JP2810457B2 - 垂直磁気記録媒体およびその記録装置 - Google Patents

垂直磁気記録媒体およびその記録装置

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JP2810457B2 JP31875489A JP31875489A JP2810457B2 JP 2810457 B2 JP2810457 B2 JP 2810457B2 JP 31875489 A JP31875489 A JP 31875489A JP 31875489 A JP31875489 A JP 31875489A JP 2810457 B2 JP2810457 B2 JP 2810457B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、磁気ディスク装置、磁気テープ装置等にお
いて情報を高密度に記録再生する垂直磁気記録媒体およ
びその記録装置に関する。
〔従来の技術〕
垂直磁気記録方式は、線記録密度が高まるほど媒体内
の反磁界が軽減されるので、原理的には高密度記録に適
しているが、このような高密度特性を生かすためには再
生出力の向上が重要なポイントになる。
垂直ヘッドと、Co−Cr垂直磁気記録媒体の組合せにお
いては、記録媒体に軟磁性下地膜を配することによっ
て、Co−Cr単層膜記録媒体に比べて再生出力がほぼ1桁
向上することが、アイ・イー・イー・イー、トランザク
ションズ オン マグネティクス、エム エー ジー13
(5)、(1977年)第1272頁から第1274頁(IEEE Tran
s.Magn.,MAG−13(5)(1977)pp1272−1274)に記載
されている。これは、軟磁性下地膜と垂直ヘッドとを組
合せることによるヘッド効率の向上と、記録膜と下地膜
の境界の磁極消失による記録膜内の反磁界低減の二つの
効果によるものである。以上の効果(特に前者)を十分
に得るために、軟磁性下地膜の膜厚は通常の場合0.5μ
m以上とし、軟磁性下地膜の比初透磁率は通常の場合10
00以上のものが選定されている。
以上の磁気記録媒体の再生には、従来から使用されて
いるリングヘッドを用いても、再生出力が大幅に向上す
ることが明らかであるが、リングヘッドで上記記録媒体
に垂直磁気記録させようとすると、リングヘッドのコア
と記録媒体の軟磁性下地膜とが広範囲で磁気的に結合す
るため、記録磁界の垂直成分の分布が極端に部ブロード
になり、記録密度特性が大幅に劣化することが、例え
ば、アイ・イー・イー・イー、トランザクションズ オ
ン マグネティクス、エム エー ジー19(4)、(19
83年)第1493頁から第1502頁(IEEE Trans.Magn.MAG−1
9(4)(1983)pp1493−1502)に記載されている。
リングヘッドと軟磁性下地膜を設けた垂直磁気記録媒
体との組合せにおいて、上記問題を解決し、かつ記録膜
の反磁界を低減して再生出力を向上させるために、膜厚
が100nm以下の軟磁性下地膜を有するCo−Cr垂直磁気記
録媒体と、リングヘッドの組合せを用いることが、例え
ば、電子情報通信学会・技術研究報告MR88−6に示され
ている。この方式では、軟磁性下地膜(Ni−Fe)が薄い
ために記録時に下地層は磁気的に飽和し、ヘッド磁界分
布の劣化を抑え、かつ記録後には軟磁性下地膜により記
録膜の反磁界が低減されるので、記録密度特性を劣化さ
せることなく再生出力の増大をはかることができるもの
であるが、軟磁性下地膜の比初透磁率μが1000〜2000程
度と大きいために、記録膜から発生する磁束が多く集ま
り磁気的に飽和され易く、記録膜の反磁界低減の効果が
小さくなり、再生出力の向上があまり期待できないとい
う問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述したごとく、従来技術においては、記録時におけ
る磁界分布の劣化を防ぐため、軟磁性下地膜を100nm以
下と薄くしているため、情報が記録された記録膜から発
生する磁束によっても、下地膜が磁気的に飽和され易い
条件にある。例えば、第2図に下地膜の比初透磁率μを
パラメータとした再生出力と下地膜の膜厚の関係を示
す。この場合、下地膜の飽和磁束密度は1T(テスラ)で
ある。上記従来技術において、下地膜に用いられている
Ni−Feの比初透磁率は通常1000ないし2000程度である。
図から分かるように、下地膜の薄い領域では比初透磁率
が高くなると再生出力が低下する傾向を示している。こ
れは、下地膜の透磁率が高いと記録膜から発生する磁束
が多く集まり磁気的に飽和され易いためである。以上の
ように、従来技術においては、下地膜が磁気的に飽和さ
れ易く、したがって記録膜の反磁界低減の効果が少なく
なり、再生出力の向上が制限されるという問題があっ
た。
本発明の目的は、上記従来技術における問題点を解消
し、薄い下地膜においても磁気飽和を起し難くし、リン
グヘッドとの組合せにおいて、記録密度特性を劣化させ
ずに、より一層の再生出力を向上させることができる垂
直磁気記録媒体と、それを用いた垂直磁気記録装置を提
供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記本発明の目的は、リングヘッドと軟磁性下地膜を
有する垂直磁気記録媒体との組合せにおいて、軟磁性下
地膜の膜厚を100nm以下とし、かつ軟磁性下地膜の比初
透磁率μを1000未満とすることにより達成される。
本発明は、非磁性基板上に直接もしくは非磁性層を介
して、膜面内に磁化容易な軟磁性下地膜を設け、上記軟
磁性下地膜上に直接もしくは非磁性中間層を介して、垂
直磁気異方性を有する記録膜を積層した構造の垂直磁気
記録媒体において、上記軟磁性下地膜の膜厚を100nm以
下となし、かつ該軟磁性下地膜の比初透磁率μを1000未
満とした垂直磁気記録媒体である。
本発明の垂直磁気記録媒体に設ける軟磁性下地膜の比
初透磁率μの値は、1000未満であれば適用可能である
が、好ましい範囲は10以上、1000未満である。さらに、
軟磁性下地膜の比初透磁率μのより好ましい範囲は20以
上、500以下で、最も好ましい範囲は50以上、200以下で
ある、 そして、本発明の垂直磁気記録媒体に用いる軟磁性下
地膜は、Co−Cr、Co−Ti、Co−Mo、Co−Re、Co−Ru、Co
−Os、Co−W合金のうちから選択される少なくとも1種
の合金からなるものである。さらに、軟磁性下地膜とし
て、Ni−Fe、Co−Ni、Co−Fe合金のうちより選択される
少なくとも1種の合金を用いることもできる。
さらに本発明は、記録再生用リングヘッドと、上記し
た本発明の膜面内に磁化容易な軟磁性下地膜と垂直磁気
異方性を有する記録膜とを積層した垂直磁気記録媒体と
を組合せた構造の情報の記録および再生手段を備えた垂
直磁気記録装置である。
〔作用〕
第3図に記録膜の垂直方向残留磁化Myの分布を、下地
膜の有無に関連して示すものである。なお、第3図は、
下地膜の磁気飽和が起こらない場合の一例を示すもので
ある。下地膜による記録膜の残留磁化の増大は、磁化反
転の近傍の領域に限られており、再生出力の増大には、
磁化反転付近の下地膜を磁気飽和させずに、反磁界を低
減することが重要であることを示している。また、第2
図において、下地膜の薄い領域で、下地膜の比初透磁率
μが高いときに再生出力が低下するのは、磁化反転から
離れた位置の記録膜からの磁束が下地膜に集中し、磁化
反転近傍において磁気飽和を起すためである。したがっ
て、下地膜の比初透磁率をより低い値で適切に選ぶこと
により、磁化反転から離れた位置の記録膜から発生する
磁束が、磁化反転近傍の下地膜に集中するのを防ぎ、磁
化反転近傍の記録膜の反磁界低減の働きをして、効果的
に再生出力を向上させることができる。
さらに、第4図は下地膜の膜厚を100nm、飽和磁束密
度を1Tとしたときの再生出力と、下地膜の比初透磁率μ
の関係を求めた一例である。下地膜の比初透磁率が10な
いし1000の範囲で単層膜(μ=1に相当)に対して30%
以上高い再生出力が得られている。
また、本発明の垂直磁気媒体においては、下地膜の膜
厚が、100nm以下と薄いため記憶時には磁気飽和し、リ
ングヘッドと組合せたときには磁界分布が劣化されるこ
とはない。
〔実施例〕
以下に本発明の一実施例を挙げ、図面を用いて、さら
に詳細に説明する。第1図は本発明の垂直磁気記録媒体
とリングヘッドとを組合せた垂直磁気記録装置の構成の
一例を示す模式図である。図において、垂直磁気記録媒
は、非磁性基板11上に、軟磁性下地膜12、垂直磁気
異方性を有する記録膜13および保護膜14を積層して構成
したものである。
軟磁性下地膜12は、比初透磁率μの値を小さくするた
めに基板温度を50℃と低温にして蒸着したCo80Cr20合金
膜であり、膜厚は50nmとした。この膜の透磁率を測定し
たところ、比初透磁率μが100という低い値が得られ
た。垂直磁気異方性を有する記録膜13は、Co−Cr合金を
蒸発させ基板温度を200℃に加熱して蒸着させたCo80Cr
20合金膜であり、膜厚が0.2μmの通常の垂直磁気記録
膜である。
この記録媒体に、リングヘッドを用いて磁気記録再
生を行った。軟磁性下地膜12は膜厚が50nmと薄いので、
リングヘッド2から発生する強い磁界により磁気的に飽
和され実効的に透磁率が低下するため、記録磁界分布は
下地膜が無いときと同様の状態になる。したがって、記
録密度特性を劣化させることはない。記録された状態で
の磁性状態は、磁化反転の近傍で記録膜の磁化と下地膜
の磁化が閉じた形の磁化モードを形成するため、記録膜
内の反磁界が軽減され、第3図に示すように残留磁化が
増大する。また、下地膜の比初透磁率μが100と比較的
低いため、記録膜の磁化反転から離れた位置からの磁束
が、磁化反転付近の下地膜に集中し磁気飽和されること
はない。したがって、磁化反転付近の残留磁化を効果的
に増大させることが可能となる。
この記録媒体を、リングヘッドで記録再生したとき
の記録密度特性を第5図の曲線33に示す。比較のため
に、下地膜を用いない垂直磁気記録媒体の記録密度特性
を曲線31に、従来の垂直磁気記憶媒体を用いたときの記
録密度特性を曲線32に示す。従来の垂直磁気記録媒体
は、本発明と同じ膜厚(50nm)の軟磁性下地膜(Ni−Fe
合金)を用いたもので比初透磁率は2000である。再生出
力は下地膜を用いない垂直磁気記録媒体を基準(1.0)
して示した。これに対して、従来の垂直磁気記録媒体は
1.2倍、本実施例の垂直磁気記録媒体を用いた場合は1.4
倍の再生出力を示した。なお、下地膜を用いることによ
る記録密度特性の劣化は、本実施例および従来の垂直磁
気記録媒体とも認められなかった。
上述したごとく、本実施例の垂直磁気記録媒体は、リ
ングヘッドを用いて記録密度特性を損なうことなく再生
出力を向上させることが可能である。
また、以上の実施例において、比初透磁率μの小さい
軟磁性下地膜としてCo−Cr合金を用いたが、その他にCo
−Ti、Co−Mo、Co−Re、Co−Ru、Co−Os、Co−W等のCo
系合金を用いても、上記実施例と同様に比初透磁率100
程度の比初透磁率μの小さい軟磁性下地膜が得られるこ
とを確認している。さらに、Ni−Fe、Co−Ni、Co−Fe合
金を、真空度を下げて蒸着し、成膜することによって
も、上記と同様の比初透磁率μの小さい軟磁性下地膜が
得られた。これらの軟磁性下地膜は、その上に積層され
る記録膜の垂直配向性を乱す可能性もあるが、そのよう
な場合には、配向性制御用としてTi等の非磁性中間層を
介在させることができる。
〔発明の効果〕
以上詳細に説明したごとく、本発明の膜厚が100nm以
下で、比初透磁率μが1000未満の軟磁性下地膜を有する
垂直磁気記録媒体を用い、リングヘッドの組合せにおい
て、記録密度特性を劣化させることなく、再生出力を効
果的に増大させることが可能であり、面記録密度を一段
と高めることができ、信頼性の高い垂直磁気記録媒体お
よびそれを用いた記録装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例において例示した垂直磁気記録
媒体とリングヘッドを組合せた記録装置の構成の一例を
示す模式図、第2図は軟磁性下地膜の比初透磁率μをパ
ラメータとした再生出力と軟磁性下地膜の膜厚の関係を
示すグラフ、第3図は記録膜の垂直方向残留磁化分布を
示すグラフ、第4図は下地膜の膜厚を100nm、飽和磁束
密度を1Tとしたときの再生出力と下地膜の比初透磁率μ
の関係を示すグラフ、第5図は記録密度特性を従来技術
と比較して示したグラフである。 ……垂直磁気記録媒体、……リングヘッド 11……非磁性基板、12……軟磁性下地膜 13……垂直磁気異方性を有する記録膜 14……保護膜 31……下地膜を用いない垂直磁気記録媒体 32……従来の垂直磁気記録媒体 33……本発明の垂直磁気記録媒体

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性基板上に直接もしくは非磁性層を介
    して、膜面内に磁化容易な軟磁性下地膜を設け、上記軟
    磁性下地膜上に直接もしくは非磁性中間層を介して、垂
    直磁気異方性を有する記録膜を積層した構造の垂直磁気
    記録媒体において、上記軟磁性下地膜の膜厚を100nm以
    下となし、かつ該軟磁性下地膜の比初透磁率を1000未満
    としたことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項において、軟磁性下
    地膜の比初透磁率を10以上、1000未満としたことを特徴
    とする垂直磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項において、軟磁性下
    地膜の比初透磁率を20以上、500以下としたことを特徴
    とする垂直磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項において、軟磁性下
    地膜の比初透磁率を50以上、200以下としたことを特徴
    とする垂直磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】特許請求の範囲第1項、第2項、第3項ま
    たは第4項において、軟磁性下地膜は、Co−Cr、Co−T
    i、Co−Mo、Co−Re、Co−Ru、Co−Os、Co−W合金のう
    ちから選択される少なくとも1種の合金からなることを
    特徴とする垂直磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】特許請求の範囲第1項、第2項、第3項ま
    たは第4項において、軟磁性下地膜は、Ni−Fe、Co−N
    i、Co−Fe合金のうちより選択される少なくとも1種の
    合金からなることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】記録再生用リングヘッドと、特許請求の範
    囲第1項ないし第6項のいずれか1項記載の膜面内に磁
    化容易な軟磁性下地膜と垂直磁気異方性を有する記録膜
    とを積層した垂直磁気記録媒体とを組合せた構造の情報
    の記録および再生手段を有することを特徴とする垂直磁
    気記録装置。
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