/100gの
親油性層間化合物H(TSM−6)を生成した。層間距
離は1.8nm、有機カチオン含有量は24.2wt%で
あった。
【0032】[実施例1〜18]上述した各ポリオレフ
ィン85.5重量%、共重合変性ポリオレフィン9.5重
量%、および親油性層間化合物(フィラー)5重量%を
表3に示す組合せにて、混練機により溶融混練し、ポリ
オレフィン系複合材料を得た。尚、実施例14において
は、変性ポリオレフィンとフィラーとを予め混合した後
に、ポリオレフィンと混合して製造した。また、実施例
18は、親油性層間化合物H(TSM−6)を用い、無
機充填材含有量が25%の樹脂組成物を生成し、これを
PP−1で希釈する際に、カップリング剤としてヘキサ
メチレンジイソシアネートをマスターバッチ並びにPP
−1の合計100重量部に対して0.5重量部添加して
接触混練を行なった。なお、混練は、同方向二軸混練機
(神戸製鋼所(株)製 KTX−30)により、バレル
温度160〜220℃、スクリュー回転数100rp
m、滞留時間3分とした。得られた各複合材料について
曲げ弾性率、耐熱性、分散性の各物性を測定した。物性
測定用の試験片は、射出成形機(FANAC社製 mode
l100型)により、シリンダー温度200℃、射出圧
力750kg/cm2、型締め圧力100トンにて成形
したものである。測定結果を表3に示す。
【0033】[比較例1〜14]同様に、表4に示すよ
うに、ポリオレフィン85.5重量%、単独変性ポリオ
レフィン9.5重量%、および親油性層間化合物5重量
%を、混練機により溶融混練し、ポリオレフィン系複合
材料を得た。得られた複合材料の物性を表4に示す。
尚、比較例14においては、変性ポリオレフィンとフィ
ラーとを予め混合した後に、ポリオレフィンと混合して
製造した。
【0034】なお、測定法は以下の通りである。 [曲げ弾性率]曲げ弾性率は、ASTM D791(乾
燥状態、23℃)に従い測定した。 [耐熱性(熱変形温度)]熱変形温度は、ASTM D
648に従い、0.0464mm2(66psi)のファ
イバストレスが作用するように、試験片の中央部に5分
間荷重をかけ、2土0.2℃/minの速さで昇温し、
測定した。
【0035】[層状珪酸塩層の分散状態の評価]ポリオ
レフィン樹脂マトリックス中の層状珪酸塩層の分散状態
の評価は、透過型電子頭微鏡を用い複合材料中の粒子を
直接測定した。分散状態の結果は、以下の基準で評価し
た。 ◎:底面間距離が7〜15Å、長さが300Å以上、1
0層以下の積層体が全体の80%以上存在し、かつ樹脂
中に均一に分散している複合材料。 ○:底面間距離が7〜15Å、長さが300Å以上、1
0層以下の積層体が全体の50%以上存在し、かつ樹脂
中に均一に分散している複合材料。 △:底面間距離が7〜15Å、長さが300Å以上、1
0層以下の積層体が全体の20%以上存在し、かつ樹脂
中に均一に分散している複合材料。 ×:底面間距離が7〜15Å、長さが300Å以上、1
0層以下の積層体が全体の20%より少なく分散してい
る複合材料。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】表3,4に示す結果から、単独変性ポリオ
レフィンを配合した比較例の複合材料と比較し、共重合
変性ポリオレフィンを配合した本実施例の各複合材料は
層状珪酸塩の分散性がよく、曲げ弾性率および耐熱性も
高い値を示す。また、先に変性ポリオレフィンと親油性
層間化合物とを溶融混練した後にポリオレフィンを添加
して製造した実施例14の複合材料は、同時に混練生成
した材料に比べて、特に分散性及び物性が良好であっ
た。
【0039】
【発明の効果】以上詳説したように、本発明によるポリ
オレフィン系複合材料およびその製造方法は、従来の技
術により得られるポリオレフィン系複合材料に比べて、
耐熱性および剛性に優れ、かつ従来の製造方法より容易
で、かつ安価な(既存の)製造設備で製造できるため、
自動車部品、家電製品材料、航空機部品、建築用材料等
として有用である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)不飽和カルボン酸若しくはその誘
    導体と、それらとの反応性比の積が1以下となる単量体
    とからなる共重合体部分が、ポリオレフィン中にグラフ
    ト及び/又はブロックで存在する変性ポリオレフィン、
    若しくは、該変性ポリオレフィンを少なくとも1重量%
    以上含有するポリオレフィンを99.9〜60重量%
    と、 (b)膨潤性層状珪酸塩にテトラアルキルアンモニウム
    カチオンを挿入してなる親油性層間化合物を0.1〜4
    0重量%とを有してなることを特徴とするポリオレフィ
    ン系複合材料。
  2. 【請求項2】 不飽和カルボン酸若しくはその誘導体の
    反応性比と、これと共重合する単量体の反応性比が共に
    1以下であることを特徴とする請求項1記載のポリオレ
    フィン系複合材料。
  3. 【請求項3】 膨潤性層状珪酸塩は、電荷密度が40〜
    150Å2/charge、底面間距離d(001)が7〜15Å、
    陽イオン交換容量が25〜200ミリ当量/100gである
    ことを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系複合
    材料。
  4. 【請求項4】 テトラアルキルアンモニウムカチオン
    は、主鎖長がC4〜C30のアルキル基を少なくとも一
    つ有し、膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し
    0.3〜5当量含有されることを特徴とする請求項3記
    載のポリオレフィン系複合材料。
  5. 【請求項5】 膨潤性層状珪酸塩は、長さが300Å以
    上で、10層以下の積層状態で均一に分散していること
    を特徴とする請求項1または3記載のポリオレフィン系
    複合材料。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載された変性ポリオレフィ
    ンまたは該変性ポリオレフィンを少なくとも1重量%以
    上含有するポリオレフィンと、膨潤性層状珪酸塩にテト
    ラアルキルアンモニウムカチオンを挿入してなる親油性
    層間化合物とを無溶媒下で溶融混練することを特徴とす
    るポリオレフィン系複合材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 不飽和カルボン酸若しくはその誘導体
    と、それらとの反応性比の積が1以下となる単量体とか
    らなる共重合体部分が、ポリオレフィン中にグラフト及
    び/又はブロックで存在する変性ポリオレフィン中に、
    膨潤性層状珪酸塩にテトラアルキルアンモニウムカチオ
    ンを挿入してなる親油性層間化合物を無溶媒下で分散さ
    せた後に、ポリオレフィンと溶融混練することを特徴と
    するポリオレフィン系複合材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記変性ポリオレフィンが、ポリオレフ
    ィンに電離性放射線を照射した後に、不飽和カルボン酸
    若しくはその誘導体と、それらとの反応性比の積が1以
    下となる単量体とを接触して得られたものであることを
    特徴とする請求項6記載のポリオレフィン系複合材料の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 前記変性ポリオレフィンが、ポリオレフ
    ィンに電離性放射線を照射した後に、不飽和カルボン酸
    若しくはその誘導体と、それらとの反応性比の積が1以
    下となる単量体とを接触して得られたものであることを
    特徴とする請求項7記載のポリオレフィン系複合材料の
    製造方法。
  10. 【請求項10】 ポリオレフィンに電離性放射線を照射
    した後に、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体と、そ
    れらとの反応性比の積が1以下となる単量体とを接触し
    て得られた変性ポリオレフィンと、膨潤性層状珪酸塩に
    テトラアルキルアンモニウムカチオンを挿入してなる親
    油性層間化合物とを無溶媒下で接触混練させた後に、カ
    ップリング剤の存在下でポリオレフィンと接触混合する
    ことを特徴とするポリオレフィン系複合材料の製造方
    法。
JP34625196A 1996-05-14 1996-12-25 ポリオレフィン系複合材料およびその製造方法 Pending JPH1030039A (ja)

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