JP3018660B2 - 炭素繊維用紡糸ピッチ及びその製造方法 - Google Patents
炭素繊維用紡糸ピッチ及びその製造方法Info
- Publication number
- JP3018660B2 JP3018660B2 JP3274276A JP27427691A JP3018660B2 JP 3018660 B2 JP3018660 B2 JP 3018660B2 JP 3274276 A JP3274276 A JP 3274276A JP 27427691 A JP27427691 A JP 27427691A JP 3018660 B2 JP3018660 B2 JP 3018660B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- organic solvent
- pitch
- spinning
- spinning pitch
- raw material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Working-Up Tar And Pitch (AREA)
- Inorganic Fibers (AREA)
Description
とその製造方法に関するもので、より詳しくは高強度・
高弾性率を発現する炭素繊維を与える紡糸ピッチとその
製造方法に関するものである。
が非常に高いことから、種々の複合材料の強化材とし
て、釣り竿、ゴルフシャフト等のスポーツ用具、義手、
義足等の医療用器具などから航空機の翼、スペースシャ
トルのドア等の航空・宇宙飛翔体の部材まで幅広く使用
されている。
はポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系とに大
別されるが、一般にピッチ系炭素繊維、黒鉛繊維は石
炭、石油等を原料として製造されている。周知のよう
に、重質油、タール、ピッチ等の炭素質原料を350〜
500℃に加熱すると、それらの物質中に粒径が数ミク
ロンから数百ミクロンの偏光下光学的異方性を示す小球
体が生成する。そして、更に加熱するとこれらの小球体
は成長合体し、ついには全体が光学的異方性を示す状態
となる。この異方性組成は炭素質原料の熱重縮合反応に
より生成した高分子芳香族炭化水素が層状に積み重なり
配向したもので、黒鉛結晶構造の前駆体とみなされてい
る。
溶融紡糸、不融化、炭化、更に場合により黒鉛化するこ
とによって、高強度・高弾性率等の特徴を持つピッチ系
の高特性炭素繊維の原料として提案されている。特に光
学的異方性相を多量に含有する紡糸ピッチを製造するに
際して特開昭57−42924、特開昭58−1686
87、各号公報等に開示されているように炭素質原料を
撹拌しながらあるいは更に不活性気体等を吹き込みなが
ら加熱処理して紡糸ピッチを製造すること、あるいは特
公昭63−5433、特公平1−53317、各号公報
等に開示されているように炭素質原料を加熱処理した
後、芳香族溶剤を作用させ溶剤分別で溶剤不溶分を回収
して紡糸ピッチを製造することが既に知られている。
の各種紡糸ピッチが如何なる態様であれ、従来の紡糸ピ
ッチには低軟化点成分を含有している。かかる低軟化点
成分を含有したピッチを溶融紡糸した後、不融化、炭化
して炭素繊維を製造すると、低軟化点成分の存在のため
に得られた炭素繊維の弾性率の増加が十分ではなく、か
かる弾性率の不足分を補うために焼成温度を上げざるを
得ず、焼成温度の上昇によって弾性率を増加させると得
られた炭素繊維の0°圧縮強度が低下し、高特性の炭素
繊維には成り難い傾向を示す。そこで、この点を解決す
るためには低軟化点成分のみを溶剤抽出等の手段により
除去すればよいが、単に紡糸ピッチから低軟化点成分の
みを除去すると紡糸ピッチの軟化点が上昇してしまい紡
糸温度を上げることが必要となる。
かる課題を解決するべく鋭意検討した結果、紡糸ピッチ
から低軟化点成分のみではなく、高軟化点成分をも十分
に除去すればよいことに注目し、また、低軟化点成分及
び高軟化点成分が十分に除去された紡糸ピッチは、示差
走査型熱量計で求めたガラス転移温度巾(ΔTg )が小
さく、逆に、ΔTg が小さく、光学的異方性相の含有割
合が大きく、また、紡糸温度で一定粘度を示す紡糸ピッ
チは、上記の課題を解決し、かつ、プロセス上の問題も
なく、高特性の炭素繊維を与え得ることを見出し、本発
明に達成した。
素質原料を、特定の溶解パラメータを有する溶剤により
処理することにより、上記の低軟化点成分及び高軟化点
成分が十分に除去され、且つ特定の物性を示す紡糸ピッ
チが得られることを見出し、本発明に達成した。即ち、
本発明の目的は紡糸が可能であり、比較的低温での焼成
処理で高弾性率が発現できかつ0°圧縮強度の高いピッ
チ系炭素繊維を製造し得る紡糸ピッチを得ること及びか
かる紡糸ピッチを簡便に得る方法を提供することにあ
る。
量計で求めたガラス転移温度巾が60℃以下で、 光
学的異方性相を80体積%以上含有し、且つ 剪断粘
度200ポイズを示す温度が270℃以上370℃以下
であることを特徴とする炭素繊維用紡糸ピッチ、および
炭素質原料を溶解パラメータの異なる2種の有機溶剤に
より溶剤分別して炭素繊維用紡糸ピッチを製造する方法
において、当該炭素質原料が光学的異方性相を30体積
%以上含有し、 当該炭素質原料を溶解パラメータ
9.5〜11.5の有機溶剤(a)で処理して可溶分を
取得した後、当該可溶分を溶解パラメータ8.0〜1
0.6の有機溶剤(b)で処理して不溶分を取得する
か、あるいは、 当該炭素質原料を溶解パラメータ
8.0〜10.6の有機溶剤(b)で処理して不溶分を
取得した後、当該不溶分を溶解パラメータ9.5〜1
1.5の有機溶剤(a)で処理して可溶分を取得するに
際して、使用する有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との
溶解パラメータの差が少なくとも0.1以上であること
を特徴とする請求項1記載の炭素繊維用紡糸ピッチの製
造方法により容易に達成される。
の紡糸用ピッチは、まず、ガラス転移温度巾(ΔTg )
が60℃以下であることを必須要件とする。本来ガラス
転移点とは物質固有の温度であり、物質の比熱等の物理
的性質が不連続的に変化する温度を云う。しかしながら
紡糸用ピッチの様に、種々の分子構造を有ししかも低軟
化点成分から高軟化点成分まで巾広い分子量分布を有す
る物質の場合には、混合物である為にガラス転移する温
度に巾が存在することになる。つまり低軟化点成分から
高軟化点成分まで多くの分子種と、分子量分布を有する
紡糸ピッチの場合にはガラス転移温度巾が大きくなる。
に不適切である低軟化点成分を除去した紡糸ピッチは、
紡糸ピッチの粘度が上昇し溶融紡糸に適切な温度が上昇
してしまい紡糸ピッチの熱分解、熱重縮合反応が起こる
為に炭素繊維の製造が困難となる。紡糸ピッチ粘度を適
切な粘度に保持する為に、低軟化点成分を除去すると同
時に、高軟化点成分を除去することが必要となった。こ
の様にして製造した紡糸ピッチのガラス転移温度巾(Δ
Tg )は小さくなり、これが60℃以下の場合に高性能
の炭素繊維の製造が可能である。
光学的異方性相の含有体積割合が80体積%以上である
ことを必須要件とする。光学的異方性相が80体積%未
満であると、炭素繊維の結晶性が低くなり性能の劣った
ものになりやすい。さらに、剪断粘度に関し、紡糸性の
点から270℃以上370℃以下で、200ポイズにな
ることを要件とする。
性相を30体積%以上含む炭素質原料の出発原料として
は、例えば石炭系のコールタール、コールタールピッ
チ、石炭液化物、石油系のピッチ、例えばFCCオイ
ル、コーカーオイル又はそれらの蒸留残渣、又はナフタ
レン、アントラセン、触媒やホルマリン誘導体で重縮合
反応させ製造した芳香族樹脂や、アルキルベンゼンを強
酸性触媒下でホルムアルデヒド類を架橋したオリゴマー
を加熱−減圧蒸留し製造したピッチであり、ベンゼン不
溶分95重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に
好ましくは5〜45重量%、かつキノリン不溶分40重
量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは
20重量%以下のものが挙げられる。
コークス、カーボンブラック、灰分等の微粒子からなる
場合があり、これらが紡糸ピッチに混入すると紡糸性の
低下、得られる炭素繊維の強度の低下をきたし好ましく
ないので、出発原料のキノリン不溶分を静置分離等の予
備処理により除去した後さらに光学的異方性相が少なく
とも30体積%以上になる様に適当な処理を行なった後
に本発明の紡糸ピッチの製造に供する。また、上記のキ
ノリン不溶分を除去した出発原料を更にテトラリン、デ
カリン、テトラヒドロキノリン、水添した芳香族油の水
素供与性溶剤と共に、あるいは水素供与性溶剤に容易に
転化し得るキノリン、ナフタリン油、アントラセン油等
の溶剤と触媒として鉄系化合物やモリブデン等を含む担
持または非担持触媒との混合物と共に、水素ガス加圧下
360〜500℃で水添処理し、その後、濾過等によっ
て固形分を除去し、更に必要に応じて蒸留等により溶媒
を除去する方法によって予備処理を加えた後、さらに光
学的異方性相が少なくとも30体積%以上となる様に適
当な処理を行なったあと、本発明の紡糸ピッチの製造に
供する。
去もしくは水添処理の予備処理を行なった出発原料を3
00〜500℃、好ましくは380〜450℃、減圧〜
10kg/cm2・G、好ましくは10mmHg〜常圧で20分〜
10時間、好ましくは1〜6時間程度不活性ガス雰囲気
下または不活性ガスをピッチ中に吹き込みながら加熱処
理することである。この適当な処理を続けることにより
光学的異方性相から成る紡糸ピッチを製造する方法があ
る。この方法は従来の高特性炭素繊維用の紡糸原料を得
る方法であるが、このようにして得られたピッチには低
軟化点成分を含有しており、これらのピッチを溶融紡
糸、不融化、炭化して炭素繊維を製造すると、弾性率が
増加し難く、かつ弾性率を増加させるために焼成温度を
上げると0°圧縮強度が低下することが判明しており、
一方単に紡糸ピッチの低軟化点のみを除去すると紡糸ピ
ッチの軟化点が上昇してしまい紡糸操作が困難となる。
性相を30体積%以上が必要であり、更に好ましくは9
0体積%以上を含有したものを使用するのがよい。本発
明は分子量分布の狭い光学的異方性の紡糸ピッチの製造
により、高性能の炭素繊維を得るものであるが、本発明
に供する炭素質原料としては、光学的異方性相を30体
積%以上含んだものであることが必要不可欠であり、好
ましくは光学的異方性相を90体積%以上のものであ
る。つまり光学的異方性相が30体積%未満の光学的に
等方性の成分を多く含んでいる炭素質原料から本発明に
よる紡糸ピッチを調製して炭素繊維を製造した場合、安
定した紡糸が困難でかつ、本発明が達成しようとする高
特性に成り得ないものであった。光学的異方性相が30
体積%に満たない炭素質原料は、本来液晶を形成し難い
成分を多量に含んでいる。それは低分子量の低軟化点成
分や、低分子量成分が芳香族盤状平面状に重縮合してい
ない成分であり、それらは低分子量で脂肪族炭素分率が
高い成分と低分子の単量体かメチレン架橋結合等3次元
構造的に多量化されている化学構造を有する。これらは
熱的にも不安定であり、溶融紡糸温度で一部分解反応が
起こるものである。
剤による分割でも完全に取り除くことは不可能で得られ
た紡糸ピッチ中に一部とり込まれてしまう。これらの成
分は紡糸温度で一部分解する為に気泡を発生し、紡糸ノ
ズルでの破断の原因になりやすい。又メチレン架橋等の
結合で3次元的に多量化した重合物は溶融した紡糸ピッ
チに粘度ムラを生じさせ、連続的に安定した紡糸状態を
得るさまたげとなる。
紡糸ピッチを製造する為には、これら低分子化合物で形
成される成分を予め除去しておくことが必要であり、こ
の為には出発原料である炭素質原料が少なくとも30体
積%以上の光学的異方性相を含んだものであることが必
要不可欠であり、好ましくは90体積%以上のものであ
るほうが良い。
光学的異方性相を30体積%以上含む炭素質原料を溶解
パラメータの異なった2種の有機溶媒を用いて溶剤分別
することが重要である。溶剤分別の方法としては、
当該炭素質原料を溶解パラメータ9.5〜11.5の有
機溶剤(a)で処理して可溶分を取得した後、当該可溶
分を溶解パラメータ8.0〜10.6の有機溶剤(b)
で処理して不溶分を取得するか、あるいは、 当該炭
素質原料を溶解パラメータ8.0〜10.6の有機溶剤
(b)で処理して不溶分を取得した後、当該不溶分を溶
解パラメータ9.5〜11.5の有機溶剤(a)で処理
して可溶分を取得する方法が挙げられる。
とは使用する溶剤あるいは溶剤の混合物の溶解パラメー
タであり、下記の式で定義される。 溶解パラメータ(ν)=〔(HvRT)/V〕1/2 (上記式中、Hvは溶剤の蒸発熱、Rは分子気体定数、
Tは絶対温度で表した温度、Vは分子容をそれぞれ表わ
す)また、かかる溶解パラメータ(ν)は、例えばJ.
HildebrurdおよびR.Scott著“非電解
質の溶解度”(第3版、ラインホールド社刊、194
9)に詳細に説明されている。そして、典型的な溶剤の
溶解パラメータを挙げると、例えば、トルエン8.9、
ベンゼン9.2、クロロホルム9.2、テトラヒドロフ
ラン9.5、ピリジン10.6、キノリン10.8等で
ある。勿論、所望の溶解パラメータの溶剤とするために
は、これらの単独の溶剤を混合使用することにより調製
することができる。
ラメータ9.5〜11.5の範囲にあるもので、例え
ば、ピリジン、キノリンあるいはこれらの混合物が挙げ
られる。有機溶剤(a)は溶解パラメータは大きすぎる
と炭素質原料との相溶性を失い、小さすぎると得られる
紡糸ピッチに含有される光学的異方性が発達し難くまた
有機溶剤(b)の溶解パラメータに接近するため収率の
低下を招く結果となるので好ましくなく、9.5〜1
1.5、好ましくは10〜11の範囲から選択するのが
よい。
8.0〜10.6の範囲にあるもので、例えば、トルエ
ン、ベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ピ
リジンあるいはこれらの混合物が挙げられる。有機溶剤
(b)の溶解パラメータは小さすぎると弾性率低下の要
因となる低軟化点成分を含有させることとなり、大きす
ぎると軟化点が上昇しやすくまた有機溶剤(a)の溶解
パラメータに接近するため収率の低下を招く結果となる
ので好ましくなく、8.0〜10.6、好ましくは8.
5〜10の範囲から選択するのがよい。
剤分別処理を行なうが、その方法としては、先ずの方
法では、前述の炭素質原料を溶解パラメータ9.5〜1
1.5の有機溶剤(a)により溶解して当該原料に含有
される高軟化点成分である不溶分を濾過・分離して除去
し可溶分を取得する。使用する有機溶剤(a)の量は炭
素質原料100重量部に対して300重量部以上、好ま
しくは500〜2000重量部の範囲から選択される。
8.0〜10.5の有機溶剤(b)により溶解して当該
可溶分に含有される高弾性率発現を阻害する低軟化点成
分である可溶分を濾過・分離して除去し不溶分を取得す
る。使用する有機溶剤(b)の量は可溶分100重量部
に対して300重量部以上、好ましくは500〜200
0重量部の範囲から選択される。
の順序を逆としたものである以外はの方法と同様に行
なわれる。ここで、重要なことは、使用する有機溶剤
(a)と有機溶剤(b)との溶解パラメータの選択であ
る。即ち、使用する有機溶剤(a)と有機溶剤(b)と
の溶解パラメータの差が少なくとも0.1以上であるこ
とが必要である。有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との
溶解パラメータの差が大きすぎると、またはの方法
で得られる紡糸ピッチは従来の紡糸ピッチと比較しても
格段に改良されているものではなく、また、小さすぎる
とまたはの方法で得られる紡糸ピッチの収量が低下
するので好ましくない。そして、かかる差は通常0.1
〜3.5、好ましくは0.2〜2.5の範囲となるよう
に使用する有機溶剤を選択する必要がある。
ッチは、光学的異方性相80体積%好ましくは85体積
%以上であって、さらに好ましくは95体積%以上であ
って、剪断粘度200ポイズを示す温度が270〜37
0℃とする。即ち、使用する有機溶剤の溶解パラメータ
の上限同士の組合せにより剪断粘度200ポイズを示す
温度が370℃を越える場合あるいは下限同士の組合せ
で光学的異方性相80体積%未満の場合は本発明で奏す
る効果の発現が十分でなく好ましくないので、上記の物
性の範囲となるように使用する有機溶剤の選択をする必
要がある。
分あるいは二成分よりなる溶剤にのみ限定されるもので
はなく、炭素質原料に対して同様な溶解度を有する多成
分系溶剤、例えば石炭液化物、石油系重質油、タール油
等を用いてもよい。このようにして得られた紡糸ピッチ
は、さらにガラス転移温度巾が60℃以下である。この
ガラス転移温度巾(ΔTg )は、示差走査型熱量計で測
定する。測定は“JIS K7121−1987 プラ
スチックの転移温度測定方法”に準拠し行なう。この方
法で得られるDSC曲線よりガラス転移温度巾(Δ
Tg )は、“JIS K7121−1987 9.3ガ
ラス転移温度の求め方”に従い、図1に記載したTigと
Tegの差として求める。具体的には、ガラス転移前後の
各ベースラインを延長した直線と、ガラス転移の階段状
変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた
接線との交点の温度をTig,Teg(それぞれ低温側のベ
ースライン、高温側のベースラインに対応)とする。
温度巾ΔTg はTigとTegの差として求めている。この
ようにして得られた紡糸ピッチは常法に従って炭素繊維
製造に使用される。炭素繊維の製造は、かかる紡糸ピッ
チを例えば300〜400℃の温度で溶融紡糸し、次い
で酸化性雰囲気下で不融化し、得られた繊維束を150
0〜2000℃程度で炭化処理し、必要に応じて220
0〜3000℃程度の温度で黒鉛化処理して目的の炭素
繊維もしくは黒鉛繊維を製造することができる。特に、
本発明の紡糸ピッチは比較的低温焼成により高い弾性率
を発現することができる。換言すれば、同一の焼成温度
で比較すると著しく弾性率の高い炭素繊維が得られる。
るが、本発明はその要旨を越えない限り実施例に限定さ
れるものではない。 比較例−1 撹拌機付オートクレーブにキノリン不溶固体を除いた、
石炭系コールタールピッチ100部、クレオソート油1
00部、酸化鉄5部および硫黄2.4部の混合物を連続
的に供給し、水素圧150kg/cm2・G、温度470℃、
平均滞留時間2時間で水添処理した。この処理物を濾過
して鉄触媒等を除去後、減圧蒸留により溶媒を留去して
水添等方質ピッチを得た。
430℃で120分間加熱処理した。得られた紡糸ピッ
チは剪断粘度200ポイズを示す温度が344℃であ
り、光学的異方性相は95体積%であった。この紡糸ピ
ッチを溶融紡糸したところ、10μm の糸を2時間破断
なく紡糸することができた。得られた糸径10μm のピ
ッチ繊維を、空気中において310℃まで160分を要
して昇温し、不融化処理した後、アルゴン中に於いて1
000℃で60分、続いて2000℃で30分間加熱す
る2段階の炭化処理を行ない炭素繊維を得た。この炭素
繊維の物性をJIS−R−7601に規定されている単
繊維引張試験法に準じて測定した結果を表1に示す。
分炭化し、この炭素繊維の物性をASTM−D3410
に規定されている0°圧縮強度試験法に準じて測定した
結果も表1に示す。紡糸に供した紡糸ピッチをセイコー
電子社製SSC580シリーズDSC−20型装置を用
いて“JIS K7121−1987”の方法に準拠し
てDSC曲線を測定した。具体的には試料皿はアルミ製
のものを用い、基準物質にも空のアルミ皿を用い、窒素
ガス50ml/分流通下15mgの紡糸ピッチをあらかじめ
350℃に加熱処理し室温に急冷後15℃/分の一定昇
温速度で加熱処理して測定を行なった。この様にして求
めたガラス転移温度巾(ΔTg )は80℃であった。
(トルエン95部、ピリジン5部)100部の混合物を
撹拌機付容器で110℃1時間溶解処理し、可溶分を濾
過により除去した。次に得られた不溶分10部キノリン
100部の混合物を、同条件にて溶解処理し、不溶分を
濾過により除去した。得られた可溶分からキノリンを蒸
留除去し、光学的異方性相95体積%の紡糸ピッチを得
た。この紡糸ピッチの剪断粘度200ポイズを示す温度
は335℃であり、この紡糸ピッチを溶融紡糸し比較例
−1と同様に炭素繊維を得た。この時の紡糸性と炭素繊
維の機械的特性を表1に示す。
タδ、トルエンのそれが8.9、ピリジンのそれが1
0.6であることから9.0である。キノリンのそれは
10.8である。又この時製造された紡糸ピッチのガラ
ス転移温度巾(ΔTg )は55℃であった。
ン、B溶剤としてトルエン60%ピリジン40%の混合
溶剤を用い、(a)工程にて、実施例−1と同条件で紡
糸ピッチを得た。この紡糸ピッチの剪断粘度200ポイ
ズを示す温度は351℃であり、この紡糸ピッチを溶融
紡糸し比較例−1と同様に炭素繊維を得た。この時の紡
糸性と炭素繊維の機械的特性を表1に示す。
解パラメータは10.6であり、B溶剤(トルエン60
%、ピリジン40%混合溶媒)のそれは9.6である。
又この時製造された紡糸ピッチのガラス転移温度巾(Δ
Tg )は47℃であった。
ン、B溶剤としてトルエン50部ピリジン50部の混合
溶媒を用い(b)工程にて、実施例−1と同条件で紡糸
ピッチを得た。
を上げるために、各抽出を同条件にて3回繰り返した。
この紡糸ピッチの光学的異方性相は95体積%であり剪
断粘度200ポイズを示す温度は334℃であった。こ
の紡糸ピッチを比較例−1と同様に炭素繊維を得た。こ
の時の紡糸性と炭素繊維の機械的特性を表1に示す。
ピリジン50%混合溶剤)の溶解パラメータは9.8で
ある。又この時製造された紡糸ピッチのガラス転移温度
巾(ΔTg )は43℃であった。
学的異方性相35体積%を含むピッチを実施例−3と同
様の方法で処理し、光学的異方性相95体積%からなる
紡糸ピッチを得た。この紡糸ピッチの剪断粘度200ポ
イズを示す温度は340℃であり、この紡糸ピッチを溶
融紡糸し比較例−1と同様に炭素繊維を得た。この時の
紡糸性と炭素繊維の機械的特性を表1に示す。又この時
製造された紡糸ピッチのガラス転移温度巾(ΔTg )は
44℃であった。
的異方性の小球体を発生させた。その小球体の体積割合
いは約5%であった。この異方性小球体を含むピッチを
実施例−3と同様の方法で処理し、光学的異方性95体
積%からなる紡糸ピッチを得た。この紡糸ピッチの剪断
粘度200ポイズを示す温度は340℃であり、この紡
糸ピッチを溶融紡糸し、比較例−1と同様に炭素繊維を
得た。この時の紡糸性と炭素繊維の機械的特性を表1に
示す。又この時製造された紡糸ピッチのガラス転移温度
巾(ΔTg )は65℃であった。
高弾性率、高い0°圧縮強度を発現する炭素繊維を製造
でき、且つ紡糸時の破断も少ない。又、本発明方法によ
れば、特定の炭素質原料及び特定の溶解パラメータを有
する有機溶剤を選択することにより、紡糸性が十分でか
つ高弾性率、高い0°圧縮強度を発現できる炭素繊維を
与える紡糸ピッチを簡便な方法により製造することがで
きる。
説明図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 示差走査型熱量計で求めたガラス転
移温度巾が60℃以下であり、 光学的異方性相の含有体積割合が80体積%以上
で、且つ 剪断粘度200ポイズを示す温度が270
℃以上370℃以下であることを特徴とする炭素繊維用
紡糸ピッチ。 - 【請求項2】 炭素質原料を溶解パラメータの異なる2
種の有機溶剤により溶剤分別して炭素繊維用紡糸ピッチ
を製造する方法において、 当該炭素質原料が光学的異方性相を30体積%以上含有
し、 当該炭素質原料を溶解パラメータ9.5〜11.5
の有機溶剤(a)で処理して可溶分を取得した後、当該
可溶分を溶解パラメータ8.0〜10.6の有機溶剤
(b)で処理して不溶分を取得するか、あるいは、 当該炭素質原料を溶解パラメータ8.0〜10.6
の有機溶剤(b)で処理して不溶分を取得した後、当該
不溶分を溶解パラメータ9.5〜11.5の有機溶剤
(a)で処理して可溶分を取得するに際して、 使用する有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との溶解パラ
メータの差が少なくとも0.1以上であることを特徴と
する請求項1記載の炭素繊維用紡糸ピッチの製造方法。 - 【請求項3】 当該炭素質原料が石炭系炭素質原料であ
る請求項2記載の方法。 - 【請求項4】 当該炭素質原料が光学的異方性相を90
体積%以上含有する請求項2又は3記載の方法。 - 【請求項5】 当該炭素質原料が予めキノリン不溶分除
去処理、水添処理及び加熱処理されたものである請求項
2〜4のいずれかに記載の方法。 - 【請求項6】 当該炭素質原料を溶解パラメータ1
0〜11の有機溶剤(a)で処理して可溶分を取得した
後、当該可溶分を溶解パラメータ8.5〜10の有機溶
剤(b)で処理して不溶分を取得するか、あるいは、 当該炭素質原料を溶解パラメータ8.5〜10.0
の有機溶剤(b)で処理して不溶分を取得した後、当該
不溶分を溶解パラメータ10〜11の有機溶剤 (a)で
処理して可溶分を取得するに際して、 使用する有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との溶解パラ
メータの差が少なくとも0.2〜2.5であることを特
徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3274276A JP3018660B2 (ja) | 1990-10-22 | 1991-10-22 | 炭素繊維用紡糸ピッチ及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28399790 | 1990-10-22 | ||
JP2-283997 | 1990-10-22 | ||
JP3274276A JP3018660B2 (ja) | 1990-10-22 | 1991-10-22 | 炭素繊維用紡糸ピッチ及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH051289A JPH051289A (ja) | 1993-01-08 |
JP3018660B2 true JP3018660B2 (ja) | 2000-03-13 |
Family
ID=26550970
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3274276A Expired - Lifetime JP3018660B2 (ja) | 1990-10-22 | 1991-10-22 | 炭素繊維用紡糸ピッチ及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3018660B2 (ja) |
-
1991
- 1991-10-22 JP JP3274276A patent/JP3018660B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH051289A (ja) | 1993-01-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US4208267A (en) | Forming optically anisotropic pitches | |
CA1055662A (en) | Process for producing carbon fibers from mesophase pitch | |
US3974264A (en) | Process for producing carbon fibers from mesophase pitch | |
US4032430A (en) | Process for producing carbon fibers from mesophase pitch | |
US3976729A (en) | Process for producing carbon fibers from mesophase pitch | |
US4017327A (en) | Process for producing mesophase pitch | |
JPH0341515B2 (ja) | ||
US3995014A (en) | Process for producing carbon fibers from mesophase pitch | |
JPS62270685A (ja) | メソフェ−ズピッチの製造法 | |
EP0026647B1 (en) | Mesophase pitch, processes for its production and fibers produced therefrom | |
JPS61238885A (ja) | 炭素製品製造用素原料の精製法 | |
JPS635433B2 (ja) | ||
EP0482560B1 (en) | Spinning pitch for carbon fibers and process for its production | |
CA1194445A (en) | Formation of optically anisotropic pitches | |
US4503026A (en) | Spinnable precursors from petroleum pitch, fibers spun therefrom and method of preparation thereof | |
JP3018660B2 (ja) | 炭素繊維用紡糸ピッチ及びその製造方法 | |
JPS59164386A (ja) | 炭素繊維用プリカーサーピッチの製造方法 | |
JPH0432118B2 (ja) | ||
JP2998396B2 (ja) | ピッチ系炭素繊維、その製造方法及び紡糸原料用ピッチ | |
JP2982406B2 (ja) | 炭素繊維用紡糸ピッチの製造方法 | |
JP2917486B2 (ja) | 炭素材料用メソフェースピッチ | |
US5540905A (en) | Optically anisotropic pitch for manufacturing high compressive strength carbon fibers and method of manufacturing high compressive strength carbon fibers | |
JP3016089B2 (ja) | 超低軟化点、低粘度のメソフェーズピッチ及びその製造方法並びに高強度、高弾性率炭素繊維の製造方法 | |
JP3055295B2 (ja) | ピッチ系炭素繊維とその製造方法 | |
CA1058544A (en) | Process for producing mesophase pitch |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
R360 | Written notification for declining of transfer of rights |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
R360 | Written notification for declining of transfer of rights |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360 |
|
R371 | Transfer withdrawn |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090107 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100107 Year of fee payment: 10 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110107 Year of fee payment: 11 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120107 Year of fee payment: 12 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |