JP3050421B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP3050421B2 JP3137204A JP13720491A JP3050421B2 JP 3050421 B2 JP3050421 B2 JP 3050421B2 JP 3137204 A JP3137204 A JP 3137204A JP 13720491 A JP13720491 A JP 13720491A JP 3050421 B2 JP3050421 B2 JP 3050421B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体に関する。
更に詳細には、本発明は高密度記録性能が大幅に向上さ
れた記録層を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の磁気記録技術の進歩は急速であ
り、既に最短の単位記録長がサブミクロンのオーダーの
領域に入りつつある。このような高密度の記録領域に入
ると、信号対雑音比、いわゆるS/N比を可能な限り高
めることが最重要課題となってくる。
【0003】このようなことから、磁気ヘッド、記録媒
体そして信号処理系の改良が進められてきたが、記録媒
体の面から見ると、サブミクロンの下限付近あるいはそ
れ以上の高密度記録を目指そうとすると、現行の媒体で
は高いS/N比の確保が難しく、実用に供することは困
難と予想された。
【0004】このS/N比確保のためには、信号レベル
Sを高め、雑音レベルNを低く抑えることが必要となる
が、この課題に対しては二つのアプローチがある。磁気
記録の過程は、磁気ヘッドによる記録媒体への記録、そ
して、磁気ヘッドによる記録信号の再生の二つのプロセ
スに大別され、各々のプロセスに対し、高密度化という
目的に合致した最適化がなされなければならない。先
ず、記録の面から考えると、ヘッドが磁気的飽和に至る
以前の記録レベルで記録磁性層がその最下層まで充分に
記録されなければならない。これはヘッドが磁気的飽和
状態に近づくと、そこから発生する磁界の空間分布が拡
がり、著しい記録減磁を起こし、出力レベルSの低下お
よび高密度記録性能の著しい劣化を引き起こすためであ
る。
【0005】従って、技術的な面から考えると、ヘッド
が磁気的飽和に至る以前の比較的低い記録磁界で記録媒
体は充分に記録されねばならない。一方、再生の面から
考えると、記録された記録磁性層内の磁化は、磁気ヘッ
ドが過ぎ去った後、それ自身が生み出す反磁界により著
しい減磁を受け、なるべくエネルギー的に安定な状態を
取ろうとする。そして、このような減磁を受けると、記
録磁化は減少し、顕著な出力レベルの低下を引き起こ
す。従って、なるべく記録時の磁化を保持するような努
力が必要となる。
【0006】以上、記録および再生の点からS/N比向
上のための指針を述べたが、実際にこれまで開発されて
きた磁気記録媒体では、これらの点が充分に検討された
とはいえず、その結果、高記録密度領域の高いS/N比
を確保することが困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術がもつ高記録密度領域におけるS/N比の不足という
問題を解決し、以て、高密度記録性能に優れた磁気記録
媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明では、図1に示すような、非磁性基体1上に
下地層2および記録層3を設けた磁気記録媒体におい
て、下地層の飽和磁化を記録層の飽和磁化よりも小さ
く、かつ、その値を50〜300Gの範囲内に収めるよ
うにしている。非磁性基体1と下地層2との間には、所
望により、非磁性アンダーコート層を設けることもでき
る。
【0009】これにより、記録媒体の広い記録密度領域
におけるS/N比は向上するが、下地層2に更に以下の
特性を持たせることにより、本発明の効果は一層顕著に
なる。すなわち、記録層および下地層を共に消磁後、5
0Oe以下の外部磁場を印加した時に測定した膜面垂直方
向および面内方向保磁力を10Oe以下とし、更には、消
磁状態で測定した下地層の初透磁率を10以上とするこ
とである。
【0010】
【作用】垂直記録媒体、長手記録媒体を問わず、実験的
には上記の構成を採用することにより、高記録密度領域
におけるS/N比は著しく向上した。この原因は、本発
明の記録媒体構造が前記のS/N比向上のための指針に
沿ったものであるためと考えられる。以下にその詳細を
述べるが、垂直記録および長手記録共に、類似のメカニ
ズムが考えられるので、ここでは垂直記録すなわち、記
録磁性層3が垂直磁気異方性記録層である場合について
述べる。なお、垂直および長手の中間状態にある斜め磁
気異方性の場合についても同様の解釈を行うことができ
る。
【0011】先ず、記録サイドから、低飽和磁化かつ低
保磁力の下地層2の役割について図2を用いて考察して
みる。磁気ヘッドが記録層3に記録を行う場合、下地層
の方が磁化されやすい。この磁化のしやすさの度合い
は軟磁性であるほど、また下地層2の飽和磁化が低いほ
ど反磁界が小さくなり、ヘッド磁界分布に従った磁化状
態が実現されやすい。このように、下地層が磁化される
と、下地層とその上の記録層3の交換相互作用により、
記録層3も磁化される。従って、記録の点から考える
と、このような下地層の存在は、記録層3に記録を行う
ためのヘッド磁界を著しく低減させる役割がある。この
ことを実用面から考えると、磁気ヘッドを磁気飽和以下
の低記録電流で駆動できることを意味し、急峻なヘッド
磁界空間分布すなわち急峻な記録を行うことが出来ると
いう大きなメリットがある。以上述べた記録サイドの観
点からすると、下地層の飽和磁化には最適値があり、過
小では両層の交換相互作用が弱く、また、過大になると
下地層内に生じる反磁界によりヘッド磁界分布に従った
磁化状態が実現されない。
【0012】次に、再生サイドから本発明の磁気記録媒
体の特徴について図3を用いて説明する。磁気ヘッドが
記録を行い過ぎ去った後には、下地層内の磁化は記録層
との交換相互作用により影響は受けるものの、ランダム
な分布に近づこうとする。しかし、磁化遷移近傍におい
ては、強い漏洩磁気記録媒体勾配が現れているため、そ
の近傍のみの下地層は強く磁化され、図3に示すよう
に、記録層−下地層間で半閉磁路を形成する。その結
果、記録層裏面の自由磁極は低減され、記憶磁化に作用
する反磁界が減少する結果、磁化遷移領域近傍の記録磁
化は安定化する。このようにして、再生出力が向上する
ものと推測されたが、下地層の飽和磁化を過小にする
と、半閉磁路形成が不十分であり、過大にすると雑音レ
ベルが非常に高くなる。
【0013】以上、記録および再生の面から本発明の効
果のメカニズムについて考察したが、上述したように本
発明者らの具体的実験検討によれば、下地層の飽和磁化
記録層のそれよりも小さくし、かつ、その値を50〜
300Gと設定した時に、高記録密度領域において最も
良好なS/N比を実現することができた。また、先に述
べたメカニズムから予想されるように、下地層は軟磁性
的性質を有することが好ましいが、本発明のような積層
状態における個々の層の磁気特性評価は困難であり、こ
れまで有効な測定方法がなかった。このような困難を避
けるために、各層を単独に形成し、各々の磁気特性が評
価されていた。しかし、このような評価法が妥当でない
ことは明かである。先ず、第一には、下地層2の上に
録層3を形成すると膜形成時の熱残留応力、そして、膜
の内部応力の変化により磁気特性は大きく変化する。第
2には、下地層と記録層界面において原子拡散が生じ、
組成変化により磁気特性も変化する。第三には、両層間
の磁気的カップリングのため単層と積層状態では、下地
の磁気的挙動は大きく違ってくる。
【0014】このように、単層状態の磁気特性から積層
状態における磁気的挙動を議論することは妥当なことで
はなく、誤解を生じる場合が非常に多い。このような問
題を解決するため、本発明者らは、積層状態における
地層の新たな磁気特性評価法を考案した。それは、上記
積層膜を消磁後、記録層が殆ど磁化されないような弱磁
界下で、下地層の磁気特性を評価するという手法であ
る。先に、本発明の積層型磁気記録媒体の下地層は、軟
磁性的性質を有する必要のあることを述べたが、上記評
価法に基づけば、下地層が下記2つの要件を満足する時
に、特に優れた記録再生特性を実現できることを確認し
た。第一には、記録層および下地層共に消磁後、50Oe
以下の外部磁場を印加した時の膜面垂直方向および面内
方向の保磁力が10Oe以下であること。第二に、記録層
および下地層共に消磁後に測定した下地層の初透磁率
10以上であること。これら二つの要件が、優れた記録
特性を実現するために、飽和磁化を低く設定することの
他に、下地層に要求される性質である。
【0015】本発明の磁気記録媒体における下地層の材
料としては、上記要件を満足するものならば特に限定さ
れず、Fe、Co、Niを含有する結晶質、非晶質合金
あるいはMn−Znフェライトなどの酸化物材料、窒化
物材料などがその一例として考えられる。また、記録層
の材料としては、Fe、Co、Niを主体とする合金あ
るいは酸化物材料などがその一例として挙げられ、例え
ば、Co系の材料としては、Co−Ni、Co−Cr、
Co−Pt、Co−Ta、Co−O、Co−Fe−O、
Co−Ni−O、Co−Ni−Cr、Co−Ni−P
t、Co−Ni−Ta、Co−Cr−Ta、Co−Cr
−Ptなどがある。
【0016】また、記録層の面内磁気異方性あるいは垂
直磁気異方性を特に強調する場合には、Cr主体合金あ
るいはTi、Geなどの非磁性アンダーコート層を下地
層2と基板1の間に介在させてもよい。
【0017】本発明の磁気記録媒体の製造方法自体は特
に限定されない。本発明の磁気記録媒体における、非磁
性アンダーコート層、下地層および記録層は何れも、例
えば、非磁性基体にスパッタ法あるいは真空蒸着法とい
つたベーパデポジション法により製造することができ
る。このような製造方法は当業者に公知である。別法と
して、非磁性アンダーコート層はパルスメッキ法によっ
ても形成することができる。
【0018】本発明の磁気記録媒体に使用される非磁性
基板としては、アルミニウム基板の他に、ポリイミド,
ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルム,ガラ
ス類,セラミック,陽極酸化アルミ,黄銅などの金属
板,Si単結晶板,表面を熱酸化処理したSi単結晶板
などがある。
【0019】また、本発明の磁気記録媒体としては、ポ
リエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどの合成樹
脂フィルムを基体とする磁気テープや磁気ディスク、合
成樹脂フィルム、アルミニウム板およびガラス板等から
なる円盤やドラムを基体とする磁気ディスクや磁気ドラ
ムなど、磁気ヘッドと摺接する構造の種々の形態を包含
する。
【0020】以下、実施例により本発明を更に詳細に説
明する。実施例1 2.5インチのガラスディスク基板を120℃に加熱し
た状態で、膜厚0.06μmの非晶質Co−Zr下地層
を形成し、該層上に膜厚0.05μmのCo−20wt%
Cr垂直磁気異方性膜(飽和磁化Ms1 =290G)そ
して、膜厚100 のカーボン膜をスパッタ形成した。
なお、Co−Zr膜はCoターゲット上にZrチップを
置き、その被覆面積により組成すなわち飽和磁化を変化
させた。なお、Co−Zr下地層の磁気特性を変化させ
るため、25〜250℃の温度範囲で回転磁界中熱処理
を施した。この温度範囲の熱処理ではCo−Cr膜の磁
性に大きな変化は現れなかった。また、Co−Zr下地
層の磁気特性の評価にあたっては、積層状態の試料を交
流消磁した上で、初期磁化曲線を描かせ、零磁場近傍の
曲線の傾斜より初透磁率μ i を決定した。また、下地層
の保磁力Hc2 の評価は、消磁状態の試料に50Oeの外
部磁界を印加し、ヒステリシス曲線を描かせて保磁力を
決定した。このようにして形成したディスクをギャップ
長0.26μmの薄膜型リングヘッドで記録し、膜厚
0.08μmの磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)で
再生した。測定結果を下記の表1に示す。表中、S/N
比の結果は記録密度100kFCIにおける値として示され
ている。
【0021】
【表1】 表1 Co-Cr膜 Co-Zr膜 Co-Zr膜 Co-Zr膜 S/N比(対 飽和磁化 飽和磁化 初透磁率 保持力 単層膜比)試 料 Ms 1 (G) Ms 2 (G) μ i Hc 2 (Oe) dB 1 290 −−− −−− −−− 0 2 290 800 950 2.4 −6.2 3 290 430 390 3.0 −3.7 4 290 270 280 0.8 +3.3 5 290 110 210 1.1 +5.8 6 290 70 80 0.3 +2.7 7 290 40 30 0.3 0
【0022】実施例2 2.5インチのガラス基板を150℃に加熱した状態で
膜厚0.35μmのCr下地層、膜厚0.009μmの
Ni−Cr合金下地層そして膜厚0.045μmのCo
−Cr−Ta記録磁性層(飽和磁化Ms1 =320
G)、更に膜厚130 のカーボン膜をスパッタ形成し
た。なお、Ni−Cr膜はNiターゲット上にCrチッ
プを置き、その被覆面積により組成すなわち飽和磁化を
変化させた。なお、実施例1と同様に、Ni−Cr層の
磁気特性を変化させるため、25〜250℃の温度範囲
内で磁界中熱処理を施した。磁気特性および記録再生特
性の評価方法は、先の実施例と同様であり、その結果を
表2に示す。
【0023】
【表2】 表2 Co-Cr-Ta膜 Ni-Cr膜 Ni-Cr膜 Ni-Cr膜 S/N比(対 飽和磁化 飽和磁化 初透磁率 保持力 単層膜比)試 料 Ms 1 (G) Ms 2 (G) μ i Hc 2 (Oe) dB 8 320 −−− −−− −−− 0 9 320 400 1300 1.5 −2.6 10 320 270 860 0.9 +2.3 11 320 110 630 0.8 +3.9 12 320 30 80 2.3 0
【0024】実施例3 図4に示す巻取式真空蒸着装置を用い、厚さ9.2μm
のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム基板
6上に、低保磁力Ni−Cu下地層、高保磁力Co−O
記録磁性膜の蒸着を行った。以下にその製造プロセスを
説明する。真空槽内を排気孔4を通し、5×10-6Torr
以下の真空度を達成した後、ロール5よりフィルム基板
6を送り出し、水冷キャンドラム7に沿わせて走行させ
る。ここで、電子ビームにより加熱したNi−Cu蒸発
源12より、基板上に膜厚0.012μmのNi−Cu
下地膜を堆積させ、ロール5に巻き取った。次いで、再
び巻戻し操作を行い、真空槽内にガス導入孔9から酸素
ガスを導入しながら、Co蒸発源11より、膜厚0.2
1μmのCo−O膜をNi−Cu下地膜上に堆積させ
た。このようにして作製したCo−O/Ni−Cu積層
膜を交流消磁後、初期磁化曲線を描かせ、零磁場近傍の
傾斜より初透磁率μ i を決定した。また、下地層の保磁
力Hc2 の評価は、消磁状態の試料に30Oeの外部磁界
を印加し、保磁力を測定した。また、記録再生特性は1
/2インチ幅のテープ状に切り出した試料をギャップ長
0.17μmのCoNbZrアモルファス−フェライト
複合MIG(メタル−イン−ギャップ)型リングヘッド
により自己記録再生評価を行った。結果を表3に示す。
【0025】
【表3】 表3 Co-O膜 Ni-Cu膜 Ni-Cu膜 Ni-Cu膜 S/N比(対 飽和磁化 飽和磁化 初透磁率 保持力 単層膜比)試 料 Ms 1 (G) Ms 2 (G) μ i Hc 2 (Oe) dB 13 910 −−− −−− −−− 0 14 910 300 960 3.2 +2.1 15 910 250 640 1.7 +4.9
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では下地層
と記録層の積層膜において、前者の飽和磁化を後者のそ
れよりも小さくし、かつ、その値を50〜300Gとす
ることにより高密度記録領域におけるS/N比を向上し
ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の構造の一例を示す模式
的断面図である。
【図2】記録過程における下地層の役割を説明するため
の模式図である。
【図3】再生過程における下地層の役割を説明するため
の模式図である。
【図4】実施例3で使用された真空蒸着装置の模式図で
ある。
【符号の説明】
1 非磁性基体 2 下地層記録層 4 排気孔 5 ロール 6 PETフィルム基板 7 水冷キャンドラム 8 防着板 9 ガス導入孔 10 ニードルバルブ 11 Co蒸発源 12 Ni−Cu蒸発源 13 フィラメント

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基体上に、非磁性アンダーコート
    層を介するか、または介さず、下地層および記録層を設
    けた磁気記録媒体において、 前記下地層の飽和磁化が前記記録層の飽和磁化よりも小
    さく、かつ、その値が50〜300Gの範囲内にあり、記録層および下地層共に消磁後、50Oe以下の外部磁場
    を印加した時の膜面垂直方向および面内方向の保磁力が
    10Oe以下であり、 記録層および下地層共に消磁後、測定した下地層の初透
    磁率が10以であることを特徴とする磁気記録媒体。
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