JPH0834977A - 等方性ピッチの製造方法 - Google Patents

等方性ピッチの製造方法

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JPH0834977A
JPH0834977A JP19215794A JP19215794A JPH0834977A JP H0834977 A JPH0834977 A JP H0834977A JP 19215794 A JP19215794 A JP 19215794A JP 19215794 A JP19215794 A JP 19215794A JP H0834977 A JPH0834977 A JP H0834977A
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pitch
isotropic pitch
hydrocarbon solvent
aromatic hydrocarbon
monocyclic aromatic
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JP19215794A
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English (en)
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Masatoshi Tsuchitani
正俊 槌谷
Sakae Naito
栄 内藤
Ryoichi Nakajima
亮一 中島
Tomohiko Sato
智彦 佐藤
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Maruzen Petrochemical Co Ltd
Original Assignee
Maruzen Petrochemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光学的異方性組織を実質的に含まず、不融化
性の改善された光学的等方性ピッチを製造することを目
的とする。 【構成】 石炭系重質油を、それに芳香族ニトロ化合物
を1〜10重量%添加し、温度150〜400℃にて1
〜120分間処理して改質処理物を得、該改質処理物を
単環の芳香族炭化水素溶剤に溶解させ、析出した不溶成
分を除去し、得られた溶液から溶剤を回収して可溶成分
を得、該可溶成分を加熱処理することを特徴とする光学
的等方性ピッチの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学的に等方性のピッ
チの新しい製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】等方性ピッチは、一般に、等方性高密度
炭素材、汎用炭素繊維、活性炭素繊維等の原料として用
いられている。中でも汎用炭素繊維は、その性能に応じ
た種々の用途、中でも土木建築分野の炭素繊維補強コン
クリート(CFRC)等で大量に使用されるなど、近年
その需要増に対して、より一層低廉に製造することが望
まれている。
【0003】従来、等方性ピッチの製造には、特開昭5
2−78201号に示されているような、原料タールに
溶剤を加え固形分などの溶剤不溶分を抽出除去した後、
加熱処理する方法が一般的に用いられてきた。しかし、
この方法では、抽出により固形分の除去はできるが、加
熱時に容易にメソフェーズ化する成分が除去できず、し
たがって等方性ピッチを炭素繊維製造用紡糸ピッチに適
した軟化点、溶融粘度等を有するものとするための加熱
処理過程でどうしてもメソフェーズが発生し、メソフェ
ーズを実質的に含有しない紡糸ピッチに適した軟化点、
溶融粘度を有する等方性ピッチを製造することが困難で
あるという問題がある。等方性ピッチを炭素繊維製造用
紡糸ピッチとして用いる場合、メソフェーズを含有する
ことは繊維が不均質になり、また紡糸時にノズル孔が閉
塞したり、糸切れを起こし易くなるなど望ましくないこ
とである。
【0004】そのため、メソフェーズを含有しない等方
性ピッチを製造するために種々の方法が提案されてい
る。
【0005】例えば、特公昭61−21589号には、
コールタールピッチを350〜500℃でメソフェーズ
の小球体が生成するまで加熱処理した後、溶剤を用いて
メソフェーズを含む溶剤不溶成分を抽出除去し、さらに
350〜500℃で加熱処理して等方性ピッチを製造す
る方法が提案されている。しかし、この方法では、最初
の加熱処理時にコーキングが起こり易く、また目的の等
方性ピッチの収率が悪いという問題と共に、原料が石炭
系重質油の場合には、得られた等方性ピッチから炭素繊
維を製造するに当たり、該ピッチを紡糸して得たピッチ
繊維の不融化処理に長時間を要し、不融化性が悪いとい
う問題がある。
【0006】また、芳香族ニトロ化合物を軟化点上昇剤
ないし重合促進剤として用いる等方性ピッチの製造方法
も提案されている。例えば、特開昭55−98914号
には、ピッチまたは重質油に軟化点上昇剤として芳香族
ニトロ化合物を加えて150〜350℃で加熱処理する
等方性ピッチの製造方法が提案されている。しかし、こ
の方法では、得られるピッチの軟化点が低く、炭素繊維
製造用紡糸ピッチとして用いた場合、そのピッチ繊維の
不融化処理に長時間を要し、不融化性が悪いという問題
がある。また、特開平4−85394号には、キノリン
不溶成分を実質的に含まないピッチに重合促進剤として
ニトロ化合物を添加して150〜350℃で加熱処理す
る等方性ピッチの製造方法が提案されており、また特開
平5−132676号には、タール、ピッチ等に重合促
進剤としてニトロ化合物を添加して、酸素またはオゾン
を含有する気体を吹き込みつつ100〜400℃で加熱
処理する等方性ピッチの製造方法が提案されている。し
かし、これらの方法では、得られるピッチは加熱時にガ
スが多量に発生し、加熱減量が多く、炭素繊維製造用紡
糸ピッチとして用いた場合、糸切れ等を起こすという問
題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
従来の状況に鑑みてなされたものであって、本発明の目
的は、石炭系重質油から、炭素繊維製造用紡糸ピッチと
して優れた特性を有する、すなわちメソフェーズを実質
的に含有せず、不融化性に優れていて短時間で不融化す
ることができ、加熱減量が少なく、糸切れ等を起こすこ
となく、紡糸性に優れた等方性ピッチを工業的に容易に
製造し得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意検討した結果、次のことを見出して本
発明を完成した。すなわち、石炭系重質油から炭素繊維
製造用紡糸ピッチとして好適に用い得るような等方性ピ
ッチを製造するに当たり、従来はピッチの軟化点上昇剤
ないし重合促進剤として用いられ、単にピッチの重質成
分を増加させるのみの効果が期待されていたような芳香
族ニトロ化合物を、従来法とは異なったある特定の手順
の基に、一定の条件で用いると、製造過程におけるメソ
フェーズの生成が抑制されて実質的にメソフェーズを含
有しない等方性ピッチを得ることができると共に、得ら
れる等方性ピッチの不融化性が向上し、加熱減量が減少
する等その紡糸性が向上し、所期の目的が達せられるこ
とを見出し、本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明の要旨は、石炭系重質油
を、それに芳香族ニトロ化合物を1〜10重量%添加
し、温度150〜400℃にて1〜120分間加熱処理
して改質処理物を得、該改質処理物を単環の芳香族炭化
水素溶剤に溶解させ、析出した不溶成分を除去し、得ら
れた溶液から単環の芳香族炭化水素溶剤を回収して可溶
成分を得、該可溶成分をさらに加熱処理することを特徴
とする等方性ピッチの製造方法に存する。
【0010】本発明で原料として用いられる石炭系重質
油としては、コールタール、コールタールピッチ、ある
いは石炭液化油等の各種の種々の性状のものを用い得
る。ただし、後記するように、原料の石炭系重質油に芳
香族ニトロ化合物を添加したものの加熱処理を管式加熱
炉で行う場合は、原料の石炭系重質油は、一般に、10
0℃における粘度が1,000cSt 以下、好ましくは3
00cSt 以下、沸点250℃以下の成分が25重量%以
下、好ましくは20重量%以下、沸点250〜350℃
の成分が5〜40重量%、好ましくは10〜40重量%
の範囲にあるものであることが望ましい。上記より粘度
が高いものでは、管式加熱炉の閉塞が発生する恐れがあ
る。
【0011】原料の石炭系重質油に添加する芳香族ニト
ロ化合物としては、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼ
ン、ニトロナフタレン、ジニトロナフタレン、ニトロト
ルエン、ジニトロトルエン、ニトロフェノール、ジニト
ロフェノール、ニトロアニリン、ジニトロアントラセ
ン、ジニトロ安息香酸、ニトロアントラキノン等が挙げ
られ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混
合して用いても良い。
【0012】本発明の目的を達成するためには、まず最
初に、原料の石炭系重質油に芳香族ニトロ化合物を添加
して加熱処理して、原料の石炭系重質油と芳香族ニトロ
化合物とを反応させることが肝要である。例えば、まず
最初に、原料の石炭系重質油から溶剤による抽出処理で
溶剤不溶成分を除去し、得られた可溶成分に芳香族ニト
ロ化合物を添加して加熱処理したのでは、所期の目的が
達せられない。
【0013】また、原料の石炭系重質油に対する芳香族
ニトロ化合物の添加量および加熱処理条件は、目的物で
ある等方性ピッチの特性あるいは収率に、ひいては該等
方性ピッチから製造される炭素製品の特性あるいは収率
にまで影響を及ぼすため重要である。ニトロ化合物の添
加量が、原料の石炭系重質油の1重量%未満である場合
には、添加の効果が認められなくなり、10重量%を上
回る場合には、芳香族ニトロ化合物が石炭系重質油中に
多く取り込まれ、得られたピッチを紡糸する際にガスが
多量に発生したり、炭素繊維の強度が低下するといった
問題が生じる。したがって、ニトロ化合物の添加量は、
原料の石炭系重質油の1〜10重量%の範囲、好ましく
は1.5〜5重量%の範囲から選択される。また、処理
温度が150℃未満である場合、あるいは処理時間が1
分未満である場合には、反応が十分に進行せず、処理温
度が400℃を上回る場合、あるいは処理時間が120
分を上回る場合には、反応が進行しすぎるため過度の重
合が起こり、等方性ピッチとなりうる成分までが、多量
に単環の芳香族系炭化水素溶剤に不溶な成分に転化され
て、得られるピッチの収率が低下する。したがって、処
理温度は、150〜400℃の範囲、好ましくは250
〜400℃の範囲から選択され、処理時間は、1〜12
0分の範囲、好ましくは3〜60分の範囲から選択され
る。
【0014】この原料の石炭系重質油に芳香族ニトロ化
合物を添加したものを加熱処理するための手段として
は、任意の手段を採用し得て、例えばオートクレーブを
用いるバッチ式手段でも、管式加熱炉を用いる連続式手
段でも良い。ただし、管式加熱炉を用いる連続式手段を
採用する場合は、加熱処理条件を、得られる改質処理物
のメトラー法軟化点が120℃を越えない範囲で選択す
ることが望ましい。得られる改質処理物のメトラー法軟
化点が120℃を越えるような加熱処理条件を採用する
と管式加熱炉が閉塞する恐れが生ずる。
【0015】上記の原料の石炭系重質油に芳香族ニトロ
化合物を添加したものの加熱処理により得られる改質処
理物は、次いで、単環の芳香族炭化水素溶剤を用いて精
製処理される。すなわち、該改質処理物は、単環の芳香
族炭化水素溶剤に溶解され、析出した不溶成分が除去さ
れ、かくして得られた溶液から単環の芳香族炭化水素溶
剤を回収して精製改質処理物である可溶成分が取得され
る。
【0016】改質処理物を溶解する単環の芳香族炭化水
素溶剤としては、塗料便覧(日刊工業新聞社、昭和44
年11月29日、第321〜322頁)および溶剤ポケ
ットブック(株式会社オーム社、昭和42年11月25
日、第11〜13頁)に記載されている、溶解性パラメ
ータδが8.5〜9.5(cal/cm31/2 の範囲
のものが望ましい。その例として、ベンゼン(δ= 9.
2)、エチルベンゼン(δ= 8.8)、トルエン(δ=
8.9)、キシレン(δ= 8.8)等が挙げられ、これ
らは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用い
ても良い。これらの溶剤は、溶解性が適度であるばかり
でなく、沸点が低いので、その後の可溶成分の溶液から
の溶剤回収において、容易に蒸留により回収することが
できる。また、この単環の芳香族炭化水素溶剤の使用量
は、処理する改質処理物の1〜5重量倍の範囲、好まし
くは1〜3重量倍量の範囲が適当である。使用量が1重
量倍量未満であると、混合液の粘度が高くなるため、析
出した不溶成分の分離効率が悪くなり、5重量倍量を上
回ると処理量の増大をまねき不経済である。
【0017】改質処理物を単環の芳香族炭化水素溶剤に
溶解した溶液から析出した不溶成分を除去する手段とし
ては、沈降分離、遠心分離、あるいは濾過等の任意の手
段を用いることができる。フリーカーボン等の微細な固
形分を完全に除去するためには、濾過の手段を採用する
ことが望ましい。また、不溶成分の除去された溶液か
ら、単環の芳香族炭化水素溶剤を回収し、精製改質処理
物である可溶成分を取得する手段としては、通常、蒸留
手段が採用される。
【0018】この改質処理物の単環の芳香族炭化水素溶
剤を用いる精製処理に当たり、析出した不溶成分は、一
般に、可溶成分の溶液を包含したいわゆるケーキ状で除
去される。したがって、この除去された不溶成分を、単
環の芳香族炭化水素溶剤と接触させて、それに包含され
ている可溶成分の溶液を抽出するように洗浄処理し、そ
の洗浄液から単環の芳香族炭化水素溶剤を回収して可溶
成分を得、該可溶成分を上記の改質処理物から得られた
可溶成分と共に、その後の最終熱処理に付せば、目的の
等方性ピッチの収率の増加を図ることができる。この不
溶成分からの洗浄処理による可溶成分の取得操作は、必
要に応じて複数回繰り返して行うこともできる。また、
不溶成分の洗浄処理に当たり、例えば、不溶成分の除去
が濾過により行われた場合は、フィルター上から不溶成
分のケーキを掻き取り、該掻き取ったケーキを単環の芳
香族炭化水素溶剤と接触させて洗浄しても良いし、フィ
ルター上の不溶成分のケーキに単環の芳香族炭化水素溶
剤を散布して洗浄しても良い。
【0019】上記の改質処理物の単環の芳香族炭化水素
溶剤を用いる精製処理で得られた精製改質処理物である
可溶成分は、次いで、最終加熱処理に付され、重質化さ
れて、炭素繊維製造用紡糸ピッチに適した軟化点、溶融
粘度等を有する目的の等方性ピッチとされる。
【0020】この最終熱処理は、公知の方法を採用する
ことができ、一般に減圧下もしくは不活性ガスまたは過
熱蒸気の吹き込み下に350〜500℃の温度範囲で1
0〜300分間、好ましくは、380〜480℃の温度
範囲で10〜180分間行われる。加熱処理の方法は、
例えばオートクレーブ等によるバッチ式でも良いが、減
圧下あるいは常圧下に不活性ガス等の流通下で、薄膜蒸
留装置、流下膜式熱処理装置、回転円盤式分散蒸発装置
等を用いて連続的に行っても良い。用いられる不活性ガ
スまたは過熱蒸気としては、窒素、ヘリウムあるいはア
ルゴン等の不活性ガス、過熱水蒸気あるいは処理温度に
おいて不活性な低沸点有機化合物、低沸点油等を加熱し
て高温の過熱蒸気としたもの等が挙げられる。
【0021】この最終加熱処理で注意すべきことは、メ
ソフェーズもしくはコークスのような固形分を生成しな
いような条件を選択することである。もし、得られる等
方性ピッチがこれらの固形分を含んでいると、それを溶
融紡糸してピッチ繊維とするときに、紡糸用ノズルの閉
塞等の問題が生ずる。一方、これらの固形分を発生させ
ないために加熱処理の条件を著しく温和にすると、得ら
れる等方性ピッチは、軟化点が低く、ピッチ中の軽質分
が十分除去されないものとなり、紡糸時に多量のガスが
発生するなどの問題が起こり、またその酸化雰囲気中で
の加熱による不融化も困難になるので、この点も注意を
要する。
【0022】本発明で得られる等方性ピッチは、光学的
に等方性で、メソフェーズを実質的に含まず、一般に、
キシレン不溶分が50〜80重量%、軟化点が200〜
320℃の範囲のものであり、また不融化性に優れ、加
熱減量が少なく、糸切れ等を起こすことなく、紡糸性に
優れたものである。なお、ここで言うメソフェーズを実
質的に含まないとは、ピッチを樹脂に埋め込み後ピッチ
面を研磨したものを偏向顕微鏡500倍率で観察し、2
0視野中1μm 以上のメソフェーズが1個以下であるこ
とを言う。
【0023】また、本発明で得られる等方性ピッチは、
汎用炭素繊維、活性炭素繊維、あるいは電極、ヒータ
ー、各種坩堝、摺動部材等に用いられる等方性高密度高
強度黒鉛材料等の原料として好適に用い得るものであ
る。
【0024】さらに、炭素繊維製造用紡糸ピッチとして
用いた場合を例にとり、本発明の特定の手順によって得
られる等方性ピッチの優位性を、本発明とは異なった手
順によって得られる等方性ピッチとの比較において、具
体的に説明すれば次のとおりである。すなわち;本発明
の特定の手順、つまり原料石炭系重質油の芳香族ニトロ
化合物による改質工程、改質処理物の単環の芳香族炭化
水素溶剤による不溶成分の除去工程、可溶成分の加熱処
理工程を順次行うことにより得られる等方性ピッチで
は、実施例1に示すとおり、紡糸性が良好で、また、3
20℃で不融化を行った場合、昇温速度20℃/min に
おいても問題なく繊維を得ることができ、不融化性に優
れたものである。
【0025】本発明と異なった手順、つまり原料石炭系
重質油の単環の芳香族炭化水素溶剤による不溶成分の除
去工程、可溶成分の加熱処理工程、加熱処理工程を経た
可溶成分の芳香族ニトロ化合物による改質工程を順次行
うことにより得られる等方性ピッチでは、比較例1に示
すとおり、本発明による場合と比べて、加熱減量がやや
多く、それから得られるピッチ繊維の不融化性も炭素繊
維の繊維特性も共に悪いものとなる。
【0026】本発明と異なった他の手順、つまり原料石
炭系重質油の単環の芳香族炭化水素溶剤による不溶成分
の除去工程、可溶成分の芳香族ニトロ化合物による改質
工程、改質処理物の加熱処理工程を順次行うことにより
得られる等方性ピッチでは、比較例2に示すとおり、本
発明による場合と比べて、加熱減量が多く、紡糸時にガ
スが多量に発生して糸切れが多く起こってその紡糸性が
悪く、好適に炭素繊維が得られないものとなる。
【0027】本発明と異なったさらに他の手順、つまり
芳香族ニトロ化合物による改質工程は行うことなく、原
料石炭系重質油の加熱処理工程、加熱処理物の単環の芳
香族炭化水素溶剤による不溶成分の除去工程、可溶成分
の加熱処理工程を順次行うことにより得られる等方性ピ
ッチでは、比較例3に示すとおり、本発明による場合と
比べて、等方性ピッチの軟化点を高めようとするとメソ
フェーズが発生し、また得られる等方性ピッチは不融化
性が悪いものとなる。
【0028】上記のとおり、本発明の特定の手順によっ
て得られる等方性ピッチは、紡糸性が良好で、不融化時
の昇温速度を大幅に上げることができるため不融化にか
かる時間を大幅に短縮することが可能となり、汎用炭素
繊維の製造コストを引き下げ、それを一層低廉に製造す
ることに大いに寄与する。
【0029】
【実施例】以下実施例及び比較例により、本発明をさら
に具体的に説明する。
【0030】実施例1 100℃の粘度が109cSt 、沸点が250℃以下の成
分が0重量%、250〜350℃の成分が18重量%、
キシレン不溶分が8.3重量%、キノリン不溶分が0.
4重量%のコールタールを、それにジニトロナフタレン
を2.5重量%添加し、温度300℃、大気圧下、滞留
時間370秒で管式加熱炉にて連続的に加熱処理して改
質処理物を得た。該改質処理物を2重量倍のキシレンに
溶解させ、析出した不溶成分を濾過により除去し、得ら
れた溶液からキシレンを蒸留により除去し可溶成分を得
た。さらに該不溶成分を2重量倍のキシレンに分散さ
せ、溶解しなかった不溶成分を濾過により除去し、得ら
れた溶液からキシレンを蒸留により除去して可溶成分を
得た。該可溶成分を前に得られた可溶成分に加え、窒素
ガスを吹き込みながら温度430℃で40分間熱処理し
て、メトラー法軟化点が285℃、キノリン不溶分が
0.01重量%以下、500℃加熱減量が11重量%の
メソフェーズを実質的に含まない等方性ピッチを得た。
なお、この等方性ピッチは320℃における粘度が49
0poise であった。
【0031】得られた等方性ピッチを径0.25mm、長
さ0.75mmのノズル孔を持つ単孔紡糸機において、紡
糸温度320℃、巻取速度800m /min で紡糸し、ピ
ッチ繊維を得た。該ピッチ繊維を空気中で2℃/min 、
5℃/min 、10℃/min および20℃/min の各昇温
速度でそれぞれ320℃まで昇温し、この温度で20分
間加熱することにより不融化し、続いて窒素雰囲気中で
1,000℃にて炭化して繊維径約10μmの炭素繊維
を得た。得られた炭素繊維の物性を下記表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】比較例1 実施例1と同様のコールタールを2重量倍のキシレンに
溶解させ、析出した不溶成分を濾過により除去し、得ら
れた溶液からキシレンを蒸留により除去して可溶成分を
得た。該可溶成分を410℃で15分間加熱処理してメ
トラー法軟化点230℃のピッチを得た。該ピッチを、
それにジニトロナフタレンを5重量%添加し、窒素雰囲
気中、撹拌下で温度350℃、150分間加熱処理し
て、メトラー法軟化点が289℃、メソフェーズを実質
的に含まず、キノリン不溶分が4重量%の等方性ピッチ
を得た。この等方性ピッチの500℃加熱減量は12重
量%であり、実施例1の場合と比べてやや大きい値であ
った。なお、該ピッチは320℃における粘度が600
poise であった。
【0034】得られた等方性ピッチを実施例1と同じ紡
糸機を用い、紡糸温度320℃、巻取速度800m /mi
n で紡糸し、ピッチ繊維を得た。該ピッチ繊維を空気中
で1℃/min 、2℃/min 、5℃/min 、10℃/min
および20℃/min の各昇温速度でそれぞれ320℃ま
で昇温し、この温度で20分間加熱することにより不融
化し、続いて窒素雰囲気中で1,000℃にて炭化して
繊維径約10μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維
の物性を下記表2に示す。なお、不融化時の昇温速度が
20℃/min のものは融着してしまい、物性の測定可能
な繊維は得られなかった。
【0035】本比較例においては、実施例1と比べて、
得られた等方性ピッチの加熱減量がやや多く、得られた
ピッチ繊維の不融化性も炭素繊維の繊維特性も共に悪い
ものであった。
【0036】
【表2】
【0037】比較例2 実施例1と同様のコールタールを2重量倍のキシレンに
溶解させ、析出した不溶成分を濾過により除去し、得ら
れた溶液からキシレンを蒸留により除去して可溶成分を
得た。該可溶成分を、それにジニトロナフタレンを2.
5重量%添加し、温度300℃、滞留時間400秒で管
式加熱炉にて連続的に加熱処理して改質処理物を得た。
該改質処理物を、窒素ガスを吹き込みながら温度440
℃で40分間加熱処理して、メトラー法軟化点が286
℃、キノリン不溶分が0.01重量%以下のメソフェー
ズを実質的に含まない等方性ピッチを得た。この等方性
ピッチの500℃の加熱減量は15重量%であり、実施
例1の場合と比べて大きい値であった。なお、該ピッチ
は320℃における粘度が520poise であった。
【0038】得られた等方性ピッチを実施例1と同じ紡
糸機を用い、紡糸温度320で、巻取速度を200〜8
00m /min と変化させて紡糸を行ったが、紡糸温度に
おける加熱減量が多いため、糸切れが多く紡糸は困難で
あり、径が約10μmの繊維を得ることはできなかっ
た。
【0039】本比較例においては、実施例1と比べて、
得られた等方性ピッチの加熱減量が多く、紡糸時にガス
が多量に発生して糸切れが多く起こって紡糸性が悪く、
好適に炭素繊維を製造できなかった。
【0040】比較例3 実施例1と同様のコールタールを、温度440℃、滞留
時間230秒で管式加熱炉を用いて連続的に加熱処理
し、加熱処理油を得た。該加熱処理油に2重量倍のキシ
レンを加え、析出した不溶成分を濾過により除去し、得
られた溶液からキシレンを蒸留により除去して可溶成分
を得た。該可溶成分を、窒素ガスを吹き込みながら温度
450℃で40分間加熱処理して、メトラー法軟化点が
256℃、キノリン不溶分が0.01重量%以下のメソ
フェーズを実質的に含まない等方性ピッチを得た。この
等方性ピッチの500℃加熱減量は10重量%であり、
実施例1の場合と比べて小さい値であった。なお、該ピ
ッチは280℃における粘度が290poise であった。
【0041】得られた等方性ピッチを実施例1と同じ紡
糸機を用い、紡糸温度280℃、巻取速度800m /mi
n で紡糸し、ピッチ繊維を得た。該ピッチ繊維を空気中
で1℃/min 、2℃/min および5℃/min の各昇温速
度でそれぞれ320℃まで昇温し、この温度で20分間
加熱することにより不融化し、続いて窒素雰囲気中で
1,000℃にて炭化して炭素繊維を得た。
【0042】得られた炭素繊維の物性を下記表3に示
す。なお、不融化時の昇温速度が2℃/min および5℃
/min のものは融着してしまい物性の測定可能な繊維は
得られなかった。
【0043】また、上記と同様の実験において、可溶成
分の加熱処理の時間を45分間としたところ、得られた
ピッチは、メトラー法軟化点が259℃となり、1〜2
μmのメソフェーズが1視野中に50〜70個発生して
いた。このピッチを、紡糸温度を294℃とした以外実
施例1と同条件で紡糸したところ、糸切れが発生して長
いピッチ繊維の製造が困難であったため、その後の不融
化および炭化は行わなかった。また、得られたピッチ繊
維の表面を観察したところ、微細な突起が多数認められ
た。
【0044】本比較例においては、実施例1と比べて、
等方性ピッチの軟化点を高めようとするとメソフェーズ
が発生し、得られた等方性ピッチは不融化性が悪いもの
であった。
【0045】
【表3】
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、メソフェーズを実質的
に含有せず、加熱減量が少なく、紡糸性が良く、かつ不
融化性に優れていて短時間で不融化することができる、
汎用炭素繊維製造用紡糸ピッチとして好適に用い得る等
方性ピッチを工業的に容易に製造することができる。本
発明で製造される等方性ピッチは、上記のとおり短時間
で不融化することができるから、汎用炭素繊維の製造コ
ストの低減に大いに寄与するものである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石炭系重質油を、それに芳香族ニトロ化
    合物を1〜10重量%添加し、温度150〜400℃に
    て1〜120分間加熱処理して改質処理物を得、該改質
    処理物を単環の芳香族炭化水素溶剤に溶解させ、析出し
    た不溶成分を除去し、得られた溶液から単環の芳香族炭
    化水素溶剤を回収して可溶成分を得、該可溶成分をさら
    に加熱処理することを特徴とする等方性ピッチの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 芳香族ニトロ化合物がニトロベンゼン、
    ジニトロベンゼン、ニトロナフタレン、ジニトロナフタ
    レン、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロフェ
    ノール、ジニトロフェノール、ニトロアニリン、ジニト
    ロアントラセン、ジニトロ安息香酸およびニトロアント
    ラキノンから選ばれた少なくとも1種である請求項1記
    載の等方性ピッチの製造方法。
  3. 【請求項3】 単環の芳香族炭化水素溶剤がベンゼン、
    エチルベンゼン、トルエンおよびキシレンから選ばれた
    少なくとも1種である請求項1記載の等方性ピッチの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 除去された不溶成分を、単環の芳香族炭
    化水素溶剤と接触させて洗浄し、その洗浄液から単環の
    芳香族炭化水素溶剤を回収して可溶成分を得る操作を少
    なくとも1回行い、当該操作で得られた可溶成分を、改
    質処理物から得られた可溶成分と共に、加熱処理する請
    求項1記載の等方性ピッチの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015093846A1 (ko) * 2013-12-18 2015-06-25 오씨아이 주식회사 고연화점 등방성 피치의 제조 방법

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