JPWO2002040569A1 - 芳香族ポリカーボネート、その製造法およびそれを含む組成物 - Google Patents
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Abstract
色相が良好で、異物含有量が少なく、かつOH末端含有率が少なく、品質のバラツキも少なく、成形性にも優れたポリカーボネートおよびその製造法を提供する。粘度平均分子量が4,000以上で、末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%であるオリゴカーボネートを、芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応1に対してジアリールカーボネート化合物の脱離を伴うエステル交換反応を0.1〜1の割合で生じさせつつさらにエステル交換せしめる。
Description
技術分野
本発明は芳香族ポリカーボネート、その製造法およびそれを含む組成物に関する。さらに詳しくは、色相に優れ、成形を行った際に、金型の汚れが少なく長期間の連続、精密成形が可能で成形物の曇り発生が少ない高品質の芳香族ポリカーボネート、その製造法およびそれを含有する組成物に関する。
従来の技術
ポリカーボネートは、従来、ビスフェノールAのごとき芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとをメチレンクロライドのごとき有機溶剤の存在下に直接重合させる方法(界面法)、あるいは、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる方法(溶融重縮合法)によって製造されている。
これらのうち、溶融重縮合法は、界面法と比較して安価にポリカーボネートを製造することができるという利点を有するとともに、ホスゲンのごとき毒性物質を用いないので、環境衛生上好ましい。
しかしながら、溶融重合法は界面法と比較して重合速度が遅く、重合を高温で実施する必要があるため、得られるポリカーボネートの品質が劣ったものになるという欠点を有していた。
すなわち、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換せしめてポリカーボネートを製造する反応は既によく知られており、芳香族ジヒドロキシ化合物のOH末端と芳香族炭酸ジエステルのフェニル末端とが反応し芳香族モノヒドロキシ化合物を副生させつつ重合を進行させる方法が最も一般的に使用されている。
この反応は、OH末端基量に対し略等しいフェニル末端基量が存在する場合、最も反応速度が速くなり、目的とする重合度のポリマーを製造するための重合時間は短くなる。これとは逆に、OH末端基量に対するフェニル末端基量の割合が1から外れるほど反応速度は低下し、重合時間は長くなる。溶融重合は250℃を超える高温で実施する必要があるため、重合時間はポリマーの熱劣化と密接な繋がりを有し、重合時間が短くなると、得られるポリカーボネートの色相が向上し、熱劣化に起因する異物量も減少する。
一方、ポリカーボネートの耐熱性や、耐湿熱性や、耐候性の観点からはポリカーボネートのOH末端は少ない方が好ましいことが分っている。
従って、OH末端の少ないポリカーボネートを溶融重合で製造しようとするとOH末端基量に対するフェニル末端基量の割合を1よりもかなり大きくして重合反応を行う必要が生じ、反応速度が低下し、得られるポリカーボネートの色相が悪化し、異物含有量が増加する結果をもたらすことになる。
これを避ける手段として、OH末端基量に対し略等しいフェニル末端基を存在させて重合を行い、全末端の略50%がOH末端である、目的とする重合度のポリカーボネートを製造した後、末端封止剤を用いてポリマーのOH末端を封止、減少させる方法が提案されている。しかしながら、この方法では高価な封止剤を使用するという欠点を有するばかりではなく、末端封止の過程でポリマーが劣化したり、重合で調整した重合度が変化したりする問題があり得る。
芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのエステル交換の別の形態として、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し2倍モルの芳香族炭酸ジエステルを用い、第1段階で芳香族ジヒドロキシ化合物の両末端に芳香族炭酸ジエステルがエステル交換により縮合したオリゴマーを作成し、第2段階で該オリゴマーをエステル交換しジアリールカーボネート(芳香族炭酸ジエステル)を副生させつつ重合を行う2段階反応も知られている。この方法に従えば、OH末端含有量の極めて少ないポリカーボネートを得ることができる。
しかしながら、ジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応は芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応に比べて反応が起り難く、このため、一層高い温度と長い重合時間とを必要とし、また、使用する触媒もリチウムアルミニウムハイドライドやテトラエチルアルミニウムボロハイドライドといった強力な塩基性触媒を必要とし、このため、得られるポリカーボネートの色相、異物含有量といった品質は芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応で得られるポリカーボネートに比較して劣ったものとなる。
また、特公昭47−14742号公報および特公昭47−14743号公報には芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのエステル交換反応により初期縮合物を生成させ、これを第4級アンモニウム化合物の存在下に後縮合反応せしめることにより、後縮合反応における芳香族モノヒドロキシ化合物およびジアリールカーボネートの脱離反応を促進せしめ後重縮合時間を短縮させて品質の優れたポリカーボネートを製造する方法が示されている。
この方法では第4級アンモニウム化合物はジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を促進する効果を有するため、芳香族ジヒドロキシ化合物に対する芳香族炭酸ジエステルの使用比率を1.5倍モルまで高めることができることや、後重合段階で第4級アンモニウム化合物を添加することが効果的であることが記載されている。
しかしこの方法は初期重合とは別に、後期重合でも触媒を加えなければならず、また、本発明者等の検討の結果、第4級アンモニウム化合物は耐熱性が低く、重合条件では速やかに分解されることが分ったため、第4級アンモニウム化合物の触媒としての有効性を保つには反応系に継続して添加することが必要となるという欠点を有している。
さらにこの方法では得られるポリカーボネートのOH末端含有量に関しては何ら記載がない。このことはOH末端含有量が少ないポリカーボネートを製造するためには重大な問題を有する。すなわち、後期重合でジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を促進させた場合、初期縮合物のフェニル末端が選択的に消費されるため、得られるポリカーボネートのOH末端含有率は初期縮合物よりも増大する結果をもたらす。
このため、溶融重合でOH末端含有率の少ないポリカーボネートを製造する工業的手段として、ジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応は通常使用されていない。
このように、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを溶融重合させて末端OH含有率が少なく、かつ、色相や異物含有量といった点で品質の優れたポリカーボネートを製造することは困難なことである。また、重合度の高いポリカーボネートを溶融重合で製造する場合は、重合度の上昇と共に末端基含有量が低下するため、エステル交換反応がさらに起り難くなり、低い末端OH基含有率と優れた色相や少ない異物含有量といった品質を兼ね備えたポリカーボネートを得ることは一層困難となる。
特開平9−278877号公報には、ジフェノールおよびカルボン酸ジアリールエステルを触媒の存在下にエステル交換して芳香族ポリカーボネートを製造するに際し、第1段階で原料混合物を100Pa〜常圧下に290℃まで加熱して生成するモノフェノールを留去しそして10〜35モル%のOH末端基含量のオリゴカーボネートを生成せしめ、次いで第2段階で240〜340℃、1〜50,000Pa下10〜60分間、自己清浄化高粘度反応器中で重縮合してポリカーボネートを製造する方法が開示されている。しかしこの方法は芳香族モノヒドロキシ化合物を副生させつつ重合を進行させるものであり、ジアリールカーボネートの脱離を伴う反応については何も記載されていない。
また、ポリカーボネートは優れた光学特性と成形性と機械特性とを併せ持ち、記録材料の基板等の用途に広く使用されているが、長時間に亘り成形を行うと金型に汚れを生じ、記録材料表面のグルーブと呼ばれる微細な溝の転写性が低下し、記録材料の不良を引き起こすという問題があった。
このため、一定時間の経過後、設備を休止し、金型を清掃する必要があり、設備稼働率などで成形コストが上昇するので改善が求められていた。さらに、成形物にクラウドと呼ばれる曇りが発生する現象が認められ、クラウドを生じた基板は記録材料に使用できないため、その減少が求められていた。
発明の開示
そのため芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのエステル交換反応を用いた溶融重合で、末端OH基含有量が少なくかつ品質の優れたポリカーボネートを製造する方法を見つけるべく鋭意努力を重ねた結果、エステル交換反応として、従来主として考えられてきた芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応以外にジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を一定割合で併用することで、末端OH基含有量の少ないポリカーボネートを従来よりも短時間で得ることができ、これによって品質も向上することを見出し、さらに、このように反応を制御して得られたポリカーボネートは従来のポリカーボネートと比較して金型汚れが少なく、クラウドの発生も少ないという予想できない特徴を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の目的は、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを溶融重縮合反応させることにより得られ、末端OH基含有量が少なく、色相に優れ異物含有量が少なく、かつ、金型汚れが少なく、連続した精密成形性に優れ、クラウドの発生も少ない、従来にない優れた品質を有するポリカーボネートを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを触媒の存在下、溶融重合させる際に、芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応とジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応とを一定の割合で生じさせることにより、OH末端含有量が少なく、色相や熱安定性に優れ、異物含有量が少なく、金型汚れが少なく、クラウドを発生し難い高分子量のポリカーボネートを製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明方法により製造される、上記のごとき優れた種々の特性を備えた芳香族ポリカーボネートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記のごとき優れた種々の特性を備えた芳香族ポリカーボネートとその他の特定成分からなる、上記芳香族ポリカーボネートの優れた特性を生かした組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
(1)芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応せしめて粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートを生成し、次いで
(2)この第1芳香族ポリカーボネートを、芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離する第1エステル交換反応および芳香族炭酸ジエステルを脱離する第2エステル交換反応を伴う重合に、該芳香族モノヒドロキシ化合物対該芳香族炭酸ジエステルのモル比が1対0.1〜1の生成割合となるように、付して、粘度平均分子量が第1芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量よりも大きくかつ10,000以上でありしかも全末端基に対する末端ヒドロキシル基の濃度が第1芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度よりも低い第2芳香族ポリカーボネートを生成せしめる。
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造法によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
本発明の上記方法で製造された、末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の35モル%以下であり、0.5μm以上の粒子の含有量が50,000個/g以下であり、そして粘度平均分子量が10,000以上である、
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネートによって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、
本発明の上記方法で製造された芳香族ポリカーボネート並びに、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル、無機充填剤およびポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる組成物によって達成される。
発明の好ましい実施形態
以下、本発明について説明する。まず、本発明方法について説明する。
工程(1)では、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応せしめて粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートを生成せしめる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキサイド、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)オキサイド、p,p’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が用いられる。これらのうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)が好ましい。
上記芳香族炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート等が用いられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
本発明で用いられるポリカーボネートは、必要に応じ、共重合成分として、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,10−デカンジオールのごとき脂肪族ジオールを含有してもよく、また例えば、コハク酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、シクロヘキサンカルボン酸、テレフタル酸のごときジカルボン酸成分や、例えば、乳酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のごときオキシ酸成分を含有してもよい。
本発明において、溶融重合に使用されるエステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素塩基性化合物を使用することができる。
アルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化ホウ素塩、安息香酸塩、リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。その具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、シアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸水素ジリチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸ストロンチウム、シアン酸カルシウム、シアン酸バリウム、シアン酸ストロンチウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ストロンチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素バリウム、水素化ホウ素ストロンチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸バリウム、安息香酸ストロンチウム、ビスフェノールAのカルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩、フェノールのカルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。
本発明においては、所望により、触媒のアルカリ金属化合物として、(i)周期律表第14族の元素のアート錯体のアルカリ金属塩または(ii)周期律表第14族の元素のオキソ酸のアルカリ金属塩を用いることができる。ここで周期律表第14族の元素とは、ケイ素、ゲルマニウム、スズのことをいう。
上記(i)の周期率表第14族元素のアート錯体のアルカリ金属塩としては、特開平7−268091号公報に記載のものをいうが、具体的には、ゲルマニウム(Ge)の化合物として、NaGe(OMe)5、NaGe(OEt)5、NaGe(OPr)5、NaGe(OBu)5、NaGe(OPh)5、LiGe(OMe)5、LiGe(OBu)5、LiGe(OPh)5を挙げることができ、スズ(Sn)の化合物として、NaSn(OMe)3、NaSn(OMe)2(OEt)、NaSn(OPr)3、NaSn(O−n−C6H13)3、NaSn(OMe)5、NaSn(OEt)5、NaSn(OBu)5、NaSn(O−n−C12H25)5、NaSn(OEt)3、NaSn(OPh)5、NaSnBu2(OMe)3を挙げることができる。
また、上記(ii)の周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ケイ酸(silicic acid)のアルカリ金属塩、スズ酸(stanic acid)のアルカリ金属塩、ゲルマニウム(II)酸(germanous acid)のアルカリ金属塩、ゲルマニウム(IV)酸(germanic acid)のアルカリ金属塩を好ましいものとして挙げることができる。
ケイ酸のアルカリ金属塩は、例えば、モノケイ酸(monosilicic acid)またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としては、オルトケイ酸モノナトリウム、オルトケイ酸ジナトリウム、オルトケイ酸トリナトリウム、オルトケイ酸テトラナトリウムを挙げることができる。
スズ酸のアルカリ金属塩は、例えば、モノスズ酸(monostanic acid)またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としてはモノスズ酸ジナトリウム塩(Na2SnO3・xH2O、x=0〜5)、モノスズ酸テトラナトリウム塩(Na4SnO4)を挙げることができる。
ゲルマニウム(II)酸(germanous acid)のアルカリ金属塩は、例えばモノゲルマニウム酸またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としてはゲルマニウム酸モノナトリウム塩(NaHGeO2)を挙げることができる。
ゲルマニウム(IV)酸(germanic acid)のアルカリ金属塩は、例えば、モノゲルマニウム(IV)酸またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としてはオルトゲルマニウム酸モノリチウム塩(LiH3GeO4)、オルトゲルマニウム酸ジナトリウム塩、オルトゲルマニウム酸テトラナトリウム塩、ジゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge2O5)、テトラゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge4O9)、ペンタゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge5O11)を挙げることができる。
触媒としてのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、当該触媒中のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素が芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り1×10−8〜5×10−5当量となる割合で好ましく使用される。より好ましい割合は、同じ基準に対し5×10−7〜1×10−5当量となる割合である。
当該触媒中のアルカリ金属元素量またはアルカリ土類金属元素量が芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り1×10−8〜5×10−5当量の範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネートの諸物性に悪影響をおよぼしたり、また、エステル交換反応が十分に進行せず高分子量のポリカーボネートが得られない等の問題が生じることがあるので、好ましくない。
また、触媒としての含窒素塩基性化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド[φ−CH2(Me)3NOH]、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルキルアリール基等を有するアンモニウムヒドロオキシド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン等の3級アミン類、あるいは、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)等の塩基性塩を挙げることができる。
上記含窒素塩基性化合物は、含窒素塩基性化合物中のアンモニウム窒素原子が芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り1×10−5〜5×10−3当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい割合は同じ基準に対し2×10−5〜5×10−4当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し5×10−5〜5×10−4当量となる割合である。
本発明において、上記のようなエステル交換触媒は工程(1)のエステル交換反応の開始時に加えればよく、重合反応の進行に伴って、例えば後述する工程(2)の後期重縮合において、新たに加える必要は特にない。
工程(1)のエステル交換反応によれば、粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートが生成される。粘度平均分子量は、好ましくは4,000以上10,000未満であり、より好ましくは4,000以上8,000未満である。また末端ヒドロキシル(OH)基濃度は全末端基の20〜40モル%である。
第1芳香族ポリカーボネートの末端OH基含有率を制御する操作は回分設備を使用する場合と連続設備を使用する場合で若干異なる。
すなわち、回分設備を使用する場合は、重合槽内の反応物の分子量やOH基含有率は重合槽内で連続的に変化する。このため、重合槽内の反応物をサンプリングにより分析し、エステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物を主体とする副生成物量と反応物の分子量との関係、および原料として使用した芳香族炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのモル比と重合槽内の反応物のOH末端含有率との関係をあらかじめ測定しておくことにより、第1芳香族ポリカーボネートの分子量とOH基含有率とを所定の範囲に維持することができる。
回分設備の場合は任意の分子量で反応槽内の反応物のOH含有率をチェックすることが可能である。
連続設備を使用する場合は、複数の反応器を直列に配置して重合を行うが、反応物の粘度平均分子量は重合槽間でステップ状に変化する。このため、反応器の出口における反応物の粘度平均分子量が4,000以上となる条件で操作されている少なくとも1基の重合槽の反応器出口における反応物のOH末端含有率を15〜45モル%の間に維持する必要がある。
オリゴマーのOH末端含有率は回分設備か連続設備かを問わず、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのモル比を調整することによって制御され、その割合は使用する装置の特性によって変化するが、一般的には、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して芳香族炭酸ジエステルを1.00〜1.1モル使用する割合が選定される。選定された原料使用比率は0.5%の精度で維持することが好ましい。
オリゴマーを製造するために使用する反応器の形式には特に制限がなく、一般に知られた反応器を使用することができるが、縦型攪拌槽が好ましく使用される。また、原料として使用する芳香族炭酸ジエステルの系外への留出を抑える目的で精留塔を付設した縦型攪拌槽も好ましく使用される。
オリゴマーを製造するために使用される皮応器の材質に特に制限はないが、少なくとも反応液と接触する反応器の内面は通常ステンレススチールやニッケルなどの鉄分の含有量の少ない材質が使用される。
オリゴマーを製造するための反応温度は一般に知られた反応温度を使用することができ、通常は100〜300℃、好ましくは180〜270℃が用いられる。またこの時の反応圧力としては、通常、常圧から133Pa(1mmHg)、好ましくは66,500Pa(500mmHg)〜1,330Pa(10mmHg)が用いられる。
また、工程(1)で原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとは、工程(1)を実施する前に、それらの混合物として、芳香族ジヒドロキシ化合物の融点以下の温度であらかじめフィルターで濾過して使用するのが望ましい。
フィルターとしては、公称濾過精度0.1〜1μmである金属繊維からなる濾過層を有するものが好ましく用いられる。このようにすることで、重縮合によって得られるポリカーボネートの異物数を低減させることができると共に、色相を向上させることができる。この原因は定かではないが、1μm以上の異物の中には、ポリカーボネートの色相を悪化させる物質が存在すると共に、反応阻害物質が多く存在し、それらを取り除くことによって重縮合反応速度が向上し、よって熱履歴の少ない色相の良いポリカーボネートが得られるものと考えられる。
本発明に使用される上記フィルターはSUSなどの原料混合物に不活性な金属繊維で構成された濾過層を有するフィルターであり、このようなフィルターとしては金属繊維を湿式または乾式で抄紙した金属不織布や該不織布を焼結したフィルターを挙げることができる。このような金属繊維フィルターはメンブランフィルターと比較して耐熱性や耐薬品性に優れるだけでなく、フィルター寿命も長くなることが分った。この原因は明確ではないが、メンブランフィルターは濾材の表面で異物を捕集するのに対し、金属繊維フィルターは厚み全体で異物を捕集するため、捕集容量が増大するものと推定される。このため、金属繊維フィルターを用いた場合、各々の原料をあらかじめ濾過しなくても0.1〜1μmという細かい目開きのフィルターを使用しても長時間濾過することが可能となる。
次に、本発明方法の工程(2)では、工程(1)で生成された第1芳香族ポリカーボネートをさらに重合せしめる。
このとき、重合反応における芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離する第1エステル交換反応および芳香族炭酸ジエステルを脱離する第2エステル交換反応を、該芳香族モノヒドロキシ化合物対該芳香族炭酸ジエステルのモル比が1対0.1〜1、好ましくは0.2〜0.7の生成割合となるように行う。
このような割合で芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離反応とジアリールカーボネート脱離反応が起っていることは、反応槽から発生する副生物蒸気を組成変更させることなく捕集し、捕集物に含まれる芳香族モノヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとのモル比を測定することによって確認することができる。
この範囲よりもジアリールカーボネート脱離反応の割合が大きいと得られるポリカーボネートのOH末端含有率が大きくなり好ましくない。また、この範囲よりもジアリールカーボネート脱離反応の割合が小さくなると重合に要する時間が長くなり、得られるポリカーボネートの品質が低下するので好ましくない。
上記工程(2)の重合反応の第1エステル交換反応と第2エステル交換反応を上記のごとく進行させるには、薄膜形成性に優れる反応器を使用するのが好ましい。かかる反応器としては、例えば反応器内のポリマーの表面積のうち、50mm以下の液深を有するポリマーの表面積を50%以上に制御しうるものが好ましい。
このような50mm以下の液深を有する薄膜は50mm以下のクリアランスを有するスクレーパー等で、反応器の鏡板や胴壁といった器壁の、スクレーパー等に対向する部分に反応物を塗布する方法や、反応器内の、円板、支持羽根、攪拌単位、スクレーパーといった攪拌翼の構成要素(以下単に攪拌翼構成要素という場合がある)やポリマー流下用のワイヤーのような支持体に沿って反応物を流下する方法や、反応物を自由落下させる方法によって形成することができる。
なお、本明細書で攪拌翼とは、横型1軸反応器では、端部円板、中空円板、支持羽根等の攪拌翼構成要素を含んでおり、横型2軸反応器の場合は、攪拌単位等の攪拌翼構成要素を含む攪拌機能を有する部材を意味する。
また、「攪拌軸方向」は攪拌翼が回転するときの回転の中心となる線を意味し、攪拌軸が実際に存在することを意味するとは限らない。このことは「横型2軸反応器」についても同様であり、この場合の「2軸」も、攪拌翼が2セットあることを意味し、攪拌軸が実際に存在することを意味するとは限らない。
ここで、ポリマー表面は実際の反応状態においては副生する低沸点物の蒸発によって多くの気泡を含み不規則に変形しているが、本発明の液深算定や表面積を算定するに当たっては気泡による変形を無視し、なだらかな平面を形成するものとして取り扱い、液深とはこのようななだらかな平面を仮定した場合、該平面(湾曲していてもよい)に垂直に液深を測定した場合の液厚みを指す。
例えば、反応器壁にポリマーを塗布する場合は器壁に対向する支持羽根のクリアランスを50mm以下とすることにより、本発明の実施に適した薄膜が形成でき、薄膜の表面積は反応物が塗布された器壁表面積に相当することとなる。
また、反応器空間に設置された支持体に沿って液膜状やストランド状に流下する場合は供給量V(mm3/min)と平均流下時間t(min)の積を平均流下長G(mm)および支持体数Mで除し、平均断面積S(mm2)を求め、支持体が面で反応物と接触する場合はSを流下長に垂直な支持体の濡れ幅J(mm)で除し、液深を求める。
支持体がワイヤーなどであり、実質的に線で反応物と接触する場合はSを円と仮定し、S=πr2より相当する半径を求め液深とする。この方法では供給量や支持体の形状、長さ、本数を調整することにより液深を本発明に適した50mm以下にすることが可能であり、その表面積はG×J×Mまたは2πrGMに相当する。
反応物を自由落下させて液膜を形成する場合は、多孔板より反応物を押し出し自由落下させる場合と上部に拘束されない空間を有する容器より反応物を流し出し、自由落下させる場合とに分れる。
前者は反応物を押し出す多孔板の孔形と同じ断面を有する落下物が得られると考え、液深および表面積を算出する。例えば、孔形が円の場合は孔の半径rが液深に相当し、表面積は孔数をM、落下長をGとして、2πrGMで求められる。
後者の場合、形成される液膜の厚みは100mm以下であり、液深はその1/2の50mm以下と見なせる。液膜の表面積は落下長をG、液膜幅をJ、液膜数をMとすると2MGJで表される。
これを添付図面の図1および図14を例にとってさらに具体的に説明する。
図14は図1に示す横型反応器の攪拌軸方向の断面図を示しており、1は反応器の胴壁、11は中空円板、13は中空円板11の間に攪拌軸方向に設置された支持羽根を示す。
図14において、支持羽根13は反応胴壁1と狭い間隔を保って設置されており、支持羽根の外側(胴壁側)端面によって反応液を胴壁に塗布し薄膜を形成すると共に、反応器胴壁1と複数の中空円板11と中空円板間に設置された支持羽根13とで形成される空間が、上部に拘束されない空間を有する容器に相当し、支持羽根の回転に伴い該空間で反応液を汲み上げ、次いで、支持羽根の内側(反応器の中心側)端面より自由落下させて薄膜を形成する機能を有する。
この場合、自由落下液膜を形成し得る支持羽根の位置は反応液掻き揚げ開始点(y−zの位置)から支持羽根が鉛直となるf点までの間の任意の位置を取ることができるが、本発明の自由落下液膜の表面積計算においては、f点に支持羽根がある場合の自由落下長の総和(MG)を求め、自由落下液膜の表面積を算出する。
すなわち、支持羽根と支持羽根外端eと中心cを結ぶ線が成す角(支持羽根取り付け角)をδとすると∠acfはδ+90°となり、反応器胴径≒中空円板外径=D、支持羽根幅をW、中空円板内径をdとすると、f点の支持羽根から落下する液膜の落下長は(1/2)・D・sin(∠acf)−W・sin(∠acf−δ)+(1/2)・dとなる。
中空円板にM枚の支持羽根が設置されている場合、af間に別の複数(i個)の支持羽根が存在でき、その点をxiとすると∠acxiはδ+90−360・i/M(i=1,2,…。∠acxi≧0。)となり、各々の支持羽根から落下する液膜の落下長は(1/2)・D・sin(∠acxi)−W・sin(∠acxi−δ)+(1/2)・dとなる。
図14では8個の支持羽根を有する場合が示されており、δ=45°の場合はi=3、自由落下長の総和(MG)は1.2D−W+2dとなり、支持羽根の奥行き幅(図1における中空円板間の長さ)をJとすると自由落下する薄膜の総表面積(Af)は2J(1.2D−W+2d)となる。
また、支持羽根によって反応器胴壁に塗布された薄膜の面積(As)は反応液面と胴壁の交点をy,zとすると、J(πD・(360−∠ycz)/360)となる。ただし、∠ycz=2・cos−1(d/D)である。
反応器の下部にホールドされる液深が50mmを超える反応液の表面積(Av)はJ(D2−d2)1/2で表されるから、反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合は(As+Af)/(As+Af+Av)より計算することができる。なお、薄膜の形成される面としては反応液面より上にある中空円板面や支持羽根面も該当するが、通常はこれらを無視して計算してよい。
本発明においては反応器内の全液量(V)を反応液全表面積(S)で除したV/Sはさほど重要ではなく、薄膜形成部分が全体に占める割合が重要である。この理由は定かではないが、エステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステル(以下ジアリールカーボネートということがある)とを比較した場合、後者の分子サイズが一般に大きいため、反応液中をこれらのエステル交換副生物が拡散する場合、液深の増加によって、分子サイズの大きいジアリールカーボネートの拡散速度が芳香族モノヒドロキシ化合物の拡散速度よりも大きな影響を受けて遅くなると考えられること、および、オリゴマーをポリカーボネートとする重合領域においては反応液の粘度が上昇するため拡散速度が遅く、全体のエステル交換反応速度に無視できない影響をおよぼすためと考えられることによると思われる。
すなわち、ジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を円滑に実施するには分子サイズの大きいジアリールカーボネートを速やかに液表面に移動させ反応系外に除去することが重要であり、好ましい割合の芳香族モノヒドロキシ化合物脱離反応とジアリールカーボネート脱離反応とは液深の浅い部分で主として生じており、このため、平均的な液深を表すV/Sではなく全体に占める薄膜形成部分の割合が重要な意味を持つものと考えられる。
このような薄膜形成性の優れる反応器を具体的に示すと、例えば反応胴壁に近接した支持羽根によって反応胴壁に反応液を塗布・更新させると共に支持羽根によって反応液の一部を汲み上げ、次いで汲み上げた液を重力により自由液膜を形成しつつ落下させる構造の横型1軸円筒型反応器を挙げることができる。
このような横型1軸円筒型反応器を、1例を挙げて構成部位毎にさらに詳しく説明する。ただし、本発明がこれによって特別な限定を受けるものでないことはいうまでもない。
横型1軸円筒型反応器は、例えば、図−1に示すような、ジャケット外壁2でおおわれた入口鏡板5と出口鏡板6と容器胴壁1で構成された円筒容器内に2枚の端部円板9、9’、2枚の端部円板間に配設された複数枚の中空円板11、端部円板と中空円板および中空円板同士を所定の間隔で連結しかつ固定する複数枚の支持羽根13および2枚の端部円板の中央部に固定された独立した2本の端部回転軸8、8’からなる、複数の中空円板間に、実際の回転軸を持たない構造を持つ攪拌翼を有する反応器である。そしてこの反応器において、該端部円板および中空円板は該攪拌翼の仮想回転軸に対し垂直である。
(攪拌翼)
図1において、端部円板9、9’の間に配設された複数個の中空円板11は回転方向と逆に傾斜または湾曲した支持羽根13によって、所定間隔に連結固定されている。また端部円板9、9’の中央部は端部攪拌軸8、8’で支持されている。
端部円板と中空円板および中空円板同士の間隔において、複数枚の支持羽根の少なくとも1枚は反応器の胴壁に近接しかつ近接する先端部位が該胴壁に平行である。それによって、先端部と容器胴壁1とで形成される空間部により攪拌回転と共に液が汲み上げられ、次いで重力により自由液膜を形成しつつ落下し、かつ、支持羽根13によって、容器胴壁1の気相部分に液を塗布・更新する構造を有する。
すなわち、上記各間隔において、上記少なくとも1枚の支持羽根は攪拌翼の仮想回転軸方向に伸びる平板であるのが好ましく、特に攪拌翼の仮想回転軸に対する垂直な円筒断面における接線に対し30〜60度の角度を持っているのがさらに好ましい。
この場合、容器胴壁に塗布された液膜の厚み(液深)は支持羽根先端と容器胴壁との間のクリアランスに相当し、汲み上げられた液が落下する時に形成する自由液膜の液深は50mm以下に相当する。
かかる構造の攪拌翼を用いることにより、ホールドアップを高めても支持羽根13の先端と容器胴壁1とで形成される空間部により、攪拌回転と共に液が汲み上げられ、次いで重力により自由液膜を形成しつつ落下し、かつ、支持羽根13によって容器胴壁の気相部分に液が塗布されるため、反応液の表面液の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合が50%以上に保たれ、その結果として芳香族モノヒドロキシ化合物脱離反応とジアリールカーボネート脱離反応との割合が好ましい範囲に維持でき、高い反応速度が達成され、品質の向上したポリマーを得ることができる。
また、支持羽根13の先端の回転に伴って、常に容器胴壁1の液膜が掻き取られ更新されるため、ゲル、異物、色相低下の原因物質が発生せず良好な品質のポリマーを得る一助となる。さらに、端部攪拌軸8と端部攪拌軸8’との間には攪拌軸が存在しないため、攪拌軸周りの滞留部分が発生せず、ポリマーの品質が一層向上する。
(端部円板)
端部円板9は反応器の鏡板部分の液の滞留を防止する目的で多数の開口を有するものが好ましい。かかる形状としては、例えば、多数の開口、切り欠きを有する円板、中心部から延びた複数の支持板を有する中空円板が用いられる。これらの内、図2に示すような開口10を有する切り欠き円板であることが好ましい。
(支持羽根)
支持羽根13は、図3(1)、(2)、(3)に示すような、先端部に回転方向と逆方向に延在し、容器胴壁1と小間隙を保持する尾翼部分14を有してもよい。かかる尾翼部分14の設置は反応液の粘度が低い場合に容器胴壁への液膜の塗布と反応液の汲み上げ性とを向上させる効果を有する。
すなわち、尾翼部分14は容器胴壁への液膜の塗布と反応液の汲み上げ性とを有する形状を有する。容器胴壁への液膜の塗布の機能を果たすため、当該反応器の胴壁に平行する部位を有する。
かかる構成からなる装置を用いて第1芳香族ポリカーボネートの重合を行う場合、支持羽根はモーターによってゆっくりと、好ましくは1〜15rpmの回転数で回転される。
このような装置はオリゴマーの回分重合に使用してもよく、連続重合に使用してもよい。
連続重合に使用する場合、液は図1に示す入り口3より連続的に注入され、供給された第1芳香族ポリカーボネートは案内羽根7によって入り口の側壁5の内部を塗布・更新する一方、支持羽根13あるいは尾翼部分14によって掻き上げられ気相部の胴壁1に反応液を塗布、更新する。さらにこれらにより反応液は膜状を形成しながら落下し中空円板11の開口部12より次室に流れ込み順次同様な作用を繰返して液出口4に向かって送られ、液出口4から重合度の高められた第2芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
本発明の薄膜形成性に優れる反応器の別の具体的態様として、平行に延びた2つの円筒を組合せることによって形成された繭型の断面を有する横型2軸反応器であって、次の構造要素を有するものを挙げることができる。
a)反応器入り口側鏡板、該鏡板の反対方向にある反応器出口側鏡板、該反応器内を実質的に水平方向に延びる複数の攪拌単位を持つ第1の攪拌翼および該第1の攪拌翼と平行でかつ反応器内に実質的に水平に配置された複数の攪拌単位を持つ第2の攪拌翼を有する。
b)第1の攪拌翼と第2の攪拌翼とが互いに噛み合うように近接して配置されておりそして同期しながら同方向に回転することによって反応液を相互の攪拌単位および反応器胴壁に薄膜状に塗布、更新する機能を有する。
c)反応器入り口側鏡板に近接しかつ第1の攪拌軸の上方に設けられた反応液の入り口と、反応器出口側鏡板に近接した反応器の下部に設けられた反応液の出口とを有する。
ここで、第1の攪拌翼とは回転によって反応器上部の反応液を相対して設置されたもう一つの攪拌軸の攪拌単位から遠ざける方向に移動させる攪拌翼を意味する。
また「攪拌単位」の形状としては経験的に高粘度物質の混練、混合等に適した構造を選択することができる。例を図4に示す。
かかる構造の反応器は前述した横型1軸反応器では対応できないような高分子量のポリカーボネートを製造しようとした場合に好ましく使用される。このような高分子量を具体的に示すと、粘度平均分子量が15,000を超える場合、好ましくは20,000を超える場合に相当し、第1芳香族ポリカーボネートを直接このような横型2軸反応器で重合してもよく、第1芳香族ポリカーボネートを横型1軸反応器で重合した後、引き続き横型2軸反応器を用いて重合を行ってもよい。
このような横型2軸反応器を、1例を挙げて構成部位毎にさらに詳しく説明する。ただし、本発明がこれによって特別な限定を受けるものでないことはいうまでもない。例えば攪拌軸の一部を実際に欠く構造も許容される。
(全体構成)
本発明で用いられる横型2軸反応器の好ましい態様を示す透視斜視図、上方から見た平面断面図、側面断面図をそれぞれ、図4,5および6A,Bに示す。なお、以下の説明において、「攪拌軸」は実際に存在する攪拌軸を意味する。
本発明に好ましく使用される横型2軸反応器は反応器入り口側鏡板105と該鏡板の反対方向にある反応器出口側鏡板106と、該反応器内を実質的に水平方向に延びる第1の攪拌軸102とこれに平行に実質的に水平に配置された第2の攪拌軸103とを有する。各々の攪拌軸には互いに噛み合うように近接して配置された複数の攪拌単位120、121、127が取り付けられており、これらの攪拌軸は同期して同方向に回転する。
また、反応器胴壁1は攪拌単位と狭い隙間を保っており、2つの円筒を組合せることによって形成された繭型の断面を有している。また、反応器入り口側鏡板105に近接し、かつ、第1の攪拌軸102の上方に反応液の入り口111が設置されており、反応器出口側鏡板106近傍の反応器下部に反応液の出口112が設置されており、反応液の出口には、粘度の高まった反応液の排出を行うために反応液抜出しスクリュー113が設置されている。またエステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートは、ベント口15に接続された真空配管117、116を通って反応器外へ排出される。この時、副生物蒸気に同伴した高沸点物は真空配管117、116の間に設置した留出物受器118に捕集される。
ここで、第1の攪拌軸とは、本発明の明細書においては、攪拌軸が回転した場合、反応器上部の反応液を相対して設置されたもう一つの攪拌軸の攪拌単位から遠ざける方向に移動させる攪拌軸を意味し、具体的には図13の場合は攪拌軸102が第1の攪拌軸に相当し、攪拌軸の回転方向が図13に示す方向と逆の場合には攪拌軸103が第1の攪拌軸に相当する。
本発明の各々の攪拌軸には反応物を攪拌し、薄膜を形成する役目を持つ図7A、7B、9、11A、11Bに示すような複数の攪拌単位が設置されている。
攪拌単位
本発明に使用する攪拌単位は図7A、9、11Aに示すように実質的に凸レンズ状(紡錘形状)の断面を有する。図5および本発明の横型2軸反応器の好ましい態様を示す別の平面断面図である図12のAで示す反応器入り口から中央にかけては送液機能を有せずかつ強い攪拌機能を有する攪拌単位が用いられ、Bで示す反応器出口部分では送液機能を有する攪拌単位を使用することが好ましい。
このようにすることにより、反応液のホールドアップを高め薄膜形成機能を向上させると共に、反応器出口側鏡板に反応液を強制的に送り込むことにより反応器出口側鏡板部分に生じ易い反応液の滞留部分をなくし、品質の向上したポリカーボネートを得ることが可能となる。
図5および図12のAの領域に使用される攪拌単位としては図7Aおよび図11Aに示す攪拌単位が好ましく使用される。図7Aにおいて、攪拌部分aは実質的に凸レンズ状の断面を有しており、攪拌軸方向に一定の間隔cを空けて対向する攪拌部分bと位相を90°ずらして取り付けられている。また、該攪拌単位の先端部に、取り付け間隔cより僅かに短い長さの、反応器胴壁と僅かの間隔を空けて回転軸と平行に設置された、胴壁に対するスクレーパー(以後、S−スクレーパーと称する)d、e、f、gを有している。使用においては攪拌単位の組み立てを容易にするためにS−スクレーパーを有する攪拌部分a、bを所定間隔cを保って一体構造とした攪拌構成が好ましく使用される。図7Aはこの一体化された攪拌構成を120で示している。
この攪拌単位120は第1の攪拌軸と第2の攪拌軸とに位相を90°ずらして設置されており、かつ、回転に伴い一方の軸に取り付けられた攪拌単位のS−スクレーパーが他方の攪拌軸に取り付けられた攪拌単位のS−スクレーパーと攪拌軸との間の空間に50mm以下の僅かな隙間を空けて入り込むように設置されている。
また、攪拌単位の先端は反応器胴壁および対向する攪拌単位と50mm以下の僅かな隙間を保つように設置される。これによって反応液は反応器胴壁および攪拌単位の全面に薄膜状に塗布・更新され、反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合を50%以上にすることを可能としている。
図5および図12のAの領域に使用される攪拌単位の別の態様としては図11Aに示す攪拌単位128がある。
該攪拌単位は実質的に凸レンズ状の断面を有しており攪拌軸方向に位相を90°ずらして取り付けられると共に、第1の攪拌軸と第2の攪拌軸との間でも攪拌単位の位相が90°ずれるように設置されている。
また、攪拌単位の先端は反応器胴壁および対向する攪拌単位と50mm以下の僅かな隙間を保つように設置される。これによって反応液は攪拌軸の回転とともに、反応器胴壁および攪拌単位の全面に薄膜状に塗布・更新され、本発明の実施の要件である反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合を50%以上にすることを可能としている。
図5および12のBの領域に使用される攪拌単位の別の態様としては図9に示す攪拌単位127が好ましく使用される。
該攪拌単位127は実質的に凸レンズ状の断面を有しており、図9に示すように上面と下面で若干ねじれた形状を有している。このねじれの程度を図10のγで表した場合、γが5〜60°の範囲にある場合に送液性やセルフクリーニング性が向上し、好ましい。特にγが5〜45°の範囲にある場合は最も優れた性能を示す。
本発明において攪拌単位127は図8に示すように攪拌軸方向に位相をずらし、全体として実質的にスクリュー形状を取るように攪拌軸に取り付けられる。このときの位相のずれをαとすると、αは15〜60°の範囲にあることが好ましく、30±10°の範囲が特に好ましい。
αが上記の範囲を外れて小さくなると、攪拌単位127の側面に筋状のポリマー流れができ、ドライスポット部分(ポリマーで濡れない部分)でゲル、異物等が発生する。
αが範囲を外れて大きい場合は、各々の攪拌単位が独立した状態となり、前後の攪拌単位の影響を受けなくなるため、攪拌単位の濡れが低下しゲル、異物等が発生する。また、送液性も弱くなるため、反応器出口側鏡板部分に送られる反応液量が低下し、反応器出口側鏡板部分にデッドスペースを生じポリマー品質が低下する。
第1の攪拌軸と第2の攪拌軸に上記のようにして全体としてスクリュー形状をなすように設置された攪拌単位127は互いに噛み合うように設置され、攪拌単位の先端は反応器胴壁および対向する攪拌単位と50mm以下の僅かな隙間を保つように設置される。
これによって反応液は攪拌軸の回転に伴い、反応器出口側鏡板に向かって送られると共に反応器胴壁および攪拌単位の全面に薄膜状に塗布・更新され、反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合を50%以上にすることを可能とする。
本発明の攪拌単位120、127、128の内、攪拌軸の両端に取り付けられる攪拌単位は極力鏡板に近接して取り付けることが望ましい。
この中でも入り口鏡板に対向して設置される攪拌単位としては図7Bや11Bに示される鏡板に対するスクレーパー(以後、P−スクレーパーと称する)122,123を有する攪拌単位を使用することが好ましい。
P−スクレーパーは凸レンズ形状の頂点を0°、180°、攪拌単位の回転方向を正とした場合、攪拌単位の鏡板に対向する面の外周であって、90〜180°の領域および270〜360°の領域の各々少なくとも一部に点対称に設置される。
P−スクレーパーは回転に伴い鏡板部分の反応液を攪拌単位頂部から攪拌軸に向けて強制的に流動させる効果を有しており、これによって、攪拌軸近傍に発生し易いデッドスペースをなくし、品質の優れたポリカーボネートを製造することを可能とする。
なお、上記説明において記載した間隔は使用温度における寸法であり、冷時に測定した値ではない。
(反応液入り口)
本発明の横型2軸反応器に反応液を供給する位置は反応器の入り口鏡板に近接し、かつ、第1の攪拌軸の上方とすることが好ましい。このような位置から反応液を供給することによって、入り口に生じ易いデッドスペースを解消することができ、優れた品質のポリカーボネートを得ることができる。
なお、近接とは具体的には、間隔が実質的に500mm以内であることを意味する。より望ましくは300mm以下である。
このような供給位置をさらに具体的に示すと、一つの態様として図6Aの111に示すように、第1の攪拌軸の上部の反応器入り口側鏡板に直接供給口を設置する方法がある。
また、別の態様としては図6Bの111に示すように、入り口鏡板に近接して、第1の攪拌軸の上方にベント口を設け、このベント口の内部から反応液を入り口鏡板に近接して供給する方法がある。
(ベント口)
本発明の横型2軸反応器はエステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物やジアリールカーボネートといった副生成物を反応器外に除去し、反応器内圧を減圧に保つためのベント口15を第1の攪拌軸の上方の反応器胴壁に設置することが好ましい。
また、反応器胴壁に設置したベント口の大きさはその内径を、一つの攪拌単位が通過する時、該ベント口上から見えるS−スクレーパーを含む攪拌単位の寸法の1.15倍以上にすることが好ましく、1.15倍から2.5倍の範囲とすることがさらに好ましい。このようにすることにより攪拌単位によって形成された反応液の液膜がベント口から系外に飛散するベントアップと呼ばれる現象を防止することが可能となり品質の優れたポリカーボネートを長期に渡り安定に製造することができる。
図15はベント口をさらに詳細に示した平面図であり、ベント口15は第1の攪拌軸102の上方の胴壁1に設置されており、該ベント口の内径Xは、該ベント部を通過するS−スクレーパーを含む攪拌単位の長さYの1.15倍以上とすることが好ましい。
(攪拌軸)
本発明の横型反応器(1軸および2軸のいずれも)の攪拌軸は鏡板から軸受けにかけて攪拌軸スリーブ107、108、109、110内に、反応液の侵入を防ぐ目的で、または侵入した反応液を反応器内部に戻さず、系外に排出する目的で螺旋状の溝を施工することが好ましい。
図5はこれを模式的に示したものであり、攪拌軸の鏡板から軸受けにかけて螺旋状の溝を施工する部分は124、125で示されている。この内、125は攪拌軸の回転により侵入したポリマーを反応器内部に押し戻す方向に螺旋状の溝を施工した攪拌軸を示している。
また、124は攪拌軸の回転により侵入したポリマーを軸受け方向に送り込む働きをする螺旋状の溝を施工した攪拌軸を示している。そして図6は124のポリマーを軸受け方向に送り込む方向の溝と125の反応器内部に押し戻す方向の溝とがぶつかる位置に対応する攪拌軸スリーブに侵入ポリマー排出口126を設け、該排出口から反応液を系外に排出する場合を示している。
このような溝を攪拌軸の軸受け部に施すことにより、ポリマー劣化物の発生を抑制し優れた品質のポリカーボネートを得ることができる。
本発明において、薄膜形成性に優れる反応器の材質に特に制限はなく、通常の材質が使用できるが、反応液が接触する反応器の内面はステンレススチールやニッケルなどの鉄含有量の少ない材質を使用することが好ましい。
工程(2)は、上記のごとき薄膜形成性に優れる反応器中で、第1芳香族ポリカーボネートを、通常、200〜350℃、1,330Pa(10mmHg)以下、好ましくは250〜320℃、665Pa(5mmHg)以下の条件で重合せしめる。
工程(2)によれば、粘度平均分子量が第1芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量よりも大きくかつ10,000以上でありしかも全末端基に対する末端ヒドロキシル基の濃度が第1芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度よりも低い第2芳香族ポリカーボネートが生成される。
上記第2芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、好ましくは10,000〜100,000であり、また全末端に対するOH末端含有率は、好ましくは35モル%以下である。さらに、第2芳香族ポリカーボネートは、好ましくは芳香族モノヒドロキシ化合物および芳香族炭酸ジエステルをいずれも高々500ppmでしか含有しない。このため第2芳香族ポリカーボネートを脱揮処理することにより容易に芳香族モノヒドロキシ化合物および芳香族炭酸ジエステルの含有量をそれぞれ200ppm以下に低減することができる。さらに、第2芳香族ポリカーボネートは、好ましくは0.5μm以上の異物含有量が50,000個/g以下であり、異物含有量の変動が+20%以下、粘度平均分子量の変動が±2%以下であり、高品質のポリカーボネートである。
このポリカーボネートは優れた色相を持つ外、末端OH含有率が少ないため、優れた耐久性を有し、さらに異物含有量が少ないため、衝撃特性や精密な成形特性にも優れ、シートや射出成形物などの用途に用いられる。
このうち、光記録媒体としては特に、粘度平均分子量10,000〜18,000、全末端に対するOH末端含有率35モル%以下、0.5μm以上の異物含有量が10,000個/g以下であり、異物含有量の変動が+10%以下、粘度平均分子量の変動が±1%以下の高品質なものが好適に使用される。
さらに、本発明で得られたポリカーボネートは予期せぬ特性を有していることが明らかとなった。すなわち、本発明のポリカーボネートを使用してディスク基板の連続成形を実施した場合、金型汚れが減少し金型清掃周期を大幅に延長でき、さらに、クラウドの発生も大幅に減少することが判明した。
この原因は明らかではないがエステル交換反応の制御によりポリカーボネート中に存在するオリゴマーをはじめとする微量挟雑物が変化しそれ自身または添加剤との相互作用が微妙に変わり予期せぬ効果を生じたものと考えられる。
本発明でこのようにして得られたポリカーボネートは、有機スルホン酸化合物(b)、およびリン化合物、耐熱安定剤、離型剤、加工安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、金属石鹸類、造核剤、帯電防止剤、難燃剤、防黴剤、着色剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤(c)を含むことができる。
このようなスルホン酸化合物(b)としては下記式(II)
(ここで、A2は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X1はアンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンである。)のスルホン酸化合物(b)を添加するのが好適である。これを添加することで、溶融重縮合に使用したアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の活性を低下もしくは失活させることができ、色相、耐熱性、耐加水分解性等の品質に優れたポリカーボネートを得ることができる。
なかでも、スルホン酸化合物(b)が下記式(III)
(ここで、A3、A4、A5、A6およびA7は、互いに独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
で示されるスルホン酸ホスホニウム塩であるとき、その効果が大きいので、特に好ましい。
このようなスルホン酸化合物(b)は、ポリカーボネート製造時のエステル交換触媒の失活剤として機能し、ポリマーの熱安定性を高める。
これらのスルホン酸化合物(b)としては、特開平8−59975号公報記載のような公知の触媒失活剤が有効に使用される。この中でも、スルホン酸のアンモニウム塩、スルホン酸のホスホニウム塩が好ましい。さらには、ドデシルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩、パラトルエンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩やベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩も好ましく使用される。
本発明においては、これらのうちでも、特にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩は効果が良好であり最適である。
触媒失活剤は触媒の活性を著しく低下させるものであり、このような触媒失活剤は単独でポリカーボネートに添加してもよく、水と触媒失活剤の混合液として同時にポリカーボネート樹脂に添加してもよい。
溶融重縮合により得られたポリカーボネートに対するスルホン酸化合物(b)からなる触媒失活剤の添加量は、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記主重縮合触媒1モル当り0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合で使用される。これは通常、ポリカーボネートに対し0.1〜500ppmの割合で使用することに相当する。
添加剤(c)として使用されるリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルを用いることができる。
このようなリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート等のトリシクロアルキルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェート等を挙げることができる。
また、亜リン酸エステルとしては、下記式(IV)で表される化合物を挙げることができる。
(式中、Rは脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。3個のRは同一であっても異なっていてもよい)
上記式(IV)で表される化合物の具体例として、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト等のトリアリールホスファイト、フェニルジデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルイソオクチルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト等のアリールアルキルホスファイト等を挙げることができる。さらに、亜リン酸エステルとして、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト等を用いることもできる。
これらの化合物は単独で、あるいは組合せて用いることができる。これらのうちリン化合物として、リン酸、亜リン酸およびこれらのエステルが好ましく、上記式(IV)で表される亜リン酸エステルがより好ましく、特に芳香族亜リン酸エステルが好ましく用いられる。
本発明ではリン化合物は、ポリカーボネート100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部の量で添加しうる。上記範囲を逸脱するとリン化合物の添加効果が十分に発現しないか、もしくはポリマー品質へ悪影響をおよぼす等の問題が生じることがあるので、好ましくない。
本発明において、使用することができる離型剤としては例えば脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物が挙げられる。脂肪族アルコールとしてはエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールおよびペンタエリスリトール等を挙げることができ、また脂肪族カルボン酸としてはラウリン酸、ドデシル酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸等が挙げられる。
これらの中でも脂肪族アルコールとしてグリセリン、ペンタエリスリトールを用い、脂肪族カルボン酸としてステアリン酸を用いた部分エステルや完全エステルが好ましく使用される。
脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルは好ましくは本発明の芳香族ポリカーボネートが溶融状態にある間に添加され、混練されることが好ましい。また、混練後溶融状態にある間にフィルター例えば公称濾過精度1〜50μmのフィルターで濾過することが望ましい。
本発明で使用する脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物は、ポリカーボネート100重量部に対し、0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部の量で添加しうる。上記範囲を逸脱すると離型性の向上効果が十分に発現しないか、もしくはポリマー品質へ悪影響をおよぼす等の問題が生じることがあるので、好ましくない。
加工安定剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ペンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2,4−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾフェノン系化合物;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤、ニッケルジブチルジチオカーバメート、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル等のニッケル系クエンチャー等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等が、金属石鹸類としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ニッケル等が挙げられる。
また、造核剤としては、例えば、ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム、ジベンジリデンソルビトール、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム塩等のソルビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、(β−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート等の第4級アンモニウム塩系、アルキルホスフェート系化合物が挙げられ、難燃剤としては、例えばトリス(2−クロロエチル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル類、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモフェニルオキサイド等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の金属無機化合物類、これらの混合物等が挙げられる。
上記のスルホン酸化合物(b)および各種添加剤(c)を本発明のポリカーボネートに添加する方法については特に制限はなく、各成分の配合順序も任意である。例えば、溶融状態にあるポリカーボネートに、リン化合物をはじめとする添加剤(c)および/またはスルホン酸化合物(b)を加えて混練してもよく、また、ポリカーボネートの溶液に加えて混練してもよい。
より具体的には、重合反応が終了して得られる溶融状態にある反応器内または押出機内の反応生成物であるポリカーボネートに、直接リン化合物をはじめとする添加剤(c)および/またはスルホン酸化合物(b)、を別々にまたは同時的に加えて混練する方法、あるいは、得られたポリカーボネートをペレット化し、このペレットをリン化合物をはじめとする添加剤(c)および/またはスルホン酸化合物(b)と共に1軸または2軸押出機等に供給して溶融混練する方法、さらに、得られたポリカーボネートを適当な溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン等)に溶解させ、この溶液に別々にまたは同時的に加えて攪拌する方法等を用いることができる。
溶融状態の熱履歴時間および再溶融回数を減らすという点からは、溶融重縮合で得られた溶融状態のポリカーボネートにリン化合物をはじめとする添加剤(c)、スルホン酸化合物(b)を添加・混練しペレット化するのが好ましい。特に、混練後ペレット化する前にフィルターで濾過するのが望ましい。フィルターとしては公称濾過精度1〜50μmのものが有利に用いられる。
また、反応器や2軸押出機などの混練設備に供給するスルホン酸化合物(b)、リン化合物をはじめとする添加剤(c)の形態は溶融状態であってもよく、適当な溶剤に溶解した溶液であってもよく、分散したエマルジョンであってもよく、ポリカーボネートに分散したマスター粉体でもよく、ポリカーボネートのマスターポリマーでもよい。さらに、後述する無機充填剤やポリカーボネート以外の樹脂との組成物を作成する場合はこれらの無機充填剤や樹脂を媒体としたマスター粉体やマスターポリマーを使用することもできる。
これらの添加剤はその形態に応じて公知の定量的供給方法で供給することができ、例えば、溶融液や溶液などの液体の場合はプランジャーポンプやダイアフラムポンプやギアポンプなどが使用でき、マスターパウダーなどの固体の場合は定量供給器とサイドフィーダーとを組合せた設備などが好ましく使用できる。
本発明では、ポリカーボネートを減圧処理することが好ましい。減圧処理に際しては、処理、装置は特に限定されないが、例えば減圧装置付反応器、減圧装置付押出機を用いることができる。
減圧装置付反応器は、縦型槽型反応器、横型槽型反応器のいずれでもよいが、横型槽型反応器が好ましい。減圧装置付押出機は、ベント付の1軸押出機、2軸押出機のいずれでもよく、押出機で減圧処理をしながらペレタイズすることもできる。
その際の圧力は、減圧処理を反応器において行う場合には、0.05〜750mmHg(6.7〜100,000Pa)、特に0.05〜50mmHg(6.7〜6,700Pa)とするのが好ましく、また、押出機を用いて行う場合には、1〜750mmHg(133〜100,000Pa)、特に5〜700mmHg(670〜93,000Pa)とするのが好ましい。
このような減圧処理は240〜350℃で行うのが好ましく、また、反応器を用いる場合には5分〜3時間程度、押出機を用いる場合には10秒〜15分間程度の時間で行うのが好ましい。
ポリカーボネートを減圧処理するタイミングに特に制限はないが、エステル交換触媒の活性が保持されている状態で減圧処理を施すと重合度が変化したり、ポリマーが劣化したりする場合があるため、スルホン酸化合物(b)を添加・混練した後、もしくは添加・混練と同時に減圧処理を行うことが好ましい。
また、各種の添加剤(c)を加える場合は添加剤の沸点に応じて、加えた添加剤がポリマー中に残存するように減圧処理のタイミングを設定することが好ましい。
このようにしてポリカーボネートに減圧処理を施すと、残留モノマーやオリゴマーを低減させたポリカーボネートを得ることができる。また、減圧処理を施す際、残留モノマーやオリゴマーを低減させる目的で水もしくは飽和脂肪族炭化水素、窒素等を加圧混練後減圧処理を行うことも必要に応じて実施しうる。
例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いて溶融重縮合を行った場合、減圧処理によってポリカーボネート中のジフェニルカーボネートやフェノールの残留量を減少させることができる。
本発明のポリカーボネートでは、このようなジアリールカーボネートおよび芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量(残存量)はいずれも上記のとおり重量で200ppm以下であることが好ましいので、上記減圧処理は有効である。
本発明で製造される芳香族ポリカーボネートからシートを作成することができる。このようなシートは、難燃性、帯電防止性に加え、予想しなかったことであるが、優れた接着性や印刷性を有していることが分った。この理由は定かではないが、エステル交換反応の違いが特性に影響をおよぼしている可能性もある。
このようなシートは、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材すなわち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、車両等の窓材、OA機器のデイスプレーやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、水槽用ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレンネルレンズ、光カード、光ディスクや偏光板との組合せによる液晶セル、位相差補正板等の光学用途等に有用である。
かかる芳香族ポリカーボネートシートの厚みは特に制限する必要はないが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜8mm、特に好ましくは0.2〜3mmである。また、かかる芳香族ポリカーボネートシートに、新たな機能を付加する各種加工処理(耐候性を改良するための各種ラミネート処理、表面硬度改良のための耐擦傷性改良処理、表面のしぼ加工、半および不透明化加工等)を施してもよい。
本発明では、このようにして得られたスルホン酸化合物(b)および/またはその他の添加剤(c)を含有するかまたは含有しないポリカーボネートに充填剤好ましくは無機充填剤(B)および/またはポリカーボネート以外の樹脂(C)を添加・混練することにより組成物を得ることができる。
このようにして得られたポリカーボネート組成物はベースとして使用したポリカーボネートが従来のエステル交換法で得られたポリカーボネートと比較して優れた色相や低い異物含有量を有し、また、分子量の均一性が高いという特性を反映し、優れた色相と成形性とを有し、機械的強度に優れた成形物を与える。
このような無機充填剤(B)としては、例えばタルク、マイカ、シリカ、アルミナ、粘土、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の板状または粒状の無機充填剤やガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、炭素繊維、金属系導電性繊維などの繊維状充填剤を使用することができる。また、アラミド繊維、架橋アクリル粒子、架橋シリコーン粒子等の有機充填剤も同様に使用することができる。
これら無機および有機充填剤の配合量は本発明のポリカーボネート100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、3〜100重量部がさらに好ましい。
また、本発明で使用可能な無機充填剤および有機充填剤はシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。この表面処理により、ポリカーボネートの分解が抑制されるなど良好な結果が得られる。
本発明の組成物に使用されるポリカーボネート以外の樹脂(C)としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS(高衝撃強度ポリスチレン)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの中でもABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、AS樹脂、HIPS、ポリブタジエンが好ましく、特にABS樹脂とポリエステル樹脂が好ましい。
本発明において、これらポリカーボネート以外の樹脂(C)の配合量は本発明のポリカーボネート100重量部に対して1〜10,000重量部の範囲で使用することが好ましく、さらに好ましくは10〜1,000重量部、最も好ましくは10〜100重量部である。
本発明の組成物を得る方法は特に制限がなく、公知の混練方法・設備を使用することができるが、複数の供給口を有する2軸ルーダーを使用することが好ましい。
2軸ルーダーを使用する場合、本発明のポリカーボネートはペレットや粉末などの固体の状態でルーダーに供給し溶融させて無機充填剤(B)や本発明のポリカーボネート以外の樹脂(C)と混練してもよいし、重合で得られた溶融状態の本発明のポリカーボネートに必要に応じ、スルホン酸化合物(b)およびその他の添加剤(c)を添加する処理や減圧処理を施した後、一旦固化することなく、溶融状態のままでルーダーに供給して無機充填剤(B)や本発明のポリカーボネート以外の樹脂(C)と混練してもよい。これらの内、熱履歴を減少させる観点からは後者の方法が好ましい。
また、2軸ルーダーを使用する場合、無機充填剤(B)はポリカーボネートまたはポリカーボネート以外の樹脂の供給部の下流側から溶融している樹脂中に供給することが好ましい。このようにすることにより、無機充填剤とルーダーセグメントがドライの状態で接触することを防ぎ、無機充填剤の望ましくない粉砕やセグメントの摩耗を軽減することができる。
無機充填剤(B)の供給は定量フィーダーで供給量を制御しつつ、ポリカーボネート供給部の下流側に設置したサイドフィーダーを使用して所定量供給を行うことが好ましい。
本発明のポリカーボネート以外の樹脂(C)は本発明のポリカーボネートの供給位置の上流、下流、同時の如何なる場所から供給してもよい。供給に当たっては固体状態で樹脂(C)を供給してもよく、一旦別のルーダー等で溶融後、ポリカーボネートとの組成物を作成するためのルーダーに供給してもよい。
通常は熱履歴の軽減および設備を簡略化する目的で前者が使用される場合が多く、定量フィーダーで連続計量した樹脂(C)を直接組成物作成用ルーダーに供給する方法や、連続計量した樹脂(C)をサイドフィーダーを用いて組成物作成用ルーダーに供給する方法が用いられる。
本発明においては、混練温度はポリカーボネート以外の樹脂(C)の種類等によって異なるが、一般に200〜380℃の温度が用いられる。また、必要に応じ、酸素や水分の混入を防ぐ目的で窒素などの不活性ガスで供給部をシールしてもよく、混練した組成物を減圧処理してもよい。
組成物作成において、本発明のポリカーボネートはスルホン酸化合物(b)や各種の添加剤(c)を含むものも含まないものも好ましく使用できるが、得られた組成物に必要に応じ前記スルホン酸化合物(b)や各種添加剤(c)をさらに前記添加方法に準じて添加することもできる。
本発明で製造されるポリカーボネート組成物から射出成形法などにより、難燃性、帯電防止性、塵付着防止性、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
以上のとおり、本発明によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを溶融重縮合反応させることによりポリカーボネートを製造する方法において、薄膜形成性の優れる反応器を使用して特定のオリゴマーを重縮合させることによりオリゴマーをポリカーボネートとする重合過程で生じる芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応とジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応との比率を好ましい範囲に制御し、それによってOH末端含有率の少ないポリカーボネートを短い反応時間で得ることができる。
このようにして得られたポリカーボネートは良好な色相と少ない異物含有量とを有しており、品質のバラツキも少なく、光学用途を始めとした高精度の成形物を作成する用途に好ましく使用される。また他の樹脂や無機物との組成物としてポリカーボネートの改良された特性を反映し優れた機械特性と成形性を有し、各種の成形用途に好ましく使用できる。
実施例
以下、実施例および比較例に基づき、本発明の具体例を詳細に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
なお、分析は下記の方法によった。
色相:
日本電色工業(株)製の Color and Color Difference Meter ND−1001DPを用いてColor bを測定した。
末端基構造:
NMR測定法にて全末端基に対するOH末端基の割合(%)を求めた。
固有粘度および粘度平均分子量:
0.7g/dlの塩化メチレン溶液をウベローデ粘度計を用い固有粘度を測定し、次式により粘度平均分子量を求めた。
[η]=1.23×10−4M0.83
0.5μm以上の異物含有量:
ペレット40gを塩化メチレン2Lに溶解し、光散乱遮断法にて異物量をカウントした。結果は個/gに換算した。
重合副生物中のジフェニルカーボネート(DPC)、フェノール(PhOH)の測定法:
サンプル0.5gをアセトン10mLに溶解し調整液とする。ガスクロマトグラフィー(日立G5000A)を使用し、DPCはキャピラリカラム(DB−1 60m、ID0.25、Film0.25μ)、PhOHはパックドカラム(1m×3mmΦガラスカラム PEG20M TPAユニポート5% 80/100メッシュ)にて定量した。
ポリマー中のDPC、フェノールの測定法:
サンプル1gをメチレンクロライド10mLに溶解し、次いでアセトニトリル90mLと混合し、ポリマーを再沈し濾別した。濾液を濃縮しメチレンクロライドを除去し調整液とし、液体クロマトグラフィー(東ソーSC8020)を使用して定量した。
離型性:
射出成形機、住友重機械工業製DISK3 M IIIにCD専用の金型を取り付け、この金型にピットの入ったニッケル製のCD用スタンパーを装着し、成形材料を自動搬送にて成形機のホッパに投入し、シリンダー温度320℃、金型温度65℃にて連続的に成形を行った。連続成形開始後、離型異常が生じることにより連続成形が中断されるまでの成形枚数を求めた。
クラウド:
射出成形機、住友重機械工業製DISK3 M IIIにCD専用の金型を取り付け、この金型にピットの入ったニッケル製のCD用スタンパーを装着し、成形材料を自動搬送にて成形機のホッパに投入し、シリンダー温度320℃、金型温度65℃にて連続的に成形を行った。連続成形開始後、クラウドを目視で観察し、クラウド不良基板の生産枚数が増加し、100枚単位当りの不良基板枚数が5%を超えるまでの成形枚数を求めた。
実施例1
(ポリカーボネートの製造)
粉体状のビスフェノールA(BPAという)と液体状のジフェニルカーボネート(DPCという)とを0.70キロモル対0.722キロモルの割合になるよう連続的に原料調製槽に仕込み、140℃で溶解し、ついで、この混合溶液を公称濾過精度が0.5μmであるSUS316製の金属繊維からなる濾過層を有するプリーツフィルターを通して毎時ビスフェノールA換算で0.16キロモルの量で連続的に第1重合槽に供給した。また、別途調製したビスフェノールAジナトリウム塩とテトラメチルアンモニウムヒドロキシドとをPhOH/水=90/10(重量/重量)に溶解した触媒溶液をビスフェノールA1モル当りビスフェノールAジナトリウム塩を1×10−6当量、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを100×10−6モルの割合となるように、第1重合槽に原料を供給するラインから連続的に供給し、原料と触媒を混合後、第1重合槽に供給した。
第1重合槽は温度220℃、圧力100Torr(13,300Pa)で操作され、第1重合槽から発生するフェノールとDPCとを分離しDPCを再び第1重合槽に戻すための精留塔と攪拌機とを有していた。
第1重合槽の反応液は底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第2重合槽に供給した。第2重合槽は温度260℃、圧力15Torr(1,995Pa)で操作され、第2重合槽から発生するフェノールとDPCとを分離しDPCを再び第2重合槽に戻すための精留塔と攪拌機とを有していた。
かくして、第2重合槽から粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が34.3モル%の第1芳香族ポリカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。
第3重合槽は図1に示す横型1軸反応器であり、第2重合槽から抜き出された第1芳香族ポリカーボネートを受け入れる反応液入り口3と第3重合槽の反応液の出口4と反応で発生するフェノールとDPCとを主体とする低沸物を除去し、反応器内を減圧に保つためのベント口15を有しており、図1に示す端部円板9、9’の間に配設された複数個の中空円板11を回転方向と逆に傾斜した支持羽根13によって、所定間隔に連結固定し、かつ、端部円板9、9’の中央部を端部攪拌軸8、8’で支持した構造の攪拌翼を有していた。また、攪拌翼を構成する中空円板の外径Dは800mm,中空円板の内径dは325mm、支持羽根取り付け角δは45°、支持羽根幅Wは170mmであり、支持羽根の枚数は8枚であり、支持羽根の外端と反応器胴壁とのクリアランスは20mmであった。
この結果、第3重合槽内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合は86%となっていた。第3重合槽を温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保って第1芳香族ポリカーボネートをさらにエステル交換させた結果、粘度平均分子量が15,200、全末端に占めるOH末端の割合が25.5モル%、0.5μm以上の異物含有量が960個/gの第2芳香族ポリカーボネートが連続的に得られた。また、この第2芳香族ポリカーボネートをペレット化して色相を測定した結果、b値は−0.5であり極めて優れた色相を有していた。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.3であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.3の割合で生じていた。
ポリカーボネートの後処理と成形性評価:
第3重合槽で得られたポリカーボネートを引き続き、溶融状態のままで配管を通し、空気に触れることなくベント式2軸ルーダーに導き、重合触媒の失活、ポリマー中に含まれる低沸点物の除去、添加剤の添加よりなる後処理を行った。
使用したベント式2軸ルーダーは混練部とベント部とよりなる処理ゾーンを5個有している同方向噛み合い型2軸ルーダーであった。
ルーダーの第1の処理ゾーンでは混練部に、水に分散させたドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩をポリマーに対し分散液が1重量%でかつ、重合触媒として使用したビスフェノールAジナトリウム塩に対し2倍当量のドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩となるようにダイヤフラム式定量ポンプを用いて連続的に供給し、重合触媒を失活させるとともに、マテリアルシールを介して該混練部の直後に設置されたベント部で15Torr(1,995Pa)でポリマーを減圧処理しポリカーボネート中に含まれるフェノールおよびDPCを失活剤の溶媒として用いた水と共に除去した。
第2、第3、第4の処理ゾーンではそれぞれの混練部にポリマーに対し1重量%の水をダイヤフラム式定量ポンプを用いて連続的に供給し、引き続き、マテリアルシールを介して混練部の直後に設置された各々のベント部で15Torr(1,995Pa)でポリマーを減圧処理することによりポリカーボネート中に含まれるフェノールおよびDPCを水と共に除去する操作を行った。
第5の処理ゾーンでは該混練部に離型剤としてステアリン酸モノグリセリドをポリマーに対し500ppm、熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをポリマーに対し100ppmとなるように各々溶融状態で定量ポンプを用いて連続的に添加し、引き続きベント部で15Torrで減圧処理した。
添加剤の添加を終えたポリカーボネートをルーダーから押し出し、ギヤポンプで昇圧後、20μmの目開きを有するポリマーフィルターで濾過し、ダイを通してペレット化した。得られたポリカーボネートは低沸成分を測定した結果、20ppmのフェノールと80ppmのDPCとを含んでおり、色相b値および0.5μm以上の異物含有量は第3重合槽出側で測定した値と同一であり、粘度平均分子量は15,100、OH末端含有率は25.6モル%と第3重合槽出側で測定した値と殆ど同一であった。
成形性評価:
このようにして得たペレットのディスク成形性評価を行った。
離型不良が発生するまでの成形枚数は354,600枚であり、クラウドに関しては連続成形枚数は317,800枚と良好なレベルであった。
実施例2
(ポリカーボネートの製造)
実施例1と同様にして重合を行い、第3重合槽から得られた粘度平均分子量15,200のポリカーボネートを第4重合槽に供給しさらに重合を行った。
第4重合槽は図4(斜視図)、5(平面図)、6A(側面図)、13(断面図)に示される横型2軸反応器であり、第1の攪拌軸102の上方の、反応器入り口側鏡板105に反応液の入り口111と、反応器出口側鏡板106の近くの反応器の下部に反応液の出口112と、反応で発生するフェノールおよびDPCを主体とする低沸点物を除去し、反応系内を減圧に保つためのベント口15を有しており、第1の攪拌軸と第2の攪拌軸に取り付けられた攪拌単位の相互のクリアランスおよび攪拌単位と反応器胴壁とのクリアランスは共に10mmであり、相互に噛み合うように設置されており、同期しながら10rpmで同方向に回転していた。
また、図5のAで示される反応器上流側の攪拌単位は図13に示すように実質的に凸レンズ状の断面を有しており、その先端部には図7Aのd、e、f、gで示す反応器胴壁用スクレーパーが攪拌単位の取り付け間隔cよりも10mm短い長さで攪拌軸と平行に取り付けられており、相互の攪拌単位を90°位相をずらして設置することにより反応液の輸送機能は有していなかった。
図5のBで示される反応器下流側の攪拌単位は図9、10に示すような反応器胴壁用スクレーパーを有しない凸レンズ状断面を有する攪拌単位であり、ねじれ角γを30°、位相角αを30°とすることで実質的にスクリュー形状を形成し、反応器出口側鏡板方向に反応液を輸送する機能を有していた。
この反応器は攪拌単位の先端に小さな反応液溜りを有するものの、1軸反応器とは異なり明確な液面を有しない。従って、反応器胴壁や攪拌単位の全面に形成された反応液膜が略全ての反応表面に相当し、50mm以下の液深を有する表面積の割合は略100%に相当すると見なせる。
また、攪拌軸の反応器内室から軸受けにかけて、軸受けに侵入した反応液を攪拌軸の回転に伴って反応室内に押し戻す方向の螺旋状の溝が攪拌軸に施工されていた。
第4重合槽を温度285℃、圧力0.8Torr(106Pa)に保ってさらにエステル交換させた結果、粘度平均分子量が24,000、全末端に占めるOH末端の割合が18.8モル%、0.5μm以上の異物含有量が2,130個/gのポリカーボネートが連続的に得られた。また、このポリカーボネートをペレット化して色相を測定した結果、b値は−0.1であり極めて優れた色相を有していた。
第4重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.44であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.44の割合で生じていた。
ポリカーボネートの後処理:
第4重合槽で得られたポリカーボネートを引き続き、溶融状態のままで配管を通し、空気に触れることなくベント式2軸ルーダーに導き、重合触媒の失活、ポリマー中に含まれる低沸点物の除去、添加剤の添加よりなる後処理を実施例1に準じて行った。ただし、使用したベント式2軸ルーダーは混練部とベント部とよりなる処理ゾーンを2個有している同方向噛み合い型2軸ルーダーであった。
ルーダーの第1の処理ゾーンでは実施例1と同様にして触媒の失活と、ポリカーボネート中に含まれる低沸点物の除去を行った。
第2の処理ゾーンでは実施例1における第5の処理ゾーンで行った操作に準じ、離型剤としてステアリン酸モノグリセリドをポリマーに対し1,000ppm、熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをポリマーに対し300ppm添加した。
添加剤の添加を終えたポリカーボネートをルーダーから押し出し、ギヤポンプで昇圧後、40μmの目開きを有するポリマーフィルターで濾過し、ダイを通してペレット化した。得られたポリカーボネートは低沸成分を測定した結果、30ppmのフェノールと120ppmのDPCとを含んでおり、色相b値および0.5μm以上の異物含有量は第4重合槽出側で測定した値と同一であり、粘度平均分子量は23,500、OH末端含有率は19.5モル%と第4重合槽出側で測定した値と殆ど同一であった。
実施例3
シート評価例
添加剤として、ステアリン酸モノグリセリドとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトに代えてリン系安定剤としてSANDOSTAB P−EPQ(Clariant社製)をポリマーに対し30ppm添加した以外は上記実施例2と同様にして製造したポリカーボネートペレットを溶融した後、ギアポンプで定量供給し、成形機のTダイに送った。鏡面冷却ロールと鏡面ロールで挟持し、または片面タッチで厚さ2mmまたは0.2mm、幅800mmのシートに溶融押出した。
得られた芳香族ポリカーボネートシート(2mm厚み)の片面に可視光硬化型プラスチック接着剤((株)アーデル BENEFIX PC)を塗布し、同じシートを気泡が入らないように一方に押し出すようにしながら積層後、可視光線専用メタルハライドタイプを備えた光硬化装置により5,000mJ/cm2の光を照射して得られた積層板の接着強度をJIS K−6852(接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法)に準拠して測定した結果、接着強度が12.6MPa(128Kgf/cm2)で良好であった。
一方、得られた厚み0.2mmの芳香族ポリカーボネートシートに、インキ(ナツダ 70−9132:色 136Dスモーク)および溶剤(イソホロン/シクロヘキサン/イソブタノール=40/40/20(重量%))を混合させて均一にし、シルクスクリーン印刷機で印刷を行い、100℃で60分間乾燥させた。印刷されたインキ面には転写不良もなく、良好な印刷であった。
実施例4〜10
ポリマーブレンドコンパウンドの評価
添加剤としてトリメチルホスフェート50ppmを使用した以外は実施例2と同様にして製造したポリカーボネートに、表1,2記載の各成分を,タンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き2軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱揮しながらペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG150U型)を使用して、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で測定用の成形片を作成し、下記の評価を実施した。結果を表1、2に示す。なお、表1、2記載の各成分の記号は下記の通りである。
ABS:スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体;サンタックUT−61(三井化学(株)製)、
AS:スチレン−アクリロニトリル共重合体;スタイラック−AS 767 R27(旭化成工業(株)製)、
PET:ポリエチレンテレフタレート;TR−8580(帝人(株)製、固有粘度0.8)、
PBT:ポリブチレンテレフタレート;TRB−H(帝人(株)製、固有粘度1.07)、
MBS:メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体;カネエースB−56(鐘淵化学工業(株)製)、
E−1:ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキルメタアクリレート共重合体;パラロイドEXL−2602(呉羽化学工業(株)製)、
E−2:ポリオルガノシロキサン成分およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互侵入網目構造を有している複合ゴム;メタブレンS−2001(三菱レイヨン(株)製)、
T:タルク;HS−T0.8(林化成(株)製、レーザー回折法により測定された平均粒子径L=5μm、L/D=8)、
G:ガラス繊維;チョップドストランドECS−03T−511(日本電気硝子(株)製、ウレタン集束処理、繊維径13μm)、
W:ワラストナイト;サイカテックNN−4(巴工業(株)製、電子顕微鏡観察により求められた数平均の平均繊維径D=1.5μm、平均繊維長17μm、アスペクト比L/D=20)、
WAX:α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス;ダイヤカルナ−P30(三菱化成(株)製(無水マレイン酸含有量=10重量%))、
表1、2の結果の測定法は次の通りである。
(1)曲げ弾性率
ASTM D790により、曲げ弾性率を測定した。
(2)ノッチ付衝撃値
ASTM D256により厚み3.2mmの試験片を用いノッチ側からおもりを衝撃させ衝撃値を測定した。
(3)流動性
シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧力98.1MPaでアルキメデス型スパイラルフロー(厚さ2mm、幅8mm)により流動性を測定した。
比較例1
ポリカーボネートの製造
実施例1と同様にして第2重合槽より粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が34.3モル%第1芳香族ポリカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。第3重合槽は精留塔を持たない縦型攪拌槽であり、第3重合槽内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合は5%以下であった。実施例1と同様に第3重合槽を温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保ってオリゴカーボネートをさらにエステル交換させた結果、実施例1よりも4.8倍の重合時間を要して、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネートが得られた。このポリカーボネートは全末端に占めるOH末端の割合が12.0モル%であり、0.5μm以上の異物含有量が55,700個/gであり、ペレット色相のb値は0.5であり、色相や異物含有量で劣ったものであった。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.09であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.09の割合でしか生じていなかった。
ポリカーボネートの後処理と成形性評価
実施例1と同様にして重合触媒の失活、ポリマー中に含まれる低沸点物の除去、添加剤の添加よりなる後処理を行った。
得られたポリカーボネートは低沸成分を測定した結果、22ppmのフェノールと81ppmのDPCとを含んでおり、色相b値および0.5μm以上の異物含有量は第3重合槽出側で測定した値と同一であり、粘度平均分子量は15,100、OH末端含有率は12.5モル%と第3重合槽出側で測定した値と殆ど同一であった。
成形性評価
このようにして得たペレットのディスク成形性評価を行った。
離型不良が発生するまでの成形枚数は122,300枚であり、クラウドに関しては連続成形枚数は108,800枚と劣ったレベルであった。
比較例2
ポリカーボネートの製造
実施例1と同様にして第2重合槽より粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が34.3モル%のオリゴカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。第3重合槽は実施例1と同様の装置を使用し、温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保つと共に、ビスフェノールAに対し200×10− 6モルのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを第3重合槽に連続的に供給して脱DPC反応を伴うエステル交換反応を促進させてオリゴカーボネートをさらに重合させた結果、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネートが得られた。このポリカーボネートは全末端に占めるOH末端の割合が70.0モル%であり、0.5μm以上の異物含有量が12,200個/gであり、ペレット色相のb値は−0.1であった。色相や異物含有量は大きな低下を示さなかったがOH末端含有率は高い値を示した。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:2.17であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が2.17の割合で生じていた。
比較例3
ポリカーボネートの製造
ビスフェノールA0.70キロモルに対しDPCを0.698キロモル使用する以外は実施例1と同様にして重合を行い第2重合槽より粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が51.4モル%のオリゴカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。第3重合槽は実施例1と同様の装置を使用し、温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保ちオリゴカーボネートをさらに重合させた結果、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネートが得られた。このポリカーボネートは全末端に占めるOH末端の割合が60.5モル%であり、0.5μm以上の異物含有量が10,400個/gであり、ペレット色相のb値は−0.4であった。色相や異物含有量は大きな低下を示さなかったがOH末端含有率は高い値を示した。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.081であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.081の割合でしか生じていなかった。
【図面の簡単な説明】
図1は、1軸反応器の断面図である。
図2は、図1のAA断面図である。
図3は、図1中の尾翼付き支持羽根の例を示す図である。
図4は、2軸反応器の斜視図である。
図5は、2軸反応器の平面断面図である。
図6は、2軸反応器の断面図である。
図7は、図5のA領域に使用する攪拌単位の詳細図である。
図8は、図5と図12のB領域に使用する攪拌単位の組立図である。
図9は、図5と図12のB領域に使用する攪拌単位を示す図である。
図10は、図5のB領域に使用する攪拌単位を示す図である。
図11は、図12のA領域に使用する攪拌単位の詳細図である。
図12は、2軸反応器の断面図である。
図13は、2軸反応器の断面図である。
図14は、1軸反応器の表面積算出のための説明図である。
図15は、2軸反応器のベントの詳細図である。
本発明は芳香族ポリカーボネート、その製造法およびそれを含む組成物に関する。さらに詳しくは、色相に優れ、成形を行った際に、金型の汚れが少なく長期間の連続、精密成形が可能で成形物の曇り発生が少ない高品質の芳香族ポリカーボネート、その製造法およびそれを含有する組成物に関する。
従来の技術
ポリカーボネートは、従来、ビスフェノールAのごとき芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとをメチレンクロライドのごとき有機溶剤の存在下に直接重合させる方法(界面法)、あるいは、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる方法(溶融重縮合法)によって製造されている。
これらのうち、溶融重縮合法は、界面法と比較して安価にポリカーボネートを製造することができるという利点を有するとともに、ホスゲンのごとき毒性物質を用いないので、環境衛生上好ましい。
しかしながら、溶融重合法は界面法と比較して重合速度が遅く、重合を高温で実施する必要があるため、得られるポリカーボネートの品質が劣ったものになるという欠点を有していた。
すなわち、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換せしめてポリカーボネートを製造する反応は既によく知られており、芳香族ジヒドロキシ化合物のOH末端と芳香族炭酸ジエステルのフェニル末端とが反応し芳香族モノヒドロキシ化合物を副生させつつ重合を進行させる方法が最も一般的に使用されている。
この反応は、OH末端基量に対し略等しいフェニル末端基量が存在する場合、最も反応速度が速くなり、目的とする重合度のポリマーを製造するための重合時間は短くなる。これとは逆に、OH末端基量に対するフェニル末端基量の割合が1から外れるほど反応速度は低下し、重合時間は長くなる。溶融重合は250℃を超える高温で実施する必要があるため、重合時間はポリマーの熱劣化と密接な繋がりを有し、重合時間が短くなると、得られるポリカーボネートの色相が向上し、熱劣化に起因する異物量も減少する。
一方、ポリカーボネートの耐熱性や、耐湿熱性や、耐候性の観点からはポリカーボネートのOH末端は少ない方が好ましいことが分っている。
従って、OH末端の少ないポリカーボネートを溶融重合で製造しようとするとOH末端基量に対するフェニル末端基量の割合を1よりもかなり大きくして重合反応を行う必要が生じ、反応速度が低下し、得られるポリカーボネートの色相が悪化し、異物含有量が増加する結果をもたらすことになる。
これを避ける手段として、OH末端基量に対し略等しいフェニル末端基を存在させて重合を行い、全末端の略50%がOH末端である、目的とする重合度のポリカーボネートを製造した後、末端封止剤を用いてポリマーのOH末端を封止、減少させる方法が提案されている。しかしながら、この方法では高価な封止剤を使用するという欠点を有するばかりではなく、末端封止の過程でポリマーが劣化したり、重合で調整した重合度が変化したりする問題があり得る。
芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのエステル交換の別の形態として、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し2倍モルの芳香族炭酸ジエステルを用い、第1段階で芳香族ジヒドロキシ化合物の両末端に芳香族炭酸ジエステルがエステル交換により縮合したオリゴマーを作成し、第2段階で該オリゴマーをエステル交換しジアリールカーボネート(芳香族炭酸ジエステル)を副生させつつ重合を行う2段階反応も知られている。この方法に従えば、OH末端含有量の極めて少ないポリカーボネートを得ることができる。
しかしながら、ジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応は芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応に比べて反応が起り難く、このため、一層高い温度と長い重合時間とを必要とし、また、使用する触媒もリチウムアルミニウムハイドライドやテトラエチルアルミニウムボロハイドライドといった強力な塩基性触媒を必要とし、このため、得られるポリカーボネートの色相、異物含有量といった品質は芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応で得られるポリカーボネートに比較して劣ったものとなる。
また、特公昭47−14742号公報および特公昭47−14743号公報には芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのエステル交換反応により初期縮合物を生成させ、これを第4級アンモニウム化合物の存在下に後縮合反応せしめることにより、後縮合反応における芳香族モノヒドロキシ化合物およびジアリールカーボネートの脱離反応を促進せしめ後重縮合時間を短縮させて品質の優れたポリカーボネートを製造する方法が示されている。
この方法では第4級アンモニウム化合物はジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を促進する効果を有するため、芳香族ジヒドロキシ化合物に対する芳香族炭酸ジエステルの使用比率を1.5倍モルまで高めることができることや、後重合段階で第4級アンモニウム化合物を添加することが効果的であることが記載されている。
しかしこの方法は初期重合とは別に、後期重合でも触媒を加えなければならず、また、本発明者等の検討の結果、第4級アンモニウム化合物は耐熱性が低く、重合条件では速やかに分解されることが分ったため、第4級アンモニウム化合物の触媒としての有効性を保つには反応系に継続して添加することが必要となるという欠点を有している。
さらにこの方法では得られるポリカーボネートのOH末端含有量に関しては何ら記載がない。このことはOH末端含有量が少ないポリカーボネートを製造するためには重大な問題を有する。すなわち、後期重合でジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を促進させた場合、初期縮合物のフェニル末端が選択的に消費されるため、得られるポリカーボネートのOH末端含有率は初期縮合物よりも増大する結果をもたらす。
このため、溶融重合でOH末端含有率の少ないポリカーボネートを製造する工業的手段として、ジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応は通常使用されていない。
このように、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを溶融重合させて末端OH含有率が少なく、かつ、色相や異物含有量といった点で品質の優れたポリカーボネートを製造することは困難なことである。また、重合度の高いポリカーボネートを溶融重合で製造する場合は、重合度の上昇と共に末端基含有量が低下するため、エステル交換反応がさらに起り難くなり、低い末端OH基含有率と優れた色相や少ない異物含有量といった品質を兼ね備えたポリカーボネートを得ることは一層困難となる。
特開平9−278877号公報には、ジフェノールおよびカルボン酸ジアリールエステルを触媒の存在下にエステル交換して芳香族ポリカーボネートを製造するに際し、第1段階で原料混合物を100Pa〜常圧下に290℃まで加熱して生成するモノフェノールを留去しそして10〜35モル%のOH末端基含量のオリゴカーボネートを生成せしめ、次いで第2段階で240〜340℃、1〜50,000Pa下10〜60分間、自己清浄化高粘度反応器中で重縮合してポリカーボネートを製造する方法が開示されている。しかしこの方法は芳香族モノヒドロキシ化合物を副生させつつ重合を進行させるものであり、ジアリールカーボネートの脱離を伴う反応については何も記載されていない。
また、ポリカーボネートは優れた光学特性と成形性と機械特性とを併せ持ち、記録材料の基板等の用途に広く使用されているが、長時間に亘り成形を行うと金型に汚れを生じ、記録材料表面のグルーブと呼ばれる微細な溝の転写性が低下し、記録材料の不良を引き起こすという問題があった。
このため、一定時間の経過後、設備を休止し、金型を清掃する必要があり、設備稼働率などで成形コストが上昇するので改善が求められていた。さらに、成形物にクラウドと呼ばれる曇りが発生する現象が認められ、クラウドを生じた基板は記録材料に使用できないため、その減少が求められていた。
発明の開示
そのため芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのエステル交換反応を用いた溶融重合で、末端OH基含有量が少なくかつ品質の優れたポリカーボネートを製造する方法を見つけるべく鋭意努力を重ねた結果、エステル交換反応として、従来主として考えられてきた芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応以外にジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を一定割合で併用することで、末端OH基含有量の少ないポリカーボネートを従来よりも短時間で得ることができ、これによって品質も向上することを見出し、さらに、このように反応を制御して得られたポリカーボネートは従来のポリカーボネートと比較して金型汚れが少なく、クラウドの発生も少ないという予想できない特徴を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の目的は、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを溶融重縮合反応させることにより得られ、末端OH基含有量が少なく、色相に優れ異物含有量が少なく、かつ、金型汚れが少なく、連続した精密成形性に優れ、クラウドの発生も少ない、従来にない優れた品質を有するポリカーボネートを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを触媒の存在下、溶融重合させる際に、芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応とジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応とを一定の割合で生じさせることにより、OH末端含有量が少なく、色相や熱安定性に優れ、異物含有量が少なく、金型汚れが少なく、クラウドを発生し難い高分子量のポリカーボネートを製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明方法により製造される、上記のごとき優れた種々の特性を備えた芳香族ポリカーボネートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記のごとき優れた種々の特性を備えた芳香族ポリカーボネートとその他の特定成分からなる、上記芳香族ポリカーボネートの優れた特性を生かした組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
(1)芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応せしめて粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートを生成し、次いで
(2)この第1芳香族ポリカーボネートを、芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離する第1エステル交換反応および芳香族炭酸ジエステルを脱離する第2エステル交換反応を伴う重合に、該芳香族モノヒドロキシ化合物対該芳香族炭酸ジエステルのモル比が1対0.1〜1の生成割合となるように、付して、粘度平均分子量が第1芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量よりも大きくかつ10,000以上でありしかも全末端基に対する末端ヒドロキシル基の濃度が第1芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度よりも低い第2芳香族ポリカーボネートを生成せしめる。
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造法によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
本発明の上記方法で製造された、末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の35モル%以下であり、0.5μm以上の粒子の含有量が50,000個/g以下であり、そして粘度平均分子量が10,000以上である、
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネートによって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、
本発明の上記方法で製造された芳香族ポリカーボネート並びに、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル、無機充填剤およびポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる組成物によって達成される。
発明の好ましい実施形態
以下、本発明について説明する。まず、本発明方法について説明する。
工程(1)では、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応せしめて粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートを生成せしめる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキサイド、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)オキサイド、p,p’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が用いられる。これらのうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)が好ましい。
上記芳香族炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート等が用いられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
本発明で用いられるポリカーボネートは、必要に応じ、共重合成分として、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,10−デカンジオールのごとき脂肪族ジオールを含有してもよく、また例えば、コハク酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、シクロヘキサンカルボン酸、テレフタル酸のごときジカルボン酸成分や、例えば、乳酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のごときオキシ酸成分を含有してもよい。
本発明において、溶融重合に使用されるエステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素塩基性化合物を使用することができる。
アルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化ホウ素塩、安息香酸塩、リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。その具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、シアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸水素ジリチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸ストロンチウム、シアン酸カルシウム、シアン酸バリウム、シアン酸ストロンチウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ストロンチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素バリウム、水素化ホウ素ストロンチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸バリウム、安息香酸ストロンチウム、ビスフェノールAのカルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩、フェノールのカルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。
本発明においては、所望により、触媒のアルカリ金属化合物として、(i)周期律表第14族の元素のアート錯体のアルカリ金属塩または(ii)周期律表第14族の元素のオキソ酸のアルカリ金属塩を用いることができる。ここで周期律表第14族の元素とは、ケイ素、ゲルマニウム、スズのことをいう。
上記(i)の周期率表第14族元素のアート錯体のアルカリ金属塩としては、特開平7−268091号公報に記載のものをいうが、具体的には、ゲルマニウム(Ge)の化合物として、NaGe(OMe)5、NaGe(OEt)5、NaGe(OPr)5、NaGe(OBu)5、NaGe(OPh)5、LiGe(OMe)5、LiGe(OBu)5、LiGe(OPh)5を挙げることができ、スズ(Sn)の化合物として、NaSn(OMe)3、NaSn(OMe)2(OEt)、NaSn(OPr)3、NaSn(O−n−C6H13)3、NaSn(OMe)5、NaSn(OEt)5、NaSn(OBu)5、NaSn(O−n−C12H25)5、NaSn(OEt)3、NaSn(OPh)5、NaSnBu2(OMe)3を挙げることができる。
また、上記(ii)の周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ケイ酸(silicic acid)のアルカリ金属塩、スズ酸(stanic acid)のアルカリ金属塩、ゲルマニウム(II)酸(germanous acid)のアルカリ金属塩、ゲルマニウム(IV)酸(germanic acid)のアルカリ金属塩を好ましいものとして挙げることができる。
ケイ酸のアルカリ金属塩は、例えば、モノケイ酸(monosilicic acid)またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としては、オルトケイ酸モノナトリウム、オルトケイ酸ジナトリウム、オルトケイ酸トリナトリウム、オルトケイ酸テトラナトリウムを挙げることができる。
スズ酸のアルカリ金属塩は、例えば、モノスズ酸(monostanic acid)またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としてはモノスズ酸ジナトリウム塩(Na2SnO3・xH2O、x=0〜5)、モノスズ酸テトラナトリウム塩(Na4SnO4)を挙げることができる。
ゲルマニウム(II)酸(germanous acid)のアルカリ金属塩は、例えばモノゲルマニウム酸またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としてはゲルマニウム酸モノナトリウム塩(NaHGeO2)を挙げることができる。
ゲルマニウム(IV)酸(germanic acid)のアルカリ金属塩は、例えば、モノゲルマニウム(IV)酸またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その具体例としてはオルトゲルマニウム酸モノリチウム塩(LiH3GeO4)、オルトゲルマニウム酸ジナトリウム塩、オルトゲルマニウム酸テトラナトリウム塩、ジゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge2O5)、テトラゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge4O9)、ペンタゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge5O11)を挙げることができる。
触媒としてのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、当該触媒中のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素が芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り1×10−8〜5×10−5当量となる割合で好ましく使用される。より好ましい割合は、同じ基準に対し5×10−7〜1×10−5当量となる割合である。
当該触媒中のアルカリ金属元素量またはアルカリ土類金属元素量が芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り1×10−8〜5×10−5当量の範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネートの諸物性に悪影響をおよぼしたり、また、エステル交換反応が十分に進行せず高分子量のポリカーボネートが得られない等の問題が生じることがあるので、好ましくない。
また、触媒としての含窒素塩基性化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド[φ−CH2(Me)3NOH]、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルキルアリール基等を有するアンモニウムヒドロオキシド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン等の3級アミン類、あるいは、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)等の塩基性塩を挙げることができる。
上記含窒素塩基性化合物は、含窒素塩基性化合物中のアンモニウム窒素原子が芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り1×10−5〜5×10−3当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい割合は同じ基準に対し2×10−5〜5×10−4当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し5×10−5〜5×10−4当量となる割合である。
本発明において、上記のようなエステル交換触媒は工程(1)のエステル交換反応の開始時に加えればよく、重合反応の進行に伴って、例えば後述する工程(2)の後期重縮合において、新たに加える必要は特にない。
工程(1)のエステル交換反応によれば、粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートが生成される。粘度平均分子量は、好ましくは4,000以上10,000未満であり、より好ましくは4,000以上8,000未満である。また末端ヒドロキシル(OH)基濃度は全末端基の20〜40モル%である。
第1芳香族ポリカーボネートの末端OH基含有率を制御する操作は回分設備を使用する場合と連続設備を使用する場合で若干異なる。
すなわち、回分設備を使用する場合は、重合槽内の反応物の分子量やOH基含有率は重合槽内で連続的に変化する。このため、重合槽内の反応物をサンプリングにより分析し、エステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物を主体とする副生成物量と反応物の分子量との関係、および原料として使用した芳香族炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのモル比と重合槽内の反応物のOH末端含有率との関係をあらかじめ測定しておくことにより、第1芳香族ポリカーボネートの分子量とOH基含有率とを所定の範囲に維持することができる。
回分設備の場合は任意の分子量で反応槽内の反応物のOH含有率をチェックすることが可能である。
連続設備を使用する場合は、複数の反応器を直列に配置して重合を行うが、反応物の粘度平均分子量は重合槽間でステップ状に変化する。このため、反応器の出口における反応物の粘度平均分子量が4,000以上となる条件で操作されている少なくとも1基の重合槽の反応器出口における反応物のOH末端含有率を15〜45モル%の間に維持する必要がある。
オリゴマーのOH末端含有率は回分設備か連続設備かを問わず、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとのモル比を調整することによって制御され、その割合は使用する装置の特性によって変化するが、一般的には、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して芳香族炭酸ジエステルを1.00〜1.1モル使用する割合が選定される。選定された原料使用比率は0.5%の精度で維持することが好ましい。
オリゴマーを製造するために使用する反応器の形式には特に制限がなく、一般に知られた反応器を使用することができるが、縦型攪拌槽が好ましく使用される。また、原料として使用する芳香族炭酸ジエステルの系外への留出を抑える目的で精留塔を付設した縦型攪拌槽も好ましく使用される。
オリゴマーを製造するために使用される皮応器の材質に特に制限はないが、少なくとも反応液と接触する反応器の内面は通常ステンレススチールやニッケルなどの鉄分の含有量の少ない材質が使用される。
オリゴマーを製造するための反応温度は一般に知られた反応温度を使用することができ、通常は100〜300℃、好ましくは180〜270℃が用いられる。またこの時の反応圧力としては、通常、常圧から133Pa(1mmHg)、好ましくは66,500Pa(500mmHg)〜1,330Pa(10mmHg)が用いられる。
また、工程(1)で原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとは、工程(1)を実施する前に、それらの混合物として、芳香族ジヒドロキシ化合物の融点以下の温度であらかじめフィルターで濾過して使用するのが望ましい。
フィルターとしては、公称濾過精度0.1〜1μmである金属繊維からなる濾過層を有するものが好ましく用いられる。このようにすることで、重縮合によって得られるポリカーボネートの異物数を低減させることができると共に、色相を向上させることができる。この原因は定かではないが、1μm以上の異物の中には、ポリカーボネートの色相を悪化させる物質が存在すると共に、反応阻害物質が多く存在し、それらを取り除くことによって重縮合反応速度が向上し、よって熱履歴の少ない色相の良いポリカーボネートが得られるものと考えられる。
本発明に使用される上記フィルターはSUSなどの原料混合物に不活性な金属繊維で構成された濾過層を有するフィルターであり、このようなフィルターとしては金属繊維を湿式または乾式で抄紙した金属不織布や該不織布を焼結したフィルターを挙げることができる。このような金属繊維フィルターはメンブランフィルターと比較して耐熱性や耐薬品性に優れるだけでなく、フィルター寿命も長くなることが分った。この原因は明確ではないが、メンブランフィルターは濾材の表面で異物を捕集するのに対し、金属繊維フィルターは厚み全体で異物を捕集するため、捕集容量が増大するものと推定される。このため、金属繊維フィルターを用いた場合、各々の原料をあらかじめ濾過しなくても0.1〜1μmという細かい目開きのフィルターを使用しても長時間濾過することが可能となる。
次に、本発明方法の工程(2)では、工程(1)で生成された第1芳香族ポリカーボネートをさらに重合せしめる。
このとき、重合反応における芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離する第1エステル交換反応および芳香族炭酸ジエステルを脱離する第2エステル交換反応を、該芳香族モノヒドロキシ化合物対該芳香族炭酸ジエステルのモル比が1対0.1〜1、好ましくは0.2〜0.7の生成割合となるように行う。
このような割合で芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離反応とジアリールカーボネート脱離反応が起っていることは、反応槽から発生する副生物蒸気を組成変更させることなく捕集し、捕集物に含まれる芳香族モノヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとのモル比を測定することによって確認することができる。
この範囲よりもジアリールカーボネート脱離反応の割合が大きいと得られるポリカーボネートのOH末端含有率が大きくなり好ましくない。また、この範囲よりもジアリールカーボネート脱離反応の割合が小さくなると重合に要する時間が長くなり、得られるポリカーボネートの品質が低下するので好ましくない。
上記工程(2)の重合反応の第1エステル交換反応と第2エステル交換反応を上記のごとく進行させるには、薄膜形成性に優れる反応器を使用するのが好ましい。かかる反応器としては、例えば反応器内のポリマーの表面積のうち、50mm以下の液深を有するポリマーの表面積を50%以上に制御しうるものが好ましい。
このような50mm以下の液深を有する薄膜は50mm以下のクリアランスを有するスクレーパー等で、反応器の鏡板や胴壁といった器壁の、スクレーパー等に対向する部分に反応物を塗布する方法や、反応器内の、円板、支持羽根、攪拌単位、スクレーパーといった攪拌翼の構成要素(以下単に攪拌翼構成要素という場合がある)やポリマー流下用のワイヤーのような支持体に沿って反応物を流下する方法や、反応物を自由落下させる方法によって形成することができる。
なお、本明細書で攪拌翼とは、横型1軸反応器では、端部円板、中空円板、支持羽根等の攪拌翼構成要素を含んでおり、横型2軸反応器の場合は、攪拌単位等の攪拌翼構成要素を含む攪拌機能を有する部材を意味する。
また、「攪拌軸方向」は攪拌翼が回転するときの回転の中心となる線を意味し、攪拌軸が実際に存在することを意味するとは限らない。このことは「横型2軸反応器」についても同様であり、この場合の「2軸」も、攪拌翼が2セットあることを意味し、攪拌軸が実際に存在することを意味するとは限らない。
ここで、ポリマー表面は実際の反応状態においては副生する低沸点物の蒸発によって多くの気泡を含み不規則に変形しているが、本発明の液深算定や表面積を算定するに当たっては気泡による変形を無視し、なだらかな平面を形成するものとして取り扱い、液深とはこのようななだらかな平面を仮定した場合、該平面(湾曲していてもよい)に垂直に液深を測定した場合の液厚みを指す。
例えば、反応器壁にポリマーを塗布する場合は器壁に対向する支持羽根のクリアランスを50mm以下とすることにより、本発明の実施に適した薄膜が形成でき、薄膜の表面積は反応物が塗布された器壁表面積に相当することとなる。
また、反応器空間に設置された支持体に沿って液膜状やストランド状に流下する場合は供給量V(mm3/min)と平均流下時間t(min)の積を平均流下長G(mm)および支持体数Mで除し、平均断面積S(mm2)を求め、支持体が面で反応物と接触する場合はSを流下長に垂直な支持体の濡れ幅J(mm)で除し、液深を求める。
支持体がワイヤーなどであり、実質的に線で反応物と接触する場合はSを円と仮定し、S=πr2より相当する半径を求め液深とする。この方法では供給量や支持体の形状、長さ、本数を調整することにより液深を本発明に適した50mm以下にすることが可能であり、その表面積はG×J×Mまたは2πrGMに相当する。
反応物を自由落下させて液膜を形成する場合は、多孔板より反応物を押し出し自由落下させる場合と上部に拘束されない空間を有する容器より反応物を流し出し、自由落下させる場合とに分れる。
前者は反応物を押し出す多孔板の孔形と同じ断面を有する落下物が得られると考え、液深および表面積を算出する。例えば、孔形が円の場合は孔の半径rが液深に相当し、表面積は孔数をM、落下長をGとして、2πrGMで求められる。
後者の場合、形成される液膜の厚みは100mm以下であり、液深はその1/2の50mm以下と見なせる。液膜の表面積は落下長をG、液膜幅をJ、液膜数をMとすると2MGJで表される。
これを添付図面の図1および図14を例にとってさらに具体的に説明する。
図14は図1に示す横型反応器の攪拌軸方向の断面図を示しており、1は反応器の胴壁、11は中空円板、13は中空円板11の間に攪拌軸方向に設置された支持羽根を示す。
図14において、支持羽根13は反応胴壁1と狭い間隔を保って設置されており、支持羽根の外側(胴壁側)端面によって反応液を胴壁に塗布し薄膜を形成すると共に、反応器胴壁1と複数の中空円板11と中空円板間に設置された支持羽根13とで形成される空間が、上部に拘束されない空間を有する容器に相当し、支持羽根の回転に伴い該空間で反応液を汲み上げ、次いで、支持羽根の内側(反応器の中心側)端面より自由落下させて薄膜を形成する機能を有する。
この場合、自由落下液膜を形成し得る支持羽根の位置は反応液掻き揚げ開始点(y−zの位置)から支持羽根が鉛直となるf点までの間の任意の位置を取ることができるが、本発明の自由落下液膜の表面積計算においては、f点に支持羽根がある場合の自由落下長の総和(MG)を求め、自由落下液膜の表面積を算出する。
すなわち、支持羽根と支持羽根外端eと中心cを結ぶ線が成す角(支持羽根取り付け角)をδとすると∠acfはδ+90°となり、反応器胴径≒中空円板外径=D、支持羽根幅をW、中空円板内径をdとすると、f点の支持羽根から落下する液膜の落下長は(1/2)・D・sin(∠acf)−W・sin(∠acf−δ)+(1/2)・dとなる。
中空円板にM枚の支持羽根が設置されている場合、af間に別の複数(i個)の支持羽根が存在でき、その点をxiとすると∠acxiはδ+90−360・i/M(i=1,2,…。∠acxi≧0。)となり、各々の支持羽根から落下する液膜の落下長は(1/2)・D・sin(∠acxi)−W・sin(∠acxi−δ)+(1/2)・dとなる。
図14では8個の支持羽根を有する場合が示されており、δ=45°の場合はi=3、自由落下長の総和(MG)は1.2D−W+2dとなり、支持羽根の奥行き幅(図1における中空円板間の長さ)をJとすると自由落下する薄膜の総表面積(Af)は2J(1.2D−W+2d)となる。
また、支持羽根によって反応器胴壁に塗布された薄膜の面積(As)は反応液面と胴壁の交点をy,zとすると、J(πD・(360−∠ycz)/360)となる。ただし、∠ycz=2・cos−1(d/D)である。
反応器の下部にホールドされる液深が50mmを超える反応液の表面積(Av)はJ(D2−d2)1/2で表されるから、反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合は(As+Af)/(As+Af+Av)より計算することができる。なお、薄膜の形成される面としては反応液面より上にある中空円板面や支持羽根面も該当するが、通常はこれらを無視して計算してよい。
本発明においては反応器内の全液量(V)を反応液全表面積(S)で除したV/Sはさほど重要ではなく、薄膜形成部分が全体に占める割合が重要である。この理由は定かではないが、エステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステル(以下ジアリールカーボネートということがある)とを比較した場合、後者の分子サイズが一般に大きいため、反応液中をこれらのエステル交換副生物が拡散する場合、液深の増加によって、分子サイズの大きいジアリールカーボネートの拡散速度が芳香族モノヒドロキシ化合物の拡散速度よりも大きな影響を受けて遅くなると考えられること、および、オリゴマーをポリカーボネートとする重合領域においては反応液の粘度が上昇するため拡散速度が遅く、全体のエステル交換反応速度に無視できない影響をおよぼすためと考えられることによると思われる。
すなわち、ジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応を円滑に実施するには分子サイズの大きいジアリールカーボネートを速やかに液表面に移動させ反応系外に除去することが重要であり、好ましい割合の芳香族モノヒドロキシ化合物脱離反応とジアリールカーボネート脱離反応とは液深の浅い部分で主として生じており、このため、平均的な液深を表すV/Sではなく全体に占める薄膜形成部分の割合が重要な意味を持つものと考えられる。
このような薄膜形成性の優れる反応器を具体的に示すと、例えば反応胴壁に近接した支持羽根によって反応胴壁に反応液を塗布・更新させると共に支持羽根によって反応液の一部を汲み上げ、次いで汲み上げた液を重力により自由液膜を形成しつつ落下させる構造の横型1軸円筒型反応器を挙げることができる。
このような横型1軸円筒型反応器を、1例を挙げて構成部位毎にさらに詳しく説明する。ただし、本発明がこれによって特別な限定を受けるものでないことはいうまでもない。
横型1軸円筒型反応器は、例えば、図−1に示すような、ジャケット外壁2でおおわれた入口鏡板5と出口鏡板6と容器胴壁1で構成された円筒容器内に2枚の端部円板9、9’、2枚の端部円板間に配設された複数枚の中空円板11、端部円板と中空円板および中空円板同士を所定の間隔で連結しかつ固定する複数枚の支持羽根13および2枚の端部円板の中央部に固定された独立した2本の端部回転軸8、8’からなる、複数の中空円板間に、実際の回転軸を持たない構造を持つ攪拌翼を有する反応器である。そしてこの反応器において、該端部円板および中空円板は該攪拌翼の仮想回転軸に対し垂直である。
(攪拌翼)
図1において、端部円板9、9’の間に配設された複数個の中空円板11は回転方向と逆に傾斜または湾曲した支持羽根13によって、所定間隔に連結固定されている。また端部円板9、9’の中央部は端部攪拌軸8、8’で支持されている。
端部円板と中空円板および中空円板同士の間隔において、複数枚の支持羽根の少なくとも1枚は反応器の胴壁に近接しかつ近接する先端部位が該胴壁に平行である。それによって、先端部と容器胴壁1とで形成される空間部により攪拌回転と共に液が汲み上げられ、次いで重力により自由液膜を形成しつつ落下し、かつ、支持羽根13によって、容器胴壁1の気相部分に液を塗布・更新する構造を有する。
すなわち、上記各間隔において、上記少なくとも1枚の支持羽根は攪拌翼の仮想回転軸方向に伸びる平板であるのが好ましく、特に攪拌翼の仮想回転軸に対する垂直な円筒断面における接線に対し30〜60度の角度を持っているのがさらに好ましい。
この場合、容器胴壁に塗布された液膜の厚み(液深)は支持羽根先端と容器胴壁との間のクリアランスに相当し、汲み上げられた液が落下する時に形成する自由液膜の液深は50mm以下に相当する。
かかる構造の攪拌翼を用いることにより、ホールドアップを高めても支持羽根13の先端と容器胴壁1とで形成される空間部により、攪拌回転と共に液が汲み上げられ、次いで重力により自由液膜を形成しつつ落下し、かつ、支持羽根13によって容器胴壁の気相部分に液が塗布されるため、反応液の表面液の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合が50%以上に保たれ、その結果として芳香族モノヒドロキシ化合物脱離反応とジアリールカーボネート脱離反応との割合が好ましい範囲に維持でき、高い反応速度が達成され、品質の向上したポリマーを得ることができる。
また、支持羽根13の先端の回転に伴って、常に容器胴壁1の液膜が掻き取られ更新されるため、ゲル、異物、色相低下の原因物質が発生せず良好な品質のポリマーを得る一助となる。さらに、端部攪拌軸8と端部攪拌軸8’との間には攪拌軸が存在しないため、攪拌軸周りの滞留部分が発生せず、ポリマーの品質が一層向上する。
(端部円板)
端部円板9は反応器の鏡板部分の液の滞留を防止する目的で多数の開口を有するものが好ましい。かかる形状としては、例えば、多数の開口、切り欠きを有する円板、中心部から延びた複数の支持板を有する中空円板が用いられる。これらの内、図2に示すような開口10を有する切り欠き円板であることが好ましい。
(支持羽根)
支持羽根13は、図3(1)、(2)、(3)に示すような、先端部に回転方向と逆方向に延在し、容器胴壁1と小間隙を保持する尾翼部分14を有してもよい。かかる尾翼部分14の設置は反応液の粘度が低い場合に容器胴壁への液膜の塗布と反応液の汲み上げ性とを向上させる効果を有する。
すなわち、尾翼部分14は容器胴壁への液膜の塗布と反応液の汲み上げ性とを有する形状を有する。容器胴壁への液膜の塗布の機能を果たすため、当該反応器の胴壁に平行する部位を有する。
かかる構成からなる装置を用いて第1芳香族ポリカーボネートの重合を行う場合、支持羽根はモーターによってゆっくりと、好ましくは1〜15rpmの回転数で回転される。
このような装置はオリゴマーの回分重合に使用してもよく、連続重合に使用してもよい。
連続重合に使用する場合、液は図1に示す入り口3より連続的に注入され、供給された第1芳香族ポリカーボネートは案内羽根7によって入り口の側壁5の内部を塗布・更新する一方、支持羽根13あるいは尾翼部分14によって掻き上げられ気相部の胴壁1に反応液を塗布、更新する。さらにこれらにより反応液は膜状を形成しながら落下し中空円板11の開口部12より次室に流れ込み順次同様な作用を繰返して液出口4に向かって送られ、液出口4から重合度の高められた第2芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
本発明の薄膜形成性に優れる反応器の別の具体的態様として、平行に延びた2つの円筒を組合せることによって形成された繭型の断面を有する横型2軸反応器であって、次の構造要素を有するものを挙げることができる。
a)反応器入り口側鏡板、該鏡板の反対方向にある反応器出口側鏡板、該反応器内を実質的に水平方向に延びる複数の攪拌単位を持つ第1の攪拌翼および該第1の攪拌翼と平行でかつ反応器内に実質的に水平に配置された複数の攪拌単位を持つ第2の攪拌翼を有する。
b)第1の攪拌翼と第2の攪拌翼とが互いに噛み合うように近接して配置されておりそして同期しながら同方向に回転することによって反応液を相互の攪拌単位および反応器胴壁に薄膜状に塗布、更新する機能を有する。
c)反応器入り口側鏡板に近接しかつ第1の攪拌軸の上方に設けられた反応液の入り口と、反応器出口側鏡板に近接した反応器の下部に設けられた反応液の出口とを有する。
ここで、第1の攪拌翼とは回転によって反応器上部の反応液を相対して設置されたもう一つの攪拌軸の攪拌単位から遠ざける方向に移動させる攪拌翼を意味する。
また「攪拌単位」の形状としては経験的に高粘度物質の混練、混合等に適した構造を選択することができる。例を図4に示す。
かかる構造の反応器は前述した横型1軸反応器では対応できないような高分子量のポリカーボネートを製造しようとした場合に好ましく使用される。このような高分子量を具体的に示すと、粘度平均分子量が15,000を超える場合、好ましくは20,000を超える場合に相当し、第1芳香族ポリカーボネートを直接このような横型2軸反応器で重合してもよく、第1芳香族ポリカーボネートを横型1軸反応器で重合した後、引き続き横型2軸反応器を用いて重合を行ってもよい。
このような横型2軸反応器を、1例を挙げて構成部位毎にさらに詳しく説明する。ただし、本発明がこれによって特別な限定を受けるものでないことはいうまでもない。例えば攪拌軸の一部を実際に欠く構造も許容される。
(全体構成)
本発明で用いられる横型2軸反応器の好ましい態様を示す透視斜視図、上方から見た平面断面図、側面断面図をそれぞれ、図4,5および6A,Bに示す。なお、以下の説明において、「攪拌軸」は実際に存在する攪拌軸を意味する。
本発明に好ましく使用される横型2軸反応器は反応器入り口側鏡板105と該鏡板の反対方向にある反応器出口側鏡板106と、該反応器内を実質的に水平方向に延びる第1の攪拌軸102とこれに平行に実質的に水平に配置された第2の攪拌軸103とを有する。各々の攪拌軸には互いに噛み合うように近接して配置された複数の攪拌単位120、121、127が取り付けられており、これらの攪拌軸は同期して同方向に回転する。
また、反応器胴壁1は攪拌単位と狭い隙間を保っており、2つの円筒を組合せることによって形成された繭型の断面を有している。また、反応器入り口側鏡板105に近接し、かつ、第1の攪拌軸102の上方に反応液の入り口111が設置されており、反応器出口側鏡板106近傍の反応器下部に反応液の出口112が設置されており、反応液の出口には、粘度の高まった反応液の排出を行うために反応液抜出しスクリュー113が設置されている。またエステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートは、ベント口15に接続された真空配管117、116を通って反応器外へ排出される。この時、副生物蒸気に同伴した高沸点物は真空配管117、116の間に設置した留出物受器118に捕集される。
ここで、第1の攪拌軸とは、本発明の明細書においては、攪拌軸が回転した場合、反応器上部の反応液を相対して設置されたもう一つの攪拌軸の攪拌単位から遠ざける方向に移動させる攪拌軸を意味し、具体的には図13の場合は攪拌軸102が第1の攪拌軸に相当し、攪拌軸の回転方向が図13に示す方向と逆の場合には攪拌軸103が第1の攪拌軸に相当する。
本発明の各々の攪拌軸には反応物を攪拌し、薄膜を形成する役目を持つ図7A、7B、9、11A、11Bに示すような複数の攪拌単位が設置されている。
攪拌単位
本発明に使用する攪拌単位は図7A、9、11Aに示すように実質的に凸レンズ状(紡錘形状)の断面を有する。図5および本発明の横型2軸反応器の好ましい態様を示す別の平面断面図である図12のAで示す反応器入り口から中央にかけては送液機能を有せずかつ強い攪拌機能を有する攪拌単位が用いられ、Bで示す反応器出口部分では送液機能を有する攪拌単位を使用することが好ましい。
このようにすることにより、反応液のホールドアップを高め薄膜形成機能を向上させると共に、反応器出口側鏡板に反応液を強制的に送り込むことにより反応器出口側鏡板部分に生じ易い反応液の滞留部分をなくし、品質の向上したポリカーボネートを得ることが可能となる。
図5および図12のAの領域に使用される攪拌単位としては図7Aおよび図11Aに示す攪拌単位が好ましく使用される。図7Aにおいて、攪拌部分aは実質的に凸レンズ状の断面を有しており、攪拌軸方向に一定の間隔cを空けて対向する攪拌部分bと位相を90°ずらして取り付けられている。また、該攪拌単位の先端部に、取り付け間隔cより僅かに短い長さの、反応器胴壁と僅かの間隔を空けて回転軸と平行に設置された、胴壁に対するスクレーパー(以後、S−スクレーパーと称する)d、e、f、gを有している。使用においては攪拌単位の組み立てを容易にするためにS−スクレーパーを有する攪拌部分a、bを所定間隔cを保って一体構造とした攪拌構成が好ましく使用される。図7Aはこの一体化された攪拌構成を120で示している。
この攪拌単位120は第1の攪拌軸と第2の攪拌軸とに位相を90°ずらして設置されており、かつ、回転に伴い一方の軸に取り付けられた攪拌単位のS−スクレーパーが他方の攪拌軸に取り付けられた攪拌単位のS−スクレーパーと攪拌軸との間の空間に50mm以下の僅かな隙間を空けて入り込むように設置されている。
また、攪拌単位の先端は反応器胴壁および対向する攪拌単位と50mm以下の僅かな隙間を保つように設置される。これによって反応液は反応器胴壁および攪拌単位の全面に薄膜状に塗布・更新され、反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合を50%以上にすることを可能としている。
図5および図12のAの領域に使用される攪拌単位の別の態様としては図11Aに示す攪拌単位128がある。
該攪拌単位は実質的に凸レンズ状の断面を有しており攪拌軸方向に位相を90°ずらして取り付けられると共に、第1の攪拌軸と第2の攪拌軸との間でも攪拌単位の位相が90°ずれるように設置されている。
また、攪拌単位の先端は反応器胴壁および対向する攪拌単位と50mm以下の僅かな隙間を保つように設置される。これによって反応液は攪拌軸の回転とともに、反応器胴壁および攪拌単位の全面に薄膜状に塗布・更新され、本発明の実施の要件である反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合を50%以上にすることを可能としている。
図5および12のBの領域に使用される攪拌単位の別の態様としては図9に示す攪拌単位127が好ましく使用される。
該攪拌単位127は実質的に凸レンズ状の断面を有しており、図9に示すように上面と下面で若干ねじれた形状を有している。このねじれの程度を図10のγで表した場合、γが5〜60°の範囲にある場合に送液性やセルフクリーニング性が向上し、好ましい。特にγが5〜45°の範囲にある場合は最も優れた性能を示す。
本発明において攪拌単位127は図8に示すように攪拌軸方向に位相をずらし、全体として実質的にスクリュー形状を取るように攪拌軸に取り付けられる。このときの位相のずれをαとすると、αは15〜60°の範囲にあることが好ましく、30±10°の範囲が特に好ましい。
αが上記の範囲を外れて小さくなると、攪拌単位127の側面に筋状のポリマー流れができ、ドライスポット部分(ポリマーで濡れない部分)でゲル、異物等が発生する。
αが範囲を外れて大きい場合は、各々の攪拌単位が独立した状態となり、前後の攪拌単位の影響を受けなくなるため、攪拌単位の濡れが低下しゲル、異物等が発生する。また、送液性も弱くなるため、反応器出口側鏡板部分に送られる反応液量が低下し、反応器出口側鏡板部分にデッドスペースを生じポリマー品質が低下する。
第1の攪拌軸と第2の攪拌軸に上記のようにして全体としてスクリュー形状をなすように設置された攪拌単位127は互いに噛み合うように設置され、攪拌単位の先端は反応器胴壁および対向する攪拌単位と50mm以下の僅かな隙間を保つように設置される。
これによって反応液は攪拌軸の回転に伴い、反応器出口側鏡板に向かって送られると共に反応器胴壁および攪拌単位の全面に薄膜状に塗布・更新され、反応器内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合を50%以上にすることを可能とする。
本発明の攪拌単位120、127、128の内、攪拌軸の両端に取り付けられる攪拌単位は極力鏡板に近接して取り付けることが望ましい。
この中でも入り口鏡板に対向して設置される攪拌単位としては図7Bや11Bに示される鏡板に対するスクレーパー(以後、P−スクレーパーと称する)122,123を有する攪拌単位を使用することが好ましい。
P−スクレーパーは凸レンズ形状の頂点を0°、180°、攪拌単位の回転方向を正とした場合、攪拌単位の鏡板に対向する面の外周であって、90〜180°の領域および270〜360°の領域の各々少なくとも一部に点対称に設置される。
P−スクレーパーは回転に伴い鏡板部分の反応液を攪拌単位頂部から攪拌軸に向けて強制的に流動させる効果を有しており、これによって、攪拌軸近傍に発生し易いデッドスペースをなくし、品質の優れたポリカーボネートを製造することを可能とする。
なお、上記説明において記載した間隔は使用温度における寸法であり、冷時に測定した値ではない。
(反応液入り口)
本発明の横型2軸反応器に反応液を供給する位置は反応器の入り口鏡板に近接し、かつ、第1の攪拌軸の上方とすることが好ましい。このような位置から反応液を供給することによって、入り口に生じ易いデッドスペースを解消することができ、優れた品質のポリカーボネートを得ることができる。
なお、近接とは具体的には、間隔が実質的に500mm以内であることを意味する。より望ましくは300mm以下である。
このような供給位置をさらに具体的に示すと、一つの態様として図6Aの111に示すように、第1の攪拌軸の上部の反応器入り口側鏡板に直接供給口を設置する方法がある。
また、別の態様としては図6Bの111に示すように、入り口鏡板に近接して、第1の攪拌軸の上方にベント口を設け、このベント口の内部から反応液を入り口鏡板に近接して供給する方法がある。
(ベント口)
本発明の横型2軸反応器はエステル交換反応によって発生する芳香族モノヒドロキシ化合物やジアリールカーボネートといった副生成物を反応器外に除去し、反応器内圧を減圧に保つためのベント口15を第1の攪拌軸の上方の反応器胴壁に設置することが好ましい。
また、反応器胴壁に設置したベント口の大きさはその内径を、一つの攪拌単位が通過する時、該ベント口上から見えるS−スクレーパーを含む攪拌単位の寸法の1.15倍以上にすることが好ましく、1.15倍から2.5倍の範囲とすることがさらに好ましい。このようにすることにより攪拌単位によって形成された反応液の液膜がベント口から系外に飛散するベントアップと呼ばれる現象を防止することが可能となり品質の優れたポリカーボネートを長期に渡り安定に製造することができる。
図15はベント口をさらに詳細に示した平面図であり、ベント口15は第1の攪拌軸102の上方の胴壁1に設置されており、該ベント口の内径Xは、該ベント部を通過するS−スクレーパーを含む攪拌単位の長さYの1.15倍以上とすることが好ましい。
(攪拌軸)
本発明の横型反応器(1軸および2軸のいずれも)の攪拌軸は鏡板から軸受けにかけて攪拌軸スリーブ107、108、109、110内に、反応液の侵入を防ぐ目的で、または侵入した反応液を反応器内部に戻さず、系外に排出する目的で螺旋状の溝を施工することが好ましい。
図5はこれを模式的に示したものであり、攪拌軸の鏡板から軸受けにかけて螺旋状の溝を施工する部分は124、125で示されている。この内、125は攪拌軸の回転により侵入したポリマーを反応器内部に押し戻す方向に螺旋状の溝を施工した攪拌軸を示している。
また、124は攪拌軸の回転により侵入したポリマーを軸受け方向に送り込む働きをする螺旋状の溝を施工した攪拌軸を示している。そして図6は124のポリマーを軸受け方向に送り込む方向の溝と125の反応器内部に押し戻す方向の溝とがぶつかる位置に対応する攪拌軸スリーブに侵入ポリマー排出口126を設け、該排出口から反応液を系外に排出する場合を示している。
このような溝を攪拌軸の軸受け部に施すことにより、ポリマー劣化物の発生を抑制し優れた品質のポリカーボネートを得ることができる。
本発明において、薄膜形成性に優れる反応器の材質に特に制限はなく、通常の材質が使用できるが、反応液が接触する反応器の内面はステンレススチールやニッケルなどの鉄含有量の少ない材質を使用することが好ましい。
工程(2)は、上記のごとき薄膜形成性に優れる反応器中で、第1芳香族ポリカーボネートを、通常、200〜350℃、1,330Pa(10mmHg)以下、好ましくは250〜320℃、665Pa(5mmHg)以下の条件で重合せしめる。
工程(2)によれば、粘度平均分子量が第1芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量よりも大きくかつ10,000以上でありしかも全末端基に対する末端ヒドロキシル基の濃度が第1芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度よりも低い第2芳香族ポリカーボネートが生成される。
上記第2芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、好ましくは10,000〜100,000であり、また全末端に対するOH末端含有率は、好ましくは35モル%以下である。さらに、第2芳香族ポリカーボネートは、好ましくは芳香族モノヒドロキシ化合物および芳香族炭酸ジエステルをいずれも高々500ppmでしか含有しない。このため第2芳香族ポリカーボネートを脱揮処理することにより容易に芳香族モノヒドロキシ化合物および芳香族炭酸ジエステルの含有量をそれぞれ200ppm以下に低減することができる。さらに、第2芳香族ポリカーボネートは、好ましくは0.5μm以上の異物含有量が50,000個/g以下であり、異物含有量の変動が+20%以下、粘度平均分子量の変動が±2%以下であり、高品質のポリカーボネートである。
このポリカーボネートは優れた色相を持つ外、末端OH含有率が少ないため、優れた耐久性を有し、さらに異物含有量が少ないため、衝撃特性や精密な成形特性にも優れ、シートや射出成形物などの用途に用いられる。
このうち、光記録媒体としては特に、粘度平均分子量10,000〜18,000、全末端に対するOH末端含有率35モル%以下、0.5μm以上の異物含有量が10,000個/g以下であり、異物含有量の変動が+10%以下、粘度平均分子量の変動が±1%以下の高品質なものが好適に使用される。
さらに、本発明で得られたポリカーボネートは予期せぬ特性を有していることが明らかとなった。すなわち、本発明のポリカーボネートを使用してディスク基板の連続成形を実施した場合、金型汚れが減少し金型清掃周期を大幅に延長でき、さらに、クラウドの発生も大幅に減少することが判明した。
この原因は明らかではないがエステル交換反応の制御によりポリカーボネート中に存在するオリゴマーをはじめとする微量挟雑物が変化しそれ自身または添加剤との相互作用が微妙に変わり予期せぬ効果を生じたものと考えられる。
本発明でこのようにして得られたポリカーボネートは、有機スルホン酸化合物(b)、およびリン化合物、耐熱安定剤、離型剤、加工安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、金属石鹸類、造核剤、帯電防止剤、難燃剤、防黴剤、着色剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤(c)を含むことができる。
このようなスルホン酸化合物(b)としては下記式(II)
(ここで、A2は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X1はアンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンである。)のスルホン酸化合物(b)を添加するのが好適である。これを添加することで、溶融重縮合に使用したアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の活性を低下もしくは失活させることができ、色相、耐熱性、耐加水分解性等の品質に優れたポリカーボネートを得ることができる。
なかでも、スルホン酸化合物(b)が下記式(III)
(ここで、A3、A4、A5、A6およびA7は、互いに独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
で示されるスルホン酸ホスホニウム塩であるとき、その効果が大きいので、特に好ましい。
このようなスルホン酸化合物(b)は、ポリカーボネート製造時のエステル交換触媒の失活剤として機能し、ポリマーの熱安定性を高める。
これらのスルホン酸化合物(b)としては、特開平8−59975号公報記載のような公知の触媒失活剤が有効に使用される。この中でも、スルホン酸のアンモニウム塩、スルホン酸のホスホニウム塩が好ましい。さらには、ドデシルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩、パラトルエンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩やベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩も好ましく使用される。
本発明においては、これらのうちでも、特にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩は効果が良好であり最適である。
触媒失活剤は触媒の活性を著しく低下させるものであり、このような触媒失活剤は単独でポリカーボネートに添加してもよく、水と触媒失活剤の混合液として同時にポリカーボネート樹脂に添加してもよい。
溶融重縮合により得られたポリカーボネートに対するスルホン酸化合物(b)からなる触媒失活剤の添加量は、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記主重縮合触媒1モル当り0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合で使用される。これは通常、ポリカーボネートに対し0.1〜500ppmの割合で使用することに相当する。
添加剤(c)として使用されるリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルを用いることができる。
このようなリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート等のトリシクロアルキルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェート等を挙げることができる。
また、亜リン酸エステルとしては、下記式(IV)で表される化合物を挙げることができる。
(式中、Rは脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。3個のRは同一であっても異なっていてもよい)
上記式(IV)で表される化合物の具体例として、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト等のトリアリールホスファイト、フェニルジデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルイソオクチルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト等のアリールアルキルホスファイト等を挙げることができる。さらに、亜リン酸エステルとして、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト等を用いることもできる。
これらの化合物は単独で、あるいは組合せて用いることができる。これらのうちリン化合物として、リン酸、亜リン酸およびこれらのエステルが好ましく、上記式(IV)で表される亜リン酸エステルがより好ましく、特に芳香族亜リン酸エステルが好ましく用いられる。
本発明ではリン化合物は、ポリカーボネート100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部の量で添加しうる。上記範囲を逸脱するとリン化合物の添加効果が十分に発現しないか、もしくはポリマー品質へ悪影響をおよぼす等の問題が生じることがあるので、好ましくない。
本発明において、使用することができる離型剤としては例えば脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物が挙げられる。脂肪族アルコールとしてはエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールおよびペンタエリスリトール等を挙げることができ、また脂肪族カルボン酸としてはラウリン酸、ドデシル酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸等が挙げられる。
これらの中でも脂肪族アルコールとしてグリセリン、ペンタエリスリトールを用い、脂肪族カルボン酸としてステアリン酸を用いた部分エステルや完全エステルが好ましく使用される。
脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルは好ましくは本発明の芳香族ポリカーボネートが溶融状態にある間に添加され、混練されることが好ましい。また、混練後溶融状態にある間にフィルター例えば公称濾過精度1〜50μmのフィルターで濾過することが望ましい。
本発明で使用する脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物は、ポリカーボネート100重量部に対し、0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部の量で添加しうる。上記範囲を逸脱すると離型性の向上効果が十分に発現しないか、もしくはポリマー品質へ悪影響をおよぼす等の問題が生じることがあるので、好ましくない。
加工安定剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ペンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2,4−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾフェノン系化合物;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤、ニッケルジブチルジチオカーバメート、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル等のニッケル系クエンチャー等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等が、金属石鹸類としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ニッケル等が挙げられる。
また、造核剤としては、例えば、ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム、ジベンジリデンソルビトール、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム塩等のソルビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、(β−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート等の第4級アンモニウム塩系、アルキルホスフェート系化合物が挙げられ、難燃剤としては、例えばトリス(2−クロロエチル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル類、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモフェニルオキサイド等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の金属無機化合物類、これらの混合物等が挙げられる。
上記のスルホン酸化合物(b)および各種添加剤(c)を本発明のポリカーボネートに添加する方法については特に制限はなく、各成分の配合順序も任意である。例えば、溶融状態にあるポリカーボネートに、リン化合物をはじめとする添加剤(c)および/またはスルホン酸化合物(b)を加えて混練してもよく、また、ポリカーボネートの溶液に加えて混練してもよい。
より具体的には、重合反応が終了して得られる溶融状態にある反応器内または押出機内の反応生成物であるポリカーボネートに、直接リン化合物をはじめとする添加剤(c)および/またはスルホン酸化合物(b)、を別々にまたは同時的に加えて混練する方法、あるいは、得られたポリカーボネートをペレット化し、このペレットをリン化合物をはじめとする添加剤(c)および/またはスルホン酸化合物(b)と共に1軸または2軸押出機等に供給して溶融混練する方法、さらに、得られたポリカーボネートを適当な溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン等)に溶解させ、この溶液に別々にまたは同時的に加えて攪拌する方法等を用いることができる。
溶融状態の熱履歴時間および再溶融回数を減らすという点からは、溶融重縮合で得られた溶融状態のポリカーボネートにリン化合物をはじめとする添加剤(c)、スルホン酸化合物(b)を添加・混練しペレット化するのが好ましい。特に、混練後ペレット化する前にフィルターで濾過するのが望ましい。フィルターとしては公称濾過精度1〜50μmのものが有利に用いられる。
また、反応器や2軸押出機などの混練設備に供給するスルホン酸化合物(b)、リン化合物をはじめとする添加剤(c)の形態は溶融状態であってもよく、適当な溶剤に溶解した溶液であってもよく、分散したエマルジョンであってもよく、ポリカーボネートに分散したマスター粉体でもよく、ポリカーボネートのマスターポリマーでもよい。さらに、後述する無機充填剤やポリカーボネート以外の樹脂との組成物を作成する場合はこれらの無機充填剤や樹脂を媒体としたマスター粉体やマスターポリマーを使用することもできる。
これらの添加剤はその形態に応じて公知の定量的供給方法で供給することができ、例えば、溶融液や溶液などの液体の場合はプランジャーポンプやダイアフラムポンプやギアポンプなどが使用でき、マスターパウダーなどの固体の場合は定量供給器とサイドフィーダーとを組合せた設備などが好ましく使用できる。
本発明では、ポリカーボネートを減圧処理することが好ましい。減圧処理に際しては、処理、装置は特に限定されないが、例えば減圧装置付反応器、減圧装置付押出機を用いることができる。
減圧装置付反応器は、縦型槽型反応器、横型槽型反応器のいずれでもよいが、横型槽型反応器が好ましい。減圧装置付押出機は、ベント付の1軸押出機、2軸押出機のいずれでもよく、押出機で減圧処理をしながらペレタイズすることもできる。
その際の圧力は、減圧処理を反応器において行う場合には、0.05〜750mmHg(6.7〜100,000Pa)、特に0.05〜50mmHg(6.7〜6,700Pa)とするのが好ましく、また、押出機を用いて行う場合には、1〜750mmHg(133〜100,000Pa)、特に5〜700mmHg(670〜93,000Pa)とするのが好ましい。
このような減圧処理は240〜350℃で行うのが好ましく、また、反応器を用いる場合には5分〜3時間程度、押出機を用いる場合には10秒〜15分間程度の時間で行うのが好ましい。
ポリカーボネートを減圧処理するタイミングに特に制限はないが、エステル交換触媒の活性が保持されている状態で減圧処理を施すと重合度が変化したり、ポリマーが劣化したりする場合があるため、スルホン酸化合物(b)を添加・混練した後、もしくは添加・混練と同時に減圧処理を行うことが好ましい。
また、各種の添加剤(c)を加える場合は添加剤の沸点に応じて、加えた添加剤がポリマー中に残存するように減圧処理のタイミングを設定することが好ましい。
このようにしてポリカーボネートに減圧処理を施すと、残留モノマーやオリゴマーを低減させたポリカーボネートを得ることができる。また、減圧処理を施す際、残留モノマーやオリゴマーを低減させる目的で水もしくは飽和脂肪族炭化水素、窒素等を加圧混練後減圧処理を行うことも必要に応じて実施しうる。
例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いて溶融重縮合を行った場合、減圧処理によってポリカーボネート中のジフェニルカーボネートやフェノールの残留量を減少させることができる。
本発明のポリカーボネートでは、このようなジアリールカーボネートおよび芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量(残存量)はいずれも上記のとおり重量で200ppm以下であることが好ましいので、上記減圧処理は有効である。
本発明で製造される芳香族ポリカーボネートからシートを作成することができる。このようなシートは、難燃性、帯電防止性に加え、予想しなかったことであるが、優れた接着性や印刷性を有していることが分った。この理由は定かではないが、エステル交換反応の違いが特性に影響をおよぼしている可能性もある。
このようなシートは、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材すなわち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、車両等の窓材、OA機器のデイスプレーやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、水槽用ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレンネルレンズ、光カード、光ディスクや偏光板との組合せによる液晶セル、位相差補正板等の光学用途等に有用である。
かかる芳香族ポリカーボネートシートの厚みは特に制限する必要はないが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜8mm、特に好ましくは0.2〜3mmである。また、かかる芳香族ポリカーボネートシートに、新たな機能を付加する各種加工処理(耐候性を改良するための各種ラミネート処理、表面硬度改良のための耐擦傷性改良処理、表面のしぼ加工、半および不透明化加工等)を施してもよい。
本発明では、このようにして得られたスルホン酸化合物(b)および/またはその他の添加剤(c)を含有するかまたは含有しないポリカーボネートに充填剤好ましくは無機充填剤(B)および/またはポリカーボネート以外の樹脂(C)を添加・混練することにより組成物を得ることができる。
このようにして得られたポリカーボネート組成物はベースとして使用したポリカーボネートが従来のエステル交換法で得られたポリカーボネートと比較して優れた色相や低い異物含有量を有し、また、分子量の均一性が高いという特性を反映し、優れた色相と成形性とを有し、機械的強度に優れた成形物を与える。
このような無機充填剤(B)としては、例えばタルク、マイカ、シリカ、アルミナ、粘土、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の板状または粒状の無機充填剤やガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、炭素繊維、金属系導電性繊維などの繊維状充填剤を使用することができる。また、アラミド繊維、架橋アクリル粒子、架橋シリコーン粒子等の有機充填剤も同様に使用することができる。
これら無機および有機充填剤の配合量は本発明のポリカーボネート100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、3〜100重量部がさらに好ましい。
また、本発明で使用可能な無機充填剤および有機充填剤はシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。この表面処理により、ポリカーボネートの分解が抑制されるなど良好な結果が得られる。
本発明の組成物に使用されるポリカーボネート以外の樹脂(C)としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS(高衝撃強度ポリスチレン)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの中でもABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、AS樹脂、HIPS、ポリブタジエンが好ましく、特にABS樹脂とポリエステル樹脂が好ましい。
本発明において、これらポリカーボネート以外の樹脂(C)の配合量は本発明のポリカーボネート100重量部に対して1〜10,000重量部の範囲で使用することが好ましく、さらに好ましくは10〜1,000重量部、最も好ましくは10〜100重量部である。
本発明の組成物を得る方法は特に制限がなく、公知の混練方法・設備を使用することができるが、複数の供給口を有する2軸ルーダーを使用することが好ましい。
2軸ルーダーを使用する場合、本発明のポリカーボネートはペレットや粉末などの固体の状態でルーダーに供給し溶融させて無機充填剤(B)や本発明のポリカーボネート以外の樹脂(C)と混練してもよいし、重合で得られた溶融状態の本発明のポリカーボネートに必要に応じ、スルホン酸化合物(b)およびその他の添加剤(c)を添加する処理や減圧処理を施した後、一旦固化することなく、溶融状態のままでルーダーに供給して無機充填剤(B)や本発明のポリカーボネート以外の樹脂(C)と混練してもよい。これらの内、熱履歴を減少させる観点からは後者の方法が好ましい。
また、2軸ルーダーを使用する場合、無機充填剤(B)はポリカーボネートまたはポリカーボネート以外の樹脂の供給部の下流側から溶融している樹脂中に供給することが好ましい。このようにすることにより、無機充填剤とルーダーセグメントがドライの状態で接触することを防ぎ、無機充填剤の望ましくない粉砕やセグメントの摩耗を軽減することができる。
無機充填剤(B)の供給は定量フィーダーで供給量を制御しつつ、ポリカーボネート供給部の下流側に設置したサイドフィーダーを使用して所定量供給を行うことが好ましい。
本発明のポリカーボネート以外の樹脂(C)は本発明のポリカーボネートの供給位置の上流、下流、同時の如何なる場所から供給してもよい。供給に当たっては固体状態で樹脂(C)を供給してもよく、一旦別のルーダー等で溶融後、ポリカーボネートとの組成物を作成するためのルーダーに供給してもよい。
通常は熱履歴の軽減および設備を簡略化する目的で前者が使用される場合が多く、定量フィーダーで連続計量した樹脂(C)を直接組成物作成用ルーダーに供給する方法や、連続計量した樹脂(C)をサイドフィーダーを用いて組成物作成用ルーダーに供給する方法が用いられる。
本発明においては、混練温度はポリカーボネート以外の樹脂(C)の種類等によって異なるが、一般に200〜380℃の温度が用いられる。また、必要に応じ、酸素や水分の混入を防ぐ目的で窒素などの不活性ガスで供給部をシールしてもよく、混練した組成物を減圧処理してもよい。
組成物作成において、本発明のポリカーボネートはスルホン酸化合物(b)や各種の添加剤(c)を含むものも含まないものも好ましく使用できるが、得られた組成物に必要に応じ前記スルホン酸化合物(b)や各種添加剤(c)をさらに前記添加方法に準じて添加することもできる。
本発明で製造されるポリカーボネート組成物から射出成形法などにより、難燃性、帯電防止性、塵付着防止性、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
以上のとおり、本発明によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとを溶融重縮合反応させることによりポリカーボネートを製造する方法において、薄膜形成性の優れる反応器を使用して特定のオリゴマーを重縮合させることによりオリゴマーをポリカーボネートとする重合過程で生じる芳香族モノヒドロキシ化合物の脱離を伴うエステル交換反応とジアリールカーボネートの脱離を伴うエステル交換反応との比率を好ましい範囲に制御し、それによってOH末端含有率の少ないポリカーボネートを短い反応時間で得ることができる。
このようにして得られたポリカーボネートは良好な色相と少ない異物含有量とを有しており、品質のバラツキも少なく、光学用途を始めとした高精度の成形物を作成する用途に好ましく使用される。また他の樹脂や無機物との組成物としてポリカーボネートの改良された特性を反映し優れた機械特性と成形性を有し、各種の成形用途に好ましく使用できる。
実施例
以下、実施例および比較例に基づき、本発明の具体例を詳細に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
なお、分析は下記の方法によった。
色相:
日本電色工業(株)製の Color and Color Difference Meter ND−1001DPを用いてColor bを測定した。
末端基構造:
NMR測定法にて全末端基に対するOH末端基の割合(%)を求めた。
固有粘度および粘度平均分子量:
0.7g/dlの塩化メチレン溶液をウベローデ粘度計を用い固有粘度を測定し、次式により粘度平均分子量を求めた。
[η]=1.23×10−4M0.83
0.5μm以上の異物含有量:
ペレット40gを塩化メチレン2Lに溶解し、光散乱遮断法にて異物量をカウントした。結果は個/gに換算した。
重合副生物中のジフェニルカーボネート(DPC)、フェノール(PhOH)の測定法:
サンプル0.5gをアセトン10mLに溶解し調整液とする。ガスクロマトグラフィー(日立G5000A)を使用し、DPCはキャピラリカラム(DB−1 60m、ID0.25、Film0.25μ)、PhOHはパックドカラム(1m×3mmΦガラスカラム PEG20M TPAユニポート5% 80/100メッシュ)にて定量した。
ポリマー中のDPC、フェノールの測定法:
サンプル1gをメチレンクロライド10mLに溶解し、次いでアセトニトリル90mLと混合し、ポリマーを再沈し濾別した。濾液を濃縮しメチレンクロライドを除去し調整液とし、液体クロマトグラフィー(東ソーSC8020)を使用して定量した。
離型性:
射出成形機、住友重機械工業製DISK3 M IIIにCD専用の金型を取り付け、この金型にピットの入ったニッケル製のCD用スタンパーを装着し、成形材料を自動搬送にて成形機のホッパに投入し、シリンダー温度320℃、金型温度65℃にて連続的に成形を行った。連続成形開始後、離型異常が生じることにより連続成形が中断されるまでの成形枚数を求めた。
クラウド:
射出成形機、住友重機械工業製DISK3 M IIIにCD専用の金型を取り付け、この金型にピットの入ったニッケル製のCD用スタンパーを装着し、成形材料を自動搬送にて成形機のホッパに投入し、シリンダー温度320℃、金型温度65℃にて連続的に成形を行った。連続成形開始後、クラウドを目視で観察し、クラウド不良基板の生産枚数が増加し、100枚単位当りの不良基板枚数が5%を超えるまでの成形枚数を求めた。
実施例1
(ポリカーボネートの製造)
粉体状のビスフェノールA(BPAという)と液体状のジフェニルカーボネート(DPCという)とを0.70キロモル対0.722キロモルの割合になるよう連続的に原料調製槽に仕込み、140℃で溶解し、ついで、この混合溶液を公称濾過精度が0.5μmであるSUS316製の金属繊維からなる濾過層を有するプリーツフィルターを通して毎時ビスフェノールA換算で0.16キロモルの量で連続的に第1重合槽に供給した。また、別途調製したビスフェノールAジナトリウム塩とテトラメチルアンモニウムヒドロキシドとをPhOH/水=90/10(重量/重量)に溶解した触媒溶液をビスフェノールA1モル当りビスフェノールAジナトリウム塩を1×10−6当量、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを100×10−6モルの割合となるように、第1重合槽に原料を供給するラインから連続的に供給し、原料と触媒を混合後、第1重合槽に供給した。
第1重合槽は温度220℃、圧力100Torr(13,300Pa)で操作され、第1重合槽から発生するフェノールとDPCとを分離しDPCを再び第1重合槽に戻すための精留塔と攪拌機とを有していた。
第1重合槽の反応液は底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第2重合槽に供給した。第2重合槽は温度260℃、圧力15Torr(1,995Pa)で操作され、第2重合槽から発生するフェノールとDPCとを分離しDPCを再び第2重合槽に戻すための精留塔と攪拌機とを有していた。
かくして、第2重合槽から粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が34.3モル%の第1芳香族ポリカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。
第3重合槽は図1に示す横型1軸反応器であり、第2重合槽から抜き出された第1芳香族ポリカーボネートを受け入れる反応液入り口3と第3重合槽の反応液の出口4と反応で発生するフェノールとDPCとを主体とする低沸物を除去し、反応器内を減圧に保つためのベント口15を有しており、図1に示す端部円板9、9’の間に配設された複数個の中空円板11を回転方向と逆に傾斜した支持羽根13によって、所定間隔に連結固定し、かつ、端部円板9、9’の中央部を端部攪拌軸8、8’で支持した構造の攪拌翼を有していた。また、攪拌翼を構成する中空円板の外径Dは800mm,中空円板の内径dは325mm、支持羽根取り付け角δは45°、支持羽根幅Wは170mmであり、支持羽根の枚数は8枚であり、支持羽根の外端と反応器胴壁とのクリアランスは20mmであった。
この結果、第3重合槽内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合は86%となっていた。第3重合槽を温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保って第1芳香族ポリカーボネートをさらにエステル交換させた結果、粘度平均分子量が15,200、全末端に占めるOH末端の割合が25.5モル%、0.5μm以上の異物含有量が960個/gの第2芳香族ポリカーボネートが連続的に得られた。また、この第2芳香族ポリカーボネートをペレット化して色相を測定した結果、b値は−0.5であり極めて優れた色相を有していた。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.3であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.3の割合で生じていた。
ポリカーボネートの後処理と成形性評価:
第3重合槽で得られたポリカーボネートを引き続き、溶融状態のままで配管を通し、空気に触れることなくベント式2軸ルーダーに導き、重合触媒の失活、ポリマー中に含まれる低沸点物の除去、添加剤の添加よりなる後処理を行った。
使用したベント式2軸ルーダーは混練部とベント部とよりなる処理ゾーンを5個有している同方向噛み合い型2軸ルーダーであった。
ルーダーの第1の処理ゾーンでは混練部に、水に分散させたドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩をポリマーに対し分散液が1重量%でかつ、重合触媒として使用したビスフェノールAジナトリウム塩に対し2倍当量のドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩となるようにダイヤフラム式定量ポンプを用いて連続的に供給し、重合触媒を失活させるとともに、マテリアルシールを介して該混練部の直後に設置されたベント部で15Torr(1,995Pa)でポリマーを減圧処理しポリカーボネート中に含まれるフェノールおよびDPCを失活剤の溶媒として用いた水と共に除去した。
第2、第3、第4の処理ゾーンではそれぞれの混練部にポリマーに対し1重量%の水をダイヤフラム式定量ポンプを用いて連続的に供給し、引き続き、マテリアルシールを介して混練部の直後に設置された各々のベント部で15Torr(1,995Pa)でポリマーを減圧処理することによりポリカーボネート中に含まれるフェノールおよびDPCを水と共に除去する操作を行った。
第5の処理ゾーンでは該混練部に離型剤としてステアリン酸モノグリセリドをポリマーに対し500ppm、熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをポリマーに対し100ppmとなるように各々溶融状態で定量ポンプを用いて連続的に添加し、引き続きベント部で15Torrで減圧処理した。
添加剤の添加を終えたポリカーボネートをルーダーから押し出し、ギヤポンプで昇圧後、20μmの目開きを有するポリマーフィルターで濾過し、ダイを通してペレット化した。得られたポリカーボネートは低沸成分を測定した結果、20ppmのフェノールと80ppmのDPCとを含んでおり、色相b値および0.5μm以上の異物含有量は第3重合槽出側で測定した値と同一であり、粘度平均分子量は15,100、OH末端含有率は25.6モル%と第3重合槽出側で測定した値と殆ど同一であった。
成形性評価:
このようにして得たペレットのディスク成形性評価を行った。
離型不良が発生するまでの成形枚数は354,600枚であり、クラウドに関しては連続成形枚数は317,800枚と良好なレベルであった。
実施例2
(ポリカーボネートの製造)
実施例1と同様にして重合を行い、第3重合槽から得られた粘度平均分子量15,200のポリカーボネートを第4重合槽に供給しさらに重合を行った。
第4重合槽は図4(斜視図)、5(平面図)、6A(側面図)、13(断面図)に示される横型2軸反応器であり、第1の攪拌軸102の上方の、反応器入り口側鏡板105に反応液の入り口111と、反応器出口側鏡板106の近くの反応器の下部に反応液の出口112と、反応で発生するフェノールおよびDPCを主体とする低沸点物を除去し、反応系内を減圧に保つためのベント口15を有しており、第1の攪拌軸と第2の攪拌軸に取り付けられた攪拌単位の相互のクリアランスおよび攪拌単位と反応器胴壁とのクリアランスは共に10mmであり、相互に噛み合うように設置されており、同期しながら10rpmで同方向に回転していた。
また、図5のAで示される反応器上流側の攪拌単位は図13に示すように実質的に凸レンズ状の断面を有しており、その先端部には図7Aのd、e、f、gで示す反応器胴壁用スクレーパーが攪拌単位の取り付け間隔cよりも10mm短い長さで攪拌軸と平行に取り付けられており、相互の攪拌単位を90°位相をずらして設置することにより反応液の輸送機能は有していなかった。
図5のBで示される反応器下流側の攪拌単位は図9、10に示すような反応器胴壁用スクレーパーを有しない凸レンズ状断面を有する攪拌単位であり、ねじれ角γを30°、位相角αを30°とすることで実質的にスクリュー形状を形成し、反応器出口側鏡板方向に反応液を輸送する機能を有していた。
この反応器は攪拌単位の先端に小さな反応液溜りを有するものの、1軸反応器とは異なり明確な液面を有しない。従って、反応器胴壁や攪拌単位の全面に形成された反応液膜が略全ての反応表面に相当し、50mm以下の液深を有する表面積の割合は略100%に相当すると見なせる。
また、攪拌軸の反応器内室から軸受けにかけて、軸受けに侵入した反応液を攪拌軸の回転に伴って反応室内に押し戻す方向の螺旋状の溝が攪拌軸に施工されていた。
第4重合槽を温度285℃、圧力0.8Torr(106Pa)に保ってさらにエステル交換させた結果、粘度平均分子量が24,000、全末端に占めるOH末端の割合が18.8モル%、0.5μm以上の異物含有量が2,130個/gのポリカーボネートが連続的に得られた。また、このポリカーボネートをペレット化して色相を測定した結果、b値は−0.1であり極めて優れた色相を有していた。
第4重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.44であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.44の割合で生じていた。
ポリカーボネートの後処理:
第4重合槽で得られたポリカーボネートを引き続き、溶融状態のままで配管を通し、空気に触れることなくベント式2軸ルーダーに導き、重合触媒の失活、ポリマー中に含まれる低沸点物の除去、添加剤の添加よりなる後処理を実施例1に準じて行った。ただし、使用したベント式2軸ルーダーは混練部とベント部とよりなる処理ゾーンを2個有している同方向噛み合い型2軸ルーダーであった。
ルーダーの第1の処理ゾーンでは実施例1と同様にして触媒の失活と、ポリカーボネート中に含まれる低沸点物の除去を行った。
第2の処理ゾーンでは実施例1における第5の処理ゾーンで行った操作に準じ、離型剤としてステアリン酸モノグリセリドをポリマーに対し1,000ppm、熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをポリマーに対し300ppm添加した。
添加剤の添加を終えたポリカーボネートをルーダーから押し出し、ギヤポンプで昇圧後、40μmの目開きを有するポリマーフィルターで濾過し、ダイを通してペレット化した。得られたポリカーボネートは低沸成分を測定した結果、30ppmのフェノールと120ppmのDPCとを含んでおり、色相b値および0.5μm以上の異物含有量は第4重合槽出側で測定した値と同一であり、粘度平均分子量は23,500、OH末端含有率は19.5モル%と第4重合槽出側で測定した値と殆ど同一であった。
実施例3
シート評価例
添加剤として、ステアリン酸モノグリセリドとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトに代えてリン系安定剤としてSANDOSTAB P−EPQ(Clariant社製)をポリマーに対し30ppm添加した以外は上記実施例2と同様にして製造したポリカーボネートペレットを溶融した後、ギアポンプで定量供給し、成形機のTダイに送った。鏡面冷却ロールと鏡面ロールで挟持し、または片面タッチで厚さ2mmまたは0.2mm、幅800mmのシートに溶融押出した。
得られた芳香族ポリカーボネートシート(2mm厚み)の片面に可視光硬化型プラスチック接着剤((株)アーデル BENEFIX PC)を塗布し、同じシートを気泡が入らないように一方に押し出すようにしながら積層後、可視光線専用メタルハライドタイプを備えた光硬化装置により5,000mJ/cm2の光を照射して得られた積層板の接着強度をJIS K−6852(接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法)に準拠して測定した結果、接着強度が12.6MPa(128Kgf/cm2)で良好であった。
一方、得られた厚み0.2mmの芳香族ポリカーボネートシートに、インキ(ナツダ 70−9132:色 136Dスモーク)および溶剤(イソホロン/シクロヘキサン/イソブタノール=40/40/20(重量%))を混合させて均一にし、シルクスクリーン印刷機で印刷を行い、100℃で60分間乾燥させた。印刷されたインキ面には転写不良もなく、良好な印刷であった。
実施例4〜10
ポリマーブレンドコンパウンドの評価
添加剤としてトリメチルホスフェート50ppmを使用した以外は実施例2と同様にして製造したポリカーボネートに、表1,2記載の各成分を,タンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き2軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱揮しながらペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG150U型)を使用して、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で測定用の成形片を作成し、下記の評価を実施した。結果を表1、2に示す。なお、表1、2記載の各成分の記号は下記の通りである。
ABS:スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体;サンタックUT−61(三井化学(株)製)、
AS:スチレン−アクリロニトリル共重合体;スタイラック−AS 767 R27(旭化成工業(株)製)、
PET:ポリエチレンテレフタレート;TR−8580(帝人(株)製、固有粘度0.8)、
PBT:ポリブチレンテレフタレート;TRB−H(帝人(株)製、固有粘度1.07)、
MBS:メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体;カネエースB−56(鐘淵化学工業(株)製)、
E−1:ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキルメタアクリレート共重合体;パラロイドEXL−2602(呉羽化学工業(株)製)、
E−2:ポリオルガノシロキサン成分およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互侵入網目構造を有している複合ゴム;メタブレンS−2001(三菱レイヨン(株)製)、
T:タルク;HS−T0.8(林化成(株)製、レーザー回折法により測定された平均粒子径L=5μm、L/D=8)、
G:ガラス繊維;チョップドストランドECS−03T−511(日本電気硝子(株)製、ウレタン集束処理、繊維径13μm)、
W:ワラストナイト;サイカテックNN−4(巴工業(株)製、電子顕微鏡観察により求められた数平均の平均繊維径D=1.5μm、平均繊維長17μm、アスペクト比L/D=20)、
WAX:α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス;ダイヤカルナ−P30(三菱化成(株)製(無水マレイン酸含有量=10重量%))、
表1、2の結果の測定法は次の通りである。
(1)曲げ弾性率
ASTM D790により、曲げ弾性率を測定した。
(2)ノッチ付衝撃値
ASTM D256により厚み3.2mmの試験片を用いノッチ側からおもりを衝撃させ衝撃値を測定した。
(3)流動性
シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧力98.1MPaでアルキメデス型スパイラルフロー(厚さ2mm、幅8mm)により流動性を測定した。
比較例1
ポリカーボネートの製造
実施例1と同様にして第2重合槽より粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が34.3モル%第1芳香族ポリカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。第3重合槽は精留塔を持たない縦型攪拌槽であり、第3重合槽内のポリマー表面積の内、50mm以下の液深を有する表面積の割合は5%以下であった。実施例1と同様に第3重合槽を温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保ってオリゴカーボネートをさらにエステル交換させた結果、実施例1よりも4.8倍の重合時間を要して、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネートが得られた。このポリカーボネートは全末端に占めるOH末端の割合が12.0モル%であり、0.5μm以上の異物含有量が55,700個/gであり、ペレット色相のb値は0.5であり、色相や異物含有量で劣ったものであった。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.09であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.09の割合でしか生じていなかった。
ポリカーボネートの後処理と成形性評価
実施例1と同様にして重合触媒の失活、ポリマー中に含まれる低沸点物の除去、添加剤の添加よりなる後処理を行った。
得られたポリカーボネートは低沸成分を測定した結果、22ppmのフェノールと81ppmのDPCとを含んでおり、色相b値および0.5μm以上の異物含有量は第3重合槽出側で測定した値と同一であり、粘度平均分子量は15,100、OH末端含有率は12.5モル%と第3重合槽出側で測定した値と殆ど同一であった。
成形性評価
このようにして得たペレットのディスク成形性評価を行った。
離型不良が発生するまでの成形枚数は122,300枚であり、クラウドに関しては連続成形枚数は108,800枚と劣ったレベルであった。
比較例2
ポリカーボネートの製造
実施例1と同様にして第2重合槽より粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が34.3モル%のオリゴカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。第3重合槽は実施例1と同様の装置を使用し、温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保つと共に、ビスフェノールAに対し200×10− 6モルのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを第3重合槽に連続的に供給して脱DPC反応を伴うエステル交換反応を促進させてオリゴカーボネートをさらに重合させた結果、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネートが得られた。このポリカーボネートは全末端に占めるOH末端の割合が70.0モル%であり、0.5μm以上の異物含有量が12,200個/gであり、ペレット色相のb値は−0.1であった。色相や異物含有量は大きな低下を示さなかったがOH末端含有率は高い値を示した。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:2.17であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が2.17の割合で生じていた。
比較例3
ポリカーボネートの製造
ビスフェノールA0.70キロモルに対しDPCを0.698キロモル使用する以外は実施例1と同様にして重合を行い第2重合槽より粘度平均分子量が6,000、全末端基に対するOH末端の割合が51.4モル%のオリゴカーボネートを連続的に得、これを第2重合槽底部よりギヤポンプを用いて連続的に抜き出し、第3重合槽に供給した。第3重合槽は実施例1と同様の装置を使用し、温度270℃、圧力1Torr(133Pa)に保ちオリゴカーボネートをさらに重合させた結果、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネートが得られた。このポリカーボネートは全末端に占めるOH末端の割合が60.5モル%であり、0.5μm以上の異物含有量が10,400個/gであり、ペレット色相のb値は−0.4であった。色相や異物含有量は大きな低下を示さなかったがOH末端含有率は高い値を示した。
第3重合槽から発生する蒸気中のPhOHとDPCとのモル比を測定した結果、1:0.081であり、脱フェノールを伴うエステル交換反応1に対し脱DPC反応を伴うエステル交換反応が0.081の割合でしか生じていなかった。
【図面の簡単な説明】
図1は、1軸反応器の断面図である。
図2は、図1のAA断面図である。
図3は、図1中の尾翼付き支持羽根の例を示す図である。
図4は、2軸反応器の斜視図である。
図5は、2軸反応器の平面断面図である。
図6は、2軸反応器の断面図である。
図7は、図5のA領域に使用する攪拌単位の詳細図である。
図8は、図5と図12のB領域に使用する攪拌単位の組立図である。
図9は、図5と図12のB領域に使用する攪拌単位を示す図である。
図10は、図5のB領域に使用する攪拌単位を示す図である。
図11は、図12のA領域に使用する攪拌単位の詳細図である。
図12は、2軸反応器の断面図である。
図13は、2軸反応器の断面図である。
図14は、1軸反応器の表面積算出のための説明図である。
図15は、2軸反応器のベントの詳細図である。
Claims (37)
- (1)芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとをエステル交換反応せしめて粘度平均分子量が少なくとも4,000でありかつ末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の15〜45モル%である第1芳香族ポリカーボネートを生成し、次いで
(2)この第1芳香族ポリカーボネートを、芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離する第1エステル交換反応および芳香族炭酸ジエステルを脱離する第2エステル交換反応を伴う重合に、該芳香族モノヒドロキシ化合物対該芳香族炭酸ジエステルのモル比が1対0.1〜1の生成割合となるように、付して、粘度平均分子量が第1芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量よりも大きくかつ10,000以上でありしかも全末端基に対する末端ヒドロキシル基の濃度が第1芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度よりも低い第2芳香族ポリカーボネートを生成せしめる、
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造法。 - 第1芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度が全末端基の20〜40モル%である請求項1に記載の方法。
- 第2芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル基の濃度が全末端基の35モル%以下である請求項1に記載の方法。
- 第1エステル交換反応と第2エステル交換反応を伴う重合が、芳香族モノヒドロキシ化合物対芳香族炭酸ジエステルのモル比が1対0.2〜0.7の生成割合となるように、行われる請求項1に記載の方法。
- 工程(1)を、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り、1×10−8〜5×10−5当量の、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物、並びに1×10−5〜5×10−3当量の含窒素塩基性化合物の組合せからなるエステル交換触媒の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
- 工程(1)を実施する前に芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルを、それらの混合物として芳香族ジヒドロキシ化合物の融点以下の濃度でフィルターで濾過する請求項1に記載の方法。
- フィルターが公称濾過精度0.1〜1μmである金属繊維からなる濾過層を有する請求項6に記載の方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンでありそして芳香族炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートである、請求項1に記載の方法。
- 工程(2)の重合を行う反応器において、反応器内のポリマーの表面積のうち、50mm以下の液深を有するポリマーの表面積を50%以上に制御する請求項1に記載の方法。
- 工程(2)の重合を行う反応器が横型1軸円筒型反応器であり、該横型1軸円筒型反応器は、2枚の端部円板、2枚の端部円板間に配設された複数枚の中空円板、端部円板と中空円板および中空円板同士を所定の間隔で連結し、固定する複数枚の支持羽根および2枚の端部円板の中央部に固定された独立した2本の端部回転軸からなる、複数の中空円板間に、実際の回転軸を持たない構造を持つ攪拌翼を有し、そして該端部円板および中空円板は該攪拌翼の仮想回転軸に対し垂直である、請求項1または9に記載の方法。
- 端部円板と中空円板および中空円板同士の間隔において、複数枚の支持羽根の少なくとも1枚が反応器の胴壁に近接しかつ近接する先端部位が該胴壁に平行である、請求項10に記載の方法。
- 上記各間隔において、上記少なくとも1枚の支持羽根が攪拌翼の仮想回転軸方向に伸びる平板である請求項11に記載の方法。
- 上記各間隔において、上記少なくとも1枚の支持羽根が、攪拌翼の仮想回転軸に対する垂直な円筒断面における接線に対し30〜60度の角度を持っている請求項12に記載の方法。
- 2枚の端部円板が切り欠き開口を有する請求項10に記載の方法。
- 横型1軸円筒型反応器が鏡板と胴壁で規定される、攪拌翼を収容する反応器内室、2本の端部回転軸を支える2つの軸受けおよび鏡板と軸受けの間に位置し、端部回転軸の回転に伴い、それに付着したポリマーを反応器内室へ戻す方向に螺旋状溝が設けられたポリマー戻し機構からなる、請求項10に記載の方法。
- 工程(2)の重合を行う反応器が平行に延びた2つの円筒を組合せて形成された繭型断面を有する横型2軸反応器であって、
a)反応器入り口側鏡板、該鏡板の反対方向にある反応器出口側鏡板、該反応器内を実質的に水平方向に延びる複数の攪拌単位を持つ第1の攪拌翼および該第1の攪拌翼と平行でかつ反応器内に実質的に水平に配置された複数の攪拌単位を持つ第2の攪拌翼とを有し、
b)第1の攪拌翼と第2の攪拌翼とが互いに噛み合うように近接して配置されておりそして同期しながら同方向に回転することによって反応液を相互の攪拌単位および反応器胴壁に薄膜状に塗布、更新する機能を有し、そしてさらに
c)反応器入り口側鏡板に近接しかつ第1の攪拌軸の上方に設けられた反応液の入り口と、反応器出口側鏡板に近接した反応器の下部に設けられた反応液の出口とを有する
請求項1または9に記載の方法。 - 反応器の反応液の供給口が第1の攪拌軸の上方であってかつ反応器入り口側鏡板の上方に設けられているものである請求項16に記載の方法。
- 反応器の反応液の供給口が、反応器入り口側鏡板に隣接した当該反応器の胴壁の上方に設けられているものである請求項16に記載の方法。
- 攪拌軸方向に見た場合に、攪拌単位が、実質的に凸レンズ状断面を有し、そして攪拌翼の両端にある攪拌単位が当該鏡板に近接している請求項16に記載の方法。
- 各々の攪拌軸に取り付けられた攪拌単位の少なくとも1部が次の要件(i)〜(iii)を満たしており、
i)攪拌軸方向に見た場合に、実質的に凸レンズ状または紡錘形状の断面を有し、
ii)攪拌軸方向に沿って間隔を空けて取り付けられており、そして
iii)攪拌単位の紡錘形状の頂点にあたる先端部分には、上記ii)の攪拌単位の取り付け間隔に略相当する長さを有する、反応器胴壁用スクレーパーが、攪拌軸の方向に沿って取り付けられている、
かつ、攪拌翼の両端にある攪拌単位は反応器の鏡板に近接して設置されている請求項16に記載の方法。 - 反応器入り口側鏡板に近接して設置された攪拌単位の当該鏡板に対向する面に、反応液を捕捉して攪拌翼の回転の中心方向に排出する働きを有する、鏡板用スクレーパーが設置されている請求項16に記載の方法。
- 紡錘形状の頂点の一方を0°とし、残る一方を180°とし、攪拌単位の回転方向を正とした場合、鏡板に対向する攪拌単位の、鏡板に対向する面の外周上であって、かつ、攪拌単位の回転方向で90〜180°の領域および270〜360°の領域の各々少なくとも1部に、鏡板用スクレーパーが、点対称に設置されている請求項21に記載の方法。
- 横型2軸反応器が鏡板と胴壁で規定される、攪拌翼を収容する反応器内室、2本の端部回転軸を支える2つの軸受および鏡板と軸受けの間に位置し、端部回転軸の回転に伴い、それに付着したポリマーを反応器内室へ戻す方向に螺旋状溝が設けられたポリマー戻し機構からなる、請求項16に記載の方法。
- 反応器出口側鏡板に対向する位置に設置された攪拌単位が反応器出口側鏡板の方向にポリマーを輸送する機能を備えた攪拌単位であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
- 反応器出口側鏡板に対向する位置に設置された攪拌単位が実質的にスクリュー形状の攪拌要素である請求項24に記載の方法。
- 請求項1の方法で製造された末端ヒドロキシル基濃度が全末端基の35モル%以下であり、0.5μm以上の粒子の含有量が50,000個/g以下であり、そして粘度平均分子量が10,000以上である、
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネート。 - 芳香族モノヒドロキシ化合物および芳香族炭酸ジエステルをいずれも高々200ppmでしか含有しない請求項26に記載の芳香族ポリカーボネート。
- 有機スルホン酸化合物およびリン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有する、請求項26に記載の芳香族ポリカーボネート。
- 請求項1の方法で製造された芳香族ポリカーボネートが溶融状態にある間に、有機スルホン酸化合物およびリン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加して混練したのち、フィルターで濾過して製造された、請求項26に記載の芳香族ポリカーボネート。
- フィルターの公称濾過精度が1〜50μmである請求項29に記載の芳香族ポリカーボネート。
- 有機スルホン酸化合物がドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩およびパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、リン化合物がリン酸、亜リン酸およびそれらのエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項28または29に記載の芳香族ポリカーボネート。
- 請求項1の方法で製造された芳香族ポリカーボネート並びに、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル、無機充填剤およびポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる組成物。
- 請求項1の方法で製造された芳香族ポリカーボネート並びに脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルからなる組成物。
- 請求項1の方法で製造された芳香族ポリカーボネートが溶融状態にある間に、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルを添加して混練したのち、フィルターで濾過して製造された請求項33の組成物。
- 脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルがグリセリンのステアリン酸エステルおよびペンタエリスリトールのステアリン酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステルである請求項32〜34のいずれかに記載の組成物。
- 無機充填剤がガラス繊維、炭素繊維、雲母、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナおよび粘土よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項32に記載の組成物。
- ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)および耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項32に記載の組成物。
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