JPS5891B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、磁気記録層のほぼ厚さ方向に沿う方向の磁化
によってその記録を行う、いわゆる垂直磁化による磁気
記録媒体に係わる。

従来、一般のオーディオ、ビデオ等のテープレコーダ或
いはシートレコーダ等においては、担体（ベース）上に
被着形成された磁気記録層にリング型磁気ヘッドによっ
て主として磁気記録層按水平方向の磁化（面内方向磁化
）によってその記録を行っている。

ところがこの水平磁化による記録の場合、記録信号が短
波長になるにつれ、即ち記録密度を増加してゆくにつれ
、媒体内の反磁界が増して残留磁化の減衰と回転を生じ
、再生出力が著しく減少する。

これに比し、磁気記録媒体の磁気記録層の厚さ方向の磁
化、いわゆる垂直磁化による記録を行うときは、短波長
になるにつれ、減磁界が小さくなる性質を持つため、特
に短波長記録においては、上述した従来一般の水平磁化
による記録（以下水平記録という）より、垂直磁化によ
る記録（以下垂直記録とい５）Ｑ方が有利であることが
想像され、このような垂直記録を行う磁気記録媒体が種
種提案されてきたが未だ実現した例はない。

本発明者等は、このような垂直記録を能率良く行う磁気
記録媒体として、垂直方向（厚さ方向）に磁化容易軸を
持つ磁気記録層（以下、垂直磁化膜という）を有する磁
気記録媒体を開発し、これを「応用磁気」第７回学術講
演会１９７５予稿集４ｐＡ−７、及び昭和５１年度電子
通信学会総合全国大会予稿集１８４、更に特願昭５１−
５１５７４号出願（特公昭５７−１７２８２号公報）に
おいて提蚕した。

この磁気記録媒体は担体（ベース）上に高周波スパッタ
リングによってクロムＣｒと、コバルトｃｏの合金膜よ
り成る磁気記録層を有する構成を採るものであり、この
記録層の垂直方向（厚さ方向）と面内方向の夫々の磁気
特性（磁界Ｈ−磁磁化的曲線の一例は、第１図中実線及
び破線で示される。

図から明らかなように垂直方向に関して最大残留磁化が
高い値を示し垂直記録媒体として非常に好ましい特性に
なっている。

ところでＣｏ−Ｃｒ合金膜の比較的抗磁力の大きい垂直
磁化膜を媒体とし、これを第７図及び第９図ないし第１
２図で示すような単極ヘッドで媒体が飽和するまで充分
に記録することは難かしい。

そこで、本発明者等は、少ない起磁力で効率良く記録で
きる垂直記録用ヘッドとして補助磁極励磁形垂直記録ヘ
ッドを考案し、特願昭５１−５１５７４号（特公昭５７
−１７２８２号公報）及び特願昭５１−１０６５０６号
（特公昭５６−４２０４４号公報）出願において提供し
た。

しかし、上記のヘッドでは厚い基板をもつ磁気ディスク
などに応用することは難かしい。

そこで上記の補助磁極を用いなくても単極型ヘッドによ
って効率良く記録できる垂直記録媒体として、Ｃｏ−Ｃ
ｒ合金膜とベースとの間に低抗磁力材層を形成した２層
構造の記録媒体を案出した。

このように、２層構造にすると、記録過程においては低
抗磁力層内に単極型ヘッドの影像磁化が生じ、単極ヘッ
ドから発生する磁界を強める作用をする。

また、この低抗磁力層によってＣｏ −Ｃｒ垂直磁化膜
の裏面の磁気回路を部分的に閉じ、減磁作用を軽減し、
残留磁化を強めることが期待できる。

このようにして垂直記録による磁気記録媒体の研究考察
を重ねた結果、高い記録感度と、大なる再生出力を得る
ことのできる垂直磁化による磁気記録媒体を見出すに至
った。

以下第２図を参照して本発明の詳細な説明するに、図中
９は本発明による磁気記録媒体を示し、この媒体９は、
非磁性ベース１０上に低抗磁力材層１１を介して磁気記
録層１２が被着された構成、即ち磁気記録層１２を低抗
磁力材層１１によって裏打ちされた構成となされるも、
本発明においては、その低抗磁力材層１１と磁気記録層
１２の構成を特定する。

即ち、磁気記録層１２はクロムＣｒが５〜２５重量％含
まれる厚さ３．０ミクロン以下好ましくは０．１〜３．
０ミクロン（μｍ）さらに好ましくは０．５〜３．０ミ
クロンのコバルトＣＯとクロムを主成分とし、膜面に垂
直な方向に磁化容易軸を有する合金膜より成り、その飽
和磁化Ｍｓが１００〜１１００ガウス（Ｇ）抗磁力Ｈｃ
が３００〜２０００エルステツド（Ｏｅ）に選ばれる。

また低抗磁力材層１１は、その抗磁力Ｈｃが上記磁気記
録層の抗磁力の１１５以下で且つ１００エルステツド以
下に選定され、且つその厚さが０．１ミクロン以上好ま
しくは０．１〜３．０ミクロン（μｍ）さらに好ましく
は０．５〜３．０ミクロンに選定される。

Ｃｏは大きな結晶磁気異方性定数Ｋａを有するが、これ
にＣｒを添加するときは飽和磁化Ｍｓを低下させて垂直
磁化膜が実現できる。

この飽和磁化Ｍｓは１００Ｇ未満では再生出力が不十分
となる。

またＭｓが１１００Ｇを越えると、Ｃｏ−Ｃｒ磁性膜は
磁化容易軸は面内方向になり、垂直磁化膜を実現できな
くなることを見いだした。

また、Ｍｓが１００〜１１００Ｇの範囲に於いては、Ｈ
ｃは３００〜２０００ ｏｅの範囲にあることを見い出
した。

ここにＭｓを１００〜１１００Ｇ、Ｈｅを３００〜２０
００ ｏｅの範囲に選定する所以がある。

そしてＣｒの添加量は５〜２５重量％の添加において、
低抗磁力磁性材層１１を有する磁性媒体の垂直磁化容易
軸の実現に最も望ましいことを究明した。

またとのＣｏ−Ｃｒ合金膜よりなる磁気記録層１２の厚
さは、これが余り薄いと垂直磁化をなし難しくなって出
力が低下することから、０．１μｍ以上、望ましくは０
．５μｍ以上に選定し、また余り厚くなると記録磁界の
浸透がしにくく、大きな電力を必要としてくることによ
って望ましくは３．０μｍ以下に選ぶ。

一方、低抗磁力材層１１の厚さは、これが余り薄いと記
録感度の向上及び再生出力の増大に対する有効性が見い
出せなくなることより、０．１μｍ以上望ましくは０．
５μｍ以上に選定され、また余り厚くしても記録感度の
向上及び再生出力の増大は実質的に飽和してしまうこと
より、材料及び作製工程の経済性を鑑みて、望ましくは
３μｍ以下に選定される。

また、低抗磁力材層１１の抗磁力の値は、これが余り太
きいと前記説明のごとき鏡像形成が阻害され、記録感度
が低下すると共に、記録過程でより多くの記録電力を要
することとなり、前記磁気記録層の抗磁力の１１５以下
で且つ１００ｏｅ以下に選定される。

次に本発明の詳細な説明する。

実施例 非磁性ベース１０としてポリイミド基板を使用した。

ポリイミドフィルムは、十分に洗滌・脱脂乾媚し、その
上にＭｏ−Ｆｅ−Ｎｉよりなる低抗磁力材層１１をスパ
ッタリングにより形成する。

形成条件は、真空度１．５Ｘ１０−７ｔｏｒｒ、アルゴ
ン圧２．２Ｘ１０”ｔｏｒｒにて高周波電力６５０Ｗ、
基板温度２５０℃で約２０分間スパッタリングを行ない
膜厚約１μｍ、抗磁力（Ｈｅ）約５ｏｅ、飽和磁化（Ｍ
ｓ）約６００Ｇの低抗磁力材層を得た。

さらに、その上にＣｏ−Ｃｒよりなる磁気記録層１２を
スパッタリングにより形成する。

形成条件は、真空度１．５Ｘ１０−７ｔｏｒｒ、アルゴ
ン圧２Ｘ１０”ｔｏｒｒにて高周波電力２００Ｗで、約
１時間スパッタリングを行ない、膜厚約１μｍで、Ｃｒ
含有率約１８重量％、膜面に垂直方向の抗磁力（Ｈｃ）
約１５００ｏｅ、飽和磁化（Ｍｓ）３９０Ｇの磁気記録
層を得た。

磁気記録媒体９に対する記録は、単磁極型主磁極を有す
る磁気ヘッドＨによって行う。

この単磁極型主磁極を有する磁気ヘッドは、種々の構成
をとり得る。

例えば第３図に示すように中央に主磁極となる厚さｔの
例えばパーマロイのメッキ箔より成るコアー１３が設け
られ、その両側にこれの磁気的飽和を防ぐための例えば
Ｎｉ−Ｚｎフェライト又はＭｎ−Ｚｎフェライトより成
る補強コアー１４及び１５が設けられた構成を有するも
のを用い得る。

１６は励磁巻線、即ち記録信号巻線である。

単磁極型主磁極を有する磁気ヘッドの他の例としては、
第４図に示すように、主磁極１３と媒体９を挾んで対向
する補助磁極１７を有する構成をとり、補助磁極１７に
巻線１６が巻装された構成をとることもできる。

第５図中曲線２０〜２６は、前記実施例に準じて作製し
た第１４図の表１のごとき試料に関する夫々人出力特性
の測定曲線で、同図中曲線２３は。

低抗磁力材層１１を設けることなく、他の構成は前記実
施例と同様になされた磁気記録媒体（以下。

これを比較用磁気記録媒体という）に対する同様の測定
曲線である。

尚、これらの測定は、記録磁気ヘッドとして第３図に説
明した構成のものを用い、再生磁気ヘッドとして作動磁
気空隙幅Ｇ、が１．０μｍの通常のリング状磁気ヘッド
を用い、媒体の磁気ヘッドとの相対速度ｖｐを９．５ｃ
ｍ／秒に選んで測定したものである。

そして、記録信号としては、第６図に示す２００ＢＰＩ
の矩形波信号（ＢＰＩとは１インチ当りのビット数、即
ち１インチ当りサイクル数の２倍）を記録した場合で、
第５図において、横軸は第６図に示すように入力信号の
ゼロレベルからピークまでの電流値を示し、出力Ｅｐ（
縦軸）は、リング状磁気ヘッドの出力を利得６０ｄＢの
増幅器に入れ、これよりの出力波形の同様にゼロレベル
からピークの電圧値を測定した値である。

曲線２３と他の曲線２０〜２２と２４〜２６とを比較す
ることによって明らかなように、低抗磁力材層１１の裏
打ちがなされたものは、これがなされていない比較用磁
気記録媒体に比し、格段的にその出力特性が向上し、曲
線２３によって明らかなように、低抗磁力材層１１が存
在しないものにあっては電流ＩＲの実用的範囲では出力
の飽和はみられない。

尚、低抗磁力材層１１の厚さδｂが０．１μｍ未満では
、この低抗磁力材層１１を設けることによる効果は殆ん
どなく、更にδｂが３．０μｍを超えても出力の向上は
殆んど飽和してしまうことが認められた。

尚、第５図の測定は、その記録を第３図に説明した磁気
ヘッドＨを用いて行ったもので、その各部の寸法は、第
７図中に記入して示した寸法に選、定したものである。

しかしながら、この入出力特性の向上は第３図及び第７
図に示した単極型主磁極を有する磁気ヘッドによって記
録する場合に限らず、他の型の同様の単極型主磁極を有
する磁気ヘッド、例えば第４図に示すような磁気ヘッド
による記録によっても同様に向上することが確められた
。

第８図は各構造の単極型主磁極を有する磁気ヘッドＨに
よって記録を行った場合の第５図と同様の入力−出力特
性の測定結果を示し、第８図中、曲線２１は第５図の曲
線２１に対応する測定・曲線、即ち前記実施例において
低抗磁力材層１１の厚さδｂを１．０μｍに選んだ場合
の本発明による記録媒体９に関して、第７図に示した磁
気ヘッドＨを記録磁気ヘッドとして用いた場合の入出力
特性曲線であるに比し、第８図中曲線２１ａ。

２１ｂ、２１ｃ及び２１ｄは、夫々記録磁気ヘッドとし
て、第９図、第１０図、第１１図及び第１２図に示す構
造と寸法の単極型主磁気ヘッドＨを用いた場合の同様の
測定結果を示すもので、何れのものを用いても、本発明
による磁気記録媒体によればすぐれた入出力特性を示し
ている。

第１３図は、再生出力の周波数特性を示し、この場合の
再生出力も前述したと同様の増幅器の出力Ｅｐを測定し
たものである。

この場合、用いた記録磁気ヘッドＨは、第９図に示した
形状寸法の磁気ヘッドを用いた場合で、再生ヘッドは前
述の場合と同様に空隙幅Ｇが１．０μｍのリング型磁気
ヘッドを用いた場合である。

同図中曲線３０゜３１及び３２は夫々前述した第５図の
特性曲線２０．２１，２２０特性を示す本発明による各
磁気記録媒体に関する周波数特性の測定曲線で、曲線３
３は、前述の第５図の特性曲線２３の特性を示す比較用
磁気記録媒体の同様の周波数特性の測定曲線である。

更に曲線３４は従来一般のγ−Ｆｅ２０ｇテープの同様
の測定曲線で、曲線３３′は、前述の比較用磁気記録媒
体に対し、第１２図に示した記録磁気ヘッドＨを用いて
その記録を行った場合の同様の周波数特性の測定曲線で
ある。

これら曲線より明らかなように本発明による磁気記録媒
体は、その周波数特性の向上と再生出力の向上がはから
れていることが判る。

上述したように本発明による磁気記録媒体によれば、高
い記録感度と再生出力とすぐれた周波数特性を有する磁
気記録媒体が実現される。

以上の実施例においては磁気記録層１２と低抗磁力材層
１１を直接２層に形成した例を示したが、両磁性薄膜層
の間に非磁性中間層を設けることもできる。

この非磁性中間層は磁気記録層１２の密着性を強化する
とともに低抗磁力材層１１の拡散を防止する効果を有す
る。

このような非磁性中間層としてはＳｉＯ２、ＴｉＯ２、
Ａｌ２Ｏ３などの絶縁物、あるいはＴｉ、Ｃｒ、ＡＩ、
Ｍｏ、Ｗ、Ｃｕ、Ａｕなとの金属薄膜を使用することが
できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の説明に供するＣｒ−Ｃｏ磁気記録層の
磁気特性曲線図、第２図は本発明による磁気記録媒体の
一例の一部の拡大側面図、第３図及び第４図は夫々その
記録方法を示す配置図、第５図は入出力特性曲線図、第
６図は記録信号波形図、第７図及び第９図ないし第１２
図は磁気ヘッドの構成図、第８図は入出力特性曲線図、
第１３図は周波数特性曲線図、第１４図は本発明の説明
に供する各試料の表図である。 ９は本発明による磁気記録媒体、１０は非磁性ベース、
１１は低抗磁力材層、１２は磁気記録層である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 単極型主磁極を有する磁気ヘッドの上記主磁極に近
   接対向、ないしは対接される磁気記録層と、低抗磁力材
   層とを具備し、上記磁気記録層に対する垂直磁化によっ
   て記録がなされる垂直磁気記録媒体において、上記磁気
   記録層はクロムが５〜２５重量％含まれ、厚さが３．０
   ミクロン以下のコバルトとクロムを主成分とし、膜面に
   垂直な方向に磁化容易軸を有する合金膜より成り、上記
   低抗磁力材層は、その抗磁力が上記磁性層の抗磁力の１
   １５以下で且つ１００エルステツド以下に選定され、そ
   の厚さが０．１ミクロン以上に選定されて成る垂直磁化
   による磁気記録媒体。